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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187891
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】容器及びプリフォーム
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20221213BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20221213BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20221213BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65D1/02 100
C08J3/20 CFD
B29B17/04 ZAB
C08J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096110
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
【テーマコード(参考)】
3E033
4F070
4F401
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA17
3E033BB03
3E033CA07
3E033CA16
3E033CA18
3E033CA20
3E033DA03
3E033DB01
3E033DD03
3E033FA02
3E033FA03
3E033GA02
4F070AA47
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB24
4F070AB26
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F401AA22
4F401AC11
4F401BA06
4F401CA14
4F401CA59
4F401CA79
4F401DC02
4F401DC07
4F401FA01Z
(57)【要約】
【課題】CO排出削減性に優れ、且つ、座屈強度の低下及び黄変が抑制された容器の提供。
【解決手段】本発明は、ポリエステルを主成分として含む容器であって、前記ポリエステルは、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルと、容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステルとを含み、前記廃棄物からなるポリエステルの固有粘度が、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの固有粘度よりも低い、容器である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分として含む容器であって、
前記ポリエステルは、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルと、容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステルとを含み、
前記廃棄物からなるポリエステルの固有粘度が、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの固有粘度よりも低い、容器。
【請求項2】
前記廃棄物からなるポリエステルの固有粘度が、0.650dL/g以上0.780dL/g以下である、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの固有粘度が、0.750dL/g以上0.870dL/g以下である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記リサイクルポリエステル及び前記廃棄物からなるポリエステルの合計質量に対する前記バージンポリエステルの質量の比が、0.11以上2.33以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの合計質量に対する前記廃棄物からなるポリエステルの質量の比が、0.001以上0.111以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
質量に対する容量の比が、5mL/g以上50mL/g以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、
前記胴部における断面の厚さが、0.05mm以上0.54mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の容器の製造用プリフォーム。
【請求項9】
請求項8に記載のプリフォームの製造方法であって、
ポリエステルを主成分として含む容器の製造工程における廃棄物を粉砕した粉砕物と、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルとをドライブレンドして混合物を得る工程と、
前記混合物を溶融して溶融物を得る工程と、
前記溶融物を射出する成形する工程と、
を含む、プリフォームの製造方法。
【請求項10】
前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの形態が、ペレットである、請求項9に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項11】
