(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187996
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】燃料プレナム及び該燃料プレナムを含む燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2484 20160101AFI20221213BHJP
H01M 8/2485 20160101ALI20221213BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20221213BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20221213BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M8/2484
H01M8/2485
H01M8/2483
H01M8/2465
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022089574
(22)【出願日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】63/208,178
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドモンストン,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ペトルーチャ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ゴットマン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ベイム,ジョシュア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料プレナムを含む燃料電池スタックの燃料流構造体を提供する。
【解決手段】燃料電池スタックの燃料プレナム350は、入口孔及び出口孔を有するベースプレート360と、ベースプレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有する誘電体層364と、誘電体層上に配置され、入口孔及び出口孔を有するカバープレート366と、カバープレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有するシールプレート370と、シールプレート上に配置されたマニホールドプレート380を含んでいる。マニホールドプレートは、マニホールドプレートの下面に形成された下部入口孔384A及び下部出口孔と、マニホールドプレートの反対の側の上面に形成された上部出口孔390B及び上部入口孔390Aと、上部出口孔を下部入口孔に流体接続する出口通路と、上部入口孔を下部出口孔に流体接続する入口通路とを有している。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料プレナムを含む燃料電池スタックの燃料流構造体であって、前記燃料プレナムは、
入口孔及び出口孔を有するベースプレートと、
該ベースプレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有する誘電体層と、
該誘電体層上に配置され、入口孔及び出口孔を有するカバープレートと、
該カバープレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有するシールプレートと、
該シールプレート上に配置されたマニホールドプレートであって、
該マニホールドプレートの下面に形成された下部入口孔及び下部出口孔と、
前記マニホールドプレートの反対の側の上面に形成された上部出口孔及び上部入口孔と、
前記上部出口孔を前記下部入口孔に流体接続する出口通路と、
前記上部入口孔を前記下部出口孔に流体接続する入口通路と
を有するマニホールドプレートと
を含んでおり、
前記ベースプレート、前記カバープレート、前記シールプレート及び前記マニホールドプレートの前記入口孔は、整合させられて入口導管通路を形成しており、かつ
前記ベースプレート、前記カバープレート、前記シールプレート及び前記マニホールドプレートの前記出口孔は、整合させられて出口導管通路を形成している、
前記燃料流構造体。
【請求項2】
前記入口導管通路内に配置され、前記マニホールドプレートの前記下部入口孔に燃料を供給するように構成された入口導管と、
前記出口導管通路内に配置され、前記マニホールドプレートの前記下部出口孔から燃料排気を受け取るように構成された出口導管と
をさらに有している、請求項1記載の燃料流構造体。
【請求項3】
前記マニホールドプレートは、
該マニホールドプレートの前記下面に形成され、前記マニホールドプレートの前記入口孔を取り囲む入口凹部と、
前記マニホールドプレートの前記下面に形成され、前記マニホールドプレートの前記出口孔を取り囲む出口凹部と
を有している、請求項2記載の燃料流構造体。
【請求項4】
前記燃料流構造体は、
前記入口凹部内に配置され、前記入口導管と前記シールプレートとに溶接された第1のシールリングと、
前記出口凹部内に配置され、前記出口導管と前記シールプレートとに溶接された第2のシールリングと
をさらに有している、請求項3記載の燃料流構造体。
【請求項5】
前記シールプレートを被覆する第1のコーティングと、
前記マニホールドプレートを被覆する第2のコーティングと
をさらに有している、請求項4記載の燃料流構造体。
【請求項6】
前記第1及び第2のコーティングは、金属酸化物材料を含んでおり、約75μm~約200μmの範囲の厚さを有している、請求項5記載の燃料流構造体。
【請求項7】
前記シールプレートは、
前記入口孔を取り囲み、前記第1のコーティングを貫通して露出させられた入口シール領域と、
前記出口孔を取り囲み、前記第1のコーティングを貫通して露出させられた出口シール領域と
を有している、請求項5記載の燃料流構造体。
【請求項8】
前記シールプレートの前記入口シール領域内に配置された第1のガラス又はガラスセラミックシールと、
前記シールプレートの前記出口シール領域内に配置された第2のガラス又はガラスセラミックシールリングと
をさらに有しており、
前記第1のガラス又はガラスセラミックシールと前記第2のガラス又はガラスセラミックシールとは、前記シールプレートと前記マニホールドプレートとを流体接続するように構成されている、請求項7記載の燃料流構造体。
【請求項9】
前記マニホールドプレートは、
前記入口孔を取り囲み、前記第2のコーティングを貫通して露出させられた入口シール領域と、
前記出口孔を取り囲み、前記第2のコーティングを貫通して露出させられた出口シール領域と
を有しており、
前記燃料流構造体は、
前記マニホールドプレートの前記入口シール領域内に配置された第3のガラス又はガラスセラミックシールと、
前記マニホールドプレートの前記出口シール領域内に配置された第3のシールリングと
をさらに有しており、
前記第3のガラス又はガラスセラミックシールは、前記第1のガラス又はガラスセラミックシール上に積層されており、前記第4のガラス又はガラスセラミックシールは、前記第2のガラス又はガラスセラミックシール上に積層されており、前記第1、第2、第3及び第4のガラス又はガラスセラミックシールは、前記シールプレートと前記マニホールドプレートとを流体接続するように構成されている、請求項8記載の燃料流構造体。
【請求項10】
