(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187866
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20221213BHJP
H04N 5/355 20110101ALI20221213BHJP
H04N 5/374 20110101ALI20221213BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 A
H04N5/355 450
H04N5/374
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096077
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】中田 靖
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌弘
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA02
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA03
4M118CA22
4M118CA25
4M118GA02
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB09
4M118GB11
4M118GC07
4M118GD03
4M118GD04
4M118GD07
4M118GD08
4M118GD09
4M118HA25
5C024CX46
5C024EX42
5C024EX43
5C024GX02
5C024GX24
5C024GY31
(57)【要約】
【課題】 広いダイナミックレンジを得ることができる光電変換装置の提供
【解決手段】 複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を発散させる発散レンズとを有し前記発散レンズは、光入射側からの平面視で前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する光電変換装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を発散させる発散レンズとを有し
前記発散レンズは、光入射側からの平面視で前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
複数の画素を有する光電変換装置であって、
前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を発散させる発散構造とを有し、
前記発散構造は、前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部とが形成された半導体基板に設けられ、光入射側からの平面視で前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記発散構造は、発散レンズであることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部とは入射光に対する感度が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第1の光電変換部の光入射面の面積は前記第2の光電変換部の光入射面の面積より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第2の光電変換部が、前記第1の光電変換部を取り囲んで配されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に光電変換装置。
【請求項7】
前記発散レンズは、前記半導体基板の凹部を前記半導体基板より屈折率が小さい材料により覆って構成したレンズであることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記発散レンズは、凹レンズとして機能するフレネルレンズであることを特徴とする請求項1又は請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記発散レンズは、サブ波長領域の周期構造により入射光を発散させるレンズであることを特徴とする請求項1又は請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記発散レンズは、前記半導体基板に設けられた誘電材料層に形成した凹部を該誘電材料層より屈折率が小さい材料により覆って構成したレンズであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部との間に、
光を遮光する第1の遮光壁を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記画素同士の間に、
光を遮光する第2の遮光壁を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第2の遮光壁の高さは、前記第1の遮光壁の高さよりも高いことを特徴とする請求項12に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部との間に、
電荷の移動を制限する分離部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記画素同士の間に、
電荷の移動を制限する分離部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記画素に入射した光を集束する集束レンズを有し、
