(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188003
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電気フィードスルー
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H01R9/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092077
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】21178141
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20 2021 103 079.8
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ベルクロ
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ドリス ケレラー
(72)【発明者】
【氏名】ウィー キアト チャイ
【テーマコード(参考)】
5E086
【Fターム(参考)】
5E086PP14
5E086PP17
5E086PP23
5E086PP37
5E086PP39
5E086PP42
5E086QQ10
5E086QQ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高密度の配置と同時に電気絶縁、気密性および長期信頼性などの封止特性を最適化する。
【解決手段】電気フィードスルー10であって、第1の側22と、反対側の第2の側24と、第1の側22から第2の側24へ貫通して延びる少なくとも1つのスルーホールとを有する基体20と、スルーホール内に収容されており、基体20の第1の側22の第1の表面と、反対側の基体の第2の側24の第2の表面とを有する絶縁材料30と、絶縁材料30を貫通して延びており、絶縁材料30の第1の表面22の位置における第1の直径DEC1と、絶縁材料30の第2の表面24の位置における第2の直径DEC2とを有する電気導体40とを有しており、電気導体40の第1の直径DEC1は、電気導体40の第2の直径DEC2よりも大きくなっている、電気フィードスルー10に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(20)と絶縁材料(30)と電気導体(40)とを有する電気フィードスルー(10)であって、
前記基体(20)は、第1の側(22)と、反対側の第2の側(24)と、前記第1の側(22)から前記第2の側(24)へ貫通して延びる少なくとも1つのスルーホール(26)と、を有し、
前記絶縁材料(30)は、前記少なくとも1つのスルーホール(26)内に収容されており、前記基体(20)の前記第1の側(22)の第1の表面(32)と、反対側の前記基体(20)の前記第2の側(24)の第2の表面(34)と、を有し、
前記電気導体(40)は、前記絶縁材料(30)を貫通して延びており、前記絶縁材料(30)の前記第1の表面(32)の位置における第1の直径(DEC1)と、前記絶縁材料(30)の前記第2の表面(34)の位置における第2の直径(DEC2)と、を有し、
前記電気導体(40)の前記第1の直径(DEC1)は、前記電気導体(40)の前記第2の直径(DEC2)よりも大きくなっている、
電気フィードスルー(10)。
【請求項2】
前記電気導体(40)は、前記基体(20)の前記第1の側(22)において前記絶縁材料(30)の前記第1の表面(32)と同一平面で終端しているか、または前記絶縁材料(30)から500μm未満、好適には250μm未満、特に好適には100μm未満だけずらされていて、これにより特に、前記絶縁材料(30)の前記第1の表面(32)は、前記電気導体(40)と同一平面になるように研削されているか、または好適には前記電気導体(40)と同一平面になるように移行するメニスカスを形成しており、かつ/または
前記電気導体(40)は、前記基体(20)の前記第2の側(24)において前記絶縁材料(30)の前記第2の表面(34)から突出しており、前記突出は、好適には500μm超、特に好適には1mm超である、
請求項1記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項3】
前記電気導体(40)は、前記第1の直径(DEC1)の位置を含みかつ前記絶縁材料(30)の前記第1の表面(32)から前記絶縁材料(30)内に延びる第1のセクション(42)を有しており、前記電気導体(40)の前記第1のセクション(42)は、好適には一定の直径を有しており、かつ/または
前記電気導体(40)は、前記第2の直径(DEC2)の位置を含みかつ前記絶縁材料(30)の前記第2の表面(34)から前記絶縁材料(30)内に延びる第2のセクション(44)を有しており、前記電気導体(40)の前記第2のセクション(44)は、好適には一定の直径を有しており、かつ/または
前記電気導体(40)は、前記第1の直径(DEC1)の位置と前記第2の直径(DEC2)の位置との間に先細セクション(46)を有しており、前記先細セクションは、先細になる直径を有しており、前記先細セクション(46)は、好適には前記絶縁材料(30)内で前記第1のセクション(42)と前記第2のセクション(44)との間に配置されている、
請求項1または2記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項4】
前記電気導体(40)は、前記第1の直径(DEC1)の位置と前記第2の直径(DEC2)の位置との間の長さ(L)を有しており、前記長さ(L)は、好適には0.2mm~10mmの範囲、特に好適には0.3mm~5mmの範囲、さらにより好適には1mm~3mmの範囲にあり、かつ/または
