IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
  • 特開-表示装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187807
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/10 20060101AFI20221213BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20221213BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20221213BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221213BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
G09G5/36 520P
G09G5/00 550X
B60R11/02 C
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095992
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 鳴暁
【テーマコード(参考)】
3D020
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE03
3D344AA22
3D344AB01
3D344AD01
5C182AA02
5C182AB15
5C182AB25
5C182AC35
5C182BA14
5C182BA25
5C182BA45
5C182BA46
5C182BA47
5C182CA01
5C182CA02
5C182CB44
5C182DA65
5C182DA66
(57)【要約】
【課題】自発光型のディスプレイの一部に日射が当たる状況において、日射領域の見易さを向上させつつ、消費電力の増大を抑制する。
【解決手段】表示装置は、自発光型のディスプレイの輝度制御を実行すると共に、ディスプレイの表示面のうち日射が当たる領域である日射領域を推定する日射推定部を有する。表示装置は、撮像装置から得られるディスプレイの画像データを二値化した二値化画像を生成し、当該二値化画像に基づいてディスプレイの日射領域を推定し、推定された日射領域の輝度を非日射領域の輝度よりも高くする制御を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子で構成された複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、
前記ディスプレイを撮像する撮像部(45)により得られた前記ディスプレイの画像データの二値化処理を行うことにより、前記ディスプレイの表示面のうち日射が当たる領域である日射領域を推定する日射推定部(12c)と、
前記日射推定部の推定結果に基づいて、前記日射領域の輝度を前記表示面のうち日射が当たっていない領域である非日射領域の輝度よりも高くする輝度調整を行う輝度制御部(12e)と、
前記ディスプレイにて、前記輝度制御部による輝度調整が行われた前記画像表示を行わせるための映像出力信号を出力する映像出力部(12f)と、を備える表示装置。
【請求項2】
前記ディスプレイが設置されている環境の照度に応じた電気信号を出力する照度センサ(30)から前記環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度情報に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ディスプレイが設置された地域の天候情報を取得する通信部(11)と、
前記通信部が取得した前記天候情報に基づいて、前記ディスプレイが設置されている環境の照度を推定する照度推定部(12g)と、をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度推定部が推定した前記環境の照度に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ディスプレイが設置された地域の天候情報を取得する通信部(11)と、
前記ディスプレイが設置されている環境の照度に応じた電気信号を出力する照度センサ(30)から前記環境の照度情報を取得する照度取得部(12d)と、
前記通信部が取得した前記天候情報に基づいて、前記環境の照度を推定する照度推定部(12g)と、をさらに備え、
前記輝度制御部は、前記照度取得部が取得した前記環境の照度または前記照度推定部が推定した前記環境の照度に基づいて、前記日射領域の輝度調整を行う、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記日射推定部は、前記画像データの前記二値化処理を実行する画像処理部(12c1)と、データベース部(12c2)と、補正部(12c3)とを有してなり、