前記集束レンズは、光入射側からの平面視において前記第2の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記第1の光電変換部の入射光に対する感度は、前記第2の光電変換部の入射光に対する感度よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記第1の光電変換部の光入射面の面積は、前記第2の光電変換部の光入射面の面積より小さいことを特徴とする請求項17に記載の光電変換装置。
【請求項19】
複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を集束させる集束構造とを有し、
前記集束構造は、前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部とが形成された半導体基板に設けられ、光入射側からの平面視で前記第2の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする光電変換装置。
【請求項20】
前記集束構造は集束レンズであることを特徴とする請求項19に記載の光電変換装置。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項22】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【請求項23】
配線層を含む半導体基板に積層される半導体基板であって、
第1の光電変換部と第2の光電変換部とを含む複数の画素を有し、
平面視において前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆う、入射光を発散させる発散レンズを備えることを特徴とする半導体基板。
【請求項24】
複数の画素と、入射光を発散させる発散構造を有する半導体基板であって、
前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、を有し、
前記発散構造は、平面視において前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする半導体基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広いダイナミックレンジを得ることができる光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイナミックレンジの広い光電変換装置が求められている。従来の光電変換装置では対応できない暗い部分と明るい部分を同時に撮像できる高ダイナミックレンジを持つ装置では、例えば車載カメラや防犯カメラなどで、逆光など明暗の差が大きい場合に優位に利用することができる。
【0003】
高ダイナミックレンジを実現する光電変換装置が特許文献1乃至特許文献4に示されている。
【0004】
特許文献1ではフォトダイオード間の面積の違いを用いて感度の異なる複数のフォトダイオードを形成し、高ダイナミックレンジを実現している。
【0005】
特許文献2では各フォトダイオード上に互いに透過率が異なる減光フィルターを形成することにより感度の異なる複数のフォトダイオードを実現している。
【0006】
更に、特許文献3と特許文献4は、感度の異なる複数のフォトダイオードと、トロイダルマイクロレンズや複数の球面マイクロレンズとを組み合わせることにより、より広いダイナミックレンジを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-218343号
【特許文献2】特開2007-329721号
【特許文献3】US2018/0269245
【特許文献4】US2019/0131333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、広いダイナミックレンジを得ることができる光電変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの側面は、複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を発散させる発散レンズとを有し前記発散レンズは、光入射側からの平面視で前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の側面は、複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を発散させる発散構造とを有し、前記発散構造は、前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部とが形成された半導体基板に設けられ、光入射側からの平面視で前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0011】
本発明の更に別の側面は、複数の画素を有する光電変換装置であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、入射した光を集束させる集束構造とを有し、前記集束構造は、前記第1の光電変換部と前記第2の光電変換部とが形成された半導体基板に設けられ、光入射側からの平面視で前記第2の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0012】
本発明の更に別の側面は、配線層を含む半導体基板に積層される半導体基板であって、第1の光電変換部と第2の光電変換部とを含む複数の画素を有し、平面視において前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆う、入射光を発散させる発散レンズを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の更に別の側面は、複数の画素と、入射光を発散させる発散構造を有する半導体基板であって、前記複数の画素のそれぞれは、第1の光電変換部と、第2の光電変換部と、を有し、前記発散構造は、平面視において前記第1の光電変換部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、広いダイナミックレンジを得ることができる光電変換装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面構造の概略図である。
