(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187854
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】清掃装置、清掃制御装置、清掃制御方法、及び清掃制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20221213BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01S7/497
B60S1/62 110B
B60S1/62 120A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096062
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】松尾 清史
【テーマコード(参考)】
3D225
5J084
【Fターム(参考)】
3D225AA11
3D225AC01
3D225AD22
5J084AA05
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA34
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA48
5J084BA49
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA33
5J084CA65
5J084CA67
5J084EA20
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】光学センサにおける視野角の制限を回避しつつ清掃可能な清掃装置等を提供する。
【解決手段】清掃装置1は、スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサにおける外界に面した外界面を清掃する。清掃装置1は、外界面に沿って駆動するように制御され、外界面を払拭する払拭ブレード10と、払拭ブレードにおける外界面側に設けられ、外界面から出射するスキャン光を検出する受光センサ11と、払拭ブレードを制御する清掃制御装置100と、を備える。清掃制御装置100は、受光センサ11によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行部を備える。清掃制御装置100は、走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する通常清掃実行部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)を清掃する清掃装置であって、
前記外界面に沿って駆動するように制御され、前記外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、
前記払拭ブレードにおける前記外界面側に設けられ、前記外界面から出射する前記スキャン光を検出する検出器(11)と、
前記払拭ブレードを制御する清掃制御装置(100)と、
を備え、
前記清掃制御装置は、
前記検出器による前記スキャン光の検出情報に基づき、前記光学センサにおける前記スキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行部(110)と、
前記走査パターンに基づく駆動態様にて前記払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行部(120)と、
を有する清掃装置。
【請求項2】
前記校正実行部は、前記スキャン光の走査角速度及び走査位相に関する情報を少なくとも推定し、
前記清掃実行部は、前記走査角速度及び前記走査位相に基づいて、前記払拭ブレードの駆動において前記スキャン光に対して保つ設定位相差を設定する請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記清掃制御装置は、前記校正モードにおける前記スキャン光の検出パターンと、前記清掃モードにおける前記検出パターンとの比較により、払拭対象物の付着範囲を推定する比較推定部(130)をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記比較推定部は、前記付着範囲を含み、且つ前記清掃モードよりも狭い範囲にて前記払拭ブレードを駆動する集中清掃モードをさらに実行する請求項3に記載の清掃装置。
【請求項5】
スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、前記外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、前記払拭ブレードにおける前記外界面側に設けられ、前記外界面から出射する前記スキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御する清掃制御装置であって、
前記検出器による前記スキャン光の検出情報に基づき、前記光学センサにおける前記スキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行部(110)と、
