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特開2022-187969電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187969
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20221213BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20221213BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/33
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018058
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021095547
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】大平 和広
(72)【発明者】
【氏名】恵内 祥士
(72)【発明者】
【氏名】大堀 貴広
【テーマコード(参考)】
3D333
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CB21
3D333CC14
3D333CC36
3D333CC44
3D333CC45
3D333CC46
3D333CC47
3D333CD04
3D333CD07
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CD23
3D333CD31
3D333CD37
3D333CD54
3D333CD59
3D333CE06
3D333CE12
3D333CE15
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB09
5H605CC06
5H605EC05
5H605EC20
5H605GG04
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB08
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】コネクタの挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力の影響を低減する、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動駆動装置は、モータと、回路基板を含む電子制御装置と、ヒートシンクと、を含む。コネクタは、シャフトの径方向に挿抜され、ヒートシンクの反負荷側に設けられる。また、コネクタは、負荷側に第1凹部を有する。ヒートシンクは、コネクタを載置する載置面と、載置面よりもコネクタ側に突出し、第1凹部に嵌め合わせる突起部とを有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトと連動するモータロータと、
前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、
前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容するハウジングと、を含むモータと、
前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、
前記モータの前記反負荷側に設けられるヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記反負荷側に配置された回路基板と、前記磁石の前記軸方向の延長線上にあり、かつ前記回路基板に取り付けられた回転角度センサと、を含む電子制御装置と、
前記シャフトの径方向に挿抜され、前記ヒートシンクの前記反負荷側に設けられるコネクタと、を備え、
前記コネクタは、負荷側に第1凹部を有し、
前記ヒートシンクは、前記コネクタを載置する載置面と、前記載置面よりも前記反負荷側に突出し、前記第1凹部に嵌め合わせる突起部とを有する、電動駆動装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記突起部を囲み、前記載置面よりも負荷側に凹む第2凹部を有する、請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、前記モータと締結する第1ボルトの頭部を収容し、前記載置面よりも負荷側に凹む第3凹部を有する、請求項2に記載の電動駆動装置。
【請求項4】
前記コネクタが前記ヒートシンクと前記回路基板とに挟まれ、前記回路基板と前記コネクタとが第2ボルトにより固定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項5】
前記回路基板と、前記第2ボルトに隣接する位置に、前記ヒートシンクとが固定される第3ボルトを備える、請求項4に記載の電動駆動装置。
【請求項6】
前記ヒートシンクは、前記載置面よりも前記反負荷側にある第1面と、前記第1面よりも前記反負荷側にある第2面とをさらに有し、前記第2面は、前記回路基板に対向し、前記回路基板の放熱をさせる放熱面であり、
前記第1面と前記載置面との間の段差面と、前記突起部との間に、前記コネクタの一部が挿入される、請求項1から5のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項7】
前記突起部は、角柱である、請求項1から6のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、金属材料で構成され、前記コネクタは、樹脂材料で構成される、請求項1から7のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項9】
前記シャフトの径方向にみて、前記第1凹部は、前記コネクタの両側端の中間に設けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項10】
前記回路基板の前記反負荷側を覆う、蓋体をさらに備え、
前記ヒートシンクは、前記載置面と前記突起部とを有する台座を備え、
前記コネクタは、前記蓋体の端部と、前記台座との間に挟まれる、請求項1から8のいずれか1項に記載の電動駆動装置。
【請求項11】
前記シャフトの径方向にみて、前記突起部と、前記台座の径方向外側端との間に、前記蓋体の端部が配置されている、請求項10に記載の電動駆動装置。
【請求項12】
前記コネクタは、前記シャフトの径方向に延びる複数のリブを備え、前記蓋体の端部は、前記リブに近接する、請求項10又は11に記載の電動駆動装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の電動駆動装置を備え、
前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの回転を制御する電子制御装置を備えた電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって補助操舵トルクを発生させる電動パワーステアリング装置は、モータを制御する装置である電子制御装置を備えている。例えば特許文献1には、電子部品を基板に高密度に実装可能である駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-034204号公報
