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特開2022-187894非アルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187894
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】非アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20221213BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20221213BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20221213BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20221213BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 H
A23L2/00 L
A23L2/00 T
A23L2/02 A
A23L2/54 101
A23L2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096116
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 深保子
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良子
(72)【発明者】
【氏名】安部 杏香
(72)【発明者】
【氏名】須藤 僚也
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LG05
4B117LK04
4B117LK08
4B117LK12
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸びが向上した非アルコール飲料およびその製造方法の提供。
【解決手段】果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料であって、濁度が50NTU以上であり、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和が19%以上である、非アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料であって、
濁度が50NTU以上であり、
全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和が19%以上である、
非アルコール飲料。
【請求項2】
アルコール濃度が0.005v/v%未満である、請求項1に記載の非アルコール飲料。
【請求項3】
前記炭酸ガスの圧力が0.07MPa以上である、請求項1または2に記載の非アルコール飲料。
【請求項4】
前記果汁の含有量が10w/w%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非アルコール飲料。
【請求項5】
前記香料がアルコールを含有しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の非アルコール飲料。
【請求項6】
ノンアルコールワインである、請求項1~5のいずれか一項に記載の非アルコール飲料。
【請求項7】
ノンアルコールサングリアである、請求項1~5のいずれか一項に記載の非アルコール飲料。
【請求項8】
容器詰め飲料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非アルコール飲料。
【請求項9】
果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料を製造する方法であって、
(a)前記非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程、および
(b)全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程
を含む、方法。
【請求項10】
前記非アルコール飲料のアルコール濃度が0.005v/v%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記炭酸ガスの圧力を0.07MPa以上に調整する工程をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記果汁の含有量を10w/w%以上に調整する工程をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非アルコール飲料の香味を向上させる方法であって、
(a)前記非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程、および
(b)全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程
を含み、
前記非アルコール飲料が、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する、方法。
【請求項14】
前記非アルコール飲料のアルコール濃度が0.005v/v%未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炭酸ガスの圧力を0.07MPa以上に調整する工程をさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記果汁の含有量を10w/w%以上に調整する工程をさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味が向上した非アルコール飲料およびその製造方法に関する。
【0002】
近年、様々な状況において、アルコールは飲めないがアルコールを飲む雰囲気を味わいたいという需要が拡大している。そのような需要に応えて、アルコールをまったく摂取することなくアルコール飲料と同等の嗜好性を持つ飲料の開発が行われており、今日では、ノンアルコール飲料が一つの大きな市場を形成している。そして、中でも、アルコール度数0.00%(v/v)のノンアルコール飲料の市場が特に拡大している。
【0003】
従来、非アルコール飲料としては、ノンアルコールビール(ビールテイスト飲料)が主流であったが、現在ではノンアルコール酎ハイ、ノンアルコールワイン、ノンアルコールカクテル等の果実の一部や果汁、その加工物を含むノンアルコール飲料が市販されている(例えば、特許文献1および2)。このような非アルコール飲料の中でも、とりわけノンアルコールワインやノンアルコールカクテルについては「特別感」や「ぜいたく感」が求める消費者が多い傾向があった。
