(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187806
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/10 20060101AFI20221213BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221213BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20221213BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221213BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
G09G5/36 520P
B60R11/02 C
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095991
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 鳴暁
【テーマコード(参考)】
3D020
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE03
3D344AA22
3D344AB01
3D344AD01
5C182AA02
5C182AB15
5C182AB25
5C182AC35
5C182BA25
5C182BA45
5C182BA46
5C182BA47
5C182CA01
5C182CA02
5C182CB44
5C182DA64
5C182DA66
(57)【要約】
【課題】自発光型のディスプレイの一部に日射が当たる状況において、日射領域の見易さを向上させつつ、消費電力の増大を抑制する。
【解決手段】表示装置は、自発光型のディスプレイの輝度制御を実行すると共に、ディスプレイの表示面のうち日射が当たる領域である日射領域を推定する日射推定部12cを有する。表示装置は、太陽位置に基づいてディスプレイに対する日射方向を推定する方向推定部12c2と、日射方向に対応する日射領域および非日射領域の分布を示す日射領域データが複数格納されたデータベース部12c4とを備える。日射推定部12cは、推定された日射方向に近い複数の日射領域データを選択し、選択された複数の日射領域データにおける日射領域の変化方向をベクトルとして算出し、算出したベクトルに基づき、推定された日射方向に対応する日射領域を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子で構成された複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、
太陽の位置情報に基づいて、前記ディスプレイに対する日射方向を推定する方向推定部(12c2)と、
前記ディスプレイのうち前記画像表示がされる面を表示面(20a)とし、前記表示面のうち日射されている領域を日射領域とし、前記表示面の残部を非日射領域とし、前記表示面における前記日射領域および前記非日射領域の分布を示すデータを日射領域データとして、複数の前記日射領域データからなるデータ群が格納されたデータベース部(12c4)と、
推定された前記日射方向に基づいて前記データ群から異なる複数の前記日射領域データを選択し、選択された複数の前記日射領域データにおける前記日射領域の変化方向をベクトルとして算出すると共に、算出した前記ベクトルに基づいて、推定された前記日射方向に対応する前記日射領域を推定する日射推定部(12c)と、
前記日射推定部の推定結果に基づいて、前記日射領域の輝度を前記非日射領域の輝度よりも高くする、または前記非日射領域の輝度を低くする、の少なくとも一方の輝度調整を行う輝度制御部(12e)と、
前記ディスプレイにて、前記輝度制御部による輝度調整が行われた前記画像表示を行わせるための映像出力信号を出力する映像出力部(12f)と、を備える表示装置。
【請求項2】
前記ディスプレイが設置されている環境の照度に応じた電気信号を出力する照度センサ(30)から前記環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度情報に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ディスプレイが設置された地域の天候情報を取得する通信部(11)と、
前記通信部が取得した前記天候情報に基づいて、前記ディスプレイが設置されている環境の照度を推定する照度推定部(12g)と、をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度推定部が推定した前記環境の照度に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ディスプレイが設置された地域の天候情報を取得する通信部(11)と、
前記ディスプレイが設置されている環境の照度に応じた電気信号を出力する照度センサ(30)から前記環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)と、
前記通信部が取得した前記天候情報に基づいて、前記環境の照度を推定する照度推定部(12g)と、をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度取得部が取得した前記環境の照度または前記照度推定部が推定した前記環境の照度に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)などの自発光型のディスプレイの表示を制御可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイの表示面に日射が当たる状況において、ディスプレイの輝度を制御することにより、画面の見易さを向上した表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、自動車等の移動体に搭載される車両用表示装置であって、使用時刻や車両の走行位置という条件に基づいて、ディスプレイ画面全体の輝度レベルを自動的に制御する構成となっている。これにより、明るさを検知するためのセンサを設けなくても、表示装置が搭載される周囲環境の明るさに対応した輝度となり、表示画面の見易さが向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この表示装置は、所定の条件に対応して自動的にディスプレイ画面全体の輝度レベルを制御するため、画面の一部領域のみの輝度レベルの調整を行うことができない。