(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187946
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】シート収納装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B65H1/04 326B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096223
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰旭
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC12
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA14
3F343HE08
3F343HE11
3F343KB03
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC19
(57)【要約】
【課題】 積載されたシートの量によらず、シートの座屈を防ぎつつ、シートを一定の位置に位置させることができるシート収納装置を提供する。
【解決手段】 搬送方向におけるシートの後端部の位置を規制する規制部が、シートを押圧する押圧部を有す。押圧面は、収納されたシートの量に応じて、押し方向について押圧面上部が前記押圧面下部の下流側に位置する第一の状態と、押し方向について押圧面下部が押圧面上部の下流側に位置する第二の状態とを取ることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート収納装置であって、
シートを収納するシート収納部と、
前記シート収納部に設けられ、シートの搬送方向におけるシートの後端部の位置を規制する規制部であって、前記後端部を押圧する押圧面を有する押圧部と、前記押圧部を支持する支持部と、シートが前記押圧面によって押圧されるように、前記押圧部を付勢する付勢部材と、を有する規制部と、
前記搬送方向におけるシートの先端部を持ち上げる持ち上げ部と、
を備え、
前記押圧面において、下部のシートと当接する位置を押圧面下部、前記下部のシートより上部のシートと当接する位置を押圧面上部とし、
水平方向に平行かつ前記搬送方向で下流側に向かう方向を押し方向としたとき、
前記押圧面は、前記シート収納部に収納されたシートの量に応じて、前記押し方向について前記押圧面上部が前記押圧面下部の下流側に位置する第一の状態と、
前記押し方向について前記押圧面下部が前記押圧面上部の下流側に位置する第二の状態と、
を取ることができることを特徴とするシート収納装置。
【請求項2】
前記押圧面が前記第一の状態であるときのシートの量を第一の量、前記押圧面が前記第二の状態であるときのシートの量を第二の量としたとき、
前記第一の量は前記第二の量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のシート収納装置。
【請求項3】
前記押圧面は、シートの量が第三の量のときに第三の状態を取ることができ、
前記押圧面が前記第三の状態であるときの前記押圧面と鉛直方向のなす角度は、前記押圧面が前記第一の状態であるときの前記押圧面と前記鉛直方向のなす角度、および前記押圧面が前記第二の状態であるときの前記押圧面と前記鉛直方向のなす角度よりも小さく、
前記第三の量は、前記第一の量よりも多いことを特徴とする請求項2に記載のシート収納装置。
【請求項4】
前記押圧部は、前記支持部に揺動可能に支持される第一部分と、前記第一部分と揺動可能に係合する第二部分と、を有し、前記第二部分は鉛直方向について前記第一部分の下方に位置することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のシート収納装置。
【請求項5】
前記第一部分と前記第二部分は係合部で係合し、前記係合部は、鉛直方向について前記規制部の下端よりも上端に近い位置に位置することを特徴とする請求項4に記載のシート収納装置。
【請求項6】