前記リサイクルポリエステルのペレットが、リサイクルポリエステルのフレークを溶融して形成される、請求項10に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項12】
前記リサイクルポリエステルの形態がフレークであり、前記バージンポリエステルの形態がペレットである、請求項9に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項13】
前記溶融の温度が、285℃以上300℃以下である、請求項9~12のいずれか一項に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の容器の製造方法であって、
請求項9~13のいずれか一項に記載のプリフォームの製造方法により得られたプリフォームをブロー成形する工程を含む、容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器及びこの容器の製造用プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルは、機械的特性、化学的安定性、耐熱性、ガスバリア性及び透明性等に優れ、かつ安価であることから、飲料品等を充填する容器の製造に広く使用されている。
【0003】
近年では、環境に配慮、特にCO排出削減を図ることを目的として、使用済みのPETボトル等の容器から回収したポリエステルを再度使用できるようにして、リサイクルポリエステルとして再び容器にリサイクルする方法が提案されている。例えば、特許文献1では、CO排出量の削減を図るために、ポリエステルを用いて形成された使用済み製品を回収して再度使用できるようにしたポリエステルを容器に使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-256328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今般、本発明者らは、リサイクルポリエステルのみを容器に使用すると、得られた容器の座屈強度が低下し、且つ、容器が黄色に変色(黄変)していることに気が付いた。本発明者らは、該容器にバージンポリエステルをブレンドすることにより、上記した座屈強度の低下及び黄変を抑制できると考えた。
【0006】
しかしながら、上記のようにして得られた容器は、座屈強度の低下が抑制されていたものの、黄変の抑制は十分ではなかった。また、本発明者らは、バージンポリエステルの割合を増やすことにより、黄変を抑制できるとも考えたが、今度はCO排出削減性が悪化する問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、CO排出削減性に優れ、且つ、座屈強度の低下及び黄変が抑制された容器、及び容器の製造方法を提供することである。
本発明の別の目的は、この容器の製造用プリフォーム、及びプリフォームの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステルを主成分として含む容器であって、
前記ポリエステルは、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルと、容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステルとを含み、
前記廃棄物からなるポリエステルの固有粘度が、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの固有粘度よりも低い、容器である。
【0009】
本発明による容器において、前記廃棄物からなるポリエステルの固有粘度は、0.650dL/g以上0.780dL/g以下でもよい。
【0010】
本発明による容器において、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの固有粘度は、0.750dL/g以上0.870dL/g以下でもよい。
【0011】
本発明による容器において、前記リサイクルポリエステル及び前記廃棄物からなるポリエステルの合計質量に対する前記バージンポリエステルの質量の比は、0.11以上2.33以下でもよい。
【0012】
本発明による容器において、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの合計質量に対する前記廃棄物からなるポリエステルの質量の比は、0.001以上0.111以下でもよい。
【0013】
本発明による容器において、質量に対する容量の比は、5mL/g以上50mL/g以下でもよい。
【0014】
本発明による容器は、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、
前記胴部における断面の厚さは、0.05mm以上0.54mm以下でもよい。
【0015】
本発明は、前記容器の製造用プリフォームである。
【0016】
本発明は、前記プリフォームの製造方法であって、
ポリエステルを主成分として含む容器の製造工程における廃棄物を粉砕した粉砕物と、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルとをドライブレンドして混合物を得る工程と、
前記混合物を溶融して溶融物を得る工程と、
前記溶融物を射出する成形する工程と、
を含む、プリフォームの製造方法である。
【0017】
本発明によるプリフォームの製造方法において、前記リサイクルポリエステル及び前記バージンポリエステルの形態は、ペレットでもよい。
【0018】