前記データベース部は、前記二値化処理がされた前記画像データを人間の目の特性に合わせて補正するための補正用データが格納されており、
前記補正部は、前記補正用データに基づいて前記二値化処理がされた前記画像データを補正し、
前記日射推定部は、前記補正部による補正後の前記画像データに基づいて、前記日射領域を推定する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)などの自発光型のディスプレイの表示を制御可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイの表示面に日射が当たる状況において、ディスプレイの輝度を制御することにより、画面の見易さを向上した表示装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、自動車等の移動体に搭載される車両用表示装置であって、使用時刻や車両の走行位置という条件に基づいて、ディスプレイ画面全体の輝度レベルを自動的に制御する構成となっている。これにより、明るさを検知するためのセンサを設けなくても、表示装置が搭載される周囲環境の明るさに対応した輝度となり、表示画面の見易さが向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-184446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この表示装置は、所定の条件に対応して自動的にディスプレイ画面全体の輝度レベルを制御するため、画面の一部領域のみの輝度レベルの調整を行うことができない。例えば、この表示装置は、ディスプレイ画面の一部領域だけに日射が当たっているような状況であっても、画面全体の輝度レベルを上げてしまい、消費電力が必要以上に増大してしまう。また、このような状況において、表示画面は、日射領域では見易さが向上する一方で、非日射領域では必要以上に明るくなってしまい、却って見易さが低下しうる。特に、OLEDディスプレイのような自発光型のディスプレイを用いる場合には、消費電力の低減の観点から、画面全体の輝度レベルを上げる制御は好ましくない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、表示装置において、自発光型のディスプレイの画面の一部領域だけに日射が当たる状況にて、日射領域および非日射領域の見易さを両立しつつも、消費電力の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の表示装置は、自発光素子で構成された複数の画素を有するディスプレイ(20)における画像表示を制御する表示装置であって、ディスプレイを撮像する撮像部(45)により得られたディスプレイの画像データの二値化処理を行うことにより、ディスプレイの表示面のうち日射が当たる領域である日射領域を推定する日射推定部(12c)と、日射推定部の推定結果に基づいて、日射領域の輝度を表示面のうち日射が当たっていない領域である非日射領域の輝度よりも高くする輝度調整を行う輝度制御部(12e)と、ディスプレイにて、輝度制御部による輝度調整が行われた画像表示を行わせるための映像出力信号を出力する映像出力部(12f)と、を備える。
【0007】
この表示装置は、撮像部によりディスプレイを撮像して得られた画像データの二値化処理により、ディスプレイの日射領域を推定する日射推定部と、日射領域の輝度制御を実行する輝度制御部と、輝度制御後の映像信号を出力する映像出力部とを備える。この表示装置は、ディスプレイを撮像した後に、日射領域を推定し、推定した日射領域の輝度を非日射領域の輝度よりも高くする輝度制御を実行する。そのため、ディスプレイの一部のみに日射が当たる状況において、日射領域のみの輝度を高くでき、表示画面の見易さを向上できる一方で、ディスプレイ全体の輝度を高くする必要がなくなり、消費電量の増大を抑制できる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の表示システムの一例を示すブロック図である。
図2】ディスプレイの表示面を撮像した画像の一例を示す図である。
図3図2の画像の二値化処理により得られる画像の一例を示す図である。
図4】輝度制御における処理動作の一例を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態の表示システムの第1の変形例を示すブロック図である。
図6】第1実施形態の表示システムの第2の変形例を示すブロック図である。
図7】第2実施形態の表示システムに係る日射推定部の一例を示すブロック図である。
