(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187895
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20221213BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221213BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M4/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096117
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】小田 修
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ヴァン・ノン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ラジ・デニス・クリスティ
(72)【発明者】
【氏名】ゴドゥケ・スワプニル・チェタン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB16
5H017BB19
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE01
5H017HH00
5H017HH03
5H017HH04
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA07
5H050FA15
5H050GA24
5H050GA29
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】 リチウム金属のデンドライト成長を抑制するとともに十分な重量エネルギー密度を備えるリチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池を提供することである。
【解決手段】 リチウムイオン二次電池LiB1の負極NEは、第1面N1aを有する負極集電体N1を有する。負極集電体N1は、第1面N1aに複数の突起部PR1を有する。突起部PR1は、リチウムを析出可能な表面を有する。突起部PR1を第1面N1aに射影した射影領域の面積は、10nm
2 以上10000nm
2 以下である。突起部PR1の密度は、1個/μm
2 以上1000個/μm
2 以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する集電体を有するリチウムイオン二次電池の負極において、
前記集電体は、
前記第1面に複数の突起部を有し、
前記突起部は、
リチウムを析出可能な表面を有すること
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の負極において、
前記突起部を前記第1面に射影した射影領域の面積は、
10nm2 以上10000nm2 以下であり、
前記突起部の密度は、
1個/μm2 以上1000個/μm2 以下であること
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の負極において、
前記突起部を前記第1面に射影した射影領域の最大長の平均値は、
10nm以上200nm以下であり、
前記射影領域が占める面積は、
前記第1面の1/10以上であること
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の負極において、
前記突起部は、
前記集電体と同じ材質であるとともに、
前記集電体の前記第1面と融合して前記集電体と一体となっていること
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の負極において、
前記集電体の材質が
銅であること
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の負極において、
炭素材料を有さないこと
を含むリチウムイオン二次電池の負極。
【請求項7】
正極と負極とを有するリチウムイオン二次電池において、
前記負極は、
第1面を有する集電体を有し、
前記集電体は、
前記第1面に複数の突起部を有し、
前記突起部は、
リチウムを析出可能な表面を有すること
を含むリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
水素ガスを含むガスをプラズマ化して集電体に供給し、
前記集電体の第1面の上に前記集電体と同じ材質からなる複数の突起部を形成すること
を含むリチウムイオン二次電池の負極の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のリチウムイオン二次電池の負極の製造方法において、
前記突起部は、
前記集電体と同じ材質であるとともに、
前記集電体の前記第1面と融合させたものであること
を含むリチウムイオン二次電池の負極の製造方法。
【請求項10】
水素ガスを含むガスをプラズマ化するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室でプラズマ化されたガスを前記集電体に供給するとともに、前記集電体の第1面の上に前記集電体と同じ材質からなる複数の突起部を形成する反応室と、
