(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187869
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20221213BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02K3/28 N
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096081
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 泰伸
【テーマコード(参考)】
5H603
5H605
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC04
5H603CC07
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD06
5H603CD22
5H603CE05
5H605BB05
5H605BB10
5H605EC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化を実現できるモータを提供する。
【解決手段】ロータの径方向外側に配置されるステータを備え、ステータは、周方向に並ぶ複数のスロットが設けられるステータコアと、複数の導体50が直列に連結されて構成され複数のスロットに挿入されている複数の導体連結体60Aと、を有する。導体連結体は、第1端部61aから第2端部61bに周方向一方側に向かって波巻きされる第1部分61と、第3端部62aから第4端部62bに周方向一方側に向かって波巻きされる第2部分62と、第1部分と第2部分とを繋ぐ折り返し部分67と、を有する。第1部分の第1端部と第2部分の第3端部、および第1部分の第2端部と第2部分の第4端部は、それぞれ周方向の異なるスロットから軸方向に突出する。複数の導体は、第1部分の第2端部と第2部分の第4端部とを繋ぎ折り返し部分を構成する折り返し用導体54、55を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備え、
前記ステータは、
周方向に並ぶ複数のスロットが設けられるステータコアと、
複数の導体が直列に連結されて構成され複数の前記スロットに挿入されている複数の導体連結体と、を有し、
前記導体連結体は、
第1端部から第2端部に周方向一方側に向かって波巻きされる第1部分と、
第3端部から第4端部に周方向一方側に向かって波巻きされる第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ折り返し部分と、を有し、
前記第1部分の前記第2端部と前記第2部分の前記第4端部とは、周方向の異なる前記スロットから軸方向に突出し、
複数の前記導体は、前記第1部分の前記第2端部と前記第2部分の前記第4端部とを繋ぎ前記折り返し部分を構成する折り返し用導体を含む、
モータ。
【請求項2】
前記第1端部、前記第2端部、前記第3端部、および前記第4端部は、ともに前記ステータコアに対し軸方向一方側に突出し、
前記折り返し用導体は、径方向において、前記第1端部と前記第2端部との間に配置される、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
複数の前記導体連結体は、複数相に分類され、
異なる相の前記折り返し用導体の少なくとも一部は、軸方向から見て互いに重なる、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
異なる相の前記折り返し用導体は、互いに同形状であり、周方向に互いにずらして配置される、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
異なる相の前記折り返し用導体は、径方向から見て階段状に並ぶ、
請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
複数の前記導体連結体には、同相の複数の前記導体連結体が含まれ、
同相の前記折り返し用導体は、径方向に重なる、
請求項1~5の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記折り返し用導体は、
周方向に沿って延びる導体本体部と、
前記導体本体部の両端部からそれぞれ径方向に延びる径方向延出部と、
前記径方向延出部の端部から軸方向に延びる接続端子と、を有し、
同相の前記折り返し用導体は、前記導体本体部において径方向に重なる、
請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記折り返し用導体は、板状であり、前記導体本体部および前記径方向延出部において軸方向を板厚方向とし、前記接続端子において径方向を板厚方向とする、
請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
毎極スロット数をsとし、
隣り合う前記スロットを通過する同相の2つの前記導体連結体のうち、
一方は、前記折り返し用導体でs-1個離れた前記スロット間を延び、
他方は、前記折り返し用導体でs+1個離れた前記スロット間を延びるとともに一方の前記導体連結体の前記折り返し用導体の径方向一方側を通過する、
請求項6~8の何れか一項に記載のモータ。
【請求項10】
前記ステータは、複数の前記導体連結体の前記折り返し用導体を保持する導体ホルダを有し、
複数の前記導体連結体は、複数相に分類され、
前記折り返し用導体の両端部には、他の前記導体と接続される接続端子が設けられ、
前記導体ホルダは、異なる相の前記折り返し用導体の前記接続端子同士の間に配置される壁部を有する、
請求項1~9の何れか一項に記載のモータ。
【請求項11】
前記ステータは、
前記第1端部に接続される相用バスバーと、
前記第3端部に接続される中性点バスバーと、
前記中性点バスバーおよび前記相用バスバーを保持するバスバーホルダと、を備え、
前記バスバーホルダは、前記導体ホルダを支持する、
請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
前記バスバーホルダと前記導体ホルダとは、単一の部材である、
請求項11に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用モータでは、振動や騒音の減少を目的として分布巻きが採用されている。特許文献1には、モータの高効率化を目的として、複数のセグメントコイルを用いた波巻きのステータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構造の波巻きを行う場合、導体の配策経路を長く確保できない。一方で、波巻きする導体の配策経路中に折り返し部分を設け、当該折り返し部分を挟んで導体を逆方向に波巻きすることで導体の配策経路を長くすることができる。しかしながら、セグメントコイルは非円形であり、一般的な丸線を使用した導体に比べて、可撓性が大幅に劣る。すなわち、折り返し部分の形状が折り返し部分以外のセグメントコイルと大幅に形状が異なることから、折り返し部分のセグメントコイルは他のセグメントコイルを避けるために、軸方向の寸法が大きくなり、結果的にステータの軸方向寸法の大型化につながるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、小型化を実現できるモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える。前記ステータは、周方向に並ぶ複数のスロットが設けられるステータコアと、複数の導体が直列に連結されて構成され複数の前記スロットに挿入されている複数の導体連結体と、を有する。