【特許文献2】特開2017-092100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動駆動装置では、モータのシャフトに平行な軸方向に沿って、モータ、電子制御装置及びコネクタの順に並んでいる。特許文献1の電動駆動装置では、コネクタの挿抜方向は、軸方向であるため、軸方向に大きさが大きくなる。
【0005】
これに対して、特許文献2の電動駆動装置では、コネクタへの挿抜方向は、モータのシャフトの径方向である。これにより、特許文献2の電動駆動装置では、特許文献1の電動駆動装置よりも軸方向の大きさが小さくなる。
【0006】
特許文献2の電動駆動装置では、コネクタの端子が基板に電気的に接続される。コネクタの外側には、突起があり、コネクタを引き抜くと、突起が蓋体に当接する。このため、コネクタの挿抜方向に伴う、コネクタの端子への力は抑制される。ここで、コネクタの挿抜には、コネクタの挿抜方向だけではなく、コネクタの挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力が生じる。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、コネクタの挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力の影響を低減する、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、一態様に係る電動駆動装置は、負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトと連動するモータロータと、前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容するハウジングと、を含むモータと、前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、前記モータの前記反負荷側に設けられるヒートシンクと、前記ヒートシンクの前記反負荷側に配置された回路基板と、前記磁石の前記軸方向の延長線上にあり、かつ前記回路基板に取り付けられた回転角度センサと、を含む電子制御装置と、前記シャフトの径方向に挿抜され、前記ヒートシンクの前記反負荷側に設けられるコネクタと、を備え、前記コネクタは、負荷側に第1凹部を有し、前記ヒートシンクは、前記コネクタを載置する載置面と、前記載置面よりも前記反負荷側に突出し、前記第1凹部に嵌め合わせる突起部とを有する。
【0009】
これにより、モータのシャフトに平行な軸方向の大きさが抑制され、電動駆動装置が小さくなる。コネクタには、挿抜により、挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力が生じる。コジリの力は、突起部で受けるので、コネクタの揺動が抑制される。その結果、回路基板とコネクタとの間の接続部にかかる応力が抑制され、電動駆動装置の信頼性が向上する。
【0010】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記突起部を囲み、前記載置面よりも負荷側に凹む第2凹部を有する。これにより、コネクタの角は、第2凹部に留まり、突起部に接触しにくくなる。
【0011】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記モータと締結する第1ボルトの頭部を収容し、前記載置面よりも負荷側に凹む第3凹部を有する。これにより、コネクタに挿抜の力が加わっても、ヒートシンクがモータに対してずれないように固定されている。
【0012】
望ましい態様として、前記コネクタが前記ヒートシンクと前記回路基板とに挟まれ、前記回路基板と前記コネクタとが第2ボルトにより固定されている。コネクタが回路基板に対してずれないように固定されている。
【0013】
望ましい態様として、前記回路基板と、前記第2ボルトに隣接する位置に、前記ヒートシンクとが固定される第3ボルトを備える。回転基板がヒートシンクに対してずれないように固定されている。
【0014】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記載置面よりも前記反負荷側にある第1面と、前記第1面よりも前記反負荷側にある第2面とをさらに有し、前記第2面は、前記回路基板に対向し、前記回路基板の放熱をさせる放熱面であり、前記第1面と前記載置面との間の段差面と、前記突起部との間に、前記コネクタの一部が挿入される。コジリの力は、突起部及び段差面で受けるので、コネクタの揺動がより抑制される。
【0015】
望ましい態様として、前記突起部は、角柱である。これにより、角柱の各面がコジリの力に反力を与え、コネクタの揺動がより抑制される。
【0016】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、金属材料で構成され、前記コネクタは、樹脂材料で構成される。これにより、金属製の突起部は、小さくても、コネクタを支持できる。
【0017】
望ましい態様として、前記シャフトの径方向にみて、前記第1凹部は、前記コネクタの両側端の中間に設けられている。これにより、最小限の第1凹部の体積があればよく、コネクタの導体スペースを確保することができる。
【0018】
望ましい態様として、前記回路基板の前記反負荷側を覆う、蓋体をさらに備え、前記ヒートシンクは、前記載置面と前記突起部とを有する台座を備え、前記コネクタは、前記蓋体の端部と、前記台座との間に挟まれる。これにより、コネクタは、軸方向の変位が抑制される。その結果、コネクタ端子から回路基板への応力が低減し、回路基板の信頼性が向上する。
【0019】
望ましい態様として、前記シャフトの径方向にみて、前記突起部と、前記台座の径方向外側端との間に、前記蓋体の端部が配置されている。これにより、コネクタは、軸方向の変位が抑制される。
【0020】
前記コネクタは、前記シャフトの径方向に延びる複数のリブを備え、前記蓋体の端部は、前記リブに近接する。これにより、蓋体の姿勢が安定する。
【0021】
望ましい態様として、電動パワーステアリング装置は、電動駆動装置を備え、前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる。これにより、モータのシャフトに平行な軸方向及びシャフトの径方向の大きさが抑制され、電動パワーステアリング装置の配置の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、コネクタの挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力の影響を低減する、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図3図3は、実施形態1に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るモータの配線を示す模式図である。
図5図5は、実施形態1に係るモータとECUとの関係を示す模式図である。
図6図6は、実施形態1に係る電動駆動装置の側面図である。
図7図7は、実施形態1に係る電動駆動装置の平面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII矢視の断面を示す断面図である。
図9図9は、図7のIX-IX矢視の断面を示す断面図である。
図10図10は、図7のX-X矢視の断面を示す断面図である。
図11図11は、図6のXII-XII矢視の断面を示す断面図である。
図12図12は、蓋体を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。
図13図13は、図12の平面図である。
