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特開2022-187832成形装置、成形方法及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187832
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】成形装置、成形方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221213BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096032
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄希男
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AC05
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AP11
4F209AQ01
4F209AR12
4F209PA02
4F209PB01
4F209PJ06
4F209PJ26
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA31
5F146JA20
(57)【要約】
【課題】基板に向けて吐出されるインプリント材の液滴の体積をフィードバック制御するのに有利な成形装置を提供する。
【解決手段】型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、前記組成物の液滴を吐出して前記基板上に配置する吐出部と、前記基板上に配置された前記組成物の液滴を前記型で成形することで前記基板上に形成された前記組成物の膜の膜厚を計測する計測部と、前記計測部で計測された前記膜厚に基づいて前記吐出部から吐出された前記組成物の液滴の体積を求め、当該体積に基づいて前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように前記吐出部を制御する制御部と、を有することを特徴とする成形装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記組成物の液滴を吐出して前記基板上に配置する吐出部と、
前記基板上に配置された前記組成物の液滴を前記型で成形することで前記基板上に形成された前記組成物の膜の膜厚を計測する計測部と、
前記計測部で計測された前記膜厚に基づいて前記吐出部から吐出された前記組成物の液滴の体積を求め、当該体積に基づいて前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように前記吐出部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記組成物の液滴が配置される前の前記基板の表面と前記計測部との間の第1距離と、前記基板上に形成された前記組成物の膜の表面と前記計測部との間の第2距離とを計測し、前記第1距離と前記第2距離との差分を前記膜厚とすることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記計測部は、
前記基板の表面上の第1複数箇所に対して前記第1距離を計測し、
前記第1複数箇所上の前記組成物の膜の第2複数箇所に対して前記第2距離を計測し、
前記第1複数箇所における前記第1距離の平均値と前記第2複数箇所における前記第2距離の平均値との差分を前記膜厚とすることを特徴とする請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記基板上に形成された前記組成物の膜の前記基板側の第1面と前記計測部との間の第1距離と、前記組成物の膜の前記第1面とは反対側の第2面と前記計測部との間の第2距離とを計測し、前記第1距離と、前記第2距離と、前記組成物の屈折率とに基づいて、前記膜厚を求めることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項5】
前記計測部は、
前記第1面の第1複数箇所に対して前記第1距離を計測し、
前記第1複数箇所上の前記第2面の第2複数箇所に対して前記第2距離を計測し、
前記第1複数箇所における前記第1距離の平均値と、前記第2複数箇所における前記第2距離の平均値と、前記組成物の屈折率とに基づいて、前記膜厚を求めることを特徴とする請求項4に記載の成形装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積を制御することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基板上に前記組成物の液滴を配置してから前記基板上に前記組成物の膜を形成するまでの前記組成物の揮発量にも基づいて、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積を制御することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板上に前記組成物の液滴を配置してから前記基板上に前記組成物の膜を形成するまでの時間と、前記基板上に形成される前記組成物の膜の膜厚との関係を示すデータを予め取得し、前記データにも基づいて、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように、前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積を制御することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項9】
前記基板を保持し、前記型に対して前記基板を位置決めするためのステージを更に有し、
前記計測部は、前記ステージに前記基板が保持された状態で、当該基板上に形成された前記組成物の膜の膜厚を計測することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項10】