前記入口導管及び前記出口導管はそれぞれ、金属管と、金属ベローズと、誘電体リングとを有している、請求項2記載の燃料流構造体。
【請求項11】
前記誘電体層は、前記カバープレート及び前記ベースプレートよりも高い絶縁耐力を有するセラミック基複合材料を含んでいる、請求項1記載の燃料流構造体。
【請求項12】
前記ベースプレート及び前記カバープレートは、約97%~約99.5%の範囲の密度を有するセラミック材料を含んでいる、請求項11記載の燃料流構造体。
【請求項13】
前記ベースプレート及び前記カバープレートは、アルミナを含んでいる、請求項12記載の燃料流構造体。
【請求項14】
前記カバープレートは、前記シールプレートから前記誘電体層内へのクロム種の拡散を防止するように構成されている、請求項12記載の燃料流構造体。
【請求項15】
前記シールプレート及び前記マニホールドプレートは、23~27重量パーセントのクロムを含有するステンレス鋼材料を含んでいる、請求項1記載の燃料流構造体。
【請求項16】
前記シールプレート及び前記マニホールドプレートはそれぞれ、それぞれが互いにろう接されたステンレス鋼サブプレートを有している、請求項15記載の燃料流構造体。
【請求項17】
前記ベースプレートは、燃料電池スタックのセラミックコネクタと嵌合するように構成された突起を有しており、かつ
前記マニホールドプレートは、該マニホールドプレートを集電回路に接続するための接続点を提供するように構成された電気コンタクトを有している、請求項1記載の燃料流構造体。
【請求項18】
燃料電池スタックであって、
請求項1記載の燃料プレナムと、
該燃料プレナム上に積層されたインターコネクトと、
該インターコネクト間に配置された燃料電池と
を含んでいる、前記燃料電池スタック。
【請求項19】
前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池を含んでおり、
前記上部出口孔は、前記インターコネクトの燃料入口に流体接続されており、かつ
前記上部入口孔は、前記インターコネクトの燃料出口に流体接続されている、
請求項18記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
前記入口導管通路内に配置され、前記マニホールドプレートの前記下部入口孔に燃料を供給するように構成された入口導管と、
前記出口導管通路内に配置され、前記マニホールドプレートの前記下部出口孔から燃料排気を受け取るように構成された出口導管と
をさらに有している、請求項19記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、燃料電池スタック及び特に燃料プレナムを含む燃料電池スタック用の燃料プレナムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温形燃料電池システム、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムでは、酸化剤流が燃料電池のカソード側を通過し、燃料流が燃料電池のアノード側を通過する。酸化剤流は典型的には空気であり、燃料流は炭化水素燃料、例えばメタン、天然ガス、ペンタン、エタノール、又はメタノールであってよい。燃料電池は、750℃~950℃の典型的な温度で稼働し、負に帯電した酸素イオンの、カソードフローストリームからアノードフローストリームへの移動を可能にし、ここでイオンは、自由水素又は炭化水素分子中の水素と結合して水蒸気を生成し、及び/又は、一酸化炭素と結合して二酸化炭素を生成する。負に帯電したイオンからの過剰電子は、アノードとカソードとの間に完成された電気回路を介して燃料電池のカソード側に戻され、その結果、回路を介して電流が流れるようになる。
【0003】
燃料電池スタックは、内部又は外部に燃料及び空気用のマニホールドを備えることができる。内部マニホールド型のスタックでは、燃料及び空気は、スタック内に含まれるライザを用いて各セルに分配される。換言すれば、ガスは、各燃料電池の支持層、例えば電解質層の開口部又は孔、及び各セルのガスフローセパレータを介して流れる。また、外部マニホールド型のスタックでは、スタックは燃料及び空気の入口側及び出口側で開口しており、燃料及び空気は、スタックのハードウェアとは独立して導入及び回収される。例えば、入口及び出口の燃料並びに空気は、スタックと、スタックが配置されるマニホールドハウジングとの間の別個の通路を流れる。
【0004】
燃料電池スタックは、多くの場合、プレーナ形の要素、チューブ、又は他のジオメトリの形態の複数のセルから製造される。燃料と空気とは、電気化学的に活性な表面に供給されなければならず、その表面は大きくなり得る。燃料電池スタックの構成要素の1つは、スタック内の個々のセルを分離する、いわゆるガスフローセパレータ(プレーナ形のスタックではガスフローセパレータプレートと呼ばれる)である。ガスフローセパレータプレートは、スタック内の1つのセルの燃料極(つまり、アノード)に流れる燃料、例えば水素又は炭化水素燃料を、スタック内の隣接するセルの空気極(つまり、カソード)に流れる酸化剤、例えば空気から分離する。多くの場合、ガスフローセパレータプレートは、一方のセルの燃料極と、隣接するセルの空気極とを電気的に接続するインターコネクトとしても使用される。この場合、インターコネクトとして機能するガスフローセパレータプレートは、導電性材料で製造されるか、又は導電性材料を含む。
【発明の概要】
【0005】
本開示の様々な実施形態によれば、燃料プレナムを含む燃料電池スタックの燃料流構造体であって、燃料プレナムは、入口孔及び出口孔を有するベースプレートと、ベースプレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有する誘電体層と、誘電体層上に配置され、入口孔及び出口孔を有するカバープレートと、カバープレート上に配置され、入口孔及び出口孔を有するシールプレートと、シールプレート上に配置されたマニホールドプレートであって、マニホールドプレートの下面に形成された下部入口孔及び下部出口孔と、マニホールドプレートの反対の側の上面に形成された上部出口孔及び上部入口孔と、上部出口孔を下部入口孔に流体接続する出口通路と、上部入口孔を下部出口孔に流体接続する入口通路とを有するマニホールドプレートとを含んでいる、燃料電池スタックの燃料流構造体が提供される。ベースプレート、カバープレート、シールプレート及びマニホールドプレートの入口孔は、整合させられて入口導管通路を形成しており、ベースプレート、カバープレート、シールプレート及びマニホールドプレートの出口孔は、整合させられて出口導管通路を形成している。
【0006】
本開示の様々な実施形態によれば、燃料プレナムと、燃料プレナム上に積層されたクロスフロー型のインターコネクトと、インターコネクト間に配置された固体酸化物形燃料電池とを含んでいる燃料電池スタックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示しており、上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明と共に、本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【
図1B】
図1Aのコラムに含まれる1つのカウンタフロー型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックの斜視図である。
【
図2A】
図1Bのスタックの従来のインターコネクトの空気側の平面図である。
【
図2B】従来のインターコネクトの燃料側の平面図である。
【
