(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187955
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】分散型クラウドを用いた医療ITガバナンス体制構築方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20221213BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021117440
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】521312798
【氏名又は名称】笹埜 健斗
(72)【発明者】
【氏名】笹埜 健斗
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療者アプリと患者アプリとを連携するPDSに基づく分散型クラウドを構築することで、患者が入力した個人健康記録の共有におけるオプトイン選択システム及び医療者が入力した電子医療記録の共有におけるブラインド設定システムを実現することができ、医療情報管理に係る正当性及び透明性を担保する医療ITガバナンス体制構築方法を提供する。
【解決手段】医療者アプリと患者アプリとを連携する分散型クラウドシステムと、患者によるオプトインの有無を判定するオプトイン選択システムと、医療者によるブラインドの設定範囲を判定するオプトイン設定システムであって、分散型クラウドは、すべてのシステム及びアプリを連携させる手段を備える。オプトイン選択システムは、同意確認ページ内の同意ボタンを操作する同意手段を備える。ブラインド設定システムは、選択範囲選択ページ内の選択ボタンを操作する選択手段を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療情報を取り巻くすべてのステークホルダーに対して、高セキュリティを担保した状態で、個人健康記録及び電子医療記録の保存・閲覧・入力・管理できるシステム。分散型クラウド(N)を構築することで、中央集権型のクラウドシステムとは異なり、外部からの攻撃リスクを下げることができ、情報共有可能な従来のクラウドと比べても、情報漏洩リスクを下げることができることを特徴とする。また、分散型クラウド(N)は、医療者アプリ(10)、患者アプリ(20)、医療情報システム1(30)、医療情報システム2(40)、二次利用システム(50)といったすべてのシステムやアプリとを連携させることで、医療ITガバナンス体制を簡単に構築することができる。
【請求項2】
医療者アプリ(10)と患者アプリ(20)とを連携させる高セキュリティが担保された分散型クラウド(N)において、患者ユーザからの個人健康記録共有の有無をオプトイン選択できるシステム。オプトイン選択の場面において同意ありを選択した場合、従来のオンプレミス型又は中央集権型のクラウドシステムによる個人健康記録の管理とは異なり、高セキュリテイを担保したまま低コストで患者データベース(21)内に個人健康記録を保存できる。その上で、患者データベース(21)から分散型クラウド(N)を経由することで、患者が入力した個人健康記録を選択式で医療者へ共有できる。また医療者から受け取った閲覧可能な電子医療記録を新たな医療情報として分散型クラウド(N)を経由し、患者データベース(21)へ蓄積することができる。患者は患者データベース(21)の情報を患者アプリ(20)上で蓄積・管理でき、患者が主体的に情報管理できることを特徴とする。
【請求項3】
医療者アプリ(10)と患者アプリ(20)とを連携させる高セキュリティが担保された分散型クラウド(N)において、医療者ユーザからの電子医療記録共有の範囲をブラインド設定できるシステム。ブラインド設定の場面において選択範囲を決定した場合、従来のオンプレミス型又は中央集権型のクラウドシステムによる電子医療記録の管理とは異なり、高セキュリティを担保したまま低コストで医療者データベース(11)内に電子医療記録を保存できる。その上で、医療者データベース(11)から分散型クラウド(N)を経由することで、医療者が入力した電子医療記録を選択式で患者へ共有できる。また患者から受け取った閲覧可能な個人健康記録を新たな医療情報として分散型クラウド(N)を経由し、医療者データベース(11)へ蓄積することができる。