(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188005
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】離型フィルム、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221213BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221213BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20221213BHJP
C08K 5/353 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/32 103
C08L23/26
C08K5/29
C08K5/353
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092380
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2021096017
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢康
(72)【発明者】
【氏名】芦原 公美
(72)【発明者】
【氏名】森本 亮平
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK41A
4F100AK62B
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02B
4F100EH46B
4F100EJ37
4F100EJ37A
4F100EJ42
4F100EJ86B
4F100JA07B
4F100JB04A
4F100JK06
4F100JK16
4F100JL06
4F100JL14B
4F100YY00B
4J002BB211
4J002BJ002
4J002CD012
4J002CD052
4J002CD062
4J002ER006
4J002EU226
4J002EV086
4J002EV346
4J002FD142
4J002FD146
4J002GF00
4J002GJ00
(57)【要約】
【課題】離型性、耐熱性、耐汚染性に優れる離型フィルムを提供する。
【解決手段】基材上に、樹脂層を設けてなる離型フィルムである。
樹脂層が酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部と架橋剤0.1~50質量部とを含有し、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1~5質量%であり、下記(I)を満足する。
(I)25℃環境下、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定した、離型フィルムの樹脂層とアクリル系粘着剤層との間の剥離強度が0.5N/cm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、樹脂層を設けてなる離型フィルムであって、
樹脂層が酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部と架橋剤0.1~50質量部とを含有し、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1~5質量%であり、
下記(I)および(II)を満足することを特徴とする離型フィルム。
(I)25℃環境下、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定した、離型フィルムの樹脂層とアクリル系粘着剤層との間の剥離強度が0.5N/cm以下である。
(II)離型フィルムをロール状に巻き取って40℃環境下で3日間静置した後の、樹脂層が設けられていない面における液滴法によって測定した水に対する接触角が100°未満である。
【請求項2】
α-オレフィン成分の炭素数が6以上であることを特徴とする請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
架橋剤が、オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
基材が、ポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の離型フィルムの製造方法であって、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1.0~5質量%であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量が20000~300000であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を溶媒に分散または溶解された水系塗工液を、基材上に塗工した後、乾燥することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の離型フィルムの製造方法であって、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1.0~5質量%であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量が20000~300000であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を溶媒に分散または溶解された水系塗工液を、未延伸または一軸延伸後のポリエステル樹脂フィルムに塗工、乾燥したものを、ポリエステル樹脂フィルムとともに配向延伸及び熱処理することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、粘着シート、プリント配線板、偏光板、ゴムやプリプレグなどのシート状構造物など、様々な工業製品の製造工程において、使用される。
離型フィルムは、通常離型フィルム上に形成、または接触されて使用される被着体との、接着を防止し、はがれやすくするために、離型剤を含有する樹脂層が設けられている。離型用シートの離型剤としては、シリコーン系離型剤が最も多く使用されている。しかしながら、シリコーン系離型剤を用いた場合、シリコーン系離型剤に含まれる低分子量のシリコーン化合物が、被着体表面に移行し、残存することで、例えば粘着シートの粘着性の低下、被着体が電子機器等に使用された場合、電子機器の腐食や誤作動などの悪影響を与えることが指摘されている。また、近年、電子機器等の軽薄短小化が進んでおり、離型フィルムを製造工程で使用する各種被着体についても薄型化が進んでいる。薄い被着体と離型フィルムを剥がす際に、離型性が不十分な場合、被着体にしわや伸びが発生する原因となるため、さらに離型性に優れた離型フィルムが求められている。つまり、被着体表面を汚染することなく、より離型性に優れる離型フィルムが求められている。また製造時間等の短縮の観点から、離型フィルムを使用して生産される被着体を製造する際に、高温で短時間の処理を行うなどの工夫もされている。つまり、汚染性が少なく、剥離性、耐熱性に優れる離型フィルムが求められている。
特許文献1~3には、シリコーン以外の離型剤を利用した非シリコーン系の離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5111508号公報
【特許文献2】特開2018-39993号公報
【特許文献3】特許第6076375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記特許文献1~3に記載されるような非シリコーン系の離型フィルムであっても、下記問題があることを見出した。
特許文献1の離型フィルムは、表面のぬれ性と離型性を併せ持つ一方で、被着体の種類によっては離型性が不十分な場合があった。特許文献2の離型フィルムは、離型性に非常に優れる一方、離型剤として使用される樹脂が比較的低分子量の成分を含むことから、被着体の汚染の懸念があるという課題があった。特許文献3の離型フィルムは、離型性に優れるものの、基材との密着性や耐熱性についての課題があった。
本発明は、これらの問題に鑑み、各種材料との離型性に優れ、かつ、耐熱性や被着体の表面の耐汚染性に優れる離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、離型剤として特定の酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを含有する樹脂層を基材上に設けてなる離型フィルムが上記課題を解決することを見出し、本発明に達した。
【0006】
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)基材上に、樹脂層を設けてなる離型フィルムであって、
樹脂層が酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部と架橋剤0.1~50質量部とを含有し、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1~5質量%であり、
下記(I)および(II)を満足する、離型フィルム。
(I)25℃環境下、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で測定した、離型フィルムの樹脂層とアクリル系粘着剤層との間の剥離強度が0.5N/cm以下である。
(II)離型フィルムをロール状に巻き取って40℃環境下で3日間静置した後の、樹脂層が設けられていない面における液滴法によって測定した水に対する接触角が100°未満である。
