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特開2022-188028振動素子、物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188028
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】振動素子、物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5628 20120101AFI20221213BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20221213BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20221213BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20221213BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01C19/5628
H01L41/09
H01L41/113
H01L41/187
H03H9/19 J
H03H9/215
H03H3/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141212
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2018009173の分割
【原出願日】2018-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓一
(72)【発明者】
【氏名】押尾 政宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆
(57)【要約】
【課題】振動素子外部にとってのノイズ振動を低減することができる振動素子およびその製造方法を提供すること、また、この振動素子を備える物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体を提供する。
【解決手段】基部と、前記基部から延在しており、前記基部側に位置する腕部および前記腕部より先端側に位置する錘部を有する振動腕と、前記錘部上に配置されている錘膜と、を備え、前記錘部は、表裏関係にある第1主面および第2主面を有しており、前記錘部の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第1主面側の位置にあり、前記錘膜の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第2主面側の位置にあることを特徴とする振動素子。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から延在しており、前記基部側に位置する腕部および前記腕部より先端側に位置する錘部を有する振動腕と、
前記錘部上に配置されている錘膜と、を備え、
前記錘部は、表裏関係にある第1主面および第2主面を有しており、
前記錘部の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第1主面側の位置にあり、
前記錘膜の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第2主面側の位置にあることを特徴とする振動素子。
【請求項2】
前記錘部は、第1部分と、前記第1部分よりも厚さの薄い第2部分と、を有し、前記第2主面は、前記第1部分と前記第2部分とにより段差形状を有する請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
前記錘部は、前記錘部の厚さ方向からの平面視で前記第1部分と前記第2部分との間に、厚さが漸次減少している部分を有する請求項2に記載の振動素子。
【請求項4】
前記錘部の幅は、前記厚さ方向からの平面視で、前記腕部の幅よりも大きい請求項2または3に記載の振動素子。
【請求項5】
前記第2部分は、前記第1部分に対して前記振動腕の幅方向での両側に配置されている請求項2ないし4のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項6】
前記第2部分は、前記第1部分に対して前記基部とは反対側に配置されている請求項2ないし5のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項7】
前記第1部分は、前記錘部の厚さ方向からの平面視で、前記第2部分を囲んで設けられている請求項2ないし4のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項8】
前記第1主面が平坦面である請求項2ないし7のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項9】
前記錘膜は、前記第1部分上および前記第2部分上に配置されている請求項2ないし8のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項10】
前記腕部は、前記腕部の厚さ方向の中心面に関して面対称の形状を有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項11】
前記基部から延在しており、前記腕部である第1腕部、および前記錘部である第1錘部を有する前記振動腕である第1振動腕と、
前記基部から延在しており、前記基部側に位置する第2腕部および前記第2腕部より先端側に位置する第2錘部を有する第2振動腕と、
前記第1錘部上に配置されている前記錘膜である第1錘膜と、
前記第2錘部上に配置されている第2錘膜と、を備え、
前記第2錘部の重心は、前記第2腕部の厚さ方向の中心面より前記第1主面側の位置にあり、
前記第2錘膜の重心は、前記第2腕部の厚さ方向の中心面より前記第2主面側の位置にある請求項1ないし10のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項12】
駆動振動する駆動腕と、
慣性力に対応して変形する検出腕と、を備え、
前記基部は、基部本体と、前記基部本体から延在している連結部と、を有し、
前記駆動腕は、前記振動腕であり、前記連結部から延在し、
前記検出腕は、前記基部本体から延在している請求項1ないし11のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項13】
前記基部から延在し、駆動振動する駆動腕と、
前記基部から前記駆動腕とは反対方向に延在し、慣性力に対応して変形する検出腕と、を備え、
前記駆動腕は、前記振動腕である請求項1ないし11のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項14】
前記錘膜は、第1錘膜と、前記第1錘膜よりも厚さの薄い第2錘膜と、を有する請求項1ないし13のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項15】
基部と、前記基部から延在しており、表裏関係にある第1主面および第2主面を有し、厚さ方向での中心面より前記第1主面側に重心が位置する振動腕を形成する工程と、
前記振動腕上に、前記振動腕の厚さ方向での中心面より前記第2主面側に重心が位置する錘膜を形成する工程と、
前記錘膜の質量を調整することにより、前記振動腕の共振周波数を調整する工程と、を含むことを特徴とする振動素子の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の振動素子と、
前記振動素子を収納しているパッケージと、を備えることを特徴とする物理量センサー。
【請求項17】
請求項16に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーに電気的に接続されている回路と、を備えることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項18】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の振動素子を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項19】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の振動素子を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子、振動素子の製造方法、物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子、振動型ジャイロセンサー等のデバイスに用いられる振動素子が知られている。このような振動素子の一例である、特許文献1に記載の音叉型水晶振動片は、基部と、基部から二股に別れて平行に延びる1対の振動腕と、を備えている。ここで、振動腕の先端には、振動腕の腕部の厚さより薄い厚さに加工されている錘部を備え、錘部には、音叉型水晶振動片の周波数調整のための金属膜が設けられている。また、特許文献2に記載の音叉型圧電振動片は、基部と、基部から二股に別れて平行に延びる1対の振動腕と、を備え、振動腕の腕部の幅より幅が拡大されている先端の錘部には、厚みが所定厚さより薄い部分が形成されている。この錘部には周波数調整に用いられる金属膜が上下両面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-311444号公報
【特許文献2】特開2010-213262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の音叉型水晶振動片では、錘部および金属膜からなる構造体の重心が振動腕の腕部の厚さ方向の中心面に対して厚さ方向にずれているため、1対の振動腕を互いに接近または離間する方向(面内方向)に振動させる際に、振動腕が厚さ方向(面外方向)の方向成分を含む振動を生じてしまい、その結果、厚さ方向の振動成分が基部を介して振動素子外に漏れて振動素子外部にとってのノイズ振動源となるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、振動素子外部にとってのノイズ振動を低減することができる振動素子およびその製造方法を提供すること、また、この振動素子を備える物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0007】
本適用例の振動素子は、基部と、
前記基部から延在しており、前記基部側に位置する腕部および前記腕部より先端側に位置する錘部を有する振動腕と、
前記錘部上に配置されている錘膜と、を備え、
前記錘部は、表裏関係にある第1主面および第2主面を有しており、
前記錘部の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第1主面側の位置にあり、
前記錘膜の重心は、前記腕部の厚さ方向の中心面より前記第2主面側の位置にあることを特徴とする。
【0008】
このような振動素子によれば、錘部の重心が腕部の厚さ方向の中心面より第1主面側の位置にあるのに対し、錘膜の重心が腕部の厚さ方向の中心面より第2主面側の位置にあるため、錘部および錘膜からなる構造体の重心を当該中心面(振動腕の厚さ方向での中心)に近づけることができる。そのため、振動腕の不要な振動(厚さ方向での振動)を低減することができ、その結果、振動素子外部にとってのノイズ振動を低減することができる。
