(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187857
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/065 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096065
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 卓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡志
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
(72)【発明者】
【氏名】森田 紀幸
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC60
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD33
3H067EA16
3H067EB07
3H067EB12
3H067EC07
3H067FF11
3H067GG01
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弁室に導入される冷媒の圧力を低下させなくても騒音を抑制できる流路切換弁を提供する。
【解決手段】流路切換弁1は、弁本体20の内側空間が、弁室13と、第1作動室11と、第2作動室12と、に区画されている。パイロット弁110が、弁座30の出口ポート33と第1作動室11とを接続する第1接続通路C1と、出口ポート33と第2作動室12とを接続する第2接続通路と、を切り換える。第1ピストン50の第1絞り通路57の最小径をDaとし、第1接続通路の最小径をDbとし、第1接続通路によって出口ポート33と第1作動室11とが接続されたときの弁室13と第1作動室11との差圧をΔPとしたとき、次の式(1)を満たす。Rmin≦Da/Db(1)ただし、0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁と、パイロット弁と、を有する流路切換弁であって、
前記主弁が、
一端部および他端部が塞がれた円筒形状の弁本体と、
前記弁本体の内側に配置された弁座と、
前記弁本体の一端部と前記弁座との間に配置された第1ピストンと、
前記弁本体の他端部と前記弁座との間に配置された第2ピストンと、
前記弁座が有する弁座面に配置され、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンとともに前記弁本体の軸方向にスライドされる主弁体と、を有し、
前記弁本体の内側空間が、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間の弁室と、前記弁本体の一端部と前記第1ピストンとの間の第1作動室と、前記弁本体の他端部と前記第2ピストンとの間の第2作動室と、に区画されており、
前記弁本体が、前記弁室に接続された入口ポートを有し、
前記弁座が、前記主弁体のUターン通路に接続された出口ポートを有し、
前記第1ピストンが、前記弁室と前記第1作動室とを接続する第1絞り通路を有し、
前記第2ピストンが、前記弁室と前記第2作動室とを接続する第2絞り通路を有し、
前記パイロット弁が、前記出口ポートと前記第1作動室とを接続する第1接続通路と、前記出口ポートと前記第2作動室とを接続する第2接続通路と、を切り換えるように構成されており、
前記第1絞り通路の最小径をDaとし、前記第1接続通路の最小径をDbとし、前記第1接続通路によって前記出口ポートと前記第1作動室とが接続されたときの前記弁室と前記第1作動室との差圧をΔPとしたとき、次の式(1)を満たすことを特徴とする流路切換弁。
Rmin≦Da/Db ・・・ (1)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
【請求項2】
次の式(1A)を満たす、請求項1に記載の流路切換弁。
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1A)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(11.80))/11.43
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(12.97))/12.47
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(5.62))/6.35
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(2.48))/4.04
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(0.90))/3.05
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-1.23))/1.95
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-3.28))/1.11
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.22))/0.53
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.99))/0.38
【請求項3】
次の式(1B)を満たす、請求項1に記載の流路切換弁。
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1B)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(15.80))/16.00
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(14.41))/14.67
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(6.96))/8.01
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(3.56))/5.28
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(1.85))/4.08
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-0.48))/2.69
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-2.73))/1.60
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-4.83))/0.81