前記電気導体(40)の前記第1のセクション(42)は、長さ(L1)を有しており、かつ/または、前記電気導体(40)の前記先細セクション(46)は、長さ(L3)を有しており、前記長さL1、前記長さL3または前記長さL1+前記長さL3は、少なくとも0.1mm、好適には少なくとも0.3mm、特に好適には少なくとも0.6mmであり、かつ/または
前記電気導体(40)の前記第1のセクション(42)は、長さ(L1)を有しており、かつ/または、前記電気導体(40)の前記先細セクション(46)は、長さ(L3)を有しており、比L1/L、比L3/Lまたは比(L1+L3)/Lは、0.7より小さく、好適には0.5より小さく、特に好適には0.35より小さく、かつ/または
前記電気導体(40)の前記第2のセクション(44)は、長さ(L2)を有しており、比L2/Lは、0.3より大きく、好適には0.5より大きく、特に好適には0.65より大きく、かつ/または
前記電気導体(40)の前記先細セクション(46)は、長さ(L3)を有しており、比L3/L1は、1.25~3.0、好適には1.5~2.5、特に好適には1.75~2.25である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項5】
前記電気導体(40)の前記第1の直径(DEC1)と前記第2の直径(DEC2)との比DEC1/DEC2は、1.1~10、好適には1.25~3.5、より好適には1.5~3.0、特に好適には1.75~2.75であり、かつ/または
前記第1の直径DEC1は、少なくとも0.8mm、好適には少なくとも1mm、特に好適には少なくとも1.5mmであり、かつ/または
前記第2の直径DEC2は、最大1mm、好適には最大0.8mm、特に好適には最大0.5mmであり、かつ/または
前記電気導体(40)の前記先細セクション(46)は、DEC1からDEC2に向かって先細になる直径を有しており、かつ/または
前記電気導体(40)の前記先細セクション(46)は、線形に先細になる直径を有している、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項6】
前記電気導体(40)は、前記絶縁材料(30)とのより強力な機械的結合のために溝(48)を有しており、
前記溝(48)は、好適には前記電気導体(40)の前記第2のセクション(44)に配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項7】
前記電気フィードスルー(10)は、少なくとも2つのスルーホール(26)が貫通して延びている基体(20)を有しており、前記基体は、第1の側(22)と、反対側の第2の側(24)と、を有しており、
前記少なくとも2つのスルーホール(26)の各々に絶縁材料(30)が収容されており、各絶縁材料(30)は、前記基体(20)の前記第1の側(22)の第1の表面(32)と、反対側の前記基体(20)の前記第2の側(24)の第2の表面(34)と、を有しており、
前記少なくとも2つのスルーホール(26)のそれぞれの中で、電気導体(40)が前記各絶縁材料(30)を貫通して延びている、
好適には請求項1から6までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項8】
少なくとも2つの電気導体(40)は、前記絶縁材料(30)または各絶縁材料(30)を貫通して延びており、かつ/または
2つの電気導体(40)の間の距離(ΔΕC)は、50mm未満、好適には10mm未満、特に好適には5mm未満であり、かつ/または
2つの電気導体(40)の間の距離(ΔΕC)は、100μm超、好適には150μm超、特に好適には200μm超であり、かつ/または
1つの電気導体(40)と前記基体(20)との間の距離(ΔΕCBB)は、5mm未満、好適には2mm未満、特に好適には1mm未満であり、かつ/または
1つの電気導体(40)と前記基体(20)との間の距離(ΔΕCBB)は、100μm超、好適には150μm超、特に好適には200μm超であり、かつ/または
前記基体(20)の少なくとも一方の側における、1つのスルーホール(26)内に収容された前記絶縁材料(30)の表面積と、各前記スルーホール(26)内の1つまたは複数の前記電気導体(40)の表面積と、の比は、15未満、好適には10未満、特に好適には5未満、または4未満である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項9】
前記電気導体(40)または各電気導体(40)は、前記各絶縁材料(30)の前記第1の表面(32)の位置において第1の直径(DEC1,DEC1’)を有しており、かつ、前記各絶縁材料(30)の前記第2の表面(34)の位置において第2の直径(DEC2,DEC2’)を有しており、かつ
前記スルーホール(26)または各スルーホール(26)は、直径(DTH,DTH’)を有しており、前記直径(DTH,DTH’)は、好適には前記基体(20)全体にわたり一定であるか、または好適には2°~10°の範囲内で先細になって最大直径(DTH,DTH’)を有しており、かつ
少なくとも1つのスルーホールの比DTH/DEC1は、最大1.5、好適には最大1.3、特に好適には最大1.2、または最大1.11であり、かつ/または
少なくとも1つのスルーホールの比DTH/DEC2は、最大10、好適には最大5、特に好適には最大2.5である、
請求項1から8までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項10】
前記少なくとも2つのスルーホール(26)は、それぞれ、好適には前記基体(20)全体にわたり一定の直径(DTH)を有しており、かつ
前記少なくとも2つのスルーホール(26)は、それぞれ、半間隔直径(DBB)を規定しており、前記半間隔直径(DBB)は、隣り合うスルーホール(26)の間の前記基体(20)における間隔(ΔΤΗ)に、前記各スルーホール(26)の直径(DTH)を加算したものであり、かつ
