(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187837
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】断熱蓋
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20221213BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20221213BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E04B1/64 A
E04B1/76 400B
E04B1/80 100N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096038
(22)【出願日】2021-06-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】591235430
【氏名又は名称】ウチヤマコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397025107
【氏名又は名称】日本住環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 和久
(72)【発明者】
【氏名】安達 森一
(72)【発明者】
【氏名】長岡 晴義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久
(72)【発明者】
【氏名】太田 雄也
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA21
2E001GA12
2E001HD08
2E001HE02
(57)【要約】
【課題】床下空間に設けた人通口として用いる開口を閉塞が必要な際に簡単に塞ぐことができ、かつ床下点検などで開口の開放が必要な際には取り外しも簡易にできる断熱蓋を提供する。
【解決手段】断熱蓋10は、開口50に直接嵌め入れられる板状の蓋本体11と、蓋本体11の厚さ方向に配管が挿通される配管挿通部20とを備えており、蓋本体11は、その周端面側に、嵌め入れによる変形が容易とされた変形容易部12を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下の基礎部分に開設され、少なくともコンクリート端面を含む四周面に囲まれた開口に着脱自在に取り付けられる、発泡材料で製された断熱蓋であって、
前記開口に直接嵌め入れられる板状の蓋本体を備え、該蓋本体は、その周端面側に、嵌め入れによる変形が容易とされた変形容易部を備えていることを特徴とする断熱蓋。
【請求項2】
請求項1において、
前記蓋本体の厚さ方向に配管を挿通させるための挿通孔を有する配管挿通部をさらに備えていることを特徴とする断熱蓋。
【請求項3】
請求項2において、
前記配管挿通部は、前記蓋本体とは別体とされ、該蓋本体には、前記配管挿通部を着脱自在とした装着窓が開設されていることを特徴とする断熱蓋。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記配管挿通部が前記蓋本体よりも硬質な材料で製されていることを特徴とする断熱蓋。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記発泡材料を独立気泡材としたことを特徴とする断熱蓋。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記変形容易部は、断面視略台形状とされ、装着ガイド傾斜面を有することを特徴とする断熱蓋。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記変形容易部は、断面視略三角形状とされ、装着ガイド傾斜面を有することを特徴とする断熱蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下の基礎部分に開設された開口に着脱可能に取り付けられる断熱蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅等におけるユニットバスなどを用いた浴室の床下空間はコンクリート基礎の立ち上がり壁で区画されており、その区画領域の点検等をするために、コンクリート基礎には断熱蓋により開閉可能とした人通口が設けてある。
【0003】