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.50))/0.64
【請求項4】
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが、それぞれ金属部品を有し、
前記第1絞り通路の最小径となる箇所が、前記金属部品に形成された貫通孔であり、
前記第2絞り通路の最小径となる箇所が、前記金属部品に形成された貫通孔である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【請求項5】
前記第2絞り通路の最小径が、前記第1絞り通路の最小径Daと同一であり、
前記第2接続通路の最小径が、前記第1接続通路の最小径Dbと同一であり、
前記第2絞り通路の最小径をDaとし、前記第2接続通路の最小径をDbとし、前記第2接続通路によって前記出口ポートと前記第2作動室とが接続されたときの前記弁室と前記第2作動室との差圧をΔPとしたとき、上記式(1)を満たす、請求項1に記載の流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式の流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流路切換弁の一例が特許文献1に開示されている。この流路切換弁は、例えば、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれ、冷媒の流路切り換え時に動作する。流路切換弁は、主弁としての四方弁と、パイロット弁としての三方切換弁と、を有している。
【0003】
四方弁は、円筒形状の弁本体を有している。弁本体の両端部は、蓋部材で塞がれている。弁本体の内側には、弁座と、弁体と、第1ピストンと、第2ピストンと、が配置されている。弁座は、第1ピストンと第2ピストンとの間に配置されている。弁本体の内側空間は、第1ピストンと第2ピストンとの間の弁室と、第1ピストンと一方の蓋部材との間の第1作動室と、第2ピストンと他方の蓋部材との間の第2作動室と、に区画されている。第1ピストンと第2ピストンとは、連結体で互いに連結されている。連結体は、弁体と嵌合されている。弁本体には、入口ポートが弁座と対向するように形成されている。弁座が有する弁座面には、第1ポートと、出口ポートと、第2ポートと、が形成されている。入口ポートには、高圧の冷媒が流れ、出口ポートには、低圧の冷媒が流れる。弁体は、弁座面上をスライドされ、第1ポートと出口ポートとを接続し、または、第2ポートと出口ポートとを接続する。
【0004】
四方弁には、三方切換弁が接続されている。三方切換弁は、出口ポートと第1作動室とを接続する接続通路(第1接続通路)と、出口ポートと第2作動室とを接続する接続通路(第2接続通路)と、を切り換える。弁室は、入口ポートと接続されている。三方切換弁によって第1接続通路に切り換えられると、弁室と第1作動室との差圧によって、第1ピストンおよび第2ピストンが一方の蓋部材側に移動し、弁体が一方の蓋部材側にスライドされる。弁体によって第1ポートと出口ポートとが接続され、弁室を介して入口ポートと第2ポートとが接続される。または、三方切換弁によって第2接続通路に切り換えられると、弁室と第2作動室との差圧によって、第1ピストンおよび第2ピストンが他方の蓋部材側に移動し、弁体が他方の蓋部材側にスライドされる。弁体によって第2ポートと出口ポートとが接続され、弁室を介して入口ポートと第1ポートとが接続される。第1ピストンは、弁室と第1作動室とを接続する絞り通路を有している。第2ピストンは、弁室と第2作動室とを接続する絞り通路を有している。四方弁は、各絞り通路を介して、弁室と第1作動室との間で冷媒を流通させ、弁室と第2作動室との間で冷媒を流通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した四方弁では、弁体のスライドに伴って第1ポートおよび第2ポートの接続が切り替わるときに冷媒の流れに起因する騒音が生じるおそれがある。圧縮機の回転数を下げて入口ポートから弁室に導入される冷媒の圧力を低下させ、弁体のスライド(すなわち、第1ピストンおよび第2ピストンの移動速度)を遅くすることで、騒音を抑制することができる。しかしながら、四方弁による流路切り換え前に圧縮機の回転数を下げ、流路切り換え後に圧縮機の回転数を上げる制御が必要になり、冷凍サイクルの制御が複雑になるという問題があった。また、圧縮機の回転数を下げるには、1~3分程度の比較的長い時間が必要であり、圧縮機の回転数を上げるにも同程度の時間が必要になる。そのため、四方弁の流路切り換えの前後に準備時間が必要になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、弁室に導入される冷媒の圧力を低下させなくても騒音を抑制できる流路切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、流路切換弁の第1ピストンおよび第2ピストンが有する絞り通路および出口ポートと作動室とを接続する接続通路に着目し、絞り通路の最小径と接続通路の最小径との比が異なる複数の流路切換弁を用いて、流路切り換えに関する実験を繰り返し行った。そして、本発明者らは、実験結果について鋭意検討したところ、絞り通路の最小径と接続通路の最小径との比と、弁室と作動室との差圧と、流路切換時における第1ピストンおよび第2ピストンの移動にかかる時間(流路切換時間)と、の関係性を見出し、本発明に至った。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る流路切換弁は、
主弁と、パイロット弁と、を有する流路切換弁であって、
前記主弁が、
一端部および他端部が塞がれた円筒形状の弁本体と、
前記弁本体の内側に配置された弁座と、
前記弁本体の一端部と前記弁座との間に配置された第1ピストンと、
前記弁本体の他端部と前記弁座との間に配置された第2ピストンと、
前記弁座が有する弁座面に配置され、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンとともに前記弁本体の軸方向にスライドされる主弁体と、を有し、
前記弁本体の内側空間が、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間の弁室と、前記弁本体の一端部と前記第1ピストンとの間の第1作動室と、前記弁本体の他端部と前記第2ピストンとの間の第2作動室と、に区画されており、
前記弁本体が、前記弁室に接続された入口ポートを有し、
前記弁座が、前記主弁体のUターン通路に接続された出口ポートを有し、
前記第1ピストンが、前記弁室と前記第1作動室とを接続する第1絞り通路を有し、
前記第2ピストンが、前記弁室と前記第2作動室とを接続する第2絞り通路を有し、
前記パイロット弁が、前記出口ポートと前記第1作動室とを接続する第1接続通路と、前記出口ポートと前記第2作動室とを接続する第2接続通路と、を切り換えるように構成されており、
