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特開2022-187965検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187965
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/04 20200101AFI20221213BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20221213BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01S17/04
B61B1/02
G01S17/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212145
(22)【出願日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021095646
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】有森 和真
(72)【発明者】
【氏名】藤本 準
(72)【発明者】
【氏名】青木 健
【テーマコード(参考)】
3D101
5J084
【Fターム(参考)】
3D101AB04
3D101AB13
3D101AB14
3D101AB18
3D101AB20
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB07
5J084AB20
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA50
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA32
5J084CA80
(57)【要約】
【課題】検知エリアの設定対象となる基準被測定物が変化する場合でも、正確かつ容易に検知エリアを更新することができる検知エリア設定装置を提供する。
【解決手段】基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて基準被測定物の表面上の反射点を含む3次元の点群データを取得する点群データ取得部と、点群データに基づいて基準被測定物の表面を含む複数の面を取得する面取得部と、取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリング部と、ラベリングされた複数の面に基づいて支障物を検知するための検知エリアを設定するエリア設定部とを備え、面取得部は点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および注目点の近傍点で生成される注目面に対する法線を当該注目点における法線ベクトルとして取得する処理を複数の注目点に対して実行し各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかを含む複数の面を取得する検知エリア設定装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、前記基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の座標を示す3次元の点群データを取得する点群データ取得部と、
前記点群データ取得部で取得した点群データに基づいて、前記基準被測定物の表面を含む複数の面を取得する面取得部と、
前記面取得部で取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリング部と、
前記ラベリング部によりラベリングされた前記複数の面に基づいて、支障物を検知するための前記検知エリアを設定するエリア設定部と、
を備えて構成され、
前記面取得部は、前記点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および前記注目点の近傍点で生成される注目面に対する法線を当該注目点における法線ベクトルとして取得する処理を複数の注目点に対して実行し、各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかを含む複数の面を取得する面取得処理を実行することを特徴とする検知エリア設定装置。
【請求項2】
前記面取得処理は、特定の注目点から所定の探索範囲に存在する他の注目点における法線ベクトルが、前記特定の注目点の法線ベクトルの向きに対して所定の許容範囲の傾きに収まる場合に、当該他の注目点を前記特定の注目点と同一のグループとするクラスタリング処理を含む請求項1記載の検知エリア設定装置。
【請求項3】
前記面取得処理は、各注目点を前記特定の注目点として前記クラスタリング処理を繰返し、後のクラスタリング処理でグループ化される注目点の何れかが先のクラスタリング処理で既にグループ化されている場合に、当該後のクラスタリング処理でグループ化される全ての注目点を当該先のクラスタリング処理と同一のグループに統合する統合処理を含む請求項2記載の検知エリア設定装置。
【請求項4】
前記面取得処理は、前記クラスタリング処理によって生成された複数のグループの其々に対してグループを代表する代表法線ベクトルを求め、其々の代表法線ベクトルが所定の許容範囲に収まるグループを同一のグループに統合する統合処理を含む請求項2または3記載の検知エリア設定装置。
【請求項5】
前記面取得処理は、前記同一グループにグループ化された注目点にフィルタリング処理を実行して当該同一グループから外れ値を除去する請求項2から4の何れかに記載の検知エリア設定装置。
【請求項6】
前記フィルタリング処理は、RANSAC、M推定または最小メジアン法の何れかを含むロバスト推定を実行する処理である請求項5記載の検知エリア設定装置。
【請求項7】
前記面取得処理は、前記同一グループに含まれる注目点に基づき面を取得する請求項2から6の何れかに記載の検知エリア設定装置。
【請求項8】
前記ラベリング部は、予め設定した基準ベクトルと前記面取得部が取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする請求項1から7の何れかに記載の検知エリア設定装置。
【請求項9】
前記ラベリング部は、予め設定した基準ベクトルと前記面取得部が取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面を識別し、前記点群データ取得部で取得した点群データに基づいて前記基準面の境界線を取得するとともに前記境界線を通り前記基準面と交差する交差面を生成し、前記基準面と前記基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする請求項1から7の何れかに記載の検知エリア設定装置。
【請求項10】
前記エリア設定部は、前記ラベリング部でラベリングされた前記基準面と前記交差面を基準に、前記基準面と前記測定光の照射源との間に多面体でなる検知エリアを画定する請求項1から9の何れかに記載の検知エリア設定装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載の検知エリア設定装置と、
前記検知エリア設定装置により設定された検知エリアを含む領域に測定光を走査して、前記検知エリアからの反射光の有無に基づいて支障物の有無を判定する測域センサと、
を備えている支障物検出システム。
【請求項12】
検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、前記基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の座標を示す3次元の点群データを取得する点群データ取得ステップと、
前記点群データ取得ステップで取得した点群データに基づいて、前記基準被測定物の表面を含む複数の面を取得する面取得ステップと、
前記面取得ステップで取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリングステップと、
前記ラベリングステップによりラベリングされた前記複数の面に基づいて、支障物を検知するための前記検知エリアを設定するエリア設定ステップと、
を備えて構成され、
前記面取得ステップは、前記点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および前記注目点の近傍点で生成される注目面に対する法線を当該注目点における法線ベクトルとして取得する処理を複数の注目点に対して実行し、各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかで構成される複数の面を取得することを特徴とする検知エリア設定方法。