前記走査パターンに基づく駆動態様にて前記払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行部(120)と、
を備える清掃制御装置。
【請求項6】
スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、前記外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、前記払拭ブレードにおける前記外界面側に設けられ、前記外界面から出射する前記スキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)により実行される清掃制御方法であって、
前記検出器による前記スキャン光の検出情報に基づき、前記光学センサにおける前記スキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行工程(S100)と、
前記走査パターンに基づく駆動態様にて前記払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行工程(S110,S120)と、
を含む清掃制御方法。
【請求項7】
前記校正実行工程では、前記スキャン光の走査角速度及び走査位相に関する情報を少なくとも推定し、
前記清掃実行工程は、前記走査角速度及び前記走査位相に基づいて、前記払拭ブレードの駆動において前記スキャン光に対して保つ設定位相差を設定する請求項6に記載の清掃制御方法。
【請求項8】
前記校正モードにおける前記スキャン光の検出パターンと、前記清掃モードにおける前記検出パターンとの比較により、払拭対象物の付着範囲を推定する比較推定工程(S130,S140,S150,S160)をさらに有する請求項6又は請求項7に記載の清掃制御方法。
【請求項9】
前記比較推定工程では、前記付着範囲を含み、且つ前記清掃モードよりも狭い範囲にて前記払拭ブレードを駆動する集中清掃モードをさらに実行する請求項8に記載の清掃制御方法。
【請求項10】
スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、前記外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、前記払拭ブレードにおける前記外界面側に設けられ、前記外界面から出射する前記スキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む清掃制御プログラムであって、
前記命令は、
前記検出器による前記スキャン光の検出情報に基づき、前記光学センサにおける前記スキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行させる校正実行工程(S100)と、
前記走査パターンに基づく駆動態様にて前記払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行させる清掃実行工程(S110,S120)と、
を含む清掃制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、光学センサにおける外界面を清掃する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光学センサにおけるレンズの汚れを検知し、汚れが検出された場合にはセンサ周辺の回転可動式レンズを回転させ視界を確保する装置が開示されている。この装置では、回転させる際にレンズ付近に取り付けられたレンズクリーナにより汚れを清掃し、再び汚れが付着した際に使用可能な、汚れの除去されたレンズ領域を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0319376号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学センサに対して清掃装置を取り付けた場合、その取り付け態様によっては、清掃部材によって光学センサの視野角の少なくとも一部が制限されてしまう虞がある。特許文献1には、このような状況へ対処することは開示されていない。
【0005】
開示される目的は、光学センサにおける視野角の制限を回避しつつ清掃可能な清掃装置、清掃制御装置、清掃制御方法、及び清掃制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された清掃装置のひとつは、スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)を清掃する清掃装置であって、
外界面に沿って駆動するように制御され、外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、
払拭ブレードにおける外界面側に設けられ、外界面から出射するスキャン光を検出する検出器(11)と、
払拭ブレードを制御する清掃制御装置(100)と、
を備え、
清掃制御装置は、
検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行部(110)と、
走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行部(120)と、