【0004】
一方で、アルコールには果汁や香料に由来する香気を向上させる作用があることから、非アルコール飲料においては、果汁や香料が含まれていたとしてもそれらの香気が十分に感じられないことがある。そのため、ノンアルコールワインやノンアルコールカクテル等では、消費者が期待する「特別感」や「ぜいたく感」等が十分に満たされない場合があった。
【0005】
また、ノンアルコール飲料とは通常区別される清涼飲料水(例えば、果汁飲料等)でも、香料を配合することによってその香気を向上させることが一般的に行われている。香料を用いる場合、その香気を十分に発揮するために、アルコールを含有する香料を用いることが多い。しかしながら、清涼飲料水では、そのアルコールの含有量を極力低減するために、アルコールを含有する香料の使用が避けられる場合がある。そのような場合には、香料を含有していても、その香気が十分に発揮されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-276468号公報
【特許文献2】特開2017-108743号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料において、その濁度、および含まれる粒子の径の度数分布を特定の範囲に調整することにより、非アルコール飲料の香り、具体的には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸びのそれぞれが向上することを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明は、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料であって、口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸びが向上した非アルコール飲料およびその製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料であって、
濁度が50NTU以上であり、
全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和が19%以上である、
非アルコール飲料。
[2]アルコール濃度が0.005v/v%未満である、[1]に記載の非アルコール飲料。
[3]前記炭酸ガスの圧力が0.07MPa以上である、[1]または[2]に記載の非アルコール飲料。
[4]前記果汁の含有量が10w/w%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の非アルコール飲料。
[5]前記香料がアルコールを含有しない、[1]~[4]のいずれかに記載の非アルコール飲料。
[6]ノンアルコールワインである、[1]~[5]のいずれかに記載の非アルコール飲料。
[7]ノンアルコールサングリアである、[1]~[5]のいずれかに記載の非アルコール飲料。
[8]容器詰め飲料である、[1]~[7]のいずれかに記載の非アルコール飲料。
[9]果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料を製造する方法であって、
(a)前記非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程、および
(b)全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程
を含む、方法。
[10]前記非アルコール飲料のアルコール濃度が0.005v/v%未満である、[9]に記載の方法。
[11]前記炭酸ガスの圧力を0.07MPa以上に調整する工程をさらに含む、[9]または[10]に記載の方法。
[12]前記果汁の含有量を10w/w%以上に調整する工程をさらに含む、[9]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]非アルコール飲料の香味を向上させる方法であって、
(a)前記非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程、および
(b)全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程
を含み、
前記非アルコール飲料が、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する、方法。
[14]前記非アルコール飲料のアルコール濃度が0.005v/v%未満である、[13]に記載の方法。
[15]前記炭酸ガスの圧力を0.07MPa以上に調整する工程をさらに含む、[13]または[14]に記載の方法。
[16]前記果汁の含有量を10w/w%以上に調整する工程をさらに含む、[13]~[15]のいずれかに記載の方法。
【0010】
本発明によれば、非アルコール飲料において、その非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸びを向上させることができる。
【0011】
[非アルコール飲料]
本発明の一つの態様によれば、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料であって、その濁度、および含まれる粒子の径の度数分布(粒度分布)がそれぞれ特定の範囲に調整された非アルコール飲料(以下、「本発明の非アルコール飲料」ともいう)が提供される。本発明の非アルコール飲料は、口に含む前に感じる香気、および口に含んだ後に感じる香気、味の伸びがそれぞれ向上しているものである。なお、本明細書において、特段の言及がない限り「アルコール」とは「エタノール」を意味する。
【0012】
口に含む前および後のそれぞれの香気のうち、口に含む前の香気は、「オルソネーザル(orthonasal)香気」や「立ち香」等と呼ばれるものであり、非アルコール飲料を口に含む際に鼻先から入ってくる香りを意味する。一方、口に含んだ後の香気は、「レトロネーザル(retronasal)香気」や「あと香」、「戻り香」等と呼ばれるものであり、非アルコール飲料を口に含んだ後に鼻に抜けていく香りを意味する。本発明の非アルコール飲料では、これらの香気の両方が向上している。
【0013】
味の伸びとは、非アルコール飲料を口に含んだ後の味の持続性を意味する。
【0014】