(2)α-オレフィン成分の炭素数が6以上である、(1)の離型フィルム。
(3)架橋剤が、オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物である、(1)または(2)の離型フィルム。
(4)基材が、ポリエステル樹脂フィルムである、(1)~(3)のいずれかの離型フィルム。
(5)(1)~(4)のいずれかの離型フィルムの製造方法であって、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1.0~5質量%であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量が20000~300000であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を溶媒に分散または溶解された水系塗工液を、基材上に塗工した後、乾燥する、離型フィルムの製造方法。
(6)(1)~(4)のいずれかの離型フィルムの製造方法であって、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体が、エチレン成分とα-オレフィン成分との質量比(エチレン成分/αオレフィン成分)が99/1~60/40であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が1.0~5質量%であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量が20000~300000であり、
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を溶媒に分散または溶解された水系塗工液を、未延伸または一軸延伸後のポリエステル樹脂フィルムに塗工、乾燥したものを、ポリエステル樹脂フィルムとともに配向延伸及び熱処理する、製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、各種材料との離型性に優れ、かつ、耐熱性や被着体の表面の耐汚染性に優れる離型フィルムを提供することができる。上記離型フィルムは、離型性、耐熱性、耐汚染性のバランスに優れるため、電材、建材のような各種用途の製品の表面汚染を抑制し、品質が向上した製品を得るための工程用の離型フィルムとして使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の離型フィルムは、基材上に、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤を含む樹脂層が積層されてなるものである。
【0009】
酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレン/α-オレフィン共重合体が酸変性されたものであり、エチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレン成分と一種以上のα-オレフィン成分とを含有する。α-オレフィン成分の炭素数は特に限定されないが、3~12であることが好ましく、6~12であることがさらに好ましく、6~8であることが最も好ましい。炭素数を6以上にすることでエチレン/α-オレフィン共重合体の柔軟性が高くなり、離型性が向上する。α-オレフィン成分としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。これらの中でも、離型性や耐熱性の観点から、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが好ましく、1-オクテンがより好ましい。
【0010】
エチレン/α-オレフィン共重合体におけるエチレン成分とα-オレフィン成分の質量比(エチレン/α-オレフィン)は、60/40~99/1であることが必要であり、60/40~90/10であることがさらに好ましく、60/40~80/20であることが最も好ましい。エチレン/α-オレフィン共重合体におけるエチレン成分とα-オレフィン成分の質量比を前記範囲とすることで、酸変性成分を、後述する含有量に調整することができ、得られた酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を水性分散化することができる。また、得られた離型フィルムは、優れた離型性を有している。エチレン/α-オレフィン共重合体でのα―オレフィン成分含有量が、40質量%を越えると離型性が損ねられる。一方、1質量%未満では離型性が低下する。
【0011】
エチレン/α-オレフィン共重合体は、メタロセン系触媒を使用して製造されることが好ましい。この方法により製造されたエチレン/α-オレフィン共重合体は、分子量分布が狭く、低分子量成分の量が少なく、共重合が均一となる。
【0012】
本発明において、エチレン/α-オレフィン共重合体は、樹脂層と基材との密着性の観点、および架橋剤と反応させて、耐熱性を向上し、移行成分を低減させる観点から、酸変性されていることが必要である。エチレン/α-オレフィン共重合体の酸変性は、たとえば、エチレン/α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸成分を導入することによっておこなうことができる。
【0013】
本発明において、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を構成する酸変性成分の含有量(酸変性量)は、1~5質量%であることが必要であり、1.5~4.0質量%であることが好ましく、2~4.0質量%であることがより好ましい。酸変性成分の含有量が1質量%未満の場合、架橋剤との反応が不十分なために、基材との密着性が不十分となるだけでなく、十分な離型性や耐熱性が得られないことがある。酸変性成分の含有量が5質量%を超えると、十分な離型性が得られない。
特に本発明では、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体において、α-オレフィン成分の炭素数を6以上とした場合に、酸変性成分の含有量を上記特定範囲とすることで、よりいっそう離型性や耐熱性が向上する。
【0014】
エチレン/α-オレフィン共重合体に導入される不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物が挙げられる。中でもエチレン/α-オレフィン共重合体への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。不飽和カルボン酸成分は、エチレン/α-オレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0015】
不飽和カルボン酸単位をエチレン/α-オレフィン共重合体へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル発生剤存在下、エチレン/α-オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを、エチレン/α-オレフィン共重合体の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、エチレン/α-オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、エチレン/α-オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。
操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド、ジ-tert-ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0016】
本発明において、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体は、基材との密着性を向上させるなどの観点から、他のモノマーが、本発明の効果を損ねない範囲で、共重合されていてもよい。他のモノマーとしては、たとえば(メタ)アクリル酸エステル、α-オレフィン以外のオレフィン類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄などが挙げられる。一方離型性の観点からは、他のモノマーは含まない方が望ましい。他のモノマー成分の含有量は、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0017】
本発明において、酸変性するためのエチレン-α-オレフィン共重合体として、市販のエチレン/α-オレフィン共重合体を用いることができる。市販のエチレン/α-オレフィン共重合体として、住友化学社製エスプレンシリーズ、三井化学社製タフマーシリーズ、ダウ・ケミカル社製エンゲージシリーズ、アフィニティシリーズなどが挙げられる。このような市販のエチレン/α-オレフィン共重合体を用いて、上記の方法で酸変性を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を得ることができる。
【0018】
本発明の離型フィルムを構成する樹脂層は、架橋剤を含有する。架橋剤としては、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が用いられ、反応性の観点から、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも一つの架橋剤であることが必要である。架橋剤として、オキサゾリン化合物やカルボジイミド化合物以外の架橋剤を用いると、架橋反応が不十分となるため、得られる樹脂層は耐熱性が低下し、熱処理後の離型性が低下する傾向にある。