前記導体連結体は、第1端部から第2端部に周方向一方側に向かって波巻きされる第1部分と、第3端部から第4端部に周方向一方側に向かって波巻きされる第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ折り返し部分と、を有する。前記第1部分の前記第1端部と前記第2部分の前記第3端部、および前記第1部分の前記第2端部と前記第2部分の前記第4端部は、それぞれ周方向の異なる前記スロットから軸方向に突出する。複数の前記導体は、前記第1部分の前記第2端部と前記第2部分の前記第4端部とを繋ぎ前記折り返し部分を構成する折り返し用導体を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、小型化を実現できるモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータの断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿うモータの断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の巻線部およびバスバーユニットが構成する回路を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のステータの斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の導体連結体の巻き線構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の導体ユニットの斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の複数の折り返し用導体の斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のバスバーユニットの斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のモータの部分断面図である。
【
図11】
図11は、比較実施形態の折り返し部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を「上側」とし、負の側を「下側」とする上下方向である。各図に適宜示す中心軸線Jは、Z軸方向と平行であり、上下方向に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸線Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、上側を「軸方向一方側」と呼び、下側を「軸方向他方側」と呼ぶ場合がある。また、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合がある。さらに、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼び、上側から見て反時計回りの方向を「周方向一方側θ1」と呼び、上側から見て時計回りの方向を「周方向他方側θ2」と呼ぶ場合がある。
【0010】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。さらに、軸方向一方側、および軸方向他方側として説明する方向は、互いに入れ替えた場合であっても、実施形態の効果を再現可能である。同様に、周方向一方側θ1、および周方向他方側θ2として説明する方向は、互いに入れ替えた場合であっても、実施形態の効果を再現可能である。
【0011】
<モータ>
図1は、本実施形態のモータ1の断面模式図である。
本実施形態のモータ1は、インナーロータ型のモータである。また、本実施形態のモータ1は、三相の交流モータである。モータ1の中心は、中心軸線Jである。モータ1は、ロータ3と、ステータ2と、ベアリングホルダ4と、これらを収容するハウジング1aと、を備える。
【0012】
<ロータ>
ロータ3は、中心軸線Jを中心として回転可能である。ロータ3は、環状のステータ2の径方向内側に配置される。すなわち、ロータ3は、径方向においてステータ2に対向する。ロータ3は、シャフト3aと、ロータマグネット3bと、ロータコア3cと、を有する。
【0013】
シャフト3aは、中心軸線Jに沿って軸方向に延びている。シャフト3aは、例えば、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト3aは、2つのベアリング3pによって中心軸線J回りに回転可能に支持されている。
【0014】
図2は、
図1のII-II線に沿うモータ1の断面図である。
ロータコア3cは、電磁鋼板を積層して構成される。ロータコア3cは、軸方向に延びる筒状である。ロータコア3cの内周面は、シャフト3aの外周面に固定される。ロータコア3cには、ロータマグネット3bが挿入され固定される保持孔3hが設けられる。
【0015】
ロータマグネット3bは、径方向においてステータ2と対向する。ロータマグネット3bは、ロータコア3cに埋め込まれた状態で保持される。本実施形態のロータマグネット3bは、8極(8ポール)である。ロータ3のポール数は本実施形態に限定さない。また、ロータマグネット3bは、円環状のリングマグネットなど他の形態のマグネットであってもよい。
【0016】
<ステータ>
図1に示すように、ステータ2は、ロータ3と隙間を介して径方向に対向する。本実施形態においてステータ2は、ロータ3の径方向外側に配置される。ステータ2は、ステータコア20と、巻線部30と、複数の絶縁紙6と、バスバーユニット5と、導体ホルダ80と、を備える。
【0017】
図1に示すように、ステータコア20は、中心軸線Jを中心とする環状である。ステータコア20は、軸方向に沿って積層された複数の電磁鋼板からなる。ステータコア20は、中心軸線Jを中心とする円筒状のコアバック部21と、コアバック部21から径方向内側に向かって延びる複数のティース部22と、を有する。
【0018】
複数のティース部22は、周方向に等間隔に並ぶ。ティース部22の径方向内側の先端部には、アンブレラ部22aが設けられる。アンブレラ部22aは、ティース部22に対し周方向の両側に突出している。すなわち、アンブレラ部22aの周方向の寸法は、ティース部22の周方向の寸法よりも大きい。アンブレラ部22aの径方向内側を向く面は、ロータ3の外周面と径方向に隙間を介して対向する。
【0019】
ティース部22には、巻線部30が装着される。周方向に隣り合うティース部22同士の間には、スロットSが設けられる。すなわち、ステータコア20には、周方向に並ぶ複数のスロットSが設けられる。
【0020】
スロットS内には、巻線部30の導体50が収容される。また、スロットS内には、絶縁紙6が1つずつ配置される。絶縁紙6は、スロットS内において、巻線部30とステータコア20との絶縁を確保する。
【0021】
1つのスロットSには、径方向に並ぶ6層のレイヤが設けられる。1つのスロット内において、それぞれのレイヤには、それぞれ1つの導体50が配置される。スロットS内には、6つの導体50が径方向に沿って1列に並ぶ。
【0022】
スロットSは、径方向内側に開口する開口部29hを有する。開口部29hは、隣り合うティース部22の先端に位置するアンブレラ部22a同士の間に位置する。開口部29hの周方向に沿う幅寸法は、導体50の周方向に沿う寸法より小さい。このため、導体50は、開口部29hを通過し難く、導体50のステータコア20からの離脱が抑制される。
【0023】
本実施形態において、ステータコア20は、48個のティース部22を有する。すなわち、本実施形態のステータ2は、48スロットである。なお、ステータ2のスロット数は、ロータマグネット3bの極数および巻線部30の巻き方に応じて適宜設定される。
【0024】
図3は、本実施形態の巻線部30およびバスバーユニット5が構成する回路を示す模式図である。
本実施形態の巻線部30は、複数(本実施形態では6個)の導体連結体60を有しセグメントコイルを構成する。6個の導体連結体60は、2個のU相導体連結体60Uと、2個のV相導体連結体60Vと、2個のW相導体連結体60Wと、に分類される。
