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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187904
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/655 20150101AFI20221213BHJP
【FI】
E05F15/655
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096137
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西 佑司
(72)【発明者】
【氏名】本田 勲
(72)【発明者】
【氏名】和泉 健太
(72)【発明者】
【氏名】錦邉 健
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA05
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC02
2E052EC03
2E052EC04
2E052GB12
2E052GB15
2E052GC06
2E052GC07
2E052GD03
2E052GD08
2E052KA01
(57)【要約】
【課題】両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制する。
【解決手段】両開きの構成を有して車両のドア開口部を開閉する二枚のスライドドア4a,4bは、車両用開閉体制御装置としての制御装置に設けられたドア制御部によって、それぞれ、独立に、その開閉動作が制御される。そして、全閉制御部としてのドア制御部は、その全閉制御時、第1の開閉体D1に位置付けられた一方のスライドドア4aよりも遅い動作速度で、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bを全閉位置Pcに閉動作させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部に設けられて互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体を全閉位置に閉動作させる全閉制御部を備え、
前記全閉制御部は、前記第1の開閉体よりも遅い動作速度で前記第2の開閉体を前記閉動作させる車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記第1及び第2の開閉体の前記閉動作を監視することにより前記全閉位置に到達した前記第1及び第2の開閉体が互いに干渉する可能性を判定する干渉可能性判定部を備え、
前記全閉制御部は、前記干渉の可能性がある場合には、前記第1の開閉体が前記全閉位置に到達した後、より遅いタイミングで前記第2の開閉体が前記全閉位置に到達するように、前記第1及び第2の開閉体の少なくとも一方の前記動作速度を調整すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記干渉可能性判定部は、前記第1の開閉体が該第1の開閉体について予め設定された第1の判定位置に到達する前に、前記第2の開閉体が該第2の開閉体について予め設定された第2の判定位置に到達した場合に、前記干渉の可能性があると判定すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記干渉可能性判定部は、前記閉動作により互いが接近する前記第1及び第2の開閉体の離間距離を検出するとともに、前記第1の開閉体の動作位置に応じた前記離間距離の判定値を演算し、該判定値よりも前記離間距離が小さい場合に、前記干渉の可能性があると判定すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記干渉可能性判定部は、前記第1及び第2の開閉体について実際の前記動作速度を検出するとともに、該検出された前記動作速度間の速度差が所定の速度差閾値よりも小さい場合に、前記干渉の可能性があると判定すること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
請求項2~請求項5の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記全閉制御部は、前記干渉の可能性がある場合には、前記第2の開閉体の前記閉動作を一時停止させること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記全閉制御部は、前記第1の開閉体が該第1の開閉体について予め設定された再開許可位置に到達した場合に、前記第2の開閉体の前記閉動作を再開させること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記全閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体について個別に設定された動作速度目標値に実際の前記動作速度を追従させるべく、フィードバック制御を実行することにより、前記第1及び第2の開閉体の前記動作速度を制御すること、
を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の車両用開閉体制御装置において、
前記全閉制御部は、前記第1の開閉体よりも遅い開始タイミングで前記第2の開閉体を前記閉動作させること、を特徴とする車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに相反する方向に開閉動作する所謂両開きの構成を有した一対の開閉体を制御する車両用開閉体制御装置がある。例えば、特許文献1に記載の電動車両は、両開きの構成を有した二枚のスライドドアを用いて、その車体の側面に設けられたドア開口部を開閉する。そして、これにより、大きなドア開口を確保することで、その乗員の円滑な乗降を担保する構成になっている。
【0003】
また、このような両開きの開閉体には、互いの閉側端部が重複する状態で全閉位置に配置されるものがある。そして、これにより、その全閉状態における閉塞性を高めることで、優れた遮音性能及び止水性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-6444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような互いの閉側端部が重複する状態で、その一対の開閉体が全閉位置に配置される構成では、構造上、その全閉位置に到達する順序に制約が生ずることがある。そして、このような場合には、その順序制約によって、全閉制御時、その両開きの構成を有する一対の開閉体が互いに干渉するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、車両の開口部に設けられて互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体を全閉位置に閉動作させる全閉制御部を備え、前記全閉制御部は、前記第1の開閉体よりも遅い動作速度で前記第2の開閉体を前記閉動作させる。
【0007】
上記構成によれば、両開きの構成を有した一対の開閉体のうち、構造上の順序制約により全閉位置への到達が優先される一方の開閉体を第1の開閉体として、第2の開閉体となる他方の開閉体よりも早いタイミングで全閉位置に到達させることができる。そして、これにより、全閉制御時、その両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【0008】
