(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187909
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】カバー体
(51)【国際特許分類】
F21S 43/50 20180101AFI20221213BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20221213BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20221213BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20221213BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221213BHJP
【FI】
F21S43/50
F21S43/14
F21W103:00
F21W103:45
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096142
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 友範
(72)【発明者】
【氏名】中島 経之
(72)【発明者】
【氏名】興津 大祐
(57)【要約】
【課題】 意匠性の低下を抑制し得るカバー体を提供する。
【解決手段】 カバー体としてのアウターカバー1は、外部側の面10S1にゲート痕15a~15gを有する第1樹脂部10と、第1樹脂部10と異なる色であり第1樹脂部10の外部側の面10S1に接着しゲート痕15a~15gを覆う第2樹脂部20と、を含む多色成形体2を備え、第2樹脂部20の外部側の面20S1は、ゲート痕15a~15eと重なる段差部25を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部側の面にゲート痕を有する第1樹脂部と、前記第1樹脂部と異なる色であり前記第1樹脂部の前記外部側の面に接着し前記ゲート痕を覆う第2樹脂部と、を含む多色成形体を備え、
前記第2樹脂部の外部側の面は、前記ゲート痕と重なる段差部を有する
ことを特徴とするカバー体。
【請求項2】
前記ゲート痕は凹状の窪みである
ことを特徴とする請求項1に記載のカバー体。
【請求項3】
前記段差部の高さは、前記ゲート痕の深さより小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のカバー体。
【請求項4】
前記段差部は、前記ゲート痕を横切る
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカバー体。
【請求項5】
前記段差部は、前記ゲート痕の中心と重なる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカバー体。
【請求項6】
前記第1樹脂部より前記第2樹脂部側に位置し外部から視認可能で前記ゲート痕と重なるキャラクターが描かれている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカバー体。
【請求項7】
前記キャラクターの少なくとも一部が前記段差部によって描かれる
ことを特徴とする請求項6に記載のカバー体。
【請求項8】
前記段差部は、前記第1樹脂部の前記外部側の面に対して傾き前記ゲート痕を横切る傾斜面によって形成され、
前記傾斜面は前記ゲート痕の中心と重なる
ことを特徴とする請求項1から7のずれか1項に記載のカバー体。
【請求項9】
前記傾斜面の傾斜方向における一方側の縁が、前記ゲート痕の中心と重なる
ことを特徴とする請求項8に記載のカバー体。
【請求項10】
前記一方側の縁は、前記傾斜面の前記傾斜方向における他方側の縁より前記第1樹脂部に近い
ことを特徴とする請求項9に記載のカバー体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー体に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の少なくとも一部を覆うことで当該対象物を保護等するカバー体は、多色成形体によって形成される場合がある。例えば、カバー体としての車両用灯具のアウターカバーは、車両の外観の一部を構成する場合があり、この場合、意匠性が重要視される傾向にある。下記特許文献1には、多色成形体から成り車両の外観の一部を構成する車両用灯具のアウターカバーが開示されている。