【0009】
本適用例の振動素子では、前記錘部は、第1部分と、前記第1部分よりも厚さの薄い第2部分と、を有し、前記第2主面は、前記第1部分と前記第2部分とにより段差形状を有することが好ましい。
【0010】
これにより、比較的簡単な構成で、錘部の重心を腕部の厚さ方向の中心面より第1主面側に位置させることができる。
【0011】
本適用例の振動素子では、前記錘部は、前記錘部の厚さ方向からの平面視で前記第1部分と前記第2部分との間に、厚さが漸次減少している部分を有することが好ましい。
【0012】
これにより、第1部分と第2部分とに跨って連続的に錘膜を容易に形成することができる。また、第1部分と第2部分との間の段差に起因して錘膜にクラックが入ることを低減することができる。
【0013】
本適用例の振動素子では、前記錘部の幅は、前記厚さ方向からの平面視で、前記腕部の幅よりも大きいことが好ましい。
これにより、錘膜を形成可能な錘部の面積を大きくすることができる。
【0014】
本適用例の振動素子では、前記第2部分は、前記第1部分に対して前記振動腕の幅方向での両側に配置されていることが好ましい。
これにより、振動腕のねじりモーメントを低減することができる。
【0015】
本適用例の振動素子では、前記第2部分は、前記第1部分に対して前記基部とは反対側に配置されていることが好ましい。
【0016】
これにより、平面視での第2部分の面積を小さくすることができる。また、錘部の幅方向での質量バランスが崩れにくいという利点もある。
【0017】
本適用例の振動素子では、前記第1部分は、前記錘部の厚さ方向からの平面視で、前記第2部分を囲んで設けられていることが好ましい。
これにより、第2部分の設計が容易となる。
【0018】
本適用例の振動素子では、前記第1主面が平坦面であることが好ましい。
これにより、錘部に第1部分および第2部分を設けるために錘部の第1主面側を加工する必要がなく、その結果、振動素子の製造工程を簡単化することができる。
【0019】
本適用例の振動素子では、前記錘膜は、前記第1部分上および前記第2部分上に配置されていることが好ましい。
これにより、錘膜の質量を大きくすることができる。また、錘膜の形成を簡単化することができる。
【0020】
本適用例の振動素子では、前記腕部は、前記腕部の厚さ方向の中心面に関して面対称の形状を有することが好ましい。
これにより、振動腕の形状による厚さ方向での振動を低減することができる。
【0021】
本適用例の振動素子では、前記基部から延在しており、前記腕部である第1腕部、および前記錘部である第1錘部を有する前記振動腕である第1振動腕と、
前記基部から延在しており、前記基部側に位置する第2腕部および前記第2腕部より先端側に位置する第2錘部を有する第2振動腕と、
前記第1錘部上に配置されている前記錘膜である第1錘膜と、
前記第2錘部上に配置されている第2錘膜と、を備え、
前記第2錘部の重心は、前記第2腕部の厚さ方向の中心面より前記第1主面側の位置にあり、
前記第2錘膜の重心は、前記第2腕部の厚さ方向の中心面より前記第2主面側の位置にあることが好ましい。
【0022】
これにより、第1振動腕および第2振動腕の双方の不要振動(厚さ方向での振動)を低減することができる。また、第1錘部および第2錘部の重心がいずれも第1主面側(互いに同じ側)に位置するとともに、第1錘膜および第2錘膜の重心がいずれも第2主面側(互いに同じ側)に位置しているため、これらの錘部および錘膜の形成が容易である。
【0023】
本適用例の振動素子では、駆動振動する駆動腕と、
慣性力に対応して変形する検出腕と、を備え、
前記基部は、基部本体と、前記基部本体から延在している連結部と、を有し、
前記駆動腕は、前記振動腕であり、前記連結部から延在し、
前記検出腕は、前記基部本体から延在していることが好ましい。
【0024】
これにより、いわゆるダブルT型の振動素子において、その特性を向上させることができる。
【0025】
本適用例の振動素子では、前記基部から延在し、駆動振動する駆動腕と、
前記基部から前記駆動腕とは反対方向に延在し、慣性力に対応して変形する検出腕と、を備え、
前記駆動腕は、前記振動腕であることが好ましい。
これにより、いわゆるH型の振動素子において、その特性を向上させることができる。
【0026】
本適用例の振動素子では、前記錘膜は、第1錘膜と、前記第1錘膜よりも厚さの薄い第2錘膜と、を有することが好ましい。
【0027】
これにより、錘膜の一部をレーザー等のエネルギー線により除去して振動腕の共振周波数の調整を行う際に微調および粗調を容易に行うことができる。
【0028】
本適用例の振動素子の製造方法は、基部と、前記基部から延在しており、表裏関係にある第1主面および第2主面を有し、厚さ方向での中心面より前記第1主面側に重心が位置する振動腕を形成する工程と、
前記振動腕上に、前記振動腕の厚さ方向での中心面より前記第2主面側に重心が位置する錘膜を形成する工程と、
前記錘膜の質量を調整することにより、前記振動腕の共振周波数を調整する工程と、を含むことを特徴とする。
【0029】
このような振動素子の製造方法によれば、得られる振動素子の特性を向上させることができる。また、錘膜を錘部の片面側(具体的には第2主面側)のみに配置すればよいため、振動素子の製造工程が簡単化されるとともに、錘膜の一部をレーザー等のエネルギー線により除去して振動腕の共振周波数の調整を行う際に生じる飛沫(ドロス)を低減することもできる。
【0030】
本適用例の物理量センサーは、本適用例の振動素子と、
前記振動素子を収納しているパッケージと、を備えることを特徴とする。
【0031】
このような物理量センサーによれば、振動素子の優れた特性を利用して、物理量センサーのセンサー特性(例えば検出精度)を向上させることができる。
【0032】
本適用例の慣性計測装置は、本適用例の物理量センサーと、
前記物理量センサーに電気的に接続されている回路と、を備えることを特徴とする。
【0033】
このような慣性計測装置によれば、物理量センサーの優れたセンサー特性を利用して、慣性計測装置の特性(例えば計測精度)を向上させることができる。
【0034】
本適用例の電子機器は、本適用例の振動素子を備えることを特徴とする。
このような電子機器によれば、振動素子の優れた特性を利用して、電子機器の特性(例えば信頼性)を向上させることができる。
【0035】
本適用例の移動体は、本適用例の振動素子を備えることを特徴とする。
このような移動体によれば、振動素子の優れた特性を利用して、移動体の特性(例えば信頼性)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3】振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。
図4図3中B-B線断面図である。
図5図3中C-C線断面図である。
図6】振動素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7】振動片形成工程において基板を準備する工程を示す断面図である。
図8】振動片形成工程において耐蝕膜およびレジスト膜を形成する工程を示す断面図である。
図9】振動片形成工程において振動片の外形を形成する工程を示す断面図である。
図10】振動片形成工程において耐蝕膜の一部を除去する工程を示す断面図である。
図11】振動片形成工程において溝部を形成する工程を示す断面図である。
図12】振動片形成工程において耐蝕膜およびレジスト膜を除去する工程を示す断面図である。
図13】電極形成工程を示す断面図である。
図14】錘膜形成工程を示す断面図である。
図15】周波数調整工程を示す断面図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。
図17図16中C-C線断面図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。
図19】本発明の第4実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。
図20図19中B-B線断面図である。
図21】本発明の第5実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
図22】本発明の第6実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
図23】本発明の実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図24】本発明の慣性計測装置の実施形態を示す分解斜視図である。
図25図24に示す慣性計測装置が備える基板の斜視図である。
図26】本発明の電子機器の実施形態(モバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューター)を示す斜視図である。
図27】本発明の電子機器の実施形態(携帯電話機)を示す平面図である。
図28】本発明の電子機器の実施形態(デジタルスチールカメラ)を示す斜視図である。
図29】本発明の移動体の実施形態(自動車)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の振動素子、振動素子の製造方法、物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0038】
1.振動素子およびその製造方法
<第1実施形態>
まず、振動素子およびその製造方法について説明する。
【0039】
(振動素子)
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動素子を示す平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。図3は、振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。図4は、図3中B-B線断面図である。図5は、図3中C-C線断面図である。各図では、必要に応じて各部の寸法を適宜誇張して図示しており、また、各部間の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致しない。以下に説明する各部の位置、方向および大きさ等は、製造上の誤差等の範囲(例えば差が±1%以内)も含み、各部の必要な機能を実現し得る限り、本願明細書に記載の位置、方向および大きさ等に限定されない。
【0040】
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸であるx軸、y軸およびz軸を適宜用いて説明を行う。以下では、x軸に平行な方向を「x軸方向」、y軸に平行な方向を「y軸方向」、z軸に平行な方向を「z軸方向」と言い、図中、x軸、y軸およびz軸の各軸を示す矢印の先端側を「+」、基端側を「-」とする。また、+z軸方向側を「上」、-z軸方向側を「下」、+x軸方向側を「右」、-x軸方向側を「左」とも言う。また、z軸方向から見ることを「平面視」と言う。図1では、説明の便宜上、後述する電極膜4の図示を省略している。
【0041】
図1に示す振動素子1は、z軸まわりの角速度を検出するセンサー素子である。この振動素子1は、振動片2(図1参照)と、振動片2上に配置されている電極膜4(図2参照)と、電極膜4上に配置されている錘膜3(図1参照)と、を有する。
【0042】
振動片2は、図1に示すように、いわゆるダブルT型と呼ばれる構造を有する。具体的に説明すると、振動片2は、基部21と、基部21から延在した1対の検出腕22、23(第1、第2検出腕)、1対の駆動腕24、25(第1駆動腕)および1対の駆動腕26、27(第2駆動腕)と、を有する。