本発明の非アルコール飲料は、果汁を含有する。本発明において「果汁」とは、果実から得られる果汁そのものだけでなく、果汁の加工物も包含される。果汁の加工物としては、飲料に通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、果汁の発酵物、抽出物、遠心分離沈殿物、遠心分離上清、濾過液、濾過残渣、凍結乾燥物、濃縮物、粉末等が挙げられる。果汁および果汁の加工物は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組わせて使用してもよい。
【0015】
本発明の非アルコール飲料において、果汁の種類は特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁(オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、ミカン果汁、ユズ果汁、カボス果汁、イヨカン果汁、カシス果汁等)、マンゴー果汁、リンゴ果汁、洋ナシ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、アセロラ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁、ライチ果汁等)、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁、レッドラズベリー果汁、モモ果汁、スイカ果汁、イチゴ果汁、メロン果汁、およびその他の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、キウイフルーツ果汁、サクランボ果汁、クリ果汁等)等が挙げられる。一つの実施形態において、果汁としては、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁、マンゴー果汁、リンゴ果汁、洋ナシ果汁、パイナップル果汁、ブドウ果汁が単独で、または組み合わせて使用される。
【0016】
果汁としては、混濁果汁および透明果汁のいずれも使用することができ、混濁果汁と透明果汁の混合物を使用することもできる。
【0017】
果汁としては、ストレート果汁および濃縮還元果汁のいずれも使用することができ、ストレート果汁および濃縮果汁の混合物を使用することもできる。
【0018】
果汁の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、果汁の種類や濁度、他の成分の種類や含有量、目的とする非アルコール性飲料の種類や求められる特性(例えば、味、香り、外観、食感等)に応じて適宜設定することができる。また、果汁の含有量は、後述する非アルコール飲料の濁度との関係で適宜設定することができる。具体的には、果汁の含有量としては、非アルコール性飲料に対して10w/w%以上とすることができ、より具体的には、10~30w/w%、10~25w/w%、10~20w/w%等とすることができる。なお、果汁として濃縮還元果汁を使用する場合、果汁の含有量は、ストレート換算した場合の果汁の含有量を意味する。
【0019】
本発明の非アルコール飲料は、炭酸ガスを含有する。炭酸ガスの圧力は、他の成分の種類や含有量、目的とする非アルコール性飲料の種類や求められる特性に応じて適宜設定することができる。具体的には、炭酸ガスの圧力は0.07MPa以上とすることができ、好ましくは0.1MPa以上である。炭酸ガスの圧力の範囲としては、好ましくは0.07~1MPa、より好ましくは0.1~0.8MPa、より一層好ましくは0.2~0.5MPaである。なお、非アルコール飲料における炭酸ガスの圧力は、20℃における圧力を意味する。
【0020】
非アルコール飲料の炭酸ガスの圧力は、ガスボリューム測定装置を用いて測定することができる。
【0021】
本発明の非アルコール飲料は、香料を含有する。香料としては、食品衛生上使用することができるものであれば特に限定されず、天然香料、合成香料、およびこれらを調合して得られる調合香料のいずれも使用することができる。香料は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
天然香料とは、日本国の食品衛生法に規定される「動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物」を意味する。天然香料に使用される動植物としては、具体的には、日本国の厚生労働省により定められる「天然香料基原物質リスト」に示されるものが挙げられる。一つの実施形態において、天然香料基原物質としては、オレンジ、グレープフルーツ、マンゴー、リンゴ、ナシ(洋ナシ)、パイナップル、ブドウ、レモン、モモ等が使用される。
【0023】
合成香料とは、人工的に精製・製造して得られる香料を意味する。合成香料としては、天然物から上述した天然香料に含有される成分を蒸留法、晶析法、化学処理法等の方法によって取り出すことにより得られる単離香料と、天然香料の成分を分析してそれと同一または類似する化合物を化学的に合成することにより得られる全合成香料、半合成香料および生合成香料とが挙げられる。合成香料としては、具体的には、日本国の「食品衛生法施行規則 別表第1」に定められる各種品目および類に示されるものが挙げられる。より具体的には、合成香料としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、窒素含有化合物類、硫黄含有化合物類等から選択される化合物、またはこれらの化合物の二種以上を任意の割合で混合した混合物が挙げられる。
【0024】
調合香料とは、上述した天然香料および/または合成香料を適宜選択して混合することにより得られる香料を意味する。
【0025】
一つの実施形態において、香料としては、オレンジ、グレープフルーツ、マンゴー、リンゴ、洋ナシ、パイナップル、ブドウ、レモン、モモ等の果汁に含まれる香気成分を含む香料、および/またはそれらの果汁を想起される香気成分を含む香料、またはそのような香料の組み合わせが使用される。
【0026】
香料としては、アルコールを含有する香料が存在するが、本発明の非アルコール飲料においては、アルコールを含有する香料およびアルコールを含有しない香料のいずれも使用することができる。一つの実施形態において、香料としては、アルコールを含有しない香料が使用される。
【0027】
香料としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、水溶性香料、油溶性香料、乳化香料、粉末香料等の形態の香料を使用することができる。
【0028】
香料の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、香料の種類、他の成分の種類や含有量、目的とする非アルコール性飲料の種類や求められる特性に応じて適宜設定することができる。具体的には、香料の含有量としては、非アルコール性飲料に対して、例えば、0.005~0.5w/w%、0.05~0.3w/w%、0.1~0.2w/w%等とすることができる。