【0003】
下記特許文献1の車両用灯具のアウターカバーは、一次成形体である第1樹脂部と二次成形体である第2樹脂部とから成る二色成形体であり、第2樹脂部が第1樹脂部の外部側の面の全体を覆う。このため、特許文献1では、この車両用灯具のアウターカバーは、第1樹脂部の外部側の面に形成されるゲート痕を第2樹脂部によって覆って見えなくすることができ、意匠性の向上を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の車両用灯具のアウターカバーのように、ゲート痕を他の樹脂部によって覆う場合、当該他の樹脂部におけるこのゲート痕を覆っている部位及びその周囲では、ゲート痕が形成される樹脂部側と反対側の面にヒケが生じることがある。上記特許文献1の車両用灯具のアウターカバーでは、第1樹脂部のゲート痕を覆う第2樹脂部は第1樹脂部より外部側に位置しており、このようにヒケが生じる第2樹脂部の面が外部に露出する。このため、当該ヒケによって意匠性が低下することが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、意匠性の低下を抑制し得るカバー体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明のカバー体は、外部側の面にゲート痕を有する第1樹脂部と、前記第1樹脂部と異なる色であり前記第1樹脂部の前記外部側の面に接着し前記ゲート痕を覆う第2樹脂部と、を含む多色成形体を備え、前記第2樹脂部の外部側の面は、前記ゲート痕と重なる段差部を有することを特徴とするものである。
【0008】
このカバー体では、第2樹脂部における第1樹脂部のゲート痕を覆っている部位及びその周囲での外部側の面にヒケが生じる場合であっても当該ヒケと、上記の段差部とを重ね得る。このため、このカバー体によれば、この段差部によってこのヒケを目立ちにくくし得、意匠性の低下を抑制し得る。なお、本明細書における色には、無色透明も含まれる。
【0009】
前記ゲート痕は凹状の窪みであることとしてもよい。
【0010】
この場合、前記段差部の高さは、前記ゲート痕の深さより小さいこととしてもよい。
【0011】
また、前記段差部は、前記ゲート痕を横切ることとしてもよい。
【0012】
このような構成にすることで、第2樹脂部の外部側の面に現れる段差部がヒケを横切るようにし得る。このため、ヒケが形成される領域内にのみ段差部が位置する場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0013】
また、前記段差部は、前記ゲート痕の中心と重なることとしてもよい。
【0014】
ヒケの中心はゲート痕の中心の直上に位置する傾向にある。このため、このような構成にすることで、段差部がヒケの中心と重なるようにし得、段差部とゲート痕の中心とが重ならない場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0015】
また、上記のカバー体には、前記第1樹脂部より前記第2樹脂部側に位置し外部から視認可能で前記ゲート痕と重なるキャラクターが描かれていることとしてもよい。
【0016】
このような構成によれば、キャラクターとヒケとが重なるようにし得、このキャラクターによってヒケをより目立ちにくくし得る。なお、キャラクターとは、図形、記号、及び文字等を意味する。
【0017】
この場合、前記キャラクターの少なくとも一部が前記段差部によって描かれることとしてもよい。
【0018】
前記段差部は、前記第1樹脂部の前記外部側の面に対して傾き前記ゲート痕を横切る傾斜面によって形成され、前記傾斜面は前記ゲート痕の中心と重なることとしてもよい。
【0019】
この場合、前記傾斜面の傾斜方向における一方側の縁が、前記ゲート痕の中心と重なることとしてもよい。
【0020】
第2樹脂部の外部側の面は、上記の傾斜面の縁で屈曲する。このため、このような構成にすることで、第2樹脂部の外部側の面における屈曲する部位がヒケの中心と重なるようにし得、この屈曲する部位がヒケの中心と重ならない場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0021】
この場合、前記一方側の縁は、前記傾斜面の前記傾斜方向における他方側の縁より前記第1樹脂部に近いこととしてもよい。
