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特開2022-187851コンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187851
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】コンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H02M3/28 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096058
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 能成
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB66
5H730BB98
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730EE60
5H730EE77
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730FD61
5H730FF09
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】回路の複雑化を回避しつつ、出力電圧の制御範囲を拡大させることができるコンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法を提供すること。
【解決手段】バッテリに接続される一次側スイッチング部と、モータに接続される二次側スイッチング部と、前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が前記モータ側に出力されるように少なくとも前記二次側スイッチング部を制御する制御部と、を備える、コンバータ。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続される一次側スイッチング部と、
モータに接続される二次側スイッチング部と、
前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、
所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が前記モータ側に出力されるように少なくとも前記二次側スイッチング部を制御する制御部と、を備える、
コンバータ。
【請求項2】
前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構を更に備える、
請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータが回生動作を実行する際に、前記切替え機構を制御して、前記トランスの巻数比を切り替えさせる、
請求項2に記載のコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータが回生動作を実行する際に、前記切替え機構を制御して、前記第二次側スイッチング部から前記一次側スイッチング部への昇圧比を上昇させる、
請求項3に記載のコンバータ。
【請求項5】
LLC共振型コンバータである請求項1から4のうちいずれか1項に記載のコンバータであって、
前記制御部は、PNM(Pulse Number Modulation)制御によって、前記出力波形プロファイルに沿った電圧を前記二次側スイッチング部に生成させる、
コンバータ。
【請求項6】
バッテリに接続される一次側スイッチング部と、
モータに接続される二次側スイッチング部と、
前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、
前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構と、を備えるコンバータの制御装置であって、
前記制御装置は、
所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が前記モータ側に出力されるように少なくとも前記二次側スイッチング部を制御する制御部と、を備える、
コンバータの制御装置。
【請求項7】
バッテリに接続される一次側スイッチング部と、
モータに接続される二次側スイッチング部と、
前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、
前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構と、を備えるコンバータの制御方法であって、
前記制御方法は、
所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が出力されるように前記スイッチング素子を制御する、
コンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LLC共振型コンバータは、負荷の状況に応じて、電圧ゲインが変化したり、共振周波数が変化する。さらに、LLC共振型コンバータは、出力電圧の制御範囲が狭く、通常は出力電圧の広範な制御を必要としない用途に使用される。