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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187929
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20221213BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096187
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】河野 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】原田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 紗奈
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC05
3E086AC07
3E086AC12
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA29
4F100AB01D
4F100AB10D
4F100AK04C
4F100AK04E
4F100AK06C
4F100AK06E
4F100AK07A
4F100AK42B
4F100AK63C
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA22C
4F100CB00G
4F100EH66
4F100EJ37A
4F100EJ37B
4F100EJ55
4F100GB15
4F100JA11
4F100JG04C
4F100JK01
4F100JK03
4F100JK06
4F100JK08
4F100JL12C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】帯電防止性能を備えると共に、他の層とのラミネート強度に優れるシーラント層を備える積層体の提供。
【解決手段】積層体は、外面から内面に向かって順に、少なくとも、第1基材層、第2基材層及びシーラント層を備える。シーラント層は、帯電防止剤を含む。積層体は、流れ方向において0.25N以上0.45N以下の引き裂き強度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面から内面に向かって順に、少なくとも、第1基材層、第2基材層及びシーラント層を備える積層体であって、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、
流れ方向において0.25N以上0.45N以下の引き裂き強度を有する、積層体。
【請求項2】
前記第2基材層の外側の面又は内側の面に位置する蒸着膜を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記蒸着膜は、金属を含む、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1基材層は、延伸ポリプロピレンフィルムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2基材層は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記内面の表面固有抵抗率が、9.0×1012Ω/□以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記シーラント層は、前記内面を構成し、ポリエチレン及び前記帯電防止剤を含む第1層と、ポリエチレンを含む第2層と、を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記シーラント層の厚さに対する前記第1層の厚さが、1/3以下である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記シーラント層の厚さに対する前記第1層の厚さが、1/10以上である、請求項7又は8に記載の積層体。
【請求項10】
前記シーラント層は、主成分として高圧法低密度ポリエチレンを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記第1層は、主成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
前記帯電防止剤が、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、両性帯電防止剤及び非イオン性帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の帯電防止剤である、請求項7~11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
前記第2層は、帯電防止剤を含まない、請求項7~12のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及びこれを含む包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋は、食料品、医薬品、化学品、化粧品等の内容物を充填包装するために用いられてきた。包装袋を構成する積層体としては、延伸フィルム等の基材層と、シール性を有するシーラント層とを備えるものがある。包装袋において、シーラント層は、包装袋の内容物と接触する。
【0003】
内容物としては、例えば、小麦粉や粉薬等の粉状物も存在する。このような粉状物の包装に際し、シーラント層に何らの処理が施されなければ、静電気の影響からシーラント層に粉状物が付着してしまい、上手く内容物を取り出せない。また、粉状物の充填に際しても、開口部へ粉状物が付着するおそれがある。そうすると、包装袋の作製時において、ヒートシールによる封止部位の融着不良の原因となりやすい。
【0004】
このことから、シーラント層を構成するシーラントフィルムには帯電防止剤が添加されてきた。帯電防止剤には練り込み型等が知られており、この型の帯電防止剤はシーラントフィルムの樹脂中に混入され、これにより、シーラント層に帯電防止性能を付与できる(例えば、引用文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-339398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、帯電防止剤はシーラント層中を移行して、その表面に現れるものであるところ、シーラント層の基材層側に移行した帯電防止剤は、シーラント層と、他の層とのラミネート強度を低下させる。
【0007】
従って、本発明の目的は、帯電防止性能を備えると共に、他の層とのラミネート強度に優れるシーラント層を備える積層体を提供することである。
本発明の別の目的は、上記積層体を備える包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外面から内面に向かって順に、少なくとも、第1基材層、第2基材層及びシーラント層を備える積層体であって、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、
流れ方向において0.25N以上0.45N以下の引き裂き強度を有する、積層体である。
【0009】
本発明の積層体は、前記第2基材層の外側の面又は内側の面に位置する蒸着膜を備えてもよい。
【0010】
本発明の積層体において、前記蒸着膜は、金属を含んでもよい。
【0011】
本発明の積層体において、前記第1基材層は、延伸ポリプロピレンフィルムからなっていてもよい。
【0012】
本発明の積層体において、前記第2基材層は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなっていてもよい。
【0013】
本発明の積層体において、前記内面の表面固有抵抗率が、9.0×1012Ω/□以下であってもよい。
【0014】
本発明の積層体において、前記シーラント層は、前記内面を構成し、ポリエチレン及び前記帯電防止剤を含む第1層と、ポリエチレンを含む第2層と、を備えてもよい。
【0015】
本発明の積層体において、前記シーラント層の厚さに対する前記第1層の厚さが、1/3以下であってもよい。
【0016】
本発明の積層体において、前記シーラント層の厚さに対する前記第1層の厚さが、1/10以上であってもよい。
【0017】
本発明の積層体において、前記シーラント層は、主成分として高圧法低密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0018】
本発明の積層体において、前記第1層は、主成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0019】
本発明の積層体において、前記帯電防止剤が、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、両性帯電防止剤及び非イオン性帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の帯電防止剤であってもよい。
【0020】
本発明の積層体において、前記第2層は、帯電防止剤を含まなくてもよい。
【0021】
本発明は、前記積層体を備える、包装袋である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、帯電防止性能を備えると共に、他の層とのラミネート強度に優れるシーラント層を備える積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】積層体の一例を示す断面図である。
図2】積層体の一例を示す断面図である。
図3】積層体の一例を示す断面図である。
図4】シーラントフィルムの一例を示す断面図である。
図5】シーラントフィルムの一例を示す断面図である。
図6】シーラントフィルムの一例を示す断面図である。
図7】包装袋の一実施形態を示す概略正面図である。
図8】包装袋の一実施形態を示す概略正面図である。
図9】シール強度の測定方法を示す概略図である。
図10】ラミネート強度の測定方法を示す概略図である。
図11】ラミネート強度の測定方法を示す概略図である。
図12】ラミネート強度の測定結果を示す図である。
図13】引き裂き強度を測定するための試験片を示す平面図である。
図14】引き裂き強度を測定するための試験片のグループを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図8を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0025】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0026】