を含むリチウムイオン二次電池の負極の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載のリチウムイオン二次電池の負極の製造装置において、
前記反応室は、
前記集電体と同じ材質であるとともに、前記集電体の前記第1面と融合して前記集電体と一体となっている前記突起部を形成すること
を含むリチウムイオン二次電池の負極の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、リチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な蓄電デバイスとして例えば、二次電池、電気二重層キャパシタ等が挙げられる。また、リチウムイオンを利用する蓄電デバイスとして、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、正極と負極とセパレータと非水電解液とを有するリチウムイオン二次電池が開示されている。正極活物質としてコバルト酸リチウムまたはニッケル酸リチウムを用い、負極活物質としてカーボンを用いる技術が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲および実施例)。カーボン材料としてグラファイト(黒鉛)が用いられることが多い。グラファイトは、六員環の炭素原子6個あたり1個のリチウムイオンを吸蔵または放出することができる。また、特許文献2および特許文献3には、セパレータで微細な区画を形成する構造により、リチウム金属のデンドライト成長を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2668678号公報
【特許文献2】特許第5331627号公報
【特許文献3】WO 2021/049609
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池の重量エネルギー密度を高めるためには、リチウムイオン二次電池の負極材料は、軽量で、かつ、リチウムを大量に吸蔵(もしくは析出)できることが好ましい。
【0006】
しかしながら、現在主流の負極材料であるグラファイトを有するリチウムイオン二次電池を電気自動車に用いる場合には、重量エネルギー密度が不十分である。一方、負極材料としてリチウム金属を有するリチウムイオン二次電池を電気自動車に用いる場合には、重量エネルギー密度を満たすことができる。しかし、この場合には、リチウム金属のデンドライト成長により正極と負極が短絡しやすいという問題点がある。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、リチウム金属のデンドライト成長を抑制するとともに十分な重量エネルギー密度を備えるリチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極は、第1面を有する集電体を有する。集電体は、第1面に複数の突起部を有する。突起部は、リチウムを析出可能な表面を有する。
【0009】
このリチウムイオン二次電池の負極は、突起部を有する。突起部の表面にリチウムが析出することが可能である。さらに、リチウム金属のデンドライト成長を抑制することができる。このため、このリチウムイオン二次電池の負極においては、リチウム金属を大量に析出させても、リチウム金属のデンドライト成長という問題がほとんど生じない。つまり、このリチウムイオン二次電池の負極は、リチウム金属のデンドライト成長を抑制する効果と、十分な重量エネルギー密度と、の両方を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、リチウム金属のデンドライト成長を抑制するとともに十分な重量エネルギー密度を備えるリチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1の概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1の負極NEの断面を模式的に示す図である。
【
図3】第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1における負極を処理する製造装置の構成を示す概略構成図である。
【
図4】銅箔の上に水素ラジカルを照射した後の銅箔の表面を示す走査型電子顕微鏡写真(その1)である。
【
図5】銅箔の上に水素ラジカルを照射した後の銅箔の表面を示す走査型電子顕微鏡写真(その2)である。
【
図6】
図5の線上の凹凸の測定結果を示すグラフである。
【
図7】水素の供給量と突起部の面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図8】水素の供給量と突起部の面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図9】水素の供給量と突起部の面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図10】水素の供給量と突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図11】バイアスの大きさと突起部の面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図12】バイアスの大きさと突起部の面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図13】バイアスの大きさと突起部の面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図14】バイアスの大きさと突起部の個数との関係を示すグラフである。