【0043】
ここで、基部21は、後述するパッケージ11(図22参照)に支持される基部本体211と、基部本体211から+x軸方向に沿って延在している連結腕212と、基部本体211から連結腕212の延在方向と反対方向の-x軸方向に沿って延在している連結腕213と、を有する。そして、検出腕22(第1検出腕)は、基部本体211から連結腕212、213の延在方向と交差する+y軸方向に沿って延在し、これに対し、検出腕23(第2検出腕)は、基部本体211から検出腕22の延在方向とは反対方向の-y軸方向に沿って延在している。駆動腕24(第1駆動腕)は、連結腕212の先端領域から+y軸方向に沿って延在し、これに対し、駆動腕25(第1駆動腕)は、連結腕212の先端領域から駆動腕24の延在方向と反対方向の-y軸方向に沿って延在している。同様に、駆動腕26(第2駆動腕)は、連結腕213の先端領域から+y軸方向に沿って延在し、これに対し、駆動腕27は、連結腕213の先端領域から駆動腕26の延在方向と反対方向の-y軸方向に沿って延在している。
【0044】
また、検出腕22は、基部本体211から延在している腕部221(検出腕部)と、腕部221に対して先端側に設けられ、腕部221よりも幅の大きい錘部222(検出錘部)と、腕部221の上下面の各々に設けられている溝223と、を有する。同様に、検出腕23は、腕部231(検出腕部)と、錘部232(検出錘部)と、1対の溝233と、を有する。また、駆動腕24は、連結腕212から延在している腕部241(駆動腕部)と、腕部241に対して先端側に設けられ、腕部241よりも幅の大きい錘部242(駆動錘部)と、腕部241の上下面に設けられている1対の溝243と、を有する。同様に、駆動腕25は、腕部251(駆動腕部)と、錘部252(駆動錘部)と、1対の溝253と、を有する。また、駆動腕26は、連結腕213から延在している腕部261(駆動腕部)と、腕部261に対して先端側に設けられ、腕部261よりも幅の大きい錘部262(駆動錘部)と、腕部261の上下面に設けられている1対の溝263と、を有する。
同様に、駆動腕27は、腕部271(駆動腕部)と、錘部272(駆動錘部)と、1対の溝273と、を有する。
【0045】
なお、溝223、233、243、253、263、273は、それぞれ、上下1対のうちの少なくとも一方を省略してもよい。また、溝223、233、243、253、263、273は、それぞれ、上下1対が互いに連通していてもよい。すなわち、腕部221、231、241、251、261、271に、上下面に開口する貫通孔を設けてもよい。また、錘部222、232、242、252、262、272の幅は、腕部221、231、241、251、261、271の幅以下であってもよい。
【0046】
ここで、腕部221は、検出腕22の振動時(検出振動時)に屈曲(変形)する部分であり、かつ、検出腕22の検出振動に伴って生じる電荷を検出する部分(後述する検出信号電極43および検出接地電極44が設けられている部分)である。同様に、腕部231は、検出腕23の振動時(検出振動時)に屈曲(変形)する部分であり、かつ、検出腕23の検出振動に伴って生じる電荷を検出する部分(後述する検出信号電極43および検出接地電極44が設けられている部分)である。また、腕部241は、駆動腕24の振動時(駆動振動時)に屈曲(変形)する部分であり、かつ、駆動腕24の駆動のための電界が印加される部分(後述する駆動信号電極41および駆動接地電極42が設けられている部分)である。同様に、腕部251、261、271は、それぞれ、駆動腕25、26、27の振動時(駆動振動時)に屈曲(変形)する部分であり、かつ、駆動腕25、26、27の駆動のための電界が印加される部分(後述する駆動信号電極41および駆動接地電極42が設けられている部分)である。また、錘部222は、腕部221よりも先端側の部分である。同様に、錘部232、242、252、262、272は、それぞれ、腕部231、241、251、261、271よりも先端側の部分である。
【0047】
錘部242は、図3に示すように、腕部241の延長線上にある第1部分242aと、第1部分242aの幅方向での両側にある1対の第2部分242b、242cと、を有する。そして、図4に示すように、各第2部分242b、242cの厚さt2は、第1部分242aの厚さt1よりも薄い。ここで、第1主面2aは、平坦であるのに対し、第2主面2bは、第1部分242aと第2部分242b、242cとによる段差244、245が設けられている。この段差244、245は、傾斜面を含んで構成されており、錘部242は、第2部分242b、242c側から第1部分242a側に向けて厚さが徐々に厚くなっている。このような第2部分242b、242cは、後述するように錘部242の第2主面2bをエッチング(異方性エッチング)することで形成することができる。
【0048】
このような錘部242の重心G1は、図4に示すように、駆動腕24の厚さ方向での中心Cに対して、錘部242の表裏関係にある第1主面2a(下面)および第2主面2b(上面)のうち第1主面2a側に位置している。すなわち、錘部242、252、262、272の重心G1が腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CPより第1主面2a側の位置にあるのに対し、錘膜33、34、35、36の重心G2が腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CPより第2主面2b側の位置にある。
このように重心G1を中心Cに対して厚さ方向にずらすことにより、後述するように錘部242の重心G1とは反対側に位置する重心G2を有する錘膜33とのバランスをとることができる。このような錘部242と同様に、錘部252、262、272の重心G1は、それぞれ、駆動腕25、26、27の厚さ方向での中心Cに対して、錘部252、262、272の表裏関係にある第1主面2a(下面)および第2主面2b(上面)のうち第1主面2a側に位置している。なお、錘部222、232の重心についても、検出腕22、23の厚さ方向での中心に対して、錘部222、232の表裏関係にある第1主面(下面)および第2主面(上面)のうち第1主面側に位置していてもよい。
【0049】
ここで、「腕部241の厚さ方向の中心面CP」とは、腕部241の厚さ方向(z軸方向)に直交する面であって、腕部241の第1主面2a側の厚み方向に最も外側の箇所と第2主面2b側の厚み方向に最も外側の箇所との距離が等しい面のことを言う。また、腕部251、261、271の厚さ方向の中心面についても、それぞれ、腕部241の厚さ方向の中心面CPと同様に定義される。「錘膜33」は、腕部241の電極膜4(駆動信号電極41および駆動接地電極42)よりも単位面積当たりの質量が大きい(駆動腕24上の)積層体のことを言う。また、錘膜34、35、36についても、それぞれ、錘膜33と同様に定義される。
【0050】
また、前述した第2主面2bの段差244、245の深さd1、すなわち、第1部分242aの厚さt1と第2部分242b、242cの厚さt2との差は、特に限定されないが、前述した溝243の深さd2と等しいことが好ましい(図5参照)。これにより、前述した段差244、245をエッチングにより溝243と一括して形成することができる。段差の深さd1は、錘部242の厚さt1に対して、0.1倍以上0.5倍以下が好ましく、0.15倍以上0.4倍以下がより好ましい。
【0051】
また、第2部分242b、242cの幅Wb、Wcは、互いに等しくても異なっていてもよいが、第2部分242cの幅Wcが第2部分242bの幅Wbよりも大きいことが好ましい。Zカット水晶板の異方性エッチングにより振動片2を形成する場合、その異方性により、第2部分242cの平均厚さが第2部分242bの平均厚さよりも厚くなってしまう。そのため、第2部分242cの幅Wcを第2部分242bの幅Wbよりも大きくすることで、第2部分242bの質量と第2部分242cの質量とを等しくすることができる。
【0052】
また、具体的な第2部分242b、242cの幅Wb、Wcは、それぞれ、後述する錘膜33の厚さおよび面積等に応じて決められるものであり、特に限定されないが、第1部分242aの幅Waに対して、0.3倍以上0.8倍以下程度である。また、第2部分242b、242cの平面視での面積は、それぞれ、特に限定されないが、例えば、第1部分242aの平面視での面積に対して、0.1倍以上2倍以下程度である。
【0053】
振動片2は、Zカット水晶板で構成されている。振動片2を水晶(Zカット水晶板)で構成することで、振動片2の振動特性(特に周波数温度特性)を優れたものとすることができる。また、エッチングにより高い寸法精度で振動片2を形成することができる。水晶は、三方晶系に属しており、結晶軸として互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を有している。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。Zカット水晶板は、Y軸(機械軸)およびX軸(電気軸)で規定されるXY平面に広がりを有し、Z軸(光軸)方向に厚みを有する板状をなしている水晶基板である。ここで、振動片2を構成する水晶のX軸がx軸に平行であり、Y軸がy軸に平行であり、Z軸がz軸に平行である。
【0054】
なお、振動片2は、水晶以外の圧電体材料で構成されていてもよい。水晶以外の圧電体材料としては、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。また、振動片2の構成によっては、振動片2をZカット以外のカット角の水晶板で構成してもよい。また、振動片2は、圧電体材料以外の材料(圧電性を有しない材料)、例えば、シリコン等で構成されていてもよく、この場合、検出腕22、23および駆動腕24、25、26、27の各腕部上に圧電素子(PZT等で構成された圧電体膜を1対の電極間に挟んだ構成の素子)を配置すればよい。
【0055】
このように構成された振動片2の表面には、電極膜4が設けられている。この電極膜4は、図2に示すように、駆動信号電極41と、駆動接地電極42と、検出信号電極43と、検出接地電極44と、これらの電極に電気的に接続されている複数の端子(図示せず)と、を有する。
【0056】
駆動信号電極41は、駆動腕24、25、26、27の駆動振動を励起させるための電極である。図2に示すように、駆動信号電極41は、駆動腕24の腕部241の上下面と、駆動腕26の腕部261の両側面とにそれぞれ設けられている。同様に、図示しないが、駆動信号電極41は、駆動腕25の腕部251の上下面と、駆動腕27の腕部271の両側面とにそれぞれ設けられている。
【0057】
一方、駆動接地電極42は、駆動信号電極41に対して基準となる電位(例えばグランド電位)を有する。図2に示すように、駆動接地電極42は、駆動腕24の腕部241の両側面と、駆動腕26の腕部261の上下面にそれぞれ設けられている。同様に、図示しないが、駆動接地電極42は、駆動腕25の腕部251の両側面と、駆動腕27の腕部271の上下面にそれぞれ設けられている。
【0058】
検出信号電極43は、検出腕22の検出振動が励起されたときに、その検出振動によって発生する電荷を検出するための電極である。図2に示すように、検出信号電極43は、検出腕22の腕部221の上下面に設けられている。
【0059】
一方、検出接地電極44は、検出信号電極43に対して基準となる電位(例えばグランド電位)を有する。図2に示すように、検出接地電極44は、検出腕22の腕部221の両側面に設けられている。同様に、図示しないが、検出接地電極44は、検出腕23の腕部231の上下面に設けられている。