前記付勢部材は前記押圧部の被付勢部を付勢し、前記被付勢部は、鉛直方向について、前記係合部よりも下方に位置し、かつ、前記規制部の下端よりも上端に近い位置に位置することを特徴とする請求項5に記載のシート収納装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記押圧部を直動可能かつ回転可能に支持する穴部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のシート収納装置。
【請求項8】
前記穴部は、前記押圧部が直動する方向への長さが、前記押圧部が直動する方向に直交する方向への長さよりも長いことを特徴とする請求項7に記載のシート収納装置。
【請求項9】
前記穴部は、鉛直方向について前記規制部の下端よりも上端に近い位置に位置することを特徴とする請求項7または8に記載のシート収納装置。
【請求項10】
前記付勢部材は前記押圧部の被付勢部を付勢し、前記被付勢部は、前記鉛直方向について、前記穴部よりも下方に位置し、かつ、前記規制部の下端よりも前記規制部の上端に近い位置に位置することを特徴とする請求項9に記載のシート収納装置。
【請求項11】
画像形成装置であって、
請求項1乃至10の何れか一項に記載のシート収納装置と、
シートに画像を形成する画像形成部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置及びそれに用いられるシート収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、画像形成部にシートを搬送して画像を形成する画像形成装置は、シートを積載するシート積載トレイを含むシート収納装置と、シート収納装置から搬送方向にシートを搬送する給紙ローラ(給紙部材)を備える。このようなシート収納装置において、搬送方向についてのシートの後端部を規制する規制部(後端規制部)を有するものがある。
【0003】
シート収納装置において、給紙ローラに向けてシートを持ち上げるリフトプレートを備えるものがある。リフトプレートは、搬送方向についてのシートの先端部を持ち上げることで、給紙ローラに対してシートの先端部の高さを給紙ローラと当接できる高さに保つ。シート積載トレイに積載されたシートの量が減少すると、積載されたシートの搬送方向についての先端部と後端部が共に低い位置となる。ここで給紙ローラとシートの先端部を近づけるためリフトプレートがリフトアップする量が大きくなると、シートの後端部から給紙ローラまでの距離も遠くなる。これによって給紙ローラに対するシートの先端部の位置が、搬送方向で上流側にシフトする。その結果、シートの搬送遅延による画像不良やジャムが発生する場合がある。
【0004】
この課題を解消するために、後端規制部にシート後端に向けて付勢部材によって付勢される押圧部を設け、押圧部によって積載シートのリフトアップ角度に合わせてシート後端を押し上げる構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成には、付勢部材の付勢力の調整が困難であるという課題があった。以下に詳細を説明する。
【0007】
後端規制部の押圧部は、シート積載トレイに積載されたシート全体を動かすように構成されている。そのため、積載されたシートの量が多い状態でシートを押し出す場合、大きな付勢力が必要となる。一方、付勢力は、積載されたシートの量が少ない状態でシートが座屈しないように設定する必要がある。積載されたシートの量が少ない状態でシートが座屈しないように付勢力を設定した場合、積載されたシートの量が多い状態では、シートを押し出せない場合がある。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、積載されたシートの量によらず、シートの座屈を防ぎつつ、給紙ローラをシートの所定の位置に当接させることができるシート収納装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなシート収納装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、シート収納装置であって、シートを収納するシート収納部と、前記シート収納部に設けられ、シートの搬送方向におけるシートの後端部の位置を規制する規制部であって、前記後端部を押圧する押圧面を有する押圧部と、前記押圧部を支持する支持部と、シートが前記押圧面によって押圧されるように、前記押圧部を付勢する付勢部材と、を有する規制部と、前記搬送方向におけるシートの先端部を持ち上げる持ち上げ部と、を備え、前記押圧面において、下部のシートと当接する位置を押圧面下部、