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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188007
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】圧力測定用チャンバ
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20221213BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20221213BHJP
   G01L 19/14 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01L7/00 L
A61M1/36 105
G01L19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092830
(22)【出願日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021095674
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 健志
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
【テーマコード(参考)】
2F055
4C077
【Fターム(参考)】
2F055GG12
2F055GG25
4C077EE01
4C077JJ03
4C077JJ13
4C077KK17
4C077KK21
(57)【要約】
【課題】従来の圧力測定用チャンバが有する種々の問題のいずれかを解決できるようにする。
【解決手段】圧力測定用チャンバ100は、本体部101と、カバー部102と、その間に挟持された可撓性膜103とを備えている。可撓性膜103は、下方に突出する下方突出部183を外縁部に有し、本体部101及びカバー部102のうち可撓性膜103の下側に位置する部材は、下方突出部183の内周面と対向する内側支持壁191aを有し、本体部101及びカバー部102のうち可撓性膜103の上側に位置する部材は、下方突出部183の外周面と対向し、少なくとも可撓性膜103の上面から下面に亘って延びる外側支持壁195aを有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、カバー部と、前記本体部及び前記カバー部に挟持された可撓性膜とを備え、
前記可撓性膜は、下方に突出する下方突出部を外縁部に有し、
前記本体部及び前記カバー部のうち前記可撓性膜の下側に位置する部材は、前記下方突出部の内周面と対向する内側支持壁を有し、
前記本体部及び前記カバー部のうち前記可撓性膜の上側に位置する部材は、前記下方突出部の外周面と対向し、少なくとも前記可撓性膜の上面から下面に亘って延びる外側支持壁を有する、圧力測定用チャンバ。
【請求項2】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、
前記本体鍔部は、前記膜鍔部よりも外側に前記膜鍔部の最も上側の位置を超えて前記カバー部側へ突出するガイド壁を有し、
前記カバー鍔部は、前記カバードーム部と同じ側に突出したリムと、前記リムと前記カバードーム部との間に形成され、前記本体部側に向かって凹む環状凹部とを有する、圧力測定用チャンバ。
【請求項3】
前記本体鍔部は、前記ガイド壁よりも内側に溝部を有し、前記ガイド壁の前記溝部の底面からの突出高さは、前記溝部の深さの2倍以上である、請求項2に記載の圧力測定用チャンバ。
【請求項4】
前記膜鍔部は、前記本体鍔部及び前記カバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、前記被圧縮部よりも肉厚で、前記本体部側及び前記カバー部側の少なくとも一方に突出したアウターリップ部を有し、
前記本体鍔部又は前記カバー鍔部は、前記アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、
前記受入溝は、前記アウターリップ部の底面との間に空隙が形成される、請求項2に記載の圧力測定用チャンバ。
【請求項5】
前記可撓性膜は、前記膜鍔部に囲まれドーム状に突出するドーム膜部と、前記ドーム膜部と前記被圧縮部との間に形成され、前記ドーム膜部及び前記被圧縮部と比べて肉薄に形成された変形容易部とを有する、請求項4に記載の圧力測定用チャンバ。
【請求項6】
前記カバー部は、前記アウターリップ部と対向する位置に、変形規制凸部を有している、請求項4又は5に記載の圧力測定用チャンバ。
【請求項7】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有する可撓性膜とを備え、
前記カバー鍔部は、前記膜鍔部との当接面と反対側の面が前記本体部側に向かって凹む環状凹部を有する、圧力測定用チャンバ。
【請求項8】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、
前記本体鍔部は、前記膜鍔部よりも外側に前記カバー部側に突出したガイド壁を有し、前記ガイド壁よりも内側に溝部を有し、
前記ガイド壁の前記溝部の底面からの突出高さは、前記溝部の深さの2倍以上である、圧力測定用チャンバ。
【請求項9】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、
前記膜鍔部は、前記本体鍔部及び前記カバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、前記被圧縮部よりも肉厚で、前記本体部側及び前記カバー部側の少なくとも一方に突出したアウターリップ部を有し、
前記本体鍔部又は前記カバー鍔部は、前記アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、
前記受入溝は、前記アウターリップ部の底面との間に空隙が形成される、圧力測定用チャンバ。
【請求項10】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、
前記膜鍔部は、前記本体鍔部及び前記カバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、前記被圧縮部よりも肉厚で、前記本体部側に突出したアウターリップ部を有し、