このような問題に対処するために、例えば、特許文献1には、パルス生成器を用いて、PFM(Pulse Frequency Modulation)やPPM(Pulse Phase shift Modulation)などの制御方式を切り替える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013-186991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、出力電圧の制御範囲を広くするために、制御方式に応じた複数の回路を用意する必要があり、回路が複雑化する場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、回路の複雑化を回避しつつ、出力電圧の制御範囲を拡大させることができるコンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るコンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法は、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係るコンバータは、バッテリに接続される一次側スイッチング部と、モータに接続される二次側スイッチング部と、前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が前記モータ側に出力されるように少なくとも前記二次側スイッチング部を制御する制御部と、を備えるものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記コンバータは、前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構を更に備えるものである。
【0008】
(3):前記制御部は、前記モータが回生動作を実行する際に、前記切替え機構を制御して、前記トランスの巻数比を切り替えさせるものである。
【0009】
(4):前記制御部は、前記モータが回生動作を実行する際に、前記切替え機構を制御して、前記第二次側スイッチング部から前記一次側スイッチング部への昇圧比を上昇させるものである。
【0010】
(5):前記コンバータは、LLC共振型コンバータである上記(1)から(4)のうちいずれかの態様コンバータであって、前記制御部は、PNM(Pulse Number Modulation)制御によって、前記出力波形プロファイルに沿った電圧を前記二次側スイッチング部に生成させるものである。
【0011】
(6):この発明の別の態様に係るコンバータの制御装置は、バッテリに接続される一次側スイッチング部と、モータに接続される二次側スイッチング部と、前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構と、を備えるコンバータの制御装置であって、前記制御装置は、所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が前記モータ側に出力されるように少なくとも前記二次側スイッチング部を制御する制御部と、を備えるものである。
【0012】
(7):この発明の別の態様に係るコンバータの制御方法は、バッテリに接続される一次側スイッチング部と、モータに接続される二次側スイッチング部と、前記一次側スイッチング部と前記二次側スイッチング部との間に設けられるトランスと、前記トランスの巻数比を切り替える切替え機構と、を備えるコンバータの制御方法であって、前記制御方法は、所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が出力されるように前記スイッチング素子を制御するものである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)の態様によれば、回路の複雑化を回避しつつ、出力電圧の制御範囲を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るコンバータを備える電力変換装置が採用された車両の構成の一例を示す図である。
図2】車両が備える電力変換装置の全体構成の一例を示す図である。
図3】電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図4】電力変換装置において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
図5】電力変換装置が備えるコンバータの構成の一例を示す図である。
図6】コンバータの一次側フルブリッジ回路と二次側フルブリッジ回路が出力する波形の一例を示す図である。
図7】コンバータが備える制御部の機能構成の一例を示す図である。
図8】コンバータが備える制御部によって実行されるPNM制御を説明するための図である。
図9】コンバータが備える制御部によって実行されるPNM制御を説明するための別の図である。
図10】コンバータによって生成される電圧波形と、PNM制御によって出力されるパルス列との間の関係の一例を示す図である。
図11】制御装置100と制御部304との間の協働によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明のコンバータ、コンバータの制御装置、およびコンバータの制御方法の実施形態について説明する。
【0016】
[車両の構成]
図1は、実施形態に係る電力変換装置が採用された車両の構成の一例を示す図である。車両1は、走行用のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって駆動される電動機(電動モータ)によって走行する電気自動車(EV:Electric Vehicle)(以下、単に、「車両」という)である。本発明が適用される車両は、例えば、四輪の車両のみならず、鞍乗り型の二輪の車両や、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両、さらには、アシスト式の自転車など、走行用のバッテリから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する車両の全般であってもよい。車両1は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなど、燃料をエネルギー源とする内燃機関の稼働によって供給される電力をさらに組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車(HEV)であってもよい。
【0017】
車両1は、例えば、走行用モータ10と、駆動輪12と、ブレーキ装置14と、減速機16と、バッテリ20と、バッテリセンサ22と、電力変換装置30と、電力センサ35と、運転操作子50と、車両センサ60と、外部接続装置80と、制御装置100と、を備える。
【0018】