少なくとも1つのスルーホールの比DBB/DTHは、2.0より小さく、好適には1.8より小さく、特に好適には1.7より小さく、または1.6より小さく、または1.5より小さく、または1.4より小さく、または1.3より小さく、または1.2より小さく、または1.1より小さい、
請求項1から9までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項11】
前記絶縁材料(30)は、前記基体(20)の前記第2の側(24)の前記第2の表面(34)の位置において接触圧力(CP2)下にあり、CP2は、正の接触圧力であるか、またはCP2は、30MPa未満、好適には20MPa未満、特に好適には10MPa未満、または5MPa未満の絶対値を有する負の接触圧力であり、かつ/または
前記絶縁材料(30)は、前記基体(20)の前記第1の側(22)の前記第1の表面(32)の位置において接触圧力(CP1)下にあり、CP1は、1MPa超、好適には5MPa超、特に好適には10MPa超の絶対値を有する負の接触圧力である、
請求項1から10までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項12】
前記絶縁材料(30)は、155MPa未満、好適には70MPa未満、より好適には50MPa未満、より好適には40MPa未満、特に好適には20MPa未満の絶対値を有する正の最高接触圧力(CP3)下にある、
請求項1から11までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項13】
前記基体(20)は、5×10-6K-1~25×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~20×10-6K-1の熱膨張係数を有しており、かつ/または
前記絶縁材料(30)は、3×10-6K-1~15×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~12×10-6K-1の熱膨張係数を有しており、かつ/または
前記電気導体(40)は、3×10-6K-1~25×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~20×10-6K-1の熱膨張係数を有しており、かつ/または
前記基体(20)は、以下の材料、すなわち:金属、オーステナイト系ステンレス鋼、特にAISI300系列、フェライト系ステンレス鋼、特にAISI400系列、チタン、インコネル、二相系ステンレス鋼、ニオブ、上述した金属のうちの1つの合金、例えばチタン合金、セラミックのうちの少なくとも1つを含んでおり、かつ/または
前記絶縁材料(30)は、以下の材料、すなわち:ガラス、ガラスセラミック、セラミックのうちの少なくとも1つを含んでおり、かつ/または
前記電気導体(40)は、以下の材料、すなわち:金属、金属合金、ステンレス鋼300系列、ステンレス鋼400系列、チタン、NiFe、NiFeCo合金、ニオブ、銅、タングステン、モリブデン、白金、上述した金属のうちの1つの合金、例えばチタン合金または銅合金のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から12までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項14】
前記基体(20)および前記電気導体(40)は、非アレルギー性材料のみを含んでおり、
前記基体(20)および前記電気導体(40)から好適にはニッケルが浸出しない、
請求項1から13までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の電気フィードスルー(10)を有する、電子装置、特にウェアラブル用の充電ポートまたは医療用ポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのスルーホールを備えた外側基体と、スルーホール内に収容された絶縁材料と、絶縁材料を貫通して延びる内側電気導体と、を含む電気フィードスルーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気フィードスルーは、気密封止された環境またはハウジング内へ電気導体をガイドするために使用することができる。この目的のために、外側基体と、絶縁材料と、絶縁された内側電気導体と、の間に、封止接続部が設けられている。このようなフィードスルーは、例えばガラス金属シール(GTMS)として設計することができ、この場合、絶縁材料はガラスから製造され、基体および電気導体は金属から製造される。
【0003】
電気フィードスルー、特にGTMSは、例えば、エレクトロニクスおよび電気工学における広範な用途をカバーする。用途の幾つかの例は、コネクタ、例えばウェアラブル用の充電ポート、コンシューマエレクトロニクスデバイス、プラットフォーム用途、医療装置、例えば、ペースメーカーだけでなく、オイルおよびガス用コンポーネントなどの、過酷な環境のためのコンポーネントである。
【0004】
電気フィードスルー、特にGTMSの所望の封止特性は、特に、腐食性物質、振動または温度変動に対するような特定の環境において効果的な電気絶縁、気密性、長期信頼性および/または耐性である。
【0005】
