(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187890
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用駆動装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/14 20060101AFI20221213BHJP
C22F 1/04 20060101ALI20221213BHJP
H02K 5/06 20060101ALI20221213BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
H02K15/14 Z
C22F1/04 A
H02K5/06
C22F1/00 611
C22F1/00 631A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 602
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096108
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茜谷 宗明
【テーマコード(参考)】
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605CC01
5H605GG16
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP01
5H615PP28
5H615PP29
5H615SS24
5H615TT15
(57)【要約】
【課題】T5処理を利用しつつ、全体として効率的な製造方法を実現する。
【解決手段】回転電機用のステータと、ステータが配置される円筒状の第1空間部を有するアルミニウム合金の鋳造物とを、準備する準備工程と、鋳造物を加熱して、鋳造物の永久成長を促進させる熱処理工程と、熱処理工程で昇温した鋳造物の温度が常温に低下する前に、ステータを第1空間部内に配置し、その後の鋳造物の温度の低下によりステータと鋳造物とを一体化する一体化工程とを含む、車両用駆動装置の製造方法が開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用のステータと、前記ステータが配置される円筒状の第1空間部を有するアルミニウム合金の鋳造物とを、準備する準備工程と、
前記鋳造物を加熱して、前記鋳造物の永久成長を促進させる熱処理工程と、
前記熱処理工程で昇温した前記鋳造物の温度が常温に低下する前に、前記ステータを前記第1空間部内に配置し、その後の前記鋳造物の温度の低下により前記ステータと前記鋳造物とを一体化する一体化工程とを含む、車両用駆動装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程の熱処理条件は、前記鋳造物における少なくとも加熱対象箇所において、前記熱処理工程で昇温した前記鋳造物の温度が常温に低下する前に、永久成長が完了するように設定される、請求項1に記載の車両用駆動装置の製造方法。
【請求項3】
前記一体化工程の後に、回転電機を完成させる完成工程を更に含み、
前記準備工程は、前記第1空間部を形成する内周部が機械加工された前記鋳造物を準備することを含み、
前記鋳造物を金型から取り出した後から前記完成工程の終了までの間に、前記熱処理工程とは別の更なる熱処理工程を含まない、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理工程は、前記鋳造物における前記第1空間部に、誘導加熱装置を配置することを含む、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置の製造方法。
【請求項5】
前記鋳造物は、前記第1空間部に対して隔壁部を介して隣り合う第2空間部であって、動力伝達機構が配置される第2空間部を更に形成し、
前記熱処理工程は、前記第1空間部を形成する内周部及び前記第2空間部を形成する周壁部うちの、前記第1空間部に係る内周部のみを加熱対象箇所として実行される、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造で得られるアルミニウム合金の鋳造物に対して、その残留永久成長率が一定の規格値以下になるように熱処理を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アルミニウム合金の鋳造物は、自然時効により強度向上用の成分であるCuやMg等が析出するので、鋳造物の永久成長を促進させるT5処理(人工時効処理)が有効となる。特に、アルミニウム合金の鋳造物に、焼き嵌めを利用して他の部材を一体化させる場合、焼き嵌め前のT5処理は、強度向上用の成分であるCuやMg等を焼き嵌め前に析出させるので、焼き嵌め後に当該成分が析出してしまうことによる不都合(例えば焼き嵌めによる締め代が製品出荷後に低減する等の不都合)を防止できる。
