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  • 特開-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187809
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221213BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/097 374
G03G9/087 325
G03G9/09
G03G9/097 375
G03G9/093
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095997
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 朋弥
(72)【発明者】
【氏名】豊田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】磯野 直也
(72)【発明者】
【氏名】久島 浩史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正郎
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA03
2H500AA06
2H500AA09
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA29
2H500CA40
2H500CB07
2H500CB08
2H500CB12
2H500EA01A
2H500EA01D
2H500EA42B
2H500EA42D
2H500EA46C
2H500EA52D
2H500EA57A
2H500EA60A
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境における濃度ムラ、かぶりの発生及び長期使用時の融着を抑制し、低温低湿環境におけるゴーストの発生を抑制できるトナー。
【解決手段】結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を有するトナーであって、該トナー粒子は1価の脂肪族アルコールをさらに有し、該1価の脂肪族アルコールの炭素数が8~18であり、該トナーからエタノールで抽出される該1価の脂肪族アルコールの含有割合が、該トナー中、30質量ppm以上300質量ppm以下であり、該外添剤が、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一を有することを特徴とするトナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を有するトナーであって、
該トナー粒子は1価の脂肪族アルコールをさらに含有し、
該1価の脂肪族アルコールの炭素数が8~18であり、
該トナーからエタノールで抽出される該1価の脂肪族アルコールの含有割合が、該トナー中、30質量ppm以上300質量ppm以下であり、
該外添剤が、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一を有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一の長径の個数平均値が、60nm以上820nm以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の合計の含有量が、前記トナー粒子100質量部に対し、0.02質量部以上1.00質量部以下である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の合計の含有量が、前記トナー粒子100質量部に対し、0.05質量部以上0.50質量部以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有し、
前記トナー中のスチレンアクリル樹脂の含有割合が、50質量%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記トナー粒子の仕事関数をWaとし、前記ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子の仕事関数をWbとしたとき、Wa-Wbが、下記式(1)を満たす請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
0.05eV<Wa-Wb<0.50eV ・・・(1)
【請求項7】
前記トナー粒子が着色剤を含有し、
該着色剤がC.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントレッド209からなる群から選択される少なくとも一を含有する請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記外添剤が、前記ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子と異なる外添剤Cを含有し、
前記外添剤Cの仕事関数をWcとしたとき、前記Wa、前記Wb及び該Wcが下記式(2)を満たす請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
Wb<Wa<Wc ・・・(2)
【請求項9】
前記ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一が、ハイドロタルサイト粒子である請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
前記トナー粒子は、コア粒子及び該コア粒子の表面のシェルを有するコアシェル構造を有し、
透過型電子顕微鏡による前記トナーの断面観察において、
前記トナー粒子の断面の輪郭の内側に該シェルが存在し、
該シェルが、ポリエステル樹脂を含有し、
該シェルの厚みが0.8nm~100nmである請求項1~9のいずれか一項に記載の
トナー。
【請求項11】
前記トナーの平均円形度が、0.97以上である請求項1~10のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置には、近年更なる高性能化が求められており、トナーに対しても種々の性能のより一層の向上が求められている。画質の観点からは、使用環境の多様化に伴い、どのような使用環境においても長期間一定以上の画質を維持すること(画質の環境依存性の抑制)がより一層求められている。例えば、高温高湿環境では、水分の吸着による帯電性の低下や、ワックスやオイルの染み出しに起因する融着が問題になりやすい。低温低湿環境では、トナーのチャージアップに起因する流動性の低下や、帯電の不均一性に起因する画像の濃度ムラが問題になりやすい。
【0003】
従来は、高温高湿環境での帯電性向上のために、外添剤としてマイクロキャリアなどの帯電助剤が使用されてきた。しかし、単純にトナーの帯電量を高くすると低温低湿環境におけるチャージアップ等様々な問題が発生しやすかった。そのため、トナー母体や外添剤の特性を制御することで画質の環境依存性を抑制してきた。
【0004】
特許文献1では、外添剤としてハイドロタルサイトを添加することで高温高湿環境における帯電の低下抑制が提案されている。特許文献2では、トナー粒子中に磁性体を添加することで誘電正接を制御し、低温低湿環境における静電オフセットを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-035692号公報
【特許文献2】特開2020-056914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のトナーは、高温高湿環境においてかぶりを抑制している。しかしながら、帯電の立ち上がりには課題があり、高温高湿環境において画像先端の濃度が低下しやすい。また、低温低湿環境においてチャージアップし、ゴーストが発生しやすい。
【0007】
一方、特許文献2に記載のトナーは、低温低湿環境で問題となりやすい過剰帯電を抑制することでかぶりを抑制している。しかしながら、高温高湿環境では帯電不足によってかぶりが発生しやすく、画質の環境依存に改善の余地がある。
【0008】
本開示は、上記問題点を解消したトナーを提供する。具体的には、高温高湿環境における濃度ムラ、かぶりの発生及び長期使用時の融着を抑制し、低温低湿環境におけるゴーストの発生を抑制できるトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を有するトナーであって、
該トナー粒子は1価の脂肪族アルコールをさらに含有し、
該1価の脂肪族アルコールの炭素数が8~18であり、
該トナーからエタノールで抽出される該1価の脂肪族アルコールの含有割合が、該トナー中、30質量ppm以上300質量ppm以下であり、
該外添剤が、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一を有するトナーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高温高湿環境における濃度ムラ、かぶりの発生及び長期使用時の融着を抑制し、低温低湿環境におけるゴーストの発生を抑制できるトナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】仕事関数測定曲線の一例
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0013】