【0019】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレン-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0020】
オキサゾリン基含有ポリマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS-500」、「WS-700」、固形タイプの「RPS-1005」などが挙げられる。
【0021】
カルボジイミド化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではない。ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオールなどが共重合されていてもよい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV-02」、「V-02」、「V-02-L2」、「V-04」、エマルジョンタイプの「E-02」、「E-03A」、「E-04」、有機溶液タイプの「V-01」、「V-03」、「V-07」、「V-09」、無溶剤タイプの「V-05」などが挙げられる。
【0022】
エポキシ化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどを含有するエポキシ化合物を用いることができる。
エポキシ化合物の市販品としては、ナガセケムテック社製のデナコールシリーズ(EM-150、EM-101など)、アデカ社製のアデカレジンEM-0517、EM-0526、EM-11-50B、EM-051R、阪本薬品工業社製のSR-GSG、SR-4GSLなどが挙げられる。
【0023】
イソシアネート化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4′-または4,4′-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-または1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、4,4′-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4-または2,6-ジイソシアネート、ぺルヒドロ-2,4′-または4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートや、それらの誘導体が挙げられる。イソシアネート化合物の中でも、水性(水溶性もしくは水分散性)のものが好ましい。
イソシアネート化合物の市販品としては、住化バイエルウレタン社製のバイヒジュール3100、デスモジュールDN、BASF社製のバソナートHW-100、Baxenden社製のブロックイソシアネートBI200、BI220等が挙げられる。
【0024】
架橋剤の含有量は、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、0.1~50質量部であり、1~40質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、添加効果が乏しく、得られる樹脂層は、経時的に離型性が低下したり、耐熱性に劣り、含有量が50質量部を超えると、離型性が低下する。なお、架橋剤は、2種類以上の化合物を同時に用いることもでき、同時に用いた場合、架橋剤の合計量が上記の架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0025】
本発明の離型フィルムを構成する樹脂層は、上記のように、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを含有するものであるが、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を含有してもよい。また、後述する樹脂層を形成するための液状物の安定性を損なわない範囲で、上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加して、樹脂層に含有させることもできる。
【0026】
特に、本発明の離型フィルムを構成する樹脂層は、滑り性や耐汚染性をいっそう向上させることを目的として、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子から選択される1種以上を含有してもよい。また、基材上に液状物を塗布して樹脂層を形成する際にも、これらを含有することによりぬれ性が改善され、コート抜け等の欠点が抑制されやすいという観点からも含有することが望ましい場合がある。滑り性に優れる離型フィルムにおいては、ロール状に巻き取った場合のブロッキングを低減することができる。
【0027】
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン-プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸-無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴムカゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、離型性や滑り性にいっそう優れる観点から、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールなどが好ましい。
【0029】
樹脂層が保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子から選択される1種以上を含有する場合、その含有量は、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましく、50~300質量部であることがより好ましい。含有量が上記の範囲になることで、離型性を維持しつつ、滑り性、ぬれ性、耐汚染性に優れたものとすることができる。
【0030】
本発明の離型フィルムにおいて樹脂層の厚みは、0.01~5.0μmであることが好ましく、0.03~3.0μmであることがより好ましく、0.05~1.0μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られない場合があり、一方、厚みが5.0μmを超えると、コストアップとなるため好ましくない。
【0031】
本発明において、基材上に樹脂層を設ける方法は特に限定されない。例えば、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と、架橋剤と、媒体と、必要に応じて他の材料を含む液状物を作製し、この液状物を基材上に塗布して媒体を乾燥させる方法が、樹脂層の厚みを均一にしやすく、大量生産が可能という点で好ましい。あるいは、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを混合したものを基材上に溶融押出して、樹脂層を形成してもよい。また、基材を構成する樹脂材料と樹脂層形成材料とを共押出することにより、樹脂層を形成してもよい。
【0032】
本発明において、樹脂層を形成するために用いられる酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体は、重量平均分子量が20,000~300,000であることが好ましく、20,000~200,000であることがより好ましく、30,000~100,000であることがさらに好ましい。酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体は、重量平均分子量が前記範囲であることで、均一で分散状態が良好な溶液や水性分散体を製造しやすい。重量平均分子量が20,000未満である場合、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を含有する樹脂層を設けた離型フィルムは、耐汚染性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量が300,000を超える場合、塗剤化することが困難となる場合や、離型性が悪くなる場合がある。
【0033】
上記、酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体と架橋剤とを含む液状物は、樹脂および架橋剤とを、有機溶剤に溶解させても、水性媒体または溶剤に分散させて使用してもよいが、水性媒体としても用いることが、液状物の取り扱いの観点、作業環境の安全衛生性の観点から望ましい。水性分散体とは、上記の酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体が水性媒体中に分散されたものであり、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体は、水性媒体中に分散もしくは一部溶解している。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性化促進のため、後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。
【0034】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂水性分散体において、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体中の酸変性成分は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。酸変性成分の中和によって生成したアニオン間の電気反発力により、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。水性化の際に用いる塩基性化合物は酸変性成分を中和できるものであればよい。