前記本体鍔部は、前記アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、
前記カバー部は前記アウターリップ部と対向する位置に、変形規制凸部を有している、圧力測定用チャンバ。
【請求項11】
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、
前記本体鍔部と前記カバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、
前記可撓性膜は前記膜鍔部に囲まれたドーム状に突出するドーム膜部と、前記ドーム膜部と前記膜鍔部との間に形成された変形容易部とを有し、
前記膜鍔部は、前記本体鍔部又は前記カバー鍔部に圧縮される被圧縮部を有し、
前記変形容易部は、前記被圧縮部及び前記ドーム膜部と比べて肉薄である、圧力測定用チャンバ。
【請求項12】
体外循環用の装置に取り付け可能な圧力測定用チャンバであって、
外縁に本体鍔部を有する本体部と、
外縁にカバー鍔部を有し、前記本体部と共に内部に空洞を形成するカバー部と、
下面を本体部側にし、上面をカバー部側にして前記本体部と前記カバー部との間に配置された可撓性膜とを備え、
前記本体鍔部及び前記カバー鍔部の側面と前記装置とが対向する向きで装置に取り付けられる、圧力測定用チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力測定用チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
透析回路等の血液の体外循環回路においては、循環ラインにおける圧力測定が欠かせない。例えば、人工透析において血液の圧力が設定圧力からずれてしまうと、血球にダメージを与えたりしてしまう。
【0003】
体外循環回路における圧力測定は、回路中に設けられたドリップチャンバ内の空気圧を測定することにより一般に行われている。しかし、ドリップチャンバにおいて血液と空気とが接触すると、血栓が生じやすくなるという問題がある。このため、血液と空気とが接触しないようにした圧力測定用チャンバの利用が検討されている。
【0004】
例えば、組み合わせることにより内部に空洞が形成される本体部とカバー部との間に軟質の可撓性膜を挟み込むことにより、空洞を血液が流れる血液チャンバと、空気で満たされた空気チャンバとに分離し、空気チャンバにおいて圧力を測定する圧力測定用チャンバが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-051663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような圧力測定用チャンバは、種々の問題を有している。可撓性膜により分離された圧力測定用チャンバは、可撓性膜をシールとして機能させることにより、血液の漏れが生じないようにしている。このため、可撓性膜の外縁部は、本体部及びカバー部により強く押圧、圧縮される。しかし、可撓性膜を均一に押圧、圧縮できないと漏れが発生する原因となる。このため、押圧部の成型精度は非常に重要である。
【0007】
また、組立の際に本体部、カバー部及び可撓性膜の位置を正確に合わせることができないと、可撓性膜に歪みや皺が発生したり、正しく圧縮できなかったりして漏れが発生する原因となる。
【0008】
また、本体部及びカバー部だけでなく可撓性膜の形態による問題も存在する。圧力の変化に追随して容易に変形するように可撓性膜を薄くすると、可撓性膜の形態安定性が低下して組立性が大きく低下する。また、組立の際に可撓性膜に歪みや皺が発生して測定精度が低下したり、漏れが発生したりする原因となる。
【0009】
また、薄い可撓性膜は、内側に抜け落ちやすくなるという問題も有する。
【0010】
また、圧力測定用チャンバは、透析等の間に動かないように装置に固定することが好ましい。しかし、安定して固定できるように、可撓性膜の膜面と装置のパネル面とが平行になるように固定すると、血液チャンバ及び空気チャンバの一方が隠れてしまい、動作チェックが困難になるという問題がある。
【0011】
本開示の課題は、可撓性膜を有する圧力測定チャンバにおいて生じる種々の問題の少なくとも1つを解決できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の圧力測定用チャンバの第1の態様は、本体部と、カバー部と、本体部及びカバー部に挟持された可撓性膜とを備え、可撓性膜は、下方に突出する下方突出部を外縁部に有し、本体部及びカバー部のうち可撓性膜の下側に位置する部材は、下方突出部の内周面と対向する内側支持壁を有し、本体部及びカバー部のうち可撓性膜の上側に位置する部材は、下方突出部の外周面と対向し、少なくとも下方突出部の上面から下面に亘って延びる外側支持壁を有する。
【0013】
本開示の圧力測定用チャンバの第1の態様において、本体部及びカバー部の一方が、可撓性膜の内周面と対向し、他方が外周面と対向する。このため、3つの部材が互いに対向し合った状態で位置合わせがされるため、一旦合わせた位置関係がずれにくいので、組み立て精度が向上し、測定精度の低下や、漏れの発生を抑えることができる。また、下方突出部の外周面と対向する外側支持壁が少なくとも下方突出部の上面から下面に亘っての延びている。このため、本体部とカバー部との間隔は外側支持壁により規定されるので、挟持される可撓性膜が過剰に圧縮される事態を避けることができる。
【0014】
本開示の圧力測定用チャンバの第1の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及び前記カバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を前記本体部側にして、上面を前記カバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、本体鍔部は、膜鍔部よりも外側に膜鍔部の最も上側の位置を超えてカバー部側へ突出するガイド壁を有し、カバー鍔部は、カバードーム部と同じ側に突出したリムと、リムとカバードーム部との間に形成され、本体部側に向かって凹む環状凹部とを有する。
【0015】
圧力測定用チャンバの第1の態様によれば、カバー鍔部が、カバードーム部と同じ側に突出したリムと、リムとカバードーム部との間に形成された環状凹部とを有している。本体鍔部との位置合わせ部を形成するリムの部分は、カバードーム部と同じ側に膨らんだ形状となるため、カバー鍔部の全体をリムにした場合には、膜鍔部を挟み込む部分が肉厚になってしまい、その部分の成形精度が低下して形状に歪みが生じ、カバー鍔部の全周において均一に被圧縮部を押圧できなくなる。本態様の圧力測定用チャンバでは、肉薄となった環状凹部の反対側の面でまく鍔部を挟み込むため、カバー側圧縮部に歪みが生じにくく、均一に非圧縮部を押圧できるので、血液の漏れを生じにくくすることができる。