【0022】
このような構成にすることで、上記の一方側の縁が他方側の縁より第1樹脂部から遠い場合と比べて、ゲート痕の中心上の第2樹脂部の厚さを薄くし得る。このため、上記の場合と比べてヒケを小さくし得、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、意匠性の低下を抑制し得るカバー体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態におけるカバー体を備える車両用灯具を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図1のII-II線における車両用灯具の断面を概略的に示す図である。
【
図3】一次成形体である第1樹脂部及び第3樹脂部を概略的に示す正面図である。
【
図4】二次成形体である第2樹脂部を概略的に示す正面図である。
【
図5】
図2におけるゲート痕の近傍を拡大して示す断面図である。
【
図6】一次成形体である第1樹脂部及び第3樹脂部を成形する状態の一例の概略を示す断面図である。
【
図7】二次成形体である第2樹脂部を成形する状態の一例の概略を示す断面図である。
【
図8】変形例に係るアウターカバーの一部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るカバー体を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0026】
図1は、本発明の実施形態におけるカバー体を備える車両用灯具を概略的に示す正面図である。
図2は、
図1のII-II線における車両用灯具の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具100は、自動車用の標識灯であり、具体的には、テール及びストップランプとバックランプとを一体化したリアコンビネーションランプである。
【0027】
図1、
図2に示すように、本実施形態の車両用灯具100は、概ね左右対称の構成であり、筐体70と、第1光源81と、2つの第2光源82と、第1リフレクタ85と、第2リフレクタ86とを主な構成として備える。筐体70は、カバー体としてのアウターカバー1及びランプハウジング71を主な構成として備える。ランプハウジング71は、1つの開口を有する箱状に構成され、当該開口を塞ぐようにアウターカバー1がランプハウジング71に固定されている。ランプハウジング71及びアウターカバー1によって形成される空間は灯室70Rであり、この灯室70R内に第1光源81、2つの第2光源82、第1リフレクタ85、及び第2リフレクタ86が収容されている。
【0028】
本実施形態のカバー体としてのアウターカバー1は、多色成形体2と、多色成形体2に貼付されるシール3とを備える。本実施形態では、多色成形体2の形状は、上下及び左右に延在し左右方向に長尺な板状形状であり、多色成形体2の厚さは概ね均一である。多色成形体2は、互いに色が異なる第1樹脂部10、第2樹脂部20、及び第3樹脂部30を含み、第1樹脂部10及び第3樹脂部30が一次成形体であり、第2樹脂部20が二次成形体である。第1樹脂部10及び第3樹脂部30は光透過性を有し、第1樹脂部10は赤色であり、第2樹脂部20は無色透明である。第2樹脂部20の色は黒色であり、第2樹脂部20の光透過性は第1樹脂部10より低い。第1樹脂部10、第2樹脂部20、及び第3樹脂部30の材料として、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。
【0029】
図3は、一次成形体である第1樹脂部10及び第3樹脂部30を概略的に示す正面図であり、外部側から第1樹脂部10及び第3樹脂部30を正面視する図である。
図2、