【請求項13】
前記面取得ステップは、特定の注目点から所定の探索範囲に存在する他の注目点における法線ベクトルが、前記特定の注目点の法線ベクトルの向きに対して所定の許容範囲の傾きに収まる場合に、当該他の注目点を前記特定の注目点と同一のグループとするクラスタリング処理の実行を含む請求項12記載の検知エリア設定方法。
【請求項14】
前記面取得ステップは、各注目点を前記特定の注目点として前記クラスタリング処理を繰返し、後のクラスタリング処理でグループ化される注目点の何れかが先のクラスタリング処理で既にグループ化されている場合に、当該後のクラスタリング処理でグループ化される全ての注目点を当該先のクラスタリング処理と同一のグループに統合する統合処理の実行を含む請求項13記載の検知エリア設定方法。
【請求項15】
前記面取得ステップは、前記クラスタリング処理によって生成された複数のグループの其々に対してグループを代表する代表法線ベクトルを求め、其々の代表法線ベクトルの向きが前記所定の許容範囲に収まるグループを同一のグループに統合する統合処理の実行を含む請求項13または14記載の検知エリア設定方法。
【請求項16】
前記面取得ステップは、前記同一グループにグループ化された注目点にフィルタリング処理を実行して当該同一グループから外れ値を除去する請求項13から15の何れかに記載の検知エリア設定方法。
【請求項17】
前記フィルタリング処理は、RANSAC、M推定または最小メジアン法の何れかを含むロバスト推定を実行する処理である請求項16記載の検知エリア設定方法。
【請求項18】
前記ラベリングステップは、予め設定した基準ベクトルと前記面取得ステップで取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする請求項12から17の何れかに記載の検知エリア設定方法。
【請求項19】
前記ラベリングステップは、予め設定した基準ベクトルと前記面取得ステップで取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面を識別し、前記点群データ取得ステップで取得した点群データに基づいて前記基準面の境界線を取得するとともに前記境界線を通り前記基準面と交差する交差面を生成し、前記基準面と前記基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする請求項12から17の何れかに記載の検知エリア設定方法。
【請求項20】
前記エリア設定ステップは、前記ラベリングステップでラベリングされた前記基準面と前記交差面を基準に、前記基準面と前記測定光の照射源との間に多面体でなる検知エリアを画定する請求項12から19の何れかに記載の検知エリア設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動式ホームゲート装置の検知装置による、支障物検知の検知エリアを、プラットホームに停車する列車毎に更新し、列車の運行の安全性を向上することを目的とした可動式ホームゲート装置が開示されている。
【0003】
当該可動式ホームゲート装置は、プラットホームの線路端に沿って柵を設け、なおかつ、列車の停止位置で側扉に面する部分を開閉可能な開口部とした可動式ホームゲート装置であって、前記柵の外側とプラットホームに停車する列車との間の領域を検知エリアに含む、前記開口部毎に設けられている検知装置と、該検知装置の制御手段とを含み、該制御手段は、前記検知装置の検知エリアを、プラットホームに停車する列車毎に、若しくは列車の編成を構成する車両毎に、車両側面の位置及び形状に対応して更新する、検知エリアの更新機能を具備することを特徴とする。
【0004】
すなわち、制御手段は、検知装置の照射起点から列車の車両側面の各部位までの距離を測定し、測定した車両側面の各部位までの距離から、列車の車両側面の形状及び位置を特定する。続いて、制御手段は、現在プラットホームに停車している列車に対する、支障物を検知するための検知エリアを、特定した車両側面の形状及び位置に対応するような範囲に決定する。具体的に、制御手段は、側面形状検出範囲に含まれる範囲の、車両側面に沿った形状を有する面が、列車幅方向のプラットホーム側に、車両側面から所定の距離だけ離れた位置に形成されるように検知エリアを決定し、検知装置の支障物を検知するための検知エリアとして更新する。
【0005】
なお、検知装置として、レーザ光を走査しながら対象物に照射してその散乱光や反射光を測定することで、対象物までの距離を計測するライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-203118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された検知エリアの更新方法では、予め設定された側面形状検出範囲のうち、検出した車両側面の形状を基準に所定距離だけ離した形状を新たな側面形状検出範囲に更新するため、以下の問題が内在していた。
【0008】
検知エリアの更新のために、制御手段は、検知装置を介して検出した車両側面の形状を基準に所定距離だけ離した形状を求める必要があった。そのために制御手段は、測定した車両側面の各部位までの其々の距離を基準にして、車両側面から一律に所定距離だけ離した形状を算出する非常に煩雑で負荷の大きな演算処理を実行する必要があった。
【0009】
また、側面形状検出範囲を予め設定しておく必要があり、検知装置と検知対象の位置関係に基づいて個々に設定する作業が非常に煩雑で手間を要するものであった。
【0010】
さらに、制御手段が検知装置を介して車両側面の形状を検出する際に、検知装置から照射されたレーザ光が車両の扉に備えた窓ガラスを透過し、他の物体からの反射光が窓ガラスを介して検出されることがあり、制御手段が車両側面の形状を正確に検出できないという問題も内在していた。
【0011】
同様の問題は、可動式ホームゲート装置の検知装置以外に、検知エリアを設定するための基準となる領域が変化する様々な状況で発生する。例えば、立体駐車場のリフターに駐車した車両に対して、検知装置で周辺の支障物を検知して、支障物が存在しない場合に車両を収容設備に移動させるような場合に設定する検知エリアも同様で、車種や駐車位置により検知エリアを更新する必要があり、同様の問題が内在している。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術に鑑み、検知エリアの設定対象となる基準被測定物が変化する場合でも、正確かつ容易に検知エリアを更新することができる検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による検知エリア設定装置の第一の特徴構成は、検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、前記基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の座標を示す3次元の点群データを取得する点群データ取得部と、前記点群データ取得部で取得した点群データに基づいて、前記基準被測定物の表面を含む複数の面を取得する面取得部と、前記面取得部で取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリング部と、前記ラベリング部によりラベリングされた前記複数の面に基づいて、支障物を検知するための前記検知エリアを設定するエリア設定部と、を備えて構成され、前記面取得部は、前記点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および前記注目点の近傍点で生成される注目面に対する法線を当該注目点における法線ベクトルとして取得する処理を複数の注目点に対して実行し、各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかを含む複数の面を取得する面取得処理を実行する点にある。
【0014】
点群データ取得部によって取得された基準被測定物を含む領域に対する測距点の座標を示す3次元の点群データに基づいて、基準被測定物の表面を含む複数の面が面取得部によって取得される。ラベリング部によってラベリングされた複数の面に基づいてエリア設定部によって支障物を検知するための検知エリアが設定される。
【0015】
つまり、検知エリアを、個々の測距点の距離データではなく、ラベリングされた複数の面に基づいて画定することができるため、検知エリアを設定するための基準となる領域に含まれる基準被測定物の形状や位置が変化する場合でも、正確かつ容易に検知エリアを更新することができる。