走行用モータ10は、車両1の走行用の回転電機である。走行用モータ10は、例えば、三相交流電動機である。走行用モータ10の回転子(ロータ)は、減速機16に連結されている。走行用モータ10は、バッテリ20から電力変換装置30を介して供給される電力によって駆動(回転)される。走行用モータ10は、自身の回転動力を減速機16に伝達させる。走行用モータ10は、車両1の減速時の運動エネルギーを用いた回生ブレーキとして動作して発電してもよい。
【0019】
駆動輪12に配置されたブレーキ装置14は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、を備える。ブレーキ装置14は、ブレーキペダル(不図示)に対する車両1の利用者(運転者)による操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてもよい。ブレーキ装置14は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0020】
減速機16は、例えば、デファレンシャルギアである。減速機16は、駆動輪12が連結された車軸に、走行用モータ10が連結された軸の駆動力、つまり、走行用モータ10の回転動力を伝達させる。減速機16は、例えば、複数の歯車や軸が組み合わされ、変速比(ギア比)に応じて走行用モータ10の回転速度を変速して車軸に伝達させる変速機構、いわゆる、トランスミッション機構を含んでもよい。減速機16は、例えば、走行用モータ10の回転動力を車軸に直接的に連結または分離するクラッチ機構を含んでもよい。
【0021】
バッテリ20は、例えば、リチウムイオン電池などのように、充電と放電とを繰り返すことができる二次電池を蓄電部として備えるバッテリである。バッテリ20は、例えば、カセット式のバッテリパックなど、車両1に対して容易に着脱可能な構成であってもよいし、車両1に対する着脱が容易ではない据付式の構成であってもよい。バッテリ20が備える二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ20が備える二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池、ナトリウムイオン電池などの他、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池なども考えられるが、二次電池の構成は、いかなるものであってもよい。バッテリ20は、車両1の外部の充電器(不図示)から導入される電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を、車両1を走行させるために放電する。バッテリ20は、電力変換装置30を介して供給された、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10が発電した電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を車両1の走行(例えば、加速)のために放電する。
【0022】
バッテリ20には、バッテリセンサ22が接続されている。バッテリセンサ22は、バッテリ20の電圧や、電流、温度などの物理量を検出する。バッテリセンサ22は、例えば、電圧センサ、電流センサ、温度センサを備える。バッテリセンサ22は、電圧センサによってバッテリ20の電圧を検出し、電流センサによってバッテリ20の電流を検出し、温度センサによってバッテリ20の温度を検出する。バッテリセンサ22は、検出したバッテリ20の電圧値、電流値、温度などの情報(以下、「バッテリ情報」という)を制御装置100に出力する。
【0023】
電力変換装置30は、バッテリ20から供給(放電)された直流の電力(直流電力)を、走行用モータ10に電力を供給する際の電圧に昇圧あるいは降圧し、さらに、走行用モータ10を駆動するための交流の電力(交流電力)に変換して走行用モータ10に出力する。電力変換装置30は、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10により発電された交流電力を直流電力に変換し、さらに、バッテリ20に充電させる際の電圧に昇圧あるいは降圧してバッテリ20に出力して蓄電させる。つまり、電力変換装置30は、例えば、DC―DCコンバータとAC―DCコンバータとを合わせたものと同様の機能、あるいはインバータと同様の機能を実現する。電力変換装置30は、バッテリ20から供給(放電)された直流電力を、例えば、緊急時などにおいて家庭用の電化製品を稼働させるためや、売電などで電力系統に供給するための交流電力に変換して外部接続装置80に出力することもできる。このとき、電力変換装置30は、電力の出力先に合わせて昇圧あるいは降圧してから出力することができる。
【0024】
[車両が備える電力変換装置の構成]
図2は、車両1が備える電力変換装置30の全体構成の一例を示す図である。図2には、電力変換装置30に関連するバッテリ20および走行用モータ10も併せて示している。走行用モータ10が単相交流電動機である場合、一つの電力変換装置30が出力する交流電力で走行用モータ10を駆動することができるが、上述したように、走行用モータ10が三相交流電動機である場合、三相交流のそれぞれの相(U相、V相、W相)に交流電力を出力する必要がある。このため、車両1では、図2に示したように、三つの電力変換装置30(電力変換装置30U、電力変換装置30V、および電力変換装置30W)のそれぞれが出力する交流電力で走行用モータ10を駆動する。電力変換装置30Uと、電力変換装置30Vと、電力変換装置30Wとのそれぞれは、同じ構成であってもよいし、一部の構成要素が共通化された構成であってもよい。電力変換装置30Uと、電力変換装置30Vと、電力変換装置30Wとのそれぞれは、同じ電圧波形の交流電力を出力する。このため、車両1では、例えば、それぞれの電力変換装置30が出力した交流電力を差動合成することによって、同じ電圧波形で位相が異なる(位相が120°ずれている)交流電力に変換してから、走行用モータ10に出力する。
【0025】
図1に戻り、電力変換装置30における走行用モータ10側の電力配線には、電力センサ35が取り付けられている。電力センサ35は、例えば、電力計や、電圧計、電流計などの計測器を備え、これらの計測器の計測値に基づいて、電力変換装置30が走行用モータ10に出力している電力(以下、「出力電力」という)を計測する。電力センサ35は、計測した電力変換装置30の出力電力の情報(以下、「出力電力情報」という)を制御装置100に出力する。