を有する。
開示された清掃制御装置のひとつは、スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、払拭ブレードにおける外界面側に設けられ、外界面から出射するスキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御する清掃制御装置であって、
検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行部(110)と、
走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行部(120)と、
を備える。
【0008】
開示された清掃制御方法のひとつは、スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、払拭ブレードにおける外界面側に設けられ、外界面から出射するスキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)により実行される清掃制御方法であって、
検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行する校正実行工程(S100)と、
走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行する清掃実行工程(S110,S120)と、
を含む。
【0009】
開示された清掃制御プログラムのひとつは、スキャン光の照射に対する反射点からの反射光を検出する光学センサ(2)における外界に面した外界面(22a)に沿って駆動するように制御され、外界面を払拭する払拭ブレード(10)と、払拭ブレードにおける外界面側に設けられ、外界面から出射するスキャン光を検出する検出器(11)と、を備える清掃装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む清掃制御プログラムであって、
命令は、
検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードを実行させる校正実行工程(S100)と、
走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードを実行させる清掃実行工程(S110,S120)と、
を含む。
【0010】
これらの開示によれば、まず検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードが実行される。さらに、走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレードを駆動する清掃モードが実行される。故に、スキャン光の走査パターンに応じて、スキャン光の遮蔽を回避した払拭ブレードの制御が可能となり得る。以上により、光学センサにおける視野角の制限を回避しつつ清掃可能な清掃装置、清掃制御装置、清掃制御方法、及び清掃制御プログラムが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による清掃装置のLiDAR装置への搭載状態を示す外観図である。
【
図2】第1実施形態による清掃装置の全体構成を示す模式図である。
【
図3】清掃制御装置が有する機能の一例を示すブロック図である。
【
図4】校正モードにおける受光量推移の一例を示す図である。
【
図5】清掃制御装置が実行する清掃制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の処理の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図7】他の実施形態における清掃装置のLiDAR装置への搭載状態の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の清掃装置1について、
図1~
図6を参照しながら説明する。第1実施形態において、清掃装置1は、車両に搭載されたLiDAR装置2に設けられ、LiDAR装置2の清掃を行う装置である。車両は、自律運転制御又は高度運転支援制御による自動運転モードにおいて、定常的若しくは一時的に自動走行可能となっている。なお、以下の説明において、前、後、左、右、上及び下とは、水平面上の車両を基準に定義されている。
【0013】
LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)装置2は、光照射に対する反射光の点群を検出可能な光学センサである。LiDAR装置2は、発光素子、スキャナ、撮像素子及び制御回路を内部構成として備えている。LiDAR装置2は、内部構成を収容する筐体20を備えている。
【0014】
発光素子は、例えばレーザダイオード等の、指向性レーザ光を発する半導体素子である。発光素子は、LiDAR装置2の外界へ向かうレーザ光を、断続的なパルスビーム状に照射する。
【0015】