【
図15】水素プラズマ照射前の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
【
図16】水素プラズマ照射後の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
【
図17】突起部が形成されている銅箔を負極としたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【
図18】突起部が形成されていない銅箔を負極としたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【
図19】充放電を繰り返した後の突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極の断面を示す走査型顕微鏡写真(その1)である。
【
図20】充放電を繰り返した後の突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極の断面を示す走査型顕微鏡写真(その2)である。
【
図21】突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極に析出するリチウムの表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【
図22】酸素プラズマ照射後の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
【
図23】酸素プラズマにより突起部を形成した銅箔を負極とした場合のリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【
図24】酸素プラズマにより突起部を形成した銅箔の成分分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、リチウムイオン二次電池の負極とその製造方法および製造装置ならびにリチウムイオン二次電池を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
1.リチウムイオン二次電池
図1は、第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1の概略構成図である。リチウムイオン二次電池LiB1は、正極PEと、負極NEと、セパレータSp1と、電解液ES1と、容器V1と、を有する。
【0014】
正極PEは、リチウムイオン二次電池LiB1の正極である。正極PEは、正極集電体P1と、正極活物質層P2と、を有する。正極集電体P1の第1面P1aおよび第2面P1bの表面には、正極活物質層P2が形成されている。
【0015】
正極集電体P1は金属基板である。正極集電体P1は、例えば、金属箔である。正極集電体P1の形状はその他の形状であってもよい。正極集電体P1の材質は、例えば、AlまたはTiである。正極集電体P1の材質は、その他の金属などの導電体であってもよい。
【0016】
正極活物質層P2は、正極活物質と、導電助剤と、結着剤と、を含有する。正極活物質層P2は、増粘剤等を含んでいてもよい。正極活物質として例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系が挙げられる。導電助剤として例えば、カーボンブラックが挙げられる。結着剤として例えば、SBRが挙げられる。増粘剤として例えば、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。このように、正極活物質層P2は、リチウム原子を有する。
【0017】
負極NEは、リチウムイオン二次電池LiB1の負極である。負極NEは、負極集電体N1を有する。後述するように、負極NEには、リチウムが析出する。
【0018】
負極集電体N1は金属基板である。負極集電体N1は、例えば、金属箔である。負極集電体N1の形状はその他の形状であってもよい。負極集電体N1の材質は、例えば、Cuである。負極集電体N1は、例えば、銅板または銅箔である。負極集電体N1の材質は、その他の金属などの導電体であってもよい。
【0019】
セパレータSp1は、正極PEと負極NEとを電気的に絶縁するためのものである。セパレータSp1は、電解液ES1中のリチウムイオンを透過させることが可能である。
【0020】
電解液ES1は、正極PEと負極NEとの間でリチウムイオンを伝達する特性を有する。電解液ES1は、容器V1を満たしている。電解液ES1は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )などのリチウム塩をジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などに溶かした液体である。
【0021】
容器V1は、正極PEと負極NEとセパレータSp1と電解液ES1とをその内部に収容する。容器V1は、電解液ES1に対して反応しにくい材質を備えている。
【0022】
2.突起部