図8】二値化処理された画像の補正を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の表示装置が適用されたOLED表示システムについて説明する。本実施形態では、OLED表示システムが自動車などの車両用とされた車載用表示システムである場合を代表例として説明するが、勿論、他の用途にも適用され得る。なお、OLED表示システムは、「有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示システム」とも、「EL表示システム」とも称され得る。
【0012】
〔基本構成〕
本実施形態のOLED表示システムは、例えば図1に示すように、描画用コントローラ10と、ディスプレイ20、センサ部30、車載機器40を有した構成とされている。
【0013】
描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御する表示装置に相当するものであり、センサ部30からの検出信号や車載機器40から伝えられる各種信号に基づいてディスプレイ20での画像表示を制御する。描画用コントローラ10とディスプレイ20やセンサ部30とは直接的に接続配線を介して接続され、描画用コントローラ10と車載機器40とは車載用通信バス(以下、車内LAN(Local Area Network))50を通じて接続されている。このため、描画用コントローラ10には、直接もしくは車内LAN50を通じてセンサ部30からの検出信号や車載機器40からの各種信号が入力されるようになっている。なお、この描画用コントローラ10の詳細構成については後述する。
【0014】
ディスプレイ20は、例えば、OLED等の自発光素子により構成された複数の画素を有するディスプレイによって構成されており、描画用コントローラ10からの映像出力信号に対応する画像表示を行う。ディスプレイ20は、画像表示を行う表示領域を構成している自発光素子ごと、すなわち画素ごとに、駆動電圧を可変して印加することで、輝度レベルの調整が可能な構成となっている。
【0015】
なお、本明細書では、ディスプレイ20がOLEDディスプレイである場合を代表例として説明するが、OLEDディスプレイ等の自発光型ディスプレイについては公知であるため、ディスプレイ自体の詳細な説明については省略する。また、自発光素子としては、OLEDを代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、無機ELやマイクロLEDなどの他の自発光素子であっても構わない。
【0016】
センサ部30は、ディスプレイ20への日射量を検出するためのものであり、例えば、ディスプレイ20の区画される領域ごとの日射量を検出する。センサ部30は、例えば図1に示すように、第1照度センサ31、第2照度センサ32および第3照度センサ33の3つの照度センサによって構成されるが、照度センサの数に関しては任意である。照度センサの数が3つである場合には、例えば、ディスプレイ20のうち映像を表示する領域を表示領域として、表示領域を第1領域、第2領域および第3領域の3つに分割し、照度センサ31~33がそれぞれ第1領域~第3領域の1つに関連付けされる。そして、第1照度センサ31によって第1領域、第2照度センサ32によって第2領域、第3照度センサ33によって第3領域、それぞれの照度を検出し、その検出結果を示す検出信号を描画用コントローラ10に伝達する構成とされる。
【0017】
なお、センサ部30が複数の照度センサにより構成される場合、照度センサの配置や表示領域の対応領域については任意であり、上記した例に限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0018】
車載機器40は、映像信号を描画用コントローラ10に入力するための機器や車両情報を描画用コントローラ10に入力するための機器などで構成されている。ここでは、車載機器40としては、例えば、ナビゲーション装置41、マルチメディア42、空調装置(以下、エアコンという)43、車両ECU(Electronic Control Unit)44、撮像部45が備えられている。ただし、上記の車載機器40は、あくまで一例であり、撮像部45を除き、ここで示した機器以外のもので構成されてもよい。
【0019】
ナビゲーション装置41は、地図データベースに記憶してある地図情報に基づいて、自車両の現在位置や地図の映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。また、ナビゲーション装置41は、ユーザの操作に基づいて、例えば目的地設定を行うための映像や、車両周辺もしくは目的地周辺の施設や店舗情報に関する映像などを示す映像信号を描画用コントローラ10に入力する。さらに、ナビゲーション装置41は、例えば、公知のGPS(Global Positioning System)により車両の緯度、経度、現在時刻、車両が向いている方位に関する情報を取得し、これらの情報を描画用コントローラ10に入力している。
【0020】