すなわち、複数の導体連結体60は、複数相に分類される。また、複数の導体連結体60には、同相の複数の導体連結体60が含まれる。
【0025】
また、後段で詳細に説明するが、バスバーユニット5は、3個の相用バスバー11、12、13と、1個の中性点用バスバー10と、を有する。3個の相用バスバー11、12、13は、U相用バスバー11とV相用バスバー12とW相用バスバー13とに分類される。
【0026】
U相導体連結体60U、V相導体連結体60V、およびW相導体連結体60Wは、中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13によってY結線がなされる。本実施形態では、各相の2個の導体連結体60に対応する2個のY結線が構成され、それぞれのY結線が並列接続される。すなわち、巻線部30は、バスバーユニット5によって2Y結線がなされる。
【0027】
なお、本実施形態では、巻線部30が同相2本であり、3相6本の導体連結体60を有する場合について説明した。しかしながら、巻線部30が同相に少なくとも2本の導体連結体60を有し、これらが周方向に隣り合うスロットSを通過する連結体対69を構成すれば、本実施形態と同様の巻線構成をとることができる。したがって、複数の導体連結体60は、Mを自然数として2×MのY結線がなされていればよい(本実施形態において、M=2)。
【0028】
導体連結体60は、第1末端部63および第2末端部64を有する。第1末端部63および第2末端部64は、導体連結体60の一方および他方の末端にそれぞれ設けられる。導体連結体60は、第1末端部63と第2末端部64との間で、ステータコア20に装着されて各相のコイルを構成する。導体連結体60は、第1末端部63および第2末端部64においてバスバーユニット5に接続される。
【0029】
2個のU相導体連結体60U、2個のV相導体連結体60V、および2個のW相導体連結体60Wの第2末端部64は、1つの中性点用バスバー10に接続される。これにより、6個の導体連結体60の第2末端部64は、同電位となり中性点を構成する。すなわち、中性点用バスバー10は、3相回路の中性点を構成する。
【0030】
2個のU相導体連結体60Uの第1末端部63は、U相用バスバー11に接続される。2個のV相導体連結体60Vの第1末端部63は、V相用バスバー12に接続される。2個のW相導体連結体60Wの第1末端部63は、W相用バスバー13に接続される。相用バスバー11、12、13には、それぞれ120°毎に位相をずらした交流電流が流される。
【0031】
同相の2個の導体連結体60は、互いに隣り合うスロットSを通過してステータコア20に装着される。本明細書において、互いに隣り合うスロットSを通過する2個の導体連結体60を、連結体対69と呼ぶ。また、以下の説明において、連結体対69をなす2個の導体連結体60を互いに区別する場合、一方を第1の導体連結体60Aと呼び、他方を第2の導体連結体60Bと呼ぶ。
【0032】
図4は、本実施形態のステータ2の斜視図である。
図5は、連結体対69をなす2個の導体連結体60の巻き線構成を示す模式図である。
【0033】
図5に示すように、導体連結体60は、複数の導体50が直列に連結されて構成される。導体連結体60は、複数のスロットSに挿入されて波状に配策される。
【0034】
導体連結体60を構成する複数の導体50は、第1端部用導体51と、ヘアピン導体52と、第2端部用導体53と、折り返し用導体54、55と、に分類される。すなわち、複数の導体50は、第1端部用導体51と、ヘアピン導体52と、第2端部用導体53と、折り返し用導体54、55と、を含む。
【0035】
各種の導体50のうち、折り返し用導体54、55を除く導体50(第1端部用導体51、ヘアピン導体52、および第2端部用導体53)は、後述する直線部50aにおいてスロットSを通過する。これらスロットSを通過する導体50は、平角線が屈曲されて構成されている。そのため、丸線を用いる場合に比べて、スロットS内での導体50の占積率を向上させることができる。なお、本明細書において「平角線」とは、断面形状が四角形状または略四角形状の線材である。本明細書において「略四角形状」とは、四角形状の角部が丸みを帯びた角丸の四角形状を含む。図示は省略するが、本実施形態において導体50は、表面にエナメルの被膜を有する。
【0036】
各種の導体50のうち、折り返し用導体54、55を除く導体50は、軸方向(Z方向)に沿って直線状に延びる直線部50aと、下側(軸方向他方側)の端部に位置する連結部50jと、を少なくとも有する。直線部50aは、スロットSを通過する。すなわち、導体連結体60は、直線部50aにおいて、スロットSに収容される。導体連結体60は、直線部50a以外の領域で、ステータコア20の上側および下側に延び出る。ステータコア20の上側および下側から延び出る部分は、ステータコア20のコイルエンド30e(
図1参照)を構成する。
【0037】
連結部50jは、他の導体50の連結部50jに連結される。一対の導体50の連結部50j同士は、溶接等の接合手段によって互いに接合される。連結部50jは、導体50をステータコア20に装着した後に周方向に折り曲げられ、他の導体50の連結部50jに接合される。ステータコア20に装着前の導体50において、連結部50jは、直線部50aに連続する直線状である。導体50は、ステータコア20の上側(軸方向一方側)から、連結部50jおよび直線部50aをスロットSに挿入することで、ステータコア20に取り付けられる。導体50は、連結部50jが周方向に折り曲げられ、他の連結部50jに接合されることで、ステータコア20から軸方向に離脱することが抑制される。
【0038】
本実施形態のステータ2は、ステータコア20のスロットSに対して、複数の導体50を上側から挿入するとともに、下側で接合することで、組み立てることができる。このため、複雑な組み立て工程を必要とせず、組み立て工程を簡素化できる。
【0039】
次に、各種の導体50について説明する。
第1端部用導体51は、第1端部61a又は第3端部62aと、直線部50aと、連結部50jと、をそれぞれ1つずつ有する。第1端部61aおよび第3端部62aは、第1端部用導体51の上側の端部に位置する。第1端部61aおよび第3端部62aは、直線部50aを上側に延長して延びる。第1端部用導体51において、連結部50jは、直線部50aの下端から周方向一方側θ1に延びる。
【0040】
第1端部用導体51は、1つの導体連結体60に2つ設けられる。したがって、1つの導体連結体60には、第1端部61aおよび第3端部62aが1つずつ設けられる。第1端部61aおよび第3端部62aは、導体連結体60の両端部を構成する末端部である。導体連結体60の第1端部61aおよび第3端部62aのうち、第1端部61aは第1末端部63であり、第3端部62aは第2末端部64である。第1末端部63には、U相用バスバー11、V相用バスバー12、およびW相用バスバー13のうち、何れか1つが接続される。第2末端部64には、中性点用バスバー10が接続される。
【0041】
ヘアピン導体52は、2つの直線部50aと、2つの連結部50jと、1つの渡り部50dと、を有する。渡り部50dは、ヘアピン導体52の上端部に配置される。渡り部50dは、2つの直線部50a同士を渡す。すなわちヘアピン導体52において、2つの直線部50aは、渡り部50dを介して互いに繋がる。ヘアピン導体52において、2つの連結部50jは、それぞれ異なる直線部50aの下端に繋がる。複数の渡り部50dは、ステータコア20の上側(軸方向一方側)の端面から突出する。
【0042】