前記第1絞り通路の最小径をDaとし、前記第1接続通路の最小径をDbとし、前記第1接続通路によって前記出口ポートと前記第1作動室とが接続されたときの前記弁室と前記第1作動室との差圧をΔPとしたとき、次の式(1)を満たすことを特徴とする。
Rmin≦Da/Db ・・・ (1)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
【0010】
本発明において、
次の式(1A)を満たすことが好ましい。
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1A)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(11.80))/11.43
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(12.97))/12.47
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(5.62))/6.35
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(2.48))/4.04
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(0.90))/3.05
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-1.23))/1.95
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-3.28))/1.11
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.22))/0.53
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.99))/0.38
【0011】
本発明において、
次の式(1B)を満たすことが好ましい。
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1B)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(15.80))/16.00
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(14.41))/14.67
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(6.96))/8.01
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(3.56))/5.28
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(1.85))/4.08
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-0.48))/2.69
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-2.73))/1.60
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-4.83))/0.81
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.50))/0.64
【0012】
本発明において、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが、それぞれ金属部品を有し、
前記第1絞り通路の最小径となる箇所が、前記金属部品に形成された貫通孔であり、
前記第2絞り通路の最小径となる箇所が、前記金属部品に形成された貫通孔である、ことが好ましい。
【0013】
本発明において、
前記第2絞り通路の最小径が、前記第1絞り通路の最小径Daと同一であり、
前記第2接続通路の最小径が、前記第1接続通路の最小径Dbと同一であり、
前記第2絞り通路の最小径をDaとし、前記第2接続通路の最小径をDbとし、前記第2接続通路によって前記出口ポートと前記第2作動室とが接続されたときの前記弁室と前記第2作動室との差圧をΔPとしたとき、上記式(1)を満たす、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1ピストンが有する第1絞り通路の最小径Daと、出口ポートと第1作動室とを接続する第1接続通路の最小径Dbと、の比Da/Dbが上記式(1)を満たしている。このようにしたことから、流路切換時における第1ピストンおよび第2ピストンの移動にかかる時間(流路切換時間)を、騒音を抑制可能な時間にすることができる。第2ピストンが有する第2絞り通路の最小径と、出口ポートと第2作動室とを接続する第2接続通路の最小径と、の比についても、上記式(1)を満たすことで、同様に流路切換時間を、騒音を抑制可能な時間にすることができる。したがって、本発明に係る流路切換弁は、弁室に導入される冷媒の圧力を低下させなくても騒音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例に係る流路切換弁の断面図である。
【
図2】
図1の流路切換弁の他の状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の流路切換弁の主弁の一部を拡大した断面図である。
【
図4】
図2の流路切換弁の主弁の一部を拡大した断面図である。
【
図5】
図1の流路切換弁のパイロット弁の一部を拡大した断面図である。
【
図6】
図1の流路切換弁における第1絞り通路の最小径と第1接続通路の最小径との比と、弁室と第1作動室との差圧と、の関係を示すグラフである。
【
図7】
図1の流路切換弁において、騒音を抑制可能でかつ短い流路切換時間となる第1絞り通路の最小径と第1接続通路の最小径との比と、弁室と第1作動室との差圧と、の範囲を示す図である。
【
図8】
図1の流路切換弁において、騒音を抑制可能でかつより短い流路切換時間となる第1絞り通路の最小径と第1接続通路の最小径との比と、弁室と第1作動室との差圧と、の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例に係る流路切換弁について、
図1~
図8を参照して説明する。
【0017】
図1、
図2は、本発明の一実施例に係る流路切換弁の断面図である。
図1は、主弁体が第1の主弁体位置にある状態を示し、
図2は、主弁体が第2の主弁体位置にある状態を示す。
図1、
図2において、主弁とパイロット弁との接続管を模式的に示しており、a-a、b-b、c-cがそれぞれ接続されている。
図3は、
図1に示す流路切換弁の主弁の一部を拡大した断面図である。
図3は、主弁が有する第1ピストンを拡大した断面図である。
図4は、
図2に示す流路切換弁の主弁の一部を拡大した断面図である。
図4は、主弁が有する第2ピストンを拡大した断面図である。