本発明によるプリフォームの製造方法において、前記リサイクルポリエステルのペレットは、リサイクルポリエステルのフレークを溶融して形成されてもよい。
【0019】
本発明によるプリフォームの製造方法において、前記リサイクルポリエステルの形態はフレークであり、前記バージンポリエステルの形形態はペレットでもよい。
【0020】
本発明によるプリフォームの製造方法において、前記溶融の温度は、285℃以上300℃以下でもよい。
【0021】
本発明は、前記容器の製造方法であって、
前記プリフォームの製造方法により得られたプリフォームをブロー成形する工程を含む、容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、CO排出削減性に優れ、且つ、座屈強度の低下及び黄変が抑制された容器、及び容器の製造方法を提供できる。
本発明によれば、この容器の製造用プリフォーム、及びプリフォームの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による容器の一実施形態を示す概略半断面図である。
図2】本発明によるプリフォームの一実施形態を示す概略半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[容器]
本明細書において、容器とは、物品を収容する成形体を意味する。容器としては、例えば、圧縮成形体、射出成形体、ブロー成形体及び熱成形体等の成形体が挙げられる。具体的な容器としては、例えば、ボトル、バイアル瓶、カップ、トレー及びパック等が挙げられる。
【0025】
本発明による容器は、ポリエステルを主成分として含む。該ポリエステルは、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルと、容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステルとを含み、該廃棄物からなるポリエステルの固有粘度が、該リサイクルポリエステル及び該バージンポリエステルの固有粘度よりも低いものである。
本明細書において、「リサイクルポリエステル」とは、市場に出荷された使用済みの容器等の製品を回収してリサイクルされたポリエステルを指す。具体的に、リサイクルポリエステルは、使用済み容器を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下等で一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去し、最後に固相重合をすることにより得られたポリエステルである。
本明細書において、「バージンポリエステル」とは、上記リサイクルがされていないポリエステルを指す。
本明細書において、「容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステル」とは、容器を製造する工程の廃棄ルートから発生する材料や不良品を回収して得られたポリエステルを指す。なお、以下においては、「容器の製造工程における廃棄物からなるポリエステル」を「プレコンシューマーポリエステル」とも称する。
【0026】
本発明による容器は、上記構成とすることにより、CO排出削減性に優れると共に、座屈強度の低下及び黄変を抑制できる。その理由は、以下の通りであると考えられる。
【0027】
まず、容器の座屈強度の低下を抑制できる理由について説明する。
リサイクルポリエステルは、上記した通り、市場に出荷された使用済みの容器等の製品を回収してリサイクルされたポリエステルである。使用済みの容器も、製造当初は、バージンポリエステルから製造された容器である。ポリエステルから容器を製造する際には、射出成形を行うために、ポリエステルを溶融する工程が少なくともある。従って、リサイクルポリエステルを使用して容器を得る場合、このリサイクルポリエステルは、製造当初の溶融工程、及びリサイクルの際の溶融工程の少なくとも2回の溶融工程を経ていることになる。ポリエステル中に存在するエステル結合は、加水分解されやすく、高温条件下において加水分解は更に促進する。リサイクルポリエステルは、溶融工程を経る度に、エステル結合が加水分解され、その結果、モノマーやオリゴマー等の低分子量成分が生成する。一般的にリサイクルポリエステルは、低下した平均分子量を元の状態まで戻すために固相重合するが、生成した低分子量成分は比較的安定な構造を有するため、これらの割合は減少しにくいため、リサイクルポリエステルは、バージンポリエステルよりも低分子量成分を多く含んでいる。この結果、容器の座屈強度が低下すると考えられる。
本発明による容器は、熱履歴を受けていないバージンポリエステルを、リサイクルポリエステルと組み合わせることにより、座屈強度の低下を抑制できる。座屈強度に優れる容器は、例えば、容器を梱包した段ボール箱をより多く積み上げることができるため、倉庫の保管効率に優れる。
なお、上記高温条件とは、大気中において、ポリエステルが加水分解する温度での処理であり、特に限定されないが、例えば、230℃以上の温度での処理である。
【0028】
次に、容器の黄変を抑制できる理由について説明する。
上記した通り、リサイクルポリエステルは固相重合されたものであるところ、プレコンシューマーポリエステルは、製品を製造する工程の廃棄ルートから発生する材料や不良品を回収して得られたポリエステルであるため、リサイクルポリエステルを得る際のような固相重合は行われていない。そのため、プレコンシューマーポリエステルの平均分子量は、バージンポリエステル及びリサイクルポリエステルよりも低くなる傾向にある。その結果、プレコンシューマーポリエステルの固有粘度(IV値)は、バージンポリエステル及びリサイクルポリエステルのIV値よりも低くなる。容器の製造工程において、射出成形は、ポリエステルのIV値が低い場合、通常よりも低い温度で行うことができる。これにより、ポリエステルの溶融温度を低くできる。