これらの特性を十分な品質で達成することは、電気導体がフィードスルーの全体寸法に対して比較的大きな直径を有することが望まれる設計および/または電気導体が高密度に配置される設計では困難になる可能性がある。エレクトロニクス用途において、このことは例えば、小さな寸法のフィードスルーが所望される一方で、同時に特定の接続基準が満たされねばならない場合である。別の例は、電気導体が比較的大きな着床面積および/または高密度を提供することが望まれる充電ポートであってよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、スルーホールおよび/または基体の寸法に関して比較的大きな直径を有しかつ/または高密度に配置された電気導体のための電気フィードスルーを提供する一方で、同時に、電気絶縁、気密性および長期信頼性などの封止特性を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、電気フィードスルーであって、第1の側と、反対側の第2の側と、第1の側から前記第2の側へ貫通して延びる少なくとも1つのスルーホールとを有する基体と、少なくとも1つのスルーホール内に収容されており、基体の第1の側の第1の表面と、反対側の基体の第2の側の第2の表面とを有する絶縁材料と、絶縁材料を貫通して延びており、絶縁材料の第1の表面の位置における第1の直径と、絶縁材料の第2の表面の位置における第2の直径とを有する電気導体とを有しており、電気導体の第1の直径は、電気導体の第2の直径よりも大きくなっている、電気フィードスルーを提供する。
【0008】
換言すると、電気導体の直径は、基体の第1の側においてより大きくなっており、基体の第2の側においてより小さくなっている。これにより、所望の導体寸法に関して大径側を最適化することが可能となる一方で、小径側および2つの直径の間の電気導体のプロファイルを、絶縁性、気密性、長期信頼性および/または物理的もしくは化学的影響に対する耐性などの封止特性に関して最適化することができる。
【0009】
電気導体は、基体の第1の側において、絶縁材料の第1の表面と同一平面で終端していてよいか、または絶縁材料の第1の表面から500μm未満、好適には250μm未満、特に好適には100μm未満だけずらされていてよく、これにより特に、絶縁材料の第1の表面は、電気導体と同一平面になるように研削されているか、または好適には電気導体と同一平面になるように移行するメニスカスを形成している。ずらされている場合、電気導体は絶縁材料の第1の表面に対して突出しているか、または凹んでいてよい。
【0010】
追加的または択一的に、電気導体は、基体の第2の側において絶縁材料の第2の表面から突出していてもよく、この場合、突出は、好適には500μm超、特に好適には1mm超、または2mm超である。
【0011】
電気導体は、基体の第1の側における第1の直径、基体の第2の側における第2の直径、および/またはこれら2つの直径の間の直径プロファイルを含む電気導体のプロファイルを規定する1つ以上の別個のセクションを有していてよい。
【0012】
例えば、電気導体は、第1の直径の位置を含みかつ絶縁材料の第1の表面から絶縁材料内に延びる第1のセクションを有していてよく、この場合、電気導体の第1のセクションは、好適には一定の直径を有している。
【0013】
追加的または択一的に、電気導体は、第2の直径の位置を含みかつ絶縁材料の第2の表面から絶縁材料内に延びる第2のセクションを有していてよく、この場合、電気導体の第2のセクションは、好適には一定の直径を有している。
【0014】
追加的または択一的に、電気導体は、第1の直径の位置と第2の直径の位置との間に先細セクションを有していてよく、この場合、先細セクションは、先細になる直径を有しており、先細セクションは、好適には絶縁材料内で第1のセクションと第2のセクションとの間に位置している。
【0015】
上述した第1のセクション、第2のセクションおよび先細セクションは、個別に存在しているか、または任意に組み合わせられて存在していてよい。例えば電気導体は、段状の移行部を備える、すなわち、間に先細セクションを有さない、第1および第2のセクションを有していてよい。別の例では、電気導体は、一定の直径を有する第1のセクションを有していてよく、第1のセクションには先細セクションが続いている。さらに別の例では、電気導体は先細セクションを有していてよく、この先細セクションには一定の直径を有する第2のセクションが続いており、これはダイレクトテーパードケースと呼ばれることもある。導体が先細セクションのみを備えることも可能であり、これはフルテーパードケースと呼ばれることもある。好適には、基体の第1の側から基体の第2の側へ電気導体の直径が減少することにより、周囲の絶縁材料の量が第1の側から第2の側に向かって増加し得る。
【0016】
電気導体は、第1の直径の位置と第2の直径の位置との間の長さLを有していてよく、この場合、長さLは、好適には0.2mm~10mmの範囲、特に好適には0.3mm~5mmの範囲、さらにより好適には1mm~3mmの範囲にある。
【0017】
以下に提供する、電気導体および/またはそのセクションの長さと直径との関係は、試験およびコンピュータシミュレーションにおいて、本発明の課題を達成するために特に適している、ということが示された。特に、以下ではコンピュータシミュレーション結果を参照する。
【0018】
電気導体が、上述のような第1のセクションおよび/または先細セクションを有している場合、電気導体の第1のセクションは長さL1を有していてよく、かつ/または電気導体の先細セクションは長さL3を有していてよく、この場合、長さL1、長さL3または長さL1+長さL3は、少なくとも0.1mm、好適には少なくとも0.3mm、特に好適には少なくとも0.6mmである。
【0019】
電気導体が、上述のような第1のセクションおよび/または先細セクションを有している場合、電気導体の第1のセクションは長さL1を有していてよく、かつ/または電気導体の先細セクションは長さL3を有しており、この場合、比L1/L、比L3/Lまたは比(L1+L3)/Lは、0.7より小さく、好適には0.5より小さく、特に好適には0.35より小さい。
【0020】
電気導体が、上述のような第2のセクションを有している場合、電気導体の第2のセクションは長さL2を有していてよく、この場合、比L2/Lは、0.3より大きく、好適には0.5より大きく、特に好適には0.65より大きい。
