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特開2022-187804デッキリブ切断装置、及び、デッキリブ切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187804
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】デッキリブ切断装置、及び、デッキリブ切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 17/00 20060101AFI20221213BHJP
   B23D 53/04 20060101ALI20221213BHJP
   B23D 55/00 20060101ALI20221213BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B23D17/00 Z
B23D53/04
B23D55/00 Z
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095989
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 和章
【テーマコード(参考)】
2E174
3C039
3C040
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA01
2E174DA17
2E174DA34
3C039BA02
3C039BA14
3C040AA16
3C040BB03
3C040DD17
3C040JJ04
(57)【要約】
【課題】デッキリブを安全且つ容易に切断する。
【解決手段】フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブ(110)を切断するデッキリブ切断装置(1)であって、デッキリブ(110)を切断する切断機構(10)と、切断機構(10)を支持し、デッキリブ(110)の長手方向に沿って移動する移機構(20)と、を有し、移動機構(20)は、デッキリブ(110)を両側から挟み込む一対の歯車部(21)を備えており、一対の歯車部(21)が、それぞれに設けられた複数の歯部(21t)をデッキリブ(110)の両側に順次食い込ませながら回転することによって、移動機構(20)が長手方向に沿って移動し、切断機構(10)が、移動機構(20)とともに長手方向沿って移動し、且つ長手方向に沿ってデッキリブ(110)を切断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブを切断するデッキリブ切断装置であって、
前記デッキリブを切断する切断機構と、
前記切断機構を支持し、前記デッキリブの長手方向に沿って移動する移動機構と、
を有し、
前記移動機構は、前記デッキリブを両側から挟み込む一対の歯車部を備えており、
前記一対の歯車部が、それぞれに設けられた複数の歯部を前記デッキリブの両側に順次食い込ませながら回転することによって、前記移動機構が前記長手方向に沿って移動し、
前記切断機構が、前記移動機構とともに前記長手方向沿って移動し、且つ前記長手方向に沿って前記デッキリブを切断する、ことを特徴とするデッキリブ切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデッキリブ切断装置であって、
前記歯車部は、前記デッキプレートの下面に接する位置で前記歯部を前記デッキリブに食い込ませながら回転する、ことを特徴とするデッキリブ切断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデッキリブ切断装置であって、
前記切断機構は、前記デッキリブを厚さ方向の両側から挟んで切断する一対の刃部、若しくは、所定の速度で回転することによって前記デッキリブを切削して切断する帯状刃部を備えている、ことを特徴とするデッキリブ切断装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のデッキリブ切断装置であって、
前記デッキプレートの下面に接しつつ回転することで、前記移動機構が前記長手方向に沿って移動するのを補助する補助車輪を有する、ことを特徴とするデッキリブ切断装置。
【請求項5】
フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブを切断するデッキリブ切断方法であって、