前記計測部は、前記ステージに保持された前記基板上に前記組成物の膜が形成された後、前記ステージから前記基板を搬出する前の期間において、前記組成物の膜の膜厚を計測することを特徴とする請求項9に記載の成形装置。
【請求項11】
前記型は、パターンを含み、
前記成形装置は、前記型の前記パターンを前記基板上の前記組成物の液滴に接触させることにより前記基板上の前記組成物の膜にパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項12】
前記型は、平面部を含み、
前記成形装置は、前記型の前記平面部を前記基板上の前記組成物の液滴に接触させることにより前記基板上の前記組成物の膜を平坦にすることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項13】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形方法であって、
前記組成物の液滴を吐出部から吐出して前記基板上に配置する第1工程と、
前記基板上に配置された前記組成物の液滴を前記型で成形することで前記基板上に形成された前記組成物の膜の膜厚を計測する第2工程と、
前記第2工程で計測された前記膜厚に基づいて、前記第1工程において前記吐出部から吐出された前記組成物の液滴の体積を求め、当該体積に基づいて前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように前記吐出部を制御する第3工程と、
を有することを特徴とする成形方法。
【請求項14】
請求項11に記載の成形装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、成形方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上のインプリント材(組成物)を型によって成形するインプリント処理によって、基板上にパターンを形成する微細加工技術が知られている。かかる技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上にナノメートルオーダーのパターン(構造体)を形成することができる。
【0003】
インプリント技術には、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置では、基板上にインプリント材を配置(供給)し、かかるインプリント材と型とを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させる。そして、基板上の硬化したインプリント材から型を引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する。なお、インプリント材の硬化法としては、例えば、熱によりインプリント材を硬化させる熱硬化法もある。
【0004】
インプリント装置では、一般的に、ディスペンサを用いて、インプリント材を基板上に配置する。ディスペンサは、液体吐出装置の一構成要素として、例えば、インクジェット方式によりインプリント材の液滴を吐出する機構であって、その具体的な構成は、インクジェットプリンタに一般的に用いられているインクジェットヘッドと同様である。
【0005】
インプリント装置において、基板上に正確にパターンを形成するためには、ディスペンサから吐出されるインプリント材の液滴の体積を一定にすることが必要となる。但し、ディスペンサでは、ディスペンサ内部の圧力の変化、ピエゾ素子などの駆動部の劣化、異物の付着などに起因して、インプリント材を吐出する部分の状態が変化し、ディスペンサから吐出されるインプリント材の液滴の体積が変動することがある。そこで、露光装置に関する技術ではあるが、インプリント装置に適用可能と考えられる技術として、基板上の感光剤の膜厚を計測する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-31895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、露光装置外の計測装置(外部装置)で感光剤の膜厚を計測しているため、その計測結果を、積算露光量などの露光条件にフィードバックする(反映させる)までに時間を要してしまう。このような問題は、特許文献1に開示された技術をインプリント装置に適用した場合、例えば、インプリント装置外の計測装置でインプリント材の膜厚を計測し、その計測結果を、ディスペンサの制御にフィードバックする場合にも同様に生じる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板に向けて吐出されるインプリント材の液滴の体積をフィードバック制御するのに有利な成形装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての成形装置は、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、前記組成物の液滴を吐出して前記基板上に配置する吐出部と、前記基板上に配置された前記組成物の液滴を前記型で成形することで前記基板上に形成された前記組成物の膜の膜厚を計測する計測部と、前記計測部で計測された前記膜厚に基づいて前記吐出部から吐出された前記組成物の液滴の体積を求め、当該体積に基づいて前記吐出部から吐出される前記組成物の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように前記吐出部を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、基板に向けて吐出されるインプリント材の液滴の体積をフィードバック制御するのに有利な成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】計測部の詳細な構成や機能を説明するための図である。
図3】本実施形態におけるインプリント処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】本実施形態におけるインプリント処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】物品の製造方法を説明するための図である。