図2は、第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1の負極NEの断面を模式的に示す図である。負極集電体N1は、第1面N1aを有する。第1面N1aは、負極集電体N1の一方の表面である。負極集電体N1の第1面N1aの上には複数の突起部PR1が形成されている。この突起部PR1は、リチウムを析出可能な表面を有する。
【0023】
突起部PR1は、負極集電体N1が第1面N1aから部分的に突出している部分である。突起部PR1は1個の粒子GR1から構成されていてもよいし、複数の粒子GR1から構成されていてもよい。この場合、粒子GR1の材質は負極集電体N1の材質と同じであることが好ましい。粒子GR1は、負極集電体N1の第1面N1aと融合して、負極集電体N1と一体になっていることが好ましい。これは、負極集電体N1と粒子GR1との密着性を高め、負極集電体N1から粒子GR1が剥がれることを防止するためである。
【0024】
突起部PR1の平面的な大きさは、負極集電体N1の第1面N1aに垂直な方向から走査型電子顕微鏡を用いて表面を観察する。突起部PR1を第1面N1aに射影した射影領域の面積は、10nm2 以上10000nm2 以下である。好ましくは、20nm2 以上5000nm2 以下である。突起部PR1を第1面N1aに射影した射影領域の最大長の平均値は、例えば、10nm以上200nm以下である。ここで、射影領域の最大長とは、射影領域の内部を横切る線分が最大となる長さである。
【0025】
突起部PR1は、例えば、負極集電体N1の第1面N1aの10μm2 あたり10個以上10000個以下で存在する。つまり、突起部PR1を第1面N1aに射影した射影領域における突起部の密度は、1個/μm2 以上1000個/μm2 以下である。好ましくは、2個/μm2 以上800個/μm2 以下である。より好ましくは、3個/μm2 以上500個/μm2 以下である。突起部PR1を第1面N1aに射影した射影領域が占める面積は、例えば、第1面の1/10以上8/10以下である。
【0026】
後述するように、水素プラズマの照射により突起部PR1を形成する場合には、次のように突起部PR1が形成されたと考えられる。負極集電体N1の第1面N1aから銅の粒子GR1が叩き出され、その叩き出された粒子GR1が負極集電体N1の第1面N1aの上に再付着するとともに負極集電体N1の第1面N1aに融合することにより、突起部PR1が形成される。なお、突起部PR1の大きさおよび密度が、リチウムの析出にとって重要な要因であると考えられる。
【0027】
突起部PR1は、リチウムの析出の起点としての役割を果たす。また、リチウムイオンが負極集電体N1の第1面N1aに平行な方向に動くことを抑制することにより、リチウム金属の析出方向を揃え、リチウム金属のデンドライト成長を抑制できるものと考えられる。
【0028】
3.リチウムイオンの介在する充放電反応
3-1.充放電反応
充放電反応とは、例えば、下記の化学反応式で表される化学反応のことである。
Li+ + e- ⇔ Li …(1)
Li1-x CoO2 + xLi+ + xe- ⇔ LiCoO2 …(2)
式(1)は、負極NEにおける反応である。式(2)は、正極活物質層P2における反応である。いずれの反応も、リチウムイオンおよび電子が介在している。充放電反応とは、正極PEまたは負極NEにおいて、リチウムイオンが介在するとともに電子の授受が生じる化学反応のことである。この充放電反応により、リチウムイオンの吸蔵または放出、およびリチウムまたはリチウム化合物の析出、堆積、吸着、溶解などの現象が生じうる。なお、リチウムまたはリチウム化合物が析出等する場合には、充放電反応は正極活物質層P2または負極NEの外部で発生しうる。なお、正極活物質層P2および負極NEの材料によっては、充放電反応の種類は変わる。
【0029】
4.製造装置
負極集電体N1の第1面N1aに突起部PR1を形成する製造装置について説明する。
【0030】
図3は、第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1における負極を処理する製造装置の構成を示す概略構成図である。製造装置1は、プラズマ生成室46と、反応室10とを有している。プラズマ生成室46は、その内部でプラズマを発生させるとともに、反応室10に供給するラジカルをも発生させるためのものである。反応室10は、プラズマ生成室46で生じたラジカルを利用して、負極集電体N1に突起部PR1を形成するためのものである。
【0031】
また、製造装置1は、導波路47と、石英窓48と、スロットアンテナ49とを、有している。導波路47は、マイクロ波39を導入するためのものである。スロットアンテナ49は、石英窓48からプラズマ生成室46にマイクロ波39を導入するためのものである。
【0032】
プラズマ生成室46は、マイクロ波39により表面波プラズマ(SWP)を発生させるためのものである。プラズマ生成室46には、ラジカル源導入口42が設けられている。ラジカル源導入口42は、プラズマ生成室46に発生するプラズマ61の内部にラジカル源となるガスを供給するためのものである。
【0033】
プラズマ生成室46と、反応室10との間には、隔壁44が設けられている。隔壁44は、プラズマ生成室46と、反応室10とを仕切るためのものである。隔壁44は、電圧を印加するための第1電極22も兼ねている。そして、隔壁44には、貫通孔14が形成されている。プラズマ生成室46で生成されたラジカルを反応室10に供給するためである。
【0034】