マルチメディア42は、文字や画像、動画、音声など、様々な種類・形式のメディアを組み合わせされて複合的に扱うことができるものである。メディアは、情報の記録、伝達、保管などを行う装置、媒体であり、車両においてはテレビ放送局、動画サイトなどの表示画像とする映像の提供媒体、もしくは、動画などを記録したUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体等が該当する。マルチメディア42は、それらメディアからの映像信号を無線通信もしくはUSBケーブルなどの通信バスを通じて描画用コントローラ10に入力する。
【0021】
エアコン43は、車両における空調制御を行うものであり、その制御部に相当するエアコンECUからのエアコン制御に関する各種情報を描画用コントローラ10に入力する。例えば、エアコン43のモード選択に応じた制御信号が描画用コントローラ10に入力される。
【0022】
車両ECU44は、各種車両に関する情報を取得し、その情報を描画用コントローラ10に入力する。例えば、車両ECU44は、車両の傾斜角度、つまり坂道などによる車両の傾きなどの車両状態を示す情報を描画用コントローラ10に入力している。なお、上記したように、本実施形態では、ナビゲーション装置41から緯度および経度、現在時刻、車両が向いている方位の情報を描画用コントローラ10に入力しているが、車両ECU44でこれらの情報を扱っている場合もある。その場合には、これらの情報を車両ECU44から描画用コントローラ10に入力しても良い。
【0023】
撮像部45は、例えば、ディスプレイ20のうち画像を表示する表示面の全域を撮像する任意の撮像装置である。撮像部45は、例えば車載カメラとされ、ディスプレイ20の表示面を撮像可能な任意の位置(車室の天井部分など)に配置される。撮像部45は、例えば図2に示すように、ディスプレイ20の表示面20aを含む所定領域の画像データを生成し、当該画像データを描画用コントローラ10に直接、あるいは車内LAN50を介して出力する。撮像部45により得られる画像データは、日射推定部12cによる日射領域の推定に用いられる。
【0024】
以上が、OLED表示システムの基本的な構成である。
【0025】
〔描画用コントローラ〕
続いて、描画用コントローラ10の詳細構成について説明する。
【0026】
上記したように、描画用コントローラ10は、ディスプレイ20による画像表示を制御するものであり、それを実現するための機能部として、例えば、通信部11、制御部12、外部記憶装置13を有した構成とされている。
【0027】
通信部11は、車内LAN50を通じて車載機器40からの情報を取得する部分である。車載機器40から車内LAN50に伝えられている信号や情報については、通信部11にて取得される。図1では、ナビゲーション装置41やマルチメディア42について、情報や映像信号を描画用コントローラ10に対して直接入力できる取得経路と、通信部11を通じて入力できる取得経路を示した。このように、車載機器40からの情報や映像信号の取得経路については任意であり、情報や映像信号が描画用コントローラ10に直接入力されても良いし、車内LAN50からこの通信部11を通じて入力されても良い。
【0028】
制御部12は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。制御部12は、外部記憶装置13に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することで、車載機器40から伝えられる映像信号や情報に基づいてディスプレイ20での表示画像の映像出力を行う。また、ここでは制御部12は、センサ部30からの検出信号を入力し、その検出信号に基づいてディスプレイ20の各領域の輝度レベルの調整も行っている。具体的には、制御部12は、映像入力/結合部12a、描画部12b、日射推定部12c、照度取得部12d、輝度制御部12eおよび映像出力部12fを有した構成とされている。
【0029】
映像入力/結合部12aは、車載機器40から直接もしくは車内LAN50を通じて映像信号が入力され、その映像信号が示す画像データを輝度制御部12eに出力する。また、映像入力/結合部12aは、描画部12bで描画された画像データがある場合、それを入力して映像信号が示す画像データと結合し、結合後の画像データを輝度制御部12eに出力する。
【0030】
描画部12bは、通信部11が取得した、エアコン43から伝えられるエアコン制御に関する各種情報や、車両ECU44から伝えられる各種車両に関する情報などを入力し、その情報をディスプレイ20に描画するための画像データを生成する。
【0031】
日射推定部12cは、撮像部45により撮像されたディスプレイ20の画像データに基づいて、ディスプレイ20のうち日射が当たっている領域を推定し、その推定結果を輝度制御部12eに伝える。日射推定部12cの詳細については後述する。
【0032】
以下、説明の簡便化のため、ディスプレイ20の表示面のうち日射が当たっている領域を「日射領域」と称し、日射が当たっていない残部を「非日射領域」と称する。