【
図2】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の平面概略図である。
【
図3】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の平面概略図である。
【
図4】第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。
【
図5】第二の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。
【
図6】第二の実施形態に係る光電変換装置の画素の平面概略図である。
【
図7】第三の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。
【
図8】第四の実施形態に係る光電変換システムの構成を示す図である。
【
図9】第五の実施形態に係る移動体の構成、動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光電変換装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
以下に述べる各実施形態では、本発明を適用可能な光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明するが、本発明を適用可能な装置は撮像装置に限られるものではない。例えば、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などに本発明を適用可能である。
【0018】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る光電変換装置は、画素アレイ部、垂直駆動部、カラム処理部、水平駆動部、システム制御部等を含んで構成される撮像装置である。
【0019】
画素アレイ部には、入射光量に応じた電荷量の電荷を発生して内部に蓄積する光電変換素子を有する単位画素がアレイ状に配置されている。以下、単位画素を単に画素と記述し、各画素の構成について説明する。
【0020】
図1は、第一の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。
【0021】
図1において、画素11は、
図1における上面から入射光が照射される、裏面照射型CMOSイメージセンサの画素である。以下の説明では
図1の上面を裏面、下面を表面とする。
【0022】
画素11は、
図1の下側から順に、配線層51、酸化膜52、半導体基板53、誘電材料層54、カラーフィルタ層55、およびオンチップレンズ109が積層されて構成されている。
【0023】
配線層51は、半導体基板53に形成されている第1の光電変換部104や第2の光電変換部105に蓄積された電荷の読み出し等を行う複数の配線101が層間絶縁膜102に埋めこまれて構成されている。
【0024】
また、配線層51には、半導体基板53に対して酸化膜52を介して、転送ゲート103が配置されている。転送ゲート103に所定の電圧が印加されることにより、第1の光電変換部104や第2の光電変換部105に蓄積されている電荷が転送される。
【0025】
配線層51はその下側に配置されている不図示の基板支持材により支持されている。例えば、配線層51に電荷の読み出し回路を形成し、読み出した電荷に基づく信号を処理するAD変換回路以降の信号処理部を基板支持材側に構成することにより、イメージセンサを高速駆動することができる。
【0026】
酸化膜52は、絶縁性を備えており、半導体基板53の表面側を絶縁する。
【0027】
半導体基板53は、第1の光電変換部104と、第2の光電変換部105と、凹レンズ機能を有するインナーレンズ108(以下、「発散レンズ108」とも記載する)と、を有する。第1の光電変換部104と第2の光電変換部105とは入射光を受光する光入射面の面積が互いに異なり、入射光に対する感度が互いに異なる。光電変換部105と比べ光入射面の面積が小さいため低感度の第1の光電変換部104を、光電変換部104と比べて光入射面の面積が大きいため高感度の第2の光電変換部105が取り囲むように配されている。
【0028】
入射光を電荷に変換する光電変換部104、105は、PN接合型のフォトダイオード構造やSPAD(Single Photon Avalanche Diode)構造を備える素子であるが、これらの素子に限定されるものではない。
【0029】
発散レンズ108は、半導体基板53の一部を掘って凹球面を備える凹部を形成し、凹部の中に誘電材料層54を埋め込んだ構造を有する。誘電材料層は一般に有機材料によって形成される。
【0030】
例えば、半導体基板53として屈折率約3.4のSiを用い、埋め込まれる誘電材料層54の屈折率を約1.5とした場合、半導体基板53と誘電材料層54との屈折率差により発散角の大きな発散レンズを形成することができる。発散レンズ108(凹部)には誘電材料層の代わりにSiO2やSiN等の層を埋め込んでもよく、発散レンズ108は通常の球面レンズ構造ではなくフレネルレンズ構造を有してもよい。発散レンズ108をフレネルレンズ構造にすることで、レンズの厚みを薄くすることができる。
【0031】
発散レンズ108は、基板53を光入射側から平面視したとき、第1の光電変換部104および第2の光電変換部105のうち少なくとも第1の光電変換部104を覆うように配置されている。発散レンズ108により第1の光電変換部104を覆うことで、第1の光電変換部104に向かって装置に入射する光は発散レンズ108により発散され、一部の光が光電変換部104以外の部分(例えば第2の光電変換部105)に向けられて入射する。従って第1の光電変換部104に入射する光を、発散レンズ108を介さない場合と比べ少なくすることができる。結果として、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105の感度差を大きくすることができ、よりダイナミックレンジが広がる。