この種の人通口としては、コンクリート基礎に設けた開口に枠体が取り付けてあり、その枠体に発泡材料等で形成された開閉可能な断熱蓋を装着することで浴室床下空間を開放または閉塞できるものが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような人通口は浴室の床下点検を行わない通常時においては、床下の断熱性を維持するために当然に閉塞しておく必要がある。つまり、床下の断熱性を維持することは、住宅の断熱性能、省エネ性能の向上に影響を与えるため、住宅の施工が完了した時点で人通口を断熱蓋によって気密状態に塞ぐ必要がある。
【0006】
しかしながら、前記従来のものは、基礎工事で形成しておくべき枠体が種々の理由により正しく取り付けられないことが多くあった。したがって、そのような場合には最終的な断熱蓋による人通口の閉塞は当然にできず、開口のまま放置されてしまうことが頻繁であった。
【0007】
なお、枠体は基礎工事の段階で形成されることが通例であるが、製品である枠体が基礎工事の段階で用意できないなどの事情により枠体が形成されないまま、基礎工事を終えることが多々ある。また、枠体の取り付けを基礎工事後の浴室施工などの段階で実施することが考えられるが、枠体を基礎に気密状態に固定するためには発泡剤の充填作業などの面倒で工数のかかる作業が発生するため、取り付けられないか、あるいは取り付けられたとしても正しく取り付けられないことがほとんどであった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、床下空間に設けた人通口として用いられる開口を閉塞が必要な際に簡単に塞ぐことができ、かつ床下点検などで開口の開放が必要な際には取り外しも簡易にできる断熱蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明の断熱蓋は、床下の基礎部分に開設され、少なくともコンクリート端面を含む四周面に囲まれた開口に着脱自在に取り付けられる、発泡材料で製された断熱蓋であって、前記開口に直接嵌め入れられる板状の蓋本体を備え、該蓋本体は、その周端面側に、嵌め入れによる変形が容易とされた変形容易部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の断熱蓋は前述した構成とされているため、床下空間に設けた人通口として用いる開口を閉塞が必要な際に簡単に塞ぐことができ、かつ床下点検などで開口の開放が必要な際には取り外しも簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る断熱蓋の取り付け態様の説明図であり、(a)は取り付け前を示す断熱蓋の斜視図、(b)は取り付け状態を示す断熱蓋(配管付き)の斜視図である。
【
図2】断熱蓋が取り付けられる浴室床下空間と浴室の一例を示す概略縦断面図である。
【
図3】(a)は断熱蓋に用いられる蓋本体の正面図、(b)は(a)のA-A線矢視断面図、(c)は蓋本体の底面図、(d)は変形容易部の断面形状(台形)の説明図、(e)は断熱蓋の装着態様を示す縦断面図である。
【
図4】(a)は配管挿通部の正面図、(b)は同平面図である。
【
図5】断熱蓋の取り外し状態の一例を示す縦断面図である。
【
図6】(a)は本発明の他の実施形態に係る断熱蓋の正面図、(b)は(a)のB-B線矢視断面図、(c)は蓋本体の底面図、(d)は変形容易部の断面形状(三角形)の説明図、(e)は断熱蓋の装着態様を示す縦断面図である。
【
図7】(a)(b)は断熱蓋の他の2例の説明図である。(a)は分解正面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、実施形態に係る断熱蓋10の基本構成を記述する。
【0013】
断熱蓋10は、床下の基礎部分30に開設され、少なくともコンクリート端面を含む四周面に囲まれた開口50に着脱自在に取り付けられる、発泡材料で製された断熱蓋10である。この断熱蓋10は、開口50に直接嵌め入れられる板状の蓋本体11を備え、蓋本体11は、その周端面側に、嵌め入れによる変形が容易とされた変形容易部12を備えている。
ついで詳述する。
【0014】
以下に説明する種々の断熱蓋10は、蓋本体10を備えるほか、配管25を通すための挿通孔21を有する配管挿通部20を備えている。この配管挿通部20は、後述するように板状の蓋本体10に組み込まれており、組み込んだ状態で略平板形状をなすものである。なお、この配管挿通部20は断熱蓋10に必須の構成部ではなく、配管挿通部20を有しない構成であってもよい。
【0015】