容器を製造する際の溶融工程は、一般的に大気下で行われるところ、大気中の酸素等の活性ガスにより、上記加水分解以外にも、種々の分解又は反応が進行し、その結果、ポリエステルに黄変が発生する場合がある。溶融工程の温度が高いほど、これらの分解又は反応は更に進行し、ポリエステルの黄変はより発生する。
本発明による容器は、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルと共に、プレコンシューマーポリエステルを用いることにより、容器の製造工程において、ポリエステルを通常よりも低い溶融温度で射出成形できるため、容器の黄変を抑制できたと考えられる。黄変が抑制された容器は、例えば、水等の無色透明の内容物が充填された容器に好適に使用できる。
また、プレコンシューマーポリエステルは本来廃棄されるものであるため、これを使用することにより、生産コストを抑制できる。
【0029】
本明細書において、「主成分」とは、全体の50質量%を超える成分を意味する。容器におけるポリエステルの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上である。
【0030】
本明細書において、「ポリエステル」とは、エステル結合によって高分子化されたポリマーを意味する。このようなポリエステルは、通常、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合することに得られる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)等が挙げられる。
ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートの原料モノマーと、共重合モノマーとが重合された改質ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0031】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
【0032】
ポリエステルは、重合触媒を用いて重合されたものであってもよい。重合触媒としては、マンガン触媒、チタン触媒、アルミニウム触媒、リチウム触媒、ゲルマニウム触媒、アンチモン触媒等が挙げられる。
【0033】
本発明による容器において、リサイクルポリエステル及びプレコンシューマーポリエステルの合計質量に対するバージンポリエステルの質量の比は、好ましくは0.11以上2.33以下であり、より好ましくは0.5以上1.5以下である。
該質量比を0.11以上とすることにより、容器の座屈強度の低下をより抑制できる。
該質量比を2.33以下とすることにより、容器のCO排出削減性をより向上できる。
【0034】
本発明による容器において、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルの合計質量に対するプレコンシューマーポリエステルの質量の比は、好ましくは0.001以上0.111以下であり、より好ましくは0.01以上0.1以下であり、更に好ましくは0.05以上0.08以下である。
該質量比を0.001以上とすることにより、射出成形時のポリエステルの溶融温度を低くでき、容器の黄変をより抑制できる。
該質量比を0.111以下とすることにより、ポリエステルの過剰なIV値の低下を抑制し、容器の成形性及び衝撃強度を向上できる。
【0035】
本発明による容器において、リサイクルポリエステル、バージンポリエステル及びプレコンシューマーポリエステルの合計含有量は、容器の全質量に対して、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、更により好ましくは99質量%以上である。
【0036】
プレコンシューマーポリエステルのIV値が、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルのIV値よりも低いという要件を満たす範囲において、本発明による容器に含まれるプレコンシューマーポリエステルのIV値は、好ましくは0.650dL/g以上0.780dL/g以下であり、より好ましくは0.720dL/g以上0.765dL/g以下である。
IV値を0.650dL/g以上とすることにより、容器の成形性及び衝撃強度を向上できる。
IV値を0.780dL/g以下とすることにより、射出成形時のポリエステルの溶融温度を低くでき、容器の黄変をより抑制できる。
【0037】
プレコンシューマーポリエステルのIV値が、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルのIV値よりも低いという要件を満たす範囲において、本発明による容器に含まれるリサイクルポリエステル及びバージンポリエステルのIV値は、好ましくは0.750dL/g以上0.870dL/g以下であり、より好ましくは0.770dL/g以上0.820dL/g以下である。
IV値を0.750dL/g以上とすることにより、容器の成形性及び衝撃強度を向上できる。
IV値を0.870dL/g以下とすることにより、射出成形時のポリエステルの溶融温度を低くでき、容器の黄変をより抑制できる。
【0038】