【0060】
また、図示しないが、検出腕23の検出振動が励起されたときに、その検出振動によって発生する電荷を検出するための検出信号電極は、検出腕23の腕部231の上下面に設けられている。同様に、検出腕23の検出接地電極は、検出腕23の検出信号電極に対して基準となる電位(例えばグランド電位)を有して、検出腕23の腕部231の両側面に設けられている。そして、検出腕22の検出信号電極43と検出腕23の検出信号電極との差動信号によって振動検出してもよい。
【0061】
電極膜4の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等の金属材料や、ITO、ZnO等の透明電極材料を用いることができ、中でも、金を主材料とする金属(金、金合金)または白金を用いるのが好ましい。なお、電極膜4と振動片2との間には、電極膜4が振動片2から剥離するのを防止する機能を有する下地層としてTi、Cr等の層が設けられていてもよい。
【0062】
このような電極膜4は、前述した振動片2の錘部222、232、242、252、262、272上に配置されている部分を有する。そして、錘部222、232、242、252、262、272上には、当該部分を介して、錘膜3が配置されている。なお、錘膜3の直下には、電極膜4が配置されていなくてもよい。
【0063】
錘膜3は、図1に示すように、錘部222上に配置されている錘膜31と、錘部232上に配置されている錘膜32と、錘部242上に配置されている錘膜33と、錘部252上に配置されている錘膜34と、錘部262上に配置されている錘膜35と、錘部272上に配置されている錘膜36と、を有する。錘膜31、32は、レーザー等のエネルギー線により適量除去されることで、検出腕22、23の共振周波数を調整するのに用いることが可能な膜である。また、錘膜33、34、35、36は、レーザー等のエネルギー線により適量除去されることで、駆動腕24、25、26、27の共振周波数を調整するのに用いることが可能な膜である。
【0064】
錘膜33は、錘部242の表裏関係にある第1主面2a(下面)および第2主面2b(上面)のうち第2主面2b上に配置されており、第1主面2a上には配置されていない。
また、錘膜33は、錘部242の側面(左右側面および先端面)にも配置されていない。
本実施形態では、錘膜33は、錘部242の基端側の一部を除くように、錘部242の幅方向(x軸方向)での全域にわたって設けられている。したがって、錘膜33は、錘部242の第1部分242a上および第2部分242b、242c上に跨って配置されている。
【0065】
このような錘膜33の重心G2は、図4に示すように、駆動腕24の厚さ方向での中心Cに対して、錘部242の表裏関係にある第1主面2a(下面)および第2主面2b(上面)のうち第2主面2b側に位置している。このように重心G2を中心Cに対して厚さ方向にずらすことにより、前述したように錘膜33の重心G2とは反対側に位置する重心G1を有する錘部242とのバランスをとることができる。このような錘膜33と同様に、錘膜34、35、36は、それぞれ、駆動腕25、26、27の厚さ方向での中心Cに対して、錘部252、262、272の表裏関係にある第1主面2a(下面)および第2主面2b(上面)のうち第2主面2b側に位置している。また、錘膜31、32は、それぞれ、検出腕22、23の厚さ方向での中心に対して、錘部222、232の表裏関係にある第1主面(下面)および第2主面(上面)のうち第2主面側に位置している。
【0066】
なお、錘膜31~36の位置、大きさおよび範囲等は、図示の位置、大きさおよび範囲等に限定されない。例えば、錘膜3は、錘部222、232、242、252、262、272の第1主面2aおよび側面に配置されていてもよい。この場合、錘膜31、32を除く錘膜33、34、35、36については、これらの重心G2が第2主面2b側に位置するように厚さおよび配置等を調整すればよい。また、錘膜3は、錘部222、232、242、252、262、272の長さ方向(y軸方向)での全域にわたって設けられていてもよい。
【0067】
このような錘膜3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属、無機化合物、樹脂等を用いることができるが、金属または無機化合物を用いるのが好ましい。金属または無機化合物は、気相成膜法により簡単かつ高精度に成膜することができる。また、金属または無機化合物で構成された錘膜31~36は、エネルギービームの照射により効率的かつ高精度に除去することができる。このようなことから、錘膜3を金属または無機化合物で成膜することにより形成することで、後述する周波数調整がより効率的かつ高精度なものとなる。
【0068】
かかる金属としては、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、電極膜4と同一の装置を用いて錘膜3を形成できるという観点から、かかる金属としては、Al、Cr、Fe、Ni、Cu、Ag、Au、Ptまたはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いるのが好ましい。より具体的には、錘膜3は、例えば、Cr(クロム)からなる下地層に、Au(金)からなる上層を積層した構成であることが好ましい。これにより、水晶を用いて形成された振動片2または電極膜4に対する密着性に優れるとともに、共振周波数の調整を高精度にかつ効率よく行うことができる。
【0069】
また、かかる無機化合物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化シリコン)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア、イットリア、リン酸カルシウム等の酸化物セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン、窒化ボロン等の窒化物セラミックス、グラファイト、タングステンカーバイト等の炭化物系セラミックス、その他、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、PZT、PLZT、PLLZT等の強誘電体材料等が挙げられ、中でも、酸化シリコン(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸
化アルミニウム(Al23)等の絶縁材料を用いるのが好ましい。
【0070】
また、錘膜3の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、例えば、10nm以上10000nm以下程度である。
【0071】
以上のように構成された振動素子1は、次のようにしてz軸まわりの角速度ωを検出する。まず、駆動信号電極41と駆動接地電極42との間に電圧(駆動信号)を印加することにより、図1中矢印aで示す方向に、駆動腕24と駆動腕26とを互いに接近と離間を繰り返すように屈曲振動(駆動振動)させるとともに、駆動腕25と駆動腕27とを上記屈曲振動と同方向に互いに接近と離間を繰り返すように屈曲振動(駆動振動)させる。このとき、振動素子1に角速度が加わらないと、駆動腕24、25と駆動腕26、27とは、中心点(重心G)を通るyz平面に対して面対称の振動を行っているため、基部本体211、連結腕212、213および検出腕22、23は、ほとんど振動しない。また、このとき、前述したように、錘部242、252、262、272の重心G1と錘膜33、34、35、36の重心G2とが駆動腕24、25、26、27の中心Cに対して互いに反対側に位置しているため、駆動腕24、25、26、27の面外方向での振動を低減することができる。
【0072】
このように駆動腕24~27を駆動振動させた状態(駆動モード)で、振動素子1にその重心Gを通る法線まわり(すなわちz軸まわり)の角速度ωが加わると、駆動腕24~27には、それぞれ、コリオリ力が働く。これにより、連結腕212、213が図1中矢印bで示す方向に屈曲振動し、これに伴い、この屈曲振動を打ち消すように、検出腕22、23の図1中矢印cで示す方向の屈曲振動(検出振動)が励振される。そして、このような検出腕22、23の検出振動(検出モード)によって検出信号電極43と検出接地電極44との間に電荷が生じる。このような電荷に基づいて、振動素子1に加わった角速度ωを求めることができる。
【0073】
以上のように、振動素子1は、基部21と、基部21から延在しており、基部21側に位置する腕部241、251、261、271および腕部241、251、261、271より先端側に位置する錘部242、252、262、272を有する振動腕である駆動腕24、25、26、27と、錘部242、252、262、272上に配置されている錘膜33、34、35、36と、を備える。ここで、錘部242、252、262、272は、表裏関係にある第1主面2aおよび第2主面2bを有している。そして、錘部242、252、262、272の重心G1は、腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CP(駆動腕24、25、26、27の厚さ方向での中心Cを通りz軸に直交する平面)より第1主面2a側の位置にある。これに対し、錘膜33、34、35、36の重心G2は、腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CPより第2主面2b側の位置にある。
【0074】
このような振動素子1によれば、錘部242、252、262、272の重心G1が腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CPより第1主面2a側の位置にあるのに対し、錘膜33、34、35、36の重心G2が腕部241、251、261、271の厚さ方向の中心面CPより第2主面2b側の位置にあるため、錘部242、252、262、272および錘膜33、34、35、36からなる構造体全体の重心を中心面CP(駆動腕24、25、26、27の中心C)に近づけることができる。そのため、駆動腕24、25、26、27の不要な振動(厚さ方向での振動)を低減することができ、その結果、振動素子1外部にとってのノイズ振動を低減することができる。また、製造方法については後述するが、錘膜33、34、35、36を錘部242、252、262、272の片面側(具体的には第2主面2b側)のみに配置すればよいため、振動素子1の製造工程が簡単化されるとともに、錘膜33、34、35、36の一部をレーザー等のエネルギー線により除去して振動腕の共振周波数の調整を行う際に生じる飛沫(ドロス)を低減することもできる。
【0075】
また、錘部242、252、262、272の重心G1がいずれも第1主面2a側(互いに同じ側)に位置するとともに、錘膜33、34、35、36の重心G2がいずれも第2主面側(互いに同じ側)に位置しているため、これらの錘部242、252、262、272および錘膜33、34、35、36の形成が容易である。なお、駆動腕24、25、26、27のうちの1つが「第1振動腕」に相当し、他の一つが「第2振動腕」に相当する。そして、第1振動腕は、腕部241、251、261、271のうちいずれかを第1腕部として有するとともに、錘部242、252、262、272のうち第1腕部に接続された錘部を第1錘部として有する。第2振動腕は、腕部241、251、261、271のうち第1錘部とは異なる錘部を第2腕部として有するとともに、錘部242、252、262、272のうち第2腕部に接続された錘部を第2錘部として有する。また、第1錘部上には、第1錘膜として錘膜33、34、35、36のいずれかが配置され、第2錘部上には、第2錘膜として錘膜33、34、35、36のいずれかが配置されている。