本明細書において、「内面」とは、包装袋における内容物側に位置する面を意味し、「外面」とは、包装袋における内容物とは反対側に位置する面、即ち、他の層とラミネートされる面を意味する。本明細書において、「内側」とは、内面に向かう側を意味し、「外側」とは、「外面に向かう側を意味する。
【0027】
本明細書において、あるパラメータに関して2つ以上の上限値の候補及び2つ以上の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよい。パラメータBは、例えばA3以下であり、A4以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A3以下であってもよく、A1以上A4以下であってもよく、A2以上A3以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよい。
【0028】
〔積層体〕
本発明の積層体1は、包装容器を構成するために用いられる。例えば、後述するように、積層体1は、包装袋を構成するために用いられる。積層体1は、外面1Y及び内面1Xを含む。図1は、積層体1の一例を示す断面図である。積層体1は、外面1Yから内面1Xに向かって順に、少なくとも、第1基材層21、第2基材層22及びシーラント層23を備える。シーラント層23は、積層体1の内面1Xを構成する。
【0029】
図2は、積層体1の一例を示す断面図である。積層体1は、第2基材層22の面上に位置する蒸着膜24を備えてもよい。図2に示す例において、蒸着膜24は、第2基材層22の外側の面に位置している。図示はしないが、蒸着膜24は、第2基材層22の内側の面に位置していてもよい。蒸着膜24は、酸素及び水蒸気等のガスに対する積層体1のバリア性を高めることができる。
【0030】
図示はしないが、蒸着膜24は、第1基材層21の面上に位置していてもよい。例えば、蒸着膜24は、第1基材層21の内側の面に位置していてもよい。
【0031】
図3は、積層体1の一例を示す断面図である。積層体1は、蒸着膜24上に位置するガスバリア性塗布膜25を備えてもよい。ガスバリア性塗布膜25は、積層体1のバリア性をさらに高めることができる。
【0032】
図1~3に示すように、積層体1は、第1基材層21と第2基材層22との間に位置する第1接着層26を備えてもよい。第1接着層26は、第1基材層21を含む構造と第2基材層22を含む構造とを接着する。
【0033】
図1~3に示すように、積層体1は、第2基材層22とシーラント層23との間に位置する第2接着層27を備えてもよい。第2接着層27は、第2基材層22を含む構造とシーラント層23を含む構造とを接着する。
【0034】
図示はしないが、積層体1は、金属箔を備えてもよい。金属箔は、1種又は2種以上の金属材料を含む箔である。金属箔に含まれる金属材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ステンレス、チタン及びニッケル等が挙げられる。金属箔は、接着層を介して、第1基材層及び/又は第2基材層等に積層される。
【0035】
図示はしないが、積層体1は、印刷層を備えてもよい。印刷層は、第1基材層21の外側の面、又は第1基材層21と第2基材層22の間に位置してもよい。
【0036】
積層体1の層構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0037】
積層体1の厚さは、例えば40μm以上であり、60μm以上であってもよく、80μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。積層体1の厚さは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよく、130μm以下であってもよい。
【0038】
以下、本発明による積層体が備え得る各層について説明する。
【0039】
<第1基材層>
第1基材層は、積層体を支持する機能を有する層である。第1基材層には、例えば、紙基材、樹脂フィルム又はこれらが積層されたものを適宜使用できる。
【0040】
紙基材としては、印刷適性、耐屈曲性、剛性、腰及び強度等を有するものを使用でき、例えば、クラフト紙、ロール紙、板紙及び加工紙等の各種紙を使用できる。
【0041】
樹脂フィルムは、少なくとも1種の樹脂材料を含む。樹脂フィルムに含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂及びこれらの塩素化樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムに含まれる樹脂材料は、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6及びナイロン6,6からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0042】
樹脂フィルムは、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでもよい。樹脂フィルムは、強度の観点から、好ましくは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムである。例えば、第1基材層は、延伸ポリプロピレンフィルムを含んでいてもよい。第1基材層は、延伸ポリプロピレンフィルムからなっていてもよい。
【0043】
樹脂フィルムの表面は、表面処理が施されてもよい。表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ処理、フレーム処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理等の物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理等の化学的処理が挙げられる。
【0044】
第1基材層の厚さは、例えば5μm以上であり、10μmでもよく、15μmでもよい。第1基材層の厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、35μm以下でもよい。
【0045】
<第2基材層>
第2基材層は、第1基材層と共に積層体を支持し、且つ、積層体の強度特性及び耐久性等を向上させるための層である。
【0046】
第2基材層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含む。第2基材層に含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂及びこれらの塩素化樹脂等が挙げられる。
【0047】
第2基材層は、上記したような樹脂材料からなる樹脂フィルムでもよい。樹脂フィルムは、強度等の観点から、好ましくは、一軸ないし二軸方向に延伸されたフィルムである。例えば、第2基材層は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを含んでいてもよい。第2基材層は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなっていてもよい。
【0048】
第2基材層の厚さは、例えば5μm以上であり、10μmでもよい。第2基材層の厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
【0049】
第1基材層の厚さは、第2基材層の厚さよりも大きくてもよい。例えば、第1基材層の厚さは、第2基材層の厚さの1.2倍以上でもよく、1.5倍以上でもよく、2.0倍以上でもよい。第1基材層の厚さは、第2基材層の厚さの3.0倍以下でもよい。第1基材層の厚さは、第2基材層の厚さと同一であってもよく、第2基材層の厚さよりも小さくてもよい。
【0050】
[シーラント層]
シーラント層は、熱により融着性を発揮する樹脂材料を含。例えば、シーラント層は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン(ホモポリマー、ブロックポリマー、ランダムポリマー)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、又は、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン及び環状オレフィンコポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ビニル樹脂、並びに(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、シール性の観点から、ポリエチレンが好ましく、シール性及び耐ピンホール性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。シーラント層は、上記樹脂材料を2種以上含んでいてもよい。
【0051】
シーラント層は、帯電防止剤を含む。帯電防止剤としては、例えば、アジピン酸、グルタミン酸、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩等のアニオン性帯電防止剤;アミン、イミダゾリン、アミン酸化エチレン付加体、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性帯電防止剤;カチオン基とアニオン基の両方を有する例えばアルキルアミンに無水マレイン酸を作用させたグアニジン塩、ポリエチレンイミンから誘導されるスルホン酸等の両性帯電防止剤;ポリオール、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物、エーテル化合物、高級アルコールエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、脂肪酸アミド及びそのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性帯電防止剤等が挙げられる。シーラント層は、これらの帯電防止剤を1種又は2種以上含んでもよい。
【0052】
シーラント層は、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、イオン交換剤、及び着色顔料等を1種又は2種以上を添加することができる。
【0053】
シーラント層の厚さは、例えば15μm以上であり、30μm以上であってもよい。シーラント層の厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0054】
シーラント層は、後述するシーラントフィルムによって構成されてもよい。シーラント層としてシーラントフィルムを用いる場合、シーラントフィルムの内面が、積層体の内面を構成する。
【0055】
<蒸着膜>
蒸着膜は、無機物又は無機化合物を含んでもよい。無機物としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)等の1種又は2種以上が挙げられる。例えば、蒸着膜は、アルミニウム(Al)などの金属を含んでいてもよい。