【0016】
そして、面取得部では、面取得処理を実行する。面取得処理では、点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および注目点の近傍点の複数点で注目面が生成され、注目面に対する法線が当該注目点における法線ベクトルとして取得される。面取得処理では、複数の注目点に対して同様の処理が繰り返される。これにより、各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかを含む複数の面が容易に取得できるようになる。
【0017】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記面取得処理は、特定の注目点から所定の探索範囲に存在する他の注目点における法線ベクトルが、前記特定の注目点の法線ベクトルの向きに対して所定の許容範囲の傾きに収まる場合に、当該他の注目点を前記特定の注目点と同一のグループとするクラスタリング処理を含む点にある。
【0018】
クラスタリング処理では、特定の注目点を基準に所定の探索範囲に存在する他の注目点が抽出され、特定の注目点の法線ベクトルに対する他の注目点の法線ベクトルの傾きが所定の許容範囲に収まると、特定の注目点が含まれる面と同一の面を構成する候補点として、当該他の注目点が特定の注目点と同一のグループにグループ化される。探索範囲は基準被測定物に応じて適宜設定される値である。基準被測定物が列車の側面である場合を例示すると、探索範囲は、列車の側面から大きく離れた領域の注目点を排除しつつ、列車の窓領域を挟んだ両側の側面に対応する複数の注目点が、同じグループに属することになるような値に設定される。
【0019】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記面取得処理は、各注目点を前記特定の注目点として前記クラスタリング処理を繰返し、後のクラスタリング処理でグループ化される注目点の何れかが先のクラスタリング処理で既にグループ化されている場合に、当該後のクラスタリング処理でグループ化される全ての注目点を当該先のクラスタリング処理と同一のグループに統合する統合処理を含む点にある。
【0020】
各注目点を特定の注目点としてクラスタリング処理が繰り返されると、特定の注目点毎に同一の面に存在する他の注目点を含むクラスタが形成される。各クラスタを構成する注目点の何れかが先に形成された何れかのクラスタに属する場合に、先に形成されたクラスタと同一のクラスタに統合されることにより、同一の面に含まれる候補となる注目点が増加する。換言すると所定の探索範囲に生成された面が所定の探索範囲を越えて拡張されることになる。
【0021】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記面取得処理は、前記クラスタリング処理によって生成された複数のグループの其々に対してグループを代表する代表法線ベクトルを求め、其々の代表法線ベクトルが所定の許容範囲に収まるグループを同一のグループに統合する統合処理を含む点にある。
【0022】
第二または第三の特徴構成によりグループ化された注目点は、少なくとも特定の注目点を基準に所定の探索範囲に存在する複数の注目点の集合である。探索範囲を大きく設定すると、本来異なる面に属する注目点が同一のグループに属する場合があるため、探索範囲はある程度の大きさに制限する必要がある。しかし、探索範囲を小さく設定すると、本来同一の面に属する注目点が異なるグループに属する場合がある。そこで、本構成では、各グループの代表法線ベクトルが所定の許容範囲に収まる場合に、同一のグループに統合するよう構成する。所定の許容範囲として、例えば代表法線ベクトルの向き、所定の基準面に対する代表法線ベクトルの始点同士の離隔距離などで規定することができる。
【0023】
同第五の特徴構成は、上述した第二から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記面取得処理は、前記同一グループにグループ化された注目点にフィルタリング処理を実行して当該同一グループから外れ値を除去する点にある。
【0024】
クラスタリング処理で同一グループにグループ化された点群データは、各測距点間の距離及び法線方向の傾きが所定の許容範囲に含まれる注目点の集合であり、各注目点が特定注目点の法線方向あるいは特定注目点の接平面からどの程度離れているかが評価されていない。そこで、フィルタリング処理を実行することにより、同一の面に存在するとは評価できない外れ値が適切に除去されるようになる。
【0025】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記フィルタリング処理は、RANSAC、M推定または最小メジアン法の何れかを含むロバスト推定を実行する処理である点にある。
【0026】
このようなフィルタリング処理としてロバスト推定を好適に用いることができる。ロバスト推定とは、与えられた観測値に外れ値が含まれている可能性を評価し、その影響を抑えることを目的とする統計処理方法であり、具体的にRANSAC、M推定または最小メジアン法の何れかを好適に用いることができる。
【0027】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記面取得処理は、前記同一グループに含まれる注目点に基づき面を取得する点にある。
【0028】
同第八の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記ラベリング部は、予め設定した基準ベクトルと前記面取得部が取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする点にある。
【0029】
ラベリング部では、予め設定した基準ベクトルに対して、法線ベクトルが所定の関係を有する面、具体的に基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別して、検知エリアを画定する2面として其々ラベリングする。
【0030】
同第九の特徴構成は、上述した第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記ラベリング部は、予め設定した基準ベクトルと前記面取得部が取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面を識別し、前記点群データ取得部で取得した点群データに基づいて前記基準面の境界線を取得するとともに前記境界線を通り前記基準面と交差する交差面を生成し、前記基準面と前記基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする点にある。
【0031】
ラベリング部では、予め設定した基準ベクトルに対して、法線ベクトルが所定の関係を有する面、具体的に基準被測定物の表面に対応する基準面を識別する。さらに、当該基準面を含む点群データに基づいて当該基準面の境界線を取得し、境界線を通り基準面と交差する交差面を生成し、基準面と基準面に交差する交差面とを検知エリアを画定する2面として其々識別可能にラベリングする。
【0032】
同第十の特徴構成は、上述した第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記エリア設定部は、前記ラベリング部でラベリングされた前記基準面と前記交差面を基準に、前記基準面と前記測定光の照射源との間に多面体でなる検知エリアを画定する点にある。
【0033】
ラベリングされた基準面と交差面を基準にして、測定光の照射源側に検知エリアとなる多面体が画定される。
【0034】
本発明による支障物検出システムの第一の特徴構成は、上述した第一から第十の何れかの特徴構成を備えた検知エリア設定装置と、前記検知エリア設定装置により設定された検知エリアを含む領域に測定光を走査して、前記検知エリアからの反射光の有無に基づいて支障物の有無を判定する測域センサと、を備えている点にある。
【0035】
検知エリア設定装置により画定された検知エリアに支障物が存在するか否かが測域センサにより判定される。
【0036】