図5は、
図1の流路切換弁のパイロット弁の一部を拡大した断面図である。
図5は、パイロット弁が有する弁座を拡大した断面図である。
図6は、
図1の流路切換弁における第1絞り通路の最小径と第1接続通路の最小径との比と、弁室と第1作動室との差圧と、の関係を示すグラフである。
図7、
図8は、
図1の流路切換弁において、騒音を抑制可能でかつ短い流路切換時間となる第1絞り通路の最小径と第1接続通路の最小径との比と、弁室と第1作動室との差圧と、の範囲を示す図である。
図7は、流路切換時間が、1.1~60秒となる範囲を示す。
図8は、流路切換時間が、1.1~30秒となる範囲を示す。
【0018】
図1、
図2に示すように、本実施例に係る流路切換弁1は、主弁10と、パイロット弁110と、を有している。
【0019】
主弁10は、弁本体20と、弁座30と、主弁体40と、第1ピストン50と、第2ピストン60と、連結体70と、を有している。
【0020】
弁本体20は、円筒形状を有している。弁本体20の軸方向は、
図1、
図2における左右方向と一致する。弁本体20の一端部(
図1、
図2において左端部)は、第1蓋部材21で塞がれている。弁本体20の他端部(
図1、
図2において右端部)は、第2蓋部材22で塞がれている。第1蓋部材21は、第1接続ポート21aを有している。第2蓋部材22は、第2接続ポート22aを有している。弁本体20は、入口ポート23を有している。入口ポート23は、弁本体20の上部における軸方向中央の箇所に配置されている。入口ポート23には、入口導管83が接続されている。
【0021】
弁座30は、弁本体20の内側において、弁本体20の下部における軸方向中央の箇所に配置されている。弁座30は、上方を向く弁座面30aを有している。弁座30は、第1蓋部材21側から第2蓋部材22側に順に並ぶ第1ポート31と、出口ポート33と、第2ポート32と、を有している。第1ポート31と、出口ポート33と、第2ポート32と、は、弁座面30aに開口している。第1ポート31には、第1導管91が接続されている。出口ポート33には、出口導管93が接続されている。第2ポート32には、第2導管92が接続されている。弁本体20、第1蓋部材21、第2蓋部材22および弁座30は、例えば、ステンレスなどの金属製である。
【0022】
主弁体40は、略半楕円球形状を有している。主弁体40は、内側にUターン通路41を有している。Uターン通路41は、後述する弁室13と区画されている。主弁体40は、弁座面30a上に配置される。主弁体40は、弁座面30a上でスライドされて、Uターン通路41が第1ポート31と出口ポート33とを接続する第1の主弁体位置(
図1に示す主弁体40の位置)と、Uターン通路41が第2ポート32と出口ポート33とを接続する第2の主弁体位置(
図2に示す主弁体40の位置)と、に位置付けられる。出口ポート33は、常にUターン通路41に接続されている。主弁体40は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの合成樹脂製である。
【0023】
第1ピストン50は、弁本体20の内側において、第1蓋部材21と弁座30との間に配置されている。第1ピストン50は、主弁体40の軸方向に移動可能である。第1ピストン50は、弁本体20の内側空間を軸方向に区画している。第1ピストン50は、円板51、52と、板ばね部材53と、パッキン54と、弁体支持部材55と、弁体56と、圧縮コイルばね58と、を有している。円板51、52は、ステンレスなどの金属製である。円板51の外径は、弁本体20の内径よりもやや小さい。円板52の外径は、円板51の外径より小さい。板ばね部材53は、金属部品である。板ばね部材53は、円板部53aと、円板部53aの周縁に接続された複数のばね片53bと、を有している。パッキン54は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの合成樹脂製である。パッキン54は、円形のトレー形状を有している。パッキン54は、円板形状の底壁部54aと、底壁部54aの周縁に接続された周壁部54bと、を有している。パッキン54の内側に板ばね部材53が配置されている。板ばね部材53の円板部53aとパッキン54の底壁部54aとは接している。円板51、52は、図示しないボルトで締結されており、板ばね部材53の円板部53aおよびパッキン54の底壁部54aは、円板51、52の間に保持されている。板ばね部材53の複数のばね片53bは、パッキン54の周壁部54bを内側から外側に向けて押している。パッキン54の周壁部54bは、弁本体20の内周面に接している。弁体支持部材55は、真ちゅうなどの金属製である。弁体支持部材55は、円板部55aと、突部55bと、を有している。円板部55aは、円板51における第1蓋部材21側の面に接合されている。突部55bは、円板部55aの中心に配置されている。弁体56は、PPSなどの合成樹脂製である。弁体56は、円柱形状を有している。弁体56は、弁体支持部材55の突部55bによって、主弁体40の軸方向に移動可能に支持されている。弁体56の基端部56aは突部55bの内側に配置されている。弁体56の先端部56bは突部55bの外側に突出している。弁体56の基端部56aは、圧縮コイルばね58によって円板51に押し付けられている。弁体56の先端部56bは、略円すい形状に形成されている。弁体56は、第1蓋部材21の第1接続ポート21aを開閉する。
【0024】
第1ピストン50は、第1蓋部材21側から弁座30側に貫通する第1絞り通路57を有している。第1絞り通路57は、板ばね部材53に形成された貫通孔53cにおいて最も通路面積が小さくなる。貫通孔53cの径は、第1絞り通路57の最小径Daである。
【0025】
第2ピストン60は、弁本体20の内側において、第2蓋部材22と弁座30との間に配置されている。第2ピストン60は、主弁体40の軸方向に移動可能である。第2ピストン60は、弁本体20の内側空間を軸方向に区画している。第2ピストン60は、円板61、62と、板ばね部材63と、パッキン64と、弁体支持部材65と、弁体66と、圧縮コイルばね68と、を有している。円板61、62と、板ばね部材63(円板部63a、複数のばね片63b、貫通孔63c)と、パッキン64(底壁部64a、周壁部64b)と、弁体支持部材65(円板部65a、突部65b)と、弁体66(基端部66a、先端部66b)と、圧縮コイルばね68と、は、第1ピストンの円板51、52と、板ばね部材53(円板部53a、複数のばね片53b、貫通孔53c)と、パッキン54(底壁部54a、周壁部54b)と、弁体支持部材55(円板部55a、突部55b)と、弁体56(基端部56a、先端部56b)と、圧縮コイルばね58と、同一構成である。弁体66は、第2蓋部材22の第2接続ポート22aを開閉する。
【0026】
第2ピストン60は、第2蓋部材22側から弁座30側に貫通する第2絞り通路67を有している。第2絞り通路67は、板ばね部材63に形成された貫通孔63cにおいて最も通路面積が小さくなる。貫通孔63cの径は、第2絞り通路67の最小径である。貫通孔63cの径は、第1ピストン50の貫通孔53cの径と同一である。