例えば、この表示装置は、ディスプレイ画面の一部領域だけに日射が当たっているような状況であっても、画面全体の輝度レベルを上げてしまい、消費電力が必要以上に増大してしまう。また、このような状況において、表示画面は、日射領域では見易さが向上する一方で、非日射領域では必要以上に明るくなってしまい、却って見易さが低下しうる。特に、OLEDディスプレイのような自発光型のディスプレイを用いる場合には、消費電力の低減の観点から、画面全体の輝度レベルを上げる制御は好ましくない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、表示装置において、自発光型のディスプレイの画面の一部領域だけに日射が当たる状況にて、日射領域および非日射領域の見易さを両立しつつも、消費電力の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の表示装置は、自発光素子で構成された複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、太陽の位置情報に基づいて、ディスプレイに対する日射方向を推定する方向推定部(12c2)と、ディスプレイのうち画像表示がされる面を表示面(20a)とし、表示面のうち日射されている領域を日射領域とし、表示面の残部を非日射領域とし、表示面における日射領域および非日射領域の分布を示すデータを日射領域データとして、複数の日射領域データからなるデータ群が格納されたデータベース部(12c4)と、推定された日射方向に基づいてデータ群から異なる複数の日射領域データを選択し、選択された複数の日射領域データにおける日射領域の変化方向をベクトルとして算出すると共に、算出したベクトルに基づいて、推定された日射方向に対応する日射領域を推定する日射推定部(12c)と、日射推定部の推定結果に基づいて、日射領域の輝度を非日射領域の輝度よりも高くする、または非日射領域の輝度を低くする、の少なくとも一方の輝度調整を行う輝度制御部(12e)と、ディスプレイにて、輝度制御部による輝度調整が行われた画像表示を行わせるための映像出力信号を出力する映像出力部(12f)と、を備える。
【0007】
この表示装置は、データベース部に複数の日射領域データからなるデータ群が格納されており、太陽位置に基づいてディスプレイに対する日射方向を推定した後、推定した日射方向に基づいて当該データ群から複数の異なる日射領域データを選択する。また、この表示装置は、選択した複数の日射領域データにおける日射領域の変化方向をベクトルとして算出し、算出したベクトルに基づいて推定した日射方向に対応する日射領域を推定する。
その後、この表示装置は、推定した日射領域に基づき、日射領域の輝度を非日射領域の輝度よりも高くする、または非日射領域の輝度を低くする、の少なくとも一方の輝度制御を実行する。
そのため、ディスプレイの一部のみに日射が当たる状況において、日射領域のみの輝度を高くでき、表示画面の見易さを向上できる一方で、ディスプレイ全体の輝度を高くする必要がなくなり、消費電量の増大を抑制できる。また、非日射領域の輝度を低くする制御を実行することによっても、消費電力の増大を抑制できる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る表示システムの一例を示すブロック図である。
【
図5】パネル取付角のうち高度の定義の一例を示す図である。
【
図6】パネル取付角のうち方位の定義の一例を示す図である。
【
図9】ベクトル算出部によるオプティカルフローの算出を説明するための説明図である。
【
図10】オプティカルフローおよび日射領域データに基づく新たな日射領域データの生成を説明するための説明図である。
【
図11】比較例における日射領域データの一例を示す図である。
【
図12】比較例における日射領域データの他の一例を示す図である。
【
図13】比較例の日射領域データにおける特徴点について説明するための説明図である。
【
図14】比較例における特徴点に基づく新たな日射領域データの生成を示す図である。
【
図15】実施形態に係る表示システムにおける輝度制御の一例を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態に係る表示システムの第1の変形例を示すブロック図である。
【
図17】実施形態に係る表示システムの第2の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の表示装置が適用されたOLED表示システムについて説明する。本実施形態では、OLED表示システムが自動車などの車両用とされた車載用表示システムである場合を代表例として説明するが、勿論、他の用途にも適用され得る。なお、OLED表示システムは、「有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示システム」とも、「EL表示システム」とも称され得る。
【0012】
〔基本構成〕
本実施形態のOLED表示システムは、例えば
図1に示すように、描画用コントローラ10と、ディスプレイ20、センサ部30、車載機器40を有した構成とされている。
【0013】
描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御する表示装置に相当するものであり、センサ部30からの検出信号や車載機器40から伝えられる各種信号に基づいてディスプレイ20での画像表示を制御する。描画用コントローラ10とディスプレイ20やセンサ部30とは直接的に接続配線を介して接続され、描画用コントローラ10と車載機器40とは車載用通信バス(以下、車内LAN(Local Area Network))50を通じて接続されている。このため、描画用コントローラ10には、直接もしくは車内LAN50を通じてセンサ部30からの検出信号や車載機器40からの各種信号が入力されるようになっている。なお、この描画用コントローラ10の詳細構成については後述する。
【0014】
ディスプレイ20は、例えば、OLED等の自発光素子により構成された複数の画素を有するディスプレイによって構成されており、描画用コントローラ10からの映像出力信号に対応する画像表示を行う。ディスプレイ20は、画像表示を行う表示領域を構成している自発光素子ごと、すなわち画素ごとに、駆動電圧を可変して印加することで、輝度レベルの調整が可能な構成となっている。