本発明による検知エリア設定方法の第一の特徴構成は、検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、前記基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の座標を示す3次元の点群データを取得する点群データ取得ステップと、前記点群データ取得ステップで取得した点群データに基づいて、前記基準被測定物の表面を含む複数の面を取得する面取得ステップと、前記面取得ステップで取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリングステップと、前記ラベリングステップによりラベリングされた前記複数の面に基づいて、支障物を検知するための前記検知エリアを設定するエリア設定ステップと、を備えて構成され、前記面取得ステップは、前記点群データに含まれる複数の測距点のうち注目点および前記注目点の近傍点で生成される注目面に対する法線を当該注目点における法線ベクトルとして取得する処理を複数の注目点に対して実行し、各法線ベクトルに基づいて各注目点の何れかで構成される複数の面を取得する点にある。
【0037】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記面取得ステップは、特定の注目点から所定の探索範囲に存在する他の注目点における法線ベクトルが、前記特定の注目点の法線ベクトルの向きに対して所定の許容範囲の傾きに収まる場合に、当該他の注目点を前記特定の注目点と同一のグループとするクラスタリング処理の実行を含む点にある。
【0038】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記面取得ステップは、各注目点を前記特定の注目点として前記クラスタリング処理を繰返し、後のクラスタリング処理でグループ化される注目点の何れかが先のクラスタリング処理で既にグループ化されている場合に、当該後のクラスタリング処理でグループ化される全ての注目点を当該先のクラスタリング処理と同一のグループに統合する統合処理の実行を含む点にある。
【0039】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記面取得ステップは、前記クラスタリング処理によって生成された複数のグループの其々に対してグループを代表する代表法線ベクトルを求め、其々の代表法線ベクトルの向きが前記所定の許容範囲に収まるグループを同一のグループに統合する統合処理の実行を含む点にある。
【0040】
同第五の特徴構成は、上述した第二から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記面取得ステップは、前記クラスタリング処理で同一グループにグループ化された注目点にフィルタリング処理を実行して当該同一グループから外れ値を除去する点にある。
【0041】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記フィルタリング処理は、RANSAC、M推定または最小メジアン法の何れかを含むロバスト推定を実行する処理である点にある。
【0042】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記ラベリングステップは、予め設定した基準ベクトルと前記面取得ステップで取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする点にある。
【0043】
同第八の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記ラベリングステップは、予め設定した基準ベクトルと前記面取得ステップで取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、前記複数の面から前記基準被測定物の表面に対応する基準面を識別し、前記点群データ取得ステップで取得した点群データに基づいて前記基準面の境界線を取得するとともに前記境界線を通り前記基準面と交差する交差面を生成し、前記基準面と前記基準面に交差する交差面とを識別してラベリングする点にある
【0044】
同第九の特徴構成は、上述した第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記エリア設定ステップは、前記ラベリングステップでラベリングされた前記基準面と前記交差面を基準に、前記基準面と前記測定光の照射源との間に多面体でなる検知エリアを画定する点にある。
【発明の効果】
【0045】
以上説明した通り、本発明によれば、検知エリアの設定対象となる基準被測定物が変化する場合でも、正確かつ容易に検知エリアを更新することができる検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】(a)は列車とプラットホームの安全柵との間に区画された支障物の検知エリアの側面視の説明図であり、(b)は同検知エリアの平面視の説明図であり、(c)は同検知エリアを俯瞰した説明図である。
図2】(a)は支障物検出システムの機能ブロックの説明図であり、(b)はライダーの説明図である。
図3】(a)は検知エリア設定装置(設定部)の説明図であり、(b)は検知エリア設定処理の手順を示すフローチャートである。
図4】面取得処理の手順を示すフローチャートである。
図5】ラベリング処理の手順を示すフローチャートである。
図6】検知エリア設定処理の手順を示すフローチャートである。
図7】支障物検知処理の手順を示すフローチャートである。
図8】(a),(b),(c)は面取得処理の説明図である。
図9】検知エリア設定処理の第1ステップの説明図である。
図10】検知エリア設定処理の第2ステップの説明図である。
図11】検知エリア設定処理の第3ステップの説明図である。
図12】面取得処理、ラベリング処理および汎用検知エリア設定処理の手順を示すフローチャートである。
図13】(a),(b)は汎用検知エリア設定のための面取得処理の説明図である。
図14】プラットホーム端部(エッジ)認識処理の説明図である。
図15】(a),(b),(c)は汎用検知エリア設定処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明による検知エリア設定装置、支障物検出システムおよび検知エリア設定方法の一例を説明する。
【0048】
[列車のプラットホームに設定される検知エリア]
図1(a),(b),(c)に示すように、鉄道の駅舎に設置されたプラットホームPの線路側の縁部に、利用者が列車に接触する事故などを回避するための安全柵SFが設置されている。安全柵SFは、車両1の扉2に対応する位置にゲートが設けられた柵本体SBと、ゲートを開閉する扉DRで構成されている。各図に示されたX,Y,Z座標系は、何れかのライダー10の設置位置を原点とした3次元座標系を示している。図1(a)は、Y軸方向に沿って眺めた車両1とプラットホームPと安全柵SFとの位置関係を示している。図1(b)は、Z軸方向に沿う上方から眺めた車両1とプラットホームPと安全柵SFとの位置関係を示している。
【0049】
柵本体SBのうち扉DRの上方に車両1の扉2の周囲空間を俯瞰するように2次元走査可能なライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)10が設置されている。
【0050】
図2(b)に示すように、ライダー10は、TOF方式が採用され、光学窓Wを備えた円筒状のケーシング11と、ケーシング11に収容され、半導体レーザからなるレーザ光源及び受光素子を備えた投受光部13と、走査光学系14と、それらを制御する信号処理回路12と、を備えている。
【0051】
走査光学系14は、偏向ミラーMを備える。また、走査光学系14は、図2(b)の紙面に垂直な第1軸心P1を中心として偏向ミラーMを揺動させる第1偏向機構14Aを備える。第1偏向機構14Aは、電磁的な揺動機構を備える。さらに、走査光学系14は、図2(b)の紙面に平行な第2軸心P2を中心として第2偏向機構14Bを回転駆動させるモータを備える。
【0052】
走査光学系14は、レーザ光源から出射されたパルス状の測定光を第2偏向機構14Bを介して所定範囲で水平方向hdに繰返し走査しながら、水平方向の走査線hdを、第1偏向機構14Aを介して垂直方向vdに繰返し走査する。信号処理回路は、測定光の出射タイミングから反射光の検出タイミングまでの時間差に基づいて測定光の反射点までの距離および方向を算出する。すなわち、ライダー10は、車両1の扉2の周囲空間に存在する物体からの反射光に基づいて支障物の有無を検知する。
【0053】
本発明では、プラットホームPや車両1の表面からの反射光に基づいて、プラットホームPや車両1を支障物であると誤判定しないように、測定光が走査される空間に支障物の検知エリアDAが設定される。そして、後で図7のフローチャートを用いて詳述する支障物検出システムにおける支障物検出処理では、当該検知エリアDAの内部に存在する物体からの反射光のみに基づいて、当該物体を支障物であると検出する。これにより、車両1の乗降客3や乗降客3の所持する荷物などが支障物として検出されることになる。支障物が検知されない場合に、車両1の扉2の閉止やゲートの扉DRの閉止が安全に行われる。