【0016】
第1の態様において、本体鍔部は、ガイド壁よりも内側に溝部を有し、ガイド壁の前記溝部の底面からの突出高さは、溝部の深さの2倍以上とすることができる。このような構成とすることにより、膜鍔部の位置合わせがしやすくなる。また、本体部とカバードーム部とを溶着により固定する場合、溶着される箇所(例えばガイド壁の上端部)と、膜鍔部を挟み込む部分とを離すことができるので、溶着時の熱や圧力がシールに与える影響を小さくすることができる。
【0017】
第1の態様において、膜鍔部は、本体鍔部及びカバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、被圧縮部よりも肉厚で、本体部側及びカバー部側の少なくとも一方に突出したアウターリップ部を有し、本体鍔部又はカバー鍔部は、アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、受入溝は、アウターリップ部の底面との間に空隙が形成されるようにすることができる。このような構成とすることにより、可撓性膜の形状安定性が向上するため、組立が容易となる。また、アウターリップ部が抜け止めとして機能するので可撓性膜が内側に引っ張られた場合に脱落が生じにくくできる。さらに、被圧縮部の部分から微量の血液が漏れたとしても、空隙において吸収することができ、漏れ出した血液が空気チャンバ側へ回り込む事態を低減することができる。
【0018】
第1の態様において、可撓性膜は、膜鍔部に囲まれドーム状に突出するドーム膜部と、ドーム膜部と被圧縮部との間に形成され、ドーム膜部及び被圧縮部と比べて肉薄に形成された変形容易部とを有していてもよい。このような構成とすることにより、被圧縮部におけるシール性を低下させることなく、可撓性膜の圧力変化に対する追随性が向上するので、正確な圧力測定ができる。また、可撓性膜全体を肉薄にした場合と異なり、可撓性膜に意図しない変形や破損が生じにくく、可撓性膜の形状安定性を維持することができるので、組立の際の位置合わせ等も容易である。
【0019】
第1の態様において、カバー部は、アウターリップ部と対向する位置に、変形規制凸部を有していてもよい。このような構成とすることにより、可撓性膜が内側に引っ張られた際に、アウターリップ部が非圧縮部の外側端部を支点として回転するような事態を生じにくくして、可撓性膜を抜け落ちにくくすることができる。
【0020】
圧力測定用チャンバの第2の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及びカバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有する可撓性膜とを備え、カバー鍔部は、膜鍔部との当接面と反対側の面が本体部側に向かって凹む環状凹部を有する。
【0021】
第2の態様は、膜鍔部との当接面と反対側の面が本体部側に向かって凹む環状凹部をカバー鍔部が有しているので、カバー鍔部は肉薄となり、押圧部分の成形精度が向上する。これにより、膜鍔部を均一に押圧できるようになり、漏れを生じにくくすることができる。
【0022】
圧力測定用チャンバの第3の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及びカバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を本体部側にして、上面をカバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、本体鍔部は、膜鍔部よりも外側にカバー部側に突出したガイド壁を有し、ガイド壁よりも内側に溝部を有し、ガイド壁の溝部の底面からの突出高さは、溝部の深さの2倍以上である。
【0023】
圧力測定用チャンバの第3の態様によれば、突出高さが溝部の深さの2倍以上であるガイド壁をガイド溝に嵌め込んで本体部とカバー部とを位置合わせするため、本体部とカバー部との位置合わせが正確にでき、被圧縮部を正確に押圧して圧縮できるので、血液の漏れを生じにくくすることができる。
【0024】
圧力測定用チャンバの第4の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及びカバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を本体部側にして、上面をカバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、膜鍔部は、本体鍔部及びカバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、被圧縮部よりも肉厚で、本体部側又はカバー部側の少なくとも一方に突出したアウターリップ部を有し、本体鍔部又はカバー鍔部は、アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、受入溝は、アウターリップ部の底面との間に空隙が形成される。
【0025】
圧力測定用チャンバの第4の態様によれば、アウターリップ部を有しているので、可撓性膜の形状安定性が向上するため、組立が容易となる。また、アウターリップ部が抜け止めとして機能するので可撓性膜が内側に引っ張られた場合に脱落が生じにくくできる。さらに、アウターリップ部の受入溝がアウターリップ部の底面との間に空隙を有するため、被圧縮部の部分から微量の血液が漏れたとしても、空隙において吸収することができ、漏れ出した血液が空気チャンバ側へ回り込む事態を避けることができる。
【0026】
圧力測定用チャンバの第5の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及びカバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を本体部側にして、上面をカバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、膜鍔部は、本体鍔部及びカバー鍔部に圧縮される被圧縮部と、被圧縮部よりも肉厚で、本体部側に突出したアウターリップ部を有し、本体鍔部は、アウターリップ部を受け入れる受入溝を有し、カバー部はアウターリップ部と対向する位置に、変形規制凸部を有している。