反応室10は、容量結合型プラズマ(CCP)を発生させるためのものである。また、反応室10は、負極集電体N1に突起部PR1を形成するためのものでもある。反応室10は、第2電極24と、ヒーター25と、原料導入口12と、排気口16とを有している。第2電極24は、第1電極22との間に電圧を印加するためのものである。ヒーター25は、負極集電体N1を加熱して、負極集電体N1の温度を制御するためのものである。なお、原料導入口12は、第1の実施形態では何も供給しないため省略してもよい。排気口16は、真空ポンプ等に接続されている。真空ポンプは、反応室10の内部の圧力を調整するためのものである。
【0035】
前述のように、隔壁44は、第2電極24との間に電圧を印加するための第1電極22を兼ねている。第1電極22には、電源および回路が接続されている。第1電極22の電位を時間的に制御するためである。第2電極24は、第1電極22との間に電圧を印加するためのものである。そして、第2電極24は、負極集電体N1を載置するための載置台でもある。第2電極24は、接地されている。第1電極22と第2電極24との間の距離は約5cmである。もちろん、この値に限らない。
【0036】
5.負極の製造方法
5-1.突起部形成工程
まず、製造装置1の内部に、突起部PR1を形成する前の負極集電体N1を載置する。このとき、負極集電体N1の第1面N1aが上になっており、第2面N1bが第2電極24に接触している。次に、マイクロ波39を導波路47に導入する。マイクロ波39は、スロットアンテナ49により、石英窓48から、プラズマ生成室46に導入される。これにより、高密度プラズマ60が発生する。
【0037】
そして、この高密度プラズマ60がプラズマ生成室46の内部で拡散して、プラズマ61となる。このプラズマ61は、ラジカル源導入口42から供給されるラジカル源のイオンを含んでいる。ラジカル源として、水素ガスを含むガスを用いる。プラズマ61中の大部分のイオンは、隔壁44に衝突する。ラジカル38は、隔壁44の貫通孔14を通過して、反応室10に入る。そして、第1電極22と、第2電極24との間に電圧を印加する。これにより、反応室10の内部にプラズマ34が発生する。
【0038】
プラズマ34の雰囲気中には、ラジカル38が存在している。そして、このプラズマ34の雰囲気中で負極集電体N1の第1面N1aに突起部PR1が成長する。その際に、負極集電体N1の第1面N1aから銅の粒子GR1が飛散し、負極集電体N1の第1面N1aに再付着する。
【0039】
反応室10の内部の圧力は、5~2000mTorr(0.65Pa~267Pa)の範囲内である。また、負極集電体N1の温度は、0℃以上500℃以下の範囲内である。好ましくは、0℃以上400℃以下である。もちろん、これらは例示であり、これらの数値範囲に限らない。
【0040】
6.リチウムイオン二次電池の製造方法
6-1.負極製造工程
前述のように、負極NEを製造する。すなわち、水素ガスを含むガスをプラズマ化して集電体に供給し、集電体の第1面の上に集電体と同じ材質からなる複数の突起部を形成する。
【0041】
6-2.正極製造工程
正極PEを製造する。そのために、正極集電体P1の上に正極活物質層P2を形成する。そのために、例えば、正極活物質を含有するスラリーを製造し、正極集電体P1に塗工し乾燥させる。
【0042】
6-3.電極体製造工程
正極PEと負極NEとをこれらの間にセパレータSp1が位置するように捲回して電極体とする。
【0043】
6-4.封止工程
ケースの中に電極体を挿入し、ケースの中に電解液を充填する。そして、ケースを封止する。
【0044】
6-5.その他
エージング工程等、その他の工程を実施してもよい。
【0045】
7.第1の実施形態の効果
第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1の負極NEは、突起部PR1を有する。突起部PR1は、1個の粒子GR1または複数の粒子GR1が集合した集合体が負極集電体N1の第1面N1aに融合したものである。このため、突起部PR1を起点にしてリチウムが析出しやすい。このため、負極NEは炭素材料のようなリチウムを吸蔵する負極活物質を有さない。
【0046】
8.変形例
8-1.突起部形成工程
突起部形成工程として別の処理を行ってもよい。突起部形成工程における処理として、例えば、プレスなどの圧力処理、薬液処理、銅またはアルミニウム等の金属ターゲットを用いたスパッタリング等が挙げられる。
【0047】
8-2.プラズマガス
第1の実施形態のプラズマガスは水素ガスである。しかし、プラズマガスとしてその他のガスを用いてもよい。例えば、酸素ガスが挙げられる。
【0048】
8-3.プラズマ装置
第1の実施形態以外のプラズマ装置を用いてもよい。例えば、誘導結合プラズマ(ICP)である。もちろん、その他のプラズマ装置を用いてもよい。
【実施例0049】
(実験1)
1.突起部
1-1.容量結合型プラズマ(CCP)
製造装置1の内部で銅箔(銅基板)の上に突起部PR1を形成した。その際の条件を表1に示す。水素ガスの流量は50sccmであった。Arの流量は5sccmであった。マイクロ波の電力(MW電力)は400Wであった。電極間に印加した電力(CCP電力)は400Wであった。ヒーター25の温度は560℃であった。処理時間は10分であった。
【0050】
なお、製造装置1の内部には原料導入口12からガスを供給していない。このため、水素ガスのプラズマが発生し、水素ラジカルが銅箔に供給される。
【0051】
[表1]
条件 突起部形成工程
H2 (sccm) 50