浴室床下空間41と居室床下空間42とを跨ぐ配管25としては例えば、冷温水の給水管が挙げられる。本実施形態では、配管25は硬質塩化ビニル管や金属管などの硬質管とされるが、軟質のホース状のものであってもよい。
【0016】
本断熱蓋10は浴室40の床下の人通口50に用いられる。
図1(a)(b)は断熱蓋10の取付態様を示す斜視図であり、
図2は浴室40と浴室床下空間41の一例を示す概略縦断面図である。なお、
図1(a)には配管25を不図示としたが、使用態様としては、
図1(b)のように配管25を配管挿通部20に通した状態で開口50に装着されて開口50は塞がれる。
【0017】
戸建て住宅の床下に配される基礎部分(コンクリート基礎)30は、ベタ基礎、布基礎のいずれにおいても、
図2に示すように、住宅の外周部や居室の区画の境界部などに立ち上がり壁31を備えており、その上に気密パッキン33を介して土台34が配されている。
【0018】
なお、本図例はベタ基礎の例であり、
図2はユニットバスで構成された浴室40とその床下部分を簡略的に図示した縦断面図である。
図2中、32はコンクリート基礎30のフーチング、35は立ち上がり壁31の浴室床下空間41側の面に沿って配される断熱材である。
【0019】
浴室床下空間41と居室床下空間42とを仕切る立ち上がり壁31には、人通口50としての開口が設けてある(
図2参照)。この人通口50に断熱蓋10が取り付けられる。
図1に示すように人通口50の開口端面51の対向する垂直2面には立ち上がり壁31のコンクリート端面が露出し、下側面にはフーチング32のコンクリート面が露出し、上側面には気密パッキン33が露出している。
【0020】
人通口50は浴室床下空間41を点検するために人が通る開口であり、点検が必要なときのみ開放し、点検を行わない通常時は断熱蓋10が装着された状態にある。
図2では、人通口50に取り付けられる断熱蓋10の位置を2点鎖線で示した。
【0021】
この人通口50は枠体を有さず、また断熱蓋10も枠体を有さない。ようするに、人通口50は立ち上がり壁31に設けられた、たんなる開口50であり、断熱蓋10は、その開口50の開口端面51に周端面が当接または圧接するように装着される嵌め入れ蓋である。
【0022】
この人通口50の開口寸法は特に限定されないが、図例のものは
図3や
図6に示した蓋本体11を用いて断熱蓋10が構成されており、つまり開口寸法は
図3や
図6で後述する寸法の蓋本体11を嵌め入れできる程度の寸法とされる。具体的には、人通口50の高さ寸法が約349~352mmであり、横幅寸法が約500~503mmであればよい。また人通口50(立ち上がり壁31)の厚さ寸法は約120mmである。
【0023】
なお、開口50はコンクリートの立ち上がり壁31に形成されたものであるから、開口端面51は不陸であったり、対向端面間が平行でなかったり、位置ずれがあったりする場合もあるが、そのような開口50にでも断熱蓋10は弾性により装着は可能である。
【0024】
前述したように断熱蓋10の主たる構成部である蓋本体11および配管挿通部20は発泡材料で製されており、断熱性を有する。蓋本体11は発泡材料であるから、木材にくらべ軟らかく、弾性を有している。
【0025】
断熱蓋10は蓋本体11と配管挿通部20とを備えており、本実施形態の断熱蓋10においては、蓋本体11と配管挿通部20とは相互に別体の発泡材料とされている。蓋本体11と配管挿通部20とを合体し、かつ配管挿通部20の挿通孔21を配管25などで塞いだ状態の断熱蓋10を人通口50に装着することで、その断熱蓋10は断熱性はもちろん、空気・水を通さない気密性を有する蓋として作用する。
【0026】
蓋本体11を構成する発泡材料としては、ニトリル系独立発泡ゴムや無架橋ポリエチレン押出積層発泡体(無架橋発泡ポリエチレン)などが特に望ましい。ニトリル系独立発泡ゴムは難燃性であり、建築材料には特に適している。また配管挿通部20を構成する発泡材料としては、蓋本体11よりも硬質なものを用いることが望ましく、例えば発泡ポリプロピレンが用いられる。もちろん、蓋本体11や配管挿通部20には他の発泡材料を用いてもよい。
【0027】
図3の蓋本体11を加工形成するために、ニトリル系独立発泡ゴム製の「アーマフレックス Class1」(「アーマフレックス」は登録商標)(アーマセル エンタープライズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト製)が用いられる。なお、蓋本体11を後述する寸法に形成するために、相異なる厚みの「アーマフレックス Class1」が用いられている。
【0028】