【0005】
しかしながら、T5処理は、比較的大型の炉を用いて実行される場合が多く、焼き嵌めとは別に、焼き嵌めに先立ってT5処理を行うと、熱エネルギの効率的な利用の観点からは非効率となる。
【0006】
そこで、1つの側面では、本開示は、T5処理を利用しつつ、全体として効率的な製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、回転電機用のステータと、前記ステータが配置される円筒状の第1空間部を有するアルミニウム合金の鋳造物とを、準備する準備工程と、
前記鋳造物を加熱して、前記鋳造物の永久成長を促進させる熱処理工程と、
前記熱処理工程で昇温した前記鋳造物の温度が常温に低下する前に、前記ステータを前記第1空間部内に配置し、その後の前記鋳造物の温度の低下により前記ステータと前記鋳造物とを一体化する一体化工程とを含む、車両用駆動装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、本開示によれば、T5処理を利用しつつ、全体として効率的な製造方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】回転電機及び動力伝達機構を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
【
図2】車両駆動装置の外観の一例を示す2面図である。
【
図3】本製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図4】
図3の各工程の流れを、ワークの概略図により模式的に示す図である。
【
図6】本製造方法の時系列に沿った鋳造物の温度の変化態様を模式的に示す図である。
【
図7】ある一時点における各ワークの状態及び設備の状態を模式的に示す側面図である。
【
図8】その後の一時点における各ワークの状態及び設備の状態を模式的に示す側面図である。
【
図9】更なるその後の一時点における各ワークの状態及び設備の状態を模式的に示す側面図である。
【
図10】本製造方法を実際に実行した場合のワーク温度の推移を示す図である。
【
図11】熱処理工程(ステップS304)における温度プロファイル(ワーク温度の時系列)のいくつかの好ましい例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。なお、以下の説明において、温度を表す「度」は、摂氏の単位を表す。
【0011】
以下では、まず、本実施例による車両駆動装置17が好適に適用可能な車両用駆動システム100について説明し、本実施例による車両駆動装置17について説明する。
【0012】
[駆動システム全体]
図1は、回転電機1及び動力伝達機構7を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。
図1には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0013】
図1に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪の駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた動力伝達機構7と、を備える。動力伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、を備える。
【0014】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に設けられる。
【0015】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0016】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0017】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に設けられる。
【0018】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材6A、6Bに分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材6A、6Bと一体的に回転するように連結される。
【0019】