塩基性化合物は、樹脂層の形成時に揮発するアンモニアまたは有機アミン化合物が樹脂層の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30~250℃、さらには50~200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂層から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、樹脂層の耐水性が低下する場合がある。
【0035】
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2,2-ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。
【0036】
塩基性化合物の配合量は、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体中のカルボキシル基に対して0.5~10倍当量であることが好ましく、0.8~5倍当量がより好ましく、0.9~3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると樹脂層形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下したりすることがある。
【0037】
本発明においては、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1~45質量%であることがより好ましく、2~40質量%がさらに好ましく、3~35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、本発明の目的の一つ(作業環境改善)を逸脱するだけでなく、使用する親水性有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下することがある。
【0038】
親水性有機溶剤は、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
【0039】
親水性有機溶剤は、製膜の過程で効率よく樹脂層から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、樹脂層から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の樹脂層の耐水性や基材との接着性等が低下することがある。
【0040】
好ましい親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2-ジメチルグリセリン、1,3-ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。中でも、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
【0041】
酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、上記と同じ理由で、沸点が150℃以下であるものが好ましい。
【0042】
このような疎水性有機溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、水性分散体に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
【0043】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を数平均粒子径500nm以下の範囲で水性媒体中に安定的に分散することができる。
【0044】
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、樹脂の水性化時は、こうした水性化助剤の含有量がゼロであることが最も好ましい。なお、樹脂の水性化後、得られた水性分散体に、水性化助剤に該当する化合物を他の目的で含有させてもよく、得られる樹脂層においては、本発明の効果を損ねない範囲で含有していても差し支えない。
【0045】
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤などが挙げられる。
【0046】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
水性分散体中の共重合体粒子の数平均粒子径(以下、nm)は、水性分散体の保存安定性、樹脂層の透明性、30℃以下の低温での造膜性が向上する点から、いずれも500nm以下が好ましく、10~400nmがより好ましく、20~200nmがさらに好ましい。
【0048】
次に、本発明で用いるポリオレフィン樹脂水性分散体を製造する方法について説明する。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を製造する方法としては、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体が水性媒体中に均一に混合・分散される方法であれば、限定されない。例えば、密閉可能な容器に、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体、上記親水性有機溶剤、上記塩基性化合物、水などの原料を投入し、槽内の温度を40~150℃程度の温度に保ちつつ撹拌を行うことにより、水性分散体とする方法などが挙げられる。
【0049】
本発明で用いるポリオレフィン樹脂水性分散体における、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の含有率は、成膜条件、目的とする樹脂層の厚さや性能等により適宜調整され、特に限定されるものではないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を得るために、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
【0050】
本発明の離型フィルムは、上記構成を有するものであり、例えば、樹脂層形成用水性分散体として基材上に塗布した後乾燥することで樹脂層を設けることにより製造することができる。ポリオレフィン樹脂水性分散体を基材上に塗布して樹脂層を形成する方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、水性分散体を基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供する方法が挙げられ、これにより、均一な樹脂層を基材に密着させて形成することができる。
【0051】
樹脂層形成の際に、基材に塗布した後、乾燥熱処理することにより、水性媒体を除去することができ、樹脂層を形成することが可能である。樹脂層を形成する際の乾燥温度は、特に限定されないが、乾燥速度、酸変性エチレン-α-オレフィンと架橋剤の反応の観点からは乾燥温度は高い方が好ましい。一方、基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いる場合、乾燥温度が高過ぎた場合、フィルムの熱収縮により基材にしわが入ることでフィルムの外観が悪くなる場合がある。このような観点から、乾燥温度は、60~250℃であることが好ましく、より好ましくは80~200℃以上、さらに好ましくは100~180℃以上であり、120~150℃以上であることが特に好ましい。
【0052】
また、基材上に樹脂層を形成した後、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体と架橋剤との反応を促進させるために、一定の温度にコントロールされた環境下でエージング処理をおこなってもよい。エージング温度は、基材へのダメージを軽減させる観点からは、比較的低いことが好ましいが、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で処理することが好ましい。エージング処理は20~100℃でおこなうことが好ましく、30~70℃でおこなうことがより好ましく、40~60℃でおこなうことがさらに好ましい。
【0053】
本発明の離型フィルムを構成する基材としては、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料等で形成されたものが挙げられる。基材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は1~1000μmであればよく、1~500μmが好ましく、10~200μmがより好ましく、25~100μmが特に好ましい。
【0054】
基材に用いることができる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ナイロン6、ポリ-m-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂;これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。
樹脂材料は延伸処理されていてもよい。中でも、基材は、機械的特性および熱的特性に優れるポリエステル樹脂フィルムが好ましく、安価で入手が容易という点からポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0055】