【0076】
ここで、腕部241、251、261、271は、それぞれ、厚さ方向の中心面CPに関して面対称の形状を有することが好ましい。これにより、駆動腕24、25、26、27の形状による厚さ方向での振動を低減することができる。
【0077】
本実施形態の振動素子1は、駆動振動する駆動腕24、25、26、27と、慣性力に対応して変形する検出腕22、23と、を備えており、基部21は、基部本体211と、基部本体211から延在している連結部である連結腕212、213と、を有する。そして、駆動腕24、25、26、27は、振動腕であり、連結腕212、213から延在し、検出腕22、23は、基部本体211から延在している。これにより、いわゆるダブルT型の振動素子1において、その特性を向上させることができる。
【0078】
錘部242、252、262、272の幅Wは、錘部242の厚さ方向からの平面視で、腕部241、251、261、271の幅W0よりも大きい。これにより、錘膜33、34、35、36を形成可能な錘部242、252、262、272の面積を大きくすることができる。また、駆動腕24、25、26、27の長さを短くすることができ、その結果、振動素子1の小型化を図ることもできる。
【0079】
また、錘部242は、第1部分242aと、第1部分242aよりも厚さの薄い第2部分242b、242cと、を有する。そして、第2主面2bは、第1部分242aと第2部分242b、242cとにより段差形状の段差244、245を有する。これにより、比較的簡単な構成で、錘部242の重心G1を腕部241の厚さ方向の中心面CPより第1主面2a側に位置させることができる。また、錘部252、262、272も、錘部242と同様に構成されており、同様の効果を奏する。ここで、「段差244」は、第1部分242aにおける錘部242の厚さ方向の中心面から第2主面2bまでの平均距離が、第2部分242bにおける錘部242の厚さ方向の中心面から第2主面2bまでの平均距離より大きい形状である。「錘部242の厚さ方向の中心面」とは、錘部242の厚さ方向に直交する面であって、錘部242の第1主面2a側の厚み方向に最も外側の箇所と第2主面2b側の厚み方向に最も外側の箇所との距離が等しい面のことを言う。錘部242の厚さ方向と腕部241の厚さ方向は同じである。図示では、錘部242の厚さ方向の中心面と腕部241の厚さ方向の中心面CPは同一面上にある。なお、段差245も段差244と同様に定義される。
【0080】
また、前述した第2主面2bに設けられた段差244、245は、傾斜面を含んで構成されており、錘部242は、錘部242の厚さ方向からの平面視で第1部分242aと第2部分242b、242cとの間に、厚さが漸次減少している部分を有する。これにより、第1部分242aと第2部分242b、242cとに跨って連続的に錘膜33を容易に形成することができる。また、第1部分242aと第2部分242b、242cとの間の段差244、245に起因して錘膜33にクラックが入ることを低減することができる。
また、錘部252、262、272も、錘部242と同様に構成されており、同様の効果を奏する。
【0081】
本実施形態では、第2部分242b、242cは、第1部分242aに対して駆動腕24(振動腕)の幅方向での両側に配置されている。これにより、錘部242の幅方向での両端部の質量を小さくし、駆動腕24のねじりモーメントを低減することができる。また、錘部252、262、272も、錘部242と同様に構成されており、同様の効果を奏する。
【0082】
また、錘部242の第1主面2aが平坦面である。これにより、錘部242に第1部分242aおよび第2部分242b、242cを設けるために錘部242の第1主面2a側を加工する必要がなく、その結果、振動素子1の製造工程を簡単化することができる。また、錘部252、262、272も、錘部242と同様に構成されており、同様の効果を奏する。なお、第1主面2aが第2主面2bのように段差を有していてもよいが、前述したような重心G1の位置とするため、第1主面2aの段差の深さは、第2主面2bの段差の深さよりも浅いことが好ましい。
【0083】
錘膜33は、第1部分242a上および第2部分242b、242c上に配置されている。これにより、錘膜33の質量を大きくすることができる。また、錘膜33の形成を簡単化することができる。また、錘膜34、35、36も、錘膜33と同様に構成されており、同様の効果を奏する。なお、前述したような重心G2の位置となっていれば、第1部分242a上および第2部分242b、242c上のうちいずれか一方のみに錘膜33を設けてもよい。ここで、第1部分242a上のみに錘膜33を設けた場合、第2部分242b、242c上のみに錘膜33を設けた場合に比べて、駆動腕24の幅方向での質量バランスがとりやすいという利点がある。
【0084】
また、錘膜33の厚さは、図示では、均一であるが、互いに厚さの異なる複数の部分を有していてもよい。すなわち、錘膜33は、第1錘膜と、第1錘膜よりも厚さの薄い第2錘膜と、を有していてもよい。この場合、錘膜33の一部をレーザー等のエネルギー線により除去して駆動腕24の共振周波数の調整を行う際に微調および粗調を容易に行うことができる。ここで、厚さの厚い第1錘膜は、単位面積当たりの質量が大きく、駆動腕24の共振周波数の粗調整(粗調)に適している。一方、厚さの薄い第2錘膜は、単位面積当たりの質量が小さく、駆動腕24の共振周波数の微調整(微調)に適している。また、錘膜34、35、36も、錘膜33と同様に構成することで、同様の効果を奏する。
【0085】
なお、本実施形態では、駆動腕24、25、26、27について、錘部242、252、262、272および錘膜33、34、35、36からなる構造体全体の重心を駆動腕24、25、26、27の中心Cに近づける場合について説明したが、検出腕22、23についても、駆動腕24、25、26、27と同様に構成してもよい。この場合、腕部221、231の厚さ方向の中心面は、それぞれ、腕部241の厚さ方向の中心面と同様に定義される。錘膜31、32は、それぞれ、錘膜33と同様に定義される。
【0086】
(振動素子の製造方法)
以下、本発明の振動素子の製造方法について、前述した振動素子1を製造する場合を例に説明する。
【0087】
図6は、振動素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
振動素子1の製造方法は、図6に示すように、振動片形成工程S10と、電極形成工程S20と、錘膜形成工程S30と、周波数調整工程S40と、を有する。以下、各工程を順次説明する。
【0088】
-振動片形成工程S10-
図7は、振動片形成工程において基板を準備する工程を示す断面図である。図8は、振動片形成工程において耐蝕膜およびレジスト膜を形成する工程を示す断面図である。図9は、振動片形成工程において振動片の外形を形成する工程を示す断面図である。図10は、振動片形成工程において耐蝕膜の一部を除去する工程を示す断面図である。図11は、振動片形成工程において溝部を形成する工程を示す断面図である。図12は、振動片形成工程において耐蝕膜およびレジスト膜を除去する工程を示す断面図である。なお、図7ないし図12は、図5に対応する断面を示している。
【0089】
まず、振動片2を形成する。具体的には、例えば、まず、図7に示すように、第1主面2aおよび第2主面2bを有する水晶基板20を用意する。そして、図8に示すように、水晶基板20の両面に、耐蝕膜51、52およびレジスト膜53、54を順次形成する。
ここで、耐蝕膜51、52は、それぞれ、例えば、クロム、金を蒸着法、スパッタ法等によりこの順で積層した積層膜であり、後述する外形形成工程および溝部形成工程に用いるエッチング液に対する耐性を有し、振動片2の平面視形状(外形)に合わせてパターニングされている。また、レジスト膜53、54は、それぞれ、レジスト材料で構成された膜であり、後述する外形形成工程および溝部形成工程に用いるエッチング液に対する耐性を有し、振動片2の平面視形状(外形)だけでなく、溝243および第2部分242b、242c等の平面視形状に合わせて露光および現像することでパターニングされている。
【0090】
次に、図9に示すように、耐蝕膜51、52およびレジスト膜53、54をマスクとして用いて水晶基板20をエッチングすることで、振動片2と同様の外形を有する水晶基板20Aを得る(外形形成工程)。その後、図10に示すように、レジスト膜54をマスクとして耐蝕膜52をエッチングすることで、耐蝕膜52Aを得る。そして、図11に示すように、耐蝕膜51、52Aおよびレジスト膜53、54をマスクとして用いて水晶基板20Aをエッチングし、図12に示すように、耐蝕膜51、52Aおよびレジスト膜53、54をエッチング等により除去することで、振動片2を得る(溝部形成工程)。
【0091】
ここで、振動片2は、水晶基板20Aの他の部分に連結した状態(以下、「ウエハー状態」とも言う)であってもよい。このウエハー状態では、振動片2は、例えば、幅および厚さのうちの少なくとも一方が小さく脆弱に形成された折り取り部を介して水晶基板20Aの他の部分に連結されている。また、ウエハー状態では、水晶基板20Aに複数の振動素子1を一括して形成することができる。
【0092】
-電極形成工程S20-
図13は、電極形成工程を示す断面図である。
【0093】
図13に示すように、電極膜4を形成する。より具体的には、振動片2の表面に、例えば、スパッタリング等によって金属膜を一様に形成する。そして、フォトレジストを塗布して、露光・現像することにより、レジストマスクを得た後、エッチング液を用いて、レジストマスクから露出している部分の金属膜を除去する。これにより、電極膜4が形成される。
【0094】
-錘膜形成工程S30-
図14は、錘膜形成工程を示す断面図である。
図14に示すように、錘膜3をマスク蒸着等により形成する。
【0095】
-周波数調整工程S40-
図15は、周波数調整工程を示す断面図である。
【0096】
図15に示すように、必要に応じて、錘膜3の一部をエネルギー線LLにより除去する。より具体的には、必要に応じて、駆動腕24~27の共振周波数が互いに等しくなるように、錘膜33~36の一部を除去して、駆動振動の周波数(駆動腕24~27の共振周波数)を調整する。また、必要に応じて、錘膜31、32の一部を除去して、検出振動の周波数(検出腕22、23の共振周波数)を調整する。
【0097】
エネルギー線LLとしては、例えば、YAG、YVO4、エキシマレーザー等のパルスレーザー、炭酸ガスレーザー等の連続発振レーザー、FIB(Focused Ion Beam)や、IBF(Ion Beam Figuring)等のイオンビーム等を用いることができる。
【0098】
このような周波数調整工程S40は、ウエハー状態で行ってもよいし、後述するパッケージ11に搭載した状態で行ってもよい。また、周波数調整工程S40は、複数回に分けて行ってもよく、例えば、ウエハー状態で1回目の調整として粗調整を行い、パッケージ11に搭載した状態で2回目の調整として微調整を行ってもよい。
【0099】