【0027】
圧力測定用チャンバの第5の態様によれば、アウターリップ部を有しているので、可撓性膜の形状安定性が向上するため、組立が容易となる。また、アウターリップ部が抜け止めとして機能するので可撓性膜が内側に引っ張られた場合に脱落が生じにくくできる。さらに、変形規制凸部を有しているので、可撓性膜が内側に引っ張られた際に、アウターリップ部が非圧縮部の外側端部を支点として回転するような事態を生じにくくして、可撓性膜を抜け落ちにくくすることができる。
【0028】
圧力測定用チャンバの第6の態様は、外縁に本体鍔部を有する本体部と、本体部と共に内部に空洞を形成するカバードーム部及びカバードーム部を囲むカバー鍔部を有するカバー部と、本体鍔部とカバー鍔部との間に挟まれた膜鍔部を有し、下面を本体部側にして、上面をカバー部側にして配置された可撓性膜とを備え、可撓性膜は膜鍔部に囲まれたドーム状に突出するドーム膜部と、ドーム膜部と膜鍔部との間に形成された変形容易部とを有し、膜鍔部は、本体鍔部又はカバー鍔部に圧縮される被圧縮部を有し、変形容易部は、被圧縮部及びドーム膜部と比べて肉薄である。
【0029】
圧力測定用チャンバの第6の態様は、被圧縮部及びドーム膜部と比べて肉薄である変形容易部を有している。このため、被圧縮部及びドーム膜部の膜厚を確保できるので被圧縮部におけるシール性及びドーム膜部の強度を犠牲にすることなく、可撓性膜を血圧の変化に追随しやすくでき、測定精度を構造できる。また、ドーム膜部及び被圧縮部の膜厚を十分に厚くすることができるので、可撓性膜に形状安定性を付与することができ、組み付けの際の位置合わせや形状保持が容易となる。
【0030】
圧力測定用チャンバの第7の態様は、体外循環用の装置に取り付け可能であり、外縁に本体鍔部を有する本体部と、外縁にカバー鍔部を有し、本体部と共に内部に空洞を形成するカバー部と、下面を本体部側にし、上面をカバー部側にして本体部とカバー部との間に配置された可撓性膜とを備え、本体鍔部及びカバー鍔部の側面と装置とが対向する向きで装置に取り付けられる。
【0031】
圧力測定用チャンバの第7の態様によれば、装置係合部により圧力測定チャンバを透析装置に取り付けることができるので、操作中に圧力測定用チャンバが捻れて測定に支障を来したりすることを避けることができる。また、膜の変位を容易に確認することができ、例えば返血時に生理食塩水が支障なく流動できているかを確認することができる。なお、本体部及びカバー部の鍔部には使用者が装置から取り外しやすいように、把持部があることが好ましく、把持部は凹部または凸部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本開示の圧力測定用チャンバによれば、従来の可撓性膜を有する圧力測定用チャンバが有する種々の問題のいずれかを実現できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態に係る圧力測定用チャンバを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る圧力チャンバの長軸方向の断面図である。
図3】一実施形態に係る圧力チャンバの短軸方向の断面図である。
図4】短軸方向の断面を拡大して示す図である。
図5】組立前の短軸方向の断面を拡大して示す図である。
図6】本体鍔部を拡大して示す断面図である。
図7】カバー鍔部を拡大して示す断面図である。
図8】膜鍔部を拡大して示す断面図である。
図9】変形例に係る圧力チャンバの短軸方向の断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の圧力測定用チャンバ100は、体外循環血液回路等に用いられ、図1図3に示すように、本体部101、カバー部102及び可撓性膜103を有している。
【0035】
本開示の圧力測定用チャンバ100を使用する際の向きは限定されないが、以下においては、本体部101を下側にし、カバー部102を上側にした状態について説明する。
【0036】
本体部101は、長軸及び短軸を有する平面楕円形状であり、下に凸となった本体ドーム部111と、本体ドーム部111を囲む本体鍔部112とを有している。長軸方向の両端には、血液の出入り口となるポート115及びポート116を有している。ポート115及びポート116は、本体ドーム部111と連通している。また、血液回路のチューブを接続することができる。
【0037】
カバー部102は、本体部101と対応した平面楕円形状であり、上に凸となったカバードーム部121と、カバードーム部121を囲むカバー鍔部122とを有している。カバードーム部121には、上側に突出した圧力検出ポート125が形成されている。圧力検出ポート125には、チューブを介して圧力測定装置と接続することができる。
【0038】
可撓性膜103は、ダイアフラムとして機能するドーム状の膜本体131と、膜本体131を囲む膜鍔部132とを有している。膜本体131は、本体ドーム部111及びカバードーム部121により形成される空洞(チャンバ)105を、本体部101側の血液チャンバ151と、カバー部102側の空気チャンバ152とに分割する。血液チャンバ151内の圧力の変化に追随して膜本体131が変形し、空気チャンバ152側に圧力の変化を伝えることができる。なお、ドーム状の膜本体131が上に凸となり、空気チャンバ152がほとんど形成されていない状態を示したが、血液チャンバ151内の圧力によっては、ドーム状の膜本体131が下に凸となる場合もある。
【0039】
図4図8に示すように、本体鍔部112は、本体側圧縮部161と、本体側圧縮部161よりも外側に設けられたガイド壁162と、本体側圧縮部161とガイド壁162との間に設けられた受入溝163とを有している。カバー鍔部122は、カバー側圧縮部171と、カバー側圧縮部171よりも外側に設けられたガイド溝172とを有している。膜鍔部132は、本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171とにより押圧され圧縮される被圧縮部181と、被圧縮部181よりも外側に設けられ、被圧縮部181よりも肉厚で且つ下側(本体部側)に突出するアウターリップ部183とを有している。
【0040】