通常、ハイドロタルサイト粒子やアルミナ粒子はトナー粒子より仕事関数が小さく、電子をトナー粒子に付与する。したがって、負帯電トナーに外添剤としてハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子を添加することで、これらがマイクロキャリアとして働き、トナーの帯電性を向上する効果がある。マイクロキャリアはトナー粒子から離れる際にトナー粒子に電荷を与え帯電を付与する。したがって、帯電性向上の効果を十分に得るためには、帯電前にはトナー粒子と密着し、帯電が必要な時にはトナー粒子から迅速に解離されることが求められる。
【0014】
しかしながら、上記効果を得るためにマイクロキャリアとトナー粒子の密着を弱くすると、解離時の帯電付与効果が小さくなるため、使用初期の帯電性が低下しやすい。また、長期使用によりマイクロキャリアがトナー粒子から外れ、使用中にトナーの帯電性が変化しやすい。
【0015】
一方、初期の帯電立ち上がりや、耐久使用による帯電の変化を改善するためにマイクロキャリアをトナー粒子に強く密着させた場合、帯電が必要な時にマイクロキャリアがトナー粒子から解離しにくく、帯電性が低下しやすい。
【0016】
また、さらなる帯電性の付与のためにマイクロキャリアの添加量を増やすと、高温高湿環境などの帯電性が低下しやすい環境では大きな効果を発揮する。一方、低温低湿環境など帯電性が高くなりやすい環境ではチャージアップしやすく、ゴーストなどの画像不良が起きやすい。そのため、使用環境によらず長期間良好な帯電性を維持することが大きな課題である。
【0017】
本発明者らは検討を重ねた結果、トナーに1価の脂肪族アルコールを添加し、1価の脂肪族アルコールの添加量及び炭素数を一定の範囲に制御し、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子を外添することで上記課題を解決できることを見出した。具体的には、以下のトナーにより上記課題を解決できることを見出した。
【0018】
結着樹脂を含有するトナー粒子及び外添剤を有するトナーであって、
該トナー粒子は1価の脂肪族アルコールをさらに含有し、
該1価の脂肪族アルコールの炭素数が8~18であり、
該トナーからエタノールで抽出される該1価の脂肪族アルコールの含有割合が、該トナー中、30質量ppm以上300質量ppm以下であり、
該外添剤が、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少な
くとも一を有することを特徴とするトナー。
【0019】
トナーに1価の脂肪族アルコールを添加し、1価の脂肪族アルコールの添加量及び炭素数を一定の範囲に制御し、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子を外添することで、使用環境によらず長期間良好な帯電性を維持することができる。具体的には、アルコールとハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子との相互作用により、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子とトナー粒子との密着性を適度に高めることができ、解離時に大きな帯電付与効果を得ることができる。また、アルコールによりトナー表面での電荷の移動がスムーズになり過剰帯電を抑制できる。さらに、アルコールの添加量を一定の範囲に制御することで耐久使用中のアルコールの染み出しを抑制し、融着を抑制できる。
【0020】
1価の脂肪族アルコールの炭素数は8~18であり、10~16が好ましく、12~14がより好ましい。炭素数が8より小さい場合、アルコールがトナー粒子表面に染み出し、帯電不良によりかぶりと濃度ムラが発生する。また、長期使用によりスリーブや現像ローラへの融着が発生する。炭素数が18より大きい場合、トナー粒子中でアルコールの分散性が低下し、アルコールがドメインを形成する。その結果、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子とアルコールの相互作用が不均一になり、帯電性が低下し帯電分布がブロードになる。
【0021】
トナーからエタノールで抽出される1価の脂肪族アルコールの含有割合は、トナー中、30質量ppm以上300質量ppm以下であり、70質量ppm以上250質量ppm以下であることが好ましく、110質量ppm以上200質量ppm以下であることがより好ましい。
【0022】
1価の脂肪族アルコールの含有割合が30質量ppmより少ないと、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子との相互作用が弱く、トナー粒子とハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子の密着性が小さくなる。その結果、トナーの帯電の立ち上がりが遅くなり、高温高湿環境で初期の濃度ムラやかぶりが発生する。
【0023】
1価の脂肪族アルコールの含有割合が300質量ppmより多い場合、1価の脂肪族アルコールがトナー粒子表面に染み出し、長期使用により融着が発生する。また、1価の脂肪族アルコールとハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子との相互作用が強くなり、トナー粒子とハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子との密着性が高くなりすぎる。その結果、高温高湿環境における初期の濃度ムラやかぶりが発生する。
【0024】
外添剤は、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一つを有する。ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子は仕事関数が小さく正帯電性が高い。したがって、外添剤として使用することで、トナーの負帯電性を高めることができる。また、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子はアルコールの水酸基に吸着しやすい。その結果、トナー粒子中のアルコールと相互作用し密着性を適度に高めることができ、帯電性を制御しやすい。
【0025】
ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一の長径の個数平均値は、60nm以上820nm以下であることが好ましく、300nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。長径の個数平均値が上記範囲内であることで、トナー粒子とハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子とが適度に密着し、マイクロキャリアとしての帯電向上効果を得やすい。その結果、高温高湿環境において初期の濃度ムラとかぶりをより抑制することができる。ハイドロタルサイト粒子の長径の個数平均値は、合成時に添加する化合物の割合や種類を変更することにより制御できる。また、アルミナ粒子の長径の個数平均値は、反応温度や反応時間を変更することにより制御できる。
【0026】
ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の合計の含有量は、トナー粒子100質量部に対し、0.02質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましく、0.15質量部以上であることがさらにより好ましい。ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の添加量がこの範囲にあることで、トナーが十分に大きな帯電性を得ることができ、高温高湿環境におけるかぶりと初期の濃度ムラをより抑制できる。
【0027】
ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の合計の含有量は、トナー粒子100質量部に対し、1.00質量部以下であることが好ましく、0.80質量部以下であることがより好ましく、0.50質量部以下であることがさらに好ましく、0.30質量部以下であることがさらにより好ましい。ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子の含有量がこの範囲にあることで、低温低湿環境におけるチャージアップを抑制し、ゴーストをさらに抑制できる。
【0028】
結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂を含有することが好ましい。そして、トナー中のスチレンアクリル樹脂の含有割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。スチレンアクリル樹脂の割合が上記範囲内にあることで、結着樹脂中でのアルコールの分散性を制御しやすく、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子とアルコールとの相互作用をより高めることができる。
【0029】
トナー粒子の仕事関数をWaとし、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子の仕事関数をWbとしたとき、Wa-Wbが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは式(1´)の関係を満たす。
0.05eV<Wa-Wb<0.50eV ・・・(1)