前記デッキリブを両側から挟み込む一対の歯車部を備えた移動機構が、前記一対の歯車部のそれぞれに設けられた複数の歯部を前記デッキリブの両側に順次食い込ませながら回転することによって、前記デッキリブの長手方向に沿って移動する移動工程と、
前記移動機構によって支持された切断機構が、前記移動機構とともに前記長手方向沿って移動し、且つ前記長手方向に沿って前記デッキリブを切断する切断工程と、
を有する、ことを特徴とするデッキリブ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキリブ切断装置、及び、デッキリブ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼鉄製の板(鋼板)を切断する場合、ガス溶断やハンドソー、ハンドクラッシャー等の機器を用いて切断を行うことが一般的であった。例えば、特許文献1には、床型枠用鋼製デッキプレートのリブ(デッキリブ)を切断するために、レールに沿って移動可能に支持されつつ回転軸5fを中心として回転可能な回転刃5bによって、切断対象リブの上端付近を切断することが可能なリブ切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-84634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や従来の切断装置を用いてデッキリブを切断する場合、安全に作業を行うことが難しい場合があった。例えば、ガス溶断やハンドソーを使用してフラットデッキ下面側に設けられたデッキリブを切断する場合、重くて大きな装置を作業者が支持しながら操作する必要が生じたり、作業員の作業スペースが十分に取れなかったりする問題が生じていた。また、切断時に火花や粉じんが飛散したり、異臭が発生したりする等の問題も生じやすく、作業員の安全を確保しながら容易に切断作業を実施することは困難であった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デッキリブを安全且つ容易に切断することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための主たる発明は、フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブを切断するデッキリブ切断装置であって、前記デッキリブを切断する切断機構と、前記切断機構を支持し、前記デッキリブの長手方向に沿って移動する移動機構と、を有し、前記移動機構は、前記デッキリブを両側から挟み込む一対の歯車部を備えており、前記一対の歯車部が、それぞれに設けられた複数の歯を前記デッキリブの両側に順次食い込ませながら回転することによって、前記移動機構が前記長手方向に沿って移動し、前記切断機構が、前記移動機構とともに前記長手方向沿って移動し、且つ前記長手方向に沿って前記デッキリブを切断する、ことを特徴とするデッキリブ切断装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デッキリブを安全且つ容易に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】デッキリブ切断装置1について表す概略斜視図である。
図2】切断対象となるデッキリブ110を備えたフラットデッキFDの一例を示す図である。
図3図3A及び図3Bは、デッキリブ切断装置1によってデッキリブ110を切断する際の動作について説明する図である。
図4】歯車部21の詳細、及び、歯車部21がデッキリブ110に食い込む際の状態について説明する図である。
図5】デッキリブ切断装置1の変形例について表す斜視図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブを切断するデッキリブ切断装置であって、前記デッキリブを切断する切断機構と、前記切断機構を支持し、前記デッキリブの長手方向に沿って移動する移動機構と、を有し、前記移動機構は、前記デッキリブを両側から挟み込む一対の歯車部を備えており、前記一対の歯車部が、それぞれに設けられた複数の歯部を前記デッキリブの両側に順次食い込ませながら回転することによって、前記移動機構が前記長手方向に沿って移動し、前記切断機構が、前記移動機構とともに前記長手方向沿って移動し、且つ前記長手方向に沿って前記デッキリブを切断する、ことを特徴とするデッキリブ切断装置。
【0011】
