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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018792
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】トランス
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220120BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220120BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F27/28 131
H01F27/32 150
H01F30/10 S
H01F30/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122147
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151597
【氏名又は名称】株式会社東郷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043EA01
5E043EA06
5E044BB01
5E044BB05
(57)【要約】
【課題】放熱に優れた構造を備えるトランスを提供すること。
【解決手段】トランス1は、筒状のボビン2と、ボビン2の外周に沿いかつ軸線Tに沿って巻かれたコイル3を有する。コイル3は、径方向に突出する突出部33を有する。ボビン2は、コイル3の突出部33に対して軸線Tの方向に対面する位置決め部27を有する。位置決め部27が突出部33と協働してコイル3のボビン2に対する軸線Tの方向の移動を規制する。突出部33は、コイル3の軸線Tの方向の第1端部31から径方向外方に突出する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスであって、
筒状のボビンと、
前記ボビンの外周に沿いかつ軸線に沿って巻かれたコイルを有し、
前記コイルは、径方向に突出する突出部を有し、
前記ボビンは、前記コイルの前記突出部に対して前記軸線の方向に対面する位置決め部を有し、前記位置決め部が前記突出部と協働して前記コイルの前記ボビンに対する前記軸線の方向の移動を規制するトランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスであって、
前記突出部は、前記コイルの前記軸線の方向の第1端部から径方向外方に突出し、前記コイルの前記第1端部は前記ボビンを貫通するコア体のコア脚部の端部から前記径方向に延出するコアアームに前記軸線の方向に当接するトランス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトランスであって、
前記突出部は、前記コイルの前記軸線の方向の第1端部から径方向外方に突出し、前記コイルは、前記突出部から前記第1端部と反対側の第2端部に向けて延出する端子を有するトランス。
【請求項4】
請求項2または2を引用する3のいずれか1つに記載のトランスであって、
前記ボビンの外周に沿って延出する第2コイルを有し、前記ボビンは、前記第2コイルを保持する保持部と、前記保持部の内周側に形成されかつ前記コイルを収容する設置溝と、前記第2コイルの内周面と前記コイルの外周面を対向することを許容する第1開口と、前記コイルの内周面を前記ボビンに挿通された前記コア体の前記コア脚部に対向することを許容する第2開口を有し、前記第2コイルの内周面と前記コイルの外周面が前記第1開口に充填された充填剤を介して熱伝導可能であるトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渦巻き状に巻かれた平面コイルを有するトランスが知られている。このトランスは、複数の平面コイルと、複数の平面コイルを厚み方向に重ねた状態で保持するボビンを備えている。平面コイルは、ボビンに形成されたスロットに挿入することでボビンに保持される。他の入力電圧または出力電圧に対応するように長さの異なる平面コイルが用いられることもある。この場合でも平面コイルは、同じボビンを利用して保持される。しかしこの種のトランスは、平面視において面積が広いとの問題があった。
【0003】