【0027】
連結体70は、第1ピストン50と第2ピストン60とを連結する金属製のブラケットである。連結体70には、主弁体40が嵌合される弁体嵌合孔71が形成されている。連結体70は、第1ピストン50および第2ピストン60の移動に伴って、主弁体40を弁座面30a上でスライドさせる。
【0028】
弁本体20の内側空間は、第1蓋部材21と第1ピストン50との間の第1作動室11と、第2蓋部材22と第2ピストン60との間の第2作動室12と、第1ピストン50と第2ピストン60との間の弁室13と、に区画されている。弁室13には、入口ポート23が接続されている。弁室13と第1作動室11とは、第1ピストン50の第1絞り通路57を介して接続されている。弁室13と第2作動室12とは、第2ピストン60の第2絞り通路67を介して接続されている。
【0029】
パイロット弁110は、弁本体120と、弁座130と、パイロット弁体140と、固定鉄心150(「吸引子」ともいう。)と、プランジャ160と、図示しない電磁コイルと、を有している。
【0030】
弁本体120は、円筒形状を有している。弁本体120の一端部(
図1、
図2において左端部)は、蓋部材121で塞がれている。弁本体120の他端部(
図1、
図2において右端部)は、固定鉄心150で塞がれている。弁本体120の外側には、図示しない電磁コイルが配置されている。
【0031】
弁座130は、ステンレス鋼などの金属製である。弁座130は、弁本体120の内側において、弁本体120の下部における蓋部材121寄りの箇所に配置されている。弁座130は、上方を向く弁座面130aを有している。
図5に示すように、弁座130は、蓋部材121側から固定鉄心150側(
図5において左側から右側)に順に並ぶ第1ポート131と、共通ポート133と、第2ポート132と、を有している。第1ポート131と、共通ポート133と、第2ポート132と、は弁座面130aに開口している。第1ポート131の径と、共通ポート133の径と、第2ポート132の径と、は同一である。第1ポート131には、第1接続管191が接続されている。共通ポート133には、共通接続管193が接続されている。第2ポート132には、第2接続管192が接続されている。
【0032】
第1接続管191は、第1ポート131と、第1蓋部材21の第1接続ポート21aと、を接続している。共通接続管193は、共通ポート133と、出口導管93と、を接続している。第2接続管192は、第2ポート132と、第2蓋部材22の第2接続ポート22aと、を接続している。
【0033】
パイロット弁体140は、直方体形状を有している。パイロット弁体140は、内側にUターン通路141を有している。Uターン通路141は、弁本体120の内側空間と区画されている。パイロット弁体140は、弁座面130a上に配置される。パイロット弁体140は、弁座面130a上でスライドされて、Uターン通路141が第1ポート131と共通ポート133とを接続する第1のパイロット弁体位置(
図1に示すパイロット弁体140の位置)と、Uターン通路141が第2ポート132と共通ポート133とを接続する第2のパイロット弁体位置(
図2に示すパイロット弁体140の位置)と、に位置付けられる。共通ポート133は、常にUターン通路141に接続されている。
【0034】
固定鉄心150は、円柱形状を有している。固定鉄心150は、弁本体120の他端に接合されている。
【0035】
プランジャ160は、円筒形状を有している。プランジャ160は、弁本体120の内側に配置されている。プランジャ160は、弁本体120の軸方向に移動可能である。プランジャ160は、弁軸170によってパイロット弁体140と連結されている。プランジャ160と固定鉄心150との間に、プランジャばね161が配置されている。プランジャばね161は、圧縮コイルばねである。プランジャばね161は、プランジャ160を蓋部材121側に押している。
【0036】
次に、流路切換弁1の動作の一例について説明する。流路切換弁1は、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれ、入口導管83に高圧の冷媒が流れ、出口導管93に低圧の冷媒が流れる。
【0037】
パイロット弁110の図示しない電磁コイルが非通電状態のとき、固定鉄心150およびプランジャ160が磁化されておらず、プランジャ160がプランジャばね161に押されて蓋部材121側に移動する。プランジャ160と弁軸170で接続されたパイロット弁体140が、弁座面130a上で蓋部材121側にスライドされて、第1のパイロット弁体位置に位置付けられる。出口導管93と、共通接続管193と、共通ポート133と、Uターン通路141と、第1ポート131と、第1接続管191と、第1接続ポート21aと、で構成される第1接続通路C1によって、出口ポート33と第1作動室11とが接続される。弁室13には入口ポート23から高圧の冷媒が導入される。第1作動室11から低圧の冷媒が流れる出口ポート33に第1接続通路C1を介して高圧の冷媒が排出される。また、第1作動室11には、弁室13から第1絞り通路57を介して高圧の冷媒が導入される。弁室13と第1作動室11との差圧によって第1ピストン50および第2ピストン60が第1蓋部材21側に移動する。第1ピストン50および第2ピストン60の移動に伴って、主弁体40が弁座面30a上でスライドされ、主弁体40が第1の主弁体位置に位置付けられる。これにより、入口ポート23と第2ポート32とが弁室13を介して接続され、出口ポート33と第1ポート31とがUターン通路41を介して接続される。第1接続ポート21aが、第1ピストン50の弁体56によって閉じられ、第2接続ポート22aが、第2作動室12に対して開く。第1接続ポート21aが閉じられた後、弁室13、第1作動室11および第2作動室12が高圧の冷媒で満たされる。
【0038】
パイロット弁110の図示しない電磁コイルが通電状態のとき、固定鉄心150およびプランジャ160が磁化されて、プランジャ160が固定鉄心150側に移動する。プランジャ160と弁軸170で接続されたパイロット弁体140が、弁座面130a上で固定鉄心150側にスライドされて、第2のパイロット弁体位置に位置付けられる。出口導管93と、共通接続管193と、共通ポート133と、Uターン通路141と、第2ポート132と、第2接続管192と、第2接続ポート22aと、で構成される第2接続通路C2によって、出口ポート33と第2作動室12とが接続される。弁室13には入口ポート23から高圧の冷媒が導入される。第2作動室12から低圧の冷媒が流れる出口ポート33に第2接続通路C2を介して高圧の冷媒が排出される。また、第2作動室12には、弁室13から第2絞り通路67を介して高圧の冷媒が導入される。弁室13と第2作動室12との差圧によって第1ピストン50および第2ピストン60が第2蓋部材22側に移動する。第1ピストン50および第2ピストン60の移動に伴って、主弁体40が弁座面30a上でスライドされ、主弁体40が第2の主弁体位置に位置付けられる。これにより、入口ポート23と第1ポート31とが弁室13を介して接続され、出口ポート33と第2ポート32とがUターン通路41を介して接続される。第1接続ポート21aが、第1作動室11に対して開き、第2接続ポート22aが、第2ピストン60の弁体66によって閉じられる。第2接続ポート22aが閉じられた後、弁室13、第1作動室11および第2作動室12が高圧の冷媒で満たされる。