ヘアピン導体52において、2つの直線部50a同士は、毎極スロット数sで並ぶ。ここで、毎極スロット数sとは、ロータ3とステータ2との組み合わせにおいて、ロータ3の1つの磁極間に配置されるステータ2のスロットSの数を意味する。毎極スロット数sは、(ステータ2の全スロット数)/(ロータ3の磁極数)で算出される。本実施形態において、ロータ3の磁極数は8であり、ステータ2のスロット数は48であるため、毎極スロット数sは6である。ヘアピン導体52において、2つの直線部50a同士は、6スロット分だけ周方向に離間している。
【0043】
ヘアピン導体52において、2つの連結部50jは、折り曲げられる方向が周方向において互いに反対側である。2つの連結部50jのうち、周方向一方側θ1に位置する一方は直線部50aの下端から周方向一方側θ1に延び、周方向他方側θ2に位置する他方は直線部50aの下端から周方向他方側θ2に延びる。第1の導体連結体60Aおよび第2の導体連結体60Bには、それぞれ6個のヘアピン導体52が設けられる。
【0044】
第2端部用導体53は、第2端部61b又は第4端部62bと、直線部50aと、連結部50jと、をそれぞれ1つずつ有する。第2端部61bおよび第4端部62bは、第2端部用導体53の上側の端部に位置する。第2端部61bおよび第4端部62bは、直線部50aに対し周方向に折り曲げられる。第2端部用導体53において、第2端部61bおよび第4端部62bと連結部50jとは、直線部50aに対して延びる方向が周方向の反対側である。第2端部用導体53において、第2端部61bおよび第4端部62bは、直線部50aの上端から周方向一方側θ1に延び、連結部50jは、直線部50aの下端から周方向他方側θ2に延びる。
【0045】
第2端部用導体53は、1つの導体連結体60に2つ設けられる。したがって、1つの導体連結体60には、第2端部61bおよび第4端部62bが1つずつ設けられる。1つの導体連結体60に設けられる第2端部61bおよび第4端部62bは、折り返し用導体54、55によって接続される。
【0046】
折り返し用導体54、55は、第1の導体連結体60Aに用いられる第1の折り返し用導体54と、第2の導体連結体60Bに用いられる第2の折り返し用導体55と、に分類される。したがって、1つの導体連結体60には、第1の折り返し用導体54又は第2の折り返し用導体55の何れか一方の1つの折り返し用導体54、55が設けられる。
【0047】
第1の導体連結体60Aにおいて、第1の折り返し用導体54は第2端部61bおよび第4端部62bを繋ぐ。同様に、第2の導体連結体60Bにおいて、第2の折り返し用導体55は第2端部61bおよび第4端部62bを繋ぐ。第1の導体連結体60Aと第2の導体連結体60Bにおいて、それぞれの第2端部61bと第4端部62bとの距離は、互いに異なる。第1の導体連結体60Aにおいて、第2端部61bおよび第4端部62bは、周方向において、毎極スロット数s+1(本実施形態では7スロット)で並ぶ。一方で、第2の導体連結体60Bにおいて、第2端部61bおよび第4端部62bは、周方向において毎極スロット数s-1(本実施形態では5スロット)で並ぶ。このため、第1の折り返し用導体54は、第2の折り返し用導体55と比較して、周方向への渡り量が2スロット分だけ大きい。
折り返し用導体54、55の具体的な形状については、
図7等を用いて、後段において詳細に説明する。
【0048】
次に、第1の導体連結体60Aおよび第2の導体連結体60Bの巻き線構成について説明する。
第1の導体連結体60Aは、第1末端部63から第1の折り返し用導体54に至るまでの間に、周方向一方側θ1に向かって6スロット毎に波巻きされる。また、第1の導体連結体60Aは、第2末端部64から第1の折り返し用導体54に至るまでの間に、周方向一方側θ1に向かって6スロット毎に波巻きされる。
【0049】
ここで、第1の導体連結体60Aにおいて、第1末端部63と第1の折り返し用導体54との間で、周方向一方側θ1に波巻きされる領域を、第1部分61と呼ぶ。また、第1の導体連結体60Aにおいて、第2末端部64と第1の折り返し用導体54との間で、周方向一方側θ1に波巻きされる領域を、第2部分62と呼ぶ。さらに、第1部分61の周方向他方側θ2の端部を、第1端部61aと呼ぶ。第2部分62の周方向他方側θ2の端部を、第3端部62aと呼ぶ。また、第1部分61の周方向一方側θ1の端部を、ともに第2端部61bと呼ぶ。第2部分62の周方向一方側θ1の端部を、第4端部62bと呼ぶ。加えて、第1の導体連結体60Aにおいて、第1部分61と第2部分62とを繋ぐ部分を折り返し部分67と呼ぶ。第1の導体連結体60Aは、第1端部61aから第2端部61bに周方向一方側θ1に向かって波巻きされる第1部分61と、第3端部62aから第4端部62bに周方向一方側θ1に向かって波巻きされる第2部分62と、第1部分61と第2部分62とを繋ぐ折り返し部分67と、を有する。第1の導体連結体60Aの折り返し部分67は、第1の折り返し用導体54によって構成される。
【0050】
第2の導体連結体60Bは、第1末端部63から第2の折り返し用導体55に至るまでの間に、周方向一方側θ1に向かって6スロット毎に波巻きされる。また、第2の導体連結体60Bは、第2末端部64から第2の折り返し用導体55に至るまでの間に、周方向一方側θ1に向かって6スロット毎に波巻きされる。第2の導体連結体60Bは、第1の導体連結体60Aと同様に、第1部分61、第2部分62、および折り返し部分67を有する。すなわち、第2の導体連結体60Bは、第1端部61aから第2端部61bに周方向一方側θ1に向かって波巻きされる第1部分61と、第3端部62aから第4端部62bに周方向一方側θ1に向かって波巻きされる第2部分62と、第1部分61と第2部分62とを繋ぐ折り返し部分67と、を有する。第2の導体連結体60Bの折り返し部分67は、第2の折り返し用導体55によって構成される。
【0051】
単一の導体連結体60において、第1部分61と第2部分62とは、それぞれ異なるスロットSを通過するように波巻きされる。したがって、第1部分61の第1端部61aと第2部分62の第3端部62aは、周方向の異なるスロットSから軸方向に突出する。第1部分61の第1端部61aと第2部分62の第3端部62aとは、周方向の異なるスロットSから軸方向に突出する。第1部分61の第2端部61bと第2部分62の第4端部62bとは、周方向の異なるスロットSから軸方向に突出する。折り返し用導体54、55は、異なるスロットSから延び出る第2端部61bと第4端部62bとを繋ぐ。
なお、本実施形態において、第1の導体連結体60Aの第1部分61と、第2の導体連結体60Bの第2部分62とは、同じスロットSを通過する。同様に、第1の導体連結体60Aの第2部分62と、第2の導体連結体60Bの第1部分61とは、同じスロットSを通過する。
【0052】
本実施形態において、第1端部61a、第2端部61b、第3端部62a、および第4端部62bは、ともにステータコア20に対し上側(軸方向一方側)に突出する。したがって、第1端部61aおよび第3端部62aに接続されるバスバー10、11、12、13は、ステータコア20の上側に配置される。第2端部61bおよび第4端部62bに接続される折り返し用導体54、55は、ステータコア20の上側に配置される。
【0053】
本実施形態の導体連結体60は、第1部分61および第2部分62において、毎極スロット数sで波巻きされる。すなわち、導体連結体60は、全節巻きでステータコア20に装着される。このため、本実施形態によれば、同一のスロットS内に配置される複数の導体50は、全て同相の導体連結体60の一部である。本実施形態によれば、異なる相の導体連結体60を1つのスロットS内で絶縁する必要がなく、絶縁の確保が容易となる。
【0054】
本実施形態の導体連結体60では、折り返し部分67が、単一の導体50によって構成される。すなわち、複数の導体50は、折り返し部分67を構成する折り返し用導体54、55を含んでいる。折り返し用導体54、55は、ステータコア20の上側で第1部分61の第2端部61bと第2部分62の第4端部62bとを繋ぐ。
【0055】
ここで、従来構造として、