このニトリル系独立発泡ゴムは、発泡倍率が20倍、密度が50kg/m3、熱伝導率が0.036W/m・k、反発弾性率が70%以下、透湿係数が1.87ng/(m2・s・Pa)とされる。
【0029】
蓋本体11は、
図3に示すように長方形の板状材とされ、板面内の下部に配管挿通部20が装着される横長の装着窓14が開設されている。蓋本体11の寸法は人通口50に嵌め入れられる程度、つまり、変形容易部12が弾性を有すること、および押圧により変形が可能であることを考慮すれば、断熱蓋10の平面寸法は人通口50の縦横寸法よりもやや大きめであることが望ましい。
図3のものは例えば、高さ寸法が約365mm、横幅寸法が約515mmとされる。
【0030】
なお、変形容易部12としては弾性変形することが望ましいが、断熱蓋10の人通口50への嵌め入れ後に一部が塑性変形するものであってもよい。変形容易部12の多少の塑性変形があった状態でも断熱蓋10を何度も利用できるように、人通口50の寸法に合わせて蓋本体11の寸法を定めておけばよい。
【0031】
また、蓋本体11の厚さ寸法は立ち上がり壁31の厚さ寸法よりも小であり、立ち上がり壁31の厚み内に収まるものであることが望ましい。例えば、厚みが約120mmの立ち上がり壁31に対して、蓋本体11の厚さ寸法は約65mmとされる。
【0032】
図3に示すように、蓋本体11の四周のうち左右端部および上端部では、一方の板面側の角部が面取りされている。この傾斜面を含む、断面視(側面視)台形状の3片の柱状部位が変形容易部12とされる。なお、この台形Dは、
図3(d)に示すように一方の脚D1が垂直辺であり、その垂直辺に対応する垂直面は、蓋本体11より変形容易部12を除いた本体部13の板面13aに面一状に連なっており、また他方の脚D2が傾斜辺とされ、この傾斜辺に対応する傾斜面は面取り面であり本体部13の板面13aから延びている。
【0033】
このように変形容易部12は断面視(側面視)で外方に向けて窄まった先細り形状であり、人通口50に嵌め入れる(圧入する)際には、
図3(e)に示すように、人通口50への圧入により、台形Dの上底D3に相当する端面が蓋本体11の厚さ方向に広がるように、かつ台形Dの高さが縮まるように変形する。また、変形容易部12の傾斜面は装着ガイド傾斜面12aとして作用し、人通口50に対する装着をしやすくすることができる。
【0034】
なお本実施形態では、変形容易部12は蓋本体11の一部であり、全体として一体で同一素材のものであるから、人通口50への装着の際には、変形容易部12だけが収縮するのではなく蓋本体11が全体として上下方向および左右方向に収縮する。もちろん、変形容易部12は変形しやすい形状であるため変形の度合いは大きい。
【0035】
また、変形容易部12と、本体部13とを別素材にしてもよく、変形容易部12を本体部13よりも柔軟で変形しやすい発泡材料で形成してもよい。なお、
図3(b)(c)には変形容易部12と本体部13との仮想的な境界を破線で示した。
【0036】
断熱蓋10の人通口50への装着後の安定感と、装着のしやすさとのバランスを考慮して、変形容易部12を含む蓋本体11の素材としてニトリル系独立発泡ゴムを用いる場合の変形容易部12の台形Dの寸法としては、図例のように台形Dの下底D4の寸法を蓋本体11の厚みとした場合、高さを10~15mm程度とし、上底D3を40mm程度、下底D4を65mm程度とすることが望ましい。
【0037】
蓋本体11に設けられた装着窓14は、これに装着される配管挿通部20の形状、寸法に合わせて、上下(短手)寸法が約64mm、横幅(長手)寸法が約242mmの横長の長孔形状とされ、長手方向の両端が半円状に形成されている。この装着窓14の形成位置は、高さ方向については、その下縁位置が蓋本体11の下端から約40mmの位置とされ、横方向については蓋本体11の横幅寸法の略中央位置とされる。
【0038】
なお、
図3に示したニトリル系独立発泡ゴム製の蓋本体11は、製造方法として特に限定されず、射出成形など種々の方法で成形されればよい。
【0039】
この装着窓14に装着される配管挿通部20は、
図4に示すように、配管挿通用の4つの略同一径の挿通孔21を横並びに等間隔に有している。配管挿通部20の横幅寸法は約244mm、上下寸法は約66mmである。挿通孔21の径は約39mmであり、配管25の径よりも大とされる。また、配管挿通部20の厚さは蓋本体11の厚さと略一致している。
【0040】
配管挿通部20は、前述したように、蓋本体11の素材であるニトリル系独立発泡ゴムよりも硬質な発泡ポリプロピレン(EPP)で製されている。この配管挿通部20についても、射出成形など種々の製造方法で成形され得る。