図6図1に示すインプリント装置を平坦化装置として用いる場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置100は、型を用いて基板上の組成物であるインプリント材を成形する成形装置として機能する。本実施形態では、インプリント装置100は、基板上に配置(供給)された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0015】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0016】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0017】
インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0018】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0019】
インプリント装置100は、本実施形態では、インプリント材の硬化法として光硬化法を採用する。なお、インプリント装置100は、その他のエネルギー(例えば、熱)によってインプリント材を硬化させる硬化法も採用可能である。
【0020】
本明細書及び添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転及びZ軸周りの回転のそれぞれをθX、θY及びθZとする。
【0021】
インプリント装置100は、照射部7と、型保持部2と、基板ステージ6と、ディスペンサ11と、計測部13と、制御部20とを有する。また、インプリント装置100は、基板4を基板ステージ6に搬入する機能、及び、基板4を基板ステージ6から搬出する機能を有する搬送機構(不図示)を有する。
【0022】
照射部7は、光源(不図示)から発せられた光9(例えば、紫外光)を、インプリント処理に適切な状態に調整し、型1を介して、基板上のインプリント材8に照射する。光源は、例えば、i線、g線を発する水銀ランプなどを含むが、これに限定されるものではなく、型1を透過し、且つ、インプリント材8を硬化させる波長の光を発する光源であればよい。なお、インプリント装置100が熱硬化法を採用する場合には、照射部7の代わりに、例えば、基板ステージ6の近傍に、インプリント材8を硬化させるための加熱部を設ければよい。
【0023】
型1は、モールドとも呼ばれ、矩形の平面形状を有する。型1は、基板4と対向する面の中央部に、3次元状に形成された微細な凹凸のパターンを有する。型1は、照射部7からの光9を透過させることが可能な材料、例えば、石英などで構成される。
【0024】
型保持部2は、構造体3に支持される。型保持部2は、例えば、型1を保持する型チャックと、型チャックを支持して駆動する型駆動機構とを含む。型チャックは、照射部7からの光9が入射する型1の入射面の外周領域を、真空吸着力や静電力によって引き付けることで型1を保持する。型駆動機構は、基板上のインプリント材8と型1とを接触させたり、基板上のインプリント材8から型1を引き離したりするために、型1(を保持した型チャック)をZ方向に駆動する。なお、基板上のインプリント材8と型1とを接触させる動作、及び、基板上のインプリント材8から型1を引き離す動作は、基板4(を保持する基板ステージ6)をZ方向に駆動させることで実現してもよい。また、型1及び基板4の双方をZ方向に相対的に駆動させることで、基板上のインプリント材8と型1とを接触させる動作、及び、基板上のインプリント材8から型1を引き離す動作を実現してもよい。
【0025】
基板4は、本実施形態では、単結晶シリコンからなる基板である。なお、半導体デバイス以外の物品を製造する用途、例えば、光学素子であれば、基板4は、石英などの光学ガラスを採用し、発光素子であれば、GaNやSiCなどを採用する。
【0026】
基板ステージ6は、基板4を保持して、ステージ定盤5の上をXY平面内で駆動可能なステージである。基板ステージ6は、基板上のインプリント材8と型1とを接触させる際において、型1に対する基板4の位置決め、即ち、型1と基板4との位置合わせ(アライメント)に用いられる。
【0027】
ディスペンサ11は、構造体3に支持され、基板上にインプリント材8を供給する。ディスペンサ11は、インプリント材8の液滴を吐出して、基板上のショット領域(パターンを形成すべき区画領域)に、インプリント材8の液滴を所望のドロップパターンで配置する吐出部としての機能を有する。インプリント材8は、型1と基板4との間に充填される際には流動性を有し、型1で成形された後には固体である(形状を維持する)ことが求められる。本実施形態では、インプリント材8は、光9の照射によって硬化する光硬化性を有するが、物品の製造工程などの各種条件に応じて、熱硬化性や熱可塑性を有する。
【0028】
計測部13は、インプリント装置100の内部(以下、「装置内」と称する)に設けられている。計測部13は、ディスペンサ11から基板上に配置されたインプリント材8の液滴を型1で成形することで基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を計測する。本実施形態では、計測部13は、装置内において、基板ステージ6に保持された基板上にインプリント材8の膜が形成された後、基板ステージ6から基板4を搬出する前の期間において、インプリント材8の膜の膜厚を計測する。計測部13の構成や機能については、後で詳細に説明する。
【0029】
制御部20は、CPUやメモリなどを含むコンピュータで構成され、メモリに格納されたプログラムに従ってインプリント装置100の各部を制御する。制御部20は、インプリント装置100の各部の動作及び調整などを制御することで、型1を用いて基板上にインプリント材8のパターンを形成するインプリント処理を行う。また、制御部20は、本実施形態では、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積(液滴1つあたりの体積)を算出する。そして、制御部20は、算出したインプリント材8の液滴の体積に基づいて、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の変動が許容範囲に収まるように、ディスペンサ11を制御(フィードバック制御)する。制御部20は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0030】