図11に比較実施例の折り返し部分167を模式的に示す。比較実施例の折り返し部分167は、ヘアピン状の導体の一部として構成されている。比較実施形態の折り返し部分167は、それぞれ直線部50aから上側に延び出る。このため、比較実施例の折り返し部分167は、他の導体50の渡り部50dとの干渉を抑制するため、渡り部50dの上端部より上側に、渡り部50dより上側に突出する退避領域150Aを有する。また、比較実施形態の折り返し部分167は、退避領域150Aより下側の領域で、渡り部50dとの干渉を抑制するため、渡り部50dの傾斜方向に沿うように延びる。渡り部50dは、上側に向かうに従い周方向一方側θ1傾斜する。このため、折り返し部分167は、退避領域150Aにおいて周方向一方側θ1から周方向他方側θ2にUターンするヘアピン形状となっていた。このように、比較実施形態の折り返し部分167は、退避領域150Aの渡り部50dに対する突出高さが大きくなっていた。また、比較実施形態の折り返し部分167は、退避領域150Aにおいて複雑なヘアピン形状とする必要があり、また組み付け工程も困難になり易いという問題があった。
【0056】
これに対し本実施形態によれば、導体連結体60では、折り返し部分67が、単一の導体50である折り返し用導体54、55によって構成される。折り返し用導体54、55は、スロットS内を通過しない。このため、巻線部30のステータコア20への組み付け工程において、折り返し用導体54、55をスロットS内に通過させる工程が発生しない。結果的に、折り返し用導体54、55を複雑な形状とした場合であっても、巻線部30の組み付け工程が複雑化することを抑制できる。
【0057】
さらに、本実施形態の導体連結体60は、折り返し用導体54、55が他の導体50と分割可能な構成であるため、折り返し用導体54、55を短く、しかも単純な形状とすることができる。これにより、折り返し用導体54、55を低コストで製造することができ、モータ1を安価に製造することができる。
【0058】
本実施形態において、巻線部30は、複数の渡り部50dおよび連結部50jを有する第1部分61および第2部分62を有する。複数の渡り部50dは、ステータコア20の上側でコイルエンド30eを構成する。一方で、連結部50jは、ステータコア20の下側でコイルエンド30eを構成する。
【0059】
第1部分61の第1端部61aおよび第2部分62の第3端部62aは、ステータコア20の上側かつコイルエンド30eの最外周に配置される。すなわち、第1端部61a、および第3端部62aは、複数の渡り部50dの径方向外側に位置する。第1部分61の第1端部61aは、ステータコア20から上側(軸方向一方側)に延びて、相用バスバー11、12、13に接続される。同様に、第2部分62の第3端部62aは、ステータコア20から上側(軸方向一方側)に延びて、中性点用バスバー10に接続される。本実施形態によれば、第1部分61の第1端部61aおよび第2部分62の第3端部62aが、コイルエンド30eの最外周に配置されるため、バスバーユニット5をコイルエンド30eの径方向外側に配置できる。これにより、バスバーユニット5をコイルエンド30eの上側に配置する場合と比較して、モータ1の上下方向の寸法の小型化を図ることができる。
【0060】
また、第1部分61の第2端部61bおよび第2部分62の第4端部62bは、ステータコア20の上側かつコイルエンド30eの最内周に配置される。すなわち、第2端部61b、および第4端部62bは、複数の渡り部50dの径方向内側に位置する。このため、折り返し用導体54は、コイルエンド30eの最内周で、第2端部61b、および第4端部62bに接続される。本実施形態によれば、折り返し用導体54と第2端部61bおよび第4端部62bとの接合工程をコイルエンド30eの径方向内側から行うことができ、接合工程を容易に行うことができる。
【0061】
<折り返し用導体>
図6は、導体ホルダ80および複数の折り返し用導体54、55の斜視図である。また、
図7は、複数の折り返し用導体54、55の斜視図である。
図6に示す導体ホルダ80および複数の折り返し用導体54、55は、導体ユニット7を構成する。すなわち、導体ユニット7は、導体ホルダ80および複数の折り返し用導体54、55を有する。
【0062】
本実施形態の巻線部30には、6個の導体連結体60が設けられる。このため、巻線部30には、6個の折り返し用導体54、55が設けられる。6個の折り返し用導体54、55は1個の導体ホルダ80によって支持される。
【0063】
図4に示すように、導体ユニット7は、ステータコア20の上側に位置する。また、導体ユニット7は、ステータコア20の上側に位置するコイルエンド30eのさらに上側に位置する。導体ユニット7は、軸方向から見てコイルエンド30eに重なる。
【0064】
図7に示すように、6個の折り返し用導体54、55は、3個の第1の折り返し用導体54と3個の第2の折り返し用導体55とを含む。また、3個の第1の折り返し用導体54は、それぞれU相用、V相用、W相用の導体連結体60の折り返し部分67である。同様に、3個の第2の折り返し用導体55は、それぞれU相用、V相用、W相用の導体連結体60の折り返し部分67である。
【0065】
以下の説明において、U相用の第1の折り返し用導体54をU相用第1導体54Uと呼び、U相用の第2の折り返し用導体55をU相用第2導体55Uと呼ぶ場合がある。同様に、V相用の第1の折り返し用導体54をV相用第1導体54Vと呼び、V相用の第2の折り返し用導体55をV相用第2導体55Vと呼ぶ場合がある。さらに、W相用の第1の折り返し用導体54をW相用第1導体54Wと呼び、W相用の第2の折り返し用導体55をW相用第2導体55Wと呼ぶ場合がある。
【0066】
図5を基に説明したように、第1の折り返し用導体54は、7個(毎極スロット数s+1)のスロットSを跨ぎ、第2の折り返し用導体55は、5個(毎極スロット数s-1)のスロットSを跨ぐ。さらに、第1の折り返し用導体54が延び出る2つのスロットSは、第2の折り返し用導体55が延び出る2つのスロットSに対し、周方向の外側に配置される。
図7に示すように、第1の折り返し用導体54は、第2の折り返し用導体55を径方向外側および周方向両側から跨ぐように配置される。
図5に示すように、隣り合うスロットSを通過する同相の2つの導体連結体60のうち、一方(第2の導体連結体60B)は、第2の折り返し用導体55でs-1個離れたスロットS間を延び、他方(第1の導体連結体60A)は、第1の折り返し用導体54でs+1個離れたスロットS間を延びる。さらに、この他方(第1の導体連結体60A)は、第1の折り返し用導体54で、一方(第2の導体連結体60B)の第2の折り返し用導体55の径方向外一方側(本実施形態では径方向外側)を通過する。これにより、第1の折り返し用導体54および第2の折り返し用導体55が、互いの干渉を抑制しつつ軸方向および径方向に大型化することを抑制できる。
【0067】
図7に示すように、第1の折り返し用導体54は、1つの導体本体部54aと、2つの径方向延出部54bと、2つの接続端子54cと、を有する。同様に、第2の折り返し用導体55は、1つの導体本体部55aと、2つの径方向延出部55bと、2つの接続端子55cと、を有する。
【0068】
折り返し用導体54、55は、他の導体50と同様に、平角線をフォーミング加工によって成形されていてもよい。また、折り返し用導体54、55は、後述するバスバー10、11、12、13と同様に板材をプレス加工によって成形されていてもよい。本実施形態の折り返し用導体54、55は、スロットS内を通過することがない。このため、折り返し用導体54、55は、不安定な断面形状が形成されるプレス加工のような加工方法を採用することができ、モータ1を安価に製造できる。すなわち、本実施形態において、折り返し用導体54、55は、板状であってもよく、この場合、折り返し用導体54、55をプレス加工で成形できる。折り返し用導体54、55は、導体本体部54a、55aおよび径方向延出部54b、55bにおいて軸方向を板厚方向とし、接続端子54c、55cにおいて径方向を板厚方向とすることで、容易なプレス形成が可能となる。