【0033】
照度取得部12dは、センサ部30を構成する照度センサ31~33からの出力信号が入力され、ディスプレイ20が設置された環境の照度である「環境照度」を取得する。照度取得部12dは、例えば、環境照度に応じた電気信号を照度情報として輝度制御部12eに出力する。
【0034】
輝度制御部12eは、映像入力/結合部12aから入力される画像データに対して、ディスプレイ20を構成する画素群のうち日射領域に位置する画素群(以下、便宜的に「日射画素群」という)の輝度調整を行い、そのデータを映像出力部12fに出力する。輝度制御部12eは、例えば、日射推定部12cにより推定された日射領域に基づいて、輝度制御の対象となる日射画素群を決定すると共に、照度取得部12dから得られる環境照度に基づいて日射画素群の設定輝度を高くした画像データを生成する。そして、輝度制御部12eは、例えば、日射画素群の設定輝度を調整した画像データを映像出力部12fに出力する。
【0035】
なお、輝度制御部12eによる輝度調整は、ディスプレイ20の表示画像のうち少なくとも日射領域の部分の見易さが向上すればよく、日射画素群の一部のみに実行されてもよいし、日射画素群の全部に実行されてもよい。例えば、輝度制御部12eは、表示画像が自車両の外部を撮像したものである、といったように日射領域の全域の見易さ向上が好ましい場合には日射画素群のすべての輝度を高くする調整を実行しうる。また、輝度制御部12eは、例えば、表示画像がテキスト等の情報部分と画面の背景等の非情報部分とによりなる、といったように日射領域の一部のみの見易さ向上が好ましい場合には、日射画素群のうち情報部分を表示する部分のみ輝度調整を実行しうる。後者の場合、背景部分の輝度レベルを維持または低下させつつ、情報部分の輝度レベルを向上させることで、コントラストが大きくなり、より見易い表示画像となる効果も期待される。
【0036】
一方で、輝度制御部12eは、非日射領域における見易さが変わらない範囲内で、非日射領域に位置する画素群(以下「非日射画素群」という)の輝度を下げる輝度制御を実行してもよい。例えば、輝度制御部12eは、非日射画素群のうち情報部分を表示する画素群の輝度と、背景部分を表示する画素群の輝度とのコントラスト比を所定の範囲内に保ちつつ、ユーザが視認可能な範囲内で非日射画素群の輝度を下げる制御を実行してもよい。これにより、日射領域の見易さを向上させつつ、非日射領域の見易さを保ったまま、消費電力を低減する効果が得られる。
【0037】
このように、輝度制御部12eは、日射画素群の一部または全部の輝度調整に加えて、非日射画素群の輝度調整を実行する構成とされてもよい。
【0038】
映像出力部12fは、輝度制御部12eから伝えられる輝度調整後の画像データをディスプレイ20で表示させるべく、映像出力信号を出力する。
【0039】
外部記憶装置13は、制御部12で実行する各種プログラムや制御部12から伝えられる各種データなどを記憶しており、制御部12によるプログラムの読み出しやデータの書き込みが可能となっている。なお、ここでは非遷移有形記録媒体として外部記憶装置13を挙げ、制御部12とは別の構成としたが、制御部12内のROMやRAMとしても良い。
【0040】
以上が、描画用コントローラ10の基本的な構成である。
【0041】
〔日射領域の推定〕
次に、日射推定部12cによる日射領域の推定について、図2図3を参照して説明する。
【0042】
図2では、断面を示すものではないが、ディスプレイ20の表示面20aにおける非日射領域を分かり易くするため、非日射領域にハッチングを施している。また、図2では、ディスプレイ20が格子状の枠体21と、各種画像を表示可能な3つの表示面20aとを備える例を示しているが、ディスプレイ20の構成についてはこれに限定されるものではない。
【0043】
日射推定部12cは、撮像部45から図2に示すような表示面20aの画像データを取得する。撮像部45で得られる画像データは、例えばグレースケール形式となっており、画像を構成するピクセル群のうち表示面20aを示す所定範囲のピクセル群がディスプレイ20を構成する自発光型素子によりなる画素群と関連付けされている。
【0044】
日射推定部12cは、撮像部45から取得した表示面20aの画像データを、例えば図3に示すように、白黒の二値化された画像に変換する処理(以下「二値化処理」という)を行う。
【0045】