0.10eV<Wa-Wb<0.30eV ・・・(1´)
【0030】
Wa-Wbが0.05eVより大きいことで、帯電性が向上し、高温高湿環境においてかぶりをより抑制することができる。また、Wa-Wbが0.50eVより小さいことで、低温低湿環境におけるチャージアップを抑制し、ゴーストをより抑制することができる。トナー粒子の仕事関数は、使用する荷電制御剤や顔料の種類を変更することにより制御できる。例えば、トナー粒子の仕事関数Waは、5.25eV以上5.70eV以下であることが好ましく、5.40eV以上5.60eV以下であることがより好ましい。
【0031】
外添剤は、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子とは異なる外添剤Cを含有し、外添剤Cの仕事関数をWcとしたとき、Wa、Wb及びWcが、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
Wb<Wa<Wc ・・・(2)
Wa、Wb、Wcが、式(2)の関係を満たすことでトナー表面での電荷の移動がスムーズになり低温低湿環境におけるゴーストをより抑制できる。外添剤Cが例えばシリカの場合、外添剤Cの仕事関数は、表面処理剤の種類を変更することにより制御できる。
【0032】
ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一は、ハイドロタルサイト粒子であることが好ましい。すなわち、外添剤はハイドロタルサイト粒子を含むことが好ましい。ハイドロタルサイト粒子により、アルコールとの相互作用がより大きくなりトナーの帯電性をより向上しやすい。
【0033】
トナーの平均円形度は0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることが
より好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは1.00以下、0.99以下である。トナーの平均円形度が上記範囲内にあることでトナー粒子表面へハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子が均一に付きやすく、トナーの帯電がより均一になりやすい。
【0034】
(ハイドロタルサイト粒子)
ハイドロタルサイト粒子について詳細に説明する。ハイドロタルサイト粒子は、特性を達成できるものであれば特に限定されるものではない。ハイドロタルサイト粒子は、好ましくはAl及びMgを含む。ハイドロタルサイト粒子は、好ましくは下記式(A)で表すことができ、正極性に帯電した基本層(式(A)中の[M2+ 1-x3+ (OH) ])とネガ性に帯電した中間層(式(A)中の[x/nAn-・mHO)とを有する層状の無機化合物である。
[M2+ 1-x3+ (OH) ][x/nAn-・mHO] (A)
【0035】
式(A)中、2価の金属イオンM2+としては、Mg、Zn、Ca、Ba、Ni、Sr、Cu、Feが例示され、3価の金属イオンM3+としては、Al、B、Ga、Fe、Co、Inが例示される。2価の金属イオンM2+、3価の金属イオンM3+は異なる元素を複数含有する固溶体であっても構わず、これらの金属イオンの他に1価の金属イオンを微量含んでいても構わない。An-は、CO 2-、OH、Cl、I、F、Br、SO 2-、HCO 2-、CHCOO、NO などのn価アニオンを表し、これらは単独であっても複数存在しても構わない。m≧0である。
【0036】
式(A)に含まれる化合物の例としては、[Mg2+ 0.750Al3+ 0.250(OH) 2.000][0.125CO 2-・0.500HO]が挙げられる。
【0037】
ハイドロタルサイト粒子は、電荷の付与能力の観点から、2価の金属イオンM2+としてはMg2+を含むことが好ましく、3価の金属イオンM3+としてはAl3+を含むことが好ましい。また、n価アニオンとしては、トナー粒子への帯電性付与の観点から、CO 2-,Clが好ましい。
【0038】
ハイドロタルサイト粒子は疎水性の付与や帯電性を制御する目的で表面処理剤により処理されていてもよいが、ハイドロタルサイト粒子の高い帯電付与効果を担う強ポジ性を維持する観点から未処理で使用することが好ましい。表面処理剤を使用する場合は、高級脂肪酸類、カップリング剤類、エステル類、シリコーンオイルのようなオイル類が使用可能である。
【0039】
表面処理剤によるハイドロタルサイト粒子の表面処理方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、表面処理剤を溶剤に溶解混合したり、加熱溶解して液状にした後に未処理のハイドロタルサイト粒子と湿式混合したりする方法がある。また、微粉末状の表面処理剤とハイドロタルサイト粒子を機械的に乾式混合する方法が挙げられ、表面処理後には、必要に応じ、洗浄、脱水、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜に選択し、表面処理を施したハイドロタルサイト粒子を得ることができる。
【0040】
ハイドロタルサイト粒子の仕事関数は4.95eV以上5.40eV以下であることが好ましく、5.10eV以上5.30eV以下であることがより好ましい。ハイドロタルサイト粒子の仕事関数が上記範囲内にあることで、負帯電トナーの帯電助剤としての効果を得やすくなる。ハイドロタルサイト粒子の仕事関数は、表面処理剤の種類や量、ハイドロタルサイト粒子中のM2+とM3+の種類や比率、n価アニオンの種類を変えることで制御することができる。
【0041】
(アルミナ粒子)
続いて、アルミナ粒子について詳細に説明する。アルミナ粒子は、上記特性を達成できるものであれば特に限定されるものではない。アルミナ粒子を製造する方法としては、公知の方法を採用しうる。例えば、バイヤー法、水中火花放電法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、アルミニウムアルコキシドを加水分解して得られるアルミナ水和物を焼成する方法、Chemical Vapor Deposition法等が挙げられる。この中でもChemical Vapor Deposition法により製造されたアルミナ粒子は形状が多面体であること、また粒度分布が均一になりやすいことから好ましい。
【0042】
アルミナ粒子は疎水性の付与や帯電性を制御する目的で表面処理剤により処理されていてもよいが、アルミナ粒子の高い帯電付与効果を担う強ポジ性を維持する観点から未処理で使用することが好ましい。表面処理剤を使用する場合は、疎水化作用のあるオイル、カップリング剤、及び、疎水化作用のある樹脂が好ましい。これらの中でも、シリコーン系のオイルやカップリング剤、有機酸系の樹脂等が好ましく使用される。使用可能なオイル類の一例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーンオイル、パラフィン、ミネラルオイル等がある。これらの疎水化処理剤でのアルミナ粒子の表面処理方法は、公知の方法により行うことが可能である。
【0043】
アルミナ粒子の仕事関数は4.95eV以上5.40eV以下であることが好ましく、5.10eV以上5.30eV以下であることがより好ましい。アルミナ粒子の仕事関数が上記範囲内にあることで、負帯電トナーの帯電助剤としての効果を得やすくなる。アルミナ粒子の仕事関数は、表面処理剤の種類や量、アルミナ粒子の結晶構造を変えることで制御することができる。
【0044】
トナー粒子に用いられる原材料について説明する。トナー粒子は結着樹脂を含有する。トナー粒子に用いられる結着樹脂としては、下記の重合体などを用いることができる。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など。
【0045】
結着樹脂の主成分としては、スチレンと他のビニルモノマーとの共重合体であるスチレン系共重合体であることが、現像性、定着性、1価の脂肪族アルコールとの相溶性の観点から好ましい。より好ましくはスチレンアクリル樹脂である。
【0046】
トナー粒子は1価の脂肪族アルコールを含有する。1価の脂肪族アルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪酸アルコールのいずれも含み、1価の脂肪族アルコールを単独で用いても複数併用してもよい。炭素数8~18の1価の脂肪族アルコールの例としては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールが含まれる。その中でも、直鎖の脂肪族アルコールが好ましい。
【0047】
トナー粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわない。
【0048】
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0049】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70が挙げられる。イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162が挙げられる。
【0050】
これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。着色剤はC.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントレッド209からなる群から選択される少なくとも一を含有することが好ましい。これらの着色剤に含まれるキナクリドン骨格によって電荷が非局在化し、かぶりをより抑制しやすい。着色剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。着色剤の含有量が上記範囲内であることで、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナーへの分散性の点でバランスを取りやすい。