以上のように、振動素子1の製造方法は、基部21と、基部21から延在しており、表裏関係にある第1主面2aおよび第2主面2bを有し、厚さ方向での中心面より第1主面2a側に重心G1が位置する駆動腕24(振動腕)を形成する工程(振動片形成工程S10)と、駆動腕24上に、駆動腕24の厚さ方向での中心面より第2主面2b側に重心G2が位置する錘膜33を形成する工程(錘膜形成工程S30)と、錘膜33の質量を調整することにより、駆動腕24の共振周波数を調整する工程(周波数調整工程S40)と、を含む。このような振動素子1の製造方法によれば、得られる振動素子1の特性を向上させることができる。ここで、「駆動腕24の厚さ方向での中心面」とは、駆動腕24の厚さ方向に直交する面であって、駆動腕24の第1主面2a側の厚み方向に最も外側の箇所と第2主面2b側の厚み方向に最も外側の箇所との距離が等しい面のことを言う。なお、本実施形態では、錘膜33の一部をエネルギー線LLにより除去することで、錘膜33の質量を減少させて調整する場合を例に説明したが、錘膜33上にスパッタ等の成膜法により成膜を行うことで、錘膜33の質量を増加させて調整してもよい。また、他の駆動腕25~27および検出腕22、23の共振周波数についても同様である。
【0100】
<第2実施形態>
図16は、本発明の第2実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。図17は、図16中C-C線断面図である。
【0101】
以下、第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図16および図17において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。また、以下では、1つの駆動腕について代表的に説明するが、他の駆動腕についても同様である。
【0102】
本実施形態は、錘部の構成(形状)が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態の振動素子1Aが備える駆動腕24Aの錘部242Aは、図16に示すように、腕部241に接続されている第1部分242dと、第1部分242dに対して腕部241とは反対側に配置されている第2部分242eと、を有する。そして、図17に示すように、第2部分242eの厚さt2は、第1部分242dの厚さt1よりも薄い。ここで、錘膜33は、第1部分242d上および第2部分242e上に跨って配置されている。
【0104】
以上のような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、特性を向上させることができる。
【0105】
また、本実施形態では、第2部分242eは、第1部分242dに対して基部21とは反対側に配置されている。これにより、第2部分242eが質量効果の大きい駆動腕24Aの先端部に位置することとなるため、平面視での第2部分242eの面積を小さくすることができる。また、錘部242Aの幅方向での質量バランスが崩れにくいという利点もある。
【0106】
<第3実施形態>
図18は、本発明の第3実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。
【0107】
以下、第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図18において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。また、以下では、1つの駆動腕について代表的に説明するが、他の駆動腕についても同様である。
【0108】
本実施形態は、錘部の構成(形状)が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0109】
本実施形態の振動素子1Bが備える駆動腕24Bの錘部242Bは、前述した第1実施形態および第2実施形態を組み合わせたような形態をなす。すなわち、錘部242Bは、図18に示すように、腕部241に接続されている第1部分242fと、第1部分242fの幅方向での両側および先端側にある第2部分242gと、を有する。そして、第2部分242gの厚さは、第1部分242fの厚さよりも薄い。ここで、錘膜33は、第1部分242f上および第2部分242g上に跨って配置されている。
【0110】
以上のような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、特性を向上させることができる。
【0111】
<第4実施形態>
図19は、本発明の第4実施形態に係る振動素子の振動腕(駆動腕)の錘部および錘膜を拡大して示す平面図である。図20は、図19中B-B線断面図である。
【0112】
以下、第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図19および図20において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。また、以下では、1つの駆動腕について代表的に説明するが、他の駆動腕についても同様である。
【0113】
本実施形態は、錘部の構成(形状)が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0114】
本実施形態の振動素子1Cが備える駆動腕24Cの錘部242Cは、図19に示すように、腕部241に接続されている枠状の第1部分242iと、第1部分242iの内側にある第2部分242hと、を有する。そして、図20に示すように、第2部分242hの厚さt2は、第1部分242iの厚さt1よりも薄い。ここで、錘膜33は、錘部242Cの幅方向で、第1部分242i上および第2部分242h上に跨って配置されている。
【0115】
以上のような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、特性を向上させることができる。
【0116】
また、本実施形態では、第1部分242iは、錘部242Cの厚さ方向からの平面視で、第2部分242hを囲んで設けられている。このような第2部分242hは、凹部247を形成することで設けられる。凹部247は、前述した溝243と同様にエッチングにより形成することができる。そのため、第2部分242hの設計が容易となる。
【0117】
<第5実施形態>
図21は、本発明の第5実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
【0118】
以下、第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0119】
本実施形態は、いわゆるH型の振動素子に本発明を適用したこと以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0120】
図21に示す振動素子1Dは、y軸まわりの角速度を検出するセンサー素子である。この振動素子1Dは、振動片2Dと、振動片2D上に設けられた電極膜(図示せず)および錘膜3Dと、を備える。
【0121】
振動片2Dは、基部21Dと、1対の駆動腕24D、25Dと、1対の検出腕22D、23Dと、を有している。これらは、一体で構成されており、Zカット水晶板を用いて形成される。なお、水晶の結晶軸とx軸、y軸およびz軸との対応関係は、前述した第1実施形態と同様である。
【0122】
基部21Dは、後述するパッケージ11に支持される。
駆動腕24D、25Dは、それぞれ、基部21Dからy軸方向(+y方向)に延在している。駆動腕24D、25Dは、前述した第1~4実施形態のいずれかの駆動腕と同様に構成されている。この駆動腕24D、25Dには、それぞれ、図示しないが、前述した第1実施形態の駆動腕24~27と同様に、通電により駆動腕24D、25Dをx軸方向に屈曲振動させる1対の駆動電極(駆動信号電極および駆動接地電極)が設けられている。
この1対の駆動電極は、図示しない配線を介して、基部21D上の端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0123】
検出腕22D、23Dは、それぞれ、基部21Dからy軸方向(-y方向)に延在している。この検出腕22D、23Dには、それぞれ、図示しないが、検出腕22D、23Dのz軸方向での屈曲振動に伴って生じる電荷を検出する1対の検出電極(検出信号電極および検出接地電極)が設けられている。この1対の検出電極は、図示しない配線を介して、基部21D上の端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0124】
錘膜3Dは、検出腕22D、23Dの先端部(錘部)に配置されている錘膜31D、32Dと、駆動腕24D、25Dの先端部(錘部)上に配置されている錘膜33D、34Dと、を有する。
【0125】
このように構成された振動素子1Dでは、1対の駆動電極間に駆動信号が印加されることにより、図21中矢印A1、A2で示すように、駆動腕24Dと駆動腕25Dとが互いに接近と離間を繰り返すように屈曲振動(駆動振動)する。
【0126】
このように駆動腕24D、25Dを駆動振動させた状態で、振動素子1Dにy軸まわりの角速度ωが加わると、駆動腕24D、25Dは、コリオリ力により、図21中矢印B1、B2で示すように、z軸方向に互いに反対側に屈曲振動する。これに伴い、検出腕22D、23Dは、図21中矢印C1、C2で示すように、z軸方向に互いに反対側に屈曲振動(検出振動)する。
【0127】
そして、このような検出腕22D、23Dの屈曲振動によって1対の検出電極間に生じた電荷が1対の検出電極から出力される。このような電荷に基づいて、振動素子1Dに加わった角速度ωを求めることができる。
【0128】
以上のような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、特性を向上させることができる。
【0129】
ここで、本実施形態の振動素子1Dは、基部21Dから延在し、駆動振動する駆動腕24D、25Dと、基部21Dから駆動腕24D、25Dとは反対方向に延在し、慣性力に対応して変形する検出腕22D、23Dと、を備え、駆動腕24D、25Dは、振動腕である。これにより、いわゆるH型の振動素子1Dにおいて、その特性を向上させることができる。
【0130】
<第6実施形態>
図22は、本発明の第6実施形態に係る振動素子を示す平面図である。
【0131】
以下、第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0132】
本実施形態は、いわゆる二脚音叉型の振動素子に本発明を適用したこと以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0133】
図22に示す振動素子1Eは、y軸まわりの角速度を検出するセンサー素子である。この振動素子1Eは、振動片2Eと、振動片2E上に設けられた電極膜(図示せず)および錘膜33E、34Eと、を備える。
【0134】
振動片2Eは、基部21Eと、1対の振動腕24E、25Eと、を有し、これらは、一体で構成されており、Zカット水晶板を用いて形成される。なお、水晶の結晶軸とx軸、y軸およびz軸との対応関係は、前述した第1実施形態と同様である。
【0135】
基部21Eは、振動腕24E、25Eが接続されている第1基部214と、第1基部214に対して振動腕24E、25Eとは反対側に配置されている第2基部216と、第1基部214と第2基部216とを連結する連結部215と、を含んでいる。連結部215は、第1基部214と第2基部216との間に位置していて、第1基部214よりも幅(x軸方向の長さ)が小さい。これにより、基部21Eのy軸方向に沿った長さを小さくしつつ、振動漏れを小さくすることができる。ここで、第2基部216は、例えば、後述するパッケージ11に支持される。
【0136】
振動腕24E、25Eは、それぞれ、基部21Eからy軸方向(+y方向)に延在している。振動腕24E、25Eは、前述した第1~4実施形態のいずれかの駆動腕と同様に構成されている。この振動腕24E、25Eには、それぞれ、図示しないが、前述した第1実施形態の駆動腕24~27と同様に、通電により振動腕24E、25Eをx軸方向に屈曲振動させる1対の駆動電極(駆動信号電極および駆動接地電極)が設けられている。