熱可塑性樹脂フィルムに液状物を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布後乾燥、熱処理してもよく、また、配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに液状物を塗布し、乾燥後加熱して延伸するか、あるいは加熱して乾燥と同時に延伸して、配向を完了させてもよい。後者の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸終了後のフィルムに液状物を塗布後、乾燥、延伸配向する方法は、熱可塑性樹脂フィルムの製膜と同時に樹脂層を積層することができるため、コストの点から好ましい。
【0056】
上記熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、熱可塑性樹脂フィルムの表面に、前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等が施されてもよい。
【0057】
基材として用いることができる紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙等が挙げられる。紙には、目止め層などが設けてあってもよい。
【0058】
基材として用いることができる合成紙は、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
【0059】
基材として用いることができる布としては、上述した合成樹脂からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。基材として用いることができる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔や、アルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。基材として用いることができるガラス材料としては、ガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
【0060】
本発明の離型フィルムは、様々な材料に対して良好な離型性を有することから、様々な材料に対して使用することができ、本発明の離型フィルムを、樹脂層を介して、被着体に積層することで、積層体とすることができる。
【0061】
本発明の離型フィルムは、具体的には、粘着材料や液晶ディスプレイ用部品などの保護材料として、プリント配線板のプレス工程材料や航空機等の構造材等に用いられるプリプレグの工程材料として、シート状構造体の製造時のベース基材として、転写印刷用の離型フィルムとして、それぞれ好適に使用することができる。特に、粘着材料に対して好適に使用することができる。
【0062】
粘着材料としては、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどが挙げられる。より具体的には、基材に粘着剤が積層されたものである。粘着剤の成分や基材は特に限定されないが、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられ、ここには、ロジン系、クマロン-インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤が含まれていてもよい。基材としては、上述の、紙、布、樹脂材料などが挙げられる。
【0063】
粘着材料に対して使用される離型フィルムは、その取り扱い上、離型性に優れるものが求められており、たとえば、アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cm以下であるものが求められている。本発明の離型フィルムにおいては、アクリル系粘着剤層を有する樹脂テープの前記粘着剤層を離型フィルムの樹脂層表面に貼り付けることで得られた試料を、室温(25℃)にて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で測定したときの粘着剤層と樹脂層との剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、好ましくは、0.4N/cm以下、より好ましくは0.3N/cm以下、さらに好ましくは、0.2N/cm以下とすることができる。アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、離型フィルムを粘着材料から剥離する際に、抵抗を感じたり、粘着材料の表面が荒れることにより、粘着性が低下する場合があるため、アクリル系粘着材料用の離型フィルムとして使用することが困難となる。
【0064】
また、粘着力が強い粘着材料の代表であるシリコーン系粘着材料に対しても、本発明の離型フィルムを使用することが可能である。シリコーン系粘着材料に対して従来のようなシリコーン系離型フィルムを用いると、粘着層と離型層との親和性が高いため密着性が高まり剥離しにくくなる。これに対して、本発明の離型フィルムはシリコーン系粘着材料に対しても良好な剥離性を保つことができる。シリコーン系粘着材料に対して使用した場合、シリコーン系粘着材料を貼り付けて、放置したあとの樹脂層とシリコーン系粘着材料との剥離強度が1.0N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8N/cm以下、さらに好ましくは0.7N/cm以下である。
【0065】
本発明の離型フィルムは、耐熱性に優れるため、離型フィルムが貼り付けられた粘着材料が、保管、流通の過程において、高温下に長時間曝されても、経時で剥離強度が変化することがなく、また、貼り付け後長時間経過した後も、樹脂層と粘着材料との剥離強度の変化を小さく抑えることができる。例えば、粘着材料と離型フィルムを貼り付けたのち、70℃程度の高温で処理し、剥離強度を測定することにより、耐熱性を評価することが可能である。70℃で1日処理した後の剥離強度が、上述の範囲に入り、熱処理前後で剥離性の差が小さいことが望ましい。
【0066】
本発明の離型フィルムは、離型フィルムをロール状に巻き取った場合、離型フィルムに形成された樹脂の、背面(離型フィルムの樹脂層が形成されていない側)への移行が抑制される。樹脂成分の背面移行は、離型フィルムとして離型性能を損ねるばかりか、離型フィルムを用いて電子部品製品の加工を行う際、背面移行した樹脂成分が製品を汚染し、製品の商品価値を損ねることがある。樹脂成分の背面移行が起きているかは、例えば、離型フィルムを形成する基材フィルムの背面側接触角を測定することで、簡易的に確認することができる。
離型フィルムを形成する基材フィルムがPETフィルムであった場合、汚染が起きていない通常のPETフィルムの接触角は65°であるが、汚染(背面移行)が起きたPETフィルムであると、65°よりも接触角は大きくなる。
このように、離型フィルムの樹脂層が設けられていない面の接触角が大きい場合、離型剤の成分の一部が移行し汚染が起こっているために、被着体の汚染や性能低下につながる可能性があるため望ましくない。この方法で評価した場合の接触角が、100°未満であれば離型フィルムとして問題なく使用可能であり、90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく汚染性が十分に低いと言え、さらに好ましくは75°以下であることが特に好ましい。
【0067】
また、本発明の離型フィルムは、粘着材料の保護以外にも使用することが可能であり、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を半硬化の状態としたプリプレグや半硬化層が積層されたカバーレイフィルム用の工程フィルム、シリコーンやフッ素などのゴムシートなどの工程フィルムなどとしての使用が挙げられる。
上記で例に挙げたような工程フィルムとして使用する場合、被着体と離型フィルムの間の剥離強度が、1.0N/cm以下であることが望ましく、より好ましくは、0.8N/cm以下であり、さらに好ましくは、0.5N/cm以下であり、0.3N/cm以下であることが特に好ましい。
【0068】
本発明の離型フィルムは、例えば、JIS K7125に基づいた方法で測定した場合の樹脂層と基材フィルムの樹脂層が設けられていない面の間の動摩擦係数が、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。離型フィルムの滑り性は、加工ロール等との擦れ、巻き出しや巻き取り時の摩擦抵抗等、予期しない離型フィルムへのダメージ、特に傷付き、歪み等、フィルムの透明性、離型フィルムを使用時の被着体の表面への悪影響を低減することができる。
【0069】
上述した以外にも、液晶ディスプレイ用部品として用いられる偏光板、位相差偏光板、位相差板、塩化ビニルやウレタンからなる合成皮革、パーフロロスルホン酸樹脂などの高分子電解質などからなるイオン交換膜や、誘電体セラミックスやガラスなどからなるセラミックグリーンシート、放熱材料等を含有する放熱シート等が挙げられる。
【0070】
これらの製造工程においては、ベース基材となる本発明の離型フィルム上に、溶媒でペースト状あるいはスラリー状とした原料を塗布、乾燥することにより、シート状構造体を形成することができる。あるいは、離型フィルム上に、溶融させた樹脂を押出すことにより、シート状構造体を形成することができる。
【0071】
本発明の離型フィルムを転写印刷用に使用する場合、本発明の離型フィルム上にコーティングすることによって、印刷層、電極、保護層などの様々な機能層を形成し、離型フィルム上の機能層を、被転写体に対して、加熱、圧着することにより、被転写体に機能層を転写し、次いで離型フィルムを、機能層から剥離する。このように、本発明の離型フィルムはスタンピング箔とも呼ばれるものに使用することができる。機能層としては、メタリック箔、顔料箔、多色印刷箔、ホログラム箔、静電気破壊箔、ハーフミラーメタリック箔等が挙げられる。