【0015】
なお、本明細書では、ディスプレイ20がOLEDディスプレイである場合を代表例として説明するが、OLEDディスプレイ等の自発光型ディスプレイについては公知であるため、ディスプレイ自体の詳細な説明については省略する。また、自発光素子としては、OLEDを代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、無機ELやマイクロLEDなどの他の自発光素子であっても構わない。
【0016】
センサ部30は、ディスプレイ20への日射量を検出するためのものであり、例えば、ディスプレイ20の区画される領域ごとの日射量を検出する。センサ部30は、例えば
図1に示すように、第1照度センサ31、第2照度センサ32および第3照度センサ33の3つの照度センサによって構成されるが、照度センサの数に関しては任意である。照度センサの数が3つである場合には、例えば、ディスプレイ20のうち映像を表示する領域を表示領域として、表示領域を第1領域、第2領域および第3領域の3つに分割し、照度センサ31~33がそれぞれ第1領域~第3領域の1つに関連付けされる。そして、第1照度センサ31によって第1領域、第2照度センサ32によって第2領域、第3照度センサ33によって第3領域、それぞれの照度を検出し、その検出結果を示す検出信号を描画用コントローラ10に伝達する構成とされる。
【0017】
なお、センサ部30が複数の照度センサにより構成される場合、照度センサの配置や表示領域の対応領域については任意であり、上記した例に限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0018】
車載機器40は、映像信号を描画用コントローラ10に入力するための機器や車両情報を描画用コントローラ10に入力するための機器などで構成されている。ここでは、車載機器40として、ナビゲーション装置41、マルチメディア42、空調装置(以下、エアコンという)43、車両ECU(Electronic Control Unit)44が備えられている。ただし、ここで車載機器40として示したのは一例に過ぎず、ここで示した機器以外のものとされていても良い。
【0019】
ナビゲーション装置41は、地図データベースに記憶してある地図情報に基づいて、自車両の現在位置や地図の映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。また、ナビゲーション装置41は、ユーザの操作に基づいて、例えば目的地設定を行うための映像や、車両周辺もしくは目的地周辺の施設や店舗情報に関する映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。さらに、ナビゲーション装置41は、例えば、公知のGPS(Global Positioning System)により車両の緯度、経度、現在時刻、車両が向いている方位に関する情報を取得し、これらの情報を描画用コントローラ10に入力している。
【0020】
マルチメディア42は、文字や画像、動画、音声など、様々な種類・形式のメディアを組み合わせされて複合的に扱うことができるものである。メディアは、情報の記録、伝達、保管などを行う装置、媒体であり、車両においてはテレビ放送局、動画サイトなどの表示画像とする映像の提供媒体、もしくは、動画などを記録したUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体等が該当する。マルチメディア42は、それらメディアからの映像信号を無線通信もしくはUSBケーブルなどの通信バスを通じて描画用コントローラ10に入力する。
【0021】
エアコン43は、車両における空調制御を行うものであり、その制御部に相当するエアコンECUからのエアコン制御に関する各種情報を描画用コントローラ10に入力する。例えば、エアコン43のモード選択に応じた制御信号が描画用コントローラ10に入力される。
【0022】
車両ECU44は、各種車両に関する情報を取得し、その情報を描画用コントローラ10に入力する。例えば、車両ECU44は、車両の傾斜角度、つまり坂道などによる車両の傾きなどの車両状態を示す情報を描画用コントローラ10に入力している。なお、上記したように、本実施形態では、ナビゲーション装置41から緯度および経度、現在時刻、車両が向いている方位の情報を描画用コントローラ10に入力しているが、車両ECU44でこれらの情報を扱っている場合もある。その場合には、これらの情報を車両ECU44から描画用コントローラ10に入力しても良い。
【0023】
以上が、OLED表示システムの基本的な構成である。
【0024】
〔描画用コントローラ〕
続いて、描画用コントローラ10の詳細構成について説明する。
【0025】
上記したように、描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御するものであり、それを実現するための機能部として、例えば、通信部11、制御部12、外部記憶装置13を有した構成とされている。
【0026】
通信部11は、車内LAN50を通じて車載機器40からの情報を取得する部分である。車載機器40から車内LAN50に伝えられている信号や情報については、通信部11にて取得される。
図1では、ナビゲーション装置41やマルチメディア42について、情報や映像信号を描画用コントローラ10に対して直接入力できる取得経路と、通信部11を通じて入力できる取得経路を示した。このように、車載機器40からの情報や映像信号の取得経路については任意であり、情報や映像信号が描画用コントローラ10に直接入力されても良いし、車内LAN50からこの通信部11を通じて入力されても良い。
【0027】
制御部12は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。制御部12は、外部記憶装置13に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することで、車載機器40から伝えられる映像信号や情報に基づいてディスプレイ20での表示画像の映像出力を行う。また、ここでは制御部12は、センサ部30からの検出信号を入力し、その検出信号に基づいてディスプレイ20の各領域の輝度レベルの調整も行っている。具体的には、制御部12は、映像入力/結合部12a、描画部12b、日射推定部12c、照度取得部12d、輝度制御部12eおよび映像出力部12fを有した構成とされている。
