(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188048
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】C3阻害のための組み合わせ治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20221213BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221213BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221213BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221213BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20221213BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20221213BHJP
C07K 7/64 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
A61K38/10 ZNA
A61K31/713
A61K47/60
A61K47/64
A61P37/02
A61P7/00
A61P7/06
A61P27/02
A61P43/00 121
C12N15/113 Z
C07K7/64
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022144113
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2019520579の分割
【原出願日】2017-10-16
(31)【優先権主張番号】62/409,357
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】513283268
【氏名又は名称】アペリス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APELLIS PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・フランソワ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】C3阻害のための組み合わせ治療を提供する。
【解決手段】対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体、を、対象が両方に暴露されるように一方または両方を投与し、ここで、INAAおよびコンプスタチン類似体の各々が少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従って投与される、方法を提供する。
【選択図】
図10C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に
(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および
(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体、
を、対象が両方に暴露されるように一方または両方を投与し、
ここで、INAAおよびコンプスタチン類似体の各々が少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従って投与される、方法。
【請求項2】
対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、INAAが代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与される、方法。
【請求項3】
対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、コンプスタチン類似体が代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与される、方法。
【請求項4】
対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、コンプスタチン類似体が平均約300mg/日未満の量で投与される、方法。
【請求項5】
コンプスタチン類似体がそれに結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するクリアランス低減部分(CRM)である、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するクリアランス低減部分(CRM)を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、所望により、ここで、(i)コンプスタチン類似体が代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与される;(ii)INAAが代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与される;(iii)INAAおよびコンプスタチン類似体の両者が少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される;または(iv)(i)、(ii)および(iii)の任意の組み合わせである、方法。
【請求項7】
補体介在障害の処置が必要な対象を処置する方法であって、請求項1~6の何れかに記載のとおり対象にa)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)コンプスタチン類似体を投与することを含む、方法。
【請求項8】
コンプスタチン類似体が少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
INAAおよびコンプスタチン類似体が両者とも少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、請求項1~8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
INAAおよびコンプスタチン類似体が両者とも7~31日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、請求項1~9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
コンプスタチン類似体およびINAAが、所望により異なる投与スケジュールに従い、別々に投与される、請求項1~10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
コンプスタチン類似体およびINAAが、同じ投与スケジュールに従い、別々に投与される、請求項1~11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
コンプスタチン類似体およびINAAが同一組成物で投与される、請求項1~12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
コンプスタチン類似体が、ヒト対象に静脈内または皮下投与したとき、24時間~10日間の半減期を有する、請求項1~13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
INAAが、C3の定常状態血漿レベルを50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
INAAが、古典経路溶血アッセイ、代替経路溶血アッセイまたは両者を使用して測定して、血漿または血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
INAAが、代替経路アッセイを使用して測定して、血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
代替経路アッセイが溶血またはELISA(酵素結合免疫吸着法)に基づく、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
INAAが、古典経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
INAAおよびコンプスタチン類似体が、古典経路溶血アッセイ、代替経路溶血アッセイまたは両者により測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
INAAおよびコンプスタチン類似体が、古典経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
INAAおよびコンプスタチン類似体が、代替経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、請求項1~21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
INAAがヒトC3 RNAの少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30連続ヌクレオチドと完全相補性である領域を含む鎖を含む、請求項1~22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
INAAがヒトC3メッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30連続ヌクレオチドと完全相補性である領域を含む鎖を含む、請求項1~23の何れかに記載の方法。
【請求項25】
INAAが二本鎖核酸を含むかまたは核酸が一本鎖核酸を含む、請求項1~24の何れかに記載の方法。
【請求項26】
INAAがRNAi剤を含む、請求項1~25の何れかに記載の方法。
【請求項27】
INAAが二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項1~26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
INAAがDicer基質siRNAを含む、請求項1~27の何れかに記載の方法。
【請求項29】
INAAがアンチセンス鎖を含み、ここで、2~7位のヌクレオチドがヒトC3 mRNAにおける標的領域と完全相補性である、請求項1~28の何れかに記載の方法。
【請求項30】
INAAがヒトC3 mRNAの3’非翻訳領域(UTR)における標的領域と相補性である鎖を含む、請求項1~29の何れかに記載の方法。
【請求項31】
INAAが、ヒトC3 mRNAとハイブリダイズしたとき、5未満の不適合または非対応非オーバーハング塩基を有する鎖を含む、請求項1~30の何れかに記載の方法。
【請求項32】
INAAが1個または2個の3’オーバーハングを有する二本鎖核酸を含み、所望により各オーバーハングが独立して1~4塩基長である、請求項1~31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
INAAが15~30塩基対長、所望により17~25、17~23、17~21、23~27、19~21、21~23または23~25塩基対長の二本鎖領域を含む二本鎖核酸を含む、請求項1~32の何れかに記載の方法。
【請求項34】
INAAが1以上の位置で修飾を含み、所望により、修飾が(a)1以上の非ホスホジエステル主鎖結合;および/または(b)所望により2’-メトキシエチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシルからなる群から選択される、1以上の2’糖修飾およびこれらの組み合わせの1以上を含む、請求項1~33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
INAAが1以上の位置で修飾を含み、所望により、修飾が2’-O-メチル修飾、2’-フルオロ修飾または両者を含む、請求項1~34の何れかに記載の方法。
【請求項36】
INAAが二本鎖であり、一方または両方の鎖に1以上の修飾を含み、所望により、修飾が交互のパターンである、請求項1~35の何れかに記載の方法。
【請求項37】
INAAが、所望により7位に、少なくとも一つの非環式または脱塩基残基位置を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~36の何れかに記載の方法。
【請求項38】
INAAが、所望により7位に、少なくとも一つのアンロックド核酸を含むアンチセンス鎖を含む、請求項1~37の何れかに記載の方法。
【請求項39】
INAAがヒトC3 RNAにおける標的領域と相補性である一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、請求項1~38の何れかに記載の方法。
【請求項40】
ASOがC3 mRNAのRNase H介在分解を促進する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
INAAがターゲティング部分と物理的に結合している、請求項1~40の何れかに記載の方法。
【請求項42】
INAAが肝細胞のINAAによる取り込みを促進するターゲティング部分を含み、所望により、ターゲティング部分がGalNacを含む、請求項1~42の何れかに記載の方法。
【請求項43】
INAAが送達剤と物理的に結合しており、所望により、送達剤が脂質、粒子または脂質含有粒子を含む、請求項1~42の何れかに記載の方法。
【請求項44】
クリアランス低減部分(CRM)がポリマーを含む、請求項1~43の何れかに記載の方法。
【請求項45】
CRMがPEGを含む、請求項1~44の何れかに記載の方法。
【請求項46】
CRMが約10kD~約50kD、例えば、約35kD~約45kD、例えば、約40kDの分子量を有する、請求項1~45の何れかに記載の方法。
【請求項47】
コンプスタチン類似体が各末端に結合したコンプスタチン類似体部分有する直鎖状ポリマーを含む、請求項1~46の何れかに記載の方法。
【請求項48】
各コンプスタチン類似体部分が配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかに示すアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む、請求項1~47の何れかに記載の方法。
【請求項49】
各コンプスタチン類似体部分が配列番号28、32または34の何れかに示すアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む、請求項1~48の何れかに記載の方法。
【請求項50】
各コンプスタチン類似体部分が11アミノ酸長の環状部分を含む環状ペプチドを含み、ここで、ペプチドの配列がコンプスタチン(配列番号8)の配列またはコンプスタチンより高い活性を有するコンプスタチンの配列と少なくとも50%同一である、請求項1~49の何れかに記載の方法。
【請求項51】
各コンプスタチン類似体部分が11アミノ酸長の環状部分を含む環状ペプチドを含み、ここで、ペプチドの配列がコンプスタチン(配列番号8)の配列またはコンプスタチンより高い活性を有するコンプスタチンの配列と少なくとも50%同一であり、ここで、ペプチドが少なくとも一つの非標準的アミノ酸を含み、所望により少なくとも一つの非標準的アミノ酸が一個または複数ハロゲン化されたアミノ酸、N-アルキルアミノ酸または芳香族アミノ酸である、請求項1~50の何れかに記載の方法。
【請求項52】
各コンプスタチン類似体部分がコンプスタチンの配列と比較して1、2、3または4置換有する配列を含むペプチドを含み、ここで、ペプチドはコンプスタチンの2位と12位に対応する位置のアミノ酸間の結合により環化されており、ここで、コンプスタチンの配列における1、2、3または4アミノ酸は非標準的アミノ酸により置き換えられており、所望により少なくとも一つの非標準的アミノ酸が一個または複数ハロゲン化されたアミノ酸、N-アルキルアミノ酸または芳香族アミノ酸である、請求項1~51の何れかに記載の方法。
【請求項53】
コンプスタチン類似体が配列番号8の4位に対応する位置に1-メチルTrpを有する環状ペプチドを含む1以上のコンプスタチン類似体部分を含む、請求項1~52の何れかに記載の方法。
【請求項54】
コンプスタチン類似体が配列番号8の8位に対応する位置にN-メチルGlyを有する環状ペプチドを含む1以上のコンプスタチン類似体部分を含む、請求項1~53の何れかに記載の方法。
【請求項55】
コンプスタチン類似体が1以上のコンプスタチン類似体部分に結合した1以上のクリアランス低減部分を含み、ここで、各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された配列番号3~36の何れかに示すアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、アミノ酸の1以上が1級または2級アミンを含む側鎖を有し、環状ペプチドと、所望によりオリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、各クリアランス低減部分は、所望によりポリエチレングリコール(PEG)を含み、ここで、各クリアランス低減部分は1以上のコンプスタチン類似体部分により結合部分と共有結合し、ここで、結合部分は不飽和アルキル部分、非芳香族環状環系を含む部分、芳香族部分、エーテル部分、アミド部分、エステル部分、カルボニル部分、イミン部分、チオエーテル部分および/またはアミノ酸残基を含む、請求項1~54の何れかに記載の方法。
【請求項56】
コンプスタチン類似体が2個のコンプスタチン類似体部分が結合したクリアランス低減部分を含み、ここで、(a)各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸ペプチドの環状部分と柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、所望により、スペーサーはオリゴ(エチレングリコール)部分を含み;そして(b)クリアランス低減部分は直線状ポリマーを含み、ここで、直線状ポリマーの各末端はカルボニル基を含むリンカー部分を介してコンプスタチン類似体部分の一つに結合されている、請求項1~55の何れかに記載の方法。
【請求項57】
コンプスタチン類似体が2個のコンプスタチン類似体部分が結合したクリアランス低減部分を含み、ここで、(a)各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸ペプチドの環状部分と柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、所望によりここで、スペーサーはオリゴ(エチレングリコール)部分を含み;および(b)クリアランス低減部分は直線状ポリマーを含み、ここで、直線状ポリマーの各末端はカルバメートまたはアミドを介してコンプスタチン類似体部分の一つに結合されている、請求項1~56の何れかに記載の方法。
【請求項58】
各コンプスタチン類似体部分は、1級または2級アミンを含む側鎖を有する少なくとも一つのアミノ酸を含むアミノ酸配列により伸長された環状ペプチドを含み、所望により、1級または2級アミンを含む側鎖を有する少なくとも一つのアミノ酸は環状ペプチドのC末端のリシンである、請求項1~57の何れかに記載の方法。
【請求項59】
各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸はオリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されており、ここで、オリゴ(エチレングリコール)部分は(-(O-CH2-CH2-)n(ここで、nは1~10である)である、請求項1~58の何れかに記載の方法。
【請求項60】
各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸は共有結合により結合した-(CH2)m-および-(O-CH2-CH2-)n(ここで、mは1~10であり、nは1~10である).オリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されており、所望によりmは1であり、nは2である、請求項1~59の何れかに記載の方法。
【請求項61】
各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸は8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサンデカン酸を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されている、請求項1~60の何れかに記載の方法。
【請求項62】
コンプスタチン類似体がCA28-2TS-BFまたはCA28-2GS-BFを含む、請求項1~61の何れかに記載の方法。
【請求項63】
コンプスタチン類似体が皮下または経口投与される、請求項1~62の何れかに記載の方法。
【請求項64】
コンプスタチン類似体およびINAAが皮下投与される、請求項1~63の何れかに記載の方法。
【請求項65】
コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が1日1回以下で投与される、請求項1~64の何れかに記載の方法。
【請求項66】
コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が各々投与あたり1ml以下の体積で皮下投与される、請求項1~65の何れかに記載の方法。
【請求項67】
コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が投与あたり0.5ml以下の体積で皮下投与される、請求項1~66の何れかに記載の方法。
【請求項68】
コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~500mgの量で投与される、請求項1~67の何れかに記載の方法。
【請求項69】
コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~270mgの量で投与される、請求項1~68の何れかに記載の方法。
【請求項70】
コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~180mgの量で投与される、請求項1~69の何れかに記載の方法。
【請求項71】
コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~50mgまたは投与あたり50mg~100mgまたは投与あたり100mg~150mgまたは投与あたり150mg~200mgまたは投与あたり200mg~250mgの量で投与される、請求項1~70の何れかに記載の方法。
【請求項72】
対象が補体介在障害を有する、請求項1~71の何れかに記載の方法。
【請求項73】
対象が補体制御における欠損を有し、所望により、欠損が対象の細胞の少なくとも一部より1以上の補体制御タンパク質の異常に低い発現を含む、請求項1~72の何れかに記載の方法。
【請求項74】
補体介在障害が慢性障害である、請求項1~73の何れかに記載の方法。
【請求項75】
補体介在障害が赤血球への補体介在損傷を含み、所望により、障害が発作性夜間血色素尿症または非典型溶血性尿毒症症候群である、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項76】
補体介在障害が自己免疫性疾患であり、所望により、障害が多発性硬化症である、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項77】
補体介在障害が腎臓に関与し、所望により、障害が膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎または急性腎傷害である、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項78】
補体介在障害が中枢または末梢神経系または神経筋接合部に関与し、所望により、障害が視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、多巣性運動神経障害または重症筋無力症である、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項79】
補体介在障害が呼吸器系に関与し、所望により、障害が肺線維症により特徴付けられる、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項80】
補体介在障害が血管系に関与し、所望により、障害が脈管炎により特徴付けられる、請求項72~74の何れかに記載の方法。
【請求項81】
コンプスタチン類似体部分がX’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly(配列番号3)のコア配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、X’aaおよびXaaがTrpおよびTrpの類似体から選択される、請求項1~80の何れかに記載の方法。。
【請求項82】
コンプスタチン類似体部分がX’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa(配列番号4)のコア配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、X’aaおよびXaaが各々独立してTrpおよびTrpの類似体から選択され、X”aaはHis、Ala、単一メチル非分枝アミノ酸、Phe、TrpおよびTrpの類似体から選択される、請求項1~81の何れかに記載の方法。
【請求項83】
X’aa2およびX”aa4がCysであり、X”aa1が所望によりAlaまたは単一メチル非分枝アミノ酸である、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
コンプスタチン類似体部分が配列:
Xaa1-Cys-Val-Xaa2-Gln-Asp-Xaa2*-Gly-Xaa3-His-Arg-Cys-Xaa4(配列番号6);
(式中、Xaa1はIle、Val、Leu、B1-Ile、B1-Val、B1-LeuまたはGly-IleもしくはB1-Gly-Ileを含むジペプチドであり、B1は第一遮断部分であり;
Xaa2およびXaa2*は独立してTrpおよびTrpの類似体から選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnの何れかのカルボキシ末端-OHは所望により第二遮断部分B2で置換されていてよい;そして
2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。〕
を有する環状ペプチドを含む、請求項1~83の何れかに記載の方法。
【請求項85】
Xaa1がIle、Val、Leu、Ac-Ile、Ac-Val、Ac-LeuまたはGly-IleまたはAc-Gly-Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2およびXaa2*はTrpおよびTrpの類似体から独立して選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnの何れかのカルボキシ末端-OHは所望により-NH2で置換されていてよい、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
Xaa2がトリプトファンの1位もしくは5位に低級アルコキシまたは低級アルキル置換基またはトリプトファンの5位もしくは6位にハロゲン置換基を含むTrpの類似体である、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
Xaa2がトリプトファンの1位もしくは5位に低級アルコキシまたは低級アルキル置換基またはトリプトファンの5位もしくは6位にハロゲン置換基を含むTrpの類似体であり、Xaa2*がTrpである、請求項84または85に記載の方法。
【請求項88】
投与の段階が、INAAをコンプスタチン類似体を受けている対象に投与することを含む、請求項1~87の何れかに記載の方法。
【請求項89】
投与の段階が、コンプスタチン類似体をINAAを受けている対象に投与することを含む、請求項1~87の何れかに記載の方法。
【請求項90】
投与の段階がコンプスタチン類似体およびINAA両者を投与することを含む、請求項1~87の何れかに記載の方法。
【請求項91】
投与の段階がコンプスタチン類似体およびINAAの両者を含む組成物を投与することを含む、請求項90に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. 119(e)下に、2016年10月17日出願の米国仮出願62/409,357の利益を主張し、その内容を引用により本明細書に包含させる。
【背景技術】
【0002】
背景
補体は、30種を超える血漿および細胞結合タンパク質からなる系であり、自然免疫および適応免疫の両者において有意な役割を演ずる。補体系のタンパク質は、多様なタンパク質相互作用および開裂事象を介する一連の酵素カスケードにおいて作用する。補体活性化は、抗体依存性古典経路、代替経路およびマンノース結合レクチン(MBL)経路の3つの主経路を介して起こる。不適切なまたは過剰な補体活性化は、多くの重篤な疾患および状態の根底にある原因または要因であり、過去数十年治療剤として種々の補体阻害剤を探求するために相当な努力が払われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
要約
補体成分C3(“C3”)は、3つの主要な補体活性化経路において中心的位置を占める。治療目的でC3をターゲティングする可能性があるいくつかのアプローチがある。例えば、コンプスタチン類似体は、C3に結合し、その開裂を阻害し、それにより生物活性開裂産物C3aおよびC3bの産生の阻止ならびに補体活性化カスケードのC3コンバターゼの形成および下流部分の阻止をする、環状ペプチドを含む一群の化合物である。C3を阻害する他のアプローチは、低分子干渉RNA(siRNA)およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)などの阻害性核酸剤(INAA)の使用によるその発現の阻害である。本発明は、C3発現を阻害するように設計された阻害性核酸剤を使用する補体介在障害の処置は、重大な影響を与える制限を有するとの認識を提供する。高レベルの転写物分解または翻訳抑制が達成されたとしても、重大な補体介在有害効果を引き起こすのに十分なC3がなお産生され得る。さらに、INAAの治療適用は、INAAの肝臓以外の臓器への全身送達が挑戦的であることが証明されているため、肝臓により産生されるタンパク質の発現阻害に主に焦点が絞られている。肝臓は体内のC3の大部分の供給源ではあるが、C3はまた肝臓の外で多様な細胞型によっても産生され得る。C3の肝外産生は、全身投与されたINAAがC3を、種々の治療目的に望ましいレベルに阻害する能力の制限に寄与し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、本発明は、ある長時間作用型コンプスタチン類似体をC3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA)と組み合わせて使用する、補体活性化の阻害の提供および/または当該阻害に関する。例えば、本発明は、該長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA)を、それを必要とする対象に投与することを含む方法、それらを含む組成物ならびに該組成物を製造、同定、特徴付けおよび/または使用する方法を提供するおよび/または当該方法に関する。ある態様において、本発明は、長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3の発現を阻害するINAAの一方または両方を含むおよび/または送達する生理学的に許容される組成物を提供するおよび/または当該組成物に関する。ある態様において、本発明は、長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3の発現を阻害するINAAの一方または両方を含むおよび/または送達する医薬グレード組成物を提供するおよび/または当該組成物に関する。ある態様において、本発明は、1回分以上の投与量の長時間作用型コンプスタチン類似体および1回分以上の投与量のC3の発現を阻害するINAAを含む医薬パックまたはキットを提供するおよび/または当該医薬パックまたはキットに関する。数ある中で、ある態様において、本発明は、特に有用な長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3発現を阻害するINAA、組み合わせでのそれらの使用を記載し、さらに特定の用量、用量形態、投与レジメン、単位用量組成物およびヒト対象、例えば、1以上のある疾患、障害または状態を有するおよび/または罹患しやすい、例えば、特定のヒト対象への長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3発現を阻害するINAAでの組み合わせ治療に関連する他のテクノロジーを記載する。
【0005】
ある態様において、本発明は、補体介在障害の処置を必要とする対象を処置する方法を提供し、その方法は、特定の用量、用量形態(例えば、単位用量組成物および/または特定の製剤)および/または投与レジメン(例えば、投与経路、投薬時期など、ある実施態様においてある疾患、障害または状態の処置に特に望ましいと決定されたもの)を使用して、対象に長時間作用型コンプスタチン類似体およびC3発現を阻害するINAAを投与することを含み得る。
【0006】
ある実施態様において、本発明により処置される補体介在障害は、発作性夜間血色素尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)または補体介在溶血と関係する他の障害である。ある実施態様において、障害は中枢神経系(CNS)に影響する炎症性障害である。例えば、ある実施態様において、障害は視神経脊髄炎(NMO)である。ある実施態様において、障害は重症筋無力症(MG)、例えば、難治性MG(rMG)である。ある実施態様において、障害は腎臓に影響する。例えば、ある実施態様において、障害は膜性増殖性糸球体腎炎またはループス腎炎である。ある実施態様において、障害は虚血/再潅流(I/R)障害(例えば、心筋梗塞、血栓塞栓性卒中または手術による)である。ある実施態様において、障害は外傷である。ある実施態様において、障害は移植片拒絶である。ある実施態様において、障害は慢性呼吸器障害、例えば、喘息またはCOPDまたは特発性肺線維症である。
【0007】
本明細書に記載する全ての文献、書籍、特許出願、特許、他の刊行物、ウェブサイトおよびデータベースは、引用により本明細書に取り込まれる。本明細書の記載と取り込んだ資料いずれかの間に矛盾があるとき、本明細書の記載(そのあらゆる補正を含む)が支配する。特に断らない限り、当分野で認められている用語および略語の意味をここで使用する。ここに記載するある面での実施は、当分野の通常の技術範囲内である、分子生物学、細胞培養、組み換え核酸(例えば、DNA)技術、免疫学および/または核酸およびポリペプチド合成、検出、操作および定量などの慣用技術を使用し得る。例えば、Ausubel, F., et al., (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols in Immunology, Current Protocols in Protein ScienceおよびCurrent Protocols in Cell Biology, 全てJohn Wiley & Sons, N.Y., 例えば2010年1月の現行版またはその続版; Sambrook, Russell, and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 2001または4th ed, 2012参照。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】コンプスタチン類似体CA28(配列番号28)および3種の長時間作用型コンプスタチン類似体(CA28-1、CA28-2、CA28-3)の補体活性化の阻害率(パーセント)を、ペプチド濃度(μM)の関数として示すプロットである。補体活性化の阻害は、インビトロで古典的補体阻害アッセイを使用して試験した。プロットは、2回の測定の結果の平均により得た値を示す。CA28(丸;赤色)、CA28-1(バツ印(×);青色);CA28-2(三角、緑色)、CA28-3(四角、紫色)。
【0009】
【
図2】CA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2およびCA28-3の補体活性化の阻害率(パーセント)を、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。CA28(四角、薄灰色)、CA28-2(菱形、黒色)、CA28-3(丸、暗灰色)。CA28-3は、複数のペプチド部分を含む化合物である。ペプチド部分あたりの活性は個々のCA28分子の活性より低いが、CA28-3の総活性は、モルベースでCA28の活性を超える。
【0010】
【
図3】カニクイザルにおける単回静脈内注射後のCA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2およびCA28-3の血漿濃度対時間を示すプロットである。CA28は200mg/kgで投与した。CA28-2およびCA28-3は各々50mg/kgで投与した。これらの実験用の投与量計算に際し、投与したCA28-2およびCA28-3物質は、乾燥重量に基づき80w/w%の活性化合物からなると推定した。しかしながら、サンプル解析中、標準曲線は、乾燥重量に基づき100w/w%の化合物と概算され、30%と概算した。それゆえに、C
max値は、実際のC
maxより多く見積もられる。CA28(四角、薄灰色)、CA28-2(三角、黒色)、CA28-3(丸、暗灰色)。
【0011】
【
図4】CA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-4の補体活性化阻害率(パーセント)を、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。補体活性化の阻害は、インビトロで古典的補体阻害アッセイを使用して試験した。プロットは、CA28-4の4回の測定の結果の平均により得た値を示す。CA28(四角、薄灰色)、CA28-4(バツ印、黒色)。
【0012】
【
図5】カニクイザルにおける単回静脈内注射後のCA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2、CA28-3およびCA28-4の血漿濃度対時間を示すプロットである。CA28は200mg/kgで投与した。CA28-2、CA28-3およびCA28-4は各々50mg/kgで投与した。これらの実験用の投与量計算に際し、投与したCA28-2およびCA28-3物質は、乾燥重量に基づき80w/w%の活性化合物からなると推定した。しかしながら、サンプル解析中、標準曲線は、乾燥重量に基づき100w/w%の化合物と概算された。それゆえに、C
max値は、これらの化合物を乾燥質量ベースで示す用量で投与したときに達成されるC
maxより、だいたい30%多く見積もられる。CA28(四角、薄灰色)、CA28-2(三角、黒色)、CA28-3(丸、暗灰色)、CA28-4(逆三角形、黒色)。
【0013】
【
図6】逆相HPLCを使用するPEGベースの長時間作用型コンプスタチン類似体の紫外線(UV)検出を示す代表的クロマトグラムである。33.68分の保持時間(RT)を有するピークが、ペグ化コンプスタチン類似体を表し、相対面積96%を有する。
【0014】
【
図7】CA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2CS、CA28-2GS、CA28-2HSおよびCA28-2TSの補体活性化阻害活性パーセントを、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。CA28-2CS(菱形、赤色);CA28-2GS(バツ印、青色);CA28-2HS(三角、緑色);CA28-2TS(四角、黒色)。
【0015】
【
図8】CA28および二官能性長時間作用型コンプスタチン類似体であるCA28-2GS-BFの補体活性化阻害活性パーセントを、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。CA28(中抜き丸、青色);CA28-2G-SBF(塗りつぶした丸、赤色)
【0016】
【
図9】単回静脈内注射(CA28(四角、赤色)およびCA28-2GS-BF(丸、紫色))または7日間1日1回皮下注射により投与した(CA28-2GS-BFのみ、アスタリスク、青色)後の、カニクイザルにおけるCA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2GS-BFの血漿濃度対時間を示すプロットである。CA28-2GS-BFは25mg/mlで投与した。投与体積は静脈内で2ml/kgおよび皮下投与で0.28ml/kg/日であった。CA28のデータは、化合物がまた5%デキストロース中であり、10ml/kg投与体積で20mg/mlとして製剤した、異なる実験由来であった。各例の媒体は、5%デキストロースの水溶液であった。
【0017】
【
図10(A)】CA28および二官能性長時間作用型コンプスタチン類似体、CA28-2TS-BFの補体活性化阻害活性パーセントを、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。(A)CA28(丸、赤色)およびCA28-2TS-BF(バツ印、青色)により阻害される古典経路。
【0018】
【
図10(B)】CA28および二官能性長時間作用型コンプスタチン類似体、CA28-2TS-BFの補体活性化阻害活性パーセントを、化合物濃度(μM)の関数として示すプロットである。(B)代替経路阻害。CA28(丸、赤色)およびCA28-2TS-BF(バツ印、青色)。
【0019】
【
図10(C)】(PEG部分を40kDと仮定して)CA28-2TS-BFの構造を示す。
【0020】
【
図11】200mg/kgでCA28を単回静脈内注射(四角、赤色)、7mg/kgでCA28-2TS-BFを1回静脈内注射(アスタリスク、紫色)、7mg/kgでCA28-2TS-BFを1回のみ皮下注射(丸、青色)または7mg/kgでCA28-2TS-BFを1日1回7日間連続皮下注射(逆三角形、緑色)後のカニクイザルにおけるCA28および長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2TS-BFの血漿濃度対時間を示すプロットである。各例の媒体は、5%デキストロースの水溶液である。
【0021】
【
図12】修飾Ham試験において活性化補体に曝した、PNHの患者からの赤血球上のC3沈着のフローサイトメトリー分析を示す。
図12(A)C3沈着に対するCA28の効果を示す希釈実験の結果を示す。
図12(B)C3沈着に対するCA28-2GS-BFの効果を示す希釈実験の結果を示す。使用した化合物濃度は各パネルにおよびその上に示す。
【0022】
【
図13】補体阻害剤非存在下(左パネル)、抗C5モノクローナル抗体エクリズマブ存在下(中央パネル)およびCA28-2GS-BF存在下(右パネル)で修飾Ham試験において活性化補体に曝した、PNHの患者からの赤血球上のC3沈着のフローサイトメトリー分析を示す。
【0023】
【
図14】健常対象における40kD PEGを含む長時間作用型コンプスタチン類似体の反復投与用量漸増治験で観察されたエクスビボ血清誘発溶血のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明のある態様の詳細な説明
I. 定義
数値に関連した用語“およそ”または“約”は、一般に、特に断らない限りまたは他に文脈から明らかではない限り、その数値の±10%、ある態様において、±5%、ある態様において、±1%、ある態様において、±0.5%に入る数を含む(このような数値が可能な値の100%を許されないほど超えるときを除く)。
【0025】
ここで使用する用語“組み合わせ治療”は、対象が2以上の治療レジメン(例えば、2以上の治療剤)に同時に曝される状況をいう。ある実施態様において、2以上のレジメンは同時に投与され得る;ある実施態様において、該レジメンは逐次的に投与され得る(例えば、第一レジメンの全“用量”を、第二レジメンのあらゆる用量の投与前に投与する);ある実施態様において、これら薬剤は重複投与レジメンで投与される。ある実施態様において、組み合わせ治療の“投与”は、組み合わせて他の薬剤またはモダリティを受けている対象への1以上の薬剤またはモダリティの投与を含み得る。明確化のために、組み合わせ治療は、個々の薬剤が一緒に単一組成物で投与されることを必要としないが(または同時であることすら必要としないが)、ある実施態様において、2以上の薬剤またはそれらの活性部分を、組み合わせ組成物でまたは組み合わせ化合物(例えば、単一化学複合体または共有結合物の一部として)で投与し得る。
【0026】
“補体成分”または“補体タンパク質”は、補体系の活性化に関与しまたは補体介在活性の一つ以上に参加するタンパク質である。古典的補体経路の成分は、例えば、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9およびC5b-9複合体(膜侵襲複合体(MAC)とも呼ばれる)および前記のいずれかの活性フラグメントまたは酵素開裂産物(例えば、C3a、C3b、C4a、C4b、C5aなど)を含む。代替経路の成分は、例えば、B因子、D因子およびプロパージンを含む。レクチン経路の成分は、例えば、MBL2、MASP-1およびMASP-2を含む。補体成分はまた可溶性補体成分のための細胞結合受容体も含み、このような受容体は、可溶性補体成分の結合後にこのような可溶性補体成分の生物学的活性の1種以上に介在する。このような受容体は、例えば、C5a受容体(C5aR)、C3a受容体(C3aR)、補体受容体1(CR1)、補体受容体2(CR2)、補体受容体3(CR3、CD45としても知られる)などを含む。用語“補体成分”は、補体活性化の“トリガー”として働く分子および分子構造、例えば、抗原-抗体複合体、微生物または人工的表面に見られる外来構造などを含むことを意図していないことが認識される。
【0027】
“補体介在障害”は、該障害を有する少なくとも一部の対象で、補体活性化が寄与因子であることおよび/または少なくとも一部原因因子であることが知られまたは疑われるあらゆる障害、例えば、補体活性化が組織損傷を招く障害である。補体介在障害の非限定的例は、(i)非定型溶血性尿毒症症候群、寒冷凝集素症、発作性夜間血色素尿症、輸血反応のような溶血または溶血性貧血により特徴付けられる種々の障害;(ii)移植片拒絶(例えば、超急性または急性移植片拒絶)または移植片機能不全;(iii)外傷、手術(例えば、動脈瘤修復)、心筋梗塞、虚血性卒中のような虚血/再潅流障害を含む障害;(iv)喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器系の障害;(v)関節リウマチのような関節炎;(vi)加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障およびぶどう膜炎のような眼障害を含むが、これらに限定されない。“障害”は、ここでは“疾患”、“状態”および類似する用語と相互交換可能に、何らかの健康障害または生物の異常機能状態、例えば、内科的および/または外科的対応が指示されるまたは対象が適切に内科的および/または外科的処置を求められるあらゆる状態を指称するために用いる。特定のカテゴリー内での特定の障害の列記は便宜性のためであり、本発明を限定する意図がないことも理解されるべきである。ある障害は、複数のカテゴリーに挙げられるのが適当であることが理解される。
【0028】
“補体調節タンパク質”は、補体活性の調節に関与するタンパク質である。補体調節タンパク質は、例えば、補体活性化の阻害によりまたは活性化補体タンパク質の1種以上の不活化または崩壊の加速により、補体活性を下方制御し得る。補体調節タンパク質の例は、C1阻害剤、C4結合タンパク質、クラステリン、ビトロネクチン、CFH、I因子および細胞結合タンパク質CD46、CD55、CD59、CR1、CR2およびCR3を含む。
【0029】
“相補性”は、ここでは、特定の塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたは核酸間の正確な対形成をする能力をいうために、その当分野で許容される意味に従い使用する。例えば、アデニン(A)とウリジン(U)は相補性であり、アデニン(A)とチミジン(T)は相補性であり、そしてグアニン(G)とシトシン(C)は相補性であり、当分野でワトソン・クリック型塩基対形成と称される。第一核酸配列のある位置のヌクレオチドが第二核酸配列の逆に位置するヌクレオチドと相補性であるならば、これら鎖を逆平行配向でアラインしたとき、ヌクレオチドは相補性塩基対を形成し、核酸はその位置で相補性である。第一核酸の第二核酸に対する相補性のパーセントは、それらを評価域にわたって最大相補性のために逆平行配向でアラインし、両鎖の該域内で相補性塩基対を形成するnt数を決定し、域内の総ntで除し、100を乗ずることにより評価し得る。例えば、AAAAAAAAおよびTTTGTTATは、計16nt中12ntが相補性塩基対であるため、75%相補性である。特定の%相補性を達成するために必要な相補性ntの数を計算するとき、分数を最も近い整数に四捨五入する。非相補性ヌクレオチドにより占められた位置はミスマッチを構成し、すなわち、その位置は非相補性塩基対により占められる。ある実施態様において、評価域は、二本鎖部分または標的部分についてここに記載した長さを有する。相補性配列は、両ヌクレオチド配列の全長(同じ長さならば)または短い配列の全長(異なる長さならば)にわたる、第一ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの第二ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの塩基対形成である。該配列は、ここで互いに関して“完全相補性”(100%相補性)という。評価域にわたり少なくとも70%相補性である核酸は、その域にわたり“実質的相補性”と見なす。ある実施態様において、相補性核酸は、評価域にわたり少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%相補性である。ここで第一配列を第二配列に対して“実質的相補性”と称するとき、2配列は完全相補性であってよくまたはそれらはハイブリダイゼーションにより1以上の非対応塩基、例えば、ハイブリダイゼーションにより約5%、10%、15%、20%または25%までの非対応塩基、例えば、30塩基対までの二本鎖についてハイブリダイゼーションにより1個、2個、3個、4個、5個または6個の不適合塩基対を含み得るが、意図される用途に最も関連する条件下でハイブリダイズする能力を維持する。2オリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションにより、1以上の一本鎖オーバーハングを形成するように設計されるとき、該オーバーハングは相補性のパーセントの決定に関してミスマッチまたは不対ヌクレオチドと見なされないことは理解されるべきである。例えば、21ヌクレオチド長の一方のオリゴヌクレオチドと23ヌクレオチド長の他方のオリゴヌクレオチドを含むdsRNAであって、長いオリゴヌクレオチドが短いオリゴヌクレオチドと完全相補性である21ヌクレオチドである配列と2ヌクレオチドオーバーハングを含む、2鎖は、ここでは“完全相補性”という。ここで使用する“相補性”配列は、ハイブリダイズに関するそれらの能力が満たされている限り、1以上の非ワトソン・クリック型塩基対および/または非天然および他の修飾ヌクレオチドから形成された塩基対を含み得る。該非ワトソン・クリック型塩基対は、G:U WobbleまたはHoogsteen塩基対形成を含むが、これらに限定されない。当業者は、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルが、いわゆる“ゆらぎ”法則に従い、該塩基を担持するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの塩基対形成性質を実質的に変えることなく、他の塩基に置き換え得ることを認識する(例えば、Murphy, FV IV & V Ramakrishnan, V., Nature Structural and Molecular Biology 11: 1251 - 1252 (2004)参照)。例えば、その塩基にイノシンを含むaヌクレオチドは、アデニン、シトシンまたはウラシルを含むヌクレオチドと塩基対形成し得る。それ故に、ここに記載するINAAのヌクレオチド配列において、ウラシル、グアニンまたはアデニンを含むヌクレオチドを、例えば、イノシンを含むヌクレオチドと置き換え得る。用語“相補性”、“完全相補性”および“実質的相補性”を、文脈から明らかなとおり、任意の2核酸間の塩基マッチング、例えば、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖間またはINAAのアンチセンス鎖(例えば、ds RNAi剤)と標的配列間またはアンチセンスオリゴヌクレオチドと標的配列間の塩基マッチングに関して使用し得る。ここで使用する“ハイブリダイズ”は、当業者に理解されるとおり、特定の興味ある条件下で安定である二本鎖構造が形成されるような、相補性部分を含むまたはそれからなる2核酸配列間の相互作用をいう。
【0030】
“阻害性核酸剤”(INAA)は、標的遺伝子の発現を阻害する核酸を含む薬剤をいう。“標的遺伝子の発現阻害”は、該遺伝子からの情報を使用して機能的遺伝子産物が産生されるレベルが減少することを意味する。発現は、転写および、適切ならば、RNAスプライシング、翻訳および翻訳後修飾の段階を含む。INAAは、これらの段階の任意の1以上を阻害し得る。ここで特に興味深い実施態様において、INAAは、遺伝子から転写されたRNAの分解促進または遺伝子から転写されたRNAの翻訳抑制により、標的遺伝子の発現を阻害する。ここで使用する“遺伝子から転写されたRNA”は、一次RNA転写物(pre-mRNA)ならびに転写後プロセシングにより産生されたRNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)をいう。
【0031】
ここで使用する“単離”は、1)通常自然界では併存している少なくとも一部分の成分から分離された;2)ヒトの手を借りた方法により製造または精製された;および/または3)自然に存在しない、例えば、人工環境に存在することを意味する。一般に、特に断らない限りまたは明確に証明されない限り、あらゆる物、生成物、薬剤、組成物などは、所望により、“単離された”と見なし得る。
【0032】
ここで2個以上の部分と共に用いる“結合”は、これらの部分が、互いに物理的に結合または連結して、結合が形成された条件下、そして、好ましくは新規分子構造が利用される条件下、例えば、生理的条件下でこれらの部分が結合したままであるように十分に安定である分子構造を形成することを意味する。本発明のある好ましい態様において、結合は共有結合である。他の態様において、結合は非共有結合である。部分は直接的にまたは間接的に結合し得る。2個の部分が直接的に結合するとき、互いに共有結合するかまたは2部分間の分子間力がその結合を維持するように十分に接近している。2個の部分が間接的に結合するとき、これらは、2部分の結合を維持する第三の部分に共有結合または非共有結合する。一般に、2個の部分が“結合部分”または“結合部”により結合しているというとき、2個の結合した部分の間の結合は間接的であり、典型的に結合した部分の各々は結合部分に共有結合する。2個の部分を“リンカー”を使用して結合させてよい。リンカーは、物質の安定性に一致する条件下(条件によって、その一部は適宜保護されていてよい)、合理的な時間、合理的な収率を得るために十分な量で、結合する物質と反応するあらゆる適切な部分であり得る。典型的に、リンカーは少なくとも2個の官能基を含み、その一方は第一の物質と反応し、他方は第二の物質と反応する。リンカーが結合すべき物質と反応した後、用語“リンカー”は、リンカーに由来する得られた構造の一部または少なくとも反応した官能基に含まれていない部分をいうことがあることは認識される。結合部分は、結合する物質との結合に参加しない部分を含んでよく、その主な目的は、これらの物質を互いに空間的に離すことであり得る。このような部分は“スペーサー”と呼び得る。
【0033】
“核酸”は“ポリヌクレオチド”と相互交換可能に使用し、ヌクレオチドのポリマーを包含する。“オリゴヌクレオチド”は、比較的短い核酸、例えば、一般に約4~約100ヌクレオチド(nt)長、例えば、8~60ntまたは10~40nt長をいう。ヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドを含む。“修飾ヌクレオチド”は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合(またはその一部)および/または修飾核酸塩基を有する、分子をいい、ここでの“修飾”は、糖、結合または核酸塩基が天然に存在する哺乳動物mRNAで見られる標準的糖、結合または核酸塩基と異なることを意味する。ここで使用する修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの構成要素、すなわち糖、塩基およびリン酸部分の1以上が天然で存在するものと異なる、分子を包含する。それ故に、用語修飾ヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合、糖部分または核酸塩基の、例えば、官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。ある実施態様において、核酸はDNAまたはRNAを含むまたはこれからなる。ある実施態様において、核酸は標準的核酸塩基のみからなる(しばしば単に“塩基”と称する)(標準的および非標準的両者の核酸塩基を含むものの対語として)。標準的塩基はシトシン、グアニン、アデニン(DNAおよびRNAに見られる)、チミン(DNAに見られる)およびウラシル(RNAに見られる)であり、それぞれC、G、A、TおよびUと略される(この略称はまた核塩基を含むヌクレオシドまたはヌクレオチドをいうためにも使用し得る)。ある実施態様において、核酸は1以上の非標準的核酸塩基を含み得て、これは天然に存在しても天然に存在しなくても(すなわち、人工;天然で見られない)よい。ある実施態様において、核酸は修飾塩基(例えば、アルキル化(例えば、メチル化)塩基)、修飾糖(例えば、2’-O-アルキルリボース(例えば、2’-O-メチルリボース)、2’-フルオロリボース、アラビノースまたはヘキソース)、修飾リン酸基(例えば、ホスホロチオエートまたは5’-N-ホスホラミダイト結合)を含み得る。修飾核酸塩基は、他の合成および天然核酸塩基、例えばデオキシチミン(dT)、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンおよび3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよび2-アミノプロピルアデニンを含むN-2、N-6およびO-6置換プリン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシンおよび5-メチルシトシンを含む。さらなる核酸塩基は、米国特許3,687,808に開示のもの、Modified Nucleosides in Biochemistry, Biotechnology and Medicine, Herdewijn, P. ed. Wiley- VCH, 2008に開示のもの;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990により開示のもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示のものおよびSanghvi, Y S., Chapter 15, dsRNA Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993に開示のものを含む。ある実施態様において、核酸は、ホスホジエステル結合により結合したサブユニット(残基)を含む。ある実施態様において、核酸の少なくとも一部のサブユニットは、連続ヌクレオシド、例えば、ある糖分子の3’炭素原子と他の5’炭素原子間の非ホスホジエステル結合または他の非ホスホジエステル主鎖構造、例えばホスホロチオエート、5’-N-ホスホラミダイト、ホスホネート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホラミダイト、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート、ホスフィナート、チオノホスホラミダイト、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、カルバメート、カーボネート、リン酸トリエステル、アセトアミダート、カルボキシメチルエステルおよびペプチド結合により結合される。ある実施態様において、非リン含有結合が使用され得る。該主鎖はアルキルまたはシクロアルキル糖間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキル糖間結合または1以上のヘテロ原子のまたはヘテロ環式糖間結合、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分からの部分で形成);ポリ(エーテル-チオエーテル)、ポリ(エーテル-スルホキシド)またはポリ(エーテル-スルホン)シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホナートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を含み得る。リン含有非ホスホジエステル結合および非リン含有結合ならびにそれを製造および使用する方法の例は、米国特許6,348,583および8,163,477および米国特許出願公開20090318676および前記のいずれかの引用文献に記載される。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドは、それに共有結合した部分(例えば、ターゲティング部分)を有する。ある実施態様において、標識が結合し得る部分または官能基は塩基に取り込まれまたは結合される。ある実施態様において、結合は、その位置での修飾がハイブリダイゼーションを顕著に妨害しないように、ワトソン・クリック型塩基対形成に関与しない位置である。例えば、UTPおよびdUTPのC-5位はワトソン・クリック型塩基対形成に関与せず、部分の修飾または結合に有用な位置である。修飾糖、修飾塩基または非ホスホジエステル主鎖結合を含む核酸サブユニットは、本発明の目的で“修飾ヌクレオチド”と呼んでよく、核酸の任意のヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり得ることは理解されるべきである。“修飾核酸”は、(1)そのヌクレオシドの少なくとも2個が非標準的ヌクレオシド間結合で共有結合している(すなわち、一方のヌクレオチドの5’末端と他方のヌクレオチドの3’末端のホスホジエステル結合以外の結合);(2)1以上の修飾ヌクレオチドを含む(修飾塩基、糖またはリン酸を含み得る);および/または(3)天然で通常核酸と結合しない化学基が核酸に共有結合していることにより特徴付けられる核酸である。核酸は、種々の実施態様で直線状でも環状でもよい。核酸は、種々の実施態様で一本鎖、二本鎖または部分的に二本鎖であり得る。少なくとも部分的に二本鎖核酸は、平滑末端でよくまたは1以上のオーバーハング、例えば、5’および/または3’オーバーハングを有してよい。1以上の核酸修飾(例えば、塩基、糖および/または主鎖修飾)、非標準的ヌクレオチドまたはヌクレオシドなどは、核酸に存在し得る。該修飾は、例えば、安定性を増加させ(例えば、ヌクレアーゼによる開裂への感受性減少により)、インビボクリアランスを減少させ、細胞取り込みを増加させまたは効力、有効性、特異性または核酸を意図される用途により適するものとするその他を改善する他の性質に寄与し得る。核酸修飾ならびに核酸またはヌクレオチドを合成および修飾する方法の種々の非限定的例(修飾ヌクレオチドを含む)は、Crooke, S T (ed.) Antisense drug technology: principles, strategies, and applications, Boca Raton: CRC Press, 2008; Kurreck, J. (ed.) Therapeutic oligonucleotides, RSC biomolecular sciences. Cambridge: Royal Society of Chemistry, 2008; Egli, M., et al. (eds.), Current protocols in nucleic acid chemistry, Wiley (1999 - 2016)(e.g., Deleavey GF, et al., Chemical modification of siRNA. Current protocols in nucleic acid chemistry 39:16.3.1-16.3.22 (2009));米国特許4,469,863;5,536,821;5,541,306;5,637,683;5,637,684;5,700,922;5,717,083;5,719,262;5,739,308;5,773,601;5,886,165;5,929,226;5,977,296;6,140,482;6,455,308、6,403,779;6,399,754;6,225,460;6,127,533;6,031,086;6,005,087;5,977,089、米国特許出願公開20090203135および/またはPCT出願公開WO00/56746およびWO01/14398およびここに引用するまたはここで引用した引用文献に引用された他の引用文献に記載される。核酸は、一律に修飾しても、その一部のみ修飾してもよくおよび/または複数の異なる修飾を含み得る。異なる修飾を、二本鎖核酸の2鎖に使用し得る。当業者は、本発明により使用する核酸剤が、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体ではない1以上の部分を含み得ることをさらに認識する。ここで使用する用語“核酸配列”および“標的配列”は核酸物質自体をいうことができ、単に特定の核酸分子を生化学的に特徴付ける配列情報(例えば、それぞれ塩基アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルを含むヌクレオチドをいう、5文字A、G、C、TまたはUから選択された文字の連続)ではないことは認識される。
【0034】
ここで使用する“生理的条件”は、少なくとも一部生存対象、例えば、哺乳動物対象に典型的に見られるものを模倣した、温度、塩濃度、pHのような条件一式をいう。ある面において、生理的条件は、水性媒体、例えば、体積/体積ベースで少なくとも90%、95%、96%、97%、97%、99%または約100%水を含む媒体をいう。ある態様において、他の液体が、存在するならば、タンパク質二次または三次構造に実質的に影響しない。ある態様において、生理的条件は、少なくとも一部、例えば、哺乳動物対象の、血液または細胞外液、例えば、間質液のような体液に見られるものを模倣する。例えば、インビトロアッセイで有用な多様な生理的条件は当分野で知られる。一般に、生理的条件下の媒体は、生理学的濃度の塩、例えば、塩化ナトリウムを含む。ある態様において、生理学的濃度の塩は、約250mOsm/L~約350mOsm/L、例えば、約275mOsm/L~約325mOsm/Lの範囲、例えば、約300mOsm/Lの濃度をいう。ある態様において、生理的条件は、体液、例えば、血液または細胞外液、例えば、間質液とほぼ等張である。ある態様において、生理的条件は、約6.5~約7.8、例えば、約7.0~約7.5の範囲のpHを含む。ある態様において、生理学的媒体は、媒体のpHが生理学的範囲内に維持されることを助ける緩衝物質を含む。ある態様において、生理的条件は、典型的哺乳動物タンパク質が、例えば、血液または細胞外液のような体液に典型的に見られるタンパク質が、それらが通常見られる体液中で有する二次、そして該当する場合、三次構造を実質的に維持するような条件を含む。ある態様において、典型的に、生理学的媒体の成分は、生理学的媒体に存在する濃度で、哺乳動物細胞に実質的に非毒性である。多様な生理学的媒体(“緩衝液”と呼ぶこともある)は、種々の標準的参考書、例えば上に引用したもの(例えば、Sambrook, et al., Protocols series)に挙げられている。ある態様において、生理学的温度は、約25℃~約38℃、例えば、約30℃~約37℃、例えば、35℃~37℃の範囲である。
【0035】
ここで使用する“ポリペプチド”は、所望により1個以上のアミノ酸類似体を含んでよい、アミノ酸のポリマーをいう。タンパク質は、1個以上のポリペプチドからなる分子である。ペプチドは比較的短いポリペプチドであり、典型的に約2~60アミノ酸長、例えば、8~40アミノ酸長である。用語“タンパク質”、“ポリペプチド”および“ペプチド”は相互交換可能に使用し得る。ここで使用するポリペプチドは、タンパク質で天然に見られるアミノ酸、タンパク質で天然に見られないアミノ酸のようなアミノ酸および/またはアミノ酸ではないアミノ酸類似体を含み得る。ここで使用するアミノ酸“類似体”は、アミノ酸と構造的に似た他のアミノ酸またはアミノ酸と構造的に似たアミノ酸以外の化合物であり得る。一般にタンパク質で見られる20アミノ酸(“標準アミノ酸)の多数の当分野で認識される類似体が知られる。ポリペプチドにおけるアミノ酸の1個以上を、例えば、結合、官能基化または他の修飾のために炭水化物基、ホスフェート基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、リンカーのような化学物質の付加などにより修飾し得る。ある非限定的な適切な類似体および修飾方法はWO2004026328に記載されており、また本明細書において後述している。ポリペプチドは、例えば、N末端をアセチル化し、例えば、C末端をアミド化してよい。
【0036】
ここで使用する用語“精製”は、本来併存しているまたは合成由来のとき精製前に併存していた成分の少なくとも一部または大部分から分離されている物質をいう。一般に、このような精製は、ヒトの手による動作を含む。精製物は一部精製され、実質的に精製されまたは純粋であり得る。このような薬剤は、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または99%を超えて純粋であり得る。ある態様において、核酸、ポリペプチドまたは小分子は、調製物に存在する、それぞれ総核酸、ポリペプチドまたは小分子物質の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を構成するように精製する。ある態様において、有機物質、例えば、核酸、ポリペプチドまたは小分子を、調製物に存在する総有機物質の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上を構成するように精製する。純度は、例えば、乾燥重量、クロマトグラフィー出力図のピークサイズ(GC、HPLCなど)、分子存在量、電気泳動方法、ゲル上のバンド強度、スペクトルデータ(例えば、NMR)、元素分析、ハイスループット配列決定、マススペクトロメトリーまたはあらゆる当分野で受け入れられている定量方法に基づき得る。ある態様において、水、緩衝物質、イオンおよび/または小分子(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸のような合成前駆体)は、所望により精製調製物に存在し得る。精製薬剤は、それを他の物質(例えば、他の細胞性物質)から離すことによりまたは所望の程度の純度を達成するような方法で製造することにより製造し得る。ある態様において、細胞により産生された分子に関する“一部精製”は、細胞により産生された分子がもはや細胞内に存在しない、例えば、細胞が溶解されており、所望により、少なくとも細胞性物質の一部(例えば、細胞壁、細胞膜、細胞小器官)が除去されているおよび/または分子がライセートに存在した同じタイプの分子(タンパク質、RNA、DNAなど)の少なくとも一部から分離または隔離されていることを意味する。
【0037】
“組み換え宿主細胞”、“宿主細胞”および他のこのような用語は、目的のポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターのような、外来核酸(典型的にDNA)を含む原核細胞もしくは真核細胞または原核細胞株もしくは真核細胞株を意味する。このような用語は、ベクターまたは他の核酸が導入されている本来の細胞の子孫を含むと理解される。適当な宿主細胞は、例えば、大腸菌またはエシェリキア属;ラクトバチルス属、バチルス属(例えば、枯草菌)、サルモネラ属、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、スタフィロコッカス属などのような他の細菌のような原核生物および例えば、酵母(例えば、ピキア属(例えば、ピキア・パストリス)、クリベロミセス属、例えばクルイベロミセス・ラクチス、ハンセヌラ属、例えばハンセヌラ・ポリモルファ)のような真菌を含む真核生物を含む、ポリヌクレオチド(例えば、このようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの産生のため)を発現するために当分野で日常的に使用されているあらゆる細胞を含む。他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス属、ニューロスポラ属、フサリウム属またはトリコデルマ属、例えば、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニデュランスまたはアスペルギルス・ニガーの株の細胞;昆虫細胞(例えば、Sf9)、植物細胞および動物細胞、例えば、CHO、R1.1、B-W、L-M、アフリカミドリザル腎細胞(例えばCOS-1、COS-7、BSC-1、BSC-40およびBMT-10)および培養ヒト細胞のような哺乳動物細胞である。遺伝子改変(例えば、トランスジェニック)植物または動物における遺伝子改変細胞であって、組み換えポリペプチドが少なくともこのような細胞の一部で産生されるものも含まれる。ポリペプチドは乳汁中に分泌されたり、植物物質から取得されたりし得る。外来核酸は、プラスミドのようなエピソームとして安定に維持されまたは少なくとも一部宿主細胞のゲノムに、所望により複製または逆転写後に統合される可能性がある。“宿主細胞”などのような用語は、核酸の産生前に外来核酸の受け手として使用できる細胞または細胞株をいうためにも使用される。“組み換えポリヌクレオチド”は、一般に本来互いに直接結合していることが知られていない核酸配列を含むポリヌクレオチドである。例えば、核酸配列は、異なる遺伝子または異なる種に存在してよくまたは配列の1個以上が天然に存在する配列の変異体であってよくまたは少なくとも一部が天然に存在する配列と相同ではない人工配列であってよい。“組み換えポリペプチド”は、一般に、少なくとも一部組み換え宿主細胞または無細胞インビトロ発現系による外来核酸の転写および翻訳により産生されるおよび/または本来互いに直接結合していることが知られていないアミノ酸配列を含むポリペプチドである。後者の場合、組み換えポリペプチドは“キメラポリペプチド”と呼び得る。キメラポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、鎖長のかなりの部分が、異なる遺伝子または異なる種に存在してよくまたは配列の1個以上が天然に存在する配列の変異体であってよくまたは少なくとも一部が天然に存在する配列と同一ではないまたはある態様においては相同ではない人工配列であってよい。キメラポリペプチドは2種以上のポリペプチドを含み得ると理解される。例えば、キメラポリペプチドの第一および第二ポリペプチドAおよびBは直接結合してよく(A-BまたはB-A)または第三ポリペプチド部分Cにより離されていてよい(A-C-BまたはB-C-A)。ある態様において、部分Cは、例えば、複数グリシンおよび/またはセリン残基または多様な他のアミノ酸であり得る、ポリペプチドリンカーを示す。ある態様において、2個以上のポリペプチドを非ポリペプチドリンカーにより結合し得る。ここで使用する“組み換え”は、ある態様において、組み換え宿主細胞中で産生され得る短い組み換えポリペプチドの連結(例えば、化学的結合、酵素的結合)により産生されるポリペプチドを含む。ある態様において、組み換えポリペプチドは、ポリペプチドの分泌を指示するシグナル配列またはポリペプチドを特定の区画または小器官に向ける配列を含み得る。適切な配列は当分野で知られる。目的の宿主細胞型(例えば、細菌、真菌、哺乳動物、植物など)のための適当な配列を選択し得る。シグナル配列は、ある態様においてN末端またはC末端またはその近辺(例えば、最大10~50アミノ酸以内)に位置し得る。ある態様において、ポリペプチドはタグを含む。タグは、それを含むタンパク質の検出の促進および/または精製に有用であり得る。タグの例は、ポリヒスチジンタグ(例えば、6X-Hisタグ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、NUSタグ、SNUTタグ、Strepタグ、エピトープタグ、例えばV5、HA、MycまたはFLAGを含む。ある態様において、プロテアーゼ開裂部位はタグとポリペプチドの間の領域に位置し、該ポリペプチドがプロテアーゼへの暴露によりタグから分離することを可能とする。ある態様において、組み換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、目的の宿主細胞(例えば、細菌、真菌、哺乳動物、植物など)での発現のために少なくとも一部コドン最適化されている。タグは、種々の対応において、ポリペプチドのN末端またはC末端またはその近辺(例えば、最大10~50アミノ酸以内)に位置し得る。組み換えポリペプチドは、多様な方法をいずれかを使用して単離、精製などし得る。例えば、Sambrook, Protocols seriesまたは他の標準資料を参照のこと。使用方法は、ある態様において、タグまたは抗体のような特異的結合剤を利用し得る、例えば、透析(例えば、規定孔径を有する膜を使用)、クロマトグラフィー、沈殿、ゲル精製または親和性ベースの方法を含み得る。
【0038】
ここで使用する“反応性官能基”は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、スルファイト、エナミン、インアミン、ウレア、シュードウレア、セミカルボアジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物およびニトロソ化合物、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド、スルフヒドリルなどを含むが、これらに限定されない。これらの官能基の各々を製造する方法は当分野で周知であり、特定の目的のためのその適用または修飾は当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler and Karo, eds. ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS, Academic Press, San Diego, 1989およびHermanson, G., Bioconjugate Techniques, 2nd ed., Academic Press, San Diego, 2008参照)。
【0039】
“RNA干渉”(RNAi)は、“RNA誘発サイレンシング複合体”(RISC)として知られる複合体が真核生物細胞、例えば、脊椎動物細胞、例えば、哺乳動物細胞または適切なインビトロ系で、配列特異的様式で遺伝子発現を阻害する過程をいう。何らかの理論に縛られることを望まないが、本来は、長い二本鎖RNA(dsRNA)を、低分子干渉RNA(siRNA)と称される21~23塩基対と2塩基3’オーバーハングの短い二本鎖フラグメントに開裂する、RNAi経路はDicerとして知られるIII型エンドヌクレアーゼにより開始される。該siRNAは、2つの一本鎖RNA(ssRNA)からなり、しばしば“パッセンジャー鎖”または“センス鎖”および“ガイド鎖”または“アンチセンス鎖”と称される。用語“アンチセンス鎖”または“ガイド鎖”は、故に、標的配列に実質的相補性である領域を含む、INAA、例えば、dsRNAi剤の鎖をいう。ここで使用する用語“センス鎖”または“パッセンジャー鎖”は、アンチセンス鎖の領域と実質的相補性である領域を含む、iRNAの鎖をいう。ガイド鎖はRISCに組み込まれ、そこで、mRNA分子における相補性配列と対形成し、これがArgonaute2(RISC複合体の触媒要素である酵素)によるmRNAの開裂をもたらす。パッセンジャー鎖は分解される。RISCは、これの代わりにまたはこれに加えてガイド鎖に相補性の標的RNAの翻訳抑制に介在し得る。当業者は、ガイド鎖が標的RNAの標的領域と完全相補性であっても、標的RNAの標的領域と完全未満の相補性であってもよいことを認識する。標的RNAとガイド鎖のハイブリダイゼーションにより形成される構造の相補性は、ガイド鎖が(i)RNA誘発サイレンシング複合体(RISC)の標的RNAの開裂をガイドできるおよび/または(ii)標的RNAのRISC介在翻訳抑制を引き起こすことができるようなものであり得る。如何なる方法によっても本発明を限定しないが、標的mRNAに完全またはほぼ完全相補性である鎖は、主に開裂によりmRNA分解を誘発し、一方相補性の程度が少ないもの(特にガイド鎖の7位より3’の領域)は、一般に翻訳抑制を促進する。ある実施態様において、鎖は標的mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)と不完全に塩基対形成し、脱アデニル化によりRISC依存性翻訳抑制またはmRNA不安定化を引き起こし、キャップ除去および分解に至る。
【0040】
ここで使用する用語“RNAi剤”は、RNA干渉(RNAi)により細胞のRNA(例えば、mRNA)の配列特異的分解または翻訳抑制を指示する核酸をいう。RNAi剤は、それにより細胞、例えば、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象などの対象内の細胞における標的遺伝子の発現を阻害する。RNAi剤は低分子干渉RNA(siRNA)および小ヘアピンRNA(shRNA)を含む。siRNAは二本鎖(ds siRNA)でも一本鎖(ss siRNA)でもよい。ここで使用する用語“siRNA”は、Dicerならびに化学合成または当分野で知られる他の方法により製造された、siRNAについてここに記載した構造を有する化合物を含む、類似のまたは同一の構造を有する化合物による長いdsRNAの開裂により産生されたsiRNAを包含する。
【0041】
“特異的結合”は、一般に標的ポリペプチド(またはより具体的に、標的分子)と抗体またはリガンドのような結合分子の間の物理的結合をいう。この結合は、典型的に、結合分子により認識される抗原決定基、エピトープ、結合ポケットまたは間隙のような標的の特定の構造特性の存在による。例えば、抗体がエピトープAに特異的であるならば、遊離標識Aとそれに結合する結合分子の両者を含む反応におけるエピトープAを含むポリペプチドの存在または遊離非標識Aの存在が、結合分子に結合する標識Aの量を減少させる。特異性は絶対的である必要はなく、一般に結合が生じる状況をいうことは理解すべきである。例えば、多数の抗体が、標的分子に存在するものに加えて他のエピトープと交差反応することは当分野で周知である。このような交差反応性は、抗体を使用する適用により許容され得る。当業者は、ある適用(例えば、標的分子検出のため、治療目的のためなど)を適当に実施するために十分な程度の特異性を有する抗体またはリガンドを選択できる。特異性を、他の標的、例えば、競合物質ついての結合分子の親和性に対する、標的に対する結合分子の親和性のような付加的因子の観点で評価し得ることも理解される。結合分子が、検出されることが望まれる標的分子に対する高親和性および非標的分子に対する低親和性を示すならば、該抗体はおそらく許容される試薬である。一つ以上の状況における結合分子の特異性が確立されたら、他の、好ましくは類似の、状況で、その特異性を再評価することなく用い得る。ある態様において、特異的結合を示す2分子の親和性(平衡解離定数、Kdで測定して)は、試験した条件下、例えば、生理的条件下で10-3M以下、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M以下、例えば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下または10-9M以下である。
【0042】
本発明により処置される“対象”は、典型的に、少なくともある霊長類(例えば、ヒト)補体成分C3、所望により、1種以上のさらなる霊長類補体成分を発現するまたは含む、ヒト、非ヒト霊長類または下等動物(例えば、マウスまたはラット)である。ある態様において、対象は雄性である。ある態様において、対象は雌性である。ある態様において、対象は成体、例えば、少なくとも18歳、例えば、18~100歳のヒトである。ある態様において、ヒト対象は少なくとも12歳である。ある態様において、対象は成体、例えば、少なくとも18歳、例えば、18~100歳のヒトである。ある態様において、対象は少なくとも40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳または80歳である。ある態様において、対象は小児、例えば、0~4歳または5~11歳のヒトである。
【0043】
“標的遺伝子”は、発現が調節される、例えば、阻害される、遺伝子をいう。ここで使用する用語“標的RNA”は、INAAを使用して、分解されるまたは翻訳抑制されるまたは他の方法で阻害される、RNAをいう。標的RNAは標的配列または標的転写物とも称され得る。RNAは、標的遺伝子から転写された一次RNA転写物(例えば、pre-mRNA)またはプロセシングされた転写物、例えば、ポリペプチドをコードするmRNAであり得る。ここで使用する用語“標的部分”または“標的領域”は、標的RNAのヌクレオチド配列の隣接部分をいう。ある実施態様において、mRNAの標的部分は、少なくとも、適当なRNAi剤存在下、その部分内のRNAi介在開裂のための基質として役立つのに十分長い。ある実施態様において、RNAの標的部分は、少なくとも、適当なアンチセンスオリゴヌクレオチド存在下、その部分内のRNase H介在開裂のための基質として役立つのに十分長い。標的部分は約8~36ヌクレオチド長、例えば、約10~20または約15~30ヌクレオチド長であり得る。標的部分長は、上記範囲内の特定の値を有するかまたは部分範囲であり得る。例えば、ある実施態様において、標的部分は約15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22ヌクレオチド長であり得る。
【0044】
ここで対象の処置に関連して使用する“処置”は、処置を提供すること、すなわち、対象に何らかのタイプの内科的または外科的対応を提供することをいう。処置は、疾患の解消、軽減、進行阻止、予防または可能性の減少のためにまたは疾患の1種以上の症状または所見の解消、軽減、進行の阻止または予防、予防または可能性の減少のために提供できる。“予防”は、少なくとも一定期間、少なくとも一部個体において、疾患または症状または疾患所見が生じないようにすることをいう。処置は、化合物または組成物を、疾患の指標となる一つ以上の症状または所見の発症後、例えば、疾患の解消、軽減、重症度軽減および/または進行の阻止または予防および/または疾患の一つ以上の症状または所見の解消、軽減、重症度軽減および/または阻止のために、対象に投与し得る。化合物または組成物を、疾患を発症しているまたは一般集団の構成員に比して疾患発症のリスクが増加している対象に投与できる。化合物または組成物を、疾患を発症しており、該疾患と診断された他の個体に比してまたはこのような症状または所見または増悪に対する該対象の典型的または平均的リスクに比して、疾患の一つ以上の特定の症状または所見を発症するまたは疾患の増悪のリスクが増加している対象に投与できる。例えば、対象は、該対象が増悪を経験するリスクを高める(例えば、一時的に高まったリスク)“トリガー”に曝されている可能性がある。化合物または組成物を、予防的に、すなわち、疾患の何らかの症状または所見の発症前に投与できる。典型的に、この場合、対象は、例えば、所望により、年齢、性別および/または他の人口統計学的変数が一致していてよい、一般集団の構成員に比して、該疾患を発症するリスクがある。