アウターリップ部183を受入溝163に挿入することにより、被圧縮部181の下面が本体側圧縮部161と当接するように位置合わせされる。この状態で、ガイド壁162をガイド溝172に挿入すると、カバー側圧縮部171が被圧縮部181の上面と当接するように位置合わせされる。ガイド壁162の上端には、突出した本体側溶着部166が設けられており、ガイド溝172の底面は、本体側溶着部166と当接するカバー側溶着部176となっている。可撓性膜103を挟んだ状態で、本体部101とカバー部102とを押圧して超音波又は高周波等を照射することにより本体側溶着部166とカバー側溶着部176とを溶着すると、本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間隔が狭くなり、被圧縮部181が押圧されて圧縮された状態で本体部101とカバー部102とが固定される。本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間は、圧縮された被圧縮部181によりシールされる。
【0041】
本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間を正しくシールするためには、本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171とが正確に向き合うと共に、被圧縮部181が本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間に正確に配置された状態で本体部101とカバー部102とを溶着することが重要である。本実施形態においては、本体鍔部112にアウターリップ部183を受け入れて位置合わせをする受入溝163が形成されている。また、ガイド壁162とガイド溝172とが、本体部101とカバー部102との位置合わせをする位置合わせ部として機能し、本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171とを正しく向かい合わせることができる。さらに、凹凸により位置合わせされているため、本体部101とカバー部102とを溶着する際に位置ずれが生じにくく、本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間に被圧縮部181が正しく配置された状態を溶着の間維持することが容易にできる。
【0042】
また、シールのためには、被圧縮部181の位置だけでなく、この部分に歪が生じたり、皺が寄ったりしないようにすることも重要である。アウターリップ部183に力を加えて変形させると、被圧縮部181まで変形して歪んだり、皺が生じたりするおそれがある。しかし、本実施形態において、受入溝163は、力を加えて変形させることなくアウターリップ部183を挿入できるようになっている。このため、アウターリップ部183を受入溝163に挿入する際に被圧縮部181に歪が生じたり、皺が生じたりすることを避けることができる。具体的には、受入溝163の幅w1がアウターリップ部183の最大幅w2よりも大きく、本体側圧縮部161から受入溝163の底面までの深さh1が、アウターリップ部183の下面から被圧縮部181下面までの高さh2よりも大きい。
【0043】
受入溝163の深さh1をアウターリップ部183の高さh2よりも大きくすることにより、アウターリップ部183の上面にカバー鍔部122の下面が当接しても、アウターリップ部183に大きな圧力が加わり変形しないようにすることができる。これにより、アウターリップ部183が受入溝163に挿入された後に変形させるような力が加わり、被圧縮部181に歪みが生じたり、皺が生じたりすることも避けることができる。
【0044】
さらに、受入溝163の深さh1をアウターリップ部183の高さh2よりも大きくすることにより、アウターリップ部183の底面と、受入溝163の底面との間に隙間167を形成することができる。隙間167が形成されていることにより、万が一被圧縮部181の部分から微量の血液が漏れたとしても、隙間167を越えないようにすることができる。隙間167がない場合には微量の血液であっても、毛管現象により空気チャンバ152側に血液が回り込んでしまうおそれがある。血液が空気チャンバ152側に回り込むと、圧力検出ポート125の先に接続された圧力測定装置を汚染してしまうため、圧力検出ポート125と圧力測定装置との間にはフィルタを挿入することが一般的である。しかし、隙間167を設けることにより、血液の回り込みが生じる可能性を大きく低減できるので、フィルタを用いない運用も可能となる。
【0045】
受入溝163の底面の形状は、特に限定されないが、アウターリップ部の底面が平面状の場合、弧状にすることが好ましい。受入溝163の底面を弧状とすることにより、V字状の場合よりも隙間の体積を大きくすることができる。また、角形状の場合よりも金型が抜きやすいので成型が容易となる。
【0046】
なお、アウターリップ部183の底面と、受入溝163の底面との間の隙間167は、必要に応じて設ければよい。受入溝163の深さh1とアウターリップ部183の高さh2とがほぼ等しく、肉眼で見えるような隙間がない場合であっても、シール機能が低下しないようにする効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態において、アウターリップ部183の最大肉厚t2は、圧縮されていない状態の被圧縮部181の肉厚t1よりも大きい。このため、膜本体131の変形によって可撓性膜103を内側に引っ張る力が生じても、アウターリップ部183が本体側圧縮部161とカバー側圧縮部171との間をすり抜けて内側に抜け落ちないようにできる。また、カバー側圧縮部171に、圧縮凸部174を設けることにより、被圧縮部181を押圧する力を強くすると共に、被圧縮部181が空洞105側にずれにくくすることができる。圧縮凸部174は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。また、本体側圧縮部161にも圧縮凸部を設けることができる。
【0048】
本実施形態において、アウターリップ部183の上面は、被圧縮部181の上面と面一になっているが、アウターリップ部183の上面の最外縁には、切欠183aが形成されている。また、カバー鍔部122のカバー側圧縮部171と、ガイド溝172との間には、カバー側圧縮部171よりも下型に突出した規制凸部175が形成されている。規制凸部175は、アウターリップ部183を変形させることなく、切欠183aの部分に挿入されるように形成されている。膜本体131を内側に引っ張るような力が生じると、被圧縮部181の外側端部を支点としてアウターリップ部183を回転させるように力が加わる。規制凸部175を設けることにより、このような回転方向の力が加わった際にアウターリップ部183が移動して抜け落ちないようにすることができる。但し、切欠183a及び規制凸部175は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0049】