スキャナは、発光素子からのレーザ光を走査する構成である。スキャナは、発光素子から照射されたレーザ光をLiDAR装置2の出射面へと反射する反射鏡と、当該反射鏡の反射角を制御するアクチュエータを有している。アクチュエータが反射鏡の反射角を制御することで、レーザ光がスキャンされる。第1実施形態において、スキャナは、レーザ光を水平方向に360度走査可能であるとする。以下において、レーザ光を「スキャン光」と表記する場合がある。
【0016】
撮像素子は、例えばSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等の、光に対して高感度な半導体素子である。外界のうち、撮像素子の画角により決まるセンシング領域から、入射面へ入射する光により、同素子が露光される。
【0017】
制御回路は、LiDAR装置2に搭載された電子制御装置である。制御回路は、少なくともひとつの専用コンピュータを含んで構成され、メモリ及びプロセッサを少なくともひとつずつ有している。制御回路は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して後述のデータ処理装置3と接続される。
【0018】
制御回路は、撮像素子における複数画素の露光及び走査を制御すると共に、同素子からの信号を処理してデータ化する。制御回路が発光素子からの光照射により撮像素子を露光する反射光モードでは、センシング領域内の物点がレーザ光の反射点となる。その結果、反射点での反射されたレーザ光(以下、反射光という)が、入射面を通して撮像素子に入射する。このとき制御回路は、撮像素子の複数画素を走査することで、反射光をセンシングする。これにより、制御回路は、反射物の点群データを取得する。なお、制御回路は、発光素子からの断続的な光照射の停止中に撮像素子を露光することで、反射点で反射された外光をセンシング可能であってもよい。
【0019】
筐体20は、以上の内部構成を収容する。一例として、筐体20は、円筒形状に形成されている。筐体20は、清掃装置1のアクチュエータ13が取り付けられる取付面部21と、側面部22とを備えている。取付面部21は、例えば、円筒形状の上面部によって提供される。側面部22には、透光面22aが形成されている。透光面22aは、発光素子からのレーザ光及び当該レーザ光の反射光を透光する透光部材により形成されている、光学窓である。したがって、LiDAR装置2は、透光面22aを通して、外界のセンシングを行う。透光面22aは、外界に露出した外界面の一例である。
【0020】
データ処理装置3は、車両に搭載された電子制御装置である。データ処理装置3は、例えばLAN、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介してLiDAR装置2の制御回路及び後述の清掃制御装置100と接続される。データ処理装置3は、少なくともひとつの専用コンピュータを含んで構成される。
【0021】
データ処理装置3を構成する専用コンピュータは、例えば、車両内のECU(Electronic Control Unit)と共同して自動運転モードを制御する、運転制御ECUである。又は、データ処理装置3を構成する専用コンピュータは、車両の走行アクチュエータを個別制御する、アクチュエータECUであってもよい。データ処理装置3を構成する専用コンピュータは、自己位置を含んだ車両の状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。データ処理装置3を構成する専用コンピュータは、車両の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。データ処理装置3を構成する専用コンピュータは、車両の情報提示系の情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。
【0022】
データ処理装置3は、こうした専用コンピュータを含んで構成されることで、メモリ及びプロセッサを少なくともひとつずつ有している。メモリは、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0023】
データ処理装置3は、LiDAR装置2からの点群データを取得し、所定の画像処理を行う画像処理装置であり、車両に搭載された情報処理装置である。データ処理装置3は、後述の集中清掃フラグの成立有無に関する判定処理を実行する制御装置であり、清掃装置1の外部システムを構成する。なお、LiDAR装置2の制御回路がデータ処理装置7の機能を有していてもよい。
【0024】
清掃装置1は、LiDAR装置2に搭載され透光面22aの清掃を実行する。清掃装置1は、払拭ブレード10、受光センサ11、接続アーム12、アクチュエータ13及び清掃制御装置100を備えている。
【0025】
払拭ブレード10は、アクチュエータ13により駆動されることで、透光面22aを払拭するワイパである。払拭ブレード10は、短冊形に延伸形成されたブレード部材10aと、ブレード部材10aの透光面22a側に設けられたワイパブラシ10bとを有している。ワイパブラシ10bは、例えば、後述の受光センサを挟んで、ブレード部材10aの長手方向に沿って2列設けられている。払拭ブレード10は、ワイパブラシ10bが透光面22aと接触するように取り付けられる。払拭ブレード10の駆動により、ワイパブラシ10bが透光面22a上を摺動することで、透光面22aが払拭される。
【0026】