図3に示すように、本実施形態の第1樹脂部10は、上下左右に延在し左右方向に長尺な板状のメイン部11と、メイン部11の上側縁部に接続する上側フランジ部12と、メイン部11の下側縁部に接続する下側フランジ部13とから成る。上側フランジ部12の内部側の面、及び下側フランジ部13の内部側の面は、メイン部11の内部側の面に接続し、これら面によって第1樹脂部10の裏面である内部側の面10S2が形成される。上側フランジ部12、及び下側フランジ部13の厚さは、メイン部11より薄く、第1樹脂部10の表面である外部側の面10S2には、メイン部11と上側フランジ部12との間、及びメイン部11と下側フランジ部13との間に段差部が形成されている。上側フランジ部12、及び下側フランジ部13の厚さは、例えば1.8mm~2.6mm程度であり、メイン部の厚さは、例えば2.6mm~3.2mm程度である。第1樹脂部10の外部側の面10S1の一部である上側フランジ部12の外部側の面には、5つのゲート痕15a~15eが形成されており、これらゲート痕15a~15eは左右方向に間隔をあけて並んでいる。また、面10S1の他の一部である下側フランジ部13の外部側の面には、2つのゲート痕15f~15gが左右方向に間隔をあけて形成されている。これら7つのゲート痕15a~15gは、凹状の窪みであり、形状は概ね同じであり、外縁の形状は概ね円形であり、表面は球面の一部と概ねの同じである。ゲート痕の深さは、例えば、0.7mm~0.8mm程度である。なお、ゲート痕15a~15gの形状は特に制限されるものではなく、例えば、円錐状に窪む形状であってもよい。
【0030】
本実施形態の第3樹脂部30は、右側樹脂部30Rと左側樹脂部30Lとから成る。右側樹脂部30R及び左側樹脂部30Lは、左右方向において互いに概ね対称な位置に配置され、右側樹脂部30R及び左側樹脂部30Lの形状は、左右方向において互いに概ね対称な形状である。このため、左側樹脂部30Lについて説明し、右側樹脂部30Rについての説明は省略する。左側樹脂部30Lは、第1樹脂部10の下方、かつ第1樹脂部10の左右方向の中心より左側に配置される。左側樹脂部30Lは、上下左右に延在し左右方向に長尺な板状のメイン部31と、メイン部31の縁部に接続するフランジ部32とから成る。フランジ部32は、メイン部31の上側縁部、右側縁部、及び下側縁部に亘って連続して延在している。フランジ部32の内部側の面は、メイン部31の内部側の面に接続し、これら面によって第3樹脂部30の裏面である内部側の面30S2が形成される。フランジ部32の厚さは、メイン部31より薄く、第3樹脂部30の表面である外部側の面30S1には、メイン部31とフランジ部32との間に段差部が形成されている。メイン部31の厚さは、例えば第1樹脂部10のメイン部11の厚さと同じであり、フランジ部32の厚さは、例えば第1樹脂部10の上側フランジ部12の厚さと同じである。
【0031】
図4は、二次成形体である第2樹脂部20を概略的に示す正面図であり、外部側から第2樹脂部20を正面視する図である。なお、
図4には、第1樹脂部10及び第3樹脂部30が破線で示されている。
図2、
図4に示すように、本実施形態の第2樹脂部20は、上下左右に延在し左右方向に長尺な板状の上側樹脂部20Uと、上側樹脂部20Uより下方に配置され、上下左右に延在し左右方向に長尺な板状の下側樹脂部20Dとから成る。上側樹脂部20Uは、第1樹脂部10における上側フランジ部12の全体を外部側から覆い、上側フランジ部12の外部側の面に接着している。このため、上側フランジ部12の外部側の面が有する5つのゲート痕15a~15eが上側樹脂部20Uによって覆われている。上側樹脂部20Uの下側縁部は、第1樹脂部10におけるメイン部11の上側縁部の全体に接続し、上側樹脂部20Uの外部側の面とメイン部11の外部側の面とが接続されている。下側樹脂部20Dは、下側フランジ部13の全体、及びフランジ部32の全体を外部側から覆い、当該下側フランジ部13及びフランジ部32の外部側の面に接着している。このため、下側フランジ部13の外部側の面が有する2つのゲート痕15f~15gが上側樹脂部20Uによって覆われている。また、上下方向における第1樹脂部10と第3樹脂部30との隙間が下側樹脂部20Dによって埋められており、第1樹脂部10と第3樹脂部30とが下側樹脂部20Dによって接続され、第1樹脂部10、第2樹脂部20、及び第3樹脂部30が一体になっている。また、下側樹脂部20Dの外周縁部の一部は、メイン部11の下側縁部の全体に接続し、下側樹脂部20Dの外部側の面とメイン部11の外部側の面とが接続されている。また、下側樹脂部20Dの外周縁部の他の一部は、左側樹脂部30Lにおけるメイン部31の上側縁部、右側縁部、及び下側縁部の全体、及び右側樹脂部30Rにおけるメイン部31の上側縁部、左側縁部、及び下側縁部の全体に接続している。そして、下側樹脂部20Dの外部側の面と、左側樹脂部30L及び右側樹脂部30Rにおけるメイン部31の外部側の面とが接続されている。このような第2樹脂部20は、第1樹脂部10のメイン部11及び右側樹脂部30R及び左側樹脂部30Lにおけるメイン部31を覆わず、第2樹脂部20とこれらメイン部11,31とが外部側に露出している。