【0069】
折り返し用導体54、55において、導体本体部54a、55aは周方向に沿って延びる。径方向延出部54b、55bは、導体本体部54a、55aの両端部にそれぞれ設けられる。径方向延出部54b、55bは、導体本体部54a、55aから径方向内側に延びる。接続端子54c、55cは、径方向延出部54b、55bの径方向内側の端部に設けられる。すなわち、折り返し用導体54、55の両端部には、他の導体50と接続される接続端子54c、55cが設けられる。接続端子54c、55cは、径方向延出部54b、55bから上側に延びる。
【0070】
第1の折り返し用導体54および第2の折り返し用導体55の導体本体部54a、55aは、それぞれ中心軸線Jを中心とする円弧状に延びる。3つの第1の折り返し用導体54(すなわち、U相用第1導体54U、V相用第1導体54V、およびW相用第1導体54W)の導体本体部54aは、軸方向から見て、同一円周上に配置される。同様に、3つの第2の折り返し用導体55(すなわち、U相用第2導体55U、V相用第2導体55V、およびW相用第2導体55W)の導体本体部55aは、同一円周上に配置される。第1の折り返し用導体54の導体本体部54aが配置される円周の直径は、第2の折り返し用導体55の導体本体部55aが配置される円周の直径より大きい。したがって、第1の折り返し用導体54の導体本体部54aは、第2の折り返し用導体55の導体本体部55aの径方向外側を通過する。
【0071】
U相用第1導体54UとU相用第2導体55Uとは、上下方向において同じ高さに配置される。同様に、V相用第1導体54VとV相用第2導体55Vとは、上下方向において同じ高さに配置される。W相用第1導体54WとW相用第2導体55Wとは、上下方向において同じ高さに配置される。また、導体本体部54a、55aは、U相用、V相用、およびW相用の順で上側に向かってこの順に配置される。すなわち、U相用の導体本体部54aの直上にはV相用およびW相用の導体本体部54aが配置され、U相用の導体本体部54aの直上にはV相用およびW相用の導体本体部54aが配置される。V相用の導体本体部54aの直上にはW相用の導体本体部54aが配置され、V相用の導体本体部54aの直上には、W相用の導体本体部54aが配置される。
なお、本明細書において「直上」とは、上側かつ上下方向から見て少なくとも一部が重なって配置されることを意味する。
【0072】
本実施形態によれば、異なる相の折り返し用導体54、55の少なくとも一部は、軸方向から見て互いに重なる。このため、異なる相の折り返し導体を周方向又は径方向に並べて配置する場合と比較して、複数の折り返し用導体54、55を配置するスペースを周方向および径方向に小型化することができる。結果的に、ステータ2の小型化を図ることができる。加えて、複数の折り返し用導体54、55を周方向および径方向に密集して配置することができるため、複数の折り返し用導体54、55を保持する導体ホルダ80を小型化でき、ステータ2の軽量化を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、相ごとに折り返し用導体54、55の高さを変えて配置することで、異なる相の折り返し用導体54、55同士を同形状とすることができる。さらに、本実施形態では、異なる相の折り返し用導体54、55を周方向にずらして配置することで、異なる相の接続端子54c、55cを周方向に離間して配置することができる。すなわち、本実施形態において、異なる相の折り返し用導体54、55は、互いに同形状であり、周方向に互いにずらして配置される。より具体的には、本実施形態のU相第1導体54U、V相第1導体54V、およびW相第1導体54Wは、同形状である。同様に、本実施形態のU相第2導体55U、V相第2導体55V、およびW相第2導体55Wは、同形状である。本実施形態によれば、各相の折り返し用導体54、55として同形状の部品を使用することができ、巻線部30を構成する部品点数の増加を抑制でき、ステータ2を安価に製造できる。
【0074】
本実施形態によれば、異なる相の折り返し用導体54、55は、周方向および軸方向にずらされて配置されることで、径方向から見て階段状に並ぶ。すなわち、U相、V相およびW相の折り返し用導体54、55は、下側から上側、かつ周方向一方側θ1から周方向他方側θ2に向かって並べて配置される。これにより、異なる相の接続端子54c、55cを周方向に離間して配置しつつ異なる相の折り返し用導体54、55を部分的に重ね、これらを密集して配置することができ、導体ユニット7の小型化を図ることができる。
【0075】
上述したように、同相の折り返し用導体54、55のうち、一方の導体本体部54aは、他方の導体本体部55aの径方向外側に配置される。したがって、本実施形態において、同相の折り返し用導体54、55は、導体本体部54a、55aにおいて、径方向に重なる。すなわち、同相の折り返し用導体54、55同士は、互いに同じ高さに配置される。全ての折り返し用導体54、55を軸方向に積層する場合、軸方向寸法が大型化する。これに対し複数の折り返し用導体54、55のうち、同相の折り返し用導体54、55を径方向に重ねて配置することで、折り返し用導体54、55の配置スペースが軸方向に大型化し過ぎることを抑制でき、モータ1の小型化を図ることができる。
【0076】
本実施形態によれば、折り返し用導体54、55は、コイルエンド30eの直上に配置される。折り返し用導体54、55は、接続される第2端部61bおよび第4端部62bに対して径方向外側に配置され、軸方向において重なる。このため、
図11の比較実施形態のように折り返し部分167を上側に退避させる場合と比較して、コイルエンド30eに対する上側への突出量を抑制できる。これにより、モータ1の小型化を図ることができる。
【0077】
図6に示すように、折り返し用導体54、55の接続端子54c、55cは、導体ホルダ80から露出する。接続端子54c、55cには、第1部分61の第2端部61b又は第2部分62の第4端部62bが接続される。接続端子54c、55c、第2端部61b、および第4端部62bは、ともに軸方向に沿って延びる。接続端子54c、55cと第2端部61bとは、径方向に対向し接触し、電気的および機械的に接続される。接続端子54c、55cと第4端部62bとは、径方向に対向し接触し、電気的および機械的に接続される。
【0078】
導体ユニット7には、合計12個の接続端子54c、55cが設けられる。導体ユニット7の全ての接続端子54c、55cは、中心軸線Jを中心とする同一円周上に配列される。これにより、接続端子54c、55cと第2端部61b又は第4端部62bとの接合工程において、接合用の治具(例えば、抵抗溶接用の電極対)とステータ2とを、中心軸線J周りに相対的に回転させながら連続的に接合を行うことができ、接合工程のタクトタイムを短縮できる。
【0079】
導体ホルダ80は、絶縁性の樹脂部材からなる。導体ホルダ80は、折り返し用導体54、55の一部を埋め込むインサート成形によって成形される。より具体的には、導体ホルダ80は、折り返し用導体54、55の、導体本体部54a、55a、および径方向延出部54b、55bを埋め込み、接続端子54c、55cを露出させる。これにより、導体ホルダ80は、複数の導体連結体60の折り返し用導体54、55を保持する。
【0080】
導体ホルダ80は、複数(本実施形態では5個)の壁部81を有する。壁部81は、径方向および軸方向に沿って延びる。複数の壁部81は、周方向に沿って並ぶ。導体ユニット7において、U相の接続端子54c、55cと、V相の接続端子54c、55cと、W相の接続端子54c、55cとは、2個ずつ周方向に並んで配置される。壁部81は、U相の接続端子55cとV相の接続端子54cとの間、V相の接続端子55cとW相の接続端子54cとの間、W相の接続端子55cとU相の接続端子54cとの間に配置される。