更に、互いの干渉を抑制した上で、その一対の開閉体が同時に閉動作している状態の割合を増やすことができる。その結果、両開きの構成を有する一対の開閉体のうち一方が閉動作していない状態にあることに起因した所謂「待たされ感」を軽減することができる。そして、これにより、その利用者に対して好印象を与えることができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置は、前記第1及び第2の開閉体の前記閉動作を監視することにより前記全閉位置に到達した前記第1及び第2の開閉体が互いに干渉する可能性を判定する干渉可能性判定部を備え、前記全閉制御部は、前記干渉の可能性がある場合には、前記第1の開閉体が前記全閉位置に到達した後、より遅いタイミングで前記第2の開閉体が前記全閉位置に到達するように、前記第1及び第2の開閉体の少なくとも一方の前記動作速度を調整することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、それぞれの動作速度を目標通りに制御することが難しい外乱のある状況においても、第1の開閉体よりも遅いタイミングで、第2の開閉体を全閉位置に到達させることができる。そして、これにより、全閉制御時、両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記干渉可能性判定部は、前記第1の開閉体が該第1の開閉体について予め設定された第1の判定位置に到達する前に、前記第2の開閉体が該第2の開閉体について予め設定された第2の判定位置に到達した場合に、前記干渉の可能性があると判定することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、簡素な構成にて、全閉制御時、その両開きの構成を有した一対の開閉体が互いに干渉する可能性を判定することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記干渉可能性判定部は、前記閉動作により互いが接近する前記第1及び第2の開閉体の離間距離を検出するとともに、前記第1の開閉体の動作位置に応じた前記離間距離の判定値を演算し、該判定値よりも前記離間距離が小さい場合に、前記干渉の可能性があると判定することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、精度よく、全閉制御時、その第1及び第2の開閉体が互いに干渉する可能性を判定することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記干渉可能性判定部は、前記第1及び第2の開閉体について実際の前記動作速度を検出するとともに、該検出された前記動作速度間の速度差が所定の速度差閾値よりも小さい場合に、前記干渉の可能性があると判定することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、精度よく、全閉制御時、その第1及び第2の開閉体が互いに干渉する可能性を判定することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記全閉制御部は、前記干渉の可能性がある場合には、前記第2の開閉体の前記閉動作を一時停止させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、より確実に、その第2の開閉体が全閉位置に到達するタイミングを遅らせることができる。そして、これにより、効果的に、その両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【0016】
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記全閉制御部は、前記第1の開閉体が該第1の開閉体について予め設定された再開許可位置に到達した場合に、前記第2の開閉体の前記閉動作を再開させることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、効果的に、第1の開閉体よりも遅れて、その第2の開閉体を全閉位置に到達させることができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記全閉制御部は、前記第1及び第2の開閉体について個別に設定された動作速度目標値に実際の前記動作速度を追従させるべく、フィードバック制御を実行することにより、前記第1及び第2の開閉体の前記動作速度を制御することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、その個別に行う各動作速度目標値の設定に基づいて、第1及び第2の開閉体に速度差を設定することができる。
上記課題を解決する車両用開閉体制御装置において、前記全閉制御部は、前記第1の開閉体よりも遅い開始タイミングで前記第2の開閉体を前記閉動作させることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、簡素な構成にて、両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】両開きの構成を有した二枚のスライドドアを備える車両の斜視図。
図2】車両のドア開口部に設けられた各スライドドアの開閉動作を模式的に示す平面図。
図3】車両の制御ブロック図。
図4】各スライドドアに対して個別に設定される動作速度目標値のグラフ。
図5】全閉制御を開始する条件判定の処理手順を示すフローチャート。
図6】第1の開閉体を全閉位置に閉動作させる全閉制御の処理手順を示すフローチャート。
図7】第2の開閉体を全閉位置に閉動作させる全閉制御の処理手順を示すフローチャート。
図8】スライドドア、スロープ装置、及び車高調整装置の連動制御の態様を示すフローチャート。
図9】第2の実施形態におけるドア制御部の構成を示すブロック図。
図10】干渉可能性判定及び干渉抑制制御の処理手順を示すフローチャート。
図11】干渉可能性判定及び干渉抑制制御の態様を示す動作説明図。
図12】干渉可能性判定及び干渉抑制制御の別例を示すフローチャート。
図13】干渉抑制制御の別例を示すフローチャート。
図14】干渉可能性判定の別例を示すフローチャート。
図15】干渉抑制制御の別例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体2を有している。また、車体2の側面2sには、乗員の乗降口となるドア開口部3が設けられている。そして、このドア開口部3には、互いに相反する方向に開閉動作する所謂両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bが設けられている。
【0023】
即ち、図2中、右側に位置する一方のスライドドア4aは、同図中、左側に移動することにより閉動作し、右側に移動することにより開動作する。一方、図2中、左側に位置する他方のスライドドア4bは、同図中、右側に移動することにより閉動作し、左側に移動することにより開動作する。更に、これらの各スライドドア4a,4bは、それぞれ、図示しないアクチュエータの駆動力に基づき開閉動作するパワースライドドア装置7としての構成を有している。そして、本実施形態の車両1は、これらの各スライドドア4a,4bが連動するかたちで、そのドア開口部3を開閉する構成になっている。