受光センサ11は、払拭ブレード10の透光面22a側に設けられ、透光面22aから出射するスキャン光の受光量を検出するセンサである。受光センサ11は、スキャン光の波長特性に基づく検出波長範囲を設定されている。
【0027】
接続アーム12は、払拭ブレード10とアクチュエータ13とを接続するアーム部材である。アクチュエータ13は、払拭ブレード10を回転駆動するモータである。アクチュエータ13は、清掃制御装置100によって制御される。
【0028】
図2,3に示す清掃制御装置100は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介してLiDAR装置2の制御回路及びデータ処理装置3と接続される。清掃制御装置100は、少なくともひとつの専用コンピュータを含んで構成される。
【0029】
清掃制御装置100は、こうした専用コンピュータを含んで構成されることで、メモリ101及びプロセッサ102を少なくともひとつずつ有している。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体である。プロセッサ102は、例えばCPU、GPU及びRISC-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0030】
プロセッサ102は、メモリ101に記憶された清掃制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより清掃制御装置100は、清掃装置1を制御するための機能部(即ち、機能ブロック)を、複数構築する。このように清掃制御装置100では、洗浄系6を制御するためにメモリ101に記憶された清掃制御プログラムが複数の命令をプロセッサ102に実行させることで、複数の機能部が構築される。清掃制御装置100により構築される複数の機能部には、
図3に示すように校正実行部110、通常清掃実行部120及び集中清掃実行部130が含まれる。
【0031】
校正実行部110は、清掃装置1における校正モードを実行する。校正モードは、LiDAR装置2の走査パターンに関する情報を取得する制御モードである。校正モードは、少なくとも清掃装置1の電源がオンとなったタイミングにて実行される。例えば、校正実行部110は、払拭ブレード10の駆動状態の異なる第1校正処理及び第2校正処理を実行する。第1校正処理は、所定の方位にて払拭ブレード10を停止させ、所定期間の受光量推移の時系列データを取得する第1校正処理と、スキャン光と同位相で払拭ブレード10を回転駆動させ、時系列データを取得する第2校正処理とを実行する。
【0032】
校正実行部110は、取得した時系列データに基づいて、LiDAR装置2におけるスキャン光の走査パターンを推定する。ここで走査パターンは、スキャン光の走査角速度、走査タイミング及び視野角のうち少なくとも一種類以上を含む。ここで走査タイミングとは、スキャン光の走査の位相である。校正実行部110は、走査パターンを、第1校正処理及び第2校正処理にて取得された各時系列データに基づいて推定する。
【0033】
具体的には、校正実行部110は、第1校正処理における時系列データに基づき、走査角速度及び走査タイミングを推定する。
図4のグラフにおける期間Aに示すように、第1校正処理では、LiDAR装置2の走査周期ごとに、払拭ブレード10の静止方位α0にて受光量が極大値となる。したがって、校正実行部110は、この時系列データに対して周波数解析を行うことで、走査角速度ω及び走査タイミングを算出する。そして、校正実行部110は、走査タイミングに基づき、位相をスキャナと同期させた状態で払拭ブレード10を回転させるためのタイミングオフセットt0を算出する。
【0034】
校正実行部110は、走査角速度ω及びタイミングオフセットt0の推定結果を校正実行部110へと提供する。これにより、第2校正処理において、払拭ブレード10が角速度及び位相をスキャン光と実質的に同期された状態で回転駆動可能となる。
【0035】
そして、校正実行部110は、第2校正処理における時系列データに基づき、視野角を推定する。例えば、
図4のグラフにおける期間Bに示すように、校正実行部110は、受光量が規定の受光量範囲内となる期間が周期的に存在する場合、当該期間に相当する方位角範囲を、LiDAR装置2の視野角外と推定する。そして、校正実行部110は、受光量が当該受光量範囲外となる期間の方位角範囲θmin~θmaxを、LiDAR装置2の視野角内と推定する。なお、校正実行部110は、垂直方向において常時受光量が当該受光量範囲内となる範囲がある場合にも、当該範囲を垂直方向における視野角外と推定する。ここで受光量範囲は、受光量が規定の閾値以下又は未満となるような数値範囲である。
【0036】
通常清掃実行部120は、推定された走査パターンに基づき、走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレード10を駆動する。駆動態様は、例えば、払拭ブレード10の角速度および位相を含む。通常清掃実行部120は、駆動態様の一例として、通常清掃モードを実行する。通常清掃モードにおいて、通常清掃実行部120は、走査角速度ω及び走査位相に基づいて、払拭ブレード10の駆動においてスキャン光に対して保つ設定位相差を設定する。通常清掃実行部120は、払拭ブレード10によるスキャン光の遮蔽を回避するように、スキャン光に対して設定位相差を保った状態で払拭ブレード10を駆動する。具体的には、通常清掃実行部120は、スキャン光と実質同じ角速度ωで、且つスキャン光と逆位相にて払拭ブレード10を駆動させる。通常清掃実行部120は、下記の式(1)に基づいて、スキャン光と逆位相となるタイミングオフセットtaを決定すればよい。