【0041】
配管挿通部20の素材が蓋本体11の素材であるニトリル系独立発泡ゴムと同程度の軟らかさであれば、挿通孔21が配管25の径に対応した形状、寸法であって配管25が隙間なく挿通されても、配管25を挿通した後に配管25に撓みが発生し自重により挿通孔21が変形して隙間ができ、それにより断熱性、気密性が担保されなくなるおそれがある。
【0042】
しかしながら、本実施形態の断熱蓋10のように配管挿通部20として硬めの素材を用いれば、挿通孔21に配管25の自重がかかったときでも挿通孔21の変形を抑制することができる。挿通孔21は径を配管25の形状、寸法に合致させていることが望ましいが、配管25を通したときに隙間ができる場合でも、発泡ウレタンなどの発泡剤を隙間に充填して塞ぐとともに、配管25と挿通孔21とを固着するようにすればよい。
【0043】
また、
図1(b)に示すように、配管挿通用として使用しない挿通孔21には、あらかじめ用意した、断熱性を有する発泡材料で製された円柱状の断熱補助部材22を嵌着すれば、現場で挿通孔21に発泡剤を充填する手間が省け、作業の効率化が図れる。断熱補助部材22は挿通孔21に対し圧入にて装着されることが望ましい。
【0044】
このように、挿通孔21は1本の配管25に対応して開設されたものであるため、これらを配管25や断熱補助部材22で塞いだ状態にして断熱蓋10を人通口50に装着すれば、その後の断熱性、気密性は維持される。
【0045】
浴室床下空間41と居室床下空間42とに跨る配管25の断熱蓋10に対する取り付けは、配管25を施工する前において、つまり配管25が固定されていない状態において、蓋本体11と配管挿通部20とが合体された状態で、あるいは合体される前の状態において、配管25を配管挿通部20に挿通しておけばよい。
【0046】
図1、
図2に示すように、本例では断熱蓋10が居室床下空間42側より装着されるものであるから、蓋本体11の装着ガイド傾斜面12aを配した側の板面13aを人通口50に相対するように配管25を通す必要があることはいうまでもない。断熱蓋10は、このように配管25が挿通された状態で、人通口50に対し装着される。
【0047】
配管25の施工(接続固定)は、配管25を断熱蓋10に挿通させた状態の高さ位置に合うように接続調整を行えばよい。つまり、配管25の配設高さは断熱蓋10の配管挿通部20の位置によっておおむね定まる。
【0048】
断熱蓋10を人通口50に装着する際には、断熱蓋10を人通口50の正面で位置合わせし、浴室床下空間41に向け押し込めばよい。こうして断熱蓋10は人通口50に嵌め入れられる。断熱蓋10がやや大きめであれば、
図3(e)で説明したように変形容易部12が変形しながら断熱蓋10は圧入される。
【0049】
断熱蓋10を取り外す際には、配管25が挿通孔21にしっかりと固着されていれば、
図5に示すように、蓋本体11を配管挿通部20と分離させるように押し込んで配管25に沿って前方(浴室床下空間41側)にずらせばよい。浴室床下空間41側に移動した蓋本体11は、装着窓14に配管25が挿通状態にあり、装着窓14は上下の寸法が配管25の径よりも十分に大きいため前方に倒すことができ、その結果、人が人通口50を通りやすくなる。
【0050】
また、配管25と挿通孔21との間が発泡剤で固着されず相互に摺動が可能な状態であれば、蓋本体11と配管挿通部20とを一体のまま前方にずらすこともできる。あるいは配管挿通部20のみを前方に押し込み、開放された装着窓14に手指をかけて蓋本体11を引っ張り出してもよい。また、断熱補助部材22のみを配管挿通部20より外し、空いた挿通孔21に手指をかけて配管挿通部20を後方にずらし、その後、蓋本体11を取り外してもよい。
【0051】
また、配管挿通部20を上下に分離できる分離タイプとし、配管25を挿通孔21に通した後に、挿通孔21の隙間とともに上下の相対する部位に発泡剤で固着してもよい。配管挿通部20をこのような分離タイプとすれば、断熱蓋10を取り外す際に、蓋本体11を前方に押し外した後に開口50に残った配管挿通部20(
図5参照)を、固着用の発泡剤を除去しながら上下に分離すれば、それらを開口50に残すことなく移動除去することができる。したがって人がさらに通りやすくなる。
【0052】
このように、移動自由度がほとんどなく固定された硬質な配管25を人通口50に通す場合であっても、本断熱蓋10を用いれば、人通口50に対する断熱蓋の着脱は容易に行える。もちろん配管50も邪魔にはならない。
【0053】
