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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187910
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/40 20190101AFI20221213BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60L58/40
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096143
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小野 大輔
【テーマコード(参考)】
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF27
5H030FF31
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA13
5H125AC07
5H125AC14
5H125BC08
5H125BD01
5H125DD18
5H125DD19
5H125EE56
5H125EE64
5H125EE65
(57)【要約】
【課題】ナビゲーション装置のような部品を用いることなく、坂道走行を考慮した蓄電装置の充電状態にすることができる燃料電池車両を提供する。
【解決手段】走行モータを含む車両負荷42に電気的に接続された燃料電池スタック31と、車両負荷42と並列に燃料電池スタック31に電気的に接続されたキャパシタ39と、気圧を検出する大気圧センサ45と、燃料電池システム側ECU37を備える。燃料電池システム側ECU37は、大気圧センサ45により検出した気圧に基づいて車両の高度を算出する。燃料電池システム側ECU37は、車両の現在位置での車両の高度に基づいて坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態を算出する。燃料電池システム側ECU37は、燃料電池スタック31の発電量を制御してキャパシタ39を、算出した充電状態にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータを含む負荷に電気的に接続された燃料電池スタックと、
前記負荷と並列に前記燃料電池スタックに電気的に接続された蓄電装置と、
気圧を検出する大気圧センサと、
前記大気圧センサにより検出した気圧に基づいて車両の高度を算出する車両高度算出部と、
車両の現在位置での前記車両高度算出部により算出した車両の高度に基づいて坂道走行を考慮した前記蓄電装置の充電状態を算出する充電状態算出部と、
前記燃料電池スタックの発電量を制御して前記蓄電装置を前記充電状態算出部により算出した充電状態にする制御部と、
を備えることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
車両走行中における前記車両高度算出部により算出した車両の高度の平均値を算出する車両高度平均値算出部を更に備え、
前記充電状態算出部は、車両の現在位置での前記車両高度算出部により算出した車両の高度と前記車両高度平均値算出部により算出した車両の高度の平均値とから坂道走行を考慮した前記蓄電装置の充電状態を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記車両高度算出部は、今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
気温を検出する温度センサを更に備え、
前記車両高度算出部は、前記大気圧センサにより検出した気圧、及び、前記温度センサにより検出した気温から車両の高度を算出する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の燃料電池車両においては、燃料電池車両の位置情報および地図情報に基づいて、設定された区間において燃料電池車両が登坂路を走行しないことが予測されるとき、二次電池の充電率が45~60%で維持されるよう充電させる。また、登坂路を走行することが予測されるとき、二次電池の充電率が55~60%で維持されるよう充電させるとともに、燃料電池車両が登坂路を走行する際に駆動モータに供給される電力のうち少なくとも一部を二次電池から供給させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地図情報に基づき登坂路、降坂路を予測するためにはナビゲーション装置等が必要である。そこで、ナビゲーション装置のような部品を用いることなく、坂道走行を考慮した蓄電装置の充電状態にすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための燃料電池車両は、走行モータを含む負荷に電気的に接続された燃料電池スタックと、前記負荷と並列に前記燃料電池スタックに電気的に接続された蓄電装置と、気圧を検出する大気圧センサと、前記大気圧センサにより検出した気圧に基づいて車両の高度を算出する車両高度算出部と、車両の現在位置での前記車両高度算出部により算出した車両の高度に基づいて坂道走行を考慮した前記蓄電装置の充電状態を算出する充電状態算出部と、前記燃料電池スタックの発電量を制御して前記蓄電装置を前記充電状態算出部により算出した充電状態にする制御部と、を備えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、大気圧センサにより気圧が検出され、車両高度算出部において、大気圧センサにより検出した気圧に基づいて車両の高度が算出される。