【0054】
検知エリアDAは、プラットホームPの床面から所定高さΔH、車両1の進行方向に沿う側面であって、プラットホームPに近接する側面から所定幅ΔDだけ離隔したオフセット面を基準に、プラットホームPの内側に設定された所定の奥行Dで、ライダー10の位置を基準に車両1の上記した側面に沿って左右方向に設定された所定の横幅Wとなる略直方体形状に区画された領域である。検知エリアDAは、プラットホームPに対向する車両の側面の位置が車両1の型式などにより異なるため、車両1がプラットホームPに入線する度に設定される個別検知エリアとなる。
【0055】
[支障物検出システムの構成]
図2(a)に示すように、支障物検出システム100は、支障物の有無を判定する検出エリアを設定する検知エリア設定部20と、検知エリア設定部20により設定された検知エリアに測定光を走査して、検知エリアからの反射光の有無に基づいて支障物の有無を判定する測域センサと、検知エリア設定部20と測域センサの動作タイミングを制御するシステム制御部50と、を備えている。
【0056】
レーザ光源、受光素子、走査光学系、信号処理回路12を備えたライダー10と、検知エリア情報記憶部30と、支障物検出部40によって測域センサが構成され、検知エリア設定部20によって本発明の検知エリア設定装置が構成される。検知エリア情報記憶部30は、検知エリアを記憶・管理する。支障物検出部40は、検出エリア内の支障物の有無を判定し、支障物の有無情報を出力する。
【0057】
信号処理回路12は、レーザ光源、受光素子、走査光学系を制御するPLC(programmable logic controller)や、受光素子で検出された反射光に対する測距演算などを実行する専用のDSP(digital signal processor)などを備えて構成されている。本実施形態では、信号処理回路12として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が用いられる。
【0058】
検知エリア情報記憶部30は半導体メモリで構成され、検知エリア設定部20および支障物検出部40は其々マイクロコンピュータおよびマイクロコンピュータで実行されるアプリケーションプログラムが格納された半導体メモリと、入出力回路、および通信回路などを備えて構成されている。
【0059】
システム制御部50は、安全柵SFの扉DRの開閉制御処理、車両1の停止検出処理、車両の扉2の開閉状態の検出処理、車両1の発車の可否判断処理を行なう運行管理用のアプリケーションプログラムがインストールされた汎用のコンピュータで構成されている。
【0060】
図7に示すように、システム制御部50は、プラットホームPに車両1が入線していないときには、車両1の型式などに依存しない汎用検知エリアを設定して(SD1)、支障物検出部40を介して汎用検知エリア内に支障物が存在するか否かを検知し、支障物が存在すると判定すると(SD2,有)、支障物検知信号(支障物有)を警報システム等の外部システムに出力し(SD3)、支障物を検出しないときには(SD2,無)、支障物検知信号(支障物有)を出力することなく、ステップSD4の車両1の入線検知に進む。
【0061】
汎用検知エリアとは、プラットホームPに対向する車両1の側面がライダー10から最も近くなる型式の車両を基準に設定した最小の検知エリアである。この汎用検知エリアは、システム設置時等に初期設定として定義される。また、汎用検知エリアは、後に詳述する個別検知エリアのうちの最小となる検知エリアまたはそれより小さな検知エリアが望ましい。
【0062】
システム制御部50は、プラットホームPに車両1が入線して停止したことを入線検出センサからの入力に基づいて検出するまでは、支障物検出処理(SD2)を繰り返し(SD4,N)、車両1がプラットホームPに入線して停止したことを検出すると(SD4,Y)、車両1の扉2が開放される前の閉止状態で検知エリア設定部20を起動して、当該車両1に対する検知エリアを設定するよう検知エリア設定部20に要求する(SD5)。入線検出センサとしては、撮像装置やライダーなどを用いることができ、支障物検出システム100にその機能を組み込むこともできる。なお、検知エリアは、安全柵SFに設けた扉DRごとに設定される。これは、扉DRと車両1の扉2との間を通過する乗降客を検出するためである。
【0063】
システム制御部50は、検知エリア設定部20から検知エリアの設定が完了した旨の信号を受信すると(SD6,Y)、ゲートの扉DRを開放するとともに、車両1の扉2を開放して、当該車両1に対応する検知エリアに基づく支障物検出部40の検知出力を介して検知エリア内の乗降客の動きを監視する(SD7)。
【0064】
システム制御部50は、支障物検出部40を介して、支障物の検知情報を取得する。システム制御部50は、支障物有の判定をすると(SD8,有)、支障物検知信号(障害物有)を外部システム等に出力する(SD11)。一方、システム制御部50は、支障物無と判定すると(SD8,無)、支障物検知信号(支障物有)を出力することなく、ステップSD7に戻って乗降客の監視を繰り返す処理を車両1の停車許容時間だけ継続する。
【0065】
システム制御部50は、車両1の発車時刻になると、発車可否の判断を行なう(SD9)。発車可否の判断は、発車可否の判断は、車両1の扉2が閉止されたこと、支障物検出処理で検知エリア内に乗降客や荷物が検出されていないことなど、車両1の発車による重大事故の発生の虞がないことが判断基準になる。
【0066】
扉2に乗客の身体やカバンなどが挟まれたり、検知エリア内に乗降客などが検出されていたりするような場合には、システム制御部50は、車両1の扉2を再度開放する。或いは、システム制御部50は、ゲートの扉DRの開放を維持した状態で発車を禁止するよう車両を制御し、ステップSD7以降の処理を繰り返す。
【0067】
検知エリア内に乗降客や荷物などが検出されない場合には、システム制御部50は、ゲートの扉DRを閉止して、車両1の発車を許可する(SD9,OK)。そして、システム制御部50は、検知エリアを汎用検知エリアに切り替える(SD10)。以降、システム制御部50は、ステップSD2以降の処理を繰り返す。
【0068】
なお、本実施形態では、システム制御部50が車両1の走行、扉2の開閉を自動制御する例を説明した。しかしながら、車両1の走行および扉2の開閉が車両1の乗務員により制御される態様では、システム制御部50は、車両1の停止や扉2の開閉状態を専用のセンサで検出すればよく、車両1に対して発車の禁止信号または許可信号を出力するように構成すればよい。
【0069】
[検知エリア設定装置の構成]
図3(a),(b)に示すように、検知エリア設定装置、すなわち検知エリア設定部20は、点群データ取得部21、面取得部22、ラベリング部23、エリア設定部24の各機能ブロックを備えている。これらの機能ブロックは、上述したアプリケーションプログラムがマイクロコンピュータで実行されることにより具現化される。
【0070】
検知エリア設定部20は、システム制御部50からの検知エリア設定要求に基づいて、各ゲートの扉DR近傍に設置したライダー10ごとに検知エリアを設定する。検知エリア設定部20は、設定した各検知エリアを予めライダー10に設定されたIDに関連付けて検知エリア情報記憶部30に格納する。その後、検知エリア設定部20は、システム制御部50に検知エリアの設定が終了したことを示す信号を出力する。これにより、支障物検出部40は、ライダー10毎に個別の検知エリアを特定することができる。以下では、一つのライダー10に対する検知エリアの設定処理について説明するが、同様の設定処理がライダー10毎に行われることは言うまでもない。
【0071】
点群データ取得部21は、ライダー10を起動して、検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の距離と方向を含む距離画像データを取得する。そして、点群データ取得部21は、距離画像データに基づいて測距点の3次元座標である3次元の点群データを演算処理により取得する点群データ取得ステップを実行する(図3(b),S1)。
【0072】
本実施形態では、検知エリアは、駅舎のプラットホームPに設けた安全柵SFと、プラットホームPに停車した車両1との間に画定されるエリアである。また、「検知エリアの設定対象となる基準被測定物」とは、車両1およびプラットホームPをいい、「設定対象となる基準被測定物を含む領域」とは、車両1およびプラットホームPを含み、支障物となる乗降客3や荷物などが存在しない領域をいう。なお、点群データ取得ステップでは、当該領域に支障物が存在していてもわずかであれば許容される。