本実施形態において、アウターリップ部183が、下側に突出する例を示した。しかし、アウターリップ部183は、上側(カバー部側)に突出するようにしてもよい。この場合、アウターリップ部183を受け入れる受入溝は、カバー鍔部122側に設ける。また、アウターリップ部183が、上側及び下側の両方向に突出するようにし、受入溝を本体鍔部112及びカバー鍔部122の両方に設けることもできる。
【0050】
本実施形態において、ガイド壁162の上端の位置は、本体側圧縮部161の上面の位置よりも上側となっている。また、ガイド壁162を受け入れるガイド溝172を形成するカバー鍔部122の外縁壁177の下端の位置は、カバー側圧縮部171の下面の位置よりも下側となっている。このように、ガイド壁162の高さを高く、ガイド溝172の深さを深くすることにより、溶着をする前に本体部101とカバー部102とがずれてしまうような問題の発生を抑えて、生産性を向上することができる。また、本体側溶着部166及びカバー側溶着部176の位置が、本体側圧縮部161及びカバー側圧縮部171の位置から離れているため、溶着時に変形が生じたとしても、本体側圧縮部161及びカバー側圧縮部171に影響を与えないようにすることができる。さらに溶着部が溝の深い位置にあることにより、溶着時に発生したバリが外側にはみ出すような事態も生じにくくすることができる。
【0051】
なお、カバー鍔部122の外縁壁177は設けなくてもよい。この場合、ガイド溝172は形成されないが、ガイド壁162の内側の壁を、カバー鍔部122の外側の壁と当接させることにより位置合わせを行うことができる。なお、ガイド壁162の外側の壁が圧力測定用チャンバ100の外側に露出するので、ガイド壁162の厚さw3をある程度厚くして強度を確保することが好ましい。また、ガイド壁162の外側にもう一つ壁を形成し、カバー鍔部122の外縁壁177を受け入れる溝を作ることもできる。このような構成とすれば、位置合わせの精度がさらに高くなり、強度も大きくすることができる。ガイド壁を本体鍔部112側に設ける例を示したが、下側に突出するガイド壁をカバー鍔部122側に形成し、本体鍔部112側にカバー鍔部122側に形成されたガイド壁を受け入れるガイド溝を作ることもできる。
【0052】
ガイド壁162の膜鍔部132と当接する本体側圧縮部161の上面からの突出高さh3は、特に限定されないが、本体側圧縮部161の上面から膜鍔部132の最も上側の位置までの高さよりも高いことが好ましい。また、ガイド壁162の受入溝163の底面からの突出高さ(h1+h3))が、受入溝の深さ(h1)の2倍以上であることが好ましい。このようにすることにより、ガイド壁162の上端に設けられた本体側溶着部166と、本体側圧縮部161との距離を十分に離すことができるので、本体側圧縮部161に溶着の影響が及ばないようにする効果を高めることができる。なお、本実施形態において、本体側圧縮部161の上面から膜鍔部132の最も上側の位置までの高さは、圧縮された状態の被圧縮部181の肉厚と等しくなる。
【0053】
本実施形態において、カバー鍔部122は、上側に突出したリム178を外縁に有し、カバードーム部121とリム178との間には環状凹部179を有している。本体鍔部112に上側に突出する位置合わせ凸部を設け、カバー鍔部122に位置合わせ凸部を受け入れる位置合わせ凹部を設ける場合に、カバー鍔部122全体を肉厚にして位置合わせ凹部を形成すると、カバー側圧縮部171の位置に歪みが生じ、被圧縮部181を正確に押圧できずに漏れが発生する原因となるおそれがある。本実施形態においては、ガイド壁162を受け入れるガイド溝172をリム178の下面側に形成し、カバードーム部121とリム178との間に形成された環状凹部179の下面側に、カバー側圧縮部171を形成している。このため、カバー鍔部122における肉厚をほぼ一定とすることができるので、カバー側圧縮部171における歪みの発生を抑えることができる。
【0054】
ガイド壁162及び環状凹部179を形成する場合、本体部101とカバー部102とを組み立てた状態において、ガイド壁162の上端が、環状凹部179の底面よりも上側になるようにすることが好ましい。このようにすれば、各部の肉厚をほぼ一定に揃えつつ、ガイド壁162の高さを高くできるので、成形精度が向上すると共に、組立が容易となる。
【0055】
本実施形態において、可撓性膜103の膜本体131における膜鍔部132との接続部には、変形容易部135が形成されている。変形容易部135は、膜本体131の変形容易部135よりも内側のドーム膜部134及び被圧縮部181より肉薄である。膜本体131における膜鍔部132との接続部に変形容易部135を設けることにより、血液チャンバ151内の圧力が変化した際に膜本体131が追随性して変形しやすくできる。このため、圧力の測定精度を向上することができる。また、圧力に対する応答性を犠牲にすることなく、被圧縮部181及びドーム膜部134の膜厚を厚くすることができる。これにより、シール性を向上させたり、ドーム膜部134を破れにくくしたりすることができる。また、可撓性膜103全体を薄くした場合と異なり、可撓性膜103にある程度の形状安定性を付与することができるので、組立の際の可撓性膜103の位置合わせが容易となる。
【0056】
本実施形態においては、可撓性膜103の膜本体131は、中央部にドーム膜部134よりも肉厚になった中央肉厚部136を有している。中央肉厚部136を設けることにより、膜本体131の形状安定性が向上し、ドーム状に維持されやすくなるので、組立性をさらに向上させることができる。ドーム膜部134は、厚さをほぼ一定とすることができるが、ドーム膜部134を中央部に向かって次第に厚くなるようにすることもできる。なお、他の部分より肉厚の、中央肉厚部136とアウターリップ部183とが、可撓性膜103の中央部と外縁部の両方にあることにより、可撓性膜103の形状安定性をさらに向上させることができる。
【0057】