これに対して、特許文献1のトランスは、筒状のボビンと、ボビンの外周に沿いかつ軸線に沿って筒状に巻かれたコイルを備えている。したがって筒状のコイルは、平面コイルと比較して小型である。さらにボビンは、断面U字状でかつ開口部同士が対向するように組み合わされた2つの分割体を有する。2つの分割体の重なる量を調整することで2つの分割体の間に形成される中空部の大きさを調整できる。これにより中空部に設置される鉄芯の許容数を変えることができる。したがって同じボビンを利用して能力の異なるトランスを構成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-313655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし筒状に巻かれたコイルは、平面コイルに比べて放熱することが容易でない構造である。そのため放熱に優れた構造を備えるトランスが従来必要とされている。また、トランス製造時、トランスの能力に応じてコイルの巻数が異なり、能力が異なる各種のトランスの製造毎に大きさの異なる複数種類のボビンを用意するという手間とコスト負担に対応するボビンの改善は引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴において、トランスは、筒状のボビンと、ボビンの外周に沿いかつ軸線に沿って巻かれたコイルを有する。コイルは、径方向に突出する突出部を有する。ボビンは、コイルの突出部に対して軸線の方向に対面する位置決め部を有する。位置決め部が突出部と協働してコイルのボビンに対する軸線の方向の移動を規制する。したがって巻き数が異なり高さの異なるコイルであってもボビンに対するコイルの高さ位置が決定される。そのため高さの異なるコイルであっても放熱に対して好適な高さ位置などにコイルをボビンに対して位置決めできる。この他にも1種類のボビンだけでコイルの巻数が異なる複数種類のコイルに対応できる利点もある。
【0007】
本開示の他の特徴において、突出部は、コイルの軸線の方向の第1端部から径方向外方に突出する。コイルの第1端部は、ボビンを貫通するコア体のコア脚部の端部から径方向に延出するコアアームに軸線の方向に当接する。したがってコイルの熱は、コイルの第1端部からコアアームに伝えられる。そして第1端部に突出部が形成される。そのため突出部によって第1端部をコア部材に確実に当接できるようにコイルの高さを決定できる。
【0008】
本開示の他の特徴において、突出部は、コイルの軸線の方向の第1端部から径方向外方に突出する。コイルは、突出部から第1端部と反対側の第2端部に向けて延出する端子を有する。したがってコイルの端子は、突出部を利用することでコイル本体の外側においてコイル本体に沿って軸方向に延出する。そのため端子の長さを長くも短くにも調整できる。
【0009】
本開示の他の特徴において、トランスは、ボビンの外周に沿って延出する第2コイルを有する。ボビンは、第2コイルを保持する保持部を有する。ボビンの保持部の内周側には、コイルを収容する設置溝が形成される。第2コイルの内周面とコイルの外周面を対向することを許容する第1開口がボビンに形成される。コイルの内周面をボビンに挿通されたコア部材のコア体のコア脚部に対向することを許容する第2開口がボビンに形成される。第2コイルの内周面とコイルの外周面が第1開口に充填された充填剤を介して熱伝導可能である。そのため、コイルからの熱は、コイルの内周面からコア脚部に伝達される。しかもコイルからの熱は、コイルの外周面から第2コイルにも伝わる。その結果、コイルの発する熱が効果的に発せられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るトランスの上方斜視図である。
図2図1のトランスの分解斜視図である。
図3図2のトランスの下方斜視図である。
図4図2において、ボビンとボビン装着された第1コイルの上方斜視図である。
図5図4の下方斜視図である。
図6図4の平面図である。
図7図6のトランスにコア体を取り付けた状態のVII-VII線断面矢視図である。
図8図6のトランスにコア体を取り付けた状態のVIII-VIII線断面矢視図である。
図9】第2実施形態に係るトランスの上方斜視図である。
図10図9のトランスの正面図である。
図11】第3実施形態において、図4に相当する部品の上方斜視図である。
図12図11の平面図である。
図13】第4実施形態において、図4に相当する部品の側面図であり、第1コイルが3巻きの例を示している。
図14図13において、第1コイルが5巻きの例を示している。