【0029】
本発明の非アルコール飲料は、上記の各成分に加えて、非アルコール飲料の製造に通常用いられる各種任意成分をさらに含有してもよい。このような任意成分としては、食品衛生上使用することができ、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、乳、発酵乳、糖類(果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、グラニュー糖、多糖類、オリゴ糖類等)、甘味料(例えば、糖アルコール、高甘味度甘味料、ハチミツ等)、酸味料(例えば、リン酸、クエン酸、無水クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、フマル酸、酢酸、これらの塩類等)、着色料、食品添加物(例えば、気泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)、エキス類、茶類、コーヒー類等が挙げられる。これらの任意成分は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの任意成分の含有量は、使用される任意成分の種類、他の成分の種類や含有量、目的とする非アルコール性飲料の種類や特性に応じて適宜設定することができる。
【0030】
本発明の非アルコール飲料においては、濁度が50NTU以上の範囲に調整される。濁度は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、100NTU以上、300NTU以上、500NTU以上等とすることができる。一方、濁度の上限は特に限定されないが、例えば、15000NTU以下、10000NTU以下、8000NTU以下等とすることができる。なお、濁度の単位「NTU」とは、比濁法濁度単位(Nephelometric Turbidity Unit)を意味する。
【0031】
一つの実施形態において、非アルコール飲料の濁度は、非アルコール飲料に含まれる果汁の種類や含有量を調節することによって適宜調整することができる。具体的には、非アルコール飲料の濁度は、混濁果汁および/または透明果汁を使用して調整される。混濁果汁および透明果汁のいずれも非アルコール飲料の果汁含有量を増大させることから、非アルコール飲料の濁度を増大させつつ、その果汁含有量をも増大させる場合、果汁として混濁果汁が使用される。一方で、非アルコール飲料の濁度の増大を抑制しつつ、その果汁含有量を増大させる場合には、果汁として透明果汁が使用される。したがって、目的とする非アルコール飲料の濁度および果汁含有量に応じて、混濁果汁および透明果汁をそれぞれ単独、または組み合わせて使用することができる。また、混濁果汁および透明果汁は、それぞれ他の果汁および/または果汁加工物と組み合わせて使用してもよい。
【0032】
別の実施形態において、非アルコール飲料の濁度は、非アルコール飲料に含まれる果汁や果汁加工物の種類や含有量を調節することによって適宜調整することができる。具体的には、非アルコール飲料の濁度は、遠心分離沈殿物、遠心分離上清、濾過液および/または濾過残渣を使用して調整される。果汁の遠心分離沈殿物および濾過残渣はそれぞれ非アルコール飲料の果汁含有量の増大を抑制しつつ、非アルコール飲料の濁度を増大させる。一方で、果汁の遠心分離上清および濾過液はそれぞれ非アルコール飲料の果汁含有量を増大させつつ、非アルコール飲料の濁度をも増大させる。したがって、目的とする非アルコール飲料の濁度および果汁含有量に応じて、遠心分離沈殿物、遠心分離上清、濾過液および濾過残渣をそれぞれ単独、または組み合わせて使用することができる。また、遠心分離沈殿物、遠心分離上清、濾過液および濾過残渣は、それぞれ他の果汁加工物および/または果汁と組み合わせて使用してもよい。
【0033】
非アルコール飲料において、上述した果汁や果汁加工物の他に、例えば、乳、発酵乳、乳化香料、乳化剤、乳酸菌、茶類、コーヒー類等の含有量を調節することによって、非アルコール飲料の濁度を調整してもよい。
【0034】
非アルコール飲料の濁度は、例えば、濁度測定装置(HACH社製、卓上濁度計2100AN)を用いて、透過光・散乱光演算方式に基づいて測定することができる。
【0035】
本発明の非アルコール飲料においては、非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の度数分布(粒度分布)が特定の範囲に調整される。具体的には、非アルコール飲料に含まれる全粒子の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和が19%以上に調整される。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、25%以上、30%以上、40%以上等とすることができる。一方、上記粒径の度数分布の上限は特に限定されないが、例えば、90%以下、80%以下等とすることができる。
【0036】
一つの実施形態において、非アルコール飲料は、全粒子の粒径の度数分布が上記の範囲を満たしつつ、さらに、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が10~100μmである粒子の相対度数の和が55%以下に調整される。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、50%以下、45%以下、40%以下等とすることができる。一方、上記粒径の度数分布の下限は特に限定されないが、例えば、1%以上、5%以上%等とすることができる。
【0037】
非アルコール飲料における上記粒径の度数分布は、非アルコール飲料に含まれる上記各成分の種類や含有量を調節することによって適宜調整することができる。具体的には、非アルコール飲料に含まれる果汁や果汁加工物の含有量を調節することによって、非アルコール飲料における上記粒径の度数分布を調整することができる。例えば、非アルコール飲料に含まれる果汁の組成(例えば、混濁果汁と透明果汁との割合)を調整したり、果汁を濾過または遠心処理して得られる果汁加工物を使用したり、乳、発酵乳、乳化香料、乳化剤、乳酸菌、茶類、コーヒー類を添加したりすることにより調整することができる。
【0038】
非アルコール飲料における上記粒径の度数分布は、例えば、レーザ回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD-2300)を用いて、レーザー回折・散乱法により測定することができる。なお、粒径の度数分布の測定は、回分セルを用いた場合は粒径が0.017~400μmである粒子について行われる。