無機化合物としては、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物などが挙げられる。無機酸化物は、例えば、上述の無機物の酸化物である。無機窒化物は、例えば、上述の無機物の窒化物である。無機炭化物、例えば、上述の無機物の炭化物である。
【0056】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の方法が挙げられる。
【0057】
蒸着膜の厚さは、例えば10nm以上であり、20nm以上でもよい。蒸着膜の厚さは、例えば200nm以下であり、100nm以下でもよい。
【0058】
<ガスバリア性塗布膜>
ガスバリア性塗布膜は、一般式R M(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、及び、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
【0059】
上記の一般式R M(ORで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも1種を使用できる。上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、及び、その混合物でもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、好ましきは、2量体以上6量体以下のものが使用される。
【0060】
上記の一般式R M(ORで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を使用できる。好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタン等が挙げられる。アルコキシドは、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使用してもよい。
【0061】
上記の一般式R M(ORで表されるアルコキシドにおいて、Rで表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他等のアルキル基が挙げられる。上記の一般式R M(ORで表されるアルコキシドにおいて、Rで表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他等が挙げられる。同一分子中にこれらのアルキル基は同一でも、異なってもよい。
【0062】
ガスバリア性組成物を調製する際には、例えば、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを使用できる。特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に使用できる。ポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
<印刷層>
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成された画像である。画像としては、文字、柄、記号及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。印刷層は、従来公知の方法により形成できる。
【0064】
<接着層>
第1接着層は、第1基材層を含む構造と第2基材層を含む構造とを接着するために形成される、接着剤層又は接着樹脂層である。第2接着層は、第2基材層を含む構造とシーラント層を含む構造とを接着するために形成される、接着剤層又は接着樹脂層である。
【0065】
接着剤層は、少なくとも1種の1液又は2液の硬化型又は非硬化型のラミネート用接着剤を使用して形成される層である。接着剤層は、ラミネート用接着剤を含む。ラミネート用接着剤としては、例えば、ビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系及びゴム系の、溶剤型、水性型又はエマルジョン型等のラミネート用接着剤が挙げられる。
接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法等が挙げられる。
塗布量は、乾燥状態において、例えば0.1g/m以上であり、1g/m以上でもよい。一方、塗布量は、乾燥状態において、例えば10g/m以下であり、5g/m以下位でもよい。
【0066】
接着樹脂層は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む。接着樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。また、接着樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、又は、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィンにグラフト変性した樹脂等も挙げられる。
熱可塑性樹脂は、化石燃料由来の材料を使用しても、バイオマス由来の材料を使用しても、これらの両方を使用してもよい。
【0067】
〔シーラントフィルム〕
次に、シーラント層23を構成する樹脂フィルムの候補の1つであるシーラントフィルムについて説明する。
【0068】
シーラントフィルムは、内面及び外面を含む。シーラントフィルムは、内面を構成する第1層と、第2層とを備える。第1層は、ポリエチレンと帯電防止剤とを含み、第2層は、ポリエチレンを含む。シーラントフィルムにおいて、第1層は結晶化度Aを有し、第2層は結晶化度Bを有し、結晶化度Aと結晶化度との関係が、結晶化度A<結晶化度Bを満たす。このようなシーラントフィルムは、帯電防止性能を備えると共に、他の層とのラミネート強度に優れる。その理由は以下の通りであると考えられる。
【0069】
シーラントフィルムと他の層とをラミネートは、一般的に、極性基を有する接着剤を用いたドライラミネートや、極性基を有する接着樹脂を用いたサンドラミネートにより行われるのが一般的である。帯電防止剤は親水基を有するものであるところ、この親水基が、これらの極性基に引き寄せられ、帯電防止剤はシーラントフィルムの外面側に移行する。この移行した帯電防止剤は、シーラントフィルムと他の層との密着性に影響を及ぼし、これによりシーラントフィルムと他の層とをラミネート強度が低下する。また、シーラントフィルムは、隣接する層との密着性を向上するために、コロナ処理やフレーム処理等の表面処理を施して、シーラントフィルムの表面を親水化する場合があるが、この親水化された表面にも、帯電防止剤の親水基は引き寄せられ、帯電防止剤はシーラントフィルムの外面側に移行する。これによりシーラントフィルムと他の層とをラミネート強度が低下する。
本実施の形態のシーラントフィルムにおいては、第1層の結晶化度Aと、第2層の結晶化度Bとの関係を、結晶化度A<結晶化度Bとすることにより、低い結晶化度を有する第1層に含まれる帯電防止剤の移行が、高い結晶化度を有する第2層によって抑制され、シーラントフィルムの外面側への帯電防止剤の移行が抑制される。この結果、シーラントフィルムは、他の層とのラミネート強度に優れると考えられる。
【0070】
結晶化度Aに対する結晶化度Bの比は、好ましくは1.01以上であり、より好ましくは1.05以上であり、更に好ましくは1.1以上である。これにより、帯電防止剤の移行をより抑制でき、シーラントフィルムのラミネート強度を向上できる。一方、結晶化度Aに対する結晶化度Bの比は、例えば、5以下であり、2以下でもよく、1.5以下でもよい。
【0071】
結晶化度A>結晶化度Bを満たす範囲内において、結晶化度Bと結晶化度Aとの差は、好ましくは1%であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは5%以上である。一方、結晶化度Bと結晶化度Aとの差は、例えば30%以下であり、20%以下でもよく、10%以下でもよい。
【0072】
本明細書において、結晶化度Aは、シーラントフィルムの内面側での分析結果である。従って、シーラントフィルムの外面からn回目(nは1以上の整数)の分析結果に、結晶化度Aを超えるデータがあれば、結晶化度Bを有する第2層の存在を裏付できる。
【0073】
本明細書において、「結晶化度」は、JIS K7121:2012に準拠して描画されたDSC曲線から得られた融解熱量の、完全結晶体の融解熱量に対する比として算出した値である。
【0074】
DSC曲線は、以下の条件下で2回目の昇温の際に得られた示差走査熱量計(DSC)のデータから、JIS K7121:2012に準拠して描画される。示差走査熱量計としては、NETZSCH製のDSC200F3Maiaを使用できる。
(条件)
試料量:約10mgを精秤
測定雰囲気:窒素中
パンの材質:Al
流量:100mL/分
測定範囲:30℃から150℃まで
昇温速度:10℃/分
【0075】
結晶化度は、上記のDSC曲線から得られた融解熱量と、完全結晶体の融解熱量とから、下記数式(1)により算出された値である。なお、融解熱量の単位は、「J/g」である。
結晶化度[%]=(DSC曲線から得られた融解熱量/完全結晶体の融解熱量)×100
(1)
完全結晶体の融解熱量としては、文献値を採用してよい。文献としては、「THERMAL APPLICATIONS NOTE Polymer Heats of Fusion, Roger L. Blaine TA Instruments, 109 Lukens Drive, New Castle DE 19720, USA」が挙げられる。例えば、ポリエチレンにおける完全結晶体の融解熱量は、293J/gである。
【0076】
本明細書において、ポリエチレンには、エチレンの単独重合体、及びエチレンとα-オレフィンとの共重合体(以下、エチレン-α-オレフィン共重合体とも称する)が含まれる。エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン単位の含有量は、例えば15モル%以下であり、10モル%以下でもよく、5モル%以下でもよい。
【0077】
エチレンの単独重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。
本明細書において、高密度ポリエチレンとは、0.942g/cm以上の密度を有するポリエチレンを意味し、中密度ポリエチレンとは、0.930g/cm以上0.942g/cm未満の密度を有するポリエチレンを意味する。高圧法低密度ポリエチレンとは、0.910g/cm以上0.930g/cm未満の密度を有するポリエチレンを意味する。高圧法低密度ポリエチレンは、例えば、1000気圧以上2000気圧未満の高圧下においてエチレンを重合することにより得られる。
なお、本明細書において、樹脂、層及びフィルム等の密度は、JIS K7112:1999のうち、B法(ピクノメータ法)又はD法(密度勾配管法)に準拠して測定される。B法及びD法の選択は、測定する試験片の形状及び質量等に応じて適宜行う。D法において、測定温度(液温)は23℃とする。
【0078】
上記エチレン-α-オレフィン共重合体は、直鎖状ポリエチレンとも称することができる。ここで、直鎖状ポリエチレンについて説明する。