図15図13において、第1コイルが7巻きの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1実施形態を、図1~8を参照して説明する。図1に示すトランス1は、例えば、DC-DCコンバータ(図示しない)の内部に搭載される素子である。図2、3に示すようにトランス1は、ボビンアッセンブリ5と、ボビンアッセンブリ5に組付けられて磁器回路を形成するコア体9を備えている。ボビンアッセンブリ5は、第1コイル3と第2コイル4と、第1コイル3と第2コイル4を保持するボビン2とを備えている。
【0012】
図2、3に示すようにボビン2は、筒状のボビン本体10を備えている。ボビン本体10は、略U字形の筒状の樹脂部材であって、第1側部13と第2側部17と第3側部19とを備えている。
【0013】
図4、5、6に示すように、第1側部13には、第1開口15、第2開口16、第3開口16aが形成されている。第2側部17には、切欠18が形成されている。第3側部19には、第1開口21、第2開口22、第3開口22aが形成されている。第1側部13の先端と第3側部19の先端の間は、切欠12となっている。具体的には、切欠12は、上方と下方が連通するように開放している。第1開口15、21は、下方が開放している。切欠18は、下方が開放している。図5、7を参照するように、第2開口16、22は、下方が開放している。第3開口16a、22aは、上方が開放している。
【0014】
図6に示すように、ボビン本体10には、第1コイル3の第1コイル本体30が挿し込まれる設置溝14、20が形成されている。具体的には、対向する第1側部13と第3側部19のそれぞれに設置溝14、20が形成されている。設置溝14、20は、第1コイル本体30を下方から挿し込み可能とするように下方に開口している。第1コイル3を第2コイル4の内周側に位置するように設置溝14、20は、第1側部13と第3側部19の内周面近傍に位置している。設置溝14、20の溝幅は、第1コイル3の線径より僅かに広く設定されている。第1コイル3は、設置溝14、20に塗布される固定用の接着剤(図示なし)あるいは爪(図示なし)あるいは設置溝14、20が幅狭く設定されて圧入されるなどの方法で設置溝14、20に挿し込まれた状態で、後述による軸線T方向に対して位置決めされている状態で保持される。
【0015】
図2,3に示すように、ボビン本体10には、第2コイル4が保持され、第2コイル4の少なくとも一部が埋設される。ボビン本体10に第2コイル4がインサート成形される。すなわち、ボビン本体10は、第2コイル4をインサートする保持部を備える。より具体的には、対向する第1側部13と第3側部19に第2コイル4が保持される。
ボビン本体10は、第1コイル3のボビン2に対する位置を決める位置決め部27を備えている。
【0016】
図3、6に示すように、位置決め部27は、ボビン本体10の第2側部17と第3側部19とを連結する角部26に位置している。位置決め部27は、角部26の下面から張り出し、例えば矩形である。位置決め部27は、下方に位置決め面27aを備えている。位置決め面27aは、第1コイル3の突出部33と対面(協働)して第1コイル3のボビン2に対する上下方向(軸線Tの方向)の移動を規制する。位置決め部27は、第1側部13と対向する縁に円弧状のラウンド部を有する。ラウンド部の円弧状は、第1コイル3の突出部33と第1端子34とを連結する屈曲部に沿っている。そのため第1コイル3の屈曲部が位置決め部27の角に当たることを抑制でき、これにより第1コイル3の突出部33が位置決め面27aに確実に当接できる。
【0017】
図2、3に示すように、第1コイル3は、第1コイル本体30と、第1コイル本体30から延出する第1端子34と第2端子35を備えている。第1コイル本体30は、ボビン本体10の軸線Tに沿って筒状に巻かれている。図6に示すように、具体的には、第1コイル本体30は、矩形状であって長手方向(図6の紙面の上下方向)の長さがボビン本体10の対応する長さよりも長い。その結果、第1コイル本体30の長手方向の両端縁は、第1コイル本体30から露出している。第1コイル本体30の長手方向と直交する長さ(図6の紙面の左右方向)がボビン本体10の対応する長さと同等である。したがって第1コイル本体30の両端縁は、ボビン本体10に収容される。
【0018】