本実施形態において、カバードーム部121の内面における圧力検出ポート125の周辺には、凸部126が形成されている。また、カバードーム部121の内面には、中心部から外縁部に延びる複数のリブ128が形成されている。さらに、カバードーム部121の中央部には、成型の際のゲート跡である窪み129が生じている。可撓性膜103の膜本体131がカバードーム部121の内面に張り付いてしまうと、血液チャンバ151内の圧力が変化しても圧力検出ポート125に繋がる通気路が形成されず、圧力測定が正確にできなくなるおそれがある。カバードーム部121の内面に凸部126やリブ128を設けることにより、膜本体131の張り付きを生じにくくし、測定精度を向上させることができる。また、ゲート跡の窪み192によっても張り付きを生じにくくする効果を発揮させることができる。但し、凸部126やリブ128は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。また、ゲート跡がカバードーム部121の中央部に生じるようにしなくてもよい。
【0058】
本実施形態において、カバー部102の長軸の両端部に、外方向に突出した平面突出部127が形成されている。平面突出部127を設けることにより、カバー部102を本体部101に対して位置合わせすることが容易となる。但し、平面突出部127は、必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0059】
本実施形態において、本体ドーム部111及びカバードーム部121を組み合わせて形成される空洞105の平面形状を平面楕円形状とした。空洞105の平面形状を楕円形状等の長軸と短軸とを有する形状とすることにより、血液の滞留を生じにくくすることができる。長軸と短軸とを有している平面形状は特に限定されないが、角がない形状である方が血栓の形成を抑える観点から好ましい。なお、空洞105の平面形状は、長軸と短軸とを有している形状に限らず、円形状等の等方形状とすることもできる。本体ドーム部111及びカバードーム部121を組み合わせて形成される空洞105は回転楕円体状でなくともよい。また、空洞105の平面形状が長軸と短軸とを有する形状である場合には、血液の出入り口となるポート115及びポート116は、長軸方向の互いに反対側に設けることにより、血液チャンバ151内に滞留を生じにくくすることができるので好ましい。
【0060】
本実施形態の圧力測定用チャンバ100は、透析装置等の体外循環用の装置に着脱可能に取り付ける構成とすることができる。このようにすれば、操作中に圧力測定用チャンバ100が引っ張られたり、捻れたりしてチューブが閉塞するような事態の発生を避けることができる。また、圧力測定用チャンバ100が操作者の手や装置等に当たって破損するような事態の発生も避けることができる。
【0061】
圧力測定用チャンバ100を装置に取り付ける場合には、チューブポンプ等が設けられた装置のパネルの面に対して、本体鍔部112及びカバー鍔部122の側面が対向するように取り付けることが好ましい。本体鍔部112及びカバー鍔部の上面又は下面が装置のパネル面に対して平行になるように取り付けると、パネル面と対抗する面を大きくできるので安定して取り付けることができる。しかし、血液チャンバ151及び空気チャンバ152の一方が隠されて視認できなくなるので、圧力測定用チャンバ100の動作確認を十分にできなくなる。本体鍔部112及びカバー鍔部122の側面がパネル面と対向するように取り付けることにより、血液チャンバ151及び空気チャンバ152の両方を操作中に視認することができ、圧力測定用チャンバ100が正常に動作しているかどうかの確認が容易となる。
【0062】
リム178及び環状凹部179の一部を装置係合部とし、この部分を挟むようなクリップ等からなる被係合部を装置に設ければ、パネル面に対して本体鍔部112及びカバー鍔部122の側面が対向するように容易に取り付けることができる。また、ポート115及びポート116の部分を装置係合部とし、パネル面から突出した2つのクリップによりポート115及びポート116を挟み込む構成とすることもできる。装置係合部及び被係合部は、このような構成に限らず、装置に取り付けることができればどのような構成であってもよい。例えば、本体ドーム部111とカバードーム部121とを装置係合部とし、この部分を挟み込む被係合部を装置側に設けたり、リム178の部分から径方向外側に突出する突起を設け、この突起を受け入れる凹部からなる被係合部を装置側に設けたりすることができる。なお、装置係合部は、カバー部102側ではなく、本体部101側に設けたり、両方に設けたりすることもできる。
【0063】
クリップ等により圧力測定用チャンバ100を装置に取り付けた場合、圧力測定用チャンバ100の操作パネル面から突出した部分を把持して引っ張ることにより圧力測定用チャンバ100を取り外すことができる。本実施形態においては、圧力測定用チャンバ100の外縁部にリム178及び環状凹部179により形成された凹凸が把持部として機能するため、取り外しが容易にできる。把持部は、このような構成に限らず、圧力測定用チャンバ100を装置の操作パネル面に取り付けた際に、パネル面と対抗しておらず装置から突出した位置に設けられた把持しやすい構造であればよい。例えば、リム178の部分から径方向外側に把持できるタブ状の凸部を設けることができる。なお、把持部は、カバー部102側ではなく、本体部101側に設けたり、両方に設けたりすることもできる。また、本実施形態では、環状凹部179は把持部であると共に、装置係合部も兼ねているが、それぞれを別々の部位に設けてもよく、凹部は環状でなくともよい。
【0064】
本体部101及びカバー部102の材質はある程度の剛性を有する材料であれば特に限定されないが、透明な材料により形成すれば、血流の確認が容易となる。例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、及びグリコール変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポルエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、並びにポリスルホン樹脂等を用いることができる。本体部101及びカバー部102は全体を透明とすることができるが、一方のみを透明としたり、一部のみを透明としたり、不透明としたりすることもできる。
【0065】
可撓性膜103は、可撓性の材料により形成することができ、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及びスチレン-ブタジエンゴム等の各種ゴム材料、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、及びスチレン系等の各種熱可塑性エラストマ、並びにポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、及びポリアミド等の軟質の樹脂を用いることができる。