直鎖状ポリエチレンとは、チーグラーナッタ触媒に代表されるマルチサイト触媒又はメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を使用して重合した、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体である。従って、エチレンの単独重合体とは区別される。直鎖状ポリエチレンのモノマーとなるα-オレフィンは、炭素数3以上のものであり、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチルペンテン、3,3-ジメチルブテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。
0.930g/cm未満の密度を有する直鎖状ポリエチレンを、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称してもよい。
【0079】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成し得る触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と、活性化用助触媒と、を接触させることにより調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができる。シングルサイト触媒としては、特に好ましくは、メタロセン系触媒が挙げられる。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分と、を含む触媒である。
【0080】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものが挙げられる。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有してもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環が更に互いに置換基を有してもよい。
【0081】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジルコニウム及び/又はハフニウムである。該遷移金属化合物は、好ましくは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものである。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基等が挙げられる。架橋基は、好ましくは置換シリレン基である。
【0082】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、水素、炭素数1~20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基等が挙げられる。
【0083】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、1種又は2種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0084】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させ得るものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタン等のランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0085】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等又はこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0087】
上記ポリエチレンとしては、化石燃料ポリエチレンを用いても、バイオマスポリエチレンを用いても、これらの両方を用いてもよい。
化石燃料ポリエチレンは、化石燃料由来のモノマーのみからなる原料から製造されたポリエチレンである。
バイオマスポリエチレンとは、バイオマス由来のモノマーを含む原料から製造されたポリエチレンである。バイオマスポリエチレンは、バイオマスポリエチレンの原料は、化石燃料由来のモノマーを含んでもよい。バイオマスポリエチレンの原料は、例えば、バイオマス由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレン及び/又は化石燃料由来のα-オレフィンとを含む原料、バイオマス由来のα-オレフィンと化石燃料由来のエチレンとを含む原料である。
【0088】
シーラントフィルムにバイオマスポリエチレンが含まれていることは、シーラントフィルムのバイオマス度を測定することにより判別できる。シーラントフィルムにバイオマスポリエチレンが含まれている場合、シーラントフィルムのバイオマス度は0%より大きくなる。
【0089】
ここで、バイオマス度について説明する。
大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えば、とうもろこし中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示すものである。例えば、ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2つの炭素原子を含むエチレングリコールと8つの炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%であるため、バイオマス度の理論値は31.25%となる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートの質量は192であり、そのうちバイオマス由来のエチレングリコールに由来する質量は60であるため、60÷192×100=31.25となる。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸と、を用いて製造した化石燃料ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料ポリエステルのバイオマス度は0%となる。以下、特に断りのない限り、「バイオマス度」とはバイオマス由来成分の重量比率を示したものとする。
【0090】
理論上、ポリエチレンの原料として、バイオマス由来の原料のみを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であるため、バイオマスポリエチレンのバイオマス度は100%となる。
化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%である。従って、化石燃料由来のポリエチレンのバイオマス度は0%となる。
【0091】
シーラントフィルムのバイオマス度は、環境負荷低減性の観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは25%以上であり、より好ましくは50%以上である。一方、シーラントフィルムのバイオマス度は、例えば90%以下であり、80%以下でもよい。
【0092】
シーラントフィルムは、好ましくは主成分として高圧法低密度ポリエチレンを含む。これにより、シーラントフィルムの引き裂き性を向上できる。
なお、本明細書において、「主成分」とは、50質量%を超える成分を意味する。
【0093】
シーラントフィルムにおける高圧法低密度ポリエチレンの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。一方、シーラントフィルムにおける高圧法低密度ポリエチレンの含有量は、例えば99質量%以下であり、90質量%以下でもよい。
【0094】
シーラントフィルムにおいて、第1層の密度(以下、「密度A」とも称する)と、第2層の密度(以下、密度Bとも称する)との関係は、好ましくは密度A≦密度Bを満たす。密度Aと密度Bとの関係が密度A≦密度Bを満たすことにより、シーラントフィルムの外面への帯電防止剤の移行をより抑制できる。これにより、シーラントフィルムと、第2基材層を含む構造との間のラミネート強度を向上できる。
【0095】
密度Aに対する密度Bの比は、好ましくは1.001以上であり、より好ましくは1.01以上である。一方、密度Aに対する密度Bの比は、例えば1.5以下であり、1.3以下でもよく、1.1以下でもよい。
【0096】
シーラントフィルムの厚さは、例えば15μm以上であり、30μm以上であってもよい。シーラントフィルムの厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0097】
シーラントフィルムの内面は、表面処理が施されていてもよい。これにより、隣接する層との密着性を向上できる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ処理、フレーム処理、オゾン処理、酸素ガス及び/又は窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理等の物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理等の化学的処理が挙げられる。
【0098】
一実施形態において、シーラントフィルムは、更に第3層を備えてもよい。
【0099】
以下、シーラント層23を構成するシーラントフィルム10の具体例を、図4図6を参照して説明する。
【0100】
一実施形態において、シーラントフィルム10は、図4に示すように、第1層11と、第2層12とを備える。図4に示すように、第1層11は、シーラントフィルム10の内面X側に位置し、第2層12は、シーラントフィルム10の外面Y側に位置する。
【0101】
一実施形態において、シーラントフィルム10は、図5に示すように、第1層11と、第2層12と、第3層13とを備える。図5に示すように、第1層11は、シーラントフィルム10の内面X側に位置し、第3層13は、シーラントフィルム10の外面Y側に位置する。第2層12は、第1層11と第3層13との間に位置する。
【0102】
一実施形態において、シーラントフィルム10は、図6に示すように、第1層11と、第2層12と、第3層13とを備える。図6に示すように、第1層11は、シーラントフィルム10の内面X側に位置し、第2層12は、シーラントフィルム10の外面Y側に位置する。第3層13は、第1層11と第2層12との間に位置する。
【0103】
上記のシーラントフィルム10の層構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0104】
以下、シーラントフィルムが備え得る第1層、第2層及び第3層について説明する。
【0105】
<第1層>
第1層は、ポリエチレンと帯電防止剤とを含む。これにより、シーラントフィルムに帯電防止性能を付与できる。
シーラントフィルムにおいて、第1層はシール層である。本明細書において、「シール層」とは、シーラントフィルムを積層体に使用した際に、積層体の一方の表面層、又は積層体の双方の表面層を構成する層であり、熱によって融着する層を意味する。