【0032】
図5は、
図2におけるゲート痕15aの近傍を拡大して示す断面図である。
図4、
図5に示すように、上側樹脂部20Uの外部側の面は、段差部25を有する。本実施形態では、段差部25は当該面の右側の縁から左側の縁まで直線状に延在している。また、当該段差部25は、傾斜面26によって形成されている。この傾斜面26は、第1樹脂部10の外部側の面10S1の一部である上側フランジ部12の外部側の面に対して、上方に向かって上側フランジ部12に近づくように傾いている。このため、上側樹脂部20Uにおける段差部25より上側の厚さは、当該段差部25より下側より薄くなっている。このような段差部25は、
図4に示すように、上側樹脂部20Uの外部側の面を正面視する場合に、5つのゲート痕15a~15eと重なっている。また、このように見る場合での傾斜面26の傾斜方向における段差部25の幅25wは、当該段差部25が重なるそれぞれのゲート痕15a~15eにおける最大の幅より小さく、例えば、0.5mm以下である。このような段差部25は、それぞれのゲート痕15a~15eを横切っている。また、段差部25は、それぞれのゲート痕15a~15eの中心Cと重なっている。より具体的には、傾斜面26の傾斜方向における一方側の縁26e1が、ゲート痕15a~15eの中心Cと重なっている。この一方側の縁26e1は、傾斜面26の傾斜方向における他方側の縁26e2より、第1樹脂部10に近い。また、段差部25の高さ25hは、ゲート痕15a~15eの深さ15Dより小さく、例えば、0.1mm~0.3mm程度ある。なお、段差部25の高さ25hは、段差部25の近傍における上側フランジ部12の外部側の面と垂直な方向の高さである。また、段差部25の高さ25hは、ゲート痕15a~15eの深さ15D以上であってもよい。
【0033】
次に、本実施形態のアウターカバー1における多色成形体2の製造方法について説明する。
【0034】
図6は、一次成形体である第1樹脂部10及び第3樹脂部30を成形する状態の一例の概略を示す断面図であり、ゲート痕15aを形成するゲートを通る断面である。
図6に示すように、第1樹脂部10及び第3樹脂部30は、固定された第1金型41と、第1金型41に対して移動可能な第2金型42とを用いて形成される。第2金型42が第1金型41に押圧されて第1金型41と第2金型42とが合わされた状態において、第1金型41と第2金型42との間には、第1樹脂部10に対応する空間51と第3樹脂部30に対応する空間53とが形成される。第2金型42には、第1樹脂部10に対応する位置に7つのダイレクトゲート45が形成されている。また、第2金型42には、第3樹脂部30の右側樹脂部30R及び左側樹脂部30Lのそれぞれに対応する位置にサイドゲートが形成されている。なお、
図3には、これらサイドゲートに対応する位置が矢印Aで示されており、
図6には、左側樹脂部30Lに対応するサイドゲート46が破線で示されている。このように、第1金型41と第2金型42とが合わされた状態において、第1樹脂部10となる溶融状態の樹脂をダイレクトゲート45から空間51に射出して当該空間51に充填する。そして、図示しないゲートピンの先端部によってダイレクトゲート45を塞いで充填された溶融状態の樹脂を保圧する。また、第3樹脂部30となる溶融状態の樹脂をサイドゲート46から空間53に射出して当該空間53に充填し、充填された溶融状態の樹脂を保圧する。このように空間51,53のそれぞれに充填された溶融状態の樹脂を冷却して固化させることで、一次成形体である第1樹脂部10及び第3樹脂部30が成形される。このとき第1樹脂部10では、ダイレクトゲート45を塞ぐゲートピンの先端部に起因して前述のゲート痕15a~15gが形成され、ゲート痕15a~15gの形状は、この先端部の形状に概ね対応する。なお、第1樹脂部10となる溶融状態の樹脂を空間51に射出するゲートの位置、及び第3樹脂部30となる溶融状態の樹脂を空間53に射出するゲートの位置は特に制限されるものではない。次に、第2金型42を第3金型に交換して、二次成形体である第2樹脂部20を成形する。
【0035】
図7は、第2樹脂部20を成形する状態の一例を概略的に示す断面図であり、
図6と同じ位置における断面図である。