【0045】
“ベクター”は、遺伝的環境間のまたは細胞への、目的の核酸の挿入、例えば、導入、輸送などを仲介できる、多様な核酸分子、ウイルスまたはその一部のいずれかであり得る。目的の核酸を、例えば、制限およびライゲーションを使用して、ベクターに結合、例えば、挿入できる。ベクターは、例えば、DNAまたはRNAプラスミド、コスミド、天然に存在するまたは修飾ウイルスゲノムまたはその一部、ウイルスカプシド、ミニ染色体、人工染色体などに封入できる核酸を含む。プラスミドベクターは、典型的に複製開始点(例えば、原核細胞での複製のため)を含む。プラスミドは、ウイルスゲノムの一部または全て(例えば、ウイルスプロモーター、エンハンサー、プロセシングまたはパッケージングシグナルおよび/または宿主細胞ゲノムに統合され得る核酸を生じさせるおよび/または感染性ウイルスを生じさせるのに十分な配列)を含む。核酸を細胞に導入するのに使用できるウイルスまたはその一部は、ウイルスベクターと呼び得る。ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス、ワクシニアウイルスおよび他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)およびその他を含む。バキュロウイルスは、例えば、昆虫細胞での使用のためである。広範な植物ウイルスベクターが知られ、例えば、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスまたはその1個以上の遺伝要素(例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)に基づくまたはこれらを含むものを含む。ウイルスベクターは、宿主細胞に導入したとき、感染性ウイルスの産生のための十分なウイルス遺伝情報を含んでいても含んでいなくてもよく、すなわち、ウイルスベクターは複製可能または複製欠損であり得る。ある態様において、例えば、感染性ウイルスの産生のために十分な情報を欠くとき、例えば、ウイルスの産生を望むならば、宿主細胞または細胞に導入された他のベクターによりにより供給され得る。ある態様において、例えば、ウイルスの産生が望まれないならば、このような情報は供給されない。導入される核酸は、天然に存在するまたは修飾ウイルスゲノムまたはその一部に取り込まれても、別の核酸分子としてウイルスカプシド内に存在してもよい。ベクターは、ベクターを取り込んでいる細胞の同定および/または選択に適切なマーカーをコードする1個以上の核酸を含み得る。マーカーは、例えば、抗生物質または他の薬剤に対する耐性または感受性を増加または減少させる種々のタンパク質(例えば、ピューロマイシン、ハイグロマイシンまたはブラストサイジンのような抗生物質に対する耐性に寄与するタンパク質)、活性が当分野で知られるアッセイにより検出可能な酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)および発現する細胞の表現型に検出可能に影響するタンパク質またはRNA(例えば、蛍光タンパク質)を含む。ベクターは、しばしば、制限酵素のための適当な部位を1箇所以上有し、これを核酸、例えば、発現させるべき核酸のベクターへの挿入の促進に使用し得る。発現ベクターは、制御エレメント(“制御配列”、“発現調節エレメント”または“発現調節配列”とも呼ぶ)と操作可能に結合するように所望の核酸が挿入されているまたは挿入でき、RNA転写物(例えば、タンパク質または非コードRNAに翻訳され得るmRNA)として発現し得るベクターである。発現ベクターは、少なくともある条件下で、操作可能に結合した核酸の転写を指示するのに十分な制御配列、例えば、発現調節配列を含み、発現に必要なまたは発現を助ける他のエレメントは、例えば、宿主細胞またはインビトロ発現系により供給され得る。このような制御配列は、典型的にプロモーターを含み、エンハンサー配列または上流アクティベーター配列を含み得る。ある態様において、ベクターは、開裂および/またはポリアデニル化シグナルを含み得る、5’非翻訳領域および/または3’非翻訳領域をコードする配列を含み得る。一般に、制御エレメントは、発現が望まれる核酸の挿入前にベクターに含まれていても、挿入核酸に含まれていても、発現が望まれる核酸の挿入後にベクターに挿入してもよい。ここで使用する核酸および制御エレメントは、核酸の発現または転写が制御エレメントの影響下または制御下に置かれるように共有結合しているとき、“操作可能に結合している”と言える。例えば、プロモーター領域は、該プロモーター領域が核酸の転写に影響を与え得るならば、該核酸に操作可能に結合している。遺伝子発現に有用な制御配列の厳密な性質は種毎または細胞型毎に異なるが、一般に、必要に応じて、転写開始、RNAプロセシングまたは翻訳開始に関与する配列を含み得ることを当業者は理解している。適当なベクターおよび制御エレメントの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内である。例えば、当業者は、所望の種(例えば、原核(細菌)または真核(例えば、真菌、植物、哺乳動物種)または細胞型での発現に適当なプロモーター(または他の発現調節配列)を選択する。ベクターは、例えば、哺乳動物細胞に感染するサイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、ヘルペスウイルスまたは他のウイルスからの適切なウイルスプロモーターまたは、例えば、EF1アルファ、ユビキチン(例えば、ユビキチンBまたはC)、グロビン、アクチン、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などのような遺伝子由来の哺乳動物プロモーターまたはCAGプロモーター(CMV初期エンハンサーエレメントとニワトリベータ-アクチンプロモーターの組み合わせ)のような複合プロモーターのような、哺乳動物細胞における発現を指示できるプロモーターを含み得る。ある態様において、ヒトプロモーターを使用し得る。ある態様において、真核RNAポリメラーゼIによる転写を通常指示するプロモーター(“pol Iプロモーター”)、例えばU6、H1、7SKまたはtRNAプロモーターまたはその機能性変異体を使用し得る。ある態様において、真核RNAポリメラーゼIIによる転写を通常指示するプロモーター(“pol IIプロモーター”)またはその機能性変異体を使用する。ある態様において、真核RNAポリメラーゼIIIによる転写を通常指示するプロモーター(“pol IIIプロモーター”)、例えば、リボソームRNAの転写用プロモーター(5S rRNA以外)またはその機能性変異体を使用する。当業者は、目的の配列の転写の指示に適当なプロモーターを選択する。哺乳動物細胞で使用し得る発現ベクターの例は、例えば、pcDNAベクターシリーズ、pSV2ベクターシリーズ、pCMVベクターシリーズ、pRSVベクターシリーズ、pEF1ベクターシリーズ、Gateway(登録商標)ベクターなどを含む。ある態様において、制御可能(例えば、誘導可能または抑圧可能)発現調節エレメント、例えば、制御可能プロモーターを、発現を調節し得る、例えば、活性化するまたは増加するまたは遮断するまたは減少するように使用する。ある態様において、ベクターは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、ここで、該ポリヌクレオチド配列は、N末端またはC末端融合物が作られるように、ベクターに挿入された核酸と共にフレーム内に配置させる。ある態様において、該ポリヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチドは、シグナル配列(タンパク質の分泌を指示する)または発現タンパク質の特異的小器官または核もしくはミトコンドリアのような細胞内への位置に向ける配列を含み得る。ある態様において、ポリペプチドはタグを含む。タグは、それを含むタンパク質の検出の促進および/または精製に有用であり得る。タグの例は、ポリヒスチジンタグ(例えば、6X-Hisタグ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、NUSタグ、SNUTタグ、Strepタグ、エピトープタグ、例えばV5、HA、MycまたはFLAGを含む。ある態様において、プロテアーゼ開裂部位は、挿入核酸によりコードされるタンパク質とポリペプチドの間の領域に位置し、該ポリペプチドがプロテアーゼへの暴露によりタグから分離することを可能とする。ベクターを、当分野で知られる方法を使用して、宿主細胞に導入し得る。当業者は、例えば、ベクター、細胞型などに基づき、適当な方法を選択する。適切な方法は、例えば、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、例えば、脂質ベースまたは非脂質ベースの、例えば、FuGENE、リポフェクタミン、TurboFectのような、多様な市販試薬のいずれかを使用するトランスフェクション;エレクトロポレーション;微粒子銃砲撃などを含む。このような方法は、Sambrook, Protocols seriesおよびその他の標準資料に詳細に説明されている。
【0046】
ここで使用する用語“脂肪族”は、直鎖(すなわち、非分枝)、分枝鎖または環状(縮合、架橋およびスピロ縮合多環式を含む)であってよく、完全に飽和してもても、1個以上の不飽和単位を有してもよいが、芳香族ではない、炭化水素部分をいう。特に断らない限り、脂肪族基は、1~30個の炭素原子を含む。ある態様において、脂肪族基は、1~10個の炭素原子を含む。他の態様において、脂肪族基は1~8個の炭素原子を含む。さらに別の態様において、脂肪族基は1~6個の炭素原子を含み、さらに他の態様において脂肪族基は1~4個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基は、直鎖または分枝鎖の、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基および(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルのようなこれらのハイブリッドを含むが、これらに限定されない。
【0047】
ここで使用する“アルキル”は、約1~約22個の炭素原子を有する飽和直鎖、分枝鎖または環状炭化水(および範囲とその中の具体的炭素原子数の全ての組み合わせおよび下位の組み合わせ)をいい、約1~約12個または約1~約7個の炭素原子が本発明のある態様において好ましい。アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチルおよび2,3-ジメチルブチルを含むが、これらに限定されない。
【0048】
ここで使用する“ハロ”は、F、Cl、BrまたはIをいう。
【0049】
ここで使用する“アルカノイル”は、約1個~10個の炭素原子(および範囲と具体的炭素原子数の全ての組み合わせおよび下位の組み合わせ)、例えば、認識されるとおり、末端のC=O基と単結合で結合した(“アシル基”と呼ばれることもある)約1個~7個の炭素原子を有し、所望により置換されている直鎖状または分枝状の脂肪族非環状残基をいう。アルカノイル基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、イソペンタノイル、2-メチル-ブチリル、2,2-ジメトキシプロピオニル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイルなどを含むが、これらに限定されず、本発明の目的のためには、ホルミル基はアルカノイル基と見なされる。“低級アルカノイル”は、約1個~約5個の炭素原子(および範囲と具体的炭素原子数の全ての組み合わせおよび下位の組み合わせ)を有し、場合により置換されていてよい直鎖状または分枝状の脂肪族非環状残基をいう。このような基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、イソペンタノイルを含むが、これらに限定されない。
【0050】
ここで使用する“アリール”は、約5個~約14個の炭素原子(および範囲とその中の具体的炭素原子数の全ての組み合わせおよび下位の組み合わせ)、好ましくは約6個~約10個の炭素原子を有し、所望により置換されている単環式または二環式の芳香環系を指す。非限定的な例は、例えばフェニルおよびナフチルを含むが、これらに限定されない。
【0051】
ここで使用する“アラルキル”は、アリール置換基を有し、約6個~約22個の炭素原子(および範囲とその中の具体的炭素原子数の全ての組み合わせおよび下位の組み合わせ)を有するアルキルラジカルを指し、ある態様において、炭素原子の数は約6個~約12個が好ましい。アラルキル基は、場合により置換されていてよい。非限定的例は、例えば、ベンジル、ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルを含む。
【0052】
ここで使用する用語“アルコキシ”および“アルコキシル”は、場合により置換されていてよいアルキル-O-基をいい、ここで、アルキルは上で定義したとおりである。アルコキシ基およびアルコキシル基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシおよびヘプトキシを含む。
【0053】
ここで使用する“カルボキシ”は-C(=O)OH基をいう。
【0054】
ここで使用する“アルコキシカルボニル”は-C(=O)O-アルキル基をいい、ここで、アルキルは上で定義したとおりである。
【0055】
ここで使用する“アロイル”は-C(=O)-アリール基をいい、ここで、アリールは上で定義したとおりである。アロイル基の例は、ベンゾイルおよびナフトイルを含む。
【0056】
用語“環状環系”は、3~8個の原子の大きさの単環ならびに非芳香環と融合した芳香族5員もしくは6員アリール基または芳香族複素環基を含み得る二環系および三環系を含む、非芳香族の、一部不飽和または完全飽和3~10員環系をいう。このような複素環は、独立して酸素、硫黄および窒素からなる群から選択されるヘテロ原子を1個~3個有する複素環を含む。ある態様において、複素環という用語は、少なくとも1個の環原子がO、SおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族5員、6員もしくは7員環基または多環基をいい、独立して酸素、硫黄および窒素からなる群から選択されるヘテロ原子を1個~3個有する縮合6員環を含む二環基または三環基を含むが、これらに限定されない。ある態様において、“環系”はシクロアルキル基をいい、ここで使用するシクロアルキル基は、3~10個、例えば4~7個の炭素原子を有する基をいう。シクロアルキルは、場合により置換されていてよいシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含むが、これらに限定されない。ある態様において、“環系”は、場合により置換されていてよいシクロアルケニル部分またはシクロアルキニル部分をいう。
【0057】
典型的に、置換化学部分は、水素に置き代わる置換基を1個以上含む。置換基の例は、例えば、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、スルフィドリル、ヒドロキシル(-OH)、アルコキシル、シアノ(-CN)、カルボキシル(-COOH)、-C(=O)O-アルキル、アミノカルボニル(-C(=O)NH2)、-N-置換アミノカルボニル(-C(=O)NHR”)、CF3、CF2CF3などを含む。上記置換基について、部分R”はそれぞれ独立して、例えばH、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルのいずれかであり得る。
【0058】
ここで使用する“L-アミノ酸”は、タンパク質中に天然に存在する天然の左旋性αアミノ酸またはこのαアミノ酸のアルキルエステルのいずれかをいう。用語“D-アミノ酸”は右旋性αアミノ酸をいう。特に断らない限り、ここで引用するアミノ酸はすべてL-アミノ酸である。
【0059】
ここで使用する“芳香族アミノ酸”は、芳香環を少なくとも1個含むアミノ酸のことであり、例えば、芳香族アミノ酸はアリール基を含む。
【0060】
ここで使用する“芳香族アミノ酸類似体”は、芳香環を少なくとも1個含むアミノ酸類似体であり、例えば、これはアリール基を含む。
【0061】
II. 補体系
本発明の理解を容易にするため、そして本発明を限定する意図は全くなく、本章に補体とその活性化経路の概要を記載する。さらに詳細な説明については、例えば、Kuby Immunology, 6th ed., 2006; Paul, W.E., Fundamental Immunology, Lippincott Williams & Wilkins; 6th ed., 2008; およびWalport MJ., Complement. First of two parts. N Engl J Med., 344(14): 1058-66, 2001に記載されている。
【0062】
補体は、感染病原体から体を防御するのにある重要な役割を担う自然免疫系の一部である。補体系には、古典経路、代替経路およびレクチン経路として知られる3つの主要な経路に関与する30種以上の血清タンパク質および細胞タンパク質が含まれる。古典経路は通常、抗原とIgMまたはIgG抗体との複合体がC1と結合することにより惹起される(ただし、ある種の他の活性化因子もこの経路を開始することができる)。活性化したC1がC4およびC2をC4aとC4bおよびC2aとC2bに切断する。C4bとC2aが合わさってC3コンバターゼを形成し、これがC3を切断してC3aとC3bが形成される。C3bとC3コンバターゼが結合するとC5コンバターゼが生じ、これがC5をC5aとC5bに切断する。C3a、C4aおよびC5aはアナフィロトキシンであり、急性炎症性応答における複数の反応を媒介する。またC3aおよびC5aは、好中球などの免疫系細胞を誘引する走化性因子でもある。
【0063】
代替経路は、例えば、微生物表面および種々の複合多糖類により開始され、またこれらによって増幅される。この経路では、低レベルで自発的に生じるC3からC3(H2O)への加水分解によりB因子との結合が生じ、これがD因子により切断されて液相のC3コンバターゼが生じ、これがC3をC3aとC3bに切断することにより補体を活性化する。C3bが細胞表面などの標的と結合してB因子と複合体を形成し、これがのちにD因子により切断されてC3コンバターゼが生じる。表面と結合したC3コンバターゼがさらに別のC3分子を切断して活性化し、活性化部位に近接してC3bが急速に沈着してさらに別のC3コンバターゼが形成され、これによりさらに別のC3bが生じる。このような過程により、反応を大幅に増幅させるC3切断およびC3コンバターゼ形成のサイクルが生じる。C3の切断および別のC3b分子とC3コンバターゼとの結合によりC5コンバターゼが生じる。この経路のC3コンバターゼとC5コンバターゼは、宿主細胞分子であるCR1、DAF、MCP、CD59およびfHによって制御される。これらのタンパク質の作用機序には、活性化促進の崩壊(すなわち、コンバターゼを解離させる能力)、I因子によるC3bまたはC4bの分解における補助因子としての能力あるいはその両方が含まれる。通常、宿主細胞表面に補体制御タンパク質が存在することにより、細胞表面で著しい補体活性化が生じるのを妨げる。
【0064】
両経路で生成したC5コンバターゼはC5を分解してC5aとC5bを生じる。次いで、C5bがC6、C7およびC8と結合してC5b-8を形成し、これがC9の重合を触媒してC5b-9膜侵襲複合体(MAC)を形成する。MACは標的細胞膜に侵入し、細胞溶解を引き起こす。細胞膜上の少量のMACは、細胞死以外の多様な結果を生じ得る。
【0065】
レクチン補体経路は、マンノース結合レクチン(MBL)およびMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)が炭水化物と結合することにより開始される。MB1-1遺伝子(ヒトではLMAN-1として知られる)は、小胞体とゴルジ体との間の中間領域に存在するI型内在性膜タンパク質をコードする。MBL-2遺伝子は、血清中に存在する可溶性マンノース結合タンパク質をコードする。ヒトレクチン経路では、MASP-1およびMASP-2がC4とC2のタンパク質分解に関与し、上記のC3コンバターゼが生じる。
【0066】
補体活性は、補体制御タンパク質(CCP)または補体活性化制御因子(RCA)タンパク質と呼ばれる種々の哺乳動物タンパク質により制御されている(米国特許6,897,290)。これらのタンパク質は、リガンド特異性および補体阻害機序が異なるものである。これらはコンバターゼの正常な崩壊を加速しおよび/またはI因子の補助因子として機能して、C3bおよび/またはC4bを酵素切断してさらに小さいフラグメントにする。CCPは、ジスルフィド結合した4個のシステイン(2個のジスルフィド結合)を有する保存されたモチーフ、プロリン、トリプトファンおよび多数の疎水性残基を含み、ショートコンセンサスリピート(SCR)、補体制御タンパク質(CCP)モジュールまたはSUSHIドメインとして知られる、長さ約50~70アミノ酸の複数(通常、4~56個)の相同なモチーフが存在することを特徴とする。CCPファミリーとしては、補体受容体1(CR1;C3b:C4b受容体)、補体受容体2(CR2)、膜補因子タンパク質(MCP;CD46)、崩壊促進因子(DAF)、補体H因子(fH)およびC4b結合タンパク質(C4bp)を含む。CD59は、構造的にはCCPと関連のない膜結合補体制御タンパク質である。補体制御タンパク質は通常、制限しなければ哺乳動物、例えばヒト宿主の細胞および組織上で生じ得る補体活性化を制限するものである。したがって、“自己”の細胞は通常、これらの細胞上で補体活性化が進行すれば続いて生じる有害な作用から保護されている。補体制御タンパク質の不足または欠損が多様な補体介在障害、例えばここに記載する障害の病理発生に関与する。
【0067】
III. コンプスタチン類似体
コンプスタチンは、C3と結合し、補体活性化を阻害する環状ペプチドである。米国特許6,319,897には、配列Ile-[Cys-Val-Val-Gln-Asp-Trp-Gly-His-His-Arg-Cys]-Thr(配列番号1)を有するペプチドが記載されており、配列中、2個のシステインの間にあるジスルフィド結合が括弧で表わされている。“コンプスタチン”という名称は米国特許6,319,897では使用されていないが、その後米国特許6,319,897に開示されている配列番号2と同じ配列を有するが、表1に示されるとおりC末端がアミド化されている(配列番号8)ペプチドを呼ぶのに科学文献および特許文献(例えば、Morikis, et al., Protein Sci., 7(3): 619-27, 1998参照)で採用されたことが理解される。本明細書では一貫して、“コンプスタチン”という用語をこのような使用法で(すなわち、配列番号8を呼ぶ場合に)用いる。コンプスタチンより高い補体阻害活性を有するコンプスタチン類似体(Compstatin analogs)が開発されている。例えば、WO2004/026328(PCT/US2003/029653)、Morikis, D., et al., Biochem Soc Trans. 32(Pt 1): 28-32, 2004, Mallik, B., et al., J. Med. Chem., 274-286, 2005; Katragadda, M., et al. J. Med. Chem., 49: 4616-4622, 2006; WO2007062249(PCT/US2006/045539);WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593);WO/2010/127336(PCT/US2010/033345)および後記の考察を参照されたい。
【0068】
コンプスタチン類似体は、例えばN末端および/またはC末端でアセチル化またはアミド化されていてよい。例えば、コンプスタチン類似体は、N末端でアセチル化され、かつC末端でアミド化されていてよい。当技術分野で使用されるとおり、ここで使用する“コンプスタチン”およびコンプスタチンの活性と比較した本明細書に記載のコンプスタチン類似体の活性は、C末端でアミド化されたコンプスタチンのことをいう(Mallik, 2005, supra)。
【0069】
コンプスタチンのコンカテマーもしくは多量体またはその補体阻害類似体も本発明で使用される。
【0070】
ここで使用する用語“コンプスタチン類似体”は、コンプスタチンおよびその任意の補体阻害類似体を包含する。用語“コンプスタチン類似体”は、コンプスタチンおよびコンプスタチンに基づき設計または同定され、その補体阻害活性が、例えば、当技術分野で認められている任意の補体活性化アッセイまたはこれと実質的にほぼ同じもしくは同等なアッセイを用いて測定されるコンプスタチンの活性の少なくとも50%の強さである他の化合物を包含する。特定の適切なアッセイが米国特許6,319,897、WO2004/026328、Morikis, supra, Mallik, supra, Katragadda 2006, supra、WO2007062249(PCT/US2006/045539);WO2007044668(PCT/US2006/039397)、WO/2009/046198(PCT/US2008/078593);および/またはWO/2010/127336(PCT/US2010/033345)に記載されている。アッセイは、例えば、代替経路もしくは古典経路に媒介される赤血球溶解を測定するものであっても、ELISAアッセイであってもよい。ある態様において、WO/2010/135717(PCT/US2010/035871)に記載されているアッセイを使用する。
【0071】
コンプスタチン類似体の活性はそのIC50(補体活性化を50%阻害する化合物の濃度)により表すことができ、当技術分野で認められているとおり、IC50が低いほど活性が高いことを示す。本発明で使用するのに好ましいコンプスタチン類似体の活性は、少なくともコンプスタチンの活性と同程度である。補体阻害活性を減少させるか打ち消すことが知られている特定の修飾が本発明のいずれの態様からも明確に除外され得ることが留意されるべきである。コンプスタチンのIC50は、代替経路仲介赤血球溶解アッセイを用いて12μMとして測定されている(WO2004/026328)。あるコンプスタチン類似体で測定される正確なIC50値は、実験条件(例えば、アッセイで使用する血清濃度)によって異なることが理解される。例えば、実質的に同一の条件下で複数の異なる化合物のIC50を決定する実験から得られる比較値が有用である。一つの態様において、コンプスタチン類似体のIC50はコンプスタチンのIC50以下である。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体の活性はコンプスタチンの活性の2~99倍である(すなわち、類似体のIC50がコンプスタチンのIC50の2~99倍低い)。例えば、活性は、コンプスタチンの活性の10~50倍ほど大きくまたはコンプスタチンの活性の50~99倍ほど大きくてよい。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体の活性はコンプスタチンの活性の99~264倍である。例えば、活性は、コンプスタチンの活性の100倍、110倍、120倍、130倍、140倍、150倍、160倍、170倍、180倍、190倍、200倍、210倍、220倍、230倍、240倍、250倍、260倍または264倍の大きいことがある。ある態様において、活性は、コンプスタチンの活性の250~300倍、300~350倍、350~400倍または400~500倍の大きさである。本発明はさらに、コンプスタチンの活性の500~1000倍またはそれ以上の活性を有するコンプスタチン類似体を企図する。ある態様において、コンプスタチン類似体のIC50は約0.2~約0.5μMである。ある態様において、コンプスタチン類似体のIC50は約0.1~約0.2μMである。ある態様において、コンプスタチン類似体のIC50は約0.05~約0.1μMである。ある態様においてコンプスタチン類似体のIC50は約0.001~約0.05μMである。
【0072】
C3と結合するコンプスタチンのKdは等温滴定熱量測定を用いて測定することができる(Katragadda, et al., J. Biol. Chem., 279(53), 54987-54995, 2004)。当技術分野で認められているとおり、種々のコンプスタチン類似体のC3に対する結合親和性とその活性との間には相関がみられ、Kdが低いほど結合親和性が高いことを示す。試験された特定の類似体には結合親和性と活性との間に線形相関が認められている(Katragadda, 2004, supra; Katragadda 2006, supra)。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は0.1~1.0μM、0.05~0.1μM、0.025~0.05μM、0.015~0.025μM、0.01~0.015μMまたは0.001~0.01μMのKdでC3と結合する。
【0073】
“コンプスタチンに基づき設計または同定される”化合物は、(i)コンプスタチンの配列の修飾により(例えば、コンプスタチンの配列の1個以上のアミノ酸を異なるアミノ酸もしくはアミノ酸類似体に置き換えること、コンプスタチンの配列に1個以上のアミノ酸もしくはアミノ酸類似体を挿入することまたはコンプスタチンの配列から1個以上のアミノ酸を除去すること);(ii)コンプスタチンの1個以上のアミノ酸を無作為化し、所望により方法(i)に従ってさらに修飾ファージディスプレイペプチドライブラリーからの選択により;または(iii)C3またはそのフラグメントとの結合に関して方法(i)または(ii)で得られたコンプスタチンまたはその任意の類似体と競合する化合物のスクリーニングにより同定することにより配列が得られるアミノ酸鎖を含む化合物を含むが、これらに限定されない。有用なコンプスタチン類似体の多くが疎水性クラスター、βターンおよびジスルフィド架橋を含む。
【0074】
本発明のある態様において、コンプスタチン類似体の配列は、コンプスタチンの配列に1個、2個、3個または4個の置換を施すことにより、すなわち、コンプスタチンの配列中の1個、2個、3個または4個のアミノ酸を異なる標準アミノ酸にまたは非標準アミノ酸に置き換えることにより得られる配列を含むか、あるいは実質的にこれよりなるものである。本発明のある態様において、4位のアミノ酸を変化させる。本発明のある態様において、9位のアミノ酸を変化させる。本発明のある態様において、4位と9位のアミノ酸を変化させる。本発明のある態様において、4位と9位のアミノ酸のみを変化させる。本発明のある態様において、4位または9位のアミノ酸を変化させまたはある態様において、4位と9位のアミノ酸をいずれも変化させ、さらに1位、7位、10位、11位および13位から選択される位置にある2個以下のアミノ酸を変化させる。本発明のある態様において、4位、7位および9位のアミノ酸を変化させる。本発明のある態様において、2位、12位または両方のアミノ酸を変化させるが、この変化は化合物が環化する能力を保存するものである。2位および/または12位におけるこのような変化は、1位、4位、7位、9位、10位、11位および/または13位における変化に追加されるものであってよい。所望により、コンプスタチン配列の1個以上のアミノ酸を置き換えることにより得られる任意のコンプスタチン類似体の配列は、C末端に最大1個、2個または3個の追加のアミノ酸を含む。一つの態様において、追加のアミノ酸はGlyである。所望により、コンプスタチン配列の1個以上のアミノ酸を置き換えることにより得られる任意のコンプスタチン類似体の配列は、C末端に最大5個または最大10個の追加のアミノ酸をさらに含む。特に断らない限りまたは文脈から明らかでない限り、コンプスタチン類似体が本明細書に記載の種々の態様のいずれか1個以上の特徴または特性を有し得ること、また任意の態様の特徴または特性が本明細書に記載の他の任意の態様をさらに特徴付け得ることを理解するべきである。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体の配列は、コンプスタチンの配列の4位および9位に対応する位置に関する以外はコンプスタチンと同一の配列を含むか、あるいは実質的にこれよりなるものである。
【0075】
コンプスタチンおよびコンプスタチンよりもいくぶん活性が優れた特定のコンプスタチン類似体には標準アミノ酸(“標準アミノ酸”は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンである)のみが含まれている。活性が改善された特定のコンプスタチン類似体には非標準アミノ酸が1個以上組み込まれている。有用な非標準アミノ酸としては、単一および多ハロゲン化(例えば、フッ素化)アミノ酸、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、デヒドロアミノ酸、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンを除く)、オルト-、メタ-またはパラ-アミノ安息香酸、ホスホ-アミノ酸、メトキシル化アミノ酸およびα,α-二置換アミノ酸を含む。本発明のある態様において、本明細書の他の箇所に記載されているコンプスタチン類似体の1個以上のL-アミノ酸を対応するD-アミノ酸に置き換えることにより、コンプスタチン類似体を設計する。このような化合物およびその使用方法は本発明の一面である。有用な非標準アミノ酸の例は、2-ナフチルアラニン(2-NaI)、1-ナフチルアラニン(1-NaI)、2-インダニルグリシンカルボン酸(2Ig1)、ジヒドロトリプトファン(Dht)、4-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(Bpa)、2-αアミノ酪酸(2-Abu)、3-αアミノ酪酸(3-Abu)、4-αアミノ酪酸(4-Abu)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、ホモシクロヘキシルアラニン(hCha)、4-フルオロ-L-トリプトファン(4fW)、5-フルオロ-L-トリプトファン(5fW)、6-フルオロ-L-トリプトファン(6fW)、4-ヒドロキシ-L-トリプトファン(4OH-W)、5-ヒドロキシ-L-トリプトファン(5OH-W)、6-ヒドロキシ-L-トリプトファン(6OH-W)、1-メチル-L-トリプトファン(1MeW)、4-メチル-L-トリプトファン(4MeW)、5-メチル-L-トリプトファン(5MeW)、7-アザ-L-トリプトファン(7aW)、α-メチル-L-トリプトファン(αMeW)、β-メチル-L-トリプトファン(βMeW)、N-メチル-L-トリプトファン(NMeW)、オルニチン(orn)、シトルリン、ノルロイシン、γ-グルタミン酸などを含む。
【0076】
本発明のある態様において、コンプスタチン類似体はTrp類似体を(例えば、コンプスタチンの配列における4位および/または7位に)1個以上含む。Trp類似体の例は上に記載されている。このほか、Beene, et. al. Biochemistry 41: 10262-10269, 2002(特に単一ハロゲン化Trp類似体および多ハロゲン化Trp類似体について記載している);Babitzke & Yanofsky, J. Biol. Chem. 270: 12452-12456, 1995(特にメチル化Trp、ハロゲン化Trpおよびその他のTrp類似体ならびにインドール類似体について記載している);および米国特許6,214,790、6,169,057、5,776,970、4,870,097、4,576,750および4,299,838を参照のこと。その他のTrp類似体は、インドール環のαまたはβ炭素および場合により1個以上の位置においても(例えば、メチル基により)置換されている変異体を含む。2個以上の芳香環を含むアミノ酸が、その置換変異体、非置換変異体またはその他の態様で置換された変異体を含めて、Trp類似体に含まれる。本発明のある態様において、例えば4位におけるTrp類似体は5-メトキシ、5-メチル-、1-メチル-または1-ホルミル-トリプトファンである。本発明のある態様において、1-アルキル置換基、例えば低級アルキル(例えば、C1-C5)置換基を含むTrp類似体(例えば、4位における類似体)を用いる。特定の態様において、N(α)メチルトリプトファンまたは5-メチルトリプトファンを用いる。ある態様において、1-アルカノイル置換基、例えば低級アルカノイル(例えば、C1-C5)を含む類似体を用いる。例は、1-アセチル-L-トリプトファンおよびL-β-トリプトファンを含む。
【0077】
ある態様において、Trp類似体は疎水性がTrpに比べて増大している。例えば、インドール環は、1個以上のアルキル(例えば、メチル)基で置換されたものであり得る。ある態様において、Trp類似体はC3との疎水性相互作用に関与する。このようなTrp類似体は、例えば、コンプスタチンの配列において4位に位置し得る。ある態様において、Trp類似体は、置換もしくは非置換二環式芳香環成分または2個以上の置換もしくは非置換単環式芳香環成分を含む。
【0078】
ある態様において、Trp類似体は、C3と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、疎水性はTrpと比べて増大していない。Trp類似体は、極性がTrpに比べて増大していてよくおよび/またはC3上での水素結合供与体との静電気的な相互作用に関与する能力が増大していてよい。水素結合を形成する性質が増大した特定の例示的なTrp類似体は、インドール環上に電気陰性置換基を含むものである。このようなTrp類似体は、例えば、コンプスタチンの配列における7位に位置し得る。
【0079】
本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は(例えば、コンプスタチンの配列に対して9位に)Ala類似体、側鎖にCH2基を1個以上含むこと以外はAlaと同一であるAla類似体を1個以上含む。ある態様において、Ala類似体は、2-Abuのような非分枝の単一メチルアミノ酸である。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は、1個以上のTrp類似体(例えば、コンプスタチンの配列における4位および/または7位に)と、Ala類似体(例えば、コンプスタチンの配列における9位に)を含む。
【0080】
本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は、(X’aa)n-Gln-Asp-Xaa-Gly-(X”aa)mの配列(配列番号2)を有するペプチドを含む化合物であり、式中、各X’aaおよび各X”aaは独立してアミノ酸またはアミノ酸類似体から選択され、XaaはTrpまたはTrpの類似体であり、かつn>1、m>1であり、n+mが5~21である。ペプチドはコア配列Gln-Asp-Xaa-Glyを有し、式中、XaaはTrpまたはTrpの類似体、例えば、H結合供与体と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体である。例えば、類似体は、Trpのインドール環が電気陰性基、例えば、フッ素などのハロゲンで置換されているものであり得る。一つの態様において、Xaaは5-フルオロトリプトファンである。反証がない限り、当業者は、配列がこのコア配列を含み、補体活性化を阻害するおよび/またはC3と結合する任意の非天然のペプチドがコンプスタチンの配列に基づき設計されることを認識するであろう。他の態様において、Xaaは、Gln-Asp-Xaa-Glyペプチドがβターンを形成することが可能なアミノ酸またはTrp類似体以外のアミノ酸類似体である。
【0081】
本発明のある態様において、ペプチドはコア配列X’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly(配列番号3)を有し、式中、X’aaおよびXaaはTrpおよびTrpの類似体から選択される。本発明のある態様において、ペプチドはコア配列X’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly(配列番号3)を有し、式中、X’aaおよびXaaはTrp、Trpの類似体および芳香環を少なくとも1個含むその他のアミノ酸またはアミノ酸類似体から選択される。本発明のある態様において、コア配列は、ペプチドとの関連でβターンを形成する。βターンは柔軟であり、ペプチドが例えば核磁気共鳴(NMR)を用いて評価される2個以上のコンホメーションを可能にするものであり得る。ある態様において、X’aaは、置換もしくは非置換二環式芳香環成分または2個以上の置換もしくは非置換単環式芳香環成分を含むTrpの類似体である。本発明のある態様において、X’aaは2-ナフチルアラニン、1-ナフチルアラニン、2-インダニルグリシンカルボン酸、ジヒドロトリプトファンおよびベンゾイルフェニルアラニンからなる群から選択される。本発明のある態様において、X’aaは、疎水性がTrpに比べて増大しているTrpの類似体である。例えば、X’aaは1-メチルトリプトファンであり得る。本発明のある態様において、Xaaは、水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体である。本発明のある態様において、水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているTrpの類似体は、Trpのインドール環の例えば5位に、5位のH原子のハロゲン原子による置換などの修飾を含む。例えば、Xaaは5-フルオロトリプトファンであり得る。
【0082】
本発明のある態様において、ペプチドはコア配列X’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa(配列番号4)を有し、式中、X’aaおよびXaaはそれぞれ独立して、TrpおよびTrpの類似体から選択され、X”aaはHis、Ala、Alaの類似体、Pheの類似体およびTrpの類似体から選択される。本発明のある態様において、X’aaは、疎水性がTrpに比べて増大している、1-メチルトリプトファンまたはインドール環上(例えば、1位、4位、5位または6位)にアルキル置換基を有する別のTrp類似体である。ある態様において、X’aaは、置換もしくは非置換二環式芳香環成分または2個以上の置換もしくは非置換単環式芳香環成分を含むTrpの類似体である。本発明のある態様において、X’aaは2-ナフチルアラニン、1-ナフチルアラニン、2-インダニルグリシンカルボン酸、ジヒドロトリプトファンおよびベンゾイルフェニルアラニンからなる群から選択される。本発明のある態様において、Xaaは、C3と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体である。本発明のある態様において、水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているTrpの類似体は、Trpのインドール環の例えば5位に、5位のH原子のハロゲン原子による置換などの修飾を含む。例えば、Xaaは5-フルオロトリプトファンであり得る。ある態様において、X”aaは、AlaもしくはAbuなどのAlaの類似体または別の非分枝一メチルアミノ酸である。本発明のある態様において、ペプチドはコア配列X’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa(配列番号4)を有し、式中、X’aaおよびXaaはそれぞれ独立して、Trp、Trpの類似体および芳香族側鎖を少なくとも1個含むアミノ酸またはアミノ酸類似体から選択され、X”aaはHis、Ala、Alaの類似体、PheおよびTrpから選択される。ある態様において、X”aaはTrpの類似体、芳香族アミノ酸および芳香族アミノ酸類似体から選択される。
【0083】
本発明のある好ましい態様において、ペプチドは環状である。ペプチドは、一方が(X’aa)nであり他方が(X”aa)m内に位置する2個の任意のアミノ酸の間の結合により環化され得る。ある態様において、ペプチドの環状部分は長さが9~15アミノ酸、例えば、長さが10~12アミノ酸である。ある態様において、ペプチドの環状部分は、長さが11アミノ酸であり、2位と12位のアミノ酸の間に結合(例えば、ジスルフィド結合)を有する。例えば、ペプチドは、長さが13アミノ酸であり、2位と12位のアミノ酸の間の結合により長さが11アミノ酸の環状部分が生じたものであり得る。
【0084】
ある態様において、ペプチドは、配列X’aa1-X’aa2-X’aa3-X’aa4-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa1-X”aa2-X”aa3-X”aa4-X”aa5(配列番号5)を含むか、あるいはこれよりなるものである。ある態様において、X’aa4およびXaaはTrpおよびTrpの類似体から選択され、X’aa1、X’aa2、X’aa3、X”aa1、X”aa2、X”aa3、X”aa4およびX”aa5は独立してアミノ酸およびアミノ酸類似体から選択される。ある態様において、X’aa4およびXaaは芳香族アミノ酸および芳香族アミノ酸類似体から選択される。X’aa1、X’aa2、X’aa3、X”aa1、X”aa2、X”aa3、X”aa4およびX”aa5のいずれか1個以上が、コンプスタチンの対応する位置にあるアミノ酸と一致し得る。一つの態様において、X”aa1はAlaまたは一メチル非分枝アミノ酸である。ペプチドは、(i)X’aa1、X’aa2またはX’aa3と(ii)X”aa2、X”aa3、X”aa4またはX”aa5との間の共有結合により環化され得る。一つの態様において、ペプチドは、X’aa2とX”aa4との間の共有結合により環化されている。一つの態様において、共有結合しているアミノ酸がそれぞれCysであり、共有結合がジスルフィド(S-S)結合である。他の態様においては、共有結合がC-C、C-O、C-SまたはC-N結合である。ある態様において、一方の共有結合している残基が、第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸類似体であり、他方の共有結合している残基が、カルボン酸基を含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸類似体であり、かつ共有結合がアミド結合である。第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸類似体としては、リジンならびに一般構造がNH2(CH2)nCH(NH2)COOHのジアミノカルボン酸、例えば2,3-ジアミノプロピオン酸(dapa)、2,4-ジアミノ酪酸(daba)およびオルニチン(orn)(式中、それぞれn=1(dapa)、2(daba)および3(orn)である)などを含む。カルボン酸基を含む側鎖を有するアミノ酸の例は、グルタミン酸およびアスパラギン酸などのジカルボキシルアミノ酸を含む。β-ヒドロキシ-L-グルタミン酸などの類似体も使用し得る。ある態様において、例えばPCT/US2011/052442(WO2012/040259)に記載されているとおり、チオエーテル結合によりペプチドを環化する。例えば、ある態様において、いずれかのペプチドのジスルフィド結合をチオエーテル結合に置き換える。ある態様において、シスタチオニンが形成される。ある態様において、シスタチオニンはδ-シスタチオニンまたはγ-シスタチオニンである。ある態様において、修飾は、配列番号5のX’aa2とX”aa4(または他の配列の対応する位置)のシステイン間のCys-Cysジスルフィド結合をCH2の付加により置き換えてX’aa2またはX”aa4にホモシステインを形成することと、チオエーテル結合を導入してシスタチオニンを形成することを含む。一つの態様において、シスタチオニンはγ-シスタチオニンである。別の態様において、シスタチオニンはδ-シスタチオニンである。本発明による別の修飾は、CH2を付加せずにジスルフィド結合をチオエーテル結合に置き換えてランチチオニン(lantithionine)を形成することを含む。ある態様において、ジスルフィド結合の代わりにチオエーテルを有するコンプスタチン類似体は、少なくとも一部の条件下で、ジスルフィド結合を有するコンプスタチン類似体に比べて安定性が増大している。
【0085】
ある態様において、コンプスタチン類似体は、配列
Xaa1-Cys-Val-Xaa2-Gln-Asp-Xaa2*-Gly-Xaa3-His-Arg-Cys-Xaa4(配列番号6)
〔式中、
Xaa1はIle、Val、Leu、B1-Ile、B1-Val、B1-LeuまたはGly-IleもしくはB1-Gly-Ileを含むジペプチドであり、B1は第一の遮断部分を表し;
Xaa2およびXaa2*は独立して、TrpおよびTrpの類似体から選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端-OHが所望により第二の遮断部分B2に置き換わっており;
2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。〕
を有するペプチドを含む化合物である。ある態様において、Xaa4はLeu、Nle、HisもしくはPheまたはXaa5-AlaおよびXaa5-Asnから選択されるジペプチドまたはトリペプチドXaa5-Ala-Asnであり、式中、Xaa5はLeu、Nle、HisまたはPheから選択され、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Leu、Nle、His、Phe、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端-OHが所望により第二の遮断部分B2に置き換わっており:2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。
【0086】
他の態様において、Xaa1は存在しないかまたは任意のアミノ酸またはアミノ酸類似体であり、Xaa2、Xaa2*、Xaa3およびXaa4は上で定義したとおりである。Xaa1が存在しないならば、N末端Cys残基は、それに結合した遮断部分B1を有する。
【0087】
他の態様において、Xaa4は任意のアミノ酸またはアミノ酸類似体であり、Xaa1、Xaa2、Xaa2*およびXaa3は上で定義したとおりである。他の態様において、Xaa4は、Thr-AlaおよびThr-Asnからなる群から選択されるジペプチドであり、式中、カルボキシ末端-OHまたはAlaもしくはAsnが所望により第二の遮断部分B2に置き換わっている。
【0088】
配列番号6のコンプスタチン類似体のいずれかの態様では、Xaa2はTrpであり得る。
【0089】
配列番号6のコンプスタチン類似体のいずれかの態様では、Xaa2は、置換もしくは非置換二環式芳香環成分または2個以上の置換もしくは非置換単環式芳香環成分を含むTrpの類似体であり得る。例えば、Trpの類似体は2-ナフチルアラニン(2-NaI)、1-ナフチルアラニン(1-NaI)、2-インダニルグリシンカルボン酸(Ig1)、ジヒドロトリプトファン(Dht)および4-ベンゾイル-L-フェニルアラニンから選択され得る。
【0090】
配列番号6のコンプスタチン類似体のいずれかの態様では、Xaa2は、疎水性がTrpに比べて増大しているTrpの類似体であり得る。例えば、Trpの類似体は1-メチルトリプトファン、4-メチルトリプトファン、5-メチルトリプトファンおよび6-メチルトリプトファンから選択され得る。一つの態様において、Trpの類似体は1-メチルトリプトファンである。一つの態様において、Xaa2は1-メチルトリプトファンであり、Xaa2*はTrpであり、Xaa3はAlaであり、その他のアミノ酸はコンプスタチンのものと一致している。
【0091】
配列番号6のコンプスタチン類似体のいずれかの態様では、Xaa2*はTrpの類似体、例えばC3と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体などであり得る。ある態様において、Trpの類似体はインドール環上に電気陰性置換基を含む。例えば、Trpの類似体は、5-フルオロトリプトファンおよび6-フルオロトリプトファンから選択され得る。
【0092】
本発明のある態様において、Xaa2はTrpであり、Xaa2*は、C3と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体である。配列番号6のコンプスタチン類似体のある態様において、Xaa2は、疎水性がTrpに比べて増大しているTrpの類似体、例えば1-メチルトリプトファン、4-メチルトリプトファン、5-メチルトリプトファンおよび6-メチルトリプトファンから選択されるTrpの類似体などであり、Xaa2*は、C3と水素結合を形成する傾向がTrpに比べて増大しているが、ある態様において疎水性がTrpに比べて増大していないTrpの類似体である。例えば、一つの態様において、Xaa2はメチルトリプトファンであり、Xaa2*は5-フルオロトリプトファンである。
【0093】
上記態様のいずれかにおいて、Xaa3はAlaである。上記態様のいずれかにおいて、Xaa3は一メチル非分枝アミノ酸、例えばAbuである。
【0094】
本発明はさらに、上記の配列番号6のコンプスタチン類似体であって、Xaa2およびXaa2*が独立して、Trp、Trpの類似体および芳香環を少なくとも1個含むその他のアミノ酸またはアミノ酸類似体から選択され、Xaa3がHis、AlaもしくはAlaの類似体、Phe、Trp、Trpの類似体または別の芳香族アミノ酸もしくは芳香族アミノ酸類似体であるコンプスタチン類似体を提供する。
【0095】
本発明のある態様において、ここに記載するいずれかのコンプスタチン類似体のN末端またはC末端に存在する遮断部分は、哺乳動物(例えばヒトまたは非ヒト霊長類)の血液中または間質液中で生じ得る分解に対してペプチドを安定化させる何らかの部分である。例えば、遮断部分B1は、ペプチドのN末端アミノ酸とそれに隣接するアミノ酸の間のペプチド結合の切断が阻害されるようにペプチドのN末端の構造を変化させる任意の部分であり得る。遮断部分B2は、ペプチドのC末端アミノ酸とそれに隣接するアミノ酸の間のペプチド結合の切断が阻害されるようにペプチドのC末端の構造を変化させる任意の部分であり得る。当技術分野で知られる任意の適切な遮断部分を用いることができる。本発明のある態様において、遮断部分B1はアシル基(すなわち、カルボン酸から-OH基を除去して残った部分)を含む。アシル基は通常、1~12個の炭素、例えば1~6個の炭素を含む。例えば、本発明のある態様において、遮断部分B1は、ホルミル、アセチル、プロプリオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリルなどからなる群から選択される。一つの態様において、遮断部分B1はアセチル基である、すなわち、Xaa1はAc-Ile、Ac-Val、Ac-LeuまたはAc-Gly-Ileである。
【0096】
本発明のある態様において、遮断部分B2は第一級または第二級アミン(Rがアルキル基などの有機部分である-NH2または-NHR1)である。
【0097】
本発明のある態様において、遮断部分B1は、生理的pHにおいてN末端に存在し得る負電荷を中和する、あるいは減少させる任意の部分である。本発明のある態様において、遮断部分B2は、生理的pHにおいてC末端に存在し得る負電荷を中和する、あるいは減少させる任意の部分である。
【0098】
本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は、N末端および/またはC末端でそれぞれアセチル化またはアミド化されている。コンプスタチン類似体は、N末端でアセチル化されていても、あるいはC末端でアミド化されていても、あるいはN末端でアセチル化されかつC末端でアミド化されていてもよい。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体は、N末端にアセチル基ではなくアルキル基またはアリール基を含む。
【0099】
ある態様において、コンプスタチン類似体は、配列
Xaa1-Cys-Val-Xaa2-Gln-Asp-Xaa2*-Gly-Xaa3-His-Arg-Cys-Xaa4(配列番号7)
〔式中、
Xaa1はIle、Val、Leu、Ac-Ile、Ac-Val、Ac-LeuまたはGly-IleもしくはAc-Gly-Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2およびXaa2*は独立して、TrpおよびTrpの類似体から選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、式中、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端-OHが所望により-NH2に置き換わっており;
2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。〕
を有するペプチドを含む化合物である。ある態様において、Xaa4はLeu、Nle、HisもしくはPheまたはXaa5-AlaおよびXaa5-Asnから選択されるジペプチドまたはトリペプチドXaa5-Ala-Asnであり、式中、Xaa5はLeu、Nle、HisまたはPheから選択され、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Leu、Nle、His、Phe、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端-OHが所望により第二の遮断部分B2に置き換わっており;
2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。
【0100】
ある態様において、Xaa1、Xaa2、Xaa2*、Xaa3およびXaa4は、配列番号6の各種態様について上で述べたとおりのものである。例えば、ある態様において、Xaa2*はTrpである。ある態様において、Xaa2は、疎水性がTrpに比べて増大しているTrpの類似体、例えば1-メチルトリプトファンである。ある態様において、Xaa3はAlaである。ある態様において、Xaa3は一メチル非分枝アミノ酸である。
【0101】
本発明のある態様において、Xaa1はIleであり、Xaa4はL-Thrである。
【0102】
本発明のある態様において、Xaa1はIleであり、Xaa2*はTrpであり、Xaa4はL-Thrである。
【0103】
本発明はさらに、上記の配列番号7のコンプスタチン類似体であって、Xaa2およびXaa2*が独立して、Trp、Trpの類似体、その他のアミノ酸または芳香族アミノ酸類似体から選択され、Xaa3がHis、AlaもしくはAlaの類似体、Phe、Trp、Trpの類似体または別の芳香族アミノ酸もしくは芳香族アミノ酸類似体であるコンプスタチン類似体を提供する。
【0104】
ここに記載するいずれかのコンプスタチン類似体のある態様において、PheではなくPheの類似体を用いる。
【0105】
表1は、本発明に有用なコンプスタチン類似体の非限定的なリストを記載したものである。各類似体は、親ペプチドであるコンプスタチンと比較して、指定された位置(1~13位)における具体的な修飾を示すことにより左側の列に省略形で記されている。当技術分野で使用されるとおり、ここで使用する“コンプスタチン”およびコンプスタチンの活性と比較したここに記載のコンプスタチン類似体の活性は、C末端でアミド化されたコンプスタチンペプチドに関する。特に明示されない限り、表1のペプチドはC末端でアミド化されている。太字を用いて特定の修飾を示した。コンプスタチンと比較した活性は、公開されているデータおよびそこに記載されているアッセイに基づくものである(WO2004/026328, WO2007044668, Mallik,2005; Katragadda,2006)。1個の活性について報告している刊行物を複数参照する場合、最近公開された方の値を用いたが、アッセイ間に相違がある場合は値を調整し得ることが認識される。また、本発明のある態様において、表1に挙げたペプチドが本発明の治療用組成物および方法で使用される場合、これらは2個のCys残基の間のジスルフィド結合を介して環化されることも理解される。ペプチドを環化する別の手段も本発明の範囲内にある。上記のとおり、本発明の種々の態様では、コンプスタチン類似体(例えば、本明細書に開示されるコンプスタチン類似体のいずれか)の1個以上のアミノ酸がN-アルキルアミノ酸(例えば、N-メチルアミノ酸)であり得る。例えば、特に限定されないが、ペプチドの環状部分の内側にある少なくとも1個のアミノ酸、環状部分のN末端にある少なくとも1個のアミノ酸および/または環状部分のC末端にある少なくとも1個のアミノ酸がN-アルキルアミノ酸、例えばN-メチルアミノ酸であり得る。本発明のある態様において、例えば、コンプスタチン類似体は、例えばコンプスタチンの8位に対応する位置および/またはコンプスタチンの13位に対応する位置に、N-メチルグリシンを含む。ある態様において、表1の1個以上のコンプスタチン類似体は、例えばコンプスタチンの8位に対応する位置および/またはコンプスタチンの13位に対応する位置に、N-メチルグリシンを1個以上含む。ある態様において、表1の1個以上のコンプスタチン類似体は、例えば、コンプスタチンの13位に対応する位置に、少なくとも1個のN-メチルイソロイシンを含む。例えば、配列が表1に挙げられているペプチドまたはあらゆる他のコンプスタチン類似体配列のC末端またはC末端近辺のThrをN-メチルIleに置き換え得る。認識されるとおり、ある態様において、N-メチル化アミノ酸は、8位にN-メチルGlyおよび13位にN-メチルIleを含む。ある態様において、N-メチル化アミノ酸は、配列番号3または配列番号4のようなコア配列においてN-メチルGlyを含む。ある態様において、N-メチル化アミノ酸は、配列番号5、配列番号6または配列番号7のようなコア配列においてN-メチルGlyを含む。
【0106】
【0107】
本発明の組成物および方法のある態様において、コンプスタチン類似体は、配列9~36から選択される配列を有する。本発明の組成物および方法のある態様において、コンプスタチン類似体は、配列番号14、21、28、29、32、33、34および36から選択される配列を有する。本発明の組成物および/または方法のある態様において、コンプスタチン類似体は、配列番号30および31から選択される配列を有する。本発明の組成物および方法の一つの態様において、コンプスタチン類似体は配列番号28の配列を有する。本発明の組成物および方法の一つの態様において、コンプスタチン類似体は配列番号32の配列を有する。本発明の組成物および方法の一つの態様において、コンプスタチン類似体は配列番号34の配列を有する。本発明の組成物および方法の一つの態様において、コンプスタチン類似体は配列番号36の配列を有する。
【0108】
ある態様において、遮断部分B1は、Xaa0と表し得るアミノ酸を含む。ある態様において、遮断部分B2は、XaaNと表し得るアミノ酸を含む。ある態様において、遮断部分B1および/またはB2は、D-アミノ酸、N-アルキルアミノ酸(例えば、N-メチルアミノ酸)のような非標準アミノ酸を含む。ある態様において、遮断部分B1および/またはB2は、標準アミノ酸の類似体である非標準アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸類似体は、類似体である標準アミノ酸に対して、低級アルキル、低級アルコキシまたはハロゲン置換基を含む。ある態様において、置換基は側鎖にある。ある態様において、置換基はアルファ炭素原子にある。ある態様において、アミノ酸、例えば、非標準アミノ酸を含む遮断部分B1は、さらに部分B1aを含む。例えば、遮断部分B1はB1a-Xaa0と表し得る。ある態様において、B1aは、そうしなければ生理学的pHでN末端に存在し得る正電荷を中和または減少し得る。ある態様において、B1aは、例えば、例えば、1~12個の炭素、例えば、1~6個の炭素を含むアシル基を含むかまたはこれからなる。ある態様において、遮断部分B1aは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリルなどからなる群から選択される。ある態様において、アミノ酸、例えば、非標準アミノ酸を含む遮断部分B2は、さらに部分B2aを含み得る。例えば、遮断部分B2はXaaN-B2aとして表すことができ、ここで、Nはアミノ酸の適当な番号を表す(これは、ペプチド骨格に使用した番号付けによる)。ある態様において、B2aは、そうしなければ生理学的pHでC末端に存在し得る負電荷を中和または減少し得る。ある態様において、B2aは、第一級または第二級アミン(例えば、NH2)を含むまたはこれらからなる。部分B1a-Xaa0および/またはXaaN-B2aの遮断活性は、種々の態様において、該部分のいずれかまたは両者の成分によりもたらされると理解される。ある態様において、遮断部分またはその一部、例えば、1アミノ酸残基は、C3またはC3bに対する本化合物の親和性に貢献するおよび/または化合物の活性を改善する。ある態様において、アミノ酸残基の親和性または活性に対する貢献は、少なくとも遮断活性に対する貢献と同程度重要であり得る。例えば、ある態様において、B1a-Xaa0および/またはXaaN-B2aにおけるXaa0および/またはXaaNは、主に、化合物の親和性または活性の増加に機能し得るが、B1aおよび/またはB2aは、ペプチドの消化および/または電荷の中和を阻止し得る。ある態様において、コンプスタチン類似体は、配列番号5~36のいずれかのアミノ酸配列を有し、ここで、配列番号5~36はN末端および/またはC末端でさらに伸長している。ある態様において、配列は、B1a-Xaa0-配列-XaaN-B2aと表すことができ、ここで、配列は配列番号5~36のいずれかを表し、B1aおよびB2aは独立して存在してもしなくてもよい。例えば、ある態様において、コンプスタチン類似体は、B1a-Xaa0-X’aa1-X’aa2-X’aa3-X’aa4-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa1-X”aa2-X”aa3-X”aa4-X”aa5-XaaN-B2a(配列番号69)を含み、ここで、X’aa1-X’aa2-X’aa3-X’aa4、Xaa、X”aa1、X”aa2、X”aa3、X”aa4およびX”aa5は上の配列番号5に示すとおりである。
【0109】
ある態様において、コンプスタチン類似体は、B1a-Xaa0-Xaa1-Cys-Val-Xaa2-Gln-Asp-Xaa2*-Gly-Xaa3-His-Arg-Cys-Xaa4-XaaN-B2a(配列番号70)を含み、ここで、Xaa1、Xaa2、Xaa2*、Xaa3およびXaa4は上の配列番号6に示すとおりであるかまたはXaa1、Xaa2、Xaa2*、Xaa3およびXaa4は配列番号6または配列番号7に示すとおりである。
【0110】
ある態様において、コンプスタチン類似体はB1a-Xaa0-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-XaaN-B2a(配列番号71)を含み、ここで、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12およびXaa13は、配列番号9~36のいずれかの1~13位のアミノ酸と同一である。
【0111】
ある態様において、任意のコンプスタチン類似体配列におけるXaa0および/またはXaaNは、1カ所以上にアルキル置換基を有する芳香環を含むアミノ酸を含む。ある態様において、アルキル置換基は低級アルキル置換基である。例えば、ある態様において、アルキル置換基はメチル基またはエチル基である。ある態様において、置換基は、化合物の芳香族性を破壊しない任意の位置に位置する。ある態様において、置換基は、置換基が結合している環の芳香族性を破壊しない任意の位置に位置する。ある態様において、置換基は1位、2位、3位、4位または5位に位置する。ある態様において、Xaa0は、チロシン、2-ヒドロキシフェニルアラニンまたは3-ヒドロキシフェニルアラニンのO-メチル類似体を含む。本発明の目的で、三文字アミノ酸略語が後に続く小文字“m”は、該アミノ酸がN-メチルアミノ酸であることを具体的に示すために使用し得る。例えば、略語“mGly”がここで使用されるとき、これはN-メチルグリシン(サルコシンまたはSarと呼ぶこともある)を意味する。ある態様において、Xaa0は、mGly、Tyr、Phe、Arg、Trp、Thr、Tyr(Me)、Cha、mPhe、mVal、mIle、mAla、DTyr、DPhe、DArg、DTrp、DThr、DTyr(Me)、mPhe、mVal、mIle、DAlaまたはDChaであるかまたはこれらを含む。例えば、ある態様において、コンプスタチン類似体は、配列B1-Ile-[Cys-Val-Trp(Me)-Gln-Asp-Trp-mGly-Ala-His-Arg-Cys]-mIle-B2(配列番号72)またはB1-Ile-[Cys-Val-Trp(Me)-Gln-Asp-Trp-mGly-Ala-His-Arg-Cys]-mIle-B2(配列番号73)を有するペプチドを含む。2個のCys残基は、活性化合物においてジスルフィド結合で結合される。ある態様において、ペプチドは、N末端でアセチル化および/またはC末端でアミド化されている。ある態様において、上記のとおり、B1はB1a-Xaa0を含みおよび/またはB2はXaaN-B2aを含む。例えば、ある態様において、B1はGly、mGly、Tyr、Phe、Arg、Trp、Thr、Tyr(Me)、mPhe、mVal、mIle、mAla、DTyr、DPhe、DTrp、DCha、DAlaを含むかまたはこれからなり、B2は、NH2を含み、例えば、mIleのカルボキシ末端OHがNH2で置換されている。ある態様において、B1はmGly、Tyr、DTyrまたはTyr(Me)を含むかまたはこれからなり、B2は、NH2を含み、例えば、mIleのカルボキシ末端OHがNH2で置換されている。ある態様において、Xaa1位のIleはGlyで置き換わっている。選択したコンプスタチン類似体の補体阻害能および/またはC3b結合パラメータは、WO/2010/127336(PCT/US2010/033345)および/またはQu, et al., Immunobiology (2012), doi: 10.1016/j.imbio.2012.06.003に記載されている。
【0112】
ある態様において、遮断部分またはその一部、例えば、1アミノ酸残基は、C3またはC3bに対する化合物の親和性増加に貢献するおよび/または化合物の活性を改善し得る。ある態様において、アミノ酸またはアミノ酸類似体の親和性または活性への貢献は、遮断活性より顕著であり得る。
【0113】
本発明の組成物および方法のある態様において、コンプスタチン類似体は表1に記載の配列を有するが、上記のとおりAc基が代わりの遮断部分B1に置き換わっている。ある態様において-NH2基はここに記載するとおり別の遮断部分B2に置き換わっている。
【0114】
一つの態様において、コンプスタチン類似体は、ヒトC3のβ鎖のうちコンプスタチンが結合する領域と実質的に同じ領域と結合する。一つの態様において、コンプスタチン類似体は、ヒトC3のβ鎖のうちコンプスタチンが結合する分子量が約40kDaのC末端部分のフラグメントと結合する化合物である(Soulika, A.M., et al., Mol. Immunol., 35: 160, 1998; Soulika, A.M., et al., Mol. Immunol. 43(12): 2023-9, 2006)。ある態様において、コンプスタチン類似体は、コンプスタチン-C3構造、例えば、結晶構造またはNMRによる3D構造で決定されるコンプスタチンの結合部位と結合する化合物である。ある態様において、コンプスタチン類似体は、コンプスタチン-C3構造内のコンプスタチンと置き換わることが可能であり、実質的にコンプスタチンと同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある態様において、コンプスタチン類似体は、ペプチド-C3構造内、例えば結晶構造内の表1に記載の配列、例えば配列番号14、21、28、29、32、33、34または36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aまたはここに記載する他のコンプスタチン類似体配列を有するペプチドの結合部位と結合する化合物である。ある態様において、コンプスタチン類似体は、ペプチド-C3構造内、例えば結晶構造内の配列番号30または31を有するペプチドの結合部位と結合する化合物である。ある態様において、コンプスタチン類似体は、配列番号9~36のペプチドと置き換わることが可能な化合物、例えば、ペプチド-C3構造内の配列番号14、21、28、29、32、33、34または36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aまたはここに記載する他のコンプスタチン類似体配列のペプチドと置き換わることが可能であり、実質的にそのペプチドと同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある態様において、コンプスタチン類似体は、ペプチド-C3構造内の配列番号30または31のペプチドと置き換わることが可能であり、実質的にそのペプチドと同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。
【0115】
当業者は、慣用的な実験方法を用いて、コンプスタチン類似体がC3のβ鎖のC末端部分のフラグメントと結合するかどうかを容易に判定することができるであろう。例えば、当業者であれば、化合物中の例えば、配列のC末端にp-ベンゾイル-L-フェニルアラニン(Bpa)などの光架橋アミノ酸を包含させることにより、光架橋性のコンプスタチン類似体合成することが可能である(Soulika, A.M., et al, supra)。所望により、追加のアミノ酸、例えば、FLAGタグまたはHAタグなどのエピトープタグを包含させて、例えばウエスタンブロット法による化合物の検出を容易にすることが可能である。コンプスタチン類似体をフラグメントとインキュベートして架橋を開始する。コンプスタチン類似体とC3フラグメントの共局在が結合を示す。表面プラズモン共鳴を用いて、コンプスタチン類似体がC3のコンプスタチン結合部位またはそのフラグメントと結合するかどうかを判定してもよい。当業者であれば分子モデリングソフトウェアプログラムを用いて、化合物がコンプスタチンあるいは表1に記載のいずれかのペプチドの配列、例えば、配列番号14、21、28、29、32、33、34または36またはある態様において、配列番号30または31、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aまたはここに記載する他のコンプスタチン類似体配列を有するペプチドと実質的に同じC3との分子間の接触を形成するかどうかを予測することが可能である。
【0116】
アミノ酸残基の縮合を介した当技術分野で公知のペプチド合成の種々の合成方法によりコンプスタチン類似体を調製することができ、例えば、従来のペプチド合成法に従い、当技術分野で公知の方法を用いて、それをコードする適切な核酸配列からインビトロまたは生きた細胞内で発現させることにより、コンプスタチン類似体を調製することができる。例えば、Malik, supra, Katragadda, supra, WO2004026328および/またはWO2007062249に記載されている標準的な固相法を用いて、ペプチドを合成することができる。当技術分野で公知の種々の保護基および方法論を用いて、アミノ基およびカルボキシル基、反応性官能基などのような潜在的に反応性の部分を保護し、次いで脱保護することができる。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis”, 3rd ed. Greene, T. W. and Wuts, P. G., Eds., John Wiley & Sons, New York: 1999)を参照されたい。逆相HPLCなどの標準的な方法を用いて、ペプチドを精製することができる。必要に応じて、逆相HPLCなどの既知の方法を用いて、ジアステレオマーペプチドペプチドの分離を行ってもよい。所望に応じて、調製物を凍結乾燥させ、次いで適切な溶媒、例えば水に溶解させてもよい。得られた溶液のpHは、NaOHなどの塩基を用いて、例えば生理的pHに調整することができる。必要に応じて、質量分析によってペプチド調製物の特徴付けを行い、質量および/またはジスルフィド結合形成を確認してもよい。例えば、Mallik, 2005, and Katragadda, 2006を参照のこと。
【0117】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体細胞反応性コンプスタチン類似体を含んでよいかまたはそれを含む。細胞反応性コンプスタチン類似体とは、コンプスタチン類似体部分と、細胞の表面に露出している官能基と、例えば生理的条件下で反応して共有結合を形成することができる細胞反応性の官能基を含む、化合物である。したがって、細胞反応性コンプスタチン類似体は細胞と共有結合する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、細胞に係留されたコンプスタチン類似体が、例えば、細胞表面および/または細胞付近でC3(C3(H2O)の形態であり得る)と結合してC3の切断および活性化を阻害することにより、ならびに/あるいはC3bと結合してその細胞への沈着または補体活性化カスケードへの関与を阻害することにより、補体介在損傷から細胞を保護する。本発明のある面では、単離細胞と細胞反応性コンプスタチン類似体とをエクスビボ(体外)で接触させる。本発明のある面では、細胞は単離された組織または臓器内、例えば、対象に移植する組織または臓器内に存在する。本発明のいくつかの態様では、対象に細胞反応性コンプスタチン類似体を投与することにより、細胞と細胞反応性コンプスタチン類似体をインビボで接触させる。細胞反応性コンプスタチン類似体は、インビボで細胞と共有結合を形成する。ある面において、本発明の方法は、少なくとも2週間、その期間の間に再処置の実施を要することなく、補体活性化の有害な作用から細胞、組織および/または臓器を保護するものである。
【0118】
ある実施態様において、本発明は、細胞もしくは組織の表面に存在する標的分子または細胞もしくは組織に結合していない細胞外物質と非共有結合する標的化部分を含む、コンプスタチン類似体を提供するおよび/または利用する。本明細書では、このようなコンプスタチン類似体を“標的化コンプスタチン類似体”と呼ぶ。標的分子は多くの場合、細胞膜に結合して細胞表面に露出しているタンパク質または炭水化物である。標的化部分は、コンプスタチン類似体を補体活性化の影響を受けやすい細胞、組織または部位に対して標的化する。本発明のいくつかの面では、単離細胞と標的化コンプスタチン類似体とをエクスビボ(体外)で接触させる。本発明のいくつかの面では、細胞は、単離された組織または臓器内、例えば、対象に移植する組織または臓器内に存在する。本発明のいくつかの面では、標的化コンプスタチン類似体が対象に投与されて、細胞、組織または細胞外物質とインビボで共有結合するようになる。いくつかの面では、本発明の方法は、少なくとも2週間、その期間の間に再処置の実施を要することなく、補体活性化の有害な作用から細胞、組織および/または臓器を保護するものである。ある態様において、標的化コンプスタチン類似体は、標的化部分と細胞反応性部分をともに含む。標的化部分は、細胞上の分子と非共有結合することにより、コンプスタチン類似体を例えば特定の細胞型に対して標的化する。次いで、細胞反応性部分が細胞または細胞外物質と共有結合する。他の態様において、標的化コンプスタチン類似体は細胞反応性部分を含まない。
【0119】
ある態様において、コンプスタチン類似体は長時間作用型コンプスタチン類似体を含んでよくまたはそれを含み、ここで、長時間作用型コンプスタチン類似体は、体内で化合物の寿命を延ばすポリエチレングリコール(PEG)などの部分を含む(例えば、血中からのそのクリアランスの減少により)。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体はターゲティング部分または細胞反応性部分を含まない。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体はターゲティング部分および/または細胞反応性部分を含む。
【0120】
所望により細胞反応性部分または標的化部分と結合させたコンプスタチン類似体を、ポリエチレングリコール(PEG)またはこれと同様の分子などの分子の付加により修飾して、化合物を安定化させる、その免疫原性を低減する、その体内での寿命を延ばす、その溶解性を増大または低減するおよび/または分解に対するその耐性を増大させることができる。PEG化の方法は当技術分野で周知である(Veronese, F.M. & Harris, Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 453-456, 2002; Davis, F.F., Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 457-458, 2002); Hinds, K.D. & Kim, S.W. Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 505-530 (2002; Roberts, M.J., Bentley, M.D. & Harris, J.M. Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 459-476; 2002); Wang, Y.S. et al. Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 547-570, 2002)。ポリペプチドを適宜結合させることができるPEGおよび誘導体化されたPEGを含めた修飾PEGなどの多種多様なポリマーがNektar Advanced Pegylation 2005-2006 Product Catalog, Nektar Therapeutics, San Carlos, CAに記載されており、これは、適切な結合法の詳細も提供する。他の態様において、コンプスタチン類似体を免疫グロブリンのFcドメインまたはその一部分と融合させる。他のある態様において、コンプスタチン類似体をアルブミン部分またはアルブミン結合ペプチドとコンジュゲートする。したがって、ある態様において、コンプスタチン類似体を1個以上のポリペプチド成分または非ポリペプチド成分で修飾する、例えば、コンプスタチン類似体をペグ化するか、別の部分とコンジュゲートする。ある態様において、成分は免疫グロブリンのFcドメインでもその一部分でもない。コンプスタチン類似体を単一の分子種または複数の異なる分子種(例えば、複数の異なる類似体)を含み得る多量体として、あるいは超分子複合体の一部として得ることができる。
【0121】
ある態様において、コンプスタチン類似体は、ポリマー骨格またはポリマー足場と共有結合または非共有結合した複数のコンプスタチン類似体部分を含む多価化合物である。コンプスタチン類似体部分は同一のものでも異なるものでもよい。本発明のある態様において、多価化合物は、複数例または複数コピーの単一のコンプスタチン類似体部分を含む。本発明の他の態様において、多価化合物は、2種類以上の異なるコンプスタチン類似体部分、例えば、3種類、4種類、5種類またはそれ以上の異なるコンプスタチン類似体部分のそれぞれの例を1個以上含む。本発明のある態様において、コンプスタチン類似体部分の個数(“n”)は2~6である。本発明の他の態様において、nは7~20である。本発明の他の態様において、nは20~100である。他の態様において、nは100および1,000である。本発明の他の態様において、nは1,000~10,000である。他の態様において、nは10,000~50,000である。他の態様において、nは50,000~100,000である。他の態様において、nは100,000~1,000,000である。
【0122】
コンプスタチン類似体部分は、ポリマー足場と直接結合させても、コンプスタチン類似体部分とポリマー足場とを接続する結合部分を介して結合させてもよい。結合部分は単一コンプスタチン類似体部分およびポリマー足場と結合させることができる。あるいは、結合部分が複数のコンプスタチン類似体部分をポリマー足場と結合させるよう、結合部分がそれと結合した複数のコンプスタチン類似体部分を有していてもよい。
【0123】
ある態様において、コンプスタチン類似体は、第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸、例えばLys残基を含む。例えば、コンプスタチン類似体のN末端および/またC末端にLys残基またはLys残基を含む配列が付加されている。ある態様において、Lys残基は、堅いスペーサーまたは柔軟なスペーサーによりコンプスタチン類似体の環状部分と分離されている。スペーサーは、例えば、置換または非置換の飽和または不飽和アルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖および/またはその他の部分、例えば、リンカーに関して第VI節に記載されているものを含み得る。鎖の長さは、例えば、炭素原子2~20個であり得る。他の態様において、スペーサーはペプチドである。ペプチドスペーサーは、例えば、長さが1~20アミノ酸、例えば、長さが4~20アミノ酸であり得る。適切なスペーサーは、例えば、複数のGly残基、Ser残基またはその両方を含むか、あるいはこれよりなるものであり得る。所望により、第一級もしくは第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸および/またはスペーサー内の少なくとも1個のアミノ酸はD-アミノ酸である。任意の各種ポリマー骨格またはポリマー足場を用いることができる。例えば、ポリマー骨格またはポリマー足場はポリアミド、多糖、ポリ酸無水物、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリペプチド、ポリエチレンオキシドまたはデンドリマーであり得る。例えば、WO98/46270(PCT/US98/07171)またはWO98/47002(PCT/US98/06963)に適切な方法およびポリマー骨格が記載されている。一つの態様において、ポリマー骨格またはポリマー足場は、カルボン酸基、無水物基またはスクシンイミド基などの複数の反応性官能基を含む。ポリマー骨格またはポリマー足場をコンプスタチン類似体と反応させる。一つの態様において、コンプスタチン類似体は、カルボン酸、無水物基またはスクシンイミド基などの多数の異なる反応性官能基のいずれかを含み、これらをポリマー骨格の適当な基と反応させる。あるいは、互いに結合してポリマー骨格またはポリマー足場を形成し得るモノマー単位を最初にコンプスタチン類似体と反応させ、得られたモノマーを重合させる。他の態様において、短鎖を重合し、官能化した後、異なる組成の短鎖の混合物を長いポリマーに組み立てる。
【0124】
IV. コンプスタチン模倣物
コンプスタチンの構造は当技術分野で公知であり、またコンプスタチンより高い活性を有する数多くのコンプスタチン類似体のNMR構造も知られている(Malik, supra)。構造に関する情報を用いてコンプスタチン模倣物(Compstatin mimetics)を設計することができる。
【0125】
一つの態様において、コンプスタチン模倣物は、C3またはそのフラグメント(コンプスタチンが結合するβ鎖の40kDフラグメントなど)との結合に関してコンプスタチンまたは任意のコンプスタチン類似体(例えば、表1に記載されている配列のコンプスタチン類似体)と競合するあらゆる化合物である。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチンの活性と同等かそれを上回る活性を有する。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチンより安定であるか、経口利用可能であるかまたはバイオアベイラビリティが高い。コンプスタチン模倣物はペプチド、核酸または小分子であり得る。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチン-C3構造、例えば、結晶構造またはNMR実験で得られる3-D構造において決定されるコンプスタチンの結合部位に結合する化合物である。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチン-C3構造内のコンプスタチンと置き換わることが可能で、コンプスタチンと実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、ペプチド-C3構造内の表1に記載の配列、例えば、配列番号14、21、28、29、32、33、34または36またはある態様において、配列番号30または31または他のコンプスタチン類似体配列を有するペプチドの結合部位と結合する化合物である。ある態様において、コンプスタチン模倣物は、ペプチド-C3構造内の表1に記載の配列、例えば、配列番号14、21、28、29、32、33、34または36またはある態様において、配列番号30または31または他のコンプスタチン類似体配列を有するペプチドと置き換わることが可能で、そのペプチドと実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある態様において、コンプスタチン模倣物は非ペプチド骨格を有するが、コンプスタチンの配列に基づき設計された配列で配置された側鎖を有する。
