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  • 特開-コラーゲン分泌促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187867
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】コラーゲン分泌促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20221213BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P17/00
A61Q19/00
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096079
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 奈帆子
(72)【発明者】
【氏名】蔀 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 利明
(72)【発明者】
【氏名】守矢 恒司
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD22
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
【課題】コラーゲン分泌促進剤を提供することである。また、コラーゲンの分泌を促進させるために、SEC12タンパク発現促進剤を提供することである。
【解決手段】エクトインを含有するコラーゲン分泌促進剤、および、エクトインを含有するSEC12タンパク発現促進剤である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクトインを含有するコラーゲン分泌促進剤。
【請求項2】
エクトインを含有するSEC12タンパク発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン分泌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、皮膚にハリと弾力を与える真皮の重要な組織であり、コラーゲンの機能維持が求められてきた。これまでのアプローチでは、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生量に着目されることが多かったが、近年、コラーゲンペプチドの輸送および分泌に関わる生合成経路やコラーゲン線維の形成過程が重要であると考えられている。
皮膚は、外側から角質層、表皮、真皮という構造になっていて、その真皮部分にコラーゲンは存在する。コラーゲンは真皮中にある線維芽細胞により産生される。コラーゲンはまず細胞の中で作られ、そして正しく分泌されることでコラーゲン線維となり、皮膚にハリ、弾力を与える。コラーゲンは紫外線やストレスによる活性酸素などの影響により常にダメージを受ける環境下に存在するので、ダメージを受けるよりも早く、質の良いコラーゲンを作ることが重要である。そのためには、細胞からコラーゲンが分泌される速度を速める必要がある。
ヤエナリ抽出物のコラーゲン分泌促進効果が知られている(特許文献1)。また、ベルベリンを含有するコラーゲン分泌促進剤が知られている(特許文献2)。さらなるコラーゲン分泌促進剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-501160号公報
【特許文献2】特開2016-056116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コラーゲン分泌促進剤を提供することである。また、コラーゲンの分泌を促進させるために、SEC12タンパク発現促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.エクトインを含有するコラーゲン分泌促進剤。
2.エクトインを含有するSEC12タンパク発現促進剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコラーゲン分泌促進剤により、細胞内で生成されたコラーゲンが速く細胞外に分泌される。本発明のコラーゲン分泌促進剤を真皮内の線維芽細胞に作用させれば、真皮内へのコラーゲンの分泌が促進され、真皮内にコラーゲン線維が構築され、皮膚のハリや弾力の向上が期待できる。
本発明のSEC12タンパク発現促進剤により、細胞内で生成されたコラーゲンの細胞外への分泌が促進されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】各種原料をNIH3T3細胞に添加した際の、コラーゲン分泌促進効果。
図2】エクトインをNIH3T3細胞に添加した際の、経時的なコラーゲン分泌量の増大。
図3】エクトインをNIH3T3細胞に添加した際の、SEC12タンパクの発現促進効果。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のコラーゲン分泌促進剤、SEC12タンパク発現促進剤はエクトインを含有する。エクトインはエジプトの塩湖に生息するハロゲン塩類親和性バクテリア(Halomonas elongata)より得られる環状アミノ酸の一種である。エクトインは水分子を抱え込む性質があることから、保水力が高く、水和水の動きを止めることでタンパク質構造を保護する。また、エクトインにはヒートショックプロテインを増加させる作用がある。
【0009】
本発明のコラーゲン分泌促進剤、SEC12タンパク発現促進剤に含有させるエクトインの濃度は、0.0001質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0010】
本発明のコラーゲン分泌促進剤は、皮膚外用剤や経口剤とすることができる。皮膚外用剤としては、ローション、乳液、クリーム、ゲル、軟膏等が、経口剤としては、錠剤、粉末剤、顆粒剤、飲料等が挙げられる。
【実施例0011】
<エクトインのコラーゲン分泌促進効果、SEC12タンパク発現促進効果の確認>
可視化ヒトI型プロコラーゲンを導入されたNIH-3T3細胞に素材を添加し、素材添加後のコラーゲン分泌量をコラーゲンと結合しているGFP量を測定することにより経時的に評価した。また、添加時の細胞を回収し、SEC12タンパク質発現量を測定した。
【0012】
<ベクター構築>