図2、3に示すように、第1コイル本体30の第1端子34は、第1コイル本体30の軸線Tの方向の第1端部31から第2端部32を超えて上方に延出する。第2端子35は、第1コイル本体30の第2端部32から第1端子34と平行に上方に延出する。第1コイル本体30の第1端部31と第1端子34との間には、突出部33が形成されている。突出部33は、第1コイル本体30の径方向外方に突出する。例えば、突出部33は、第1コイル本体30の外周面から略L字状に突出する。
【0019】
図2に示す第1コイル3は、3層絶縁線である。具体的には、第1コイル3は、銅線を覆う第1PET層と、第1PET層を覆う第2PET層と、第2PET層を覆うナイロン層を備えている。3層絶縁層の最外周は、熱可塑性の材料から形成される融着層で構成されている。そのため第1コイル3は、熱を加えつつ形状を決定、あるいは所定の形状にした後に熱を加えることで互いに隣接した箇所において融着層どうしが融合し固定されて形状を決定する。
【0020】
図2、3に示すように、第2コイル4は、第2コイル本体40と、第2コイル本体40から軸方向に延出する第1端子41と第2端子42を備えている。図6に示すように、第2コイル本体40は、ボビン2の第1側部13と第2側部17と第3側部19とに沿う略U字状である。
第2コイル4の表面は、皮膜処理が施されている。皮膜処理は、エナメルで施されている。そのため、第2コイル4も、第1コイル3に対する絶縁性を備えている。図7に示すように、第2コイル4そのものの幅長(第2コイル4の高さ長)は、第1コイル3の第1コイル本体30の高さ長の約70%程度である。
【0021】
図2、3に示すように、第2コイル4がインサート成形されたボビン2の下方から第1側部13~第3側部19の外周に沿って第1コイル3を挿し込んでいく。具体的には、第1コイル3を設置溝14、20に挿入する。その結果、図8に示すように、第1コイル3の突出部33がボビン2の位置決め部27の位置決め面27aに軸線Tの方向に当接する。かくして第1コイル3がボビン2に対して軸線Tの方向に対する移動が規制される。
【0022】
しかも図5に示すように、第1コイル本体30は、ボビン2の設置溝14、20に挿入されて、ボビン2から脱落しないように保持される。上述のようにボビンアッセンブリ5が組み立てられる。図6に示すように、ボビン2の第1開口15、21は、第2コイル本体40の内周面40aと第1コイル本体30の外周面30bを対向することを許容する。
【0023】
図1~3に示すように、コア体9は、磁気回路を形成するフェライト(磁性材料)から成る芯であり、E型コア部材6とI型コア部材7を備えている。E型コア部材6は、コア脚部60とコアアーム62と一対の外脚部64を備えている。コア脚部60は、ボビン2を貫通する。コアアーム62は、コア脚部60の端部61から径方向に延出する。一対の外脚部64は、コアアーム62の両端から突出しコア脚部60の両側に位置する。I型コア部材7は、E型コア部材6に対向する矩形のコア部材である。
【0024】
図7に示すように、E型コア部材6のコア脚部60をボビンアッセンブリ5に貫通させた状態で、E型コア部材6の各先端面60a、64aとI型コア部材7の内面70とを接着させると、トランス1が完成する。完成したトランス1は、全体が図示しないケースに収容され更にケース内にはポッティング材が充填されその外部と内部の全てが熱伝導率の高い充填材(図示しない、ポッティング材)で浸される。ポッティング材は後述の開口やコアと端部の隙間に入り込んでいく。
【0025】
図7に示すように、トランス1において、第2開口16、22は、第1コイル3の第1コイル本体30の内周面30aをボビン2に挿通されたE型コア部材6のコア脚部60の外周面60bに対向することを許容する。両第3開口16a、22aは、第2コイル本体40の外周面40bをE型コア部材6の外脚部64の内周面64bに対向することを許容する。
【0026】
図8に示すように、トランス1において、既に説明したように、第1コイル3の突出部33は、ボビン2の位置決め部27の位置決め面27aに軸線Tの方向に当接している。そのため、図8に示すように、第1コイル3はI型コア部材7側に寄ることなく、E型コア部材6のコアアーム62側に寄った状態となる。したがって、第1コイル3の第1端部31は、E型コア部材6のコアアーム62の内面63に軸線Tの方向に当接する。結果として、第1コイル3に生じる熱を充填材ないしは絶縁層または両方を介してE型コア部材6のコアアーム62に逃がすことができる。
【0027】