Ar(sccm) 5
MW電力(W) 400
CCP電力(W) 400
圧力(Pa) 2
ヒーター温度(℃) 560
処理時間(min) 10
【0052】
図4は、銅箔の上に水素ラジカルを照射した後の銅箔の表面を示す走査型電子顕微鏡写真(その1)である。
図4には、銅箔の表面に多数の銅の粒子が堆積し、突起部を形成している様子が示されている。観察される粒子の形状から、水素ラジカルの照射により銅箔から叩き出された銅粒子が銅箔の表面に再付着したものと考えられる。このように、1個の銅粒子(Cu grain)を銅箔に射影した射影領域の最大長は、およそ40nmである。銅粒子の集合体からなる突起物PR1を銅箔に射影した射影領域の最大長は、100nm以上200nm以下である。射影領域は、負極集電体N1の第1面N1aの1/10以上の面積を占めている。
【0053】
1-2.誘導結合プラズマ(ICP)
この実験においては、製造装置1の代わりに、ICP装置を用いて突起部形成工程を実施した。表2は、ICP装置における処理条件を示している。
【0054】
[表2]
条件 突起部形成工程
H2 (sccm) 100
Ar(sccm) 15
ICP電力(W) 1000
圧力(Pa) 3
ヒーター温度(℃) 560
処理時間(min) 10
【0055】
1-2-1.水素ガスの供給量と突起部
水素ガスの供給量を変化させて突起部の数および大きさについて調べた。なお、基板支持部に印加するバイアスは0Vであった。
【0056】
図5は、銅箔の上に水素ラジカルを照射した後の銅箔の表面を示す走査型電子顕微鏡写真(その2)である。白くなっている領域が突起部の領域である。
【0057】
図6は、
図5の線上の凹凸の測定結果を示すグラフである。
図6の横軸は位置である。
図6の縦軸は基準面からの高さである。
図6に示すように、高さ200nm程度、幅200nm程度の突起部が観測されている。
図4からも推測されるように、突起部の高さおよび幅は同程度である。
【0058】
走査型電子顕微鏡における白い領域の面積を走査型電子顕微鏡の機能を用いて測定した。白い領域の面積が突起部の二次元的な大きさに該当する。
【0059】
図7は、水素の供給量と突起部の面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図7の横軸は水素の供給量(sccm)である。
図7の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。水素の供給量が100sccmの場合に、面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の小さい突起部の数が多い傾向にある。
【0060】
図8は、水素の供給量と突起部の面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図8の横軸は水素の供給量(sccm)である。
図8の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。水素の供給量が50sccmの場合に、面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の中程度の突起部の数が多い傾向にある。
【0061】
図9は、水素の供給量と突起部の面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図9の横軸は水素の供給量(sccm)である。
図9の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。水素の供給量が100sccmの場合に、面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の大きい突起部の数が多い傾向にある。
【0062】
図10は、水素の供給量と突起部の個数との関係を示すグラフである。
図10の横軸は水素の供給量(sccm)である。
図10の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。水素の供給量が100sccmの場合に、突起部の数が多い傾向にある。
【0063】
このように、水素の供給量が100sccmの場合に、突起部の数が多い傾向にある。この場合には、小さい突起部と大きい突起部との数が多い。
【0064】
水素の供給量が50sccmの場合に、面積が100nm2 以上1000nm2 以下の中程度の突起部の数が多い傾向にある。このときには、大きい突起部および小さい突起部の数がそれほど多くない。したがって、この場合には、突起部の大きさが中程度に揃っている。
【0065】
1-2-2.バイアスと突起部
水素の供給量を100sccmとし、第2電極24に印加するバイアスを変化させた。第2電極24に印加するバイアスはDCバイアスである。
【0066】
図11は、バイアスの大きさと突起部の面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図11の横軸はバイアスである。
図11の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。
図11に示すように、負のバイアスを印加することにより、突起部の面積が10nm
2 以上100nm
2 以下の突起部の個数は減少する。
【0067】
図12は、バイアスの大きさと突起部の面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図12の横軸はバイアスである。