左右の出力部材6A、6Bのそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材6A、6Bのそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材6A、6Bは、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0020】
このようにして回転電機1は、動力伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、遊星歯車機構のような他の減速機構が利用されてもよい。
【0021】
[車両駆動装置]
図2は、車両駆動装置17の外観の一例を示す2面図であり、上側は、軸方向に視た平面図であり、下側は、軸方向に垂直な方向に視た側面図である。
【0022】
車両駆動装置17は、ケース2内に収容される回転電機1及び動力伝達機構7(
図1参照)を備える。回転電機1及び動力伝達機構7は、上述した車両用駆動システム100を形成できる。
【0023】
ケース2は、アルミニウム合金により鋳造される。アルミニウム合金としては、例えば、Al-Si系合金や、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金等、任意である。アルミニウム合金としては、特に、JIS H 5302(アルミニウム合金ダイカスト)で規定される材料の1つであるADC12が好適である。
【0024】
ケース2は、回転電機1が配置される円筒状の第1空間部SP1や、動力伝達機構7が配置される第2空間部SP2を形成する。具体的には、ケース2は、回転電機1が配置される第1空間部SP1に対して隔壁部200(
図2も参照)を介して隣り合う第2空間部SP2を形成する。第2空間部SP2には、動力伝達機構7が配置される。なお、ケース2の軸方向端部側の開口部(軸方向の開口部)は、カバー部材2a、2b(
図1参照)により覆われてよい。この場合、第1空間部SP1の一部は、カバー部材2aにより形成されてもよいし、第2空間部SP2の一部は、カバー部材2bにより形成されてもよい。
【0025】
次に、
図3以降を参照して、車両駆動装置17の製造方法のうちの、ケース2と回転電機1用のステータ21とを一体化した組立体を製造する方法(以下、「本製造方法」と称する)について説明する。
【0026】
図3は、本製造方法の流れを概略的に示すフローチャートである。
図4は、
図3の各工程の流れを、ワークの概略図により模式的に示す図である。
【0027】
本製造方法は、まず、ケース2の鋳造物300及びステータ21を準備する準備工程(ステップS300)を含む。ケース2の鋳造物300は、上述したように、アルミニウム合金の鋳造物である。準備工程は、鋳造物300の製造用の金型に、アルミニウム合金材料を溶かした状態で鋳込む(注入する)鋳込工程を含んでよい。あるいは、準備工程は、外部で製造した鋳造物300を搬入する工程を含んでもよい。この場合、外部で製造した鋳造物300は、ステップS302の機械加工の一部又は全部が実行済みであってもよい。
【0028】
ついで、本製造方法は、ケース2の鋳造物300における他部材との嵌合部を機械加工する工程(ステップS302)を含む。ケース2の鋳造物300の嵌合部は、ステータ21との嵌合部を含む。本実施例では、ケース2の鋳造物300のうちの、ステータ21が配置される第1空間部SP1を形成する内周部302(
図4参照)が、機械加工される。なお、鋳造物300における機械加工される部分は、比較的厳しい寸法精度が要求される部位であり、他の部位(例えば出力部材6A、6Bを支持する部位304(
図4参照))を含んでよい。
【0029】
ついで、本製造方法は、ケース2の鋳造物300の内周部302を加熱対象箇所として、内周部302に局所的に熱を与える熱処理工程(ステップS304)を含む。熱処理工程は、ケース2の鋳造物300のうちの、ステータ21が配置される第1空間部SP1内に、熱源(例えば誘導加熱装置704)を配置することで実現されてよい。この場合、内周部302に直接的に熱を付与できるので、効率的な熱処理工程を実現できる。
【0030】
熱処理工程(ステップS304)は、いわゆるT5処理であり、鋳造物300の永久成長を促進する。すなわち、熱処理工程(ステップS304)は、鋳造物300を形成するアルミニウムの原子配列を変化させるとともに、鋳造物300のアルミニウム合金に含まれる強度向上用の成分であるCuやMg等を析出させる。
【0031】
また、本実施例では、熱処理工程(ステップS304)は、焼き嵌め用の加熱処理を兼ねたT5処理でもある。焼き嵌め用の加熱処理は、鋳造物300における内周部302の内径が拡大する方向(第1空間部SP1の内径が拡径する方向)に、鋳造物300を熱膨張させる処理である。
【0032】