本発明の特性を損なわない範囲において、容器は、添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸素吸収剤、ガスバリア性樹脂(ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド)、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、アセトアルデヒド吸収剤(例えば、Color Matrix社製のAA Scavengers)及び着色剤等が挙げられる。
【0039】
以下、図1を参照して、本発明による容器の構造の一実施形態を説明する。
【0040】
図1は、本発明による容器10の一実施形態を示す模式半断面図である。容器10は、図1に示すように、口部11と、首部12と、肩部13と、胴部14と、底部15とを備えている。
【0041】
一実施形態において、口部11は、図1に示すように、キャップが螺着されるネジ部16と、ネジ部16下にカブラ17と、カブラ17下にサポートリング18を備える。
【0042】
一実施形態において、首部12は、図1に示すように、サポートリング18と肩部13との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。また、一実施形態において、肩部13は、首部12側から胴部14側に向けて径が徐々に拡大する円筒形状を有する。
【0043】
一実施形態において、胴部14は、図1に示すように、肩部13と底部15との間に位置している。また、一実施形態において、胴部14は、図1に示すように、胴部14が内側に窪んだパネル部21を備える。このような構成とすることにより、容器内に加熱された内容物を充填する場合や内容物の充填後に加熱する容器の場合に、内圧の増減による容器の変形を防止できる。
なお、本発明による容器は、座屈強度の低下が抑制されているため、胴部の形状を適宜選択できる。即ち、容器の胴部を座屈強度に適した形状にする必要がなくなり、様々の形状を選択できる。
【0044】
一実施形態において、底部15は、図1に示すように、中央に位置する陥没部19と、陥没部19の周囲に設けられた接地部20とを備え、この接地部20において胴部14と連接している。このような構成とすることにより、容器内に加熱された内容物を充填する場合や内容物の充填後に加熱するポリエステル場合に、内圧の増減による容器の変形を防止できる。
なお、一実施形態において、「底部」とは、容器を自立させた場合の接地部から内側の部分を意味する。
【0045】
本発明による容器は、座屈強度の低下が抑制されているため、質量に対する容量(容量/質量)の比の値を高く保つことができる。これにより、ポリエステルの使用量が過剰となってしまうことを防止でき、廃棄されるポリエステルの量を削減できるため環境負荷低減を向上でき、また、容器のブロー成形性を向上できる。
容量/質量は、好ましくは5mL/g以上50mL/g以下であり、より好ましくは8mL/g以上50mL/g以下である。
【0046】
本発明による容器は、座屈強度の低下が抑制されているため、容器の厚さを薄くできる。これにより、ポリエステルの使用量が過剰となってしまうことを防止でき、廃棄されるポリエステルの量を削減できるため環境負荷低減を向上でき、また、容器のブロー成形性を向上できる。
容器の胴部における断面の厚さは、好ましくは0.05mm以上0.54mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上0.5mm以下である。
なお、該厚さは、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【0047】
本発明による容器は、単層構造を有しても、2層以上の多層構造を有してもよい。また、容器が多層構造を有する場合には、各層は、同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
【0048】
一実施形態において、容器は、その表面に蒸着膜を備えていてもよい。これにより、容器のガスバリア性を向上できる。
【0049】
蒸着膜としては、例えば、アルミニウム等の金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサン等の有機珪素化合物、DLC(Diamond Like Carbon)膜等の硬質炭素膜から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜又は水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
【0050】
また、蒸着膜の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上150nm以下とすることができる。
【0051】
蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
なお、蒸着層の厚さは、例えば、容器の胴部において測定することができ、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【0052】
[容器の製造方法]
本発明による容器は、後述するプリフォームをブロー成形することにより製造することができる。ブロー成形は、従来公知の方法により行うことができる。
【0053】
[プリフォーム]
本明細書において、プリフォームとは、容器をブロー成形する前の予備成形体である。本発明によるプリフォームは、本発明の容器の製造に用いられるものである。従って、本発明によるプリフォームは、ポリエステルを主成分として含み、該ポリエステルは、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルと、プレコンシューマーポリエステル含み、該プレコンシューマーポリエステルの固有粘度が、該リサイクルポリエステル及び該バージンポリエステルの固有粘度よりも低いものである。該プリフォームをこのような構成とすることにより、本発明による容器を製造できる。