【0081】
本実施形態によれば、導体ホルダ80の壁部81は、異なる相の折り返し用導体54、55の接続端子54c、55c同士の間に配置される。これにより、壁部81は、異なる相の接続端子54c、55cの間で絶縁性を高めることができ、導体ユニット7の信頼性を高めることができる。
【0082】
図9は、実施形態のモータ1の部分断面図である。なお、
図9の断面線は、導体連結体60の第1端部61aおよび第4端部62bを通過する。
【0083】
複数の折り返し用導体54、55は、径方向において、第1端部61aおよび第3端部62aと第2端部61bおよび第4端部62bとの間に配置される。すなわち、複数の折り返し用導体54、55は、径方向において、第1端部61aと第2端部61bとの間に配置される。これにより、第1端部61aおよび第3端部62aに接続されるバスバー10、11、12、13と、第2端部61bおよび第4端部62bに接続される折り返し用導体54、55とを周方向および軸方向に集中して配置することができ、モータ1の小型化を図ることができる。加えて、第1端部61aおよび第3端部62aに対するバスバー10、11、12、13の接合部と、第2端部61bおよび第4端部62bに対する折り返し用導体54、55の接合部と、周方向に近づけて配置できる。このため、接合部を接合する工程(例えば溶接工程)において、接合治具の移動距離を短く来ることができ、接合工程のタクトタイムを短縮できる。
【0084】
複数の折り返し用導体54、55の周方向位置は、第1端部61aの周方向位置、第2端部61bの周方向位置、第3端部62aの周方向位置、および第4端部62bの軸方向位置と重なる。さらに、複数の折り返し用導体54、55の軸方向位置は、第1端部61aの周方向位置、第2端部61bの軸方向位置、第3端部62aの軸方向位置、および第4端部62bの軸方向位置と重なる。このため、導体ユニット7をコイルエンド30eに対してコンパクトに配置することができる。
【0085】
<バスバーユニット>
図4に示すように、バスバーユニット5は、ステータ2の上側に配置される。より具体的には、バスバーユニット5は、コアバック部21の上側かつコイルエンド30eの径方向外側に配置される。したがって、バスバーユニット5は、コイルエンド30eと径方向に対向する。バスバーユニット5は、コイルエンド30eから延び出る導体連結体60の第1端部61aおよび第3端部62aに接続される。
【0086】
図8は、バスバーユニット5の斜視図である。なお、
図8において、バスバーユニット5のバスバーホルダ90を二点鎖線によって表示する。
【0087】
バスバーユニット5は、中性点用バスバー10と、複数の相用バスバー11、12、13と、バスバーホルダ90と、を有する。すなわち、ステータ2は、中性点用バスバー10と、複数の相用バスバー11、12、13と、バスバーホルダ90と、を有する。中性点用バスバー10は、第1部分61の第1端部61aに接続され、相用バスバー11、12、13は、第2部分62の第3端部62aに接続される(
図5参照)。
【0088】
中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13は、径方向を板厚方向とする板状である。中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13は、プレス加工によって成形される。中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13は、周方向に沿って延びる。
【0089】
図8に示すように、中性点用バスバー10は、相用バスバー11、12、13の径方向内側に配置される。中性点用バスバー10は、中性点用バスバー本体部10aと、複数(本実施形態では6個)の中性点用接続部10bと、上側延出部10cと、外部接続用端子10dと、を有する。
【0090】
中性点用バスバー本体部10aは、軸方向から見て中心軸線Jを中心とする円弧状に延びる。中性点用バスバー本体部10aは、径方向を板厚方向とする。
【0091】
中性点用バスバー10の上側延出部10cは、中性点用バスバー本体部10aの周方向一方側θ1の端部から上側に延びる。また、外部接続用端子10dは、上側延出部10cの上端に配置される。外部接続用端子10dは、中心軸線Jと直交する平面に沿って延びる。外部接続用端子10dには、インバータに繋がる外部端子(図示略)が接続される。
【0092】
中性点用接続部10bは、中性点用バスバー本体部10aから上側に突出する。複数の中性点用接続部10bは、中心軸線Jを中心とする同一円周上に配置される。中性点用接続部10bは、一様な幅で上下方向に延びる。全ての中性点用接続部10bの形状は、互いに一致する。それぞれの中性点用接続部10bは、コイルエンド30eから径方向外側に延び出る第2末端部64に溶接等の接合手段によって接続される。すなわち、中性点用バスバー10は、中性点用接続部10bにおいて、導体連結体60の第2末端部64に接続される(
図3参照)。
【0093】
相用バスバー11、12、13は、それぞれ相用バスバー本体部11a、12a、13aと、複数(本実施形態では2個)の相用接続部11b、12b、13bと、上側延出部11c、12c、13cと、外部接続用端子11d、12d、13dと、を有する。
【0094】
それぞれの相用バスバー11、12、13の相用バスバー本体部11a、12a、13a同士は、互いに形状が異なる。3つの相用バスバー11、12、13の相用バスバー本体部11a、12a、13aは、それぞれ少なくとも一部が中性点用バスバー10に対し径方向外側又は軸方向に重なる。
【0095】
相用バスバー11、12、13において、相用接続部11b、12b、13bは、相用バスバー本体部11a、12a、13aから上側に突出する。複数の相用接続部11b、12b、13bは、中心軸線Jを中心とする同一円周上に配置される。相用接続部11b、12b、13bは、一様な幅で上下方向に延びる。全ての相用接続部11b、12b、13bの形状は、互いに一致する。また、相用接続部11b、12b、13bと中性点用接続部10bとは、互いに同形状である。それぞれの相用接続部11b、12b、13bは、コイルエンド30eから径方向外側に延び出る第1末端部63に溶接等の接合手段によって接合される(
図3参照)。
【0096】
本実施形態において、全ての相用バスバー11、12、13の全ての相用接続部11b、12b、13b、および中性点用接続部10bの軸方向位置は、互いに重なる。相用接続部11b、12b、13bおよび中性点用接続部10bは、溶接等の接合手段で、第1端部61a(第1末端部63)、又は第3端部62a(第2末端部64)に接続される。本実施形態によれば、全ての相用接続部11b、12b、13b、および中性点用接続部10bの軸方向位置が互いに一致することで、抵抗溶接用の電極対など、各接合手段に用いられる接合装置を軸方向に移動させることなく、相用接続部11b、12b、13b、および中性点用接続部10bの接合を行うことができ、結果的に、接合工程を簡素化することができる。
【0097】
本実施形態において、全ての相用バスバー11、12、13の全ての相用接続部11b、12b、13b、および中性点用接続部10bは、中心軸線Jを中心とする同一円周上に配置される。これにより、相用接続部11b、12b、13b、および中性点用接続部10bと第1端部61aおよび第3端部62aとの接合工程において、接合用の治具とステータ2とを中心軸線J周りに相対的に回転させながら連続的に接合を行うことができる。これにより、接合工程のタクトタイムを短くすることができ、結果的に、接合工程を簡素化することができる。
【0098】
相用バスバー11、12、13の上側延出部11c、12c、13cは、それぞれの相用バスバー本体部11a、12a、12cの周方向一方側θ1の端部から上側に延びる。また、外部接続用端子11d、12d、13dは、上側延出部10cの上端に配置される。外部接続用端子10dは、中心軸線Jと直交する平面に沿って延びる。外部接続用端子11d、12d、13dには、それぞれU相、V相、およびW相の電圧を付与する外部端子(図示略)が接続される。