インプリント装置100の一般的な動作、即ち、インプリント処理について概略的に説明する。まず、制御部20は、搬送機構を介して、基板4をインプリント装置100に搬入し、かかる基板4を基板ステージ6に保持させる。次いで、制御部20は、ディスペンサ11に対向する位置に基板4のショット領域(インプリント処理の対象となるショット領域)が位置するように基板ステージ6を駆動する。ここで、制御部20は、ディスペンサ11の下方で基板ステージ6を駆動しながら、ディスペンサ11から所定量のインプリント材8の液滴を吐出させることで、基板4のショット領域上にインプリント材8の液滴を配置する(配置工程)。
【0031】
次に、制御部20は、型1(のパターン)に対向する位置に基板4のショット領域(インプリント材8の液滴が配置されたショット領域)が位置するように基板ステージ6を駆動する。次いで、制御部20は、型保持部2をZ方向(下方向)に駆動して、型1と基板4とを近接させ、かかる状態で、型1及び基板4のそれぞれに設けられたマークをアライメントスコープ(不図示)で検出する。そして、制御部20は、アライメントスコープの検出結果に基づいて、基板ステージ6をX方向及びY方向に駆動して、型1と基板4との相対位置を調整する(型1と基板4とをアライメントする)。
【0032】
次に、制御部20は、型1と基板4との間隔を狭めるように型保持部2をZ方向に駆動して、基板上のインプリント材8(の液滴)と型1(のパターン)とを接触させる(接触工程)。次いで、制御部20は、基板上のインプリント材8と型1とを接触させた状態で、インプリント材8に対して照射部7からの光9を照射して、インプリント材8を硬化させる(硬化工程)。そして、制御部20は、型1と基板4との間隔が広がるように型保持部2をZ方向(上方向)に駆動して、基板上の硬化したインプリント材8から型1を引き離す(離型工程)。これにより、基板上のインプリント材8に型1のパターンに対応したパターンが形成(転写)される。その後、制御部20は、搬送機構を介して、基板4を、基板ステージ6(インプリント装置100)から搬出し、インプリント処理が終了する。
【0033】
図2(a)、図2(b)及び図2(c)は、計測部13の詳細な構成や機能を説明するための図である。計測部13は、例えば、図2(a)乃至図2(c)に示すように、分光干渉計などの測距離センサで構成される。この場合、測距離センサ(計測部13)の光源から基板4やインプリント材8に向けて発せられる光の波長は、インプリント材8を硬化させる波長ではないことが好ましい。
【0034】
図2(a)乃至図2(c)を参照して、測距離センサで構成された計測部13が、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を計測する計測処理の一例について説明する。なお、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の吐出量は、ドロップパターンによって変化する。従って、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚は、ドロップパターンごとに計測する、或いは、基準となるドロップパターンを設定して計測するとよい。
【0035】
まず、計測部13は、図2(a)に示すように、インプリント処理前の基板4の表面4a、即ち、インプリント材8の液滴が配置される前の基板4の表面4aと計測部13との間の距離(第1距離)を計測する。次いで、計測部13は、図2(b)に示すように、インプリント処理後の基板上のインプリント材8の表面8a、即ち、基板上に形成されたインプリント材8の膜の表面8aと計測部13との間の距離(第2距離)を計測する。そして、インプリント処理前の基板4の表面4aに対する計測結果とインプリント処理後の基板上のインプリント材8の表面8aに対する計測結果との差分、即ち、第1距離と第2距離との差分を、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚とする。
【0036】
また、図2(c)に示すように、計測部13は、インプリント処理後の基板上のインプリント材8の表面8a及び裏面8bのそれぞれからの反射光を同時に検出することで、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を計測することも可能である。具体的には、まず、計測部13は、基板上に形成されたインプリント材8の膜の基板側の面である裏面8b(第1面)と計測部13との間の距離(第1距離)を計測する。次いで、計測部13は、基板上に形成されたインプリント材8の膜の基板側の面とは反対側の面である表面8a(第2面)と計測部13との間の距離(第2距離)を計測する。ここで、インプリント材8の膜の裏面8bに対する計測結果とインプリント材8の膜の表面8aに対する計測結果との差分、即ち、第1距離と第2距離との差分をインプリント材8の膜の膜厚としてもよい。但し、インプリント材8の表面8a及び裏面8bのそれぞれからの反射光を同時に検出する場合、インプリント材8の屈折率によって、光路長が空気中よりも長くなるため、インプリント材8の屈折率を考慮してインプリント材8の膜の膜厚を補正するとよい。従って、インプリント材8の膜の裏面8bと計測部13との間の距離である第1距離と、インプリント材8の膜の表面8aと計測部13との間の距離である第2距離と、インプリント材8の屈折率とに基づいて、インプリント材8の膜の膜厚を求めるとよい。なお、インプリント材8の屈折率については、例えば、インプリント材8の種類ごとに、インプリント材8の種類とインプリント材8の屈折率との関係を示す屈折率情報として、予め取得しておく必要がある。
【0037】