図7に示すように、第3金型43が第1金型41に押圧されて第1金型41と第3金型43とが合わされた状態において、第1金型41と第3金型43との間には、第2樹脂部20に対応する空間52が形成される。第3金型43には、第2樹脂部20に対応する位置に複数のサイドゲート47が形成されている。なお、
図4には、これらサイドゲート47に対応する位置が矢印Bで示されている。このように、第1金型41と第3金型43とが合わされた状態において、第2樹脂部20となる溶融状態の樹脂をサイドゲート47から空間52に射出して当該空間52に充填し、充填された溶融状態の樹脂を保圧する。空間52に充填された溶融状態の樹脂を冷却して固化させることで、二次成形体である第2樹脂部20が成形され、多色成形体2が製造される。なお、第2樹脂部20となる溶融状態の樹脂を空間52に射出するゲートの位置は特に制限されるものではない。
【0036】
次に、
図1に戻って、シール3について説明する。本実施形態のシール3は、多色成形体2における第2樹脂部20の外部側の面20S1の一部である上側樹脂部20Uの外部側の面に貼付される。シール3には、複数のキャラクターが描かれている。このシール3によってアウターカバー1に、第1樹脂部10より第2樹脂部20側に位置し外部から視認可能なキャラクターが描かれる。本実施形態のキャラクターは、白色の「A」「B」及び「C」の文字であり、「B」はゲート痕15cと重なっている。なお、キャラクターは、図形、記号、及び文字等であればよく、キャラクターの数や色は特に制限されるものではない。シール3として、例えば、無色透明な基材層と、当該記載層の一方の面上に形成される印刷層と、基材層の他方の面に上に形成される無色透明な接着剤層とを有する積層体を挙げることができ、印刷層によってキャラクターが描かれる。
【0037】
図1、
図2に示す第1光源81は、テールランプとしての光またはストップランプとしての光を出射する。本実施形態では、第1光源81は、複数のLED(Light Emitting Diode)が左右方向に並べられた所謂LEDアレイであり、それぞれのLEDは白色の光を出射する。第1光源81は、第1樹脂部10におけるメイン部11に対向するように配置され、第1光源81から出射する光は、メイン部11を透過して外部に出射する。第1樹脂部10は赤色であるため、第1光源81から出射する光のうち赤色成分の光が外部に出射する。また、第1光源81から出射する光がメイン部11に効果的に入射するように、第1光源81の周囲が第1リフレクタ85によって囲われている。また、この第1リフレクタ85によって、第1光源81から出射する光が第3樹脂部30におけるメイン部31に入射することが抑制されている。
【0038】
2つの第2光源82は、バックランプとしての光を出射する。本実施形態では、第2光源82は、複数のLEDが左右方向に並べられた所謂LEDアレイであり、それぞれのLEDは白色の光を出射する。一方の第2光源82は、第3樹脂部30の右側樹脂部30Rにおけるメイン部31に対向するように配置され、他方の第2光源82は、左側樹脂部30Lにおけるメイン部31に対向するように配置される。それぞれの第2光源82から出射する光は、メイン部31を透過して外部に出射する。第3樹脂部30は無色であるため、第1光源81から出射する白色の光が外部に出射する。また、第2光源82から出射する光がメイン部31に効果的に入射するように、それぞれの第2光源82の周囲が第2リフレクタ86によって囲われている。また、この第2リフレクタ86によって、第2光源82から出射する光が第1樹脂部におけるメイン部11に入射することが抑制されている。
【0039】
以上説明したように、本実施形態におけるカバー体としてのアウターカバー1は、多色成形体2を備える。多色成形体2は、外部側の面10S1にゲート痕15a~15gを有する第1樹脂部10と、第1樹脂部10と異なる色であり第1樹脂部10の外部側の面10S1に接着しゲート痕15a~15gを覆う第2樹脂部20と、を含む。第2樹脂部20の外部側の面20S1は、ゲート痕15a~15eと重なる段差部25を有する。このため、第2樹脂部20における第1樹脂部10のゲート痕15a~15eを覆っている部位及びその周囲での外部側の面20S1にヒケが生じる場合であっても当該ヒケと、段差部25とを重ね得る。このため、本実施形態のアウターカバー1によれば、この段差部25によってこのヒケを目立ちにくくし得、意匠性の低下を抑制し得る。
【0040】