図14図14は、蓋体及び回路基板を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。
図15図15は、図14の平面図である。
図16図16は、実施形態2に係る電動駆動装置において、図7のIX-IX矢視の断面の他の例を示す断面図である。
図17図17は、実施形態2に係るコネクタの斜視図である。
図18図18は、実施形態3に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図19図19は、実施形態3に係るECUの配置例を示す側面図である。
図20図20は、実施形態4に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図21図21は、実施形態5に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0025】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。図2は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。図1に示すように、車両101は、電動パワーステアリング装置100を搭載している。図2を参照して電動パワーステアリング装置100の概要を説明する。
【0026】
電動パワーステアリング装置100は、運転者(操作者)から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール91と、ステアリングシャフト92と、ユニバーサルジョイント96と、インターミディエイトシャフト97と、ユニバーサルジョイント98と、第1ラックアンドピニオン機構99と、タイロッド72と、を備える。また、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト92の操舵トルクを検出するトルクセンサ94と、モータ30と、モータ30を制御する電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)10と、減速装置75と、第2ラックアンドピニオン機構70と、を備える。車速センサ82、電源装置83(例えば車載のバッテリ)、及びイグニッションスイッチ84は、車体に備えられる。車速センサ82は、車両101の走行速度を検出する。車速センサ82は、検出した車速信号SVをCAN(Controller Area Network)通信によりECU10に出力する。ECU10には、イグニッションスイッチ84がオンの状態で電源装置83から電力が供給される。
【0027】
電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30のシャフト31の反負荷側に固定したECU10とを備える。また、電動駆動装置1は、ECU10とモータ30とを接続するアダプタを備えてもよい。
【0028】
図2に示すように、ステアリングシャフト92は、入力軸92Aと、出力軸92Bと、トーションバー92Cと、を備える。入力軸92Aは、一方の端部がステアリングホイール91に接続され、他方の端部がトーションバー92Cに接続される。出力軸92Bは、一方の端部がトーションバー92Cに接続され、他方の端部がユニバーサルジョイント96に接続される。なお、トルクセンサ94は、トーションバー92Cのねじれを検出することで、ステアリングシャフト92に加わる操舵トルクを検出する。トルクセンサ94は、検出した操舵トルクに応じた操舵トルク信号TをCAN通信によりECU10に出力する。ステアリングシャフト92は、ステアリングホイール91に付与された操舵力により回転する。
【0029】
インターミディエイトシャフト97は、アッパーシャフト97Aと、ロアシャフト97Bとを有し、出力軸92Bのトルクを伝達する。アッパーシャフト97Aは、ユニバーサルジョイント96を介して出力軸92Bに接続される。一方、ロアシャフト97Bは、ユニバーサルジョイント98を介して第1ラックアンドピニオン機構99の第1ピニオンシャフト99Aに接続される。アッパーシャフト97Aとロアシャフト97Bとは、例えば、スプライン結合されている。
【0030】
第1ラックアンドピニオン機構99は、第1ピニオンシャフト99Aと、第1ピニオンギヤ99Bと、ラックシャフト99Cと、第1ラック99Dと、を有する。第1ピニオンシャフト99Aは、一方の端部がユニバーサルジョイント98を介してロアシャフト97Bに接続され、他方の端部が第1ピニオンギヤ99Bに接続される。ラックシャフト99Cに形成された第1ラック99Dは、第1ピニオンギヤ99Bと噛み合う。ステアリングシャフト92の回転運動は、インターミディエイトシャフト97を介して第1ラックアンドピニオン機構99に伝達される。この回転運動は、第1ラックアンドピニオン機構99によりラックシャフト99Cの直線運動に変換される。タイロッド72は、ラックシャフト99Cの両端にそれぞれ接続される。
【0031】
モータ30は、運転者の操舵をアシストするための補助操舵トルクを発生させるモータである。モータ30は、ブラシレスモータでもよいし、ブラシ及びコンミテータを有するブラシモータでもよい。
【0032】
ECU10は、回転角度センサ23aを備える。回転角度センサ23aは、モータ30の回転位相を検出する。ECU10は、回転角度センサ23aからモータ30の回転位相信号を取得し、トルクセンサ94から操舵トルク信号Tを取得し、車速センサ82から車両101の車速信号SVを取得する。ECU10は、回転位相信号と操舵トルク信号Tと車速信号SVとに基づいて、アシスト指令の補助操舵指令値を算出する。ECU10は、算出された補助操舵指令値に基づいて、電流をモータ30に供給する。
【0033】
減速装置75は、モータ30のシャフト31と一体に回転するウォームシャフト75Aと、ウォームシャフト75Aと噛み合うウォームホイール75Bと、を備える。したがって、シャフト31の回転運動は、ウォームシャフト75Aを介してウォームホイール75Bに伝達される。なお、本実施形態1において、シャフト31の減速装置75側を負荷側端部といい、シャフト31の減速装置75とは反対側を反負荷側端部という。
【0034】
第2ラックアンドピニオン機構70は、第2ピニオンシャフト71Aと、第2ピニオンギヤ71Bと、第2ラック71Cと、を有する。第2ピニオンシャフト71Aは、一方の端部がウォームホイール75Bと同軸、かつ一体に回転するように固定される。第2ピニオンシャフト71Aは、他方の端部が第2ピニオンギヤ71Bに接続される。ラックシャフト99Cに形成された第2ラック71Cは、第2ピニオンギヤ71Bと噛み合う。モータ30の回転運動は、減速装置75を介して第2ラックアンドピニオン機構70に伝達される。この回転運動は、第2ラックアンドピニオン機構70によりラックシャフト99Cの直線運動に変換される。
【0035】
ステアリングホイール91に入力された運転者の操舵力は、ステアリングシャフト92、及びインターミディエイトシャフト97を介して、第1ラックアンドピニオン機構99に伝達される。第1ラックアンドピニオン機構99は、伝達された操舵力をラックシャフト99Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト99Cに伝達する。この際、ECU10は、ステアリングシャフト92に入力された操舵トルク信号Tをトルクセンサ94から取得する。ECU10は、車速信号SVを車速センサ82から取得する。ECU10は、モータ30の回転位相信号を回転角度センサ23aから取得する。そして、ECU10は、制御信号を出力してモータ30の動作を制御する。モータ30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置75を介して第2ラックアンドピニオン機構70に伝達される。第2ラックアンドピニオン機構70は、補助操舵トルクをラックシャフト99Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト99Cに伝達する。このようにして、運転者のステアリングホイール91の操舵が電動パワーステアリング装置100によりアシストされる。