【0126】
短いペプチドの具体的な所望のコンホメーションが確認されれば、そのコンホメーションに適合するペプチドまたはペプチド模倣物を設計する方法が周知であることを当業者は理解する。例えば、G.R. Marshall (1993), Tetrahedron, 49: 3547-3558; Hruby and Nikiforovich (1991), in Molecular Conformation and Biological Interactions, P. Balaram & S. Ramasehan, eds., Indian Acad. of Sci., Bangalore, PP. 429-455), Eguchi M, Kahn M., Mini Rev Med Chem., 2(5): 447-62, 2002を参照されたい。本発明に特に関連して、例えば、とりわけ、コンプスタチンおよびその類似体に関して当技術分野で報告されているとおり、官能基の作用または立体構造上の考慮事項へのアミノ酸残基の種々の側鎖の関与を考慮に入れることにより、ペプチド類似体の設計をさらに精緻化することができる。
【0127】
C3と結合して補体活性化を阻害するのに必要な特定の骨格コンホメーションおよび側鎖官能基をもたらすという目的に、ペプチド模倣物がペプチドと等しく十分に役立ち得ることが当業者に理解される。したがって、結合して適切な骨格コンホメーションを形成することができる天然に存在するアミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノ酸類似体または非アミノ酸分子のいずれかを使用することにより、C3と結合し補体を阻害する化合物を製造し、利用することが本発明の範囲内にあるものとして考慮される。ここでは、補体活性化を阻害する点で例示ペプチドと十分に類似するために、同等な骨格コンホメーション特性および/またはその他の機能性の大部分を有する、ペプチドの置換体または誘導体を表すために、非ペプチド類似体またはペプチド成分および非ペプチド成分を含む類似体を“ペプチド模倣物”または“アイソスター模倣物”と呼ぶことがある。より一般的に、コンプスタチン模倣物は、骨格が異なっていてもファルマコフォアがそのコンプスタチンにおける位置付けと同様に位置付けされ得るあらゆる化合物である。
【0128】
高親和性のペプチド類似体開発のためにペプチド模倣物を使用することは、当技術分野で周知である。ペプチド内のアミノ酸残基とほぼ同じ回転束縛を仮定し、既知の技術の中でも特にラマチャンドランプロットを用いて、非アミノ酸部分を含む類似体を分析し、コンホメーションモチーフを確認することができる(Hruby & Nikiforovich 1991)。
【0129】
当業者は、容易に適切なスクリーニングアッセイを確立して、さらなるコンプスタチン模倣物を同定し、所望の阻害活性を有するものを選択することができる。例えば、コンプスタチンまたはその類似体を(例えば、放射性標識または蛍光標識で)標識し、種々の濃度の試験化合物の存在下でC3と接触させることができる。試験化合物がコンプスタチン類似体とC3の結合を減少させる能力を評価する。コンプスタチン類似体とC3との結合を顕著に減少させる試験化合物をコンプスタチン模倣物の候補とする。例えば、コンプスタチン類似体-C3複合体の定常状態濃度を減少させる試験化合物またはコンプスタチン類似体-C3複合体の形成率を少なくとも25%または少なくとも50%減少させる試験化合物をコンプスタチン模倣物候補とする。当業者には、このスクリーニングアッセイの数多くの変法を用い得ることが認識される。スクリーニングの対象となる化合物は、天然産物、アプタマーのライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、コンビナトリアル化学を用いて合成された化合物ライブラリーなどを含む。本発明は、上記コア配列に基づいて化合物のコンビナトリアルライブラリーを合成し、そのライブラリーをスクリーニングしてコンプスタチン模倣物を同定することを包含する。これらのいずれかの方法を用いて、それまでに試験したコンプスタチン類似体よりも阻害活性が高い新たなコンプスタチン類似体を同定することもできる。本発明の細胞反応性化合物にコンプスタチン模倣物を使用し得ることおよび本発明がこのような細胞反応性コンプスタチン模倣物を提供することが理解される。
【0130】
V. 細胞反応性または長時間作用型コンプスタチン類似体
上記のとおり、ある実施態様において、本発明は多様な細胞反応性コンプスタチン類似体を提供するおよび/または利用する。いくつかの面では、細胞反応性コンプスタチン類似体は式A-L-Mの化合物を含み、式中、Aは細胞反応性官能基Jを含む部分であり、Lは場合により存在する結合部であり、Mはコンプスタチン類似体部分を含む。コンプスタチン類似体部分は、種々の態様において任意のコンプスタチン類似体、例えば、上記の任意のコンプスタチン類似体を含み得る。式A-L-Mは、A-Lがコンプスタチン類似体部分のN末端に存在する態様、A-Lがコンプスタチン類似体部分のC末端に存在する態様、A-Lがコンプスタチン類似体部分のアミノ酸の側鎖に結合している態様および同じまたは異なるA-LがMの両端に存在する態様を包含する。特定のコンプスタチン類似体が式A-L-Mの化合物中のコンプスタチン類似体部分として存在するとき、コンプスタチン類似体の官能基はLの官能基と反応してAまたはLと共有結合を形成していることが理解される。例えば、コンプスタチン類似体部分が第一級アミン(NH2)基を含む側鎖を有するアミノ酸を含むコンプスタチン類似体(そのコンプスタチン類似体は式R1-(NH2)で表すことができる)を含む細胞反応性コンプスタチン類似体は、Lとの新たな共有結合(例えば、N-C)が形成されて水素が失われた式R1-NH-L-Aを有し得る。したがって、“コンプスタチン類似体部分”という用語は、コンプスタチン類似体の少なくとも1個の原子が第二の部分との共有結合に関与する(例えば、側鎖の修飾となり得る)分子構造を包含する。同様のことが上記多価化合物中に存在するコンプスタチン類似体部分でも考慮される。ある態様において、コンプスタチン類似体、例えば、上のIVの章に記載したコンプスタチン類似体のN末端またはC末端にある遮断部分を、細胞反応性コンプスタチン類似体の構造内のA-Lに置き換える。ある態様において、AまたはLは遮断部分を含む。ある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体は、同じアミノ酸配列(および該当する場合は1個以上の遮断部分)を有するが細胞反応性部分を含まない対応するコンプスタチン類似体の活性の少なくとも約10%、20%または30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上のモル活性を有する。細胞反応性コンプスタチン類似体が複数のコンプスタチン類似体部分を含むある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体のモル活性は、該コンプスタチン類似体部分の活性の合計の少なくとも約10%、20%または30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上である。
【0131】
細胞反応性部分Aは、種々の態様において種々の異なる細胞反応性官能基Jのいずれかを含み得る。一般に、少なくとも部分的には、例えば、(a)標的とする特定の官能基;(b)反応性官能基が生理的に許容されるエクスビボ条件下(例えば、生理的に許容されるpHおよびモル浸透圧濃度)および/またはインビボ条件下(例えば、血液中)で標的官能基と反応する能力;(c)生理的に許容されるエクスビボ条件下および/またはインビボ条件下で反応性官能基と標的官能基との間で生じる反応の特異性;(d)反応性官能基とその標的官能基との反応により生じ得る共有結合の(例えば、インビボ条件下での)安定性;(e)反応性官能基を含む細胞反応性コンプスタチン類似体の合成が容易であるかどうかなど因子に基づき細胞反応性官能基を選択し得る。ある態様において、脱離基を解離せずに標的化学基と反応する反応性官能基を選択する。ある態様において、標的との反応時に脱離基の解離を生じる反応性官能基を選択する。このような基を含む化合物は、例えば、反応の進行および/または程度をモニターするのに有用であり得る。ある態様において、脱離基は、生じた量(例えば、生じた濃度および/または絶対量に基づく量)において細胞、組織または臓器に生理的に許容されるものおよび/または生じた量(例えば、関連する血液などの体液中の濃度に基づく量および/または生じた絶対量に基づく量)において対象に医学的に許容されるものである。ある態様において、エクスビボで生じた脱離基の少なくとも一部を、例えば生理食塩水を用いて、例えば、細胞を洗浄することにより、あるいは組織または臓器を洗浄または灌流することにより除去する。
【0132】
多くの態様において、本発明で使用する細胞反応性官能基がアミノ酸残基の側鎖および/またはタンパク質のN末端アミノ基もしくはC末端カルボキシル基と反応する。ある態様において、細胞反応性官能基は、システイン残基の側鎖に存在するスルフィドリル(-SH)基と反応する。ある態様において、マレイミド基を用いる。マレイミド基は、生理的pHでタンパク質のシステイン残基のスルフィドリル基と反応して、安定なチオエーテル結合を形成する。ある態様において、ヨードアセチル基またはブロモアセチル基などのハロアセチル基を用いる。ハロアセチル基は、生理的pHでスルフィドリル基と反応する。ヨードアセチル基の反応は、ヨウ素とスルフィドリル基の硫黄原子との求核性置換により進行し、安定なチオエーテル結合を生じるものである。他の態様において、ヨードアセトアミド基を用いる。ある態様において、細胞反応性官能基は、タンパク質のN末端に存在するアミノ(-NH2)基およびリジン残基の側鎖に存在するアミノ基(εアミノ基)と反応する。ある態様において、活性エステル、例えばスクシンイミジルエステル(すなわち、NHSエステル)を用いる。例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体(スルホ-NHS)を合成に使用し、得られた細胞反応性コンプスタチン類似体はNHSエステルを含むものとなる。ある態様において、細胞反応性官能基は、タンパク質のC末端および種々のアミノ酸残基の側鎖に存在するカルボキシル(-COOH)基と反応する。ある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体は、種々のアミノ酸の側鎖およびグリコシル化タンパク質の炭水化物部分に存在するヒドロキシル(-OH)基と反応する。
【0133】
一般に、結合部Lは、結合される部分を結合する安定な化合物の形成と合致する任意の1個以上の脂肪族部分および/または芳香族部分を含み得る。ここで使用する“安定な”という用語は、好ましくは、製造が可能な程度の安定性を有し、例えば、ここに記載する1個以上の目的に有用な程度の期間、化合物の完全性を維持する化合物をいう。ある態様において、Lは炭素原子1~30個、1~20個、1~10個、1~6個または5個以下の長さを有する飽和または不飽和、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族鎖を含み、ここでは長さは、主鎖(最長鎖)のC原子の数をいう。ある態様において、脂肪族鎖はヘテロ原子(O、N、S)を1個以上含み、これらのヘテロ原子は独立して選択され得る。ある態様において、Lの主鎖の原子の少なくとも50%が炭素原子である。ある態様において、Lは飽和アルキル部分(CH2)nを含み、式中、nは1~30である。
【0134】
ある態様において、Lはヘテロ原子を1個以上含み、鎖中の総炭素原子数1~1000個、1~800個、1~600個、1~400個、1~300個、1~200個、1~100個、1~50個、1~30個または1~10個の長さを有する。ある態様において、Lはオリゴ(エチレングリコール)部分(-(O-CH2-CH2-)n)を含み、式中、nは1~500、1~400、1~300、1~200、1~100、10~200、200~300、100~200、40~500、30~500、20~500、10~500、1~40、1~30、1~20または1~10である。
【0135】
ある態様において、Lは、-CH=CH-もしくは-CH2-CH=CH-などの不飽和部分;非芳香族環系を含む部分(例えば、シクロヘキシル部分);芳香族部分(例えば、フェニル部分などの芳香族環系);エーテル部分(-C-O-C-);アミド部分(-C(=O)-N-);エステル部分(-CO-O-);カルボニル部分(-C(=O)-);イミン部分(-C=N-);チオエーテル部分(-C-S-C-);アミノ酸残基;および/または適合性のある2個の反応性官能基の反応により形成され得る任意の部分を含む。ある態様において、結合部または細胞反応性部分の1個以上の部分が、その部分上の1個以上の水素(またはその他の)原子が独立して、脂肪性;芳香族、アリール;アルキル、アラルキル、アルカノイル、アロイル、アルコキシ;チオ;F;Cl;Br;I;-NO2;-CN;-CF3;-CH2CF3;-CHCl2;-CH2OH;-CH2CH2OH;-CH2NH2;-CH2SO2CH3;-または-GRG1を含むが、これらに限定されない1個以上の部分に置き換わることにより置換されており、式中、Gは-O-、-S-、-NRG2-、-C(=O)-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)O-、-C(=O)NRG2-、-OC(=O)-、-NRG2C(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NRG2-、-NRG2C(=O)O-、-NRG2C(=O)NRG2-、-C(=S)-、-C(=S)S-、-SC(=S)-、-SC(=S)S-、-C(=NRG2)-、-C(=NRG2)O-、-C(=NRG2)NRG3-、-OC(=NRG2)-、-NRG2C(=NRG3)-、-NRG2SO2-、-NRG2SO2NRG3-または-SO2NRG2-であり、RG1、RG2およびRG3はそれぞれ独立して、水素、ハロゲンまたは場合により置換されていてよい脂肪族部分、芳香族部分またはアリール部分を含むが、これらに限定されない。環系が置換基として存在する場合、それは所望により直鎖状部分を介して結合していてもよいことが理解される。本発明により企図される置換基と可変物の組合せは、好ましくは、ここに記載する方法のいずれか1個以上において有用な、例えば、ここに記載する1個以上の障害の処置および/または細胞、組織もしくは臓器との接触に有用なおよび/または1個以上のこのような化合物の製造の中間体として有用な安定な化合物をもたらす。
【0136】
Lは種々の態様において、前段落に記載されている部分のいずれか1個以上を含み得る。ある態様において、Lは、互いに結合して通常は1~約60個の原子、1~約50個の原子、例えば、1~40個、1~30個、1~20個、1~10個または1~6個の原子の長さを有する構造を形成する2個以上の異なる部分を含み、ここでは長さは、主鎖(最長鎖)の原子の数をいう。ある態様において、Lは、互いに結合して通常は主鎖(最長鎖)の炭素原子が1~約40個、例えば1~30個、例えば、1~20個、1~10個または1~6個である構造を形成する2個以上の異なる部分を含む。このような細胞反応性コンプスタチン類似体の構造は一般に、式A-(LPj)j-Mにより表すことができ、式中、jは典型的に1~10であり、LPjはそれぞれ独立して、前段落に記載されている部分から選択される。多くの態様では、Lは-(CH2)n-および/または-(O-CH2-CH2-)nなどの炭素含有鎖を1個以上含み、これらは、例えば適合性のある2個の反応性官能基の反応により生じた部分(例えば、アミド部分、エステル部分またはエーテル部分)により、互いに共有結合しおよび/または細胞反応性官能基もしくはコンプスタチン類似体と共有結合している。ある態様において、Lはオリゴ(エチレングリコール)部分および/または飽和アルキル鎖を含む。ある態様において、Lは-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2CH2O)n(CH2)pC(=O)-または-(CH2)m-C(=O)-NH-(CH2)p(OCH2CH2)nC(=O)-を含む。ある態様において、m、nおよびpは、鎖の炭素数が1~500個、例えば、2~400個、2~300個、2~200個、2~100個、2~50個、4~40個、6~30個または8~20個になるように選択される。ある態様において、mが2~10であり、nが1~500であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~400であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~300であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~200であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~100であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~50であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~25であるおよび/またはpが2~10である。ある態様において、mが2~10であり、nが1~8であるおよび/またはpが2~10である。所望により、少なくとも1個の-CH2-がCH-Rに置き換わっており、式中、Rは任意の置換基であり得る。所望により、少なくとも1個の-CH2-がヘテロ原子、環系、アミド部分、エステル部分またはエーテル部分に置き換わっている。ある態様において、Lは、最長鎖の炭素原子が3個より多いアルキル基を含まない。ある態様において、Lは、最長鎖の炭素原子が4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または11個であるアルキル基を含まない。
【0137】
本発明のある態様において、Aは細胞反応性官能基Jと、結合部LP1を含むリンカーL1と、コンプスタチン類似体と反応してA-Mを生じる反応性官能基とを含む。ある態様において、2個の反応性官能基と、結合部LP2を含む二官能性リンカーL2を用いる。Lの反応性官能基がAおよびMの適当な反応性官能基と反応して、細胞反応性コンプスタチン類似体A-L-Mが生成する。ある態様において、コンプスタチン類似体は、結合部LP3を含むリンカーL3を含む。例えば、後述するように、反応性官能基を含むリンカーがN末端またはC末端に存在していても、反応性官能基を含む部分がリンカーを介してN末端またはC末端に結合していてもよい。したがって、Lは、例えば、A、AとMを結合するのに用いられるリンカーおよび/またはコンプスタチン類似体により与えられる複数の結合部LPを含み得る。構造A-L-M内に存在する場合、反応前にL1、L2、L3などに存在する特定の反応性官能基が反応を受け、該反応性官能基の一部分のみが最終的な構造A-L-M内に存在し、化合物は該官能基の反応により形成された部分を含むことが理解される。一般に、化合物が結合部を2個以上含む場合、その結合部は同一でも異ってもよく、種々の態様において独立して選択できるものである。複数の結合部LPを互いに結合させてより大きな結合部Lを形成させることができ、そのような結合部の少なくとも一部は、それと結合したコンプスタチン類似体および/または細胞反応性官能基を1個以上有し得る。複数のコンプスタチン類似体を含む分子では、コンプスタチン類似体は同一でも異なってもよく、異なるものである場合、それは独立して選択され得る。同じことが結合部および反応性官能基にも当てはまる。本発明は、細胞反応性官能基を1個以上含む多価のコンプスタチン類似体の使用および細胞反応性官能基を1個以上含むコンプスタチン類似体のコンカテマーの使用を包含する。ある態様において、少なくとも1個の結合が、ビオチン/(ストレプト)アビジン結合またはこれとほぼ同じ強度の他の非共有結合などの安定な非共有結合である。
【0138】
ある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体は、配列番号3~36、37A、38A、39A、40Aまたは41AのいずれかがN末端、C末端または両末端においてアミノ酸1個分以上延長されたコンプスタチン類似体を含み、そのアミノ酸のうち少なくとも1個が、第一級もしくは第二級アミン、スルフィドリル基、カルボキシル基(カルボン酸基として存在し得る)、グアニジノ基、フェノール基、インドール環、チオエーテルまたはイミダゾール環などの反応性官能基を含む側鎖を有するものである。ある態様において、アミノ酸はL-アミノ酸である。ある態様において、任意の1個以上のアミノ酸がD-アミノ酸である。複数のアミノ酸が付加されるならば、アミノ酸は独立して選択され得る。ある態様において、細胞反応性官能基を含む部分を付加するための標的として反応性官能基(例えば、第一級または第二級アミン)を用いる。第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸は、リジン(Lys)ならびに一般構造NH2(CH2)nCH(NH2)COOHのジアミノカルボン酸、例えば2,3-ジアミノプロピオン酸(dapa)、2,4-ジアミノ酪酸(daba)およびオルニチン(orn)(それぞれn=1(dapa)、2(daba)および3(orn)の場合)などを含む。ある態様において、少なくとも1個のアミノ酸がシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、チロシン、トリプトファン、メチオニンまたはヒスチジンである。システインはスルフィドリル基を含む側鎖を有する。アスパラギン酸およびグルタミン酸はカルボキシル基(イオン化されるとカルボン酸基になる)を含む側鎖を有する。アルギニンはグアニジノ基を含む側鎖を有する。チロシンはフェノール基(イオン化されるとフェノラート基になる)を含む側鎖を有する。トリプトファンは、例えばトリプトファンを含むインドール環を含む側鎖を有する。メチオニンは、例えばメチオニンを含むチオエーテル基を含む側鎖を有する。ヒスチジンはイミダゾール環を含む側鎖を有する。天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を含み、このような反応性官能基を1個以上含む側鎖を有する多種多様な非標準アミノ酸が利用可能である。例えば、Hughes, B. (ed.), Amino Acids, Peptides and Proteins in Organic Chemistry, Volumes 1-4, Wiley-VCH (2009-2011); Blaskovich, M., Handbook on Syntheses of Amino Acids General Routes to Amino Acids, Oxford University Press, 2010を参照のこと。本発明は、非標準アミノ酸を1個以上用いて、細胞反応性官能基を含む部分を付加するための標的とする態様を包含する。必要に応じて、化合物の合成時に任意の1個以上のアミノ酸を保護してもよい。例えば、標的アミノ酸側鎖が含まれる反応時に1個以上のアミノ酸を保護してもよい。細胞反応性官能基を含む部分を付加するための標的としてスルフィドリル含有アミノ酸を用いるある態様において、システインなどの他のアミノ酸との間で分子内ジスルフィド結合を形成することより化合物を環化する間、スルフィドリルを保護する。
【0139】
本段落はアミン基を含む側鎖を有するアミノ酸を例として用いて記載する。本発明は、異なる反応性官能基を含む側鎖を有するアミノ酸を用いる類似した態様を包含する。ある態様において、第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸が、ペプチド結合を介して配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41AのいずれかのN末端またはC末端に直接結合している。ある態様において、第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸が、上記結合部分のいずれか1個以上を含み得る結合部を介して配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41AのいずれかのN末端またはC末端と結合している。ある態様において、少なくとも2個のアミノ酸が一端または両端に付加されている。この2個以上の付加されているアミノ酸はペプチド結合により互いに結合していてもよく、また付加されているアミノ酸の少なくとも一部が、本明細書に記載の結合部分のいずれか1個以上を含み得る結合部を介して互いに結合していてもよい。したがって、ある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体は、式B1-R1-M1-R2-B2のコンプスタチン類似体部分Mを含み、式中、M1は配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかを表し、R1またはR2のいずれかは存在しなくてもよく、R1およびR2のうち少なくとも1個が第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸を含み、B1およびB2は所望により存在する遮断部分である。R1および/またはR2はM1と、ペプチド結合により結合していても、非ペプチド結合により結合していてもよい。R1および/またはR2は結合部LP3を含み得る。例えば、R1が式M2-LP3を有し、かつ/またはR2が式LP3-M2を有していてもよく、式中、LP3は結合部であり、M2は、第一級または第二級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸を少なくとも1個含む。例えば、M2はLysであっても、Lysを含むアミノ酸鎖であってもよい。ある態様において、LP3は1個以上のアミノ酸を含むか、あるいはこれよりなるものである。例えば、LP3は、長さが1~約20アミノ酸、例えば、長さが4~20アミノ酸である。ある態様において、LP3は複数のGly、Serおよび/またはAla残基を含むか、あるいはこれよりなるものである。ある態様において、LP3は、Cysなどの反応性SH基を含むアミノ酸を含まない。ある態様において、LP3はオリゴ(エチレングリコール)部分および/または飽和アルキル鎖を含む。ある態様において、LP3は、M1のN末端アミノ酸とアミド結合を介して結合している。ある態様において、LP3は、M1のC末端アミノ酸とアミド結合を介して結合している。化合物は、さらなる結合部および/またはアミノ酸の付加により、一端または両端がさらに延長されていてもよい。アミノ酸は同じものであっても異なるものであってもよく、異なるものである場合、それは独立して選択され得る。ある態様において、反応性官能基を含む側鎖を有するアミノ酸を2個以上使用し、反応性官能基は同一でも異なってもよい。2個以上の反応性官能基は、2個以上の部分を付加するための標的として用いることができる。ある態様において、2個以上の細胞反応性部分を付加する。ある態様において、細胞反応性部分および標的化部分を付加する。ある態様において、アミノ酸をペプチド鎖内に組み込んだ後にリンカーおよび/または細胞反応性部分をアミノ酸側鎖に結合させる。ある態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体の合成において、アミノ酸を用いる前にリンカーおよび/または細胞反応性部分が既にアミノ酸側鎖と結合している。例えば、側鎖にリンカーが結合したLys誘導体を用い得る。リンカーは細胞反応性官能基を含むものであってもよく、あるいは細胞反応性官能基を含むよう後に修飾してもよい。
【0140】
以下に特定の細胞反応性コンプスタチン類似体についてさらに詳細に記載する。以下の考察では、コンプスタチン類似体部分の例として、アミノ酸配列Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr(配列番号37)(配列番号28のコンプスタチン類似体に対応するものであり、配列番号37の配列中、アスタリスクは活性化合物中でジスルフィド結合により結合したシステインを表し、(1Me)Trpは1-メチル-トリプトファンを表す)を有するペプチドを使用し;細胞反応性官能基の例としてマレイミド(略号Mal)を使用し;結合部分の例として(CH2)nおよび(O-CH2-CH2)nを使用し;反応性官能基を含むアミノ酸の例としてリジンを使用し(一部の化合物)、一部の化合物に所望により存在する遮断部分の例として、N末端およびC末端のそれぞれアセチル化およびアミド化(イタリック体でそれぞれAcおよびNH2と表す)を使用する。化合物は種々の合成方法および種々の前駆体を用いて調製され得ることが理解される。以下の種々の合成方法および前駆体に関する記述は、本発明を限定することを意図するものではない。一般に、以下に記載されるいずれの化合物のいずれの特徴も、下にまたはここに記載されまたは本明細書の他の箇所に記載されている他の化合物の特徴と自由に組み合わせることが可能であり、本発明はこのような態様を包含する。
【0141】
ある態様において、細胞反応性部分は、マレイミド基(細胞反応性官能基として)を含む細胞反応性化合物とアルカン酸(RCOOH)(ここで、Rはアルキル基である)により提供される。例えば、下に示す6-マレメイドカプロン酸(Mal-(CH
2)
5-COOH)
【化1】
を用いることができる。
【0142】
ある態様において、細胞反応性部分は、カルボン酸部分が活性化されている、例えば、OH部分がより好ましい脱離基に変換されているアルカン酸の誘導体によって提供される。例えば、化合物Iのカルボキシル基をEDCと反応させた後、NHS(所望により水溶性スルホ-NHSとして提供され得る)反応させて、6-マレメイドカプロン酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体、すなわち、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(下記)
【化2】
を得ることができる。
【0143】
配列番号37の化合物のN末端および/またはC末端を修飾して細胞反応性コンプスタチン類似体を得ることができる。例えば、化合物IIを用いて、IleのN末端アミノ基との反応により、次の細胞反応性コンプスタチン類似体を得ることができる。
【0144】
マレイミド-(CH2)5-C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号38)
配列番号38では、-C(=O)部分がC-N結合(式中、Nはアミノ酸の一部分であり、示されていない)を介して、隣接するC末端アミノ酸(Ile)と結合していることが理解される。
【0145】
他の態様において、マレイミド基がC末端のThrと結合して、次の細胞反応性コンプスタチン類似体が得られる。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-(C=O)-(CH2)5-マレイミド(配列番号39)
【0146】
ある態様において、二官能性リンカー(例えば、ヘテロ二官能性リンカー)を用いて細胞反応性コンプスタチン類似体を合成することができる。(CH
2-CH
2-O)
n部分と(CH
2)
m部分(式中、m=2)とを含むヘテロ二官能性リンカーの例を下に示す。
【化3】
【0147】
化合物IIIは、細胞反応性官能基としてのマレイミド基と、アミノ基(例えば、N末端アミノ基またはアミノ酸側鎖のアミノ基)と容易に反応するNHSエステル部分とを含む。
【0148】
n=2である化合物IIIの態様を用いて、配列番号37のコンプスタチン類似体を使用し、次の細胞反応性コンプスタチン類似体を得ることができる。
マレイミド-(CH2)2-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号40)
【0149】
配列番号40の化合物では、-C(=O)部分がC-N結合(式中、Nはアミノ酸の一部分であり、示されていない)を介して、N末端アミノ酸(Ile残基)と結合していることが理解される。ある態様において、リンカーは、nが1以上である化合物IIIの式を有する。(CH2-CH2-O)n部分のnの値の例がここに記載されている。
【0150】
ある態様において、配列番号39または配列番号40の化合物と比較して、マレイミド部分と分子の残りの部分を結合させているアルキル鎖がそれより多いもしくは少ないメチレン単位を含み、オリゴ(エチレングリコール)部分がそれより多いもしくは少ないエチレングリコール単位を含みおよび/またはそれより多いもしくは少ないメチレン単位がオリゴ(エチレングリコール)部分の一端または両端に隣接して存在する。このような変形物を説明するための細胞反応性コンプスタチン類似体の例を以下に示す(配列番号41~46)。
マレイミド-(CH2)2-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号41)
マレイミド-(CH2)3-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号42)
マレイミド-(CH2)5-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号43)
マレイミド-(CH2)4-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号44)
マレイミド-(CH2)2-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号45)
マレイミド-(CH2)5-C(=O)-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2C(=O)-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2(配列番号46)
【0151】
ある態様において、配列番号37が、例えばC末端結合について下に示すとおり、延長されてペプチドのN末端またはC末端にLys残基を含む。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-Lys-NH2(配列番号47)。
【0152】
ある態様において、Lys残基が、例えばC末端結合について下に示すとおり、ペプチドリンカーを介して配列番号37のN末端またはC末端に結合している。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-(Gly)5-Lys-NH2(配列番号48)。
【0153】
ある態様において、第一級または第二級アミンを含むリンカーがコンプスタチン類似体のN末端またはC末端に付加されている。ある態様において、リンカーはアルキル鎖および/またはオリゴ(エチレングリコール)部分を含む。例えば、NH
2(CH
2CH
2O)
nCH
2C(=O)OH(例えば、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン酸)またはそのNHSエステル(例えば、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸または11-アミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン酸のNHSエステル)を用いることができる。ある態様において、得られる化合物は次のようなものである(式中、リンカーによって提供される部分が太字で示されている)。
【化4】
【化5】
【0154】
ある態様において、Lys残基が、非ペプチド部分を含むリンカーを介して配列番号37のN末端またはC末端に結合している。例えば、リンカーは、アルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖および/または環系を含み得る。ある態様において、8-AEEAcまたはそのNHSエステルを用いて、次のような化合物(式中、8-AEEAcによって与えられる部分が太字で示されている)が得られる(LysがC末端で結合する場合)。
【化6】
【0155】
配列番号49および50では、-C(=O)部分がC-N結合(式中、Nはアミノ酸の一部分であり、示していない)を介して、隣接するIle残基と結合していることが理解される。同様に配列番号51では、-C(=O)部分がC-N結合(式中、Nはアミノ酸の一部分であり、示されていない)を介して、隣接するLys残基と結合している。また、配列番号51では、NH部分がC-N結合(式中、Cはアミノ酸のカルボニル炭素であり、示していない)を介して、隣接するN末端アミノ酸(Thr)と結合していることも理解される。
【0156】
配列番号47~51の化合物の第一級アミン基を修飾して細胞反応性コンプスタチン類似体を得ることは容易である。例えば、配列番号47~51の化合物(または第一級もしくは第二級アミンとコンプスタチン類似体部分とを含む他の化合物)を6-マレイミドカプロン酸N-スクシンイミジルエステルを反応させて、次に挙げる細胞反応性コンプスタチン類似体を得ることができる。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-Lys-(C(=O)-(CH
2)
5-Mal)-NH
2(配列番号52)。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-(Gly)
5-Lys--(C(=O)-(CH
2)
5-Mal)-NH
2(配列番号53)。
【化7】
【化8】
【化9】
【0157】
他の態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体が、Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-Lys-C(=O)-CH2(OCH2CH2)2NH(C(=O)-(CH2)5-Mal)-NH2(配列番号57)と表される。
【0158】
本発明は配列番号38~57のバリアントを提供し、このバリアントは-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-が、他の任意のコンプスタチン類似体、例えば、配列番号3~27または29~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列に置き換わったものであるが、ただし、コンプスタチン類似体のN末端および/またはC末端に存在する遮断部分が存在しないもの、リンカー(遮断部分を含み得る)に置き換わったものあるいは対応するバリアント内に存在する異なるN末端またはC末端アミノ酸に結合したものであり得る。
【0159】
本発明の種々の態様で有用であり、細胞反応性部分としてのマレイミドと、アミン反応性部分としてのNHSエステルとを含む他の二官能性架橋剤は、例えば、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB);スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC);N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(GMBS)を含む。NHS環にスルホン酸を付加すると、スルホ-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート(スルホ-SIAB)、スルホ-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-SMCC)、スルホ-スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラート(スルホ-SMPB)、スルホ-N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)などの水溶性の類似体が得られ、有機溶媒の必要性がなくなる。本発明のある態様において、NHSエステル部分と分子の残りの部分との間にスペーサーアームを含む上記のいずれかの長鎖型を用いる。スペーサーは、例えばアルキル鎖を含み得る。例はスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロアート]である。
【0160】
ある態様において、NHSエステル(アミン反応性部分として)およびヨードアセチル基(スルフィドリル基と反応する)を含む二官能性リンカーを用いる。このようなリンカーは、例えば、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾアート(SIAB);スクシンイミジル6-[(ヨードアセチル)-アミノ]ヘキサノアート(SIAX);スクシンイミジル6-[6-(((ヨードアセチル)アミノ)-ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノアート(SIAXX);スクシンイミジル4-((ヨードアセチル)アミノ)メチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SIAC);スクシンイミジル6-((((4-(ヨードアセチル)アミノ)メチル-シクロヘキサン-1-カルボニル)アミノ)ヘキサノアート(SIACX)を含む。
【0161】
ある態様において、NHSエステル(アミン反応性部分として)およびピリジジスルフィド(基(スルフィドリル基と反応する細胞反応性部分として)を含む二官能性リンカーを用いる。その例は、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)ならびにNHS環上にスルホン酸を含みおよび/またはNHSエステル部分と分子の残りの部分との間にアルキル鎖を含むスペーサーを含む型のもの(例えば、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノアート)(LC-SPDP)を含む。追加の部分または異なる部分を含むこのようなリンカーの変形物を用いることができる。例えば、スペーサー内に比較的長いまたは短いアルキル鎖を用いる、あるいはアルキル鎖の代わりにオリゴ(エチレングリコール)部分を用いることができる。
【0162】
一般に、細胞反応性コンプスタチン類似体は、種々の方法を用いて合成することができる。細胞反応性官能基とリンカーを含む細胞反応性の化合物は、しばしば、予め形成された基礎的要素として購入することができる。例えば、6-マレメイドカプロン酸および6-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは各種供給業者から購入することが可能である。あるいは、当技術分野で公知の方法を用いて、このような化合物を合成することができる。例えば、Keller O, Rudinger J. Helv Chim Acta. 58(2): 531-41, 1975およびHashida S, et al., J Appl Biochem., 6(1-2): 56-63, 1984を参照のこと。このほか、コンジュゲート合成に有用な方法および試薬に関する考察については、Hermanson, G. supraおよびその中の引用文献を参照されたい。本発明は一般に、コンプスタチン類似体部分と細胞反応性官能基とを含む化合物を製造する任意の方法およびそれによって得られる化合物を包含する。
【0163】
ある態様において、側鎖に結合したリンカーを有するアミノ酸を直鎖状ペプチドの合成に用いる。直鎖状ペプチドは、当技術分野で公知であるペプチド合成の標準的な方法、例えば標準的な固相ペプチド合成を用いて合成することができる。次いで、直鎖状ペプチドを(例えば、Cys残基を酸化して分子内ジスルフィドを形成することにより)環化する。次いで、この環化合物を細胞反応性官能基を含むリンカーと反応させ得る。他の態様において、直鎖状化合物を環化する前に細胞反応性官能基を含む部分をこれと反応させる。一般に、細胞反応性コンプスタチン類似体の合成時に反応性官能基同士が望ましくない反応を起こさないよう適宜これを保護することができる。細胞反応性官能基、いずれかのアミノ酸側鎖および/またはペプチドの一端もしくは両端を反応時に保護し、その後それを脱保護することができる。例えば、Cys残基のSH基および/またはマレイミドなどのSH反応性部分の間で反応が起こらないよう、これを環化後まで保護することができる。適度な時間内に適度な収率が得られるように、少なくとも部分的には特定の反応性官能基の必要性に基づき反応条件を選択する。反応の所望の程度または速度が得られるように、温度、pHおよび試薬の濃度を調整することができる。例えば、Hermanson, supraを参照のこと。所望の生成物を精製して、例えば、細胞反応性官能基を含む未反応の化合物、未反応のコンプスタチン類似体、リンカー、反応で生じた所望の細胞反応性コンプスタチン類似体以外の生成物、反応混合物中に存在するその他の物質などを除去することができる。細胞反応性コンプスタチン類似体を製造するための組成物および方法ならびに合成における中間体は本発明の一面である。
【0164】
本発明のある面において、例えば化合物を安定化させる、その体内での寿命を延ばす、その溶解性を増大させる、その免疫原性を低減するおよび/または分解に対するその抵抗性を増大させるポリエチレングリコール(PEG)鎖またはその他のポリマーなどの部分を含むコンプスタチン類似体の製造に上記のリンカーを用いる。決して本発明を限定するものではないが、本明細書では、このような部分を“クリアランス低減部分”(CRM)と呼ぶことがあり、このような部分を含むコンプスタチン類似体を“長時間作用型コンプスタチン類似体”(LACA)と呼ぶことがある。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、ヒトまたは非ヒト霊長類に10mg/kgの投与量でまたは約1~3mg/kg、3~5mg/kg、5~10mg/kg、例えば、7mg/kgの投与量で静脈内投与したとき、少なくとも1日間、例えば、1~3日間、3~7日間、7~14日間または14~28日間の平均血漿半減期を有する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、ヒトまたは非ヒト霊長類に、例えば、約1~3mg/kg、3~5mg/kg、5~10mg/kg、例えば、7mg/kgの投与量で皮下投与したとき、少なくとも1日間、例えば、1~3日間、3~7日間、7~14日間または14~28日間の平均血漿半減期を有する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、ヒトまたは非ヒト霊長類に、例えば、約1~3mg/kg、3~5mg/kgまたは5~10mg/kg、例えば、7mg/kgの投与量で静脈内投与したとき、約4~10日間、5~9日間、5~8日間、6~9日間、7~9日間または8~9日間、例えば、約4日間、4.5日間、5日間、5.5日間、6日間、6.5日間、7日間、7.5日間、8日間、8.5日間、9日間、9.5日間または10日間の平均血漿半減期(例えば、終末相半減期)を有する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、ヒトまたは非ヒト霊長類に、例えば、約1~3mg/kg、3~5mg/kg、5~10mg/kg、例えば、7mg/kgの投与量で皮下投与したとき、約4~10日間、5~9日間、5~8日間、6~9日間、7~9日間または8~9日間、例えば、約4日間、4.5日間、5日間、5.5日間、6日間、6.5日間、7日間、7.5日間、8日間、8.5日間、9日間、9.5日間または10日間の平均血漿半減期(例えば、終末相半減期)を有する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、皮下注射後の一定期間の間に投与部位から広く吸収され、例えば、投与約1~2日目またはその後に、静脈内投与した同量の化合物で達成されるのと同等な血中濃度を達成することにより特徴付けられる。ある態様において、皮下投与約2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日またはそれ以降の時点またはそれ以降の血中濃度は、静脈内投与した同量の化合物で達成される血中濃度の約5%、10%、15%、20%または25%である。例えば、投与約1~2日後のここに記載する例示的化合物の静脈内および皮下投与の薬物動態を示す
図11を参照のこと。ある態様において、ヒトまたは非ヒト霊長類への10mg/kgの静脈内投与後の長時間作用型コンプスタチン類似体の平均血漿半減期は、同じアミノ酸配列(そして、該当する場合、1個以上の遮断部分)を有するが、CRMを有しない対応するコンプスタチン類似体と比較して、少なくとも2倍、例えば、2~5倍、5~10倍、10~50倍または50~100倍または100~150倍または150~200倍延長する。種々の態様において、このような半減期の延長は、皮下投与のような他の経路の投与および/または他の用量、例えば、他のここに記載する他の用量、例えば、20mg/kgを使用した後も観察され得ると理解される。
【0165】
上記のとおり、ある態様において、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかのコンプスタチン類似体は、N末端、C末端または両末端においてアミノ酸1個分以上延長されており、そのアミノ酸のうち少なくとも1個が、第一級もしくは第二級アミン、スルフィドリル基、カルボキシル基(カルボン酸基として存在し得る)、グアニジノ基、フェノール基、インドール環、チオエーテルまたはイミダゾール環などの反応性官能基を含む側鎖を有するものであり、これにより、CRMとコンプスタチン類似体とを結合させる反応性官能基との結合が促進される。CRMを含まない対応するコンプスタチン類似体が、それが対応する長時間作用型コンプスタチン類似体中に存在する1個以上のこのようなアミノ酸を欠くものであってもよいことが理解される。それゆえに、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかを含み、CRMを欠く対応するコンプスタチン類似体は、それぞれ配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aと“同じアミノ酸配列を有する”ことが理解される。例えば、配列番号14、21、28、29、32、33、34または3を有し、CRMを欠く対応するコンプスタチン類似体は、それぞれ配列番号14、21、28、29、32、33、34または36と“同じアミノ酸配列を有する”ことが理解される。
【0166】
ある態様において、血漿半減期とは単回静脈内投与後の終末相半減期のことである。ある態様において、血漿半減期とは、複数回静脈内投与後に定常状態に達した後の終末相半減期のことである。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、霊長類に単回静脈内投与した後または複数回静脈内投与した後、その血漿中CmaxがCRMを含まない対応するコンプスタチン類似体の血漿中Cmaxの少なくとも5倍、例えば、5~50倍に達する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、霊長類に単回静脈内投与した後または複数回静脈内投与した後、その血漿中CmaxがCRMを含まない対応するコンプスタチン類似体の血漿中Cmaxの10~20倍に達する。
【0167】
ある態様において、霊長類はヒトである。ある態様において、霊長類は非ヒト霊長類、例えば、カニクイザルまたはアカゲザルなどのサルである。
【0168】
ある態様において、ヒトまたは非ヒト霊長類への10mg/kgまたは20mg/kgが、対応するコンプスタチン類似体の腎クリアランスと比較して、少なくとも2倍、例えば、2~5倍、5~10倍、10~50倍または50~100倍または100~150倍または150~200倍減少する。種々の態様において、腎クリアランスのこのような減少は、クリアランス皮下投与のような他の経路の投与および/または他の用量、例えば、他のここに記載する他の用量、例えば、20mg/kgを使用した後も観察され得ると理解される。
【0169】
コンプスタチン類似体の濃度は、例えば、UV、HPLC、質量分析(MS)もしくはCRMに対する抗体またはLC/MSもしくはLC/MS/MSなどのこのような方法の組合せを用いて、血液サンプルおよび/または尿サンプル中で測定することができる。半減期およびクリアランスなどの薬物動態パラメータは、当業者に公知の方法を用いて明らかにすることができる。例えばWinNonlin software v 5.2 (Pharsight Corporation, St. Louis, MO)を用いて、薬物動態分析を実施することができる。
【0170】
ある態様において、CRMは、生理的条件で少なくとも24時間以上安定である。ある態様において、CRMは、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類(例えば、サル)血液、血漿または血清で、少なくとも24時間安定である。種々の態様において、CRM分子の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上が、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間以上生理的条件でインキュベート後にそのまま残る。種々の態様において、CRM分子の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上が、血液、血漿または血清中、37℃で48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間以上インキュベート後にそのまま残る。インキュベーションは、種々の態様において1μL/ml~約100mg/mlの濃度のCRMを使用して実施し得る。サンプルを種々の時点で分析し得る。サイズまたは無損傷を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、HPLC)、マススペクトロメトリー、ウエスタンブロットまたは任意の他の適切な方法を使用して評価し得る。このような安定性特性は、CRMに結合した部分に付与され得る。種々の態様において、CRMを含む長時間作用型コンプスタチン類似体は、上記安定性特性のいずれかを有し得る。ある面において、長時間作用型コンプスタチン類似体に関する完全さは、コンプスタチン類似体部分がCRMに結合したままであり、CRMサイズが、インキュベーションまたは投与開始時とほぼ同じままであることを意味する。
【0171】
ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、同じアミノ酸配列(および該当する場合は1個以上の遮断部分)を有するがCRMを含まない対応するコンプスタチン類似体の活性の少なくとも約10%、20%、30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上のモル活性を有する。長時間作用型コンプスタチン類似体が複数のコンプスタチン類似体部分を含むある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体のモル活性は、該コンプスタチン類似体部分の活性の合計の少なくとも約10%、20%または30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上である。
【0172】
ある態様において、ポリエチレングリコール(PEG)は、分子量が少なくとも500ダルトンの(CH2CH2O)n部分を含む。
【0173】
ある態様において、上記リンカーは、平均分子量が約500;1,000;1,500;2,000;5,000;10,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;~100,000ダルトンの(CH2CH2O)n部分を含む。
【0174】
ある態様において、PEGの平均分子量は、少なくとも20,000ダルトン、最大約100,000;120,000;140,000;160,000;180,000;または200,000ダルトンである。“平均分子量”は数平均分子量をいう。ある態様において、(CH2CH2O)n部分の多分散度Dが1.0005~1.50、例えば、1.005~1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.40もしくは1.50であるか、1.0005~1.50の間のいずれかの値をとる。
【0175】
ある態様において、(CH2CH2O)n部分が単分散であり、(CH2CH2O)n部分の多分散度は1.0である。このような単分散の(CH2CH2O)n部分は当技術分野において公知であり、Quanta BioDesign(Powell, OH)から購入可能であり、またその非限定的な例として、nが2、4、6、8、12、16、20または24である単分散部分を含む。
【0176】
ある態様において、化化合物は複数の(CH2CH2O)n部分を含み、該(CH2CH2O)n部分の総分子量が約1,000;5,000;10,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;~100,000ダルトンである。ある態様において、化合物または(CH2CH2O)n部分の平均総分子量は少なくとも20,000ダルトン、最大約100,000;120,000;140,000;160,000;180,000;または200,000ダルトンである。ある態様において、ある態様において、化合物は、定められた長さ、例えば、n=4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28もしくは30またはそれ以上の長さの(CH2CH2O)n部分を複数含む。ある態様において、化合物は、定められた長さの(CH2CH2O)n部分を、該(CH2CH2O)n部分の総分子量が約1,000;5,000;10,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;100,000ダルトンになる程度の数だけ含む。ある態様において、化合物または(CH2CH2O)n部分の平均総分子量は、少なくとも20,000ダルトン、最大約100,000;120,000;140,000;160,000;180,000;または200,000ダルトンである。ある態様において、nが約30~約3000である。
【0177】
ある態様において、コンプスタチン類似体部分が直鎖状PEGの各末端に結合している。例えば上記のとおり、鎖の各末端に反応性官能基を有する二官能性PEGを用いることができる。ある態様において、反応性官能基が同じものであるが、ある態様において、各末端に異なる反応性官能基が存在する。
【0178】
ある態様において、複数の(CH2CH2O)n部分が分枝構造で与えられる。分枝は直鎖状ポリマー骨格に付加されているもの(例えば、櫛形構造)であっても、1個以上の中核となる基から生じているもの(例えば、星形構造)であってもよい。ある態様において、分枝状分子が(CH2CH2O)n鎖を3~10本有する。ある態様において、分枝状分子が(CH2CH2O)n鎖を4~8本有する。ある態様において、分枝状分子が(CH2CH2O)n鎖を10本、9本、8本、7本、6本、5本、4本または3本有する。ある態様において、星形分子が、中核となる基から生じている(CH2CH2O)n鎖を10~100本、10~50本、10~30本または10~20本有する。したがって、ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、それぞれが鎖末端の官能基を介して(CH2CH2O)n鎖と結合したコンプスタチン類似体部分を、例えば、3~10個、例えば4~8個含み得る。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、それぞれが鎖末端の官能基を介して(CH2CH2O)n鎖と結合したコンプスタチン類似体部分を、10~100個含み得る。ある態様において、分枝状または星形のPEGの分枝(“アーム”と呼ばれることもある)が(CH2CH2O)部分をほぼ同数含む。ある態様において、少なくとも一部の分枝の長さが異なっていてもよい。ある態様において、1個以上の(CH2CH2O)n鎖がそれと結合したコンプスタチン類似体部分を有さないことが理解される。ある態様において、鎖の少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%がそれと結合したコンプスタチン類似体部分を有する。
【0179】
本明細書に記載される化合物群および化合物では、酸素原子を反復単位の右側または反復単位の左側にしてポリエチレングリコール部分が描かれている。一配向のみが描かれる場合でも、本発明はある化合物または化合物群の両配向のポリエチレングリコール部分(すなわち、(CH2CH2O)nおよび(OCH2CH2)n)を包含し、また化合物または化合物群が複数のポリエチレングリコール部分を含む場合、あらゆる配向の組み合わせが本開示に包含される。
【0180】
反応性官能基を含む単官能性PEGの例の式を以下にいくつか図示する。例示を目的に、反応性官能基がNHSエステルを含む式が図示されているが、例えば上記のような他の反応性官能基を用いることも可能である。ある態様において、(CH2CH2O)nは、左端がメトキシ基(OCH3)で終わるように図示されているが、以下または本明細書の他の箇所に図示される鎖が異なるOR部分(例えば、脂肪族基、アルキル基、低級アルキル基または他の任意の適度なPEG末端基)またはOH基で終わっていてもよいことが理解される。また、種々の態様において、図示されているもの以外の部分が(CH2CH2O)n部分とNHS基を接続し得ることも理解される。
【0181】
ある態様において、単官能性PEGは式A
【化10】
のPEGであり、式中、
“反応性官能基”およびnは上で定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されているとおりのものであり;
R
1は水素、脂肪族または任意の適切な末端基であり;
Tは、共有結合であるか、あるいはTの1個以上の炭素単位が所望により独立して-O-、-S-、-N(R
x)-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-N(R
x)C(O)-、-C(O)N(R
x)-、-S(O)-、-S(O)
2-、-N(R
x)SO
2-またはSO
2N(R
x)-に置き換わっているC
1-12の直鎖状または分枝状炭化水素鎖であり;
R
xはそれぞれ独立して、水素またはC
1-6脂肪族である。
【0182】
【0183】
式Iでは、反応性官能基を含む部分は、mが2である一般構造-CO-(CH
2)
m-COO-NHSを有する。ある態様において、単官能性PEGが式Iの構造を有し、式中、mは1~10、例えば1~5である。例えば、ある態様において、下記のとおり、mが3である。
【化12】
【化13】
【0184】
式IIにおいて、反応性官能基を含む部分は、mが1である一般構造-(CH
2)
m-COO-NHSを有する。ある態様において、単官能性PEGが式IIの構造を有し、式中、mは1~10であるか(例えば、下の式IIIに示すようにmが5である)、mが0である(下の式IIIaに示す)。
【化14】
【化15】
【0185】
ある態様において、二官能性の直鎖状PEGが、反応性官能基を含む部分をその両端に含む。反応性官能基は同じもの(ホモ二官能性)であっても、異なるもの(ヘテロ二官能性)であってもよい。ある態様において、二官能性PEGの構造は対称性のものであり得、この構造では、反応性官能基と-(CH2CH2O)n鎖の各末端にある酸素原子とが同じ部分を用いて接続されている。ある態様において、2個の反応性官能基と分子のPEG部分とが異なる部分を用いて接続されている。例となる二官能性PEGの構造を下に図示する。例示を目的に、反応性官能基がNHSエステルを含む式が図示されているが、他の反応性官能基を用いることも可能である。
【0186】
ある態様において、二官能性直鎖状PEGは式B
【化16】
のPEGであり、式中、Tおよび“反応性官能基”はそれぞれ独立して、上で定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されているとおりのものであり、nは上で定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されているとおりのものである。
【0187】
【0188】
式IVにおいて、反応性官能基を含む部分は、mが1である一般構造-(CH
2)
m-COO-NHSを有する。ある態様において、二官能性PEGが式IVの構造を有し、式中、mは1~10、例えば1~5である。ある態様において、mは0であり、例えば、ある態様において、反応性官能基を含む部分は一般構造-COO-NHSを有する。例えば、ある態様において、二官能性PEGは、下に示す式IVaの構造を有する。
【化18】
【化19】
【0189】
式Vにおいて、反応性官能基を含む部分は、mが2である一般構造-CO-(CH
2)
m-COO-NHSを有する。ある態様において、二官能性PEGが式Vの構造を有し、式中、mは1~10、例えば1~5である。ある態様において、例えば、下記のとおりmは2である。
【化20】
【0190】
ある態様において、本発明は、ポリマーに結合したコンプスタチン類似体を提供する。ある態様において、ここに示されるPEG含有化合物および化合物群のコンプスタチン類似体コンジュゲートを提供する。ある態様において、コンプスタチン類似体上の官能基(例えば、アミン基、ヒドロキシル基またはチオール基)と本明細書に記載の“反応性官能基”を有するPEG含有化合物とを反応させて、このようなコンジュゲートを製造する。例として、式IIIおよびIVはそれぞれ、次の構造
【化21】
または
【化22】
を有するコンプスタチン類似体コンジュゲートを形成することができ、式中、
【化23】
はコンプスタチン類似体上のアミン基の結合点を表す。ある態様において、アミン基はリジン側鎖基である。
【0191】
ここに示されるPEG含有化合物および化合物群のいずれかを用いて、反応性官能基および/またはコンプスタチン官能基の選択に応じ、それに対応するコンジュゲートを形成し得ることが理解される。例えば、式IVaおよびVaは、それぞれ、次の構造を有するコンプスタチン類似体コンジュゲートを形成し得る。
【化24】
【化25】
【0192】
ある態様において、このようなコンジュゲートのPEG要素は、約20kD~100kD、約20kD~90kD、約20kD~80kD、約20kD~70kD、約20kD~60kD、約20kD~50kD、約30kD~80kD、約30kD~70kD、約30kD~60kD、約30kD~50kD、約30kD~45kD、約35~50kD、約35~45kD、約36~44kD、約37~43kD、約38~42kDまたは約39~41kDの平均分子量を有する。ある態様において、このようなコンジュゲートのPEG要素は、約40kDの平均分子量を有する。
【0193】
用語“二官能性”または“二官能性化”は、CRMに結合した2個のコンプスタチン類似体部分を含む化合物をいうために使用することがある。このような化合物は、“BF”なる文字で示し得る。ある態様において、二官能性化合物は対称的である。ある態様において、二官能性化合物のCRMと各コンプスタチン類似体部分の間の結合は同じである。ある態様において、二官能性化合物のCRMとコンプスタチン類似体の各結合はカルバメートを含む。ある態様において、二官能性化合物のCRMとコンプスタチン類似体の各結合はカルバメートを含み、エステルを含まない。ある態様において、二官能性化合物の各コンプスタチン類似体は、カルバメートを介してCRMに直接結合する。ある態様において、二官能性化合物の各コンプスタチン類似体は、カルバメートを介してCRMに直接結合し、二官能性化合物は次の構造を有する。
【化26】
【0194】
ここに記載する式のある態様および態様において、
【化27】
は、構造
【化28】
を有するコンプスタチン類似体におけるリシン側鎖基の結合点を表し、ここで、記号“~”は、化学部分の分子または化学式の残りへの結合点を表す。
【0195】
ある態様において、分枝した櫛形または星形のPEGは、反応性官能基を含む部分を複数の各-(CH
2CH
2O)
n鎖の末端に含む。反応性官能基は同じものであってもよく、あるいは少なくとも2個の異なる基が存在してもよい。ある態様において、分枝した櫛形または星形のPEGは、下式
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0196】
のPEGであり、式中、R
2はそれぞれ独立して、“反応性官能基”またはR
1であり、T、nおよび“反応性官能基”はそれぞれ独立して、上で定義され、本明細書のクラスおよびサブクラスに記載されているとおりのものである。反応性官能基としてNHS部分を含む分枝PEG(8個のアームまたは分枝を有する)の例の構造を下に図示する。
【化35】
【化36】
【0197】
反応性官能基としてNHS部分を含む分枝PEG(4個のアームまたは分枝を有する)の例の構造を下に図示する。
【化37】
【化38】
【0198】
骨格から生じる分枝の数は様々であり得る。例えば、上式VIおよびVIIの分枝数4を様々な態様において、0~10の他の任意の整数に変化させてもよい。ある態様において、1個以上の分枝が反応性官能基を含まず、その分枝は上記のとおり-CH2CH2OH基または-CH2CH2OR基で終わっている。
【0199】
ある態様において、分枝PEGが式VII、VIIIまたはIX(または分枝の数が異なるそのバリアント)の構造を有しするが、ただしxが
【化39】
である。
【0200】
ある態様において、分枝PEGが式VII、VIIIまたはIX(または分枝の数が異なるそのバリアント)の構造を有するが、ただし、xが
【化40】
である。
【0201】
当然のことながら、上記x部分のメチレン(CH2)基が代わりにこれより長いアルキル鎖(CH2)m(mは2、3、4、5、6、8、10、20または30以下である)を含んでもよく、あるいはここに記載の他の部分を1個以上含んでもよい。
【0202】
ある態様において、NHS反応基またはマレイミド反応基を有する分枝PEGの例が次のように図示される。
【化41】
【化42】
【0203】
ある態様において、4本の分枝のうちの3本または各分枝が反応性官能基を含む式XまたはXIのバリアントを用いる。
【0204】
PEGのさらに別の例が次のとおりに表される。
【化43】
【化44】
【0205】
上記のとおり、ここに記載するとおり、様々な態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体のペプチド成分と(CH2CH2O)n-R部分との間に、直鎖状アルキル、エステル、アミド、芳香環(例えば、置換もしくは非置換フェニル)、置換もしくは非置換シクロアルキル構造またはこれらの組合せなどの各種部分のいずれかを組み込み得ることが理解される。ある態様において、このような部分が化合物の加水分解に対する感受性を高め、これにより化合物のペプチド部分がCRMから解離し得る。ある態様において、このような解離がインビボでの組織への浸透性および/または化合物の活性を増大させ得る。ある態様において、加水分解は一般的な(例えば、酸-塩基)加水分解である。ある態様において、加水分解は酵素触媒によるもの、例えばエステラーゼ触媒によるものである。当然のことながら、加水分解が2種類とも生じる場合がある。1個以上のこのような部分と反応性官能基としてのNHSエステルとを含むPEGの例には次のものがある。
【0206】
【0207】
ある態様において、分枝状(多アーム)PEGまたは星形PEGは、ペンタエリスリトール核、ヘキサグリセリン核またはトリペンタエリトリトール核を含む。ある態様において、分枝がすべて単一の点から生じているとは限らないことが理解される。
【0208】
反応性官能基を1個以上含む一官能性、二官能性、分枝状およびその他のPEGは、ある態様において、例えば、特に、NOF America Corp. White Plains, NYまたはBOC Sciences 45-16 Ramsey Road Shirley, NY 11967, USAから入手するか、当技術分野で公知の方法を用いて調製することができる。
【0209】
ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はカルバメートを含む。ある態様において、コンプスタチン類似体は、カルバメートを介してCRMに直接結合する。ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はエステルを含まない。ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はカルバメートを含み、エステルを含まない。ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はカルバメートを含み、水性媒体中でカルバメートよりも加水分解を受けやすい結合を含まない。ある態様において、CRMはPEG部分を含むまたはこれからなる。
【0210】
ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はアミドを含む。ある態様において、コンプスタチン類似体は、アミドを介してCRMに直接結合する。ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はアミドを含み、エステルを含まない。ある態様において、CRMとコンプスタチン類似体の結合はアミドを含み、水性媒体中でアミドよりも加水分解を受けやすい結合を含まない。ある態様において、CRMはPEG部分を含むまたはこれからなる。
【0211】
ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、カルバメートを含む結合を介してCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、エステルを含まない結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、カルバメートを含み、エステルを含まない結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、カルバメートを含み、水性媒体中でカルバメートよりも加水分解を受けやすい結合を含まない結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)の各コンプスタチン類似体は、カルバメートを介してCRMに直接結合する。
【0212】
ある態様において、CRMはPEG部分を含むまたはこれからなる。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、アミドを含む結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、アミドを含み、エステルを含まない結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)であるコンプスタチン類似体の1個以上は、アミドを含み、水性媒体中でアミドよりも加水分解を受けやすい結合を含まない結合によりCRMに結合する。ある態様において、多官能化化合物(例えば、二官能化、三官能化またはさらに広く官能化された化合物)の各コンプスタチン類似体は、アミドを介してCRMに直接結合する。ある態様において、CRMはPEG部分を含むまたはこれからなる。
【0213】
ある態様において、本発明は、PEG以外であるポリマーと結合したコンプスタチン類似体を提供する。ある態様において、ポリマーは、ポリオキサゾリン(POZ)である。直接結合またはリンカーを介する結合のための単および多官能化ポリオキサゾリン誘導体の例を次に示す。
Z-T-[N(CORx)CH2CH2]n-T-R1;
R1-{[N(CO-T-Z)CH2CH2]m-[N(CORx)CH2CH2]n}a-T-R1;
R1-{[N(CO-T-Z1)CH2CH2]p-[N(CORx)CH2CH2]n-[N(CO-T-Z2)CH2CH2]m}a-T-R1;
R1-{[N(CO-T-Z1)CH2CH2]p-[N(CORx)CH2CH2]n-[N(CO-T-Z2)CH2CH2]m}a-T-Z;
R1-[N(CORx)CH2CH2]n-T-B(-R1)(-T-Z)-T-[N(CORx)CH2CH2]m-R1
〔式中
Z、Z1およびZ2の各々は、上に定義し、ここで群または下位群で記載する反応性官能基であり;
T、RxおよびR1の各々は、上に定義し、ここで群または下位群で記載したものであり;
m、nおよびpの各々は整数0~1000であるが、各式におけるm、nおよびpの合計が0ではなく;
aは、ランダムコポリマーを示す“ran”またはブロックコポリマーを示す“block”であり;
Bは、ポリマーの他の部分にリンカーによりまたはリンカー無しで結合する分枝部分である。〕。
【0214】
結合のための官能化ポリオキサゾリン誘導体の他の例は、各々の内容を引用により本明細書に包含させるPCT特許出願公開番号WO/2010/006282、WO/2009/089542、WO/2009/043027およびWO/2008/106186に記載されているものを含むが、これらに限定されない。
【0215】
ポリオキサゾリンポリマーとのコンプスタチン類似体コンジュゲートの例を下に示す。
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
〔式中、各可変基は、上に定義し、ここで群または下位群で記載したものである。〕。
【0216】
ある態様において、本発明は、コンプスタチン類似体が1個以上のリンカーを介してポリマーに結合している、ポリマーと結合したコンプスタチン類似体を提供する。ある態様において、ポリマーは、上に、そして群または下位群で記載したPEG含有化合物および群である。ある態様において、本発明は、コンプスタチン類似体はPEG含有部分に1個以上のリンカーを介して結合している、ここに記載するPEG含有化合物および化合物群のコンプスタチン類似体コンジュゲートを提供する。結合のための1個以上の反応性官能基を含む単および多官能性PEGは、上に定義し、ここに群または下位群で記載で記載しており、式A、I、Ia、II、III、IIIa、B、IV、IVa、V、Va、C、D、E、F、G、H、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのものを含むが、これらに限定されない。
【0217】
コンプスタチン類似体とPEGまたはポリオキサゾリンのようなポリマー部分を結合させるための適切なリンカーは、上に、そして群および下位群でここに広く記載する。ある態様において、リンカーは複数官能基を有し、ここで、1個の官能基がコンプスタチン類似体に結合し、他がポリマー部分に結合する。ある態様において、リンカーは二官能化化合物である。ある態様において、リンカーはNH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OH(ここで、nは1~1000である)の構造を有する。ある態様において、リンカーは8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)である。ある態様において、リンカーは、ポリマー部分またはコンプスタチン類似体の官能基との結合のために活性化される。例えば、ある態様において、AEEAcのカルボキシル基は、リシン基の側鎖のアミン基で、結合の前に活性化される。
【0218】
ある態様において、コンプスタチン類似体上の適切な官能基(例えば、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基またはカルボン酸基)を、直接的またはリンカーを介するポリマー部分との結合に使用する。ある態様において、コンプスタチン類似体を、リンカーを介してアミン基を介してPEG部分に結合させる。ある態様において、アミン基は、アミノ酸残基のαアミノ基である。ある態様において、アミン基は、リシン側鎖のアミン基である。ある態様において、コンプスタチン類似体を、NH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OH(ここで、nは1~1000である)の構造を有するリンカーを介して、リシン側鎖のアミノ基(εアミノ基)を介してPEG部分に結合する。ある態様において、コンプスタチン類似体を、AEEAcリンカーを介して、リシン側鎖のアミノ基を介してPEG部分に結合させる。ある態様において、NH2(CH2CH2O)nCH2C(=O)OHリンカーは、結合後、コンプスタチンリシン側鎖に-NH(CH2CH2O)nCH2C(=O)-部分を挿入する。ある態様において、AEEAcリンカーは、結合後、コンプスタチンリシン側鎖に-NH(CH2CH2O)2CH2C(=O)-部分を挿入する。
【0219】
ある態様において、コンプスタチン類似体を、ポリマー部分にリンカーを介して結合させ、ここで、リンカーはAEEAc部分およびアミノ酸残基を含む。ある態様において、コンプスタチン類似体を、ポリマー部分にリンカーを介して結合させ、ここで、リンカーはAEEAc部分およびリシン残基を含む。ある態様において、ポリマーはPEGである。ある態様において、コンプスタチン類似体のC末端がAEEAcのアミノ基に結合し、AEEAcのC末端がリシン残基に結合する。ある態様において、コンプスタチン類似体のC末端がAEEAcのアミノ基に結合し、AEEAcのC末端がリシン残基のαアミノ基に結合する。ある態様において、コンプスタチン類似体のC末端がAEEAcのアミノ基に結合し、AEEAcのC末端がリシン残基のαアミノ基に結合し、PEG部分のようなポリマー部分が、該リシン残基のεアミノ基を介して結合する。ある態様において、リシン残基のC末端が修飾されている。ある態様において、リシン残基のC末端が修飾byアミド化。ある態様において、コンプスタチン類似体のN末端が修飾されている。ある態様において、コンプスタチン類似体のN末端がアセチル化されている。
【0220】
AEEAcリンカーおよびポリマーを含むコンジュゲートの例を下に記載し、ここで、
【化52】
がコンプスタチン類似体上のアミン基の結合点を示し、
【化53】
が、そのC末端を介して結合するコンプスタチン類似体を示し、他の可変基の各々は、独立して上に定義し、ここに群および下位群で記載するとおりである。ある態様において、アミン基はリシン側鎖のアミノ基である。
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【0221】
ある態様において、コンプスタチン類似体をM-AEEAc-Lys-B2と表すことができ、ここで、B2は遮断部分、例えば、NH2であり、Mは配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかであるが、ただし、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41AのいずれかのC末端アミノ酸が、ペプチド結合を介してAEEAc-Lys-B2に結合する。単官能性または多官能性(例えば、二官能性)PEGのNHS部分は、リシン側鎖の遊離アミンと反応して、単官能化(単コンプスタチン類似体部分)または多官能化(複数コンプスタチン類似体部分)長時間作用型コンプスタチン類似体を生じる。種々の態様において、反応性官能基を含む側鎖を含むあらゆるアミノ酸をLysの代わりに(またはLysに加えて)使用し得る。適切な反応性官能基を含む単官能性または多官能性PEGを、このような側鎖と、NHS-エステル活性化PEGとLysの反応に準ずる方法で反応させ得る。
【0222】
上記式および構造のいずれかにおいて、コンプスタチン類似体成分がここに記載するコンプスタチン類似体のいずれか、例えば、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40A、41Aのコンプスタチン類似体のいずれかを含む態様は明示的に開示されると理解される。例として、限定しないが、コンプスタチン類似体は配列番号28のアミノ酸配列を含み得る。コンプスタチン類似体成分が配列番号28のアミノ酸配列を含む長時間作用型コンプスタチン類似体の例を
図10(C)に示す。PEG部分は、種々の態様において、ここに記載するとおり、多様な異なる分子量または平均分子量を有し得ると理解される。例えば、ここに記載するとおり、製剤中の個々のPEG鎖は分子量が異なってよいおよび/または異なる製剤は異なる平均分子量および/または多分散性を有してよい。ある態様において、
図10(C)の化合物におけるPEG部分は、約20~100kD、約20~90kD、約20~80kD、約20~70kD、約20~60kD、約20~50kD、約30~80kD、約30~70kD、約30~60kD、約30~50kD、約30~45kD、約35~50kD、約35~45kD、約36~44kD、約37~43kD、約38~42kDまたは約39~41kDの平均分子量を有する。ある態様において、
図10(C)の化合物におけるPEG部分は、約30~約50kD、例えば、約35~約45kD、約37.5~約42.5kDの平均分子量を有する。約40kD、例えば、37.5~42.5kD、38kD、39kD、40kD、41kD、42kDの平均分子量を有するある態様において、該化合物をここではCA28-2TS-BFと呼ぶことがある。約40kD、例えば、37.5~42.5kD、38kD、39kD、40kD、41kD、42kDの平均分子量を有するCRM、例えば、PEG部分を含む化合物のある態様において、該化合物は、例えば、約1~3mg/kg、3~5mg/kgまたは5~10mg/kgの用量で、非ヒト霊長類またはヒトに静脈内または皮下投与したとき、少なくとも約5日間、例えば、約5~10日間、例えば、約5日間、6日間、7日間、8日間、9日間の終末相半減期を有する。
【0223】
ある面において、本発明は、コンプスタチン類似体と関係したクリック化学の使用に関する。“クリック化学”は当分野で周知であり、本発明のある面において有用である。クリック化学は、ある態様において、アジドとアルキンの間の多彩なシクロ付加反応を具現化し、多くの有用な適用を可能にする。クリック化学を実施する方法は当分野で知られ、各々その全体を引用により本明細書に包含させるKolb, H.C.; Sharpless, K.B., Drug Disc. Today, 2003, 1128-1137; Moses, J.E.; Moorhouse, A.D.; Chem. Soc. Rev., 2007, 1249-1262に記載されている。クリック化学は、生物学的媒体中でさえ高いその反応性および選択性のために、バイオ結合で人気の高い方法である。Kolb, H.C.; Finn, M.G.; Sharpless, K.B. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2004-2021; and Wang, Q.; Chan, T. R.; Hilgraf, R.; Fokin, V. V.; Sharpless, K. B.; Finn, M. G. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 3192-3193参照。さらに、現在利用可能な組み換え技術および合成方法は、アジドおよびアルキン含有非古典的アミノ酸の、ペプチド、タンパク質、細胞、ウイルス、細菌および他のタンパク質からなるまたはタンパク質をディスプレイする生物学的物質への導入を可能にする。Link, A. J.; Vink, M. K. S.; Tirrell, D. A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 10598-10602; Deiters, A.; Cropp, T. A.; Mukherji, M.; Chin, J. W.; Anderson, C.; Schultz, P. G. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11782-11783を参照のこと。
【0224】
ここで使用する用語“クリック化学基”は、適当な第二の反応性官能基とのクリック化学反応に参加することができる反応性官能基をいうために使用することがあり、該第二の反応性官能基もクリック化学基である。第一および第二クリック化学基またはこのような基を含む物質(例えば、分子)を相補性と呼び得る。相補性クリック化学基を含む第一および第二物質、例えば、分子は、クリック化学パートナーと呼び得る。クリック化学基を含む物質または分子を“クリック官能化”と呼び得る。相補性クリック化学パートナーの反応により形成された結合を“クリック化学結合”と呼び得る。
【0225】
ある態様において、本発明は、例えば、パートナー分子または生体分子上の相補性部分への結合のために、クリック官能化コンプスタチン類似体を提供する。ある態様において、相補性パートナー分子または生体分子は、クリアランス減少部分として機能するポリマー、ペプチド、タンパク質または分子である。ある態様において、“クリック官能化”部分は、相補性アジド含有分子および生体分子との[3+2]シクロ付加反応に付され得るアルキンまたはアルキン誘導体である。他の態様において、“クリック官能化”官能性は、相補性アルキン含有分子および生体分子との[3+2]シクロ付加反応(すなわちクリック化学)に付され得るアジドまたはアジド誘導体である。