日射推定部12cにおける二値化処理の手法については、任意であるが、例えば、グレースケール形式の画像データの画素値およびその個数のヒストグラムにおいて分離度が最大となる画素値(閾値)を算出する判別分析法などの公知の方法が用いられる。この判別分析法は、大津の手法、あるいは大津の二値化と称され、例えば、非特許文献「大津, ``判別および最小2乗基準に基づく自動しきい値選定 法,' 電子通信学会論文誌, Vol.J63-D, No.4, pp.349-356, 1980.」などに記載の手法である。二値化処理は、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、いわゆるトライアングルの手法などの他の公知の方法により行われてもよい。トライアングルの手法は、例えば、非特許文献「Zack, G. W., Rogers, W. E. and Latt, S. A., 1977, Automatic Measurement of Sister Chromatid Exchange Frequency, Journal of Histochemistry and Cytochemistry 25 (7), pp. 741-753.」などに記載の手法である。
【0046】
なお、二値化処理は、例えば、OpenCV(Open Source Computer Vision Library) などの画像処理のオープンソース内に上記の公知の手法を関数として実装したものを用いて閾値を算出することで実行可能である。
【0047】
二値化処理された画像における表示面20aのうち白の領域は、日射領域に対応し、黒の領域が非日射領域に対応している。日射推定部12cは、二値化された画像を構成する白のピクセル群のうち表示面20a内に位置するものを日射領域として推定し、その結果を輝度制御部12eに出力する。
【0048】
〔輝度制御〕
次に、実施形態に係るOLED表示システムにおける輝度制御処理の一例について、図4を参照して説明する。
【0049】
OLED表示システムは、例えば、ディスプレイ20および撮像部45がオン状態になるなどの所定の開始条件を満たした場合、図4に示す制御フローを実行する。
【0050】
ステップS100では、制御部12は、センサ部30の検出信号を取得する。これにより、第1照度センサ31、第2照度センサ32および第3照度センサ33それぞれの検出信号が取得され、ディスプレイ20が設置された環境照度が検出される。
【0051】
続いて、制御部12は、ステップS110に処理を進め、撮像部45によりディスプレイ20の表示面を撮像し、表示面の画像データを制御部12に画面情報として出力する。このとき、例えば、制御部12は、撮像部45がディスプレイ20の表示面20aを撮像するタイミングに合わせて、ディスプレイ20に黒画面を表示させる制御を実行することが好ましい。これは、ディスプレイ20を撮像する時に画像表示が行われていると、表示画像も撮像され、当該画像の明るさを含んだ撮像データとなることで、ステップS120における二値化処理の精度が低下することを防ぐためである。
【0052】
なお、撮像部45によるディスプレイ20の撮像周期やこれに合わせた黒画面の表示については、ユーザが知覚できない程度(例えば60Hz以上)であればよく、適宜変更されてもよい。また、黒画像を表示させる制御とは、例えば、ディスプレイ20の全画素を発光させない状態にすることが挙げられるが、全画素を二値化処理における閾値設定に影響が生じない程度の輝度に下げる制御であってもよい。
【0053】
次いで、制御部12は、ステップS120に処理を進め、撮像部45から取得した表示面の画像データについて上記の方法により画像の二値化処理を行う。
【0054】
続くステップS130では、日射推定部12cは、例えば、ステップS120で生成した二値化画像のうち表示面20aに相当する領域における白部分をディスプレイ20の日射領域として推定する。
【0055】
そして、制御部12は、ステップS140に処理を進め、輝度制御部12eによる輝度制御を実行する。具体的には、輝度制御部12eは、ステップS130で推定した日射領域に関連付けられた画素群、すなわち日射画素群を輝度制御の対象として設定する。そして、輝度制御部12eは、照度取得部12dから出力された環境照度に基づいて、環境照度における見易さを向上させるため、日射画素群の輝度を高くする処理を行う。
【0056】
なお、輝度制御部12eは、日射画素群の輝度を単に高くする処理だけでなく、日射画素群のうち背景部分を表示する画素群については輝度を下げる処理や非日射画素群の輝度を下げる処理を実行してもよい。つまり、輝度制御部12eは、ディスプレイ20の表示面の一部または全部に日射が当たっている状況において、表示画像をユーザが見易い状態にするため、日射画素群の輝度を上げるだけでなく、非日射画素群の輝度を下げる制御も実行し得る。
【0057】
最後に、映像出力部12fは、輝度制御部12eからの出力信号に基づいて、輝度制御後の映像信号をディスプレイ20に出力する。その後、制御部12は、処理をステップS100に戻す。
【0058】
これにより、ディスプレイ20は、表示面20aの一部に日射が当たっている状況において、画素レベルで輝度制御がなされ、表示画像のうち日射領域に位置する部分の輝度が大きくなり、表示画像の見易さが向上する。
【0059】
なお、上記の輝度制御は、あくまで一例であり、ステップS100の処理がステップS120の後、あるいはステップS120と並行して行われてもよく、その処理の順番については可能な範囲内で適宜変更されてもよい。