図7に示すように、ボビン2の第1側部13と第3側部19は、第1開口15と第1開口21を備えている。そのため、両第1開口15、21を介して、第1コイル本体30の外周面30bと第2コイル本体40の内周面40aは、ボビン2の幅方向に当接する。したがって、第1コイル3に生じる熱を充填材ないしは絶縁層または両方を介して第2コイル4に逃がすことができる。これとは逆に、第2コイル4に生じる熱を充填材ないしは絶縁層または両方を介して第1コイル3に逃がすことができる。
【0028】
図7に示すように、ボビン2の第1側部13と第3側部19は、第2開口16と第2開口22とを備えている。そのため、両第2開口16、22を介して、第1コイル本体30の内周面30aとE型コア部材6のコア脚部60の外周面60bが対向する。したがって、第1コイル3に生じる熱を充填材を介してE型コア部材6のコア脚部60に逃がすことができる。
【0029】
図7に示すように、ボビン2の第1側部13と第3側部19は、第3開口16aと第3開口22aを備えている。そのため、両第3開口16a、22aを介して、第2コイル本体40の外周面40bとE型コア部材6の外脚部64の内周面64bが対向する。したがって、第2コイル4に生じる熱を充填材を介してE型コア部材6の外脚部64に逃がすことができる。
【0030】
図8に示すように、第1実施形態に係るトランス1は、上述したように構成されている。第1コイル3の突出部33は、ボビン2の位置決め部27の位置決め面27aに軸線Tの方向に当接する。したがって巻き数が異なり高さの異なる第1コイル3であってもボビン2に対する第1コイル3の高さ位置が決定される。そのため巻数が異なり高さの異なる第1コイル3であっても放熱に対して好適な高さ位置に第1コイル3をボビン2に対して位置決めできる。この他にも1種類のボビン2だけで第1コイル3の巻数が異なる複数種類の第1コイル3に対応できる利点もある。
【0031】
図7、8に示すように、第1コイル3の突出部33は、第1コイル3の軸線Tの方向の第1端部31から径方向外方に突出する。第1コイル3の第1端部31は、ボビン2を貫通するE型コア部材6のコア脚部60の端部61から径方向に延出するE型コア部材6のコアアーム62に軸線Tの方向に当接する。したがって第1コイル3の熱は、第1コイル3の第1端部31からE型コア部材6に伝えられる。そして第1端部31に突出部33が形成される。そのため突出部33によって第1端部31をE型コア部材6に確実に当接できるように第1コイル3の高さを決定できる。
【0032】
図5、8に示すように、第1コイル3の突出部33は、第1コイル3の軸線Tの方向の第1端部31から径方向外方に突出する。第1コイル3は、突出部33から第1端部31と反対側の第2端部32に向けて延出する第1端子34を有する。したがって第1コイル3の第1端子34は、突出部33を利用することで第1コイル本体30の外側において第1コイル本体30に沿って軸方向に延出する。そのため端子の長さを長くも短くにも調整できる。
【0033】
図7に示すように、トランス1は、ボビン2の外周に沿って延出する第2コイル4を有する。ボビン2は、第2コイル4をインサートしている。ボビン2の内周側には、第1コイル3を収容する設置溝14、20が形成される。第2コイル4の内周面40aと第1コイル3の外周面30bを対向することを許容する第1開口15、21がボビン2に形成される。第1コイル3の内周面30aをボビン2に挿通されたE型コア部材6のコア脚部60に対向することを許容する第2開口16、22がボビン2に形成される。第2コイル4の内周面40aと第1コイル3の外周面30bが第1開口15、21に充填された充填剤を介して熱伝導可能である。そのため、第1コイル3からの熱は、第1コイル3の内周面30aからコア脚部60に伝達される。しかも第1コイル3からの熱は、第1コイル3の外周面30bから第2コイル4にも伝わる。その結果、第1コイル3の発する熱が効果的に発せられる。
【0034】
第2実施形態を、図9~10を参照して説明する。第2実施形態のトランス101は、軸線T方向に対する位置決めの別例である。第1コイル3の第2端子35には、軸線Tの方向の途中部分に略横V字状の突出部35aが形成されている。突出部35aは、第2端子35から径方向(図10の左右方向)に屈曲している。ボビン2に第1コイル3を装着する際、ボビン2の第2挿込筒25の挿込孔25aに第1コイル3の第2端子35を挿し込む。これにより第2端子35の突出部35aの突出先端35bが挿込孔25aの入口縁である位置決め部25bに軸線Tの方向に当接する。その結果、第1コイル3のボビン2に対する軸方向の移動が規制される。