【0021】
電気導体が、上述のような第1のセクションおよび先細セクションを有している場合、電気導体の先細セクションは長さL3を有していてよく、この場合、比L3/L1は、1.25~3.0、好適には1.5~2.5、特に好適には1.75~2.25である。
【0022】
電気導体の第1の直径と第2の直径との比は、1.1~10、好適には1.25~3.5、より好適には1.5~3.0、特に好適には1.75~2.75であってよい。
【0023】
第1の直径は、少なくとも0.8mm、好適には少なくとも1mm、特に好適には少なくとも1.5mmであってよい。
【0024】
第2の直径は、最大1mm、好適には最大0.8mm、特に好適には最大0.5mmであってよい。
【0025】
電気導体が、上述したような先細セクションを有している場合、電気導体の先細セクションは、第1の直径から第2の直径に先細になる直径を有していてよい。追加的または択一的に、電気導体の先細セクションは、線形に先細になる直径であってよい。
【0026】
電気導体と絶縁材料との機械的結合を高めるために、電気導体は溝を有していてよく、この場合、溝は、好適には電気導体の第2のセクションに配置されている。
【0027】
本発明はさらに、電気フィードスルーであって、少なくとも2つのスルーホールが貫通して延びている基体を有しており、基体は、第1の側と、反対側の第2の側と、を有しており、少なくとも2つのスルーホールの各々に絶縁材料が収容されており、各絶縁材料は、基体の第1の側の第1の表面と、反対側の基体の第2の側の第2の表面と、を有しており、少なくとも2つのスルーホールのそれぞれの中で、少なくとも1つの電気導体が各絶縁材料を貫通して延びている、電気フィードスルーを提供する。フィードスルーの各電気導体は、上述した特徴のうちの1つ以上に基づき設計されてよい。フィードスルーの電気導体は、好適にはそれぞれ同一に設計されている。ただし、用途に応じて、導体はそれぞれ異なるように設計されてもよい。
【0028】
一般に、フィードスルーは、絶縁材料または各絶縁材料を貫通して延びる少なくとも2つの電気導体を有していてよい。用途に応じて2つ以上の導体が、例えば充電ポートまたはデータ伝送アプリケーションにおいて使用され得る。
【0029】
一般に、2つの電気導体の間の距離は、50mm未満、好適には10mm未満、特に好適には5mm未満であってよい。このような距離は、第2の直径の位置、好適には第1の直径の位置に存在し得る。
【0030】
一般に、2つの電気導体の間の距離は、100μm超、好適には150μm超、特に好適には200μm超であってよい。このような距離は、第1の直径の位置、好適には第2の直径の位置に存在し得る。
【0031】
一般に、1つの電気導体と基体との間の距離は、5mm未満、好適には2mm未満、特に好適には1mm未満であってよい。このような距離は、第2の直径の位置、好適には第1の直径の位置に存在し得る。
【0032】
一般に、1つの電気導体と基体との間の距離は、100μm超、好適には150μm超、特に好適には200μm超であってよい。このような距離は、第1の直径の位置、好適には第2の直径の位置に存在し得る。このような距離は、絶縁材料、例えばガラスの流動用の十分なギャップを有するために有利であり得る。
【0033】
特に上述した距離は、特に偏心的な導体、中心から外れた導体位置および/または不均一なスルーホール直径の場合における2つの導体の間または導体と基体との間の最小距離を意味していてよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、基体の少なくとも一方の側、例えば第1の側における、1つのスルーホール内に収容された絶縁材料の表面積と、各スルーホール内の1つまたは複数の電気導体の表面積との比は、15未満、好適には10未満、特に好適には5未満または4未満であってよい。
【0035】
一般に、上述したように電気導体または各電気導体は、各絶縁材料の第1の表面の位置において第1の直径DEC1を有しており、かつ各絶縁材料の第2の表面の位置において第2の直径DEC2を有していてよく、この場合、各導体の直径は異なっていてよい。さらに、スルーホールまたは各スルーホールは、好適には基体全体にわたり一定の直径DTHを有していてよいか、または好適には2°~10°の範囲内で先細になって最大直径DTHを有しており、この場合、各スルーホールの直径DTHは異なっていてよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのスルーホールの比DTH/DEC1は、最大1.5、好適には最大1.3、特に好適には最大1.2、または最大1.11である。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのスルーホールの比DTH/DEC2は、最大10、好適には最大5、特に好適には最大2.5である。
【0038】
ここで留意すべきは、スルーホールまたは各スルーホールは、好適には2°~10°の範囲の先細角度でもって先細になる直径を有していてよい、という点であり、この場合はいずれの方向に先細になっていてもよい、すなわち、スルーホール直径は、基体の第2の側に向かって先細になっていてよいか、または基体の第1の側に向かって先細になっていてよい。先細になったスルーホールの利点は特に、より高い耐圧性および/または射出成形プロセス後のより簡単な部品放出などの改善された加工であり得る。
【0039】
2つ以上のスルーホールの場合、少なくとも2つのスルーホールはそれぞれ、直径DTHを有していてよく、かつ少なくとも2つのスルーホールはそれぞれ、半間隔直径DBBを規定していてよく、半間隔直径DBBは、隣り合うスルーホールの間の基体における間隔ΔΤΗに各スルーホールの直径DTHを加算したものであり、この場合、少なくとも1つのスルーホールの比DBB/DTHは、2.0より小さく、好適には1.8より小さく、特に好適には1.7より小さく、または1.6より小さく、または1.5より小さく、または1.4より小さく、または1.3より小さく、または1.2より小さく、または1.1より小さい。