【0039】
上記動作において、流路切換弁1では、第1作動室11の冷媒の圧力が、第1接続通路C1を介して高圧の冷媒が排出されることによる圧力低下と第1絞り通路57を介して高圧の冷媒が導入されることによる圧力上昇とのバランスに応じた値となる。同様に、第2作動室12の冷媒の圧力が、第2接続通路C2を介して高圧の冷媒が排出されることによる圧力低下と第2絞り通路67を介して高圧の冷媒が導入されることによる圧力上昇とのバランスに応じた値となる。
【0040】
第1接続通路C1は、パイロット弁110の共通ポート133において最も通路面積が小さくなる。共通ポート133の径は、第1接続通路C1の最小径Dbである。第2接続通路C2は、パイロット弁110の共通ポート133において最も通路面積が小さくなる。共通ポート133の径は、第2接続通路C2の最小径でもある。
【0041】
流路切換弁1は、第1絞り通路57の最小径Daと第1接続通路C1の最小径Dbとの比Da/Dbが以下の式(1)を満たすように構成されている。ΔPは、第1接続通路C1によって出口ポート33と第1作動室11とが接続されたときの弁室13と第1作動室11との差圧である。なお、流路切換弁1は、第1ピストン50および第2ピストン60が確実に移動するように、差圧ΔPが0.2MPa以上となる冷凍サイクルで用いられる。
【0042】
Rmin≦Da/Db ・・・ (1)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
【0043】
比Da/Dbが上記式(1)を満たすことで、流路切換時における第1ピストンおよび第2ピストンの移動にかかる時間(すなわち、主弁体40が第2の主弁体位置から第1の主弁体位置に移動する時間(以下、「流路切換時間T1」という。))を、1.1秒以上にすることができる。流路切換時間T1が1.1秒以上であれば、主弁体40がスライドしたときの騒音レベルを45dB以下に抑えることができる。
【0044】
または、流路切換弁1は、比Da/Dbが以下の式(1A)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0045】
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1A)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(11.80))/11.43
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(12.97))/12.47
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(5.62))/6.35
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(2.48))/4.04
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(0.90))/3.05
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-1.23))/1.95
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-3.28))/1.11
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.22))/0.53
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.99))/0.38
【0046】
比Da/Dbが上記式(1A)を満たすことで、流路切換時間T1を、1.1秒以上でかつ60秒以下にすることができる。
【0047】
または、流路切換弁1は、比Da/Dbが以下の式(1B)を満たすように構成されていることが好ましい。
【0048】
Rmin≦Da/Db≦Rmax ・・・ (1B)
ただし、
0.2MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmin=(ΔP+(21.65))/30.27
0.2MPa≦ΔP<1.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(15.80))/16.00
1.0MPa≦ΔP<2.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(14.41))/14.67
2.0MPa≦ΔP<3.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(6.96))/8.01
3.0MPa≦ΔP<4.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(3.56))/5.28
4.0MPa≦ΔP<5.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(1.85))/4.08
5.0MPa≦ΔP<6.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-0.48))/2.69
6.0MPa≦ΔP<7.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-2.73))/1.60
7.0MPa≦ΔP<8.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-4.83))/0.81
8.0MPa≦ΔP≦10.0MPaのとき、
Rmax=(ΔP+(-5.50))/0.64
【0049】
比Da/Dbが上記式(1B)を満たすように設定されることで、流路切換時間T1を、1.1秒以上でかつ30秒以下にすることができる。
【0050】
なお、流路切換弁1は、第2絞り通路67の最小径が、第1絞り通路57の最小径Daと同一であり、第2接続通路C2の最小径が、第1接続通路C1の最小径Dbと同一である。流路切換弁1は、第2絞り通路67の最小径をDaとし、第2接続通路C2の最小径をDbとし、第2接続通路C2によって出口ポート33と第2作動室12とが接続されたときの弁室13と第2作動室12との差圧をΔPとしたとき、上記式(1)を満たすように構成されている。したがって、主弁体40が第1の主弁体位置から第2の主弁体位置に移動する時間(以下、「流路切換時間T2」という。)についても、1.1秒以上にすることができる。流路切換時間T2が1.1秒以上であれば、主弁体40がスライドしたときの騒音レベルを45dB以下に抑えることができる。