【0066】
本実施形態において、被圧縮部分における血液の漏れを生じにくくするための構成、位置合わせのための構成、可撓性膜の変形や抜け落ちを生じにくくする構成、微量の血液の漏れが生じたとしても圧力測定装置に影響を与えにくくする構成等の種々の構成を備えた圧力測定用チャンバを示した。しかし、これらの構成の全てを備えている必要はなく、少なくとも1つを備えていればよい。
【0067】
可撓性膜103の位置ずれを生じにくくする方法として、図9に示す変形例の構成を採用することもできる。図9において、可撓性膜103は、外縁部に下方に突出する下方突出部であるアウターリップ部183を有している。本体部101は、内壁191の外側に、アウターリップ部183を受け入れる受入溝193を有している。受入溝193の幅W2は、アウターリップ部183の幅W3よりも大きい。受入溝193のアウターリップ部183よりも外側には、カバー部102から下方に突出するガイド凸部195が挿入される。このため、受入溝193の壁面が、アウターリップ部183の内周面と対向する内側支持壁191aとなり、ガイド凸部195の壁面がアウターリップ部183の外周面と対向する外側支持壁195aとなる。
【0068】
本変形例においては、アウターリップ部183の内周面は本体部101の受入溝193の壁面である内側支持壁191aと対向し、外周面はカバー部102のガイド凸部195の壁面である外側支持壁195aと対向する。この部分において、本体部101、カバー部102及び可撓性膜103の3つの部材は互いに位置合わせされ、互いの位置ずれを防ぐ。これにより、本体部101、可撓性膜103及びカバー部102を一旦正しい位置に配置すると、溶着をするまでの間に位置ずれが生じにくいので、生産性を向上させることができる。
【0069】
また、ガイド壁162の高さを高くしなくても、本体部101とカバー部との位置ずれの発生を抑えることができるので、形状が単純化できる。ガイド壁162を大きく突出させないことにより、環状凹部179を形成しなくても、カバー部102の肉厚をほぼ一定にして、成形精度を向上させることができる。カバー部102の成形精度を向上させることにより、可撓性膜103を均一に押圧できるようになるので、シール性を向上させることができる。
【0070】
図9において、ガイド凸部195の下端と、受入溝193の第2の底面193bとが当接している例を示している。しかし、ガイド凸部195の下端と、受入溝193の第2の底面193bとの間に隙間を有する構成とすることもできる。なお、ガイド凸部195は、下端が受入溝193の第2の底面193bと当接した場合に、カバー側圧縮部171と本体側圧縮部161とが、被圧縮部181を最適な力で圧縮する間隔となるように設計することもできる。このような構成とすることにより、可撓性膜103が過剰に圧縮されて変形が大きくなりすぎるような事態を生じにくくすることができる。
【0071】
図9において、受入溝193のアウターリップ部183の幅とほぼ等しい部分は、アウターリップ部183の高さとほぼ等しい深さとなる第1の底面193aを有しており、受入溝193のアウターリップ部183よりも外側の部分は、アウターリップ部183の高さよりも深くなる第2の底面193bを有している。ガイド凸部195の下端が、第2の底面193bと当接するように、ガイド凸部195はアウターリップ部183よりも下方に突出している。このような構成とすることにより、受入溝193内における、アウターリップ部183とガイド凸部195との位置合わせを容易に行うことができる。但し、受入溝193の深さを一定にして、ガイド凸部195の下端とアウターリップ部183の下端とが揃っている構成とすることもできる。
【0072】
図9において、アウターリップ部183の下端は第1の底面193aと当接している。しかし、アウターリップ部183は圧縮する必要がないので、アウターリップ部183の下端と第1の底面163aとの間に隙間が生じる構成とすることもできる。また、アウターリップ部183の内周面が内側支持壁191aと当接し、外周面が外側支持壁195aと当接している例を示している。このような構成とすることにより位置合わせがさらに容易となる。但し、内周面及び外周面の少なくとも一方と支持壁との間に隙間が生じる構成とすることもできる。
【0073】
本変形例においても、カバー側圧縮部171又は本体側圧縮部161の少なくとも一方に、被圧縮部181を押圧する圧縮凸部を形成することができる。本変形例において、外縁壁177を形成しているが、外縁壁177は必要に応じて形成すればよく、形成しなくてもよい。
【0074】
本変形例において、本体部が可撓性膜の下方に位置し、カバー部が可撓性膜の上方に位置する構成を示したが、本体部とカバー部との位置関係は入れ替えることができる。この場合、受入溝をカバー部に形成し、ガイド凸部を本体部に形成することもできる。
【0075】
実施形態において示した構成と、本体部において示した構成とは、互いに組み合わせたり、その一部を入れ替えたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示の圧力測定用チャンバは、従来の可撓性膜を有する圧力測定用チャンバが有する種々の問題のいくつかを解消でき、体外循環回路における圧力測定用チャンバ等として有用である。
【符号の説明】
【0077】
100 圧力測定用チャンバ
101 本体部
102 カバー部
103 可撓性膜
105 空洞
111 本体ドーム部
112 本体鍔部
115 ポート
116 ポート
121 カバードーム部
122 カバー鍔部
125 圧力検出ポート
126 凸部
127 平面突出部
128 リブ
131 膜本体
132 膜鍔部
134 ドーム膜部
135 薄膜部
136 中央肉厚部
151 血液チャンバ
152 空気チャンバ
161 本体側圧縮部
162 ガイド壁
163 受入溝
166 本体側溶着部
167 隙間
171 カバー側圧縮部
172 ガイド溝
174 圧縮凸部
175 規制凸部
176 カバー側溶着部
177 外縁壁
178 リム
179 環状凹部
181 被圧縮部
183 アウターリップ部
183a 切欠
191 内壁
191a 内側支持壁
193 受入溝
193a 第1の底面
193b 第2の底面
195 ガイド凸部
195a 外側支持壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9