【0039】
本発明の非アルコール飲料は、アルコール分一度未満の飲料である。すなわち、本発明の非アルコール飲料は、日本国の酒税法により定義される「アルコール分一度以上の飲料」を包含するものではない。なお、日本国の酒税法に定義されている通り、「アルコール分」とは、温度15℃における原容量百分中に含有されるエチルアルコールの容量をいう。また、アルコールの「度」(度数)とは、飲料に対するアルコール(エタノール)の体積濃度を百分率(%)で表した割合(v/v%)である。
【0040】
一つの実施形態において、本発明の非アルコール飲料においては、アルコール(エタノール)の含有量が、非アルコール飲料に対して0.005v/v%未満の範囲に調整される。すなわち、本実施形態において、本発明の非アルコール飲料には、商品の表示上「アルコール度数0.00%」が謳われる非アルコール飲料が包含される。アルコールの含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、非アルコール飲料に対して0.0025v/v%以下、0.001v/v%以下、0.0005v/v%以下等とすることができる。
【0041】
非アルコール飲料におけるアルコールの含有量は、アルコール(エタノール)そのもの(例えば、原料アルコール)を非アルコール飲料に添加することによって調整してもよく、また、非アルコール飲料において、アルコールを含有する原料、非アルコール飲料の製造過程においてアルコールを生成する原料等の含有量を増減させることによって調整してもよい。すなわち、上述した各成分がアルコールを含有する場合、上述した非アルコール飲料におけるアルコール含有量には、そのような各成分に含有されるアルコール量が加味される。アルコールを含有する原料としては、特に限定されないが、例えば、上述した果汁の発酵物、香料等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
非アルコール飲料におけるアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフ法を用いて測定される。
【0043】
本発明の非アルコール飲料は、アルコール分一度未満の飲料であることから、日本国の酒税法において「アルコール分一度以上の飲料」と定義される酒類に含まれるものではない。本発明の非アルコール飲料には、いわゆる「ノンアルコール飲料」だけでなく、「清涼飲料水」も包含される。
【0044】
非アルコール飲料の種類としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、各種の清涼飲料水、ビール、ワイン、スパークリングワイン、サングリア、カクテル、酎ハイ、日本酒、焼酎、梅酒等の各種アルコール飲料の味や風味が感じられる非アルコール飲料等が挙げられる。一つの実施形態において、非アルコール飲料は、ノンアルコールワイン、ノンアルコールサングリアである。
【0045】
一つの実施形態において、非アルコール飲料は、容器詰め飲料の形態とされる。非アルコール飲料を詰める容器は、通常飲料を詰める容器として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ビン、缶、ペットボトル、紙容器等が挙げられる。
【0046】
[非アルコール飲料の製造方法]
本発明の別の態様によれば、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料を製造する方法であって、非アルコール飲料の濁度を特定の範囲に調整する工程(工程(a))、および非アルコール飲料に含まれる粒子の径の度数分布を特定の範囲に調整する工程(工程(b))を含む方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)が提供される。本発明の製造方法により得られる非アルコール飲料は、口に含む前に感じる香気、および口に含んだ後に感じる香気、味の伸びが向上しているものである。以下、本発明の製造方法について説明する。
【0047】
非アルコール飲料に配合する果汁、炭酸ガスおよび香料は、それぞれ上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0048】
本発明の製造方法は、得られる非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程(a)を含む。濁度は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、濁度は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。また、濁度の調整方法についても、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0049】
本発明の製造方法は、得られる非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の体積基準の度数分布(粒度分布)において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程(b)を含む。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、この粒径の度数分布は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。
【0050】
一つの実施形態において、本発明の製造方法は、得られる非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の度数分布が上記の範囲を満たしつつ、さらに、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が10~100μmである粒子の相対度数の和を55%以下に調整する工程をさらに含む。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、この粒径の度数分布は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。
【0051】
粒径の度数分布の調整方法は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0052】