この1対の駆動電極は、図示しない配線を介して、基部21E上の端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0137】
また、振動腕24E、25Eには、それぞれ、前述した1対の駆動電極の他に、図示しないが、振動腕24E、25Eのz軸方向での屈曲振動に伴って生じる電荷を検出する1対の検出電極(検出信号電極および検出接地電極)が設けられている。この1対の検出電極は、図示しない配線を介して、基部21E上の端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0138】
錘膜33E、34Eは、振動腕24E、25Eの先端部(錘部)上に配置されている。
このように構成された振動素子1Eでは、1対の駆動電極間に駆動信号が印加されることにより、振動腕24Eと振動腕25Eとが互いに接近と離間を繰り返すように屈曲振動(駆動振動)する。
【0139】
このように振動腕24E、25Eを駆動振動させた状態で、振動素子1Eにy軸まわりの角速度ωが加わると、振動腕24E、25Eには、コリオリ力により、z軸方向に互いに反対側に屈曲する振動が励振される。そして、このように励振された振動によって1対の検出電極間に生じた電荷が1対の検出電極から出力される。このような電荷に基づいて、振動素子1Eに加わった角速度ωを求めることができる。
【0140】
以上のような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様、特性を向上させることができる。
【0141】
2.物理量センサー
図23は、本発明の実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
【0142】
図23に示す物理量センサー10は、z軸まわりの角速度を検出する振動ジャイロセンサーである。この物理量センサー10は、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)と、支持部材12と、回路素子13(集積回路チップ)と、これらを収納するパッケージ11と、を有している。
【0143】
パッケージ11は、振動素子1を収納する凹部を有する箱状のベース111と、ベース111の凹部の開口を塞ぐようにベース111に接合部材113を介して接合された板状のリッド112と、を有する。パッケージ11内は、減圧(真空)状態となっていてもよいし、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入されていてもよい。
【0144】
ベース111の凹部は、開口側に位置する上段面と、底部側に位置する下段面と、これらの面の間に位置する中段面と、を有する。このベース111の構成材料としては、特に限定されないが、酸化アルミニウム等の各種セラミックスや、各種ガラス材料を用いることができる。また、リッド112の構成材料としては、特に限定されないが、ベース111の構成材料と線膨張係数が近似する部材であると良い。例えば、ベース111の構成材料を前述のようなセラミックスとした場合には、コバール等の合金とするのが好ましい。
また、本実施形態では、接合部材113としてシームリングを用いるが、接合部材113は、例えば、低融点ガラス、接着剤等を用いて構成されたものであってもよい。
【0145】
ベース111の凹部の上段面および中段面には、それぞれ、複数の接続端子14、15が設けられている。中段面に設けられている複数の接続端子15のうち、一部は、ベース111に設けられた配線層(図示せず)を介して、ベース111の底面に設けられた端子16に電気的に接続され、残部は、上段に設けられている複数の接続端子14に配線(図示せず)を介して電気的に接続されている。これら接続端子14、15は、導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、Cr(クロム)、W(タングステン)等のメタライズ層(下地層)に、Ni(ニッケル)、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)等の各被膜を積層した金属被膜で構成されている。
【0146】
回路素子13は、ベース111の凹部の下段面に接着剤19等によって固定されている。接着剤19としては、例えば、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系の接着剤を用いることができる。回路素子13は、図示しない複数の端子を有し、この各端子が導電性ワイヤーによって、前述した中段面に設けられている各接続端子15と電気的に接続されている。この回路素子13は、振動素子1を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動素子1に生じる検出振動を検出する検出回路と、を有する。
【0147】
また、ベース111の凹部の上段面に設けられている複数の接続端子14には、導電性接着剤17を介して、支持部材12が接続されている。支持部材12は、導電性接着剤17に接続されている配線パターン122と、配線パターン122を支持している支持基板121と、を有する。導電性接着剤17としては、例えば、金属フィラーなどの導電性物質が混合された、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系などの導電性接着剤を用いることができる。
【0148】
支持基板121は、中央部に開口を有しており、その開口内には、配線パターン122が有する複数の長尺状のリードが延びている。これらリードの先端部には、導電性のバンプ123を介して振動素子1が接続されている。
【0149】
なお、本実施形態では、回路素子13がパッケージ11の内部に設けられているが、回路素子13は、パッケージ11の外部に設けられていてもよい。
【0150】
以上のように、物理量センサー10は、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)と、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を収納しているパッケージ11と、を備える。このような物理量センサー10によれば、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)の優れた特性を利用して、物理量センサー10のセンサー特性(例えば検出精度)を向上させることができる。
【0151】
3.慣性計測装置
図24は、本発明の慣性計測装置の実施形態を示す分解斜視図である。図25は、図24に示す慣性計測装置が備える基板の斜視図である。
【0152】
図24に示す慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)2000は、いわゆる6軸モーションセンサーであり、例えば、自動車、ロボット等の移動体(計測対象物)に装着して用いられ、当該移動体の姿勢および挙動(慣性運動量)を検出する。
【0153】
この慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を備え、センサーモジュール2300がアウターケース2100内に接合部材2200を介在させた状態で篏合(挿入)されている。
【0154】
アウターケース2100は、箱状をなしており、このアウターケース2100の対角にある2つの角部には、計測対象物に対するネジ止めのためのネジ孔2110が設けられている。
【0155】
センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を備え、インナーケース2310が基板2320を支持した状態で、前述したアウターケース2100の内部に収納されている。ここで、インナーケース2310は、アウターケース2100に対して、接合部材2200(例えばゴム製のパッキン)を介して、接着剤等により接合されている。また、インナーケース2310は、基板2320上に実装される部品の収納空間として機能する凹部2311と、基板2320上に設けられているコネクター2330を外部に露出するための開口部2312と、を有する。基板2320は、例えば、多層配線基板であり、インナーケース2310に対して接着剤等により接合されている。
【0156】
図25に示すように、基板2320には、コネクター2330、角速度センサー2340X、2340Y、2340Z、加速度センサー2350および制御IC2360が実装されている。
【0157】
コネクター2330は、図示しない外部装置に電気的に接続され、当該外部装置と慣性計測装置2000との間で電力、計測データ等の電気信号の送受信を行うのに用いられる。
【0158】
角速度センサー2340Xは、X軸まわりの角速度を検出し、角速度センサー2340Yは、Y軸まわりの角速度を検出し、角速度センサー2340Zは、Z軸まわりの角速度を検出する。ここで、角速度センサー2340X、2340Y、2340Zは、それぞれ、前述した物理量センサー10である。また、加速度センサー2350は、例えば、MEMS技術を用いて形成された加速度センサーであり、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向での加速度を検出する。
【0159】
制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部、A/Dコンバーター等を内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。ここで、記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラム、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータ等が記憶されている。
【0160】
以上のように、慣性計測装置2000は、物理量センサー10と、物理量センサー10に電気的に接続されている回路である制御IC2360と、を備える。このような慣性計測装置2000によれば、物理量センサー10の優れたセンサー特性を利用して、慣性計測装置2000の特性(例えば計測精度)を向上させることができる。
【0161】
4.電子機器
図26は、本発明の電子機器の実施形態(モバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューター)を示す斜視図である。
【0162】
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、前述した振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を含む慣性計測装置2000が内蔵されている。
【0163】
図27は、本発明の電子機器の実施形態(携帯電話機)を示す平面図である。
この図において、携帯電話機1200は、アンテナ(図示せず)、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1208が配置されている。このような携帯電話機1200には、前述した振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を含む慣性計測装置2000が内蔵されている。
【0164】
図28は、本発明の電子機器の実施形態(デジタルスチールカメラ)を示す斜視図である。
【0165】