【0051】
トナー粒子に、着色剤として磁性体を含有させて磁性トナー粒子とすることも可能である。磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄;、鉄、コバルト、ニッケルのような金属又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。上記磁性体は、表面が改質された磁性体であることが好ましい。
【0052】
重合法により磁性トナーを調製する場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。これらの磁性体の個数平均粒径は、2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。磁性体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは
20質量部以上200質量部以下であり、より好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
【0053】
トナー粒子は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナウバワックスなどのような脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの;植物性油脂の水素添加などによって得られる、ヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニルなどの飽和脂肪酸モノエステル類;セバシン酸ジベヘニル、ドデカン二酸ジステアリル、オクタデカン二酸ジステアリルなどの飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールとのジエステル化物;ノナンジオールジベヘネート、ドデカンジオールジステアレートなどの飽和脂肪族ジオールと飽和脂肪酸とのジエステル化物、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸;などが挙げられる。
【0054】
トナー粒子中の離型剤の含有量は、1.0質量%~30.0質量%であることが好ましく、2.0質量%~25.0質量%であることがより好ましい。
【0055】
トナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーンが挙げられる。
【0056】
一方、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化
物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。これら荷電制御剤は一種単独でまたは二種類以上組み合わせて含有することができる。これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して、0.01質量部~10.00質量部であることが好ましい。
【0057】
トナー粒子の製造方法について説明する。トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、懸濁重合法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などの湿式製造法や、混練粉砕法を用いることができる。トナー粒子は、湿式製造法により得られたトナー粒子であることが好ましく、懸濁重合法により得られたトナー粒子であることがより好ましい。
【0058】
懸濁重合法では、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び1価の脂肪族アルコール、並びに必要に応じて着色剤及びワックスなどの添加剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して、重合性単量体組成物の液滴粒子を形成する造粒工程、並びに液滴粒子中の該重合性単量体を重合することでトナー粒子を製造する重合工程を経ることによりトナー粒子を製造する。重合性単量体として好ましいものには、ビニル系重合性単量体を挙げることができる。具体的には以下のものを例示することができる。
【0059】
例えばスチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル、蟻酸ビニルのようなビニルエステルが挙げられる。
【0060】
結着樹脂は、スチレンアクリル樹脂であることが好ましい。すなわち、結着樹脂は、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体からなる群から選択される少なくとも一、並びにスチレンの重合体であることが好ましい。
【0061】
乳化凝集法は、目的の粒子径に対して、十分に小さい、トナー粒子の構成材料から成る微粒子の水系分散液を前もって準備し、その微粒子を水系媒体中でトナーの粒子径になるまで凝集し、加熱により樹脂を融着させてトナーを製造する方法である。
【0062】
好ましくは、乳化凝集法は、トナー粒子の構成材料を含む各微粒子分散液を作製する分散工程、トナー粒子の構成材料を含む微粒子を凝集させて、トナー粒子の粒子径になるまで粒子径を制御し凝集粒子を得る凝集工程、並びに得られた凝集粒子に含まれる樹脂を融着させる融合工程を有する。さらに必要に応じて、その後の冷却工程、得られたトナー粒子をろ別し、イオン交換水などで洗浄するろ過・洗浄工程、及び洗浄したトナー粒子の水分を除去し乾燥する工程を経る。
【0063】
混練粉砕法でトナー粒子を製造するための製造方法の一例を以下に説明する。原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、結着樹脂、及び1価の脂肪族アルコール、並びに必要に応じて着色剤及びワックスなどその他の添加剤などを、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、FMミキサー、ナウターミキサー、及びメカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0064】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤及びワックス等などを分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、及びニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等などで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0065】
ついで、得られた樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕する。したその後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(フロイント・ターボ株式会社製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕するとよい。
【0066】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
【0067】
また、トナー粒子を球形化してもよい。例えば、粉砕後にハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック工業社製)を用いて球形化を行うとよい。トナー粒子のガラス転移温度(Tg)は、低温定着性の観点から40℃以上60℃以下であることが好ましい。
【0068】
得られたトナー粒子に対し、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子からなる群から選択される少なくとも一、並びに必要に応じ外添剤Cを外添混合し、トナーを得ることができる。外添混合は、ヘンシェルミキサーなどを用いて公知の手段で行えばよい。
【0069】
トナー粒子は、コア粒子及び該コア粒子の表面のシェルを有するコアシェル構造を有することが好ましい。トナー粒子がコアシェル構造をとることにより、トナーの耐久性や帯電性を向上させることができる。シェルは必ずしもコア粒子の全体を被覆する必要はなく、コア粒子が露出した部分が存在してもよい。
【0070】
トナー粒子のシェルを形成させる樹脂としては、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂などの樹脂を主に含有することが好ましく、ポリエステル樹脂を主に含有することがより好ましい。ポリエステル樹脂はアルコールとなじみやすいため、シェルがポリエステル樹脂を有することで1価の脂肪族アルコールが効率的にトナー粒子表面近傍へ集まり、少量のアルコール添加で効果を得やすくなる。
【0071】
透過型電子顕微鏡によるトナーの断面観察において、トナー粒子の断面の輪郭の内側にシェルが存在し、シェルが、ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。そして、シェルの厚みが、0.8nm~100nmであることが好ましく、1nm~30nmであることがより好ましい。