このようなデッキリブ切断装置によれば、火花や粉じん、臭気等を飛散させることを抑制し、安全にデッキリブ(鋼板)を切断することができる。また、切断作業時には、移動機構に設けられた一対の歯車部によってデッキリブを挟み込むことによって、デッキリブ切断装置の自重を支えつつ、切断方向に移動させることが可能であるため、作業員の労力や負担が小さい。また、装置全体がコンパクトに構成されているため、大きな作業スペースも不要である。したがって、デッキリブを安全且つ容易に切断することができる。
【0012】
かかるデッキリブ切断装置であって、前記歯車部は、前記デッキプレートの下面に接する位置で前記歯部を前記デッキリブに食い込ませながら回転する、ことが望ましい。
【0013】
このようなデッキリブ切断装置によれば、歯車部を備えた移動機構は、上下方向の高い位置(デッキプレートに近い位置)を維持しながら、デッキリブの長手方向に移動可能となり、デッキプレートの下面に近い位置でデッキリブを切断しやすくすることができる。したがって、デッキリブの切り残しを少なくすることができる。
【0014】
かかるデッキリブ切断装置であって、前記切断機構は、前記デッキリブを厚さ方向の両側から挟んで切断する一対の刃部、若しくは、所定の速度で回転することによって前記デッキリブを切削して切断する帯状刃部を備えている、ことが望ましい。
【0015】
このようなデッキリブ切断装置によれば、切断作業時に火花や粉じんが飛び散り難く、臭気等も発生し難いため、作業員は安全に切断作業を行うことができる。また、切り口がきれいであり、デッキリブの切り残しを少なくすることができる。
【0016】
かかるデッキリブ切断装置であって、前記デッキプレートの下面に接しつつ回転することで、前記移動機構が前記長手方向に沿って移動するのを補助する補助車輪を有する、ことが望ましい。
【0017】
このようなデッキリブ切断装置によれば、移動機構がデッキリブの長手方向に沿って移動する際に、補助車輪がデッキプレートの下面側に接触した状態で回転することにより、移動機構や切断機構の上下方向における位置が一定に保たれると共に、移動機構の移動をスムーズに行いやすくすることができる。したがって、デッキリブの切断作業をより正確に行うことができる。
【0018】
また、フラットデッキのデッキプレート下面側に設けられたデッキリブを切断するデッキリブ切断方法であって、前記デッキリブを両側から挟み込む一対の歯車部を備えた移動機構が、前記一対の歯車部のそれぞれに設けられた複数の歯部を前記デッキリブの両側に順次食い込ませながら回転することによって、前記デッキリブの長手方向に沿って移動する移動工程と、前記移動機構によって支持された切断機構が、前記移動機構とともに前記長手方向沿って移動し、且つ前記長手方向に沿って前記デッキリブを切断する切断工程と、を有する、ことを特徴とするデッキリブ切断方法が明らかとなる。
【0019】
このようなデッキリブ切断方法によれば、火花や粉じん、臭気等を飛散させることを抑制し、安全にデッキリブ(鋼板)を切断することができる。また、切断作業時には、移動機構に設けられた一対の歯車部によってデッキリブを挟み込むことによって、デッキリブ切断装置の自重を支えつつ、切断方向に移動させることが可能であるため、作業員の労力や負担が小さい。また、装置全体がコンパクトに構成されているため、大きな作業スペースも不要である。したがって、デッキリブを安全且つ容易に切断することができる。
【0020】
===実施形態===
<デッキリブ切断装置1の基本構造>
建築工事などで、床や屋根スラブのコンクリート打設時に用いられる型枠用デッキプレート(所謂、「フラットデッキ」)の下面側に設けられたリブプレート(デッキリブ)を切断することを可能とする切断装置の一例として、デッキリブ切断装置1について説明する。なお、本実施形態のデッキリブ切断装置1は、デッキリブ以外の他の鉄鋼製の板(鋼板)を切断することも可能である。
【0021】
図1は、デッキリブ切断装置1について表す概略斜視図である。また、デッキリブ切断装置1は、図1に示されるように、互いに交差する前後方向と左右方向と上下方向とを有するものとする。このうち、前後方向はデッキリブの長手方向に沿った方向であり、上下方向は鉛直方向に沿った方向である。
【0022】
本実施形態に係るデッキリブ切断装置1は、切断機構10と、移動機構20と、駆動機構30と、補助車輪40とを備え、フラットデッキFD(後述する図2参照)のデッキプレート100の下面側に設けられたデッキリブ110や他の鋼板を切断することが可能である。
【0023】