デジタルスチールカメラ1300におけるケース1302の背面には表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。そして、撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押すと、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。このようなデジタルスチールカメラ1300には、前述した振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を含む慣性計測装置2000が内蔵されており、この慣性計測装置2000の計測結果は、例えば、手振れ補正に用いられる。
【0166】
以上のような電子機器は、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を備える。このような電子機器によれば、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)の優れた特性を利用して、電子機器の特性(例えば信頼性)を向上させることができる。
【0167】
なお、本発明の電子機器は、図26のパーソナルコンピューター、図27の携帯電話機、図28のデジタルスチールカメラの他にも、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計(スマートウォッチを含む)、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、携帯端末用の基地局、フライトシミュレーター等に適用することができる。
【0168】
5.移動体
図29は、本発明の移動体の実施形態(自動車)を示す斜視図である。
【0169】
自動車1500には、前述した振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を含む慣性計測装置2000が内蔵されており、例えば、慣性計測装置2000によって車体1501の姿勢を検出することができる。慣性計測装置2000の検出信号は、車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。
【0170】
その他、このような姿勢制御は、二足歩行ロボットやラジコンヘリコプター(ドローンを含む)で利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、慣性計測装置2000が組み込まれる。
【0171】
以上のように、移動体である自動車1500は、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)を備える。このような自動車1500によれば、振動素子1(または1A、1B、1C、1D、1E)の優れた特性を利用して、自動車1500の特性(例えば信頼性)を向上させることができる。
【0172】
以上、本発明の振動素子、振動素子の製造方法、物理量センサー、慣性計測装置、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0173】
また、前述した実施形態では、振動素子は、いわゆるダブルT型、H型または二脚音叉型の形状をなしているが、面内方向に振動する振動腕を有する素子であればよく、これに限定されず、例えば、三脚音叉、直交型、角柱型等の種々の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0174】
1…振動素子、1A…振動素子、1B…振動素子、1C…振動素子、1D…振動素子、1E…振動素子、2…振動片、2D…振動片、2E…振動片、2a…第1主面、2b…第2主面、3…錘膜、3D…錘膜、4…電極膜、10…物理量センサー、11…パッケージ、12…支持部材、13…回路素子、14…接続端子、15…接続端子、16…端子、17…導電性接着剤、19…接着剤、20…水晶基板、20A…水晶基板、21…基部、21D…基部、21E…基部、22…検出腕、22D…検出腕、23…検出腕、23D…検出腕、24…駆動腕、24A…駆動腕、24B…駆動腕、24C…駆動腕、24D…駆動腕、24E…振動腕、25…駆動腕、25D…駆動腕、25E…振動腕、26…駆動腕、27…駆動腕、31…錘膜、31D…錘膜、32…錘膜、32D…錘膜、33…錘膜、33D…錘膜、33E…錘膜、34…錘膜、34D…錘膜、34E…錘膜、35…錘膜、36…錘膜、41…駆動信号電極、42…駆動接地電極、43…検出信号電極、44…検出接地電極、51…耐蝕膜、52…耐蝕膜、52A…耐蝕膜、53…レジスト膜、54…レジスト膜、111…ベース、112…リッド、113…接合部材、121…支持基板、122…配線パターン、123…バンプ、211…基部本体、212…連結腕、213…連結腕、214…第1基部、215…連結部、216…第2基部、221…腕部、222…錘部、223…溝、231…腕部、232…錘部、233…溝、241…腕部、242…錘部、242A…錘部、242B…錘部、242C…錘部、242a…第1部分、242b…第2部分、242c…第2部分、242d…第1部分、242e…第2部分、242f…第1部分、242g…第2部分、242h…第2部分、242i…第1部分、243…溝、244…段差、245…段差、247…凹部、251…腕部、252…錘部、253…溝、261…腕部、262…錘部、263…溝、271…腕部、272…錘部、273…溝、1100…パーソナルコンピューター、1102…キーボード、1104…本体部、1106…表示ユニット、1108…表示部、1200…携帯電話機、1202…操作ボタン、1204…受話口、1206…送話口、1208…表示部、1300…デジタルスチールカメラ、1302…ケース、1304…受光ユニット、1306…シャッターボタン、1308…メモリー、1310…表示部、1500…自動車、1501…車体、1502…車体姿勢制御装置、1503…車輪、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ孔、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口部、2320…基板、2330…コネクター、2340X…角速度センサー、2340Y…角速度センサー、2340Z…角速度センサー、2350…加速度センサー、2360…制御IC、A1…矢印、A2…矢印、B1…矢印、B2…矢印、C…中心、C1…矢印、C2…矢印、G…重心、G1…重心、G2…重心、LL…エネルギー線、S10…振動片形成工程、S20…電極形成工程、S30…錘膜形成工程、S40…周波数調整工程、a…矢印、b…矢印、c…矢印、ω…角速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、
基部と、
前記基部から前記Y軸の+側に延在している振動腕と、
を含み
前記振動腕は、
錘部と、
記基部と前記錘部との間に配置されている腕部と、
記錘部上に配置されている錘膜と、
を含み、
前記錘部は、前記Z軸に直交し、互いに表裏の関係にある第1主面及び第2主面を含み

前記腕部の前記Z軸に沿ったZ軸方向の中心を通り、前記X軸と前記Y軸とを含むXY
平面に平行な面を中心面としたとき、
前記錘部の重心は、前記中心面より前記第1主面の側にあり、
前記錘膜の重心は、前記中心面より前記第2主面の側にあり、
前記錘部は、第1部分と、前記第1部分よりも前記Z軸方向の厚さの薄い第2部分と、
を含み、
前記第2主面は、前記第1部分と前記第2部分とにより段差形状を有し、
前記第2部分は、前記Z軸方向からの平面視で、前記第1部分の前記Y軸の+側の端か
ら前記錘部の前記Y軸の+側の端までの領域に配置されていることを特徴とする振動素子
【請求項2】
請求項1において、
前記錘膜は、前記第1部分の前記第2主面の側、及び前記第2部分の前記第2主面の側
に配置されていることを特徴とする振動素子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記錘部の前記X軸に沿ったX軸方向の幅は、前記Z軸方向からの平面視で、前記腕部
の前記X軸方向の幅よりも大きいことを特徴とする振動素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項において、
前記第1主面が平坦面であることを特徴とする振動素子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項において、
前記腕部は、前記中心面に関して面対称の形状を有することを特徴とする振動素子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項において、
前記腕部を第1腕部、前記錘部を第1錘部、前記振動腕を第1振動腕、及び前記錘膜を
第1錘膜とし、
前記基部から前記Y軸の+側に延在している第2振動腕を含み、
前記第2振動腕は、
第2錘部と、
前記基部と前記第2錘部との間に配置されている第2腕部と、
前記第2錘部上に配置されている第2錘膜と、
を含み、
前記第2錘部は、前記Z軸に直交し、互いに表裏の関係にある第3主面及び第4主面を
含み、
前記第2腕部の前記Z軸に沿ったZ軸方向の中心を通り、前記X軸と前記Y軸とを含む
XY平面に平行な面を中心面としたとき、
前記第2錘部の重心は、当該中心面より前記第3主面の側にあり、
前記第2錘膜の重心は、当該中心面より前記第4主面の側にあり、
前記第2錘部は、第3部分と、前記第3部分よりも前記Z軸方向の厚さの薄い第4部分
と、を含み、
前記第4主面は、前記第3部分と前記第4部分とにより段差形状を有し、
前記第4部分は、前記Z軸方向からの平面視で、前記第3部分の前記Y軸の+側の端か
ら前記第2錘部の前記Y軸の+側の端までの領域に配置されていることを特徴とする振動
素子。
【請求項7】
請求項6において、
前記基部は、
基部本体と、
前記基部本体から延在している連結腕と、
を含み、
前記連結腕から延在し、駆動振動する駆動腕と、
前記基部本体から延在し、慣性力に対応して変形する検出腕と、
を含み、
前記駆動腕は、前記第1振動腕と前記第2振動腕を含むことを特徴とする振動素子。
【請求項8】
請求項6において、
前記基部から延在し、駆動振動する駆動腕と、
前記基部から前記駆動腕とは反対方向に延在し、慣性力に対応して変形する検出腕と、
を含み、
前記駆動腕は、前記第1振動腕と前記第2振動腕を含むことを特徴とする振動素子。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項において、
前記錘膜は、
膜厚部と、
前記膜厚部よりも厚さの薄い膜薄部と、
を含むことを特徴とする振動素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の振動素子と、
前記振動素子を収納しているパッケージと、
含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項11】
請求項10に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーに電気的に接続されている回路と、
含むことを特徴とする慣性計測装置。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の振動素子を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の振動素子を含むことを特徴とする移動体。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図20
【補正方法】変更
【補正の内容】
図20