【0024】
詳述すると、本実施形態の車両1において、これらの各スライドドア4a,4bは、車幅方向の変位を伴いつつ、車両前後方向に開閉動作する。具体的には、各スライドドア4a,4bは、全閉位置Pcにある場合(図2中、二点鎖線に示す位置)には、車体2の側面2sに対して略面一となるように構成されている。また、これらの各スライドドア4a,4bは、それぞれ、車幅方向外側(図2中、下側)に変位しつつ、その全閉位置Pcから開動作する。そして、本実施形態の車両1は、これにより、その開動作した各スライドドア4a,4bが、車体2の側面2sに干渉しない構成になっている。
【0025】
また、本実施形態の車両1において、これらの各スライドドア4a,4bは、互いの閉側端部4ax,4bxが重複する状態で全閉位置Pcに配置される。具体的には、一方のスライドドア4aの閉側端部4axが車幅方向内側(図2中、上側)に位置し、他方のスライドドア4bの閉側端部4bxが車幅方向外側(図2中、下側)に位置する状態で、互いに重複して全閉位置Pcに配置される。そして、本実施形態の車両1は、これにより、これらの各スライドドア4a,4bが全閉位置Pcに配置された全閉状態における閉塞性を高めることで、優れた遮音性能及び止水性能を確保する構成になっている。
【0026】
また、図1に示すように、本実施形態の車両1は、ドア開口部3が全開状態にある場合において、このドア開口部3の下端に展開されるスロープ装置5を備えている。尚、このスロープ装置5もまた、図示しないアクチュエータに駆動されることにより展開され、及び車体2内に格納されるパワースロープ装置としての構成を有している。そして、本実施形態の車両1は、このスロープ装置5を利用することで、その乗員が、例えば、車椅子や車輪付きのキャリヤ、或いは自転車等の利用者であっても、容易に、そのドア開口部3から乗降することが可能となっている。
【0027】
図3に示すように、本実施形態の車両1において、そのパワースライドドア装置7を構成するスライドドア4a,4bは、スロープ装置5とともに、制御装置10によって、その作動が制御されている。
【0028】
詳述すると、本実施形態の制御装置10には、例えば、図示しない運転席等、車両1に設けられた操作入力部11に対する操作入力信号Scrが入力される。即ち、本実施形態の車両1において、この制御装置10には、その操作入力信号Scrとして、スライドドア4a,4bの作動要求、及びスロープ装置5の作動要求が入力される。そして、本実施形態の制御装置10は、これらの作動要求に基づいて、そのスライドドア4a,4bの開閉動作を制御するドア制御部12と、スロープ装置5の展開及び格納動作を制御するスロープ制御部13と、を備えている。
【0029】
具体的には、本実施形態の制御装置10において、ドア制御部12は、上記のような所謂両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bのうち、一方のスライドドア4aを第1の開閉体D1として、その作動を制御する第1開閉制御部21を備えている。また、ドア制御部12は、二枚のスライドドア4a,4bのうち、他方のスライドドア4bを第2の開閉体D2として、その作動を制御する第2開閉制御部22を備えている。即ち、本実施形態の車両1には、これらの各スライドドア4a,4bを、それぞれ、独立に駆動する第1ドアアクチュエータ25a及び第2ドアアクチュエータ25bが設けられている。そして、本実施形態のドア制御部12は、これらの第1開閉制御部21及び第2開閉制御部22が、その対応する第1ドアアクチュエータ25a及び第2ドアアクチュエータ25bの作動を通じて、各スライドドア4a,4bを開閉動作させる構成になっている。
【0030】
さらに詳述すると、本実施形態の制御装置10には、第1ドアアクチュエータ25aと一体に設けられた第1パルスセンサ27aが出力する第1の開閉体D1としてのスライドドア4aの開閉動作に同期したパルス信号Sp1が入力される。また、この制御装置10には、第2ドアアクチュエータ25bと一体に設けられた第2パルスセンサ27bが出力する第2の開閉体D2としてのスライドドア4aの開閉動作に同期したパルス信号Sp2が入力される。更に、本実施形態の制御装置10は、これらの各パルス信号Sp1,Sp2をカウントすることにより、スライドドア4a,4bの動作位置P1,P2及び動作速度V1,V2を検出する。そして、これらの動作位置P1,P2及び動作速度V1,V2に基づいて、そのドア制御部12を構成する第1開閉制御部21及び第2開閉制御部22が、それぞれ、独立に、そのスライドドア4a,4bの開閉動作を制御する構成になっている。
【0031】
また、本実施形態の制御装置10は、車両1に設けられたドアロック装置30の作動を制御するドアロック制御部31を備えている。具体的には、本実施形態の車両1には、ドアロック装置30として、そのスライドドア4a,4bを全閉位置Pcに拘束する全閉ロック30c、及びスライドドア4a,4bを全開位置Poに拘束する全開ロック30oが設けられている。更に、本実施形態の制御装置10には、そのドアロック装置30を構成するラッチ機構32の作動状態を示すラッチスイッチ33の出力信号として、全閉ラッチ信号Slkc及び全開ラッチ信号Slkoが入力される。そして、本実施形態の制御装置10は、これらの全閉ラッチ信号Slkc及び全開ラッチ信号Slkoに基づいて、そのドア制御部12による各スライドドア4a,4bの開動作制御及び閉動作制御が開始される構成になっている。
【0032】
更に、本実施形態の制御装置10は、車両1に設けられた車高調整装置35の作動を制御する車高制御部36を備えている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのスライドドア4a,4bの開閉動作、及びスロープ装置5の展開及び格納動作に連動して、その車高を調整することが可能になっている。
【0033】
(スライドドアの全閉制御)
次に、本実施形態のドア制御部12が実行するスライドドア4a,4bの全閉制御について説明する。
【0034】
上記のように、本実施形態の車両1において、各スライドドア4a,4bは、車幅方向の変位を伴いつつ、車両前後方向に開閉動作する(図2参照)。また、これらの各スライドドア4a,4bは、互いの閉側端部4ax,4bxが重複する状態で全閉位置Pcに配置される。その結果、これらの各スライドドア4a,4bには、構造上、その全閉位置Pcに到達する順序に制約が生じている。
【0035】
即ち、これらの各スライドドア4a,4bを全閉位置Pcから開動作させる場合には、その閉側端部4axが車幅方向内側に位置する一方のスライドドア4aよりも先に、その閉側端部4bxが車幅方向外側に位置する他方のスライドドア4bを開動作させる。また、これらの各スライドドア4a,4bを全閉位置Pcに閉動作させる場合には、その一方のスライドドア4aを、他方のスライドドア4aよりも先に全閉位置Pcに到達させる。そして、これにより、その構造上の順序制約に基づいた各スライドドア4a,4bの干渉を回避することができる。
【0036】