【0226】
ある態様において、クリック官能化コンプスタチン類似体は、コンプスタチン類似体の側鎖基のいずれかにアジド基を有する。ある態様において、クリック官能化コンプスタチン類似体は、リシン側鎖基にアジド基を有する。
【0227】
ある態様において、クリック官能化コンプスタチン類似体は、コンプスタチンコンプスタチン類似体の側鎖基のいずれかにアルキン基を有する。ある態様において、クリック官能化コンプスタチン類似体は、リシン側鎖基にアルキン基を有する。
【0228】
ある態様において、本発明は、コンプスタチン類似体、クリアランス減少部分として機能する分子およびトリアゾールリンカーを含むコンプスタチンコンジュゲートを提供する。ある態様において、トリアゾールリンカーは、コンプスタチンコンジュゲートとクリアランス減少部分として機能する分子の間のクリック結合化学の結果である。ある態様において、CRMは、ここに開示する任意のCRMであり得る。例えば、CRMはPEG、ポリペプチドまたはPOZであり得る。
【0229】
ある態様において、本発明は、コンプスタチン類似体、PEG部分およびトリアゾールリンカーを含むコンプスタチンコンジュゲートを提供する。ある態様において、トリアゾールリンカーは、コンプスタチンコンジュゲートとPEG部分の間のクリック結合化学の結果である。
【0230】
ある態様において、本発明は、コンプスタチン類似体、ポリオキサゾリン部分およびトリアゾールリンカーを含むコンプスタチンコンジュゲートを提供する。ある態様において、トリアゾールリンカーは、コンプスタチンコンジュゲートとポリオキサゾリン部分の間のクリック結合化学の結果である。
【0231】
ある態様において、コンプスタチン類似体と他の部分の間のクリック化学は遷移金属により触媒される。“クリック”反応を触媒する銅含有分子は、銅線、臭化銅(CuBr)、塩化銅(CuCl)、硫酸銅(CuSO4)、硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)、酢酸銅(Cu2(AcO4)、ヨウ化銅(CuI)、[Cu(MeCN)4](OTf)、[Cu(MeCN)4](PF6)、コロイド性銅源および固定化銅源を含むが、これらに限定されない。ある態様において、他の金属、例えばルテニウムである。還元剤ならびに有機および無機金属結合リガンドを、金属触媒と共に使用でき、アスコルビン酸ナトリウム、トリス(トリアゾリル)アミンリガンド、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、バトフェナントロリンスルホン酸リガンドおよびベンゾイミダゾールベースのリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0232】
ある態様において、コンプスタチン類似体を、無金属クリック化学(別名無銅クリック化学)を使用して他の部分と結合し、無金属組成物またはコンジュゲートを得る。銅補助クリック化学(CuACC)としても知られる標準クリック化学とは対照的に、無金属クリック化学はオキサノルボルナジエンのような歪んだ、環状アルキンまたはアルキン前駆体とアジド基の間で起こる。名前が示すとおり、反応が起こるために金属触媒は必要ではない。このような化学の例は、シクロオクチン誘導体(Codelli, et. al. J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 11486-11493; Jewett, et. al. J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 3688-3690; Ning, et. al. Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 2253-2255)、ジフルオロ-オキサノルボルネン誘導体(van Berkel, et. al. ChemBioChem, 2007, 8, 1504-1508)またはニトリルオキシド誘導体(Lutz, et. al. Macromolecules, 2009, 42, 5411-5413)を含む反応を含む。ある態様において、無金属クリック化学反応は、無金属[3+2]シクロ付加反応、ディールス・アルダー反応またはチオール-アルケンラジカル付加反応である。クリック化学反応およびクリック化学基の例は、例えば、Joerg Lahann, Click Chemistry for Biotechnology and Materials Science, 2009, John Wiley & Sons Ltd, ISBN 978-0-470-69970-6; Becer, Hoogenboom, and Schubert, Click Chemistry beyond Metal-Catalyzed Cycloaddition, Angewandte Chemie International Edition (2009) 48: 4900 - 4908に記載されている。ある態様において、クリック化学基はジアリールシクロオクチンを含む。
【0233】
無金属クリック化学のある種の例を下のスキームに示す。
【化70】
【0234】
ある種の無金属クリック部分は文献で知られる。例は、4-ジベンゾシクロオクチノール(DIBO)
【化71】
(Ning et. al; Angew Chem Int Ed, 2008, 47, 2253から);ジフルオロシクロオクチン類(DIFOまたはDFO)
【化72】
(Codelli, et. al.; J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 11486-11493から);ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)
【化73】
(Jewett et. al.; J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 3688から);またはビシクロノニン(BCN)
【化74】
(Dommerholt, et. al.; Angew Chem Int Ed, 2010, 49, 9422-9425)またはジベンジルシクロオクチン(DBCO)
【化75】
を含む。
【0235】
DBCOとアジドの反応を含む反応スキームを下に示す。
【化76】
【0236】
上記スキームにおいて、種々の態様において、Aはコンプスタチン類似体部分を含むかまたはこれからなってよく、BはCRM、例えば、PEGまたはPOZのようなポリマーまたはポリペプチドを含むかまたはこれからなってよくまたはBはコンプスタチン類似体部分を含むかまたはこれからなってよく、AはCRM、例えば、PEGまたはPOZのようなポリマーまたはポリペプチドを含むかまたはこれからなってよい。
【0237】
ある態様において、“無金属クリック官能化”部分は、金属触媒を用いることなく、相補性アジド含有分子および生体分子と[3+2]シクロ付加反応に付され得るアセチレンまたはアセチレン誘導体である。
【0238】
ある態様において、無金属クリック化学試薬のR基およびR’基はコンプスタチン類似体またはコンプスタチン類似体が結合し得るここに記載した任意の分子であり得る。ある態様において、このようなコンプスタチン類似体は、リシン側鎖にクリック官能化部分を有する。ある態様において、このようなコンプスタチン類似体は、リンカーを介してクリック官能化部分に結合する。ある態様において、このようなコンプスタチン類似体は、AEEAcを介してクリック官能化部分に結合する。
【0239】
ある態様において、クリック化学試薬はDBCOを含む。試薬の例およびその使用例を下に示す。
【化77】
DBCO-酸。ある態様において、DBCO-酸をアミン含有部分との反応のために使用し得る。
【0240】
【化78】
DBCO-NHSエステル(上記)またはDBCO-スルホ-NHSエステル(下記)を、
DBCO官能性を、リシン残基を含むコンプスタチン類似体またはポリペプチドのようなアミン含有分子に包含させるために使用し得る。
【0241】
【0242】
【化80】
DBCO-PEG4-NHSエステル。ある態様において、このような試薬は、利用可能なアミン官能性との反応によるDBCO部分の取り込みに有用である。ある面において、親水性スペーサーとしてのPEG鎖の存在は、例えば、溶解度上昇または柔軟性提供のために有用であり得る。
【0243】
【化81】
DBCO-アミン。ある態様において、クリック化学試薬は、酸、活性エステルおよび/またはアルデヒドと反応し得るカルボニル/カルボキシル反応性ジベンジルシクロオクチンを含む。
【0244】
ある態様において、クリック化学反応は、下記シクロオクチンを含む。
【化82】
【0245】
ある態様において、クリック化学反応は、ニトロンとシクロオクチンの反応(例えば、Ning, Xinghai; Temming, Rinske P.; Dommerholt, Jan; Guo, Jun; Ania, Daniel B.; Debets, Marjoke F.; Wolfert, Margreet A.; Boons, Geert-Jan et al. (2010). “Protein Modification by Strain-Promoted Alkyne-Nitrone Cycloaddition”. Angewandte Chemie International Edition 49 (17): 3065参照)、アルデヒドおよびケトン、テトラジンライゲーションからのオキシム/ヒドラゾン形成(例えば、Blackman, Melissa L.; Royzen, Maksim; Fox, Joseph M. (2008). “The Tetrazine Ligation: Fast Bioconjugation based on Inverse-electron-demand Diels-Alder Reactivity”. Journal of the American Chemical Society 130 (41): 13518-9参照)、テトラゾールライゲーション、イソニトリルベースのクリック反応(例えば、Stackmann, Henning; Neves, Andre A.; Stairs, Shaun; Brindle, Kevin M.; Leeper, Finian J. (2011). “Exploring isonitrile-based click chemistry for ligation with biomolecules”. Organic & Biomolecular Chemistry 9 (21): 7303参照)およびクアドリシクランライゲーション(例えば、Sletten, Ellen M.; Bertozzi, Carolyn R. (2011). “A Bioorthogonal Quadricyclane Ligation”. Journal of the American Chemical Society 133 (44): 17570-3参照)を含む。ある態様において、クリック化学反応は、シュタウディンガーライゲーション(ホスフィン-アジド)である。
【0246】
あらゆるコンプスタチン類似体を、種々の態様においてクリック化学基を取り込むために修飾し得る。例えば、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aのいずれかの配列を含むコンプスタチン類似体をこのように修飾し得る。ある態様において、任意のこのような配列は、さらに、リシン残基またはAEEAc-Lys部分を、例えば、C末端に含む。ある態様において、クリック化学基をペプチド合成後に挿入する。例えば、クリック化学基としてのアジド部分を挿入するために、Lys側鎖をアジド酢酸と反応させ得る。ある態様において、クリック化学基を環化後に挿入し、ある態様において、N末端および/またはC末端の遮断部分添加後に挿入する。ある態様において、クリック化学基をペプチド合成中に挿入する。例えば、クリック化学基を含む側鎖を含むアミノ酸を、コンプスタチン類似体の合成に使用し得る。多様なこのようなアミノ酸は、多くの源、例えば、AAPPTec(Louisville, KY), Jena Bioscience GmBH(Jena, Germany)から市販されている。ある面において、クリック化学官能化コンプスタチン類似体の製造方法をここに提供する。
【0247】
ある態様において、コンプスタチン類似体およびクリック化学試薬を含む組成物を提供する。クリック化学試薬は、クリック化学基、例えば、当分野で知られる任意のクリック化学基を導入するために、コンプスタチン類似体を含む化合物のアミノ酸側鎖または末端と反応できるあらゆる分子であり得る。ある面において、組成物を、コンプスタチン類似体をクリック化学官能性で官能化するための適切な条件(適切な触媒、光(例えば、UV)の提供を含み得る)下でインキュベートし得る。ある態様において、本発明は、ここに記載のものを含むが、これらに限定されない何らかのクリック化学基を含むコンプスタチン類似体を提供する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造方法を提供する。ある態様において、方法は、第一クリック化学基を含むコンプスタチン類似体と、相補性クリック化学基を含むCRMを、クリック化学反応が起こるのに適する条件下で混合することを含む。得られたコンジュゲートを精製するさらなる工程を含んでよい。ある態様において、精製は少なくともある未反応成分の、例えば、適当なスカベンジャーでの除去を含む。
【0248】
ある態様において、クリック化学反応を使用して、2個以上のCRMを結合させ、少なくともそのうちの2個はコンプスタチン類似体部分が結合している。コンプスタチン類似体部分は、種々の態様において同一でも異なってもよい。コンプスタチン類似体部分は、クリック化学反応を介してCRMに結合していても、結合していなくてもよい。例えば、ある態様において、第一末端に第一クリック化学基および第二末端にNHSエステルを含む、第一ヘテロ二官能性PEGを、NHSエステルを介してコンプスタチン類似体部分とカップリングさせる。別の反応で、第一末端に第二クリック化学基および第二末端にNHSエステルを含む、第二ヘテロ二官能性PEGを、NHSエステルを介してコンプスタチン類似体部分とカップリングさせる。その後、得られた2個の化合物をクリック化学反応で反応させて、2個のコンプスタチン類似体部分を含む大型分子を形成させる。PEGをCRMの例として記載しているが、この方法はあらゆるCRMを用い得ると解釈すべきである。例えば、ある態様において、ポリペプチド、例えば、HSAまたはその一部またはアルブミンまたはアルブミン-結合ペプチドまたは抗体またはその一部を含むCRMを使用し得る。ある態様において、この方法でPOZを用い得る。
【0249】
クリック化学基を含むコンプスタチン類似体は、多様な用途を有し得る。ある態様において、第一クリック化学基を含むコンプスタチン類似体を、相補性クリック化学基を含む任意のる物質と反応させる。相補性クリック化学基を含む物質は、例えば、標識(例えば、フルオロフォア、蛍光タンパク質、放射性同位体など)、親和性反応材、抗体、ターゲティング部分、金属、粒子などを含み得る。ある態様において、クリック化学基を使用して、コンプスタチン類似体部分を表面に結合させ、該表面は、相補性クリック化学基を含むかまたはこれを含むように官能化されている。ある態様において、表面はセンサー、例えば、C3の捕獲/検出用表面またはセンサーである。ある態様において、表面は、医療機器、管類、膜、リザーバー、インプラントまたは血液と接触する可能性がある(例えば、体外で)もしくは対象の体内に一時的にまたは無期限に埋め込まれ得る(例えば、人工器官または薬物送達デバイス)他の物質の一部を形成する。ある態様において、表面を、コンプスタチン類似体で官能化して、それに対する補体活性化を減少させる。ある態様において、デバイスまたは管類を、例えば、透析用、手術中など、血液循環に使用する。ある態様において、デバイスは血液透析器または体外循環支持単位である。このようなコンプスタチン類似体官能化デバイスおよびその製造方法をここに提供する。
【0250】
本発明のある実施態様において、コンプスタチン類似体は、細胞反応性官能基およびCRMの両方を含む。ある態様において、本発明は、細胞反応性官能基または部分が、少なくとも500ダルトン、例えば、少なくとも1,500ダルトンから最大約100,000ダルトンの分子量(例えば、平均分子量約20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;または100,000ダルトン)を有する(CH2CH2O)n部分(例えば、ここに記載するPEGの何れか)または他のポリマー(例えば、POZ、ポリペプチド)に置き換わる、上記細胞反応性コンプスタチン類似体の何れかの分子のバリアントを提供する。ある実施態様において、化合物または(CH2CH2O)n部分(または他のポリマー、例えば、POZまたはポリペプチド)の平均分子量は少なくとも20,000ダルトンから最大約100,000;120,000;140,000;160,000;180,000;または200,000ダルトンである。それ故に、細胞反応性コンプスタチン類似体、例えば、使用するコンプスタチン類似体部分およびコンプスタチン類似体部分が細胞反応性部分に結合する結合に関するここでの教示は、長時間作用型コンプスタチン類似体に提供でき、長時間作用型コンプスタチン類似体は、上記とおりA-L-Mにより示される構造の何れかを有してよく、ここで、Aはクリアランス低減部分(例えば、ここに記載するクリアランス低減部分の何れか)であり、さらに、ここで、L(またはLP1、LP2またはLP3)として示す結合部によりAに結合する1、2以上(例えば、3、4、5、6、7、8)のコンプスタチン類似体部分Mが存在し得る。コンプスタチン類似体部分は、場合によりN末端、C末端または両末端で1以上のアミノ酸により伸張される、配列が配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかを含むペプチドまたはそのバリアント(例えば、ここに記載する何れかのバリアント)を含んでよく、ここで、アミノ酸の少なくとも1個が、第一級または第二級(例えば、Lys)、スルフヒドリル基、カルボキシル基(これはカルボン酸基として存在し得る)、グアニジノ基、フェノール基、インドール環、チオエーテルまたはイミダゾール環のような反応性官能基を含む側鎖を有し、これは、CRMを含む部分のコンプスタチン類似体へのコンジュゲーションを促進する(コンジュゲーション後、このような反応性官能基が反応して結合を形成すると理解される)。さらに、配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかを含むコンプスタチン類似体部分またはそのバリアントがN末端、C末端または両末端で1以上のアミノ酸により伸張され、ここで、アミノ酸の少なくとも1個が、反応性官能基を含む側鎖を有するとき、このような1以上のアミノ酸伸張は、コンプスタチン類似体部分の環状部から、例えば、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖および/またはここでL(またはLP1、LP2またはLP3)として示される他の部分の何れかを含む、柔軟なまたは硬いスペーサー部分により離されていてよいこともさらに理解される。
【0251】
nが約500;1,000;1,500;2,000;5,000;10,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;~100,000ダルトンの平均分子量を得るのに十分な値となっている長時間作用型コンプスタチン類似体の例を下に記載する。ある実施態様において、nは、約20,000ダルトン、最大約100,000;120,000;140,000;160,000;180,000;または200,000ダルトンの平均分子量を提供するのに十分な値である。
【0252】
(CH2CH2O)nC(=O)-Ile-Cys-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys-Thr-NH2)(配列番号58)
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2-C(=O)-Lys-C(=O)-(CH2CH2O)n-NH2(配列番号59)
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-Lys-C(=O)-(CH2CH2O)n-NH2(配列番号60)。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-(Gly)5-Lys-C(=O)-(CH2CH2O)n-NH2(配列番号61)
Ac-(CH2CH2O)nC(=O)Lys-(Gly)5-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2)(配列番号62)
Ac-(CH2CH2O)nC(=O)Lys-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH2)(配列番号63)
【0253】
配列番号58において、(CH2CH2O)nがアミド結合を介してN末端アミノ酸と結合している。配列番号59~63では、(CH2CH2O)n部分がアミド結合を介してLys側鎖と結合している。したがって、上記のとおり、配列番号59、60および61のC末端のNH2はペプチドのC末端のアミド化を表していることが理解され、また配列番号62および63では、N末端のAcはペプチドのN末端のアセチル化を表していることが理解される。ほかにも、(CH2CH2O)n部分の遊離末端が通常、下線を施したOが末端(CH2CH2O)基のO原子を表す(OR)で終わることが当業者には理解される。(OR(Oに下線))は多くの場合、ヒドロキシル(OH)基またはメトキシ(-OCH3)基などの部分であるが、他の基(例えば、他のアルコキシ基)を用いることも可能である。したがって、例えば、配列番号59は、Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2-C(=O)-Lys-(C(=O)-(CH2CH2O)n-R)-NH2(配列番号64)(式中、Rは、例えば直鎖状PEGの場合、HまたはCH3である)のように表すことができる。二官能性、分枝状または星形PEGの場合、Rは分子の残りの部分を表す。さらに、反応性官能基を含む部分は本明細書に記載されるように(例えば、本明細書に記載の式の何れかに従って)変化し得ることが理解される。例えば、反応性官能基を含む部分がエステルおよび/またはアルキル鎖を含み、配列番号64と同じペプチド配列を含む長時間作用型コンプスタチン類似体は、次のとおり表すことができる。
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2-C(=O)-Lys-(C(=O)-(CH2)m-(CH2CH2O)n-R)-NH2(配列番号65);
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2-C(=O)-Lys-(C(=O)-(CH2)m-C(=O)-(CH2CH2O)n-R)-NH2(配列番号66)
Ac-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-NH-CH2CH2OCH2CH2OCH2-C(=O)-Lys-(C(=O)-(CH2)m-C(=O)-(CH2)j (CH2CH2O)n-R)-NH2(配列番号67)
【0254】
配列番号65~67では、mは様々な実施態様において、1から最大約2、3、4、5、6、7、8、10、15、20または30までの範囲であり得る。配列番号67では、jは様々な実施態様において、1から最大約2、3、4、5、6、7、8、10、15、20または30までの範囲であり得る。
【0255】
また、ここに記載するとおり、様々な実施態様において、Lys-(C(=O)-と(CH2CH2O)n-Rとの間に、アミド、芳香環(例えば、置換もしくは非置換フェニル)または置換もしくは非置換シクロアルキル構造などの他の部分を組み込み得ることも理解される。
【0256】
本発明は、配列番号58~67のバリアントを提供し、このバリアントは-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-が、他の何れかのコンプスタチン類似体、例えば、配列番号3~27または29~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列に置き換わったものであるが、ただし、コンプスタチン類似体のN末端および/またはC末端に存在する遮断部分が存在しないもの、リンカー(遮断部分を含み得る)に置き換わったものあるいは対応するバリアント内に存在する異なるN末端またはC末端アミノ酸に結合したものであり得る。
【0257】
何れかのコンプスタチン類似体、例えば、配列番号3~37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかを含む何れかの化合物が様々な実施態様において、そのN末端またはC末端を介して、あるいはその付近で(例えば、そのN末端またはC末端アミノ酸のあるいはその付近のアミノ酸の側鎖を介して)、反応性官能基を含む何れかの部分、例えば、式I~XVIまたは式A~Hの何れかの化合物と直接的にあるいは間接的に結合し得る。
【0258】
ある実施態様において、CRMは、ヒト血清中にみられるポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは上記ポリペプチドもしくはそのフラグメントと実質的に類似したバリアントを含む。ある実施態様において、ポリペプチド、フラグメントまたはバリアントは分子量が5~150kD、例えば、少なくとも5kD、10kD、20kD、30kD、40kD、50kD、60kD、70kD、80kD、90kD、100kDまたはそれ以上、例えば、100~120kDまたは120~150kDである。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造は、反応性官能基を含むコンプスタチン類似体とポリペプチドの1個以上のアミノ酸側鎖とを反応させることを含み、この側鎖は適合性のある官能基を含むものである。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造は、反応性官能基を含むコンプスタチン類似体とポリペプチドのN末端アミンおよび/またはC末端カルボキシル基とを反応させることを含む。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造は、アミン反応性官能基を含むコンプスタチン類似体と、第一級アミン(例えば、リジン)を含む側鎖を有するアミノ酸および/またはポリペプチドのN末端アミンとを反応させることを含む。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造は、カルボキシル反応性官能基を含むコンプスタチン類似体とポリペプチドのC末端カルボキシル基とを反応させることを含む。ある実施態様において、コンプスタチン類似体部分をポリペプチドの各末端に結合させ、場合により、1個以上の内部アミノ酸の側鎖と結合させる。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の製造は、スルフィドリル反応性官能基を含むコンプスタチン類似体とポリペプチドの1個以上のスルフィドリル基とを反応させることを含む。
【0259】
ある実施態様において、ポリペプチド内に反応性官能基を少なくとも1個導入する。例えば、ある実施態様において、コンプスタチン類似体と反応させる前に、ポリペプチドの側鎖を少なくとも1個修飾して、第一の反応性官能基を異なる反応性官能基に変換する。ある実施態様において、チオールを導入する。生体分子内にチオールを導入するには、内在性ジスルフィドの還元およびアミン基、アルデヒド基またはカルボン酸基のチオール基への変換を含めた複数の方法を用いることができる。ジチオスレイトール(DTT)、トリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはトリス-(2-シアノエチル)ホスフィンにより、タンパク質中のシスチンのジスルフィド架橋をシステイン残基に還元することができる。スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)と反応させた後、DTTまたはTCEPにより3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルコンジュゲートを還元することにより、アミンを間接的にチオラート化することができる。スクシンイミジルアセチルチオアセタートと反応させた後、ほぼ中性pHで50mMのヒドロキシルアミンまたはヒドラジンを用いてアセチル基を除去することにより、アミンを間接的にチオラート化することができる。2-イミノチオランと反応させ、分子全体の電荷を保持して遊離チオールを導入することにより、アミンを直接チオラート化することができる。チオールを含まないタンパク質中のトリプトファン残基をメルカプトトリプトファン残基に酸化し、次いで、これをヨードアセトアミドまたはマレイミドにより修飾することができる。チオールを1個以上含むポリペプチドと、Ac-Ile-Cys*-Val-Trp(1-Me)-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-AEEAc-Lys-(C(=O)-(CH2)5-Mal)-NH2(配列番号68)などのマレイミド基を含むコンプスタチン類似体とを反応させて、長時間作用型コンプスタチン類似体を製造してもよい。
【0260】
ある実施態様において、ポリペプチドは組換えにより製造されたものである。ある実施態様において、ポリペプチドは、少なくとも一部が組換えにより製造されたものであり(例えば、細菌内で、あるいは真菌、昆虫、植物または脊椎動物などの真核宿主の細胞内で)および/または少なくとも一部が化学合成を用いて製造されたものである。ある実施態様において、ポリペプチドは精製品である。例えば、ある実施態様において、ポリペプチドは、宿主細胞ライセートからまたは宿主細胞により分泌されている培養培地から精製する。ある実施態様において、ポリペプチド、ポリペプチドがグリコシル化されている。ある実施態様において、ポリペプチドはグリコシル化されていない。ある実施態様において、ポリペプチドはヒト血清アルブミン(HSA)である。ある実施態様において、ポリペプチドと実質的に類似したバリアントが、対象、例えばヒト対象の正常な免疫系によって異物として認識されない程度にそのポリペプチドと類似している。ある実施態様において、MHCクラスIエピトープが生じないよう、バリアントの元となるポリペプチドと比較したときの実質的に類似したバリアントの配列の変化を選択する。当技術分野で公知の様々な方法を用いて、配列がMHCクラスIエピトープを含むかどうかを予測することができる。
【0261】
ある実施態様において、ポリペプチドまたはリンカーまたは組成物中の1個以上のアミノ酸を疎水性または親水性であるように選択してよくまたはこれを含む化合物に高親水性もしくはある実施態様において高疎水性を付与するために選択してよい。当分野で知られるとおり、用語“親水性”および“疎水性”は、物質が水に対して有する親和性の程度をいうために使用する。ある態様において、親水性物質は水に強親和性を有し、水に溶解する、水と混合するまたは水で湿る傾向にあり、疎水性物質は、実質的に水に対する親和性を欠き、水を忌避し、吸収しない傾向にあり、水に溶解しない、水と混合しないまたは水で湿らない傾向にある。アミノ酸は当分野で周知のとおり、疎水性に基づき分類される。“親水性アミノ酸”の例はアルギニン、リシン、スレオニン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびグリシンである。“疎水性アミノ酸”の例はトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンである。ある実施態様において、標準アミノ酸の類似体を使用し、該類似体は、類似体の元であるアミノ酸と比較して親水性または疎水性が増加または減少している。
【0262】
本発明はさらに、CRMを含むコンプスタチン類似体を2個以上(例えば、2~10)含む多量体、例えばコンカテマーを提供し、ここで、得られる分子(またはそのCRM成分)の平均分子量が20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;~100,000ダルトンである。ある実施態様において、上記結合部分の何れかを用いて、CRMを含むコンプスタチン類似体を結合させることができる。
【0263】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体の総分子量は50kDを超えない。例えば、40kD PEGを含むLACAの場合、ある実施態様において、化合物のコンプスタチン類似体部分を含む残りの部分により寄与される分子量は、10kDを超えない、例えば、1.5kD~5.0kDまたは5.0kD~10kDである。ある実施態様において、コンプスタチン類似体部分を含むLACAの総分子量は45kD~50kDである。ある実施態様において、コンプスタチン類似体部分を含むLACAの総分子量は、40kD~45kD、15kD~40kD、例えば、15kD~25kD、25kD~35kD、35kD~40kDである。それ故に、本発明が、特定の分子量を有するまたは特定の範囲内の分子量を有するポリマーまたはCRMを含むコンプスタチン類似体に言及するとき、ある実施態様において、コンプスタチン類似体の総分子量は、ポリマーまたはCRMの分子量より、例えば、1.5kD~5kD大きくまたはある実施態様において、ポリマーの分子量より5kD~10kD大きくてよい。化合物、例えば、ポリマーを含む化合物の分子量は、組成物におけるこのような化合物の分子の平均分子量をいい得る。
【0264】
ポリマー、例えば、PEG、POZおよび/またはポリペプチドの検出に有用なおよび/またはポリマー、例えば、PEG、POZおよび/またはポリペプチドの物理的および/または構造的特性の測定に有用な広範な方法およびアッセイが当分野で知られ、場合により、コンプスタチン類似体、例えば、細胞反応性、長時間作用型、標的化コンプスタチン類似体またはコンプスタチン類似体部分の検出に使用し得る。例えば、凝集、溶解度、サイズ、構造、融解特性、純度、分解産物または汚染物の存在、水含量、流体力学半径などのような特性の測定に有用な方法およびアッセイが利用可能である。このような方法は、例えば、遠心分析法、液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC-イオン交換、HPLC-分子ふるい、HPLC-逆相)のような種々のタイプのクロマトグラフィー、光散乱、キャピラリー電気泳動、円二色性、等温熱量測定、示差走査熱量測定、蛍光、赤外(IR)、核磁気共鳴(NMR)、ラマンスペクトロスコピー、屈折率測定、UV/可視スペクトロスコピー、マススペクトロメトリー、免疫学的方法などを含む。方法を組み合わせ得ることは理解される。ある態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体(または細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む組成物)は、前記方法の何れかを使用して評価して、ここに記載する特性の1個以上を有する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体の検出および/または定量に有用な方法をここに記載する。
【0265】
VI. 標的化コンプスタチン類似体
本発明は、標的化部分とコンプスタチン類似体部分とを含み、標的化部分が標的分子と非共有結合する、標的化コンプスタチン類似体を提供するおよび/または利用する。いくつかの面では、本発明は、第VI節に記載されている細胞反応性コンプスタチン類似体に類似した標的化コンプスタチン類似体を提供し、ここで、この化合物は細胞反応性部分に加えて、あるいは細胞反応性部分の代わりに標的化部分を含む。標的化部分は、標的分子と特異的に結合する、例えば抗体、ポリペプチド、ペプチド、核酸(例えば、アプタマー)、炭水化物、小分子または超分子複合体を含み得る。ある実施態様において、標的分子(平衡解離定数Kdにより測定されるもの)に対する標的化部分の親和性(平衡解離定数Kdにより測定されるもの)が試験条件下、例えば生理的条件下で10-3M以下、例えば10-4M以下、例えば10-5M以下、例えば10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下または10-9M以下である。
【0266】
標的化部分が抗体である本発明の実施態様では、抗体は、結合能を保持する何れかの免疫グロブリンもしくはその誘導体または免疫グロブリン結合ドメインと相同なもしくはほぼ相同な結合ドメインを有する何れかのタンパク質であり得る。このようなタンパク質は、天然源に由来するものであっても、一部分または全体が(例えば、組換えDNA技術、化学合成などを用いて)合成により製造されたものであってもよい。抗体は何れかの種、例えば、ヒト、齧歯類、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどのものであり得る。抗体は、ヒトのクラス:IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを全て含む何れかの免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。本発明の様々な実施態様において、抗体は、Fab’、F(ab’)2、scFv(単鎖可変部)もしくは抗原結合部位を保持する他のフラグメントなどの抗体フラグメントまたは組換えにより製造したフラグメントを含めた組換えにより製造したscFvフラグメントであり得る。例えば、Allen, T., Nature Reviews Cancer, Vol.2, 750-765, 2002およびその引用文献を参照されたい。一価、二価または多価の抗体を用いることができる。抗体は、例えば齧歯類由来の可変ドメインとヒト由来の定常ドメインが融合され、齧歯類抗体の特異性を保持する、キメラ抗体であり得る。ある実施態様において、ファージディスプレイなどのディスプレイ技術を用いて、例えば、ゲノムにヒト免疫グロブリン遺伝子が組み込まれた齧歯類で、ヒト抗体またはその一部分を製造する。ある実施態様において、ヒト抗体配列内に非ヒト種(例えば、マウス)由来の相補性決定領域を1個以上移植することによりヒト化抗体を製造する。抗体は一部分がヒト化されていても、全体がヒト化されていてもよい。例えば、本発明に有用な標的化部分を得るのに使用し得るヒト化抗体を入手する様々な方法を概説したものとして、Almagro JC, Fransson J., Humanization of antibodies.Front Biosci. 13: 1619-33(2008)を参照されたい。本発明の目的のためには一般にモノクローナル抗体が好ましいが、抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。本発明のある実施態様においてF(ab’)2またはF(ab’)フラグメントを使用し、他の実施態様においてFcドメインを含む抗体を使用する。ほぼあらゆる目的の分子と特異的に結合する抗体を製造する方法が当技術分野で公知である。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を天然源から、例えば、(例えば、分子またはその抗原性のフラグメントによる免疫感作後に)その抗体を産生する動物の血液または腹水液から精製する、あるいは細胞培養で組換えにより製造することができる。例えば消化、ジスルフィド還元または合成により抗体フラグメントを製造する方法が当技術分野で公知である。
【0267】
本発明の種々の実施態様において、標的化部分は、抗原抗体相互作用以外の機序で標的分子と特異的に結合する何れかの分子であり得る。このような標的化部分は“リガンド”と呼ばれる。例えば、本発明の様々な実施態様において、リガンドはポリペプチド、ペプチド、核酸(例えば、DNAまたはRNA)、炭水化物、脂質もしくはリン脂質または小分子であり得る。ある実施態様において、小分子は、天然のものまたは人工的に製造されたものに関係なく、比較的低分子量で、タンパク質、ポリペプチド、核酸および脂質ではない、通常は分子量が約1500g/mol未満であり、かつ通常は複数の炭素-炭素結合を有する有機化合物である。一般にアプタマーとは、特定のタンパク質と結合するオリゴヌクレオチド(例えば分子を、例えばヌクレアーゼによる分解に対する耐性を高めることにより安定化させる、修飾ヌクレオシド(例えば、RNAおよびDNAに最もよくみられる5種類の標準的な塩基(A、G、C、T、U)または糖(リボースおよびデオキシリボース)以外の塩基または糖)または修飾されたヌクレオシド間結合(例えば、非ホスホジエステル結合)を場合により含む、RNAまたはDNAなど)のことである。ある実施態様において、オリゴヌクレオチドは、長さが最大約100ヌクレオシド、例えば、長さが12~100ヌクレオシドである。アプタマーはSELEXと呼ばれるインビトロ進化法を用いて得ることができ、また目的とするタンパク質に特異的なアプタマーを得る方法が当技術分野で公知である。例えば、Brody E N, Gold L. J Biotechnol. 2000 March; 74(1): 5-13を参照のこと。ある実施態様において、ペプチド核酸またはロックト核酸を用いる。
【0268】
本発明のある実施態様において、標的化部分はペプチドを含む。ある実施態様において、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母ディスプレイなどのディスプレイ技術を用いて、目的とする標的分子と結合するペプチドを同定する。
【0269】
小分子をリガンドとして用いることができる。このようなリガンドを同定する方法は当技術分野で公知である。例えば、タンパク質の凹面(ポケット)と結合する低分子量有機化合物を同定するための、コンビナトリアルライブラリーを含めた小分子ライブラリーのインビトロスクリーニングやコンピュータを用いたスクリーニングなどでは、多数の目的とするタンパク質に対する小分子リガンドを同定することができる(Huang, Z., Pharm. & Ther. 86: 201-215, 2000)。
【0270】
本発明のある実施態様において、標的化部分は、典型的に抗体の惹起を目的として、担体として使用して、抗原とコンジュゲートさせるタンパク質または分子ではない。例は、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシガンマグロブリンおよびジフテリア毒素などの担体タンパク質または分子である。本発明のある実施態様において、標的化部分は免疫グロブリン分子のFc部分ではない。ある実施態様において、標的化部分は、それが共有結合または非共有結合する追加の部分を1個以上含む複合体の一部である。
【0271】
本発明の種々の実施態様において、標的分子は、細胞により産生される何れかの分子(細胞表面に発現される何れかの形態または少なくとも一部が細胞外修飾によるものであるその修飾形態を含む)であり得る。ある実施態様において、標的分子は、組織内または組織上に存在する細胞外物質である。ある実施態様において、標的分子は、特定の疾患または生理的状態の特徴を示す、あるいは1種類以上の細胞型または組織タイプの特徴を示すものである。標的分子は多くの場合、分子の少なくとも一部分が抗体などの細胞外結合物質による結合を受けやすいように、少なくとも部分的に細胞表面に存在する分子(例えば、膜貫通型タンパク質または膜結合型タンパク質)である。標的分子は細胞型特異的であり得るが、そうである必要もない。例えば、細胞型特異的標的分子は多くの場合、1個または複数の特定のタイプの細胞上または細胞内に他の多くのタイプの細胞上または細胞内よりも高レベルで存在するタンパク質、ペプチド、mRNA、脂質または炭水化物である。いくつかの場合、細胞型特異的標的分子が、目的とする特定のタイプの細胞内または細胞上のみに検出可能なレベルで存在する。しかし、有用な細胞型特異的標的分子が細胞型特異的であるとみなされるのに、目的とする細胞型に対して完全に特異的である必要はないことが理解される。ある実施態様において、特定の細胞型の細胞型特異的標的分子がその細胞型内で、例えば複数(例えば、5~10種類以上)の異なる組織または臓器に由来する細胞をほぼ同量含む混合物からなる参照細胞集団の少なくとも3倍のレベルで発現される。ある実施態様において、細胞型特異的標的分子は、参照集団でのその平均発現量の少なくとも4~5倍、5~10倍または10倍以上のレベルで存在する。ある実施態様において、当業者が細胞型特異的標的分子を検出するか測定することにより、目的とする1個または複数の細胞型を他の多くのタイプ、ほとんどのタイプまたはすべてのタイプの細胞から識別することが可能である。一般に、ほとんどの標的分子の有無および/または量は、ノーザンブロット法、インサイチュハイブリダイゼーション、RT-PCR、配列決定、免疫学的方法(イムノブロッティング、免疫検出(例えば、免疫組織化学によるもの)または蛍光標識抗体で染色後の蛍光検出(例えば、FACSを用いるもの)など)、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、cDNAマイクロアレイ、膜アレイ、タンパク質マイクロアレイ分析、質量分析など標準的な技術を1個以上用いて明らかにすることができる。
【0272】
ある実施態様において、標的分子はチャネル、輸送体、受容体または少なくとも一部分が細胞表面に露出しているその他の分子である。ある実施態様において、標的分子は陰イオン輸送体または水チャネル(例えば、アクアポリンタンパク質)である。
【0273】
ある実施態様において、標的分子は、グリコホリン(例えば、グリコホリンA、B、CまたはD)またはバンド3などの少なくとも一部分が赤血球表面に露出しているタンパク質である。
【0274】
ある実施態様において、標的分子は、少なくとも一部分が内皮細胞表面に露出しているタンパク質である。ある実施態様において、標的分子は、通常の健常な血管系の表面に存在する。ある実施態様において、標的分子は、活性化された内皮細胞の表面に存在する。ある実施態様において、標的分子は、活性化された内皮細胞の表面に存在するが、活性化されていない内皮細胞の表面には存在しない。ある実施態様において、標的分子は、傷害または炎症などの刺激により発現または露出が誘発される分子である。ある実施態様において、標的分子が、標的分子を発現する細胞を含む移植片を受けたレシピエントにより“非自己”として認識され得る。ある実施態様において、標的分子は、それに対する抗体がヒトによくみられる炭水化物異種抗原である。ある実施態様において、炭水化物は血液型抗原を含む。ある実施態様において、炭水化物は異種抗原を含む。例えば、アルファ-galエピトープ(Galアルファ1-3Galベータ1-(3)4GlcNAc-R)である(例えば、Macher BA and Galili U. The Galalpha1, 3Galbeta1, 4GlcNAc-R (alpha-Gal) epitope: a carbohydrate of unique evolution and clinical relevance. Biochim Biophys Acta. 1780(2): 75-88 (2008)を参照のこと)。
【0275】
本発明のある実施態様において、コンプスタチン類似体は標的化部分とCRMを共に含む。
【0276】
ある実施態様において、標的化コンプスタチン類似体は複数の標的化部分を含み、これらは同じものまたは異なるものであり得る。異なる標的化部分は、同じ標的分子とも異なる標的分子とも結合し得る。本発明は、標的化部分、コンプスタチン類似体またはその両方に関して多価である標的化コンプスタチン類似体を提供する。
【0277】
一般に、本発明は、コンプスタチン類似体部分および標的化部分を含む化合物を製造するあらゆる方法およびそれにより得られる化合物を包含する。ある実施態様において、一般的にVI章に記載されているものに一般に準ずる方法を用いて標的化コンプスタチン類似体を製造し得るが、ここでは細胞反応性部分の代わりに、あるいは細胞反応性部分に加えて標的化部分を用いる。ある実施態様において、標的化部分としてペプチドを含む標的化コンプスタチン類似体を、コンプスタチン類似体部分およびペプチド標的化部分を含むポリペプチド鎖として合成する。場合により、ポリペプチド鎖はコンプスタチン類似体部分と標的化部分の間にスペーサーペプチドを1個以上含む。
【0278】
ある実施態様において、標的化コンプスタチン類似体は、同じアミノ酸配列(および該当する場合は1個以上の遮断部分)を有するが標的化部分を含まない対応するコンプスタチン類似体の活性の少なくとも約10%、20%または30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上のモル活性を有する。標的化コンプスタチン類似体が複数のコンプスタチン類似体部分を含むある実施態様において、標的化コンプスタチン類似体のモル活性は、該コンプスタチン類似体部分の活性の合計の少なくとも約10%、20%または30%、例えば、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%またはそれ以上である。標的化コンプスタチン類似体の組成物および製造方法および合成中間体は本発明の一面である。
【0279】
VII. 使用
細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体には多種多様な用途がある。決して本発明を限定するものではないが、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体の特定の用途および関連する本発明の実施態様を本明細書に記載する。ある態様において、任意のこのような使用は、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体の投与に加えて、対象にC3発現を阻害するINAAを投与することを含み得る。
【0280】
例えば、ある実施態様において、提供されるのは、(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体の一方または両方を、対象が両方に曝されるように対象に投与することを含む、対象における補体活性化を阻害する方法であり、ここで、INAAおよびコンプスタチン類似体の各々を、少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い、投与する。
【0281】
ある実施態様において、提供されるのは、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含む対象における補体活性化を阻害する方法であり、ここで、INAAを、代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与する。
【0282】
ある実施態様において、提供されるのは、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含む対象における補体活性化を阻害する方法であり、ここで、コンプスタチン類似体を、代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与する。
【0283】
ある実施態様において、提供されるのは、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA)および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含む対象における補体活性化を阻害する方法であり、ここで、コンプスタチン類似体を、平均約300mg/日未満の量で投与する。
【0284】
ある実施態様において、提供されるのは、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA)および(b)結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するクリアランス低減部分(CRM)を含むコンプスタチン類似体を投与することを含む、対象における補体活性化を阻害する方法であって、所望により、ここで、(i)コンプスタチン類似体を代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与する;(ii)INAAを代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与する;(iii)INAAおよびコンプスタチン類似体の両者を少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与する;または(iv)(i)、(ii)および(iii)の任意の組み合わせである。
【0285】
ある実施態様において、代替経路アッセイは溶血に基づく。
【0286】
ある実施態様において、代替経路アッセイはELISA(酵素結合免疫吸着法)に基づく。
【0287】
ある実施態様において、提供されるのは、対象にa)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)コンプスタチン類似体を投与することを含む、補体介在障害の処置が必要な対象を処置する方法である。
【0288】
ある実施態様において、投与の段階は、コンプスタチン類似体を受けている対象にINAAを投与することを含む。
【0289】
ある実施態様において、投与の段階は、INAAを受けている対象にコンプスタチン類似体を投与することを含む。
【0290】
ある実施態様において、投与の段階は、コンプスタチン類似体およびINAA両者を投与することを含む。
【0291】
ある実施態様において、投与の段階は、コンプスタチン類似体およびINAAの両者を含む組成物を投与することを含む。
【0292】
ある実施態様において、提供されるのは、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含む、対象における補体活性化を阻害する方法であり、ここで、INAAおよびコンプスタチン類似体は、両者とも少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される。
【0293】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される。
【0294】
ある実施態様において、INAAおよびコンプスタチン類似体は、両者とも少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される。
【0295】
ある実施態様において、INAAおよびコンプスタチン類似体は、両者とも7~31日間の投与間隔有する投与レジメンに従い投与される。
【0296】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体およびINAAは、所望により異なる投与スケジュールに従い、別々に投与される。。
【0297】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体およびINAAは、同じ投与スケジュールに従い、別々に投与される。
【0298】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体およびINAAは、同一組成物で投与される。
【0299】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、ヒト対象に静脈内または皮下投与したとき、24時間~10日間の半減期を有する。
【0300】
ある実施態様において、臓器、組織または細胞の補体介在損傷に罹患している対象またはそのリスクのある対象に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体がエクスビボで臓器、組織または細胞と接触し、それと共有結合する。その臓器、組織または細胞が対象内に導入され、レシピエントの補体系によって惹き起こされ得る損傷から保護される。
【0301】
本明細書に記載の目的のために、細胞と共有結合しないコンプスタチン類似体を使用することができる。例えば、体内での化合物の寿命を延ばす部分により修飾したコンプスタチン類似体および/または補体活性化の影響を受けやすい細胞型もしくは部位に対してコンプスタチン類似体を標的化する部位を含むコンプスタチン類似体を使用することができ、本発明はこのような使用を包含する。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体を使用する。ある実施態様において、標的化部分を含むコンプスタチン類似体を使用する。ある実施態様において、体内での化合物の寿命を延ばす部分と標的化部分をともに含むコンプスタチン類似体を使用する。下の記載で細胞反応性コンプスタチン類似体に言及する場合、本発明は、標的化コンプスタチン類似体に関連する類似した組成物および方法ならびに(少なくともコンプスタチン類似体を対象に投与することに関する実施態様では)細胞反応性コンプスタチン類似体の代わりに、あるいは細胞反応性コンプスタチン類似体に加えて、標的化部分も細胞反応性部分も含まないコンプスタチン類似体、場合により長時間作用型コンプスタチン類似体を使用する実施態様を提供する。
【0302】
意図される使用は次のものを含む:(1)発作性夜間ヘモグロビン尿症もしくは異型溶血性尿毒症症候群などの障害または補体介在性の赤血球(RBC)溶解を特徴とするその他の障害の患者において、補体介在損傷からRBCを保護すること;(2)移植された臓器、組織および細胞を補体介在損傷から保護すること;(3)(例えば、外傷、血管閉塞、心筋梗塞またはその他の虚血/再潅流(I/R)障害が起こり得る状況にある患者において)I/R障害を軽減すること;ならびに(4)様々な異なる補体介在障害の何れかにおいて、補体成分に曝され得る様々な身体構造(例えば、網膜)または膜(例えば、滑膜)を補体介在損傷から保護すること。細胞またはその他の身体構造の表面で補体活性化を阻害して得られる有益な効果は、補体介在損傷から細胞または構造自体を保護すること(例えば、細胞溶解の防止)により直接もたらされるものに限定されない。例えば、細胞反応性コンプスタチン類似体を用いて補体活性化を阻害すれば、アナフィロトキシンの生成とそれによる好中球の流入/活性化およびその他の炎症誘発事象が軽減し、かつ/または傷害を与える得る細胞内容物の放出が軽減することにより、離れたところにある臓器系または全身に有益な効果がもたらされる可能性がある。
【0303】
A. 血液細胞保護
本発明のある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体、細胞標的化コンプスタチン類似体および/または非標的化コンプスタチン類似体(例えば、長時間作用型の非標的化コンプスタチン類似体)を用いて、補体介在損傷から血液細胞を保護する。血液細胞は血液の細胞成分の何れか、例えば赤血球(RBC)、白血球(WBC)および/または血小板であり得る。ある実施態様において、RBCの細胞表面に露出しているグリコホリンまたはバンド3などの標的分子に対して細胞標的化コンプスタチン類似体を標的化する。多くの障害が血液細胞への補体介在損傷によるものである。このような障害は、例えば、患者の1個以上の細胞内CRPまたは可溶性CRPにみられる欠損または異常、例えば、(a)このようなタンパク質をコードする遺伝子の突然変異;(b)1個以上のCRPの産生もしくは適切な機能に必要な遺伝子の突然変異および/または(c)1個以上のCRPに対する自己抗体の存在に起因するこのような欠損または異常により生じ得る。補体介在性のRBC溶解は、一連の多様な原因によって生じ得るRBC抗原に対する自己抗体の存在に起因し得る(多くの場合、特発性である)。CRPをコードする遺伝子のこのような変異および/またはCRPに対する抗体もしくは自身のRBCに対する抗体を有する患者では、補体介在性のRBC傷害を伴う障害のリスクが高くなる。障害に特徴的な症状が1回以上発現したことのある患者では再発のリスクが高くなる。
【0304】
発作性夜間血色素尿症(PNH)は、補体介在性の血管内溶血、ヘモグロビン尿、骨髄不全および血栓形成傾向(血餅を形成する傾向)を特徴とする後天性溶血性貧血を含む、比較的まれな障害である。この障害は世界で100万人あたり16人が罹患していると概算され、性別および年齢を問わず発症し得るが、若年成人によくみられるものである(Bessler, M. & Hiken, J., Hematology Am Soc Hematol Educ Program, 104-110 (2008); Hillmen, P. Hematology Am Soc Hematol Educ Program, 116-123 (2008))。PNHは急性の溶血により中断される慢性消耗性疾患であり、著しい病的状態をもたらし、平均余命の短い疾患である。患者の多くが貧血に加えて、腹痛、嚥下障害、勃起不全および肺高血圧症を経験し、腎不全および血栓塞栓症のリスクが高くなる。
【0305】
PNHは1800年代に初めて独立したものとして記載されたが、PNHの溶血の原因が確固として確立されたのは、補体活性化の代替経路が発見された1950年代になってからである(Parker CJ. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: an historical overview. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 93-103 (2008))。CD55およびCD59は通常、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー(細胞膜に特定のタンパク質を係留する糖脂質構造)を介して細胞膜と結合している。PNHは、GPIアンカーの合成に関与するタンパク質をコードするPIGA遺伝子に体細胞変異を生じた造血幹細胞の非悪性クローン増殖の結果生じるものである(Takeda J, et al. Deficiency of the GPI anchor caused by a somatic mutation of the PIG-A gene in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Cell. 73: 703-711 (1993))。このような幹細胞の子孫は、CD55およびCD59を含めたGPI係留タンパク質が欠損している。この欠陥により細胞が補体介在性のRBC溶解を受けやすくなる。診断にはGPI係留タンパク質に対する抗体を用いたフローサイトメトリー分析がよく用いられる。この分析法では細胞表面のGPI係留タンパク質の欠損が検出され、欠損の程度および罹患細胞の割合を明らかにすることができる(Brodsky RA. Advances in the diagnosis and therapy of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood Rev. 22(2): 65-74 (2008))。PNHIII型RBCではGPI結合タンパク質が完全に欠損し、補体に対する感受性が高くなっているのに対し、PNHII型RBCではGPI結合タンパク質の一部が欠損し、補体に対する感受性が比較的低くなっている。FLAERはプロアエロリジン(GPIアンカーと結合する細菌毒素)の不活性なバリアントを蛍光標識したものであり、PNHの診断にフローサイトメトリーとともに用いられることが多くなっている。FLAERと顆粒球の結合が確認されなければPNHと診断される。ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体がC3bの沈着からPNH RBCを保護する。
【0306】
ある実施態様において、非定型溶血症候群(aHUS)に罹患している対象に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与する。aHUSは、微小血管症性溶血性貧血、血小板減少症および急性腎不全を特徴とする慢性障害であり、多くは補体制御タンパク質をコードする遺伝子の突然変異による、異常な補体活性化を原因とする(Warwicker, P., et al.. Kidney Int 53, 836-844 (1998); Kavanagh, D. & Goodship, T. Pediatr Nephrol 25, 2431-2442 (2010))。補体H因子(CFH)遺伝子の突然変異がaHUS患者に最もよくみられる遺伝子異常であり、この患者の60~70%が疾患発症後1年以内に死亡するか、末期腎不全に至る(Kavanagh & Goodship, supra.)。ほかにもI因子、B因子、C3、H因子関連タンパク質1~5およびトロンボモジュリンの突然変異が記載されている。aHUSの他の原因としては、CFHなどの補体制御タンパク質に対する自己抗体を含む。ある実施態様において、I因子、B因子、C3、H因子関連タンパク質1~5もしくはトロンボモジュリンの変異を有することが確認されている対象または補体制御タンパク質、例えばCFHに対する抗体を有することが確認されている対象に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を対象に投与する。
【0307】
補体介在性の溶血は、RBCと結合して補体介在性の溶血を惹き起こす抗体に関連する自己免疫性溶血性貧血を含めた多様なグループの他の状態にみられる。例えば、原発性慢性寒冷凝集素症ならびに薬物およびその他の外来物質に対するある種の反応にこのような溶血がみられることがある(Berentsen, S., et al., Hematology 12, 361-370 (2007); Rosse, W.F., Hillmen, P. & Schreiber, A.D. Hematology Am Soc Hematol Educ Program, 48-62 (2004))。ある実施態様において、慢性寒冷凝集素症に罹患している、あるいはそのリスクのある対象に細胞反応性コンプスタチン類似体を投与する。他の実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体を用いて、HELLP症候群に罹患している、あるいはそのリスクのある対象を処置し、この疾患は溶血、肝臓酵素の上昇および血小板数の減少がみられることにより定義され、少なくとも一部の患者では補体制御タンパク質の突然変異を原因とするものである(Fakhouri, F., et al., 112: 4542-4545 (2008))。
【0308】
他の実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体を用いて、対象に輸血する血液のRBCまたはその他の細胞成分を保護する。このような使用のある例にをさらに下に記載する。上記のとおり、補体介在性の溶血および/またはRBC傷害を阻害する上記方法に標的化コンプスタチン類似体および/または長時間作用型コンプスタチン類似体を用いることができる。ある実施態様において、(CH2CH2O)部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体を用いてPNHまたはaHUSを処置する。
【0309】
B. 移植
移植は、外傷、疾患またはその他の状態により損傷を受けた臓器および組織を取り換える手段を提供する、ますます重要になっている治療方法である。腎臓、肝臓、肺、膵臓および心臓が、とりわけ移植が成功している臓器である。頻繁に移植が行われる組織は、骨、軟骨、腱、角膜、皮膚、心臓弁および血管を含む。膵島または島細胞移植は糖尿病、例えばI型糖尿病の有望な処置方法である。本発明の目的のために、移植される、移植されている、あるいは既に移植された臓器、組織または細胞(または細胞の集団)を“移植片”と呼ぶことがある。本明細書の目的のために、輸血を“移植片”とみなす。
【0310】
移植では、移植片が、移植片機能不全および潜在的に移植不全の一因となり得る傷害を与える様々な事象および刺激に曝される。例えば、虚血-再潅流(I/R)障害は、多くの移植片(特に固形臓器)の場合において罹病および死亡の一般的かつ重要な原因であり、移植片生着の可能性の主要な決定因子となり得るものである。移植拒絶反応は、遺伝的に異なる個体間での移植による主要なリスクの1個であり、移植不全を惹き起こし、レシピエントから移植片を除去する必要性をもたらす可能性がある。
【0311】
本発明のある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体、細胞標的化コンプスタチン類似体および/または長時間作用型コンプスタチン類似体を用いて、補体介在損傷から移植片を保護する。細胞反応性コンプスタチン類似体は移植片の細胞と反応してそれに共有結合し、補体活性化を阻害する。細胞標的化コンプスタチン類似体は移植片の標的分子(例えば、移植片の内皮細胞またはその他の細胞により発現されるもの)と結合し、補体活性化を阻害する。標的分子は、例えば、傷害または炎症などの刺激により発現が誘発または刺激される分子、レシピエントにより“非自己”として認識され得る分子、血液型抗原または異種抗原などのそれに対する抗体がヒトによくみられる炭水化物異種抗原、例えばアルファ-galエピトープを含む分子であり得る。ある実施態様において、コンプスタチン類似体、例えば細胞反応性コンプスタチン類似体と接触させた移植片の血管へのC4d沈着の平均値が、コンプスタチン類似体と接触させなかった移植片でのC4d沈着レベルの平均値(例えば、移植片および受ける他の治療方法に関して一致する対象のもの)と比較して減少していることにより、補体活性化の減少が示され得る。
【0312】
本発明の種々の実施態様において、移植前、移植時および/または移植後に移植片に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体および/またはC3発現を阻害するINAAを接触させることができる。例えば、移植前に、ドナーから取り出した移植片に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む液体を接触させることができる。例えば、移植片をその溶液に浸漬し、かつ/または移植片にその溶液を潅流することができる。他の実施態様において、移植片と取り出す前に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体をドナーに投与する。ある実施態様において、移植片の導入時および/または導入後に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体をレシピエントに投与する。ある実施態様において、移植された移植片に細胞反応性コンプスタチン、長時間作用型または標的化類似体を局所送達する。ある実施態様において、例えば静脈内投与により、細胞反応性コンプスタチン類似体を全身投与する。
【0313】
本発明は、(a)単離移植片、(b)細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体および(c)C3発現を阻害するINAAを含む組成物を提供する。ある実施態様において、組成物は、ドナーから取り出され、レシピエントへの移植を待機中の単離移植片などの移植片(例えば、臓器)に接触させるのに適した(例えば、すすぎ、洗浄、浸漬、潅流、維持または保管に適した)溶液をさらに含む。ある実施態様において、本発明は、移植片(例えば、臓器)に接触させるのに適した溶液(a)と、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体(b)とを含む組成物を提供する。溶液は、移植片に生理的に許容され(例えば、適切な浸透圧組成であり、非細胞毒性である)、かつのちに移植片をレシピエントに導入するという点で医学的に許容され(例えば、好ましくは無菌である、あるいは少なくとも妥当な程度に微生物またはその他の汚染物を含まない)、かつ細胞反応性コンプスタチン類似体と適合性がある(すなわち、コンプスタチン類似体の反応性を損なわない)あるいは長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体と適合性がある、何れかの溶液であり得る。ある実施態様において、溶液は、何れかのこのような目的のための当技術分野で公知の何れかの溶液である。ある実施態様において、溶液はMarshallの溶液または高浸透圧クエン酸溶液(Soltran(登録商標), Baxter Healthcare)、ウィスコンシン大学(UW)溶液(ViaSpan(商標), Bristol Myers Squibb)、ヒスチジン-トリプトファン-ケトグルタル酸(HTK)溶液(Custodial(登録商標), Kohler Medical Limited)、EuroCollins(Fresenius)およびCelsior(登録商標)(Sangstat Medical)、Polysol、IGL-1またはAQIX(登録商標)RS-1である。当然のことながら、生理的に許容される組成物の範囲内で他の溶液、例えば、同じまたはほぼ同じ成分を同じまたは異なる濃度で含有する溶液を使用することも可能である。ある実施態様において、溶液は、細胞反応性コンプスタチン類似体が著しい反応を生じることが予想される成分を含有せず、また何れかの溶液も、このような成分を含まないよう改変または設計することができる。ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体は、移植片に適合性のある溶液中に、例えば0.01~100mg/mlの濃度で存在するか、あるいはこのような濃度になるまでこの溶液に加えてもよい。
【0314】
ある実施態様において、本発明は、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体(a)と、移植片に適合性のある溶液またはその固体(例えば、粉末)成分(b)とを含むキットを提供する。細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体は、固体の形態(例えば、粉末)で提供しても、あるいは少なくとも部分的に溶液に溶解させて提供してもよい。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体および/または移植片に適合性のある溶液を組み合わせると、移植片に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を接触させるのに適した濃度の溶液が得られるよう、これらを所定量で提供する。多くの実施態様では、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体および移植片に適合性のある溶液またはその固体(例えば、粉末)成分がキット内で個別の容器に収納されている。ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体と移植片に適合性のある溶液の成分がともに、個別の容器に収納されて、あるいは混合されて、固体(例えば、粉末)の形態で提供される。ある実施態様において、キットは、使用上の指示、例えば、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を移植片に適合性のある溶液に加えるための指示および/または移植片に細胞反応性コンプスタチン類似体を接触させるための指示を含む。場合により、キットは、移植、細胞療法および/または輸血で使用する製品の規制に関わる政府機関により承認を受けたラベルを含む。
【0315】
本発明はさらに、単離移植片に細胞反応性コンプスタチン類似体を接触させることを含む、コンプスタチン類似体と単離移植片とを共有結合させる方法を提供する。本発明はさらに、コンプスタチン類似体が共有結合した単離移植片を提供する。単離移植片には通常、コンプスタチン類似体分子が多数結合している。ある実施態様において、移植片は腎臓、肝臓、肺、膵臓または心臓などの固形臓器であるか、あるいはこれを含むものである。ある実施態様において、移植片は骨、軟骨、筋膜、腱、靭帯、角膜、強膜、心膜、皮膚、心臓弁、血管、羊膜または硬膜であるか、あるいはこれを含むものである。ある実施態様において、移植片は心肺または膵腎移植片などの多臓器を含む。ある実施態様において、移植片は、臓器または組織全体に満たないものを含む。例えば、移植片は臓器または組織の一部分、例えば、肝葉、血管の一部、皮弁または心臓弁を含み得る。ある実施態様において、移植片は、元の組織から単離されているが組織構造の少なくとも一部を保持する単離細胞または単離組織片、例えば膵島を含む調製物を含む。ある実施態様において、調製物は、結合組織を介して互いに結合していない単離細胞、例えば、末梢血および/または臍帯血または全血に由来する造血幹細胞または前駆細胞あるいは赤血球(RBC)または血小板などの何れかの細胞含有血液製剤を含む。ある実施態様において、死亡したドナー(例えば、“脳死後に提供する”(DBD)ドナーまたは“心臓死後に提供する”ドナー)から移植片を得る。ある実施態様において、移植片の特定のタイプに応じて、生存しているドナーから移植片を得る。ドナーに過度のリスクを負わせず、正当な医療行為を逸脱せずに生存しているドナーから入手できることが多い移植片のタイプには、例えば腎臓、肝臓の一部、血液細胞がある。
【0316】
ある実施態様において、移植は異種移植である(すなわち、ドナーとレシピエントの種が異なっている)。ある実施態様において、移植は自家移植(すなわち、同一個体内で体の一部分から別の部分へ移植すること)である。ある実施態様において、移植は同系移植である(すなわち、ドナーとレシピエントが遺伝的に一致する)。ほとんどの実施態様では、移植は同種移植である(すなわち、ドナーとレシピエントが同じ種に属するが遺伝的に異なる)。同種移植の場合、ドナーとレシピエントは遺伝的に関係がある(例えば、家族の一員同士である)者であっても、そうでなくてもよい。通常、ドナーとレシピエントは血液型が適合する(少なくともABO適合性があり、場合によりRh、Kellおよび/またはその他の血液細胞抗原で適合性がある)。同種抗体が存在すると超急性拒絶反応(すなわち、移植片がレシピエントの血液と接触するのとほぼ同時に、例えば数分以内に始まる拒絶反応)が生じる可能性があるため、レシピエントの血液は、移植片および/またはレシピエントとドナーに対する同種抗体に関してスクリーニングされたものであり得る。補体依存性細胞傷害(CDC)試験を用いて、対象の血清の抗HLA抗体をスクリーニングすることができる。血清を一群の既知のHLA表現型のリンパ球とインキュベートする。血清中に標的細胞上のHLA分子に対する抗体が含まれていれば、補体介在性の溶解による細胞死がみられる。選択された一群の標的細胞を用いれば、検出された抗体に対する特異性を決定することが可能である。抗HLA抗体の有無を判定し、場合によりそのHLA特異性を決定するのに有用なその他の技術としては、ELISAアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、マイクロビーズアレイ技術(例えば、Luminex technology)を含む。ここに挙げたアッセイを実施するための方法論はよく知られており、これらを実施するための多様なキットが市販されている。
【0317】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が補体介在性の拒絶反応を抑制する。例えば、ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が超急性拒絶反応を抑制する。超急性拒絶反応は少なくとも部分的には、古典経路を介したレシピエント補体系の抗体媒介性の活性化とそれにより生じる移植片へのMAC沈着によって惹き起こされる。超急性拒絶反応は通常、移植片と反応する既存の抗体がレシピエントに存在することに起因する。移植前の十分なマッチングにより超急性拒絶反応を回避するよう努めるのが望ましいが、例えば時間および/または供給源の制約により、常にそれを実施できるとは限らない。さらに、一部のレシピエント(例えば、輸血を何回か受けた患者、これまでに移植を受けたことがある患者、何度か妊娠したことのある女性)では、通常は試験対象にならない抗原に対する抗体を含む可能性の予め形成された抗体を多数もつため、時宜に即し適合する移植片を確信をもって入手することが困難であるか、あるいはほぼ不可能とし得る。このような患者では超急性拒絶反応のリスクが高くなる。
【0318】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が急性拒絶反応または移植不全を抑制する。ここで使用する“急性拒絶反応”は、移植後少なくとも24時間、通常少なくとも数日から1週間の間、最大で移植の6か月後に生じる拒絶反応をいう。急性の抗体媒介性拒絶反応(AMR)では、移植後最初の数週間にドナー特異的同種抗体(DSA)の急激な増加がみられることが多い。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、既存の形質細胞および/また記憶B細胞から新たに変換された形質細胞がDSAの産生増大に何らかの役割を演じている可能性が考えられる。このような抗体により移植片に補体介在損傷が生じ得るが、移植片に細胞反応性コンプスタチン類似体を接触させることによりこれが阻害され得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、移植片での補体活性化を阻害することにより、急性移植不全の別の原因である白血球(例えば、好中球)浸潤が低減され得る。
【0319】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が移植片に対する補体介在性のI/R障害を阻害する。以下さらに考察するように、I/R障害は、移植臓器にみられるように、血液供給が一時的に妨げられた組織の再潅流の際に生じ得る。I/R障害の軽減が急性移植片機能不全の可能性を低下させ、あるいはその重症度を低下させ、急性移植不全の可能性を低下させ得る。
【0320】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が慢性拒絶反応および/または慢性移植不全を抑制する。ここで使用する“慢性拒絶反応または慢性移植不全”は、移植後少なくとも6か月後、例えば、移植後6か月から1年、2年、3年、4年、5年またはそれ以上で、多くの場合、移植片が数か月から数年間正常に機能した後に生じる拒絶反応または不全をいう。これは移植片に対する慢性の炎症性免疫応答によるものである。本明細書の目的のために、慢性拒絶反応には、移植組織の内部血管の線維症をいうのに用いられる用語である慢性同種移植血管症が含まれ得る。免疫抑制療法により急性拒絶反応の発現率が低下しているため、慢性拒絶反応が移植片機能不全および移植不全の原因として一層目立つようになっている。B細胞の同種抗体産生が慢性拒絶反応および慢性移植不全の発生における重要な要素であるという証拠がある(Kwun J. and Knechtle SJ, Transplantation, 88(8): 955-61 (2009))。移植片に対する初期の傷害が、最終的に慢性拒絶反応を来たし得る線維症などの慢性過程をもたらす要因となり得る。したがって、細胞反応性コンプスタチン類似体を用いてこのような初期の傷害を抑制することにより、慢性移植片拒絶反応の発現を遅らせ、かつ/または慢性移植片拒絶反応の可能性もしくは重症度を低下させ得る。
【0321】
ある実施態様において、移植片のレシピエントに長時間作用型コンプスタチン類似体を投与して、移植片拒絶反応および/または移植不全を抑制する。
【0322】
C. 虚血/再潅流障害
虚血-再潅流(I/R)障害は、外傷後および心筋梗塞、脳卒中、重症感染症、血管疾患、動脈瘤修復、心肺バイパス術および移植のような一時的な血流途絶を伴う他の状態における組織傷害の重要な原因である。
【0323】
外傷の状況では、挫傷、コンパートメント症候群および血管損傷による全身低酸素血症、低血圧症および局所的な血液供給の遮断が、代謝の活発な組織に損傷を与える虚血を惹き起こす。血液供給の回復が、虚血自体よりも有害なことが多い強い全身炎症性反応を誘発する。虚血部位に再潅流が生じると、局所的に産生され放出された因子が循環系に入って離れた位置にある部位に到達し、場合によっては、元の虚血性損傷を受けることのない肺および腸などの臓器に重大な傷害を惹き起こし、単一臓器および多臓器の機能不全を来たす。補体活性化は再潅流直後に発生し、直接的に、またその好中球に対する走化性および刺激性作用を介して、虚血後傷害の重要なメディエーターとなる。主要な補体経路は3種類とも活性化されて協同的にあるいは独立して作用し、多数の臓器系に影響を及ぼすI/R関連の有害事象に関与する。本発明のある実施態様において、最近(例えば、過去2時間、4時間、8時間、12時間、24時間または48時間以内)に外傷、例えば、全身低酸素血症、低血圧症および/または局所的な血液供給の遮断などにより対象にI/R障害のリスクが生じる外傷を受けた対象に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体を血管内に、場合により、受傷した身体部位に供給されている血管内に、あるいは直接その身体部位に投与する。ある実施態様において、対象は脊髄損傷、外傷性脳損傷、熱傷および/または出血性ショックの患者である。
【0324】
ある実施態様において、外科的処置、例えば、組織、臓器または体の一部への血流を一時的に遮断すると予想される外科的処置の実施前、実施時または実施後に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を対象に投与する。このような処置の例は、心肺バイパス術、血管形成術、心臓弁修復術/置換術、動脈瘤修復術またはその他の血管外科術を含む。外科的処置と重なる時間の前、後および/またはその時間中に細胞反応性コンプスタチン類似体を投与し得る。
【0325】
ある実施態様において、MI、血栓塞栓性卒中、深部静脈血栓症または肺塞栓症に罹患している対象に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与する。細胞反応性コンプスタチン類似体を組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)(例えば、アルテプラーゼ(Activase)、レテプラーゼ(Retavase)、テネクテプラーゼ(TNKase))、アニストレプラーゼ(Eminase)、ストレプトキナーゼ(Kabikinase, Streptase)またはウロキナーゼ(Abbokinase)などの血栓溶解剤と併用投与してもよい。血栓溶解剤と重なる時間の前、後および/またはその時間中に細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与し得る。
【0326】
ある実施態様において、細細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を対象に投与してI/R障害を処置する。
【0327】
D. 他の補体介在障害
ある実施態様において、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障またはぶどう膜炎などの眼障害を処置するために細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を眼内に導入する。例えば、AMDに罹患している、あるいはAMDを有するリスクのある対象を処置するために細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を(例えば、硝子体内注射により)硝子体腔内に導入する。ある実施態様において、AMDは新生血管(滲出型)AMDである。ある実施態様において、AMDは乾燥型AMDである。当業者には認識されるとおり、乾燥型AMDは、地図状萎縮(GA)、中間型AMDおよび早期AMDを含む。ある実施態様において、GAを有する対象を、疾患の進行を遅延または停止させるために処置する。例えば、ある実施態様において、GAを有する対象の処置は、網膜細胞死の速度を低減させる。網膜細胞死の速度の低減は、対照(例えば、シャム注射された患者)と比較して、LACAで処置された患者におけるGA病変の増殖速度の低減により証明され得る。ある実施態様において、対象は中間型AMDを有する。ある実施態様において、対象は早期AMDを有する。ある実施態様において、中間型または早期AMDを有する対象を、疾患の進行を遅延または停止させるために処置する。例えば、ある実施態様において、中間型AMDを有する対象の処置は、進行形態のAMD(新生血管AMDまたはGA)への進行を遅延または予防し得る。ある実施態様において、早期AMDを有する対象の処置は、中間型AMDへの進行を遅延または予防し得る。ある実施態様において、眼はGAおよび新生血管AMDの両方を有する。ある実施態様において、眼はGAを有するが、滲出型AMDではない。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を、緑内障、ブドウ膜炎(例えば、後部ブドウ膜炎)または糖尿病性網膜症の処置のために硝子体内注射する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を前眼房内に導入して、例えば前部ぶどう膜炎を処置する。