医療者は医療者データベース(11)の情報を医療者アプリ(10)上で蓄積・管理でき、医療者が患者の診察又は治療に情報活用できることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療者が入力した患者の電子医療記録(Electronic Medical Record)を蓄積・管理する医療者アプリ及び患者が入力した患者の個人健康記録(Personal Health Record)を蓄積・管理する患者アプリとを連携させる分散型クラウドシステムと、電子健康記録(Electronic Health Record)を実現するための患者アプリにおけるオプトイン選択システム及び医療者アプリにおけるブラインド設定システムとを用いた、医療ITガバナンス体制構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子カルテサーバと、情報共有サーバ(サーバ装置)と、ユーザ端末(端末装置)と、管理者端末(端末装置)とを備え、病院において複数の職種のスタッフ(業務内容が互いに異なる複数のスタッフ)同士で共有可能に医療情報を表示する医療情報表示システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来、医療機関又は匿名加工医療情報作成事業者が、収集する個人情報の種類、個人情報収集の目的などを開示し、利用者がその内容に同意した場合にのみ自動的に次のステップに進み個人情報の授受を行う際に、患者に個人情報保護法若しくは次世代医療基盤法上の条文又はプライバシーポリシーが読まれることは低く、またサービス業者側も個人情報の授受のステップに進んだことで利用者がその内容に同意したと判断するのみで、あまり機能していなかったことに対応するため、P3P(Platform for Privacy Preference)という技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120990号公報
【特許文献2】特開2003-132160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法によれば、1つの病院内のネットワークにおいて電子医療記録を共有する構成が前提とされていた。そのため、患者が複数の医療機関を利用し、先の医療機関と異なる医療機関に行った場合、先の医療機関が有する患者の検査結果や診断結果などの電子医療記録を患者が閲覧することができず、重複検査や重複診断による医療費や時間の負担が大きいという問題があった。
【0006】
また、従来の方法によれば、ネットワークにおいて患者が入力した個人健康記録を医療者に共有しない構成が前提とされていた。そのため、患者はあらゆる個人健康記録を医療者と共有することができず、医療者が診察又は治療する場面で、医療者と患者との齟齬が大きいという問題があった。
【0007】
さらに、従来の方法によれば、ネットワークにおいて医療者が入力した電子医療記録を患者に共有しない構成が前提とされていた。そのため、医療者はあらゆる電子医療記録を患者と共有するができず、医療者が病名又は病期を告知する場面で、医療者の負担が大きいという問題があった。
【0008】
一方、ユーザ自身のデータを、事業者の手に委ねることなく、ユーザ自らが総合的に蓄積・管理するPDS(Personal Data Store)という技術がある。PDSにおいては、ユーザに関するあらゆる情報が一元的・総合的に管理される。このようにPDSにおいて管理されたユーザの総合的なデータを用いることにより、リコメンドの精度が上がることが期待される。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来の方法における問題を解決するものである。本発明の目的は、PDSに基づく分散型クラウドシステムを用いて、患者が入力した個人健康記録を、患者が同意した場合に、医療者と共有して患者を診察又は治療する際に役立てることができるオプトイン選択システムと、医療者が入力した検査結果や診断結果などの電子医療記録を、医療者が同意した範囲において、患者が閲覧して健康状態を管理する際に役立てることができるブラインド設定システムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本請求項1に係る発明は、医師が入力した患者の電子医療記録を蓄積・管理する医療者アプリ及び患者が入力した自身の個人健康記録を蓄積・管理する患者アプリを連携させる分散型クラウドシステムである。前記分散型クラウドが、前記医療者アプリにおいて入力された患者の電子医療記録を医療機関ごとに保存し、前記患者アプリにおいて個人健康記録を表示する構成であることにより、前述した課題を解決するものである。
【0011】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された分散型クラウドシステムの構成に加えて、患者アプリにおける患者の情報開示についての患者によるオプトインの有無を判定するオプトイン選択システムである。同意する操作ありの場合、同意する操作があった患者の個人健康記録についての閲覧制限を所定期間解除し、前記医療者アプリのブラウザが、前記同意する操作のあった患者についての個人健康記録を表示する構成であることにより、前述した課題を解決するものである。
【0012】