【0032】
なお、単位画素の配される画素アレイ部は、単位画素の他にOB(Optical Black)画素や参照画素を有する。
【0033】
OB画素は単位画素と同一の素子構造を有するが、画素の光入射面側に光の入射を制限する不図示の遮光部が設けられている。したがってOB画素の光電変換部では入射光の光電変換は起こらず、OB画素の出力として、光電変換部の暗電流やノイズを含めた黒レベルの基準値を得ることができる。
【0034】
参照画素は、単位画素及びOB画素と比べ、光電変換部が形成されていない点で異なっている。光電変換部が形成されないため、参照画素から出力される信号は光電変換部の暗電流やノイズの影響を受けない。参照画素の出力として、光電変換部の暗電流やノイズを含まない画素部のノイズの基準値を得ることができる。
【0035】
図2は、半導体基板53の裏面側から見た、第一の実施形態に係る画素の第1及び第2の光電変換部の平面概略図である。
【0036】
図3(a)、
図3(b)は、いずれも基板53の裏面側から見た、第一の実施形態に係る画素の第1及び第2の光電変換部と発散レンズ108の平面概略図である。
【0037】
図3(a)、
図3(b)に示すように、平面視したときの発散レンズの形状は円形に限られず、矩形やその他の形状とすることが可能である。本実施形態は、平面視したときに発散レンズ108が第1の光電変換部全体(全部)を覆うような形態であるが、平面視したとき、発散レンズ108が第1の光電変換部の中央部を含む大部分は覆うが周辺部は覆わない、第1光電変換部の一部を覆う形態も採れる。
【0038】
さらに、平面視したとき発散レンズ108が第1の光電変換部全体を覆い且つ第2の光電変換部の一部を覆う形態も採れる。発散レンズ108が第2の光電変換部の一部を覆う形態を採る場合、発散レンズ108は第2の光電変換部の大部分を覆わない。
【0039】
前述の通り、画素の中心部に配された第1の光電変換部104と画素の周辺部に配された第2の光電変換部105とは一方が他方を取り囲む入れ子状の構造を形成している。第1一の光電変換部104と2光電変換部105とは、それぞれの重心が一致するように配することが望ましい。このような配置では、第1の光電変換部104で光電変換された電荷に基づく信号と、第2の光電変換部105で光電変換された電荷に基づく信号とを使用してダイナミックレンジ拡大を図る際の信号補正において、光電変換部間の重心ずれを考慮する必要がない。つまり、信号補正が容易である。
【0040】
本実施形態は、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105とを、それぞれ一つの光電変換部で構成しているが、それぞれ複数の光電変換部を組み合わせて構成してもかまわない。このとき、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105の光入射面の面積とはそれぞれを構成する複数の光電変換部の光入射面の面積の合計である。
【0041】
また、本実施形態では光入射面の面積の違いによって光に対する感度を異ならせた第1の光電変換部104と第2の光電変換部105との感度差を発散レンズによって拡大した。しかし、たとえば光入射面の面積が等しく、光に対する感度が同等の第1及び第2の光電変換部に対しても、光電変換部を覆う発散レンズによって感度差を設けることが可能である。
【0042】
さらに、本実施形態では半導体基板53内に発散レンズ108が構成されているが、例えば半導体基板53の光入射面側に形成された誘電材料層54に凹レンズ機能を有するインナーレンズ(発散レンズ)を形成することも可能である。
【0043】
また、半導体基板53には、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105の間に光を遮光する第1の遮光壁106が形成され、さらに隣接する画素同士の間に光を遮光する第2の遮光壁107が形成されている。第1の遮光壁106、第2の遮光壁107はいずれも、Al2O3やWといった遮光性を有する材料により形成されている。
【0044】
第1の遮光壁106により、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105との間で光のクロストークが発生することを効果的に防ぐことができる。
【0045】
また、第2の遮光壁107により、画素間で光のクロストークが発生することを防ぐことができる。この場合、隣り合う2画素の第2の光電変換部105に対して、間に在る2つの第2の遮光壁107により光のクロストークの発生を防止することになる。
【0046】
なお、第2の光電変換部105の配される位置が、隣接する画素の第2の光電変換部105と近接する場合には、隣り合う2画素の第2の光電変換部105に対して1つの第2の遮光壁107を配置してもよい。
【0047】
また、不純物の拡散層を用いて、光電変換部に蓄積された電荷の移動を制限するポテンシャル障壁による分離部を形成し、各光電変換部の分離を行ってもよい。このような分離部を形成することによって、電荷のクロストークの発生を防ぐことができる。
【0048】
(第一の実施形態の変形例)
図4は、第一の実施形態の変形例を示す図であり、光電変換装置の画素の断面概略図である。
【0049】
図4に示す画素は、
図1に示す画素とは異なり、第2の遮光壁107の高さを第1の遮光壁106の高さよりも高くしている。これにより、凹レンズ機能を有するインナーレンズ108(発散レンズ108)によって発散された光や斜め入射した光が第二の遮光壁107によって反射され、画素間の光のクロストークの発生をより効果的に防ぐことができる。
【0050】