図3A】本開示の様々な実施形態による燃料電池スタックの斜視図である。
【
図3C】
図3Aのスタックに含まれるインターコネクトの燃料側の平面図である。
【
図3D】
図3Aのスタックに含まれる燃料電池の概略図である。
【
図4A】本開示の様々な実施形態による
図3Cのクロスフロー型のインターコネクトの空気側を示す平面図である。
【
図4B】本開示の様々な実施形態による
図3Cのクロスフロー型のインターコネクトの燃料側を示す平面図である。
【
図5A】本開示の様々な実施形態による燃料流構造体を上から見たところを示す分解斜視図である。
【
図5B】
図5Aの燃料流構造体を下から見たところを示す分解斜視図である。
【
図7C】
図7Aのマニホールドプレートを概略的に示す上面図である。
【
図8A】組み立てられた燃料プレナムと入口導管とを示す、
図5Aの線L1に沿った鉛直方向横断面図である。
【
図8B】組み立てられた燃料プレナムと出口導管とを示す、
図5Aの線L2に沿った鉛直方向横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
様々な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。図面は、必ずしも原寸大ではなく、本発明の様々な特徴を説明することを意図している。可能な限り、同じ又は類似の部材を参照するために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用される。特定の実施例及び実施形態への言及は、例示目的であり、本発明又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書では、範囲は、「約」のある特定の値から、及び/又は「約」の別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、例は、ある特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、直前に「約」又は「実質的に」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様をなすと理解されるであろう。いくつかの実施形態では、「約X」の値は、+/-1%Xの値を含み得る。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関連で、また他の終点とは独立的に、有意であると理解される。
【0010】
図1Aは、従来の燃料電池コラム30の斜視図であり、
図1Bは、
図1Aのコラム30に含まれる1つのカウンタフロー型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタック20の斜視図であり、
図1Cは、
図1Bのスタック20の一部の側断面図である。
【0011】
図1A及び
図1Bを参照すると、コラム30は、1つ又は複数のスタック20、燃料入口導管32、アノード排気導管34、及びアノードフィード/リターンアセンブリ36(例えばアノードスプリッタプレート(ASP)36)を含んでよい。また、コラム30は、サイドバッフル38及び圧縮アセンブリ40を含んでもよい。サイドバッフル38は、セラミックコネクタ39を介して、圧縮アセンブリ40と、下方に配置されたスタックコンポーネント(図示せず)とに結合され得る。燃料入口導管32は、ASP36に流体接続され、各ASP36に燃料供給を提供するように構成され、アノード排気導管34は、ASP36に流体接続され、各ASP36からアノード燃料排気を受け取るように構成されている。
【0012】
ASP36は、スタック20間に配置され、スタック20に、炭化水素燃料を含む燃料供給を提供するように、また、スタック20からアノード燃料排気を受け取るように構成されている。例えば、ASP36は、以下に述べるように、スタック20内に形成された内部燃料ライザ通路22に流体接続されてよい。
【0013】
図1Cを参照すると、スタック20は、ガスフローセパレータプレート又はバイポーラプレートと呼ばれることもあるインターコネクト10によって分離された複数の燃料電池1を含む。各燃料電池1は、カソード電極3、固体酸化物電解質5、及びアノード電極7を含む。
【0014】
各インターコネクト10は、スタック20内の隣接する燃料電池1同士を電気的に接続する。特に、インターコネクト10は、1つの燃料電池1のアノード電極7を、隣接する燃料電池1のカソード電極3に電気的に接続することができる。
図1Cは、下側の燃料電池1が2つのインターコネクト10の間に配置されていることを示している。
【0015】
各インターコネクト10は、燃料通路8A及び空気通路8Bを少なくとも部分的に画定するリブ12を含む。インターコネクト10は、スタック内の1つのセルの燃料極(つまり、アノード7)に流れる燃料、例えば炭化水素燃料を、スタック内の隣接するセルの空気極(つまり、カソード3)に流れる酸化剤、例えば空気から分離するガス-燃料セパレータとして作用することができる。スタック20の一方の端部には、空気又は燃料をそれぞれ端部電極に供給するための空気エンドプレート又は燃料エンドプレート(図示せず)が設けられてよい。
【0016】
図2Aは、従来のインターコネクト10の空気側の平面図であり、
図2Bは、インターコネクト10の燃料側の平面図である。
図1C及び
図2Aを参照すると、空気側は、空気通路8Bを含む。空気は、空気通路8Bを通って、隣接する燃料電池1のカソード電極3に流れる。特に、空気は、矢印で示される第1の方向Aにインターコネクト10を横切って流れることができる。
【0017】
燃料がカソード電極に接触するのを防止するために、インターコネクト10の燃料孔22Aをリングシール23が取り囲んでよい。インターコネクト10の空気側の周囲部分には、帯状の周囲シール24が配置される。シール23,24は、ガラス材料から形成されてよい。周囲部分は、リブ又は通路を含まない隆起した部分のうちの平坦部分の形態であってよい。周囲領域の表面は、リブ12の頂部と同一平面であってよい。
【0018】
図1C及び
図2Bを参照すると、インターコネクト10の燃料側は、燃料通路8A及び燃料マニホールド28(例えば燃料プレナム)を含んでよい。燃料は、燃料孔22Aのうちの1つから、隣接するマニホールド28に流入し、燃料通路8Aを通って、隣接する燃料電池1のアノード7に流れる。過剰な燃料は、他方の燃料マニホールド28に流入し、次に、隣接する燃料孔22Aに流入可能である。特に、燃料は、矢印で示されるように、第2の方向Bにインターコネクト10を横切って流れることができる。第2の方向Bは、第1の方向Aに対して直交していてよい(
図2A参照)。
【0019】
インターコネクト10の燃料側の周囲領域には、枠状のシール26が配置される。周囲領域は、リブ又は通路を含まない隆起した部分のうちの平坦部分であってよい。周囲領域の表面は、リブ12の頂部と同一平面であってよい。
【0020】
したがって、
図1A、
図1B、
図1C、
図2A、及び
図2Bに示すような従来のカウンタフロー型の燃料電池コラムは、複雑な燃料分配システム(燃料レール及びアノードスプリッタプレート)を含み得る。さらに、内部燃料ライザの使用は、燃料電池及び対応するシールに孔を必要とすることがあり、それにより、燃料電池の作用面積を減少させ、燃料電池1のセラミック電解質にクラックを発生させるおそれがある。
【0021】