充電状態算出部において、車両の現在位置での車両高度算出部により算出した車両の高度に基づいて坂道走行を考慮した蓄電装置の充電状態が算出される。制御部において、燃料電池スタックが制御されて蓄電装置が充電状態算出部により算出した充電状態にされる。よって、ナビゲーション装置のような部品を用いることなく、坂道走行を考慮した蓄電装置の充電状態にすることができる。
【0007】
また、燃料電池車両において、車両走行中における前記車両高度算出部により算出した車両の高度の平均値を算出する車両高度平均値算出部を更に備え、前記充電状態算出部は、車両の現在位置での前記車両高度算出部により算出した車両の高度と前記車両高度平均値算出部により算出した車両の高度の平均値とから坂道走行を考慮した前記蓄電装置の充電状態を算出するとよい。
【0008】
また、燃料電池車両において、前記車両高度算出部は、今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正するとよい。
また、燃料電池車両において、気温を検出する温度センサを更に備え、前記車両高度算出部は、前記大気圧センサにより検出した気圧、及び、前記温度センサにより検出した気温から車両の高度を算出するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ナビゲーション装置のような部品を用いることなく、坂道走行を考慮した蓄電装置の充電状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における燃料電池フォークリフトの概略側面図。
図2】燃料電池フォークリフトにおける燃料電池システム及び車両システムの概略構成図。
図3】作用を説明するためのフローチャート。
図4】(a),(b),(c),(d),(e)はキースイッチのオン/オフ状態の推移、車両の高度の推移、気圧の推移、気温の推移、キャパシタのSOC補正量の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を燃料電池フォークリフトに具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、燃料電池フォークリフト10の車体11の前側下部には駆動輪(前輪)12aが設けられ、車体11の後側下部には操舵輪(後輪)12bが設けられている。マスト13が車体11の前部に立設されている。マスト13は車体11に対して前後に傾動可能に支持された左右一対のアウタマスト13aと、これにスライドして昇降するインナマスト13bとからなる。各アウタマスト13aの後部にはリフトシリンダ14が配設されている。インナマスト13bの内側にはフォーク15を備えたリフトブラケット16が昇降可能に支持されている。そして、リフトシリンダ14の伸縮作動によりフォーク15がリフトブラケット16とともに昇降される。
【0012】
左右一対のティルトシリンダ17は、その基端側が車体11に対して回動可能に連結されるとともに、先端側がアウタマスト13aの側面に回動可能に連結されている。マスト13はティルトシリンダ17が伸縮駆動されることで前後に傾動する。
【0013】
運転室18の前側にリフトレバー19及びティルトレバー20が装備されている。リフトレバー19はフォーク15を昇降させるためのレバーであり、ティルトレバー20はマスト13を前後方向に傾動させるためのレバーである。運転室18の下部にはアクセルペダル21が設けられ、アクセルペダル21の操作量に応じた車速にされる。
【0014】
燃料電池フォークリフト10は燃料電池システム22を備える。車体11には燃料電池システム22、走行モータ23及び荷役モータ24が搭載されている。燃料電池システム22により走行モータ23を駆動させ、駆動輪12aが駆動されるようになっている。詳しくは、走行モータ23の出力軸が駆動輪12aの回転軸と減速機(図示略)を介して連結されており、走行モータ23の駆動により出力軸が回転するとその回転に伴って駆動輪12aの回転軸が回転して駆動輪12aが駆動される。
【0015】
また、燃料電池システム22により荷役モータ24が駆動され、この荷役モータ24の駆動により荷役ポンプ(図示略)が駆動される。この荷役ポンプの駆動に基づいてリフトシリンダ14やティルトシリンダ17を伸縮動作してフォーク15の上下動やティルト動作を行うことができるようになっている。
【0016】
このように、燃料電池システム22は、リフトシリンダ14及びティルトシリンダ17の油圧源となる荷役モータ24及び走行モータ23の電源として使用される。
次に、図2を用いて燃料電池システム22と車両システム30について説明する。
【0017】