【0106】
第1層において、ポリエチレンは主成分でもよい。第1層におけるポリエチレンの含有量は、第1層全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
【0107】
第1層に含まれる帯電防止剤としては、例えば、アジピン酸、グルタミン酸、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩等のアニオン性帯電防止剤;アミン、イミダゾリン、アミン酸化エチレン付加体、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性帯電防止剤;カチオン基とアニオン基の両方を有する例えばアルキルアミンに無水マレイン酸を作用させたグアニジン塩、ポリエチレンイミンから誘導されるスルホン酸等の両性帯電防止剤;ポリオール、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物、エーテル化合物、高級アルコールエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、脂肪酸アミド及びそのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性帯電防止剤等が挙げられる。第1層はこれらの帯電防止剤を1種又は2種以上含んでもよい。
第1層に含まれる帯電防止剤は、好ましくは、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、両性帯電防止剤及び非イオン性帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の帯電防止剤である。
一実施形態において、第1層は、アニオン性帯電防止剤と両性帯電防止剤とを含む。第1層は、特に好ましくは、アニオン性帯電防止剤としてのアルキルスルホン酸等の有機スルホン酸塩と、両性帯電防止剤としてのポリオールとカルボン酸とのエステル化合物、エーテル化合物又はアルキルジアルコールアミドと、を含む。帯電防止剤としては、竹本油脂(株)製のエレカットマスター LM530を用いることができる。
帯電防止剤は、ベース材料としてポリエチレンを含むマスターバッチの形態で第1層に加えることができる。
なお、本明細書において、帯電防止剤及び後述する添加剤の含有量は、GC/MS法により行う。測定器としては、島津製のGCMS-TQ8050を使用できる。
【0108】
第1層における帯電防止剤の含有量は、第1層全体に対して、好ましくは0.05質量%以上3質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。
第1層における帯電防止剤の含有量を上記範囲とすることにより、シール性及び帯電防止性の両方に優れるシーラントフィルムとすることができる。
【0109】
第1層は、好ましくは、主成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含む。これにより、シーラントフィルムのシール強度を向上できる。
第1層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、第1層全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。一方、第1層における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、例えば98質量%以下であり、97質量%以下でもよい。
【0110】
第1層は、高圧法低密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種のポリエチレンを含んでもよい。
第1層における上記ポリエチレンの含有量は、第1層全体に対して、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%である。一方、上記ポリエチレンの含有量は、例えば1質量%以上であり、2質量%以上でもよい。
【0111】
第1層はバイオマスポリエチレンを含んでもよい。
【0112】
第1層は、本発明の特性を損なわない範囲において、帯電防止剤の他に1種又2種以上の添加剤を含んでもよい。第1層に含まれる添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、酸化防止剤、イオン交換剤、及び着色顔料等ができる。
【0113】
第1層は、本発明の特性を損なわない範囲において、高密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0114】
第1層の密度は、例えば0.900g/cm以上であり、0.910g/cm以上でもよく、0.920g/cm以上でもよい。一方、第1層の密度は、例えば0.940g/cm以下であり、0.935g/cm以下でもよく、0.930g/cm以下でもよい。
【0115】
第1層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。一方、第1層の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
【0116】
<第2層>
第2層は、ポリエチレンを含む。第2層において、ポリエチレンは主成分でもよい。第2層におけるポリエチレンの含有量は、第2層全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
一実施形態において、第2層は、ポリエチレンのみからなることが好ましい。
【0117】
第2層は、好ましくは、主成分として、高圧法低密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種のポリエチレンを含む。これにより、シーラントフィルムの引き裂き強度を低減でき、引き裂き性を向上できる。
第2層における上記ポリエチレンの含有量は、第2層全体に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。一方、第2層における上記ポリエチレンの含有量は、第2層全体に対して、例えば98質量%以下であり、97質量%以下でもよい。
【0118】
第2層は、直鎖状ポリエチレンを含んでもよい。第2層に含まれる直鎖状ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンでもよい。
【0119】
第2層はバイオマスポリエチレンを含んでもよい。
【0120】
第2層は、本発明の特性を損なわない範囲において、帯電防止剤を含んでもよい。好ましくは、第2層は帯電防止剤を含まない。
本明細書において、「含まない」とは、熱分解GC法により測定した含有量が100ppm以下もしくは目的の成分が検出されないことを意味する。
【0121】
第2層は、本発明の特性を損なわない範囲において、1種又2種以上の添加剤を含んでもよいが、第2層は、好ましくは添加剤を含まない。第2層に含まれる添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、酸化防止剤、イオン交換剤、及び着色顔料等が挙げられる。第2層における添加剤の含有量は、好ましくは0.05質量%未満であり、より好ましくは0.01質量%以下である。第2層は、特に好ましくは、添加剤を含まない。
【0122】
第2層は、本発明の特性を損なわない範囲において、高密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0123】
第2層の密度は、例えば0.900g/cm以上であり、0.910g/cm以上でもよく、0.920g/cm以上でもよい。一方、第2層の密度は、例えば0.940g/cm以下であり、0.935g/cm以下でもよく、0.930g/cm以下でもよい。
【0124】
一実施形態において、シーラントフィルムが2つの層から構成されている場合、第2層はラミネート層である。ラミネート層とは、シーラントフィルムの外面を構成する層である。
一実施形態において、シーラントフィルムが3つ以上の層から構成されている場合、第2層はラミネート層又は中間層である。中間層とは、シール層とラミネート層との間に位置する層である。シーラントフィルムが3つ以上の層から構成されている場合、第2層は、好ましくはラミネート層である。
第2層は、シーラントフィルム内に複数存在する層でもよい。即ち、ラミネート層及び中間層の両方が第2層でもよい。
中間層は、単層でも、多層でもよい。中間層が多層である場合、各中間層の組成は、同一でも、異なってもよい。
【0125】
シーラントフィルムが、シール層とラミネート層とから構成されている場合、ラミネート層の厚さは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは23μm以上である。一方、該ラミネート層の厚さが、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
シーラントフィルムが、シール層と中間層とラミネート層から構成されている場合、ラミネート層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。該ラミネート層の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
シーラントフィルムが、シール層と中間層とラミネート層から構成されている場合、中間層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは16μm以上である。一方、該中間層の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。
なお、ラミネート層及び中間層が多層である場合、上記厚さは多層の総厚を意味する。
【0126】
<第3層>
第3層は、ポリエチレンを含む。第3層において、ポリエチレンは主成分でもよい。第3層におけるポリエチレンの含有量は、第3層全体に対して、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
一実施形態において、第3層は、ポリエチレンのみからなることが好ましい。
【0127】
一実施形態において、第3層は、結晶化度Cを有し、シーラントフィルムにおいて、結晶化度Aと、結晶化度Bと、結晶化度Cとの関係が、結晶化度C≦結晶化度A<結晶化度Bを満たす。
【0128】
第3層はバイオマスポリエチレンを含んでもよい。
【0129】
一実施形態において、第3層は、ラミネート層又は中間層である。第3層は、好ましくは中間層である。第3層は、シーラントフィルム内に複数存在する層でもよい。
【0130】
第3層は、好ましくは帯電防止剤を含まない。
【0131】
第3層は、本発明の特性を損なわない範囲において、1種又2種以上の添加剤を含んでもよいが、第3層は、好ましくは帯電防止剤を含まない。第3層に含まれる添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、酸化防止剤、イオン交換剤、及び着色顔料等が挙げられる。