この点を踏まえ、本実施形態のドア制御部12は、各スライドドア4a,4bを全閉位置Pcに閉動作させる全閉制御において、これら各スライドドア4a,4bの動作速度V1,V2に速度差を設定する。即ち、本実施形態の車両1を含め、両開きの構成を有するスライドドア装置の多くは、その互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体D1,D2が略等しい開閉動作距離を有するものとなっている。このため、これらの第1及び第2の開閉体D1,D2に速度差を設定した全閉制御を実行することで、その一方を他方よりも早いタイミングで全閉位置Pcに到達させることができる。そして、車両用開閉体制御装置40としての制御装置10に設けられたドア制御部12は、これを利用して、その全閉制御時、両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bの干渉を抑制する構成になっている。
【0037】
詳述すると、図4に示すように、ドア制御部12は、上記の順序制約により全閉位置Pcへの到達が優先される一方のスライドドア4aを第1の開閉体D1として、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bに、より遅い動作速度目標値Vtを設定する。
【0038】
具体的には、本実施形態のドア制御部12において、第1開閉制御部21は、その制御対象となる第1の開閉体D1としてのスライドドア4aに対し、動作速度目標値Vt1として第1速度Vaを設定する(Vt1=Va)。また、第2開閉制御部22は、その制御対象となる第2の開閉体D2としてのスライドドア4bに対し、動作速度目標値Vt2として、第1の開閉体D1を構成するスライドドア4aよりも遅い第2速度Vbを設定する(Vt2=Vb<Va)。そして、これらの第1開閉制御部21及び第2開閉制御部22は、その個別に設定された動作速度目標値Vt1,Vt2に基づいて、それぞれ、独立に、その対応する第1及び第2の開閉体D1,D2の全閉制御を実行する。
【0039】
本実施形態のドア制御部12において、第1開閉制御部21は、全閉制御時、第1の開閉体D1について設定された動作速度目標値Vt1に実際の動作速度V1を追従させるべくフィードバック制御を実行することにより、この第1の開閉体D1を閉駆動する。更に、第2開閉制御部22もまた、全閉制御時、第2の開閉体D2について設定された動作速度目標値Vt2に実際の動作速度V2を追従させるべくフィードバック制御を実行することにより、この第2の開閉体D2を閉駆動する。そして、本実施形態のドア制御部12は、これにより、その第1の開閉体D1としてのスライドドア4aよりも遅い動作速度で、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを全閉位置Pcに閉動作させる構成になっている。
【0040】
尚、本実施形態のドア制御部12は、各スライドドア4a,4bが全閉位置Pc近傍に設定された減速位置Pxに到達するまでの間、その個別に設定されたそれぞれの動作速度目標値Vt1,Vt2を一定に保持する(Vt1=Va,Vt2=Vb)。更に、ドア制御部12は、各スライドドア4a,4bが減速位置Pxに到達した後、これら各スライドドア4a,4bの動作速度目標値Vt1,Vt2を、所定の終端速度Vsまで、徐々に低減する。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのパワースライドドア装置7を構成するスライドドア4a,4bが、穏やかに全閉位置Pcに移動する所謂スローストップ機能が実装されている。
【0041】
さらに詳述すると、図5のフローチャートに示すように、本実施形態のドア制御部12は、操作入力信号Scrに基づきスライドドア4a,4bの全閉要求を検知した場合(ステップ101)、先ず、全開ラッチ信号Slkoをチェックする。具体的には、その全開ラッチ信号Slkoが「オン」から「オフ」に変化したか否かを判定する(ステップ102)。即ち、本実施形態の制御装置10においては、操作入力信号Scrに基づいたスライドドア4a,4bの全閉要求が検知された場合、先ず、ドアロック制御部31が、全開ロック30oのリリース制御を実行する。更に、本実施形態の車両1においては、これにより、その全開ロック30oによるスライドドア4a,4bの拘束が解除されることで、全開ラッチ信号Slkoが「オン」から「オフ」に変化する。そして、本実施形態のドア制御部12は、これにより、その全開ロック30oによる各スライドドア4a,4bの拘束解除を確認する構成となっている。
【0042】
更に、本実施形態の制御装置10においては、全開ラッチ信号Slkoが「オン」から「オフ」に変化した後(ステップ102:YES)、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップ103)。尚、本実施形態の車両1において、この所定時間は、例えば、数十ミリ秒程度に設定される。そして、本実施形態のドア制御部12は、所定時間の経過後(ステップ103:YES)、その全閉開始条件が成立したと判定する(ステップ104)。つまりは、各スライドドア4a,4bを全開位置Poから閉動作させることができる状態になったことを確認する構成になっている。
【0043】
また、図6及び図7のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置10においては、全閉開始条件が成立すると、第1開閉制御部21が、その対応するスライドドア4aの全閉制御を開始する(ステップ201:YES)。更に、第2開閉制御部22もまた、同じく、この第2開閉制御部22が対応するスライドドア4bの全閉制御を開始する(ステップ301:YES)。そして、本実施形態のドア制御部12は、これにより、その第1及び第2の開閉体D1,D2を構成する各スライドドア4a,4bについて、同時に、その全閉制御が開始される構成になっている。
【0044】
具体的には、第1開閉制御部21は、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aの動作位置P1を取得することにより(ステップ202)、その動作位置P1に応じた動作速度目標値Vt1を演算する(ステップ203)。尚、本実施形態のドア制御部12においては、図示しない記憶領域に、図4に示すような動作速度目標値Vt1の制御マップM1が保持されている。そして、第1開閉制御部21は、この制御マップM1に対し、上記ステップ101で取得したスライドドア4aの動作位置P1を参照することにより、その動作位置P1に応じたスライドドア4aの動作速度目標値Vt1を演算する。
【0045】
次に、第1開閉制御部21は、その制御対象となるスライドドア4aについて検出された実際の動作速度V1を取得する(ステップ204)。続いて、第1開閉制御部21は、上記ステップ203で演算した動作速度目標値Vt1及び上記ステップ204で取得した実際の動作速度V1に基づいて、その第1の開閉体D1としてのスライドドア4aの閉駆動制御を実行する(ステップ205)。そして、本実施形態の第1開閉制御部21は、このスライドドア4aが全閉位置Pcに到達したか否かを判定する(ステップ206)。
【0046】
即ち、本実施形態の第1開閉制御部21は、その制御対象となる第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが全閉位置Pcに到達していない場合(ステップ206:NO)、上記ステップ202~ステップ206の処理を繰り返し実行する。そして、全閉位置Pcに到達したと判定した場合(ステップ206:YES)に、このスライドドア4aの全閉制御を終了する。
【0047】