【0037】
(数1)
ta=t0+π/ω …(1)
なお、通常清掃実行部120は、通常清掃モードの実行中に、継続的にスキャン光の検出状態を確認する。スキャン光が検出された場合には、通常清掃実行部120は、検出したタイミング及び当該タイミングでのスキャン光の検出方位をデータ処理装置3へ通知する。通常清掃実行部120は、スキャン光の検出頻度が高い場合には、校正が再度必要であることをデータ処理装置3へ通知する。通常清掃実行部120は、スキャン光の検出回数、又は検出の累積時間等が閾値以上又は閾値を上回った場合に、検出頻度が高いと判断すればよい。通常清掃モードは、「清掃モード」の一例である。
【0038】
集中清掃実行部130は、通常清掃モードとは異なるモードである集中清掃モードを実行する。集中清掃モードは、通常清掃モードよりも範囲を限定して払拭ブレード10の駆動を行うことで、特定範囲を集中的に払拭させる制御モードである。
【0039】
集中清掃実行部130は、データ処理装置3からの集中清掃フラグに基づき集中清掃モードを実行する。例えば、集中清掃フラグは、想定されるよりも多く近距離の計測点が観測され、且つLiDAR装置2の運用停止を許容できるとデータ処理装置3にて判断された場合に、データ処理装置3から出力される。
【0040】
集中清掃モードにおいて、まず集中清掃実行部130は、角速度ω、タイミングオフセットt0にて払拭ブレード10を駆動させる。すなわち、払拭ブレード10は、角速度及び位相をスキャン光と実質同期された状態にて駆動されることになる。
【0041】
集中清掃実行部130は、スキャン光と同期状態の払拭ブレード10にて検出された受光量の時系列データを取得する。集中清掃実行部130は、当該時系列データを、前回校正時にて取得された時系列データと比較する。集中清掃実行部130は、時系列データ同士の比較により、払拭対象物である汚れが付着されている範囲(付着範囲)を推定する。具体的には、集中清掃実行部130は、前回校正時からの受光量の低下量又は低下率が許容範囲に収まらない方位範囲を、付着範囲とする。ここで許容範囲は、低下量又は低下率が、閾値以下又は未満となるような数値範囲である。受光量の時系列データは、「スキャン光の検出パターン」の一例である。
【0042】
付着範囲の推定が完了すると、集中清掃実行部130は、付着範囲に対して集中的に払拭ブレード10による払拭を行う。集中清掃実行部130は、付着範囲と実質同等の方位範囲を払拭してもよい。又は、集中清掃実行部130は、付着範囲を含んだより広い範囲を払拭してもよい。ただし、集中清掃実行部130は、通常清掃モードよりも限定された範囲を払拭するものとする。
【0043】
集中清掃実行部130は、集中清掃を完了すると、角速度及び位相をスキャン光と実質同期された状態にて、再度払拭ブレードを駆動する。なお、集中清掃実行部130は、集中清掃の完了を、例えば所定時間又は所定回数払拭処理を実行したときとすればよい。集中清掃実行部130は、同期駆動時において検出された受光量の時系列データと、集中清掃完了情報とを、データ処理装置3へと通知する。なお、集中清掃完了情報は、通常清掃実行部120に対しても提供される。集中清掃実行部130は、「比較推定部」の一例である。
【0044】
データ処理装置3では、当該時系列データ及びLiDAR装置2による計測データに基づいて、再校正の必要可否が判定される。再校正が必要であると判定されると、校正実行部110にて校正が再度実行される。一方で、再校正が不要であると判定した場合には、通常清掃実行部120にて通常清掃モードが継続される。なお、複数回集中清掃が実行された後で、再校正が実行されてもよい。
【0045】
以上の機能部の共同により、清掃制御装置100が払拭処理を制御する清掃制御方法のフローを、
図5及び
図6に従って以下に説明する。なお、本フローにおける各「S」は、清掃制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0046】
まず、
図5のS100において校正実行部110は、校正モードを実行する。
図6に進み、校正モードの実行においては、まずS101にて、払拭ブレード10が静止方位α0にて固定され、受光量の時系列データが取得される。次に、S102では、スキャン光の角速度及びタイミングオフセットが算出される。続いて、S103では、算出した角速度及びタイミングオフセットに基づいて、払拭ブレード10の同期回転が実行される。さらに、S104では、同期回転中の受光量の時系列データが取得される。そして、S105では、S104にて取得された時系列データに基づいて、LiDAR装置2の視野角が推定される。S105の処理が完了すると、校正モードが終了する。
【0047】