【0026】
運転操作子50は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステアリングホイール、ジョイスティック、その他の操作子を含む。運転操作子50には、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作の有無、あるいは操作量を検出するセンサが取り付けられている。運転操作子50は、センサの検出結果を、制御装置100に出力する。例えば、アクセルペダルには、アクセル開度センサが取り付けられ、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出し、検出した操作量をアクセル開度として制御装置100に出力する。例えば、ブレーキペダルには、ブレーキ踏量センサが取り付けられ、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出し、検出した操作量をブレーキ踏量として制御装置100に出力する。アクセル開度は、車両1の走行において運転者が、バッテリ20から走行用モータ10への電力の供給を制御装置100に指示(要求)するための情報である。言い換えれば、アクセル開度は、運転者によって要求された走行用モータ10に供給させる電力量を表す情報である。
【0027】
車両センサ60は、車両1の走行状態を検出する。車両センサ60は、例えば、車両1の速度を検出する車速センサや、車両1の加速度を検出する加速度センサを備える。車速センサは、車両1の速度を検出し、検出した車両1の車速の情報を制御装置100に出力する。車速センサは、例えば、車両1のそれぞれの駆動輪12に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合することにより、車両1の速度(車速)を導出(検出)してもよい。加速度センサは、車両1の加速度を検出し、検出した車両1の加速度の情報を制御装置100に出力する。車両センサ60は、例えば、車両1の鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサや、車両1の向きを検出する方位センサなどを備えてもよい。この場合、それぞれのセンサは、検出した検出結果を制御装置100に出力する。
【0028】
外部接続装置80は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子やアクセサリソケット(いわゆる、シガーソケット)などの電源供給用のコネクタ、家庭用の電化製品やパーソナルコンピュータを動作させるための商用電源のコンセント、売電を行う際に電力系統に接続するためのコネクタなどである。
【0029】
制御装置100は、運転操作子50が備えるそれぞれのセンサにより出力された検出結果、つまり、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作に応じて、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。例えば、制御装置100は、アクセル開度センサが検出したアクセル開度に応じて、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。このとき、制御装置100は、例えば、自身が制御している変速機構の変速比(ギア比)や、車両センサ60により出力された走行状態情報に含まれる車速なども考慮して、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。言い換えれば、制御装置100は、走行用モータ10の駆動力を制御する。
【0030】
制御装置100は、さらに、車両1が走行する際に、バッテリ20から走行用モータ10に供給させる交流電力の供給量や、供給する交流電力の周波数(つまり、電圧波形)を制御する。このため、制御装置100は、交流電力の供給量や電圧波形を変更するための情報を電力変換装置30に出力する。より具体的には、制御装置100は、交流電力の電圧値や、バッテリ20から直流電力を出力させるタイミング、交流の電圧波形を生成するための出力波形プロファイル、出力波形プロファイルの切り替えタイミングなどの情報を電力変換装置30に出力する。
【0031】
[電力変換装置の構成]
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置30の構成の一例を示す図である。図3には、電力変換装置30に関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示している。図3に示した電力変換装置30は、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置30である。従って、負荷LDは、車両1が備える走行用モータ10におけるいずれかの相の誘導負荷(インダクティブロード)である。電力変換装置30は、例えば、電圧波形生成部30VGと、単相変換器30PCと、を備える。
【0032】
電圧波形生成部30VGは、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。単相変換器30PCは、電圧波形生成部30VGが生成した電圧波形の電力を負荷LDに供給する際に、偶数番目の半波を反転させることによって正弦波の電圧波形に変換する。電圧波形生成部30VGは、例えば、コンバータ300と、コンバータ310-1と、スイッチング素子S5と、スイッチング素子S5Rと、を備える。単相変換器30PCは、例えば、四つのスイッチング素子(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)を備える。
【0033】
コンバータ300と、スイッチング素子S5と、スイッチング素子S5Rは、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、入力または設定された出力波形プロファイルに基づいた電圧波形の出力電力を出力する。出力波形プロファイルは、例えば、制御装置100によって逐次入力あるいは設定される。出力波形プロファイルは、コンバータ300が備える制御部が逐次切り替えてもよい。コンバータ300の構成は、後述する。