一方、第2開閉制御部22もまた、その制御対象となる第2の開閉体D2としてのスライドドア4aの動作位置P2を取得し(ステップ302)、動作速度目標値Vt2を演算し(ステップ303)、及び実際の動作速度V2を取得する(ステップ304)。尚、この第2開閉制御部22による動作速度目標値Vt2の演算もまた、図示しない記憶領域に保持された動作速度目標値Vt2の制御マップM2に対して、スライドドア4bの動作位置P2を参照することにより行われる(図4参照)。そして、第2開閉制御部22は、その動作速度目標値Vt2及び実際の動作速度V2に基づいた閉駆動制御を実行し(ステップ305)、及び、そのスライドドア4bが全閉位置Pcに到達したか否かを判定する(ステップ306)。
【0048】
即ち、第2開閉制御部22もまた、その制御対象となる第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが全閉位置Pcに到達していない場合(ステップ306:NO)、上記ステップ302~ステップ306の処理を繰り返し実行する。そして、全閉位置Pcに到達したと判定した場合(ステップ306:YES)に、このスライドドア4bの全閉制御を終了する。
【0049】
本実施形態の制御装置10は、このようにして、その第1及び第2の開閉体D1,D2に速度差を設定した全閉制御を実行する。そして、本実施形態のパワースライドドア装置7は、これにより、構造上の順序制約により全閉位置Pcへの到達が優先される一方のスライドドア4aの方が、他方のスライドドア4bよりも早いタイミングで全閉位置Pcに到達する構成になっている。
【0050】
また、上記のように、本実施形態の制御装置10は、ドア制御部12によるスライドドア4a,4bの開閉制御、スロープ制御部13によるスロープ装置5の展開及び格納制御、及び車高制御部36による車両1の車高調整制御を連動させる。更に、本実施形態の制御装置10は、そのパワースライドドア装置7、スロープ装置5、及び車高調整装置35に生じた異常を検知する異常検知部41を備えている(図3参照)。尚、本実施形態の異常検知部41が実行する異常検知判定としては、例えば、挟み込みの発生、或いは、作動タイミングの不調和等とった動作不良等が挙げられる。そして、本実施形態の制御装置10は、このような異常を検知した場合に実行する所謂フェールセーフ制御についてもまた、そのパワースライドドア装置7、スロープ装置5、及び車高調整装置35が連動するかたちで実行する構成になっている。
【0051】
具体的には、図8のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置10は、このとき、そのスライドドア4a,4b、スロープ装置5、及び車高調整装置35が同時に作動しているか否かを判定する(ステップ401)。また、制御装置10は、これらのスライドドア4a,4b、スロープ装置5、及び車高調整装置35が同時に作動している場合(ステップ401:YES)に、その何れかにおいて異常の発生が検知されたか否かを判定する(ステップ402)。そして、本実施形態の制御装置10は、その何れかに異常の発生が検知された場合(ステップ402:YES)には、これら作動中のスライドドア4a,4b、スロープ装置5、及び車高調整装置35を、全て停止させる構成となっている(ステップ403)。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
車両1においては、両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bによって、そのドア開口部3が開閉される。また、これらの各スライドドア4a,4bは、構造上の順序制約により、その一方のスライドドア4aを第1の開閉体D1として、このスライドドア4aの方が、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bよりも全閉位置Pcへの到達が優先される。そして、この順序制約を充足すべく、その第1の開閉体D1に位置付けられた一方のスライドドア4aよりも遅い動作速度で、第2の開閉体D2としての他方のスライドドア4bが全閉位置Pcに閉動作する(V1>V2)。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両1には、乗員が乗降するための開口部として、車体2の側面2sにドア開口部3が形成される。また、このドア開口部3には、互いに相反する方向に開閉動作する所謂両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bが設けられる。更に、これらのスライドドア4a,4bは、車両用開閉体制御装置40としての制御装置10に設けられたドア制御部12によって、それぞれ、独立に、その開閉動作が制御される。そして、全閉制御部40aとしてのドア制御部12は、その全閉制御時、第1の開閉体D1に位置付けられた一方のスライドドア4aよりも遅い動作速度で、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bを全閉位置Pcに閉動作させる。
【0054】
上記構成によれば、構造上の順序制約により全閉位置Pcへの到達が優先される一方のスライドドア4aを第1の開閉体D1として、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bよりも早いタイミングで全閉位置Pcに到達させることができる。そして、これにより、全閉制御時、その両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bの干渉を抑制することができる。
【0055】
更に、互いの干渉を抑制した上で、これらのスライドドア4a,4bが同時に閉動作している状態の割合を増やすことができる。その結果、二枚のスライドドア4a,4bの一方が閉動作していない状態にあることに起因した所謂「待たされ感」を軽減することができる。そして、これにより、その利用者に対して好印象を与えることができる。
【0056】
(2)ドア制御部12は、全閉制御時、第1及び第2の開閉体D1,D2としての各スライドドア4a,4bについて、それぞれ、個別に、その動作速度目標値Vt1,Vt2を設定する。そして、その個別に設定された各動作速度目標値Vt1,Vt2に、実際の各動作速度V1,V2を追従させるべく、それぞれ独立に、フィードバック制御を実行する。これにより、その個別に行う各動作速度目標値Vt1,Vt2の設定に基づいて、各スライドドア4a,4bに速度差を設定することができる。
【0057】
(3)車両1には、そのドアロック装置30として、スライドドア4a,4bを全開位置Poに拘束する全開ロック30oが設けられる。更に、制御装置10には、ドアロック装置30を構成するラッチ機構32の作動状態を示す全開ラッチ信号Slkoが入力される。そして、ドア制御部12は、この全開ラッチ信号Slkoの変化に基づいて、各スライドドア4a,4bが全開位置Poから閉動作することのできる状態になったことを確認することにより、その全閉制御を開始する。
【0058】
即ち、全開ラッチ信号Slkoに基づいて、実際に、その全開ロック30oによる各スライドドア4a,4bの拘束が解除されたことを検知することで、速やかに、そのドア制御部による全閉制御を開始することができる。そして、これにより、より一層、その「待たされ感」を軽減することができる。
【0059】