前記下部のシートより上部のシートと当接する位置を押圧面上部とし、水平方向に平行かつ前記搬送方向で下流側に向かう方向を押し方向としたとき、前記押圧面は、前記シート収納部に収納されたシートの量に応じて、前記押し方向について前記押圧面上部が前記押圧面下部の下流側に位置する第一の状態と、前記押し方向について前記押圧面下部が前記押圧面上部の下流側に位置する第二の状態と、を取ることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積載シートの量によらず、給紙ローラが積載シートの所定位置に当接できるように、押圧部が積載シートを押し上げることができるため、給紙スタート時のシート位置のバラつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】画像形成装置に設けられたシート収納装置の概略構成を示す平面図
【
図3】画像形成装置に設けられたシート収納装置の概略構成を示す断面図
【
図6】本発明のシート収納装置の第1の実施例の使用状態を示す断面図
【
図7】本発明の規制部の第1の実施例の使用状態を示す断面図
【
図10】本発明のシート収納装置の第2の実施例の使用状態を示す断面図
【
図11】本発明の規制部の第2の実施例の使用状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[全体構成]
図1は、画像形成装置1の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置1は、電子写真記録方式によって画像を形成するものであり、シート(記録材)Sを画像形成部5へ搬送してトナー像を転写し、そのシートSを定着部6へ搬送してトナー像を定着した後、排出部へと排出するものである。
【0013】
シートSは、装置底部に装填されたシート収納装置2のシート収納部21の積載面に積載収納されている。このシートSは、シートSを画像形成部5へ供給するための供給ユニット3に設けられた搬送方向にシートを搬送する搬送手段としての給紙ローラ31によって、上部のシートから順に繰り出される。給紙ローラ31によって送り出されたシートSは、シート収納装置2の搬送方向下流に設けられた搬送ユニット4まで搬送され、そこから先は搬送ローラ対41により画像形成部5に送られる。
【0014】
画像形成部5では、レーザスキャナ52により画像情報に応じたレーザ光が感光体ドラム51上に照射されることで、感光体ドラム51上に静電潜像を形成し、その後、プロセスカートリッジP内の現像部(不図示)にてトナー現像を行っている。画像形成部5に送られたシートSは、転写ユニット53内の転写ローラ531へのバイアス印加により、このトナー画像が未定着画像として転写された後、定着部6に送られる。
【0015】
定着部6は、定着フィルムと定着フィルム内面側に配置された発熱手段としてのセラミックヒータ等によって構成される加熱ユニット61と、これと圧接する加圧ローラ62によって定着ニップを形成している。シートSは、この定着ニップを通過することで未定着画像が永久定着される。そして、シートSは、シート排出経路を経由して、排出ローラ対7により機外に排出され、排出トレイ8上に積載される。
【0016】
本実施例では、シートSに画像を形成する画像形成部として、転写部と定着部を用いた電子写真画像形成プロセスを採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、本発明はシートSに画像形成する画像形成部として、ノズルからインク液を吐出させることによって、シートに画像を形成するインクジェット画像形成プロセスを用いるものであってもよい。
【0017】
[シート収納装置]
次に画像形成装置1に搭載されるシート収納装置2の詳細な構成に関して、
図2および
図5を用いて説明する。
図2は異なるサイズのシートSを収納可能とするシート収納装置2の概略構成を示す平面図であり、
図5は規制部24の断面図である。
【0018】
図2に示すシート収納装置2は、異なるサイズのシートSを積載収納するシート収納部21と、シートSの側端位置を規制する一対の幅規制部22、23と、シートSの後端位置を規制する規制部24を備えている。さらに、回動可能に設けられたリフトアーム26に当接し、中板支軸251、252を中心に押し上げられ、積載されたシートSを給紙ローラ31に向けて当接させる中板25を備えている。なお、幅規制部22、23と規制部24は、中板25の回動動作に影響しない位置に配置されている。