【0036】
図2に示すように、電動パワーステアリング装置100は、第2ラックアンドピニオン機構70にアシスト力が付与されるラックアシスト方式であるがこれに限定されない。電動パワーステアリング装置100は、例えば、ステアリングシャフト92にアシスト力が付与されるコラムアシスト方式、及び第1ピニオンギヤ99Bにアシスト力が付与されるピニオンアシスト方式でもよい。
【0037】
図3は、実施形態1に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。図4は、実施形態1に係るモータの配線を示す模式図である。本実施形態1において、周方向とは、シャフト31を中心とした同心円において、同心円に沿う方向である。径方向とは、軸方向Axに直交する平面において、シャフト31から離れる方向である。モータ30は、図3に示すように、ハウジング930と、ステータコア931を有するモータステータと、モータロータ932と、を備える。モータステータは、円筒状であるステータコア931と、複数の第1コイル37と、複数の第2コイル38を含む。ステータコア931は、環状のバックヨーク931aと、バックヨーク931aの内周面から突出する複数のティース931bと、を備える。ティース931bは、周方向に12個配置されている。モータロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。マグネット932bの数は、例えば8つである。モータロータ932の回転は、シャフト31の回転と連動する。
【0038】
図3に示すように、第1コイル37は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第1コイル37は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。全ての第1コイル37は、第1コイル系統に含まれる。実施形態1に係る第1コイル系統は、第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251(図5参照)によって、電流が供給され、励磁される。第1コイル系統は、例えば第1コイル37を6つ含む。6つの第1コイル37は、2つの第1コイル37が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第1コイル37を1つのグループとした第1コイルグループGr1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第1コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第1コイルグループGr1を備えている。なお、第1コイルグループGr1は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。以上説明したように、本実施形態1では、コイルグループは、複数あり、3相毎に少なくとも第1コイルグループgr1と、第2コイルグループGr2の2系統に分けられ、かつステータコアが3相交流で励磁される。
【0039】
図3に示すように、第2コイル38は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第2コイル38は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。第2コイル38が集中巻きされるティース931bは、第1コイル37が集中巻きされるティース931bとは異なるティース931bである。全ての第2コイル38は、第2コイル系統に含まれる。第2コイル系統は、第2パワー回路25Bに含まれるインバータ回路251(図5参照)によって電流が供給され、励磁される。第2コイル系統は、例えば第2コイル38を6つ含む。6つの第2コイル38は、2つの第2コイル38が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第2コイル38を1つのグループとした第2コイルグループGr2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第2コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第2コイルグループGr2を備えている。なお、第2コイルグループGr2は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0040】
図4に示すように、6つの第1コイル37は、第1U相電流I1uにより励磁される2つの第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubと、第1V相電流I1vにより励磁される2つの第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbと、第1W相電流I1wにより励磁される2つの第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbと、を含む。第1U相コイル37Ubは、第1U相コイル37Uaに対して直列に接続されている。第1V相コイル37Vbは、第1V相コイル37Vaに対して直列に接続されている。第1W相コイル37Wbは、第1W相コイル37Waに対して直列に接続されている。第1コイル37のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向である。また、第1U相コイル37Ub、第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0041】
図4に示すように、6つの第2コイル38は、第2U相電流I2uにより励磁される2つの第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubと、第2V相電流I2vにより励磁される2つの第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbと、第2W相電流I2wにより励磁される2つの第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbと、を含む。第2U相コイル38Ubは、第2U相コイル38Uaに対して直列に接続されている。第2V相コイル38Vbは、第2V相コイル38Vaに対して直列に接続されている。第2W相コイル38Wbは、第2W相コイル38Waに対して直列に接続されている。第2コイル38のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向であり、第1コイル37の巻き方向と同じである。また、第2U相コイル38Ub、第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0042】