図2に示すように、燃料電池システム22は、燃料電池スタック31と水素タンク32とコンプレッサ33と電磁弁34とインジェクタ35とリレーコンタクト36を備える。燃料電池システム22は、電子制御ユニット(以下、燃料電池システム側ECUという)37とDC/DCコンバータ38と蓄電装置としてのキャパシタ39と端子電圧検出器40と充放電電流検出器41を備える。車両システム30は、車両負荷42(走行モータ23、荷役モータ24等)と、電子制御ユニット(以下、車両側ECUという)43と、キースイッチ44等を有する。燃料電池スタック31は、車両負荷42に電気的に接続される。
【0018】
燃料電池システム22における燃料電池スタック31は、複数のセルを積層して構成されており、各セルは電気的に直列接続されている。水素タンク32は、電磁弁34及びインジェクタ35を介して燃料電池スタック31に水素ガスを供給可能である。コンプレッサ33は燃料電池スタック31に酸素を含む空気を供給可能である。そして、水素タンク32から供給される水素とコンプレッサ33から供給される空気中の酸素とが燃料電池スタック31内で化学反応を起こすことによって、電気エネルギーが生成される。
【0019】
燃料電池スタック31と水素タンク32を繋ぐ配管に電磁弁34が設けられている。電磁弁34により燃料電池スタック31に供給される水素ガス量が調整される。電磁弁34及びコンプレッサ33は燃料電池システム側ECU37によって制御される。
【0020】
燃料電池スタック31の正極出力端子にはリレーコンタクト36を介してDC/DCコンバータ38が接続されている。リレーコンタクト36を閉じた状態で燃料電池スタック31の正極出力端子には、DC/DCコンバータ38を介してキャパシタ39が接続されている。キャパシタ39には車両負荷42が接続されている。つまり、燃料電池スタック31は、DC/DCコンバータ38、キャパシタ39を介して車両負荷42に電気的に接続されている。そして、燃料電池スタック31で発電された直流電力は、DC/DCコンバータ38によって所定の電圧まで降圧された後、キャパシタ39を介して車両負荷42に出力される。また、燃料電池スタック31は下流のDC/DCコンバータ38によりキャパシタ電圧に電圧変換されると同時に、燃料電池スタック31の出力電流を決定している。キャパシタ39はDC/DCコンバータ38の出力と並列に取り付けられ、車両システム30へ電力供給している。
【0021】
キャパシタ39として、リチウムイオンキャパシタ、電気二重キャパシタを用いることができる。
車両負荷42は、操作部材としてのアクセルペダル21、リフトレバー19及びティルトレバー20の操作に基づいて駆動する走行モータ23及び荷役モータ24を含んでいる。即ち、車両負荷42は、荷役モータ24や車軸を駆動するための走行モータ23等であり、燃料電池システム22から供給される電力によって荷役モータ24や走行モータ23が駆動されることによって、車両の荷役動作や走行動作が行われる。
【0022】
キャパシタ39は、車両負荷42(走行モータ23、荷役モータ24等)と並列に燃料電池スタック31に電気的に接続されている。キャパシタ39においては、燃料電池スタック31の発電電力が車両負荷42(走行モータ23、荷役モータ24等)の要求電力を上回る場合には、余剰の電力がキャパシタ39に充電される。一方、発電電力が要求電力を下回る場合には、不足分の電力がキャパシタ39から放電される。また、キャパシタ39には、端子電圧検出器40が取り付けられている。端子電圧検出器40により、キャパシタ39の端子電圧を検出することができる。キャパシタ39の充放電ラインには充放電電流検出器41が設けられている。充放電電流検出器41により、キャパシタ39の充放電電流を検出することができる。
【0023】
燃料電池システム側ECU37は、マイクロコンピュータを中心に構成されている。燃料電池システム側ECU37は、端子電圧検出器40により検出したキャパシタ39の端子電圧、及び、充放電電流検出器41により検出したキャパシタ39の充放電電流に基づいてキャパシタ39の充電状態としての充電率(SOC:State of charge)を推定することができる。
【0024】
車両システム30における車両側ECU43は、マイクロコンピュータを中心に構成され、走行モータ23や荷役モータ24等の車両システム30全体を制御している。キースイッチ44は、オペレータ(乗員)によって操作される。
【0025】
燃料電池システム側ECU37と車両側ECU43とは接続されている。詳しくは、燃料電池システム側ECU37と車両側ECU43とはシリアル通信やCAN通信等の通信手段により通信できるようになっている。
【0026】
車両側ECU43とキースイッチ44とが接続されている。キースイッチ44の操作に基づきオン/オフ信号が車両側ECU43を介して燃料電池システム側ECU37に送られる。燃料電池システム側ECU37は、キースイッチ44のオンに伴いリレーコンタクト36を閉じるとともにキースイッチ44のオフに伴いリレーコンタクト36を開く。
【0027】
燃料電池スタック31における水素供給経路の入口には水素圧力検出センサ47が設けられている。水素圧力検出センサ47は、水素タンク32から電磁弁34及びインジェクタ35を介して燃料電池スタック31に水素が供給される際の燃料電池スタック31での入口水素圧力を検出する。この入口水素圧力は絶対圧力である。水素圧力検出センサ47の検出信号は燃料電池システム側ECU37に送られる。