【0073】
図8(a)には、このときに得られた点群データの例がドット表示されている。理解を容易にするために、図8(a)には、車両1の側面、プラットホームPの床面に相当する領域に二点鎖線の補助線が付されている。
【0074】
ライダー10による測定光の走査範囲は、少なくとも設定対象となる検知エリアよりも広い範囲に設定されている。
【0075】
面取得部22は、点群データ取得部21で取得した点群データに基づいて、基準被測定物の表面を含む複数の面、具体的に車両1の側面、プラットホームPの床面を取得する面取得ステップを実行する(図3(b),S2)。
【0076】
ラベリング部23は、面取得部22で取得した複数の面を所定の条件下でラベリングするラベリングステップを実行する(図3(b),S3)。
【0077】
エリア設定部24は、ラベリング部23でラベリングされた複数の面に基づいて、支障物を検知するための検知エリアを設定するエリア設定ステップを実行する(図3(b),S4)。
【0078】
以下に各ステップについて詳述する。
ライダー10は、検知エリアの設定対象となる基準被測定物を含む領域に対して、水平方向および垂直方向の単位走査が終了する度に、信号処理回路12を介して反射点までの方向および距離データを点群データ取得部21に出力する。点群データ取得部21は、これらの情報を信号処理回路12から受信すると、各反射点のX,Y,Zの3次元座標空間上の座標に変換した点群データを、タイムスタンプとともに内部の記憶部に記憶する。なお、3次元座標空間は、各ライダー10の設置位置を原点とする相対座標系であってもよいし、各ライダー10の設置位置に左右されない絶対座標系であってもよい。また、点群データは、X,Y,Zの3次元座標に限るものではなく、極座標を採用することも可能である。
【0079】
図4には、面取得部22で実行される処理が示されている。面取得部22は、点群データに含まれる複数の測距点から注目点および注目点の近傍点を抽出し、これらの抽出点に主成分分析(PCA;principal component analysis)を適用して注目面を生成し(SA1)、注目面に対する法線ベクトルを注目点における法線ベクトルとして取得する処理(SA2)を全ての点群データに対して実行する(SA3)。
【0080】
注目点とは、全ての点群データから法線ベクトルを求めるために予め所定のルールに基づいて選択した点群データをいい、例えば、間引き率をルールに設定することができる。間引き率が50%に設定されている場合には、水平方向および垂直方向の単位走査で得られた全ての点群データから水平方向および垂直方向に一つ置きに抽出した点群データの集合の其々が注目点となる。なお、間引き率は、演算負荷を考慮したうえで、全ての点群データの数に基づいて適宜設定される値である。或いは、全ての点群データの中から、予め距離が所定範囲に分布する点群データの其々を注目点としてもよい。このような距離と間引き率の双方を組み合わせてルールを規定してもよい。
【0081】
面取得部22は、注目点を中心とした近傍点として、半径が数mm程度の範囲に存在する測距点をkd-ツリー法を用いて探索する。面取得部22は、探索した点群データの重心を算出した後に、点群データの主成分分析を行う。面取得部22は、主成分分析で得た第3主成分ベクトルを法線ベクトル(大きさが1の基底ベクトル)とし、かつ先に求めた点群データの重心を通る平面を算出する。図8(b)には、図8(a)に対応する点群データに対して得られた法線ベクトルが示されている。なお、図8(b),(c)に示す点群データは、図8(a)とは異なるアングルから視たデータである。
【0082】
注目点および近傍点から面を求める方法としては、上記の主成分分析法以外に、3次元ハフ変換法、最小二乗法、最小メジアン法などが採用できる。例えば、最小二乗法では、各点群データの重心を通り、各点群データの二乗距離が最小となる平面が算出される。
【0083】
次に、面取得部22は、クラスタリング処理を実行する。このクラスタリング処理には、以下のステップSA4~SA10が含まれる。
クラスタリング処理では、まず、複数の注目点のうちから特定の注目点を抽出するとともに、抽出した特定の注目点から所定の探索範囲に存在する他の注目点を抽出する(SA4)。そして、特定の注目点と他の注目点の法線ベクトルとを対比し(SA5)、他の注目点における法線ベクトルが、特定の注目点の法線ベクトルの向きに対して所定の許容範囲の傾きに収まる場合に(SA6)、当該他の注目点を特定の注目点と同一のグループにするクラスタリング処理を実行する(SA7)。特定の注目点が含まれる面と同一の面を構成する候補点として、当該他の注目点が特定の注目点と同一のループにグループ化されることになる。本実施形態では、所定の許容範囲の傾きが1°に設定されている。所定の許容範囲の傾きは、対象物などに応じて適宜設定可能な値である。なお、グループ化に際しては、注目点と、注目点の法線ベクトルを算出するために用いた注目点の近傍点である測距点を含めてグループ化してもよいし、注目点のみであってもよい。後者の場合には、注目点の属性値として法線ベクトルを含めればよい。
【0084】
面取得部22は、各注目点を特定の注目点としてクラスタリング処理を繰返す(SA4~SA10)。後のクラスタリング処理でグループ化される注目点の何れかが先のクラスタリング処理で既にグループ化されている場合に(SA8,Y)、面取得部22は、当該後のクラスタリング処理でグループ化される全ての注目点を当該先のクラスタリング処理と同一のグループに統合する統合処理を実行する(SA9)。
【0085】
本実施形態では、特定の注目点を中心とする半径2m程度の空間を所定の探索範囲に設定している。例えば、車両1の扉2の窓枠の上下などは測距点が少なく法線の推定精度が低いため、窓付近を挟んで車両1の左右の側面が別の面としてクラスタリングされる虞がある。そのような場合でも、半径2m程度の空間を探索範囲に設定することで、窓付近を挟んで車両1の左右の側面が同一の面にクラスタリングされる。所定の探索範囲の値も対象物などに応じて適宜設定可能な値である。
【0086】
さらに、面取得部22は、ステップSA9で統合処理を実行した後に、第二の統合処理を実行する(SA10´)。面取得処理は、ステップSA4~SA10のクラスタリング処理によって生成された複数のグループの其々に対してグループを代表する代表法線ベクトルを求め、其々の代表法線ベクトルが所定の許容範囲に収まるグループを同一のグループに統合する。
【0087】
ステップSA4~SA10のクラスタリング処理によりグループ化された注目点は、少なくとも特定の注目点を基準に所定の探索範囲に存在する複数の注目点の集合となる。探索範囲を大きな値に設定すると、本来異なるグループに属する注目点が同一のグループに属することになるため、探索範囲はある程度の大きさ、例えば上述したような半径2m程度の空間に制限する必要がある。探索範囲をこれ以上に小さな値に設定すると、本来は同一のグループに属するべき注目点が異なるグループに属する場合が生じる。このような場合でも、各グループの代表法線ベクトルが所定の許容範囲に収まることを条件に同一のグループに統合することができるようになる。
【0088】
同一グループに属する注目点の法線ベクトルの向きの中央値または平均値となるベクトルを代表法線ベクトルとすることができる。同一グループに属する複数の注目点から近似平面を生成し、その平面に垂直な基底ベクトルを代表法線ベクトルとしてもよい。
【0089】
所定の許容範囲として、例えば代表法線ベクトルの向きが所定の許容範囲に入ること、及び、同一グループに属する複数の注目点から生成される近似平面と、他の同一グループに属する複数の注目点から生成される近似平面との距離が所定範囲に入ることの双方の条件で規定することができる。
【0090】
ステップSA10´の第二の統合処理は選択的処理であり、探索範囲が適切な値に設定されていれば、第二の統合処理は必須ではない。また、上述のステップSA8,SA9の統合処理も選択的であり、ステップSA8,SA9の統合処理を実行しない場合には、第二の統合処理を実行することで同一面に属するグループが効果的に統合される。
【0091】
ステップSA8,SA9で探索範囲を大きくし、或いはステップSA10´で面間の距離の許容範囲を大きくすると、法線ベクトルが所定の許容範囲の傾きに収まっていることとの条件を満たせば、同一のグループに含まれる注目点で構成されるべき面とは距離が離れた注目点が、同一のグループに統合されるという不都合が生じる。このような事象が起こると、例えば、窓ガラスを透過して車両の内壁で反射した反射光に基づく測距点が同一のグループに含まれる虞がある。