【0328】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、自己免疫疾患、例えば少なくとも部分的には1個以上の自己抗原に対する抗体により媒介される自己免疫疾患に罹患している、あるいは自己免疫疾患のリスクのある対象を処置する。
【0329】
細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を、例えば、関節炎(例えば、関節リウマチ)に罹患している対象の滑液腔内に導入し得る。当然のことながら、これらをさらに全身に投与してもよい。
【0330】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、脳内出血に罹患している、あるいは脳内出血のリスクのある対象を処置する。
【0331】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、重症筋無力症に罹患している、あるいは重症筋無力症のリスクのある対象を処置する。
【0332】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、視神経脊髄炎(NMO)に罹患している、あるいは視神経脊髄炎のリスクのある対象を処置する。
【0333】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、例えば、I型MPGN、II型MPGNまたはIII型MPGHに罹患している、あるいは膜性増殖性糸球体炎のリスクのある対象を処置する。
【0334】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、神経変性疾患に罹患している、あるいは神経変性疾患のリスクのある対象を処置する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、神経障害性疼痛に罹患している、あるいは神経障害性疼痛を発症するリスクのある対象を処置する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、鼻副鼻腔炎または鼻ポリープに罹患している、あるいは鼻副鼻腔炎または鼻ポリープのリスクのある対象を処置する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、癌に罹患している、あるいは癌のリスクのある対象を処置する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、敗血症に罹患している、あるいは敗血症のリスクのある対象を処置する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、成人呼吸窮迫症候群に罹患している、あるいは成人呼吸窮迫症候群のリスクのある対象を処置する。
【0335】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、アナフィラキシー反応または注入反応のある、あるいはアナフィラキシーまたは注入反応のリスクのある対象を処置する。例えば、ある実施態様において、アナフィラキシーまたは注入反応を惹き起こし得る薬物または溶媒の投与前、投与時または投与後に対象に前処置を実施してもよい。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体により、食物(例えば、ピーナッツ、甲殻類またはその他の食物アレルゲン)、昆虫刺傷(例えば、ミツバチ、スズメバチ)によるアナフィラキシーのリスクのある、あるいはアナフィラキシーを起こしている対象を処置する。
【0336】
本発明の様々な実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を局所投与しても、全身投与してもよい。
【0337】
ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、呼吸器疾患、例えば、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)または特発性肺線維症を処置する。様々な実施態様において、例えば、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を、例えば、乾燥粉末としてまたは噴霧による吸入により気道に投与してもよくまたは注射により、例えば静脈内、筋肉内または皮下に投与してもよい。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を用いて、重症の喘息、例えば、気管支拡張剤および/または吸入コルチコステロイドによっても十分に制御されない喘息を処置する。
【0338】
ある態様において、長時間作用型補体阻害剤を、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、補体介在障害、例えば、慢性補体介在障害の処置方法が提供される。長時間作用型コンプスタチン類似体は、種々の実施態様において、ここに記載するあらゆる長時間作用コンプスタチン類似体であり得る。ある態様において、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、Th17関連障害の処置方法が提供される。
【0339】
ある態様において、“慢性障害”は、少なくとも3ヶ月存続するおよび/または当分野で慢性障害と認められている障害である。多くの実施態様において、慢性障害は少なくとも6ヶ月、例えば、少なくとも1年以上、例えば、永久に存続する。当業者は、種々の慢性障害の少なくとも一部所見が間欠的である可能性がありおよび/または重症度が時間と共に増悪と寛解し得ることを認識する。慢性障害は進行性であり、例えば、時間と共に重症になっていくまたは広範囲を冒すようになり得る。多くの慢性補体介在障害をここに記載する。慢性補体介在障害は、例えば、原因および/または少なくとも一部原因因子として、補体活性化(例えば、過剰なまたは不適切な補体活性化)が関係するあらゆる慢性障害であり得る。便宜上、障害に罹患している対象において特に頻繁に発症する臓器または系を引用して、障害が分類されることがある。多くの障害が複数臓器または系で発症することがあり、このような分類は全く限定するものではないことが認識される。さらに、多くの所見(例えば、症状)が、多くの異なる障害の何れかを有する対象で起こり得る。ここでの対象である障害に関する非限定的情報は、例えば、内科学の標準参考書、例えばCecil Textbook of Medicine(例えば23rd edition), Harrison's Principles of Internal Medicine(例えば17th edition)および/または特定の医学領域、特定の身体系または臓器および/または特定の障害に焦点を絞った標準参考書に見ることができる。
【0340】
ある実施態様において、慢性補体介在障害はTh2関連障害である。ここで使用するTh2関連障害は、体または体の一部、例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造におけるTh2サブタイプのCD4+ヘルパーT細胞(“Th2細胞”)の過剰な数および/または過剰なまたは不適切な活性により特徴付けられる障害である。例えば、障害に罹患した例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造において、Th1サブタイプのCD4+ヘルパーT細胞(“Th1細胞”)に対してTh2細胞が優勢であり得る。当分野で知られるとおり、Th2細胞は、典型的に、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)およびインターロイキン-13(IL-13)のような特徴的サイトカインを分泌させ、Th1細胞は、典型的にインターフェロン-γ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子β(TNFβ)を分泌させる。ある実施態様において、Th2関連障害は、例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造における、例えば、IFN-γおよび/またはTNFβに対する、過剰なIL-4、IL-5および/またはIL-13の産生および/または量により特徴付けられる。
【0341】
ある実施態様において、慢性補体介在障害はTh17関連障害である。ある態様において、“補体阻害剤による慢性障害の治療方法”なる名称の2012年6月22日出願のPCT/US2012/043845にさらに詳細に記載されているとおり、補体活性化およびTh17細胞は、樹状細胞および抗体を含むサイクルに参加し、一定範囲の障害の根底にある病的免疫性微小環境の維持に寄与する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、病的免疫性微小環境は、一端確立されると、自立的であり、細胞および組織傷害に寄与する。ある態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体は、Th17関連障害の障害に有用である。
【0342】
ここで使用するTh17関連障害は、体または体の一部、例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造におけるTh17サブタイプのCD4+ヘルパーT細胞(“Th17細胞”)の過剰な数および/または過剰なまたは不適切な活性により特徴付けられる障害である。例えば、障害に罹患した、例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造においてTh1および/またはTh2細胞に対してTh17細胞が優勢であり得る。ある実施態様において、Th17細胞の優勢は相対的優勢であり、例えば、Th17細胞対Th1細胞比および/またはTh17細胞対Th2細胞比が、正常値に対して上昇している。ある実施態様において、Th17細胞対制御性T細胞比(CD4+CD25+制御性T細胞、別名“Treg細胞”)が正常値に対して上昇している。Th17細胞の形成および/またはTh17細胞の活性化は、種々のサイトカイン、例えば、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン21(IL-21)、インターロイキン23(IL-23)および/またはインターロイキン1β(IL-1β)により促進される。Th17細胞の形成は、前駆体T細胞、例えば、ナイーブCD4+T細胞のTh17表現型への分化およびその機能的Th17細胞への分化を含む。ある実施態様において、Th17細胞の形成は、Th17細胞の発生、増殖(増大)、生存および/または成熟のある態様を包含する。ある実施態様において、Th17関連障害は、IL-6、IL-21、IL-23および/またはIL-1βの過剰な産生および/または量により特徴付けられる。Th17細胞は、典型的にインターロイキン-17A(IL-17A)、インターロイキン-17F(IL-17F)、インターロイキン-21(IL-21)およびインターロイキン-22(IL-22)のような特徴的サイトカインを分泌する。ある実施態様において、Th17関連障害は、Th17エフェクターサイトカイン、例えば、IL-17A、IL-17F、IL-21および/またはIL-22の過剰な産生および/または量により特徴付けられる。ある実施態様において、サイトカインの過剰な産生または量は血液で検出可能である。ある実施態様において、サイトカインの過剰な産生または量は局所的に、例えば、少なくとも一つの組織、臓器または構造で検出可能である。ある実施態様において、Th17関連障害は、Treg数減少および/またはTreg関連サイトカインの量の減少に関係する。ある実施態様において、Th17障害は、何らかの慢性炎症性疾患であり、当該用語は多様な組織への自己永続性免疫侵襲により特徴付けられる不快の範囲を包含し、これは、該不快の原因である最初の侵襲(未知であり得る)から解離しているように見える。ある実施態様において、Th17関連障害は、何らかの自己免疫性疾患である。ほとんどではなくても多くの“慢性炎症性疾患”は実際自己免疫疾患である。Th17関連障害の例は、乾癬およびアトピー性皮膚炎のような炎症性皮膚疾患;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎);ベーチェット病;皮膚筋炎;多発性筋炎;多発性硬化症(MS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;骨関節症;ループス腎炎;関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、多発性硬化症、脈管炎;中枢神経系(CNS)炎症性障害、慢性肝炎;慢性膵炎、糸球体腎炎;サルコイドーシス;甲状腺炎、組織/臓器移植に対する病的免疫応答(例えば、移植片拒絶);COPD、喘息、細気管支炎、過敏性肺炎、特発性肺線維症(IPF)、歯周病および歯肉炎を含む。ある実施態様において、Th17疾患は、I型糖尿病または乾癬のような古くから知られる自己免疫疾患である。ある実施態様において、Th17関連障害は加齢黄斑変性症である。
【0343】
ある実施態様において、慢性補体介在障害はIgE関連障害である。ここで使用する“IgE関連障害”は、IgEの過剰なおよび/または不適切な産生および/または量、IgE産生細胞(例えば、IgE産生B細胞または血漿細胞)の過剰なまたは不適切な活性および/または好酸球または肥満細胞のようなIgE応答性細胞の過剰なおよび/または不適切な活性により特徴付けられる障害である。ある実施態様において、IgE関連障害は、対象の血漿でおよび/または局所的に総IgEおよび/またはある実施態様において、アレルゲン特異的IgEの高いレベルにより特徴付けられる。
【0344】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は、例えば、古典経路を介して補体を活性化し得る、体内の自己抗体および/または免疫複合体の存在により特徴付けられる。自己抗体は例えば、体内の細胞または組織上の、例えば、自己抗原と結合し得る。ある実施態様において、自己抗体は、血管、皮膚、神経、筋肉、結合組織、心臓、腎臓、甲状腺などの抗原と結合し得る。ある実施態様において、対象は視神経脊髄炎を有し、アクアポリン4に対する自己抗体(例えば、IgG自己抗体)を産生する。ある実施態様において、対象は類天疱瘡を有し、半接着斑の構造要素(例えば、膜貫通コラーゲンXVII(BP180またはBPAG2)および/またはプラキンファミリータンパク質BP230(BPAG1)に対する自己抗体(例えば、IgGまたはIgE自己抗体)を産生する。ある実施態様において、慢性補体介在障害は自己抗体および/または免疫複合体により特徴付けられない。
【0345】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は呼吸器障害である。ある実施態様において、慢性呼吸器障害は喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。ある実施態様において、慢性呼吸器障害は肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、放射線誘発肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎(別名アレルギー性肺胞炎)、好酸球性肺炎、間質性肺炎、サルコイド、ウェゲナー肉芽腫または閉塞性細気管支炎である。ある実施態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、処置を必要とする対象における慢性呼吸器障害、例えば、喘息、COPD、肺線維症、放射線誘発肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎(別名アレルギー性肺胞炎)、好酸球性肺炎、間質性肺炎、サルコイド、ウェゲナー肉芽腫または閉塞性細気管支炎の処置方法を提供する。
【0346】
ある実施態様において、慢性補体介在障害はアレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔炎または鼻のポリープ症である。ある実施態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、処置を必要とする対象におけるアレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔炎または鼻のポリープ症の処置方法を提供する。
【0347】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は、筋骨格系で発症する障害である。このような障害の例は、炎症性関節状態(例えば、関節リウマチまたは乾癬性関節炎のような関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、ライター症候群、痛風)を含む。ある実施態様において、筋骨格系障害は、体の冒された部分の疼痛、硬直および/または運動制限のような症状を生じる。炎症性ミオパシーは、皮膚筋炎、多発性筋炎および筋肉弱化を起こす未知原因の慢性筋肉炎症の障害である種々のその他を含む。ある実施態様において、慢性補体介在障害は重症筋無力症である。ある実施態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、前記筋骨格系で発症する障害の何れかの処置方法を提供する。
【0348】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は、外皮系で発症する障害である。このような障害の例は、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、類天疱瘡、天疱瘡、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、強皮皮膚筋炎、シェーグレン症候群および慢性蕁麻疹を含む。ある態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、前記外皮系で発症する障害の何れかの処置方法を提供する。
【0349】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は神経系、例えば、中枢神経系(CNS)および/または末梢神経系(PNS)で発症する。このような障害の例は、例えば、多発性硬化症、他の慢性脱髄性疾患(例えば、視神経脊髄炎)、筋萎縮性側索硬化症、慢性疼痛、卒中、アレルギー性神経炎、ハンチントン病、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む。ある実施態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に、補体阻害剤、例えば、常置環作用型、標的化または細胞反応性コンプスタチン類似体を投与することを含む、前記神経系で発症する障害の何れか処置方法を提供する。
【0350】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は循環系で発症する。例えば、ある実施態様において、障害は、脈管炎または他の脈管の炎症、例えば、血管および/またはリンパ管の炎症と関係する障害である。ある実施態様において、脈管炎は結節性多発性動脈炎、ウェゲナー肉芽腫、巨細胞性動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、顕微鏡的多発性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、高安動脈炎、川崎病またはベーチェット病である。ある実施態様において、対象、例えば、脈管炎の処置を必要とする対象は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性である。
【0351】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は消化器系で発症する。例えば、障害は炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎であり得る。ある実施態様において、本発明は、障害の処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、消化器系で発症する慢性補体介在障害の処置方法を提供する。
【0352】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、産後甲状腺炎)、心筋炎、肝炎(例えば、C型肝炎)、膵炎、糸球体腎炎(例えば、膜性増殖性糸球体腎炎または膜性糸球体腎炎)または脂肪織炎である。
【0353】
ある実施態様において、本発明は、処置を必要とする対象に長時間作用型補体阻害剤を投与することを含む、慢性疼痛を有する対象の処置方法を提供する。ある実施態様において、対象は神経障害性疼痛を有する。神経障害性疼痛は、神経系における原発巣または機能不全から始まるまたはこれを原因とする疼痛、特に、体性感覚系で発症する病変または疾の直接的結果として起こる疼痛である。例えば、神経障害性疼痛は、末梢神経における細径線維および/またはCNSにおける脊髄視床系における損傷した体性感覚経路を含む、病変に起因し得る。ある実施態様において、神経障害性疼痛は、自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症)、代謝疾患(例えば、糖尿病)、感染(例えば、帯状疱疹またはHIVのようなウイルス疾患)、血管疾患(例えば、卒中)、外傷(例えば、傷害、手術)または癌に起因する。例えば、神経障害性疼痛は、傷害の治癒後または末梢神経末端の刺激の休止後持続する疼痛または神経の損傷が原因である疼痛であり得る。神経障害性疼痛またはこれと関係する状態の例は、有痛性糖尿病性ニューロパシー、ヘルペス後神経痛(例えば、急性帯状疱疹の部位に、急性事象後3ヶ月以上持続するまたは再発する疼痛)、三叉神経痛、癌関連神経障害性疼痛、化学療法関連神経障害性疼痛、HIV関連神経障害性疼痛(例えば、HIVニューロパシーから)、中枢/卒中後神経障害性疼痛、背痛と関係するニューロパシー、例えば、背下部疼痛(例えば、脊髄根圧迫、例えば、腰髄根圧迫のような神経根症に起因し、この圧迫は椎間板ヘルニアが原因であり得る)、脊髄狭窄、末梢神経傷害疼痛、幻肢痛、ポリニューロパチー、脊髄傷害関連疼痛、脊髄症および多発性硬化症を含む。本発明のある実施態様において、補体阻害剤を、上記状態の1個以上を有する対象に神経障害性疼痛を処置するための本発明の投与スケジュールに従い、投与する。
【0354】
ある実施態様において、慢性補体介在障害は慢性眼障害である。ある実施態様において、慢性眼障害は黄斑変性症、脈絡膜新生血管(CNV)、網膜血管新生(RNV)、眼炎症または前記のあらゆる組み合わせにより特徴付けられる。黄斑変性症、CNV、RNVおよび/または眼炎症は、障害の決定的および/または診断的特徴であり得る。これらの特性の1個以上により特徴付けられる障害の例は、黄斑変性症関連状態、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、ぶどう膜炎、角膜炎、結膜炎および強膜炎を含むが、これらに限定されない。黄斑変性症関連状態は、例えば、加齢黄斑変性症(AMD)を含む。ある実施態様において、対象は滲出型AMDの処置を必要とする。ある実施態様において、対象は萎縮型AMDの処置を必要とする。ある実施態様において、対象は地図状萎縮(GA)の処置を必要とする。ある実施態様において、対象は眼炎症の処置を必要とする。眼炎症は、結膜(結膜炎)、角膜(角膜炎)、上強膜、強膜(強膜炎)、ぶどう膜、網膜、脈管構造および/または視神経のような眼構造の大部分で発症し得る。眼炎症の証拠は、眼における白血球(例えば、好中球、マクロファージ)のような炎症関連細胞の存在、内在性炎症性メディエーターの存在、眼疼痛、発赤、光感受性、霧視および飛蚊症などのような症状の一個以上の存在を含み得る。ぶどう膜炎は、眼のぶどう膜における、例えば、虹彩、毛様体または脈絡膜を含むぶどう膜の構造の何れかにおける、炎症をいう一般的用語である。ぶどう膜炎の特異的タイプは虹彩炎、虹彩毛様体炎、毛様体炎、毛様体扁平部炎および脈絡膜炎を含む。ある実施態様において、対象は地図状萎縮(GA)の処置を必要とする。ある実施態様において、慢性眼障害は、緑内障のような、視神経損傷(例えば、視神経変性)により特徴付けられる眼障害である。
【0355】
上記のとおり、ある実施態様において、慢性呼吸器疾患は喘息である。喘息の危険因子、疫学、病因、診断、現在の管理などに関する情報は、例えば、“Expert Panel Report 3: Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma”. National Heart Lung and Blood Institute. 2007. http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.pdf. (“NHLBI Guidelines”; www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.htm), Global Initiative for Asthma, Global Strategy for Asthma Management and Prevention 2010 “GINA Report”)および/または内科学の標準参考書、例えばCecil Textbook of Medicine(20th edition), Harrison's Principles of Internal Medicine(17th edition)および/または肺医学に書津園を絞った標準参考書に見ることができる。喘息は、肥満細胞、好酸球、Tリンパ球、マクロファージ、好中球および上皮性細胞のような、多くの細胞および細胞性エレメントが役割を演ずる、気道の慢性炎症性障害である。喘息個体は、喘鳴、息切れ(呼吸困難とも呼ぶ)、胸部絞扼感および咳嗽のような症状と関係する再発性事象を経験する。これらの事象は、通常、広範な、しかし変動性の気流閉塞と関係し、これはしばしば、自然にまたは処置により可逆性である。炎症はまた多様な刺激に対して存在する気管支応答性亢進の増加の併発も起こす。気道応答性亢進(刺激に対する過剰な気管支収縮応答)は、喘息の典型的特徴である。一般に、気流制限は、気管支収縮および気道浮腫から起こる。気流制限の可逆性は、喘息患者の一部で不完全であり得る。例えば、気道リモデリングが気道狭小化を固定し得る。構造的変化は、基底膜下肥厚、上皮下線維症、気道平滑筋肥大および過形成、血管増殖および拡張および粘液腺過形成および分泌過多を含み得る。
【0356】
喘息の個体は、該個体の先の状態からの変化を特徴とする事象として同定される増悪を経験し得る。重度喘息増悪は、喘息による入院または死のような重篤な予後を阻止するために、本人および彼/彼女の医師の側での緊急活動を必要とする事象として定義され得る。例えば、重度喘息増悪は、喘息が通常経口コルチコステロイドを用いることなく十分に抑制されている対象における全身性コルチコステロイド(例えば、経口コルチコステロイド)の使用を必要とし得るまたは安定な維持量の増加を必要とし得る。中程度喘息増悪は、対象にとって厄介であり、処置を迅速に変更する必要があるが、重篤ではない事象と定義され得る。これらの事象は、対象における毎日の喘息の変動の通常の範囲外であるとして臨床的に同定される。
【0357】
喘息のための現在の薬物療法は、持続型喘息の管理を達成し、維持するために使用される吸入コルチコステロイド(ICS)、経口コルチコステロイド(OCS)、長時間作用型気管支拡張剤(LABA)、ロイコトリエン修飾剤(例えば、ロイコトリエン受容体アンタゴニストまたはロイコトリエン合成阻害剤、抗IgE抗体(オマリズマブ(Xolair(登録商標)))、クロモリンおよびネドクロミルのような長期調節薬物療法(“コントローラー薬物療法”)および急性症状および増悪の処置に使用される短時間作用型気管支拡張剤(SABA)のような発作治療薬物療法の大きな2群に典型的に別けられる。本発明の目的で、これらの処置を“慣用の治療剤”という。増悪の処置はまたコントローラー薬物療法治療剤の投与量および/または強度の増加を含み得る。例えば、OCSの経過を、喘息制御回復に使用し得る。現在のガイドラインは、持続型喘息の対象に対するコントローラー薬物療法の連日投与または、多くの症例で、コントローラー薬物療法の毎日複数投与量の投与を命じる(2週または4週毎に投与するXolair以外)。
【0358】
対象は、一般に、対象が平均週に2回を超えて症状に苦しむおよび/または典型的に症状制御のために発作治療薬物療法(例えば、SABA)を週に2回を超えて使用するならば、持続型喘息を有すると見なされる。“喘息重症度”は、関連性のある併存症が処置され、吸入器手法およびアドヒアランスが最適化された後、対象の喘息の管理に必要な処置の強度に基づき分類する(例えば、GINA Report; Taylor, DR, Eur Respir J 2008; 32: 545-554参照)。処置強度に関する記載は、NHLBI Guidelines 2007, GINA Reportおよびその先行版および/または標準医学参考書のようなガイドラインに見られる、段階的処置或るゴリズムで推奨される薬物療法および投与量に基づき得る。例えば、喘息は、表Xに示すとおり間欠性、軽度、中程度または重度と分類でき、ここで、“処置”は、対象の最高レベルの喘息管理を達成するために十分な処置をいう。(軽度、中程度および重度喘息の分類は、一般に間欠性喘息ではなく、持続型喘息を意味すると理解される。)当業者は、表Xが例であり、これらの薬物療法の全てが全ての医療制度で利用可能ではなく、ある環境では喘息重症度の評価に影響し得ることは認識される。他の新たに出現したまたは新規の方法が軽度/中程度喘息の分類に影響し得ることも認識される。しかしながら、極めて低い強度の処置を使用して良好な管理が達成可能であることにより定義される軽度喘息および高強度処置の必要性により定義される重度喘息の同じ原則をなお適用し得る。喘息重症度は、これに加えてまたはこれとは別に、無処置下での疾患の内因性強度に基づき分類され得る(例えば、NHBLI Guidelines 2007参照)。評価は、現在のスパイロメトリーおよび患者の最近2~4週間にわたる症状の想起に基づき、行い得る。現在の機能障害および将来のリスクのパラメータを評価でき、喘息重症度のレベルの決定に入れてよい。ある実施態様において、喘息重症度は、それぞれ0~4歳、5~11歳または12歳以上の個体についてNHBLI Guidelinesの
図3.4(a)、3.4(b)、3.4(c)に示すとおり定義される。
【表2】
【0359】
“喘息管理”は、処置(薬理学的であれ、非薬理学的であれ)により喘息の所見が減退したまたは除かれた程度をいう。喘息管理は、症状頻度、夜間症状、スパイロメトリーパラメータ(例えば、予測1秒量に対する%)のような肺機能の客観的尺度、FEV
1可変性、症状管理のためのSABA使用の必要性のような因子に基づき、評価し得る。現在の機能障害および将来のリスクのパラメータを評価し、喘息管理レベルの決定に入れてよい。ある実施態様において、喘息管理は、それぞれ0~4歳、5~11歳または12歳以上の個体についてNHBLI GuidelinesのNHBLI Guidelinesの
図4.3(a)、4.3(b)または4.3(c)に示すとおり定義される。
【0360】
一般に、当業者は、喘息重症度レベルおよび/または程度の管理を決定するための適当な手段および当業者が合理的と考えるあらゆる分類スキームを使用できる。
【0361】
本発明のある実施態様において、持続型喘息を有する対象を、本発明の投与レジメンを使用して補体阻害剤で処置する。ある実施態様において、対象は、軽度または中程度喘息を有する。ある実施態様において、対象は、重度喘息を有する。ある実施態様において、対象は、慣用の治療剤を使用して十分に管理されない喘息を有する。ある実施態様において、対象は、慣用の治療剤を使用して処置したとき、十分に管理するためにICSの使用を必要とする、喘息を有する。ある実施態様において、対象は、ICSの使用にもかかわらず十分に管理されない喘息を有する。ある実施態様において、対象は、慣用の治療剤を使用して処置したとき、十分に管理するためにOCSの使用を必要とする、喘息を有する。ある実施態様において、対象は、OCSを含む高強度の慣用の治療剤の使用にもかかわらず、十分に管理されない喘息を有する。本発明のある実施態様において、長時間作用型補体阻害剤を、コントローラー薬物療法として投与するかまたは対象が慣用のコントローラー薬物療法の使用を避けるか、その投与量を減らすことを可能とする。
【0362】
ある実施態様において、対象は、ほとんどの喘息個体に当てはまるアレルギー性喘息を有する。ある実施態様において、喘息対象は、喘息の非アレルギー性トリガー(例えば、寒冷、運動)が不明であるおよび/または標準的診断評価で確定されないならば、アレルギー性喘息を有すると見なされる。ある実施態様において、喘息対象は、対象が、(i)対象が感受性1種または複数種のアレルゲンへの暴露後、喘息症状の発症(または喘息症状の悪化)が再現される;(ii)対象が感受性の1種または複数種のアレルゲンに対するIgE特異性を示す;(iii)対象が感受性の1種または複数種のアレルゲンに対する皮膚プリックテストで陽性を示す;および/または(iv)アレルギー性鼻炎、湿疹または高総血清IgEのようなアトピーと一致する他の症状または特徴を示すならば、アレルギー性喘息を有すると見なされる。特異的アレルギー性トリガーは確定されない可能性があるが、対象が、例えば特定の環境で症状悪化を経験するならば、疑い得るまたは推測し得る。
【0363】
吸入によるアレルゲン曝露は、アレルギー性気道疾患の評価に広く使用されている手法である。アレルゲンの吸入は、例えば、肥満細胞および好塩基球上のIgE受容体に結合するアレルゲン特異的IgEの架橋をもたらす。分泌性経路の活性化が続いて起こり、気管支収縮および血管透過性のメディエーターの遊離に至る。アレルギー性喘息の個体は、、例えば、早期喘息応答(EAR)、遅発性喘息応答(LAR)、気道反応性亢進(AHR)および気道好酸球増加症のような種々の所見をアレルゲン曝露後発症し得て、その各々は当分野で知られるとおり検出および定量し得る。例えば、気道好酸球増加症は、痰および/またはBAL液における好酸球増加として検出され得る。即時喘息応答(IAR)と呼ばれることもあるEARは、吸入直後、典型的に吸入10分後、例えば、FEV1の減少として検出可能となる、吸入によるアレルゲン曝露に対する応答である。EARは、典型的に30分以内に最大に達し、暴露2~3時間後に回復する。例えば、対象は、彼/彼女のFEV1がこの時間窓でベースラインFEV1に対して少なくとも15%、例えば、少なくとも20%低下したならば、“陽性”EARを示すと見なすことができ(ここで、この状況での“ベースライン”は、暴露前の状態、例えば、喘息増悪を経験せず、対象が感受性であるアレルギー性刺激に曝されていない対象の通常の状態に相当する状態である)。遅発性喘息応答(LAR)は、典型的に暴露後3~8時間で開始し、気道の細胞性炎症、気管支血管透過性増加および粘液分泌により特徴付けられる。典型的にFEV1の低下として検出され、これは、EARと関係するものより強度が大きい可能性があり、おそらく臨床的により重要である。例えば、対象は、そのFEV1が、ベースラインFEV1と比較して、関連性のある時限の範囲内でベースラインFEV1に対して少なくとも15%、例えば、少なくとも20%減少するならば、“陽性”LARを示すと見なし得る。遅延性気道応答(DAR)は、暴露後約26~32時間後に生じ始め、約32~48時間後に最高に達し、約56時間以内に回復し得る(Pelikan, Z. Ann Allergy Asthma Immunol. 2010, 104(5): 394-404)。
【0364】
ある実施態様において、慢性呼吸器障害は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。COPDは、治療しても十分に可逆性ではなく、通常進行性である気流制限により特徴付けられる、一連の状態を含む。COPDの症状は呼吸困難(息切れ)、運動耐容能減少、咳嗽、痰産生、喘鳴および胸部絞扼感を含む。COPDのヒトは、様々な頻度および期間であり、顕著な罹病率と関係する症状の急性(例えば、1週間以内のおよびしばしば24時間未満の経過で発症する)悪化の事象(COPD増悪と呼ぶ)を経験することがある。これは、呼吸器感染、侵害性粒子への暴露のような事象により誘発されることがありまたは原因が未知であることがある。喫煙が、COPDの最も一般的に遭遇する危険因子であり、他の吸入性暴露も本疾患の発生および進行に寄与し得る。COPDにおける遺伝的因子の役割は、活発に研究されている領域である。COPD患者の少数が、セリンプロテアーゼの主循環阻害因子であるアルファ-1抗トリプシンを遺伝性に欠失しており、この欠失が本疾患の急性進行性形態をもたらし得る。
【0365】
COPDの特徴的病態生理学的特性は、小気道の狭小化および構造的変化および肺実質(特に肺胞周囲)の破壊を含み、殆どの場合に慢性炎症が原因である。COPDで見られる慢性気流制限は、典型的にこれらの因子の複合を含み、気流制限および症状に起因するこれらの相対的重要度はヒト毎に異なる。用語“気腫”は、遠位から末端細気管支への気腔(肺胞)の拡大と、それに伴う壁の破壊をいう。用語“気腫”は、臨床的に、このような病理学的変化と関係する病状にしばしば使用されることは知っておくべきである。COPDの個体の一部は、2年連続、1年に3ヶ月間のほとんどの日の痰産生を伴う咳嗽により臨床的観点から定義される、慢性気管支炎を有する。COPDの危険因子、疫学、病因、診断および現在の管理に関するさらなる情報は、例えば、“Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease” (updated 2009) available on the Global Initiative on Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Inc. (GOLD) website (www.goldcopd.org)(ここでは“GOLD Report”とも呼ぶ), ATS website at www.thoracic.org/clinical/copd-guidelines/resources/copddoc.pdfから利用可能なthe American Thoracic Society/European Respiratory Society Guidelines (2004)(ここでは“ATC/ERS COPD Guidelines”と呼ぶ)および内科学の標準参考書、例えばCecil Textbook of Medicine(20th edition), Harrison's Principles of Internal Medicine(17th edition)および/または肺医学に焦点を絞った標準参考書に見られる。
【0366】
ある実施態様において、ここに開示する方法は、上記DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルを阻害(妨害、中断)する。例えば、補体阻害剤の投与は、補体がDC細胞を刺激して、Th17表現型を促進するサイクルを破壊する。その結果、Th17細胞の数および/または活性が減少し、これが、B細胞のTh17介在刺激およびポリクローナル抗体産生の量を減少させる。ある実施態様において、これらの効果は、免疫学的微小環境を、より正常で、低病理学的状態へと“リセット”する。PCT/US2012/043845(WO/2012/178083)およびUSSN20140371133の実施例1に記載のとおり(下記実施例27に簡潔に要約)、Th17関連サイトカイン産生に対して長期阻害効果を有する補体阻害の能力を支持する証拠が、喘息の動物モデルで得られている。
【0367】
ある実施態様において、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクル阻害は、疾患修飾効果を有する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、単に障害の症状を処置するのではなく、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルを阻害することは、症状が十分に管理されても進行中の組織損傷に寄与し得るおよび/または疾患増悪に寄与し得る基礎的病的機構を妨害し得る。ある実施態様において、DC-Th17-B-Ab-C-DCサイクルの阻害は、慢性障害を寛解させる。ある実施態様において、寛解は、慢性障害の対象における、疾患に戻る可能性を残しながらの、疾患活性の不在または実質的不在をいう。ある実施態様において、寛解は、治療を継続しなくてもまたは投与量を減少させてもまたは投与間隔を広げても、長期間(例えば、少なくとも6ヶ月、例えば、6~12ヶ月、12~24ヶ月以上)持続し得る。ある態様において、補体の阻害は、Th17細胞に富む組織の免疫学的微小環境を変え、制御性T細胞(Treg)に富む微小環境へと修飾し得る。こうすることにより、免疫系がそれ自体“リセット”され、寛解の状態に行くことを可能とする。ある実施態様において、例えば、寛解は、引き金となる事象が起こるまで持続する。引き金となる事象は、例えば、感染(感染性因子および自己タンパク質の両者と反応するポリクローナル抗体の産生を起こし得る)、特定の環境状態(例えば、高レベルのオゾンまたは粒子状物質のような大気汚染物質またはたばこの煙のような煙の成分、アレルゲン)などへの暴露であり得る。遺伝的因子は役割を演じ得る。例えば、補体成分をコードする遺伝子の特定の対立遺伝子を有する個体は、補体活性のベースラインレベルが高く、より反応性の補体系であるおよび/または内因性補体調節タンパク質活性のベースラインレベルが低い可能性がある。ある実施態様において、個体はAMDの高いリスクと関係する遺伝子型を有する。例えば、対象は、補体タンパク質または補体調節タンパク質、例えば、CFH、C3、因子Bをコードする遺伝子に多型を有し、該多型がAMDの高いリスクと関係し得る。
【0368】
ある実施態様において、例えば、慢性障害の症状をまだ発症していない対象においてまたは障害を発症しており、ここで記載されている対象において、免疫性微小環境は、時間と共に病的状態に向かって進行性により極性化し得る。このような移行は確率的に(例えば、少なくとも一部明らかな抗体レベルおよび/または親和性の無作為変動により)および/または障害の症状発症の引き金を引くには十分な強度がない“閾値以下”トリガー事象の蓄積の結果起こり得る。
【0369】
ある実施態様において比較的短期間、例えば、1~6週間、例えば、約2~4週間の、長時間作用型コンプスタチン類似体が、永続する利益をもたらし得ることが意図される。ある実施態様において、寛解は、長期間、例えば、1~3ヶ月、3~6ヶ月、6~12ヶ月、12~24ヶ月以上達成される。ある実施態様において、対象を、モニターし症状のおよび/または再発前に予防的に処置し得る。例えば、対象を、引き金となる事象の暴露前にまたは後に処置し得る。ある実施態様において、対象を、バイオマーカー、例えば、Th17細胞またはTh17細胞活性または補体活性化の指標を含むバイオマーカーの、例えば、増加に関してモニターでき、このようなバイオマーカーのレベル増加により処置し得る。例えば、さらなる開示についてPCT/US2012/043845を参照のこと。
【0370】
VIII. 組成物および投与
本発明は、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む各種組成物を提供するおよび/または利用する。組成物は様々な実施態様において、互いに排他的でない限り、本明細書で考察されている何れかの特徴または特徴の組合せを有し得る。本発明は、当該コンプスタチン類似体が如何なるコンプスタチン類似体であってもよい組成物およびその使用方法の実施態様を提供する。ある態様において、任意のこのようなコンプスタチン類似体または組成物を、ここにさらに記載するとおり、C3を阻害するINAAと共に使用し得る。INAAは、相互排他的でない限り、INAAに関してここに記載する任意の特性または特性の組み合わせを有し得る。
【0371】
ある実施態様において、組成物は精製された細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む。精製は、精製前の組成物中に存在する様々な成分について所望の純度が得られるよう当業者が選択可能な様々な方法を用いて実施することができる。例えば、濾過、高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはその他の方法ならびにこれらの組合せを用いることができる。ある実施態様において、組成物は、重量による総コンプスタチン類似体の百分率で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、モルベースでの総コンプスタチン類似体の百分率で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体からなるか、あるいは実質的にこれよりなるものである。
【0372】
ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体と、細胞反応性官能基を含む化合物とを含む組成物は、細胞反応性コンプスタチン類似体と細胞反応性官能基を含む化合物との比が、モルベースで少なくとも10:1、20:1、50:1、100:1、500:1、1,000:1またはそれ以上であることを特徴とする。ある実施態様において、組成物は、重量による総コンプスタチン類似体の百分率で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の細胞反応性コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、少なくともモルベースの総コンプスタチン類似体の百分率で80%、85%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の細胞反応性コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またそれ以上の細胞反応性コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またはそれ以上の長時間作用型コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またはそれ以上の標的化コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、組成物は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%またはそれ以上の標的化コンプスタチン類似体を含む。ある実施態様において、重量は乾燥重量である。
【0373】
ある態様において、本発明は、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む医薬品グレードの組成物を提供する。医薬品グレードの組成物は、様々な実施態様において、純度の点で上に挙げた何れかの特徴を有し得る。医薬品グレードの組成物は、それ以上精製せず、ヒト対象への投与またはヒト対象に投与する医薬組成物の製造に適した医薬組成物として許容される程度に内毒素、重金属ならびに未確認のおよび/または特徴不明の物質を含まないものである。ある実施態様において、医薬品グレードの組成物は無菌である。
【0374】
適切な調製物、例えば、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体またはその他の活性物質の実質的に純粋な調製物と、薬学的に許容される担体または溶媒などとを組み合わせて、適当な医薬組成物を製造し得る。“薬学的に許容される担体または溶媒”という用語は、一緒に製剤化する化合物の薬理活性を打ち消さない非毒性の担体または溶媒をいう。担体または溶媒が、過度の中毒を起こすことなく化合物を送達するのに適した量において対象への投与に適合する場合、その担体または溶媒は“非毒性”であることを当業者は理解する。本発明の組成物で使用し得る薬学的に許容される担体または溶媒としては、特に限定されないが、水、生理食塩水、リンガー液、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム溶液、5%ブドウ糖などを含む。組成物は、例えば本明細書で考察しているように、所望の製剤に適した他の成分を含み得る。このほか補助的な活性化合物、例えば、補体介在障害に罹患している対象を処置するのに独立して有用な化合物を組成物に組み込んでもよい。本発明は、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体と、場合により、補体介在障害に罹患している対象を処置するのに有用な第二の活性物質とを含む、このような医薬組成物を提供する。
【0375】
ある実施態様において、本発明は、医薬品の規制に関わる政府機関、例えば米国食品医薬品局による承認を受けたラベルとともに包装された、ヒトへの投与に適した薬学的に許容される組成物を提供する。ある実施態様において、本発明は、固体形態の薬学的に許容される細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体(a)と、薬学的に許容される担体または溶媒(b)とを含む、医薬品キットまたは医薬品パックを提供する。ある実施態様において、固体形態は凍結乾燥形態である。ある実施態様において、固体形態は粉末形態、例えば凍結乾燥粉末である。場合により、キットまたはパックは細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を担体に溶解するための指示書を含む。ある実施態様において、医薬品キットまたは医薬品パックが提供される。ある実施態様において、包装物またはキットは、少なくとも1用量、例えば1~200用量またはその間にある何れかの数もしくは部分範囲の用量に十分な量の医薬組成物を含む。ある実施態様において、包装物またはキットは、(i)1回またはそれ以上の投与のための十分量の細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む第一容器;(ii)第一容器の中身と合わせ、対象に、例えば、皮下(SQまたはSCと略す)または硝子体内(IVT)注射により、投与するのに適する組成物を作るための薬学的に許容される担体を含む第二容器を含む。ある実施態様において、医薬品包装物または医薬品キットは、1個以上の針および場合により1個以上のシリンジを含む。ある実施態様において、少なくとも1個の充填済みのシリンジが提供される(例えば、1~200または下位範囲の何れかの中間の数)。ある実施態様において、1個以上の単位投与剤形または計量済みのアリコートが提供される。ある実施態様において、1以上のペンまたはペンカートリッジが提供される。ある実施態様において、投与のための指示書であって、いくつかの実施態様では、例えば、皮下注射を介する自己投与のための指示書を含む指示書が提供される。
【0376】
医薬組成物は、特に限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、経鼻送達、髄腔内、頭蓋内、動脈内、経口、直腸内、経皮、皮内、皮下などの経路を含めた何れかの適切な投与経路により、対象に投与することができる。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む組成物を静脈内に投与する。ある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む組成物を動脈内に投与する。組成物は、臓器または組織に供給されている脈管系内に、あるいは臓器または組織付近の血管外に局所的に投与することができる。“投与”は、対象に化合物または組成物を直接投与すること、対象に化合物または組成物を投与するよう第三者に指示すること、(例えば、自己投与のために)対象に化合物または組成物を処方するまたは提案すること、自己投与および必要に応じて、対象に利用可能な化合物または組成物を製造する他の手段を包含することが理解される。
【0377】
注射での使用(例えば、静脈内投与)またはポンプもしくはカテーテルによる使用に適した医薬組成物は通常、無菌注射用液剤または無菌注射用分散剤の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤および無菌粉末を含む。無菌溶液は、必要量の化合物を適当な溶媒に組み込み、場合により、フィルターによる滅菌後に1個の成分または成分の組合せ、例えば、酢酸塩、クエン酸、乳酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;張性を調節する塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの物質;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸、グルタチオンまたは亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;およびその他の適切な成分などを必要に応じて一緒に組み込むことにより調製することができる。当業者には、医薬組成物中に含まれ得る生理的に許容される化合物が多数認識される。その他の有用な化合物としては、例えば、グルコース、スクロース、ラクトースなどの炭水化物;デキストラン;グリシンなどのアミノ酸;マンニトールなどのポリオールを含む。これらの化合物は、例えば、粉末中でおよび/または製造もしくは保管の工程に凍結乾燥が含まれるとき、例えば増量剤および/または安定化剤として働き得る。Tween-80、プルロニック-F108/F68、デオキシコール酸、ホスファチジルコリンなどの界面活性剤を組成物中に含ませて、例えば、溶解性を増大させる、あるいは疎水性薬物を送達するマイクロエマルション剤を得ることができる。必要に応じて、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によりpHを調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てのシリンジもしくは注入バッグまたはガラス製もしくはプラスチック製の単回または複数回用量バイアルに封入することができる。注射用の液剤は無菌で、内毒素を許容される程度に含まないことが好ましい。
【0378】
特に、本発明は、ある状況においてここに記載するコンプスタチン類似体(例えば、LACA)の投与のために皮下および/または筋肉内注射が特に望まれ得る特定の洞察を提供する。例えば、ある実施態様において、皮下および/または筋肉内注射が、特に慢性障害の処置のために好ましい可能性がある(例えば静脈内送達と比較して)。これの代わりにまたはこれに加えて、皮下および/または筋肉内注射が、例えば、患者がコンプスタチン類似体組成物を自己投与することが望まれるおよび/または予測されるとき(例えば、特に医療従事者によるこのような投与が、点滴センターまでの移動を必要とするとき、医療従事者による投与を必要とするまたはそれに依存するより)、特に有用であり得る。
【0379】
ある特定の態様において、本発明は、薬物を連日投与する実施態様において、毎週または2週間毎のような長期投与間隔よりも、一定の血中レベルの維持に適し得る、洞察を提供する。より一定の血中レベルは、特にある実施態様において望まれる(例えば、ここに記載する慢性障害の処置)。本発明は、長期ベースの毎日のIV点滴が、特に非入院患者にとって、極めて不便であることを十分理解する。
【0380】
本発明は、特に、ある実施態様において、皮下投与が、特に自己投与が予測されるまたは望まれるとき、筋肉内注射よりはるかに有効であるおよび/または望ましいことを理解する。
【0381】
ある実施態様において、ここに記載する組成物および特にLACAを含む組成物は、ある実施態様において、少なくとも一部、起動による自動化形式で、注射により医薬組成物の一用量を送達するデバイスを使用して投与し得る。このようなデバイスは、当分野で“ペン”または“自己注射器”と称され、これらの用語はここでは相互交換可能に使用する。一般に、ペンまたは自己注射器は、カートリッジ、リザーバーまたはシリンジに含まれる医薬組成物の一用量を、自動的にまたは手動で挿入された皮下針または高速噴流により注射することを可能とする。これは、単回用量または複数用量の投与のために設計し得る。
【0382】
ある特定の実施態様において、このようなペンまたは自己注射器は筋肉内および/または皮下注射のために使用される。本発明によって、ペンまたは他の自己注射器は、皮下注射を利用する実施態様で特に有用であり得る。ペンは、一般に自己充足カートリッジまたはリザーバーに医薬を含み(または充填され得る)、針を接続できるデバイスである。
【0383】
ある実施態様において、ここに記載するとおり、本発明は、SCおよび/またはIM注射が、1以上のここに記載するLACAの送達の特に望ましいモードである、洞察を提供する。例えば、本発明は、注射(例えば、SC注射)によるLACAの投与を含む、ある特に望ましいおよび/または有効な投与レジメンを記載し、ある実施態様において、このような注射はペン(例えば、適切な用量または体積が予充填されていてよい)を使用して、達成される。ペンは耐久性(および再使用可能)のものでも、使い捨てのものでもよい。耐久性ペンは、一般に交換式カートリッジを使用し、これは空になったとき廃棄され、新しいものがペンに挿入される。使い捨てペンは、一般にカートリッジまたはリザーバーに医薬が予充填される。カートリッジまたはリザーバーが空になったとき、ペンは廃棄される。カートリッジまたはリザーバーは、単回用量または複数回用量を含み得る。ペンを使用するために、針をペンに接続し、皮膚に挿入する。一般に、一用量を投与するためにボタンを押すが、ある実施態様において、他の起動法を使用し得る。ある実施態様において、自己注射器は、ばねで留められたシリンジを有するが、当業者は、多様なテクノロジーが自動投与の提供に利用可能であることを認識する。ある実施態様において、ボタンを押すかまたは他にデバイスを起動することにより、針が自動的に挿入され、薬が送達される。ある実施態様において、自己注射器は、針を自動的におよび/または正確に皮下組織の所望の深さに入れるように設計され得る。ペンまたは自己注射器は、使用者が用量または注射の深さを選択または調節することを可能とするダイアルのような手段を含み得る。
【0384】
ある実施態様において、ここに記載する組成物および特にLACAを含む組成物は、デュアルチャンバーシリンジを含むデバイスを使用して投与される。乾燥薬物(例えば、凍結乾燥)が一方のチャンバーに含まれる。第二のチャンバーは、適当な薬学的に許容される担体を含む。このデバイスを使用するために、薬物をまずこれらチャンバーの中身を混合することにより再構成する。これは、種々の方法で達成できる。ある実施態様において、プランジャーを押すことで、例えば、担体が凍結乾燥薬物を含むチャンバーに移動されることにより、チャンバーの中身が混合される。
【0385】
こうして、ここに記載する組成物を含む(例えば、LACAを含む)多様な薬物送達デバイスが、例えば、予充填シリンジ、デュアルチャンバーシリンジ、耐久性および/または使い捨てペンおよびペンでの使用に適するカートリッジに提供される。このようなデバイスは1以上の用量を含み得る(例えば、ここに記載する用量の何れかの1以上)。
【0386】
ある実施態様において、本発明は、予定された期間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間など)継続するのに十分な活性剤(例えば、LACA)を綜合的に供給する、ここに記載するデバイスのセットを対象に提供する(例えば、郵便または集荷手配または他の定期的送達様式)ことを企図する。ある実施態様において、このようなセットを、患者が品切れとならないように選択したタイミングで、患者の居住地に定期的に(例えば、毎週、2週間、3週間、4週間など)送付する。ある実施態様において、組成物(例えば、LACA)は容器(例えば、バイアル)または上記薬物送達デバイスまたはパックの何れかに含まれ得る。
【0387】
ある実施態様において、組成物は凍結乾燥されているかまたは投与前の短時間、冷蔵または冷凍に維持され、投与時、再構成されるか(凍結乾燥であるならば)または解凍される(凍結されているならば)。組成物は、投与前室温にしてよい。
【0388】
ある実施態様において、組成物をパッチ系を使用して投与し得る(例えば、皮下または経皮投与用)。ある実施態様において、パッチは、例えば、一回投与で患者に10mlの溶液の投与を可能にする、最大約10mlの溶液を含み得る、リザーバーを含むかまたはそれに接続されていてよい。
【0389】
ある実施態様において、ここに記載するコンプスタチン類似体、例えば、細胞反応性コンプスタチン類似体、LACAまたは標的化コンプスタチン類似体および薬学的に許容される担体を含む組成物は、6.5~7.5、例えば、6.8~7.2、例えば、7.0のpHを有する。安定性試験実施の途中で、中性pHに比して、低pHがあるLACAの安定性を高めることが判明した。従って、ある実施態様においてLACAを含む組成物および薬学的に許容される担体は、6.0~6.5、5.5~6.0または5.0~5.5のpHを有する。ある実施態様において、さらに低いpH、例えば、4.5~5.0が使用され得る。ある実施態様において、組成物は、さらにpHを選択範囲に(例えば、上記範囲の何れか)維持するのに適する1以上の薬学的に許容される緩衝物質を含み得る。適当な緩衝物質はここに記載される(例えば、酢酸塩類、クエン酸塩類、乳酸塩類またはリン酸塩類)。ある実施態様において、組成物は、これに加えてまたはこれとは別に、塩、例えば、ここに記載する薬学的に許容される塩の何れかを含み得る。ある特定の実施態様において、組成物はリン酸塩を含み得る。
【0390】
簡潔さの目的で、例えば、投与レジメン、用量、投与方法、投与に使用するデバイスおよび/または処置方法に関連して、ここに記載するある態様および実施態様は、長時間作用型コンプスタチン類似体を参照して記載していることは注意すべきである。しかしながら、コンプスタチン類似体がLACAではない類似の実施態様が提供されることは理解されるべきである。コンプスタチン類似体は、例えば、クリアランス低減部分を含まない細胞反応性または標的化コンプスタチン類似体であり得る。
【0391】
一般に、分散剤は、基礎となる分散媒と、上に挙げた他の成分のうち適切なものとを含有する無菌溶媒に、活性化合物を組み込むことにより調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、有効成分と、例えば予め滅菌濾過されたその溶液に由来する、何れかの他の所望の成分との粉末が得られる、真空乾燥および凍結乾燥を含み得る。
【0392】
ある実施態様において、経口投与を用い得る。一般に経口組成物は不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的には、活性化合物を賦形剤と組み合わせて錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用し得る。組成物の一部として、薬学的に適合する結合剤および/または補助剤が含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、次に挙げる何れかの成分またはこれとほぼ同じ性質の化合物を含有し得る:微結晶性セルロース、トラガントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSteroteなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味料などのまたは香味剤。液体組成物もまた経口投与できる。経口送達用の製剤に消化管内での安定性を向上させる物質および/または吸収を促進する物質を組み込んでもよい。
【0393】
吸入による投与では、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器またはディスペンサによるエアロゾルスプレーの形態で、コンプスタチン類似体を送達し得る。用量が計量される吸入器または噴霧器を使用し得る。エアロゾルは、液体粒子または乾燥エアロゾル(例えば、乾燥粉末、大粒径の多孔性粒子など)を含み得る。種々の実施態様において有用な適当な水性媒体は水または食塩水を含み、ある実施態様において、場合によりアルコールを含む。ある実施態様において、組成物は、グリセロールを水中に、例えば、約2%グリセロールを水中に含む。ある実施態様において、組成物は、肺への導入に適する界面活性剤を含む。肺投与に適する他の添加物を、これに加えてまたはこれとは別に使用できる。
【0394】
種々の異なるデバイスが吸入による投与(これはここでは相互交換可能に“吸入投与”、“呼吸器投与”または“肺投与”と称する)に利用可能である。ネブライザーは、薬物の溶液または懸濁液を、気道下部への沈着に適するエアロゾルに変えるデバイスである。ネブライザータイプは、ジェットネブライザー、超音波ネブライザーおよび振動メッシュネブライザーを含む。利用可能な振動メッシュネブライザーの一覧の一部は、eFlow(Pari)、i-Neb(Respironics)、MicroAir(Omron)、IHSOネブライザー(Beurer)およびAeroneb(登録商標)(Aerogen)を含む。Respimat.(登録商標)Soft Mist.TM吸入器(Boeringer Ingelheim)を使用し得る。定量吸入器(MDI)は、治療剤の送達に噴射剤を使用する携帯型エアロゾルデバイスである。MDIは、懸濁液または溶液中の薬物、噴射剤、界面活性剤(一般に)および定量バルブを含む加圧金属キャニスターを含む。クロロフルオロカーボン(CFC)は噴射剤として広く使用されていたが、HFC-134aおよびHFC-227eaのようなハイドロフルオロカーボン(HFC、ヒドロフルオロアルカン(HFA)としても知られる)に代替的に置換されている。二酸化炭素および窒素は、他の代替物である。乾燥粉末吸入器(DPI)は、使用前に穿刺されるカプセルまたはブリスターに含まれる粒子の形の薬物を送達する吸気感応型デバイスであり、一般に噴射剤を使用しない。現在喘息および/またはCOPDの処置のための薬物の送達に使用されているDPIは、例えば、Diskus、Aerolizer、HandiHaler、Twisthaler、Flexhalerを含む。このようなデバイスは、種々の実施態様におけるコンプスタチン類似体の送達に使用し得る。種々の実施態様において使用し得るDPIデバイスの他の例は、3M ConixTM、TAIFUN(登録商標)(AKELA Pharma)、Acu-BreatheTM(Respirics)および活性医薬成分(API)が微細構造担体テープに貯蔵されるAPI-5000のようなTaper Dry Powder Inhalationテクノロジーを取り込むデバイスを含む。
【0395】
吸入アクセサリーデバイス(IAD)は、一般にスペーサーおよび保持チャンバーの2カテゴリーに入る。スペーサーおよび保持チャンバーは、吸入器のマウスピースを伸ばし、薬物のミストを口に向けて指向させ、空気中への薬物喪失を減少させる。スペーサーをMDIと共に使用して、喉の奥に沈着する薬物の量を減らし、MDIにより送達される薬物の指向性および沈着を改善を助けることができる。バルブ付保持チャンバー(VHC)は、患者が一方向バルブを介して呼吸し、一用量の薬物が肺に導かれるまで薬物の微細な雲をスペーサーに留めることを可能にする。例は、AerochamberおよびOptichamberを含む。
【0396】
粒子組成物は、細粒分(FPF)、放出量、平均粒子密度および空気動力学的中央粒子径(MMAD)のような種々のパラメータに基づき特徴付けされ得る。適当な方法は当分野で知られ、そのいくつかは米国特許6,942,868および7,048,908および米国公開20020146373、20030012742および20040092470に記載されている。ある実施態様において、エアロゾル粒子は、約0.5μm~10μm(MMAD)、例えば、呼吸器送達のために約5μmであるが、小さなまたは大きな粒子も使用される。ある実施態様において、空気力学的質量平均径1μm~25μm、例えば、1μm~10μmを有する粒子が使用される。
【0397】
直径約1mmより小さい粒子を含む乾燥粒子組成物は、ここでは、乾燥粉末とも称される。“乾燥”組成物は、例えば、エアロゾルまたはスプレーを形成する乾燥粉末吸入デバイスで、粒子が容易に分散可能であるように、比較的低い液体含量を有する。“粉末”は、好ましくは粒子の相当な画分が呼吸管の所望の部分に到達するように、大部分または本質的に完全に、吸入デバイスにおいて、比較的自由に流動しその後対象に吸入される微細な分散固体粒子からなる。ある実施態様において、3~15μmの範囲の平均幾何直径および0.04~0.6g/cm3のタップ密度を有する大多孔性粒子が使用される。例えば、米国特許7,048,908;Edwards, D. et al, Science 276:1868-1871, 1997;およびVanbever, R., et al., Pharmaceutical Res. 16:1735-1742, 1999参照。
【0398】
ある態様おいて、ここに記載するのは、コンプスタチン類似体の吸入投与により患者を処置するのに有用な、種々の用量、投与レジメン、組成物および方法である。コンプスタチン類似体は、ここに記載するコンプスタチン類似体の何れでもよい。コンプスタチン類似体は、本明細書のセクションIIIに記載するペプチドの何れかを含み得る。例えば、コンプスタチン類似体は、ここに記載する配列番号3~36の何れかを含むかまたはこれからなる可能性があるおよび/またはここに記載するコンプスタチンに比して何れかの修飾を含み得る。特定の実施態様において、コンプスタチン類似体は、配列が表1に記載の、例えば、配列番号14、21、28、29、32、33、34または36のものであるペプチドを含むまたはそれからなる。特定の実施態様において、コンプスタチン類似体は、クリアランス低減部分、細胞反応性部分またはターゲティング部分を含まない。ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、1.5kD~2.0kDまたは2.0kD~2.5kDの分子量を有する。ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、11~25アミノ酸、例えば、正確に13、14、15、16、17または18アミノ酸を有する。
【0399】
ある実施態様において、コンプスタチン類似体の吸入による投与(ここでは“肺投与”または“呼吸器投与”と相互交換可能に使用する)の総1日用量は、少なくとも5mg/日、例えば、少なくとも10mg/日、少なくとも15mg/日、少なくとも20mg/日、少なくとも25mg/日または少なくとも30mg/日である。ある実施態様において、1日用量は5mg/日~20mg/日、例えば、10mg/日または15mg/日である。ある実施態様において、1日用量は20mg/日~60mg/日である。ある特定の実施態様において、用量は10mg/日、15mg/日、20mg/日、25mg/日、30mg/日、35mg/日、40mg/日、45mg/日、50mg/日、55mg/日または60mg/日である。実施例に記載のとおり、健常対象へ吸入により投与されるコンプスタチン類似体のフェーズ1臨床試験において、薬理学的活性の可能性のある証拠が30mg/日または60mg/日の用量で観察された。
【0400】
ある実施態様において、1日用量は60mg/日~150mg/日、例えば、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、130mg/日、140mg/日または150mg/日である。ある実施態様において、1日用量は150mg/日~350mg/日、例えば、150mg/日、160mg/日、170mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、220mg/日、230mg/日、240mg/日、250mg/日、260mg/日、270mg/日、280mg/日、290mg/日、300mg/日、310mg/日、320mg/日、330mg/日、340mg/日または350mg/日である。ある実施態様において、1日用量を単回投与の間に投与し得る。ある実施態様において、1日用量を、1日の間の2以上の用量(例えば、朝および夕に)として投与し得る。
【0401】
局所適用では、コンプスタチン類似体を、1種類以上の担体に懸濁または溶解させた有効成分を含有する適切な軟膏に製剤化し得る。局所投与用の担体としては、特に限定されないが、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウおよび水を含む。あるいは、薬学的に許容される組成物を、1種類以上の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解させたコンプスタチン類似体を含有する適切なローションまたはクリームとして製剤化してもよい。適切な担体としては、特に限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含む。
【0402】
全身投与は、経粘膜的手段または経皮的手段によるものであってもよい。経粘膜投与または経皮投与では、バリアを通過させるのに適した浸透剤を製剤に使用し得る。このような浸透剤は一般に、当技術分野で公知であり、例えば経粘膜的投与用に界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。例えば、鼻噴霧剤または坐剤の使用により経粘膜投与を実施することができる。経皮投与では、活性化合物を通常、一般に当技術分野で公知のように軟膏剤、塗布剤、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化する。
【0403】
化合物を直腸送達用の坐剤(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いたもの)または停留浣腸の形態に製剤してもよい。
【0404】
本発明のある実施態様において、例えばインプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含めた徐放製剤などのように、体内からの迅速な除去から化合物を保護する担体とともにコンプスタチン類似体またはその他の活性化合物を調製する。例えば、コンプスタチン類似体を微粒子製剤またはナノ粒子製剤中に組み込むか、あるいは微粒子製剤またはナノ粒子製剤中に封入し得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエーテル、ポリ乳酸、PLGAなどの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。リポソームまたはその他の脂質ベースの粒子を薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは当業者に公知の方法、例えば、米国特許4,522,811および/またはここに挙げる他の引用文献に記載されている方法に従って調製することができる。コンプスタチン類似体を含有するデポ製剤を用いてもよい。コンプスタチン類似体は、治療濃度が化合物を静脈内投与した場合よりも長時間得られるように、デポ剤から徐々に放出される。ある態様において、CRMは、コンプスタチン類似体にデポ特性を付与する。当業者は、徐放製剤、インプラントなどの調製に選択される材料および方法が、化合物の活性を保持するものであるべきであることを理解する。
【0405】
コンプスタチン類似体および/または追加の活性物質が薬学的に許容される塩として提供され得ることが理解される。薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基から得られるものを含む。適切な酸性塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩を含む。このほか、活性物質の性質によっては必要に応じて、薬学的に許容される塩をナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から調製することができる。
【0406】
ここに記載する薬学的に許容される担体、化合物および調製方法は例示的なものであり、非限定的なものであることが理解される。薬学的に許容される化合物および様々なタイプの医薬組成物の調製方法に関するさらなる記述については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. 21st Edition. Philadelphia, PA. Lippincott Williams & Wilkins, 2005を参照のこと。
【0407】
医薬組成物を所望の有益な効果を得るのに有効な量で投与することができる。ある実施態様において、有効量は、次の(i)補体介在障害の少なくとも1個の症状または徴候の減少;(ii)クオリティ・オブ・ライフ向上;(iii)入院削減;(iv)死亡率低下の利益の1個以上を提供するのに十分である。当業者は、特定の有益な効果は、少なくとも一部、処置する特定の障害のような種々の因子によることを認識する。当業者は、補体介在障害を有する対象で起こり得る症状および徴候を認識する。種々の補体介在障害の症状および徴候をここに提供する。例えば、対象がPNHまたはaHUSに罹患している、例えば、ある実施態様において、有益な効果は補体介在赤血球溶解である。ある態様において、有益な効果は、統計的有意であるおよび/または当業者の判断により治療的に意味がある。
【0408】
本発明のある実施態様において、細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を含む医薬組成物を非経口的に投与する。ある実施態様において、組成物を静脈内に投与する。ある実施態様において、組成物を静脈内注射により投与する。ある実施態様において、組成物を静脈内ボーラスまたは静脈内注入として投与する。ある実施態様において、組成物を静脈内点滴として投与する。ある実施態様において、組成物を静脈内ボーラスとして、次いで静脈内注入または静脈内点滴として投与する。ある実施態様において、静脈内注入を約1分、2分、3分、4分、5分、15分、20分、30分、60分または120分間にわたり実施する。ある実施態様において、静脈内点滴を約60分以上、例えば、約1時間、2時間、3時間またはそれ以上にわたり実施する。
【0409】
ある実施態様において、計約0.1~約2,000mg/kg/日、例えば約1~約1,000mg/kg/日、例えば約5~約500mg/kg/日の量のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、計約10~約100mg/kg/日、例えば約10~約50mg/kg/日、例えば約10~約20mg/kg/日の量のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約0.5~約10mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約1~約5mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約1~約3mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約3~約5mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約5~約7.5mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。ある実施態様において、約7.5~約10mg/kg/日のコンプスタチン類似体を投与する。様々な異なる投与レジメンを用いて所望の合計1日量を投与し得ることが理解される。例えば、24時間に1回の投与または複数回の投与で所望の量のコンプスタチン類似体を投与し得る。例えば、24時間以内に2用量以上を対象に投与することが可能であり、それぞれの用量を同じ長さの時間にわたり投与することも、異なる長さの時間にわたり投与することも可能である。
【0410】
ある実施態様において、24時間を超える間隔で細胞反応性、長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体を投与する。例えば、様々な実施態様において、平均して隔日、3~4日毎、毎週、隔週などで投与することができる。例えば、ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、少なくとも7日の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される。ある実施態様において、共有結合した長時間作用型または標的化コンプスタチン類似体が、数週間または数か月間、再処置を必要とせずに細胞、組織、器官を保護する。例えば、1~2週間、2~4週間、4~6週間、6~8週間またはそれ以上長い間隔の再処置で対象を維持し得る。ある実施態様において、皮下投与を用いて少なくとも一部の用量を投与する。例えば、ある実施態様において、例えば、約0.25ml~2mLの体積、例えば約1mlの体積で約0.1~5mg/kg/日、例えば約0.5~2mg/kg/日の投与が企図される。ある実施態様において、濃度は約50~約300mg/ml、例えば、約50~約100mg/mlまたは約100~約200mg/mlである。
【0411】
ある実施態様において、投与を毎日実施する。ある実施態様において、投与は1日あたり1回または2回である。実施例にさらに記載するとおり、例示長時間作用型コンプスタチン類似体の連日皮下投与は、5μMを十分に超える血中濃度を容易に達成する。ある実施態様において、筋肉内投与を同等量の化合物の投与に使用する。
【0412】
ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体を、治療有効量を使用して対象に投与し、このような投与は、少なくとも1μM、少なくとも2μM、少なくとも2.5μM、少なくとも3μM、少なくとも4μM、少なくとも5μM、少なくとも6μM、少なくとも7μM、少なくとも8μM、少なくとも9μM、少なくとも10μM、少なくとも11μM、少なくとも12μMまたは少なくとも13μM、少なくとも14μM、少なくとも15μM、少なくとも16μM、少なくとも18μMまたは少なくとも約20μMまたは少なくとも約25μMまたは4~約15μMまたは約20μMまたは約25μMの間の何れかの範囲を超えるレベルを達成する化合物の血中濃度をもたらす。ある実施態様において、このようなレベルが、1回静脈内注射または約5~7日間の連日皮下注射後、少なくとも約24時間または少なくとも約48時間または少なくとも約72時間または少なくとも約96時間または少なくとも約120時間または少なくとも約144時間維持される。持続レベルは長期間、例えば、最大約10日間、12日間、14日間以上達成され得る。
【0413】
ある実施態様において、対象を、約1.0μM、約2.0μM、約2.5μM、約3.0μM、約3.5μM、約4.0μM、約4.5μM、約5.0μM、約5.5μM、約6.0μM、約6.5μM、約7.0μM、約7.5μM、約8.0μM、約8.5μM、約9.0μM、約9.5μMまたは約10μMの定常状態レベルを維持するように処置する。ある実施態様において、定常状態レベルは、約1.0~約10.0μM、例えば、約2.0~約5.0μM、約2.5~約5.0μM、約5.0~約7.5μMまたは約7.5~約10μMまたは上記範囲の何れかの範囲内の何ずれか途中の値を有する。ある実施態様において、濃度は、例えば、ヒト血清を使用する修飾Hamアッセイを使用して(例えば、実施例8参照)、インビトロでヒト血清に暴露されたPNH患者の赤血球溶解を実質的に阻止するのに十分である。ある実施態様において、濃度は、例えば、ヒト血清を使用する修飾Hamアッセイを使用して(例えば、実施例8参照)、インビトロでヒト血清に暴露されたPNH患者の赤血球溶解を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%以上減少させるのに十分である。ある実施態様において、Hamアッセイを、補体を活性化するためにマグネシウムレベルを約0.005mol/Lに調節し、pHを約6.2に下げたヒト血清を使用して実施し得る。実施例18および19は、PNH患者からの赤血球溶解を阻害するここに記載するコンプスタチン類似体の能力を確認するデータを記載する。
【0414】
ある態様において、コンプスタチン類似体、例えば、長時間作用型コンプスタチン類似体は、PNH患者の赤血球が相当量のC3および/またはC3活性化産物を表面上に蓄積するのを保護し得る。例えば、コンプスタチン類似体、例えば、長時間作用型コンプスタチン類似体により補体介在溶解から保護されたPNH赤血球は、表面上に相当量のC3および/またはC3活性化産物を蓄積することからも保護され得る。当分野で知られるとおり、エクリズマブ(Soliris(登録商標), Alexion Pharmaceuticals. Inc.)は、多くの国々でPNHおよびaHUSの処置に対して承認されているヒト化抗C5モノクローナル抗体である(例えば、Dmytrijuk A, FDA report: eculizumab (Soliris) for the treatment of patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Oncologist. 2008 Sep; 13(9): 993-1000. doi: 10.1634/theoncologist.2008-0086. Epub 2008 Sep 10; Westra D., A new era in the diagnosis and treatment of atypical haemolytic uraemic syndrome. Neth J Med. 2012 Apr; 70(3): 121-9参照)。PNH RBCをエクリズマブに曝したとき、表面上に相当量のC3および/またはC3活性化産物が蓄積することから保護され、これは、これらの細胞のクリアランスおよび/または血管外溶血に寄与し得て(例えば、脾臓において)、それゆえに、エクリズマブでの処置にもかかわらずPNH患者の一部で観察される永続性血液学的異常、例えば、永続性貧血の少なくとも一部に寄与し得る。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、これは、エクリズマブによるMAC形成阻害により生じ得て、これは、細胞をMAC介在溶解から保護するが、C3活性化またはC3および/またはC3活性化産物沈着を阻止せず、GPI固着補体阻害タンパク質の欠失により、PNH細胞を表面C3活性化およびC3および/またはC3活性化産物沈着に脆弱性のままとする。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、ここに記載するコンプスタチン類似体がC3活性化を阻害し、それゆえにC3活性化産物の産生を阻害する能力は、相当な利益を提供し得る。ある実施態様において、エクリズマブで処置されたかまたは処置されており、溶血、例えば、貧血の原因となるおよび/または輸血を必要とするような、臨床的に顕著な溶血の証拠を示し続けている対象をここに記載するコンプスタチン類似体で処置する。ある実施態様において、コンプスタチン類似体を、コンプスタチン類似体(インビトロ(例えば、Hamアッセイにおける)またはインビボ)に暴露されたPNH RBCのC3および/またはC3活性化産物レベルが、健常対象からの正常RBCにより示される範囲内にするのに十分な濃度で使用する。ある実施態様において、コンプスタチン類似体(インビトロ(例えば、Hamアッセイにおける)またはインビボ)に暴露されたPNH RBCのC3および/またはC3活性化産物レベルが、平均レベルまたは正常の上限の約1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0内である。ある実施態様において、コンプスタチン類似体(インビトロ(例えば、Hamアッセイにおける)またはインビボ)に暴露されたPNH RBCのC3および/またはC3活性化産物レベルが、補体介在溶解に対して同等な保護を提供する濃度のSolirisに暴露されたPNH RBCにおけるC3および/またはC3活性化産物のレベルより低い。ある実施態様において、コンプスタチン類似体(インビトロまたはインビボ)に暴露されたPNH RBCのC3および/またはC3活性化産物レベルが、補体介在溶解に対して同等な保護を提供する濃度でエクリズマブに暴露されたPNH RBCにおけるC3および/またはC3活性化産物のレベルの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%または50%以下である。コンプスタチン類似体(インビトロまたはインビボ)に暴露されたPNH RBCにおけるC3および/またはC3活性化産物のレベルが、平均レベルまたは正常の上限の約1.2、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0である。ある実施態様において、PNH細胞は、II型PNH細胞、III型PNH細胞またはこれらの混合物を含むまたはこれらからなる。ある実施態様において、RBCは、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上がIII型および/またはII型RBCである。ある実施態様において、細胞は幾分I型細胞を含み得る。ある実施態様において、RBCは、表面上のCD59のようなGPI固着タンパク質のレベルに基づき、I型、II型またはIII型と分類でき、これは、例えば、該GPI固着タンパク質に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)または他の結合剤を使用する、フローサイトメトリー、免疫蛍光またはELISAを使用して測定し得る。ある態様において、細胞または表面上へのC3および/またはC3活性化産物の沈着阻止を、aHUSのような他の補体介在疾患、他の補体介在溶血性疾患または他の補体介在疾患におけるコンプスタチン類似体の効果の指標として使用し得る。例えば、ある実施態様において、コンプスタチン類似体は、aHUSを有する対象の内皮細胞におけるこのような沈着を阻止する。ある実施態様において、C3および/またはC3活性化産物のレベルを、例えば、C3および/または1個以上のC3活性化産物に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)または他の結合剤を使用する、フローサイトメトリー、免疫蛍光またはELISAを使用して測定し得る。ある実施態様において、C3活性化産物はC3b、C3cまたはC3dである。ある実施態様において、結合剤はC3dに結合する。ある実施態様において、結合剤はC3dおよび他のC3活性化産物の少なくとも1個に結合する。ある実施態様において、コンプスタチン類似体とインビトロで(例えば、Hamアッセイにおいて)接触させたPNH患者のRBCは、I型、II型およびIII型細胞の相対的比率(パーセンテージ)またはIII型およびI型、II型およびI型またはIII型およびII型の相対的比率またはパーセンテージが、不活性化補体(例えば、熱不活性化補体)を使用する対照アッセイとほぼ同じになるように活性化補体から保護される。ある実施態様において、コンプスタチン類似体とインビトロで(例えば、Hamアッセイにおいて)接触させたPNH患者のRBCは、I型、II型およびIII型細胞の相対的比率またはパーセンテージまたはIII型およびI型、II型およびI型またはIII型およびII型の相対的比率またはパーセンテージが、不活性化補体(例えば、熱不活性化補体)を使用する対照アッセイで得られた比率またはパーセンテージの以内であるように、活性化補体から保護される。ある実施態様において、補体を熱不活性化により不活性化でき、これは、補体成分または補体成分含有血清または血漿を56℃以上に加熱することにより実施し得る。