燃料マニホールド28は、インターコネクト10の比較的大きな領域を占める可能性があり、これにより、インターコネクト10と、隣接する燃料電池との間の接触面積が約10%減少する可能性がある。また、燃料マニホールド28は比較的深いので、燃料マニホールド28は、インターコネクト10の比較的薄い領域に相当する。インターコネクト10は、一般的に粉末冶金圧縮工程によって形成されるので、燃料マニホールド領域の密度は、インターコネクト材料の理論密度限界に近づく可能性がある。したがって、高密度の燃料マニホールド領域をさらに圧縮することができないため、圧縮工程で使用される圧縮プレスのストロークの長さが制限されることになる。その結果、圧縮ストロークの制限によって、インターコネクト10の他の場所で達成される密度が、より低いレベルに制限される可能性がある。結果として生じる密度のばらつきは、局所的な変動につながる可能性があり、これは、インターコネクト10と燃料電池1との間の接触量を減少させ、スタックの歩留まり及び/又は性能を低下させる可能性がある。
【0022】
燃料電池システムの設計における別の重要な検討事項は、稼働効率の領域である。稼働効率を達成するためには、燃料利用率を最大化することが重要な要素である。燃料利用率とは、稼働中に消費される燃料の量と、燃料電池に供給される燃料の量との比である。燃料電池のサイクル寿命を維持するための重要な要素は、作用面積に燃料を適切に分配することにより、燃料電池の作用面積での燃料欠乏を回避することであり得る。いくつかの流れ範囲通路が、その通路の領域で生じる電気化学反応をサポートするのに十分な燃料を受け取れないような燃料の不均一な分配がある場合、その通路に隣接する燃料電池領域で燃料欠乏をもたらす可能性がある。燃料をより均一に分配するために、従来のインターコネクトの設計は、流れ範囲全体にわたる通路の深さの偏差を含む。これは、製造プロセスの複雑さをもたらすだけでなく、これらの寸法を正確に測定するために複雑な計測を必要とする可能性がある。燃料が燃料孔及び分配マニホールドを通して分配されることによって、様々な通路ジオメトリが制約される可能性がある。
【0023】
この複雑なジオメトリと燃料マニホールドとを解消するための1つの可能な解決策は、より広い燃料開口部を有し、燃料流れ範囲全体にわたってより一層均一な燃料分配を確保することである。燃料マニホールドの形成が密度のばらつきの要因であるため、燃料マニホールドを排除することで、インターコネクトのより均一な密度と透過性とが可能になるはずである。したがって、従来の燃料マニホールドを使用することなく燃料電池に均一に燃料を分配する一方で、燃料電池との均一な接触を提供する改良されたインターコネクトが求められている。
【0024】
燃料電池システムのホットボックスのサイズを拡大する際の全体的な制約のために、ホットボックスの設置面積を増加させることなく、燃料利用率及び燃料電池の作用面積を最大化するように設計された改良されたインターコネクトもまた必要とされている。
【0025】
クロスフロー型の燃料電池システム
図3Aは、本開示の様々な実施形態による燃料電池スタック300の斜視図である。
図3Bは、
図3Aのスタック300の一部の分解斜視図である。
図3Cは、スタック300に含まれるインターコネクト400の燃料側の平面図である。
図3Dは、スタック300に含まれる燃料電池の概略図である。
【0026】
図3A~
図3Dを参照すると、ASPを有さないがゆえに燃料電池コラムと呼ぶこともできる燃料電池スタック300は、ガスフローセパレータプレート又はバイポーラプレートと呼ぶこともできるインターコネクト400によって分離される複数の燃料電池310を含む。1つ又は複数のスタック300は、共通のエンクロージャ又は「ホットボックス」内で燃料電池発電システムの他の構成要素(例えば、1つ又は複数のアノード排ガス酸化剤、燃料改質器、流体導管及びマニホールドなど)と熱的に一体化されてよい。
【0027】
インターコネクト400は、導電性の金属材料から製造される。例えば、インターコネクト400はクロム合金、例えばCr-Fe合金を含んでよい。インターコネクト400は、典型的には、Cr粉末とFe粉末との混合物又はCr-Fe合金粉末であってよいCr-Fe粉末のプレス及び焼結を含む粉末冶金技術を用いて製作することにより、所望のサイズ及び形状のCr-Feインターコネクトを形成することができる(例えば、「ネットシェイプ」又は「ニアネットシェイプ」工程)。典型的なクロム合金インターコネクト400は、重量比で約90%を超えるクロム、例えば重量比で約94~96%(例えば95%)のクロムを含む。インターコネクト400はまた、重量比で約10%未満の鉄、例えば重量比で約4~6%(例えば5%)の鉄、重量比で約2%未満、例えば重量比で約0~1%の他の材料、例えばイットリウム又はイットリア、及び残留不純物又は不可避の不純物を含んでもよい。
【0028】
各燃料電池310は、固体酸化物電解質312、アノード314、及びカソード316を含んでよい。いくつかの実施形態では、アノード314及びカソード316は、電解質312に印刷可能である。他の実施形態では、導電層318、例えばニッケルメッシュが、アノード314と、隣接するインターコネクト400との間に配置されてよい。燃料電池310は、従来の燃料電池の燃料孔のような貫通孔を備えない。したがって、燃料電池310は、そのような貫通孔の存在に起因して発生し得るクラックを回避する。
【0029】
スタック300の最上部のインターコネクト400及び最下部のインターコネクト400は、それぞれ、空気又は燃料を、隣接する端部の燃料電池310に提供するための特徴を有する異なる形態の空気側エンドプレート又は燃料側エンドプレートであってよい。本明細書で使用されている場合、「インターコネクト」とは、2つの燃料電池310の間に配置されたインターコネクト、又はスタック端部に配置され、1つの燃料電池310のみに直接隣接するエンドプレートのいずれかを意味し得る。スタック300は、ASP及びそれに関連するエンドプレートを含まないので、スタック300は、2つのエンドプレートしか含み得ない。その結果、コラム内ASPの使用に関連したスタック寸法の偏差を回避することができる。
【0030】
スタック300は、サイドバッフル302、燃料プレナム350、及び圧縮アセンブリ306を含んでよい。サイドバッフル302は、セラミック材料で形成可能であり、積層された燃料電池310及びインターコネクト400を含む燃料電池スタック300の互いに反対側の側面に配置されてよい。サイドバッフル302は、圧縮アセンブリ306がスタック300に圧力を加えることができるように、燃料プレナム350と圧縮アセンブリ306とを接続してよい。サイドバッフル302は、各バッフルプレートが燃料電池スタック300の三辺の少なくとも一部を覆うような、湾曲したバッフルプレートであってよい。例えば、一方のバッフルプレートは、スタック300の燃料入口ライザ側を完全に覆い、スタックの隣接する表側及び裏側を部分的に覆ってよく、他方のバッフルプレートは、スタックの燃料出口ライザ側を完全に覆い、スタックの表側及び裏側の隣接する部分を部分的に覆う。スタックの表側及び裏側のカバーされていない残りの部分によって、空気がスタック300を貫流することが可能になる。湾曲したバッフルプレートは、スタックの片側のみを覆う従来のバッフルプレート38と比較して、スタックを通過する空気流の制御を改善する。燃料プレナム350は、スタック300の下方に配置されてよく、スタック300に水素含有燃料供給を提供するように構成されてよく、スタック300からアノード燃料排気を受け取ってよい。燃料プレナム350は、燃料プレナム350の下方に配置された燃料入口兼出口導管320に接続されてよい。
【0031】
各インターコネクト400は、スタック300内の隣接する燃料電池310同士を電気的に接続する。特に、インターコネクト400は、1つの燃料電池310のアノード電極を、隣接する燃料電池310のカソード電極に電気的に接続することができる。