【0092】
そこで、面取得部22は、クラスタリング処理で同一グループにグループ化された点群データにフィルタリング処理を実行することにより、当該同一グループから外れ値を除去する(SA11)。この処理により、窓ガラスを透過して車両の内壁で反射した反射光に基づく測距点などが適切に除去される。ここで、外れ値とは、得られた観測値の中で、真の値の推定値からの残差が異常に大きい値をいう。
【0093】
フィルタリング処理として、RANSACが好適に用いられる。本実施形態では、同一のグループに含まれる注目点からランダムに3点を選び、その3点で作成した平面とその他の各点との距離を求める。求めた距離が所定の閾値(0.1m)以下となる点が一定数(全体の1/4)以上あれば、閾値を逸脱した外れ値を除いた注目点を候補として残す。面取得部22は、この処理を所定回数実行し、閾値以下となった注目点が最も多いものを採用して、当該クラスタの平面の方程式を求める。なお、上述した平面を作成するために選ぶ点群の数、閾値などは、特に限定するものではなく、適宜設定可能な値である。
【0094】
外れ値を除去するフィルタリング処理としては、RANSAC以外に、M推定または最小メジアン法を採用することができ、これらを含むロバスト推定を実行する処理を採用することが好ましい。図8(c)には、プラットホームPの床面を示すクラスタから除去された外れ値が、破線で示す円内に示されている。
【0095】
次に、各グループにフィルタリング処理を施した後に、測距点の数の多い順に所定数の面を抽出する(SA12)。本実施形態では、数の多い順に2面を抽出することで車両1の側面、プラットホームPの床面が取得される。
【0096】
図5には、ラベリング部23で実行される処理が示されている。ラベリング部23は、予め設定した基準ベクトルと面取得部22が取得した複数の面の法線ベクトルとに基づいて、複数の面から基準被測定物の表面に対応する基準面と、当該基準面に交差する交差面とを識別可能にラベリングする。
【0097】
本実施形態では、基準ベクトルとして、鉛直方向の基底ベクトルが設定されている。ステップSA2で抽出された2面のうち、1つの面、すなわち基準ベクトルに対して法線ベクトルが直交した面を車両1の側面(車両1の進行方向に沿う側面であって、プラットホームPに近接する側面)に沿う基準面を、第1面として特定される(SB1)。もう1つの面、すなわち基準ベクトルに対して法線ベクトルが平行な面を、プラットホームPの床面に沿う第2面として特定される(SB2)。図9には、基準ベクトルVB、第1面の法線ベクトルVT、第2面の法線ベクトルVP、第1面C1、第2面C2が其々示されている。
【0098】
なお、ラベリング部23は、基準ベクトルに対する法線ベクトルの傾斜角が90°±Δθ1の範囲に入る場合に直交と判定し、基準ベクトルに対する法線ベクトルの傾斜角が0°±Δθ2に入る場合に平行と判定する。Δθ1,θ2の値は、特に限定されないが、本実施形態ではΔθ1=20°、Δθ2=10°に設定されている。
【0099】
図6には、エリア設定部24で実行される処理が示されている。エリア設定部24は、ラベリング部23でラベリングされた基準面(第1面)と基準面(第1面)に交差する交差面(第2面)を基準に、測定光の照射源側(ライダー10側)に多面体でなる検知エリアを画定する。図9図11を参照して説明を続ける。
【0100】
先ず、エリア設定部24は、第1面C1と第2面C2において、既に算出されている法線ベクトルVT,VPの方向を特定する(SC1)。エリア設定部24は、両ベクトルVT,VPのベクトル積(外積)VT×VPを求めることにより、第1面C1と第2面C2の交線ベクトルを算出して交線Liを求める(SC2)。
【0101】
次に、エリア設定部24は、ライダー10から最短距離となる交線Li上の中心点CPを基準に、交線Liに沿う左右方向に検知エリアの幅方向の境界となる幅Wを設定する(SC3)。
【0102】
次に、エリア設定部24は、交線から第2面に沿って検知エリアの奥行方向の境界となる奥行Dを設定し(SC4)、第2面から高さ方向の境界となる高さHを設定する(SC5)。その結果、図10に示すように、第1面C1の面上で幅W、高さHの矩形面S1が形成され、第2面C2の面上で幅W、奥行きDの矩形面S2が形成される。
【0103】
続いて、エリア設定部24は、矩形面S1,S2に対向する補助面S3,S4、矩形面S1,S2に直交する補助面S5,S6の4枚の補助面を生成する(SC6)。
【0104】
このようにして取得される基準検知エリアBAに対して、図11に示すように、エリア設定部24は、車両1の側面に対応する矩形面S1を奥行き方向にオフセット量ΔDだけシフトさせる。また、プラットホームPの床面に対応する矩形面S2を上方にオフセット量ΔHだけシフトする。エリア設定部24は、このようにして得られる直方体領域を最終の検知エリアDAとして画定する(SC7)。エリア設定部24は、当該検知エリアDAを示す各頂点の座標を検知エリア情報記憶部30に格納する(SC8)。
【0105】
このように、プラットホームPに入線した車両1の其々に対して検知エリアDAを設定することにより、車幅が異なる様々な車両1に対応して極力死角の少ない検知エリアDAを設定することができるようになる。なお、上述したオフセット値ΔD,ΔHは車両の側壁やプラットホームPの床面を支障物と誤検出することがないように設定される値であって、適宜設定される値である。オフセット値ΔD,ΔHが大きく設定された場合、死角が大きくなり、オフセット値ΔD,ΔHが小さく設定された場合、支障物と誤検出する確率が高くなる。
【0106】
上述した実施形態では、検知エリア設定部20は、車両1がプラットホームPに入線する度に基準検知エリアBAを画定し、さらにオフセット値ΔD,ΔHに基づいて最終の検知エリアDAを画定した。しかしながら、車両1が最初に入線した際にのみ基準検知エリアBAを画定し、その後の車両1の入線に際しては、基準検知エリアBAのデータを利用することにより、検知エリアが設定されてもよい。具体的には、プラットホームPの床面に対応する矩形面S2、補助面S3~S6の其々を初回に取得した基準検知エリアBAのデータに基づき、車両1の側面に対応する第1面のみを上述した面取得部22で取得して、新たな矩形面S1を生成する。
【0107】
上述した実施形態では、面取得部22が測距点(注目点)の数の多い順に2面、つまり車両1の側面とプラットホームPの床面に対応する面を抽出する例を説明したが、測定可能であれば、安全柵SFに対応する面をも抽出してもよい。この場合、エリア設定部24が補助面S3を生成する必要はなく、安全柵SFに対応する面に車両1側へのオフセットを設定する。また、検知エリアDAの形状は直方体に限るものではなく、六面体、さらには多面体で構成することも可能である。
【0108】
支障物検出部40は、車両1の扉2が開放された後に、ライダー10の信号処理回路12から出力される測距点に対するデータが、検知エリアDA内のデータであるか否かを判定し、検知エリアDA内のデータである場合に、支障物が存在すると判定する。
【0109】
図2に示した例では、検知エリア設定部20,検知エリア情報記憶部30,支障物検出部40,信号処理回路12のそれぞれが、ライダー10とは別体で構成され、通信線で接続されたような態様であった。しかしながら、ライダー10の筐体内に信号処理回路12、検知エリア設定部20,検知エリア情報記憶部30,支障物検出部40の其々を一体に組み付けてもよいし、信号処理回路12のみをライダー10の筐体内に組み付けてもよい。或いは、信号処理回路12,検知エリア情報記憶部30,支障物検出部40をライダー10の筐体内に組み付けて、検知エリア設定部20を別体で構成してもよい。
【0110】
上述した実施形態では、プラットホームPに車両1が入線していないときに、システム制御部50が、最小の検知エリアとして車両1の型式などに依存しない汎用検知エリアを設定する例を説明したが、当該汎用検知エリアは、システム設置時などに初期設定として適切な範囲を個別に定義する必要があり、そのための準備作業などの別途の作業が必要になる。
【0111】
そこで、プラットホームPに車両1が入線していないときに、システム制御部50が、検知エリア設定部20に汎用検知エリアを設定するように要求し、検知エリア設定部20により汎用検知エリアが自動生成されるように構成することで、煩雑な事前作業を不要にすることができる。以下に、検知エリア設定部20による汎用検知エリアの設定処理について、上述した検知エリア設定処理と異なる点につき詳述する。