切断機構10は、デッキリブ110等の鋼板を厚さ方向(図1では左右方向)に切断するためのものであり、刃部11と、動力伝達部12とを有する。刃部11は、デッキリブ110を切断することが可能な超硬合金等の硬質素材からなる刃である。図1では、はさみ状に構成された一対の刃部11,11が、デッキリブ110を挟んで左右方向の両側に一対設けられている。デッキリブ110を切断する際には、当該一対の刃部11,11を左右方向に開閉させることで、デッキリブ110を挟み込んで切断する。動力伝達部12は、駆動機構30によって発生した駆動力を刃部11に伝達し、刃部11を左右方向に開閉させてデッキリブ110を切断するための部位である。本実施形態では、刃部11によってデッキリブ110を切断するために十分大きな力を発生可能なように、刃部11は油圧方式によって駆動されることが望ましく、動力伝達部12は、油圧駆動力を伝達可能に構成されている。また、動力伝達部12は、刃部11を支持する支持部としての機能も有している。
【0024】
移動機構20は、切断機構10を支持しつつ、デッキリブ110の長手方向(図1では前後方向)に沿って移動するためのものであり、歯車部21と、動力伝達部22とを有している。歯車部21は、回転軸21cを中心に回転可能な回転体であり(後述する図4参照)、その半径方向(回転軸21cに対して垂直な方向)に放射状に広がった複数の歯部21tを有している。本実施形態の移動機構20は、切断対象であるデッキリブ110を挟んで左右方向の両側に一対の歯車部21,21を有している。そして、一対の歯車部21,21が左右方向の両側からデッキリブ110を挟み込み、それぞれに設けられた歯部21t,21tをデッキリブ110の両側に順次食い込ませながら回転することによって、移動機構20が前後方向に移動可能となる。なお、本明細書中では、移動機構20が前後方向の後側から前側に向かって移動しつつ、デッキリブ110の切断を行うものとする。但し、移動機構20は、歯車部21,21の回転方向を変更することで、前後方向の前側から後側へ向かって移動することも可能である。
【0025】
動力伝達部22は、駆動機構30によって発生した駆動力を歯車部21に伝達し、歯車部21を回転させることによって、移動機構20を移動させるための部位である。動力伝達部22は、歯車部21の歯部21tをデッキリブ110に食い込ませつつ回転させるために十分大きな力を発生可能なように、切断機構10の動力伝達部12と同様に、油圧方式によって駆動されることが望ましく、動力伝達部22は、油圧駆動力を伝達可能に構成されている。また、動力伝達部22は、切断機構10よりも前後方向の前側において歯車部21を回転可能に支持しつつ、歯車部21に回転駆動力を伝達する一対の歯車支持アーム22s,22sを備えている。
【0026】
駆動機構30は、切断機構10及び移動機構20を駆動させるための駆動力を発生させる部位である。駆動機構30は、例えば、公知のモーターや作動油タンクを備え、上述したように油圧駆動力を発生することが可能なように構成される。なお、駆動機構30自体は、必ずしもデッキリブ切断装置1に設けられていなくとも良い。例えば、地上に設置された駆動力供給装置等によって、デッキリブ切断装置1の外部から駆動力が供給されるようにしても良い。
【0027】
補助車輪40は、左右方向に沿った回転軸周りに回転可能な円盤状部材であり、左右方向に一対設けられている。デッキリブ切断装置1によるデッキリブ110の切断動作を行う際には、補助車輪40がデッキプレート100の下面側に接触した状態で回転することにより、デッキリブ切断装置1(移動機構20)を前後方向へスムーズに移動させることが可能となる。
【0028】
<デッキリブ110の切断動作>
続いて、デッキリブ切断装置1を用いてデッキリブ110を切断する動作について具体的に説明する。図2は、切断対象となるデッキリブ110を備えたフラットデッキFDの一例を示す図である。図3A及び図3Bは、デッキリブ切断装置1によってデッキリブ110を切断する際の動作について説明する図である。図3Aは、デッキリブ切断装置1を左右方向の右側から見た状態を表し、図3Bは、デッキリブ切断装置1を上下方向の上側から見た状態を表している。
【0029】
フラットデッキFDは、図2に示されるように、平面状に形成されたデッキプレート100と、当該デッキプレート100の下面側において前後方向に沿って延びるデッキリブ110が左右方向に間隔を空けて複数設けられることによって構成されている。本実施形態のデッキリブ切断装置1では、このようなフラットデッキFDにおいて、各々のデッキリブ110をデッキプレート100との境目付近にて切断して切り離すことができる。但し、切断対象となるデッキリブ110の形状は図2に示される例には限られず、また、デッキリブ110以外の他の鋼板を切断することも可能である。
【0030】