図12の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。
図12に示すように、-25Vのバイアスを印加した場合に、突起部の面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数が最も多い。このため、面積が100nm
2 以上1000nm
2 以下の突起部の個数が多い基板を形成する場合には、-25V程度のバイアスを印加することが好ましい。
【0068】
図13は、バイアスの大きさと突起部の面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数との関係を示すグラフである。
図13の横軸はバイアスである。
図13の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。
図13に示すように、-50Vのバイアスを印加した場合に、突起部の面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数が最も多い。このため、面積が1000nm
2 以上10000nm
2 以下の突起部の個数が多い基板を形成する場合には、-50V程度のバイアスを印加することが好ましい。
【0069】
図14は、バイアスの大きさと突起部の個数との関係を示すグラフである。
図14の横軸はバイアスである。
図14の縦軸は10μm
2 あたりの突起部の個数である。負のバイアスを印加する場合には、バイアスの絶対値が大きいほど、突起部の数が減少する傾向にある。
【0070】
バイアスが0Vの場合には、面積が10nm2 以上100nm2 以下の小さい突起部の数が多い傾向にある。バイアスが-25Vの場合には、面積が100nm2 以上1000nm2 以下の中程度の突起部の数が多い傾向にある。バイアスが-50Vの場合には、面積が1000nm2 以上10000nm2 以下の大きい突起部の数が多い傾向にある。バイアスが-100Vの場合には、突起部の大きさによらず突起部が形成されにくい傾向にある。
【0071】
負のバイアスの絶対値が大きいほど、水素イオンが基板に衝突しやすい。また、水素イオンの運動エネルギーも高い。
【0072】
このように、水素の供給量とバイアスの値とを選択することにより、基板に形成される突起部の大きさおよび個数をある程度制御することができる。
【0073】
(実験2)
2.リチウムイオン二次電池
2-1.突起部
製造装置1の内部で銅箔(銅基板)の上に突起部PR1を形成した。その際の条件を表3に示す。水素ガスの流量は100sccmであった。Arの流量は5sccmであった。マイクロ波の電力(MW電力)は400Wであった。電極間に印加した電力(CCP電力)は400Wであった。銅箔の温度は700℃であった。処理時間は10分であった。
【0074】
なお、製造装置1の内部には原料ガスを供給していない。このため、水素ガスのプラズマが発生し、水素ラジカルが銅箔に供給される。
【0075】
[表3]
条件 突起部形成工程
H2 (sccm) 100
Ar(sccm) 5
MW電力(W) 400
CCP電力(W) 400
圧力(Pa) 2
ヒーター温度(℃) 700
処理時間(min) 10
【0076】
図15は、水素プラズマ照射前の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
【0077】
図16は、水素プラズマ照射後の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
図16に示すように、銅箔の表面に多数の突起部が形成されている。
【0078】
2-2.リチウムイオン二次電池の充放電特性
第1の実施形態のリチウムイオン二次電池LiB1を製造した。正極集電体P1はアルミニウムであり、正極活物質はコバルト酸リチウムであった。負極集電体N1は銅であった。負極は銅箔のみであり、炭素材料を有さない。電解液は1MのLiPF6 であった。正極活物質層は、直径1.6cmの領域であった。負極活物質層は、直径1.3cmの領域であった。
【0079】
正極活物質層は、コバルト酸リチウムと、導電助剤と、結着剤と、を含有する。導電助剤はアセチレンブラックであった。結着剤はPVDFであった。コバルト酸リチウムと、アセチレンブラックと、PVDFとの重量比は、100:5:3であった。
【0080】
図17は、突起部が形成されている銅箔を負極としたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
図17の横軸は容量である。
図17の縦軸は電圧である。充電電流または放電電流は0.5mAであった。このリチウムイオン二次電池の容量は12.6mAhであった。
【0081】
図18は、突起部が形成されていない銅箔を負極としたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
図17の横軸は容量である。
図17の縦軸は電圧である。充電電流または放電電流は0.5mAであった。このリチウムイオン二次電池の容量は0.6mAh程度であった。
【0082】
このように、炭素材料を有さず突起部が形成された銅箔はリチウムイオン二次電池の負極としての役割を果たす。また、突起部が存在しない場合には、銅箔はリチウムイオン二次電池の負極としての役割を果たさない。
【0083】