図3Cに示すように、各インターコネクト400は、空気を第1の方向Aに流して、空気を、隣接する燃料電池310のカソードに提供することができるように構成することができる。また、各インターコネクト400は、燃料を第2の方向Fに流して、燃料を、隣接する燃料電池310のアノードに提供することができるように構成することもできる。方向AとFとは、互いに直交していてよいか、又は実質的に互いに直交していてよい。したがって、インターコネクト400をクロスフロー型のインターコネクトと呼ぶことができる。
【0032】
インターコネクト400は、インターコネクト400を貫通して延び、燃料分配のために構成された燃料孔を含んでよい。例えば、燃料孔は、1つ又は複数の燃料入口402、及びアノード排気出口404と呼ぶこともできる1つ又は複数の燃料(例えばアノード排気)出口404を含んでよい。燃料入口402及び燃料出口404は、燃料電池310の周囲の外側に配置可能である。したがって、燃料電池310は、燃料流れのための対応する貫通孔なしに形成可能である。燃料入口402の合計長さ及び/又は燃料出口404の合計長さは、インターコネクト400の対応する長さ、例えば方向Aに占める長さの少なくとも75%であってよい。
【0033】
一実施形態では、
図3Bに示すように、各インターコネクト400は、インターコネクト400のネック部分412によって分離された2つの燃料入口402を含む。しかし、2つよりも多くの燃料入口402が含まれてよく、例えば、2つ~4つのネック部分412によって分離された3つ~5つの入口が含まれてよい。一実施形態では、
図3Bに示すように、各インターコネクト400は、インターコネクト400のネック部分414によって分離された2つの燃料出口404を含む。しかし、2つよりも多くの燃料出口404が含まれてよく、例えば、2つ~4つのネック部分414によって分離された3つ~5つの出口が含まれてよい。
【0034】
互いに隣接するインターコネクト400の燃料入口402は、スタック300内で整列させられて、1つ又は複数の燃料入口ライザ403を形成することができる。互いに隣接するインターコネクト400の燃料出口404は、スタック300内で整列させられて、1つ又は複数の燃料出口ライザ405を形成することができる。燃料入口ライザ403は、燃料プレナム350から受け取った燃料を燃料電池310に分配するように構成することができる。燃料出口ライザ405は、燃料電池310から受け取ったアノード排気を燃料プレナム350に提供するように構成することができる。
【0035】
図1Aに示した関連技術の平坦なサイドバッフル38とは異なり、サイドバッフル302は、インターコネクト400の縁部を取り囲むように湾曲させることができる。特に、サイドバッフル302は、インターコネクト400の燃料入口402及び燃料出口404を取り囲むように配置することができる。したがって、サイドバッフルは、サイドバッフル302間で露出しかつ
図4A及び
図4Bに関して詳細に記載されるインターコネクト400の空気通路を通る空気流をより効率的に制御することができる。
【0036】
様々な実施形態では、スタック300は、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、又は少なくとも60個の燃料電池を含んでよく、これらの燃料電池には、燃料ライザ403,405のみを使用して燃料を提供することができる。換言すれば、従来の燃料電池システムと比較して、クロスフロー型の構成は、
図1Aに示されたASP又はスタックの外部燃料マニホールド、例えば外部導管32,34を必要とせずに、多数の燃料電池に燃料を提供することができる。
【0037】
各インターコネクト400は、導電性材料、例えばセルの固体酸化物電解質と同様の熱膨張係数(例えば0~10%の差)を有する金属合金(例えばクロム鉄合金)で製造されてよいか、又は同導電性材料を含んでよい。例えば、インターコネクト400は、金属(例えば、4~6重量%の鉄、選択的には1重量%以下のイットリウム及び平衡クロム合金などのクロム鉄合金)を含んでよく、所定の燃料電池310のアノード側、つまり燃料側と、隣接する燃料電池310のカソード側、つまり空気側とを電気的に接続してよい。アノードと各インターコネクト400との間に導電性接触層、例えばニッケル接触層(例えばニッケルメッシュ)が設けられてよい。別の任意の導電性接触層が、カソード電極と各インターコネクト400との間に設けられてよい。
【0038】
稼働中に酸化環境(例えば空気)にさらされるインターコネクト400の表面、例えばインターコネクト400のカソードに面する側は、インターコネクトの酸化クロム表面層の成長速度を減少させて、燃料電池のカソードを劣化させてしまうクロム蒸気種の蒸発を抑制するために、保護コーティング層でコーティングされていてよい。典型的には、ペロブスカイト、例えばランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)を含むことができるコーティング層を溶射コーティング又は浸漬コーティング工程を用いて形成することができる。代替的には、スピネル、例えば(Mn,Co)3O4スピネル(MCO)などの他の金属酸化物コーティングをLSMの代わりに又はLSMに加えて使用することができる。Mn2-xCo1+xO4(0≦x≦1)、又はz(Mn3O4)+(1-z)(Co3O4)と表記され、式中、(1/3≦z≦2/3)であるか、又は(Mn,Co)3O4と表記される組成を有する任意のスピネルを使用することができる。他の実施形態では、LSMとMCOとの混合層又はLSM層とMCO層とのスタックをコーティング層として使用してよい。
【0039】
図4A及び
図4Bは、本開示の様々な実施形態によるクロスフロー型のインターコネクト400の空気側及び燃料側をそれぞれ示す平面図である。
図4Aを参照すると、インターコネクト400の空気側は、載置された燃料電池310のカソードに空気を提供するように構成された空気通路408を少なくとも部分的に画定するように構成されたリブ406を含んでよい。インターコネクト400の空気側は、空気通路408を含む空気流れ範囲420と、空気流れ範囲420の互いに反対側の2つの側面に配置されたライザシール面422とに分けることができる。ライザシール面422の一方は、燃料入口402を取り囲んでよく、他方のライザシール面422は、燃料出口404を取り囲んでよい。空気通路408及びリブ406は、空気通路408及びリブ406がインターコネクト400の互いに反対側の周縁部で終端するように、インターコネクト400の空気側を完全に横切って延在可能である。換言すれば、スタック300に組み立てられたとき、空気通路408及びリブ406の互いに反対側の端部は、スタックの互いに反対側の(例えば表側及び裏側)外面に配置され、吹き付けられた空気がスタックを貫流することを可能にする。したがって、スタックは、外部に空気用のマニホールドを備えてよい。
【0040】
ライザシール面422上にライザシール424が配置されてよい。例えば、1つのライザシール424は、燃料入口402を取り囲んでよく、1つのライザシール424は、燃料出口404を取り囲んでよい。ライザシール424は、燃料及び/又はアノード排気が空気流れ範囲420に入って、燃料電池310のカソードに接触してしまうのを防止することができる。また、ライザシール424は、燃料が燃料電池スタック100(
図3A参照)から漏れ出してしまうのを防止するように機能することもできる。
【0041】