また、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚は、基板4やインプリント材8の複数箇所(2点以上)に対する計測部13の計測結果から求めてもよい。例えば、まず、計測部13は、基板4の表面上の複数箇所(第1複数箇所)に対して、基板4の表面4aと計測部13との間の第1距離を計測する。次いで、計測部13は、基板4の表面4aの第1複数箇所上のインプリント材8の膜の複数箇所(第2複数箇所)に対して、インプリント材8の膜の表面8aと計測部13との間の第2距離を計測する。そして、基板4の表面4aの第1複数箇所における第1距離の平均値とインプリント材8の膜の第2複数箇所における第2距離の平均値との差分を、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚としてもよい。これにより、基板4に凹凸(下地パターンなど)が存在する場合であっても、場所による距離のばらつきを抑えて(均して)、第1距離や第2距離を計測することができる。なお、基板4の表面4aの第1複数箇所としては、例えば、ショット領域の中心箇所と、ショット領域の外周上の外周箇所と、中心箇所と外周箇所との間の箇所とを含む。
【0038】
一方、インプリント材8の表面8a及び裏面8bのそれぞれからの反射光を同時に検出する場合も同様である。まず、計測部13は、基板上に形成されたインプリント材8の膜の裏面8bの複数箇所(第1複数箇所)に対して、インプリント材8の膜の裏面8bと計測部13との間の第1距離を計測する。次いで、計測部13は、インプリント材8の膜の裏面8bの第1複数箇所上の表面8aの複数箇所(第2複数箇所)に対して、インプリント材8の膜の表面8aと計測部13との間の第2距離を計測する。そして、インプリント材8の膜の裏面8bの第1複数箇所における第1距離の平均値と、インプリント材8の膜の表面8aの第2複数箇所における第2距離の平均値と、インプリント材8の屈折率とに基づいて、インプリント材8の膜の膜厚を求める。
【0039】
このようにして、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚が計測されたら、制御部20は、計測部13で計測されたインプリント材8の膜の膜厚に基づいて、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積を求める。インプリント材8の液滴の体積は、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の数、計測部13で計測されたインプリント材8の膜の膜厚、及び、ショット領域の面積(インプリント材8の膜を形成する領域の面積)から算出することが可能である。例えば、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の数をN[pcs]、計測部13で計測されたインプリント材8の膜の膜厚をt[m]、ショット領域の面積をS[m]とする。この場合、インプリント材8の液滴の体積は、t[m]×S[m]/N[pcs]の計算式から算出される。
【0040】
制御部20は、計測部13で計測されたインプリント材8の膜の膜厚から算出したインプリント材8の液滴の体積を記憶して、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の変動(の推移)を把握する。そして、制御部20は、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように、ディスペンサ11を制御(フィードバック制御)する。例えば、インプリント材8の液滴の最適な体積に対して、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の変動量が±5%を超えたら、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御(調整)する。具体的には、インプリント材8の液滴の最適な体積に対して、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積が5%以上減少したら、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を減少した分だけ増加させる。一方、インプリント材8の液滴の最適な体積に対して、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積が5%以上増加したら、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を増加した分だけ減少させる。なお、5%という数字は一例であり、インプリント装置100の運用状況に応じて、任意の数字を設定することが可能である。ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御する手法としては、例えば、ディスペンサ11からインプリント材8の液滴を吐出する際に駆動させるピエゾ素子(不図示)に印加する電圧を変更する手法などがある。
【0041】
本実施形態では、装置内に設けられた計測部13で基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を計測し、かかる膜厚に基づいてディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積を求めて、ディスペンサ11をフィードバック制御する。従って、インプリント材8の膜が形成された基板4をインプリント装置100から搬出し、インプリント装置外の計測装置(外部装置)でインプリント材8の膜の膜厚を計測する必要がなくなる。これにより、計測部13の計測結果を、短時間で、ディスペンサ11(から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の制御)にフィードバックすることができる。換言すれば、本実施形態では、従来技術と比較して、ディスペンサ11のフィードバック制御に要する時間を大幅に短縮することができる。また、ディスペンサ11にから吐出されるインプリント材8の液滴の体積を一定に維持することが可能となり、インプリント材8の液滴の体積の変動による基板4への良好なパターンの形成が阻害されることを抑制(防止)することができる。
【0042】