図3に示すように、3つの第1コイルグループGr1は、第1UVコイルグループGr1UVと、第1VWコイルグループGr1VWと、第1UWコイルグループGr1UWと、からなる。第1UVコイルグループGr1UVは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ub及び第1V相コイル37Vaを含む。第1VWコイルグループGr1VWは、周方向で互いに隣接する第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Waを含む。第1UWコイルグループGr1UWは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ua及び第1W相コイル37Wbを含む。
【0043】
図3に示すように、3つの第2コイルグループGr2は、第2UVコイルグループGr2UVと、第2VWコイルグループGr2VWと、第2UWコイルグループGr2UWと、からなる。第2UVコイルグループGr2UVは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ub及び第2V相コイル38Vaを含む。第2VWコイルグループGr2VWは、周方向で互いに隣接する第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Waを含む。第2UWコイルグループGr2UWは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ua及び第2W相コイル38Wbを含む。
【0044】
第1U相電流I1uにより励磁される第1コイル37は、第2U相電流I2uにより励磁される第2コイル38に、ステータコア931の径方向で対向している。以下の説明において、ステータコア931の径方向は、単に径方向と記載される。例えば、図3に示すように、径方向で第1U相コイル37Uaが第2U相コイル38Uaに対向し、第1U相コイル37Ubが第2U相コイル38Ubに対向している。
【0045】
第1V相電流I1vにより励磁される第1コイル37は、第2V相電流I2vにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、図3に示すように、径方向で第1V相コイル37Vaが第2V相コイル38Vaに対向し、第1V相コイル37Vbが第2V相コイル38Vbに対向している。
【0046】
第1W相電流I1wにより励磁される第1コイル37は、第2W相電流I2wにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、図3に示すように、径方向で第1W相コイル37Waが第2W相コイル38Waに対向し、第1W相コイル37Wbが第2W相コイル38Wbに対向している。
【0047】
図5は、実施形態1に係るモータとECUとの関係を示す模式図である。図5に示すように、ECU10は、検出回路23と、制御回路24と、第1パワー回路25Aと、第2パワー回路25Bと、を備える。検出回路23は、回転角度センサ23aと、モータ回転数演算部23bと、を有する。制御回路24は、制御演算部241と、ゲート駆動回路242と、遮断駆動回路243と、を有する。第1パワー回路25Aは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。第2パワー回路25Bは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。また、インバータ回路251は、複数のスイッチング素子252と、電流値を検出するための電流検出回路254と、を有する。なお、図5において、説明が不要な回路については、適宜省略している。
【0048】
制御演算部241は、モータ電流指令値を演算する。モータ回転数演算部23bは、モータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。ゲート駆動回路242は、制御演算部241から出力されるモータ電流指令値が入力される。ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bを制御する。
【0049】
ECU10は、図5に示すように、回転角度センサ23aを備えている。回転角度センサ23aは、例えば、磁気センサである。回転角度センサ23aの検出値がモータ回転数演算部23bに供給される。モータ回転数演算部23bは、回転角度センサ23aの検出値に基づいてモータ電気角θmを演算し、制御演算部241に出力する。
【0050】
制御演算部241には、トルクセンサ94で検出された操舵トルク信号Tと、車速センサ82で検出された車速信号SVと、モータ回転数演算部23bから出力されるモータ電気角θmと、が入力される。制御演算部241は、操舵トルク信号T、車速信号SV及びモータ電気角θmに基づいてモータ電流指令値を算出し、ゲート駆動回路242に出力する。
【0051】
ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて第1パルス幅変調信号を演算し、第1パワー回路25Aのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第1U相電流I1u、第1V相電流I1v及び第1W相電流I1wを含む3相交流を生成する。第1U相電流I1uが第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubを励磁し、第1V相電流I1vが第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbを励磁し、第1W相電流I1wが第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbを励磁する。
【0052】
ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて第2パルス幅変調信号を演算し、第2パワー回路25Bのインバータ回路251に出力する。インバータ回路251は、第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるようにスイッチング素子252をスイッチングして第2U相電流I2u、第2V相電流I2v及び第2W相電流I2wを含む3相交流を生成する。第2U相電流I2uが第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubを励磁し、第2V相電流I2vが第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbを励磁し、第2W相電流I2wが第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbを励磁する。
【0053】
インバータ回路251は、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路である。上記のように、インバータ回路251は、複数のスイッチング素子252を有する。スイッチング素子252は、例えば、電界効果トランジスタである。インバータ回路251には、平滑用コンデンサ253が並列に接続される。平滑用コンデンサ253は、例えば、電解コンデンサである。回路基板20は、平滑用コンデンサ253として、並列に接続された複数の平滑用コンデンサを備える。
【0054】
また、上記のように、インバータ回路251は電流検出回路254を有する。電流検出回路254は、例えば、シャント抵抗を含む。電流検出回路254で検知した電流値は、制御演算部241に送出される。なお、電流検出回路254は、モータ30の各相の電流値を検出するように接続してもよい。
【0055】