【0132】
第3層がラミネート層である場合、第3層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。一方、該第3層の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
第3層が中間層である場合、第3層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは16μm以上である。一方、第3層の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。
なお、ラミネート層及び中間層が多層である場合、上記厚さは多層の総厚を意味する。
【0133】
シーラントフィルムにおいて、中間層の厚さは、好ましくはラミネート層の厚さよりも厚い。これにより、シーラントフィルムのカール現象を抑制できる。ラミネート層の厚さに対する中間層の厚さは、好ましくは1以上10以下であり、より好ましくは2以上5以下である。
シーラントフィルムにおいて、中間層の厚さは、好ましくはシール層の厚さよりも厚い。これにより、シーラントフィルムのカール現象を抑制できる。シール層の厚さに対する中間層の厚さは、好ましくは1以上10以下であり、より好ましくは2以上5以下である。
【0134】
シーラントフィルムの厚さに対するシール層の厚さは、例えば1/2以下であり、1/3以下であってもよく、1/4以下であってもよい。シーラントフィルムの厚さに対するシール層の厚さは、例えば1/20以上であり、1/10以上であってもよい。
【0135】
シール層、ラミネート層、中間層の厚さは、シーラントフィルムの断面の観察結果から算出される。シーラントフィルムの断面を観察する装置としては、例えば偏光顕微鏡を用いる。
【0136】
<シーラントフィルムの特性>
シーラントフィルムにおいて、内面の表面固有抵抗率は、好ましくは9.0×1012Ω/□以下であり、より好ましくは9.0×1011Ω/□以下である。内面の表面固有抵抗率は、例えば1.0×1010以上である。
内面の表面固有抵抗率は、JIS K6911:1995に準拠して測定できる。測定器としては、高抵抗率径ハイレスターUX MCP-HT800((株)三井化学アナリテック製)を用いることができる。本願において、特に断らない限り、表面固有抵抗率の測定時の環境は、温度20℃、相対湿度65%である。
【0137】
積層体のシーラント層がシーラントフィルムによって構成される場合、シーラントフィルムの内面の表面固有抵抗率は、積層体の内面の表面固有抵抗率でもある。
【0138】
シーラントフィルムの破断強度は、少なくとも1つの方向において、例えば10MPa以上であり、15MPa以上でもよく、25MPa以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断強度は、少なくとも1つの方向において、例えば50MPa以下であり、30MPa以下でもよい。
一実施形態において、シーラントフィルムの破断強度は、シーラントフィルムの流れ方向(MD)において、例えば10MPa以上であり、15MPa以上でもよく、25MPa以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断強度は、MDにおいて、例えば50MPa以下であり、30MPa以下でもよい。
一実施形態において、シーラントフィルムの破断強度は、シーラントフィルムの流れ方向と垂直方向(TD)において、例えば10MPa以上であり、15MPa以上でもよく、25MPa以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断強度は、TDにおいて、例えば50MPa以下であり、30MPa以下でもよい。
【0139】
シーラントフィルムの破断伸度は、少なくとも1つの方向において、例えば150%以上であり、200%以上でもよく、500%以上でもよく、600%以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断伸度は、少なくとも1つの方向において、例えば1500%以下であり、1000%以下でもよい。
一実施形態において、シーラントフィルムの破断伸度は、MDにおいて、例えば150%以上であり、200%以上でもよく、500%以上でもよく、600%以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断伸度は、MDにおいて、例えば1500%以下であり、1000%以下でもよい。
一実施形態において、シーラントフィルムの破断伸度は、TDにおいて、例えば150%以上であり、200%以上でもよく、500%以上でもよく、600%以上でもよい。一方、シーラントフィルムの破断伸度は、TDにおいて、例えば1500%以下であり、1000%以下でもよい。
【0140】
破断強度及び破断伸度は、JIS Z1702:1994に準拠して測定できる。測定器としては、テンシロン万能材料試験機 RTC-1530(オリエンテック社製)を用いることができる。試験片としては、シーラントフィルムをダンベル状に切り出したものを用いることができる。試験片の測定幅は10mmであり、試験片を保持する一対のチャックの間の、測定開始時の間隔は50mmであり、引張速度は200mm/分である。なお、試験片の長さは、一対のチャックによって試験片を把持できる限りにおいて、調整可能である。本願において、特に断らない限り、破断強度及び破断伸度の測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%である。
【0141】
〔シーラントフィルムの製造方法〕
シーラントフィルムは、従来公知の方法により製造できるが、シーラントフィルムが備える第1層及び第2層は、原料であるポリエチレンの種類、密度及び使用量を適宜選択することにより形成できる。
【0142】
シーラントフィルムの製膜方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造できる。シーラントフィルムは、好ましくは共押出し成形され、より好ましくは、共押出し成形が、Tダイ法又はインフレーション法により行われる。以下、Tダイ法、インフレーション法によりシーラントフィルムを製造する方法の一例を説明する。
【0143】
Tダイ法においては、まず、各層を構成する材料を乾燥させた後、これを融点以上の温度(Tm)~Tm+100℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、これらを溶融し、Tダイのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラム等で急冷固化することによりシーラントフィルムを成形できる。
溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用できる。
【0144】
インフレーション法においては、まず、各層を構成する材料を乾燥させた後、これを融点以上の温度(Tm)~Tm+100℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、これらを溶融し、環状ダイのダイにより円筒状に押出しする。このときに、円筒状の溶融樹脂内に下方から空気を送り、円筒の径を所定の大きさに膨張させると共に、円筒外に下方から冷却用空気を送る。この膨張した円筒状体をバブルと呼ぶ。続いて、バブルを、案内板及びピンチロールによってフィルム状に折り畳み、巻き上げ部において巻き取る。折り畳まれたフィルムは、筒状のまま巻き取っても、筒の両端をスリッター等で除去し、2枚のフィルムに切り離してから、それぞれを巻き取ってもよい。これによりシーラントフィルムを成形できる。
溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用できる。
【0145】
〔積層体の製造方法〕
積層体の製造方法は特に限定されず、溶融押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドラミネート法等の従来公知の方法を用いて製造できる。例えば、ドライラミネート法又はサンドラミネート法により、第1基材層を含む構造と第2基材層を含む構造とを、接着層を介して貼り合わせる。続いて、ドライラミネート法又はサンドラミネート法により、第1基材層及び第2基材層を含む構造と、シーラントフィルムとを、接着層を介して貼り合わせる。
【0146】
<積層体の特性>
本実施の形態のシーラント層23においては、外面Yへ向かう帯電防止剤の移行が抑制されている。このため、帯電防止剤が外面Yに現れることを抑制できる。これにより、第2基材層22を含む構造とシーラント層23との間のラミネート強度が低下することを抑制できる。
【0147】
第2基材層22を含む構造とシーラント層23との間のラミネート強度は、例えば2.5N以上であり、3.0N以上であってもよく、3.3N以上であってもよく、3.5N以上であってもよい。ラミネート強度は、例えば5.5N以下であり、5.0N以下であってもよく、4.5N以下であってもよく、4.0N以下であってもよい。ラミネート強度は、後述するように、積層体1からカットされた、15mm巾の短冊状の試験片を用いて測定される。
【0148】
優れたラミネート強度を有する積層体1は、引き裂き性に優れる傾向にある。流れ方向(MD)における積層体1の引き裂き強度は、例えば0.45N以下であり、0.40N以下であってもよく、0.35N以下であってもよい。流れ方向(MD)における積層体1の引き裂き強度は、例えば0.25N以上であり、0.30N以上であってもよい。引き裂き強度は、後述するように、積層体1からカットされた試験片を用いて測定される。
【0149】
積層体1の内面1Xの表面固有抵抗率は、好ましくは9.0×1012Ω/□以下であり、より好ましくは9.0×1011Ω/□以下である。内面の表面固有抵抗率は、例えば1.0×1010以上である。積層体1の内面1Xの表面固有抵抗率は、シーラントフィルムの内面の表面固有抵抗率と同一の方法により測定される。
【0150】
本明細書において、特に断らない限り、ラミネート強度、引き裂き強度及び表面固有抵抗率は、製造されてから十分な時間が経過した後の状態における積層体1からカットされた試験片を用いて測定される。「十分な時間」は、例えば、積層体1が、40℃以上の環境下に累積で2か月以上置かれていたことを意味する。
【0151】
〔包装袋〕
図7は、包装袋30の一実施形態を示す正面図である。包装袋30は、上述の積層体1を備える。
【0152】
包装袋30は、上部31、下部32及び側部33を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」及び「側部」等の名称、並びに、「上方」、「下方」等の用語は、包装袋30やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。包装袋30の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0153】