【0034】
スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれは、半導体スイッチング素子である。スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれによって、負荷LDに電力を供給するスイッチング回路が構成されている。図3では、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれが、電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)である場合の一例を示している。スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれは、例えば、制御装置100による導通状態と非導通状態との制御に応じて、負荷LDに供給される電力の方向(負荷LDを流れる電流の方向)を切り替える。制御装置100は、負荷LDの第1端a側に接続されているスイッチング素子S1と負荷LDの第2端b側に接続されているスイッチング素子S4とを同じ組として制御し、負荷LDの第1端a側に接続されているスイッチング素子S2と負荷LDの第2端b側に接続されているスイッチング素子S3とを同じ組として制御する。これにより、制御装置100が、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とを導通状態にし、スイッチング素子S2とスイッチング素子S3とを非導通状態にした場合、負荷LDには、第1端a側から第2端b側に電流が流れる。逆に、制御装置100が、スイッチング素子S2とスイッチング素子S3とを導通状態にし、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とを非導通状態にした場合、負荷LDには、第2端b側から第1端a側に電流が流れる。これにより、コンバータ300から出力電力が出力されていない場合には、負荷LDに供給される電力の電圧波形が、矩形波形となる。このとき、例えば、制御装置100は、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれを導通状態と非導通状態とに制御するタイミングを、三相交流の他の相に対応する電力変換装置30が備えるスイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれを導通状態と非導通状態とに制御するタイミングとずらすことによって、負荷LDに供給される矩形波形の電力の位相を異ならせる(位相が120°ずらす)ようにしてもよい。
【0035】
スイッチング素子S5は、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。図3では、スイッチング素子S5が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。スイッチング素子S5は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。制御装置100は、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合、スイッチング素子S5が備えるスイッチを非導通状態に制御する。これにより、スイッチング素子S5は、コンバータ300から出力される出力電力が負荷LD側(つまり、走行用モータ10)に供給されるのを許容し、コンバータ300から出力される出力電力がバッテリ20の正極側に供給されるのを阻止する。一方、制御装置100は、走行用モータ10が回生ブレーキとして動作して発電した電力をバッテリ20に充電させる場合、スイッチング素子S5が備えるスイッチを導通状態に制御する。これにより、スイッチング素子S5は、負荷LDから出力される出力電力がバッテリ20の正極側に供給されるのを許容する。
【0036】
スイッチング素子S5Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1との接続を切り替える。図4では、スイッチング素子S5Rが、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S5Rが備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S5Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1とを接続(直列接続)させる。一方、制御装置100が、スイッチング素子S21Rが備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S5Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1とを切断させる。
【0037】
コンバータ310-1は、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、矩形波形の電圧波形を生成する。
【0038】
[電力変換装置が生成する電圧波形]
図4は、電力変換装置30において生成する電圧波形の一例を説明する図である。図4には、スイッチング素子S5が電界効果トランジスタFETで構成されている場合の電力変換装置30の一例を示している。図4には、関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示した電力変換装置30の構成図に、それぞれの箇所での電圧波形の一例を示している。
【0039】