【0040】
先細になっているスルーホールの場合、上述したこれらの直径DTHおよびDBBは、好適には基体の第1の側において測定され得る。ただし択一的に、それらは基体の第2の側において測定されてもよい。
【0041】
上述した距離、表面比および直径比は、試験およびコンピュータシミュレーションに基づき、本発明の課題を達成するために特に有利であることが証明された。特に、引き続き以下でコンピュータシミュレーション結果を参照する。
【0042】
追加的に、絶縁材料における接触圧力に関して、試験およびコンピュータシミュレーションが行われ、この場合、負の接触圧力は、接触張力を意味する。
【0043】
いくつかの実施形態では、絶縁材料は、基体の第2の側の第2の表面の位置において接触圧力CP2下にあってよく、この場合、CP2は、正の接触圧力であるか、またはCP2は、30MPa未満、好適には20MPa未満、特に好適には10MPa未満、または5MPa未満の絶対値を有する負の接触圧力である。
【0044】
いくつかの実施形態では、絶縁材料は、基体の第1の側の第1の表面の位置において接触圧力CP1下にあってよく、この場合、CP1は、1MPa超、好適には5MPa超、特に好適には10MPa超の絶対値を有する負の接触圧力である。
【0045】
いくつかの実施形態では、絶縁材料は、155MPa未満、好適には70MPa未満、より好適には50MPa未満、より好適には40MPa未満、特に好適には20MPa未満の絶対値を有する正の最高接触圧力下にある。
【0046】
一般に、フィードスルーの基体は、5×10-6K-1~25×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~20×10-6K-1の熱膨張係数を有し得る。
【0047】
一般に、フィードスルーの絶縁材料は、3×10-6K-1~15×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~12×10-6K-1の熱膨張係数を有し得る。
【0048】
一般に、フィードスルーの電気導体は、3×10-6K-1~25×10-6K-1、好適には5×10-6K-1~20×10-6K-1の熱膨張係数を有し得る。
【0049】
基体は、以下の材料、すなわち:金属、オーステナイト系ステンレス鋼、特にAISI300系列、フェライト系ステンレス鋼、特にAISI400系列、チタン、インコネル、二相系ステンレス鋼、ニオブ、上述した金属のうちの1つの合金、例えばチタン合金、セラミックのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。基体が金属を含み、絶縁材料がガラスを含む場合、フィードスルーはガラス金属シールと呼ばれてもよい。基体がセラミックを含み、絶縁材料がガラスを含む場合、フィードスルーは、ガラスセラミックシールと呼ばれてもよい。
【0050】
絶縁材料は、以下の材料、すなわち:ガラス、ガラスセラミック、セラミックのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0051】
電気導体は、以下の材料、すなわち:金属、金属合金、ステンレス鋼300系列、ステンレス鋼400系列、チタン、NiFe、NiFeCo合金、ニオブ、銅、タングステン、モリブデン、白金、上述した金属のうちの1つの合金、例えばチタン合金または銅合金のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、基体および電気導体は、非アレルギー性材料のみを含んでいてよく、この場合、基体および電気導体から、好適にはニッケルが浸出しない。
【0053】
特に、本発明は上述したような電気フィードスルーを有する、電子装置、特にウェアラブル用の充電ポートまたは医療用ポートに関する。
【0054】
以下に、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】4つのスルーホールを備える電気フィードスルーの上面図であり、電気導体が各スルーホールを貫通して延在している。
【
図2】
図2~
図4は、4つのスルーホールを備える3つの異なる電気フィードスルーの側面図であり、電気導体が各スルーホールを貫通して延在している。
【
図3】
図2~
図4は、4つのスルーホールを備える3つの異なる電気フィードスルーの側面図であり、電気導体が各スルーホールを貫通して延在している。
【
図4】
図2~
図4は、4つのスルーホールを備える3つの異なる電気フィードスルーの側面図であり、電気導体が各スルーホールを貫通して延在している。
【
図6】1つのスルーホールを備える4つの異なる電気フィードスルーを示す側面図であり、電気導体がスルーホールを貫通して延在している。
【
図7】
図6に示した4つの異なる電気フィードスルー用の絶縁材料に対する接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】スルーホール内の2つの異なる電気導体の斜視図である。
【
図9】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図10】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図11】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図12】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図13】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図14】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図15】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図16】