ついで、本製造方法は、熱処理工程で昇温した鋳造物300の温度が有意に低下する前に、準備工程で準備したステータ21を、鋳造物300の第1空間部SP1内に配置するセット工程(ステップS306)を含む。すなわち、本製造方法は、鋳造物300の内周部302の内径が、ステータ21の外径(より正確には、ステータコア22の外径)よりも有意に大きい状態である間に、ステータ21を、鋳造物300の第1空間部SP1内に配置する工程を含む。なお、
図4に示す例では、ステータ21は、ステータコイル29が巻装された状態で、鋳造物300の第1空間部SP1内に配置されている。
【0033】
ついで、本製造方法は、鋳造物300の温度を低下させることにより、ステータコア22(ステータ21)と鋳造物300とを一体化する一体化工程(ステップS308)を含む。なお、一体化工程は、ステータコア22の焼き嵌めに対応する工程となるが、ステップS304の熱処理工程で付与された熱エネルギを利用するため、一体化工程(ステップS308)において熱エネルギを鋳造物300に新たに与えることはない。鋳造物300の温度を低下すると、鋳造物300の内周部302の内径が減少し、径方向でステータコア22と鋳造物300の間の締め代が増す。このようにして、一体化工程(ステップS308)において実質的に焼き嵌めが実現され、ステータコア22が鋳造物300に係るケース2に強固に固定される。なお、一体化工程(ステップS308)において鋳造物300の温度を低下させる方法は、任意であり、ファン(
図7の冷却ファン708参照)等を用いた強制冷却であってもよいし、自然冷却であってもよい。
【0034】
このようにしてケース2と回転電機1用のステータ21とが一体化された組立体が製造されると、本製造方法は、
図4には図示しないが、回転電機1を完成させる完成工程(ステップS310)を含む。完成工程は、他の構成要素(例えばロータ等)を組み付ける等の他の後工程を含んでよい。
【0035】
ここで、
図5及び
図6を参照して、本製造方法の効果を更に説明する。
【0036】
図5は、比較例による製造方法(ケース2と回転電機1用のステータ21とが一体化された組立体を製造する方法)の説明図である。
図5には、上側には、工程の流れが模式的に示され、下側に、製造方法の時系列に沿った鋳造物300の温度の変化態様が模式的に示されている。
図6は、本製造方法の時系列に沿った鋳造物300の温度の変化態様を模式的に示す図である。なお、
図6には、横軸に、リードタイムである時間(図では“Time[sec]”と表記)を取り、縦軸にワーク温度(図では“T[℃]”と表記)を取り、鋳造物300の温度(
図5では、「ワーク温度」と表記)の変化態様が示されている。なお、この場合、鋳造物300の温度(ワーク温度)とは、鋳造物300の内周部302の温度であってよい。
【0037】
図5に示す比較例では、まず、ステップS500でケース2の鋳造物300が鋳造され(
図5では“CA”と表記)、ついで、鋳造物300の温度が低下した後に、ステップS502でT5処理(
図5では“HT(T5)”と表記)が実行される。比較例では、大型の炉によりT5処理が実行されるため、複数の鋳造物300が同時にT5処理を受ける。比較例では、T5処理として、複数の鋳造物300は、炉内において、例えば210度から260度の間の炉温度で、約1時間、保持される。ついで、ステップS504で、鋳造物300は、ステータ21との嵌合部等が、機械加工される(
図5では“MN”と表記)。比較例に係る機械加工は、本製造方法(
図3及び
図4)と内容自体は実質的に同じであるが、本製造方法の場合、熱処理工程(ステップS304)に先立って、機械加工の工程(ステップS302)が実行される。ついで、比較例では、ステップS506で、鋳造物300における機械加工された嵌合部にステータ21を嵌合させる焼き嵌め工程(
図5では“SF”と表記)が実行される。焼き嵌め工程は、例えば200度以上の温度で約2分程度、実行される。この際、焼き嵌め用の加熱処理は、T5処理(
図5では“HT(T5)”と表記)とは別の熱処理であり、
図4に示した誘導加熱装置704と同様の加熱装置を用いて実現されてもよい。
【0038】
このような比較例では、ステップS502でのT5処理と、ステップS506での焼き嵌め用の加熱処理とが、別々の工程で実行されるので、熱エネルギの観点から非効率となる。すなわち、
図5の下側に示すように、T5処理に係る熱処理と、焼き嵌め用の加熱処理との間に、機械加工の工程(ステップS504)が実行されるので、T5処理に係る熱処理により温度が上昇された鋳造物300をそのまま利用して、焼き嵌めを実現できない。従って、焼き嵌め用の加熱処理により、再び鋳造物300の温度を、T5処理に係る熱処理と同じ程度まで上昇させる必要があり、熱エネルギの観点から非効率となる。