【0028】
映像入力/結合部12aは、車載機器40から直接もしくは車内LAN50を通じて映像信号が入力され、その映像信号が示す画像データを輝度制御部12eに出力する。また、映像入力/結合部12aは、描画部12bで描画された画像データがある場合、それを入力して映像信号が示す画像データと結合し、結合後の画像データを輝度制御部12eに出力する。
【0029】
描画部12bは、通信部11が取得した、エアコン43から伝えられるエアコン制御に関する各種情報や、車両ECU44から伝えられる各種車両に関する情報などを入力し、その情報をディスプレイ20に描画するための画像データを生成する。
【0030】
日射推定部12cは、太陽の位置情報、ディスプレイ20の設置状態および自車両の姿勢情報に基づいて、ディスプレイ20のうち日射されている領域となる日射領域を推定し、その推定結果を輝度制御部12eに伝える。日射推定部12cの詳細については後述する。
【0031】
照度取得部12dは、センサ部30を構成する照度センサ31~33からの出力信号が入力され、ディスプレイ20が設置された環境の照度である「環境照度」を取得する。照度取得部12dは、例えば、環境照度に応じた電気信号を照度情報として輝度制御部12eに出力する。
【0032】
輝度制御部12eは、映像入力/結合部12aから入力される画像データに対して、ディスプレイ20を構成する画素群のうち日射領域に位置する画素群(以下、便宜的に「日射画素群」という)の輝度調整を行い、そのデータを映像出力部12fに出力する。輝度制御部12eは、例えば、日射推定部12cにより推定された日射領域に基づいて、輝度制御の対象となる日射画素群を決定すると共に、照度取得部12dから得られる環境照度に基づいて日射画素群の設定輝度を高くした画像データを生成する。そして、輝度制御部12eは、例えば、日射画素群の設定輝度を調整した画像データを映像出力部12fに出力する。
【0033】
なお、輝度制御部12eによる日射領域についての輝度調整は、ディスプレイ20の表示画像のうち日射領域の部分の見易さが向上すればよく、日射画素群の一部のみに実行されてもよいし、日射画素群の全部に実行されてもよい。例えば、輝度制御部12eは、表示画像が自車両の外部を撮像したものである、といったように日射領域の全域の見易さ向上が好ましい場合には日射画素群のすべての輝度を高くする調整を実行しうる。また、輝度制御部12eは、例えば、表示画像がテキスト等の情報部分と画面の背景等の非情報部分とによりなる、といったように日射領域の一部のみの見易さ向上が好ましい場合には、日射画素群のうち情報部分を表示する部分のみ輝度調整を実行しうる。後者の場合、背景部分の輝度レベルを維持または低下させつつ、情報部分の輝度レベルを向上させることで、コントラストが大きくなり、より見易い表示画像となる効果も期待される。
【0034】
一方で、輝度制御部12eは、非日射領域における見易さが変わらない範囲内で、非日射領域に位置する画素群(以下「非日射画素群」という)の輝度を下げる輝度制御を実行してもよい。例えば、輝度制御部12eは、非日射画素群のうち情報部分を表示する画素群の輝度と、背景部分を表示する画素群の輝度とのコントラスト比を所定の範囲内に保ちつつ、ユーザが視認可能な範囲内で非日射画素群の輝度を下げる制御を実行してもよい。これにより、非日射領域の輝度調整ついては、非日射領域の見易さを保ったまま、消費電力を低減する効果が得られる。
【0035】
このように、輝度制御部12eは、日射画素群の一部または全部の輝度調整、または非日射画素群の輝度調整の少なくとも一方を実行する構成とされうる。そのため、輝度制御部12eは、日射画素群の輝度を高くしつつ、非日射画素群の輝度を低くする制御を実行してもよい。
【0036】
映像出力部12fは、輝度制御部12eから伝えられる輝度調整後の画像データをディスプレイ20で表示させるべく、映像出力信号を出力する。
【0037】
外部記憶装置13は、制御部12で実行する各種プログラムや制御部12から伝えられる各種データなどを記憶しており、制御部12によるプログラムの読み出しやデータの書き込みが可能となっている。なお、ここでは非遷移有形記録媒体として外部記憶装置13を挙げ、制御部12とは別の構成としたが、制御部12内のROMやRAMとしても良い。
【0038】
以上が、描画用コントローラ10の基本的な構成である。
【0039】
〔日射推定部〕
次に、日射推定部12cの構成について、
図2~
図10を参照して説明する。
【0040】
図5、
図6では、ディスプレイ20の向きと自車両Vの向きとの関係を分かり易くするため、ディスプレイ20および自車両Vの両方を示すと共に、便宜的に、自車両Vの大きさをディスプレイ20よりも小さくしている。
【0041】
日射推定部12cは、例えば
図2に示すように、位置算出部12c1と、方向推定部12c2と、ベクトル算出部12c3と、データベース部12c4とを有してなる。
【0042】
位置算出部12c1は、例えば、ナビゲーション装置41から自車両が位置する地点の緯度の車両位置情報、並びに日時情報に基づいて、太陽の位置を算出する。具体的には、位置算出部12c1は、例えば、車載機器40から取得した上記の情報に基づいて、
図3に示す自車両Vに対する太陽の高度角θ
1、および
図4に示す自車両Vに対する太陽の方位角φ
1を算出する。
【0043】
なお、高度角θ1および方位角φ1は、例えば、自車両Vの地点の緯度を指定し、太陽赤緯および時角を用いて球面三角法の公式により算出する、といった公知の方法により得られる。位置算出部12c1は、上記した公知の方法等により、高度角θ1および方位角φ1を太陽の位置として算出する。なお、太陽赤緯と時角については、例えば、松本の式、赤坂の式などの公知の方法により算出することが可能である。
【0044】
高度角θ
1は、例えば、
図3に示すように、ディスプレイ20が搭載された自車両Vが位置する地平面を基準(0°)とし、自車両Vと太陽とを結ぶ仮想直線と地平面とのなす角度のうち鋭角のものとして定義されている。高度角θ
1は、例えば、太陽が自車両Vよりも上方に位置する場合を正とされ、自車両Vよりも下方(地面側)に位置する場合を負とされ、-90°から90°の範囲内の値となる。
【0045】
方位角φ
1は、例えば、