【0060】
本実施形態によれば、撮像部45によりディスプレイ20の表示面を撮像し、当該撮像で得られた画像について画像処理を行い、ディスプレイ20の日射領域を推定し、日射領域の輝度制御を実行するOLED表示システムとなる。
【0061】
これにより、ディスプレイ20を構成する画素群のうち日射領域に位置する日射画素群を高精度で推定でき、ひいては日射画素群の一部または全部を選択的に輝度向上させることが可能であるため、表示画像の見易さが向上する。また、見易さ向上のためにディスプレイ20の全体の輝度レベルを高くする必要がなくなり、日射画素群の輝度レベルを選択的に高くすることにより、見易さ向上に伴う消費電力の増大を抑制できる。さらに、撮像部45によるディスプレイ20の表示面の画像データに基づいて日射領域の推定を行うため、ディスプレイ20が搭載される自車両の構造によらず、が可能となる。
【0062】
なお、上記では、ディスプレイ20の一部のみが日射領域となっている場合の輝度調整を例に挙げたが、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合にも、それに対応する輝度調整が行われる。例えば、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合、日射量の推定結果に基づき、ディスプレイ20の全領域のうちの輝度調整が必要な表示内容の場所について画素レベルでの輝度調整を行う。また、文字表示の輝度レベルについては、推定した日射量に対応した高さとする。このように、ディスプレイ20の全領域が日射領域となる場合にも、画素レベルで輝度レベルを調整し、高くする部分を限定することで、消費電力の増加を抑制することが可能になる。逆に、制御部12は、ディスプレイ20の全領域が非日射領域となる場合には、輝度制御を実行しなくてもよい。
【0063】
(第1の変形例)
第1実施形態のOLED表示システムは、例えば図5に示すように、センサ部30を有さず、照度取得部12dに代わって、照度推定部12gを有する構成であってもよい。
【0064】
この場合、車載機器40は、ディスプレイ20が設置された自車両の位置(地域)における天候情報を取得可能な通信機器46が含まれている。通信機器46は、例えば、無線LANなどにより、インターネット経由で天候情報を取得し、車内LAN50を介して当該天候情報を通信部11に出力する。
【0065】
照度推定部12gは、取得した天候情報に基づいて、環境照度を推定する。本変形例では、例えば、時刻に対応する基準照度のデータが外部記憶装置13等に格納されており、照度推定部12gは、天候情報と基準照度とに基づいて環境照度を推定する。具体的には、例えば、照度推定部12gは、天候が晴れの場合には基準照度の100%、曇りの場合には基準照度の70%、雨の場合には基準照度の30%を環境照度として推定する。
【0066】
なお、本変形例における輝度制御処理は、照度取得部12dによる環境照度の取得に代わって、照度推定部12gによる環境照度の推定を実行する点を除き、基本的には上記実施形態と同様である。
【0067】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果が得られるOLED表示システムとなる。また、本変形例では、自車両Vに照度センサ31~33が搭載されていない場合であっても、ディスプレイ20の環境照度を推定でき、ディスプレイ20の輝度制御を実行することが可能である。
【0068】
(第2の変形例)
第1実施形態のOLED表示システムは、例えば図7に示すように、センサ部30、照度取得部12dに加えて、照度推定部12gを有する構成であってもよい。この場合、OLED表示システムは、センサ部30および照度取得部12dによる環境照度の取得、並びに通信機器46および照度推定部12gによる環境照度の推定のいずれの処理も可能である。
【0069】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果が得られるOLED表示システムとなる。また、本変形例では、環境照度の取得または推定の処理を切り替えることが可能であり、表示システムにおける処理の負荷軽減やフェイルセーフ等の任意の状況に応じて、処理内容を変更することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のOLED表示システムについて、図8図9を参照して説明する。
【0071】
本実施形態のOLED表示システムは、例えば図8に示すように、日射推定部12cが画像処理部12c1と、データベース部12c2と、補正部12c3とを有する構成とされる点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0072】