【0039】
これに対して、本製造方法によれば、
図6に示すように、鋳造物300の鋳造(
図6では“CA”と表記)後、機械加工の工程(ステップS302)(
図6では“MN”と表記)を行った後に、焼き嵌め用の加熱処理を兼ねたT5処理である熱処理工程(ステップS304)が実行される(
図6では“SF”と表記)。これにより、鋳造物の鋳造後の熱処理が実質的に1回だけとなる。すなわち、鋳造物300を鋳造用の金型から取り出した後から完成工程(ステップS310)の終了までの間に、熱処理工程(ステップS304)とは別の更なる熱処理工程を含まない。これにより、熱エネルギの観点から製造の効率化を図ることができる。
【0040】
また、本製造方法では、T5処理は大型の炉を要せずに実現できるので、大型の炉を無くすことも可能であり、また、炉内に鋳造物300を搬入する等の工程も不要となり、設備の簡素化や製造時間の短縮を図ることができる。また、誘導加熱装置704による局所的な加熱を利用することで、炉を利用する場合に比べて、各ワークに付与する熱エネルギを低減でき、省エネルギ化を図ることができる。ただし、変形例では、大型の炉を利用して、T5処理を行った後に、当該T5処理で上昇させた鋳造物300の温度が低下する前に(鋳造物300の内周部302の内径が、ステータ21の外径よりも有意に大きい状態である間に)、上述したセット工程(ステップS306)を含むこととしてもよい。
【0041】
このようにして本製造方法によれば、T5処理を利用しつつ、全体として効率的な製造方法を実現できる。すなわち、本製造方法によれば、T5処理が、焼き嵌め用の加熱処理をも兼ねるので、T5処理と焼き嵌め用の加熱処理とを別々の工程で実行する場合に比べて、効率的な製造方法を実現できる。
【0042】
なお、
図6に示す例では、
図5の下側と対比して分かるように、本製造方法による熱処理工程(ステップS304)にて到達する鋳造物300の温度は、260度付近まで増加されるのに対して、比較例による加熱処理は、200度付近までしか増加されていない。本製造方法による熱処理工程(ステップS304)の熱処理条件(温度や加熱時間)は、後で
図11を参照して後述するように、鋳造物300の内周部302(加熱対象箇所)においてステップS310の終了までに永久成長が完了するように適合されるが、260度のような比較的高い温度を利用することで、比較的短い時間(例えば
図6では、2分程度)の加熱時間で、鋳造物300の内周部302(加熱対象箇所)において鋳造物300の永久成長を完了させることができる。
【0043】
次に、
図7から
図9を参照して、本製造方法を実現するのに好適な設備構成を説明する。
【0044】
図7から
図9は、本製造方法を実現するのに好適な設備の説明図であり、
図7は、ある一時点t1における各ワークW1~W4の状態及び設備700の状態を模式的に示す側面図であり、
図8は、時点t1より後の時点t2における各ワークW1~W4の状態及び設備700の状態を模式的に示す側面図であり、
図9は、時点t2より後の時点t3における各ワークW0~W4の状態及び設備700の状態を模式的に示す側面図である。なお、
図7から
図9では、ステータ21は、簡略的にステータコア22だけの状態で図示されているが、ステータコイル29が巻装された状態(
図4参照)であってよい。
【0045】
本実施例による設備700は、ワーク搬送手段702と、上述した誘導加熱装置704と、保温手段705と、コア挿入装置706と、冷却ファン708とを含む。なお、本実施例では、ワーク搬送手段702の搬送方向(矢印R70)に沿った誘導加熱装置704、コア挿入装置706、及び冷却ファン708のそれぞれの位置は固定であるが、可動式であってもよい。
【0046】
ワーク搬送手段702は、複数のワークを同時に搬送可能である。ワーク搬送手段702は、無限ベルトの形態であってもよいし、ローラのような他の形態であってよい。本実施例では、ワーク搬送手段702は、矢印R70で示す搬送方向で直線状に各ワークを搬送する。
図7では、ワーク搬送手段702上で搬送されている4つのワークW1からW4が模式的に示されている。ワークW1は、例えば、上述した機械加工の工程(ステップS302)が終了した状態の鋳造物300であってよい。
【0047】
時点t1では、
図7に示すように、ワーク搬送手段702は、ワークW2を誘導加熱装置704の下方に位置付け、ワークW3をコア挿入装置706の下方に位置付け、ワークW4を冷却ファン708の下方に位置付けている。時点t1から時刻t2(
図8)までは、ワーク搬送手段702は、各ワークW1~W4を移動させない停止状態となる。
【0048】