図4に示すように、自車両Vを上面視した状況において、自車両Vの進行方向を基準(0°)として、自車両Vと太陽とを繋ぐ第1の仮想直線と、当該基準の位置と自車両Vとを繋ぐ第2の仮想直線とのなす角度として定義されている。方位角φ
1は、例えば、自車両Vの右方向が90°、自車両Vの後ろ方向が180°、自車両Vの左方向が270°といった具合に、上面視した状況において時計回りを正として定義され、0°から360°の範囲内の値となる。
【0046】
なお、「自車両Vの進行方向」とは、自車両Vの全長方向に沿った方向であって、車室側からフロントガラス側に向かう方向を意味する。「自車両Vの後ろ方向」とは、進行方向とは逆方向を意味する。「自車両Vの右方向」および「自車両Vの左方向」とは、それぞれ、自車両Vの車幅方向に沿った方向であって、進行方向を向いた状態における右方向および左方向を意味する。以下における「進行方向」、「後ろ方向」、「右方向」および「左方向」は、上記の方向を意味する。
【0047】
位置算出部12c1は、例えば、上記の定義に従って算出した高度角θ1および方位角φ1を太陽位置情報として、当該情報を方向推定部12c2に出力する。
【0048】
方向推定部12c2は、太陽位置情報と、自車両Vに対するディスプレイ20の搭載情報と、自車両Vの車両姿勢情報とに基づいて、ディスプレイ20の表示面20aに対する日射方向を推定する。ディスプレイ20の搭載情報とは、例えば
図5および
図6に示す自車両Vに対するディスプレイ20の取付角度であるパネル取付角θ
2、φ
2である。車両姿勢情報とは、例えば
図7に示すように、自車両Vのヨー、ロール、ピッチの車両姿勢のうちヨーに対応する角度であって、自車両Vの進行方向が指し示す方向である車両角度φ
3である。
【0049】
パネル取付角θ
2は、例えば
図5に示すように、側面視にて、自車両Vに取り付けられたディスプレイ20の表示面20aに対する法線方向が差し示す方向として定義されている。例えば、パネル取付角θ
2は、側面視にて、自車両Vの後ろ方向を基準(0°)とし、自車両Vの上側を正とし、自車両Vの下側すなわち地平面側を負として、-180°から180°の範囲内の値とされる。パネル取付角θ
2は、太陽の高度角θ
1に対応している。
【0050】
パネル取付角φ
2は、例えば
図6に示すように、上面視にて、自車両Vに取り付けられたディスプレイ20の表示面20aに対する法線方向が差し示す方向として定義されている。例えば、パネル取付角θ2は、側面視にて、自車両Vの後ろ方向を基準(0°)とし、自車両Vの左方向を正とし、自車両Vの右方向を負として、-180°から180°の範囲内の値とされる。パネル取付角φ
2は、太陽の方位角φ
1に対応している。
【0051】
パネル取付角θ2、φ2は、ディスプレイ20の搭載状態に基づいて予め設定されており、外部記憶装置13あるいは制御部12内の図示しないROMやRAMなどの記憶媒体にデータとして格納されている。
【0052】
車両角度φ
3は、例えば
図7に示すように、上面視にて、自車両Vの進行方向が指し示す方向として定義されている。車両角度φ3は、例えば、北を基準(0°)とし、東が90°、南が180°、西が270°とされ、0°から360°の範囲内の値とされる。車両角度φ
3は、太陽の方位角φ
1およびパネル取付角φ
2に対応している。車両角度φ
3は、例えば、自車両Vに搭載された図示しないジャイロセンサ等により取得される。
【0053】
方向推定部12c2は、例えば、上記の各角度に基づいて、ディスプレイ20の表示面20aに対する日射方向として、太陽の方位方向の角度に対応するパネル入射角φaと、太陽の高度方向の角度に対応するパネル入射角θaとを算出する。
【0054】
パネル入射角θ
aは、例えば、
図5に示すパネル取付角θ
2と同様の定義とされ、-180°から180°の範囲内の値とされる。パネル入射角θ
aは、ディスプレイ20の表示面20aを基準とする日射方向であるため、太陽の高度角θ
1からパネル取付角θ
2を差し引くことで算出される。なお、太陽の高度角θ
1からパネル取付角θ
2を差し引いた算出値が-180°から180°の範囲から外れる場合には、例えば、360°の加算または減算の処理をすることで、当該範囲内のパネル入射角θ
aを算出可能である。
【0055】
パネル入射角φ
aは、例えば、
図6に示すパネル取付角φ
2と同様の定義とされ、-180°から180°の範囲内の値とされる。パネル入射角φ
aは、ディスプレイ20の表示面20aを基準とする日射方向であるため、太陽の方位角φ
1からパネル取付角φ
2および車両角度φ
3を考慮した値を差し引くことで算出される。車両角度φ
3を考慮した値とは、自車両Vの進行方向に対するディスプレイ20の表示面20aの向きを差し引いた値であり、例えば、ディスプレイ20の表示面20aが自車両Vの後ろ方向を向く場合には「φ
3-180°」となる。また、パネル入射角φ
aについても、パネル入射角θ
aの算出と同様に、必要に応じて、例えば720°あるいは360°の加算または減算の処理をすることで、上記範囲内の値として算出される。
【0056】
なお、パネル入射角θa、φaを-180°から180°の範囲内にする演算方法については、上記の方法に限定されるものではなく、180で除算し、余りを算出する方法であってもよく、適宜変更されてもよい。また、上記した高度角θ1、方位角φ1、パネル取付角θ2、φ2、車両角度φ3およびパネル入射角θa、φaの定義や数値範囲、数値調整の方法については、あくまで一例であり、適宜変更される。
【0057】
方向推定部12c2は、算出したパネル入射角θa、φaを日射方向として推定し、算出結果に対応する信号をベクトル算出部12c3に出力する。
【0058】
ベクトル算出部12c3は、方向推定部12c2から取得した日射方向の推定結果に基づき、データベース部12c4から当該推定結果に対応する日射領域データを少なくとも2つ選択する。
【0059】
ここで、日射領域データは、例えば
図8に示すように、ディスプレイ20の表示面20aのうち日射が当たる領域である日射領域と、残部の領域である非日射領域との分布を示すデータである。日射領域データは、例えば、日射領域に対応する白、および非日射領域に対応する黒の二値化された画像形式のデータとされ、ディスプレイ20の表示面20aにおける座標と関連付けされている。つまり、日射領域データのうち日射領域に関連付けられた領域に位置する画素群が日射画素群であり、輝度制御部12eによる輝度制御が実行される。日射領域データは、例えば、異なるパネル入射角θ