【0035】
したがって、第1実施形態のトランス1と同様に、巻き数が異なり高さの異なる第1コイル3であってもボビン2に対する第1コイル3の高さ位置が決定される。そのため巻数が異なり高さの異なる第1コイル3であっても放熱に対して好適な高さ位置に第1コイル3をボビン2に対して位置決めできる。その結果、第2実施形態のトランス101においても、第1実施形態のトランス1と同様の作用効果を得ることができる。なお、このトランス101の第1コイル3において、第1実施形態で説明した突出部33は不要となる。
【0036】
第3実施形態を、図11~12を参照して説明する。第3実施形態のボビンアッセンブリ205は、第1実施形態のボビンアッセンブリ5と比較すると、第1コイル3の発する熱がより効果的に発せられる形態である。
【0037】
図12、14に示すように、ボビンアッセンブリ205では、第2側部17において、第1コイル3の第1コイル本体30の外周面30bと第2コイル4の第2コイル本体40の内周面40aは、矩形状のボビン2の長手方向に当接する。また、ボビンアッセンブリ5と同様に、第1側部13と第3側部19とにおいて、第1コイル3の第1コイル本体30の外周面30bと第2コイル4の第2コイル本体40の内周面40aは、矩形状のボビン2の幅方向に当接する。
【0038】
そのため、第1コイル3と第2コイル4との当接個所が2個所(第1側部13、第3側部19)から3個所(第1側部13、第2側部17、第3側部19)に増加する。したがって、第1コイル3の発する熱がより効果的に発せられる。なお、ボビン2に対する第1コイル3の高さ位置を決定する構造(突出部と位置決め部)は、第1実施形態または第2実施形態の構造を適用できる。
【0039】
第4実施形態を、図13~15を参照して説明する。第4実施形態のトランス301は、第1実施形態および第2実施形態のトランス1、101と比較すると、第1コイル3の形状を簡素化できる形態である。トランス301のボビン2の外周は、軸線Tの方向に沿って高さが異なる複数段の段差面を備えている。複数段の段差面として、例えば3段の段差面(第1段差面2a、第2段差面2b、第3段差面2c)を備えている。
【0040】
図13に示すように、第1段差面2aには、ボビン2に装着された巻き数が3巻きの第1コイル3の第1端部31が軸線Tの方向に当接する。図14に示すように、第2段差面2bには、ボビン2に装着された巻き数が5巻きの第1コイル3の第1端部31が軸線Tの方向に当接する。図15に示すように、第3段差面2cには、ボビン2に装着された巻き数が7巻きの第1コイル3の第1端部31が軸線Tの方向に当接する。
【0041】
3巻きの第1コイル3に対して5巻きの第1コイル3は、径方向に突出する。5巻きの第1コイル3に対して7巻きの第1コイル3は、径方向に突出している。したがって、第1実施形態および第2実施形態のトランス1、101と同様に、巻き数が異なり高さの異なる第1コイル3であってもボビン2に対する第1コイル3の高さ位置が決定される。そのため高さの異なる第1コイル3であっても放熱に対して好適な高さ位置などに第1コイル3をボビン2に対して位置決めできる。その結果、第4実施形態のトランス301においても、第1実施形態および第2実施形態のトランス1、101と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
トランス301の第1コイル3において、第1実施形態および第2実施形態で説明した突出部33、35aは不要となる。そのため、第2コイル3の形状を簡素化できる。トランス301において、ボビン2に装着された第1コイル3の第2端部32は、I型コア部材7の内面70に軸線Tの方向に当接する。そのため、第2コイル3に生じる熱を充填材を介してI型コア部材7の内面70に逃がすことができる。
【0043】
第1実施形態~第4実施形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって第1実施形態~第4実施形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば第1実施形態~第4実施形態は、特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0044】