誘導加熱装置704は、ワーク搬送手段702の搬送方向(矢印R70)で上流側の位置に配置される。誘導加熱装置704は、上下方向に昇降可能であり、
図7では、上側の退避位置に位置する状態が示され、
図8では、下側の処理実行位置に位置する状態が示されている。
【0049】
保温手段705は、誘導加熱装置704に対応して設けられる。保温手段705は、退避位置に位置する誘導加熱装置704を保温する機能を有する。
【0050】
誘導加熱装置704は、下側の処理実行位置に位置するとき、
図8に示すように、鋳造物300の第1空間部SP1内に位置する。これにより、上述した熱処理工程(ステップS304)を実現できる。なお、
図8には、ワークW2に対して誘導加熱装置704が熱処理工程(ステップS304)を実行している状態が示されている。
【0051】
コア挿入装置706は、ワーク搬送手段702の搬送方向(矢印R70)で、誘導加熱装置704よりも下流側に配置される。コア挿入装置706は、上下方向に昇降可能であり、
図7では、上側の準備位置に位置する状態が示され、
図8では、下側の挿入位置に位置する状態が示されている。
【0052】
コア挿入装置706は、ステータ21を保持する状態と、ステータ21を開放する状態とを切り替え可能であり、上側の準備位置では、ステータ21を保持する。コア挿入装置706は、下側の挿入位置に至ると、保持していたステータ21を開放することで、上述したセット工程(ステップS306)を実現できる。なお、
図8には、ワークW3に対してコア挿入装置706がセット工程(ステップS306)を実行し終えた状態が示されている。
【0053】
なお、コア挿入装置706の上下動は、誘導加熱装置704の上下動とは、部分的に又は全体として連動してもよいし、互いに独立してもよい。
【0054】
冷却ファン708は、ワーク搬送手段702の搬送方向(矢印R70)で、コア挿入装置706よりも下流側に配置される。冷却ファン708は、気流がワークに向かうように動作することで、上述した一体化工程(ステップS308)を実現できる。冷却ファン708は、設備700の稼働中は、常時、動作していてよい。なお、
図8には、ワークW3に対して冷却ファン708が一体化工程(ステップS308)を実行している状態が示されている。なお、変形例では、冷却ファン708による強制対流式の冷却に代えて又は加えて、自然対流式の冷却(自然冷却)が利用されてもよい。
【0055】
このような設備700によれば、
図3を参照して上述した本製造方法を効率的に実現できる。具体的には、まず、ワーク搬送手段702が時点t1にて
図7に示す状態を形成すると、搬送を停止する。ついで、誘導加熱装置704を下降させる(矢印R80参照)とともに、コア挿入装置706を下降させる(矢印R81参照)ことで、時点t2にて
図8に示す状態を形成する。これより、上述した熱処理工程(ステップS304)、セット工程(ステップS306)、及び一体化工程(ステップS308)を同時に実現できる。そして、熱処理工程(ステップS304)、セット工程(ステップS306)、及び一体化工程(ステップS308)のすべてが終了すると、誘導加熱装置704を上昇させる(矢印R90参照)とともに、コア挿入装置706を上昇させる(矢印R91参照)。また、これに後続して、ワーク搬送手段702が、ワークW1からW4を次工程へと搬送するとともに、新たなワークW0(ステップS302の機械加工の工程が終了した状態の鋳造物300)を搬入する(矢印R92参照)。そして、コア挿入装置706が上昇して準備位置に至ると、次のセット対象の新たなステータ21を保持させる(矢印R93参照)。その後、図示しないが、ワーク搬送手段702が、時点t1と同じ状態を形成し、時点t1から時点t3までの工程を繰り返すことができる。
【0056】
このようにして、本実施例による設備700によれば、複数のワークに対して並列的に、本製造方法に係る熱処理工程(ステップS304)、セット工程(ステップS306)、及び一体化工程(ステップS308)を実現できるので、生産性を更に高めることができる。
【0057】
なお、本実施例による設備700では、ワーク搬送手段702上には、ステップS302の機械加工の工程が終了した状態の鋳造物300が、初期のワークW1として搬入されるが、これに限られない。例えば、時刻t1から時刻t2の間に、ワーク搬送手段702上のワークW1に対してステップS302の機械加工の工程が実行されてもよい。
【0058】
次に、
図10及び
図11を参照して、上述した熱処理工程(ステップS304)における温度プロファイルの好ましい例について説明する。
【0059】
図10は、本製造方法を実際に実行した場合のワーク温度の推移を示す図である。