【0019】
異なるそれぞれのサイズのシートSをシート収納部21内に収納する際には、幅規制部22、23と規制部24を収納するシートSの対応位置にセットする。これにより、シートSを適正の位置に収納することが可能となる。シート収納装置2は画像形成装置1に対して矢印A方向へ移動させることで装着することができる。なお、シートSを搬送する際は、本体内の不図示の回動機構によりリフトアーム26を回動させ、中板25を中板支軸251、252中心に上方に回動させる。これにより、幅規制部22、23と規制部24に位置決めされたシートが給紙ローラ31に押しつけられる。
【0020】
ところで、一対の幅規制手段22、23は、それぞれシート収納部21底面部に紙幅方向(矢印B方向)に伸びたラック部221、231を持っている。該ラック部221,231に形成された不図示のラック歯が、不図示のピニオンギアを介して相互に噛み合っている。これにより、いずれか一方の幅規制部を幅方向に移動させると、不図示のピニオンギアとラック部221、231との作用により、他方の幅規制部が連動して一方の幅規制部と逆方向に移動する。幅規制部22、23の位置決めは、シート収納部21に設けられた溝に幅規制部22、23に設けられた不図示の固定手段が嵌ることで、位置が決まる。
【0021】
規制部24は、C方向に沿って設けられた溝部27を移動可能となっている。溝部27はC方向に延びる凹凸部28を有し、これが規制部24に設けられた突起部2412と係合することによって、規制部24の位置決めが行われる。突起部2412は、レバー部材244をユーザが操作することによって凹凸部28との係合が解除される。この状態で溝部27上を移動させ、シートSのサイズに応じた任意の場所に位置決めすることができる。
【0022】
[実施例1]
次に本発明における第一の実施例について
図3~
図7を用いて説明する。
図3は、実施例1のシート収納装置2の断面図を表したものである。
図4は、シート収納部21内に積載されるシートSの後端を位置決めする規制部24の斜視図、
図5は規制部24の断面図を表している。
図6、
図7は押圧部200の動きを説明する図である。
【0023】
規制部24は、押圧部200、支持部241、付勢部材243を有す。押圧部200は、第一部分245、第二部分246を有す。第一部分245と第二部分246は支持部241に対して揺動可能であり、第二部分246は第一部分245の下方に位置する。第一部分245と第二部分246はシートSの後端部を押圧する押圧面を持つ。ただし、ここでの押圧面とはシートSを押圧している面を指し、シートSの積載量によって変化する。さらに規制部24はシートSが押圧面によって押圧されるように、押圧部200を付勢する付勢部材243を持つ。ここで、第一部分245に存在する第一の面245cは後述する第三の量のときにシートSを押圧している面であり、第二部分246に存在する第二の面246cはシート収納部21に積載された一番下のシートと接触可能な面である。第二の面246cは、シートの量が後述する第一の量と第二の量の時にシートを押圧している面である。本実施例において、第二の面246cは平面である。
【0024】
第一部分245は、支持部241に保持されており、支持部241に設けられた不図示の軸部に、第一部分245の一部を嵌合させ、軸部を支点として、揺動可能となっている。
【0025】
第二部分246は、第一部分245に保持されており、第一部分245に設けられた連結部245aに、第二部分246に設けられた係合部246aを係合させ、係合部246aを揺動中心として、揺動可能となっている。
【0026】
また、本実施例では係合部246aは鉛直方向について規制部24の下端249よりも上端248に近い位置に位置している。第一部分245、第二部分246は、シート収納装置2にシートSがない状態では、
図5のように付勢部材243に付勢され、支持部241よりも図中右方向に揺動した状態となっている。第二部分246は、自身に設けられた当接面246bが、支持部241に設けられた揺動規制部241bに当接することで揺動が規制され、最大揺動位置が決まる。
【0027】
第一部分245に対し、第二部分246を揺動可能に取り付けていることにより、第二部分246は、付勢部材243の付勢力がかかると、下部が動かなくても、上部が揺動できる構成になっている。この構成により、第二部分246は、積載されているシートSの上側を優先的に押し出すことになる。