図4Bを参照すると、インターコネクト400の燃料側は、載置された燃料電池310のアノードに燃料を提供するように構成された燃料通路418を少なくとも部分的に画定するリブ416を含んでよい。インターコネクト400の燃料側は、燃料通路418を含む燃料流れ範囲430と、燃料流れ範囲430並びに燃料入口402及び燃料出口404を取り囲む周囲シール面432とに分けることができる。リブ416及び燃料通路418は、空気側通路408及びリブ406が延在する方向に対して直交する方向又は実質的に直交する方向に延在してよい。
【0042】
周囲シール面432上に枠状の周囲シール434が配置されてよい。周囲シール434は、空気が燃料流れ範囲430に入って、隣接する燃料電池310のアノードに接触してしまうのを防止するように構成可能である。また、周囲シール434は、燃料が燃料ライザ403,405を出て、燃料電池スタック300(
図3A及び
図3B参照)から漏れ出してしまうのを防止するように機能することができる。
【0043】
シール424,434は、ガラス又はセラミックのシール材を含んでよい。シール材は、低い導電率を有してよい。いくつかの実施形態では、シール424,434は、インターコネクト400上にシール材の1つ又は複数の層を印刷し、その後、焼結することによって形成可能である。
【0044】
燃料流構造体
図1Aに示したように、従来の燃料電池システムでは金属のアノードスプリッタプレート36を介して、燃料が燃料電池スタックに提供されかつ燃料電池スタックから燃料排気を受け取る。アノードスプリッタプレート36は、燃料入口導管32及びアノード排気導管34を介して互いに流体接続されている。導管32,34には、アノードスプリッタプレート36と、誘電破壊手段として働くセラミックコンポーネントとに溶接された金属管が含まれる。このように、アノードスプリッタプレート36同士の流体接続は、高価な誘電体コンポーネントと、現場でのかなりの量の溶接とに依存している。よって、燃料を燃料電池スタックに提供しかつ燃料電池スタックから燃料排気を受け取るための、より費用対効果の高い方法が必要とされている。
【0045】
図5Aは、本開示の様々な実施形態による燃料流構造体500を上から見たところを示す分解斜視図であり、
図5Bは、
図5Aの燃料流構造体500を下から見たところを示す分解斜視図である。
図5A及び
図5Bを参照すると、燃料流構造体500には、燃料導管320と燃料プレナム350とが含まれている。燃料プレナム350は、シールリング354と、ガラス又はガラスセラミックシール356と、ベースプレート360と、誘電体層364と、カバープレート366と、シールプレート370と、マニホールドプレート380とを有していてよい。
【0046】
燃料プレナム350は、燃料導管320と共に流体密な接続部を形成するように構成され得る。燃料導管320は、燃料を燃料プレナム350に提供するように構成された入口導管320Aと、燃料プレナム350から燃料排気を受け取るように構成された出口導管320Bとを含んでいてよい。燃料導管320は、金属管322と、金属ベローズ324と、誘電体リング326とを有していてよい。金属管322は、例えばろう接、溶接又はプレス嵌めにより、ベローズ324と誘電体リング326とに結合され得る。ベローズ324は、燃料電池コンポーネント間の熱膨張係数の差を、変形して応力を吸収することで補償するように動作し得る。択一的な実施形態では、金属管322は、ベローズ324に結合されるよりもむしろ、金属管322自体が全体的にベローズを有しているか又はベローズから製造されていてもよく、これにより、金属管/ベローズ322は、誘電体リング326に直接に結合され得る。誘電体リング326は、誘電破壊手段として働くことができ、電流が燃料導管320を通って案内され、燃料プレナム350上に配置された燃料電池スタックを電気的に短絡することを防ぐ。
【0047】
ベースプレート360、誘電体層364、及びカバープレート366は、それぞれ入口孔361A,365A,367A及び出口孔361B,365B,367Bを有していてよく、これらは各プレートと層とを貫通して延びる貫通孔であってよい。ベースプレート360は、
図1Aに示したようなセラミックコネクタ39と嵌合するように構成された複数の突起362を有していてよい。ベースプレート360及びカバープレート366は、高密度化された誘電体材料で形成され得る。例えば、ベースプレート360及びカバープレート366は、実質的に非多孔質で電気を絶縁するセラミック材料、例えばアルミナ、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)(例えば3%のイットリア安定化ジルコニア)等で形成され得る。ベースプレート360及びカバープレート366は、誘電体層364に支持手段を提供するように構成された剛性のプレートであってよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、誘電体層364は、ベースプレート360及び/又はカバープレート366のセラミック材料よりも高い誘電率を有するセラミック材料で形成され得る。換言すると、誘電体層364は、絶縁破壊して導電性になることなしに、ベースプレート360及びカバープレート366よりも高い最大電界に耐えることができてよい(すなわち、より高い破壊電圧を有している)。例えば、誘電体層364は、高温での電気絶縁性が高い多孔質のセラミックヤーン又はセラミック織物、例えば3M社から入手可能なネクステルセラミック織物番号312、440又は610の1つ又は複数の層で形成され得る。
【0049】
別の実施形態では、誘電体層364は、セラミック基複合材料(CMC)、又は表面積:体積の比が高いことにより高い絶縁耐力を有する比較可能な任意の材料で形成され得る。CMCは、例えば、酸化アルミニウム(例えばアルミナ)、酸化ジルコニウム又は炭化ケイ素の母材を含んでいてよい。別の母材材料が同様に選択されてもよい。繊維は、アルミナ、炭素、炭化ケイ素、又は別の適切な任意の材料から製造され得る。1つの実施形態では、母材と繊維とは両方共、アルミナを含んでいてよい。よって、誘電体層364は、燃料プレナム350を介した電気伝導を防ぐための誘電破壊手段として働くように構成され得る。
【0050】
カバープレート366及びベースプレート360は、誘電体層364よりも高い密度を有していてよい。例えば、カバープレート366及び/又はベースプレート360は、十分に高密度のセラミック材料、例えば97%~99.5%の高密度アルミナ等で形成され得る。カバープレート366は、シールプレート370を誘電体層364から隔離するように構成されている。このように、カバープレート366は、シールプレート370から誘電体層364内への金属種の拡散を防ぐように構成され得る。例えば、カバープレート366は、シールプレート370から誘電体層364内へのクロム種(例えば酸化クロム)の拡散を低減及び/又は防止することができ、これにより、クロム種が誘電体層364の絶縁耐力を低下させること、及び/又は、さもなければ誘電体層364の構造的な完全性を低下させることが防止される。
【0051】
シールプレート370及びマニホールドプレート380は、燃料導管320に簡単に溶接され得る金属又は金属合金、例えばステンレス鋼で形成され得る。例えば、シールプレート370及び/又はマニホールドプレート380は、446ステンレス鋼等で形成され得る。446ステンレス鋼は、23~27重量%のCr、1.5重量%以下のMn、1重量%以下のSi、Ni、C、P及び/又はSのうちの1つ以上、及び残りのFeを含んでいる。いくつかの実施形態では、シールプレート370及び/又はマニホールドプレート380は、複数の金属サブプレートを共にろう接することにより形成され得る。金属サブプレートを用いて形成された実施形態では、ろう接プロセスの前又は後に、サブプレートはそれぞれ様々な構造体、例えば孔及び/又は通路を形成するために切断され得る。いくつかの実施形態では、このような構造体を切断するためにレーザ切断等が使用され得る。