図10では、横軸に時間(図では“Time[sec]”と表記)を取り、縦軸にワーク温度(図では“T[℃]”と表記)を取り、ワーク温度の時系列波形(温度推移)の一例が示されている。なお、
図10に示す温度推移は、ある特定の熱処理条件下での試験結果に基づくが、他の推移態様でワーク温度の推移が実現されてもよい。なお、ワーク温度とは、鋳造物300の内周部302の温度に対応する。
【0060】
図10において、時点t10は、熱処理工程(ステップS304)によりワーク温度が目標値(
図10では、300度)に達した時点に対応し、更なる加熱が停止されている。すなわち、放冷状態となる。この場合、時間の経過とともにワーク温度は徐々に低下するが、例えば、放冷状態の開始時点である時点t10から、300秒後の時点t11においても、ワーク温度は260度以上の温度が維持されている。この場合、時点t11付近では、例えば焼き嵌め用の加熱処理(
図5参照)と同様の態様で、セット工程(ステップS306)を開始できる。このため、
図10では、時点t11付近で、セット工程(ステップS306)が開始されている。なお、上述したように、セット工程(ステップS306)は、鋳造物300の内周部302の内径が、ステータ21の外径よりも有意に大きい状態である限り、任意のタイミングで開始されてもよい。なお、時点t11でセット工程(ステップS306)が開始されると、鋳造物300からステータコア22に熱が移動することでワーク温度が比較的急に低下していく。
【0061】
ところで、上述したように、アルミニウム合金の鋳造物は、自然時効により強度向上用の成分であるCuやMg等が析出するので、鋳造物の永久成長を促進させるT5処理(人工時効処理)が有効となる。
【0062】
この点、
図5に示したような比較例では、アルミニウム合金の鋳造物300に対して焼き嵌め工程(
図5ではステップS506、“SF”)の前にT5処理(
図5ではステップS502、“HT(T5)”)を行うことで強度向上用の成分であるCuやMg等が析出するので、焼き嵌め後(すなわちワーク温度が周囲温度の常温に戻った後)に当該成分が析出してしまうことによる不都合(例えば焼き嵌めによる締め代が製品出荷後に低減する等の不都合)を低減できる。
【0063】
本実施例では、上述したように、熱処理工程(ステップS304)は、焼き嵌め用の加熱処理を兼ねるT5処理であるものの、焼き嵌め工程が終了するまで(すなわち、ステップS308により、ワーク温度が周囲温度の常温に戻るまで)に、鋳造物の永久成長を完了させることができる(それに伴いCuやMg等が析出させることができる)。これにより、
図5に示したような比較例と同様、ステータコア22とケース2と間の焼き嵌めによる締め代(径方向の締め代)が製品出荷後に低減する等の不都合を、防止できる。
【0064】
ここで、鋳造物の永久成長を完了させるとは、残留永久成長率を指標として判断できる。残留永久成長率とは、鋳造物の永久成長の完了度合い(アルミニウム合金に残留している固溶金属量の度合い)を示すものであり、例えば鋳造物のテストピースに対して所定の加熱処理(追い熱処理)を行い、加熱処理後のテストピース長さから加熱処理前のテストピース長さを減じた差分を、加熱処理前のテストピース長さによって除して得られる値により表わされる。
【0065】
本明細書において、「鋳造物の永久成長を完了させる」とは、残留永久成長率が下限値付近(例えば、下限値に対して+10%の誤差)に至った状態を指してもよい。下限値は、材料に応じて異なり、例えば、ADC12の場合、下限値は、約0.06~0.07%程度であってよい。また、Cuを3%ほど含むADC10、AC2A、AC2B、AC4B、AC8Aなどの場合、下限値は、0.1%であってよい。また、Cuを含まないがMgを0.4%程度含むAC4CHなどの場合、下限値は、0.01%であってよい。
【0066】
あるいは、本明細書において、「鋳造物の永久成長を完了させる」とは、一律に、残留永久成長率が20%以下である状態、より好ましくは、残留永久成長率が10%以下である状態を指してもよい。
【0067】
あるいは、本明細書において、鋳造物の永久成長を完了させているか否かは、回転電機1におけるステータコア22とケース2との間の保持力(径方向の締め代による保持力)として定義されてもよい。これは、鋳造物の永久成長が完了していない場合、上述したように、ステータコア22とケース2との間の径方向の締め代が製品出荷後に有意に低減するためである。従って、製品出荷後において締め代の低減量が所定の許容量を超過した成長が確認できた場合には、鋳造物の永久成長を完了させていなかったことを意味する。
【0068】