電力変換装置30では、コンバータ310-1は、制御装置100によるスイッチング回路(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)の制御に従って、図4の(a)に示したような電圧波形が矩形の電力E1を生成する。つまり、電力変換装置30においてスイッチング回路は、制御装置100からの制御に従って、負荷LDである走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形波形の電力E1を生成して出力する。より具体的には、制御装置100による所定の周期での制御に従って、オン保持期間Phにおいてバッテリ20が放電する直流電力の電圧値(図4の(a)では200[V])を保持し、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps2において電圧値が0[V]となるような矩形波形の電力E1を生成する。図4の(a)に示した矩形波形の電力E1は、コンバータ310-1から出力電力が出力されていない、つまり、制御装置100が電力変換装置30の動作を停止させている場合にスイッチング回路が生成する電圧波形である。図4の(a)に示した電力E1の電圧波形は、車両1を走行させる場合において負荷LDに電力を供給する際に、電流経路P1を通って負荷LDに電力が供給される場合の一例である。電流経路P2を通って負荷LDに電力が供給される場合の電力E1の電圧波形は、図4の(a)に示した電力E1の電圧波形を反転させたものと等価である。
【0040】
電力変換装置30では、制御装置100によりコンバータ300の動作が開始されると、コンバータ300は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、図4の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2を生成して出力する。制御装置100が入力または設定する出力波形プロファイルは、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から、スイッチング回路が出力する電力E1の電圧波形を減算した電圧波形を生成するためのものである。より具体的には、出力波形プロファイルは、第1~第5の五つの出力波形プロファイルにより構成される。第1出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値が、バッテリ20が放電する直流電力の電圧値(以下、「直流電圧値」という)よりも低いスイッチング期間Ps1の期間において、正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態から上昇させるプロファイルである。第2出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときに、出力電力E2の電圧値をゼロにさせるプロファイルである。第3出力波形プロファイルは、オン保持期間Phの期間において、出力電力E2の電圧値がゼロの状態から正弦波の半波と同様に上昇させ、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときから正弦波の半波と同様に下降させるプロファイルである。第4出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになったときに、出力電力E2の電圧値を直流電圧値と等しくさせるプロファイルである。第5出力波形プロファイルは、スイッチング期間Ps2の期間において、出力電力E2の電圧値が直流電圧値と等しい状態から正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態まで下降させるプロファイルである。制御装置100は、スイッチング回路を制御するタイミングに合わせて、これらの五つの出力波形プロファイルをコンバータ300に順次入力または設定することにより、図4の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2をコンバータ300から出力させる。
【0041】
電力変換装置30では、スイッチング素子S5の負荷LD側で、電力E1とコンバータ300が出力した出力電力E2とが合わされる。つまり、電力変換装置30では、スイッチング素子S5の負荷LD側で、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とが波形合成される。これにより、図4の(c)に示したように、バッテリ20が放電する直流電圧値の2倍の電圧値(図4の(c)では400[V])であり、電圧波形が、電圧値=0[V]を基準とした正弦波の半波である電力が負荷LDの端子に供給される。より具体的には、電流経路P1で負荷LDに電力を供給する場合には第2端b側に、電流経路P2で負荷LDに電力を供給する場合には第1端a側に、直流電圧値の2倍の電圧値の電力が供給される。
【0042】
ところで、電力変換装置30では、図4の(a)に示したような矩形波形の電力E1を生成するために、制御装置100がスイッチング回路を制御している。このため、負荷LDに流れる電流の方向は、電流経路P1で負荷LDに電力を供給する場合と、電流経路P2で負荷LDに電力を供給する場合とで逆向きになる。これにより、負荷LDには、図4の(d)に示したように、電圧波形が走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波(全波)の電力が供給される。これにより、走行用モータ10は、供給された正弦波の電力によって駆動(回転)する。
【0043】
[コンバータの構成]
図5は、電力変換装置30が備えるコンバータ300の構成の一例を示す図である。図5に示したコンバータ300は、例えば、LLC共振型コンバータ302と、制御部304と、を備える。
【0044】
LLC共振型コンバータ302は、電界効果トランジスタFET1、FET2、FET3、およびFET4と、電界効果トランジスタFET5、FET6、FET7、およびFET8(以下、「電界効果トランジスタFET」と総称する場合がある)とがブリッジ接続された一次側フルブリッジ回路と二次側フルブリッジ回路との間にトランスTが接続され、かつ一次側フルブリッジ回路にコンデンサCおよびインダクタLが直列に接続された、LLC方式の双方向絶縁型コンバータである。二次側フルブリッジ回路は、さらに、トランスの巻数比を切り替える切替え機構SMを備え、切替え機構SMでは、電界効果トランジスタFET9およびFET10の組、電界効果トランジスタFET11およびFET12の組、および電界効果トランジスタFET13およびFET14の組がトランスTに並列接続されている。通常は、電界効果トランジスタFET9およびFET10の組がトランスと通電しているが、制御部304から出力されたゲート駆動信号に応じて、電界効果トランジスタFET11およびFET12の組と、電界効果トランジスタFET13およびFET14の組とのうちの1つをトランスTに通電させることもできる。これにより、図5に示す通り、選択された電界効果トランジスタの組に応じて、トランスの巻数比が切り替えられる。電界効果トランジスタFET1、FET2、FET3、およびFET4を含む回路部SW1は、「一次側スイッチング部」の一例であり、電界効果トランジスタFET5、FET6、FET7、およびFET8を含む回路部SW2は、「二次側スイッチング部」の一例である。