なお、第2の遮光壁107の高さに合わせて、第2の光電変換部105の光入射面の高さを第1の光電変換部104の光入射面の高さよりも高くすることも可能である。これにより、第2の光電変換部105の感度を上げ、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105の感度差を拡大することができる。
【0051】
以上、第一の実施形態およびその変形例によれば、複数の光電変換部の一部に入射光を発散させる発散構造を重ならせることで、一部の画素に入射する光を減光させ、複数の光電変換部間に感度差を設けることができる。
【0052】
本実施形態や後述する実施形態においては、光電変換部の光入射面の面積を互いに変えた互いに感度の異なる複数の光電変換部を有する光電変換装置を示す。しかし、本発明は、光電変換部の半導体領域の不純物濃度を互いに変えて互いに感度を異ならせた複数の光電変換部を有する光電変換装置にも適用可能である。また、光電変換部の光入射面を互いに透過率の異なる減光フィルターで覆って互いに感度を異ならせた複数の光電変換部を有する光電変換装置にも、適用できる。
【0053】
(第二の実施形態)
図5は、第二の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。本実施形態は第一の実施形態とは凹レンズ機能を有するインナーレンズの構成が異なる実施形態である。以下の説明では第一の実施形態の説明と共通する部分は省略し、主に第一の実施形態と異なる部分について説明する。
【0054】
図5において、画素12は、裏面照射型CMOSイメージセンサの画素であり、
図5の下側から順に、配線層51、酸化膜52、半導体基板53、誘電材料層54、カラーフィルタ層55、およびオンチップレンズ109が積層されて構成されている。
【0055】
配線層51および酸化膜52の構成は第一の実施形態と同様である。
【0056】
半導体基板53には、第1の光電変換部104と、第2の光電変換部105と、凹レンズの機能を有する平板状レンズ110が形成されている。本実施形態の平板状レンズ110は、平板状の発散レンズであり、サブ波長領域の周期構造に基づく不均一屈折率分布を基板内に生じさせることにより形成したレンズである。サブ波長領域とは、対象とする光(本実施形態では入射光)の波長と同程度かそれよりも小さい寸法の領域をいう。このような周期構造を実現するため、該レンズには複数の溝が形成されている。このようなレンズの主な溝形状として、ブレーズド型や正弦波型、ラミナー型と呼ばれる構造が知られている。
【0057】
レンズ110は、入射光の波長よりも寸法が小さい幅を有する複数の溝を、半導体基板53に掘り込むことで形成され、その中には誘電材料層54が埋め込まれている。例えば、半導体基板53として屈折率約3.4のSiを用い、複数の溝に屈折率が約1.5の誘電材料層54が埋め込まれた場合、半導体基板53内には互いに屈折率の異なるSiと誘電材料とが交互に配置される。
【0058】
レンズ110の周辺領域の平均屈折率を中心領域の平均屈折率よりも高くすることで、凹レンズの機能を有する平板状レンズを形成することができる。具体的には、中心領域に配される低屈折率の構造の割合を周辺領域に配される低屈折率の構造の割合よりも高め、逆に周辺領域に配される高屈折率の構造の割合を中心領域に配される高屈折率の構造の割合よりも高めることで、平均屈折率に差をつけている。ここで平均屈折率とは、屈折率の高い構造と低い構造との体積比によって算出される値である。
【0059】
なお、有機物の誘電材料の代わりに、SiO2やSiN等を用いてもよい。
【0060】
レンズ110は、第1の光電変換部104および第2の光電変換部105の少なくとも一方を覆うように配置されている。レンズ110が第1の光電変換部104を覆うように配置することで、入射光はレンズ110により発散され、第1の光電変換部104に入射する光を少なくすることができる。結果として、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105の感度差を広げることができ、よりダイナミックレンジが広がる。
【0061】
図6は、基板53の裏面方向から見た、第二の実施形態に係る画素の第一及び第2の光電変換部とレンズ110の平面概略図である。
【0062】
図6において、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105とは、それぞれの重心が互いに一致するように入れ子状に配され、さらにレンズ110もその重心(光軸)が変換部104、105の重心と一致するように配されている。このような配置では、第1の光電変換部104で変換された電荷に基づく信号と、第2の光電変換部105で変換された電荷に基づく信号とを使用してダイナミックレンジ拡大を図る際の信号補正において、光電変換部間の重心ずれを考慮する必要がなくなる。つまり、信号補正が容易である。
【0063】
本実施形態において、第一の実施形態と同様に、隣り合う画素間での光のクロストークを防ぐ遮光壁や、隣り合う画素間での信号電荷のクロストークを防ぐための、ポテンシャル障壁による分離部を形成してもよい。
【0064】
また、第一の実施形態と同様に、遮光壁の設置される位置に応じて遮光壁の高さを異ならせてもよく、遮光壁の高さに応じて光電変換部の光入射面の高さを異ならせてもよい。
【0065】
このように、平面視したとき複数の光電変換部の一部に発散レンズの様な発散構造が重なるようにすることで、複数の光電変換部に感度差を設けることができる。
【0066】
(第三の実施形態)
図7は、第三の実施形態に係る光電変換装置の画素の断面概略図である。
【0067】
本実施形態は、第1の光電変換部に入射する光を減光するように画素中心部に配置した凹レンズに加え、第2の光電変換部に光を集める凸レンズを配置した構成を示す実施形態である。以下の説明では第一及び第二の実施形態の説明と重複する部分は省略し、主に第一及び第二の実施形態と異なる部分について説明する。