本実施例では、上述したように、熱処理工程(ステップS304)の熱処理条件は、焼き嵌め工程が終了するまで(すなわち、ステップS308により、ワーク温度が周囲温度の常温に戻るまで)に鋳造物の永久成長が完了するように、適合される。ただし、焼き嵌め工程が終了してから、完成工程(ステップS310)が終了するまでの間にも、永久成長が生じる場合は、かかる永久成長が考慮されてもよい。すなわち、本実施例では、熱処理工程(ステップS304)の熱処理条件は、完成工程(ステップS310)が終了するまでに、鋳造物の永久成長が完了するように適合されてもよい。
【0069】
図11は、熱処理工程(ステップS304)の熱処理条件のいくつかの好ましい例を示す説明図である。
図11では、横軸に時間(図では“Time[sec]”と表記)を取り、縦軸にワーク温度(図では“T[℃]”と表記)を取り、3つの熱処理条件1101~1103が示されている。また、見やすさのため、
図11では、3つの熱処理条件1101~1103に係る面積S1101~S1103のうちの、熱処理条件1102に係る面積S1102だけハッチングされている。
【0070】
鋳造物の永久成長は、ワーク温度の積算値(時間積算値)に応じて進行し、ワーク温度の積算値が一定値に達すると、実質的に完了する。一定値は、材料に応じて決まり、試験等により適合されてよい。3つの熱処理条件1101~1103のそれぞれに係るワーク温度の積算値(時間積算値)は、
図11に示す面積S1101~S1103に対応する。なお、前出の
図10にも、ワーク温度の積算値(時間積算値)に対応する面積S1が図示されている。
【0071】
なお、ワーク温度の積算値は、0度を基準とした積算値でもよいし、常温付近の温度を基準とした積算値であってよい。ここでは、一例として、ワーク温度Twとし、基準温度を常温付近の値Trefとし、熱処理工程(ステップS304)の開始時点をt=0とし、焼き嵌め工程が終了した時点(ワーク温度が周囲温度の常温に戻った時点)をt=tsとすると、ワーク温度の積算値ΣTは、以下のとおりであってよい。
ΣT=∫(Tw-Tref)dt
ここで、積分期間は、t=0からtsまでの期間である。
【0072】
熱処理条件1101は、比較的短い時間(t=0からtsまでの時間が比較的短い)で鋳造物の永久成長を完了させるときに好適な熱処理条件である。
図11に示す例では、熱処理条件1101は、ワーク温度を比較的高い温度(例えば350度以上)まで増加させることで、比較的短い時間で鋳造物の永久成長を完了させる。
【0073】
なお、熱処理条件1102は、通常的な焼き嵌めのときの熱処理条件に対応する。熱処理条件1101は、通常的な焼き嵌めのときの熱処理条件と同様であり、ワーク温度を210度程度で比較的短い時間だけ保持する条件である。なお、熱処理条件1102は、ワーク温度の積算値(ハッチングされた面積S1102参照)が不十分であり、完成工程(ステップS310)が終了するまでに、鋳造物の永久成長が完了しない典型的な条件である。
【0074】
熱処理条件1103は、比較的長い時間(t=0からtsまでの時間が比較的長い)で鋳造物の永久成長を完了させるときに好適な熱処理条件である。
図11に示す例では、熱処理条件1103は、ワーク温度を210度までしか増加させないものの、比較的長い時間、210度のワーク温度を維持することで、鋳造物の永久成長を完了させる。
【0075】
このようにして、熱処理工程(ステップS304)の熱処理条件は、焼き嵌め工程が終了するまで(すなわち、ステップS308により、ワーク温度が周囲温度の常温に戻るまで)に鋳造物の永久成長が完了するように、多様に適合できる。
【0076】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0077】
例えば、上述した実施例では、ステータ21に一体化させる支持部材は、車両駆動装置17用のケースを形成するため、熱処理工程(ステップS304)は、ワークの内周部302に対して局所的に実行されているが、これに限られない。例えば、
図12に示すように、ステータ21に一体化させる支持部材が、回転電機1用のケース2Aである場合、熱処理工程(ステップS304)は、ケース2Aに実行されてもよい。すなわち、熱処理工程(ステップS304)は、回転電機1用の第1空間部SP1のみを形成するケース2Aに対しては、ケース2A全体に対して実行されてもよい。この場合も同様に、誘導加熱装置704を第1空間部SP1内に配置することで、熱処理工程(ステップS304)が実現されてもよいし、炉内で熱処理工程(ステップS304)が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・回転電機、7・・・動力伝達機構、17・・・車両駆動装置、21・・・ステータ、300・・・鋳造物、302・・・内周部、704・・・誘導加熱装置、SP1・・・第1空間部、SP2・・・第2空間部、200・・・隔壁部