以上のように、本断熱蓋10は周端面側に変形容易部12を有しているため、人通口50に対し、枠体を取り付けることなく、気密性を有した状態にしっかりと嵌め入れでき、また取り外しも簡易に行うことができる。よって、住宅の施工業者や床下保守作業者の負担は軽減される。
【0054】
特に、本実施形態の断熱蓋10は変形容易部12を含む蓋本体11が柔軟で弾性を有するニトリル系独立発泡ゴムで製されているため、人通口50の開口端面51に不陸がある場合でも、隙間を埋めることができ、その結果、断熱性と気密性とをともに高めることができる。
【0055】
このように、断熱蓋10は発泡材料で製され、開口50の全体が発泡材料で塞がれるため、十分な断熱効果が奏せられる。また、断熱蓋10は人通口(開口)50の全体に直接嵌め入れられて固定されるものであり、熱橋となり得る枠体や蝶番、固定具などを用いる必要がないため、別部材による断熱性の低下も発生し得ない。
【0056】
さらに、枠体や蝶番、固定具などの別部材を用いないため、製造コスト、設置工数の低減化を図れる。また、断熱蓋10は人通口50に対して平行な状態にして着脱できるため、断熱蓋10に配管25を挿通させたままで問題なく着脱作業をすることができる。なお、開き扉のような蓋であれば、蓋に配管25を通した状態にしておくことはほとんど不可能である。
【0057】
また、断熱蓋10の取り外しの際には、前述したように蓋本体11と配管挿通部20とを分離することが望ましい。
図5に示すように両部材を分離すれば、配管25が装着窓14に遊挿状態となり、蓋本体11を傾斜状などに倒すことができるため、断熱蓋10が人通口50を通る人の邪魔になることを回避できる。特に
図3の蓋本体11の例のように装着窓14が下部にあれば、さらに邪魔になりにくい。もちろん、装着窓14(配管挿通部20)を蓋本体の上部や左右の端部側などに配してもよい。
【0058】
また、装着窓14が蓋本体11の横幅方向の略中央位置に形成されているため、断熱蓋10の表裏を逆にした場合でも、断熱蓋10を問題なく開口50に取り付けることができる。この場合、蓋本体11の装着ガイド傾斜面12aが反対の面を向くこととなり装着しにくくなくなるが、本実施形態の蓋本体11はゴム系の素材で製されているため、少し撓ませることで開口50に嵌め入れることができる。
【0059】
さらに、蓋本体11の素材であるニトリル系独立発泡ゴムおよび配管挿通部20の素材である発泡ポリプロピレンは独立気泡材であるため、浴室床下空間41と居室床下空間42との間の、特に浴室床下空間41から居室床下空間42への湿気の移動を遮断することができる。また、ニトリル系独立発泡ゴムは難燃性であるため、火事が発生した際に床下空間での延焼を抑止することができる。
【0060】
図1で示した断熱蓋10の蓋本体11としては、
図6に示した蓋本体11も用いることができる。なお、
図6に示した蓋本体11に取り付けられる配管挿通部20は
図4のものと同一である。
【0061】
図6に示した蓋本体11を加工形成するために、無架橋ポリエチレン押出積層発泡体製の「ミラプランクレイヤー」(「ミラプランク」は登録商標)(株式会社JSP製)が用いられる。
【0062】
この無架橋ポリエチレン押出積層発泡体は、発泡倍率が35倍、密度が29kg/m3、熱伝導率が0.064W/m・k、圧縮強さが0.036MPa、圧縮永久歪が9.2%とされる。この素材は
図3のものよりも硬めである。
【0063】
蓋本体11は、
図6に示すように長方形の板状材とされ、下部に配管挿通部20が装着される横長の装着窓14が開設されている。蓋本体11の寸法は人通口50に嵌め入れられる程度、つまり人通口50の縦横寸法よりもやや大きめであることが望ましい。
図6のものは例えば、高さ寸法が約355mm、横幅寸法が約505mm、厚さ寸法が約75mmとされる。
【0064】
蓋本体11の四周のうち左右端部および上端部では、一方の板面側の角部が面取りされている。この傾斜面を含む、断面視三角形状の柱状部位が変形容易部12とされる。なお、この三角形Sは、
図6(d)に示すように直角三角形であり、直角を挟む2辺のうちの1辺(底辺)S1が蓋本体11の厚さ方向に配され、他の1辺(高さ辺)S2は垂直状に起立し、その辺に相当する面は板面13aに面一状に連なっている。
【0065】
このように変形容易部12は先細り形状であり、人通口50に嵌め入れる(圧入する)際には、
図6(e)に示すように、人通口50への圧入により、三角形Sの頂点に当たる直線状の先端が蓋本体11の厚さ方向に面状に広がるように、かつ三角形Sの高さが縮まるように変形する。また、変形容易部12の傾斜面は装着ガイド傾斜面12aとして作用し、人通口50に対する装着をしやすくすることができる。