(3)制御装置10は、スライドドア4a,4b、スロープ装置5、及び車高調整装置35の同時作動中、その何れかに異常の発生が検知された場合、これらのスライドドア4a,4b、スロープ装置5、及び車高調整装置35を全て停止させる。これにより、高い安全性を確保することができる。
【0060】
[第2の実施形態]
以下、車両用開閉体制御装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0061】
図9に示すように、本実施形態のドア制御部12Bは、各スライドドア4a,4bの閉動作を監視することにより、これらの各スライドドア4a,4bが全閉位置Pcに到達した場合に、その干渉が生ずる可能性を判定する干渉可能性判定部51を備えている。更に、ドア制御部12Bは、これらの各スライドドア4a,4bが干渉する可能性があると判定された場合に、その干渉を回避するための干渉抑制制御を実行する干渉抑制制御52を備えている。具体的には、本実施形態の干渉抑制制御52は、その干渉抑制制御として、第2の開閉体D2となるスライドドア4bの動作速度V2を調整する。そして、本実施形態のドア制御部12Bは、これにより、第1の開閉体D1を構成する一方のスライドドア4aが全閉位置Pcに到達した後、より遅いタイミングで、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bを全閉位置Pcに到達させる構成になっている。
【0062】
詳述すると、図10のフローチャート及び図11に示すように、本実施形態の干渉可能性判定部51は、全閉制御時、第1の開閉体D1を構成する一方のスライドドア4aについて、その干渉可能性を判定するための第1の判定位置Pj1を設定する。更に、干渉可能性判定部51は、第2の開閉体D2となる他方のスライドドア4bについてもまた、その干渉可能性を判定するための第2の判定位置Pj2を設定する。本実施形態の車両1において、これら第1及び第2の判定位置Pj1,Pj2は、それぞれ、全閉位置Pcの近傍に設定されている。更に、第1の判定位置Pj1は、第2の判定位置Pj2との比較において、より全閉位置Pcに近い位置に設定されている。そして、干渉可能性判定部51は、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが第1の判定位置Pj1に到達する前に、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが第2の判定位置Pj2に到達した場合に、これらが互いに干渉する可能性があると判定する。
【0063】
具体的には、本実施形態のドア制御部12Bにおいて、干渉可能性判定部51は、先ず、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが第2の判定位置Pj2に到達したか否かを判定する(ステップ501)。更に、干渉可能性判定部51は、スライドドア4bが第2の判定位置Pj2に到達したと判定した場合(ステップ501:YES)、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが第1の判定位置Pj1に到達する前であるか否かを判定する(ステップ502)。そして、本実施形態の干渉可能性判定部51は、スライドドア4aが第1の判定位置Pj1に到達する前である場合(ステップ502:YES)に、その全閉位置Pcに到達したスライドドア4a,4bが互いに干渉する可能性があると判定する(ステップ503)。
【0064】
更に、本実施形態のドア制御部12Bにおいては、上記ステップ503において、干渉可能性判定部51が干渉可能性ありと判定した場合に、その干渉抑制制御52が、干渉抑制制御を実行する。具体的には、本実施形態の干渉抑制制御52は、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを一時停止させる(ステップ504)。尚、本実施形態のドア制御部12Bにおいて、この一時停止制御は、その第2開閉制御部22が、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bの閉駆動制御(図7参照、ステップ305)を停止することにより行われる。そして、本実施形態の干渉抑制制御52は、予め定められた再開条件を充足するまで、その動作速度V2の調整による干渉抑制制御として実行された第2の開閉体D2の一時停止制御を継続する。
【0065】
さらに詳述すると、図11に示すように、本実施形態の干渉抑制制御52は、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが、この第1の開閉体D1としてのスライドドア4aについて予め設定された再開許可位置Prsに到達することを再開条件とする。具体的には、本実施形態の車両1において、この再開許可位置Prsは、全閉位置Pcに設定されている。つまり、本実施形態の干渉抑制制御52は、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが一時停止している間に、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが、全閉位置Pcに到達した場合に、スライドドア4bの閉駆動を再開させる。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが全閉位置Pcに向かって閉動作を再開することで、その第1の開閉体D1としてのスライドドア4aとの干渉が抑制されるようになっている。
【0066】
即ち、図10に示すように、干渉抑制制御52は、その干渉抑制制御により、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを一時停止させた場合、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが再開許可位置Prsに到達したか否かを判定する(ステップ505)。更に、本実施形態の干渉抑制制御52は、そのスライドドア4aが再開許可位置Prsに到達していない場合(ステップ505:NO)には、上記ステップ504及びステップ505の処理を繰り返す。そして、一方のスライドドア4aが再開許可位置Prsに到達した場合(ステップ505:YES)に、その一時停止させた他方のスライドドア4bの閉動作を再開させる構成になっている(ステップ506)。
【0067】
つまり、本実施形態のドア制御部12Bにおいては、この干渉抑制制御52による再開判定に基づいて、その第2開閉制御部22による第2の開閉体D2としてのスライドドア4bの閉駆動制御(図7参照、ステップ305)が許可される。そして、本実施形態の車両1は、これにより、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aから遅れて、その第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが全閉位置Pcに到達する構成になっている。
【0068】
以上、本実施形態の構成によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(1)ドア制御部12Bは、干渉可能性判定部51と、干渉抑制制御52とを備える。干渉可能性判定部51は、各スライドドア4a,4bの閉動作を監視することにより、これらの各スライドドア4a,4bが全閉位置Pcに到達した場合に、その干渉が生ずる可能性を判定する。そして、干渉抑制制御52は、干渉の可能性がある場合に、より遅いタイミングで、その第2の開閉体D2となるスライドドア4bが全閉位置Pcに到達するように、このスライドドア4bの動作速度V2を調整する。