図8に示した2つの異なる電気導体用の基体の塑性変形のレベルおよび絶縁材料における接触圧力についてのコンピュータシミュレーション結果と、異なる隔壁距離を用いた場合の対応する結果とを示す図である。
【
図17】3つの電気導体を備えた2つの異なる電気フィードスルーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1~
図5を参照すると、基体20を有する電気フィードスルー10は、1つ以上のスルーホール26を有していてよく、スルーホール26内には絶縁材料30と、少なくとも1つの電気導体40とが収容されている。電気導体は、電気ピンと呼ばれることもある。
【0057】
いくつかの実際の用途に関して、フィードスルー10に、スルーホールの直径DTHに関して、隣り合うスルーホール間の間隔ΔTHに関して、かつ/または半間隔直径DBB=DTH+ΔTHに関して、比較的太い電気導体40を提供することが望ましい場合がある一方で、同時に気密性、導体40同士の間および/または導体40と基体20との間の電気絶縁またはその他の封止特性が、特定の品質要件を満たすことが望ましい。
【0058】
この目的のために複数のアプローチが考えられる。特に、一定の直径DEC1=DEC2を有する電気導体40(
図2)を使用する代わりに、基体20の第1の側22のより大きな直径DEC1と、基体20の第2の側24のより小さな直径DEC2と、を有する導体40を使用することができる(
図3~
図5)。
【0059】
例えば、電気導体40がより大きな直径DEC1を有するフィードスルー10の第1の側22は、装置の外側に向いていてよいのに対し、電気導体40がより小さな直径DEC2を有するフィードスルー10の第2の側24は、装置の内側に向いていてよい。
【0060】
このような(例えば外側と内側とで)非対称のピン直径は、フィードスルー10の性能を高めかつ/または所望の寸法比を最適化し得る。一方では、より大きな外側のピン直径DEC1は、より大きな接触領域を提供することができ、これは嵌合接触領域に有利であり得る。このことは、ポゴピンであってよい嵌合コンポーネントに公差がある場合に特に役立つことがある。他方では、より小さな内側のピン直径DEC2は、比較的小さな曲げ輪郭を可能にし得る。内側のピン端部は、ろう接などの様々な手段によって別のコンポーネントに嵌合させられてもよい。
【0061】
1つの実施形態によれば、非対称のピン直径DEC1>DEC2は、段設計により実現され得る(
図3)。この場合、電気導体40は、第1の直径DEC1が絶縁材料30の第1の表面32から絶縁材料30内に延在する第1のセクション42と、第2の直径DEC2が絶縁材料30の第2の表面34から絶縁材料内に延在する第2のセクション44と、これら2つのセクション42、44の間の鉛直方向段部と、を有している。
【0062】
絶縁材料30がガラスであるGTMSのいくつかのケースでは、フィードスルー10のコンポーネントの寸法および使用されるプロセスに応じて、このような段設計は、ガラス封止プロセス中に、これによりガラス流がキャビティ全体を覆うには不十分であるという状況につながる場合がある。このような場合には、結果的に気泡またはギャップが特定の位置に生じ、これにより漏れのリスクが生じることがある。また、GTMSのいくつかのケースでは、段付きピン設計の鋭利な角隅部により高応力領域がもたらされることがあり、この高応力領域は、ガラスに亀裂を生ぜしめる傾向がある場合があり、このことも漏れのリスクにつながり得る。
【0063】
しかしながら、このような問題は、フィードスルー10のコンポーネントの特定の条件および/または寸法の下でのみ予想され、以下でさらに詳述するように、適切なプロセスおよび/または材料によって解決することができる。
【0064】
択一的または追加的に、先細ピンの設計が有利であり得る(
図4~
図5)。この場合、電気導体40は、第1の直径DEC1が第1の表面32から絶縁材料30内に延在する第1のセクション42と、第2の直径DEC2が第2の表面34から絶縁材料内に延在する第2のセクション44と、これらの2つのセクション42,44の間の先細セクション46と、を有していてよい(
図4、
図5a、
図5b)。
【0065】
ただし電気導体40は、第1の直径DEC1を有する先細セクション46と、それに続く、第2の直径DEC2を有する第2のセクション44とを備えるように設計されてもよい(
図5c)。逆に、電気導体40は、第1の直径DEC1を有する第1のセクション42と、それに続く、第2の直径DEC2を有する先細セクション46とを備えるように設計されてもよい(
図5d)。さらに、電気導体40が、絶縁材料30の第1の表面32における第1の直径DEC1から第2の表面34における第2の直径DEC2まで先細になっていることも可能である(
図5e)。
図5dおよび
図5eでは、第2の直径DEC2は、絶縁材料30の第2の表面34が位置する場所に応じて、先細セクション46内の任意の位置または先細セクション46の端部にあってよい、ということに留意されたい。
【0066】
加えて、絶縁材料30(例えばガラス)と導体40との間のより強力な機械的結合を可能にするために、1つ以上の溝48が導体40に形成されてよく、これにより、絶縁材料30が導体に流入して、例えばベルクロ結合を生ぜしめることができる。
【0067】
電気導体40は、特に先細設計の場合には、例えばCNC、MIMおよび/または鍛造により製造され得る。
【0068】