なお、本発明によるプリフォームに含まれるポリエステルは、本発明による容器と同様のものを使用できる。
【0054】
以下、図2を参照して、本発明によるプリフォームの構造の一実施形態を説明する。
【0055】
図2は、本発明によるプリフォームの一実施形態を示す模式半断面図である。プリフォーム30は、図2に示すように、口部31と、口部31に連結された胴部32と、胴部32に連結された底部33とを備えている。このうち口部31は、容器10の口部11に対応するものであり、口部11と略同一の形状を有している。また、胴部32は、容器10の首部12、肩部13及び胴部14に対応するものであり、略円筒形状を有している。底部33は、容器10の底部15に対応するものであり、略半球形状を有している。
【0056】
口部31は、図示しないキャップが螺着される容器10のネジ部16に対応するネジ部34と、ネジ部34の下方に設けられ、容器10のカブラ17に対応するカブラ35と、カブラ35の下方に設けられ、容器10のサポートリング18に対応するサポートリング36を備えている。口部31の形状は、従来公知の形状であってもよい。
【0057】
本発明によるプリフォームの断面の厚さは、1.3mm以上4.7mm以下であることが好ましく、2.1mm以上4.0mm以下であることがより好ましい。断面の厚さを上記範囲とすることにより、本発明による容器を製造できる。
なお、プリフォームの断面の厚さは、例えば、プリフォームの胴部において測定することができ、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
【0058】
[プリフォームの製造方法]
本発明によるプリフォームの製造方法は、ポリエステルを主成分として含む容器の製造工程における廃棄物を粉砕した粉砕物(以下、単に「粉砕物」とも称する)と、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルとをドライブレンドして混合物を得る工程と、混合物を溶融して溶融物を得る工程と、溶融物を射出する成形する工程と、を含む。該粉砕物の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、多面体状、針状及び柱状等の形状が挙げられる。
なお、本発明によるプリフォームの製造方法において、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルは、本発明による容器と同様のものを使用できる。
【0059】
本発明によるプリフォームの製造方法は、粉砕物と、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルとを溶融する前に、予めドライブレンドする。このような工程とすることにより、粉砕物と、リサイクルポリエステルと、バージンポリエステルとが均一に分散された容器を製造できる。
【0060】
本発明によるプリフォームの製造方法において、リサイクルポリエステル及び粉砕物に対するバージンポリエステルの混合比は、好ましくは0.11以上2.33以下であり、より好ましくは0.5以上1.5以下である。
【0061】
本発明によるプリフォームの製造方法において、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルに対する粉砕物の混合比は、好ましくは0.001以上0.111以下であり、より好ましくは0.01以上0.1以下であり、更に好ましくは0.05以上0.08以下である。
【0062】
一実施形態において、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルの形態は、ペレットでも、フレークでもよい。リサイクルポリエステルの形態がペレットである場合、ペレットは、リサイクルポリエステルのフレークを溶融して形成したものでもよい。
別の実施形態において、リサイクルポリエステルの形態がフレークであり、バージンポリエステルの形態がペレットでもよい。
【0063】
本発明によるプリフォームの製造方法において、混合物の溶融は、従来公知の方法により実施できるが、溶融温度は、好ましくは285℃以上300℃以下である。溶融温度を該範囲とすることにより、粉砕物と、リサイクルポリエステルとを溶融できると共に、容器が黄色に変色することを抑制できる。溶融温度は、より好ましくは285℃以上295℃以下である。
なお、本明細書において、「溶融温度」とは、溶融されたポリエステルの温度を指す。
【0064】
本発明によるプリフォームの製造方法において、溶融物を射出成形する工程は、従来公知の方法により実施できる。
【実施例0065】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
フレーク状のリサイクルポリエステル、ペレット状のバージンポリエステル(新光合繊社製、5015W)及びプレコンシューマーポリエステルの粉砕物を用意した。
まず、フレーク状のポリエステルを溶融して、ペレット状のリサイクルポリエステルを得た。45質量部のリサイクルポリエステルのペレットと、50質量部のバージンポリエステルのペレットと、5質量部のプレコンシューマーポリエステルの粉砕物とをドライブレンドした。得られた混合物を295℃で溶融し、溶融物を射出成形機を用いて射出し、図2に示すプリフォームを作製した。
プリフォームの胴部の厚さは3.5mmであり、目付量は21gであった。
【0067】