日射推定部12cは、本実施形態では、画像処理部12c1と、人の目による見易さを考慮した補正用データを格納するデータベース部12c2と、当該補正用データに基づいて画像補正を行う補正部12c3とを備える。
【0073】
画像処理部12c1は、撮像部45から取得したディスプレイ20の画像データについて上記第1実施形態に記載の二値化処理を実行する。この二値化処理は、公知の手法により画像データのピクセル群の画素値の閾値を算出し、白黒の二値化された画像(以下「二値化画像」という)を生成するものであり、人間の目の特性(以下「人間特性」という)については考慮されていない。
【0074】
データベース部12c2は、画像処理部12c1による二値化画像について人間特性を考慮した補正を行うための補正用データが格納された任意の記憶媒体である。本実施形態では、データベース部12c2が日射推定部12cを構成するROMやRAMなどの記憶媒体である場合を代表例として説明するが、制御部12の他の記憶媒体や外部記憶装置13がデータベース部12c2として機能する構成であってもよい。
【0075】
補正用データは、例えば、画像処理部12c1による二値化画像の補正に用いられるデータである。補正用データは、例えば、日射領域が生じたディスプレイ20について多数の人間により目視評価を行うといった感性評価試験を行うことで得られる。
【0076】
例えば、日射領域が生じたディスプレイ20あるいはこれを撮像した画像を多数の人間にそれぞれ目視評価により、日射領域と非日射領域とを二値化した二値化データを作成してもらう。人間の目視評価で得られた多数の二値化データ(以下「二値化データ群」という)は、日射領域および非日射領域の分布に共通の部分もあれば、個体差により一部に差異が生じた部分も存在するものとなる。そして、二値化データ群から多数の人間が影(非日射領域)と判断した部分を抜き出す。具体的には、二値化データ群を用いて、二値化の判定の一致率の分布を求め、一致率が高い部分(例えば限定するものではないが、90%以上など)だけを抜き出し、得られたデータを教師データとして保存しておく。続けて、目視判定された日射状態のディスプレイ20を撮像部45で撮像し、公知の二値化処理により二値化画像を生成し、当該二値化画像と上記の教師データとの対比を行う。そして、例えば、当該二値化画像のうち教師データにおける影と一致する部分を影として二値化処理をするように、AI(Artificial Intelligence)に機械学習させる。例えば、上記のような手法により、公知の二値化処理を、より人間特性を考慮した二値化処理に補正するための補正用データを作成することができる。つまり、補正用データは、画像処理部12c1による二値化画像を、人間特性を考慮した再度の二値化処理を行うために用いられる。なお、人間特性については個人差があるため、感性評価試験のn数は可能な限り多いが好ましい。
【0077】
補正部12c3は、データベース部12c2に記憶された補正用データに基づいて、例えば図9に示すように、画像処理部12c1による二値化画像を人間の目で見た状態に近づける補正を行う。本実施形態では、画像処理部12c1による二値化画像に代わって、補正部12c3による補正後の二値化画像が日射推定部12cによる日射領域の推定に用いられる。
【0078】
本実施形態における輝度制御の処理は、例えば、基本的には上記第1実施形態と同様であるが、二値化処理と日射領域の推定との間に上記した補正処理を実行し、補正後の二値化画像に基づいて日射領域を推定する点で相違する。
【0079】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られるOLED表示システムとなる。また、本実施形態では、人間特性を考慮した二値化処理が実行され、人の目視に近づいた二値化画像に基づいて日射領域の推定がなされるため、上記第1実施形態に比べて、日射領域の推定精度、ひいては輝度制御の精度が向上する効果が得られる。
【0080】
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態に示した表示システムは、本発明の表示システムの一例を示したものであり、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記第1実施形態の変形例と上記第2実施形態とが組み合わせられてもよいし、センサ部30を構成する照度センサの数や配置、ディスプレイ20の構成等については適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
11・・・通信部、12c・・・日射推定部、12c1・・・位置算出部、
12c2・・・方向推定部、12c4・・・データベース部、12d・・・照度取得部、
12e・・・輝度制御部、12e・・・映像出力部、12f・・・照度推定部、
20・・・ディスプレイ、20a・・・表示面、30・・・照度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8