本請求項3に係る発明は、請求項1に記載された分散型クラウドシステムの構成に加えて、医療者アプリにおける電子医療記録の情報開示についての医療者によるブラインドの範囲を判定するブラインド設定システムである。選択する操作ありの場合、選択する操作があった医療者の電子医療記録についての閲覧制限を所定期間設定し、前記患者アプリのブラウザが、前記同意する操作のあった医療者についての電子医療記録を表示しない構成であることにより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分散型クラウドシステム並びにオプトイン選択システム及びブラインド設定システムは、医療者が入力した患者の電子医療記録を蓄積・管理する医療者アプリ及び患者が入力した自身の個人健康記録を蓄積・管理する患者アプリを備えていることにより、医療ITガバナンス体制を簡単に構築することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0014】
本請求項1に係る発明の分散型クラウドシステムによれば、分散型クラウドを構築することで、中央集権型クラウドシステムではないため、外部からの攻撃リスクを下げることができ、同じく情報共有が可能な従来のクラウドシステムと比べ、情報漏洩リスクを下げることができる。また、分散型クラウドは、すべてのシステムやアプリを連携させることで、医療情報を取り巻くすべてのステークホルダーに対して、高セキュリティを担保した状態で、データの保存・閲覧・入力・管理ができる。
【0015】
本請求項2に係る発明のオプトイン選択システムによれば、患者が同意する操作をすると閲覧制限が所定期間解除されて、患者アプリ上の操作を通して、同意する操作のあった患者についての個人健康記録が医療者アプリ上に表示される。そのため、医療者は患者の個人健康記録簡単に取得して患者を診察又は治療する際に役立てることができる。つまり、医療者による重複検査や重複診断を回避して医療費や時間の負担を削減することができる。
【0016】
本請求項3に係る発明のブラインド設定システムによれば、請求項1と請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、医療者は患者の電子医療記録の閲覧事項を選択した上で患者と共有することで、医療者と患者との信頼関係を構築することができる。ただし、電子医療記録のうち、紹介状に記載されるような基本的な看護記録及び病名又は病期は、原則として患者アプリ上で患者が常に閲覧可能な状態にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る分散型クラウドシステムの概念を示す図である。
【
図2】本発明に係る患者アプリの動作例を示すチャート図である。
【
図3】本発明に係る医療者アプリの動作例を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の分散型クラウドシステムについては、医療者が入力した患者の電子医療記録を蓄積・管理する医療者アプリ及び患者が入力した自身の個人健康記録を蓄積・管理する患者アプリを連携させる分散型クラウドが、患者についての電子医療記録を患者アプリに表示する構成であることにより、患者は医療者が入力した検査結果や診断結果などの電子医療記録を簡単に取得して患者を診察又は治療する際に役立てることができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0019】
また、本発明のオプトイン選択システムのプログラムは、患者が入力した個人健康記録を患者アプリ上に保存する個人健康記録保存ステップと、医療者に対する患者の個人健康記録の開示について、患者による同意する操作の有無を判定するオプトイン選択ステップと、同意する操作ありの場合、医療者アプリのブラウザが、同意する操作のあった患者についての医療情報を表示する個人健康記録表示ステップとを具備していることにより、医療者が患者の個人健康記録を簡単に取得して患者を診察又は治療する際に役立てることができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0020】
さらに、本発明のブラインド設定システムのプログラムは、医療者が入力した電子医療記録を医療者アプリ上に保存する電子医療記録保存ステップと、患者に対する電子医療記録の開示について、医療者による開示する範囲を判定するブラインド設定ステップと、選択する操作ありの場合、患者アプリのブラウザが、選択する操作のあった医療者についての電子医療記録を表示しない電子医療記録表示制限ステップを具備していることにより、患者が電子医療記録を簡単に取得して健康状態を管理する際に役立てることができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0021】
10…医療者アプリ
20…患者アプリ
30…医療情報システム1
31…データベース1
40…医療情報システム2
41…データベース2
50…二次利用システム
N…分散型クラウド