【0069】
上記構成によれば、目標通りに動作速度V1,V2を制御することが難しい外乱のある状況でも、第1の開閉体D1を構成するスライドドア4aよりも遅いタイミングで、その第2の開閉体D2となるスライドドア4bを全閉位置Pcに到達させることができる。尚、この場合における外乱としては、例えば、温度特性や摺動抵抗等、個体差によるバラツキ、或いは路面の傾斜等が挙げられる。そして、これにより、全閉制御時、その両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bの干渉を抑制することができる。
【0070】
(2)干渉可能性判定部51は、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが第1の判定位置Pj1に到達する前に、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが第2の判定位置Pj2に到達した場合に、これらが互いに干渉する可能性があると判定する。
【0071】
上記構成によれば、簡素な構成にて、全閉制御時、その両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bが互いに干渉する可能性を判定することができる。尚、第1の判定位置Pj1との比較において、より全閉位置Pcから離間した位置に第2の判定位置Pj2を設定することで、スライドドア4a,4bが互いに干渉する可能性があると判定されやすくなる。そして、これにより、容易に、その干渉抑制制御に大きなマージンを設定することができる。
【0072】
(3)干渉抑制制御52は、スライドドア4a,4bが互いに干渉する可能性がある場合、その干渉抑制制御として、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを一時停止させる。
【0073】
上記構成によれば、より確実に、その第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが全閉位置Pcに到達するタイミングを遅らせることができる。そして、これにより、効果的に、その両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bの干渉を抑制することができる。
【0074】
(4)干渉抑制制御52は、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが、このスライドドア4aについて予め設定された再開許可位置Prsに到達した場合に、全閉位置Pcに向かう第2の開閉体D2としてのスライドドア4bの閉動作を再開させる。
【0075】
上記構成によれば、効果的に、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aよりも遅れて、その第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを全閉位置Pcに到達させることができる。そして、その再開許可位置Prsを全閉位置Pcに近い位置に設定するほど、より一層、効果的に、その全閉位置Pcに到達した第1及び第2の開閉体D1,D2を構成するスライドドア4a,4bの干渉を抑制することができる。
【0076】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
・上記第2の実施形態では、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが第1の判定位置Pj1に到達する前に、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bが第2の判定位置Pj2に到達した場合に、これらが干渉する可能性があると判定することとした。
【0078】
しかし、これに限らず、図12のフローチャートに示すように、第1及び第2の開閉体D1,D2の動作位置P1,P2を取得する(ステップ601)。次に、このステップ601において取得した第1及び第2の開閉体D1,D2の動作位置P1,P2に基づいて、その全閉制御の実行により互いが接近する第1及び第2の開閉体D1,D2の離間距離αを検出する(ステップ602)。更に、第1の開閉体D1の動作位置P1に応じた離間距離αの判定値αthを演算する(ステップ603)。尚、この判定値αthの演算は、例えば、所定の演算式を用いてもよく、第1の開閉体D1の動作位置P1と判定値αthとが関係づけられたマップや制御テーブルを用いてもよい。そして、この判定値αthよりも上記ステップ602において演算された離間距離αが小さい場合(α<αth、ステップ604:YES)に、その第1及び第2の開閉体D1,D2が互いに干渉する可能性があると判定する構成としてもよい(ステップ605)。
【0079】
即ち、目標通りに第1及び第2の開閉体D1,D2の動作速度V1,V2が制御できているならば、その全閉制御の実行により互いが接近する第1及び第2の開閉体D1,D2の離間距離αは、その第1の開閉体D1の動作位置P1に応じた値となるはずである。この点を踏まえ、その第1の開閉体D1の動作位置P1に応じた離間距離αの理論値に相当する判定値αthを演算する。つまり、この判定値αthよりも実際の離間距離αが小さい場合には、相対的に、その全閉位置Pcに向かう第2の開閉体D2の閉動作が早まっているものと推定される。そして、これにより、精度よく、全閉制御時、その第1及び第2の開閉体D1,D2が互いに干渉する可能性を判定することができる。
【0080】
・更に、この図12に示す別例では、ステップ605において干渉の可能性があると判定した場合、その干渉抑制制御として、第2の開閉体D2の動作速度V2を低減する(ステップ606)。尚、この動作速度V2の低減制御は、その動作速度目標値Vt2を低減することにより行われる。このような構成を採用しても、外乱に依らず、第1の開閉体D1よりも遅いタイミングで、その第2の開閉体D2を全閉位置Pcに到達させることができる。
【0081】
・また、第1及び第2の開閉体D1,D2の動作位置P1,P2に基づいて、その全閉制御の実行により互いが接近する第1及び第2の開閉体D1,D2の離間距離αを検出する。そして、その離間距離αに応じて第1及び第2の開閉体D1,D2の動作速度V1,V2を制御するようにしてもよい。
【0082】
即ち、第1及び第2の開閉体D1,D2の離間距離αに基づいた動作速度V1,V2の制御を実行する際、必ずしも、これら第1及び第2の開閉体D1,D2間の干渉可能性判定は行わなくともよい。例えば、その離間距離αに応じて予め定められた値に、第1及び第2の開閉体D1,D2の動作速度V1,V2を制御する構成としてもよい。そして、互いに接近する第1及び第2の開閉体D1,D2の離間距離αが、その制御目標に従って徐々に縮まるように、これらの動作速度V1,V2を制御する等の構成を採用してもよい。
【0083】
・上記第2の実施形態では、第2の開閉体D2の一時停止制御は、その閉駆動制御(図7参照、ステップ305)を停止することにより行われることとした。しかし、これに限らず、動作速度目標値Vt2を「0」に補正する(Vt2=0)ことにより行ってもよい。
【0084】