図5に戻り、S110では、通常清掃実行部120が、通常清掃モードを開始する。次に、S120では、通常清掃実行部120が、通常清掃中の受光量の時系列データについて、想定受光量と合致しているか否かを判定する。合致していないと判定されると、本フローがS100へと戻り、再校正が実行される。一方で、時系列データが想定受光量と合致したと判定されると、本フローがS130に移行する。
【0048】
S130では、集中清掃実行部130が、集中清掃フラグを取得したか否かを判定する。集中清掃フラグを取得していないと判定されると、本フローがS110へと戻る。これにより通常清掃モードが継続される。集中清掃フラグを取得したと判定されると、本フローがS140へと移行する。
【0049】
S140では、集中清掃実行部130が、払拭ブレード10の同期回転を実行し、同期回転中に取得した時系列データと前回校正時の時系列データとの比較に基づき、汚れの付着範囲を特定する。次に、S150では、集中清掃実行部130が、当該付着範囲を集中的に払拭する集中清掃を実行する。
【0050】
次に、S160では、集中清掃実行部130が、集中清掃後の再校正が必要か否かを判定する。具体的には、集中清掃実行部130は、集中清掃完了後の受光量の時系列データをデータ処理装置3へと送信し、当該システムから再校正フラグを取得した場合には、再校正が必要と判定する。再校正が必要と判定された場合には、本フローがS100へと戻る。一方で、再校正が不要であると判定された場合には、本フローがS110へと移行し、通常清掃モードが再開される。
【0051】
なお、上述のS100が「校正実行工程」、S110,S120が「清掃実行工程」、S130,S140,S150,S160が「比較推定工程」の一例である。
【0052】
以上の第1実施形態によれば、まず検出器によるスキャン光の検出情報に基づき、光学センサにおけるスキャン光の走査パターンを推定する校正モードが実行される。さらに、走査パターンに基づく駆動態様にて払拭ブレード10を駆動する清掃モードが実行される。故に、スキャン光の走査パターンに応じて、スキャン光の遮蔽を回避した払拭ブレード10の制御が可能となり得る。以上により、LiDAR装置2の視野角の制限を抑制可能となり得る。
【0053】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品及び/又は要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品及び/又は要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品及び/又は要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0054】
上述の実施形態の変形例として、清掃装置1は、
図7に示すように、走査範囲が360度未満であるLiDAR装置2に設置されてもよい。この場合、清掃制御装置100は、通常清掃モードにおいて払拭ブレード10を360度回転させるように制御してもよいし、
図7における透光面22aに沿って往復制御してもよい。また、清掃制御装置100は、スキャン光の遮蔽を回避するように、LiDAR装置2の視野角外にて払拭ブレード10を一時的に静止させてもよい。清掃制御装置100は、スキャン光の遮蔽を回避するように払拭ブレード10を駆動すれば、その駆動態様(通常清掃モード)はスキャン光に対する逆位相の回転駆動に限定されない。
【0055】
上述の実施形態の変形例として、清掃制御装置100を構成する専用コンピュータは、LiDAR装置2の制御回路又はデータ処理装置3であってもよい。又は、清掃制御装置100を構成する専用コンピュータは、運転制御ECUであってもよいし、アクチュエータECUであってもよい。又は、清掃制御装置100を構成する専用コンピュータは、ロケータECUであってもよいし、ナビゲーションECUであってもよい。又は、清掃制御装置100を構成する専用コンピュータは、HCUであってもよい。
【0056】
上述の実施形態において、透光面22aは、LiDAR装置2の筐体20に設けられているとした。これに代えて、透光面22aは、LiDAR装置2をさらに覆うケース部材に設けられていてもよい。
【0057】
清掃制御装置100は、デジタル回路及びアナログ回路のうち少なくとも一方をプロセッサ102として含んで構成される、専用のコンピュータであってもよい。ここで特にデジタル回路とは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを格納したメモリを、備えていてもよい。
【0058】
清掃制御装置100は、1つのコンピュータ、又はデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供され得る。例えば、上述の実施形態における清掃制御装置100の提供する機能の一部は、他のECUによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 清掃装置、 2 LiDAR装置(光学センサ)、 10 払拭ブレード、 11 受光センサ(検出器)、 22a 透光面(外界面)、 100 清掃制御装置、 102 プロセッサ、 110 校正実行部、 120 通常清掃実行部(清掃実行部)、 130 集中清掃実行部(比較推定部)。