なお、ディスペンサ11から基板4に配置されたインプリント材8の液滴は、時間が経過するにつれて、その一部が揮発して体積が減少する。従って、基板上にインプリント材8の液滴を配置してからインプリント材8の膜を形成するまでのインプリント材8の揮発量にも基づいて、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるようにするとよい。特に、基板上にインプリント材8の液滴を配置してからインプリント材8の膜を形成するまでの時間の変化は、基板上に形成されるインプリント材8の膜厚の変化との相関性が高い。そのため、インプリント材8の揮発量を考慮して、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御(補正)することが有効となる。具体的には、例えば、ディスペンサ11から基板上にインプリント材8の液滴を配置してからインプリント材8の膜を形成するまでの時間と、基板上に形成されるインプリント材8の膜の膜厚との関係を示すデータを予め取得する。そして、ディスペンサ11をフィードバック制御する際に、かかるデータにも基づいて、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の体積を制御する。なお、基板上にインプリント材8の液滴を配置してからインプリント材8の膜を形成するまでの時間以外の要因も考慮してもよい。
【0043】
以下、図3を参照して、本実施形態におけるディスペンサ11のフィードバック制御を含むインプリント処理の一例について説明する。ここでは、インプリント処理前の基板4の表面4aと計測部13との間の第1距離、及び、インプリント処理後の基板上のインプリント材8の表面8aと計測部13との間の第2距離を計測して、インプリント材8の膜の膜厚を求めるシーケンスを例に説明する。
【0044】
S1では、基板4を基板ステージ6に搬送して、かかる基板4を基板ステージ6で保持する。S2では、基板ステージ6に保持された基板4について、インプリント材8の液滴を配置する前の基板4の表面4aと計測部13との間の第1距離を計測部13で計測する。
【0045】
S3では、ディスペンサ11からインプリント材8の液滴を吐出して、基板上にインプリント材8の液滴を配置する(配置工程)。S4では、基板上のインプリント材8と型1とを接触させ(接触工程)、その状態で基板上のインプリント材8を硬化させ(硬化工程)、基板上の硬化したインプリント材8から型1を引き離す(離型工程)。これにより、基板上にインプリント材8のパターン(膜)が形成される。配置工程、接触工程、硬化工程及び離型工程を含むインプリント処理は、基板上の予め設定されたショット領域に対して実施され、かかるショット領域の全てにインプリント材8のパターンが形成される。
【0046】
S5では、インプリント材8のパターンが形成された基板4について、基板上に形成されたインプリント材8の膜の表面8aと計測部13との間の第2距離を計測部13で計測する。
【0047】
S6では、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を算出する。具体的には、S2で計測された第1距離とS5で計測された第2距離との差分を、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚として算出する。
【0048】
S7では、S6で算出されたインプリント材8の膜の膜厚に基づいて、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積を算出する。具体的には、S3でディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の数、S6で算出されたインプリント材8の膜の膜厚、及び、S4でインプリント材8のパターンが形成されたショット領域の面積から、インプリント材8の液滴の体積を算出する。
【0049】
S8では、S7で算出されたインプリント材8の液滴の体積に基づいて、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まっているかどうかを判定する。ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まっている場合には、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を変更せずに、処理を終了する。一方、ディスペンサ11から吐出されたインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まっていない場合には、S9に移行する。
【0050】
S9では、S7で算出されたインプリント材8の液滴の体積に基づいて、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積の変動が許容範囲に収まるように、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御(変更)する。例えば、ディスペンサ11がピエゾ式である場合、ピエゾ素子に印加する電圧を変更することによって、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御することができる。なお、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8の液滴の体積を制御するタイミングは、ロット単位であってもよいし、基板単位であってもよい。
【0051】
なお、基板上に形成されたインプリント材8の膜厚は、図2(c)で説明したように、インプリント材8の表面8a及び裏面8bのそれぞれからの反射光を同時に検出することによって求めてもよい。この場合、図4に示すように、図3に示すS2、S5及びS6の代わりに、S10及びS11を行う。S10では、基板ステージ6に保持され、インプリント材8の膜が形成された基板4について、インプリント材8の膜の裏面8bと計測部13との間の第1距離、及び、インプリント材8の表面8aと計測部13との間の第2距離を計測部13で計測する。S11では、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を算出する。具体的には、S10で計測された第1距離と第2距離との差分と、インプリント材8の屈折率とから、基板上に形成されたインプリント材8の膜の膜厚を算出する。
【0052】