【実施例0072】
以下、本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
本発明では、下記方法にて各種評価を行った。
(1)酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の不飽和カルボン酸成分含有量
フーリエ変換赤外分光光度計(PerkinElmer社製、System-2000型、分解能4cm-1)を用い、赤外吸収スペクトル分析を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
【0073】
(2)不飽和カルボン酸成分以外の酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて、1H-NMR、13C-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。13C-NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
【0074】
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(島津製作所社製、LC-10AD型、カラムはSHODEX社製KF-804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの共重合体をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。
【0075】
(4)固形分濃度
水性分散化した酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0076】
(5)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(25℃)
得られた離型フィルムの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのアクリル系粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、25℃の雰囲気で24時間静置し、剥離強度測定用試料とした。25℃処理後の試料について、粘着テープ/離型フィルム間の剥離強度の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
【0077】
(6)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(70℃)
得られた離型フィルムの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのアクリル系粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料とした。ゴム板と金属板を取外し後、70℃処理後の試料について、粘着テープ/離型フィルム間の剥離強度の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
【0078】
(7)残留接着率(25℃)
前記(5)の剥離強度の測定を行った試料を用いて、さらに残留接着率を求めた。すなわち、(5)での剥離後アクリル系粘着テープにステンレス板(SUS304厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、アクリル系粘着テープとステンレス板の剥離強度F1の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、(5)と同様にして行った。
一方、未使用のアクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)を用い、ステンレス板(SUS304厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、アクリル系粘着テープとステンレス板の剥離強度F2の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、(5)と同様にして行った。
上記剥離強度F1、剥離強度F2より下記式を用いて、粘着テープの残留接着率を算出した。残留接着率は、実用上、95%以上であることが好ましい。
25℃条件下での粘着テープの残留接着率(%)=(F1/F2)×100
【0079】
(8)残留接着率(70℃)
前記(6)の剥離強度の測定を行った試料を用いて、さらに残留接着率を求めた。すなわち、(6)での剥離後アクリル系粘着テープにステンレス板(SUS304厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、アクリル系粘着テープとステンレス板の剥離強度F1の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、(6)と同様にして行った。
一方、未使用のアクリル系粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)を用い、ステンレス板(SUS304厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、アクリル系粘着テープとステンレス板の剥離強度F2の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、(6)と同様にして行った。
上記剥離強度F1、剥離強度F2より下記式を用いて、粘着テープの残留接着率(70℃)を算出した。残留接着率は、実用上、90%以上であることが好ましい。
70℃条件下での粘着テープの残留接着率(%)=(F1/F2)×100
【0080】
(9)シリコーン系粘着剤に対する剥離強度、残留接着率(25℃)
上記(5)、(7)でのアクリル系粘着テープに代えて、巾19mm、長さ150mmのシリコーン系粘着テープ(日東電工社製、ニトフロンNo.903UL)を使用した以外は、上記(5)、(7)と同様の方法で、シリコーン粘着剤に対する剥離強度、残留接着率の測定を行った。
【0081】
(10)シリコーン系粘着剤に対する剥離強度、残留接着率(70℃)
上記(6)、(8)でのアクリル系粘着テープに代えて、巾19mm、長さ150mmのシリコーン系粘着テープ(日東電工社製、ニトフロンNo.903UL)を使用した以外は、上記(6)、(8)と同様の方法で、シリコーン粘着剤に対する剥離強度、残留接着率の測定を行った。
【0082】
(11)カバーレイ(エポキシ接着剤)との離型性
200mm角に切り抜いたカバーレイフィルム(ニッカン工業社製、CISV-2535)のエポキシ接着剤面と、離型フィルムの樹脂層面を重ねて、真空プレス機を用いて、圧力30kgf、180℃、10分間でプレスを行った後、室温で1日間放置し積層体を得た。その後積層体から、幅25mm、長さ150mmの試料を切り出し、カバーレイフィルム/離型フィルム間の剥離強度の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
【0083】
(12)フッ素ゴムシートとの離型性
ビニリデンフロライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の二元系フッ素ゴム(ダイキン社製、ダイエルG801)をメチルエチルケトンに溶解させ、フッ素ゴム100質量部に対して、カーボンブラック(旭カーボン社製、旭#50H)1質量部、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)0.5質量部、有機過酸化物(日油社製、パーヘキサ25B-40)2質量部、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、タイクM-60)2質量部を添加し、フッ素ゴム溶液を調製した。このフッ素ゴム溶液を、ロールコータを用いて、乾燥後の厚みが0.5mmとなるように離型フィルムの樹脂層側に塗工して、80℃で乾燥を行い、ゴム層を形成した。そして、160℃、10分間の条件でプレスした後、二次架橋を行い、積層体を得た。二次架橋の条件は、180℃、4時間とした。
得られた積層体から、幅25mm、長さ150mmの試料を切り出し、フッ素ゴムシート/離型フィルム間の剥離強度の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
【0084】
(13)シリコーンゴムシートとの離型性
ポリオルガノシロキサンポリマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSE2527U)100質量部に対して、有機過酸化物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TC-8)0.4質量部、酸化鉄(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、ME-41F)4質量部、カーボンブラック(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、ME-41B)5質量部を添加し、バンバリーミキサーを用いて十分に混練することで、シリコーンゴム成分を調製した。
このシリコーンゴム成分を離型フィルムの樹脂層側に押し出して、シート状に形成し、温度170℃、10分間にてプレス成形した後、二次架橋を行い、積層体を得た。二次架橋の条件は、200℃、4時間とした。