また、本実施形態のアウターカバー1では、段差部25は、ゲート痕15a~15eを横切る。このため、本実施形態のアウターカバー1によれば、第2樹脂部20の外部側の面20S1に現れる段差部25がヒケを横切るようにし得、ヒケが形成される領域内に段差部25が位置する場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0041】
また、本実施形態のアウターカバー1では、段差部25は、それぞれのゲート痕15a~15eの中心Cと重なる。ヒケの中心はゲート痕の中心の直上に位置する傾向にある。このため、本実施形態のアウターカバー1によれば、段差部25がヒケの中心と重なるようにし得、段差部25とそれぞれのゲート痕15a~15eの中心Cとが重ならない場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0042】
また、本実施形態のアウターカバー1には、第1樹脂部10より第2樹脂部20側に位置し外部から視認可能でゲート痕15cと重なるキャラクターである文字「B」が描かれている。このため、キャラクターである文字「B」とヒケとが重なるようにし得、キャラクターである文字「B」によってヒケをより目立ちにくくし得る。
【0043】
また、本実施形態のアウターカバー1では、段差部25は、第1樹脂部10の外部側の面10S1の一部である上側フランジ部12の外部側の面に対して傾きそれぞれのゲート痕15a~15eを横切る傾斜面26によって形成されている。さらに、この傾斜面26の傾斜方向の一方側の縁26e1が、ゲート痕15a~15eの中心Cと重なっている。第2樹脂部20の外部側の面20S1は、この傾斜面26の縁で屈曲する。本実施形態のアウターカバー1によれば、第2樹脂部20の外部側の面20S1における屈曲する部位がヒケの中心と重なるようにし得、この屈曲する部位がヒケの中心と重ならない場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。なお、傾斜面26とゲート痕15a~15eの中心Cとが重ならなくてもよい。しかし、ヒケをより目立ちにくくする観点では、傾斜面26とゲート痕15a~15eの中心Cとが重なることが好ましく、傾斜面26の一方側の縁26e1が、ゲート痕15a~15eの中心Cと重なることがより好ましい。また、本実施形態のアウターカバー1では、上側フランジ部12の外部側の面に対する傾斜面26の傾き角は鋭角である。このため、本実施形態のアウターカバー1によれば、傾斜面26の傾き角が概ね90度である場合と比べて、傾斜面26の傾斜方向の両側の縁にバリが生じにくくし得る。
【0044】
また、本実施形態のアウターカバー1では、上記の一方側の縁26e1は、傾斜面26の傾斜方向における他方側の縁26e2より第1樹脂部10に近い。このため、一方側の縁26e1が他方側の縁26e2より第1樹脂部10から遠い場合と比べて、それぞれのゲート痕15a~15eの中心C上の第2樹脂部20の厚さを薄くし得る。このため、本実施形態のアウターカバー1によれば、上記の場合と比べてヒケを小さくし得、ヒケをより目立ちにくくし得る。なお、一方側の縁26e1が他方側の縁26e2より第1樹脂部10から遠くてもよい。このような場合であっても、第2樹脂部20の外部側の面20S1における屈曲する部位がヒケの中心と重なるようにし得、この屈曲する部位がヒケの中心と重ならない場合と比べて、ヒケをより目立ちにくくし得る。
【0045】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、互いに色の異なる第1樹脂部10、第2樹脂部20、及び第3樹脂部30を含む多色成形体2を例に説明した。しかし、多色成形体2は、互いに色の異なる第1樹脂部10及び第2樹脂部20を含んでいればよく、例えば、多色成形体2は、第3樹脂部30を含まなくてもよい。また、第1樹脂部10及び第2樹脂部20を含む樹脂部の色も特に制限されるものではない。例えば、上記実施形態において、第3樹脂部30が透光性を有する橙色とされ、2つの第2光源82がターンランプとして光を出射する構成とされてもよい。このようにすることで、車両用灯具100を、テール及びストップランプとターンランプとを一体化したリアコンビネーションランプとすることができる。このように、アウターカバー1が用いられる車両用灯具は特に制限されるものではない。
【0047】