このように、本実施形態によれば、装置内に設けられた計測部13の計測結果を短時間でディスペンサ11にフィードバックすることで、ディスペンサ11のフィードバック制御に要する時間を大幅に短縮することができる。また、インプリント処理において、ディスペンサ11にから吐出されるインプリント材8の液滴の体積を一定に維持し、インプリント材8の液滴の体積の変動による基板4への良好なパターンの形成が阻害されることを抑制することができる。
【0053】
インプリント装置100を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0054】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0055】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図5(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0056】
図5(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。図5(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0057】
図5(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0058】
図5(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。図5(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、型1として、凹凸パターンが形成された回路パターン転写用の型について説明したが、型1は、凹凸パターンが形成されていない平面部を有する型(平面テンプレート)であってもよい。平面テンプレートは、平面部によって基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化処理(成形処理)を行う平坦化装置(成形装置)に用いられる。平坦化処理は、基板上に供給された硬化性の組成物に平面テンプレートの平面部を接触させた状態で、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化性の組成物を硬化させる工程を含む。このように、本実施形態は、平面テンプレートを用いて基板上の組成物を成形する成形装置に適用することができる。
【0060】
基板上の下地パターンは、前工程で形成されたパターンに起因する凹凸プロファイルを有し、特に、近年のメモリ素子の多層構造化に伴い、基板(プロセスウエハ)は、100nm前後の段差を有することもある。基板全体の緩やかなうねりに起因する段差は、フォトリソグラフィ工程で用いられている露光装置(スキャナー)のフォーカス追従機能によって補正可能である。但し、露光装置の露光スリット面積内に収まるピッチの細かい凹凸は、そのまま露光装置の焦点深度(DOF:Depth Of Focus)を消費してしまう。基板の下地パターンを平坦化する従来技術として、SOC(Spin On Carbon)やCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの平坦化層を形成する技術が用いられている。しかしながら、従来技術では、図6(a)に示すように、孤立パターン領域Aと繰り返しDense(ライン&スペースパターンの密集)パターン領域Bとの境界部分において、40%~70%の凹凸抑制率しか得られず、十分な平坦化性能が得られない。また、今後、多層化による下地パターンの凹凸差は更に増加する傾向にある。
【0061】
この問題に対する解決策として、米国特許第9415418号には、平坦化層となるレジストのインクジェットディスペンサによる塗布と平面テンプレートによる押印で連続膜を形成する技術が提案されている。また、米国特許第8394282号には、基板側のトポグラフィ計測結果をインクジェットディスペンサによって塗布指示する位置ごとの濃淡情報に反映する技術が提案されている。インプリント装置IMPは、特に、予め塗布された未硬化のレジストに対して、型1の代わりに平面テンプレートを押し当てて基板面内の局所平面化を行う平坦加工(平坦化)装置として適用することができる。
【0062】
図6(a)は、平坦加工を行う前の基板を示している。孤立パターン領域Aは、パターン凸部分の面積が少ない。繰り返しDenseパターン領域Bにおいて、パターン凸部分の占める面積と、パターン凹部分の占める面積とは、1:1である。孤立パターン領域Aと繰り返しDenseパターン領域Bの平均の高さは、パターン凸部分の占める割合で異なった値となる。
【0063】
図6(b)は、基板に対して平坦化層を形成するレジストを塗布した状態を示している。図6(b)には、米国特許第9415418号に提案された技術に基づいてインクジェットディスペンサによってレジストを塗布した状態を示しているが、レジストの塗布には、スピンコーターを用いてもよい。換言すれば、予め塗布された未硬化のレジストに対して平面テンプレートを押し付けて平坦化する工程を含んでいれば、インプリント装置100が適用可能である。
【0064】
図6(c)に示すように、平面テンプレートは、紫外線を透過するガラス又は石英で構成され、光源からの紫外線の照射によってレジストが硬化する。平面テンプレートは、基板全体のなだらかな凹凸に対しては基板表面のプロファイルに倣う。そして、レジストが硬化した後、図6(d)に示すように、レジストから平面テンプレートを引き離す。
【0065】
なお、本発明は、インプリント装置や平坦化装置を含む成形装置に限定されるものではなく、半導体素子や液晶表示素子などを製造する製造装置などの産業機器、プリンターなどのコンシューマ製品を含む、液滴を吐出する機構を有する装置に広く適用可能である。
【0066】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0067】
100:インプリント装置 1:型 4:基板 8:インプリント材 11:ディスペンサ 20:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6