図7に示すように、包装袋30は、表面を構成する表面シート34及び裏面を構成する裏面シート35を備える。図7に示す包装袋30において、表面シート34及び裏面シート35は、1枚の積層体1により形成されている。この時、積層体1は、シーラント層23が包装袋30の内側に位置するように下部32で折り返される。包装袋30は、内容物を収容する収容部30aを備える。
【0154】
表面シート34及び裏面シート35は、内面同士がシール部によって接合されている。図7に示す包装袋30の正面図においては、シール部にハッチングが施されている。収容部30aは、シール部又は積層体1の折り返し部、表面シート34及び裏面シート35によって囲まれた空間である。
【0155】
図7に示すように、包装袋30は、包装袋30の3方向の縁に沿って延びるシール部を有する。該シール部は、上部31に沿って延びる上部シール部31aと、一対の側部33に沿って延びる一対の側部シール部33aとを含む。なお、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)の包装袋30においては、包装袋30の上部31には開口部(図示せず)が形成されている。そして、包装袋30に内容物を収容した後、表面シート34の内面と裏面シート35の内面とを上部31において接合することにより、上部シール部31aが形成されて包装袋30が封止される。
上部シール部31a及び側部シール部33aは、表面シート34の内面と裏面シート35の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
【0156】
図7に示す例において、一対の側部シール部33aが対向する第1方向D1が、積層体1の流れ方向(MD)であってもよい。言い換えると、流れ方向(MD)が第1方向D1に一致するよう、包装袋30が作製されてもよい。
【0157】
対向するシート同士を接合して包装袋30を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によってシートの内面を溶融させ、内面同士を溶着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成する。
【0158】
なお、図示はしないが、包装袋30において、表面シート34及び裏面シート35は、それぞれ、1枚ずつの積層体20により形成されていてもよい。この場合、包装袋30は、包装袋30の4方向の縁に沿って伸びるシール部を有する。
【0159】
図7に示すように、包装袋30は、袋10を破断して袋10を開封することを容易にするための易開封手段36を備えていてもよい。易開封手段36は、例えば、切り欠き、切り込みなどである。易開封手段36は、袋10の側縁に至るように側部シール部33aに形成されていてもよい。易開封手段36は、上部シール部31aに形成されていてもよい。易開封手段36は、ミシン目加工を含んでいてもよい。ミシン目加工は、側部シール部33a、上部シール部31aなどのシール部の全域に形成されていてもよい。ミシン目加工は、例えば、第1基材層21、第2基材層22などの基材層を貫通する複数の孔、切り込みなどを含んでもよい。
【0160】
図8は、包装袋30の一実施形態を示す正面図である。包装袋30は、チャックテープ37を備えてもよい。チャックテープ37は、一方の側部シール部33aから他方の側部シール部33aに至るよう、収容部30aに位置している。チャックテープ37は、表面シート34の内面に位置する第1部材と、裏面シート35の内面に位置する第2部材と、を含む。第1部材と第2部材が嵌合することにより、収容部30aを封止できる。
【0161】
図8に示すように、易開封手段36は、第1方向D1に直交する第2方向D2において、上部シール部31aとチャックテープ37との間に位置していてもよい。
【0162】
包装袋の内容物は、例えば、粉末食品(ふりかけ、唐揚げ粉)、粉末薬、粉末飲料(コーヒー、紅茶)等の粉状物である。包装袋が帯電防止性能を有することにより、粉状物が包装袋の内面に付着することを抑制できる。包装袋は、粉状物以外の内容物を収容してもよい。
【実施例0163】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0164】
以下に、実施例において使用した材料を列挙する。
・高圧法低密度ポリエチレンA(LDPE_A)・・・密度:0.924g/cm、メルトフローレート(MFR):2g/10分、融点:111℃、バイオマス度:0%
・高圧法低密度ポリエチレンC(LDPE_C)・・・密度:0.923g/cm、MFR:2.7g/10分、バイオマス度:95%
・高圧法低密度ポリエチレンD(LDPE_D)・・・密度:0.919g/cm、メルトフローレート(MFR):2g/10分、融点:107℃、バイオマス度:0%
・直鎖状低密度ポリエチレンA(共重合体A)・・・エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10分、融点:116℃、バイオマス度:0%
・直鎖状低密度ポリエチレンB(共重合体B)・・・エチレンと1-ブテンとの共重合体、密度:0.916g/cm、MFR:1.0g/10分、バイオマス度:0%
・直鎖状低密度ポリエチレンD(共重合体D)・・・エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、密度:0.918g/cm、MFR:4g/10分、融点:116℃、バイオマス度:0%
・直鎖状低密度ポリエチレンE(共重合体E)・・・エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、密度:0.938g/cm、MFR:3.5g/10分、融点:126℃、バイオマス度:0%
・帯電防止剤マスターバッチA(AS剤A)・・・ベース材料:高圧法低密度ポリエチレン、帯電防止剤A:エレカットマスター LM530(竹本油脂(株)製)、帯電防止剤Aの含有量:18.0質量%、密度:0.94g/cm、MFR:4.9g/10分、バイオマス度:0%
・帯電防止剤マスターバッチB(AS剤B)・・・ベース材料:高圧法低密度ポリエチレン、帯電防止剤Aの含有量:12.0質量%、密度:0.95g/cm、MFR:6.8g/10分、バイオマス度:0%
・帯電防止剤C(AS剤C)・・・カチオン系界面活性剤
・アンチブロッキング剤マスターバッチ(AB剤)・・・ベース材料:ポリエチレン、アンチブロッキング剤:合成ゼオライト、アンチブロッキング剤含有量:10質量%、密度:0.961g/cm、MFR:4.0g/10分、バイオマス度:0%
【0165】
[実施例1]
シール層として80質量部の共重合体Aと、5質量部のAS剤Aと、15質量部のAB剤との混合物、及びラミネート層としてLDPE_Aを、それぞれ溶融してフィルム状に共押出しすることにより、2つの層から構成される厚さ40μmのシーラントフィルムを得た。シーラントフィルムにおいて、シール層の厚さは8μmに調整し、ラミネート層の厚さは32μmに調整した。従って、シーラントフィルムの厚さに対するシール層の厚さは1/5であった。
【0166】
[実施例2]
シール層として80質量部の共重合体Aと、5質量部のAS剤Aと、15質量部のAB剤との混合物、中間層としてLDPE_C、及びラミネート層としてLDPE_Aを、それぞれ溶融してフィルム状に押出しすることにより、3つの層から構成される厚さ40μmのシーラントフィルムを得た。シーラントフィルムにおいて、シール層の厚さは8μmに調整し、中間層の厚さは24μmに調整し、ラミネート層の厚さは8μmに調整した。従って、シーラントフィルムの厚さに対するシール層の厚さは1/5であった。
【0167】
[実施例3]
中間層として共重合体Bのみを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてシーラントフィルムを得た。
【0168】
[実施例4]
中間層として、48質量部のLDPE_Aと、52質量部のLDPE_Cとの混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてシーラントフィルムを得た。シーラントフィルムのバイオマス度は29.6%である。
【0169】
[比較例1]
シール層として、96.5質量部の共重合体Dと、2質量部のAS剤Cと、1.5質量部のAB剤との混合物、中間層として、99.7質量部のLDPE_Dと、0.3質量部のAB剤との混合物、ラミネート層として共重合体Eのみを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてシーラントフィルムを得た。
【0170】
[比較例2]
97.5質量部のLDPE_Aと、2.5質量部のAS剤Bとの混合物を溶融してフィルム状に押出すことにより、厚さ40μmの単層のシーラントフィルムを得た。
【0171】
[比較例3]
97.4質量部の共重合体_Aと、2質量部のAS剤Bと、0.6質量部のAB剤との混合物を用いたこと以外は比較例1と同様にして単層のシーラントフィルムを得た。
【0172】
実施例及び比較例において得られたシーラントフィルムの詳細を表1に示す。
【0173】
【表1】
【0174】
<<結晶化度の算出>>
実施例及び比較例で作製したシーラントフィルムのラミネート面とヒートシール面の融解熱量を、JIS K7121:2012に準拠して描画されたDSC曲線から得た。
DSC曲線は、以下の条件下で1回目の昇温の際に得られた示差走査熱量計(DSC)のデータから、JIS K7121:2012に準拠して描画した。
(条件)
試料量:約10mgを精秤
測定雰囲気:窒素中
パンの材質:Al
流量:100mL/分
測定範囲:30℃から150℃まで
昇温速度:10℃/分
【0175】
結晶化度を、下記数式(1)により算出した。なお、完全結晶体の融解熱量としては、ポリエチレンの完全結晶体の融解熱量を用いた。ポリエチレンの完全結晶体の融解熱量は、293J/gである。
結晶化度[%]=(DSC曲線から得られた融解熱量/完全結晶体の融解熱量)×100 (1)
【0176】
DSC曲線から得られた融解熱量、及び数式(1)から算出された結晶化度を表2に示す。
ラミネート面の結晶化度がヒートシール面の結晶化度よりも大きいことは、シーラントフィルムが、結晶化度Aを超える結晶化度Bを有する第2層を備えることを意味する。
【0177】
【表2】
【0178】
<<破断試験の測定>>
実施例及び比較例で作製したシーラントフィルムの破断強度及び破断伸度を、JIS Z1702:1994に準拠して測定した。測定器としては、テンシロン万能材料試験機 RTC-1530(オリエンテック社製)を用いた。
具体的には、まず、試験片として、シーラントフィルムをダンベル状に切り出したものを準備した。試験片の測定幅は10mmとし、試験片を保持する一対のチャックの間の、測定開始時の間隔は50mmとし、引張速度は200mm/分とした。