【0099】
本実施形態において、中性点用バスバー10と相用バスバー11、12、13とは、径方向に重ねて配置される。このため、中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13を幅広として断面積を大きくしても径方向寸法が大型化することがない。本実施形態のモータ1によれば、大電流化に対応して中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13の断面積を大きくしつつ、径方向寸法の大型化を抑制できる。特に、本実施形態によれば、中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13は、径方向を板厚方向とする板状である。このため、中性点用バスバー10と相用バスバー11、12、13とを径方向に重ねて配置することで、径方向寸法側大型化することを効果的に抑制できる。
【0100】
(バスバーホルダ)
バスバーホルダ90は、絶縁性の樹脂部材からなる。バスバーホルダ90は、中性点用バスバー10および複数の相用バスバー11、12、13の一部を埋め込むインサート成形によって成形される。これにより、バスバーホルダ90は、中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13を保持する。
【0101】
バスバーホルダ90は、ホルダ本体部91と、複数(本実施形態では4個)の支柱部92と、複数(本実施形態では5個)の区画壁部93と、を有する。バスバーホルダ90は、ステータコア20のコアバック部21上に搭載される。バスバーホルダ90は、例えばステータコア20に固定される。バスバーホルダ90は、ハウジング1a(
図1参照)に固定されていてもよい。
【0102】
ホルダ本体部91は、中性点用バスバー10の中性点用バスバー本体部10a、および相用バスバー11、12、13の相用バスバー本体部11a、12a、13aを埋め込む。ホルダ本体部91は、上端面から中性点用接続部10b、および相用接続部11b、12b、13bを露出させる。
【0103】
支柱部92は、ホルダ本体部91から上側に延びる。複数の支柱部92は、それぞれ中性点用バスバー10および相用バスバー11、12、13の上側延出部10c、11c、12c、13cを埋め込む。これにより、支柱部92は、上側延出部10c、11c、12c、13cを支持する。
【0104】
区画壁部93は、径方向および軸方向に沿って延びる。複数の区画壁部93は、周方向に沿って並ぶ。バスバーユニット5において、中性点用接続部10bと相用接続部11b、12b、13bとは、2個ずつ周方向において交互に配置される。区画壁部93は、中性点用接続部10bと、相用接続部11b、12b、13bとの間に配置される。これにより、区画壁部93は、異なる相の中性点用接続部10bおよび第2末端部64と、相用接続部11b、12b、13bおよび第1末端部63との間で絶縁性を高めることができ、バスバーユニット5の信頼性を高めることができる。
【0105】
<変形例>
図10は、変形例のモータ101の部分断面模式図である。
本変形例のモータ101は、上述の実施形態と比較して本変形例のモータ101は、導体ホルダ部(導体ホルダ)180およびバスバーホルダ部(バスバーホルダ)190が単一の部材(樹脂ホルダ107)から構成される点が主に異なる。
【0106】
上述の実施形態と同様に、複数のバスバー10、11、12、13は、ステータコア20のコアバック部21の上側かつコイルエンド30eの径方向外側に配置される。また、折り返し用導体54、55は、ステータコア20の上側に位置するコイルエンド30eの直上に配置される。
【0107】
本実施形態のステータ102は、樹脂ホルダ107を有する。樹脂ホルダ107は、導体ホルダ部180とバスバーホルダ部190とを有する。すなわち、ステータ102は、導体ホルダ部180およびバスバーホルダ部190を有する。導体ホルダ部180は、複数の折り返し用導体54、55を保持する。同様にバスバーホルダ部190は、複数のバスバー10、11、12、13を保持する。
【0108】
樹脂ホルダ107は、ステータ102のコアバック部21上に搭載される。樹脂ホルダ107は、導体ホルダ部180において、例えばステータコア20に固定される。樹脂ホルダ107は、ハウジング1aに固定されていてもよい。
【0109】
本変形例のモータ101によれば、折り返し用導体54、55を保持する部材と、バスバー10、11、12、13を保持する部材とをそれぞれ有する場合と比較して、部品点数を削減することができ、組立工程を簡素化できる。
【0110】
本変形例の樹脂ホルダ107によれば、複数の折り返し用導体54、55を保持する導体ホルダ部180と、複数のバスバー10、11、12、13を保持するバスバーホルダ部190とは、単一の部材である。このため、導体ホルダ部180とバスバーホルダ部190とを個別に配置する場合と比較して、それぞれの剛性を高め、折り返し用導体54、55およびバスバー10、11、12、13に加わる振動を抑制できる。結果的に、溶接部などの接合部に加わる負荷を軽減でき、ステータ102の信頼性を高めることができる。
【0111】
なお、本変形例では、導体ホルダ部180とバスバーホルダ部190とが単一の部材から構成される場合について説明したが、バスバーホルダ部190が、導体ホルダ部180を支持するものであれば、折り返し用導体54、55およびバスバー10、11、12、13に加わる振動の抑制の一定の効果を得ることができる。すなわち、導体ホルダ部180は、バスバーホルダ部190と導体ホルダ部180とが互いに固定されていれば、必ずしも単一の部材でなくてもよい。
【0112】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。例えば、上述の実施形態において、モータ1が三相モータである場合について説明したが、五相モータなどの他のモータであってもよい。
【0113】
例えば、上述の実施形態では、第1部分61の第1端部61aおよび第2部分62の第3端部62aがコイルエンド30eの径方向外側に配置され、第1部分61の第2端部61bおよび第2部分62の第4端部62bがコイルエンド30eの径方向内側に配置される場合について説明した。しかしながら、第1端部61a、第2端部61b、第3端部62a、および第4端部62bのコイルエンド30eに対する径方向内外の関係は、実施形態と反対であってもよい。すなわち、第1部分61の第1端部61aおよび第2部分62の第3端部62aがコイルエンド30eの径方向内側に配置され、第1部分61の第2端部61bおよび第2部分62の第4端部62bがコイルエンド30eの径方向外側に配置されていてもよい。この場合、折り返し用導体54、55は、コイルエンド30eの径方向外側の端部で他の導体に接続される。また、バスバー10、11、12、13は、コイルエンド30eの径方向内側で巻線部30に接続される。
【符号の説明】
【0114】
1,101…モータ、2,102…ステータ、3…ロータ、10…バスバー、11…相用バスバー、20…ステータコア、50…導体、54、55…折り返し用導体、54c,55c…接続端子、60…導体連結体、60A…第1の導体連結体(導体連結体)、60B…第2の導体連結体(導体連結体)、61…第1部分、61a…第1端部、61b…第2端部、62…第2部分、62a…第3端部、62b…第4端部、67,167…折り返し部分、80…導体ホルダ、81…壁部、90…バスバーホルダ、190…バスバーホルダ部(バスバーホルダ)、180…導体ホルダ部(導体ホルダ)、167…折り返し部、J…中心軸線、S…スロット、s…毎極スロット数、θ1…周方向一方側、θ2…周方向他方側