【0415】
ある実施態様において、LDH(赤血球に多く、溶血のマーカーとして機能する酵素)、ヘマトクリット、ヘモグロビンおよび/または網状赤血球測定のような1個以上の血液学的パラメータの測定を、溶解の量の決定に、追加的にまたは代替的に使用し得る。ある実施態様において、このような方法の1個以上を使用して、赤血球溶解の量、例えば、補体介在溶解に感受性のRBC、例えば、PNH患者細胞、aHUS患者細胞、他の補体介在血液障害を有する対象からの細胞、異常に高レベルの補体活性化に曝された細胞を決定し得る。ある態様において、本発明は、1個以上の細胞を、インビトロまたはインビボでここに記載するコンプスタチン類似体と接触させ、補体介在細胞損傷および/または細胞表面補体活性化または沈着の1個以上の指標に対するコンプスタチン類似体の効果を測定する方法を含む。ある実施態様において、1個以上の細胞を、十分な時間、十分な濃度で接触させると、正常範囲または正常範囲の下限または上限の5%、10%、15%、20%または25%以内に異常に高い値を低下させ、異常に低い値を上昇させる。
【0416】
ある態様において、本発明は、PNHのような補体介在溶血性疾患を有する患者に対する投与レジメンまたは投与レジメンの要素の1個以上を選択または修飾する方法を提供する。投与レジメンの要素の1個以上は、投与量、投与間隔、投与経路(例えば、静脈内または皮下)またはこれらの組み合わせを含み得る。投与量は、初期量、維持量または両者であり得る。ある実施態様において、1個以上の血液サンプルを患者から得て、コンプスタチン類似体、例えば、長時間作用型コンプスタチン類似体のための投与レジメンまたはその要素を、インビトロで溶解および/またはC3および/またはC3活性化産物の蓄積から患者のRBCを保護する所望のレベルを達成するように選択または修飾し得る。ある実施態様において、コンプスタチン類似体、例えば、長時間作用型コンプスタチン類似体の1回以上の投与量を患者に投与し、1個以上の血液サンプルをその後患者から得て、その表面上のC3および/またはC3活性化産物のレベルを評価し得る。ある実施態様において、投与レジメンまたはその要素、例えば、投与量、投与間隔または投与経路を、インビトロまたはインビボで溶解および/またはC3および/またはC3活性化産物の蓄積から患者のRBCを保護する所望のレベルを達成するために選択または修飾し得る。ある実施態様において、投与レジメンまたはその要素、例えば、投与量、投与間隔または投与経路を、インビボで血管外クリアランスおよび/または血管外溶解から患者のRBCを保護する所望のレベルを達成するために選択または修飾し得る。所望のレベルは、例えば、臨床的に意味のある利益を提供すると当分野で認められるレベル、特定の患者に臨床的に意味のある利益を提供するレベル、正常範囲内のレベル、医師により選択されたレベルまたは何らかの他の選択されたレベルであるであり得る。パラメータの正常範囲は当分野で知られているかおよび/または検査室、例えば、臨床検査室で確立された参照範囲であってよく、一般集団の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%または健常個体の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%で測定される関連するパラメータの値(場合により性別、年齢など人口統計学的変数の1個以上をマッチさせてよい)またはそこから得た生物学的検体(例えば血液サンプル)が参照範囲内に入る。参照範囲は、一般集団を代表するまたは健常個体を代表するサンプル集団を使用して確立し得る。
【0417】
ある実施態様において、CRMを含む長時間作用型コンプスタチン類似体を、CRMを含まないコンプスタチン類似体と比較して、対象に皮下または筋肉内投与した後、遅い全身性吸収速度を提供するよう設計し得る。ある実施態様において、特定のCRM特性、例えば、長さを選択して、少なくとも他のCRMのいくつかと比較して、皮下または筋肉内投与後、所望の全身性吸収速度を提供する。ある実施態様において、Cmaxを、同等な投与量のCRMと結合していないコンプスタチン類似体と比較して減少させ、それにより、該化合物ついて血漿濃度を所望の濃度域、例えば、治療濃度域に維持させ得る。ある実施態様において、長時間作用型コンプスタチン類似体組成物は、皮下で投与したとき、投与量が、注射部位の目視に基づき、投与後約1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、15時間、30時間、45時間、60時間、90時間または120時間で完全に吸収されたように見えることで特徴付けられる。
【0418】
初期処置段階が存在し得て、この間は、より頻繁に処置するおよび/または抗投与量を投与することは理解される。例えば、PNHまたはaHUSの対象では、対象の多くの割合のRBCを保護するのに複数回の投与が必要となる。この後、これより低い用量および/または低い頻度の投与を用いて、例えば、新たに形成されたRBCを保護し、かつ/または既存のRBCの保護を補充する。当然のことながら、類似の方法は、適宜何らかの疾患の処置に従い得る。ある実施態様において、静脈内投与を用いて処置を開始したのち、維持療法として別の経路、例えば、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与または真皮内投与に切り替える。疾患に応じて、処置を例えば、数か月、数年の間隔で、あるいは無期限に継続してもよい。適切な用量および投与レジメンは、少なくとも部分的にはコンプスタチン類似体(またはその他の活性物質)の効力および半減期によって決まるが、場合により、例えば、補体阻害および/または細胞保護の所望の程度などの予め選択された所望の応答が得られるまで用量を漸増させて投与することにより、特定のレシピエントに合わせて調整することができる。必要に応じて、特定の何れかの対象に対する具体的な用量レベルを少なくとも部分的には、使用する具体的な化合物の活性、処置する特定の状態、年齢、体重、全般的健康状態、投与経路、排泄速度、何れかの薬物の組合せおよび/または対象から得られた1個以上のサンプルで測定される補体タンパク質の発現もしくは活性の程度を含めた様々な因子に基づいて選択することができる。
【0419】
ある態様において、ここに記載するのは、患者がコンプスタチン類似体を含まない補体阻害剤での処置からコンプスタチン類似体、例えば、長時間作用型コンプスタチン類似体(LACA)、細胞反応性または標的化コンプスタチン類似体での処置に切り替えられる方法である。簡潔にするために、このような方法を、LACAを参照して記載するが、別に患者の細胞反応性または標的化コンプスタチン類似体での処置への切り替えに使用し得る。ある実施態様において、コンプスタチン類似体、例えば、LACAを投与する患者は、コンプスタチン類似体、例えば、LACAでの治療開始時、異なるコンプスタチン類似体を含まない補体阻害剤での処置下にある。コンプスタチン類似体を投与する患者が、コンプスタチン類似体での治療開始時異なるコンプスタチン類似体を含まない補体阻害剤での処置下にある実施態様において、患者の補体系(例えば、患者の血清を使用するエクスビボ血清誘発溶血アッセイのような適当なアッセイで測定して)は、LACAでの治療開始時既に阻害されていてよい。ある実施態様において、異なる補体阻害剤はC5阻害剤(すなわち、一般にC5への結合により、C5の活性化および/または活性を阻害する薬物)である。ある実施態様において、C5阻害剤は、エクリズマブのような抗C5抗体、ALN-CC5(Alnylam Pharmaceuticals)のような抗C5 siRNA、Coversin(Volution Immuno Pharmaceuticals, Ltd.)のような抗C5ポリペプチドまたは抗C5小分子である。ある実施態様において、異なる補体阻害剤はC3阻害剤であり得る。ある実施態様において、異なる補体阻害剤、例えば、C5阻害剤での処置を停止し、患者を、LACAでの処置に切り替える。LACAでの処置への切り替えは、唯一の補体阻害剤治療としてLACAでの処置に移行する間、患者が補体系阻害の臨床的に顕著な減少を経験しないような方法で実施するのが望ましいことは理解される。
【0420】
例えば、PNHのような補体介在溶血性貧血を有する患者の場合、患者は、異なる補体阻害剤での処置を停止したとき、例えば、LDHレベルおよび/またはエクスビボ血清溶血性活性で測定して溶血の臨床的に顕著な増加を経験しない。ある実施態様において、患者をモニターし、移行を、患者がLDHレベルの10%を超える測定した増加または溶血性活性の10%を超える測定した増加を経験しないように管理する。ある実施態様において、唯一の補体阻害剤治療としてのLACAでの処置への移行を、移行期の間エクスビボ血清溶血性活性の少なくとも80%阻害が維持されるような方法で実施する。“移行期”は、LACAの最初の投与の日から始まり、異なる補体阻害剤の最後の投与後の4倍X日で終わる期間であり、ここで、“X”は、異なる補体阻害剤がLACAの最初の投与前に患者に投与された投与間隔、例えば、推奨用量で使用したときの異なる補体阻害剤の推奨投与間隔をいう。薬物の“推奨用量”は、その薬物のUS FDAにより承認されたラベルの処方情報に特定された用量であるかまたは、薬物がFDAにより承認されていないならば、薬物を使用する特定の管轄における薬物の承認を担う政府機関により承認されたラベルの薬物の処方情報に特定された用量をいう。薬物の“推奨投与間隔”は、US FDAにより承認された処方情報および/またはラベルにおけるその薬物の特定された投与間隔であるかまたは、薬物がFDAにより承認されていないならば、薬物を使用する特定の管轄における薬物の承認を担う政府機関により承認された処方情報および/またはラベルに特定された投与間隔をいう。薬物は2以上の別個の推奨投与レジメンを有し得ることは理解される。このような投与レジメンは、異なる適応症に適切、異なる特徴を有する患者に適切または単に用量、投与間隔および投与経路の治療的に有効な組み合わせを変えるものであり得る。薬物が2以上の推奨投与レジメンを有するとき、用語“推奨投与間隔”は、使用する特定の投与経路により投与される特定の用量のための推奨投与間隔をいうことは理解される。
【0421】
ある実施態様において、LACAを、異なる補体阻害剤の推奨投与間隔の1.5倍を超えない期間内、例えば、異なる補体阻害剤の推奨投与間隔を超えない期間内、例えば、異なる補体阻害剤の推奨投与間隔の半分を超えない期間内に、少なくとも1用量の異なる補体阻害剤を受けている患者に最初に投与する。ある実施態様において、患者は、少なくとも1用量の異なる補体阻害剤を、患者のLACAの最初の投与の前2週間以内に投与されている。ある実施態様において、患者は、少なくとも1用量の異なる補体阻害剤を、患者のLACAの最初の投与前1週間以内に投与されている。ある実施態様において、患者は、1用量の異なる補体阻害剤を、患者のLACAの最初の投与前1週間に満たない期間に投与されている。ある実施態様において、患者は、1用量の異なる補体阻害剤を、患者のLACAの最初の投与日に投与されている。ある実施態様において、患者は、異なる補体阻害剤およびLACAの両方の治療的に有効な血中レベルが一定期間維持されるように、有効量の異なる補体阻害剤および有効量のLACAで処置される。このような共処置の期間は、例えば、1週間~2週間、2週間~4週間、4週間~6週間、6週間~8週間、8週間~12週間、12週間~26週間続き得る。ある実施態様において、共処置の期間は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月であり得る。ある実施態様において、共処置期間は、LACAの最初の投与から異なる補体阻害剤の最後の投与までの期間である。異なる補体阻害剤を、患者がLACAでの処置前に受けていた通常の維持用量で投与し得る。ある実施態様において、異なる補体阻害剤を、最終的に異なる補体阻害剤での処置が停止されるまで、用量を経時的に減らして(テーパリング)投与される。例えば、ある実施態様において、異なる補体阻害剤の用量を、維持用量の約67%、次いで最後の投与に維持用量の約33%に減らし得る。ある実施態様において、異なる補体阻害剤の用量を、維持用量の約75%、次いで維持用量の約50%、次いで最後の投与に維持用量の約25%に減らし得る。ある実施態様において、患者がLACAおよび異なる補体阻害剤の両方で処置される総期間(すなわち、LACAの最初の投与から最初の補体阻害剤の最後の投与までの期間)は2週間~26週間である。ある実施態様において、異なる補体阻害剤はテーパリングしない。その変わり、ある実施態様において、例えば、LACAが治療的に有効な血中レベルに到達した後、異なる補体阻害剤の血中レベルを、代謝または他に体から除去されるに任せて低減させ得る。ある実施態様において、患者は、患者の血清によるエクスビボ血清誘発溶血について、移行の間および/またはその後モニターされる。ある実施態様において、患者の血清によるエクスビボ血清誘発溶血が、異なる補体阻害剤での処置から唯一の補体阻害剤としてLACAでの処置の移行の間測定して、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%減少しないならば、LACAの用量を増加してよい。ある実施態様において、C3dのようなC3フラグメントによるPNH患者の赤血球のオプソニン化の減少は、患者が治療有効量のLACAを受けている指標として働く。ある実施態様において、異なる補体阻害剤、例えば、C5阻害剤およびLACAの両方での処置を、少なくとも6ヶ月、例えば、6~12ヶ月、12~24ヶ月またはそれ以上(例えば、無期限に)続く。ある実施態様において、異なる補体阻害剤および/またはLACAを、患者に唯一の補体阻害剤治療として使用するよりも低用量で投与する。類似の方法を、患者の場合によりLACAでの処置から異なる補体阻害剤での処置への切り替えまたは患者の最初のLACAでの処置から異なるLACAでの処置への切り替えに使用し得ることは、注意すべきである。
【0422】
ある態様において、ここに記載するのは、対象への長時間作用型コンプスタチン類似体(LACA)の投与に有用なある用量、投与レジメン、組成物および方法である。ある態様において、ここに記載するある用量、投与レジメン、組成物および方法は、40kDの分子量を有する直鎖状PEGおよび2個のコンプスタチン類似体部分(一つは直鎖状PEGの各末端に結合している)を含むLACAの健常ヒト対象またはPNHを有する患者への皮下または硝子体内投与を含むまたはこの同じLACAのAMDを有する患者への硝子体内投与を含む臨床試験で使用されている(実施例参照)。従って、ある態様において、ここに記載する用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、約40kDの分子量を有する直鎖状PEGおよび2個のコンプスタチン類似体部分を含むLACAを対象(例えば、補体介在障害を有する患者)に投与し得る。ある実施態様において、2個のコンプスタチン類似体部分は、直鎖状PEGの末端に結合される(すなわち、一つのコンプスタチン類似体部分がPEGの各末端に結合される)。ある実施態様において、各コンプスタチン類似体部分は、そのC末端により、直鎖状PEGに結合される。ある実施態様において、LACAはCA28-2GS-BFまたはCA28-2TS-BFであり得る。
【0423】
ここに記載するとおり、コンプスタチン類似体部分は、反応性官能基、例えば、第一級または第二級、スルフヒドリルまたはスルフヒドリル反応性基を含む側鎖を有するアミノ酸(またはこのようなアミノ酸を含むアミノ酸配列)を環状部分を含むコンプスタチン類似体部分の部分から離すスペーサーを含んでよくまたはこのような連結部分は存在しなくてよい。存在するとき、このようなスペーサー部分は、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル鎖、オリゴ(エチレングリコール)鎖および/またはここでL(またはLP1、LP2またはLP3)により示される他の部分の何れかを含み得る。スペーサー部分を含む2以上のコンプスタチン類似体部分が化合物に存在するとき、スペーサー部分は、種々の実施態様において、同一でも異なってもよい。用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、何れかのこのようなスペーサー部分を含むコンプスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体を投与し得る。
【0424】
またここに記載するとおり、コンプスタチン類似体部分を、種々の実施態様において、多種多様な異なる結合の何れかによりPEG(または他のポリマー)と結合させ得る。ある実施態様において、(1以上の)コンプスタチン類似体部分を、CRMに、不飽和アルキル部分、非芳香族環状環系を含む部分、芳香族部分、エーテル部分、アミド部分、エステル部分、カルボニル部分、イミン部分、チオエーテル部分、アミノ酸残基および/または上記L(またはLP1、LP2またはLP3)として示される部分の何れかを含む部分により結合させ得る。例えばここに記載するとおり、特定の実施態様において、(1以上の)コンプスタチン類似体部分を、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合または2以上のこのような結合の組み合わせによりCRMに結合させ得る。2以上のコンプスタチン類似体部分が化合物に存在するとき、種々の実施態様において、ポリマーへの結合は同一でも異なってもよい。用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、何れかのこのような部分によりCRMに結合したコンプスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体を投与し得る。
【0425】
ある実施態様において、ここに記載する用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、ここに記載する臨床試験で使用したLACAと1以上の方式で異なるLACAを投与し得る。例えば、このようなLACAは、(i)CRMとして異なるポリマー(例えば、POZ、ポリペプチド、分枝PEG)、(ii)CRMとして40kDより低いまたは高い分子量を有するポリマー;(iii)異なる数のコンプスタチン類似体部分(例えば、2個のコンプスタチン類似体部分の代わりに1、3、4またはそれ以上のコンプスタチン類似体部分)、(iv)配列番号28の代わりに配列番号28と異なる配列を含む1以上のコンプスタチン類似体部分(例えば、ここに記載する他のコンプスタチン類似体部分の何れか);(v)リシンの代わりに第一級または第二級またはスルフヒドリルまたはスルフヒドリル反応性基のような異なる反応性官能基を含む側鎖を有する異なるアミノ酸残基(またはこのようなアミノ酸残基を含むアミノ酸配列)で伸張された(1以上の)コンプスタチン類似体部分;(vi)コンプスタチン類似体部分のC末端ではなくN末端でCRMに結合した(1以上の)コンプスタチン類似体部分;(vii)1以上のコンプスタチン類似体部分の遊離末端に異なる遮断部分;(viii)(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)および(vii)の2以上の何れかの組み合わせを含み得る。
【0426】
上記のとおり、ある態様において、ここに記載する用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、CRMとして約40kDの分子量を有するポリマー(例えば、PEG)、例えば、36kD~44kD、37kD~43kD、38kD~42kDまたは39kD~41kDの分子量を有するポリマーを含むLACAを投与し得る。しかしながら、ある実施態様において、用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、分子量が広い範囲にあるポリマーを含むLACAを投与し得る。ある実施態様において、特に興味深いのは、ポリマーの分子量が45kDを超えないことである。ある実施態様において、ポリマーは、10kD~45kDの分子量を有する。ある実施態様において、ポリマーは、20kD~45kDの分子量を有する。ある実施態様において、ポリマーは、30kD~40kDの分子量を有する。ある実施態様において、ポリマーは、30kD~45kDの分子量を有する。ある実施態様において、ポリマーは、35kD~45kDの分子量を有する。ある実施態様において、ポリマーは、45kDより大きい、例えば、50kDまでの分子量を有する。ポリマーの分子量は、ここに記載する組成物におけるポリマー分子の平均分子量をいい得ると理解される。
【0427】
ある実施態様において、組成物は、薬学的に許容される担体として5%デキストロースを含む。しかしながら、あらゆる薬学的に許容される担体が使用され得る。
【0428】
ここに記載する用量、投与レジメン、組成物および/または方法を使用して、種々の実施態様において、ここに記載する補体介在の何れかを処置できる。このような障害は、例えば、PNH、NMO、重症筋無力症、aHUS、COPD、特発性肺線維症、移植後臓器拒絶(例えば、急性または慢性拒絶)、類天疱瘡およびAMDを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、補体介在障害は、慢性補体介在障害、例えば、ここに記載する慢性補体介在障害の何れかである。ある実施態様において、補体介在障害は、Th17関連障害、例えば、ここに記載するTh17関連障害の何れかである。
【0429】
ある態様において、ここに記載するのは、LACAの皮下投与による患者の処置に有用な種々の用量、投与レジメン、組成物および方法である。40kD PEG部分を含むLACAでの実験において、溶解度ではなく粘性が、ある内径またはゲージ数の針により、組成物のある体積を送達するのに必要な時間および圧力の観点から、医師および患者に許容される方式で、皮下またはIVT注射により投与され得る、LACAを含む組成物の濃度を制限する主因子であることが判明した。記載するゲージ数は、管状針の外径であり、高いゲージ数は、外径が小さいことを示す。一般に、高いゲージ数の針は、低いゲージ数の針と比較して疼痛および/または組織損傷への関連が少ない可能性があるため(またはこれらと関連すると認められ得るため)、患者および医師に好まれ得る。内径は外径および壁の厚さの両方に依存する。標準的な針について、ゲージ数が高いほど、内径は小さい(例えば、27ゲージ針は29ゲージ針より大きな内径を有し、これは順に30ゲージ針より大きな内径を有する)。
【0430】
ある実施態様において、LACAを含む組成物、例えば、医薬組成物は、150mg/mlの濃度を有する。40kD PEGを含むLACAの150mg/ml溶液を、27ゲージ針を使用して容易に送達できることが判明した。従って、ある実施態様において、27ゲージ針を、150mg/ml、例えば、75mg/ml~90mg/ml、85mg/ml~95mg/ml、90mg/ml~100mg/ml、95mg/ml~105mg/ml、100mg/ml~110mg/ml、105mg/ml~115mg/ml、110mg/ml~120mg/ml、115mg/ml~125mg/ml、120mg/ml~130mg/ml、125mg/ml~135mg/ml、130mg/ml~140mg/ml、135mg/ml~145mg/ml、140mg/ml~150mg/ml、例えば、100mg/ml、125mg/mlまたは150mg/mlまでの濃度で約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAの一用量の投与に、使用する。ある実施態様において、約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAを含む組成物は、150mg/mlまで、例えば、75mg/ml~90mg/ml、85mg/ml~95mg/ml、90mg/ml~100mg/ml、95mg/ml~105mg/ml 100mg/ml~110mg/ml、105mg/ml~115mg/ml、110mg/ml~120mg/ml、115mg/ml~125mg/ml、120mg/ml~130mg/ml、125mg/ml~135mg/ml、130mg/ml~140mg/ml、135mg/ml~145mg/ml、140mg/ml~150mg/ml、例えば、100mg/ml、125mg/mlまたは150mg/mlの濃度を有する。ある実施態様において、40kD PEGを含むLACAを含む組成物は、150mg/ml~180mg/mlの濃度を有する。ある実施態様において、約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAを含む組成物は、180mg/ml~200mg/mlの濃度を有する。ある実施態様において、27ゲージ針を使用して、150mg/ml~160mg/ml、160mg/ml~170mg/ml、170mg/ml~180mg/ml、180mg/ml~190mg/mlまたは190mg/ml~200mg/ml濃度で約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAを含む組成物を投与する。当然、ゲージ数の低い針(例えば、25、26ゲージ)を、27ゲージ(またはそれ以上)のゲージ数の針の代わりに使用してもよい。
【0431】
本発明は、40kD PEGを含むLACAの200mg/ml溶液が、25ゲージ針を使用して容易に送達できるとの発見を含む。ある実施態様において、25ゲージ針または26ゲージ針を使用して、200mg/ml以上の濃度で40kD PEGを含むLACAを含む組成物を投与する。ある実施態様において、25ゲージ針または26ゲージ針を使用して、200mg/ml~225mg/mlまたは225mg/ml~250mg/mlの濃度でLACAを含む組成物を投与する。
【0432】
ある態様において、本発明は、本発明によるLACAの投与のためのある薄壁針の特定の有用性を教示する。例えば、ある実施態様において、薄壁針を、LACAの皮下、筋肉内または眼内(例えば、硝子体内)注射に使用する。薄壁針は、あるゲージについて標準針と同一の外径を有するが、内径は大きい。例えば、薄壁針は、標準針の1~2番号低いゲージと同じ内径サイズを有し得る(例えば、29ゲージ薄壁針は、27ゲージまたは28ゲージ標準針と同じ内径であるが、標準29ゲージ針と同じ外径を有し得る)。内径の増加は、ある圧力で流量の相当な増加および/またはある流動を維持するのに必要な圧力の相当な減少をもたらし得る。低い圧力は、ある粘性の組成物の投与のために必要な注射力が低いことを意味する。一般に、低注射力は投与を促進し、それ故に一般に望ましい特性と考えられる。ある実施態様において、薄壁針は、針の全長をとおして均一なある内径を有する。ある実施態様において、薄壁針は、針の全長に添って内径が変わる。例えば、直径は、針の一端で標準29ゲージ針と同様であり、他端で標準27ゲージ針の直径まで進み得る。ある実施態様において、マイクロテーパー針が使用され得る。ある実施態様において、メス様先端を有する針が使用され得る。針の長さは変わり得る。ある実施態様において、5mmまたは6mm針のような短針が使用され得る。ある実施態様において、6mm~8mmまたは8mm~12mmの長さの針が使用され得る。適当な針およびシリンジは、例えば、Becton Dickinson and Company(BD)、Terumo Corp.などから市販されている。
【0433】
ある実施態様において、ある粘性および/または濃度を有する組成物を、選択した流速および/または選択した注射力で同じ粘性および/または濃度の組成物を投与するために好ましくは使用される標準針のゲージサイズより、1または2番号高いゲージを有する薄壁針を使用して投与し得る。例えば、ある実施態様において、所望の流速および/または注射力を達成するために、好ましくは25ゲージ標準針を使用して投与される組成物を、26または27ゲージ薄壁針を使用して、このような流速および/または注射力で投与できる。ある実施態様において、所望の流速および/または注射力を達成するために、好ましくは27ゲージ標準針を使用して投与される組成物を、28または29ゲージ薄壁針を使用して、このような流速および/または注射力で投与できる。ある実施態様において、所望の流速および/または注射力を達成するために、好ましくは29ゲージ標準針を使用して投与される組成物を、30または31ゲージ薄壁針を使用して、このような流速および/または注射力で投与できる。ある実施態様において、29ゲージ薄壁針を使用して、150mg/ml~160mg/ml、160mg/ml~170mg/ml、170mg/ml~180mg/ml、180mg/ml~190mg/mlまたは190mg/ml~200mg/mlの濃度で約40kDの分子量を有するポリマー(例えば、PEG)を含むLACAを含む組成物を投与する。当然、低ゲージ数(例えば、27、28ゲージ)の薄壁針を、29ゲージの(またはそれより高い)ゲージ数の薄壁針の代わりに使用し得る。
【0434】
ある態様において、個々のSC注射のための適当な体積は、最大2ミリリットル(ml)~3mlであり得る。それ故に、例えば、ある実施態様において、1.0mlより大きな体積、例えば、1.1ml、1.2ml、1.3ml、1.4ml、1.5ml、1.6ml、1.7ml、1.8ml、1.9mlまたは2.0mlを、SC注射により投与し得る。ある実施態様において、2.0mlより大きな体積、例えば、2.1ml、2.2ml、2.3ml、2.4または2.5mlを、SC注射により投与し得る。ある実施態様において、2.5mlより大きな体積、例えば、2.6ml、2.7ml、2.8ml、2.9mlまたは3.0mlを、SC注射により投与し得る。ある実施態様において、注射あたり1ml以下、例えば、0.5ml、0.6ml、0.7ml、0.8ml、0.9mlまたは1.0mlの体積を使用する。ある実施態様において、患者に投与される総1日体積は、1.0~2.5ml、例えば、1.0ml、1.1ml、1.2ml、1.3ml、1.4ml、1.5ml、1.6ml、1.7ml、1.8ml、1.9ml、2.0ml、2.1ml、2.2ml、2.3ml、2.4mlまたは2.5mlである。ある実施態様において、患者に投与する総1日体積は2.5~3.0ml、例えば、2.5ml、2.6ml、2.7ml、2.8ml、2.9mlまたは3.0mlである。2回のSC注射を投与するある実施態様において、最大5mlの体積が投与され得る。ある実施態様において、1.0~2.5mlの体積が、単一1日注射として投与される。ある実施態様において、1.0~2.5mlの体積が、2回の別々の注射として投与される。ある実施態様において、2.5~3.0mlの体積が、2回の別々の注射として投与される。2回の別々の注射で投与される体積は、一体となって、所望の量のLACAを投与するのに十分な総体積を提供する限り、同一でも異なってもよい。ある実施態様において、2回の別々の注射を、最大12時間離して投与する。しかしながら、ある実施態様において、2回の別々の注射を、互いに最大5分、10分、15分、20分、30分または60分で投与する。
【0435】
ある態様において、1以上の固定用量を、体重および/または体表面積が、比較的広い範囲にわたり異なり得る異なる患者に使用し得る。ある実施態様において、2、3以上の異なる固定用量を提供してよく、ここで、異なる用量は、例えば体重および/または体表面積が種々の範囲内に入る個体により適し得る。
【0436】
ある実施態様において、固定用量を使用して、健常対象の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%以上および/またはここに記載する特定の障害についての処置を必要とする患者の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%以上に、所望のレベルの補体阻害(例えば、血漿のサンプルで測定して)を達成するコンプスタチン類似体(例えば、LACA)の量を投与し得る。ある実施態様において、固定用量を使用して、ここに記載する特定の障害についての処置を必要とする患者の少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも90%で所望のレベルの有効性(例えば、適切なエンドポイントを使用して測定して)を達成する量で投与し得る。ある態様において、ここに記載する用量は、皮下(SC)投与に特に有用であり得る。しかしながら、ある実施態様において、ここに記載する用量を、皮下経路の代わりにまたはこれに加えて、静脈内、経皮または筋肉内のような他の非経腸投与経路を使用して、対象に投与し得る。それ故に、記載が特定の用量の皮下投与に関する場合、その開示は、このような用量が異なる投与経路(例えば、静脈内、経皮または筋肉内)により投与される実施態様を提供する。
【0437】
ある実施態様において、2個のコンプスタチン類似体部分および約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAの非経腸投与、例えば、皮下投与のための総1日用量は、少なくとも30mg/日、例えば、少なくとも45mg/日、例えば、少なくとも90mg/日、例えば、少なくとも150mg/日、例えば、少なくとも180mg/日である。ある実施態様において、1日用量は、90mg/日~180mg/日である。ある実施態様において、1日用量は、180mg/日~270mg/日である。ある実施態様において、用量は、例えば、180mg/日~230mg/日である。ある実施態様において、用量は、少なくとも190mg/日、例えば、190mg/日~240mg/日である。ある実施態様において、用量は、少なくとも200mg/日、例えば、200mg/日~250mg/日である。ある実施態様において、用量は、少なくとも210mg/日、例えば、210mg/日~260mg/日である。ある実施態様において、用量は、少なくとも220mg/日、例えば、220mg/日~270mg/日である。ある実施態様において、用量は、少なくとも230mg/日、例えば、230mg/日~280mg/日である。ある特定の実施態様において、用量は180mg/日、190mg/日、200mg/日、205mg/日、210mg/日、215mg/日、220mg/日、225mg/日、230mg/日、235mg/日、240mg/日、245mg/日、250mg/日、255mg/日、260mg/日、265mg/日または270mg/日である。ある実施態様において、180mg/日~270mg/日の用量が、1.5ml~2.0ml体積の1日1回注射で投与される。ある実施態様において、180mg/日~270mg/日の用量が、最大2.0~2.5mlの体積の1日1回注射で投与される。ある実施態様において、180mg/日~270mg/日の用量が1日2回注射で投与され、各2.0ml未満、例えば、1.0ml~1.9mlの体積を有する。例えば、特定の実施態様において、270mg/日の1日用量を、1.5mlの体積の単一注射で投与する。他の特定の実施態様において、270mg/日の1日用量を、1.8mlの体積の単一注射で投与する。他の特定の実施態様において、270mg/日の1日用量が、各0.9ml体積の1日2回注射で投与される。ある特定の実施態様において、270mg/日の1日用量が、各0.9ml~1.2ml、例えば、1.0ml、1.05ml、1.1ml、1.15mlまたは1.2mlの体積の1日2回注射で投与される。ある特定の実施態様において、270mg/日の1日用量が、各1.2ml~1.5ml、例えば、1.2ml、1.25ml、1.35ml、1.40ml、1.45mlまたは1.5mlの体積の1日2回注射で投与される。ある特定の実施態様において、270mg/日の1日用量が、各1.5ml~1.9ml、例えば、1.55ml、1.6ml、1.65ml、1.7ml、1.75ml、1.8ml、1.85mlまたは1.90mlの体積の1日2回注射で投与される。
【0438】
ある実施態様において、2個のコンプスタチン類似体部分および約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAの非経腸投与、例えば、皮下投与のための総1日用量は270mg/日~360mg/日である。ある実施態様において、用量は270mg/日~300mg/日である。ある実施態様において、用量は300mg/日~330mg/日である。ある実施態様において、用量は330mg/日~360mg/日である。ある特定の実施態様において、用量は295mg/日、300mg/日、305mg/日、310mg/日、315mg/日、320mg/日、325mg/日、330mg/日、335mg/日、340mg/日、345mg/日、350mg/日、355mg/日または360mg/日である。ある実施態様において、270mg/日~360mg/日の用量が、1.5ml~2.0ml体積または最大2.0~2.5mlの体積の1日1回注射の1日1回注射で投与される。ある実施態様において、270mg/日~360mg/日の用量(例えば、上記用量の何れか)が1日2回注射で投与され、各2.0ml未満、例えば、1.0ml~1.9ml、例えば、1.0ml、1.05ml、1.10ml、1.15ml、1.20ml、1.25ml、1.30ml、1.35ml、1.40ml、1.45ml、1.50ml、1.55ml、1.60ml、1.65ml、1.70ml、1.75ml、1.80ml、1.85ml、1.90mlの体積を有する。
【0439】
ある実施態様において、2個のコンプスタチン類似体部分および約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAのSC投与のための総1日用量は、少なくとも360mg/日、例えば、360mg/日~540mg/日である。ある実施態様において、総1日用量は360mg/日より多い、例えば、最大約540mg/日。例えば、総1日用量は、370mg/日、380mg/日、390mg/日、400mg/日、410mg/日、420mg/日、430mg/日、440mg/日、450mg/日、460mg/日、470mg/日、480mg/日、490mg/日、500mg/日、510mg/日、520mg/日、530mg/日または540mg/日であり得る。ある実施態様において、360mg/日~540mg/日の用量を、例えば、約2.0~2.5mlまたは2.5ml~3.0mlの体積の、1日1回注射で投与する。ある実施態様において、360mg/日から約540mg/日までの用量が1日2回注射で投与され、各2.0ml未満、例えば、1.0ml~1.9mlの体積を有する。
【0440】
ここに皮下投与(または他の非経腸投与経路)について記載する用量および体積を、独立型針およびシリンジ、ペンデバイス、自己注射器または当業者に知られる他の手段を使用して投与し得ることは理解される。
【0441】
ある実施態様において、例えば、ここに記載する投与レジメンの何れかに従うおよび/または用量または投与デバイスの何れかを使用する、皮下投与または他の非経腸投与経路によるコンプスタチン類似体、例えば、LACAでの処置を、何れかの期間、例えば、無期限に続けてよい。ある実施態様において、患者を、短期コースの処置(例えば、最大1週間、2週間または最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月)で処置し得る。ある実施態様において、このような短期コースの処置は、長期寛解(例えば、再燃または増悪の非存在により証明される)が間欠性処置で持続するように、障害(例えば、PNH、NMO、重症筋無力症、COPD)の経過を修飾するのに十分であり、すなわち、LACAは、処置コースの間に体からウォッシュアウトされることが可能である。ある実施態様において、対象を、短期コースで1年に1回または2回、2年毎など処置し得る。ある実施態様において、短期コースの処置は、長期寛解または治癒がさらに処置をせずとも達成されるように、障害(例えば、PNH、NMO、重症筋無力症、COPD、喘息、特発性肺線維症、脈管炎、類天疱瘡)の経過を修飾し得る。何らかの理論に拘束されることを望まないが、コンプスタチン類似体、例えば、LACAでの短期コースの処置は、補体介在障害における免疫系攻撃の標的である細胞または組織(例えば、タンパク質または脂質のようなそれらの成分)に対する免疫応答を永続化するサイクルを妨害するのに十分であり得る。ある実施態様において、例えば、短期コースのLACAでの処置は、骨髄(例えば、造血幹細胞)(例えば、PNHを有する患者において)、神経系(例えば、神経細胞、グリア細胞)(例えば、NMOまたは重症筋無力症を有する患者において)、循環系(例えば、内皮細胞)(例えば、脈管炎を有する患者において)、呼吸器系(例えば、COPD、喘息または特発性肺線維症を有する患者において)、外被系(例えば、類天疱瘡を有する患者において)における細胞または組織に対する免疫応答を永続化するサイクルを妨害するのに十分であり得る。
【0442】
ある態様において、ここに記載するのは、例えば、網膜、LACAの硝子体内(IVT)投与による、後眼部に影響する補体介在眼障害の処置を必要とする患者の処置のための、種々の用量、投与レジメン、組成物および使用方法である。ある実施態様において、眼障害は、AMD、例えば、進行型AMD(地図状萎縮(GA)または血管新生AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障またはブドウ膜炎である。
【0443】
ある実施態様において、2個のコンプスタチン類似体部分および約40kDの分子量を有するPEGを含むLACAの硝子体内注射の用量は、5mg~20mgである。ある実施態様において、用量は10mgである。ある実施態様において、用量は10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mgまたは20mgである。ある特定の実施態様において、用量は15mgである。ある実施態様において、上記用量の何れかを、90~110マイクロリットルの体積、例えば、100マイクロリットルの体積で硝子体内注射により投与する。ある実施態様において、上記用量の何れかを、27、28、29または30ゲージ針を使用して、硝子体内注射により投与する。フェーズ1b臨床試験において、29ゲージ針を使用して、硝子体内注射により投与された100マイクロリットルの体積で最大20mg(すなわち、5mg、10mgおよび20mg)の用量が、AMDを有する患者により良好な耐容性を示したことが判明した。ある実施態様において、IVT注射による10秒以下での投与が可能な用量と針ゲージの組み合わせを選択する。ある実施態様において、IVT注射による5~6秒以下での用量の投与を可能とする用量と針の組み合わせを使用する。100マイクロリットルの体積(150mg/ml)で15mgの用量が、5~6秒以下で薄壁27ゲージ針により硝子体内注射により投与するための好都合な粘性を有する組成物をもたらすことが判明した。
【0444】
ある実施態様において、LACAを含む組成物の一用量を、100マイクロリットル以上の体積でのIVT注射により投与する。例えば、100~110マイクロリットル、110~125マイクロリットルまたは125~150マイクロリットルの体積が使用され得る。このような大きな体積は、その用量を送達するのに必要な時間を延ばすことなくおよび/または低ゲージ(広直径)針の使用を必要とすることなく、100マイクロリットル注射体積と比較して、高用量の投与を可能とし得る。総用量のこのような増加は、増加体積に比例し得る。例えば、50%の用量体積増加は、その用量を送達するのに必要な時間を延ばすことなくおよび/または低ゲージ針の使用を必要とすることなく投与される、LACA量の50%増加を可能とする。
【0445】
ある実施態様において、LACAを含む組成物の一用量を、月に1回、6週間毎または2ヶ月毎(すなわち、隔月)の眼投与(例えば、IVT注射)により投与する。ある実施態様において、LACAを含む組成物の一用量を、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎または6ヶ月毎またはそれ以下、しばしば、例えば、9ヶ月毎、毎年のIVT注射により投与する。それ故に、ある実施態様において、患者は、一般にほぼ等しい間隔で、1年に1~6回注射を受け得る。ある実施態様において、患者は、最初毎月の注射(例えば、最初の3~6ヶ月または最初の6~12ヶ月)、続いて低頻度の投与(例えば、2ヶ月毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎または6ヶ月毎またはそれ以下、しばしば、例えば、9ヶ月毎、毎年)により処置される。
【0446】
ある実施態様において、前記投与レジメンの何れかによるIVT注射によるLACAでの処置は、無期限に続き得る。ある実施態様において、患者を短期コースの処置(例えば、1回、2回、3回、4回、5回または6回IVT注射)で処置し得る。ある実施態様において、短期コースの処置は、障害(例えば、AMD、例えば、GAまたは早期または中間型AMD)の進行を、さらなる処置が必要でないように、停止または実質的に停止させるのに十分であり得る。例えば、短期コースのLACAでの処置は、網膜または網膜色素上皮に対する免疫応答を永続化させるサイクルの妨害に十分であり得る。
【0447】
ある実施態様において、LACAを、比較的短いバレルおよび/または比較的大きなプランジャーサイズのような、摩擦および/または必要な注射力を低減する1以上の設計特徴を備えたシリンジを使用して投与する。
【0448】
種々の分子量のPEGを含むLACAを使用して実施した実験において、低分子量PEG(例えば、10kD~30kD)を含むLACAの溶液が、同じ濃度(mg/ml)の40kD PEGを含むLACAと比較して粘性が低減していることが判明した。低粘性は、高ゲージ数針(例えば、27ゲージではなく29ゲージ)の使用を容易にする。ある実施態様において、40kD未満の分子量を有するポリマー、例えば、PEGを含むLACAを、40kDの分子量以上を有するポリマー、例えば、PEGを含むLACAより小さい内径および/または高いゲージ数の針を使用して投与し得る。ある実施態様において、40kD未満の分子量を有するポリマー、例えば、PEGを含むLACAを、80mg/ml~150mg/ml、例えば、約100mg/mlまたは約125mg/mlの濃度で投与し得る。ある実施態様において、40kD未満の分子量を有するポリマー、例えば、PEGを含むLACAを、150mg/ml~250mg/mlの濃度で投与し得る。ある実施態様において、40kD未満の分子量を有するポリマー、例えば、PEGを含むLACA(例えば、10kD~35kD)を、250mg/ml、例えば、300mg/mlまで、300mg/ml~400mg/ml、400mg/ml~500mg/ml以上の高濃度で投与し得る。
【0449】
ある実施態様において、約40kD未満(例えば、10kD~35kD)の分子量を有するCRM(例えば、PEG、POZ、ポリペプチドまたは他のポリマー)および特定の数(例えば、1、2、3、4)のコンプスタチン類似体部分を含むLACAを、約40kDの分子量を有するCRMを含むLACAについて上記した量の何れかとモル濃度の観点でほぼ同じ用量で投与でき、なおほぼ同じ数のコンプスタチン類似体部分を含みながら、重量での用量低減がもたらされる。用量(重量で)あたり低い総量の化合物の投与は、投与体積の減少を可能とし得る。投与体積減少は、注射数の減少を可能とし得る(例えば、ある実施態様において、1日2回注射の代わりに1日1回注射)および/または注射時間(個々の用量を投与する時間)減少を提供し得る。低総用量(重量で)は、ある体積での化合物の低濃度(重量で)の使用を可能とし、粘性を低減させ、小内径の針の使用および/または短い注射時間を可能とする。ある実施態様において、約40kD未満(例えば、10kD~30kD)の分子量を有するCRM(例えば、PEG、POZ、ポリペプチドまたは他のポリマー)および特定の数(例えば、1、2、3、4)のコンプスタチン類似体部分を含むLACAを、約40kDの分子量を有するCRMを含むLACAより高いモル投与量で投与でき、用量あたり大きな数のコンプスタチン類似体部分の投与がもたらされる。ある実施態様において、モル投与量は、例えば、CRMの分子量により、最大1.2倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍または5倍大きい。
【0450】
ある実施態様において、約40kD未満(例えば、10kD~35kD)の分子量を有するCRM(例えば、PEG、POZ、ポリペプチドまたは他のポリマー)および特定の数(例えば、1、2、3、4)のコンプスタチン類似体部分を含むLACAを、約40kDの分子量を有するCRMを含むLACAに関して上に記載する用量に対して、単位時間あたり低用量(重量で)で(例えば、低1日用量、低1週間用量、低1ヶ月用量など)、単位時間あたりほぼ同じ用量または単位時間あたり高用量で投与できる。ある実施態様において、約40kD未満(例えば、10kD~30kD)の分子量を有するCRMを含むLACAの用量(重量)は、40kD CRMを含むLACAの1日用量に対して、最大約3倍(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍)低いかまたは高い可能性が企図される。
【0451】
本発明は、コンプスタチン類似体および追加の治療の組み合わせ治療を包含する。このような追加の治療法は、当技術分野で使用されている、あるいは疾患に罹患している対象の処置に有用であると考えられる何れかの薬物の投与を含み得る。例えば、ある実施態様において、LACA、細胞反応性または標的化コンプスタチン類似体を、C5阻害剤(例えば、エクリズマブまたはここに記載するもしくは当分野で知られる他のC5阻害剤の何れか)と組み合わせて、患者、例えば、PNHまたはここに記載する他の補体介在障害の何れかを有する患者に投与する。ある実施態様において、LACA、細胞反応性または標的化コンプスタチン類似体を、滲出型AMDを有する対象に抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と組み合わせて投与する。抗VEGF剤は、ラニビズマブ(Lucentis)およびベバシズマブ(Avastin)のようなVEGFに結合する抗体、ラニビズマブ(Eylea、VEGF-Trapとしても既知)のようなVEGF受容体の可溶性を含むポリペプチドを含む。
【0452】
2種類以上の治療法(例えば、化合物または組成物)を互いに“併用して”用いる、あるいは投与する場合、これらの治療法は本発明の様々な実施態様において、重なる時間内に同時に実施しても、逐次的に(例えば、最大2週間またはそれ以上の時間をあけて、例えば、最大約4週間、6週間、8週間または12週間の時間をあけて)実施してもよい。これらを同じ経路で投与しても、異なる経路で投与してもよい。ある実施態様において、化合物または組成物を互い48時間以内に投与する。ある実施態様において、追加の化合物を投与する前または後に、例えば、コンプスタチン類似体と追加の化合物が少なくとも1回は有効なレベルで体内に存在する程度の近い時間でコンプスタチン類似体を投与することができる。ある実施態様において、第二の化合物または組成物が投与される時点で、その前に投与された組成物の90%以下が代謝されて不活性な代謝産物になっている、あるいは体内から除去されている、例えば排泄されている程度の近い時間で、化合物または組成物を投与する。
【0453】
ある実施態様において、細胞反応性コンプスタチン類似体または長時間作用型もしくは標的化コンプスタチン類似体と追加の化合物をともに含む組成物を投与する。
【0454】
ある実施態様において、例えば、吸入投与または、例えば、皮下、筋肉内または静脈内注射による非経腸投与を使用して、コンプスタチン類似体で処置されるまたは処置される予定である対象に、1以上の病原体に対してワクチン接種する。例えば、対象は、ナイセリア・メニンギティディス、ヘモフィルス・インフルエンザエおよび/またはストレプトコッカス・ニューモニエに対するワクチンを受け得る。ある実施態様において、対象は、これら微生物の全3種に対してワクチン接種される。ある実施態様において、対象は、コンプスタチン類似体の最初の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間前にワクチンを受け得る。対象は、適切であれば、1以上の追加のワクチン用量を受けてよい。
【0455】
ある実施態様において、例えば、吸入投与または、例えば、皮下、筋肉内または静脈内注射による非経腸投与を使用して、コンプスタチン類似体で処置されるまたは処置される予定である対象は、1以上の病原体、例えば、ナイセリア・メニンギティディス、ヘモフィルス・インフルエンザエおよび/またはストレプトコッカス・ニューモニエによる感染を予防または制限するのに有効であると予測される抗生物質を受け得る。ある実施態様において、対象は、予防的に抗生物質を受け得る。予防的投与は、対象がコンプスタチン類似体の最初の投与を受ける前またはその後の何れかの時点に開始し得る。当業者は適当な抗生物質を知っている。
【0456】
IX. C3を阻害する阻害性核酸剤およびその使用
ある態様において、本発明は、長時間作用型コンプスタチン類似体(LACA)とC3発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA)の組み合わせの投与が、多数の重要な利点を有し得るとの認識に関する。ある態様において、C3発現を阻害するINAA(例えばC3標的化siRNA)単独の投与は、所望のまたは治療的最適レベルへの補体活性減少に十分ではない可能性がある。例えば、補体介在溶血により特徴付けられる障害、例えば、PNHを有する個体に望ましくない溶血をもたらすのに十分な残存C3が存在し得る。INAA治療をLACA治療と共に投与することにより、残存C3を、所望のレベルの補体阻害が達成されるおよび/または所望の治療効果が得られるように阻害し得る。ある実施態様において、INAA治療を、LACA治療を受けている対象に投与する;ある実施態様において、LACA治療を、INAA治療を受けている対象に投与する。ある実施態様において、INAA治療およびLACA治療両者を対象に投与する。
【0457】
ある実施態様において、LACA治療の投与は、単独補体阻害治療としてのINAA投与と比較して、INAAの減少した投与レジメンでの投与を可能とし得る(例えば、少量の個々の用量、投与頻度減少、投与回数減少および/または全体的暴露減少を含む)。何らかの理論に縛られることを望まないが、ある実施態様において、INAAの減少した投与レジメンは、例えば、INAAの標的外効果により、他の場合にはもたらされ得る、1以上の望ましくない有害効果を回避し得る。
【0458】
ある態様において、LACA治療と組み合わせたINAA治療の投与(例えば、LACAと組み合わせたINAAの投与)は、LACA治療の減少した投与レジメンが所望の程度の補体阻害の達成に必要であるように、十分に対象の血中のC3量を減少し得る。
【0459】
ある実施態様において、このような減少用量は、単独補体阻害治療としてのLACAの投与と比較して、少体積でまたは低濃度を使用してまたは長い投与間隔を使用してまたは前記の任意の組み合わせで投与され得る。
【0460】
本発明は、特にLACAおよびC3発現を阻害するINAAの組み合わせ治療により提供される、長時間作用型コンプスタチン類似体およびINAAが両者とも皮下投与に十分に適し、減少した投与量のLACA(投与量および/または投与間隔を延長する)が、患者により便利となるおよび/またはより快適とする多数の利益を提供できることを認める。ここに記載する組み合わせ投与方法を何らかの補体介在障害、例えば、ここに記載する補体介在障害の何れかの処置を必要とする対象の処置に使用し得る。
【0461】
ある態様において、本発明は、ある長時間作用型コンプスタチン類似体(LACA)の投与と組み合わせたC3発現を阻害するINAAの投与の特定の有用性を教示し、ある態様において、本発明は、ある投与レジメンに従うおよび/またはある投与形式を使用する、このようなINAAと長時間作用型コンプスタチン類似体の組み合わせの投与の特定の有用性を教示する。ある実施態様において、代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血漿補体活性を平均95%以下、所望により50%~95%阻害する量で投与されるINAAを、LACAと組み合わせて投与し得る。ある実施態様において、代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血漿補体活性を平均95%以下、所望により50%~95%阻害する量で投与されるコンプスタチン類似体を、INAAと組み合わせて投与し得る。ある実施態様において、アッセイは溶血アッセイである。ある実施態様において、C3の定常状態血漿レベルを平均30%~95%、例えば、平均50%~95%、例えば、50%~60%、60%~70%、70%~80%または80%~90%減少させるのに有効な量で投与されるINAAを、LACAと組み合わせて投与し得る。ある実施態様において、C3の定常状態血漿レベルを平均30%~95%、例えば、平均50%~95%、例えば、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%減少させるのに有効な量で投与されるINAAを、LACAと組み合わせて投与し得る。ある実施態様において、INAAを、C3の定常状態血漿レベルを95%以下に減少させるのに十分であるが、なお所望の有効性を達成しない量で投与し得る。LACAとの組み合わせ投与が、このような有効性を達成するものとする。ある実施態様において、INAAを、最大耐量の80%~100%で投与し得る。ある実施態様において、LACAとの組み合わせ投与は、所望のレベルの有効性を達成するのに必要であるより少ない用量のINAAの使用を可能とする。何らかの理論に縛られることを望まないが、低用量のINAAは、標的外阻害、受容体飽和および/またはRNAi機構飽和またはこれ以外の他のINAAまたはINAA送達剤によりもたらされるであろう特異的または非特異的効果などの望まない副作用の可能性が減少し得る。ある実施態様において、INAAを、最大耐量の50%、60%、70%または80%未満で投与し得る。
【0462】
ある実施態様において、INAAを連日、毎週、2週、3週または4週毎またはそれより長い間隔で投与し得る。ある実施態様において、INAAおよびLACAを同じ投与スケジュールで投与するのが望ましいことがあるが(例えば、1日1回、隔日または週に1回)、他の実施態様において、異なる投与スケジュールを使用し得る(例えば、LACAについて連日または毎週およびINAAについて約4週毎、例えば、月1回)。多くの実施態様において、INAAおよびLACA両者を皮下投与する。ある実施態様において、INAAを静脈内投与し得る。
【0463】
ある実施態様において、INAAおよびLACAの両者を含む医薬パックまたはキットを提供し得る。INAAおよびLACAは別の容器にあり得る。パックまたはキットは、投与指示を含み得る。指示は、1以上の個々の投与のための、適切な体積でのいずれかまたは両剤の乾燥形態の再構成についての指示を含み得る。
【0464】
ある実施態様において、LACAは2つのコンプスタチン類似体部分を含む。ある実施態様において、2つのコンプスタチン類似体部分は直線状ポリマー、例えば、PEGの端に存在する。ある実施態様において、PEGは、平均分子量10~50kDを有する。ある実施態様において、PEGは、平均分子量35~45kD、例えば、約40kDを有する。ある特定の実施態様において、コンプスタチン類似体部分は、配列番号28、32または34を含むペプチドを含む。
【0465】
ある実施態様において、LACAは、唯一の補体阻害治療として、1日1回または2回、例えば皮下で投与したとき、治療的有用なレベルの補体阻害を達成するものである。ある実施態様において、LACAは、唯一のC3阻害治療として、1日1回または2回、例えば皮下で投与したとき、治療的有用なレベルのC3阻害を達成するものである。ある実施態様において、このようなLACAを、C3発現を阻害するINAAと組み合わせて投与するとき、低総用量で(1か月のような適切な期間にわたり測定して)投与され得る。ある実施態様において、投与される総量は、1か月のような適切な期間にわたり、少なくとも1.5倍低い、例えば、1.5~5倍、5~10倍または10~20倍低い。ある実施態様において、LACAを、LACAを唯一の補体阻害剤治療または唯一のC3阻害治療として投与するときの用量と比較して、より少い1日用量で投与し得る。ある実施態様において、LACAを、LACAを唯一の補体阻害剤治療または唯一のC3阻害治療として投与するときの投与間隔と比較して、長い投与間隔で投与し得る。例えば、ある実施態様において、所望の効果を達成するのに一般に連日投与されるLACAを、実質的に同じ効果を達成するのに、隔日、3日毎または週1回投与し得る。ある実施態様において、LACAを、唯一の補体阻害剤治療または唯一のC3阻害治療として投与するときと比較して、低い個々の用量および長い投与間隔の両方の組み合わせで投与し得る。
【0466】
ここに記載するとおり、40kD PEGを含むあるLACAは、180mgおよび270mgの1日用量で皮下投与したとき薬理学的活性を示し、270mg/日が特に有効である。ある実施態様において、このようなLACAは、LACAと組み合わせて投与したとき、減少した投与量で、例えば、少なくとも1.5倍少ない用量で、例えば、1.5~5倍、5~10倍または10~20倍減少した用量で投与し得る。ある実施態様において、例えば、用量は約9mg/日~約150mg/日、例えば、約9mg/日~約20mg/日、約20mg/日~約50mg/日、約50mg/日~100mg/日、約100mg/日~約150mg/日であってよく、少なくともある実施態様において、180mg/日用量またはある実施態様において、270mg/日用量と少なくとも同等の有効性を達成する。ある実施態様において、用量は約150mg/日~約200mg/日であってよく、少なくともある実施態様において270mg/日用量と少なくとも同等の有効性を達成する。ある実施態様において、用量は10mg/日~20mg/日、20mg/日~30mg/日、30mg/日~40mg/日、40mg/日~50mg/日、50mg/日~60mg/日、60mg/日~70mg/日、70mg/日~80mg/日、80mg/日~90mg/日、90mg/日~100mg/日、100mg/日~110mg/日、110mg/日~120mg/日、120mg/日~130mg/日、130mg/日~140mg/日、140mg/日~150mg/日、150mg/日~160mg/日、160mg/日~170mg/日、170mg/日~180mg/日,180mg/日~190mg/日または190mg/日~200mg/日である。ある実施態様において、用量は200mg/日~210mg/日、210mg/日~220mg/日、220mg/日~230mg/日、230mg/日~240mg/日または240mg/日~250mg/日である。ある実施態様において、LACAの用量を単一1日用量として、例えば、皮下投与する。ある実施態様において、LACAの用量を単一週用量として、例えば、皮下投与する。
【0467】
ある態様において、減少したLACAの用量を、少体積および/または減少濃度で投与し得る。例えば、用量が10倍減少したならば、同じ濃度を維持して、体積も10倍減少する。あるいは、同じ体積を維持して、濃度を10倍減少する。あるいは濃度および体積の両者を減少し得る。ある実施態様において、個々の用量の体積は約0.8ml以下、例えば、0.5ml以下、例えば、0.02ml~0.5ml、例えば、0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4mlまたは0.5mlである。ある実施態様において、濃度は約100mg/ml未満である。例えば、濃度は10mg/ml~20mg/ml、20mg/ml~30mg/ml、30mg/ml~40mg/ml、40mg/ml~50mg/ml、50mg/ml~60mg/ml、60mg/ml~70mg/ml、70mg/ml~80mg/ml、80mg/ml~90mg/mlまたは90mg/ml~100mg/mlである。体積および濃度を、所望の量を送達するために選択し得る。例えば、例示的実施態様において、40mgの用量を0.5ml体積で、80mg/ml濃度で投与する。他の例示的実施態様において、60mgの用量を0.6ml体積で、100mg/ml濃度で投与する。ある実施態様において、28、29、30または31ゲージ針を使用して、LACA、INAAまたは両者を投与し得る。
【0468】
250mg/日以下の用量がC3発現を阻害するINAAと組み合わせたLACAの投与、例えば、SC投与に特に興味深いが、本発明はまたC3発現を阻害するINAAと組み合わせた250mg/日を超える用量、例えば、250mg/日~300mg/日、300mg/日~400mg/日または400mg/日~500mg/日の用量の投与も企図する。ある実施態様において、このような用量を週1回投与し得る。
【0469】
本発明は、LACA、例えば、ここに記載するクリアランス低減部分を含むLACAが、C3発現を阻害するINAAと組み合わせて、霊長類にIVまたはSC投与したとき、少なくとも2日間、3日間、4日間またはそれ以上の終末半減期を有する実施態様を特に企図するが、ある実施態様において、このようなINAAとの組み合わせ投与は、短半減期を有するおよび/またはクリアランス低減部分を欠くコンプスタチン類似体にも有用であり得る。このようなコンプスタチン類似体は、1日2回または2回投与し得る。
【0470】
ある実施態様において、特定の薬剤または複数薬剤の組み合わせの有効性を、PNHなどの補体介在溶血性障害を有する患者におけるLDHレベルにより測定し得る。ある実施態様において、有効性を、溶血アッセイであり得る、古典または代替経路補体アッセイで測定し得る。
【0471】
本発明は、任意の多様なC3発現を阻害するINAAの使用を意図する。C3の発現を阻害するINAAは、C3転写物、例えば、C3 mRNAの標的部分と相補性である鎖を含む。標的部分は15~30ヌクレオチド長、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長であり得るが、これより短いまたは長い標的部分も企図される。ヒトC3は、ここで特に興味深い。ヒトC3のアミノ酸およびヌクレオチド配列は当分野で知られ、公的に利用可能なデータベース、例えば、the National Center for Biotechnology Information(NCBI) Reference Sequence(RefSeq)データベースに見ることができ、そこで、そららは、それぞれ、RefSeq accession numbers NP_000055(current accession.version number NP_000055.2)およびNM_000064(current accession.version number NM_000064.3)の下に挙げられる(ここで、“アミノ酸配列”はC3ポリペプチドの配列をいい、この文脈での“ヌクレオチド配列”は、ゲノムDNAにより表されるC3 mRNA配列であり、実際のmRNAヌクレオチド配列はTではなくUを含むと考えられる)。当業者は、前記配列が補体C3プレプロタンパク質であり、これは、開裂され、それ故に成熟タンパク質に存在しないシグナル配列を含むことを理解する。ヒトC3遺伝子は、NCBI Gene ID: 718を割り当てられ、ゲノムC3配列はRefSeq accession number NG_009557(current accession.version number NG_009557.1)を有する。ヒトC3 mRNAのヌクレオチド配列を下に示す(RefSeq accession number NM_000064.3から、TをUに置き換えた)。
【0472】
AGAUAAAAAGCCAGCUCCAGCAGGCGCUGCUCACUCCUCCCCAUCCUCUCCCUCUGUCCCUCUGUCCCUCUGACCCUGCACUGUCCCAGCACCAUGGGACCCACCUCAGGUCCCAGCCUGCUGCUCCUGCUACUAACCCACCUCCCCCUGGCUCUGGGGAGUCCCAUGUACUCUAUCAUCACCCCCAACAUCUUGCGGCUGGAGAGCGAGGAGACCAUGGUGCUGGAGGCCCACGACGCGCAAGGGGAUGUUCCAGUCACUGUUACUGUCCACGACUUCCCAGGCAAAAAACUAGUGCUGUCCAGUGAGAAGACUGUGCUGACCCCUGCCACCAACCACAUGGGCAACGUCACCUUCACGAUCCCAGCCAACAGGGAGUUCAAGUCAGAAAAGGGGCGCAACAAGUUCGUGACCGUGCAGGCCACCUUCGGGACCCAAGUGGUGGAGAAGGUGGUGCUGGUCAGCCUGCAGAGCGGGUACCUCUUCAUCCAGACAGACAAGACCAUCUACACCCCUGGCUCCACAGUUCUCUAUCGGAUCUUCACCGUCAACCACAAGCUGCUACCCGUGGGCCGGACGGUCAUGGUCAACAUUGAGAACCCGGAAGGCAUCCCGGUCAAGCAGGACUCCUUGUCUUCUCAGAACCAGCUUGGCGUCUUGCCCUUGUCUUGGGACAUUCCGGAACUCGUCAACAUGGGCCAGUGGAAGAUCCGAGCCUACUAUGAAAACUCACCACAGCAGGUCUUCUCCACUGAGUUUGAGGUGAAGGAGUACGUGCUGCCCAGUUUCGAGGUCAUAGUGGAGCCUACAGAGAAAUUCUACUACAUCUAUAACGAGAAGGGCCUGGAGGUCACCAUCACCGCCAGGUUCCUCUACGGGAAGAAAGUGGAGGGAACUGCCUUUGUCAUCUUCGGGAUCCAGGAUGGCGAACAGAGGAUUUCCCUGCCUGAAUCCCUCAAGCGCAUUCCGAUUGAGGAUGGCUCGGGGGAGGUUGUGCUGAGCCGGAAGGUACUGCUGGACGGGGUGCAGAACCCCCGAGCAGAAGACCUGGUGGGGAAGUCUUUGUACGUGUCUGCCACCGUCAUCUUGCACUCAGGCAGUGACAUGGUGCAGGCAGAGCGCAGCGGGAUCCCCAUCGUGACCUCUCCCUACCAGAUCCACUUCACCAAGACACCCAAGUACUUCAAACCAGGAAUGCCCUUUGACCUCAUGGUGUUCGUGACGAACCCUGAUGGCUCUCCAGCCUACCGAGUCCCCGUGGCAGUCCAGGGCGAGGACACUGUGCAGUCUCUAACCCAGGGAGAUGGCGUGGCCAAACUCAGCAUCAACACACACCCCAGCCAGAAGCCCUUGAGCAUCACGGUGCGCACGAAGAAGCAGGAGCUCUCGGAGGCAGAGCAGGCUACCAGGACCAUGCAGGCUCUGCCCUACAGCACCGUGGGCAACUCCAACAAUUACCUGCAUCUCUCAGUGCUACGUACAGAGCUCAGACCCGGGGAGACCCUCAACGUCAACUUCCUCCUGCGAAUGGACCGCGCCCACGAGGCCAAGAUCCGCUACUACACCUACCUGAUCAUGAACAAGGGCAGGCUGUUGAAGGCGGGACGCCAGGUGCGAGAGCCCGGCCAGGACCUGGUGGUGCUGCCCCUGUCCAUCACCACCGACUUCAUCCCUUCCUUCCGCCUGGUGGCGUACUACACGCUGAUCGGUGCCAGCGGCCAGAGGGAGGUGGUGGCCGACUCCGUGUGGGUGGACGUCAAGGACUCCUGCGUGGGCUCGCUGGUGGUAAAAAGCGGCCAGUCAGAAGACCGGCAGCCUGUACCUGGGCAGCAGAUGACCCUGAAGAUAGAGGGUGACCACGGGGCCCGGGUGGUACUGGUGGCCGUGGACAAGGGCGUGUUCGUGCUGAAUAAGAAGAACAAACUGACGCAGAGUAAGAUCUGGGACGUGGUGGAGAAGGCAGACAUCGGCUGCACCCCGGGCAGUGGGAAGGAUUACGCCGGUGUCUUCUCCGACGCAGGGCUGACCUUCACGAGCAGCAGUGGCCAGCAGACCGCCCAGAGGGCAGAACUUCAGUGCCCGCAGCCAGCCGCCCGCCGACGCCGUUCCGUGCAGCUCACGGAGAAGCGAAUGGACAAAGUCGGCAAGUACCCCAAGGAGCUGCGCAAGUGCUGCGAGGACGGCAUGCGGGAGAACCCCAUGAGGUUCUCGUGCCAGCGCCGGACCCGUUUCAUCUCCCUGGGCGAGGCGUGCAAGAAGGUCUUCCUGGACUGCUGCAACUACAUCACAGAGCUGCGGCGGCAGCACGCGCGGGCCAGCCACCUGGGCCUGGCCAGGAGUAACCUGGAUGAGGACAUCAUUGCAGAAGAGAACAUCGUUUCCCGAAGUGAGUUCCCAGAGAGCUGGCUGUGGAACGUUGAGGACUUGAAAGAGCCACCGAAAAAUGGAAUCUCUACGAAGCUCAUGAAUAUAUUUUUGAAAGACUCCAUCACCACGUGGGAGAUUCUGGCUGUGAGCAUGUCGGACAAGAAAGGGAUCUGUGUGGCAGACCCCUUCGAGGUCACAGUAAUGCAGGACUUCUUCAUCGACCUGCGGCUACCCUACUCUGUUGUUCGAAACGAGCAGGUGGAAAUCCGAGCCGUUCUCUACAAUUACCGGCAGAACCAAGAGCUCAAGGUGAGGGUGGAACUACUCCACAAUCCAGCCUUCUGCAGCCUGGCCACCACCAAGAGGCGUCACCAGCAGACCGUAACCAUCCCCCCCAAGUCCUCGUUGUCCGUUCCAUAUGUCAUCGUGCCGCUAAAGACCGGCCUGCAGGAAGUGGAAGUCAAGGCUGCUGUCUACCAUCAUUUCAUCAGUGACGGUGUCAGGAAGUCCCUGAAGGUCGUGCCGGAAGGAAUCAGAAUGAACAAAACUGUGGCUGUUCGCACCCUGGAUCCAGAACGCCUGGGCCGUGAAGGAGUGCAGAAAGAGGACAUCCCACCUGCAGACCUCAGUGACCAAGUCCCGGACACCGAGUCUGAGACCAGAAUUCUCCUGCAAGGGACCCCAGUGGCCCAGAUGACAGAGGAUGCCGUCGACGCGGAACGGCUGAAGCACCUCAUUGUGACCCCCUCGGGCUGCGGGGAACAGAACAUGAUCGGCAUGACGCCCACGGUCAUCGCUGUGCAUUACCUGGAUGAAACGGAGCAGUGGGAGAAGUUCGGCCUAGAGAAGCGGCAGGGGGCCUUGGAGCUCAUCAAGAAGGGGUACACCCAGCAGCUGGCCUUCAGACAACCCAGCUCUGCCUUUGCGGCCUUCGUGAAACGGGCACCCAGCACCUGGCUGACCGCCUACGUGGUCAAGGUCUUCUCUCUGGCUGUCAACCUCAUCGCCAUCGACUCCCAAGUCCUCUGCGGGGCUGUUAAAUGGCUGAUCCUGGAGAAGCAGAAGCCCGACGGGGUCUUCCAGGAGGAUGCGCCCGUGAUACACCAAGAAAUGAUUGGUGGAUUACGGAACAACAACGAGAAAGACAUGGCCCUCACGGCCUUUGUUCUCAUCUCGCUGCAGGAGGCUAAAGAUAUUUGCGAGGAGCAGGUCAACAGCCUGCCAGGCAGCAUCACUAAAGCAGGAGACUUCCUUGAAGCCAACUACAUGAACCUACAGAGAUCCUACACUGUGGCCAUUGCUGGCUAUGCUCUGGCCCAGAUGGGCAGGCUGAAGGGGCCUCUUCUUAACAAAUUUCUGACCACAGCCAAAGAUAAGAACCGCUGGGAGGACCCUGGUAAGCAGCUCUACAACGUGGAGGCCACAUCCUAUGCCCUCUUGGCCCUACUGCAGCUAAAAGACUUUGACUUUGUGCCUCCCGUCGUGCGUUGGCUCAAUGAACAGAGAUACUACGGUGGUGGCUAUGGCUCUACCCAGGCCACCUUCAUGGUGUUCCAAGCCUUGGCUCAAUACCAAAAGGACGCCCCUGACCACCAGGAACUGAACCUUGAUGUGUCCCUCCAACUGCCCAGCCGCAGCUCCAAGAUCACCCACCGUAUCCACUGGGAAUCUGCCAGCCUCCUGCGAUCAGAAGAGACCAAGGAAAAUGAGGGUUUCACAGUCACAGCUGAAGGAAAAGGCCAAGGCACCUUGUCGGUGGUGACAAUGUACCAUGCUAAGGCCAAAGAUCAACUCACCUGUAAUAAAUUCGACCUCAAGGUCACCAUAAAACCAGCACCGGAAACAGAAAAGAGGCCUCAGGAUGCCAAGAACACUAUGAUCCUUGAGAUCUGUACCAGGUACCGGGGAGACCAGGAUGCCACUAUGUCUAUAUUGGACAUAUCCAUGAUGACUGGCUUUGCUCCAGACACAGAUGACCUGAAGCAGCUGGCCAAUGGUGUUGACAGAUACAUCUCCAAGUAUGAGCUGGACAAAGCCUUCUCCGAUAGGAACACCCUCAUCAUCUACCUGGACAAGGUCUCACACUCUGAGGAUGACUGUCUAGCUUUCAAAGUUCACCAAUACUUUAAUGUAGAGCUUAUCCAGCCUGGAGCAGUCAAGGUCUACGCCUAUUACAACCUGGAGGAAAGCUGUACCCGGUUCUACCAUCCGGAAAAGGAGGAUGGAAAGCUGAACAAGCUCUGCCGUGAUGAACUGUGCCGCUGUGCUGAGGAGAAUUGCUUCAUACAAAAGUCGGAUGACAAGGUCACCCUGGAAGAACGGCUGGACAAGGCCUGUGAGCCAGGAGUGGACUAUGUGUACAAGACCCGACUGGUCAAGGUUCAGCUGUCCAAUGACUUUGACGAGUACAUCAUGGCCAUUGAGCAGACCAUCAAGUCAGGCUCGGAUGAGGUGCAGGUUGGACAGCAGCGCACGUUCAUCAGCCCCAUCAAGUGCAGAGAAGCCCUGAAGCUGGAGGAGAAGAAACACUACCUCAUGUGGGGUCUCUCCUCCGAUUUCUGGGGAGAGAAGCCCAACCUCAGCUACAUCAUCGGGAAGGACACUUGGGUGGAGCACUGGCCCGAGGAGGACGAAUGCCAAGACGAAGAGAACCAGAAACAAUGCCAGGACCUCGGCGCCUUCACCGAGAGCAUGGUUGUCUUUGGGUGCCCCAACUGACCACACCCCCAUUCCCCCACUCCAGAUAAAGCUUCAGUUAUAUCUCAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号74)
【0473】
ある実施態様において、INAAは、ヒトC3に加えて、1以上の非ヒト種のC3、例えば、非ヒト霊長類C3、例えば、カニクイザルC3の発現を阻害できる。カニクイザルC3遺伝子はNCBI GENE ID: 102131458を割り当てられ、カニクイザルC3の予測アミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれNCBI RefSeq accession numbers XP_005587776.1およびXM_005587719.2に挙げられる。ある実施態様において、INAAは、ヒトおよびカニクイザルC3転写物で同一である標的部分と相補性である。ある実施態様において、INAAは、カニクイザルC3転写物と配列が1、2または3ヌクレオチド異なるヒトC3転写物の標的部分と相補性である。ヒトC3の発現を阻害するINAAはまた、特にC3転写物の保存領域が標的ならば、非霊長類C3、例えば、ラットまたはマウスC3の発現も阻害し得ることは認識される。
【0474】
ここで使用する用語“相補性の領域”は、配列、例えば標的RNAの標的部分と実質的相補性である、INAAのアンチセンス鎖の領域をいう。ある実施態様において、対象、例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類などの哺乳動物内の細胞などの、細胞における標的遺伝子、例えば、C3遺伝子の発現を阻害するためのINAAは、標的遺伝子の転写により形成される、RNA、例えば、mRNAの少なくともと一部相補性である領域を有するアンチセンス鎖を含み、ここで、相補性の領域は、7~約30ヌクレオチド長(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長である。ある実施態様において、ここに記載するINAAのアンチセンス鎖は、標的配列に対して1以上のミスマッチを含み得る。相補性の領域が標的部分と完全相補性でないとき、ミスマッチは鎖の内部または末端領域にあり得る。ある実施態様において、ミスマッチは末端領域、例えば、5’および/または3’末端ヌクレオチドまたはINAAアンチセンス鎖の5’および/または3’末端の2、3、4または5ヌクレオチド内にある。ある実施態様において、アンチセンス鎖が標的RNAとハイブリダイズするとき、アンチセンス鎖の10位および11位のヌクレオチドは標的配列と相補性である。ある実施態様において、ここに記載するINAAのアンチセンス鎖は、C3 RNAの標的部分に対して3個を超えるミスマッチを有しない。ある実施態様において、INAAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含むならば、ミスマッチ領域は相補性の領域の中心に存在しない。ある実施態様において、アンチセンス鎖が標的部分に対するミスマッチを含むならば、ミスマッチ領域は、相補性の領域の5’末端または3’末端の最後の5ヌクレオチド内に位置する。ある実施態様において、アンチセンス鎖および標的部分から形成された二本鎖は、アンチセンス鎖の5’末端に対して、10位または11位にヌクレオチドのミスマッチを含まない。ある実施態様において、アンチセンス鎖および標的部分から形成された二本鎖は、アンチセンス鎖の5’末端に対して、8~13位のヌクレオチドに何らミスマッチを含まない。ある態様において、ここに記載するまたは当分野で知られる方法を使用して、何らかの特定のINAA、例えば、標的部分に対するミスマッチを含むアンチセンス鎖を含むINAAが、標的遺伝子、例えば、C3遺伝子発現阻害に有効であるか否かを決定し得る。
【0475】
INAAに対する標的部分、例えば、siRNAは、標的RNA、例えば、C3転写物の5’UTR、コード配列、3’UTRまたは一部UTRおよび一部コード配列(すなわち、イントロン配列を含まない)に存在する。C3 mRNAのコード領域は、上記ヌクレオチド配列の94位~5085位に及ぶ。C3 mRNAは41エクソンを含む。当業者は、上記RefSeqデータベースエントリーまたはUCSC Genome Browserで利用可能なヒトゲノム配列から、エクソン境界およびイントロン配列の位置を得ることができる。ある実施態様において、RNAi剤のアンチセンス鎖は、エクソン配列と排他的にハイブリダイズする。ある実施態様において、RNAi剤のアンチセンス鎖は、単一エクソン内の配列のみを含む標的領域とハイブリダイズする;他の実施態様において、標的部分は一次転写物のスプライシングまたは他の修飾により作られる。ある実施態様において、ASOのための標的部分は5’UTR、コード配列または3’UTRにあってよくまたはUTRとコード配列の境界にあってよい。ある実施態様において、ASOのための標的部分はイントロン内、エクソン内であってよくまたはイントロンとエクソンの境界と重複し得る。一般に、転写物の開裂および分解に至るまたは翻訳抑制に至る、核酸鎖とのハイブリダイゼーションに利用可能な任意の位置を、標的部分として用い得る。それにも係わらず、当業者は、標的RNAの標的部分として特定の領域を選択するまたは避けることが望ましいことがあり得ることを認識する。例えば、ある実施態様において、分解または翻訳抑制が望ましくない他の転写物と相当な同一性を共有する標的RNAの部分を避けることが望ましいことがある。当業者は、C3遺伝子における種々の天然に存在するDNA配列多様性が同定されており、例えば、the NCBI dbSNP(ncbi.nlm.nih.gov/snp)およびUniProtデータベースに見られ得ることを認識する。用語“C3”は、このような多様性を含むことを意図する。ある態様において、C3をターゲティングするINAAを設計する、特定の配列がC3 RNAに相補性であるか否かを決定する、標的部分の位置を標記するまたはここに記載する他の目的のために、ここで提供するヒトC3の対照ヌクレオチド配列(例えば、NM_000064.3または先のバージョンNM_000064.2)を使用し得る。ある実施態様において、C3 RNA配列の標的部分は、多型部位を含まず、ここで、最も一般的アレルは99%未満の頻度である。ある実施態様において、C3 RNA配列の標的部分は標的部分の8~13位に多型部位を含まず、ここで、主要アレルは99%未満の頻度を有する。当業者は、dbSNPから多型のアレル頻度を得ることができる。
【0476】
INAAは1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。INAAで使用するのに適する修飾は、ここに開示するまたは当分野で知られる全てのタイプの修飾を含む。任意のこのような修飾は、RNAi剤、siRNA、dsRNAまたはASOなどのここに記載する種々のタイプのINAAのいずれにも存在し得る。このような修飾は、特定の修飾を欠くが、他は同一である核酸と比較して、例えば、安定性増加(例えば、ヌクレアーゼによる開裂への感受性減少により)、インビボクリアランス減少、細胞取り込み増加または効力、有効性、特異性または核酸を意図される用途により適するものとするその他を改善する他の性質を寄与する。修飾は、例えば、末端修飾、例えば、5’末端修飾、3’末端修飾、塩基修飾、例えば、安定化塩基、不安定化塩基または広いレパートリーのパートナーと塩基対形成する塩基への置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)または複合塩基;糖修飾(例えば、2’位または4’位)または糖置換;および/またはホスホジエステル結合修飾または置換を含む主鎖修飾を含む。異なる修飾を、二本鎖核酸の2鎖に使用し得る。核酸は一律に修飾またはその一部のみ修飾してよくおよび/または複数の異なる修飾を含み得る。当業者は、ある修飾が所望の特定のタイプのINAAおよび/または特定の阻害機構に使用するのにより良好に適し得ることを認識し、ここでのおよび引用する引用文献の教示に基づき、適切な修飾を選択できる。本発明は、ここに引用した引用文献のいずれかに奇異債の特定の配置のいずれかに基づき、設計され、具現化されたC3を標的とするINAAおよびこのようなINAAを産生するための適切な修飾の取り込みを包含する。