a、φ
aに対応して1つずつ予め作成されており、データベース部12c4に格納されている。日射領域データは、例えば、ディスプレイ20が搭載される自車両Vの3Dデータに基づいて、光学シミュレーションソフトにより太陽位置およびパネル取付角、すなわちパネル入射角θ
a、φ
aを適宜設定することで作成される。
【0060】
なお、日射領域データは、例えばパネル入射角θa、φaそれぞれ5°刻みで作成されるが、これに限定されず、CPUの処理速度やデータベース部12c4の容量等に応じて、2.5°刻みや10°刻みで作成されてもよく、そのデータ数については任意である。これにより、日射領域データを自車両Vに搭載される車載メモリに応じたデータ数に調整することができ、様々な車種に対応可能なOLED表示システムとなる。また、日射領域データは、画像形式の電子データに限定されるものではなく、二値化された画像を構成可能なCSV(comma separated values)ファイルなどの任意の形式の電子データであってもよい。
【0061】
本明細書では、パネル入射角θa、φaそれぞれ5°刻みで日射領域データが画像データとして予め作成されており、これらのデータ群がデータベース部12c4に格納されている場合を代表例として説明する。
【0062】
ベクトル算出部12c3は、方向推定部12c2により推定された日射方向に基づいて、データベース部12c4に格納された複数の日射領域データからなるデータ群から、当該日射方向に近く、かつ異なる複数の日射領域データを選択する。ベクトル算出部12c3は、選択した複数の日射領域データを比較し、日射領域の変化度合いをベクトルとして算出し、推定された日射方向(パネル入射角θa、φa)に対応する日射領域データを生成する。
【0063】
以下、説明の簡便化のため、ベクトル算出部12c3により選択された日射領域データを「選択データ」と称し、方向推定部12c2により推定されたパネル入射角を「推定入射角」と称する。また、パネル入射角または推定入射角のθa、φaがそれぞれα°、β°である場合を、パネル入射角(α°、β°)または推定入射角(α°、β°)、あるいは単に(α°、β°)と称する。
【0064】
具体的には、例えば、方向推定部12c2による推定入射角が(35.5°、76°)の場合、ベクトル算出部12c3は、パネル入射角(35°、75°)、(35°、80°)、(40°、75°)、(40°、80°)の4つの日射領域データを選択する。続いて、ベクトル算出部12c3は、例えば、上記の4つの選択データからパネル入射角θaまたはφaが同一の2つをさらに選択し、2つの日射領域データを比較し、θa、φaの変化量に対応する日射領域の変化方向および変化量をベクトルとして算出する。
【0065】
以下、説明の簡便化のため、「θa、φaの変化量に対する日射領域の変化方向および変化量を示すベクトル」を便宜上、「オプティカルフロー(以下、OF)」と称する。また、複数の異なるOFを区別するため、便宜上、OF1、OF2、・・・、OFn(n:1以上の整数)と称する。
【0066】
ベクトル算出部12c3は、例えば、
図9に示すように、パネル入射角(35°、75°)、(40°、75°)の2つのデータを選択し、パネル入射角θ
a、φ
aの変化量に対する日射領域の変化方向・変化量をOF1として算出する。例えば、OF1は、
図9の矢印で示すように、日射領域データにおける日射領域のうち外郭の座標が変化する複数の部分について、その変化方向および変化量がベクトルとして算出されたものであって、これらのベクトルが集合した関数データである。そして、ベクトル算出部12c3は、例えば、パネル入射角(35°、75°)の日射領域データとOF1とに基づいて、
図10に示すように、パネル入射角(35.5°、75°)に対応する日射領域データを生成する。
【0067】
続けて、ベクトル算出部12c3は、パネル入射角(35°、80°)、(40°、80°)の2つのデータを選択し、上記と同様に、これらのデータに基づくOF2を算出する。そして、ベクトル算出部12c3は、例えば、パネル入射角(35°、80°)の日射領域データとOF2とに基づいて、パネル入射角(35.5°、80°)に対応する日射領域データを生成する。
【0068】
次いで、ベクトル算出部12c3は、生成したパネル入射角(35.5°、75°)、(35.5°、80°)の日射領域データに基づいてOF3を算出する。その後、ベクトル算出部12c3は、パネル入射角(35.5°、75°)の日射領域データとOF3とに基づいて、パネル入射角(35.5°、76°)に対応する日射領域データを生成する。
【0069】
最後に、ベクトル算出部12c3は、生成したパネル入射角(35.5°、76°)に対応する日射領域データに基づいて日射領域を推定し、日射領域情報として輝度制御部12eに出力する。
【0070】
データベース部12c4は、例えば、パネル入射角θ
a、φ
aごとの異なる複数の日射領域データからなるデータ群を格納しており、ROMやRAMなどの任意の記憶媒体である。データベース部12c4は、ベクトル算出部12c3が生成した新規の日射領域データを記憶してもよいし、そうでなくてもよい。データベース部12c4は、例えば
図2に示すように、日射推定部12cの構成要素であるが、これに限定されるものではなく、制御部12を構成する他の記憶媒体、あるいは外部記憶装置13であってもよい。
【0071】
以上が、日射推定部12cの基本的な構成である。
【0072】
なお、OFについては、例えば、Lucas-Kanade法やFarneback法などの公知の方法により算出可能である。Lucas-Kanade法は、非特許文献B.D.Lucas and T.Kanade: An Iterative Image Registration Technique with an Application to Stereo Vision, Proc. 7th International Conference on Artificial Intelligence, pp.674-679,1981.に記載されている。Farneback法は、非特許文献Farneback, G. “Two-Frame Motion Estimation Based on Polynomial Expansion.” In Proceedings of the 13th Scandinavian Conference on Image Analysis, 363-370. Halmstad, Sweden:SCIA, 2003.に記載されている。OFの算出方法については、上記の方法に限定されるものではなく、他の公知の方法であってもよい。