【0072】
シェルの厚みが0.8nm以上であることで、耐久性が向上しやすい。また、ポリエステル樹脂により1価の脂肪族アルコールがトナー粒子表面近傍に集まりやすくなる。シェルの厚みが100nm以下であると、定着性がより良好になる。また、アルコールがトナー粒子表面近傍に適度に集まり、長期使用時に融着をより抑制しやすくなる。シェルの厚
みの測定方法は後述する。
【0073】
ポリエステル樹脂に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。
【0074】
ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体;式(B)で示されるジオール類が挙げられる。
【化1】
【0075】
(式(A)中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【化2】
【0076】
(式(B)中、R’は-CHCH-、-CHCH(CH)-又は-CHC(CH-を示し、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0077】
ポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物
及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0078】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0079】
ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のアルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを同時に仕込み、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。
【0080】
シェルに用いられるスチレンアクリル樹脂としては、上述したビニル系重合性単量体を用いることができる。加えて、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートのような極性基を有する単量体を用いることが好ましい。シェルに用いられるスチレンアクリル樹脂は、アクリル系重合性単量体及びメタクリル系重合性単量体からなる群から選択される少なくとも一、極性基を有する単量体からなる群から選択される少なくとも一、並びにスチレンの重合体であることが好ましい。
【0081】
トナーの性能を向上させるために、外添剤は、ハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子とは異なる外添剤Cを含むことが好ましい。
【0082】
外添剤Cは、例えば、フッ化ビニリデン微粒子、及びポリテトラフルオロエチレン微粉末のようなフッ素系樹脂粒子;湿式製法シリカ又は、乾式製法シリカのようなシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子;それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイルなどの疎水化処理剤により表面処理を施した疎水化処理微粒子;酸化亜鉛及び、酸化スズのような酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム及びジルコン酸カルシウムのような複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムのような炭酸塩化合物などが挙げられる。
【0083】
外添剤Cは、シリカ微粒子であることが好ましく、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粒子である、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式製法シリカ微粒子が好ましい。
乾式製法は、例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl+2H+O→SiO+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等などの他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、シリカ微粒子としてはそれらも包含する。
【0084】
外添剤Cは、一次粒子の個数平均粒径が3nm以上200nm以下であると、高い帯電性と流動性を持たせることができるので好ましい。外添剤Cの一次粒子の個数平均粒径は、より好ましくは5nm以上20nm以下である。外添剤Cの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下がより好ましい。外添剤Cの含有量が上記範囲にあることで良好な流動性を持たせつつ、定着性を向上させることができる。さらには、外添剤Cとしては、疎水化処理剤で表面処理されていることが好ましい。外添剤Cが表面処理されていることで使用環境によらず良好な画像を得やすくなる。
【0085】
各種物性の測定方法について以下に説明する。
<トナー中の1価の脂肪族アルコールの同定と定量>
(抽出サンプルの作製)
トナーを2g、エタノールを18g加え、手振りで均一化した後、5min間超音波照射する。その後、60℃の恒温槽内で一昼夜静置し、さらに室温で3日間静置する。静置後のサンプルの上澄みを採取してPTFE製のシリンジフィルター(孔径250nm)で濾過し、濾液を抽出サンプルとする。
【0086】
(GC/MS分析)
GC/MS装置は、GC TRACE―1310(Thermo Scientifi
c社製)、検出器は、シングル四重極分析計MS ISQ LT(Thermo Scientific社製)、オートサンプラーは、TRIPLUS RSH(Thermo
Scientific社製)を使用する。測定は、下記に示す条件で行う。
サンプル量:1μL(液打ち)
カラム:HP5―MS(Agilent Technologies社製)
長さ:30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
スプリット比:10
スプリットフロー:15mL/min
注入口温度:250℃
カラム内のヘリウムガスの流速:1.5mL/min
MSイオン化:EI
カラム温度条件:40℃で3min保持し、続いて10℃/minで300℃まで上昇させ、10min間保持する。
イオン源ソース温度:250℃
Mass Range:m/z45-1000
搬送ライン温度:250℃
【0087】
(検量線の作成)
エタノール溶液中における1価の脂肪族アルコールの濃度(質量基準)が、10ppm、50ppm、100ppm、250ppmとなるように検量線作成用サンプルを調製する。これらのサンプルを前記条件にて測定し、1価の脂肪族アルコールに由来するピークの面積値から検量線を作成する。得られた検量線を用いて、上記抽出サンプルの分析を行い、エタノールで抽出されるトナー中の1価の脂肪族アルコールの含有割合を算出する。
【0088】
1価の脂肪族アルコールの構造は、上記の抽出サンプルをFT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)[H-NMR 400MHz、CDCl、室温(25℃)](13C-NMR等も併用する)を用いて分析し、構造決定する。
【0089】
<トナー粒子及び外添剤の仕事関数測定>
トナー粒子及び外添剤の仕事関数は下記の測定方法により測定する。仕事関数とは、その物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化されるものである。仕
事関数は、表面分析装置(理研計器(株)製AC-2)を使用して測定する。前記装置において、重水素ランプを使用し、以下の条件で測定する。
照射光量:800nW
分光器:単色光
スポットサイズ:4[mm]×4[mm]
エネルギー走査範囲:3.6~6.2[eV]
陽極電圧:2910V
測定時間:30[sec/1ポイント]
【0090】
そして、サンプル表面から放出される光電子を検知し、前記表面分析装置に組み込まれた仕事関数計算ソフトを使用して演算処理する。仕事関数に関しては、繰り返し精度(標準偏差)0.02[eV]で測定される。粉体を測定する場合には粉体測定用のセルを使用する。
【0091】
前記表面分析においては、単色光の励起エネルギーを低い方から高い方に0.05eV間隔でスキャンすると、あるエネルギー値[eV]から光量子放出が始まり、このエネルギー閾値を仕事関数[eV]とする。
【0092】
上記条件での測定により得られる仕事関数の測定曲線の一例を図1に示す。図1において、横軸は励起エネルギー[eV]、縦軸は放出された光電子の個数の0.5乗の値(規格化光量子収率)Yを示す。一般的に、励起エネルギー値がある閾値を超えると急激に光電子の放出、すなわち規格化光量子収率が多くなり、仕事関数測定曲線が急速に立ち上がる。その立ち上がりの点を光電的仕事関数値[Wf]と定義する。この光電的仕事関数値[Wf]をサンプルの仕事関数とする。
仕事関数の測定において、サンプルは、トナー粒子、ハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子又は外添剤Cを用いる。
トナー粒子に関しては、以下の方法でトナーから外添剤を除いたトナー粒子をサンプルとして用いてもよい。
【0093】