本発明の製造方法により得られる非アルコール飲料は、アルコール分一度未満の飲料である。一つの実施形態において、本発明の製造方法により得られる非アルコール飲料においては、アルコールの含有量が、非アルコール飲料に対して0.005v/v%未満の範囲に調整される。非アルコール飲料におけるアルコールの含有量は、上述した範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、アルコールの含有量は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。また、アルコールの含有量の調整方法についても、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0053】
本発明の製造方法により得られる非アルコール飲料の種類は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0054】
一つの実施形態において、本発明の製造方法により得られる非アルコール飲料は、容器詰めの形態の飲料とすることができる。非アルコール飲料が充填される容器は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0055】
[非アルコール飲料の香味を向上させる方法]
本発明の別の態様によれば、非アルコール飲料の香味を向上させる方法であって、非アルコール飲料の濁度を特定の範囲に調整する工程(工程(a))、および非アルコール飲料に含まれる粒子の径の度数分布を特定の範囲に調整する工程(工程(b))を含む方法(以下、「本発明の方法」ともいう。)が提供される。本発明の方法によれば、非アルコール飲料において、口に含む前に感じる香気、および口に含んだ後に感じる香気、味の伸びを向上させることができる。以下、本発明の方法について説明する。
【0056】
本発明の方法の対象となる非アルコール飲料は、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する。果汁、炭酸ガスおよび香料は、それぞれ上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0057】
本発明の方法は、本発明の方法の対象となる非アルコール飲料の濁度を50NTU以上に調整する工程(a)を含む。濁度は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、濁度は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。また、濁度の調整方法についても、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0058】
本発明の方法は、本発明の対象となる非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の体積基準の度数分布(粒度分布)において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和を19%以上に調整する工程(b)を含む。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、この粒径の度数分布は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。
【0059】
一つの実施形態において、本発明の方法は、本発明の対象となる非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の度数分布が上記の範囲を満たしつつ、さらに、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が10~100μmである粒子の相対度数の和を55%以下に調整する工程をさらに含む。この粒径の度数分布は、該範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、この粒径の度数分布は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。
【0060】
粒径の度数分布の調整方法は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0061】
本発明の方法の対象となる非アルコール飲料は、アルコール分一度未満の飲料である。一つの実施形態において、本発明の方法の対象となる非アルコール飲料においては、アルコールの含有量が、非アルコール飲料に対して0.005v/v%未満の範囲に調整される。非アルコール飲料におけるアルコールの含有量は、上述した範囲を満たし、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、アルコールの含有量は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様の範囲に調整することができる。また、アルコールの含有量の調整方法についても、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0062】
本発明の方法の対象となる非アルコール飲料の種類は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【0063】
一つの実施形態において、本発明の方法の対象となる非アルコール飲料は、容器詰めの形態の飲料とすることができる。非アルコール飲料が充填される容器は、上述した本発明の非アルコール飲料について説明したのと同様とすることができる。
【実施例0064】
以下の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例において用いられる果汁はいずれも濃縮果汁であり、各表中に示す果汁の配合量はいずれもストレート換算した値である。また、実施例において「粒度分布」とは、特に言及がない限り「全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和」を意味する。
【0066】
実施例において、非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布は、それぞれ以下の方法により測定した。
【0067】
非アルコール飲料のpHは、pHメーター(東亜ディーケーケー社製、HM-30R)を用いて測定した。なお、非アルコール飲料が炭酸ガスを含有する場合には、撹拌子を用いて30分程度回転撹拌して非アルコール飲料から炭酸ガスを除去した後に測定した。
【0068】
非アルコール飲料のアルコール含有量は、ガスクロマトグラフ装置(株式会社島津製作所社製、GC-2014)を用いて、ガスクロマトグラフ法により測定した。
【0069】