【0028】
燃料電池フォークリフト10は、大気圧センサ45を備える。大気圧センサ45は、燃料電池システム側ECU37を搭載した基板上にICチップ化されて実装されている。大気圧センサ45は、気圧を検出する。大気圧センサ45の検出信号は燃料電池システム側ECU37に送られる。燃料電池システム側ECU37は、水素圧力検出センサ47による燃料電池スタック31での入口水素絶対圧力と大気圧センサ45による大気圧により燃料電池スタック31での入口水素相対圧力(ゲージ圧力)を検知している。
【0029】
車両の高度と気圧の関係として、高いところほど気圧が低いことを考慮して、燃料電池システム側ECU37は、大気圧センサ45により検出した気圧に基づいて車両の高度を算出することができるようになっている。燃料電池システム側ECU37は、車両走行中における車両の高度の平均値を算出することができるようになっている。
【0030】
燃料電池フォークリフト10は、温度センサ46を備える。温度センサ46は、気温を検出する。温度センサ46の検出信号は燃料電池システム側ECU37に送られる。
<作用>
次に、このように構成した燃料電池フォークリフト10の作用について説明する。
【0031】
図3には、燃料電池システム側ECU37が実行する処理を示す。
図4(a)には、キースイッチ44のオンオフ状態の推移を示す。図4(b)には、車両の高度の推移を示す。
【0032】
図4(a)、図4(b)において、燃料電池フォークリフト10が工場等において8時~12時まで使用される。燃料電池フォークリフト10が工場等において13時~17時まで使用される。
【0033】
詳しくは、前日の17時のタイミングt1においてキースイッチ44がオフ状態にされる。車両は移動されることなく翌日の8時のタイミングt10においてキースイッチ44がオン状態にされ、12時のタイミングt18においてキースイッチ44がオフ状態にされる。さらに、13時のタイミングt19においてキースイッチ44がオン状態にされ、17時のタイミングt27においてキースイッチ44がオフ状態にされる。
【0034】
図4(a)においてt10のキースイッチ44がオン状態にされるタイミングが初回起動されるタイミングである。初回起動は、タイマ機能が日付を認識し日付が変わった後において実際に燃料電池フォークリフト10を使用し始めるタイミングである。なお、ここで述べる初回起動とは、燃料電池システムが組み立てられた後に起動することではなく、前回の燃料電池システムの稼働が終了してから所定時間以上充分に経過した時や、タイマ機能が日付を認識し日付が変わった後であったりした時に、初めて起動をすることを意図している。
【0035】
この初回起動時(t10のタイミング)において、その時の車両高度と、t1のタイミングで示す前日の駆動終了時の車両の高度に基づいて車両の高度の補正係数が算出されることになる。この補正係数は、例えば、t10のタイミング以降において当日の車両高度の算出の際に、今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正するためのものである。
【0036】
図4(b)に示すように、t10~t11の期間に停車または水平面を走行し、t11~t12の期間に登坂路を走行し、t12~t13の期間に停車または水平面を走行し、t13~t14の期間に登坂路を走行する。その後、t14~t15の期間に停車または水平面を走行し、t15~t16の期間に降坂路を走行し、t16~t17の期間に停車または水平面を走行し、t17~t18の期間に降坂路を走行する。また、t19~t20の期間に停車または水平面を走行し、t20~t21で降坂路を走行し、t21~t22の期間に停車または水平面を走行し、t22~t23で降坂路を走行する。その後、t23~t24の期間に停車または水平面を走行し、t24~t25で登坂路を走行し、t25~t26の期間に停車または水平面を走行し、t26~t27で登坂路を走行する。
【0037】
図4(c)には、気圧の推移を示す。気圧は、車両の高度が高いと低くなり、逆に、車両の高度が低いと高くなる。
図4(d)には、気温の推移を示す。気温は例えば14時頃がピークとなる。
【0038】
図4(e)には、キャパシタ39のSOC補正量の推移を示す。SOC補正量は、車両の高度(気圧)に応じて調整される。
図3に示すように、燃料電池システム側ECU37は、ステップS10でキースイッチ44がオン操作されたか否か判定する。燃料電池システム側ECU37は、ステップS10でキースイッチ44がオン操作されると、ステップS11に移行して実際に燃料電池フォークリフト10を使用し始める初回起動か否か判定する。
【0039】
燃料電池システム側ECU37は、ステップS11で初回起動であると、ステップS12に移行して大気圧センサ45により検出した気圧と温度センサ46により検出した気温から仮の車両の高度を算出する。このとき、気温と気圧の関係として、気温が高いほど気圧も高くなるので、気温を考慮して仮の車両の高度を算出する。このようにして算出した仮の車両の高度が、今回の駆動開始時の車両の高度となる。そして、燃料電池システム側ECU37は、ステップS13で前回の駆動終了時の車両の高度と温度センサ46により検出した気温から車両の高度の補正係数を算出する。この補正係数を用いて、今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正が行われることになる。