電流遮断回路255は、インバータ回路251と、第1コイル37又は第2コイル38との間に配置されている。電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合は、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第1コイル37へ流れる電流を遮断できる。また、制御演算部241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第2コイル38へ流れる電流を遮断できる。このように、第1コイル37へ流れる電流と、第2コイル38へ流れる電流は、制御演算部241にそれぞれ独立して制御される。また、制御演算部241には、操舵トルク信号T、車速信号SV等の入出力信号が、コネクタCNTを介して伝送される。
【0056】
図6は、実施形態1に係る電動駆動装置の側面図である。図7は、実施形態1に係る電動駆動装置の平面図である。図8は、図6のVIII-VIII矢視の断面を示す断面図である。図9は、図7のIX-IX矢視の断面を示す断面図である。図10は、図7のXI-XI矢視の断面を示す断面図である。図11は、図6のXII-XII矢視の断面を示す断面図である。図12は、蓋体を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。図13は、図12の平面図である。図14は、蓋体及び回路基板を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。図15は、図14の平面図である。図6及び図7に示すように、電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30の反負荷側に配置されるECU10とを備える。
【0057】
図6及び図7に示すように、ECU10は、ヒートシンク40と、ヒートシンク40の反負荷側を覆う蓋体50を備える。図8に示すように、ヒートシンク40は、回路基板20を指示しており、蓋体50は、回路基板20を覆っている。図9に示すように、ヒートシンク40には、回路基板20と、コネクタCNTとが取り付けられている。軸方向Axからみて、モータ30のシャフト31の径方向外側からワイヤーハーネスのコネクタ端子が挿抜可能な方向F1にコネクタCNTが配置されている。以上説明したように、ECU10は、回路基板20と、回路基板20を支持するヒートシンク40と、コネクタCNTと、蓋体50を有する。
【0058】
図8に示すように、モータ30は、ハウジング930を備える。モータロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。ハウジング930は筒状であり、その内側にモータロータ932と、3相毎に2系統に分けられた複数のコイルグループ、例えば第1コイルグループGr1及び第2コイルグループGr2(図3参照)を含むステータと、シャフト31とを収容する。
【0059】
図8に示すように、回路基板20は、基板本体21と、基板本体21に実装された複数の電子部品と、を有する。基板本体21は、例えば、樹脂等で形成されたプリント基板である。1枚の基板本体21に実装された複数の電子部品には、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、磁気センサ、電解コンデンサ、抵抗素子、ダイオード、サーミスタ等が含まれる。これら複数の電子部品により、図5に示した検出回路23、制御回路24、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bが構成されている。
【0060】
図8及び図9に示すように、ヒートシンク40は、回路基板20を支持する。ヒートシンク40の一方の面(反負荷側)に、回路基板20が固定されている。ヒートシンク40は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属材料で構成されており、回路基板20が発する熱を外部に効率よく放熱する。
【0061】
図8に示すように、シャフト31は、軸受33と、軸受34とにより回転自在に支持される。軸受33は、ヒートシンク40とシャフト31との間に介在している。ヒートシンク40の負荷側には、軸受支持部411があり、シャフト31が貫通するヒートシンク40の中空部45Hがある。軸受支持部411で囲まれる中空部45Hの内側35に軸受33が配置されている。軸受34は、ハウジング930とシャフト31との間に介在している。
【0062】
図8及び図9に示すように、シャフト31の一方の端部には、磁石フォルダ32Aを介して磁石32が取り付けられている。磁石32は、軸方向Axからみて半分がS極、半分がN極に着磁されている。あるいは、磁石32は、周方向にみて交互に配置されたS極及びN極を外周面に有するようにしてもよい。軸受33は、部品精度が高いので、ヒートシンク40の反負荷側に配置される磁石32の軸方向Axの位置が一定となる。磁石32がある端部が、シャフト31の反負荷側の端部である。
【0063】
シャフト31の他方の端部には、ウォームシャフト75A(図1参照)に回転を伝達するモータギヤ31Gがある。モータギヤ31Gがある端部が、シャフト31の負荷側の端部である。
【0064】
基板本体21は、第1面21bと、第1面21bの反対側に位置する第2面21aとを有する。図5に示す検出回路23、制御回路24、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bは、第1面21b又は第2面21aに実装された1個以上の電子部品で構成されている。例えば、回転角度センサ23aは、基板本体21の第1面21bに実装された1個の電子部品で構成されている。
【0065】
また、図5に示す制御回路24は、基板本体21の第2面21aにそれぞれ実装された複数個の電子部品で構成されている。また、回路基板20は、基板本体21の第2面21aに実装された平滑用コンデンサ253を含む。
【0066】
回転角度センサ23aは、シャフト31の反負荷側であって、磁石32の軸方向Axの延長線上に配置されている。基板本体21は、軸方向Axと直交する平面を回転角度センサ23aの実装面としている。回転角度センサ23aは、磁石32の磁場の変化を感知できるように、基板本体21に実装されている。磁石32と、回転角度センサ23aとは、軸方向Axにおいて、対向していることが望ましい。回転角度センサ23aは、基板本体21の第1面21bではなく、第2面21aにあってもよく、基板本体21の第1面21b及び第2面21aの両方にあってもよい。
【0067】
回転角度センサ23aは、例えば、スピンバルブセンサである。スピンバルブセンサは、反強磁性層等で磁化の向きが固定された強磁性体のピン層と、強磁性体のフリー層とで非磁性層を挟んだ素子で、磁束の向きの変化を検出できるセンサである。スピンバルブセンサには、GMR(Giant Magneto Resistance)センサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサがある。なお、回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出可能なセンサであればよい。回転角度センサ23aは、例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)センサ、又はホールセンサでもよい。
【0068】
蓋体50は金属製又は樹脂製であり、電動駆動装置1の内部に、異物や水分が侵入することを抑制する。図8に示すように、蓋体50は、ヒートシンク40の反負荷側に突出する支持柱451と、固定部材であるボルトCTとに挟まれて固定される。
【0069】