非アルコール飲料の濁度は、濁度測定装置(HACH社製、卓上濁度計2100AN)を用いて、透過光・散乱光演算方式に基づいて測定した。測定は、濁度測定装置のキャリブレーション後に行った。なお、非アルコール飲料が炭酸ガスを含有する場合には、撹拌子を用いて30分程度回転撹拌して非アルコール飲料から炭酸ガスを除去した後に測定した。
【0070】
非アルコール飲料の粒度分布は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD-2300)を用いて、レーザー回折・散乱法により測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。まず、各非アルコール飲料を試験用ふるい(140メッシュ)を用いて濾過した。なお、非アルコール飲料が炭酸ガスを含有する場合には、撹拌子を用いて30分程度回転撹拌して非アルコール飲料から炭酸ガスを除去した後に試験用ふるいを用いて濾過した。次いで、得られた各非アルコール飲料の濾過液を、回分セルを用いて、光強度分布の最大値が30~45%の範囲となるように適宜水で希釈した。屈折率を1.60-0.20iに設定された各非アルコール飲料の濾過液に含まれる粒子の粒度分布として、粒径5~30μmの範囲の粒子の体積基準の頻度(%)の積算を算出した。なお、非アルコール飲料の濾過液を希釈せずに測定した場合に、光強度分布の最大値が10%未満となる等、安定して測定を行うことができない非アルコール飲料については、強度不足とした。
【0071】
実施例1:濁度の検討1
非アルコール飲料の濁度と、非アルコール飲料の香味(非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸び)との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(混濁マンゴー果汁および透明マンゴー果汁)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)および香料(アルコール不含有香料)をそれぞれ準備した。下記表1に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区1-1~1-5の各非アルコール飲料を調製した。
【0072】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。
【0073】
各試験区の非アルコール飲料の立ち香を、よく訓練され、非アルコール飲料の評価に熟練した5名のパネルにより以下の基準に基づき評価した。
スコア5:立ち香が弱く感じられる。
スコア4:立ち香がやや弱く感じられる。
スコア3:立ち香がある程度感じられる。
スコア2:立ち香がやや強く感じられる。
スコア1:立ち香が十分に強く感じられる。
【0074】
また、各試験区の非アルコール飲料の戻り香および味の伸びを、よく訓練され、非アルコール飲料の評価に熟練した5名のパネルにより以下の基準に基づき評価した。
スコア5:戻り香および味の伸びが弱く感じられる。
スコア4:戻り香および味の伸びがやや弱く感じられる。
スコア3:戻り香および味の伸びがある程度感じられる。
スコア2:戻り香および味の伸びがやや強く感じられる。
スコア1:戻り香および味の伸びが十分に強く感じられる。
【0075】
各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表1に示す。なお、各官能評価試験の結果は、5名のパネルの平均スコアとした。
【表1】
【0076】
表1の結果から、非アルコール飲料の濁度が50NTU以上である場合(試験区1-4および1-5)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ一定以上の強さで感じられることが示された。
【0077】
実施例2:濁度の検討2
非アルコール飲料の濁度と、非アルコール飲料の香味との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(リンゴ果汁上清およびリンゴ果汁沈殿物)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)および香料(アルコール不含有香料)をそれぞれ準備した。下記表2に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区2-1~2-5の各非アルコール飲料を調製した。なお、リンゴ果汁上清および沈殿物に関しては、リンゴ濃縮混濁果汁をストレート倍率に希釈し、8500rpmで1.5時間遠心分離を行い、得られた上清をリンゴ果汁上清、得られた沈殿物をリンゴ果汁沈殿物とした。
【0078】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2の結果から、非アルコール飲料の濁度が50NTU以上である場合(試験区2-4および2-5)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ一定以上の強さで感じられることが示された。
【0081】
実施例3:炭酸ガスの含有量(圧力)の検討
非アルコール飲料の炭酸ガスの含有量(圧力)と、非アルコール飲料の香味との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(混濁グレープフルーツ果汁)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)および香料(アルコール不含有香料)をそれぞれ準備した。下記表3に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区3-1~3-4の各非アルコール飲料を調製した。
【0082】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
表3の結果から、非アルコール飲料が炭酸ガスを含有する場合(試験区3-2~3-4)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ一定以上の強さで感じられることが示された。特に、炭酸ガスの含有量が0.2MPa以上である場合(試験区3-3および3-4)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ強く感じられることが示された。
【0085】
実施例4:濁度、粒度分布および炭酸ガスの含有量(圧力)の検討1