2-3.顕微鏡写真
図19は、充放電を繰り返した後の突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極の断面を示す走査型顕微鏡写真(その1)である。
図19に示すように、銅箔の上にリチウムが析出している。また、リチウムの表面は平坦であり、デンドライト成長がみられない。このようにリチウムが析出しているため、負極が炭素材料などのリチウムを吸蔵する材料を含有する必要はない。
【0084】
図20は、充放電を繰り返した後の突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極の断面を示す走査型顕微鏡写真(その2)である。
図20に示すように、リチウムは40μm程度の膜厚を有する。また、
図20に示すように、析出しているリチウムの表面は非常に平坦であり、デンドライトは生じていない。
【0085】
図21は、突起部を有するリチウムイオン二次電池の負極に析出するリチウムの表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【0086】
このように銅箔に突起部が存在する場合には、突起部はリチウムが析出可能な表面を有する。
【0087】
(実験3)
3.酸素プラズマ
3-1.突起部
水素ガスの代わりに酸素ガスを用いた。プラズマの条件は、表4に示す通りである。
【0088】
[表4]
条件 突起部形成工程
O2 (sccm) 150
MW電力(W) 400
CCP電力(W) 400
圧力(Pa) 2
ヒーター温度(℃) 20
処理時間(min) 10
【0089】
図22は、酸素プラズマ照射後の銅箔の表面を示す顕微鏡写真である。
図22に示すように、
【0090】
3-2.リチウムイオン二次電池の充放電特性
実験2と同様に、リチウムイオン二次電池を製作した。
【0091】
図23は、酸素プラズマにより突起部を形成した銅箔を負極とした場合のリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
図23の横軸は容量である。
図23の縦軸は電圧である。充電電流または放電電流は0.5mAであった。このリチウムイオン二次電池の容量は10.58mAhであった。
【0092】
図24は、酸素プラズマにより突起部を形成した銅箔の成分分析の結果を示すグラフである。
図24に示すように、酸素プラズマによる処理を行った後の銅箔は、酸素原子をある程度含有している。
【0093】
(付記)
第1の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極は、第1面を有する集電体を有する。集電体は、第1面に複数の突起部を有する。突起部は、リチウムを析出可能な表面を有する。
【0094】
第2の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極においては、突起部を第1面に射影した射影領域の面積は、10nm2 以上10000nm2 以下である。突起部の密度は、1個/μm2 以上1000個/μm2 以下である。
【0095】
第3の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極においては、突起部を第1面に射影した射影領域の最大長の平均値は、10nm以上200nm以下である。射影領域が占める面積は、第1面の1/10以上である。
【0096】
第4の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極においては、突起部は、集電体と同じ材質であるとともに、集電体の第1面と融合して集電体と一体となっている。
【0097】
第5の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極においては、集電体の材質が銅である。
【0098】
第6の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極は、炭素材料を有さない。
【0099】
第7の態様におけるリチウムイオン二次電池は、正極と負極とを有する。負極は、第1面を有する集電体を有する。集電体は、第1面に複数の突起部を有する。突起部は、リチウムを析出可能な表面を有する。
【0100】
第8の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極の製造方法においては、水素ガスを含むガスをプラズマ化して集電体に供給し、集電体の第1面の上に集電体と同じ材質からなる複数の突起部を形成する。
【0101】
第9の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極の製造方法においては、突起部は、集電体と同じ材質であるとともに、集電体の第1面と融合させたものである。
【0102】
第10の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極の製造装置は、水素ガスを含むガスをプラズマ化するプラズマ生成室と、プラズマ生成室でプラズマ化されたガスを集電体に供給するとともに、集電体の第1面の上に集電体と同じ材質からなる複数の突起部を形成する反応室と、を有する。
【0103】
第11の態様におけるリチウムイオン二次電池の負極の製造装置においては、反応室は、集電体と同じ材質であるとともに、集電体の第1面と融合して集電体と一体となっている突起部を形成する。