【0028】
押圧部200が積載されているシートSの一番上に位置するものを押し出すのに必要な力は積載されたシートSの高さに依存しないものの、積載量が多いほど下のシートも一緒に押し出す必要がある。よって第二部分246がシートSの一番上に位置するもの付近に与える押圧力は、積載されているシートSの高さが高い時ほど大きくする必要がある。一方、積載されているシートSが少ない時には第二部分246の押圧力でシートSの束が座屈しない荷重に抑える必要がある。先述の2つの条件を満たすように、付勢位置と付勢力を設定している。
【0029】
付勢部材243は第二部分246の被付勢部247を付勢している。本実施例では被付勢部247を係合部246aよりも下方に設け、かつ、規制部24の下端249よりも上端248に近い位置に設けている。上部のシートSを優先的に押し出す効果をより得られるようにするため、このような位置に被付勢部247を設けることが好ましい。しかし被付勢部247は、シート収納部21に収容されるシートSの一番下のシートよりも上部であればどこに設けても良い。
【0030】
積載されているシートSの高さに応じて必要な押圧量を確保できるように、押圧部200の揺動姿勢が決められている。また、支持部241には、積載されているシートSの量が多いときにシートS後端が当接する積載シート当接面241aが設けられている。
【0031】
図6、
図7を用いて、シート収納装置2にシートSを積載した時の、第一部分245、第二部分246の状態について、積載されているシートSの量が、第三の量の場合、第一の量の場合、第二の量の場合の3パターンに分けて説明する。
図6(a)と
図7(a)は第三の量の場合、
図6(b)と
図7(b)は第一の量の場合、
図6(c)と
図7(c)は第二の量の場合をそれぞれ示している。ここで第三の量は第一の量よりも多く、第一の量は第二の量よりも多いものとする。具体的に本実施例では、シート収納部21がシートSを収容できる許容量に対して、第三の量を90%、第一の量を50%、第二の量を10%ずつ収容されている状態として説明するが、これらの量に限定はされない。
【0032】
まず本実施形態の構成について説明する前に、押圧部200が存在せず、シートSの後端部が規制部に規制され、かつ、シートSの先端がリフトアップされている構成について考える。シートSが第三の量の状態においては
図6(a)に示すように、積載されている一番上のシートの後端から、そのシートの面に沿う、シートと給紙ローラ31の接点までの距離がL1となる。シートSが第一の量においては
図6(b)に示すように距離がL2となり、この距離はL1よりも長い。さらにシートSが第二の量では
図6(c)に示すように距離がL3となり、この距離はL2よりも長い。
【0033】
次に押圧部200が存在する本実施例の構成について説明する。積載されているシートSが第三の量のとき、
図7(a)に示すように第一部分245、第二部分246は、シートSを付勢しつつも、支持部241からは突出しない状態で、シートS後端に当接する。このとき、シートSを押圧する押圧面と鉛直方向とのなす角度は、後述する第一の状態、第二の状態での角度と比較すると小さい(第三の状態)。
【0034】
ここで、押圧面において、シート収納部21に積載された下部のシートSと当接する位置を押圧面下部と呼び、下部のシートより上部に位置するシートSと当接する位置を押圧面上部と呼ぶ。言い換えれば、押圧面には、シートSと当接する押圧面下部と、押圧面下部より上部でシートSと当接する押圧面上部と、が存在する。
【0035】
積載されているシートSが第一の量のとき、
図7(b)に示すように押圧面が傾くことで第一部分245、第二部分246は支持部241から図中右方向へ揺動する。ここで一番上のシートの後端からシートSと給紙ローラ31の当接する位置までの距離を当接距離と呼ぶ。積載されたシートSの減少及び中板25のリフトアップによって、当接距離は長くなる。押圧面が揺動することで、次に給紙ローラ31によって給紙される一番上のシートSが搬送方向へ移動し、当接距離が短くなる。このように、長くなった当接距離を調整する。
【0036】