【0477】
ある実施態様において、INAAは、1以上の位置に修飾を有する。例えば、ある実施態様において、センスおよび/またはアンチセンス鎖は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれ以上の修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドの数はINAAに存在するヌクレオチドの総数のパーセンテージとして表し得る。例えば、INAAは、ヌクレオチド位置の約5%~約100%(例えば、ヌクレオチド位置の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%)で修飾ヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、INAAの少なくとも80%、85%、90%、95%またはそれ以上のヌクレオチドが修飾されている。ある実施態様において、実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。実質的に全てのヌクレオチドが修飾されているINAAまたはその鎖は、ヌクレオチドの少なくとも80%が修飾されているならば、1、2、3、4または5非修飾ヌクレオチドを含んでよい。
【0478】
ある実施態様において、INAAは、2以上の異なる修飾を含む。ある実施態様において、INAAは、2以上の異なる2’糖修飾を含む。ある実施態様において、INAAは1以上の置換糖部分を含み得る。例えば、INAAは、2’位に次のOH;F;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルの一つを含む糖部分を含み、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換または非置換C1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。適当な修飾の例は、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2を含み、ここで、nおよびmの各々は、独立して1~約10である。ある実施態様において、INAAは、次のC1~C10アルキル、置換アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリルの一つを2’位に含む。ある実施態様において、修飾は2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られる)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基である。修飾の他の例は、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CH2)2ON(CH)2基であり、2’-DMAOEおよび2’-ジメチルアミノエトキシエトキシとしても知られ(当分野で2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2’-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2である。他の修飾は、2’-メトキシ(2’-OCH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)および2’-フルオロ(2’-F)を含む。類似の修飾を、INAAの他の位置、例えば、3’末端ヌクレオチドの糖の3’位または2’-5’連結dsRNAおよび5’末端ヌクレオチドの5’位にもなし得る。INAAは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣物を含み得る。ある実施態様において、INAAは、これの代わりにまたはこれに加えて上記のような1以上の修飾塩基を含み得る。
【0479】
ある実施態様において、INAAは、1以上の配座固定されたヌクレオチド(CRN)を含み得る。配座固定されたヌクレオチドは、化合物で想定され得る可能な配座数を減少させるために修飾されたヌクレオチド類似体である。配座固定されたヌクレオチドは一般に二環式糖部分(例えば二環式リボース)を含み、ここで、糖部分のC2’とC4’は架橋されまたはC3’とC5’が架橋される。何らかの理論に縛られることを望まないが、核酸、例えば、RNAi剤への配座固定されたヌクレオチドの導入は、血清における該薬剤の安定性の増加および/または標的外効果の減少をさせ得る。有用な二環式ヌクレオシドの例は、例えば、4’と2’リボシル環原子間に架橋を含むヌクレオシドを含む。ある実施態様において、INAAは、4’~2’架橋を含む1以上の二環式ヌクレオシドを含む。このような4’~2’架橋二環式ヌクレオシドの例は、4’-(CH2)-O-2’(当分野で“ロックド核酸”またはLNAとして知られる);4’-(CH2)-S-2’;4’-(CH2)2-O-2’(ENA);4’-CH(CH3)-O-2’(“拘束エチル”または“cEt”としても知られる)および4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(およびその類似体;例えば、米国特許7,399,845参照);4’-C(CH3)(CH3)-O-2’(およびその類似体;例えば、米国特許8,278,283参照);4’-CH2-N(OCH3)-2’(およびその類似体;例えば、米国特許8,278,425参照);4’-CH2-O-N(CH3)-2’(例えば、米国特許公報20040171570参照);4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、RはH、C1-C12アルキルまたは保護基である)(例えば、米国特許7,427,672参照);4’-CH2-C(H)(CH3)-2’および4’-CH2-C(=CH2)-2’(およびその類似体;例えば、米国特許8,278,426参照)を含むが、これらに限定されない。INAAのヌクレオチドの1以上は、ヒドロキシメチル置換ヌクレオチドを含み得る。“ヒドロキシメチル置換ヌクレオチド”は、非環状2’-3’-seco-ヌクレオチドであり、“アンロックド核酸”(UNA)修飾とも称される。UNAの製造を教示する代表的刊行物は、米国特許8,314,227;および米国特許出願公開20130096289;20130011922;および20110313020を含むが、これらに限定されない。核酸分子の1以上の末端に存在し得る安定化の可能性のある修飾は、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2’-O-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3’-ホスフェート、倒置ヌクレオチド(3’-3’、5’-5’または2’-2’連結ヌクレオチド)、dT(idT)およびその他を含むが、これらに限定されない。核酸鎖の末端に存在し得るある有用な修飾の開示は、PCT公開WO2011/005861および/または米国特許出願公開20050096290に見ることができる。
【0480】
ある実施態様において、INAAは、2’-デオキシ、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-ベンジルおよび2’-O-メチル-4-ピリジンから選択される1以上の2’糖修飾を含む。ある実施態様において、INAAは、最大で2個の2’糖修飾、例えば、2’-O-メチルおよび2’-フルオロを含む。ある実施態様において、2’-F修飾ヌクレオチドは、存在するならば、ピリミジンであり、2’-O-メチル修飾ヌクレオチドは、存在するならば、プリンである。ある実施態様において、INAAは、リボース部分が、環状であり得るリボース以外の部分、例えば、非炭水化物部分に置き換えられている少なくとも1モノマーを含む主鎖を含む。非リボースモノマーは、結合点を含んでよく、これは、ある実施態様において、環状部分の成分環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子をいい、これは、リガンド、例えば、ターゲティングまたは送達部分または物理的性質を変える部分などの部分を結合する。INAAで使用し得る非リボースモノマーならびに他のタイプの修飾の例は、米国特許出願公開20050107325に記載される。
【0481】
当業者は、有効なRNAi剤が多様な配置を有し得ることを認識する。RNAi剤の“配置”は、特定の配列に特異的ではない種々の構造特性に対する薬剤の形式、例えば、鎖の数(一本鎖または二本鎖);オーバーハングの位置および長さ(存在するならば);各鎖の修飾のパターン;二本鎖部分の長さ;標的と相補性の領域の長さ;アンチセンス鎖の末端に対する相補性の領域の位置;ループの存在または非存在;核酸に結合した任意の部分の正体および位置;二本鎖部分の相補性のパーセント;二本鎖部分の任意のミスマッチまたは不対ヌクレオチドの位置;相補性の領域および標的の相補性のパーセント;および相補性の領域および標的により形成される二本鎖の任意のミスマッチまたは不対ヌクレオチドの位置をいう。“修飾のパターン”または“修飾パターン”は、核酸における修飾の正体および位置をいう。本発明は、C3に標的化され、ここに記載する、ここに引用する引用文献またはと分野で知られるその他の任意の配置および修飾パターンを有するRNAi剤を包含する。
【0482】
ある実施態様において、C3発現を阻害するINAAは、二本鎖siRNAを含む。二本鎖siRNAは、互いにハイブリダイズして、少なくとも9塩基対(bp)長および最大約36bp長の二重鎖部分(“二本鎖部分”)を含む構造を形成する2つの別々の核酸鎖を含む。二本鎖部分は、2つの逆平行かつ実質的に相補性の核酸鎖を含み、これは、標的RNAに対して“センス”および“アンチセンス”配向と称され、ここで、“センス”鎖配列は標的RNAの標的部分の配列と同一または相同である領域を含み、“アンチセンス”鎖の配列は、標的RNAの標的部分と相補性である領域を含む。ある実施態様において、二本鎖部分は10~15bp、12~30bp、14~30bp、17~30bp、27~30bp、17~23bp、17~21bp、17~19bp、17~27bp、18~25bp、19~25bp、19~23bp、19~21bp、21~25bpまたは21~23bp長である。ある実施態様において、二本鎖部分は10~36、11~36、12~36、13~36、14~36、15~36、9~35、10~35、11~35、12~35、13~35、14~35、15~35、9~34、10~34、11~34、12~34、13~34、14~34、15~34、9~33、10~33、11~33、12~33、13~33、14~33、15~33、9~32、10~32、11~32、12~32、13~32、14~32、15~32、9~31、10~31、11~31、12~31、13~32、14~31、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22塩基対長である。ある実施態様において、二本鎖部分は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30bp長である。
【0483】
ある実施態様において、ds siRNAの各鎖は12~36nt長であり得る。例えば、各鎖は14~30nt長、17~30nt長、25~30nt長、27~30nt長、17~23nt長、17~21nt長、17~19nt長、19~25nt長、19~23nt長、19~21nt長、21~25nt長または21~23nt長であり得る。ある実施態様において、一方のまたは両方の鎖は12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30nt長である。鎖は、種々の実施態様に置いて等しい長さでも異なる長さでもよい。ある実施態様において、鎖は1~10nt長異なり得る。ある実施態様において、一方のまたは両方の鎖は5’リン酸基および/または3’ヒドロキシル(-OH)基を含み得る。ある実施態様において、一方のまたは両方の鎖は5’ヒドロキシル(OH)を含み得る。siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、それらの全長にわたってまたは一部互いに対形成し得る。例えば、20nt鎖は、相補性鎖と塩基対形成して、20nt二本鎖部分を形成してよくまたはこのような鎖の15、16、17、18または19塩基の相補性の領域と塩基対形成して、15、16、17、18または19塩基対からなる二本鎖部分を形成してよい。後者の場合、残りの不対塩基は5’および/または3’オーバーハングとして存在し得る。一般に、ds siRNAの鎖は、二本鎖部分内で互いに実質的相補性である。ある実施態様において、ds siRNAの鎖は、二本鎖部分内で互いに完全相補性である。しかしながら、二本鎖部分内の100%相補性が必要ではないことは認識される。それ故に、ある実施態様において、二本鎖部分は1以上の非対応ヌクレオチドを含み得る。非対応ヌクレオチドは不適合(非相補性)ヌクレオチド対に存在してよくまたは他方の鎖におけるヌクレオチドの逆ではない1以上のヌクレオチドを含むバルジを形成するかまたはその一部であり得る。ある実施態様において、一方のまたは両方の鎖は、二本鎖部分内に最大約1、2、3、4または5非対応ヌクレオチドを含み得る。2鎖は異なる数の非対応ヌクレオチドを含み得る。各側に少なくとも一つの適合ヌクレオチド対を有する不適合ヌクレオチド対は、二本鎖部分の長さの計算上、ヌクレオチド対と見なされる。ある実施態様において、二本鎖部分は、1または2不適合ヌクレオチド対を含む。ある実施態様において、二本鎖部分は、単一ヌクレオチドバルジまたは2ヌクレオチドバルジを形成する1または2非対応ヌクレオチドを含む。
【0484】
RNAi剤の二本鎖構造を形成する2鎖は、大きな核酸分子の異なる部分であっても、別々の核酸分子であってもよい。2鎖が大きな分子の一部であるとき、二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端と他方の鎖の5’末端は直接結合できまたは二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端と他方の鎖の5’末端の間のヌクレオチドの中断されていない鎖で結合できる。得られた構造は“ヘアピン”と称され、結合RNA鎖は“ループ”と称され得る。分子は“小ヘアピンRNA”(shRNA)と称される。ループは、少なくとも1個の不対ヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、ループは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20またはそれ以上の不対ヌクレオチドを含む。ガイド鎖配列は、種々の実施態様において、ステムのいずれかのアーム、すなわち、ループに対して5’またはループに対して3’に位置し得る。当分野で知られるとおり、ステム構造は正確な塩基対形成(完全相補性)を必要としない。それ故に、ステムは1以上の非対応残基を含んでも塩基対形成が正確でもよく、すなわち、何らミスマッチまたはバルジを含まなくてよい。ステムは、二本鎖部分について上記した任意の長さを有し得る。例えば、ある実施態様において、ステムは15~30bp、例えば、17~29bp、例えば、15~19bpまたは19~25bpである。ループ内の一次配列およびヌクレオチドの数は変わり得る。ループ配列の例は、例えば、UGGU;ACUCGAGA;UUCAAGAGAを含む。ある実施態様において、ループ配列は存在しなくてよい(この場合二本鎖部分の末端は直接結合され得る)。ある実施態様において、ループ配列は、少なくとも一部自己相補性であり得る。ある実施態様において、ループは1~20nt長、例えば、1~15nt、例えば、4~9ntである。shRNAは5’または3’オーバーハングを含み得る。当分野で知られるとおり、shRNAは、例えば、Dicerにより、細胞内プロセシングを受け、ループが除去され、siRNAが得られる。ある実施態様において、ds RNAi剤の2つの相補性鎖は、二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端と他方の鎖の5’末端の間のヌクレオチドの中断されていない鎖以外の手段により共有結合され得る。コンプスタチン類似体に関して記載したような種々の結合部分の何れも、例えば、それらの末端を介してこれら鎖を結合するのに役立つ。ある実施態様において、INAAはベクター、例えば、組み換えプラスミドまたはウイルスベクターによりコードされ、これは、細胞に導入されたとき、細胞にINAAを発現させ得る。例えば、INAAはshRNAであってよくまたはds siRNAを作成するように細胞内でハイブリダイズする2つの別々のRNA鎖を含み得る。プラスミドまたはウイルスベクターは対象に投与される。ある実施態様において、ベクターは肝細胞に感染または形質導入し得る。ある実施態様において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターまたはレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。ある実施態様において、INAAはRNAポリメラーゼIIIプロモーターから発現される。
【0485】
二本鎖核酸、例えば、二本鎖INAA、例えば、二本鎖RNAi剤は、二本鎖構造に加えて1以上のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。用語“ヌクレオチドオーバーハング”または“オーバーハング”は、二本鎖核酸の二本鎖構造から突出した少なくとも一つの不対ヌクレオチドをいうために相互交換可能に使用される。例えば、ds核酸の一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸びるとき、3’ヌクレオチドオーバーハングが存在する。二本鎖核酸に関する“平滑”または“平滑末端”は、二本鎖核酸の末端に
不対ヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。“平滑末端化”RNAi剤は、それ故に、その全長にわたって二本鎖であり、すなわち、いずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングがない(二本鎖内に1以上の不対ヌクレオチドは存在し得るが)。ここに記載するRNAi剤は、一端にヌクレオチドオーバーハングを有するRNAi剤、すなわち、1オーバーハングおよび1平滑末端を有する薬剤、両端にヌクレオチドオーバーハングを有する薬剤および平滑末端剤を含む。
【0486】
ある実施態様において、オーバーハングは少なくとも1nt、2nt、3nt、4nt、5ntまたはそれ以上を含む。オーバーハングは、ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド部分またはそれらの組み合わせを含むまたはこれらからなることができる。RNAi剤は、一方または両方の鎖の3’末端、5’末端または両端に1以上のオーバーハング領域を含み得る。オーバーハングはセンス鎖、アンチセンス鎖または任意のこれらの組み合わせ上に存在でき、二本鎖核酸は最大で2オーバーハングを含み得ると理解される。ある実施態様において、オーバーハングのヌクレオチドは、アンチセンス鎖またはセンス鎖の5’末端、3’末端または両端に存在し得る。ある実施態様において、ds siRNAのアンチセンス鎖は1~5ntまたは5~10ntオーバーハング、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ntオーバーハングを3’末端および/または5’末端に有する。ある実施態様において、ds siRNAのセンス鎖は、1~5ntまたは5~10ntオーバーハングm例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ntオーバーハングを3’末端および/または5’末端に有する。ある実施態様において、オーバーハングは1~6nt長、例えば2~6nt長、1~5nt長、2~5nt長、1~4nt長、2~4nt長、1~3nt長、2~3nt長または1~2nt長、例えば、2ntであり得る。オーバーハングは、一方の鎖が他方より長いことによるまたは同じ長さの2鎖がねじれていることによる。種々の実施態様において、オーバーハングは、ガイド鎖と標的RNAにより形成されたハイブリッドにおいて標的RNAと完全相補性、一部相補性または非相補性であり得る。例えば、2ntオーバーハングは、mRNAにおける標的部位に対して-1位および-2位と相補性であるヌクレオチドからなり得る。ある実施態様において、RNAi剤のオーバーハング領域におけるヌクレオチドは、各々独立して修飾または非修飾ヌクレオチドであってよく、2’-糖修飾ヌクレオチド、例えば2’-F、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2’-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)または2’-糖修飾ではないヌクレオチド、例えばウラシル(U)、チミジン(T)またはデオキシチミジン(dT)およびこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、UU、TTまたはdTdTは、いずれかの鎖のいずれかの末端のオーバーハング配列であり得る。ある実施態様において、オーバーハングはリボヌクレオチドまたは2’-O-メチル修飾ヌクレオチドまたはそれらの組み合わせを含む。ある実施態様において、RNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖の5’または3’オーバーハングはリン酸化され得る。ある実施態様において、オーバーハング領域は、2ヌクレオチド間にホスホロチオエートまたは他の非ホスホジエステル結合を有する2ヌクレオチドを含み、ここで、2ヌクレオチドは同一でも異なってもよい。ある実施態様において、オーバーハングはセンス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の3’末端または両鎖の3’末端に存在し得る。ある実施態様において、3’オーバーハングはアンチセンス鎖に存在する。ある実施態様において、3’オーバーハングはセンス鎖に存在する。ある実施態様において、RNAi剤は単一オーバーハングを含み得る。例えば、オーバーハングはセンス鎖の3’末端に位置し、センス鎖の5’末端は(アンチセンス鎖の3’末端と一体となって)平滑末端を形成し得る。あるいは、オーバーハングはアンチセンス鎖の3’末端に位置し、アンチセンス鎖の5’末端は(センス鎖の3’末端と一体となって)平滑末端を形成し得る。ある実施態様において、3’オーバーハングは、これの代わりにまたはこれに加えて、それに結合した部分、例えば、ターゲティング部分または親油性部分を有し得る。
【0487】
ある実施態様において、INAAの少なくとも1鎖は、糖残基の3’位または2’位と、それが存在する鎖の3’末端ヌクレオチドで共有結合した非ヌクレオチド部分を含む。このような3’末端ヌクレオチドはオーバーハングの一部であっても平滑末端の一部であってもよい。ある実施態様において、非ヌクレオチド部分は、プロパノール、ホスホジエステルに結合したアルキル部分、ホスホロチオエートに結合したアルキル部分、脱塩基部分(例えば、デオキシリボ脱塩基部分またはリボ脱塩基部分)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。アルキル部分は3-炭素アルキル鎖であり得る。このような修飾およびそれらの使用は、米国特許出願公開20130035368に記載される。本発明は、種々の実施態様において、米国特許公開20130035368に記載の核酸構造および/または修飾の何れかの使用を包含する。
【0488】
ある実施態様において、ds RNAi剤は、Dicerの基質として働くのに十分な長さであり、適切な構造特性を有する。このような場合、細胞によるdsRNAi剤取り込み後、内在性Dicerが、ds RNAi剤を天然に存在するsiRNAの特徴である長さの鎖および3’オーバーハングを有する短いRNAi剤に開裂する。これらのDicer生成siRNAは、次いで、RNAiに介在して、標的遺伝子発現を阻害する。Dicerの基質として働き得るRNAi剤は、当分野で“Dicer基質低分子干渉RNA”またはDsiRNAと称されることがある。何らかの理論に縛られることを望まないが、DsiRNAは、DicerプロセシングとRISC積み込み間の連結により、短いsiRNA(例えば、中央19bp二本鎖および2塩基3’オーバーハングを有する中央21bp長である鎖を含むsiRNA)と比較してRNAiの効力が増加し得ると考えられる。Dicerは、開裂dsRNAからの一本鎖開裂産物のRISCへの取り込みを促進し得る。DsiRNAの例は、例えば、米国特許出願公開20070265220および米国特許8,084,599および8,796,444に記載される。ある実施態様において、このようなRNAi剤は、少なくとも24nt長、例えば、少なくとも25nt長、例えば、25~30nt長、例えば、27~30nt長の二本鎖部分を含む。この実施態様によると、dsRNAの最長鎖は24~30ヌクレオチドを含む。ある実施態様において、dsRNAは、センス鎖が22~28ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が24~30ヌクレオチドを含むように、非対称である。それ故に、得られたdsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有する。オーバーハングは1~3ヌクレオチド、例えば2ヌクレオチドである。ある実施態様において、ds siRNAは、25~30ヌクレオチドセンス鎖の二本鎖RNA、センス鎖の3’末端に平滑末端およびアンチセンス鎖の3’末端に1~4ヌクレオチドオーバーハングを含む。ある実施態様において、ds RNAi剤の両鎖は、少なくとも25ヌクレオチド長である。ある実施態様において、少なくとも15、16、17、18または19ヌクレオチド長である、これら鎖の一方の領域は、標的遺伝子(例えば、C3遺伝子)から産生されたRNAのヌクレオチド配列と、RNAi機構により標的RNAの破壊の引き金を引くために、十分相補性である。ある実施態様において、ds RNAi剤は、同じ長さの鎖、例えば、25、26、27、28、29または30ntを有する。ある実施態様において、ds RNAi剤は、両端が平滑末端である。ある実施態様において、ds RNAi剤は非対称設計を有し、これは、2鎖が同じ長さではないことを意味する。ある実施態様において、ds RNAi剤は、RNAを含み、5’末端および3’末端を有する第一オリゴヌクレオチド鎖およびRNAを含み、5’末端および3’末端を含む第二オリゴヌクレオチド鎖を含み、ここで、第一は25~30ヌクレオチド長である長さを有し、該第二鎖は、3’末端で該第一鎖より1~4ヌクレオチド長く、その5’末端で該第一鎖の3’末端と平滑末端塩基対形成し、ここで、該二本鎖核酸は、少なくとも25ヌクレオチド長の二本鎖部分を含み、ここで、該第二オリゴヌクレオチド鎖は、該第二オリゴヌクレオチド鎖長の少なくとも19ヌクレオチドに沿って標的mRNA(例えば、C3 mRNA)と十分相補性であり、該二本鎖核酸が哺乳動物細胞に導入されたとき、標的遺伝子発現が減少される。哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞への導入により、二本鎖核酸は、開裂第二オリゴヌクレオチド鎖のRISCへの取り込みが促進されるように、ヒトDicerにより開裂され得る。ある実施態様において、dsRNAi剤は、第一オリゴヌクレオチド鎖の3’末端に1~3修飾ヌクレオチドを有する。ある実施態様において、第二鎖は非修飾および修飾ヌクレオチドの組み合わせからなる。例えば、ある実施態様において、第二鎖は、オーバーハングに隣接した鎖の部分で交互のリボヌクレオチドおよび2’-O-メチル修飾ヌクレオチドを含む。ある実施態様において、第一および第二オリゴヌクレオチド鎖の一方または両方は、5’リン酸を含む。ある実施態様において、第一および第二オリゴヌクレオチド鎖の一方または両方は、5’ヒドロキシル(OH)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル、2’-メトキシエトキシ、2’-フルオロ、2’-アリル、2’-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル]、4’-チオ、4’-CH2-O-2’架橋、4’-(CH2)2-O-2’架橋、2’-LNAまたは2’-O-(N-メチルカルバメート)である。ある実施態様において、オーバーハングは1~4塩基長、例えば、1~2塩基長である。ある実施態様において、オーバーハングは1、2、3または4塩基長であり、修飾ヌクレオチドは2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはそれらの組み合わせである。ある実施態様において、第一オリゴヌクレオチド鎖は25ヌクレオチド長であり、第二オリゴヌクレオチド鎖は27ヌクレオチド長である。ある実施態様において、第一オリゴヌクレオチド鎖は26ヌクレオチド長であり、第二オリゴヌクレオチド鎖は28ヌクレオチド長である。ある実施態様において、第一オリゴヌクレオチド鎖は26ヌクレオチド長であり、第二オリゴヌクレオチド鎖は27ヌクレオチド長である。ある実施態様において、ds siRNAは、25ntパッセンジャー鎖および27ntガイド鎖を有し、ガイド鎖に単一2nt3’-オーバーハングおよびパッセンジャー鎖の3’末端に1以上の修飾ヌクレオチドを伴う、非対称二本鎖を含む。ある実施態様において、鎖は、二本鎖部分内で完全相補性である。ある実施態様において、センス鎖の3’部分は、1以上のミスマッチを含み、例えば、2ミスマッチがセンス鎖の3’部分に存在する。所望により、任意のあるds RNAi剤がDicerの基質として働く能力を、当分野で知られる方法を使用して、インビトロまたはインビボで測定し得る。
【0489】
dsiRNAは、二本鎖構造を形成するように共にハイブリダイズする2つの別々の核酸分子を含み得る。2つの別々のオリゴヌクレオチドを含む適当なdsRNA組成物は、アニーリング領域外で、化学結合基により化学結合される。多くの適当な化学結合基は当分野で知られ、使用できる。適当な基は、dsRNAでDicer活性を遮断せず、標的遺伝子から転写されたRNAの定方向破壊を妨害しない。あるいは、2つの別々のオリゴヌクレオチドが、上記のとおり、dsRNA組成物を構成する2オリゴヌクレオチドのアニーリングによりヘアピン構造が生じるように、第三オリゴヌクレオチドにより結合され得る(shRNAについての記載参照)。ヘアピン構造は、dsRNAのDicer活性を遮断せず、標的遺伝子から転写されたRNAの定方向破壊を妨害しない。ある実施態様において、コンプスタチン類似体に関してここに記載したような任意の種々の結合部分は、例えば、それらの末端を介して、これら鎖と結合するのに役立ち得る。例えば、ある実施態様において、2鎖は、アルキル鎖を含む結合部分により結合される。
【0490】
ある実施態様において、ds RNAi剤のセンス鎖は、例えば、Dicerプロセシングを促進するように、センス鎖の3’末端に位置する適当な修飾因子により修飾され、すなわち、dsRNAは、Dicer結合およびプロセシングの配向を指示するように設計される。適当な修飾因子は、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、非環ヌクレオチドなどのヌクレオチドおよび蛍光分子などの立体障害分子などを含む。非環ヌクレオチドは、dNMPに通常存在する2’-デオキシリボフラノシル糖について2-ヒドロキシエトキシメチル基で置換する。他のヌクレオチド修飾因子は、3’-デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’-アジド-3’-デオキシチミジン(AZT)、2’,3’-ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’-ジデオキシ-3’-チアシチジン(3TC)、2’,3’-ジデヒドロ-2’,3’-ジデオキシチミジン(d4T)ならびに3’-アジド-3’-デオキシチミジン(AZT)、2’,3’-ジデオキシ-3’-チアシチジン(3TC)および2’,3’-ジデヒドロ-2’,3’-ジデオキシチミジン(d4T)の位置リン酸ヌクレオチドを含む。ある実施態様において、デオキシヌクレオチドが修飾因子として使用される。ヌクレオチド修飾因子が利用されるとき、1~3ヌクレオチド修飾因子または2ヌクレオチド修飾因子が、センス鎖の3’末端のリボヌクレオチドの置換に使用される。立体障害分子が使用されるとき、それらは、アンチセンス鎖の3’末端でリボヌクレオチドに結合される。それ故に、鎖の長さは、修飾因子取り込みで変わらない。他の実施態様において、dsRNA内の2DNA塩基の置き換えは、アンチセンス鎖のDicerプロセシングの配向を指示し得る。さらなる実施態様において、2末端DNA塩基がセンス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端の二本鎖の平滑末端を形成するセンス鎖の3’末端の2リボヌクレオチドについて置換され、2ヌクレオチドRNAオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端に位置する。これは、平滑末端のDNAおよびオーバーハング末端のRNA塩基の非対称組成物である。DsiRNAのdsRNA構造が、Dicerの開裂により産生されたオリゴヌクレオチドセグメントが、遺伝子発現阻害に最も有効であるオリゴヌクレオチドの部分であることを確実にするために最適化し得ることは認識される。例えば、27bpオリゴヌクレオチドがここで合成でき、遺伝子発現を阻害する21~22bpセグメントがアンチセンス鎖の3’末端に位置することが予想される。アンチセンス鎖の5’末端に位置する残りの塩基はDicerにより開裂され、処分される。この開裂部分は、相同(すなわち、標的配列の配列に基づき)または非相同であり、核酸鎖を伸長するように付加される。修飾がdsRNAをDicerの基質としてまたは他に働くことを妨害しない限り、他の修飾が含まれ得る。ある実施態様において、1以上の修飾は、dsRNAのDicerプロセシングを促進し、より有効なRNAi産生をもたらし、大きなRNAi効果を支持し、細胞に送達される各dsRNA分子あたり大きな効力をもたらす。修飾は、3’末端領域、5’末端領域、3’末端および5’末端領域両方またはある場合配列内の種々の位置に取り込まれ得る。複数修飾が存在するとき、それらは同一でも異なってもよい。塩基、糖部分、リン酸主鎖およびそれらの組み合わせへの修飾が企図される。いずれかの5’末端がリン酸化され得る。一般に、ここに記載する修飾のいずれもが使用され得る。例えば、リン酸主鎖で企図される修飾は、ホスホネートおよびホスホロチオエートを含む。糖部分で企図される修飾の例は、2’-O-メチル、2’-フルオロなどの2’-アルキル、デオキシ修飾を含む。配座固定されたヌクレオチド、例えば、LNAが取り込まれ得る。ある実施態様において、リガンド(例えば、ターゲティング部分または形質導入ドメイン)を、例えば、センス鎖の3’末端に結合させ得る。ある実施態様において、一方または両方の鎖の少なくとも5’および/または3’末端1または2ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合である。ある実施態様において、一方または両方の鎖の5’および/または3’末端1または2ヌクレオシド間結合のみがホスホロチオエート結合である。ある実施態様において、一方または両方の3’オーバーハングの1、2または全ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である。ある実施態様において、3’オーバーハングは、これの代わりにまたはこれに加えてそれに結合した部分、例えば、ターゲティング部分または親油性部分を有し得る。
【0491】
ある実施態様において、RNAi剤は、短二本鎖領域を含む。“短二本鎖領域”は、8~15ヌクレオチド長である二本鎖領域をいう。ある実施態様において、RNAi剤は、短二本鎖領域、ガイド鎖の3’末端に2~13ヌクレオチド長である一本鎖領域および複数修飾を含む。短二本鎖領域を含むRNAi剤の例は、米国特許出願公開20110263680に記載される。
【0492】
ある実施態様において、RNAi剤は、RISCに取り込まれ、標的RNA、例えば、C3標的mRNA配列と相互作用して、RISCエンドヌクレアーゼによる標的RNAの開裂を指示できる、一本鎖RNAを含む。このような一本鎖RNAi剤は一本鎖siRNA(ss siRNA)と称し得る。ss siRNAは、一般に15~30ヌクレオチドであり、天然に存在するRNAと比較して、化学的に修飾される。ss siRNAの状況で有用な修飾およびss siRNAを設計する方法は当分野で知られ、例えば、米国特許8,101,348; Lima et al., Cell 150: 883-894 (2012);Yu et al., Cell 150: 895 (2012); Haringsma et al., Nucleic Acids Res 40: 4125, 2012; Chorn et al., RNA 18: 1796 (2012);米国特許出願公開2009002365;WO2011/046983;WO2011/139699;WO2011/139702;WO2012/145729;WO2012/027206に記載される。ある実施態様において、C3を標的化するss siRNAが、米国特許出願公開20150291957に記載の原則および/またはここに記載する修飾ヌクレオチドおよび/または核酸構造の活用により設計される。ある実施態様において、ss siRNAは、次の修飾の少なくとも一つを含む:少なくとも2つのヌクレオチド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-メトキシエトキシリボヌクレオチド、2’-フルオロ-デオキシリボヌクレオチド、ロックド核酸および3’末端アデノシンヌクレオチド。ある実施態様において、ss siRNAは、3’末端に、2連続2’-O-メトキシエチルリボヌクレオチド、2連続2’-O-メチルリボヌクレオチドまたはLNAジヌクレオチドからなるジヌクレオチドを含む。ある実施態様において、核酸、例えば、ss siRNAは、5’末端にホスフェートまたはホスフェートアナログ(ホスフェートアイソスター、ホスフェートバイオアイソスターまたはホスフェート模倣体とも称する)を含む。例えば、ホスフェートアナログはホスホネート、例えば、5’-メチレンホスホネート(5’-MP)または5’-(E)-ビニルホスホネートであり得る。ある実施態様において、ss siRNAは、それに結合した親油性部分を含む。ある実施態様において、親油性部分は、ss siRNAの5’末端から8番目のヌクレオチドで結合する。ss siRNAは、前記修飾の任意の1以上を含み得る。ある態様において、C3発現を阻害するds siRNAのアンチセンス鎖としてここに記載するヌクレオチド配列の何れも、C3発現を阻害する一本鎖siRNAとして使用し得る。ある実施態様において、ds siRNAのアンチセンス鎖としてここに記載するヌクレオチド配列の何れも、前記引用文献の任意の1以上におけるss siRNAについてここに記載するアプローチにより修飾し得る。
【0493】
ある実施態様において、ここに記載する方法および組成物において使用するINAAは、RNAi機構ではなく、アンチセンス阻害機構により標的RNAを阻害する一本鎖核酸分子である。このような薬剤をここでは“アンチセンスオリゴヌクレオチド”(ASO)と称する。ここで使用する“アンチセンス阻害機構”は、標的RNAの標的部分と相補性である一本鎖核酸分子が介在し、RISCに依存しない、例えば、RISCで生じないおよびRISCの一部であるまたは物理的に関係するタンパク質により触媒されないまたは実施されない、発現を阻害するあらゆる機構をいう。ある実施態様において、ASOは、mRNAと塩基対形成し、翻訳機構を物理的に妨害することにより、化学量論的に翻訳を阻害する。ある実施態様において、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA(例えば、C3 mRNAまたはC3 pre-mRNA)とハイブリダイズし、RNase、例えば、RNase HによるRNAの分解をもたらす。ある実施態様において、ASOは約15~約30ヌクレオチド長であり、標的配列に相補性である配列を有し得る。例えば、ASOは、C3 mRNAまたはpre-mRNAの標的部分と相補性である、少なくとも約15、16、17、18、19、20またはそれ以上の隣接ヌクレオチドである配列を含み得る。ある実施態様において、ASOは15ヌクレオチド長より短く、例えば、8~14ヌクレオチド長でよい。ここでの目的で、7~14ヌクレオチド長である核酸を“ショートマー”と称する。ある実施態様において、一本鎖ASOは、RNase Hを活性化して標的RNAを開裂するDNA中心領域(コア)を含み、該コアは、一般にRNase H介在開裂を支持しないが、ハイブリダイゼーションで親和性を篩過に寄与する、修飾、例えば、2’-メトキシエチル(MOE)またはLNAまたは拘束エチル(cET)などのリボース修飾を有する5’配列および3’配列のヌクレオチドが隣接する。このような隣接領域は、“ウィング”と称する。RNase Hを活性化する中心領域(例えば、DNA領域)およびRNase Hを活性化しない隣接領域を含むASOは、当分野で知られる“ギャップマー”とも称し得る。ある実施態様において、RNase H介在開裂を支持するASOは、少なくとも5連続DNAヌクレオチド、例えば、5~7または7~10連続DNAヌクレオチドのコアを含む。ある実施態様において、各ウィングは、独立して3~10ヌクレオチド長、例えば、3~5または5~8nt長である。ある実施態様において、ギャップマーは、10~14ヌクレオチド長または15~22ヌクレオチド長である。ある実施態様において、一本鎖ASOは、少なくとも一部立体遮断により働く。このようなASOは、ASOがRNase Hを活性化しないような様式で、分散されたリボース修飾を含み得る。ある実施態様において、立体遮断により働くASOは、8~14ヌクレオチド長である。
【0494】
ある実施態様において、米国特許出願公開20010044145、20080207541および20100093836の任意の1以上に記載された方法またはヌクレオチド修飾を、C3を標的とし、C3転写物のRNase H介在分解を誘発するASOの設計に使用し得る。ある実施態様において、1以上の標的へのASOモノマー(例えば、C3 RNA)を、血漿で安定であるが、細胞内側で開裂され、活性ASOモノマーを遊離する、結合領域によりホモまたはヘテロ二量体または多量体として共合成される(例えば、Subramanian RR, et al., Nucleic Acids Res.; 43(19):9123-32 (2015)参照)。
【0495】
ある実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドターゲティングC3は、米国特許出願公開20150247141に記載のとおり設計され得る。ASOは各々C3 RNAにおける異なる標的部分に相補性である、2、3またはそれ以上の異なる部分を含んでよく、ここで、2以上の異なる部分は開裂可能結合を含み得る結合部分により結合される。ある実施態様において、C3をターゲティングし、非ヌクレオチドベースの開裂可能結合部分を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、米国特許出願公開20150315585および/または20150315586に記載のとおり設計する。
【0496】
ある実施態様によって、種々のヌクレオチド修飾またはヌクレオチド修飾パターンを、ds INAAのセンス鎖またはアンチセンス鎖に選択的に使用し得る。例えば、ある実施態様において、アンチセンス鎖において非修飾リボヌクレオチドを使用し(少なくともその二本鎖部分内)、センス鎖の一部または全位置で修飾ヌクレオチドおよび/または修飾または非修飾デオキシリボヌクレオチドを用い得る。ある実施態様において、修飾の特定のパターンが、ds RNAi剤の一方のまたは両方の鎖の一部または全てをとおしてまたはss-RNAi剤またはASOの一本鎖内で用いられる。当業者は、ある修飾および/または設計特性が、ds RNAi剤における所望の鎖(すなわち、C3 mRNAの標的部分への鎖相補性)がガイド鎖として利用される可能性を高め得ることを認識する。ヌクレオチド修飾は、多様なパターンの何れで生じてもよい。例えば、交互のパターンが使用され得る。交互のパターンは、例えば、鎖の少なくとも一部(例えば、INAAの相補性鎖との二本鎖に参加する部分)にわたり、一つおきのヌクレオチドが特定の修飾を有するものおよび2、3またはそれ以上のヌクレオチドのブロック(ここで、該ブロックは、このような修飾を有しない同一または異なるサイズのブロックにより離される)が、鎖の少なくとも一部にわたり特定の修飾を有するものを含む。例えば、アンチセンス、センス鎖または両者は、一つおきのヌクレオチドに2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾を有し得る。
【0497】
ある実施態様において、INAAは、3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の1以上のモチーフを含む、鎖を含む。例えば、ある実施態様において、二本鎖RNAi剤は、センス鎖、アンチセンス鎖または両者の3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の1以上のモチーフを含む。ある実施態様において、このようなモチーフは、一方のまたは両方の鎖における開裂部位またはその近くで生じ得る。このようなモチーフならびにこのようなモチーフを含むRNAi剤配置およびRNAi剤の例は、米国特許出願公開20150197746、20150247143および20160298124に記載される。
【0498】
ある実施態様において、RNAi剤は、19ヌクレオチド長の両端が同じ形のブラントマーであり、ここで、センス鎖は、5’末端から7位、8位、9位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。ある実施態様において、RNAi剤は、20ヌクレオチド長の両端が同じ形のブラントマーであり、ここで、センス鎖は、5’末端から8位、9位、10位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。ある実施態様において、RNAi剤は、21ヌクレオチド長の両端が同じ形のブラントマーであり、ここで、センス鎖は、5’末端から9位、10位、11位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位の3連続ヌクレオチドに3つの2’-0-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。
【0499】
ある実施態様において、RNAi剤は、21ヌクレオチドセンス鎖および23ヌクレオチドアンチセンス鎖を含み、ここで、センス鎖は、5’末端から9位、10位に3連続ヌクレオチドに3つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含む、11位;アンチセンス鎖は、5’末端から11位、12位、13位の3連続ヌクレオチド3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含み、ここで、RNAi剤の一端は平滑であるが、他端は2ヌクレオチドオーバーハングを含む。好ましくは、2ヌクレオチドオーバーハングはアンチセンス鎖の3’末端にある。2ヌクレオチドオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端にあるとき、末端3ヌクレオシド間に2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合があってよく、ここで、3ヌクレオチドの2つはオーバーハングヌクレオチドであり、三番目のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドに隣接して対形成する。ある実施態様において、RNAi剤は、さらに、センス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の5’末端両方で末端3ヌクレオチド間に2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を有する。ある実施態様において、モチーフの一部であるヌクレオチドを含むRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖の全ヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。ある実施態様において、各残基は、独立して、例えば、交互のモチーフで、2’-O-メチルまたは3’-フルオロで修飾される。
【0500】
ある実施態様において、RNAi剤はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで、センス鎖は25~30ヌクレオチド残基長であり、ここで、5’末端ヌクレオチド(1位)から出発して、第一鎖の1~23位は少なくとも8リボヌクレオチド含む;アンチセンス鎖は36~66ヌクレオチド残基長であり、3’末端ヌクレオチドから出発して、センス鎖の1~23位と対形成する位置に少なくとも8リボヌクレオチド含み、二本鎖を形成する;ここで、少なくともアンチセンス鎖の3’末端ヌクレオチドはセンス鎖と不対であり、最大6連続3’末端ヌクレオチドがセンス鎖と不対であり、それにより1~6ヌクレオチドの3’一本鎖オーバーハングが形成され;ここで、アンチセンス鎖の5’末端は10~30連続ヌクレオチドを含み、これはセンス鎖と不対であり、それにより、10~30ヌクレオチド一本鎖5’オーバーハングが形成され;ここで、センス鎖およびアンチセンス鎖が最大相補性によりアラインされたとき、少なくともセンス鎖5’末端および3’末端ヌクレオチドがアンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対し、それにより、センス鎖とアンチセンス鎖で実質的に二本鎖領域が形成される;そしてアンチセンス鎖は、二本鎖核酸が哺乳動物細胞に導入されたとき、標的遺伝子発現を減少するように、少なくとも19リボアンチセンス鎖のヌクレオチド長に沿って標的RNAと十分に相補性である;そしてここで、センス鎖は3連続ヌクレオチドに3つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含み、モチーフの少なくとも一つは、開裂部位でまたはその近くで生じる。アンチセンス鎖は、開裂部位またはその近くの3連続ヌクレオチドに3つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。
【0501】
ある実施態様において、RNAi剤のセンス鎖は、3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含み、ここで、モチーフの一つは、センス鎖の開裂部位で生じる。ある実施態様において、RNAi剤のアンチセンス鎖も、3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含んでよく、ここで、モチーフの一つは、アンチセンス鎖の開裂部位でまたはその近くで生じる。
【0502】
17~23ヌクレオチド長の二本鎖部分を有するRNAi剤について、アンチセンス鎖の開裂部位は、一般に5’末端から約10位、11位および12位である。それ故に3つの同一の修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;10位、11位、12位;11位、12位、13位;12位、13位、14位;または13位、14位、15位で生じ、アンチセンス鎖の5’末端の1番目のヌクレオチドから数え始めるまたは、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖部分内の最初の対形成ヌクレオチドから数え始める。アンチセンス鎖の開裂部位は、5’末端からのRNAiの二本鎖部分の長さによっても変わり得る。
【0503】
RNAi剤のセンス鎖は、鎖の開裂部位に3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含んでよく;アンチセンス鎖は、鎖の開裂部位またはその近辺に3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含み得る。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA二本鎖を形成するとき、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス鎖の3ヌクレオチドの1モチーフとアンチセンス鎖の3ヌクレオチドの1モチーフが、少なくとも一つのヌクレオチド重複を有するようにアラインでき、すなわち、センス鎖におけるモチーフの3ヌクレオチドの少なくとも一つが、アンチセンス鎖におけるモチーフの3ヌクレオチドの少なくとも一つと塩基対形成する。あるいは、少なくとも2つのヌクレオチドが重複してよいまたは全3ヌクレオチドが重複してよい。
【0504】
ある実施態様において、RNAi剤のセンス鎖は、3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の1を超えるモチーフを含み得る。第一モチーフは鎖の開裂部位またはその近辺で生じてよく、他のモチーフは“ウィング修飾”であってよく、RNAi剤の文脈におけるこの用語は、同鎖の開裂部位またはその近辺のモチーフと分離されている鎖の他の部分で生じるモチーフをいう。ウィング修飾は第一モチーフに隣接するかまたは少なくとも1以上のヌクレオチドにより離される。モチーフが互いに直接隣接しているならば、モチーフの化学は互いに異なり、モチーフが1以上のヌクレオチドで離されているならば、化学は同一でも異なってもよい。2以上のウィング修飾が存在し得る。例えば、2つのウィング修飾が存在するとき、各ウィング修飾は、リードモチーフの開裂部位もしくはその近辺またはいずれかの端にある、第一モチーフに対して一端に存在し得る。
【0505】
RNAi剤のアンチセンス鎖は、3連続ヌクレオチドに3つの同一の修飾の1を超えるモチーフを含んでよく、モチーフの少なくとも一つは鎖の開裂部位またはその近辺で生じる。このアンチセンス鎖は、センス鎖に存在し得るウィング修飾に類似するアラインメントで1以上のウィング修飾も含み得る。ある実施態様において、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖のウィング修飾は、一般に鎖の3’末端、5’末端または両端に最初の1または2末端ヌクレオチドを含まない。他の実施態様において、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖のウィング修飾は、一般に、鎖の3’末端、5’末端または両端の二本鎖部分内に最初の1または2対形成ヌクレオチドを含まない。RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖の各々が少なくとも1ウィング修飾を含むとき、ウィング修飾は、二本鎖部分の同じ末端に生じてよく、1、2または3ヌクレオチドの重複を有する。RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖の各々が少なくとも2つのウィング修飾を含むとき、センス鎖およびアンチセンス鎖は、各1鎖からの2修飾が各々二本鎖部分の一端に生じ、1、2または3ヌクレオチド重複を有するようにアラインされ得る;各1鎖からの2修飾は、二本鎖部分の他端におき、1、2または3ヌクレオチドの重複を有する;各1鎖からの2修飾は、二本鎖部分のリードモチーフの各側で生じ、1、2または3ヌクレオチドの重複を有する。
【0506】
ある実施態様において、モチーフの一部であるヌクレオチドを含むRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖の全ヌクレオチドが修飾され得る。各ヌクレオチドは同一または異なる修飾で修飾されてよく、これは、非結合リン酸酸素の一方または両方および/または1以上の結合リン酸酸素の1以上の改変;リボース糖の要素、例えば、リボース糖の2’ヒドロキシルの改編;ホスフェート部分の“デホスホ”リンカーでの大規模な置換;天然に存在する塩基の修飾または置換;およびリボース-リン酸主鎖の置換または修飾を含み得る。
【0507】
ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の残基の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、例えば、100%は、独立してLNA、CRN、cET、UNA、HNA(1,5-アンヒドロヘキシトール核酸)、CeNA(シクロヘキセニル核酸-デオキシリボースが6員シクロヘキセン環で置換されているDNA模倣体)、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシルまたは2’-フルオロで修飾され得る。これら鎖は、1を超える修飾を含み得る。ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の残基の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、例えば、100%は、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで独立して修飾される。ある実施態様において、少なくとも2つの異なる修飾がセンス鎖およびアンチセンス鎖に存在する。これら2修飾は、2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾または他2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾またはその他であり得る。
【0508】
ある実施態様において、Naおよび/またはNbは、交互のパターンの修飾を含む。ここで使用する用語“交互のモチーフ”は、各修飾が、1鎖の1以上のヌクレオチドの交互の基で生じる、1以上の修飾を有するモチーフをいう。例えば、交互のヌクレオチドは、全ての他のヌクレオチドあたり一つまたは全3ヌクレオチドあたり一つまたは類似のパターンをいい得る。例えば、A、BおよびCが各々ヌクレオチドへの修飾の1タイプを表すとき、交互のモチーフは“ABABABABABAB...”、“AABBAABBAABB...”、“AABAABAABAAB...”、“AAABAAABAAAB...”、“AAABBBAAABBB...”または“ABCABCABCABC...”などであり得る。
【0509】
交互のモチーフに含まれる修飾のタイプは、同一でも異なってもよい。例えば、A、B、C、Dが各々ヌクレオチドへの修飾の1タイプを表すとき、交互のパターン、すなわち、一つおきのヌクレオチドへの修飾は同じであってよいが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々は、“ABABAB...”、“ACACAC...”、“BDBDBD...”または“CDCDCD...”などのような、交互のモチーフ内の修飾の可能性のあるいくつかから選択できる。
【0510】
ある実施態様において、RNAi剤は、アンチセンス鎖の交互のモチーフについての修飾パターンに対してシフトされた、センス鎖の交互のモチーフについての修飾パターンを含む。シフトは、センス鎖のヌクレオチドの修飾基が、アンチセンス鎖のヌクレオチドの異なって修飾された基に相当するおよびその逆であるようなものであり得る。例えば、センス鎖は、dsRNA二本鎖でアンチセンス鎖と対形成しているとき、センス鎖の交互のモチーフは、鎖の5’-3’で“ABABAB”で始まり、アンチセンス鎖の交互のモチーフは、二本鎖部分内の鎖の5’-3’で“BABABA”で始まり得る。他の例として、センス鎖の交互のモチーフは、鎖の5’-3’で“AABBAABB”で始まり、アンチセンス鎖の交互のモチーフは、二本鎖部分内の鎖の5’-3’で“BBAABBAA”で始まり、センス鎖とアンチセンス鎖で修飾パターンの完全または部分シフトがあり得る。
【0511】
ある実施態様において、RNAi剤は、元々アンチセンス鎖の2’-O-メチル修飾および2’-F修飾の交互のモチーフのパターンに対して、元々シフトされたセンス鎖の2’-O-メチル修飾および2’-F修飾の交互のモチーフのパターンを含み、すなわち、センス鎖の2’-O-メチル修飾ヌクレオチドはアンチセンス鎖の2’-F修飾ヌクレオチドと塩基対形成するおよびその逆である。センス鎖の1位は2’-F修飾で始まってよく、アンチセンス鎖の1位は2’-O-メチル修飾で始まってよい。
【0512】
センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3連続ヌクレオチドへの3つの同一の修飾の1以上のモチーフの導入は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖に存在する初期修飾パターンを破壊する。ある実施態様において、3連続ヌクレオチド上の3つの同一の修飾のモチーフはこれら鎖の何れに導入されてもよく、モチーフの隣のヌクレオチドの修飾は、モチーフの修飾と異なる修飾である。例えば、モチーフを含む配列の部分は“...NaYYYNb...”であり、ここで、“Y”は3連続ヌクレオチド上の3つの同一の修飾のモチーフの修飾を表し、“Na”および“Nb”は、Yの修飾と異なるモチーフ“YYY”の隣のヌクレオチドの修飾を表し、ここでNaおよびNbは同一または異なる修飾であり得る。あるいは、Naおよび/またはNbは、存在するウィング修飾があるならば、存在しても存在しなくてもよい。
【0513】
RNAi剤は、さらに少なくとも一つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合を含み得る。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖または両鎖の任意のヌクレオチドで、鎖の任意の位置で生じ得る。例えば、ヌクレオシド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の全ヌクレオチドで生じ得る;各ヌクレオシド間結合修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖に交互のパターンで生じ得る;またはセンス鎖またはアンチセンス鎖は、両者とも交互のパターンでヌクレオシド間結合修飾を含み得る。センス鎖のヌクレオシド間結合修飾の交互のパターンはアンチセンス鎖と同一でも異なってもよく、センス鎖のヌクレオシド間結合修飾の交互のパターンアンチセンス鎖のヌクレオシド間結合修飾の交互のパターンに対してシフトを有し得る。ある実施態様において、二本鎖RNAi剤は、6~8個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。ある実施態様において、アンチセンス鎖は、5’末端に2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合および3’末端に2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含み、センス鎖は、5’末端または3’末端に少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0514】
ある実施態様において、RNAi剤は、オーバーハング領域にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2ヌクレオチド間のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合を有する2ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド間結合修飾も、二本鎖部分内の末端対結合ヌクレオチドとオーバーハングヌクレオチドを結合させるように、行い得る。例えば、オーバーハングヌクレオチドの少なくとも2、3、4または全てをホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合により結合してよく、所望により、オーバーハングヌクレオチドとオーバーハングヌクレオチドの隣である対形成ヌクレオチドを結合する付加的ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合があり得る。例えば、末端3ヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合があってよく、ここで、3ヌクレオチドの2つはオーバーハングヌクレオチドであり、三番目は、オーバーハングヌクレオチドに隣接して対形成する。これらの末端3ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端および/またはアンチセンス鎖の5’末端にあり得る。
【0515】
ある実施態様において、2ヌクレオチドオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端にあり、末端3ヌクレオチド間の2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合があり、ここで、3ヌクレオチドの2つはオーバーハングヌクレオチドであり、三番目のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドに隣接して対形成する。所望により、RNAi剤は、さらにセンス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の5’末端両方に末端3ヌクレオチド間の2ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を有し得る。
【0516】
ある実施態様において、RNAi剤は、標的とのミスマッチ、二本鎖内ミスマッチまたはそれらの組み合わせを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域または二本鎖部分で生じ得る。塩基対を、解離または融解を促進する傾向に基づき、ランク付けし得る(例えば、特定の対形成の結合または解離の自由エネルギー、最も単純なアプローチは、個々の対塩基の対の試験であるが、近隣または類似の分析も使用できる)。解離の促進に関して、A:UがG:Cより好ましい;G:UがG:Cより好ましい;そしてI:CがG:C(I=イノシン)より好ましい。ミスマッチ、例えば、非古典的または古典的対形成以外(本明細書の他の箇所に記載するとおり)が古典的(A:T、A:U、G:C)対形成より好ましい;そして普遍的塩基を含む対形成が古典的対形成より好ましい。
【0517】
ある実施態様において、ds RNAi剤は、A:U、G:U、I:Cからなる群から独立して選択されるアンチセンス鎖の5’末端から二本鎖内部分内の最初の1、2、3、4または5塩基対の少なくとも一つおよび二本鎖の5’末端でのアンチセンス鎖の解離を促進するためのミスマッチ対、例えば、非古典的または古典的以外の対形成または普遍的塩基を含む対形成を含む。ある実施態様において、アンチセンス鎖の5’末端から1位の二本鎖内部分のヌクレオチドは、A、dA、dU、UおよびdTからなる群から選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖内部分の最初の1、2または3塩基対の少なくとも一つはAU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端からの二本鎖内部分の最初の塩基対はAU塩基対である。
【0518】
ある実施態様において、RNAi剤は、WO/2015/089368の59頁(20行)~65頁(15行)または米国特許出願公開20160298124の対応するパラグラフ[0469]~[0537]または該公開公報のいずれかまたは両方の特許請求の範囲に記載の配置および/または修飾パターンの何れも有し得る。例えば、ある実施態様において、INAAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNAi剤を含み、ここで、該センス鎖は該アンチセンス鎖と相補性であり、ここで、該アンチセンス鎖は、C3をコードするmRNAの一部と相補性の領域を含み、各鎖は約14~約30ヌクレオチド長であり、ここで、該薬剤は式(III)
センス:5’ np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq 3’
アンチセンス:3’ np’-Na’-(X’X’X’)k-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-(Z’Z’Z’)l-Na’-nq’ 5’
により表される。
【0519】
ここで、i、j、kおよび1 は各々独立して0または1であり;p、p’、qおよびq’は各々独立して0~6であり;各NaおよびNa’は独立して修飾または非修飾またはそれらの組み合わせである0~25ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なって修飾されたヌクレオチドを含み;各NbおよびNb’は独立して修飾または非修飾またはそれらの組み合わせである0~10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;各np、np’、nqおよびnq’は、各々存在してもしなくてもよく、独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’およびZ’Z’Z’は各々独立して3連続ヌクレオチド上の3つの同一の修飾の1モチーフを表し;Nbの修飾はYの修飾と異なり、Nb’の修飾はY’の修飾と異なり;そしてセンス鎖は少なくとも一つのリガンドにコンジュゲートする。ある実施態様において、iは0であり;jは0であり;iは1であり;jは1であり;iおよびjの両者は0であり;またはiおよびjの両者は1である。ある実施態様において、XXXはX’X’X’と相補性であり、YYYはY’Y’Y’と相補性であり、そしてZZZはZ’Z’Z’と相補性である。各Xは、各Xが同じ修飾を含む限り、異なる塩基を含み得ることは理解される。例えば、XXXはAGCであり、各ヌクレオチドは2-F修飾を含む。同様に、各X’、各Y、各Y’、各Zおよび各Zは異なり得る。
【0520】
ある実施態様において、式(III)は式(IIIa)により表される:
センス:5’ np-Na-YYY-Na-nq 3’
アンチセンス:3’ np’-Na’-Y’Y’Y’-Na’-nq’5’
または、式(III)は式(IIIb)により表される:
センス:5’ np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq 3’
アンチセンス:3’ np’-Na’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na’-nq’5’
ここで、各NbおよびNb’は独立して1~5修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;または式(III)は式(IIIc)により表される:
センス:5’ np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq 3’
アンチセンス:3’ np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Na’-nq’5’
ここで、各NbおよびNb’は独立して1~5修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;または式(III)は式(IIId)により表される:
センス:5’ np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq 3’
アンチセンス:3’ np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na’-nq’5
ここで、各NbおよびNb’は独立して1~5修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各NaおよびNa’は独立して2~10修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0521】
ある実施態様において、ヌクレオチドの修飾は、LNA、CRN、cET、UNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0522】
ある実施態様において、ヌクレオチドの修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾である。
【0523】
ある実施態様において、リガンドは、二価または三価分枝リンカーにより結合した1以上のGalNAc誘導体。ある実施態様においてである、リガンドは、下記式XA、XBまたはXCに示す。
【0524】
ある実施態様において、リガンドはセンス鎖の3’末端に結合する。ある実施態様において、結合は、下記式XDに示すとおりである。
【0525】
ある実施態様において、薬剤は、さらに少なくとも一つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオシド間結合を含む。
【0526】
ある実施態様において、p’>0;またはp’=2である。
【0527】
ある実施態様において、q’=0、p=0、q=0であり、p’オーバーハングヌクレオチドはC3 mRNAと相補性である。ある実施態様において、q’=0、p=0、q=0であり、p’オーバーハングヌクレオチドはC3 mRNAと非相補性である。
【0528】
ある実施態様において、少なくとも一つのnp’は、ホスホロチオエート結合により隣接ヌクレオチドと結合される
【0529】
ある実施態様において、INAAは、センス鎖またはアンチセンス鎖の5’伸張を含み、さらにリガンドまたは抗体とコンジュゲートした複数のヌクレオチドを含む二本鎖核酸分子である。ある実施態様において、二本鎖核酸は、21~83ヌクレオチドを含むセンス鎖;15~39ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖;15~35塩基対の長さを有する、該センス鎖およびアンチセンス鎖により形成された二本鎖を含み;ここで、ds核酸は、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端の間またはセンス鎖の3’末端とアンチセンス鎖の5’末端の間に不連続を含み;ここでセンス鎖はテトラループを含み、テトラループは、少なくとも一つのリガンドとコンジュゲートしたヌクレオチドを含み;ここで、該アンチセンス鎖は、該二本鎖核酸が哺乳動物または哺乳動物細胞に導入されたとき、標的遺伝子発現を減少させるに十分に、該第二鎖長さの少なくとも15ヌクレオチドにわたりC3 mRNAと相補性である。このようなINAAおよびそれらの製造方法の例は、WO/2016/100401に記載される。ある実施態様において、テトラループは、1、2、3、4またはそれ以上のリガンドとコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある実施態様において、リガンドの少なくとも一つ、例えば、リガンド全部が、ヌクレオチドのリボースの2’ヒドロキシルを介してテトラループのヌクレオチドと結合する。ある実施態様において、アンチセンス鎖は、15~30ヌクレオチド、18~25ヌクレオチドまたは19~24ヌクレオチドの範囲の長さを有する。ある実施態様において、センス鎖は、19~30ヌクレオチドまたは19~36ヌクレオチドの範囲の長さを有する。ある実施態様において、二本鎖は、15~22ヌクレオチドまたは15~30ヌクレオチドの範囲の長さを有する。
【0530】
ある実施態様において、リガンドは、肝細胞に核酸分子を標的化する。例えば、ある実施態様において、リガンドは、肝細胞特異的アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)と結合し、例えば、リガンドは、ガラクトース誘導体、例えば、GalNacを含む。他のリガンドの例は、下に記載する。
【0531】
当業者は、INAAが当分野で知られる標準的方法で、例えば、自動化核酸合成装置の使用により合成できることを認識する。ある実施態様において、二本鎖INAAは、まず個々の鎖を合成し、次いでそれらをアニーリングすることにより製造し得る。二本鎖核酸の個々の鎖または単鎖または一本鎖核酸を、液相または固相有機合成または両者を使用して製造できる。
【0532】
あるC3をターゲティングするINAAは当分野で知られ、ここに記載する方法および組成物で使用され得る。ある実施態様において、INAA、例えば、ds RNAi剤のアンチセンス鎖の相補性の領域は、PCT/US2014/069951(WO/2015/089368)および対応する米国特許出願公開20160298124(以後“米国公開‘124と称する”の表5および6の何れかのアンチセンス配列の一つのヌクレオチド配列からなり、ここで、表5は非修飾配列を表し、表6はその配列の修飾体を表す。該表を、ここに表13(C3非修飾配列)および表14(C3修飾配列)として再び記載し、ここで、表14で使用する略称を表15に列記する。該表に列記されているのはまたNM_000064.2のヒトC3転写物配列における位置である。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5および6の何れかに提供される配列の群から選択されるセンス鎖および米国公開‘124の表5および6の何れかの配列の群から選択されるセンス鎖の対応するアンチセンス鎖を含む。この態様において、2つの配列の一方は2つの配列の他方と相補性であり、C3遺伝子の発現で産生されるmRNA遺伝子の配列と実質的相補性である配列の一つを伴う。すなわち、この態様において、ds RNAi剤は2つのオリゴヌクレオチドを含み、一方のオリゴヌクレオチドは米国公開‘124の表5および6の何れかにセンス鎖として記載され、第二オリゴヌクレオチドは米国公開‘124の表5および6の何れかにセンス鎖の対応するアンチセンス鎖として記載される。種々の実施態様において、実質的相補性配列は別のオリゴヌクレオチドに含まれるかまたは単一オリゴヌクレオチドに含まれ得る(所望によりここに記載するループ構造により結合される)。
【0533】
ある実施態様において、INAAは、米国公開‘124の表5または6でAD-60149.1、AD-60152.1、AD-60156.1、AD-60165.1、AD-60169.1、AD-60171.1、AD-60174.1、AD-60175.1、AD-60176.1、AD-60179.1、AD-60183.1またはAD-60187.1と名付けられた二本鎖のアンチセンス鎖の少なくとも15連続ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。INAAは、さらに、米国公開‘124の表5または6でAD-60149.1、AD-60152.1、AD-60156.1、AD-60165.1、AD-60169.1、AD-60171.1、AD-60174.1、AD-60175.1、AD-60176.1、AD-60179.1、AD-60183.1またはAD-60187.1と名付けられた二本鎖のセンス鎖の少なくとも15連続ヌクレオチドを含むセンス鎖を含み得る。ある実施態様において、INAAは、米国公開‘124の表5または6でAD-60149.1、AD-60152.1、AD-60156.1、AD-60165.1、AD-60169.1、AD-60171.1、AD-60174.1、AD-60175.1、AD-60176.1、AD-60179.1、AD-60183.1またはAD-60187.1と名付けられた二本鎖を含む。ある実施態様において、INAAは、前記アンチセンス鎖およびセンス鎖と最大3ヌクレオチド異なるアンチセンス鎖およびセンス鎖を含む。
【0534】
米国公開‘124の表5および6の配列の一部は修飾および/またはコンジュゲート配列と記載されているが、本発明の方法および組成物で有用なINAAは、非修飾、非コンジュゲートおよび/またはそこの記載と異なって修飾および/またはコンジュゲートされた、米国公開‘124の表5および6に示す配列の任意の1以上を含み得る。さらに、米国公開‘124の表5および6に示す配列と最大1、2または3ヌクレオチド位置異なる配列であるバリアント配列が使用され得る。このようなバリアント配列は、ds INAAの二本鎖内に1以上のミスマッチを作るおよび/またはC3 RNAとハイブリダイズしたときに1以上のミスマッチを作るように核酸塩基配列の点で異なり得る。
【0535】
ある態様において、INAAは、約20~23塩基対、例えば、21塩基対の二本鎖部分を含み得る。ある態様において、短いまたは長いRNA二本鎖部分を含むINAAが使用され得る。ある実施態様において、米国公開‘124の表5または6に提供されるオリゴヌクレオチド配列を用い、INAAは、最小21ヌクレオチドの長さの少なくとも一つの鎖を含み得る。ある実施態様において、米国公開‘124の表5または6の1以上の配列の一部を含むが、一端または両端で最大数ヌクレオチド欠く短い二本鎖が使用され得る。例えば、米国公開‘124の表5および6の配列の一つに由来する少なくとも15、16、17、18、19、20またはそれ以上の隣接ヌクレオチドの配列を有するds siRNAが使用され得る。ある実施態様において、米国公開‘124の表5または6の1以上の配列を含むが、一端または両端で最大15の付加的ヌクレオチドが取り込まれた長い二本鎖が使用され得る。このような付加的ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の一端に存在するとき、アンチセンス鎖により標的化される標的部分を構成するものに隣接するC3 mRNAの配列と相補性であるように選択され得る。ある実施態様において、1以上の(例えば、最大15)付加的ヌクレオチドを、米国公開‘124の表5または6に示す鎖の3’末端に付加し得る。
【0536】
ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5または6に含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の隣接ヌクレオチドを含まない、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5または6に挙げる鎖と1、2または3ヌクレオチド異なるセンス鎖またはアンチセンス鎖を含まない、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5および6に記載のRNAi剤により標的化されるのと異なるC3の部分を標的とする。ある実施態様において、C3を標的とするINAAは、米国公開‘124の表5および6に示す配列を含まないまたはそれからならない。本発明のある実施態様において、INAAは、米国公開‘124の表5および6に示すアンチセンス配列と実質的相補性ではないC3 RNAの領域を標的とする。本発明のある実施態様において、INAAは、米国公開‘124の表5および6に示すアンチセンス配列と二本鎖を形成するC3の部分と共に位置しない、C3 RNAの領域を開裂する。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5および6に記載のRNAi剤により標的化される部分と重複しない標的部分を標的とする。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5および6に記載のRNAi剤により標的化される部分と重複する標的部分を標的とするが、このような重複の長さは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドを超えない。
【0537】
ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5または6においてAD-60149.1、AD-60152.1、AD-60156.1、AD-60165.1、AD-60169.1、AD-60171.1、AD-60174.1、AD-60175.1、AD-60176.1、AD-60179.1、AD-60183.1またはAD-60187.1と名付けられた二本鎖のアンチセンス鎖またはセンス鎖の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の隣接ヌクレオチドを含まないアンチセンス鎖およびセンス鎖を含む。米国公開‘124の表5または6に含まれる。ある実施態様において、C3をターゲティングするINAAは、米国公開‘124の表5または6でAD-60149.1、AD-60152.1、AD-60156.1、AD-60165.1、AD-60169.1、AD-60171.1、AD-60174.1、AD-60175.1、AD-60176.1、AD-60179.1、AD-60183.1またはAD-60187.1と名付けられた二本鎖のアンチセンス鎖およびセンス鎖と3ヌクレオチドを超えて異なるアンチセンス鎖およびセンス鎖を含む。
【0538】
ある態様において、C3ターゲティングに適するとして米国特許出願公開20080090997に開示されたまたは該公報でC3をターゲティングするsiRNAに適するとして開示されるセンス鎖を含むINAAの使用が企図される。
【0539】
ある実施態様において、C3発現を阻害するINAAは、次の配列の何れかの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18または19隣接ヌクレオチドと完全にまたは実質的に相補性であるアンチセンス鎖を含む:
AAACUGACGCAGAGUAAGA(配列番号75)
AAAGAUCAACUCACCUGUA(配列番号76)
AACAAGCUCUGCCGUGAUG(配列番号77)
AAGAAACACUACCUCAUGU(配列番号78)
AAGAAAUGAUUGGUGGAUU(配列番号79)
AAGAUCAACUCACCUGUAA(配列番号80)
ACAAAGCCUUCUCCGAUAG(配列番号81)
ACACCUACCUGAUCAUGAA(配列番号82)
ACAGGGAGUUCAAGUCAGA(配列番号83)
ACAUGAACCUACAGAGAUC(配列番号84)
ACGAAGAGAACCAGAAACA(配列番号85)
ACGAAUGCCAAGACGAAGA(配列番号86)
ACGGAACAACAACGAGAAA(配列番号87)
ACGGAGAAGCGAAUGGACA(配列番号88)
ACGUUGAGGACUUGAAAGA(配列番号89)
AGAAAUGAUUGGUGGAUUA(配列番号90)
AGAACACUAUGAUCCUUGA(配列番号91)
AGACACAGAUGACCUGAAG(配列番号92)
AGACAGACAAGACCAUCUA(配列番号93)
AGACGAAGAGAACCAGAAA(配列番号94)
AGAUGACCCUGAAGAUAGA(配列番号95)
AGGAUGGAAAGCUGAACAA(配列番号96)
AGGGAGUUCAAGUCAGAAA(配列番号97)
AGGUUCAGCUGUCCAAUGA(配列番号98)
AGUCACAGCUGAAGGAAAA(配列番号99)
AGUGGAGCCUACAGAGAAA(配列番号100)
AGUUUGAGGUGAAGGAGUA(配列番号101)
AUUACAACCUGGAGGAAAG(配列番号102)
CAACAACGAGAAAGACAUG(配列番号103)
CAACAGGGAGUUCAAGUCA(配列番号104)
CAACCCAGCUCUGCCUUUG(配列番号105)
CAACUCACCUGUAAUAAAU(配列番号106)
CAAGAACACUAUGAUCCUU(配列番号107)
CAAGAUCACCCACCGUAUC(配列番号108)
CAAGGUCACCCUGGAAGAA(配列番号109)
CACCAAUACUUUAAUGUAG(配列番号110)
CAGAAGACCUGGUGGGGAA(配列番号111)
CAGAAGAGAACAUCGUUUC(配列番号112)
CAGAAGAGACCAAGGAAAA(配列番号113)
CAGAAGCCCUUGAGCAUCA(配列番号114)
CAGAUCCACUUCACCAAGA(配列番号115)
CAGAUGACCCUGAAGAUAG(配列番号116)
CAGCAGCGCACGUUCAUCA(配列番号117)
CAGCAUCACUAAAGCAGGA(配列番号118)
CAGUCAAGGUCUACGCCUA(配列番号119)
CAGUCACAGCUGAAGGAAA(配列番号120)