得られた積層体から、幅25mm、長さ150mmの試料を切り出し、フッ素ゴムシート/離型フィルム間の剥離強度の測定を行った。なお、剥離強度の測定は、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で行った。
【0085】
(14)耐汚染性
得られた離型フィルムを巻取ったフィルムロールを、40℃環境下で3日間静置した。処理終了後、冷却し、表層のフィルムを除去し、巻芯より50m位置の離型フィルムの樹脂層が設けられていない面(樹脂層側の反対面)について、水に対する接触角を液滴法によって測定した。すなわち、20℃、65%RH環境下で、接触角計(協和界面科学社製、CA-D型)を用いて、純水が直径2.0mmの水滴を作るよう滴下し、10秒後の接触角を測定した。5回測定して平均値を算出した。接触角の目安は、汚染のないPETフィルムであれば65°、汚染が起きると65°よりも大きくなる。本発明の離型フィルムにおいては、100°未満である。
【0086】
(15)滑り性(樹脂層表面の摩擦係数)
実施例で得られた離型フィルムの樹脂層と基材フィルムの樹脂層が設けられていない面の間の動摩擦係数をJIS K7125に基づいた方法で測定した。より具体的には、離型フィルムのサンプルを23℃×50%RHで2時間調湿した後、同温湿度条件下で測定を実施した。実用上の性能を考えた場合、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。
【0087】
(3)樹脂層のコート抜け欠点
グラビヤコーターを用いて、基材フィルムに、樹脂層厚みが0.1μmになるように液状物を塗布し、120℃で15秒の乾燥を行い、1000mを巻き取った後、透過型欠点検出装置(ヒューテック社製)を設置したフィルムワインダーを通し(スキャン速度0.5m/秒、検出感度2.0mm以上に設定)、欠点(コート抜け)の検査を行った。検知回数から以下の基準で判断した。実用上1000m2あたり20回以下であることが好ましい。
◎:1000m2あたり20回以下
〇:1000m2あたり21~50回
△:1000m2あたり51~100回
×:1000m2あたり101回以上
【0088】
2.材料
樹脂層を構成する樹脂として、下記合成例で作製した樹脂を用いた。なお、得られた樹脂の組成と重量平均分子量は、後述する製造例(表1)にまとめて示す。
【0089】
合成例1
エチレン/オクテン共重合体(質量比:エチレン/オクテン=95/5、重量平均分子量=22,000)80gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン350gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って撹拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸30gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド5gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥し、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-1)を得た。
【0090】
合成例2
合成例1において、質量比(エチレン/オクテン)が61/39であるエチレン/オクテン共重合体(重量平均分子量=25,000)を用い、無水マレイン酸の量を20g、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-2)を得た。
【0091】
合成例3
合成例1において、エチレン/ヘキセン共重合体に代えて、質量比(エチレン/オクテン)が71/29であるエチレン/オクテン共重合体(重量平均分子量=68,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-3)を得た。
【0092】
合成例4
合成例1において、質量比(エチレン/ヘキセン)が75/25であるエチレン/ヘキセン共重合体(重量平均分子量=75,000)を用い、無水マレイン酸の量を30g、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-4)を得た。
【0093】
合成例5
合成例2において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ヘプテン)が76/24であるエチレン/ヘプテン共重合体(重量平均分子量=69,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-5)を得た。
【0094】
合成例6
合成例2において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/プロピレン)が75/25であるエチレン/プロピレン共重合体(重量平均分子量=58,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-6)を得た。
【0095】
合成例7
合成例1において、質量比(エチレン/プロピレン)が75/25であるエチレン/プロピレン共重合体(重量平均分子量=25,000)を用い、無水マレイン酸の量を10g、ジクミルパーオキサイドの量を5gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-7)を得た。
【0096】
合成例8
合成例1において、質量比(エチレン/オクテン)が71/29であるエチレン/オクテン共重合体(重量平均分子量=9000)を用い、無水マレイン酸の量を20g、ジクミルパーオキサイドの量を4gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-8)を得た。
【0097】
合成例9
合成例1において、無水マレイン酸の量を50g、ジクミルパーオキサイドの量を20gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-9)を得た。
【0098】
合成例10
合成例2において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/ブテン)が70/30であるエチレン/ブテン共重合体(重量平均分子量=50,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-10)を得た。
【0099】
合成例11
合成例1において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/プロピレン)が75/25であるエチレン/プロピレン共重合体(重量平均分子量=9,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-11)を得た。
【0100】
合成例12
合成例1において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、低密度ポリエチレン(重量平均分子量=10,000)とし、ジクミルパーオキサイドの量を10gとした以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂(P-12)を得た。
【0101】
合成例13
合成例1において、エチレン/オクテン共重合体に代えて、質量比(エチレン/プロピレン)が40/60であるエチレン/プロピレン共重合体(重量平均分子量=20,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-13)を得た。
【0102】
合成例14
合成例1において、質量比(エチレン/オクテン)が30/70であるエチレン/オクテン共重合体(重量平均分子量=25,000)を用いた以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-14)を得た。
【0103】
合成例15
合成例2において、無水マレイン酸の量を8gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-15)を得た。
【0104】
合成例16
合成例3において、無水マレイン酸の量を45g、ジクミルパーオキサイドの量を10gに変更した以外は、同様の操作を行って、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-16)を得た。
【0105】
合成例17
合成例3において、無水マレイン酸の量を45g、ジクミルパーオキサイドの量を7gに変更した以外は、同様の操作を行って得られた、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-17)を得た。
【0106】
製造例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、30gの酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体(P-1)、100gのテトラヒドロフラン、18gのトリエチルアミンおよび252gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。この状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱し、系内温度を120℃に保って60分間撹拌した。その後、水浴につけて撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、64.5gの蒸留水を追加した。得られた分散体を1Lナスフラスコに入れ、60℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、176gの水性媒体を留去した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な水性分散体(E-1)を得た。その結果を表1に示す。