この時の押圧面上部を押圧面上部2411bと呼び、押圧面下部を押圧面下部2410bと呼ぶ。ここで、押圧面下部2410bの位置は、高さ方向においてシート収納部21に積載された一番下のシートに対応する位置である。押圧面上部2411bの位置は、一番上のシートに対応する位置である。また、水平方向に平行かつ搬送方向で下流側に向かう方向を押し方向とする。すると、第二部分246とシートSとの当接面(押圧面)は押し方向について押圧面上部2411bが押圧面下部2410bの下流側に位置している(第一の状態)。言い換えれば、押し方向について、第二の面246cの上端が、第二の面246cの下端の下流側に位置するように、第二の部分246の第二の面246cが傾斜した状態である。この状態において、押圧面および第二の面236cは、鉛直方向について、下方を向いている。
【0037】
このように傾斜するのは、シートSから押圧面上部2411bにかかる力が押圧面下部2410bにかかる力よりも小さいためである。これによって、押圧面下部2410bはシートSによって揺動せず、押圧面上部2411bは付勢力によって揺動し、
図7(b)のように傾斜する。
【0038】
第二の面246cおよび押圧面が上述のように傾斜することにより、第二部分246は、上部のシートSが給紙ローラ31に向けて移動するように、上部のシートSを押圧することができる。つまり、第二の面246cおよび押圧面が上述のように傾斜することにより、第二部分246は、シートの量が多い状態のときに、シート収納部21に収納されたシートの束全体を移動させる必要がない。
【0039】
積載されているシートSが第二の量のとき、押圧面のうち、高さ方向においてシート収納部21に積載された一番下のシートに対応する位置が押圧面下部2410cであり、一番上のシートに対応する位置が押圧面上部2411cである。すると、第二部分246とシートSとの当接面(押圧面)は押し方向について押圧面下部2410cが押圧面上部2411cの下流側に位置している(第二の状態)。
【0040】
言い換えれば、押し方向について、第二の面246cの下端が、第二の面246cの上端の下流側に位置するように、第二の部分246の第二の面246cが傾斜した状態である。この状態において、押圧面および第二の面236cは、鉛直方向について、上方を向いている。
【0041】
この状態においても、押圧面が揺動することで、次に給紙ローラ31によって給紙される一番上のシートSが搬送方向へ移動し、当接距離が短くなる。また、第二の状態では第一の状態よりも、一番上のシートを押し出す距離が長い。このように、長くなった当接距離を調整する。
【0042】
また、本実施例においては、押圧面上部の位置と押圧面下部の位置は、シート収納部21に積載されている一番下のシートと一番上のシートと対応する位置であったが、これに限らない。例えば、シート収納部21に積載された一番下のシートに第二部分246が接触しない場合、第二部分246が当接する一番下のシートに対応する位置が、押圧面下部の位置である。同様に、シート収納部21に積載された一番上のシートに第二部分246が接触しない場合、第二部分246が当接する一番上のシートに対応する位置が、押圧面上部の位置である。つまり、押圧面のうち、一番上を押圧面上部、一番下を押圧面下部と呼ぶこともできる。
【0043】
以上をまとめると、押圧面は、押し方向についてシート収納部に収納されたシートの量に応じて押圧面上部が押圧面下部の下流側に位置する第一の状態と、押し方向について押圧面下部が押圧面上部の下流側に位置する第二の状態を取ることができる。ここで第一の状態であるときのシートの量を第一の量、第二の状態であるときのシートの量を第二の量としたとき第一の量は第二の量よりも多い。さらにシートの量が第三の量であるとき、押圧面と鉛直方向のなす角度が、第一の状態であるときの押圧面と鉛直方向のなす角度、および押圧面が第二の状態であるときの前記押圧面と前記鉛直方向のなす角度よりも小さい第三の状態を取れる。ここで、第三の量は第一の量よりも多い。なお、押圧面と鉛直方向のなす角度とは、第二の面246cと鉛直方向のなす角と同じである。
【0044】
実施例1の構成を取ることで、シートSの積載量によらず、給紙ローラ31が積載シートの所定の位置に当接できるように、押圧部200が積載シートを押し上げることが可能となるため、搬送開始時のシートSの位置のばらつきを低減でき、安定した給紙を可能とする。
【0045】
また、規制部24は、シートSの少数枚のセットや薄紙のセット時に、シートSをたわませることなく、シートSを正しくセットすることが可能となる。シートSの積載量によらない搬送時のシートSの押し上げが可能となる。