WO2016/152882号公報の実施例1に記載された、ヒトpreprocollagenIα1 cDNA内部にEGFPを結合し、そしてC末端にmCherryを結合した核酸を有するベクターを構築した。EGFPはpreprocollagenIα1 cDNAのBamHIの部位に挿入され、mCherryはC-プロペプチドのEcoR1の部位に挿入された。
ベクター構築法は、以下の手順である。EGFP cDNAの両端に制限酵素BamHI siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1 cDNA内部のBamHI siteに挿入した。この際、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とEGFPタンパク質がつながるように調節を行った。次に、mCherry cDNA の両端にEcoR1 siteを付加したDNA断片を作成し、これをヒトpreprocollagen1α1-EGFP融合cDNAのEcoR1 siteに挿入した。この際にも、タンパク質翻訳において、コラーゲンタンパク質とmCherryタンパク質がつながるように調節を行い、操作の各ステップにおいて塩基配列の確認を行った。
凍結保存されたTOP10F’のコンピテントセルを解凍し、すぐに100ngのプラスミドDNAを入れ混合した。氷上で30分間静置した後、42℃で1分30秒温め、すぐに氷冷した。ここに1mLの培地を加え、100μLのアンピシリンを添加したLBプレートに塗り広げた。37℃にて一晩保温し、現れたコロニーを使用した。この操作を繰り返しベクターを得た。得られたベクターは、目的の長さの核酸を含んでいた。全てのクローンがEcoRIで切断することができた。
【0013】
<細胞内のコラーゲンの蛍光観察>
上記の手順で得られたベクターをマウスのNIH3T3細胞に導入し、共焦点蛍光顕微鏡で、蛍光を検出した。蛍光顕微鏡により48時間後にEGFPおよびmCherryの蛍光シグナルを観察した。EGFPがコラーゲンタンパク質に挿入され、mCherryがC―プロペプチドに挿入されていることにより、合成直後のプロコラーゲンは黄色のシグナルによって、また、プロセシングにより切断されたコラーゲンタンパク質は緑色の蛍光シグナルによって、細胞質に存在することを確認できた。
【0014】
<細胞外に分泌されたコラーゲン量の測定>
上記で得られたベクターを導入したマウスのNIH3T3細胞(EGFP-Collagen導入細胞)を96-well plateに3,500cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO存在下で3日間培養後、評価原料溶液(表1)を1% FBS/PS/phenol red free DMEMを用いて希釈して、表1に記載の質量%の濃度となるように各原料を添加し、37℃のCOインキュベーターで培養した。添加してから 8,24,30時間後に培養上清を丸底96-well plateに回収した。遠心(1,000rpm、5min、RT)した上清100μlを測定直前にBlack bottom 96-well plateに移して蛍光光度計EnSpire(PerkinElmer)を用いEGFP蛍光を測定した。EGFPの精製標品(0-20ng/μl)を標準曲線の作成に使用した。各評価原料の8,24,30時間後の測定値を、それぞれ、評価原料無添加(None)の8,24,30時間後の測定値で除して比率を求め、培養上清に分泌されたEGFP-Collagen量を相対評価した。結果を表1、図1に示す。エクトインは顕著なコラーゲン分泌促進効果を示した。
【0015】
【表1】
【0016】
上記で得られたベクターを導入したマウスのNIH3T3細胞(EGFP-Collagen導入細胞)を12-well plateに100,000cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO存在下で24時間培養後、エクトインを1% FBS/PS/phenol red free DMEMを用いて希釈して0.1質量%濃度となるように添加し、37℃のCOインキュベーターで培養した。添加してから2,4、16,24,48,72,96時間後に培養上清を丸底96-well plateに回収した。回収後に遠心(1,000rpm、5min、RT)した上清でWB(ウェスタンブロット)用のサンプルを調製した。調整したサンプルを用いて、WBを実施し、anti-GFP抗体(2956、CST)によりEGFP-Collagenを検出した。EGFP-Collagen由来の約180kDaのバンド強度を測定し、その値を各サンプルのタンパク質濃度で標準化した。エクトイン添加2時間後の標準化した測定値を基準として、4、16,24,48,72,96時間後の標準化した測定値との比率を求め、コラーゲン分泌量の経時変化を調べた(表2、図2)。エクトインの添加により、コラーゲンの分泌量が経時的に増大した。
【0017】
【表2】
【0018】
<細胞内で生成されたSEC12タンパク発現量の測定>
上記で得られたベクターを導入したマウスのNIH3T3細胞(EGFP-Collagen導入細胞)を12-well plateに100,000cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5% CO存在下で24時間培養後、評価原料溶液(表3)を1% FBS/PS/phenol red free DMEMを用いて希釈して添加し、37℃のCOインキュベーターで培養した。添加してから24時間後に培地を除去し、50μl Laemmli buffer(0.09 M Tris-HCL,pH6.8,3% SDS,10% glycerol)/protease inhibitor cocktail(Sigma Aldrich)を各wellに添加して、Cell lysateを調製した。Cell lysateは-80℃にいれて、3回凍結融解することで細胞破砕した。Cell lysateのタンパク質濃度はBCA法にて測定後、WB(ウェスタンブロット)用に調製し、WBを実施した。anti-Preb(SEC12)抗体(10146-2-AP、Proteintech)によりSEC12を検出した。SEC12由来の45 kDaのバンド強度を測定し、その値を各サンプルのタンパク質濃度で標準化した。評価原料無添加(None)の標準化した測定値を基準として、各評価原料溶液添加の標準化した測定値の比率を求め、SEC12タンパクの発現量を評価した(表3、図3)。その結果、陽性対象として添加したTGF-β1に比べて、エクトイン添加の方がより、SEC12タンパクの発現が促進されていた。
【0019】
【表3】
図1
図2
図3