【0068】
図7において、画素13は、裏面照射型CMOSイメージセンサの画素であり、
図7の下側から順に、配線層51、酸化膜52、半導体基板53、誘電材料層54、カラーフィルタ層55、およびオンチップレンズ109が積層されて構成されている。
【0069】
配線層51、酸化膜52の構成は第一の実施形態と同様である。
【0070】
半導体基板53には、第1の光電変換部、第2の光電変換部、凹レンズ機能を有するインナーレンズ108(発散レンズ108)、凸レンズ機能を有するインナーレンズ111(以下、「集束レンズ111」とも記載する)が形成されている。
【0071】
発散レンズ108の構成は第一の実施形態と同様であり、発散レンズ108は入射した光を発散させる。
【0072】
本実施形態は、発散レンズ108に加えて、半導体基板53の裏面側に、入射した光を集束する集束レンズ111が形成されている。集束レンズ111は入射した光を第2の光電変換部に集束させる。集束レンズ111は、例えば、誘電材料層54よりも屈折率の大きなSiNやSiO2等で形成する。
【0073】
発散レンズ108は第1の光電変換部104を覆うように配置され、集束レンズ111は第2の光電変換部105を覆うように配置される。このような配置により、第1の光電変換部に対応する画素の中央部に入射する光は発散レンズ108により発散され、第1の光電変換部104に入射する光は減少する。さらに、第2の光電変換部に対応する画素の周辺部に入射する光は集束レンズ111により集束され、第2の光電変換部105に入射する光を増加させることができる。結果として、第1の光電変換部104と第2の光電変換部105に感度差を設けることができ、ダイナミックレンジが広がる。
【0074】
本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、隣り合う画素間での光のクロストークを防ぐ遮光壁や、隣り合う画素間での信号電荷のクロストークを防ぐためのポテンシャル障壁による分離部を形成してもよい。
【0075】
また、第一の実施形態と同様に、遮光壁の設置される位置に応じて遮光壁の高さを異ならせてもよく、遮光壁の高さに応じて光電変換部の光入射面の高さを異ならせてもよい。
【0076】
このように、複数の光電変換部のそれぞれを発散レンズの様な発散構造と集束レンズの様な集束構造とが覆うように配置することで、複数の光電変換部に感度差を設けることができる。
【0077】
(第四の実施形態)
本実施形態による光電変換システムについて、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0078】
上記第一~第三実施形態で述べた光電変換装置(撮像装置)は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図8には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0079】
図8に例示した光電変換システムは、上記第一~第三の実施形態で述べた光電変換装置の一例である撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002を有する。さらに、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0080】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。
【0081】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0082】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0083】
撮像装置1004は、光学像を光電変換して形成した信号(撮像信号)を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0084】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0085】
(第五の実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0086】
図9(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置(撮像装置)である。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0087】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0088】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図9(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0089】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0090】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0091】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0092】
また、
図8が示す第四の実施形態および
図9が示す第五の実施形態の光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものである。本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図8及び
図9に示した構成に限定されるものではない。
【0093】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0094】
53 半導体基板
104 第1の光電変換部
105 第2の光電変換部
108 凹レンズ型インナーレンズ