図9図10及び図11に示すように、ヒートシンク40は、コネクタCNTを支持する台座部44を備える。台座部44は、ハウジング930の内壁よりも径方向外側に突出している。台座部44の反負荷側には、コネクタCNTが配置される。
【0070】
コネクタCNTは、電源端子と、CAN通信を行う通信用端子と、CAN通信以外の方法でデータを入出力する入出力端子と、を含むコネクタCNTの端子CNTPを有する。コネクタCNTの樹脂材料は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene terephthalate)である。コネクタCNTの端子CNTPは、回路基板20に電気的に接続される。
【0071】
図12及び図13に示すように、回路基板20は、ヒートシンク40反負荷側に配置される。
【0072】
図14及び図15に示すように、ヒートシンク40は、ヒートシンク本体の反負荷側の第1面41と第2面42とに段差を設けている。なお、第1面41は、平坦面でなくてもよく、第2面42より、軸方向Axに低ければよい。載置面441は、第1面よりも負荷側にあり、第2面42は、第1面よりも反負荷側にある。
【0073】
図14に示すように、ヒートシンク40は、第1面41から反負荷側に突出する支持柱451、支持柱452を備えている。支持柱451、支持柱452には、反負荷側の上面から軸方向Axに開けられた雌ねじ部がそれぞれある。図12に示すように、支持柱451は、回路基板20よりも突出している。図8に示すように、蓋体50を貫通したボルトCTが、支持柱451の雌ねじ部に締結することで、ヒートシンク40に蓋体50が固定される。
【0074】
図12に示すように、回路基板20を貫通したボルトBT1が、支持柱452の雌ねじ部に締結する。これにより、回路基板20がヒートシンク40に対してずれないように固定されている。
【0075】
図12に示すように、コネクタCNTがヒートシンク40と回路基板20とに挟まれ、回路基板20とコネクタCNTとがボルトBT2により固定されている。これにより、コネクタCNTが回路基板20に対してずれないように固定されている。
【0076】
回路基板20と、ボルトBT2に隣接する位置に、ヒートシンク40とが固定されるボルトBT1を配置している。ボルトBT1(第2ボルト)とボルトBT2(第3ボルト)とが近接していることで、コネクタCNTが揺動しても、ボルトBT2の締結力に加え、ボルトBT1の締結力により、コネクタCNTの揺動を抑制できる。
【0077】
図12に示すように、電動駆動装置1は、第1コイルグループGr1と回路基板20とを接続する第1コイル配線321と、第2コイルグループGr2と回路基板20とを接続する第2コイル配線322と、を備える。第1コイル配線321及び第2コイル配線322は、ECU10に含まれてもよいし、モータ30に含まれてもよい。
【0078】
図12に示すように、回路基板20の貫通孔には、第1コイル配線321及び第2コイル配線322が挿入され、回路基板20と第1コイル配線321及び第2コイル配線322とが電気的に接続される。
【0079】
図12及び図13に示すように、回路基板20の発熱を放熱するために、第2面42は、回路基板20と対向している。そして、回路基板20とヒートシンク40の第2面42との間に、放熱材が塗布されている。放熱材は、例えば、シリコーンポリマーに熱伝導性フィラーを混合した材料であり、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる。放熱材は、回路基板20の基板本体21よりも熱伝導率が大きい材料であれば、上記材料以外の他の材料でもよい。
【0080】
図11図14及び図15に示すように、台座部44の反負荷側には、コネクタCNTを搭載する載置面441と、載置面441よりも反負荷側に突出する突起部442と、突起部442の根元であって、載置面441よりも負荷側に凹む凹部443と、載置面441よりも負荷側に凹み、固定部材であるボルトBBTの頭部を収容する凹部444がある。
【0081】
図9及び図11に示すように、コネクタCNTは、負荷側に凹部CNTRがある。凹部CNTRには、突起部442が嵌め合わされる。シャフト31の径方向にみて、凹部CNTRは、コネクタCNTの両側端の中間に設けられている。これにより、最小限の凹部CNTRの体積があればよく、コネクタの導体スペースを確保することができる。
【0082】
図14に示すように、突起部442の形状は、角柱である。これにより、角柱の各面がコジリの力F2、F3に反力を与え、コネクタCNTの揺動がより抑制される。突起部442は、金属製であるので、小さくても、コネクタCNTを支持できる。
【0083】
図10及び図14に示すように、台座部44を貫通したボルトBBTが、モータ30のフランジ933の雌ねじ部に締結することで、モータ30にヒートシンク40が固定される。
【0084】
以上説明したように、実施形態1に係る電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30を駆動制御するために、シャフト31の反負荷側に設けられたECU10と、コネクタCNTとを備える。ECU10は、シャフト31の反負荷側の端部の磁石32と、シャフト31の反負荷側であって、シャフト31の軸方向(例えば、軸方向Ax)の延長線上に配置された回路基板20と、を含む。回路基板20は、磁石32の回転を検出する回転角度センサ23aを含む検出回路23を有する。回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出する磁気センサである。
【0085】
コネクタCNTは、シャフト31の径方向に挿抜され、ヒートシンク40の反負荷側に設けられる。コネクタCNTは、負荷側に凹部CNTR(第1凹部)を有している。ヒートシンク40は、コネクタCNTを載置する載置面441と、載置面441よりもコネクタCNT側に突出し、凹部CNTRに嵌め合わせる突起部442とを有する。
【0086】
これにより、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動駆動装置1が小さくなる。コネクタCNTには、挿抜により、挿抜方向と直交する軸周りに揺動するコジリの力F2、F3が生じる。コジリの力F2、F3は、突起部442で受けるので、コネクタCNTの揺動が抑制される。その結果、回路基板20とコネクタCNTとの間の接続部にかかる応力が抑制され、電動駆動装置1の信頼性が向上する。
【0087】
ヒートシンク40は、突起部442を囲み、載置面441よりも負荷側に凹む凹部443(第2凹部)を有する。これにより、コネクタの角CNTQ(図11参照)は、凹部443に留まり、突起部442に接触しにくくなる。
【0088】
ヒートシンク40は、モータ30のフランジ933と締結するボルトBBT(第1ボルト)の頭部を収容し、載置面441よりも負荷側に凹む凹部444(第3凹部)を有する。突起部442と、凹部444とが隣接しているので、コネクタCNTに挿抜の力が加わっても、ヒートシンク40がモータ30に対してずれないように固定される。
【0089】
ヒートシンク40は、載置面441よりも反負荷側にある第1面41と、第1面41よりも反負荷側にある第2面とをさらに有し、前記第2面は、前記回路基板に対向し、前記回路基板の放熱をさせる放熱面であり、前記第1面と前記載置面との間の段差面と、前記突起部との間に、前記コネクタの一部が挿入される。コジリの力は、突起部及び段差面で受けるので、コネクタの揺動がより抑制される。
【0090】