破断強度及び破断伸度の測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。測定結果を表3に示す。
【0179】
<<シール強度の測定>>
実施例及び比較例で作製した各シーラントフィルムを2枚用いて、シーラントフィルムのシール層同士を90℃で熱融着し、シール部を形成した。続いて、シール部を含む部分を切り出して、シール強度を測定するための幅15mm、長さ100mmの試験片を作製した。なお、シール部の長さは、15mmである。
【0180】
シール強度は、JIS K 7127:1999に準拠して測定した。測定器としては、オリエンテック社製の引張試験機:SA-1150を用いた。
具体的には、図9に示すように、試験片40の未シール部における2枚のシーラントフィルムをそれぞれ、測定器のつかみ具41で把持した。つかみ具41をそれぞれ、試験片40のシール部42の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、300mm/分の速度で引っ張り、引張応力の最大値を測定した。そして、最大値の平均値をシール強度とした。引っ張りを開始する際におけるつかみ具41間の間隔S1は50mmとした。
熱融着の温度を、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃及び150℃に変更して、上記と同様の方法でシール強度を測定した。
シール強度の測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。測定結果を表3に示す。上記測定結果を表3に示す。
【0181】
<<シーラントフィルムの表面固有抵抗率の測定>>
実施例及び比較例で作製したシーラントフィルムのラミネート面及びヒートシール面における表面固有抵抗率を、JIS K6911:1995に準拠して測定した。測定器としては、高抵抗率径ハイレスターUX MCP-HT800((株)三井化学アナリテック製)を用いた。
表面固有抵抗率の測定は、作製直のシーラントフィルム、及び温度40度で1週間保存した後のシーラントフィルムを用いて行った。
表面固有抵抗率の測定時の環境は、温度20℃、相対湿度65%とした。測定結果を表3に示す。
【0182】
【表3】
【0183】
[積層体の作製]
実施例及び比較例の各シーラントフィルムを用いて、積層体を作製した。
【0184】
具体的には、まず、シーラントフィルムのラミネート面側をコロナ処理した。
【0185】
また、第1基材層として、片面がコロナ処理された30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製、P2171)を準備した。
【0186】
また、第2基材層として、アルミニウムからなる蒸着膜が形成されたポリエステルフィルム(東レフィルム加工(株)製、1310)を準備した。
【0187】
次いで、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、ポリエステルフィルムとを、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面と、ポリエステルフィルムの蒸着膜とが向かい合うように、接着剤を介してドライラミネートした。接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-77T、硬化剤:H-7)を用いた。
【0188】
次いで、二軸延伸ポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルムを含む構造と、シーラントフィルムとを、蒸着膜とは反対側のポリエステルフィルムの面と、シーラントフィルムのコロナ処理面とが向かい合うように、接着剤を介してドライラミネートした。接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-77T、硬化剤:H-7)を用いた。
【0189】
以上により、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(第1基材層)と、2液硬化型ウレタン系接着剤(第1接着層)と、アルミニウム蒸着膜(蒸着膜)と、ポリエステルフィルム(第2基材層)と、2液硬化型ウレタン系接着剤(第2接着層)と、シーラントフィルム(シーラント層)とをこの順に備える積層体を得た。
【0190】
<<積層体の表面固有抵抗率の測定>>
上記積層体のシーラント層の表面における表面固有抵抗率を、JIS K6911:1995に準拠して測定した。測定器としては、高抵抗率径ハイレスターUX MCP-HT800((株)三井化学アナリテック製)を用いた。測定時の環境は、温度20℃、相対湿度65%とした。
表面固有抵抗率の測定は、温度40度で2カ月保存した後の積層体を用いて行った。実施例1~4の積層体に関しては、作製直後の状態における表面固有抵抗率も測定した。測定結果を表4に示す。
【0191】
<<ラミネート強度の測定>>
上記積層体を15mm巾の短冊状にカットした試験片を、引張試験機((株)オリエンテック製、テンシロン万能材料試験機 RTC-1530)を用いて、JIS Z1707:2019に準拠し、ラミネート強度(N/15mm)を、剥離速度50mm/分で180°剥離(T字剥離法)を用いて測定した。
具体的には、まず、積層体を切り出して、図10に示すように、シーラントフィルム側51と、基材層側52とを長辺方向において15mm剥離させた短冊状の試験片50を準備した。その後、図11に示すように、シーラントフィルム側51及び基材層側52のうち既に剥離されている部分をそれぞれ、測定器のつかみ具53で把持した。つかみ具53をそれぞれ、シーラントフィルム側51と基材層側52とがまだ積層されている部分の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きに、50mm/分の速度で引っ張り、安定領域(図12参照)における引張応力Fの平均値を測定した。引っ張りを開始する際の、つかみ具53間の間隔S2は30mmとし、引っ張りを終了する際の、つかみ具53間の間隔S2は60mmとした。図12は、つかみ具53間の間隔S2に対する引張応力Fの変化を示す図である。図12に示すように、間隔S2に対する引張応力Fの変化は、第1領域R1を経て、第1領域R1よりも変化率の小さい第2領域R2に入る。第2領域R2は、安定領域とも称される。ラミネート強度の測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。
5個の試験片50について、安定領域R2における引張応力Fの平均値を測定し、その平均値をラミネート強度とした。ラミネート強度の測定は、温度40度で2カ月保存した後の積層体を用いて行った。実施例1~4の積層体に関しては、作製直後の状態におけるラミネート強度も測定した。測定結果を表4に示す。
【0192】
<<引き裂き強度の測定>>
上記積層体から切り出した試験片60を用いて、JIS K7128-2:1998に準拠して、流れ方向(MD)の引き裂き強度を測定した。図13は、試験片60を示す平面図である。試験片60は、測定方向に延びるスリット61を含む。流れ方向(MD)における引き裂き強度を測定する場合、スリット61が流れ方向(MD)に延びている。スリット61の長さL3は、20±0.5mmである。スリット61が延びる方向における試験片60の寸法L1は、63±0.5mmである。スリット61が延びる方向に直交する方向における試験片60の寸法L2は、75±0.5mmである。
重ねられた複数の試験片60を含む、図14に示す試験片グループ65を、測定器のつかみ具に取り付けた。1つの試験片グループ65は、8枚の試験片60を含む。続いて、スリット61に沿って試験片グループ65に力を加え、試験片グループ65を引き裂くのに要した力を記録した。測定器しては、エルメンドルフ引き裂き試験機(東洋精機製作所製)を用いた。測定時の環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。
5つの試験片グループ65について、試験片グループ65を引き裂くのに要した力を記録し、平均値を算出した。1つの試験片グループ65に含まれる試験片60の数、すなわち8で平均値を割ったものを、積層体の引き裂き強度とした。引き裂き強度の測定は、温度40度で2カ月保存した後の積層体を用いて行った。実施例1~4の積層体に関しては、作製直後の状態における引き裂き強度も測定した。測定結果を表4に示す。
【0193】
<<開封評価>>
実施例及び比較例の積層体を用いて、図8に示す、上部シール部31a及び一対の側部シール部33aを含むシール部と、易開封手段36と、チャックテープ37とを備える包装袋を作製した。易開封手段36は、側部シール部33a、上部シール部31aなどのシール部の全域に形成されたミシン目加工を含む。続いて、上部シール部31aの易開封手段36を起点として包装袋を第2方向D2に沿ってスムーズに引き裂くことができるか否かを評価した。評価結果を表4に示す。表4の「開封評価」の欄において、「OK」は、シーラント層の伸びが抑制された状態で、一方の側部から他方の側部まで包装袋をスムーズに引き裂けたことを意味する。「NG」は、包装袋を第2方向D2に引き裂く途中でシーラント層に伸びが生じたことを意味する。「BAD」は、包装袋を一方の側部から他方の側部まで第2方向D2に沿って引き裂けなかったことを意味する。
【0194】
【表4】
【0195】
表4から分かるように、実施例1~4の積層体においては、積層体のラミネート強度が3.3N以上であった。また、実施例1~4の積層体においては、作製直後の積層体のラミネート強度と、温度40度で2カ月保存した後の積層体のラミネート強度との差の絶対値が、0.3N以下であった。
【0196】
表4から分かるように、実施例1~4の積層体においては、積層体の引き裂き強度が0.45N以下であった。また、実施例1~4の積層体においては、作製直後の積層体の引き裂き強度と、温度40度で2カ月保存した後の積層体の引き裂き強度との差の絶対値が、0.01N以下であった。
【0197】
実施例1~4の積層体においては、時間の経過に伴うラミネート強度の減少、及び時間の経過に伴う引き裂き強度の増加がほとんど見られなかった。このことから、実施例1~4の積層体においては、シーラントフィルムの外面への帯電防止剤の移行が抑制されていると考えられる。
【符号の説明】
【0198】
1:積層体
1X:内面
1Y:外面
10:シーラントフィルム
11:第1層
12:第2層
13:第3層
21:第1基材層
22:第2基材層
23:シーラント層
X:内面
Y:外面
24:蒸着膜
25:ガスバリア性塗布膜
26:第1接着層
27:第2接着層
30:包装袋
30a:収容部
31:上部
31a:上部シール部
32:下部
33:側部
33a:側部シール部
34:表面シート
35:裏面シート
40:試験片
41:つかみ具
42:シール部
50:試験片
51:シーラントフィルム側
52:基材層側
53:つかみ具
60:試験片
61:スリット
65:試験片グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14