非アルコール飲料の濁度、粒度分布および炭酸ガスの含有量(圧力)と、非アルコール飲料の香味との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(混濁マンゴー果汁、透明マンゴー果汁、混濁リンゴ果汁および透明リンゴ果汁)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)および香料(アルコール不含有香料)をそれぞれ準備した。下記表4に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区4-1~4-16の各非アルコール飲料を調製した。
【0086】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果から、非アルコール飲料が炭酸ガスを含み、濁度が50NTU以上であり、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和(粒度分布)が19%以上である場合(試験区4-4、4-8、4-12、4-14および4-16)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ一定以上の強さで感じられることが示された。
【0089】
実施例5:濁度、粒度分布および炭酸ガスの含有量(圧力)の検討2
非アルコール飲料の濁度、粒度分布および炭酸ガスの含有量(圧力)と、非アルコール飲料の香味との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(混濁グレープフルーツ果汁および透明グレープフルーツ果汁)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)、原料アルコール、および香料(アルコール不含有香料およびアルコール含有香料)をそれぞれ準備した。下記表5に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区5-1~5-4の各非アルコール飲料を調製した。
【0090】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表5の結果から、非アルコール飲料が炭酸ガスを含み、濁度が50NTU以上であり、全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和(粒度分布)が19%以上である場合(試験区5-4)には、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが、それぞれ一定以上の強さで感じられることが示された。
【0093】
実施例6:粒度分布の検討
非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和(粒度分布)と、非アルコール飲料の香味との関連について、以下の手順に従って検討した。
まず、果汁(リンゴ果汁濾過液および透明リンゴ果汁)、糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム二水塩)および香料(アルコール不含有香料)をそれぞれ準備した。下記表6に示す組成および炭酸ガス圧となるように、各原料を混合し、水および炭酸水で希釈して、試験区6-1非アルコール飲料を調製した。なお、リンゴ果汁濾過液に関しては、リンゴ濃縮混濁果汁をストレート倍率に希釈して希釈果汁を得、定性濾紙#2(ADVANTEC社製)を用いてブフナー漏斗により希釈果汁を減圧濾過して濾液を得、さらに定性濾紙#1(Whatman社製)を用いてブフナー漏斗により濾液を減圧濾過して濾液をリンゴ果汁濾過液とした。
【0094】
得られた各試験区の非アルコール飲料について、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布をそれぞれ測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料のpH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
表6の結果から、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有し、濁度が50NTU以上である非アルコール飲料であっても、非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和(粒度分布)が19%未満である場合(試験区6-1)には、非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが十分に感じられないことが示された。
【0097】
実施例7:市販品の評価
果汁、炭酸ガスおよび香料を含有する非アルコール飲料の市販品A(試験区7-1)、および市販品Aから炭酸ガスを除去した非アルコール飲料(試験区7-2)のそれぞれについて、炭酸ガス圧、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布を測定した。次いで、各試験区の非アルコール飲料を、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)、および非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びのそれぞれについての官能評価試験に供した。官能評価試験は、実施例1と同様の方法により行った。各試験区の非アルコール飲料の炭酸ガス圧、pH、アルコール含有量、濁度および粒度分布、ならびに各官能評価試験の結果を表7に示す。なお、市販品Aからの炭酸ガスの除去は、撹拌子を用いて市販品Aを回転撹拌することにより行った。また、各試験区の非アルコール飲料の炭酸ガスの圧力は、ガスボリューム測定装置(京都電子工業株式会社製、GVA-500B)を用いて測定した。
【0098】
【表7】
【0099】
表7の結果から、果汁、炭酸ガスおよび香料を含有し、濁度が50NTU以上である非アルコール飲料であっても、非アルコール飲料に含まれる全粒子の粒径の体積基準の度数分布において、粒径が5~30μmである粒子の相対度数の和(粒度分布)が19%未満である場合(試験区7-1)には、非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びが十分に感じられないことが示された。また、試験区7-1の非アルコール飲料から炭酸ガスを除去した試験区7-2の非アルコール飲料では、非アルコール飲料を口に含んだ後の香気(戻り香)、味の伸びに加え、非アルコール飲料を口に含む前に感じる香気(立ち香)も十分に感じられないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、非アルコール飲料において、口に含む前に感じる香気、および非アルコール飲料を口に含んだ後に感じる香気、味の伸びを向上させることができる。