【0046】
本実施例では、付勢部材243に圧縮コイルばねを使用しているが、他にもねじりコイルばねや、板ばね等、付勢力を発生させる部材であればよい。
【0047】
[実施例2]
次に本発明における第2の実施例について
図8~
図11を用いて説明する。実施例1では、連結された2つの押圧部を使ってシートSを押し出す構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。実施例2では、押圧部を一つの部材で構成し、同様の効果を生み出す例について説明する。
【0048】
本実施例において規制部94は、支持部941、積載シート当接面941a、押圧部900、押圧部材945、面945c、被付勢部947を有する。押圧部900は押圧部材945を有し、押圧部材945は面945cを有している。面945cは、実施例1における第二の面246cに相当する面である。面945cはシート収納部21に積載された一番下のシートと接触可能な面である。面945cは、シートの量が第一の量と第二の量の時にシートを押圧している面である。本実施例において、面945cは平面である。
【0049】
第1の実施例と同じ構成及び機能を成す部品に関しては、第1の実施例と同じ番号を付すことで、再度の説明は割愛する。
図8は、シート収納部21内に積載されるシートSの後端を位置決めする規制部94の斜視図、
図9は規制部94の断面図を表している。
図10、
図11は本発明の第2の実施例を表している。
【0050】
押圧部材945は、両端部に押圧部材軸部945aを設けており、支持部941に設けられた穴部941cに嵌合し、穴部941cが伸びるd方向に直動可能であり、かつ、押圧部材軸部945aを中心に回転可能となっている。穴部941cは押圧部としての押圧部材945の直動する方向への長さが直動する方向に直交する方向への長さよりも長い。つまり押圧部材945は、支持部941及びその穴部941cによって直動可能かつ回転可能に支持されている。
【0051】
また、穴部941cは鉛直方向について規制部94の下端249よりも上端248に近い位置に位置している。さらに第1の実施例同様、押圧部材945は、規制部94に設けられた付勢部材243により、被付勢部947をシートSに向けて付勢されている。
【0052】
押圧部材945は、シート収納装置2にシートSがない状態では、
図9のように付勢部材243に付勢され、支持部941よりも図中右方向に突出した状態となっている。押圧部材945は、自身に設けられた押圧部材当接部945bが、支持部941に設けられた被当接部941bに当接することで揺動が規制される。
【0053】
また、被付勢部947は鉛直方向について、穴部941cよりも下方に位置し、かつ、規制部94の下端249よりも上端248に近い位置に位置する。上部のシートSを優先的に押し出す効果をより得られるようにするため、このような位置に被付勢部247を設けることが好ましい。しかし被付勢部947は、シート収納部21に収容されるシートSの一番下のシートよりも上部であればどこに設けても良い。
【0054】
押圧部材945は、付勢部材243の付勢力がかかると、下部が動かなくても、上部が揺動できる構成になっている。先述の構成により、押圧部材945は、シートS上側を優先的に押し出すことになる。
【0055】
実施例1同様に、積載されたシートSの上層のシートを押し出す力とシートSの束が座屈しない力を両立させるように付勢位置と付勢力を設定している。シートSが積載されているそれぞれの高さの時に必要な押圧量を確保できるように、押圧部の揺動姿勢を決めている。
【0056】
シート収納装置2にシートSを積載した時の、押圧部材945の状態について、
図10、
図11を用いて積載されているシートSの量が、第三の量の場合、第一の量の場合、第二の量の場合の3パターンに分けて説明する。それぞれの量やその関係性は実施例一と同様のものを考えるが、これらの量に限定はされない。
【0057】
まず押圧部900が存在せず、シートSの後端部が規制部に規制され、かつ、シートSの先端がリフトアップされている状態について考える。シートSが第三の量の状態においては
図10(a)に示すように、積載されている一番上のシートの後端から、そのシートの面に沿う、シートと給紙ローラ31の接点までの距離L4が最短となる。シートSが第一の量においての距離は
図10(b)に示すようにL5となり、この距離はL4よりも長い。さらにシートSが第二の量での距離は