また、上記実施形態では、カバー体として、車両用灯具100に用いられるアウターカバー1を例に説明した。しかし、カバー体は特に制限されるものではない。例えば、カバー体は、ミリ波レーダー、ライダー等のセンサを収容する筐体の一部であってもよく、この場合、カバー体における多色成形体は、光透過性の低い複数の樹脂部から成り、外部から内部を視認できない構成であってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、外部側の面10S1に7つのゲート痕15a~15gを有する第1樹脂部10を例に説明した。しかし、ゲート痕の数は特に制限されるものではなく、例えば1つであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、直線状に延在して5つのゲート痕15a~15eを横切る段差部25を例に説明した。しかし、段差部25はゲート痕と重なっていればよく、段差部25が重なるゲート痕の数は特に制限されるものではない。例えば、段差部25は曲線状に延在して複数のゲート痕を横切ってもよい。また、段差部25の全体と1つのゲート痕の一部とが重なっていてもよく、このような段差部25として、例えば、溝によって形成されるものを挙げることができる。また、第2樹脂部20の外部側の面20S1が有する段差部25の数は、特に制限されるものではない。例えば、上記実施形態において、この面20S1は直線状に延在して2つのゲート痕15f~15gと重なる別の段差部を更に有していてもよい。また、面20S1がゲート痕の数と同じ数の段差部25を有し、それぞれの段差部25が互いに異なるゲート痕と重なっていてもよく、複数の段差部が同じゲート痕と重なっていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、段差部25は、第1樹脂部10の外部側の面10S1に対して傾く傾斜面26によって形成されていた。しかし、段差部25は、外部側の面10S1に対して概ね垂直な面によって形成されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、多色成形体2に貼付されるシール3によって外部から視認可能なキャラクターが描かれるアウターカバー1を例に説明した。しかし、キャラクターは、第1樹脂部10より第2樹脂部20側に位置し外部から視認可能であればよく、例えば、キャラクターの少なくとも一部が段差部25によって描かれてもよい。
図8は、変形例に係るアウターカバーの一部を拡大して示す正面図である。
図8に示す変形例のアウターカバー1は、段差部25とは別の段差部125を更に備える点で上記実施形態のアウターカバー1と異なり、この段差部125は、配置が異なる点において段差部25と異なる。本変形例では、第2樹脂部20の外部側の面20S1の一部である下側樹脂部20Dにおける外部側の面が段差部125を有する。段差部125は、四角形を描くように延在し、2つのゲート痕15f~15gを横切る。下側樹脂部20Dの外部側の面における段差部125によって囲われる領域は、他の領域よりも第1樹脂部10側に近い。このように、本変形例のアウターカバー1には、キャラクターとしての四角形が段差部125によって描かれ、当該キャラクターとしての四角形は、第1樹脂部10より第2樹脂部20側に位置し2つのゲート痕15f~15gと重なっている。このようなキャラクターとしての四角形であっても、第2樹脂部20の外部側の面20S1のヒケを目立ちにくくし得る。なお、キャラクターの一部が第2樹脂部20の外部側の面20S1が有する段差部によって描かれ、キャラクターの他の一部がこの面20S1に貼付されるシールによって描かれもよい。また、第2樹脂部20が透光性を有する場合、例えば、第2樹脂部20の内部にキャラクターが描かれたシールが配置され、当該キャラクターが外部から視認可能でゲート痕と重なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、意匠性の低下を抑制し得るカバー体が提供され、自動車等の車両用灯具の筐体等の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・アウターカバー(カバー体)
2・・・多色成形体
3・・・シール
10・・・第1樹脂部
10S1・・・第1樹脂部の外部側の面
15a~15g・・・ゲート痕
20・・・第2樹脂部
20S1・・・第2樹脂部の外部側の面
25,125・・・段差部
26・・・傾斜面
30・・・第3樹脂部