【0107】
【0108】
製造例2~11、13、14、16
製造例1において、酸変性エチレン/αオレフィン共重合体(P-2)~(P-11)、(P-13)、(P-14)、(P-16)を用いた以外は、同様の操作を行って、乳白色の均一な水性分散体(E-2)~(E-11)、(E-13)、(E-14)、(E-16)を得た。その結果を表1に示す。
【0109】
製造例12
製造例1において、ポリオレフィン樹脂(P-12)を用いた以外は、同様の操作を行って、乳白色の均一な水性分散体(E-12)を得た。その結果を表1に示す。
【0110】
製造例15
酸変性エチレン/αオレフィン共重合体(P-15)6gを、294gのトルエンに溶解させて、2質量%の酸変性エチレン-α-オレフィン溶液(E-15)を得た。その結果を表1に示す。
【0111】
製造例17
製造例15において、酸変性エチレン/αオレフィン共重合体(P-17)を使用した以外は同様の操作を行って、2質量%の酸変性エチレン-α-オレフィン溶液(E-17)を作製した。その結果を表1に示す。
【0112】
実施例1
酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性分散体(E-1)と、オキサゾリン化合物の水溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS-700」、固形分濃度:25質量%)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、20質量部となるように混合して得たポリオレフィン樹脂水性分散体を、樹脂層形成用水性分散体として用いて、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET-38」、厚み38μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いてコートした後、140℃で15秒間乾燥させて、厚み0.2μmの樹脂層をフィルム上に形成させたのち、50℃で2日間エージングを行うことで離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムは、表面にハードクロムメッキが施された接圧ロール(最大高さSRmaxが7μm)を用いて、外径が10.5cmの紙管の上に巾800mm、巻取り張力118N/m、巻取り接圧118N/m、巻取り速度100m/分の条件で、長さ500mのロールに巻取った。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
実施例2~14、比較例1~4、6、8、9
実施例1において、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性分散体の種類、架橋剤の種類と含有量を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型フィルムを得た。
なお、実施例13、14では、架橋剤として、カルボジイミド化合物(日清紡社製、カルボジライト「E-02」)を用いた。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0116】
実施例15
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイ備え付けの押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み500μmの未延伸フィルムとした。続いて、90℃で縦方向に3.4倍延伸させた後、グラビアコート機を用いて、ポリオレフィン樹脂水性分散体(E-3)と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS-700」、固形分濃度:25質量%)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、20質量部となるように混合して得た水性分散体を、乾燥、延伸後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布し、次に温度90℃で2秒間予熱した後、240℃で横方向に3.0倍の倍率で延伸し、離型フィルムを得た。得られたポリエステルフィルムと樹脂層を合わせた厚みは、50μmであった。
得られた離型フィルムは、表面にハードクロムメッキが施された接圧ロール(最大高さSRmaxが7μm)を用いて、外径が10.5cmの紙管の上に巾800mm、巻取り張力118N/m、巻取り接圧118N/m、巻取り速度100m/分の条件で、長さ500mのロールに巻取った。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0117】
実施例16
酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性分散体の種類を表2に記載のように変更した以外は、実施例15と同様の操作を行って、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0118】
実施例17
酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体の水性分散体(E-1)と、オキサゾリン化合物の水溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS-700」、固形分濃度:25質量%)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、20質量部となるように混合し、さらに、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「VC-10」)を50質量部(固形分濃度8質量%になるように調製)となるように混合して得たポリオレフィン樹脂水性分散体を、樹脂層形成用水性分散体として用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0119】
実施例18~20
実施例17において、ポリビニルアルコールの含有量を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0120】
比較例5
酸変性エチレン-α-オレフィン溶液(E-15)と、オキサゾリン化合物(日本触媒社製、エポクロスRPS-1005)を混合し、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン/α-オレフィン共重合体100質量部に対して、20質量部となるように混合して得たポリオレフィン樹脂水性分散体を、樹脂層形成用水性分散体として用いて、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET-38」、厚み38μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いてコートした後、140℃で15秒間乾燥させて、厚み0.2μmの樹脂層をフィルム上に形成させたのち、50℃で2日間エージングを行うことで離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0121】
比較例7
比較例5において、酸変性エチレン-α-オレフィン溶液(E-17)を用いた以外は同様の操作を行って、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムについて、表2に示す。また、その評価結果を表3に示す。
【0122】
実施例1~20で得られた離型フィルムは、各種材料との離型性、耐熱性、耐汚染性に優れるものであった。
【0123】
比較例1では、離型性には優れるが、耐汚染性に劣るものであった。
【0124】
比較例2では、樹脂層においてα-オレフィンを含有しないポリオレフィン樹脂を用いたため、離型性に劣るものであった。
【0125】
比較例3では、樹脂層に含有される酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体でのα―オレフィン含有量が上限値を超えたものであったため、離型性に劣るものであった。
【0126】
比較例4では、樹脂層に含有される酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体でのα―オレフィン含有量が上限値を超えたものであったため、離型性に劣るものであった。
【0127】
比較例5では、樹脂層に含有される酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が下限値未満であったため、離型性に劣るとともに、熱処理後の離型性に劣り、耐熱性の低いものであった。
【0128】
比較例6では、樹脂層に含有される酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体の酸変性量が上限値を超えたため、離型性が低下した。
【0129】
比較例7では、離型性に劣るものであった。
【0130】
比較例8では、樹脂層中の架橋剤の含有量が本発明で規定の下限値未満であったために、離型性に劣るとともに、熱処理後の離型性に劣り、耐熱性の低いものであった。
【0131】
比較例9では、樹脂層中の架橋剤の含有量が本発明で規定の上限値よりも多いために、離型性に劣るものであった。