・また、上記第2の実施形態では、第2の開閉体D2としてのスライドドア4bを一時停止させた場合、第1の開閉体D1としてのスライドドア4aが再開許可位置Prsに到達したか否かを判定する(図10参照)。そして、一方のスライドドア4aが再開許可位置Prsに到達した場合(ステップ505:YES)に、その一時停止させた他方のスライドドア4bの閉動作を再開させることとした(ステップ506)。
【0085】
しかし、これに限らず、図13のフローチャートに示すように、第2の開閉体D2を一時停止させた後(ステップ704)、所定時間を経過した場合(ステップ705:YES)に、その第2の開閉体D2の閉動作を再開する構成としてもよい(ステップ706)。尚、この図13に示す別例中、ステップ701~ステップ703の各処理は、図10中のステップ501~ステップ503の各処理と同一である。また、この場合における「所定時間」は、その一時停止制御を開始した時点からの経過時間である。このような構成を採用しても、外乱に依らず、第1の開閉体D1よりも遅いタイミングで、その第2の開閉体D2を全閉位置Pcに到達させることができる。
【0086】
・再開許可位置Prsを設定する場合、その再開許可位置Prsの設定は、全閉位置Pcに限らず、任意に変更してもよい。
・また、図14のフローチャートに示すように、第1及び第2の開閉体D1,D2について実際の動作速度V1,V2を検出し(ステップ801)、その動作速度V1,V2間の速度差ΔVを演算する(ΔV=V1-V2、ステップ802)。そして、この速度差ΔVが所定の速度差閾値Vthよりも小さい場合(ΔV<Vth、ステップ803:YES)、その干渉の可能性があると判定する構成としてもよい(ステップ804)。このような構成を採用しても、精度よく、全閉制御時、その第1及び第2の開閉体D1,D2が互いに干渉する可能性を判定することができる。
【0087】
尚、この場合における速度差閾値Vthには、予め定められた一定値を用いてもよく、第1の開閉体D1の動作位置P1に応じた演算値を用いてもよい。そして、その速度差閾値Vthの演算は、例えば、所定の演算式を用いてもよく、第1の開閉体D1の動作位置P1と速度差閾値Vthとが関係づけられたマップや制御テーブルを用いてもよい。
【0088】
・上記各実施形態及び上記各別例では、干渉抑制制御として、その一時停止制御を含め(V2=0)、第2の開閉体D2の動作速度V2を遅くすることとした。しかし、これに限らず、第1の開閉体D1の動作速度V1を速くする構成であってもよい。そして、第2の開閉体D2の動作速度V2を遅くするとともに、第1の開閉体D1の動作速度V1を速くする構成であってもよい。
【0089】
・更に、第1及び第2の開閉体D1,D2が同じ動作速度で全閉制御を開始した後(V1=V2)、その干渉抑制制御によって、第1及び第2の開閉体D1,D2の動作速度V1,V2に速度差(V1>V2)が形成される構成としてもよい。
【0090】
・干渉可能性判定部51による干渉可能性判定は、上記各実施形態及び上記各別例に示す方法以外の方法で行ってもよい。例えば、第2の開閉体D2の動作位置P2が、その第1の開閉体D1の動作位置P1に応じた理論値よりも全閉位置Pcに近づいている場合に、その干渉の可能性があると判定する等としてもよい。また、複数の干渉可能性判定を組み合わせてもよい。更に、干渉抑制制御52による干渉抑制制御についてもまた、状況に応じて、その一時停止制御と速度変更制御とを使い分ける構成としてもよい。そして、干渉可能性判定部51による干渉可能性判定及び干渉抑制制御52による干渉抑制制御の組み合わせについても、任意に変更してもよい。
【0091】
・上記各実施形態では、第1及び第2の開閉体D1,D2について、同時に、その全閉制御が開始されることとした。しかし、これに限らず、第1の開閉体D1よりも遅い開始タイミングで、その第2の開閉体D2を閉動作させる構成としてもよい。
【0092】
例えば、図15のフローチャートに示すように、全閉開始条件の成立後(ステップ901:YES、図5参照)、更に、第2の開閉体D2についての閉動作開始条件が成立したか否かを判定する(ステップ902)。尚、この「第2の開閉体の閉動作開始条件」としては、例えば、ステップ901における全閉開始条件の成立から所定時間の経過、或いは、先行して閉動作を開始した第1の開閉体D1が所定の開始許可位置に到達する等が考えられる。そして、この閉動作開始条件が成立した後(ステップ902:YES)、その第2の開閉体D2の全閉制御が開始される構成とすればよい。
【0093】
このような構成を採用することで、より効果的に、その両開きの構成を有した二枚のスライドドア4a,4bの干渉を抑制することができる。そして、第1及び第2の開閉体D1,D2の動作速度V1,V2に速度差を設定することなく、第2の開閉体D2について、その全閉制御の開始タイミングを遅らせる構成としてもよい。
【0094】
・上記実施形態では、操作入力部11に対する操作入力信号Scrに基づいて、スライドドア4a,4bの全閉要求が検知されることにより、そのスライドドア4a,4bの全閉制御が開始されることとした。しかし、これに限らず、車両1に対する乗員の乗降が完了したことを検知して、自動的に、そのスライドドア4a,4bの全閉要求が生成される構成に具体化してもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、両開きの構成する二枚のスライドドア4a,4bが車両1のドア開口部3を開閉する構成に具体化した。しかし、これに限らず、例えば、二枚のスイングドアやグライドドア等、スライドドア以外の型式のドアを第1及び第2の開閉体D1,D2として、そのドア開口部3を開閉する構成に具体化してもよい。そして、車両1に設けられたドア開口部3以外の開口部を第1及び第2の開閉体D1,D2が開閉する構成に適用してもよい。
【0096】
・上記各実施形態では、個別に設定された各動作速度目標値Vt1,Vt2に、実際の各動作速度V1,V2を追従させるフィードバック制御の実行により、その第1及び第2の開閉体D1,D2を閉駆動することとした。しかし、これに限らず、フィードフォワード制御によって、その第1及び第2の開閉体D1,D2を閉駆動する構成に適用してもよい。
【0097】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)車両の開口部に設けられて互いに相反する方向に開閉動作する第1及び第2の開閉体を全閉位置に閉動作させる全閉制御部を備え、前記全閉制御部は、前記第1の開閉体よりも遅い開始タイミングで前記第2の開閉体を前記閉動作させる車両用開閉体制御装置。これにより、全閉制御時、両開きの構成を有した一対の開閉体の干渉を抑制することができる。
【0098】
(ロ)前記全閉制御部は、前記第2の開閉体の前記閉動作を一時停止させてから所定時間の経過後に、前記第2の開閉体の前記閉動作を再開させる。これにより、外乱に依らず、第1の開閉体よりも遅いタイミングで、その第2の開閉体を全閉位置に到達させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1…車両
3…ドア開口部
4a…スライドドア
4b…スライドドア
10…制御装置
12…ドア制御部
40…車両用開閉体制御装置
40a…全閉制御部
D1…第1の開閉体
D2…第2の開閉体
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