次いで、上記プリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、図1に示す内容量が500mLの容器を作製した。容器の胴部における断面の厚さは0.32mmであった。容器を構成するポリエステルにおいて、容量/質量は23.8であった。
【0068】
[実施例2]
65質量部の上記リサイクルポリエステルのペレットと、30質量部の上記バージンポリエステルのペレットと、5質量部の上記プレコンシューマーポリエステルの粉砕物とをドライブレンドして混合物を得たこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0069】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0070】
[実施例3]
45質量部の上記リサイクルポリエステルのフレークと、50質量部の上記バージンポリエステルのペレットと、5質量部の上記プレコンシューマーポリエステルの粉砕物とをドライブレンドして混合物を得たこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0071】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0072】
[実施例4]
65質量部の上記ポストコンシューマーリサイクルポリエステルのフレークと、30質量部の上記バージンポリエステルのペレットと、5質量部の上記プレコンシューマーポリエステルの粉砕物とをドライブレンドして混合物を得たこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0073】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0074】
[比較例1]
上記リサイクルポリエステルのペレットのみを使用し、溶融温度を305℃としたこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0075】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0076】
[比較例2]
上記バージンポリエステルのペレットのみを使用し、溶融温度を305℃としたこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0077】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0078】
[比較例3]
50質量部の上記リサイクルポリエステルのペレット及び50質量部の上記バージンポリエステルのペレットのみを使用し、溶融温度を305℃としたこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0079】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0080】
[比較例4]
70質量部の上記リサイクルポリエステルのペレット及び30質量部の上記バージンポリエステルのペレットのみを使用し、溶融温度を305℃としたこと以外は、実施例1と同等にしてプリフォームを作製した。
【0081】
次いで、実施例1と同様にして、上記プリフォームから容器を作製した。
【0082】
<<バージンポリエステルの含有量>>
上記実施例及び比較例において作製した容器について、バージンポリエステルの含有量を表1に示す。
【0083】
<<座屈強度の測定>>
上記実施例及び比較例において作製した容器について、それぞれ内容液(水)を500ml充填した後、キャップにより密栓した。各容器の正立した状態での座屈強度試験を行った。座屈強度の測定には、(株)エビック製のトップロードテスター(座屈試験装置) EH-1000を使用した。口部の上から一定速度で荷重が加えられ、いわゆる降伏の状態となる最大荷重を座屈強度とした。測定結果を表1に示す。
【0084】
<<色彩の測定>>
上記実施例及び比較例において作製したポリエステル容器の口部のみを細かく切断した試料を、凍結粉砕機(SPEX社製、6870型 Freezer/Mill)を用いて液体窒素下で10分間予備冷却後、液体窒素下で10分間凍結粉砕して粉末を得た。次いで、この粉末を、分光色彩計((株)村上色彩技術研究所製、CMS-35SP)を使用して、反射光で、L表色系におけるL値、a値及びb値を測定した。測定条件は、SCE(正反射光除去)、10°視野、D65光源とした。なお、測定は、JIS Z8722:2009に準拠して行った。測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例1~4の容器は、バージンポリエステルのみを使用した比較例2の容器と比較して、CO排出削減性に優れる。
実施例1~4の容器は、リサイクルポリエステルのみを使用した比較例1の容器と比較して、座屈強度の低下が抑制されている。
実施例1及び3の容器は、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルのみを使用した比較例3の容器と比較して、黄色を表すb値が小さいため、黄変が抑制されている。また、実施例2及び4の容器は、リサイクルポリエステル及びバージンポリエステルのみを使用した比較例4の容器と比較して、黄色を表すb値が小さいため、黄変が抑制されている。
【符号の説明】
【0087】
10:容器
11:口部
12:首部
13:肩部
14:胴部
15:底部
16:ネジ部
17:カブラ
18:サポートリング
19:陥没部
20:接地部
21:パネル部
30:プリフォーム
31:口部
32:胴部
33:底部
34:ネジ部
35:カブラ
36:サポートリング
図1
図2