【0051】
本実施例に係る流路切換弁1は、主弁10と、パイロット弁110と、を有している。主弁10が、一端部および他端部が塞がれた円筒形状の弁本体20と、弁本体20の内側に配置された弁座30、弁本体20の一端部を塞ぐ第1蓋部材21と弁座30との間に配置された第1ピストン50と、弁本体20の他端部を塞ぐ第2蓋部材22と弁座30との間に配置された第2ピストン60と、弁座30が有する弁座面30aに配置され、第1ピストン50および第2ピストン60とともに弁本体20の軸方向にスライドされる主弁体40と、を有している。弁本体20の内側空間が、第1ピストン50と第2ピストン60との間の弁室13と、第1蓋部材21と第1ピストン50との間の第1作動室11と、第2蓋部材22と第2ピストン60との間の第2作動室12と、に区画されている。弁本体20が、弁室13に接続された入口ポート23を有している。弁座30が、主弁体40のUターン通路41に接続された出口ポート33を有している。第1ピストン50が、弁室13と第1作動室11とを接続する第1絞り通路57を有している。第2ピストン60が、弁室13と第2作動室12とを接続する第2絞り通路67を有している。パイロット弁110が、出口ポート33と第1作動室11とを接続する第1接続通路C1と、出口ポート33と第2作動室12とを接続する第2接続通路C2と、を切り換えるように構成されている。流路切換弁1は、第1絞り通路57の最小径をDaとし、第1接続通路C1の最小径をDbとし、第1接続通路C1によって出口ポート33と第1作動室11とが接続されたときの弁室13と第1作動室11との差圧をΔPとしたとき、上記式(1)を満たすように構成されている。
【0052】
流路切換弁1は、第1絞り通路57の最小径Daと第1接続通路C1の最小径Dbとの比Da/Dbが、上記式(1)を満たしている。このようにしたことから、流路切換時間T1を、騒音を抑制可能な時間にすることができる。したがって、流路切換弁1は、弁室13に導入される冷媒の圧力を低下させなくても騒音を抑制できる。
【0053】
また、第1ピストン50が、金属部品である板ばね部材53を有している。第1絞り通路57の最小径Daとなる箇所が、板ばね部材53に形成された貫通孔53cである。第2ピストン60が、金属部品である板ばね部材63を有している。第2絞り通路67の最小径となる箇所が、板ばね部材63に形成された貫通孔63cである。このようにすることで、第1絞り通路57の最小径Daの箇所を合成樹脂部品に形成する場合に比べて、貫通孔53cの径および貫通孔63cの径の加工精度を高めることができる。そのため、比Da/Dbの精度が高まり、流路切換時間T1を、より確実に騒音を抑制可能な時間にすることができる。
【0054】
また、第2絞り通路67の最小径が、第1絞り通路57の最小径Daと同一である。第2接続通路C2の最小径が、第1接続通路C1の最小径Dbと同一である。流路切換弁1は、第2絞り通路67の最小径をDaとし、第2接続通路C2の最小径をDbとし、第2接続通路C2によって出口ポート33と第2作動室12とが接続されたときの弁室13と第2作動室12との差圧をΔPとしたとき、上記式(1)を満たすように構成されている。このようにすることで、流路切換時間T2を、騒音を抑制可能な時間にすることができる。したがって、流路切換弁1は、弁室13に導入される冷媒の圧力を低下させなくても騒音を抑制できる。
【0055】
本発明者らは、第1絞り通路57の最小径Daと第1接続通路C1の最小径Dbとの比Da/Dbが異なる複数の流路切換弁1を作製し、これら複数の流路切換弁1を用いて、第1接続通路C1によって出口ポート33と第1作動室11とが接続されたときの弁室13と第1作動室11との差圧ΔPを変化させて、流路切換時間T1および騒音レベルを計測した。流路切換時間T1および騒音レベルの計測によって、本発明者らは、流路切換時間T1が1.1秒以上のときに、騒音レベルを45dB以下に抑えることが可能であることを突きとめた。なお、騒音レベル「45dB」とは、環境基本法第16条第1項の規定に基づく騒音に係る環境基準において規定される、住居の用に供される地域における夜間基準値である。冷凍サイクルにおいて、一般的な冷媒(例えばR410A)は差圧ΔPが1.0~1.5MPa程度で用いられることが多く、二酸化炭素冷媒は差圧ΔPが8~10MPa程度で用いられることが多い。
【0056】
そして、本発明者らは、上記測定結果に基づいて、流路切換時間T1が1.1秒となる比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせをプロットしたグラフG1_1、流路切換時間T1が30秒となる比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせをプロットしたグラフG30、および、流路切換時間T1が60秒となる比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせをプロットしたグラフG60を得た。
図6に、これらグラフG1_1、G30、G60を示す。そして、本発明者らは、これらグラフG1_1、G30、G60の近似式を作成して上記式(1)、(1A)、(1B)を得た。
【0057】
図6は、上記式(1A)を満たす比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせの範囲SAを示している。流路切換弁1は、上記式(1A)を満たすことにより、流路切換時間T1を1.1~60秒にすることができ、騒音を抑制しつつ短時間での流路切換が可能となる。
【0058】
図7は、上記式(1B)を満たす比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせの範囲SBを示している。流路切換弁1は、上記式(1B)を満たすことにより、流路切換時間T1を1.1~30秒にすることができ、騒音を抑制しつつより短時間での流路切換が可能となる。例えば、流路切換弁1において、差圧ΔPが取り得る範囲が0.2MPa~6.0MPaである場合に、比Da/Dbを1.0にすることで、流路切換時間T1を1.1~30秒にすることができる。
【0059】
上述した実施例では、主弁体40が第1の主弁体位置と第2の主弁体位置との間をスライドされる際に、第1ポート31と出口ポート33と第2ポート32との全てが接続されることがないように構成されている。本発明は、このような構成以外にも、主弁体40が第1の主弁体位置と第2の主弁体位置との間をスライドされる際に、第1ポート31と出口ポート33と第2ポート32との全てが接続される構成にも適用することできる。
【0060】
また、上述した実施例において、「第1」、「第2」との文言は、構成部材を区別するために便宜上付しているものであり、「第1」、「第2」の文言を互いに置き換えた構成としてもよい。