【0073】
〔OF算出による効果〕
次に、ベクトル算出部12c3によるOF算出の効果について、OF算出によらない日射領域の推定の比較例と対比して説明する。
【0074】
まず、比較例の日射領域の推定の一例について、
図11~
図14を参照して説明する。
【0075】
OF算出を行わない場合、比較例の日射領域データは、例えば
図11や
図12に示すように、日射領域と非日射領域との境界に位置する複数の座標点のうち一部の代表点が「特徴点」として設定されている必要がある。この特徴点は、例えば、ディスプレイ20が搭載された自車両Vの構造物に関連付けされており、パネル入射角に応じて変化する。例えば、
図11に示す特徴点のうち破線で囲んだ2つの特徴点は、
図12の特徴点のうち破線で囲んだ2つの特徴点に対応しており、パネル入射角に応じてその位置が変化する。また、日射領域データの特徴点は、例えば
図13に示すように、それぞれパネル入射角の異なる日射領域データのうち当該特徴点に対応する1つの特徴点に関連付けされている。このとき、選択された2つの日射領域データは、推定されたパネル入射角とは異なるデータであるため、その特徴点と、推定されたパネル入射角に対応する特徴点とは異なる座標となっている。
【0076】
比較例の日射推定部12cは、推定されたパネル入射角に対応する特徴点を「推定特徴点」として、2つの選択データの特徴点に基づいて、その間に位置する推定特徴点を算出し、日射領域の補間を行う構成とされる。比較例の日射推定部12cは、例えば
図14に示すように、パネル入射角の異なる2つの選択データおよび当該選択データの特徴点に基づき、推定されたパネル入射角における日射領域データを生成する。比較例の日射推定部12cは、例えば、パネル入射角(35°、75°)の選択データの特徴点とパネル入射角(40°、75°)の特徴点とに基づき、パネル入射角(35.5°、75°)における推定特徴点の座標を算出する。そして、比較例の日射推定部12cは、算出した推定特徴点の座標に基づいて、非日射領域の外郭を補正し、パネル入射角(35.5°、75°)に対応する日射領域データを生成する。比較例の日射推定部12cは、このような処理を繰り返すことで、最終的にパネル入射角(35.5°、76°)に対応する日射領域データを生成し、推定入射角(35.5°、76°)に対応する日射領域情報として、輝度制御部12eにデータ出力する。
【0077】
比較例の場合であっても、ディスプレイ20における日射領域を推定することが可能であるが、上記した特徴点を異なる日射領域データごとに事前にデータベース部12c4等に記憶させつつ、対応する特徴点同士を関連付けしておく必要がある。また、上記した特徴点は、自車両Vを構成する構成部品の形状や配置に依存するため、自車両Vの車種に応じて変更する必要がある。そのため、比較例の方法では、事前に作成する必要があるデータの数や容量が膨大になり、事前準備に時間を要するのに加えて、特徴点を用いた新たな日射領域データの生成処理が複雑になり、システムに大容量や必要以上の処理速度が要求されてしまう。
【0078】
これに対して、実施形態に係るOLED表示システムは、日射推定部12cが異なる日射領域データの組み合わせに基づいてOF算出を行い、既存の日射領域データおよびOFにより新たな日射領域データを生成する。この場合、上記した特徴点やパネル入射角θa、φaごとに対応する特徴点の関連付けが不要となり、データベース部12c4に記憶させるデータ数が比較例に比べて大幅に少なくなる。また、2つの異なる日射領域データに基づいてOF算出および新たな日射領域データの生成が可能であるため、日射推定部12cにおける処理が比較例に比べて簡素化される。
【0079】
したがって、OF算出に基づく日射領域の推定は、事前に準備するデータ数が少なく、処理が簡素化されるため、システムに求められる容量や処理速度等の必要性能を必要以上に確保する必要がないとの効果が得られる。
【0080】
〔輝度制御〕
次に、実施形態に係るOLED表示システムにおける輝度制御処理の一例について、
図15を参照して説明する。
【0081】
OLED表示システムは、例えば、ディスプレイ20がオン状態になるなどの所定の開始条件を満たした場合、
図15に示す制御フローを実行する。
【0082】
ステップS100では、制御部12は、センサ部30の検出信号を取得する。これにより、第1照度センサ31、第2照度センサ32および第3照度センサ33それぞれの検出信号が取得され、ディスプレイ20が設置された環境照度が検出される。
【0083】
続いて、制御部12は、ステップS110に処理を進め、車載機器40から自車両Vの位置情報および日時情報を取得し、上記した方法により太陽の高度角θ1および方位角φ1を算出する。
【0084】
次いで、制御部12は、ステップS120に処理を進め、車載機器40から自車両Vの姿勢情報(車両角度φ3)を取得し、パネル取付角θ2、φ2、並びに太陽の高度角θ1および方位角φ1に基づいて、パネル入射角θa、φaを算出する。これにより、ディスプレイ20の表示面20aに対する日射方向が推定される。
【0085】
そして、制御部12は、ステップS130に処理を進め、ステップS120にて推定した日射方向に基づき、データベース部12c4に格納された複数の日射領域データから推定された日射方向に近い複数の日射領域データを選択する。ステップS130では、制御部12は、上記の方法により、複数の選択データによりOF算出および推定した日射方向に対応する新規の日射領域データを生成し、当該新規の日射領域データに基づいて日射領域を推定する。これにより、ディスプレイ20の表示面20aにおける日射領域が推定される。
【0086】
続いて、制御部12は、ステップS140に処理を進め、輝度制御部12eによる輝度制御を実行する。具体的には、輝度制御部12eは、ステップS130で選択された日射領域データのうち日射領域に関連付けられた画素群、すなわち日射画素群を輝度制御の対象として設定する。そして、輝度制御部12eは、照度取得部12dから出力された環境照度に基づいて、環境照度における見易さを向上させるため、日射画素群の輝度を高くする処理を行う。
【0087】