デッキリブ110の切断動作時には、図3Bのように一対の歯車部21,21によってデッキリブ110を左右方向(すなわち、デッキリブ110の厚さ方向)の両側から挟み込むようにして、歯部21tをデッキリブ110に食い込ませる。歯部21tは、少なくとも切断対象となる鋼板(ここではデッキリブ110)よりも硬度の高い超硬合金等で先端が鋭く尖るように形成されており、油圧によって駆動されることで、デッキリブ110に深く突き刺すことができる。このとき、デッキリブ110の左右方向(厚さ方向)の両側に食い込んだ(突き刺さった)歯部21t,21tによってデッキリブ切断装置1全体の荷重が支持される。なお、実際の切断動作時には、図1図3Aに示されるように、切断された後のデッキリブ110に対して、切断機構10の動力伝達部12の天面部分が上側から被さるように位置している。そのため、仮に、歯部21t,21tがデッキリブ110から外れてしまったり、デッキリブ切断装置1全体の荷重を支えきれないような事態が生じたりした場合であっても、デッキリブ切断装置1が落下してしまう等の危険は生じ難い。
【0031】
次いで、デッキリブ110に歯部21t,21tが食い込んだ状態で、切断機構10を動作させ、刃部11によってデッキリブ110を挟んで切断する。図3Aに示すように、切断機構10の刃部11は、デッキプレート100の下面とほぼ平行、且つ、デッキプレート下面に接するように配置されている。これにより、デッキプレート100の下面とデッキリブ110との境目付近においてデッキリブ110を切断することが可能となる。すなわち、デッキリブ110の切り残し部分を極力小さくすることができる。
【0032】
また、一対の刃部11,11によってデッキリブ110を挟み込んで切断することにより、従来のガス溶断やハンドソーを用いてデッキリブ110を切断する場合と比較して、火花や粉じんが飛び散り難く、臭気等も発生し難い。したがって、作業員は安全に切断作業を行うことができる。さらに、デッキリブ110が、鋭利な刃部11,11によって厚さ方向の両側から剪断されるので、切り口がきれいになり、デッキリブの切り残しも少なくすることができる。
【0033】
次いで、移動機構20が切断機構10を支持した状態で前後方向(デッキリブ110の長手方向)の前側に移動する。具体的に、一対の歯車部21,21が、それぞれに設けられた複数の歯部21tをデッキリブ110の厚さ方向(左右方向)の両側に順次食い込ませながら回転することによって、移動機構20による移動が行われる。図4は、歯車部21の詳細、及び、歯車部21がデッキリブ110に食い込む際の状態について説明する図である。
【0034】
歯車部21は、回転中心となる回転軸21cから放射状に広がった複数の歯部21tを備えている。そして、各々の歯部21tは、図4のA-A断面(回転方向に対して垂直な断面)に示されるように、半径方向の中心側から外側に向かって、厚さが薄くなっている。すなわち、歯部21tは上側の面が水平面に対して所定の角度だけ傾斜しており、歯車部21の断面形状は全体として略台形状となっている。図4の例では、歯部21tが水平面に対して角度θtだけ傾斜した状態となっている。
【0035】
上述したように、移動機構20では、歯車部21を回転させながら、歯部21tを順次デッキリブ110に食い込ませることによって前後方向の前側に移動する。その際、現在デッキリブ110に食い込んでいる歯部21tを支点として、駆動機構30等の荷重によってデッキリブ切断装置1の前後方向における後側の部分が上下方向の下側に下がるような力が作用する。逆に、デッキリブ切断装置1の前後方向における前側の部分が上下方向の上側に持ち上げられるような力が作用する。その結果、歯車部21は、水平方向(図4では前後方向)に対して角度θtだけ傾斜した状態となり、歯部21tの上側の面とデッキプレート100の下側の面とが平行な状態で歯車部21が回転するようになる(図4参照)。言い換えると、歯車部21は、回転軸21cを鉛直方向に対して角度θtだけ傾けた状態で回転する。
【0036】
このような構成により、歯車部21が回転する際に、歯部21tはデッキプレート100の下側面に近い位置でデッキリブ110に食い込みやすくなる。すなわち、上下方向においてデッキリブ110の上端に近い位置で歯部21tがデッキリブ110に食い込みやすくなり、移動機構20は上方方向の高い位置(デッキプレート100の下側面に近い位置)を維持したまま、切断機構10と共に前後方向に移動することが可能となる。
【0037】