【0066】
なお、
図6の例の変形容易部12も
図3のものと同様に蓋本体11の一部であり、全体として一体で同一素材のものであるから、人通口50への装着の際には、蓋本体11は全体として上下方向および左右方向に収縮する。また、変形容易部12と、本体部13とを別素材にしてもよく、変形容易部12をより柔軟な発泡材料で形成してもよい。
【0067】
断熱蓋10の装着後の安定感と装着のしやすさとのバランスを考慮して、変形容易部12を含む蓋本体11の素材として無架橋ポリエチレン押出積層発泡体を用いる場合に変形容易部12の三角形Sの寸法としては、底辺S1の寸法を蓋本体11の厚みとした場合、高さ辺S2の寸法を約15mm程度とすることが望ましい。
【0068】
装着窓14は、これに装着される配管挿通部20は
図4に示したものと同様であり、その寸法は
図3のものと同様である。この装着窓14の形成位置は、高さ方向については、その下縁位置が蓋本体11の下端から約39mmの位置とされ、横方向については蓋本体11の横幅方向の略中央位置とされる。
【0069】
なお、この装着窓14に装着される配管挿通部20は
図3の蓋本体11に取り付けられる
図4のものと同様のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
また、配管挿通部20の素材は発泡ポリプロピレンであり、無架橋ポリエチレン押出積層発泡体よりも硬質であるため、配管25の自重がかかったときの挿通孔21の変形を抑制することができる。
【0071】
以上のように、本断熱蓋10は周端面側に変形容易部12を有しているため、
図3のものと同様、人通口50に対し、枠体を取り付けることなく、気密性を有した状態にしっかりと取り付けでき、取り外しも簡易に行える。よって、戸建て住宅の施工業者や床下保守作業者の負担を軽減することができる。もちろん断熱蓋10は発泡材料で製されているため、従来のものと同様に、断熱効果を上げることができる。
【0072】
なお、本蓋本体11は、素材である無架橋ポリエチレン押出積層発泡体が
図3の蓋本体11の素材であるニトリル系独立発泡ゴムよりも硬めであるため変形しにくい。しかしながら、変形容易部12は三角形状に形成され、特に人通口50の開口端面51に当接する部位やその近傍が薄く形成されているため変形がしやすく、よって断熱蓋10の人通口50への装着はしやすい。
【0073】
また、発泡材料で製された配管挿通部20が隙間なく蓋本体11に合体され、かつ配管25は挿通孔21に発泡剤の充填により隙間なく固着され、断熱補助部材22も隙間なく挿通孔21に挿通されているので、気密性や断熱性が損なわれることを防止できる。
【0074】
さらに、蓋本体11の素材である無架橋ポリエチレン押出積層発泡体および配管挿通部20の素材である発泡ポリプロピレンは独立気泡材であるため、浴室床下空間41と居室床下空間42との間の、特に浴室床下空間41から居室床下空間42への湿気の移動を遮断することができる。
【0075】
図3および
図6に示したように、蓋本体11の開口端面51への当接部位である変形容易部12をより変形しやすくするために、端部側では薄厚状とすることが望ましい。さらに装着ガイド傾斜面12aを有することが望ましい。
【0076】
変形容易部12は台形状(
図3参照)や三角形状(
図6参照)とすることが特に望ましいが、他の形状の台形Dや他の形状の三角形Sであってもよいし、先端が窄まった他の形状のもの、例えば半円状や1/4円状のものであってもよい。
【0077】
ついで、
図3の蓋本体11に用いたニトリル系独立発泡ゴム「アーマフレックス Class1」(「アーマフレックス」は登録商標)(以下、A材と略す)、および、
図6の蓋本体に用いた(2)無架橋ポリエチレン押出積層発泡体「ミラプランクレイヤー」(「ミラプランク」は登録商標)(以下、M材と略す)について実施した低温縮試験について説明する。
【0078】
低温縮試験は、表1に示すようにA材とM材について、常温(17.9℃)および業務用冷蔵庫を用いた低温(表1の6段階温度)での実寸測定により実施された。各温度における測定タイミングは各温度で2時間放置したタイミングである。なお、常温での寸法は
図3および
図6と同じ材料であるが若干の誤差がある。
【0079】
【0080】
厚みについては、A材とM材はともに常温および6段階の低温のいずれにおいても変化はなかった。高さについては、A材とM材はともに17.9℃から-6℃までの間で7mm収縮した。横幅については、A材は17.9℃から-6℃までの間で2mm収縮し、M材は17.9℃から-6℃までの間で7mm収縮した。