なお、輝度制御部12eは、日射画素群の輝度を単に高くする処理だけでなく、日射画素群のうち背景部分を表示する画素群については輝度を下げる処理や非日射画素群の輝度を下げる処理を実行してもよい。つまり、輝度制御部12eは、ディスプレイ20の表示面の一部または全部に日射が当たっている状況において、表示画像をユーザが見易い状態にするため、日射画素群の輝度を上げるだけでなく、非日射画素群の輝度を下げる制御も実行し得る。また、輝度制御部12eは、日射画素群の輝度を維持する場合において、非日射画素群の輝度を下げる制御のみを実行してもよい。
【0088】
最後に、映像出力部12fは、輝度制御部12eからの出力信号に基づいて、輝度制御後の映像信号をディスプレイ20に出力する。その後、制御部12は、処理をステップS100に戻す。
【0089】
これにより、ディスプレイ20は、表示面20aの一部に日射が当たっている状況において、画素レベルで輝度制御がなされ、表示画像のうち日射領域に位置する部分の輝度が大きくなり、表示画像の見易さが向上する。また、非日射領域についての輝度制御が実行された場合には、日射領域に加えて、非日射領域の見易さを保ちつつ、より消費電力を低減することができる。
【0090】
なお、上記の輝度制御は、あくまで一例であり、ステップS100の処理がステップS130の後、あるいはステップS130と並行して行われてもよく、その処理の順番については可能な範囲内で適宜変更されてもよい。
【0091】
本実施形態によれば、自車両Vの位置情報、走行方向、日時情報およびディスプレイ20の搭載情報に基づいて、ディスプレイ20の日射方向を推定した後、推定した日射方向に基づいて日射領域の推定および輝度制御を実行するOLED表示システムとなる。
【0092】
これにより、ディスプレイ20を構成する画素群のうち日射領域に位置する日射画素群を高精度で推定でき、ひいては日射画素群の一部または全部を選択的に輝度向上させることが可能であるため、表示画像の見易さが向上する。また、見易さ向上のためにディスプレイ20の全体の輝度レベルを高くする必要がなくなり、日射画素群の輝度レベルを選択的に高くすることにより、見易さ向上に伴う消費電力の増大を抑制できる。さらに、OF算出により日射領域の推定を行うため、データベース部12c4に予め格納する日射領域データの数を少なくでき、かつ当該推定の処理が簡素化できるため、必要な記憶容量や処理速度を抑えることが可能となる。
【0093】
なお、上記では、ディスプレイ20の一部のみが日射領域となっている場合の輝度調整を例に挙げたが、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合にも、それに対応する輝度調整が行われる。例えば、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合、日射量の推定結果に基づき、ディスプレイ20の全領域のうちの輝度調整が必要な表示内容の場所について画素レベルでの輝度調整を行う。また、文字表示の輝度レベルについては、推定した日射量に対応した高さとする。このように、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合にも、画素レベルで輝度レベルを調整し、高くする部分を限定することで、消費電力の増加を抑制することが可能になる。
逆に、制御部12は、ディスプレイ20の全領域が非日射領域となる場合には、非日射領域における見易さを維持しつつ、非日射領域の輝度を下げる輝度制御を実行してもよい。
【0094】
(第1の変形例)
実施形態に係るOLED表示システムは、例えば
図16に示すように、センサ部30を有さず、照度取得部12dに代わって、照度推定部12gを有する構成であってもよい。
【0095】
この場合、車載機器40は、ディスプレイ20が設置された自車両の位置(地域)における天候情報を取得可能な通信機器45が含まれている。通信機器45は、例えば、無線LANなどにより、インターネット経由で天候情報を取得し、車内LAN50を介して当該天候情報を通信部11に出力する。
【0096】
照度推定部12gは、取得した天候情報に基づいて、環境照度を推定する。本変形例では、例えば、時刻に対応する基準照度のデータが外部記憶装置13等に格納されており、照度推定部12gは、天候情報と基準照度とに基づいて環境照度を推定する。具体的には、例えば、照度推定部12gは、天候が晴れの場合には基準照度の100%、曇りの場合には基準照度の70%、雨の場合には基準照度の30%を環境照度として推定する。
【0097】
なお、本変形例における輝度制御処理は、照度取得部12dによる環境照度の取得に代わって、照度推定部12gによる環境照度の推定を実行する点を除き、基本的には上記実施形態と同様である。
【0098】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果が得られるOLED表示システムとなる。また、本変形例では、自車両Vに照度センサ31~33が搭載されていない場合であっても、ディスプレイ20の環境照度を推定でき、ディスプレイ20の輝度制御を実行することが可能である。
【0099】
(第2の変形例)
実施形態に係るOLED表示システムは、例えば
図17に示すように、センサ部30、照度取得部12dに加えて、照度推定部12gを有する構成であってもよい。この場合、OLED表示システムは、センサ部30および照度取得部12dによる環境照度の取得、並びに通信機器45および照度推定部12gによる環境照度の推定のいずれの処理も可能である。
【0100】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果が得られるOLED表示システムとなる。また、本変形例では、環境照度の取得または推定の処理を切り替えることが可能であり、表示システムにおける処理の負荷軽減やフェイルセーフ等の任意の状況に応じて、処理内容を変更することができる。
【0101】
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態に示した表示システムは、本発明の表示システムの一例を示したものであり、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
11・・・通信部、12c・・・日射推定部、12c1・・・位置算出部、
12c2・・・方向推定部、12c4・・・データベース部、12d・・・照度取得部、
12e・・・輝度制御部、12e・・・映像出力部、12f・・・照度推定部、
20・・・ディスプレイ、20a・・・表示面、30・・・照度センサ