概して、非対称のピン設計は、特にガラス金属シールシステムにおけるろう接領域に関して、GTMS性能、例えば機械的な堅牢性および/または気密性の向上を示した。先細ピン設計は、製品内での絶縁材料の流れ(より少ない圧縮領域)を改善することができ、したがって、特にガラス絶縁材料(GTMS)に関して、気泡、亀裂のリスクを低減し、かつ/または比較的鋭利でない角隅部に基づき応力を低下させることができる。
【0069】
図6~
図16を参照すると、非対称の導体設計(DEC1>DEC2)、特に先細設計では、フィードスルーのコンポーネントに対する接触圧力条件が改善され、これにより、例えばろう接プロセスに関してより良好な気密性および/または機械的な堅牢性がもたらされる、ということが示されている。接触圧力は、フィードスルーの機械的な堅牢性およびシール完全性に直接関係する。
【0070】
ピン/ガラスシステムの4つの変化形を構築し、ピン太さと、ガラス厚さと、ガラス金属シールシステムの堅牢性と、の間の関係を示すために分析した:第1の変化形は、典型的な設計ガイドライン、すなわち基準ギャップを有するガラスを用いたガラス/ピンシステムに関する(
図6a)。第2の変化形は、増大されたピン直径を有するシステム、すなわち、太いピンと、狭いガラスギャップと、を有するシステムに関する(
図6b)。第3の変化形は、減じられたピン直径と狭いガラスギャップ、すなわち細いピンと狭いガラスギャップとを有するシステムに関する(
図6c)。第4の変化形は、接触用の外側のより大きな着床領域と、より小さなろう接輪郭用のより小さな内側直径と、を有する非対称のピン設計、すなわち「釘頭」ピン設計に関する(
図6d)。
【0071】
これら4つの変化形について、絶縁材料(ガラス)における接触圧力のコンピュータシミュレーション結果を
図7に示す。上述した第1の変化形(基準ギャップを有するガラス)は曲線100であり、第2の変化形(太いピンおよび狭いガラスギャップ)は曲線102であり、第3の変化形(細いピンおよび狭いガラスギャップ)は曲線103であり、第4の変化形(釘頭設計)は曲線101である。フィードスルー(
図4参照)の厚さLは2であり、x軸の0の値は、基体の第1の側22(例えば外側領域)に対応し、x軸の2の値は、第2の側24(例えばろう接用の突出部を有する内側領域)に対応する。
【0072】
第1の変化形100の場合、絶縁材料が負の接触圧力(すなわち接触張力)下にある第2および第3の変化形102,103と比較して、絶縁材料がその表面(x=0、x=2)において優れた接触歪みを有することが判った。しかしながら第4の変化形101の場合も、第2および第3の変化形102,103に比べて、絶縁材料が優れた接触歪みを有している。特に第2の表面(x=2)上で、絶縁材料は、第2および第3の変化形102,103と比較して低い絶対値を有する負の接触圧力CP2下にあるか、または正の接触圧力CP2下にある。
【0073】
ガラスにおけるこのような接触圧力、特に正の接触圧力は、より堅牢なガラス封止システムを示すものであり、このことも、第2の側(例えばろう接側)のピンの機械的な堅牢性に役立つ。このことは特に有利であり得る。それというのも、ろう接側のピンは、ろう接プロセス中に熱/機械的応力に曝されるからである。
【0074】
釘頭設計では、釘頭ピンシステムにわたり圧力が上昇することはない。さらに釘頭ピンシステムでは、絶縁材料は、45MPa未満、または35MPa未満の絶対値を有する正の最高接触圧力CP3下にあり得る。
【0075】
上述した調査結果を裏付けるために、
図8~
図16は、異なる隔壁距離、すなわち2.21mm;2.11mm;2.01mm;および1.81mmに対する、基体の塑性変形のレベル(
図9、
図11、
図13、
図15)および絶縁材料における接触圧力(
図10、
図12、
図14、
図16)に関して、釘頭ピン設計(a)およびストレートピン設計(b)の別のコンピュータシミュレーション結果を示している。
【0076】
図17を参照すると、複数の電気導体40を含む電気フィードスルーは、各導体40用の個別のスルーホール26を有していてよい(
図17a)か、または同じスルーホール26を貫通して延びる複数の電気導体40を有していてよい(
図17b)。
【0077】
両方のケースにおいて、上述したピン設計は、最適化された封止特性を有するシステムを可能にする一方で、同時に2つの電気導体の間の距離ΔΕCおよび/または電気導体と基体との間の距離ΔΕCBBが低減され得、これにより特に、高密度のピン構成が可能になる(典型的には、所与の面積に関して、より短いピッチ距離は、より高密度のピンに相当する)。
【0078】
追加的または択一的に、DTH、ΔΤΗおよび/またはDBB(
図1)に関して所望の電気導体直径を可能にする一方で、同時に封止特性は高い品質基準を満たす、減少したΔΕC、減少したΔΕCBBを有するフィードスルーを提供することは、材料選択および/または熱膨張係数(CTE)の選択により達成され得る。
【0079】
例えば、金属ハウジングの選択は、ピンからピンへの(ピッチ)間隔に影響を与える場合がある。高レベルの耐食性および信頼性性能を達成するためには、ステンレス鋼またはTiなどの金属が使用され得る。CTEが大きな金属、例えば316Lに関して、ピッチ間隔は、ステンレス鋼400系列やTiなどの金属と比較して大きくなり得る。基体および/またはピンの材料として、低重量、高信頼性、高密度のガラス金属シールおよび/または生体適合性のためにはTiが選択されてよい。基体および/またはピンは、好適には非Ni材料またはニッケルが浸出しないものであってよい。
【0080】
1つの例示的な実施形態では、基体はSS316Lを含んでいてよく、DBB/DTHは1.6であってよい。別の例示的な実施形態では、基体はSS400系列/Tiを含んでいてよく、DBB/DTHは1.3であってよい。
【0081】
1つの例示的な実施形態では、基体はSS316Lを含んでいてよく、導体もSS316Lを含んでいてよい。別の例示的な実施形態では、基体はSS400系列/Tiを含んでいてよく、導体もSS400系列を含んでいてよい。
【外国語明細書】