【0045】
後述する通り、制御部304は、PNM(Pulse Number Modulation)制御によって電界効果トランジスタFETを制御するため、二次側フルブリッジ回路の電圧は一次側フルブリッジ回路の電圧よりも低く、トランスTの巻数比がそのままである場合、二次側フルブリッジ回路の電圧を一次側フルブリッジ回路の電圧にまで昇圧することは困難である。一方、走行用モータ10が回生動作を実行する際に出力される電圧は、バッテリ20の電圧よりも低いため、回生動作の際には、二次側フルブリッジ回路から一次側フルブリッジ回路に出力される電圧を昇圧する必要がある。そのため、制御部304は、走行用モータ10が回生動作を実行する際に、上記の切替え機構SMを制御して、二次側フルブリッジ回路から一次側フルブリッジ回路への昇圧比を上昇させるように巻数比を切り替えさせる。より具体的には、制御部304は、電界効果トランジスタFET9およびFET10の組から、電界効果トランジスタFET11およびFET12の組又は電界効果トランジスタFET13およびFET14の組に、トランスTに接続する経路を切り換えることで、昇圧比を増加させる。これにより、回生動作の際に、二次側フルブリッジ回路の電圧をバッテリ20の充電に必要な電圧にまで昇圧することができる。
【0046】
図6は、コンバータ300の一次側フルブリッジ回路と二次側フルブリッジ回路が出力する波形の一例を示す図である。図6の左図は、一次側フルブリッジ回路によって出力される共振電流波形を示し、図6の右図は、二次側フルブリッジ回路によって出力される共振電流波形を示す。図6の右図から分かる通り、二次側フルブリッジ回路によって出力される共振電流が非ゼロの値を取るときに電界効果トランジスタFETを切り替えると、損失が発生する。そのため、制御部304は、二次側フルブリッジ回路によって出力される共振電流がゼロクロスであるときに電界効果トランジスタFETを切り替える必要があり、制御が時間幅に依存しないPNWを用いることになる。さらに、LLC共振型コンバータ302はトランスTを備えているため、単一の制御パルスではトランスTのコアが飽和する。この事態を回避するために、制御部304は、2つの制御パルス単位(最小分解能)で電界効果トランジスタFETのオン/オフを切り替える。
【0047】
制御部304は、制御装置100からの制御に応じて、LLC共振型コンバータ302が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETのオン状態およびオフ状態を制御する。制御部304は、それぞれの電界効果トランジスタFETのゲートを駆動するためのゲート駆動信号を生成する。さらに、前述した通り、制御部304は、電界効果トランジスタFET9およびFET10の組、電界効果トランジスタFET11およびFET12の組、電界効果トランジスタFET13およびFET14の組のうちの1つを選択し、トランスTと通電させるためのゲート駆動信号を出力する。
【0048】
[制御部の構成]
図7は、コンバータ300が備える制御部304の機能構成の一例を示す図である。以下の説明においては、制御部304は、例えば、乗算器3042と、フィードバック部3044と、比較部3046と、ゲート駆動信号生成部3048と、を備える。
【0049】
乗算器3042は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルの指令値と、制御装置100により入力された振幅係数指令値とを乗算して、LLC共振型コンバータ302から出力させる電圧値を求める。図7には、(a)~(f)に出力波形プロファイルの一例を示している。乗算器3042は、図7の(a)~(f)に示したような出力波形プロファイルに応じた電圧波形となるような出力波形プロファイルの指令値と、サンプリングタイミングごとの振幅係数指令値とを乗算して、LLC共振型コンバータ302から出力させる電圧値を求める。振幅係数指令値は、コンバータ300に出力させる出力電力の目標値である。
【0050】
フィードバック部3044は、制御装置100により入力された電圧フィードバック情報に基づいてフィードバック制御を行う。フィードバック部3044は、フィードバック制御によって、LLC共振型コンバータ302から出力されている現在の電圧値を、乗算器3042が求めた電圧値に近づけるための電圧制御パルスを生成する。フィードバック部3044におけるフィードバック制御は、例えば、P(比例:Proportional)、I(積分:Integral)、D(微分:Differential)のそれぞれの制御を組み合わせたPID制御である。フィードバック部3044におけるフィードバック制御は、PID制御に限らず、他のフィードバック制御の方法であってもよい。
【0051】
比較部3046は、制御装置100により入力された変調波生成情報に応じた変調アルゴリズムで、フィードバック部3044が生成した電圧制御パルスを変調する。比較部3046は、例えば、PNMなどの変調アルゴリズムで、電圧制御パルスを変調する。変調波生成情報は、これらの変調アルゴリズムを指定する情報である。比較部3046は、電圧制御パルスを変調した変調信号を出力する。
【0052】