【0052】
シールプレート370及びマニホールドプレート380はそれぞれ、片面又は両面に、例えば少なくとも、プレート370,380の互いに面した面に、コーティング372,382を有していてよい。コーティング372,382は、約75μm~約200μm、例えば約100μm~約175μm、約110μm~約140μmの範囲の厚さ、又は約120μmの厚さを有していてよい。典型的には、コーティング372,382は、金属酸化物材料、例えばペロブスカイト材料、例えばランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)を含んでいてよい。択一的に、LSMに代えて又は加えて、別の金属酸化物コーティング、例えばスピネル、例えば(Mn,Co)3O4スピネル(MCO)が使用されてもよい。Mn2-xCo1+xO4(0≦x≦1)という組成を有するか又はz(Mn3O4)+(1-z)(Co3O4)と表記され、(1/3≦z≦2/3)であるか、又は(Mn,Co)3O4と表記される任意のスピネルが使用されてもよい。別の実施形態では、コーティング372,382として、LSMとMCOとの混合層、又はLSM層及びMCO層の積層体が使用され得る。コーティング372,382は、溶射コーティングプロセス又は浸漬コーティングプロセスを用いて形成され得、シールプレート370及びマニホールドプレート380の実質的に全ての外面に被着され得る。
【0053】
シールプレート370は、入口孔374Aと出口孔374Bとを有していてよく、これらはシールプレート370の上面と下面との間に延びる貫通孔であってよい。マニホールドプレート380は、マニホールドプレート380のそれぞれ反対の側において、マニホールドプレート380の下面に形成された下部入口孔384A及び下部出口孔384B並びにマニホールドプレート380の上面に形成された上部入口孔390A及び上部出口孔390Bを有していてよい。3つの上部入口孔390Aと3つの上部出口孔390Bとが図示されている一方で、本開示は如何なる特定の数の上部入口孔390A及び上部出口孔390Bにも限定されていない。例えば、マニホールドプレート380は、対応する燃料電池スタックのインターコネクト400内に含まれる燃料入口及び燃料出口の数に応じて、2つ、4つ、又は5つ以上の上部入口孔390Aを有していてよく、かつ2つ、4つ、又は5つ以上の上部出口孔390Bを有していてよい。例えば、インターコネクトが3つの入口と3つの出口とを有している場合、マニホールドプレート380は3つの入口孔390Aと、3つの出口孔390Bとを有している。
【0054】
ベースプレート360と、誘電体層364と、カバープレート366と、シールプレート370と、マニホールドプレート380とは互いに積層されてよく、これにより、入口孔361A,365A,367A,374A,384Aが整合させられて1つの入口導管通路352Aを形成し、かつ出口孔361B,365B,367B,374B,384Bが整合させられて1つの出口導管通路352Bを形成することになる。入口導管320A及び出口導管320Bは、それぞれ入口導管通路352A及び出口導管通路352B内に挿入され得、これにより、入口導管320A及び出口導管320Bの端部328は、シールプレート370の上面まで延びていてよく、及び/又は、シールプレート370の上面を越えて延びていてよい。
【0055】
図6Aは、シールプレート370の上面図であり、
図6Bは、
図6Aの線L3に沿った横断面図である。
【0056】
入口孔374A及び出口孔374Bの周りには、それぞれ入口シール領域378A及び出口シール領域378Bが形成され得る。このように、入口シール領域378A及び出口シール領域378Bは、コーティング372の厚さに等しい深さD2、例えば約120μmの深さD2を有していてよい。
【0057】
図7Aは、マニホールドプレート380の下面図であり、
図7Bは、
図7Aの線L4に沿った横断面図であり、
図7Cは、本開示の様々な実施形態によるマニホールドプレート380を概略的に示す上面図である。
図7A~
図7Cを参照すると、マニホールドプレート380の下面には、それぞれ下部入口孔384A及び下部出口孔384Bを取り囲む入口凹部386A及び出口凹部386Bが形成され得る。入口凹部386A及び出口凹部386Bは、約0.5mm~約6mmの範囲の深さD3を有していてよい。
【0058】
マニホールドプレート380の下面にコーティング382が被着されていない領域において、入口凹部386A及び出口凹部386Bの周りには、それぞれ入口シール領域388A及び出口シール領域388Bが形成され得る。このように、入口シール領域388A及び出口シール領域388Bは、コーティング382の厚さに等しい深さD4、例えば約120μmの深さD4を有していてよい。
【0059】
マニホールドプレート380は、複数の内部入口通路392A及び内部出口通路392Bを有していてもよい。入口通路392Aは、下部入口孔384Aを各上部入口孔390Aに流体接続していてよい。出口通路392Bは、下部出口孔384Bを各上部出口孔390Bに流体接続していてよい。入口通路392Aは、共通の下部入口孔384Aから各上部入口孔390Aに、実質的に等量の燃料(例えば等しい流量の燃料)が供給されるように構成され得る。出口通路392Bは、各上部出口孔390Bから共通の下部出口孔384Bに、実質的に等量の燃料排気が供給されるように構成され得る。
【0060】
追加的に、マニホールドプレート380は、電気コンタクト381を有していてもよい。マニホールドプレート380は、燃料電池スタックの下部に電気的に接続されていてよく、電気コンタクト381は、マニホールドプレート380から横方向に延びていてよく、マニホールドプレート380を集電回路に接続するための接続点を提供するように構成され得る。
【0061】
図8Aは、組み立てられた燃料プレナム350と入口導管320Aとを示す、
図5Aの線L1に沿った鉛直方向横断面図であり、
図8Bは、組み立てられた燃料プレナム350と出口導管320Bとを示す、
図5Aの線L2に沿った鉛直方向横断面図である。
【0062】
図5A、
図5B、
図8A及び
図8Bを参照すると、ベースプレート360と、誘電体層364と、カバープレート366と、シールプレート370と、マニホールドプレート380とが互いに積層されており、これにより、入口導管通路352A及び出口導管通路352Bが形成されている。入口導管320Aは、下部入口孔384Aに向かって入口導管通路352A内に挿入され得る。出口導管320Bは、下部出口孔384Bに向かって出口導管通路352B内に挿入され得る。
【0063】
マニホールドプレート380の下面の入口凹部386A内で、入口導管320Aの周りには、第1のシールリング354Aが配置され得る。マニホールドプレート380の下面の出口凹部386B内で、出口導管320Bの周りには、第2のシールリング354Bが配置され得る。入口導管320A及び出口導管320Bは、シールプレート370に溶接され得る。特に、溶接プロセスには、入口導管320A及び出口導管320Bへの第1のシールリング354A及び第2のシールリング354Bの溶接並びにシールプレート370の表面への第1のシールリング354A及び第2のシールリング354Bの溶接が含まれていてよく、これにより、入口導管320A・出口導管320Bとシールプレート370との間に流体密なシールが形成されていることを保証する。