【0040】
図4(a)、図4(b)、図4(d)を用いて補正係数の算出について説明する。
t10のタイミングでのキースイッチ44のオン時において次のようになる。図4(b)のt1のタイミングでの車両の高度H1と、t10のタイミングでの車両の高度H10と、図4(d)のt1のタイミングでの気温T1と、t10のタイミングでの気温T10に基づいて補正係数が求められる。
【0041】
燃料電池システム側ECU37は、初回起動時に図3のステップS13の処理を行って補正係数を算出した後において、ステップS14において次のようにする。燃料電池システム側ECU37は、気圧と気温から車両の高度を算出するとともに、車両の高度を補正係数で補正する。詳しくは、大気圧センサ45により検出した気圧と温度センサ46により検出した気温から車両の高度を算出する。このとき、気温と気圧の関係として、気温が高いほど気圧も高くなるので、気温を考慮して車両の高度を算出する。また、燃料電池システム側ECU37は、補正係数を用いて今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正する。補正係数はステップS13で算出したものである。つまり、補正係数を用いてキースイッチ44のオフ状態では車両は移動されないことを考慮して車両高度を補正する。
【0042】
燃料電池システム側ECU37は、ステップS14の処理を実行した後、ステップS15に移行して車両が稼働している時の車両走行中における車両の高度の平均値を算出する。例えば、最大値(最高高度)と最小値(最低高度)とをホールドしておき、直近の最大値(最高高度)と直近の最小値(最低高度)の平均値(図4(b)参照)を求める。
【0043】
燃料電池システム側ECU37は、ステップS15の処理を実行した後、ステップS16に移行する。燃料電池システム側ECU37はステップS16において車両の現在位置での車両の高度と車両の高度の平均値とから、坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態とするためのSOC目標値の補正量を算出する。広義には、燃料電池システム側ECU37は、車両の現在位置での車両の高度に基づいて坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態を算出する。
【0044】
つまり、現在の車両の高度が平均高度よりも低いと、今後、車両が登り坂を上る可能性が高いのでSOCを上げる様なSOC補正量を設定する。一方、現在の車両の高度が平均高度よりも高いと、今後、車両が降り坂を下る可能性が高いのでSOCを下げる様なSOC補正量を設定する。
【0045】
詳しくは、図4(a)~(e)に示すように、SOC補正量は、例えば標準的な高度(例えば高度の平均値)において0である。SOC補正量は、t11~t12での登坂路走行時にはマイナス側に徐々に大きくされる。SOC補正量は、t13~t14での登坂路走行時には更にマイナス側に徐々に大きくされる。SOC補正量は、t15~t16での降坂路走行時には0に向かって徐々に小さくされる。SOC補正量は、t17~t18での降坂路走行時には更に0に向かって徐々に小さくされる。SOC補正量は、t20~t21での降坂路走行時にはプラス側に徐々に大きくされる。SOC補正量は、t22~t23での降坂路走行時には更にプラス側に徐々に大きくされる。SOC補正量は、t24~t25での登坂路走行時には0に向かって徐々に小さくされる。SOC補正量は、t26~t27での登坂路走行時には更に0に向かって徐々に小さくされる。
【0046】
登坂路走行時にはキャパシタ39が放電される。また、降坂路走行時にはキャパシタ39が回生電力により充電される。
図3のステップS16の処理を実行した後、燃料電池システム側ECU37は、ステップS17に移行する。燃料電池システム側ECU37は、ステップS17においてSOC補正量に基づく燃料電池スタック31の発電量を制御する。広義には、燃料電池システム側ECU37は、燃料電池スタック31の発電量を制御してキャパシタ39を、算出した充電状態にする。
【0047】
例えば、発電制御の際に、例えば標準的な高度(例えば高度の平均値)においてSOCが80%となるように制御し、標準的な高度よりも高い場所では例えばSOCが75%となるように制御する。一方、標準的な高度よりも低い場所では例えばSOCが85%になるように制御する。
【0048】
ステップS17の処理を実行した後、燃料電池システム側ECU37は、ステップS18でキースイッチ44がオフ操作されたか否か判定する。燃料電池システム側ECU37は、ステップS18でキースイッチ44がオフ操作されないと、ステップS14に戻る。
【0049】
燃料電池システム側ECU37は、ステップS18でキースイッチ44がオフ操作されると、ステップS19に移行して車両の高度を保存する。この保存した車両の高度が、例えば初回起動における次回の駆動開始時の車両の高度に対応する前回の駆動終了時の車両の高度となる。
【0050】