ゲート駆動信号生成部3048は、比較部3046が変調した変調信号に基づいて、LLC共振型コンバータ302が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETのゲート端子に入力するゲート駆動信号を生成する。これにより、電力変換装置30が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETは、入力されたゲート駆動信号に応じてオン状態またはオフ状態になり、LLC共振型コンバータ302から、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに応じた、走行用モータ10を駆動させる周波数に対応する電圧波形(図4の(b)参照)の出力電力が出力される。
【0053】
図8は、制御部304によって実行されるPNM制御を説明するための図である。図8は、4ビットで15段階の出力を表す例であり、上述した通り、2つの制御パルスが最小分解能となっている。制御部304は、要求出力電圧に応じて、15段階のパルス列を生成し、電界効果トランジスタFETに出力することによって、電界効果トランジスタFETのオン/オフを切り替える。
【0054】
図9は、コンバータ300が備える制御部304によって実行されるPNM制御を説明するための別の図である。図9において、黒点は次にオンされるビット位置を示す。図9に示す通り、本実施形態では、パルス列におけるパルスが平均化されている例を示しているが、例えば、パルス列の特定箇所を優先的にオンすることによって重み付けを行い、さらに細かい制御を実現することもできる。したがって、図4の(d)に示すような所望の出力周波数(例えばf0)に対し、LCC共振周波数(例えばfr)が十分に高い場合は、その比の1/2段階の制御分解能が得られる。
【0055】
図10は、コンバータによって生成される電圧波形と、PNM制御によって出力されるパルス列との間の関係の一例を示す図である。図10に示す通り、時点P1において、コンバータ300は0Vを出力するが、直前に200Vを出力していたため、測定された電圧V(200V)と目標電圧V*(0V)との差分ΔVがマイナスの大きい値となる。このとき、フィードバック部3044は、例えば、Kを比例ゲインとする比例制御によって、K×ΔV=Δnを算出し、Δnはマイナスの大きい値になるため、n=0、すなわち、パルス列のビットを全てオフにするように比較部3046に指令する。
【0056】
次に、時点P2において、コンバータ300は100Vを出力するが、直前に0Vを出力していたため、測定された電圧V(0V)と目標電圧V*(100V)との差分ΔVがプラスの値となる。このとき、フィードバック部3044は、再度、K×ΔV=Δnを算出し、Δnがプラスの値になるため、例えば、n=7、すなわち、パルス列のうち7つのビットをオンにするように比較部3046に指令する。
【0057】
次に、時点P3において、コンバータ300は200Vを出力するが、直前に100Vを出力していたため、測定された電圧V(100V)と目標電圧V*(200V)との差分ΔVがプラスの値となる。このとき、フィードバック部3044は、再度、K×ΔV=Δnを算出し、Δnがプラスの値になるため、例えば、n=15、すなわち、パルス列のうち15個のビットをオンにするように比較部3046に指令する。このように、制御部304は、要求出力電圧に応じたパルス列を出力して電界効果トランジスタFETの切り替えを制御することによって、正弦波のみならず、所望の出力波形を実現することができる。なお、制御部304は、上記のフィードバック制御による遅れを調整するため、ある程度の先読み制御を行ってもよい。
【0058】
[処理の流れ]
図11は、制御装置100と制御部304との間の協働によって実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、車両1が走行している間、繰り返し実行される。
【0059】
制御装置100は、まず、制御部304に出力する出力波形プロファイルを設定し、制御部304に通知する(ステップS100)。制御部304は、通知された出力波形プロファイルに基づいて、電気角を読み込み算出する(ステップS110)。次に、制御部304は、波形プロファイルテーブルを読み出す(ステップS120)。次に、制御装置100は、振幅係数指令値を設定して制御部304に通知し、制御部304は、出力電圧の目標値を算出する(ステップS130)。次に、制御部304は、PID演算を行い、電圧制御パルスを生成する(ステップS140)。次に、制御部304は、PNMなどの変調アルゴリズムで、電圧制御パルスを変調する(ステップS150)。次に、制御部304は、電界効果トランジスタFETのゲート端子に入力するゲート駆動信号を生成する(ステップS160)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0060】
以上の通り説明した実施形態によれば、コンバータ300は、所望の波形の出力波形プロファイルに沿った電圧が出力されるようにスイッチング素子を制御する。さらに、走行用モータ10の回生時には、トランスに通電する電界効果トランジスタFETを切り替えて、二次側フルブリッジ回路から一次側フルブリッジ回路への昇圧比を上昇させることにより、回生によって発生した電力をバッテリ20に蓄えることができる。これにより、回路の複雑化を回避しつつ、出力電圧の制御範囲を拡大させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、本発明は、商用電力の系統に接続可能な電力変換機器やグリッドなどにも応用が可能である
【符号の説明】
【0062】
1・・・車両
10・・・走行用モータ
12・・・駆動輪
14・・・ブレーキ装置
16・・・減速機
20・・・バッテリ
22・・・バッテリセンサ
30,30U,30V,30W・・・電力変換装置
30VG・・・電圧波形生成部
30PC・・・単相変換器
35・・・電力センサ
50・・・運転操作子
60・・・車両センサ
80・・・外部接続装置
100・・・制御装置
300,310-1・・・コンバータ
302・・・LLC共振型コンバータ
304・・・制御部
3042・・・乗算器
3044・・・フィードバック部
3046・・・比較部
3048・・・ゲート駆動信号生成部
SM・・・切替え機構
SW1、SW2・・・回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11