【0064】
シールプレート370の入口シール領域378Aには、第1のガラス又はガラスセラミックシール356Aが配置され得、マニホールドプレート380の入口シール領域388Aには、第2のガラス又はガラスセラミックシール356Bが配置され得る。シールプレート370の出口シール領域378Bには、第3のガラス又はガラスセラミックシール356Cが配置され得、マニホールドプレート380の出口シール領域388Bには、第4のガラス又はガラスセラミックシール356Dが配置され得る。ただし別の実施形態では、単一のガラス又はガラスセラミックシールが使用されてもよい。シール356A~356Dは、シール356A~356Dを軟化させるように加熱されてよく、これによりシール356A~356Dは、シールプレート370をマニホールドプレート380に物理的に結合する流体密な結合部を形成する。
【0065】
入口シール領域378A,388Aはオーバラップして1つの入口シール領域358Aを形成していてよく、出口シール領域378B,388Bはオーバラップして1つの出口シール領域358Bを形成していてよい。第1のシール356Aと第2のシール356Bとは、入口シール領域358A内で互いに積層されていてよく、第3のシール356Cと第4のシール356Dとは、出口シール領域358B内で互いに積層されていてよい。コーティング372,382は、互いに積層されていてよい。このように、入口シール領域358A及び出口シール領域358Bの高さは、コーティング372,382の厚さの組合せに等しくなっていてよい。
【0066】
入口シール領域358A及び出口シール領域358Bは、ガラス又はガラスセラミックシール356A~356Dが燃料電池システム動作温度に加熱された場合に横方向に広がるためのスペースを提供することができ、これにより、時間にわたりガラス又はガラスセラミックシール356A~356Dに加えられる応力を低下させる。追加的に、シールプレート370とマニホールドプレート380とは同じ材料で形成され得るため、シールプレート370とマニホールドプレート380とは、一致した熱膨張係数(CTE)を有していてよい。したがって、時間にわたりガラス又はガラスセラミックシール356A~356Dに加えられる応力を、さらに低下させることができる。
【0067】
ガラス又はガラスセラミックシール356A~356Dは、高温ガラス又はガラスセラミック材料、例えばシリケート又はアルミノシリケートガラス又はガラスセラミック材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミックシール356A~356Bは、SiO2、BaO、CaO、Al2O3、K2O、及び/又はB2O3を含むシリケートガラス又はガラスセラミックシール材で形成され得る。例えば、シール材は、約40重量%~約60重量%、例えば約45重量%~約55重量%の範囲の量のSiO2、約10重量%~約35重量%、例えば約15重量%~約30重量%の範囲の量のBaO、約5重量%~約20重量%、例えば約7重量%~約16重量%の範囲の量のCaO、約10重量%~約20重量%、例えば約13重量%~約15重量%の範囲の量のAl2O3、及び約0.25重量%~約7重量%、例えば約0.5重量%~約5.5重量%の範囲の量のB2O3を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、シール材は追加的に、約0.5重量%~約1.5重量%、例えば約0.75重量%~約1.25重量%の範囲の量のK2Oを含んでいてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミックシール356A~356Dは、SiO2、B2O3、Al2O3、CaO、MgO、La2O3、BaO、及び/又はSrOを含むシリケートガラス又はガラスセラミックシール材で形成され得る。例えば、シール材は、約30重量%~約60重量%、例えば約35重量%~約55重量%の範囲の量のSiO2、約0.5重量%~約15重量%、例えば約1重量%~約12重量%の範囲の量のB2O3、約0.5重量%~約5重量%、例えば約1重量%~約4重量%の範囲の量のAl2O3、約2重量%~約30重量%、例えば約5重量%~約25重量%の範囲の量のCaO、約2重量%~約25重量%、例えば約5重量%~約20重量%の範囲の量のMgO、及び約2重量%~約12重量%、例えば約5重量%~約10重量%の範囲の量のLa2O3を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、シール材は追加的に、約0重量%~約35重量%、例えば約0重量%~約30重量%、又は約0.5重量%~約30%の、約20重量%~約30重量%を含む範囲の量のBaO、及び/又は約0重量%~約20重量%、例えば約0重量%~約15重量%、又は約0.5重量%~約15重量%の、約10重量%~約15重量%を含む範囲の量のSrOを含んでいてよい。いくつかの実施形態では、シール材は追加的に、ゼロではない量の、例えば少なくとも0.5重量%のBaO及び/又はSrOのうちの少なくとも1つ、例えばゼロではない量の、例えば少なくとも0.5重量%のBaO及びSrOの両方を含んでいてもよい。ただし、別の適切なシール材が使用されてもよい。
【0069】
1つの燃料電池スタック、例えば
図3A~
図3Cの燃料電池スタック300に組み立てられると、上部入口孔390Aは、スタック300のインターコネクト400の燃料入口402に流体接続され得、上部出口孔390Bは、
図4Aに示したようなインターコネクト400の燃料出口404に流体接続され得る。流体密な接続部を提供するためには、例えば、上部入口孔390Aと、隣接するインターコネクト400の燃料入口402との間にガラス又はガラスセラミックシール424が配置され得、上部出口孔390Bと、隣接するインターコネクト400の燃料出口404との間にガラス又はガラスセラミックシール424が配置され得る。
【0070】
上に、様々な実施形態で固体酸化物形燃料電池を説明したが、各実施形態には任意の別の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形、リン酸形又はPEM形の燃料電池が含まれていてもよい。
【0071】
前述の方法の説明は、単に例示的な例として提供されたにすぎず、様々な実施形態の工程が提示された順序で実行されなければならないことを要求又は暗示することを意図するものではない。当業者であれば理解できるように、前述の実施形態の工程の順序は、任意の順序で実行可能である。「その後」、「次に」、「次」などの単語は、必ずしも工程の順序を限定することを意図したものではなく、これらの単語は、方法の説明を通して読者をガイドするために使用され得る。さらに、例えば冠詞「a」、「an」又は「the」を使用した請求項の単数形の要素への言及は、要素を単数形に限定すると解釈されるべきではない。
【0072】
さらに、本明細書に記載される任意の実施形態の任意の工程又は構成要素は、他の任意の実施形態で使用可能である。
【0073】
開示された態様の上記説明は、当業者が本発明を製造又は使用することを可能にするために提供される。これらの態様に対する様々な変形形態は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義される一般原則は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲に従うものとする。
【外国語明細書】