【0081】
浴室床下空間41において前記のような温度変化があるとすれば、人通口50の寸法が前述したような寸法(例えば高さ349mm、横幅500mm)であれば、M材の場合、低温(-2℃)になったときに外れるおそれがある。またA材であっても、-6℃になれば多少の弛みが生じる。
【0082】
しかしながら、浴室床下空間41は0℃以下になることはほとんどなく、寒冷地であっても6~8℃程度に維持されており、前述した寸法の人通口50に
図3で用いたA材を適用させることに問題はなく、また前述した寸法の人通口50に
図6で用いたM材を適用させることに問題はない。
【0083】
断熱蓋10の蓋本体11として、実施形態としてはA材およびM材を用いたが、無架橋ポリプロピレン型内発泡体「ピーブロック」(登録商標)(株式会社JSP製)、押出法ポリスチレンフォーム「カネライトフォーム・スーパーE-3b」(「カネライトフォーム・スーパー」は登録商標)(株式会社カネカ製)、プラスフォーム板(東洋コルク株式会社製)などを用いることもできる。なお、これらの発泡材料についても低温縮試験を実施したが、温度変化による収縮量はA材、M材よりも小さかった。
【0084】
以上に説明した断熱蓋10は蓋本体11と配管挿通部20とは、配管挿通部20の着脱を自在とした相互に別体のものであるが、相互に分離できない一体のものとしてもよい。つまり、その場合、断熱蓋10の人通口50への着脱は、蓋本体11と配管挿通部20とを一体として取り扱うことはいうまでもない。
【0085】
蓋本体11と配管挿通部20とを一体とした断熱蓋10として、
図7(a)(b)に示した2例のものが挙げられる。これらの断熱蓋10も、人通口50への着脱を容易かつ確実にすることができ、なおかつ配管挿通部20の挿通孔21に挿通された配管25の自重による隙間の形成を抑制できるものとすることが望ましい。
【0086】
図7(a)に示した断熱蓋10は、蓋本体11の本体部13と配管挿通部20とをその境界部が識別されることなく同一素材で一体としたものである。蓋本体11に含まれる変形容易部12を軟らかめの素材で形成し、相互に一体とされる本体部13と配管挿通部20とを硬めの素材で形成することが望ましい。
【0087】
図7(a)の断熱蓋10の場合、変形容易部12を本体部13とは別に形成しておき、その変形容易部12を本体部13に接着剤などで固着して一体としてもよいし、2色成型にて変形容易部12と本体部13とを一体に形成してもよい。
【0088】
図7(b)に示した断熱蓋10のように、蓋本体11の本体部13と配管挿通部20とを一体とする場合であっても、それらの素材の硬軟関係を
図3、
図4のものと同様に異ならせてもよい。例えば2色成型で一体に形成してもよい。この場合、蓋本体11は変形容易部12を一体に含むように形成されればよい。
【0089】
図7の2例のように、本体部13と変形容易部12とが固定され一体となっているものであれば、それらの間に隙間ができるおそれはなく、一定の断熱性、気密性を確保することができる。
【0090】
また、その他の断熱蓋10として、変形容易部12、本体部13、配管挿通部20の3構成部を相互に異なる硬度の発泡材料で形成してもよい。その場合、変形容易部12を最も軟らかくし、配管挿通部20を最も硬くし、本体部13をそれらの中間の硬度とすればよい。
【0091】
また、以上に説明した断熱蓋10では、変形容易部12は蓋本体11の下側端部を除く3端部に設けてあるため、装着後に断熱蓋10が安定した状態を維持することができる。もちろん変形容易部12は4端部に設けてもよいし、隣り合う2端部のみ、あるいは1端部のみに設けてもよい。なお、変形容易部12を1端部のみに設けたものでは、それに隣接する対向両端部間の寸法は人通口50に隙間なく装着される寸法であることが望ましい。
【0092】
なお、以上に説明した実施形態に関する断熱蓋10は一例にすぎない。各図例以外の形状や寸法に適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0093】
10 断熱蓋
11 蓋本体
12 変形容易部
12a 装着ガイド傾斜面
D 台形
S 三角形
13 本体部
13a 板面
14 装着窓
20 配管挿通部
21 挿通孔
22 断熱補助部材
25 配管
30 基礎部分(コンクリート基礎)
31 立ち上がり壁
32 フーチング
33 気密パッキン
34 土台
35 断熱材
40 浴室
41 浴室床下空間
42 居室床下空間
50 人通口(開口)
51 開口端面