また、電動パワーステアリング装置100は、上述の電動駆動装置1を備え、電動駆動装置1が補助操舵トルクを生じさせる。これにより、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Ax及びシャフト31の径方向の大きさが抑制され、電動パワーステアリング装置100の配置の自由度が向上する。
【0091】
(実施形態2)
図16は、実施形態2に係る電動駆動装置において、図7のIX-IX矢視の断面の他の例を示す断面図である。図17は、実施形態2に係るコネクタの斜視図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態2では、実施形態1よりも台座部44が径方向外側に突出している。
【0092】
図16に示すように、負荷側から反負荷側へ回路基板20を貫通し、半田付けなどで、接合されている。突起部442により、コネクタCNTに加えられたコジリの力F2、F3が低減される。ここで、回路基板20と、コネクタCNTとは、コネクタCNTの端子CNTPを介して接続している。ハーネス経由でコネクタCNTへかかる静的な力が突起部442を支点としたコネクタCNTの変位に繋がる可能性がある。そして、コネクタCNTの軸方向の変位が、コネクタCNTの端子CNTPを介して回路基板20へ伝達されてしまう可能性がある。コネクタCNTの端子CNTPが与える回路基板20への応力は、回路基板20の歪みに繋がり、回路基板20の信頼性を損なう可能性がある。そこで、コネクタCNTの変位による、回路基板20への応力は、抑制されることが望ましい。
【0093】
このため、実施形態2の電動駆動装置1では、突起部442の径方向の中心の位置P1よりも、コネクタCNTと近接する蓋体50の位置P2を径方向外側に配置している。そして、実施形態1よりも台座部44を大きくし、台座部44の径方向外側端の位置P3が、蓋体50の位置P2を径方向外側に配置されるようにしている。これにより、突起部442に嵌まる凹部CNTRよりも径方向外側にあるコネクタCNTが、蓋体50と台座部44とで挟まれることで、コネクタCNTの軸方向の変位が抑制される。
【0094】
シャフト31の径方向にみて、位置P1と位置P3との間に位置P3が配置されることにより、コネクタCNTが軸方向に変位しにくくなる。
【0095】
図17に示すように、コネクタCNTには、蓋体50の内側になる位置に、止水壁CNTWと、止水壁CNTWよりも径方向外側に延びる複数のリブCNTBとを備える。例えば、間隔をあけて、3つのリブCNTBは、位置P2(図16参照)で蓋体50の端部50Fと軸方向に対向し、かつ近接する。3つのリブCNTBは、蓋体50の端部50Fとの距離をつめることができ、複数点で、蓋体50の端部50Fを支えるので、蓋体50の姿勢が安定しやすくなる。
【0096】
止水壁CNTWと、蓋体50とは、シャフトの径方向に対向する。止水壁CNTWと、蓋体50の端部50Fとの距離が小さい方が、コネクタCNTの変位を抑制できる。止水壁CNTWと、蓋体50の端部50Fとの距離は、例えば、0.1mm以上0.3mm以下の範囲にある。止水壁CNTWが蓋体50と一体となり、コネクタCNTが軸方向に変位することが抑制される。
【0097】
(実施形態3)
図18は、実施形態3に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。図19は、実施形態3に係るECUの配置例を示す側面図である。なお、上述した実施形態1及び実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0098】
図18に示すように、電動パワーステアリング装置100Aは、コラムアシスト方式であり、電動駆動装置1が減速装置75を介して、ステアリングシャフト92及び出力軸92Bにアシスト力が付与される。
【0099】
図19に示すように、ECU10及びモータ30を備える電動駆動装置1は、減速装置75に配置されている。本実施形態において、軸方向Axとは、モータ30のシャフト31(図3参照)の延びる方向と平行な方向をいう。軸方向Axは、鉛直方向VDに対して、傾いていることが多い。軸方向Axは、車両101(図1参照)のスペースの都合で決められるからである。例えば、コネクタCNTが鉛直方向VDの斜め下方向から挿抜されるようになっていると、開口463Aが鉛直方向VDの下側に向くことがある。
【0100】
(実施形態4)
図20は、実施形態4に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。なお、上述した実施形態1から実施形態3で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図20に示すステアリング装置100Bは、第1ピニオンシャフト99Aに補助操舵トルクを与えるピニオンアシスト方式である。ステアリング装置100Bにおいて、トルクセンサ94は、第1ピニオンシャフト99Aに連結される。
【0101】
モータ30は、ウォームシャフトの減速装置75を回転させる。減速装置75のウォームホイールは、第1ピニオンシャフト99Aと一体で回転する。このため、モータ30が第1ピニオンギヤ99Bを回転できる。第1ピニオンギヤ99Bは、第1ラック99Dと噛み合う。その結果、電動駆動装置1が減速装置75を介して、第1ラック99Dにアシスト力を付与する。なお、第1ピニオンギヤ99Bは、第1ラック99Dに対し、直交配置であってもよく、直交からずれた斜交配置であってもよい。以上説明したように、実施形態4のステアリング装置100Bは、シングルピニオンアシスト方式である。
【0102】
(実施形態5)
図21は、実施形態5に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。なお、上述した実施形態1から実施形態4で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。ステアリング装置100Cは、第1ピニオンシャフト99A及び第1ピニオンギヤ99Bに加え、出力軸92B及び第2ピニオンギヤ71Bを備える。ステアリング装置680は、デュアルピニオンアシスト方式である。トルクセンサ94は、ピニオンシャフト95と第1ピニオンギヤ99Bとの間のトルクを検出する。
【0103】
モータ30は、ウォームシャフトの減速装置75を回転させる。減速装置75のウォームホイールは、出力軸92Bと一体で回転する。このため、モータ30が第2ピニオンギヤ71Bを回転できる。第2ピニオンギヤ71Bは、第2ラック71Cと噛み合う。その結果、電動駆動装置1が減速装置75を介して、第2ラック71Cにアシスト力を付与する。なお、第2ピニオンギヤ71Bは、第2ラック71Cに対し、直交配置であってもよく、直交からずれた斜交配置であってもよい。実施形態5のステアリング装置100Cは、デュアルピニオンアシスト方式である。
【符号の説明】
【0104】
1 電動駆動装置
10 ECU
20 回路基板
21 基板本体
21a 第2面
21b 第1面
23 検出回路
23a 回転角度センサ
24 制御回路
25A 第1パワー回路
25B 第2パワー回路
30 モータ
31 シャフト
31G モータギヤ
32 磁石
33、34 軸受
40 ヒートシンク
41 第1面
42 第2面
44 台座部
45H 中空部
50 蓋体
100 電動パワーステアリング装置
101 車両
930 ハウジング
931 ステータコア
931a バックヨーク
931b ティース
932 モータロータ
932a ロータヨーク
932b マグネット
933 フランジ
Ax 軸方向
BBT、BT1、BT2、CT ボルト
CNT コネクタ
CNTQ 角
CNTR 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21