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに該ショ糖濃厚液31gと、6mLのコンタミノンNを入れ、分散液を作製する。この分散液にトナー1gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0094】
遠心分離用チューブを、いわき産業(株)製「KM Shaker」(model:V.SX)にて、1分当たり350往復の条件で20分間振盪する。振盪後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて、3500rpm、30分の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内においては、最上層にはトナー粒子が存在し、下層の水溶液側には外添剤が存在する。最上層のトナー粒子を分離する。必要に応じて、振盪・遠心分離を繰り返し行い、分離を十分に行ってもよい。
【0095】
ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子、及び外添剤Cについては、単独で入手できる場合には、ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子、及び外添剤Cを単独で測定することができる。単独で入手できない場合、トナーをクロロホルムなどの溶媒に分散させ、その後に遠心分離等で比重の差でハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子、及び外添剤Cを分離する。その方法は以下の通りである。
【0096】
まずトナー1gをバイアル瓶に入れたクロロホルム31gに添加して分散し、ハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子、及び外添剤Cをトナーから分離させる。分散には超音波式ホモジナイザーを用いて30分間処理して分散液を作製する。処理条件は以下の通りで
ある。
超音波処理装置:超音波式ホモジナイザーVP-050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%、30分。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
【0097】
分散液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)にて、58.33S-1、30分間の条件で遠心分離を行う。遠心分離後のガラスチューブ内では、比重によりハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子、及び外添剤Cを主に含む画分を分離できる。うまく分離できない場合は、遠心分離の回転数及び時間を調整する。得られた画分を真空条件下(40℃/24時間)で乾燥し、サンプルを得る。
【0098】
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisiz
er 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)と、測定条件設定及び測定デ
ータ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisize
r 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)とを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定・解析し、算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用で
きる。
【0099】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことによって、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後の
アパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。具体的な測定法は以下のとおりである。
【0100】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶
液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の希釈液を約0.3mL加える。・希釈液:「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力が120Wである下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。・超音波分散器:「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス
(株)製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が15℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0101】
<トナーの平均円形度の測定>
トナーの平均円形度はフロー式粒子像測定装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定・解析条件で測定する。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。
前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、平均円形度を求める。
測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「
RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsph
ere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0102】
<トナー中のスチレンアクリル樹脂割合の測定>
樹脂の含有割合の分析には、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、熱分解GC/MS)及びNMRを用いる。なお、本開示では、分子量1500以上の成分を測定の対象とする。分子量1500未満の領域は、ワックスの割合が高く、樹脂がほぼ含有されていない領域と思われるためである。
熱分解GC/MSでは、トナー中の樹脂全量の構成モノマーを決定し、各モノマーのピーク面積を求めることができるが、定量を行うには基準となる濃度既知のサンプルによる
ピーク強度の規格化が必要となる。一方、NMRでは構成モノマーの決定及び定量を、濃度既知のサンプルを用いることなく求めることが可能である。そこで、状況に応じて、構成モノマーの決定には、NMRと熱分解GC/MSの両方のスペクトルを比較しながら行う。
【0103】
具体的には、NMR測定時の抽出溶媒である、重水素化クロロホルムに溶けない樹脂成分が5.0質量%未満の場合、NMRの測定による定量を行う。一方、重水素化クロロホルムに溶けない樹脂成分が5.0質量%以上の場合、重水素化クロロホルム可溶分に対して、NMR及び熱分解GC/MSの両方の測定を行い、重水素化クロロホルム不溶分に対して、熱分解GC/MSの測定を行う。
この場合は、まず重水素化クロロホルム可溶分のNMR測定を行い、構成モノマーの決定と定量を行う(定量結果1)。次いで、重水素化クロロホルム可溶分に対して、熱分解GC/MS測定を行い、各構成モノマーに帰属されるピークのピーク面積を求める。NMR測定で得られた定量結果1を用いて、各構成モノマーの量と熱分解GC/MSのピーク面積との関係を求める。
次いで、重水素化クロロホルム不溶分の熱分解GC/MS測定を行い、各構成モノマーに帰属されるピークのピーク面積を求める。重水素化クロロホルム可溶分の測定で得られた各構成モノマーの量と熱分解GC/MSのピーク面積との関係から、重水素化クロロホルム不溶分における構成モノマーの定量を行う(定量結果2)。そして、定量結果1と定量結果2とを合わせて、最終的な各構成モノマーの定量結果となる。
【0104】
具体的には、以下の操作を行う。
(1)トナー500mgを30mLのガラス製サンプル瓶に精秤し、重水素化クロロホルムを10mL加えた後、蓋をし、超音波分散機によって1時間分散し溶解させる。次いで、0.4μm径のメンブランフィルターによりろ過を行い、ろ液を回収する。この際、重水素化クロロホルム不溶分は、メンブランフィルター上に残存する。
(2)ろ液のうち3mLを、分取高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、フラクションコレクターにより分子量1500未満の成分を除き、樹脂溶液を回収する。ロータリーエバポレーターを用いて回収した溶液からクロロホルムを除去し、樹脂を得る。なお、分子量1500未満については、分子量が既知のポリスチレン樹脂の測定をあらかじめ行い、溶出時間を求めておくことで決定しておく。
(3)得られた樹脂20mgを、重水素化クロロホルム1mLに溶解させ、H-NMR測定を行い、スチレンアクリル樹脂に使用される各構成モノマーについて、スペクトルを帰属し、定量値を求める。
(4)重水素クロロホルム不溶分の分析が必要であれば、熱分解GC/MSにて分析を行う。必要に応じて、メチル化などの誘導化処理を行う。
【0105】
(NMRの測定条件)
装置:FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :1024回