特許文献1に開示の燃料電池車両においては、地図情報に基づき、登坂路/降坂路を予測している。
本実施形態においては、燃料電池システム側ECU37に搭載されている大気圧センサ45を使って車両の高度の推定を行う。そのため、部品追加なしに坂道走行を考慮したキャパシタの充電状態を最適状態にする機能を実装できる。また、天気などによる気圧変化は前回キースイッチ44のオフ時の車両の高度情報や気温情報から補正をする。
【0051】
特に、フォークリフトは稼働範囲が限られた車両であり、大気圧センサ45による気圧に基づいて車両の現在の高度を算出し、車両の高度の平均値と現在の高度から最適なSOCになるようにすべく燃料電池スタック31の発電量を決定する。例えば車両が平均より低い場所にいると気圧が高いので、SOCが高くなるように発電する。また、車両が平均より高い場所にいると気圧が低いので、SOCが低くなるように発電する。
【0052】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)燃料電池車両としての燃料電池フォークリフト10の構成として、走行モータ23を含む負荷としての車両負荷42に電気的に接続された燃料電池スタック31を備える。燃料電池フォークリフト10は、車両負荷42と並列に燃料電池スタック31に電気的に接続された蓄電装置としてのキャパシタ39を備える。燃料電池フォークリフト10は、気圧を検出する大気圧センサ45と、燃料電池システム側ECU37を備える。車両高度算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS14で大気圧センサ45により検出した気圧に基づいて車両の高度を算出する。充電状態算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS16で車両の現在位置での車両高度算出部により算出した車両の高度に基づいて坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態を算出する。制御部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS17で燃料電池スタック31の発電量を制御してキャパシタ39を充電状態算出部により算出した充電状態にする。
【0053】
よって、ナビゲーション装置のような部品を用いることなく、坂道走行を考慮したキャパシタの充電状態にすることができる。また、車両の高度が高い場所ではSOCが小さくされるので、降坂路走行時においてキャパシタ39に回生電力を効率よく回収でき、燃費の向上に貢献することができる。また、大気圧センサは燃料電池車両に既存のセンサのため、部品の追加によるコストアップを抑制できる。
【0054】
(2)燃料電池システム側ECU37で構成される車両高度平均値算出部を更に備える。車両高度平均値算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS15で車両走行中における車両高度算出部により算出した車両の高度の平均値を算出する。充電状態算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS16で次のようにする。燃料電池システム側ECU37は、車両の現在位置での車両高度算出部により算出した車両の高度と車両高度平均値算出部により算出した車両の高度の平均値とから坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態を算出する。よって、車両走行中における車両の高度の平均値に基づいて坂道走行を考慮したキャパシタ39の充電状態を算出することができる。
【0055】
(3)車両高度算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS13,S14で今回の駆動開始時の車両の高度が前回の駆動終了時の車両の高度と等しくなるよう補正する。よって、天気の変化を考慮して車両の高度を高精度に算出することができる。
【0056】
(4)気温を検出する温度センサ46を更に備え、車両高度算出部としての燃料電池システム側ECU37は、図3のステップS14で大気圧センサ45により検出した気圧、及び、温度センサ46により検出した気温から車両の高度を算出する。よって、気温を考慮して車両の高度を高精度に算出することができる。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇蓄電装置としてキャパシタを用いたが、キャパシタ以外の蓄電装置、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等であってもよい。
【0058】
○燃料電池車両は燃料電池フォークリフトであったが、フォークリフト以外の産業車両、例えば無人搬送車等であってもよい。また、燃料電池車両は、産業車両以外の車両、例えば乗用車、バス、トラック等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…燃料電池フォークリフト、23…走行モータ、31…燃料電池スタック、37…燃料電池システム側ECU、39…キャパシタ、42…車両負荷、45…大気圧センサ、46…温度センサ。
図1
図2
図3
図4