【0112】
この例では、「検知エリアの設定対象となる基準被測定物」とは、プラットホームPをいい、「設定対象となる基準被測定物を含む領域」とは、プラットホームPを含み、支障物となる乗降客3や荷物などが存在しない領域をいい、車両1の軌道面などが含まれる。
【0113】
システム制御部50は、プラットホームPに車両1が入線していないときに、システム制御部50から汎用検知エリアを設定すべき旨の指令を受けると、検知エリア設定部20に備えた点群データ取得部21、面取得部22、ラベリング部23、エリア設定部24は、汎用検知エリアの設定処理を実行する。
【0114】
図12に示すように、点群データ取得部21は、汎用検知エリアの設定対象となる基準被測定物、つまりプラットホームPを含む領域に照射した測定光に対する反射光に基づいて、基準被測定物の表面上の反射点を含む測距点の座標を示す3次元の点群データを取得する(SE1)。
【0115】
点群データ取得部21により点群データが取得されると、面取得部22は、点群データに含まれる複数の測距点から注目点および注目点の近傍点を抽出し、これらの抽出点に主成分分析を適用して注目面を生成し(SE2)、注目面に対する法線ベクトルを注目点における法線ベクトルとして取得する処理(SE3)を全ての点群データに対して実行する(SE4)。
【0116】
次に、面取得部22は、クラスタリング処理(SE5~SE11)を実行する。当該クラスタリング処理は、先に図4に基づいて説明したクラスタリング処理(SA4~SA10)と同様であるので、説明は省略する。但し、先の例のように、窓付近を挟んで車両1の左右の側面を同一の面にクラスタリングするような状況は生じないので、探索範囲は、先の例より小さい値でよく、例えば特定の注目点を中心とする半径0.1m程度の空間に設定すればよい。さらに、面取得部22は、クラスタリング処理で同一グループにグループ化された点群データにフィルタリング処理を実行することにより、当該同一グループから外れ値を除去する(SE12)。
【0117】
図13(a)には、ライダー10で検出された主にプラットホームPおよび軌道面に対応する点群データが示されている。図13(b)には、図13(a)に対応する点群データに対して得られた法線ベクトルが示されている。
【0118】
図12に戻って説明を続ける。ラベリング部23は、予め設定した基準ベクトルと面取得部22が取得した複数の面の法線ベクトルに基づいて、複数の面から基準被測定物であるプラットホームPの表面に対応する基準面RPを識別する(SE13)。
【0119】
基準ベクトルとして、ライダー10に内蔵した加速度センサにより検出される鉛直方向の基底ベクトルを基準ベクトルVBとし、基準ベクトルVBと方向が一致する法線ベクトルを備えた複数の面のうち、ライダー10からの鉛直距離に最も近い距離を有する面を基準面RPとして特定する。基準ベクトルVBに対する法線ベクトルの傾斜角が0°±Δθ2の範囲に入る場合に平行と判定する。Δθ2の値は、特に限定されないが、本実施形態ではΔθ2=10°に設定されている。なお、基準ベクトルの設定は、ライダー10に内蔵した加速度センサを用いる態様に限らず、例えばライダー10の設置姿勢に対応して予めデータとして入力する態様であってもよい。
【0120】
次に、ラベリング部23は、点群データ取得部21で取得した点群データに基づいて基準面RPの境界線BLを取得する(SE14)。図14に示すように、ラベリング部23は、ライダー10から出射されるレーザ光の第1偏向機構14Aによる走査方向(図14中、矢印で示す)に沿って得られる距離d0,d1,・・・,dn,dn+1,・・・,dm(n,mは整数)を捕捉して、値が急激に変化する境界点(図14では、距離dn(dn<<dn+1)に対応する位置)を求める処理を、第2偏向機構14Bによる走査方向に沿って繰返し、得られた複数の境界点を通る近似線を境界線BLとして取得する。図14に図示するように、本実施形態の場合に取得する境界線BLは、基準被測定物であるプラットホームPの軌道面側の端部(エッジ)に相当する。プラットホームPと軌道面とに高低差があるので、距離dnの値が急激に変化する境界を求めることができる。
【0121】
さらに、図15(a)に示すように、ラベリング部23は、境界線BLを通り基準面RPであるプラットホームPの床面と交差する交差面CRP(本実施形態では交差角度を90°に設定しており、鉛直面となる。)を生成し、基準面RPと基準面RPに直交する交差面CRPである鉛直面とを識別して其々をラベリングする(SE15)。なお、交差面CRPのサイズは特に限定するものではなく任意である。また、交差角度は90°に限るものではなく、基準面RP上に存在する異物が検知できる範囲であればよく、例えば90±5°程度の範囲に設定すればよい。
【0122】
次に、図15(b)に示すように、エリア設定部24は、ライダー10から最短距離となる境界線BL上の中心点CPを基準に、境界線BLに沿う左右方向に汎用検知エリアの幅方向の境界となる幅Wを設定する(SE16)。
【0123】
次に、エリア設定部24は、境界線BLから基準面RPに沿って汎用検知エリアの奥行方向の境界となる奥行Dを設定し(SE17)、基準面RPから高さ方向の境界となる高さHを設定する(SE18)。その結果、交差面CRPの面上で幅W、高さHの矩形面S1´が形成され、基準面RPの面上で幅W、奥行きDの矩形面S2´が形成される。
【0124】
続いて、エリア設定部24は、矩形面S1´,S2´に対向する補助面S3´,S4´、矩形面S1´,S2´に直交する補助面S5´,S6´の4枚の補助面を生成し(SE19)、6面S1´,S2´,S3´,S4´,S5´,S6´で囲われた汎用検知エリアBA´を区画する(SE20)。
【0125】
このようにして取得される汎用検知エリアBA´に対して、図15(c)に示すように、エリア設定部24は、交差面CRPに対応する矩形面S1´を奥行き方向にオフセット量ΔDだけシフトさせる。また、基準面RPに対応する矩形面S2´を上方にオフセット量ΔHだけシフトする。エリア設定部24は、このようにして得られる直方体領域を最終の汎用検知エリアDA´として画定する(SE21)。エリア設定部24は、当該汎用検知エリアDA´を示す各頂点の座標を検知エリア情報記憶部30に格納する。なお、オフセット量ΔD,ΔHの値は特に限定するものではなく、図11で説明したものと異なる値に設定してもよい。したがって、本実施形態の場合には、プラットホームPの軌道面側の端部に相当する境界線BLを取得することで、最終の汎用検知エリアDA´を画定することができる。
【0126】
上述した実施形態では、面取得部22が取得する面が平面である例を説明したが、本発明は平面を対象とするものに限定するものではなく、曲率が小さな曲面を対象としてもよい。たとえば、公知の曲面フィッティングアルゴリズムを用いればよく、その場合には、注目面の法線として注目点に対する接平面の法線を採用すればよい。
【0127】
上述した実施形態では、検知エリアが駅舎のプラットホームPに設けた安全柵SFと、プラットホームPに停車した車両1との間に画定されるエリアである例を説明した。しかしながら、本発明はこのような態様に限るものではなく、検知エリアが変動するような環境で適切な検知エリアを設定する必要がある任意の設備に活用できる。
【0128】
例えば、立体駐車場に入場して停止した自動車を基準被測定物として、自動車から人が乗降する前に、自動車を含む領域に対して照射した測定光に対する反射光に基づいて、自動車の表面上の反射点を含む測距点の座標に基づいて検知エリアを設定するような場合に適用できる。自動車を車庫に搬送する搬送機構が作動する際に、自動車の周囲に人や荷物などの支障物の存在を確認して安全を図ることができる。
【0129】
また、点群データ取得部21は、上記実施形態のような光を照射する方式に限定されない。たとえば、パッシブ方式のステレオカメラ、超音波、ミリ波によるセンサ等であって点群データを取得できる手段であればよい。
【0130】
上述した実施形態は、何れも本発明の一実施例の説明であり、該記載により本発明の範囲が限定解釈されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0131】
1:車両
2:扉
10:ライダー
12:信号処理回路
20:検知エリア設定部
21:点群データ取得部
22:面取得部
23:ラベリング部
24:エリア設定部
30:検知エリア情報記憶部
40:支障物検出部
50:システム制御部
BA:基準検知エリア
DA:検知エリア
DR:扉
SF:安全柵
図1
図2
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