【0061】
本発明を適用可能な流路切換弁のパイロット弁は、上述したパイロット弁110の構成に限定されない。第1接続管191および第2接続管192の一方を共通接続管193に選択的に接続しかつ共通接続管193に接続しなかった他方を閉塞する切換弁であれば、パイロット弁110に代えて用いることができる。「閉塞」は、他の接続管や導管と冷媒が流れる態様の接続をしないことを含む。または、第1接続管191および第2接続管192の一方を出口導管93に接続された第1共通接続管に接続しかつ他方を入口導管83に接続された第2共通接続管に接続する切換弁をパイロット弁110に代えて用いてもよい。
【0062】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…流路切換弁、10…主弁、11…第1作動室、12…第2作動室、13…弁室、20…弁本体、21…第1蓋部材、21a…第1接続ポート、22…第2蓋部材、22a…第2接続ポート、23…入口ポート、30…弁座、30a…弁座面、31…第1ポート、32…第2ポート、33…出口ポート、40…主弁体、41…Uターン通路、50…第1ピストン、51、52…円板、53…板ばね部材、53a…円板部、53b…ばね片、53c…貫通孔、54…パッキン、54a…底壁部、54b…周壁部、55…弁体支持部材、55a…円板部、55b…突部、56…弁体、56a…基端部、56b…先端部、57…第1絞り通路、60…第2ピストン、61、62…円板、63…板ばね部材、63a…円板部、63b…ばね片、63c…貫通孔、64…パッキン、64a…底壁部、64b…周壁部、65…弁体支持部材、65a…円板部、65b…突部、66…弁体、66a…基端部、66b…先端部、67…第2絞り通路、70…連結体、71…弁体嵌合孔、83…入口導管、91…第1導管、92…第2導管、93…出口導管、110…パイロット弁、120…弁本体、121…蓋部材、130…弁座、130a…弁座面、131…第1ポート、132…第2ポート、133…共通ポート、140…パイロット弁体、141…Uターン通路、150…固定鉄心、160…プランジャ、161…プランジャばね、170…弁軸、191…第1接続管、192…第2接続管、193…共通接続管、C1…第1接続通路、C2…第2接続通路
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
第1ピストン50は、弁本体20の内側において、第1蓋部材21と弁座30との間に配置されている。第1ピストン50は、弁本体20の軸方向に移動可能である。第1ピストン50は、弁本体20の内側空間を軸方向に区画している。第1ピストン50は、円板51、52と、板ばね部材53と、パッキン54と、弁体支持部材55と、弁体56と、圧縮コイルばね58と、を有している。円板51、52は、ステンレスなどの金属製である。円板51の外径は、弁本体20の内径よりもやや小さい。円板52の外径は、円板51の外径より小さい。板ばね部材53は、金属部品である。板ばね部材53は、円板部53aと、円板部53aの周縁に接続された複数のばね片53bと、を有している。パッキン54は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの合成樹脂製である。パッキン54は、円形のトレー形状を有している。パッキン54は、円板形状の底壁部54aと、底壁部54aの周縁に接続された周壁部54bと、を有している。パッキン54の内側に板ばね部材53が配置されている。板ばね部材53の円板部53aとパッキン54の底壁部54aとは接している。円板51、52は、図示しないボルトで締結されており、板ばね部材53の円板部53aおよびパッキン54の底壁部54aは、円板51、52の間に保持されている。板ばね部材53の複数のばね片53bは、パッキン54の周壁部54bを内側から外側に向けて押している。パッキン54の周壁部54bは、弁本体20の内周面に接している。弁体支持部材55は、真ちゅうなどの金属製である。弁体支持部材55は、円板部55aと、突部55bと、を有している。円板部55aは、円板51における第1蓋部材21側の面に接合されている。突部55bは、円板部55aの中心に配置されている。弁体56は、PPSなどの合成樹脂製である。弁体56は、円柱形状を有している。弁体56は、弁体支持部材55の突部55bによって、弁本体20の軸方向に移動可能に支持されている。弁体56の基端部56aは突部55bの内側に配置されている。弁体56の先端部56bは突部55bの外側に突出している。弁体56の基端部56aは、圧縮コイルばね58によってパッキン54に押し付けられている。弁体56の先端部56bは、略円すい形状に形成されている。弁体56は、第1蓋部材21の第1接続ポート21aを開閉する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
第2ピストン60は、弁本体20の内側において、第2蓋部材22と弁座30との間に配置されている。第2ピストン60は、弁本体20の軸方向に移動可能である。第2ピストン60は、弁本体20の内側空間を軸方向に区画している。第2ピストン60は、円板61、62と、板ばね部材63と、パッキン64と、弁体支持部材65と、弁体66と、圧縮コイルばね68と、を有している。円板61、62と、板ばね部材63(円板部63a、複数のばね片63b、貫通孔63c)と、パッキン64(底壁部64a、周壁部64b)と、弁体支持部材65(円板部65a、突部65b)と、弁体66(基端部66a、先端部66b)と、圧縮コイルばね68と、は、第1ピストンの円板51、52と、板ばね部材53(円板部53a、複数のばね片53b、貫通孔53c)と、パッキン54(底壁部54a、周壁部54b)と、弁体支持部材55(円板部55a、突部55b)と、弁体56(基端部56a、先端部56b)と、圧縮コイルばね58と、同一構成である。弁体66は、第2蓋部材22の第2接続ポート22aを開閉する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図7は、上記式(1A)を満たす比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせの範囲SAを示している。流路切換弁1は、上記式(1A)を満たすことにより、流路切換時間T1を1.1~60秒にすることができ、騒音を抑制しつつ短時間での流路切換が可能となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
図8は、上記式(1B)を満たす比Da/Dbと差圧ΔPとの組み合わせの範囲SBを示している。流路切換弁1は、上記式(1B)を満たすことにより、流路切換時間T1を1.1~30秒にすることができ、騒音を抑制しつつより短時間での流路切換が可能となる。例えば、流路切換弁1において、差圧ΔPが取り得る範囲が0.2MPa~6.0MPaである場合に、比Da/Dbを1.0にすることで、流路切換時間T1を1.1~30秒にすることができる。