なお、移動機構20が前後方向に移動する際に、補助車輪40がデッキプレート100の下面側に接触した状態で回転する。これにより、移動機構20及び切断機構10の上下方向における位置が一定に保たれると共に、移動機構20による前後方向の移動をスムーズに行いやすくすることができる。したがって、デッキリブ110の切断作業をより正確に行うことができる。
【0038】
移動機構20が前後方向の前側に移動した後、再び切断機構10を動作させ、刃部11によってデッキリブ110を挟んで切断する。補助車輪40によって切断機構10の上下方向における位置が一定に保たれやすくなっているため、デッキプレート100の下面とデッキリブ110との境目付近においてデッキリブ110をきれいに切断することができる。
【0039】
切断機構10による切断動作が完了した後、再び移動機構20が切断機構10を支持した状態で前後方向(デッキリブ110の長手方向)の前側に移動する。そして、このような動作を繰り返すことにより、前後方向(長手方向)に沿ってデッキリブ110を切断することができる。
【0040】
本実施形態に係るデッキリブ切断装置1を用いた切断動作によれば、火花や粉じん、臭気等を飛散させることを抑制し、安全にデッキリブ110(鋼板)を切断することができる。また、切断作業時には、移動機構20に設けられた一対の歯車部21,21によって切断対象となるデッキリブ110を挟み込むことによって、デッキリブ切断装置1の自重を支えつつ、切断方向(図1において前後方向)に移動させることが可能であるため、作業員の労力や負担は小さい。さらに、デッキリブ切断装置1の全体がコンパクトに構成されているため、大きな作業スペースも不要である。したがって、デッキリブ110の切断作業を容易に行うことが可能となる。
【0041】
<変形例>
図5は、デッキリブ切断装置1の変形例について表す斜視図及び平面図である。図5に示される変形例では、切断機構10の構成が、図1で説明したデッキリブ切断装置1とは異なる。なお、切断機構10以外の各部の構成は、図1で説明したデッキリブ切断装置1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
変形例のデッキリブ切断装置1において、切断機構10は、帯状刃部13と、動力伝達部14とを有する。帯状刃部13は、可撓性を有する帯状のノコ刃が環状に形成されたものである。このような帯状刃部13を低速で回転させながら切断対象となる鋼材(デッキリブ110)に押し当てることにより、鋼材を切削して切断する。すなわち、帯状刃部13は、所謂バンドソーとしての機能を有する。動力伝達部14は、帯状刃部13を収容するハウジングであると共に、駆動機構30が発生した駆動力を用いて、動力伝達部14の内部で帯状刃部13を所定の速度で回転させる。
【0043】
変形例のデッキリブ切断装置1によるデッキリブ110の切断動作は、図3で説明した切断動作と略同様である。すなわち、移動機構20に設けられた一対の歯車部21,21によってデッキリブ110を挟み込み、複数の歯部21tをデッキリブ110の両側に順次食い込ませながら歯車部21,21を回転させることにより、移動機構20をデッキリブ110の長手方向(前後方向)に沿って移動させる。そして、本変形例では、切断動作時において切断機構10の帯状刃部13を常時回転させておく。これにより、移動機構20の移動に伴ってデッキリブ110が帯状刃部13によって連続的に切断される。
【0044】
図5のデッキリブ切断装置1(変形例)によれば、低速で回転する帯状刃部13(バンドソー)によって、火花や粉じんを飛散させることなくデッキリブ110を切断することが可能となる。また、図3のデッキリブ切断装置1と比較して同程度の大きさや重量で構成されるため、安全且つ容易にデッキリブを切断することが可能となる。
【0045】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0046】
上述の実施形態において、デッキリブ切断装置1の駆動機構30は、油圧方式によって切断機構10や移動機構20を動作させていたが、十分な出力の駆動力(トルク)を発生させることが可能であれば、機械式や電気式等、油圧以外の駆動方式が用いられるのであっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 デッキリブ切断装置、
10 切断機構、
11 刃部、12 動力伝達部、
13 帯状刃部、14 動力伝達部、
20 移動機構、
21 歯車部、21c 回転軸、21t 歯部、
22 動力伝達部、22s 歯車支持アーム、
30 駆動機構、
40 補助車輪、
100 デッキプレート、110 デッキリブ、
FD フラットデッキ
図1
図2
図3
図4
図5