図10(c)に示すようにL6となり、この距離はL5よりも長い。
【0058】
次に押圧部900が存在する本実施例の構成について説明する。積載されているシートSの量が第三の量のとき、
図11(a)に示すように押圧部材945は、シートSを付勢しつつも、支持部941からは突出しない状態で、シートS後端に当接する(第三の状態)。
【0059】
積載されているシートSが第一の量のとき、
図11(b)に示すように押圧部材945が傾く。この時の押圧面上部を押圧面上部2411bと呼び、押圧面下部を押圧面下部2410bと呼ぶ。ここで押圧面下部2410bの位置は、高さ方向においてシート収納部21に積載された一番下のシートに対応する位置である。押圧面上部2411bの位置は、一番上のシートに対応する位置である。また、実施例1と同様に、水平方向に平行かつ搬送方向で下流側に向かう方向を押し方向とする。すると、押圧部材945とシートSとの当接面(押圧面)は押し方向について押圧面上部2411bが押圧面下部2410bの下流側に位置している(第一の状態)。言い換えれば、押し方向について、面945cの上端が、面945cの下端の下流側に位置するように、押圧部材945の面945cが傾斜した状態である。この状態において、押圧面および面945cは、鉛直方向について、下方を向いている。
【0060】
この状態においても、押圧面が揺動することで、次に給紙ローラ31によって給紙される一番上のシートSが搬送方向へ移動し、当接距離が短くなる。このように、長くなった当接距離を調整する。
【0061】
このように傾斜するのは、シートSから押圧面上部2411bにかかる力が押圧面下部2410bにかかる力よりも小さいためである。これによって、押圧面下部2410bはシートSによって揺動せず、押圧面上部2411bは付勢力によって揺動し、
図11(b)のように傾斜する。
【0062】
面945cおよび押圧面が上述のように傾斜することにより、押圧部材945は、上部のシートSが給紙ローラ31に向けて移動するように、上部のシートSを押圧することができる。つまり、面945cおよび押圧面が上述のように傾斜することにより、押圧部材945は、シートの量が多い状態のときに、シート収納部21に収納されたシートの束全体を移動させる必要がない。
【0063】
積載されているシートSが第二の量のとき、押圧面のうち、高さ方向においてシート収納部21に積載された一番下のシートに対応する位置が押圧面下部2410cであり、一番上のシートに対応する位置が押圧面上部2411cである。すると、押圧部材945とシートSとの当接面(押圧面)は押し方向について押圧面下部が前記押圧面上部の下流側に位置している(第二の状態)。言い換えれば、押し方向について、面945cの下端が、面945cの上端の下流側に位置するように、押圧部材945の面945cが傾斜した状態である。この状態において、押圧面および面945cは、鉛直方向について、上方を向いている。
【0064】
この状態においても、押圧面が揺動することで、次に給紙ローラ31によって給紙される一番上のシートSが搬送方向へ移動し、当接距離が短くなる。また、第二の状態では第一の状態よりも、一番上のシートを押し出す距離が長い。このように、長くなった当接距離を調整する。
【0065】
また、本実施例においても、押圧面上部の位置と押圧面下部の位置は、シート収納部21に積載されている一番下のシートと一番上のシートと対応する位置であったが、これに限らない。
【0066】
このように、実施例2の構成を取ることで、実施例1同様に、シートSの積載量によらず、給紙ローラ31が積載シートの所定の位置に当接できるように、押圧部900が積載シートを押し上げることが可能となる。これにより搬送開始時のシートSの位置のばらつきを低減でき、安定した給紙を可能とする。
【0067】
また、実施例1同様、本実施例では付勢部材243に圧縮コイルばねを使用しているが、他にもねじりコイルばねや、板ばね等、付勢力を発生させる部材であればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置
2 シート収納装置
21 シート収納部
25 中板
24、94 規制部
241 支持部
243 付勢部材
245 第一部分
245a 連結部
246 第二部分
246a 係合部
246b 第二部分当接部
941 支持部
945 押圧部材
S シート