上述するようにトランスは、第1コイル(コイル)3と第2コイル4を有している。これに代えてトランスは、コイルとして環状の第2コイルを有していても良い。上述するようにトランスは、環状の第1コイル3とU字状の第2コイル4を有している。これに代えてトランスは、環状の第1コイル3と環状の第2コイル4を有していても良い。上述するようにトランスは、ボビン2にインサート成形されている第2コイル4を有している。これに代えて、トランスは、成型後のボビン2に装着される第2コイル4を有していても良い。
【0045】
上述するように第1コイル3は、第1コイル本体30から径方向外方に突出する突出部33を有している。これに代えて、第1コイル本体30から径方向内方に突出する突出部33を有してもよい。上述するように突出部33は、第1コイル3の第1コイル本体30の第1端部31に形成されている。これに代えて、突出部33は、第1コイル3の第1コイル本体30の第2端部32に形成されてもよい。上述するように第1コイル3はボビン2の下端側(E型コア部材6側)に寄せられるようにボビン2に位置決めされる。これに代えて、第1コイル3はボビン2の上端側(I型コア部材7)に寄せられるようにボビン2に位置決めされてもよい。
【0046】
上述するように第1コイル3が設置される設置溝14、20がボビン2の第1側部13と第3側部19に形成されている。これに代えて、設置溝14、20の一方がボビン2の第2側部17に形成されてもよい。すなわち、設置溝がボビン2の第1側部13~第3側部19の少なくとも1個所に形成されていればよい。上述するように設置溝14、20の開口は下方に形成されている。これに代えて、設置溝14、20の開口は上方に形成されてもよい。
【0047】
上述するように第2コイル4の内周面40aと第1コイル3の外周面30bを対向させる第1開口15、21がボビン2の第1側部13、第3側部19に形成されている。これに代えて、第1開口15、21がボビン2の第2側部17に形成されてもよい。すなわち、第1開口がボビン2の第1側部13~第3側部19の少なくとも1個所に形成されていればよい。
【0048】
上述するように第1コイル3の内周面30aとコア体9のE型コア部材6のコア脚部60の外周面60bを対向させる第2開口16、22がボビン2の第1側部13と第3側部19に形成されている。これに代えて、第2開口16、22がボビン2第2側部17に形成されてもよい。すなわち、第2開口がボビン2の第1側部13~第3側部19の少なくとも1個所に形成されていればよい。
【0049】
上述するようにコア体9は2個のコア部材(E型コア部材6、I型コア部材7)を備えている。これに代えて、コア体9は1個のコア部材でもよい。上述するようにコア体9の2個のコア部材の形状はE型とI型である。これに代えて、コア体9の2個のコア部材の形状はE型とE型でもよい。
【0050】
上述するようにボビン2は、第2コイル4を利用して環状になっている。これに代えて、ボビン2は、第1コイル3を利用して環状になってもよい。上述するように、ボビン2は第2コイル4の3辺(第1側部13に対応する辺、第2側部17に対応する辺、第3側部19に対応する辺の計3辺)にインサートされている。これに代えて、ボビン2は第2コイル4の2辺(第1側部13に対応する辺、第3側部19に対応する辺の計2辺)にインサートされてもよい。これに代えて、ボビン2は第2コイル4の少なくとも1辺(第1側部13に対応する辺、第2側部17に対応する辺、第3側部19に対応する辺の少なくとも1つの辺)にインサートされてもよい。また、ボビン2は第2コイル4の角部だけをインサートしてもよい。
第1コイル3と第2コイル4の配置がコア体9に対し内外が入れ替わった態様でもよい。またインサートしなくとも第1コイル3と第2コイル4とボビン2とをそれぞれ別個の状態で用意してそれぞれを組み付ける態様でもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 トランス
2 ボビン
3 第1コイル(コイル)
4 第2コイル
6 E型コア部材
7 I型コア部材
9 コア体
14 設置溝
15 第1開口
16 第2開口
20 設置溝
21 第1開口
22 第2開口
25 第2挿込筒
25a 挿込孔
25b 位置決め部
27 位置決め部
27a 位置決め面
30a 内周面
30b 外周面
31 第1端部
32 第2端部
33 突出部
34 第1端子(端子)
35 第2端子(端子)
35a 突出部
35b 突出先端
40a 内周面
60 コア脚部
62 コアアーム
T 軸線
図1
図2
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