測定温度 :25℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロ
ホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られたスペクトルの積分値から各モノマー成分のmol比を求め、これを基に組成比(質量%)を算出する。
【0106】
(熱分解GC/MSの測定条件)
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃
Mass Range: 45-650
【0107】
<トナー粒子のシェルの樹脂種の同定>
トナー粒子のシェルの樹脂種は飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)を用いて分析する。トナー粒子表面のポリエステル量の測定には、例えば、ポリエステル樹脂がフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来の構造を有する場合、アルバック・ファイ社製、TRIFT-IVを使用できる。分析条件は以下の通り行った。
【0108】
サンプル調整:トナーをインジウムシートに付着させる。なお、トナーから外添剤を分離して得られたトナー粒子を試料として用いてもよい。
サンプル前処理:なし
一次イオン:Au
加速電圧:30kV
電荷中和モード:On
測定モード:Positive
ラスター:100μm
エステル基を含むフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来のピーク強度(EI)の算出:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cadense)に従い、質量数14
8~150の合計カウントピーク数をピーク強度(EI)とする。
その他の樹脂由来ピーク強度の算出:アルバック・ファイ社標準ソフト(Win Cad
ense)に従い、質量数90~105の合計カウントピーク数をその他の樹脂由来のピーク強度とする。
【0109】
このピーク強度と上記エステル基を含むフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸由来のピーク強度(EI)の合計値をトナー粒子表面の樹脂由来のピーク強度(ZI)とする。EI/ZIを上記ピーク強度より算出する。例えばEI/ZI≧0.5の場合にトナー粒子表面にポリエステル樹脂が存在すると判断する。ピーク強度(EI)の測定における質量数は、使用されているポリエステル樹脂の構成モノマーに合わせて変更しうる。
【0110】
<シェルの厚みの測定>
シェルの厚みは透過型電子顕微鏡によって測定する。透過型電子顕微鏡で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(内径Φ1.5mm×外径Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上にカバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
【0111】
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
透過電子顕微鏡(TEM)(日本電子製 JEM2800)を用い、加速電圧200k
Vの条件でトナーのTEM画像を作製する。TEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。得られたTEM画像において、コア粒子に含まれる結着樹脂とシェルとは、異なるコントラストとして観察される。
明暗の差は材料によって異なるが、本開示ではコア粒子に含まれる結着樹脂とはコントラストの異なる部分として観察される部分を、シェルとする。観察するトナーは、重量平均粒径(D4)から±1.0μm以内のものを10個選んで撮影を行う。また、観察倍率は20000倍とする。
【0112】
厚みの計測については、市販の画像解析ソフトウェア、WinROOF(三谷商事株式会社製)を用いる。上記基準で無作為に選んだ10個のトナーのTEM画像において、各トナーについて、4点ずつシェルの厚みを計測する。具体的には、トナー断面の略中心で直行する2本の直線を引き、2本の直線上の、シェルと交差する4点における、シェルの厚みを計測する。シェルの厚みは、トナー粒子の断面の輪郭から、結着樹脂とシェルとの界面までの距離とする。全ての計測値の算術平均値を、トナー粒子のシェルの厚みとする。
【0113】
<ハイドロタルサイト粒子又はアルミナ粒子の長径の個数平均値、及び外添剤Cの一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
トナー表面に存在するハイドロタルサイト粒子及びアルミナ粒子、並びにシリカ粒子などの外添剤Cの存在個所は、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)(SEM-EDX)による観察、及び元素分析によって特定することができる。例えば、2万倍の倍率下で観察と元素マッピングとを連続した視野で行い、観察される粒子に対してMgとAlの両元素の存在が確認できたとき、これをハイドロタルサイト粒子であると判断しうる。同様に、観察される粒子に対してAlの存在が確認できたときには、これをアルミナ粒子、Siの存在が確認できたときには、これをシリカ粒子であると判断しうる。
【0114】
以下、ハイドロタルサイト粒子の長径の個数平均値の測定方法について記載する。トナー表面の少なくとも300個のハイドロタルサイト粒子について長径を測定して平均を求める。ハイドロタルサイト粒子は凝集粒子として存在するものもあるが、このような凝集粒子は粒径の測定対象にしない。また、粒子の最大径を長径として扱う。また、アルミナ粒子の長径の平均もハイドロタルサイト粒子の長径の平均と同様にして測定、算出を行う。また、外添剤Cがシリカ粒子である場合、形状が球形の場合はその絶対最大長を、長径と短径を有する場合は長径を、粒径としてカウントし、一次粒子の個数平均粒径を算出する。
【0115】
<ハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子、及び外添剤Cの含有量の測定方法>
ハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子、及び外添剤Cの含有量は、蛍光X線分析装置(XRF)で測定されるトナー中のハイドロタルサイト粒子、アルミナ粒子、及び外添剤C由来の元素の強度から計算で求める。例えば、検量線法を用いて、ハイドロタルサイト粒子の含有量はAl及びMg元素強度から解析し、算出できる。また、アルミナ粒子の含有量はAl元素強度から解析し、算出できる。また、外添剤Cがシリカ粒子の場合の含有量はSi元素強度から解析し、算出できる。
【0116】
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球
のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
なお、測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナーを約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。あらかじめ含有量既知のサンプルから作成した検量線を元に、得られたピーク強度から含有量を計算する。
【実施例0117】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例中で使用する部は特に断りのない限り質量基準である。
【0118】
<外添剤B1の製造例>
203.3gの塩化マグネシウム6水和物と、96.6gの塩化アルミニウム6水和物とを1Lの脱イオン水に溶解し、この溶液を25℃に保ちながら、水酸化ナトリウム60gを1Lの脱イオン水に溶解した液でpH10.5に調整した。そして、98℃で24時間熟成した。冷却後、沈殿物を脱イオン水でろ液の電導度が100μS/cm以下になるまで洗浄し、5質量%の濃度のスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、スプレードライヤー(DL-41、ヤマト科学(株)製)にて乾燥温度180℃、噴霧圧0.16MPa、噴霧速度約150mL/minで噴霧乾燥により外添剤B1を得た。物性を表1に示す。
【0119】
【表1】

粒径は、長径の個数平均値(シリカに関しては一次粒子の個数平均粒径)である。表中の略称は、以下の通り。
PDMS:ポリジメチルシロキサン
【0120】
<外添剤B2~B10の製造例>
外添剤B1の製造において、塩化マグネシウム6水和物と塩化アルミニウム6水和物の添加量とスプレードライヤーの噴霧圧、噴霧速度を調整する以外は同様にして外添剤B2~B10を得た。物性を表1に示す。
【0121】
<外添剤B11の製造例>
アルミナ原料として水酸化アルミナを用い、種晶としてα-アルミナを0.02部(添加量は、アルミナ原料から得られるアルミナ量100部に対するもの、以下同様)添加し、雰囲気ガスとして塩化水素ガスを管状炉内に導入して実験した。雰囲気ガスの導入温度は900℃、保持温度(焼成温度)は1200℃であり、保持時間(焼成時間)は30分間であった。外添剤B11の物性を表1に示す。
【0122】
<外添剤B12の製造例>
フュームドシリカ(商品名AEROSIL380S、BET法による比表面積380m/g、一次粒子の個数平均粒径7nm、日本アエロジル株式会社製)100部に対し、10.0部のポリジメチルシロキサンを噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら温度を300℃まで昇温させてさらに2時間撹拌し、外添剤B12を調製した。物性を表1に示す。
【0123】
<外添剤B13の製造例>
ポリジメチルシロキサンをアミノ変性シリコーンオイルに変更した以外は、外添剤B12と同様の方法で外添剤B13を製造した。物性を表1に示す。
【0124】
<外添剤B14の製造例>
アナターゼ型酸化チタンをイソブチルトリメトキシシラン12質量%で処理することで外添剤B14を得た。物性を表1に示す。
【0125】
<シェル樹脂1の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中にテレフタル酸40mol%、トリメリット酸10mol%、ビスフェノールA-プロピレンオキサイド(PO)2mol付加物50mol%を入れ、触媒としてジブチル錫オキシドをモノマー総量100部に対して1.5部添加した。次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、シェル樹脂1を得た。その際、得られるシェル樹脂1の軟化点が120℃となるように重合時間を調整した。
【0126】
<シェル樹脂2の製造例>
加圧及び減圧可能なフラスコ内にキシレン(沸点144℃)300部を投入し、撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。下記原材料の混合液を添加した。
・スチレン 91.7部
・メタクリル酸メチル 2.50部
・メタクリル酸 3.30部
・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル 2.50部
・ジ-tert-ブチルパーオキサイド 2.00部
重合温度を175℃、反応時の圧力を0.125MPaにて重合を5時間行った。その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行い、キシレンを除去して、粉砕することでシェル樹
脂2(酸価=10.9、分子量(Mp)=14500)を得た。
【0127】
<トナー粒子A1の製造例>
反応容器に、イオン交換水390.0部、及びリン酸ナトリウム(12水和物)〔ラサ工業(株)製〕14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。次に、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、該水系媒体に塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0128】
一方、下記材料をアトライタ(日本コークス工業(株)製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を投入して、220rpmで5.0時間分散させた後、ジルコニア粒子を取り除き、着色剤が分散された分散液1を調製した。
・スチレン 60.0部
・着色剤(Pigment Red 122) 6.5部
【0129】
次に、調製した前記分散液1に下記材料を加えた。
・スチレン 15.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.0部
・シェル樹脂1 4.0部
・荷電制御剤(ジーt-ブチルサリチル酸アルミニウム) 0.7部
・炭化水素ワックス(HNP-51、日本精蝋社製) 9.0部
・ドデシルアルコール 0.5部
【0130】
その後、混合液を温度60℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて、9000r/minにて攪拌し、溶解、分散した。これに重合開始剤2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10.0部を溶解し、モノマー組成物を調製した。上記水系媒体中に該モノマー組成物を投入し、温度60℃にてクレアミックスを15000rpmで回転させながら15分間造粒した。その後、プロペラ式攪拌装置に移して100r/minで攪拌しつつ、温度70℃で5時間反応させた後、温度80℃まで昇温し、さらに5時間反応を行い、トナー粒子を製造した。
重合反応終了後、前記粒子を含むスラリーを冷却し、塩酸を添加し、pHを1.4以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行った。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットして重量平均粒径(D4)6.8μmのトナー粒子A1を得た。物性を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
<トナー1の製造例>
得られたトナー粒子1の100部に対して、表3に示した種類及び部数の外添剤をFM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、トナー粒子の仕込み量:1.8kg、回転数:60s-1、外添時間:15分で行った。その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。物性を表3に示す。
【0133】
【表3】

表中、StAc樹脂量は、トナー中のスチレンアクリル樹脂の含有割合(質量%)である。
【0134】
<トナー粒子A2~A20の製造例>
表2に示すように、アルコールの種類と量、シェル樹脂の量と種類、顔料の種類を変更する以外は、トナー粒子1と同様にして製造し、トナー粒子A2~A20を得た。物性を表2に示す。
【0135】
<トナー2~27の製造例>
表3に示すように、外添剤の種類と量を変更する以外は、トナー1と同様にして製造し、トナー2~27を得た。物性を表3に示す。また、得られたトナーにおいて外添剤の含有量を測定したところ、表3に記載の部数で各外添剤が含まれていることを確認した。
【0136】
<実施例1>
トナー1に対して以下の評価を実施した。キヤノン製レーザービームプリンタLBP652Cに上記で得られたトナー1を充填したカードリッジを装着し、以下の評価を行った。なお、転写材として、A4のCS-680(坪量68g/cm)を用いた。また、評価は各評価環境で3日間上記マシンを静置した後評価を行った。
【0137】
<1>先端濃度の評価
評価は高温高湿(H/H)環境(32.5℃、80%RH)にて行った。ベタ画像を出力して、ベタ画像上部から現像ローラ一周分の画像濃度と、二周目以降の画像濃度をカラー反射濃度計(X-Rite 404A)で測定し、これらの画像濃度差より以下のよう
に評価した。評価結果を表4に示す。
A:画像濃度差が0.05以下である
B:画像濃度差が0.05より大きく0.10以下である
C:画像濃度差が0.10より大きく0.15以下である
D:画像濃度差が0.15より大きい
【0138】
<2>かぶりの評価
評価は高温高湿(H/H)環境(32.5℃、80%RH)にて行った。H/H環境下で、1%印字画像を連続して1000枚出力した後、0%印字のベタ白画像を1枚出力し、その反射率(%)を「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」(東京電色社製)で測定した。得られた反射率を、同様にして測定した未使用のプリントアウト用紙(標準紙)の反射率(%)から差し引いた数値(カブリ値)(%)を用いて評価した。数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
A:カブリ値が1.0%未満
B:カブリ値が1.0%以上3.0%未満
C:カブリ値が3.0%以上5.0%未満
D:カブリ値が5.0%以上
【0139】
<3>ゴーストの評価
評価は低温低湿(L/L)環境下(15.0℃、10%RH)で行った。単色の0%印字率のベタ白画像を連続して1000枚出力した後に、単色のゴースト判定画像を出力した。ゴースト判定画像とは、転写紙の上端から5mmの位置に15mm×15mmのベタ画像を15mm間隔で横一列に7個並べ、これらのベタ画像から下をトナー載り量0.20mg/cmのハーフトーン画像としたものである。画像のハーフトーン部における15mm×15mmのベタ画像に起因する濃度差を目視で判定した。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
A:濃淡差が全く認められない
B:濃淡差が極軽微認められる
C:濃淡差が軽微に認められる
D:濃淡差がはっきりと認められる
【0140】
<4>融着の評価
評価は高温高湿(H/H)環境(32.5℃、80%RH)で行った。1%印字画像を連続して7000枚出力した後、現像容器を分解しトナー担持体の表面及び端部を目視して評価した。評価結果を表4に示す。
(評価基準)
A:トナー担持体の表面や端部にはトナー破壊や融着によるトナー規制部材とトナー担持体間への異物挟み込みによる周方向のスジが全く無い
B:トナー担持体とトナー端部シール間への異物挟み込みが若干見受けられる
C:周方向のスジが端部で1~4本見受けられる
D:周方向のスジが全域で5本以上見受けられる
【0141】
<実施例2~21>
トナー2~21に対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表4に示す。
【0142】
<比較例1~6>
トナー22~27に対して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表4に示す。
【0143】
【表4】
図1