CAUCAUUGCAGAAGAGAAC(配列番号121)
CCAACUACAUGAACCUACA(配列番号122)
CCAAGACACCCAAGUACUU(配列番号123)
CCAAGGAAAAUGAGGGUUU(配列番号124)
CCAAGGAGCUGCGCAAGUG(配列番号125)
CCAAGUAUGAGCUGGACAA(配列番号126)
CCAAUGACUUUGACGAGUA(配列番号127)
CCAAUGGUGUUGACAGAUA(配列番号128)
CCACCAACCACAUGGGCAA(配列番号129)
CCACUGAGUUUGAGGUGAA(配列番号130)
CCCUGAAGCUGGAGGAGAA(配列番号131)
CCGGAAGGAAUCAGAAUGA(配列番号132)
CCGUGAAGGAGUGCAGAAA(配列番号133)
CCGUGAUACACCAAGAAAU(配列番号134)
CCGUGUGGGUGGACGUCAA(配列番号135)
CCUACAGCACCGUGGGCAA(配列番号136)
CCUACCUGAUCAUGAACAA(配列番号137)
CCUCAAGCGCAUUCCGAUU(配列番号138)
CGAAACGAGCAGGUGGAAA(配列番号139)
CGAAGCUCAUGAAUAUAUU(配列番号140)
CGAAGUGAGUUCCCAGAGA(配列番号141)
CGGAAAAGGAGGAUGGAAA(配列番号142)
CGGAAGGCAUCCCGGUCAA(配列番号143)
CGGAGAAGCGAAUGGACAA(配列番号144)
CGGCUACCCUACUCUGUUG(配列番号145)
CGGGCAGUGGGAAGGAUUA(配列番号146)
CGGUCAUCGCUGUGCAUUA(配列番号147)
CUACAUCUAUAACGAGAAG(配列番号148)
CUACAUGAACCUACAGAGA(配列番号149)
CUACGAAGCUCAUGAAUAU(配列番号150)
CUGAAUAAGAAGAACAAAC(配列番号151)
CUGCAGGAGGCUAAAGAUA(配列番号152)
CUGGAGCAGUCAAGGUCUA(配列番号153)
CUUGAAAGAGCCACCGAAA(配列番号154)
GAAACGAGCAGGUGGAAAU(配列番号155)
GAAACGGAGCAGUGGGAGA(配列番号156)
GAACAACAACGAGAAAGAC(配列番号157)
GAACAAGCUCUGCCGUGAU(配列番号158)
GAACAGAACAUGAUCGGCA(配列番号159)
GAACAUCGUUUCCCGAAGU(配列番号160)
GAACCAGCUUGGCGUCUUG(配列番号161)
GAACGUUGAGGACUUGAAA(配列番号162)
GAACUGAACCUUGAUGUGU(配列番号163)
GAACUGCCUUUGUCAUCUU(配列番号164)
GAAGAAACACUACCUCAUG(配列番号165)
GAAGAGAACCAGAAACAAU(配列番号166)
GAAGAUCCGAGCCUACUAU(配列番号167)
GAAGGAAUCAGAAUGAACA(配列番号168)
GAAGUUCGGCCUAGAGAAG(配列番号169)
GAAUGGACAAAGUCGGCAA(配列番号170)
GACAAAGCCUUCUCCGAUA(配列番号171)
GACCACAGCCAAAGAUAAG(配列番号172)
GACCAGAAUUCUCCUGCAA(配列番号173)
GAGAAGUUCGGCCUAGAGA(配列番号174)
GAGAAUUGCUUCAUACAAA(配列番号175)
GAGCCGUUCUCUACAAUUA(配列番号176)
GAGGAGAAUUGCUUCAUAC(配列番号177)
GAGGAUGACUGUCUAGCUU(配列番号178)
GAGUGCAGAAAGAGGACAU(配列番号179)
GAGUGGACUAUGUGUACAA(配列番号180)
GAUAGGAACACCCUCAUCA(配列番号181)
GAUCAACUCACCUGUAAUA(配列番号182)
GAUCAGAAGAGACCAAGGA(配列番号183)
GAUCCGAGCCUACUAUGAA(配列番号184)
GCAACAAGUUCGUGACCGU(配列番号185)
GCAGAAGAGAACAUCGUUU(配列番号186)
GCAGAUGACCCUGAAGAUA(配列番号187)
GCAGCUGGCCUUCAGACAA(配列番号188)
GCAGGAGGCUAAAGAUAUU(配列番号189)
GCCAAGACGAAGAGAACCA(配列番号190)
GCCAGAAGCCCUUGAGCAU(配列番号191)
GCGCAUUCCGAUUGAGGAU(配列番号192)
GCGCCUUCACCGAGAGCAU(配列番号193)
GCGUGUUCGUGCUGAAUAA(配列番号194)
GCUCUGCCGUGAUGAACUG(配列番号195)
GGAACAACAACGAGAAAGA(配列番号196)
GGAACACCCUCAUCAUCUA(配列番号197)
GGAACUGCCUUUGUCAUCU(配列番号198)
GGAAGAAAGUGGAGGGAAC(配列番号199)
GGAAGAUCCGAGCCUACUA(配列番号200)
GGAAGGAAUCAGAAUGAAC(配列番号201)
GGAAUCAGAAUGAACAAAA(配列番号202)
GGACAAAGUCGGCAAGUAC(配列番号203)
GGACAAGGCCUGUGAGCCA(配列番号204)
GGACAAGGUCUCACACUCU(配列番号205)
GGACAGCAGCGCACGUUCA(配列番号206)
GGACAUAUCCAUGAUGACU(配列番号207)
GGACAUCAUUGCAGAAGAG(配列番号208)
GGACCCAAGUGGUGGAGAA(配列番号209)
GGACGAAUGCCAAGACGAA(配列番号210)
GGACGGUCAUGGUCAACAU(配列番号211)
GGAGAAGCGAAUGGACAAA(配列番号212)
GGAGAAUUGCUUCAUACAA(配列番号213)
GGAGAGAAGCCCAACCUCA(配列番号214)
GGAGGGAACUGCCUUUGUC(配列番号215)
GGAGUAACCUGGAUGAGGA(配列番号216)
GGAUGACUGUCUAGCUUUC(配列番号217)
GGAUGCCACUAUGUCUAUA(配列番号218)
GGAUUACGCCGGUGUCUUC(配列番号219)
GGCAGAACCAAGAGCUCAA(配列番号220)
GGCAGCAGAUGACCCUGAA(配列番号221)
GGCCAAUGGUGUUGACAGA(配列番号222)
GGCCUCUUCUUAACAAAUU(配列番号223)
GGCUCAAUGAACAGAGAUA(配列番号224)
GGGAAGAAAGUGGAGGGAA(配列番号225)
GGGAGACCCUCAACGUCAA(配列番号226)
GGUCAUCGCUGUGCAUUAC(配列番号227)
GGUCUUCUCCACUGAGUUU(配列番号228)
GUAAGCAGCUCUACAACGU(配列番号229)
GUAAUAAAUUCGACCUCAA(配列番号230)
GUGAAGGAGUGCAGAAAGA(配列番号231)
GUGACAAUGUACCAUGCUA(配列番号232)
GUGACAUGGUGCAGGCAGA(配列番号233)
GUGCAUUACCUGGAUGAAA(配列番号234)
GUGCUGAAUAAGAAGAACA(配列番号235)
GUGGGCAACUCCAACAAUU(配列番号236)
GUUCACCAAUACUUUAAUG(配列番号237)
UCAACUCACCUGUAAUAAA(配列番号238)
UCAAUGAACAGAGAUACUA(配列番号239)
UCACAGUAAUGCAGGACUU(配列番号240)
UCACCAAGACACCCAAGUA(配列番号241)
UCAGAAGAGACCAAGGAAA(配列番号242)
UCUACGAAGCUCAUGAAUA(配列番号243)
UCUGGGACGUGGUGGAGAA(配列番号244)
UGAAGCAGCUGGCCAAUGG(配列番号245)
UGAAGCUGGAGGAGAAGAA(配列番号246)
UGACAAUGUACCAUGCUAA(配列番号247)
UGACCACAGCCAAAGAUAA(配列番号248)
UGAGGAGAAUUGCUUCAUA(配列番号249)
UGCAGGAAGUGGAAGUCAA(配列番号250)
UGCUAAGGCCAAAGAUCAA(配列番号251)
UGGAAGAACGGCUGGACAA(配列番号252)
UGGCUUUGCUCCAGACACA(配列番号253)
UGUGGAACGUUGAGGACUU(配列番号254)
UUUCAAAGUUCACCAAUAC(配列番号255)
AAUCCGAGCCGUUCUCUACAA(配列番号256)
AACAAGCUCUGCCGUGAUGAA(配列番号257)
AAUGGACAAAGUCGGCAAGUA(配列番号258)
AACUACAUGAACCUACAGAGA(配列番号259)
AAAAAGCGGCCAGUCAGAAGA(配列番号260)
AAUGAUUGGUGGAUUACGGAA(配列番号261)
AAGUCCUCGUUGUCCGUUCCA(配列番号262)
AAAUGAUUGGUGGAUUACGGA(配列番号263)
AAUUACCGGCAGAACCAAGAG(配列番号264)
AAAUGGAAUCUCUACGAAGCU(配列番号265)
AAUGAACAGAGAUACUACGGU(配列番号266)
AAGCCUUGGCUCAAUACCAAA(配列番号267)
AAGCGCAUUCCGAUUGAGGAU(配列番号268)
AAUGGAAUCUCUACGAAGCUC(配列番号269)
AACCUCAUCGCCAUCGACUCC(配列番号270)
【0540】
INAAは、さらに、該アンチセンス鎖と完全にまたは実質的に相補性であるセンス鎖を含み得る。該センス鎖は、前記配列のいずれかの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18または19隣接ヌクレオチドを含み得る。
【0541】
ある実施態様において、C3発現を阻害するINAAは、前記配列の何れかと1、2または3ヌクレオチド異なるアンチセンス鎖を含む。INAAは、さらに該アンチセンス鎖に相補性であるセンス鎖を含み得る。該センス鎖は、前記配列のいずれかの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18または19隣接ヌクレオチドを含み得る。該アンチセンス鎖およびセンス鎖を含むINAAは、ここに記載する任意の配置、修飾および/または修飾パターンを含み得る。例えば、INAAは1以上のオーバーハングを含んでよく、1以上の非ホスホジエステル結合を含んでよく、交互の修飾モチーフを含んでよく、3連続ヌクレオチドの3つの同一の修飾の1以上のモチーフを含む鎖を含んでよいなどである。ある実施態様において、このようなアンチセンス鎖およびセンス鎖は、例えば、それらの3’末端で、例えば、Dicer基質低分子干渉RNAとして役立つのに十分に長く、21を超えるヌクレオチドまで伸長できる。アンチセンス鎖における付加的ヌクレオチドは、標的C3 mRNAと相補性であり得る。ある実施態様において、該アンチセンス配列をss siRNAとして使用することがさらに企図され得る。
【0542】
所望であれば、任意の特定のタイプのINAAの標的領域として適し得るC3 RNAのさらなる部分の同定および/またはそのような標的部分を標的とするINAA設計のために当分野で知られるソフトウェアパッケージおよびガイドラインを使用し得る。siRNA標的領域およびsiRNAアンチセンス鎖およびセンス鎖配列の選択に適当なソフトウェアパッケージの例は、siDirect 2.0(http://siDirect2.RNAi.jp/で利用可能)であり、これは、Ui-Tei et al., Nucleic Acids Res. 32, 936-948 (2004), Reynolds et al., Nat. Biotechnol. 22, 326-330 (2004), Amarzguioui et al., BBRC 316, 1050-1058 (2004)またはそれらの組み合わせに記載されるsiRNA設計基準を満たす、標的部分およびsiRNA鎖を同定する。使用できる他のコンピュータープログラムおよびアルゴリズムは、米国特許出願公開20080090997に記載される。ある実施態様において、特定の所望のサイズ(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29ヌクレオチド)を選択し、標的RNA配列を走査して、標的部分として役立つ選択ガイドラインを満たすサイズの配列を同定し得る。この方法で、特定のガイドラインセットに適合する、特定のサイズについて可能な標的部分の完全なセットを同定し得る。INAAを標的化する配列を合成し、同定して(ここに記載するまたは当分野で知られるアッセイを使用して)、INAAで標的化したとき、標的遺伝子発現の所望の程度の阻害をもたらすおよび/または標的外効果の所望の欠失を有する、標的部分を同定する。
【0543】
ある実施態様において、ここに記載するアンチセンス配列の何れか、例えば、米国公開‘124の表5および6に示すアンチセンス配列またはその配列バリアントの何れかを修飾して、翻訳抑制またはRNase H介在分解により作動するASOに適する設計原則に適合させる。ある実施態様において、米国公開‘124の表5および6に示すアンチセンス配列の何れかを修飾して、ss siRNAに適する設計原則に適合させる。
【0544】
ある実施態様において、INAAを、INAAの活性、安定性、細胞分布または細胞取り込みを調節、例えば増強するおよび/またはINAAの荷電または溶解度などの1以上の物理的性質を変える1以上の部分とコンジュゲートするかまたは他に物理的結合させる。ある実施態様において、部分は、取り込まれたINAAの分布、ターゲティングまたは寿命を変える。ある実施態様において、部分は、例えば、このような部分を欠く種と比較して、選択標的、例えば、分子、細胞型、区画、例えば、細胞または臓器区画、体の組織、臓器または領域への高い親和性を提供する。部分は、一般に二本鎖核酸における二本鎖対形成に参加も妨害もしない。部分は、抗体またはリガンドを含み得る。リガンドは炭水化物、レクチン、タンパク質、糖タンパク質、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、核酸ホルモン、増殖因子または受容体であり得る。ある実施態様において、天然に存在するホルモン、増殖因子または他のリガンドの生物学的に不活性のバリアントが使用され得る。ある実施態様において、部分は、INAAを特定の細胞型、例えば、肝細胞に標的化するターゲティング部分を含む。ある実施態様において、ターゲティング部分は、肝細胞特異的アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)と結合する。
【0545】
ある実施態様において、部分は、INAAに可逆性結合により結合する。“可逆性結合”は、可逆性結合を含む結合である。“可逆性結合”(不安定結合または開裂可能結合とも称する)は、選択した条件下で、分子における他の結合より急速に選択的に破壊または開裂されることができる水素原子への共有結合以外の共有結合であり、結合は同分子における他の共有結合が実質的に破壊または開裂されない条件下で、選択的に破壊または開裂され得る。結合の開裂または不安定性は、結合開裂の半減期(t1/2)の点で記載され得る(結合の半分を開裂するのに必要な時間)。特に断らない限り、ここで興味深い可逆性結合は“生理学的に可逆性の結合”であり、これにより、結合は、哺乳動物体内で通常遭遇するまたは遭遇するものに準ずる条件下で、開裂可能であることを意味する。生理学的に可逆性の結合は、少なくとも一つの生理学的に可逆性の結合を含む結合である。ある実施態様において、生理学的に可逆性の結合は、哺乳動物細胞内条件下で可逆性であり、該条件は、pH、温度、酸化または還元状態などの化学状態または薬剤および哺乳動物細胞でで見られるまたは見られるものに準ずる塩濃度を含む。哺乳動物細胞内条件はまた、タンパク分解性または加水分解性酵素などからの哺乳動物細胞に通常存在する酵素活性も含む。酵素不安定結合は、体内の酵素、例えば、細胞内酵素により開裂される。pH不安定結合は、7.0以下のpHで開裂される。ある実施態様において、生理学的結合は、標的細胞でまたは細胞内条件を模倣または表す第一制御条件で、哺乳動物対象の血液、血漿または血清または哺乳動物対象の血液、血漿または血清で見られる条件を模倣または表す第二制御条件下よりも、少なくとも10倍、50倍、100倍またはそれより速くすなわち、標的細胞または第一制御条件下の結合のt1/2が、哺乳動物対象の血液、血漿または血清または第二制御条件下における結合のt1/2より少なくとも10倍、50倍、100倍またはそれより低い。ある実施態様において、生理学的に可逆性の結合は、標的細胞または目的の細胞区画で≦2時間のt1/2を有する。ある実施態様において、生理学的に可逆性の結合は、標的細胞または目的の細胞区画で≦1時間またはある実施態様において、≦30分のt1/2を有する。生理学的に可逆性の結合は、一般に、結合を含む薬剤を無傷のままとするが、標的細胞に入ると、開裂して結合により結びつけられていた薬剤の2部分を放出するのに細胞の外側で十分に安定である。ある実施態様において、可逆性結合は、ターゲティング部分によりカップリングされた治療に有益な量のINAAを、標的細胞に可逆性結合の方法でターゲティング可能とするが、標的細胞に入ると、ターゲティング部分からINAAを放出するように、細胞の外側で(例えば、血中で)十分に安定である。可逆性結合および結合ならびに部分のINAAへのコンジュゲートにおけるそれらの使用は、米国特許出願公開20130281685および20150273081に記載される。
【0546】
ある実施態様において、部分はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含む。タンパク質形質導入ドメインは、ドメインに結合した異種分子の取り込みを促進するポリペプチドまたはその部分である(このような異種分子は“カーゴ”と称され得る)。ペプチドであるタンパク質形質導入ドメインは、細胞透過性ペプチド(CPP)と称され得る。多数のタンパク質形質導入ドメイン/ペプチドが当分野で知られる。PTDは、多様な天然に存在するまたは合成アルギニンリッチペプチドを含む。アルギニンリッチペプチドは、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、50%、60%またはそれ以上アルギニン残基を含むペプチドである。PTDの例は、TAT(少なくともアミノ酸49~56)、アンテナペディアホメオドメイン、HSV VP22およびポリアルギニンを含む。このようなペプチドは、カチオン性、疎水性または両親媒性ペプチドであってよく、非標準的アミノ酸および/または環状に順序変更された、インベルソ、レトロ、レトロ-インベルソまたはペプチド模倣バージョンの使用などの種々の修飾または多様性を含み得る。PTDとカーゴの結合は、共有結合でも非共有結合でもよい。
【0547】
使用し得るPTDの例は、米国特許出願公開20090093026、20090093425、20120142763、20150238516および20160215022に記載される。PTDは2以上のPTD(例えば、2~10PTD)を含んでよく、これは、同一でも異なってもよい。PTDは、互いに直接結合され得るまたはアルキル鎖またはオリゴエチレングリコール部分などの1以上のアミノ酸および/または1以上の非アミノ酸部分を含み得る結合部分により分離され得る。
【0548】
ある実施態様において、INAAは、アニオン性荷電中和部分を含むまたは物理的に結合している。アニオン性荷電中和部分は、物理的に結合する核酸の全体の正味のアニオン性荷電を低減できる分子または化学基である。1以上のアニオン性荷電中和分子または基が核酸と結合でき、ここで、各々独立してアニオン性荷電減少および/またはカチオン性荷電増加に寄与する。中和された荷電は、アニオン性荷電中和分子または基の非存在下の同核酸より、核酸のアニオン性荷電が減少され、中和されまたはよりカチオン性が増加されることを意図する。ホスホジエステルおよび/またはホスホチオエート保護基は、アニオン性荷電中和基の例である。それ故にある実施態様において、INAAは、負に荷電した基を含む主鎖(例えば、ホスホジエステルまたはホスホロチオエート主鎖)の正味アニオン性荷電を減少する保護基を1以上の位置で含む。INAAは、アニオン性荷電が減少する限り、ここに記載するRNAi剤またはASOであってよい。ある実施態様において、負に荷電したホスホジエステル主鎖は、生物可逆性ホスホトリエステル保護基を用いる合成により中和され、これは、細胞質チオエステラーゼの作用により細胞内で荷電ホスホジエステル結合に変換され、発現阻害に生物活性である薬剤、例えば、RNAiに介在できるsiRNAをもたらす。低分子干渉リボ核中性物(siRNN)と称されることもあるこのような薬剤は、それ故に、siRNAプロドラッグとして役立つ。主鎖は完全に中和される(すなわち、非荷電)必要はないことは理解される。還元すると、リン酸基の全てが保護される必要はないが、そうしてもよい。ある実施態様において、リン酸基の5%~100%、例えば、25%~50%または50%~75%または75%~100%が保護される。ある実施態様において、一方または両方の鎖のリン酸基の少なくとも5、6、7、8、9または10が保護される。有用なホスホジエステルおよび/またはホスホチオエート保護基、それらの製造方法および核酸におけるそれらの使用(例えば、RNAi剤プロドラッグの産生のため)の例は、米国特許出願公開20110294869、20090093425、20120142763および20150238516に記載される。例えば、有用な生物可逆性ホスホトリエステル保護基は、tBu-SATE(SATE=S-アシル-2-チオエチル)、ヒドロキシルO-SATE、アルデヒドA-SATEおよびBMEG(S-イソブタノイル2-(2-メルカプトエトキシ)エトキシル))である。ある実施態様において、保護基は、PTDまたはターゲティング部分などの部分への結合に使用できる反応性官能基を含む。ある実施態様において、化学的反応性アルデヒドA-SATEホスホトリエステル保護基は、ヒドラジン含有部分への効率的コンジュゲーションを可能とする。ある実施態様において、siRNNまたは他の阻害性荷電中和核酸は、コンジュゲートされたまたは他に物理的に結合された、タンパク質形質導入ドメイン、例えば、カチオン性PTDを有する。何らかの理論に縛られることを望まないが、凝集を促進しおよび/または細胞送達を減少させる、負の主鎖荷電はカチオン性PTDにより中和される。負の主鎖荷電の中和は、凝集の傾向を減少させ、細胞送達を改善する。それ故に、あるINAAは、TATおよびポリArgなどのPTDと、RNAi剤プロドラッグとして働くことができる荷電中和核酸の使用を組み合わせる。ある実施態様において、ターゲティング部分またはPTDを含む部分をヒドラジン部分を含むように合成でき、これは、siRNNまたは荷電中和ASOの規定位置でアルデヒドA-SATEと反応できる。ある実施態様において、PTDを含む部分はHyNic-GG-(TAT)-PEG18-(TAT)-PEG18-(TAT)を含み、ここで、TAT=RKKRRQRRRおよびHyNic=6-ヒドラジノニコチンアミドである(Hamil, A. S., et al. Conjugation of Duplexed siRNN Oligonucleotides with DD-HyNic Peptides for Cellular Delivery of RNAi Triggers. Bio-protocol 6(7): e1782 (2016))。種々の実施態様において、siRNNはここに記載する修飾のいずれも含み得る。例えば、ある実施態様において、2’糖修飾(例えば、2’-F、2’-O-Me)を含み得る。さらに、siRNNは、ここに記載する配置または修飾パターンの何れかを有し得る。
【0549】
ある実施態様において、INAAに結合する部分は、炭水化物を含む。代表的炭水化物は、約4、5、6、7、8または9単糖単位を含むモノ、ジ、トリおよびオリゴサッカライドを含む。ある実施態様において、炭水化物は、ガラクトースまたはガラクトサミン、N-ホルミル-ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-プロピオニル-ガラクトサミン、N-n-ブタノイル-ガラクトサミンおよびN-イソ-ブタノイルガラクトサミンなどのガラクトース誘導体を含む。特に興味深いある実施態様において、ガラクトース誘導体はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む。ある実施態様において、部分は、ガラクトースまたはガラクトース誘導体の複数例、例えば、複数N-アセチルガラクトサミン部分、例えば、3個のGalNAc部分を含む。ここで使用する用語“ガラクトース誘導体”は、ガラクトースおよびガラクトースと同等以上にアシアロ糖タンパク質受容体に親和性を有するガラクトースの誘導体の両方を含む。用語“ガラクトースクラスター”は、互いに、一般に他の部分に共有結合することにより、物理的に結合した少なくとも2つのガラクトース誘導体を含む構造をいう。ある実施態様において、ガラクトースクラスターは、2~10、例えば6、2~4、例えば、3末端ガラクトース誘導体を有する。末端ガラクトース誘導体は、ガラクトース誘導体のC-1炭素を介して他の部分に結合し得る。ある実施態様において、2個以上、例えば、3個のガラクトース誘導体が、分枝点として働き、INAAに結合できる部分に結合する。ある実施態様において、ガラクトース誘導体は、リンカーまたはスペーサーを介して分枝点として働く部分に結合する。ある実施態様において、分枝点として働く部分は、リンカーまたはスペーサーによりINAAに結合し得る。リンカーまたはスペーサーは、ここに記載するリンカーまたはスペーサーの何れかを含み得る。例えば、ある実施態様において、ガラクトース誘導体は、アミド、カルボニル、アルキル、オリゴエチレングリコール部分またはこれらの組み合わせを含むリンカーまたはスペーサーを介して分枝点に結合する。ある実施態様において、各ガラクトース誘導体に結合したリンカーまたはスペーサーは同じである。ある実施態様において、ガラクトースクラスターは、3末端ガラクトサミンまたはガラクトサミン誘導体(例えば、GalNAc)を有し、各々アシアロ糖タンパク質受容体に親和性を有する。2以上のガラクトース誘導体を含む分子は、多価と称し得る。3ガラクトース誘導体を含む分子は、三価と称し得る。3末端GalNAc部分が分枝点として働く部分に結合した(例えば、サッカライドのC-1炭素を介して)構造は、三本側鎖N-アセチルガラクトサミン(GalNAc3)といい得る。ある実施態様において、ガラクトース誘導体を含む1以上のモノマー単位は、INAAに部位特異的に取り込まれ得る。このようなガラクトース誘導体含有モノマー単位は、ヌクレオシドまたは非ヌクレオシド部分に結合したガラクトース誘導体、例えば、GalNacを含む。ある実施態様において、少なくとも3個のヌクレオシド-GalNAcモノマーまたは少なくとも3個の非ヌクレオシド-GalNAcモノマーが、INAAに部位特異的に取り込まれる。ある実施態様において、このような取り込みは、ホスホラミダイト化学を使用する固相合成中または合成後コンジュゲーションにより生じ得る。ある実施態様において、ガラクトース誘導体含有モノマー単位は、互いにおよび/または結合したガラクトース誘導体を有しないINAAのヌクレオシドにホスホジエステル結合に結合される。ある実施態様において、2、3またはそれ以上のガラクトース誘導体含有モノマー単位を連続的に、すなわち、ガラクトース誘導体を欠く介在単位無しに配置できる。ある実施態様において、炭水化物、例えば、ガラクトースクラスター、例えば、三本側鎖N-アセチルガラクトサミンまたは2以上のGalNac含有モノマー単位は、鎖の末端、例えば、ds RNAi剤のセンス鎖の3’末端またはASOの5’末端に存在する。炭水化物(例えば、ガラクトースクラスター)、ガラクトース誘導体含有モノマー単位、炭水化物-修飾INAAならびにそれを製造および使用する方法の例は、米国特許出願公開20090203135、20090239814、20110207799、20120157509、20150247143、米国公開‘124;Nair, JK, et al., J. Am. Chem. Soc. 136, 16958-16961 (2014); Matsuda, S., et al., ACS Chem. Biol. 10, 1181-1187 (2015); Rajeev, K., et al., ChemBioChem 16, 903 - 908 (2015); Migawa, MT., et al., Bioorg Med Chem Lett. 26(9):2194-7 (2016); Prakash, TP, et al., J Med Chem. 59(6):2718-33 (2016)に記載される。ガラクトースクラスターの例を下に示す。
【0550】
【0551】
【0552】
Dfdf
【0553】
【0554】
当業者は、各GalNacを分枝点に結合する結合部分の構造は変わり得ることを認識する。
【0555】
ある実施態様において、INAAは、下記のとおりリガンドにコンジュゲートする。
【化86】
ここで、XはOまたはSである。大部分の実施態様において、XはOである。当業者は、ガラクトースクラスターをリン酸基に結合する結合部分の構造は変わり得ることを認識する。
【0556】
ある実施態様において、部分は親油性部分を含む。ある実施態様において、親油性部分は、トコフェロール、例えば、アルファ-トコフェロールを含む。ある実施態様において、親油性部分はコレステロールを含む。ある実施態様において、親油性化合物はアルキルまたはヘテロアルキル基を含む。ある実施態様において、親油性化合物は、パルミトイル、ヘキサデク-8-エノイル、オレイル、(9E,12E)-オクタデカ-9,12-ジエノイル、ジオクタノイルまたはC16-C20アシルを含む。ある実施態様において、親油性部分は、少なくとも16炭素原子含む。ある実施態様において、親油性部分は、-(CH)
n-NH-(C=O)-(CH)
m-CH
3を含む。ある実施態様において、nおよびmは、各々独立して1~20である。ある実施態様において、n+mは、少なくとも10、12、14または16である。ある実施態様において、親油性部分は下に示すとおりであるおよび/または下に示すとおり糖部分に結合する。
【化87】
【0557】
一般に、部分は、INAAの末端または内部サブユニットで結合し得る。ある実施態様において、部分は、INAAの修飾サブユニットに結合する。当業者は、コンジュゲートした部分を有する核酸の製造に適当な方法を認識する。反応性官能基を含む修飾ヌクレオチドを含む核酸鎖を、第二反応性官能基を含む部分と反応させてよく、ここで、第一および第二反応性官能基が、核酸鎖の構造の維持に適合する条件下で互いに反応できる。ある実施態様において、部分はセンス鎖またはアンチセンス鎖に結合され、その後、鎖のそれぞれ相補性アンチセンス鎖またはセンス鎖とのハイブリダイゼーションをする。ある実施態様において、鎖をハイブリダイズさせて二本鎖を形成し、その後、部分を取り込み得る。一般に、ここに記載するコンジュゲーションの種々の方法が使用され得る。例えば、Hermanson, supra参照。
【0558】
ある実施態様において、INAAはキメラINAAである。ここで使用する“キメラ”INAAは、各々少なくとも一つのモノマー単位からなる2以上の化学的に異なる領域を含むINAAであり、ここで、領域は、化合物に異なる性質を付与する。ある実施態様において、少なくとも一つの領域は、INAAにヌクレアーゼ分解に対する抵抗性増加、細胞取り込み増加および/または標的核酸への結合親和性増加を付与する修飾を有し、INAAの少なくとも一つの付加的領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂できる酵素(例えば、RNase H)の基質として役立ち得る。ある実施態様において、INAAの少なくとも一つの領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂できる酵素(例えば、RNase H)の基質として役立つことができ、かつ少なくとも一つの領域は、立体遮断により翻訳を阻害できる。
【0559】
細胞へのINAAの送達は、多数の種々の方法により達成され得る。インビボ送達を、INAAを含む組成物の、例えば、非経腸投与経路、例えば、皮下または静脈内または筋肉内投与による、対象への投与により実施し得る。
【0560】
ある実施態様において、INAAは、送達剤と結合される。“送達剤”は、生物活性剤(例えば、INAA)と非共有結合または共有結合により結合し、INAAと共投与され、送達剤非存在下で生物活性剤が送達される(例えば、対象への投与)ときにもたらされるであろう生物活性剤の安定性および/または有効性を超える増加をもたらす、1以上の機能に役立つ、物質または物体をいう。例えば、送達剤は、INAAを分解から保護し得る(例えば、血中)、INAAの細胞または目的の細胞区画(例えば、細胞質)への挿入を促進し得るおよび/または調節する分子標的を含む特定の細胞との結合を増強し得る。当業者は、INAA、例えば、siRNA送達に使用し得る多数の送達剤を認識する。これらのテクノロジーの一部のレビューについて、Kanasty, R., et al. Nat Mater. 12(11):967-77 (2013)参照。ある実施態様において、例えば、INAAの全身投与のために、INAを、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソームまたはカチオン性送達系などの送達剤と結合させ得る。何らかの理論に縛られることを望まないが、正に荷電したカチオン性送達系は、負に荷電したINAAの結合を促進し、細胞によるINAAの効率的取り込みを可能にするように負に荷電した細胞膜で相互作用を増強すると考えられる。カチオン性脂質、デンドリマーまたはポリマーはINAAと結合できまたはINAAを封入する小胞またはミセルを形成できる。カチオン性剤とINAAを含む複合体を製造および投与する方法は当分野で知られる。ある実施態様において、米国公開‘124に記載の送達剤の何れかの使用が特に企図される。ある実施態様において、INAAは、全身投与のためにシクロデキストリンと複合体化する。ある実施態様において、INAAを、脂質または脂質含有粒子と結合して投与する。ある実施態様において、INAAを、カチオン性ポリマー(ポリペプチドまたは非ポリペプチドポリマーであり得る)、脂質、ペプチド、PEG、シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせと結合して投与でき、これらはナノ粒子または微小粒子の形であり得る。脂質またはペプチドはカチオン性であり得る。“ナノ粒子”は、1ナノメートル(nm)より大きく、約150nmより小さい、例えば、20nm~50nmまたは50nm~100nmの2または3次元での長さを有する粒子である。“微小粒子”は、150nmより大きく、約1000nmより小さい2または3次元での長さを有する粒子である。ナノ粒子は、共有または非共有結合したターゲティング部分および/または細胞透過性部分または膜活性部分を有し得る。送達剤、製造方法およびINAAの送達における使用の例は、米国特許7,427,605;8,158,601;9,012,498;9,415,109;9,062,021;9,402,816に記載される。ある実施態様において、“Smarticles”として当分野で知られる送達テクノロジーの使用が企図される。ある実施態様において、“安定な核酸脂質粒子”(SNALP)として当分野で知られる送達テクノロジーの使用が企図され、ここで、送達される核酸は、カチオン性および融合性脂質の混合物を含む脂質二層に封入され、また中性、親水性外面を提供する拡散性ポリエチレングリコール-脂質(PEG-脂質)コンジュゲートでもコーティングされている。
【0561】
ある実施態様において、送達剤は、米国特許9,044,512に記載のもののような1以上のアミノアルコールカチオン性脂質を含む。
【0562】
ある実施態様において、送達剤は、1以上のアミノ酸脂質を含む。アミノ酸脂質は、アミノ酸残基(例えば、アルギニン、ホモアルギニン、ノルアルギニン、ノル-ノルアルギニン、オルニチン、リシン、ホモリシン、ヒスチジン、1-メチルヒスチジン、ピリジルアラニン、アスパラギン、N-エチルアスパラギン、グルタミン、4-アミノフェニルアラニン、そのN-メチル化体およびその側鎖修飾誘導体)および1以上の親油性尾部を含む分子である。アミノ酸脂質および核酸送達へのその使用の例は、米国特許出願公開20110117125および米国特許8,877,729、9,139,554および9,339,461に記載される。ある実施態様において、米国特許出願公開20130289207に記載のもののような膜溶解性ポリ(アミドアミン)ポリマーおよびポリコンジュゲートが使用され得る。ある実施態様において、送達剤は、中心ペプチドを含み、各末端に結合した親油性基を有するリポペプチド化合物を含む。ある実施態様において、親油性基は、天然に存在する脂質に由来し得る。ある実施態様において、親油性基は、C(1-22)アルキル、C(6-12)シクロアルキル、C(6-12)シクロアルキル-アルキル、C(3-18)アルケニル、C(3-18)アルキニル、C(1-5)アルコキシ-C(1-5)アルキルまたはスフィンガニンまたは(2R,3R)-2-アミノ-1,3-オクタデカネジオール、イコサスフィンガニン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンまたはcis-4-スフィンゲニンを含む。中央ペプチドは、カチオン性または両親媒性アミノ酸配列を含み得る。このようなリポペプチドおよび核酸送達におけるその使用の例は、米国特許9,220,785に記載される。
【0563】
“マスキング部分”は、他の薬剤(例えば、ポリマー)と物理的に結合したとき、1以上の性質(生物物理学的または生物化学的特徴)または他の薬剤の活動を遮断、阻害または不活性化する、分子または基をいう。マスキング部分は、薬剤に共有結合または非共有結合し得る。マスキング部分は可逆性であってよく、マスクする薬剤に可逆性結合により結合することを意味する。当業者には認識されるとおり、所望のレベルの不活性化を達成するために十分な数のマスキング部分が、マスクされる薬剤に結合される。
【0564】
ある実施態様において、INAAは、ポリマーである送達剤にコンジュゲートされる。有用な送達ポリマーは、例えば、ポリ(アクリレート)ポリマー(例えば、米国特許公開20150104408参照)、ポリ(ビニルエステル)ポリマー(例えば、米国特許公開20150110732参照)およびあるポリペプチドを含む。ある実施態様において、送達ポリマーは、可逆性にマスクされた膜活性ポリマーである。ある実施態様において、INAAまたはポリマーまたは両者は、それにコンジュゲートしたターゲティング部分を有する。ある実施態様において、INAAまたはINAA-ターゲティング部分コンジュゲートを送達ポリマーと共投与するが、ポリマーにコンジュゲートしない。この文脈での“共投与”は、INAAおよび送達ポリマーが、対象で重なって存在する時間があるように対象に投与されることを意味する。INAA-ターゲティング部分コンジュゲートおよび送達ポリマーは同時に投与してもそれらを別々に送達してもよい。同時投与について、それらを投与前に混合し得る。逐次投与について、INAAまたは送達ポリマーをまず投与し得る。INAAおよび送達ポリマーを同じ組成物で投与できまたはINAAの細胞への細胞質送達が、ポリマーの投与をせずに生じるであろう細胞質送達より増強されるのに十分に近い時間で、別々に投与し得る。ある実施態様において、INAAおよび送達ポリマーを、15分、30分、60分または120分を超えて離れずに投与する。ある実施態様において、送達ポリマーは、標的化された、可逆性にマスクされた膜活性ポリマーである。ポリマーは、ポリマーを、INAAの細胞質送達増強が望まれる細胞に標的化する結合したターゲティング部分を有する。INAAは、所望により同じターゲティング部分を使用して、同じ細胞に標的化してよく、すなわち、INAAを、INAA-ターゲティング部分コンジュゲートと同様に投与し得る。ここで使用する膜活性ポリマーは、生体膜で次の効果の1以上を誘発することができる、表面活性、両親媒性ポリマーである:非膜透過性分子を細胞に入れるまたは膜を通過させることが可能な膜の改変または破壊、膜における孔形成、膜の分裂または膜の破壊もしくは溶解。ここで使用する膜または細胞膜は脂質二層を含む。膜の改変または破壊は、少なくとも一つの次の赤血球溶解(溶血)、リポソーム漏出、リポソーム融合、細胞融合、細胞溶解およびエンドソーム放出のアッセイにおけるポリマーの活性により機能的に決定できる。膜活性ポリマーは、例えば、膜への孔形成によりまたはエンドソームまたはリソソーム小胞を破壊し、それにより小胞の内容物の細胞細胞質への放出を可能とすることによる、原形質膜または内部小胞膜(例えばエンドソームまたはリソソーム)の破壊または不安定化により、ポリヌクレオチドの細胞への送達を増強し得る。ある実施態様において、標的化された可逆性にマスクされた膜活性ポリマーは、エンドソーム不安定化ポリマーである。エンドソーム不安定化ポリマーは、pHの変化に応答して、エンドソームの破壊または溶解を引き起こすか他の方法で通常細胞膜不透過性であるポリヌクレオチドまたはタンパク質などの化合物の、エンドソームまたはリソソームなどの細胞内部膜封入小胞からの放出を提供する、ポリマーである。ある実施態様において、ポリマーは、可逆的に修飾された両親媒性膜活性ポリアミンであり、ここで、可逆性修飾が膜活性を阻害し、ポリアミンを正電荷を低減するように中和し、ほぼ中性の荷電ポリマーを形成する。可逆性修飾はまた細胞型特異的ターゲティングを提供するおよび/またはポリマーの非特異的相互作用を阻害することができる。ポリアミンは、ポリアミンのアミンの可逆性修飾により可逆的に修飾される。可逆性にマスクされた膜活性ポリマーは、マスキングされたとき実質的に膜活性ではないが、アンマスキングされたとき、膜活性となる。マスキング部分は、一般に生理学的に可逆性の結合により膜活性ポリマーに共有結合する。生理学的に可逆性の結合の使用により、マスキング部分は、インビボでポリマーから開裂され、それによりポリマーをアンマスキングし、アンマスキングされたポリマーの活性を回復させる。適切な可逆性結合の選択により、膜活性ポリマーの活性は、コンジュゲートが所望の細胞型または細胞位置に送達または標的化された後に、回復される。結合の可逆性は、膜活性ポリマーの選択的活性化を提供する。生理学的に可逆性の結合は、pH、温度、酸化または還元状態または薬剤などの化学条件および哺乳動物細胞で見られるもしくはそれに準ずる塩濃度を含む、哺乳動物細胞内条件下で可逆性である。ある実施態様において、ターゲティング部分、例えば、ASGPRターゲティング部分は、マスキング部分として役立ち得る。ある実施態様において、ASGPRターゲティング部分は、それにコンジュゲートした親油性部分を有する。ターゲティング部分(例えば、ASGPRターゲティング部分)、生理学的に不安定結合(例えば、酵素不安定結合、pH不安定結合)、マスキング部分、膜活性ポリマー(例えば、エンドソーム不安定化活性ポリマー)、親油性部分、RNAi剤-ターゲティング部分コンジュゲート、送達剤-ターゲティング部分コンジュゲート、RNAi剤、ターゲティング部分および送達剤を含むコンジュゲートならびに核酸を細胞(例えば、肝細胞)に送達する方法の例は、米国特許出願公開20130245091、20130317079、20120157509、20120165393、20120172412、20120230938、20140135380、20140135381、20150104408および20150110732に記載される。ある実施態様において、INAAは、例えば、米国特許出願公開20120165393に記載のとおり、メリチンペプチドと共投与される。INAA、メリチンペプチドまたは両者は、所望により、可逆性結合によりそれにコンジュゲートした、ターゲティング部分を含み得る。ある実施態様において、マスキング部分は、例えば、米国特許出願公開20150110732に記載のとおり、ジペプチド-アミドベンジル-カーボネートまたは二置換マレイン無水物マスキング部分を含む。
【0565】
ある実施態様において、INAAを“ネイキッド”形態で投与し得て、すなわち、送達剤非存在下で投与し得る。ネイキッドINAAは、適当な緩衝化溶液中にあり得る。緩衝化溶液は、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩もしくはリン酸塩または任意のこれらの組み合わせを含み得る。ある実施態様において、緩衝化溶液はリン酸緩衝化食塩水(PBS)である。緩衝化溶液のpHおよびモル浸透圧濃度は、対象への投与に適するものであるように調節できる。ある実施態様において、INAAを、脂質または脂質含有粒子と物理的結合なしで投与する。ある実施態様において、INAAを、ナノ粒子または微小粒子と物理的結合なしで投与する。ある実施態様において、INAAを、カチオン性ポリマーと物理的結合なしで投与する。ある実施態様において、INAAを、シクロデキストリンと物理的結合なしで投与する。ある実施態様において、“ネイキッド”形態で投与されるINAAは、ターゲティング部分を含む。
【0566】
ある実施態様において、選択した量のINAAが対象に投与される。例えば、量は0.01mg/kg~50mg/kgであり得る。ある実施態様において、INAAは、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与される。ある実施態様において、INAAは、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で投与される。ある実施態様において、INAAは、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。ある実施態様において、量は0.01mg/kg~0.1mg/kg、0.01mg/kg~0.1mg/kg、0.1mg/kg~1.0mg/kg、1.0mg/kg~2.5mg/kg、2.5mg/kg~5.0mg/kg、5.0mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~40mg/kgまたは40mg/kg~50mg/kgである。ある実施態様において、固定用量が投与される。ある実施態様において、用量は5mg~1.0g、例えば、5mg~10mg、10mg~20mg、20mg~40mg、40mg~80mg、80mg~160mg、160mg~320mg、320mg~640mg、640mg~1gである。ある実施態様において、用量は約1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mgまたは1000mgである。ある実施態様において、用量は1日用量である。ある実施態様において、用量を、少なくとも2日間、例えば、少なくとも7日間、例えば、約2週間、3週間、4週間、6週間または8週間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与する。例えば、ある実施態様において、INAAは、少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される。
【0567】
ある実施態様において、INAAは、皮下注射により投与する。ある実施態様において、INAAは、約5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、29分または30分またはそれより長い時間などの一定時間にわたる静脈内点滴により投与する。投与は、定期的、例えば、毎週、2週毎(すなわち、2週に1回)、4週毎、毎月、6週毎、2か月毎、3か月毎、6か月毎などで繰り返し得る。投与は、例えば、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、8か月、12か月、18か月、24か月またはそれより長く続け得る。ある実施態様において、最初の処置期間後、薬剤を、低頻度原則で投与し得る。例えば、ある実施態様において、3か月間毎週または2週毎の投与後、投与を、月1回、6か月間または1年またはそれより長く繰り返し得る。用量は、適切であるならば、時間とともに変え得る。
【0568】
ある実施態様において、C3を発現する細胞、例えば、肝細胞との接触後、INAAは、適当なアッセイでアッセイして、C3の発現を少なくとも約10%阻害する。適当なアッセイは、C3 RNA(例えば、C3 mRNA)レベルを、例えば、ノーザンブロット、PCR(例えば、定量的PCRとしても知られる、実時間逆転写PCRであり得る逆転写PCR)、分枝DNA(bDNA)ベースの方法またはRNA-Seqにより測定できまたはC3タンパク質を、例えば、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、蛍光標識抗体での染色後の蛍光検出(例えば、フローサイトメトリー、スペクトロスコピー、蛍光顕微鏡)、ELISAアッセイ、タンパク質マイクロアレイ分析、ビーズアレイアッセイ(例えばLuminex xMAPテクノロジーまたはBD BiosciencesのCytometric Bead Array(CBA)システム)またはC3に特異的に結合する非抗体リガンドを利用する類似の方法などを使用する、免疫学的方法により測定し得る。これとは別にまたはこれに加えて、INAAが発現を阻害する能力を、レポーターコード化配列が標的核酸配列に融合され、レポーターの発現が測定される、米国特許出願公開20050042641に記載のような、適当なレポーターアッセイを使用して,測定され得る。これの代わりにまたはこれに加えて、C3の生物学的活性を測定するアッセイを実施し得る。このようなアッセイは、例えば、溶血アッセイおよび終末補体複合体(TCC)形成のアッセイ(例えば、免疫アッセイ)を含む。TCCアッセイは、複合体を捕捉するための、TCCの第一要素(例えば、TCCのC9環)に対する第一抗体(例えば、モノクローナル抗体)を含む。捕捉TCCを、続いて第二抗体(例えば、モノクローナル抗体)で検出し、この抗体は検出可能ラベルを含んでよく、ここで、第二抗体は、SC5b9複合体の異なる抗原に結合する。ある実施態様において、INAAの投与は、例えば、対象の細胞(例えば、肝細胞)、組織、血液、尿または他の区画におけるC3レベルを、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも約99%またはそれ以上減少させる。ある実施態様において、INAAの投与は、例えば、対象の細胞(例えば、肝細胞)、組織、血液、尿または他の区画における、C3レベルを、10%~95%、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%~95%減少させる。ある実施態様において、INAAの投与は、例えば、対象の細胞(例えば、肝細胞)、組織、血液、尿または他の区画におけるC3レベルを、10%~95%、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%~95%減少させる。ある実施態様において、INAAの投与は、例えば、対象の細胞(例えば、肝細胞)、組織、血液、尿または他の区画におけるC3レベルを、10%~50減少させる。ある実施態様においてINAAの投与は、例えば、対象の細胞(例えば、肝細胞)、組織、血液、尿または他の区画におけるC3レベルを、50%~95%減少させる。ある実施態様において、減少は、一定期間、例えば、薬剤の連続的投与の間の期間の平均減少である。ある実施態様において、用量は、投与間の期間を通して、少なくとも所望のレベルの減少が達成されるように選択される。ある実施態様において、ヒト肝細胞癌細胞、例えば、Hep3B細胞(ATCC、Manassas, Va.)の培養物を使用して、薬剤、例えば、INAAにより寄与されるC3発現または阻害補体活性の阻害の量を評価し得る。ある実施態様において、INAAを、非ヒト動物に1回以上投与し得る。動物の肝臓におけるC3 mRNAの量および/または動物の血液におけるC3の量をその後測定し、所望により、阻害の程度を決定し得る。
【実施例0569】
実施例1:実質的な補体阻害活性を保持するペグ化コンプスタチン類似体の開発
配列番号28のコンプスタチン類似体のアミノ酸配列を有するが、後にNHSエステルにより活性化されたPEGをLys側鎖のアミノ基にコンジュゲートすることを目的に、配列番号28のThr残基のC末端側にAEEAc-Lys部分が組み込まれたコンプスタチン類似体を標準的な方法を用いて合成した。簡潔に述べれば、各アミノ酸のαアミノ基がFmocで保護されたFmoc保護アミノ酸としてアミノ酸(AEEAcを含む)を得た。側鎖官能基も種々の適当な保護基でブロックした。Merrifield(J. Amer. Chem. Soc. 85, 2149 (1963))により記載されている固相法に従って合成を行った。固相上で鎖の組立てを行い、その結果N末端がアセチル化された。次いで、ペプチドを固相から切断し、同時にTFAおよびアミド化を用いた酸加水分解により脱保護した。次いで、直鎖状のペプチドを酸化し精製した。得られたコンプスタチン類似体はAc-Ile-Cys*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys*-Thr-AEEAc-Lys-NH2(配列番号51)で表され、CA28-AEEAc-Lysと略記される。簡潔にするため、この略記ではN末端アセチル基とC末端アミノ基が省略されていることに留意されたい。NHSエステルにより活性化され、分子量が30kDおよび40kDの単官能性、直鎖状のPEG(NOF America Corp. White Plains, NY, Cat. No. SUNBRIGHT(登録商標)ME-300GSおよびCat. No. SUNBRIGHT(登録商標)ME-400GS)をそれぞれCA28-AEEAc-Lysのリジン側鎖に結合させ、CA28-AEEAc-Lys-(PEG30k)およびCA28-AEEAc-Lys-(PEG40k)で表される長時間作用型コンプスタチン類似体を得、これを精製した。“PEG”の語の後ろ、“k”の文字の前に書かれている数字はPEG部分のキロダルトンでの分子量を表し、“k”はkDの略記であることに留意されたい。CA28-AEEAc-Lys-(PEG30k)はCA28-1とも呼ばれる。CA28-AEEAc-Lys-(PEG40k)はCA28-2とも呼ばれる。
標準的な補体阻害アッセイを用いて、古典経路を介した補体活性化に対する合成された化合物の効果を測定することにより、化合物の阻害活性を評価した。このプロトコルは、ELISAフォーマットでC3b沈着を測定するものである。この方法を用いてモニターされるC3b沈着は、古典経路により活性化された補体から生じるものである。簡潔に述べれば、96ウェルプレートをBSAでコーティングする。ヒト血漿、ニワトリオボアルブミン(OVA)、ポリクローナル抗OVA抗体および被験化合物(“薬物”と呼ぶ)を加えてインキュベートした後、抗ヒトC3 HRPコンジュゲート抗体を加えた。さらにインキュベートした後、基質を加え、シグナルを検出した。プロトコルの詳細を下に示す。
【0570】
古典的補体阻害アッセイのプロトコル
材料:
・96ウェルプレート(ポリスチレンプレート、Thermo Scientific, 9205)
・ニワトリOVA(Sigma A5503-5G)
・ウサギ抗ニワトリOVA(Abcam ab1221)
・ブロッキング緩衝液(Startingblock緩衝液, Thermo Scientific 37538)
・ベロナール緩衝液(5倍濃度、Lonza 12-624)
・ヒト血漿(レピルジンを用いて最終濃度50μg/mlで採取)
・ヤギ抗ヒトC3 HRPコンジュゲートAb(MP Biomedicals, 55237)
・Tween-20洗浄緩衝液(0.05%Tween20-PBS緩衝液)
・TMB(ペルオキシダーゼ基質、BD 555214)-BD 51-2607KCと51-2606KC。
・1M H2SO4
【0571】
プロトコル:
1. 100μl/ウェルの1%ニワトリOVA(PBS中)添加
2. 4℃で一晩または室温で1~2時間、インキュベート
3. プレートの振盪および軽打により除去
4. ブロッキング緩衝液200μl添加により遮断
5. 室温で1時間インキュベート
6. プレートの振盪および軽打により除去
7. ポリクローナル抗ニワトリOVAをブロッキング緩衝液で1:1000に希釈した溶液100μl添加
8. 室温で1時間インキュベート
9. 洗浄緩衝液で2回洗浄
10. ウェル番号2~12にVB++50μl添加
11. ウェル1に薬物の開始希釈液(VB++で2倍希釈)100μl添加
12. 薬物をウェル1~10まで次のとおり連続希釈(1:2)する:
a. 50μlの溶液を元のウェルから採取
b. これを次ウェルに添加
c. 数回ピペッティングにより混合
d. ウェル番号10まで反復
注:ウェル番号10から50μlを採り、廃棄。
13. ウェル1~11に血漿の2倍希釈液(元の血漿の1:37. 5希釈)50μl添加
14. 1時間インキュベート
15. 洗浄緩衝液で洗浄
16. 抗C3-HRP Abをブロッキング緩衝液で1/1000に希釈した溶液100μl添加
17. 1時間インキュベート
18. 洗浄緩衝液で洗浄
19. 全ウェルにTMBを100μl添加
20. 暗所で5~10分間インキュベート
21. 1M H2SO4を50μl添加
22. 450nmでプレート読み取り
【0572】
【0573】
【0574】
作業緩衝液50mlの調製:
・NaClを210mg計量する
・5倍VBを10ml加える。
・CaCl2(500倍)を100μl加える。
・MgCl(200倍)を250μl加える。
・H2Oで体積を50mlに調整する。
・pHを7.4に調整する。
【0575】
GraphPad Prism5ソフトウェアを用いてデータを分析した。各実験から得られたデータセットを、化合物を加えなかったウェルに対応する100%活性化対照に対するパーセント活性化に正規化した。薬物濃度の値(Xの値)を対数に変換し、パーセント活性化(Pa)(Yの値)を式Pi=100-Pa(Yi=100-Ya)を用いてパーセント阻害(Pi)に変換した。パーセント阻害を薬物濃度に対してプロットし、得られたデータセットをシグモイド曲線の用量反応関数[Y=最低値+(最高値-最低値)/(1+10((LogEC-X)))]に適合させた。適合パラメータからIC
50値を求めた。
図1に結果を示し、表2(実施例2)にIC
50値を示す。図のとおり、CA28-1およびCA28-2はモルベースでCA28の約30%の活性を示した。
【0576】
実施例2:増加したモル活性を示す長時間作用型コンプスタチン類似体の開発
アームを8本有する分子量40kDのNHSエステル活性化PEG(NOF America Corp. White Plains, NY, Cat. No. SUNBRIGHT(登録商標) ME-300GSおよびCat. No. SUNBRIGHT(登録商標) ME-400GS;化学式:ヘキサグリセロールオクタ(スクシンイミジルオキシグルタリル)ポリオキシエチレン)をCA28-AEEAc-Lysのリジン側鎖に結合させて、(CA28-AEEAc)
8-PEG40kで表され、CA28-3とも呼ばれる長時間作用型コンプスタチン類似体を得た。
実施例1に記載のアッセイを用いて、CA28-3の補体阻害活性を試験した。
図1に結果をプロットし、表2にIC
50値を記載するが、ともにCA28濃度の関数として表したものである。CA28濃度は、283nmにおけるCA28の吸光係数(10208.14L・mol-1・cm-1)を用いて計算したものである。他の分析(UV吸収対物質の質量および元素CHN%分析)に基づき、1分子のCA28-3当たり7.5個のCA28部分が存在すると結論付けられた。したがって、モルベースでのCA28-3の活性は
図1および表2に示される活性の7.5倍になる。したがって、表2のIC
50値は、モルベースでのCA28-3の実際のIC
50の7.5倍になる。モルベースでのCA28-3のIC
50は約0.26と計算される(親化合物CA28より低い値である)。
図2は、CA28ならびに長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2およびCA28-3のパーセント補体活性化阻害活性をCA28-3濃度(μM)の関数として示したものである、すなわち、CA28-3の活性を補正して、この化合物が7.5個のCA28部分を含むことを説明したものである。モルベースでは、CA28-3の補体阻害活性はCA28を上回っている。
【表7】
各種緩衝物質および/または賦形剤を含む水またはこれを含まない水へのCA28-1、CD28-2およびCA28-3の溶解度が親化合物CA28を上回ることが観察された。
【0577】
実施例3:有意に延長した血漿半減期およびCmaxを示す長時間作用型コンプスタチン類似体
この実施例は、カニクイザルに投与したときの長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2およびCA28-3の薬物動態パラメータの測定について記載するものである。
【0578】
投与およびサンプル採取
0時の時点で、雌カニクイザル(1群当たり3匹、2~5歳、2.9~3.5kg)に静脈内注射によりCA28-2およびCA28-3を投与した。化合物を濃度25mg/mlの5%デキストロース水溶液として50mg/kgで投与した。投与前、投与の5分後、15分後、30分後、1時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、96時間(4日)後および192時間(8日)後の各時点で、大腿静脈から血液サンプル(それぞれ約1mL)を採取した。直接静脈穿刺によりサンプルを採取し、抗凝固剤を含まない赤い栓の血清チューブに入れて、室温で少なくとも30分間保管した。血液サンプルを温度4℃、3000×gで5分間、遠心分離した。処理中はサンプルを冷却状態で維持した。遠心分離後、血清サンプルを収集し、サンプルチューブに入れた。-60℃~-80℃を維持するよう設定された冷凍庫でサンプルを保管した。試験期間中、全個体とも正常な活動を示した。試験期間中、何れの個体にも化合物に関連する異常は認められなかった。
【0579】
サンプル分析
上記のとおり得られた血漿サンプルを、次のような方法に従ってLC/MS/MSにより分析し、化合物の濃度を決定した。サンプル50μLを社内の標準物質(CA28-AEEAc-Arg)と混合し、次いで、HOAcでpH3.5にした1M NH4OAcを100μL加えて混合した。次いで、アセトニトリル250μLを加えて混合した。サンプルを遠心分離し、上清を別のチューブに入れて乾燥させた。サンプルを再構成し、LC/MS/MSシステムに注入した。移動相Aは0.1%FAを含む5mM NH4OAc、移動相Bは0.1%FAを含む90:10(ACN:50mM NH4OAc)とした。LCカラムはIntrada WP-RP 2×150mm、3μであった。陽イオンモードで作動させたApplied Biosystems API-4000三連四重極質量分析計により定量を行った。質量分析計のイオン源でインソース衝突誘起解離(CID)を用いて化合物を断片化し、Q1でm/z144イオンを質量選択して断片化し、Q3でm/z77イオンを質量選択して検出した。Analyst1.4.2ソフトウェアを用いてデータを処理した。
【0580】
結果
各時点におけるCA28-2およびCA28-3の血清中濃度(μg/ml)を下の表3に示す。示される化合物を投与したサル3個体それぞれのデータが示されている。平均値および標準偏差は容易に計算される。個体間に際立った一致がみられた。CA28は、カニクイザルにCA28を静脈内投与した以前の試験で得られた過去のデータである。その試験では、HPLCを用いてサンプル中のCA28を検出した。
【表8】
各化合物の結果の平均値を求め、
図3にプロットした。CA28-2、CA28-3ともに、CA28に比べて半減期およびC
maxの著明な増加がみられた。CA28-2およびCA28-3の終末相半減期はともに4~4.5日前後であった。ここに挙げたデータを踏まえれば、ヒト対象では、約1~2週間の投与間隔で静脈内投与すれば化合物のレベルが維持され、補体活性化が効果的に阻害されることが予想されるが、これよりも短い、あるいは長い投与間隔を用いてもよい。
【0581】
実施例4:クリアランス低減部分としてHSAを含む長時間作用型コンプスタチン類似体
2-イミノチオランを用いてヒト血清アルブミン(HSA)の側鎖リジンをチオールに変換し、反応性官能基としてマレイミドを含むコンプスタチン類似体:Ac-Ile-Cys
*-Val-Trp(1-Me)-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys
*-Thr-AEEAc-Lys-(C(=O)-(CH
2)
5-Mal)-NH
2(配列番号68)と反応させた。得られた長時間作用型コンプスタチン類似体(CA28-4)について、補体阻害活性(
図4)を実施例1に記載されているとおりにインビトロで試験し、薬物動態特性を実施例3に記載されているとおりにインビボで試験した。カニクイザルに投与したときのCA28-4の薬物動態パラメータを、上の実施態様に記載されているとおりに測定した。結果を
図5に示す(CA28、CA28-1、CA28-2およびCA28-3の結果も一緒に示す)。CA28-4のPKデータを表4に示す。
【表9】
【0582】
実施例5:異なるNHS活性化PEGを使用する、PEGベースのコンプスタチン類似体の合成および活性
配列番号28のコンプスタチン類似体のアミノ酸配列を有するが、後にLys側鎖のアミノ基へのNHSエステル活性化PEGを結合させる目的で、配列番号28のThr残基に対してC末端に位置するAEEAc-Lys部分が取り込まれたコンプスタチン類似体を、実施例1に記載するとおり合成した。得られたコンプスタチン類似体は、次のAc-Ile-Cys
*-Val-(1Me)Trp-Gln-Asp-Trp-Gly-Ala-His-Arg-Cys
*-Thr-AEEAc-Lys-NH
2(配列番号51)のとおり表すことができ、CA28-AEEAc-Lysと略す。40kDの分子量を有し、NHSカルボキシレート結合化学(NOF America Corp. White Plains, NY, Cat. Nos. SUNBRIGHT(登録商標) ME-400CS, SUNBRIGHT(登録商標) ME-400GS, SUNBRIGHT(登録商標) ME-400HS, SUNBRIGHT(登録商標) ME-400TS)の点で異なる単官能性、直鎖状モノメトキシ-NHS活性化エステル/カーボネートPEGを、アミド結合を介してCA28-AEEAc-Lysのリシン側鎖に結合させた。(AEEAcリンカーがアミノ酸残基を含むため、Lys残基はLys15である。)全化合物を、N末端でアセチル化し、C末端でアミド化し、Cys2とCys12の間のジスルフィド結合で環化した。(アセチル化、アミド化および環化を、PEGへのカップリング前に実施した。)化合物をトリフルオロ酢酸塩として製造し、精製した。化合物は次の表に示すとおり表される(表5)。文字CS、GS、HSおよびTSは、表5にさらに詳細に示すとおり、PEG部分とNHS部分の間の異なるリンカー部分を表す。各化合物についての種々の名称および略語を、相互交換可能に使用し得る。注:CA28-2(実施例1参照)はCA28-2GSと同一である。
【表10】
*AEEAc=8=アミノ-3,6-ジオキサ-オクタノイル
†化合物をトリフルオロ酢酸塩として製造したが、他のカウンターイオンも使用できた
【0583】
化合物を逆相HPLCで分析した。
図6は、化合物の一つの代表的クロマトグラムを示す。VariTide RPCカラムを使用した。溶離剤Aは0.1%TFA水溶液であり;溶離剤Bは0.1%TFAの50%CAN/40%水溶液であった。流速は1.000ml/分であり、40分かけて0%B~100%Bの勾配であった。保持時間33.68分を有するピークがペグ化化合物を表し、相対面積96.50%を有した。
化合物の阻害活性を、実施例1に記載するとおり、標準補体阻害アッセイを使用する古典経路を介して、補体活性化に対する化合物の効果を測定することにより評価した。結果を
図7にプロットする。これらの結果は、2回の別々の実験の組み合わせを表す。化合物は、特に同等な補体阻害活性を示した。
【0584】
実施例6:二官能性PEGベースのコンプスタチン類似体の合成および活性
40kDの分子量を有し、NHSカルボキシレート結合化学の点で異なる二官能性、直鎖状モノメトキシ-NHS活性化エステル/カーボネートPEGをNOF America Corp. (White Plains, NY)から得た。活性化PEGを、CA28-AEEAc-Lys部分が各PEG鎖に結合するように、アミド結合を介してCA28-AEEAc-Lysのリシン側鎖に結合させた。全化合物を、CA28-AEEAc-Lys部分のN末端でアセチル化し、C末端でアミド化し、Cys2とCys12の間のジスルフィド結合で環化した。(アセチル化、アミド化および環化を、PEGへのカップリング前に実施した。)化合物を酢酸塩として製造し、精製した。化合物は次の表に示すとおり表される(表6)。
【表11】
*AEEAc=8=アミノ-3,6-ジオキサ-オクタノイル
†化合物を酢酸塩として製造したが、他のカウンターイオンも使用できた
【0585】
CA28-2GS-BFの阻害活性、実施例1に記載するとおり、標準補体阻害アッセイを使用する古典経路を介して、補体活性化に対する化合物の効果を測定することにより評価し、実施例1に従い分析した。結果を
図8にプロットする。上記のとおり、CA28-2GS-BFは分子あたり2個のコンプスタチン類似体部分を含む。CA28-2GS-BFのコンプスタチン類似体部分あたりの活性は個々のCA28分子の各々の活性より低いが、モルベースで2個の化合物の活性は、広い濃度範囲にわたり、事実上同じであった。
【0586】
実施例7:二官能性PEGベースのコンプスタチン類似体の皮下投与
本実施例は、カニクイザルへの単回静脈内(IV)注射または7日間反復(1日1回)皮下投与による投与後の長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2GS-BFの薬物動態パラメータの測定を述べる。
【0587】
投与およびサンプル採取
CA28-2GSを、0時の時点で、雄カニクイザルに静脈内注射または反復皮下注射(連日、7日間)により投与した。1~5歳、体重4.6~5.3kg範囲の6匹の非ナイーブ雄カニクイザルを本試験に使用した(群あたり3匹)。動物は、7日間試験の開始時は健康であった。試験は盲検式ではなかった。動物に試験の開始前、水は自由に、そして市販の餌を1日2回与えた。施設SODに従い、動物に餌を試験前に与えた。動物は絶食させなかった。動物に、適当な日の0時に静脈内および皮下投与を介して投与した。サイズ22ゲージ針を皮下投与に使用した。化合物を、5%デキストロース中50mg/kgで、水中25mg/mlの濃度で投与した。血液サンプル(各約1mL)を、次の時点で大腿静脈から採取した:1日目:投与前、5分、15分、30分、1時間、4時間、8時間。2~9日目:0分。16日目:1日目投与に基づく最終サンプル。各血液サンプル(約1.0mL)をサルの大腿または伏在静脈から、直接穿刺により採取し、抗凝固剤を含まないレッドトップ血清チューブに入れ、室温で少なくとも30分維持した。血液サンプルを、4℃の温度で、3000×gで5分遠心分離した。サンプルを処理の間中、冷やしたままにした。遠心分離後に血清サンプルを集め、サンプルチューブに入れた。サンプルを、-60℃~-80℃を維持するように設定した冷凍庫に保存した。血清サンプルおよび残りの投与溶液ドライアイス上で凍らせたまま分析用に出荷した。
各皮下投与部位は、注入量がどの程度速く吸収されるかを見るため、また製剤が塊で残るか完全に消えるかを見るために観察した。投与部位を各採取時点および2~7日目の午後に観察した。試験の時間中に全ての投与量が吸収された。この観察に基づき、投与量が投与後15分以内に吸収されると概算された。全ての動物は、試験の間中、正常な活動を示した。試験をとおして、動物に化合物に関係した異常は見られなかった。
【0588】
サンプル分析
上記のとおり得た血漿サンプルを、実施例3に記載した方法に類似する、CID(衝突誘発分解)活用LC/MS/MSにより分析した。
【0589】
結果
上記のとおり静脈内または皮下投与したときのCA28-2GS-BFの血清濃度対時間を
図9にプロットする。データは、検出された全ペグ化CA28化合物を示す。
図9に示すCA28データは、CA28がカニクイザルに静脈内投与された、先の試験で得た古いデータである。その研究において、CA28は、HPLCを使用してサンプルで検出された。
500μg/ml(11μM)のピーク血清濃度が、CA28-2GS-BFの皮下投与で達成された。CA28-2GS-BFの終末相半減期は、静脈内または皮下の何れかで投与したときおよそ5日間であった。結果を下の表に要約する。
【表12】
【0590】
【0591】
実施例8:PNHを有する患者からの補体介在赤血球溶解の阻害
修飾Ham試験を行い、インビトロでPNHを有する患者からの補体介在赤血球溶解を阻害するコンプスタチン類似体の能力を測定する。補体を、PNH赤血球を溶解させるためにマグネシウムを添加して血清を酸性化することにより活性化する。インキュベーションを90分行う。読み出し情報は、標準マーカーを使用するPNH赤血球のフローサイトメトリーである。熱不活性化血清を対照として使用する(溶血を生じない)。酸性化血清は、補体阻害剤を添加しないと、最大溶解を生ずる。実験を、コンプスタチン類似体CA28、CA28-2、CA28-2CS、CA28-2CS-BD、CA28-2GS、CA28-2GS-BF、CA28-2HS、CA28-2HS-BF、CA28-2TS、CA28-2GS-BFおよびCA28-3の連続2倍希釈を用いて行う。インビトロで溶血の阻止に必要な各化合物の濃度を測定する。赤血球をまた、化合物がPNH赤血球へのC3フラグメントの沈着を阻止する能力を測定するために、凝集に至る架橋を何ら含まない抗C3ポリクローナル抗体を用いてC3フラグメント沈着について染色した(例えば、両方とも市販のFITC結合AbcamであるAb4214またはAb14396、Cambridge, United Kingdom)。結果を、同じアッセイを使用してエクリズマブで得たものと比較する。
【0592】
実施例9:NH患者における長時間作用型コンプスタチン類似体
PNHと診断された対象のコホートを4グループに分ける。グループ1とグループ2の対象には用量5mg/kg~20mg/kg、時間間隔1~2週間で、それぞれCA28-2またはCA28-3の静脈内投与によって処置する。場合により、これより頻度が高くなる時間間隔で処置を開始したのち、維持療法で頻度を減らす。グループ3の対象には、推奨される投与レジメンに従ってエクリズマブによる処置を実施する。グループ4は対称として作用する(補体阻害剤治療なし)。血管内溶血(LDH測定および/またはRBCの(51)Cr標識に基づくもの)、網状赤血球増加症(貧血の指標)、ヘマトクリット値、血中ヘモグロビン濃度、赤血球のオプソニン化(フローサイトメトリーを用いて検出することができる、C3bなどのC3活性化産物の赤血球への沈着)、PNHの症状、輸血の必要性、血栓塞栓症、溶血関連一酸化窒素枯渇、肺高血圧の指標、クオリティ・オブ・ライフおよび生存期間を経時的にモニターする。得られた結果について、群間での比較およびエクリズマブの臨床試験で得られた対照PNH患者の過去のデータとの比較を実施する。グループ4の対象と比較してCA28-2(グループ1)またはCA28-3(グループ2)を投与した対象にみられる持続性貧血の改善(例えば、網状赤血球増加症の軽減、溶血の徴候の軽減、ヘマトクリット値の増加、ヘモグロビンの増加を根拠とする)、クオリティ・オブ・ライフの改善、PNH症状の軽減、輸血の必要性の減少、血栓塞栓症の軽減、溶血関連一酸化窒素枯渇減少、肺高血圧の指標減少、クオリティ・オブ・ライフの向上および/または生存期間の延長を有効性の指標とする。
【0593】
実施例10:PNH患者における長時間作用型コンプスタチン類似体
エクリズマブによる処置にもかかわらず輸血に頼るおよび/またはカットオフ値(9.0g/dLなど)より低いヘモグロビン値が継続する患者を対象に変更して実施例9を再び実施する。得られた結果を群間で比較する。
【0594】
実施例11:aHUS患者における長時間作用型コンプスタチン類似体
aHUSと診断された対象のコホートを4グループに分ける。グループ1とグループ2の対象には用量5mg/kg~20mg/kg、時間間隔1~2週間で、それぞれCA28-2またはCA28-3の静脈内投与により処置する。場合により、これより頻度が高くなる時間間隔で処置を開始したのち、維持療法で頻度を減らす。グループ3の対象には、推奨される投与レジメンに従ってエクリズマブにより処置する。血管内溶血(LDH測定に基づくもの)、赤血球のオプソニン化(C3bなどのC3活性化産物の赤血球への沈着)、aHUSの症状、腎機能、血漿交換または透析の必要性、生活の質および生存期間を経時的にモニターする。得られた結果について、群間での比較およびエクリズマブの臨床試験で得られた対照aHUS患者の過去のデータとの比較を実施する。グループ4の対象と比較してCA28-2またはCA28-3を投与した対象にみられる溶血の徴候の軽減、生活の質の改善、aHUS症状の軽減、血漿交換または透析の必要性の低下、生活の質の向上および/または生存期間の増大を有効性の指標とする。
【0595】
実施例12:実施例8~11を、CA28-2GS-BF、CA28-2HS、CA28-2HS-BF、CA28-2TSおよびCA28-2GS-TS-BFを使用して繰り返す。
【0596】
実施例13:実施例9~12を、皮下注射により連日投与するCA28-2GS-BF、CA28-2HS、CA28-2HS-BF、CA28-2TSおよびCA28-2GS-TS-BFを使用して繰り返す。
【0597】
実施例14:実施例8~11を、さらなる長時間作用型コンプスタチン類似体を使用して繰り返す。
【0598】
実施例15:実施例8~11を、細胞反応性コンプスタチン類似体を使用して繰り返す。
【0599】
実施例16:長時間作用型コンプスタチン類似体の補体活性化阻害活性
CA28およびCA28-AEEAc-Lysを上記のとおり合成した。CA28-2TS-BFを、リシン側鎖の第一級アミンを介してCA28-AEEAc-Lysの2分子に結合した、NHSカルボキシレート結合化学の観点で、TSタイプの反応性二官能性PEGを使用して合成した。CA28およびCA28-2TS-BFの補体活性化阻害活性を、標準補体阻害アッセイを使用する古典経路および代替経路を介する、補体活性化に対する化合物の効果の測定により評価した。古典経路活性化アッセイのプロトコルは実施例1に記載する。代替経路活性化のプロトコルも、ELISA形態でC3b沈着を測定し、下に記載する。この方法を使用してモニターされるC3b沈着は、リポ多糖(LPS)による代替経路による補体活性化を介して産生される。概説すれば、96ウェルプレートをLPSで被覆し、試験する化合物(“薬物”と呼ぶ)を添加し、補体源として血漿または血清を添加し、インキュベートする。その後、抗ヒトC3 HRP結合抗体を添加する。さらにインキュベーション後、基質を添加し、シグナルを検出する。プロトコルの詳細は次のとおりである。
【0600】
代替補体経路活性化のためのELISAベースのアッセイ
材料:
・96ウェルELISAプレート(Corning 3590)
・チフス菌由来LPS-Sigma L7136(PBS中40μg/ml)
・PBS中1%BSA-Calbiochem #126626 1/30希釈
・ベロナール緩衝液+10mM MgCl2+10mM EGTA (VB-Mg EGTA)
・ヒト血漿(5μg/ml最終濃度のレピルジンと共に採取)
・抗ヒトC3 HRP結合Ab(Poli to C3-HRP Ab, Cappel 55237)
・Tween-20洗浄緩衝液(0.05%のPBS溶液)
・TMB(ペルオキシダーゼ基質)-BD 51-2607KCおよび51-2606KCの1:1混合物。
・3M H2SO4
・マイクロプレートリーダー
【0601】
プロトコル:
1. 50μl/ウェルのLPSを40μg/ml(PBS溶液)で添加
2. 2時間、室温でインキュベート
3. プレートの振盪および軽打により除去
4. 200μlの1%BSA/PBS添加により遮断
5. 1時間、室温でインキュベート
6. プレートの振盪および軽打により除去
7. 50μl VB-Mg EGTAのウェル番号2~12への添加
8. 100μlの開始薬物希釈(VB-Mg EGTA中2×)のウェル1への添加。
9. ウェル1~10で薬物を次のとおり連続希釈(1:2)
a. 50μlの溶液を元のウェルから採取
b. これを次ウェルに添加
c. 数回ピペッティングにより混合
d. ウェル番号10まで反復
注:ウェル番号10から50μlを採り、廃棄。
10. 50μlの2×血漿希釈をウェル1~11に添加
11. 1時間インキュベート
12. 洗浄緩衝液で2回洗浄
13. 50μlのC3-HRP Abの1%BSA/PBS注1/1000希釈を添加
14. 1時間インキュベート
15. 100μlのTMBの全ウェルへの添加
16. 30分インキュベート
17. 50μl 3M H2SO4添加
18. 450nmでプレート読み取り
【0602】
【0603】
【0604】
作業緩衝液20mlの調製:
・NaClを84mg計量する
・5倍VBを4ml加える。
・EDTA(10倍)を2ml加える。
・MgCl(10倍)を2ml加える。
・H2Oで体積を20mlに調整する。
・pHを7.4に調整する。
【0605】
結果
図10(A)は、化合物のモル濃度の関数として、CA28およびCA28-2TS-BFによる古典的補体活性化阻害活性の阻害パーセントを示す。
図10(B)は、化合物のモル濃度の関数として、CA28およびCA28-2TS-BFによる代替補体活性化阻害活性の阻害パーセントを示す。生データを、下の表9に表す(各条件4反復)。図に示す阻害曲線および根拠のデータから、CA28-2TS-BFの補体阻害活性は、アッセイの実験誤差の範囲内で、モルベースで少なくともCA28と同程度大きい。これらの結果は、さらに、ここに記載する長時間作用型コンプスタチン類似体の、例えば、治療目的に対する適性を確認する。
【0606】
【0607】
実施例17:静脈内または皮下経路により投与した長時間作用型コンプスタチン類似体の薬物動態特性
この実施例は、カニクイザルへの単回静脈内(IV)注射、単回皮下投与または1日1回7日間皮下投与後の長時間作用型コンプスタチン類似体CA28-2TS-BFの薬物動態パラメータの測定を記載する。CA28-2TS-BFを、リシン側鎖の第一級アミンを介してCA28-AEEAc-Lysの2分子に結合した、NHSカルボキシレート結合化学の観点で、TSタイプの反応性二官能性PEGを使用して合成した。
【0608】
投与およびサンプル採取
CA28-2TS-BFを、0時の時点で、カニクイザルに、伏在静脈への静脈内注射または単回皮下注射または反復皮下注射(1日1回、7日間)により投与した。2~5歳、体重2.6~3.9kg範囲の6匹の非ナイーブ雌カニクイザルを本試験に使用した(群あたり3匹)。動物は、試験の開始時は健康であった。試験は盲検式ではなかった。動物に試験の開始前、水は自由に、そして市販の餌を1日2回与えた。施設SOPに従い試験前に、動物に餌を試験前に与えた。動物は絶食させなかった。動物に、7mg/kgを適当な日の0時に静脈内および皮下投与を介して投与した。投与溶液濃度は、静脈内投与に関して3.5mg/mLおよび皮下投与に関して25mg/mLであった。投与体積は静脈内投与に関して2mL/kgおよび皮下投与に関して0.28mL/kgであった。サイズ23G3/4ゲージ針を皮下投与に使用した。化合物を5%デキストロースの水溶液で投与した。
血液サンプル(約0.5~1mL)を、次の時点で大腿静脈から採取した:1日目:投与前、5分、15分、30分、1時間、4時間、8時間。2~9日目:0分。15日目:1日目投与に基づく最終サンプル。各血液サンプを、サルの大腿静脈から直接静脈穿刺により採り、抗凝固剤を含まないレッドトップ血清チューブに入れ、室温で少なくとも30分維持した。血液サンプルを、4℃の温度で、3000×gで5分遠心分離した。サンプルを処理の間中、冷やしたままにした。遠心分離後に血清サンプルを集め、サンプルチューブに入れた。サンプルを、-60℃~-80℃を維持するように設定した冷凍庫に保存した。血清サンプルおよび残りの投与溶液ドライアイス上で凍らせたまま分析用に送付した。
各皮下投与部位は、注入量がどの程度速く吸収されるかを見るため、また製剤が塊で残るか完全に消えるかを見るために観察した。皮下注射された動物の投与部位を、各投与日の夕方に観察した。投与部位で塊は明らかではなく、目視によりその時点で完全に吸収された。全動物を1日2回観察し、試験の間中、正常な活動を示した。試験をとおして、動物に化合物に関係した異常は見られなかった。
【0609】
サンプル分析
上記のとおり得た血漿サンプルを、実施例3に記載した方法に類似する、CID(衝突誘発分解)活用LC/MS/MSにより分析した。
【0610】
結果
上記のとおり静脈内または皮下投与したときのCA28-2TS-BFの血清濃度を
図11にプロットする。データは、検出された全ペグ化CA28化合物を示す。
図11に示すCA28データは、CA28がカニクイザルに静脈内投与された、先の試験で得た古いデータである。その研究において、CA28は、HPLC/MSを使用してサンプル中で測定した。
約500μL/mLのピーク血清濃度が、CA28-2TS-BFの7日間1日1回皮下投与により達成された。CA28-2TS-BFの終末相半減期は、静脈内または単回皮下注射の何れかで投与したとき、およそ8日間であった。生データを下の表10(A)(静脈内投与)および10(B)(皮下投与)に示す。(
図11および表10(A)および10(B)において、投与日を0日目と見なす)。
【0611】
【0612】
上記のとおり、CA28-2TS-BFを、TSタイプの反応性二官能性PEGを使用して合成して、リシンの第一級アミンとの反応後、カルバメートの形成をもたらした。CA28-2GS-BFを、NHSカルボキシレート結合化学の点で、GSタイプの反応性二官能性PEGを使用して、合成して、リシンの第一級アミンとの反応後、アミドの形成をもたらした。本化合物はまた、CA28-2TS-BFでは存在しないエステル結合も含んだ。本試験でCA28-2TS-BFで達成された約8日間の終末相半減期は、同等の実験で約5日間であることが判明したCA28-2GS-BF(実施例8参照)よりはるかに長いことが顕著であった。
【0613】
実施例18:コンプスタチン類似体はPNH患者の赤血球へのC3沈着を阻害し、補体介在溶解に対して保護する
修飾Ham試験を行い、補体介在溶解からPNH RBCを保護するコンプスタチン類似体の能力を評価した。PNHを有する患者からのRBCを、補体阻害剤非存在下または種々の量のコンプスタチン類似体CA28またはCA28-2GS-BFの存在下に、酸化ヒト血清(補体成分源として)およびマグネシウム(Mg2+、代替経路活性化に必要)に曝した。熱不活性化ヒト血清への暴露を、補体が熱により不活性化されているため、顕著な補体介在溶解がないことを表す対照として使用した。補体阻害剤非存在下の、酸化ヒト血清およびマグネシウム(Mg2+)への暴露(ペインラベルしたMg2+)を最大溶解を表す対照として使用した。
インキュベーション後、細胞を、CD59およびC3dに対する抗体で染色した。CD59レベルは、PNH RBCのI型、II型またはIII型としての分類を可能にする。C3活性化および開裂産物であるC3dに対する染色は、C3およびC3活性化産物沈着のマーカー(負荷)として使用した。フローサイトメトリー分析を行い、RBC表面上のCD59およびC3dを評価し、種々のサンプルに存在するI型、II型およびIII型細胞のパーセンテージを定量した。
【0614】
種々の濃度のCA28のC3沈着および細胞パーセンテージに対する効果を示す希釈実験結果は、
図12(A)に示す。CA28-2GS-BFのC3沈着および細胞パーセンテージに対する効果を示す希釈実験結果は、
図12(B)に示す。結果を、下の表11に定量的に示す。I型細胞(
図12において橙色で示す)は、正常レベルのCD59を有する。III型細胞(
図12において青色で示す)は、本質的に検出可能なCD59を有しない。これらの細胞は、補体介在溶解に極めて感受性である。II型細胞(
図12において紫色で示す)は、正常またはI型細胞と比較して低いCD59レベルを有し、補体介在溶解に対して中程度の感受性である。補体活性化の存在下、III型細胞は急速に溶解する。溶解の減少または不存在は、
図12(A)および12(B)の何れにおいても、Mg
2+存在下(最大溶解)のパネルと比較して、溶解がないパネルにおけるIII型細胞のパーセンテージが高いことが明らかであることから、III型細胞の増加により証明され得る。換言すると、陰性対照よりも陽性対照でIII型細胞が相対的に少ない。II型細胞は、活性化補体の存在下で最終的には溶解し得るが、その前にC3dのようなC3活性化産物の相当量が蓄積し得る。溶解の減少または不存在は、
図12(A)および12(B)の何れにおいても、最大溶解パネルにおけるII型細胞上のC3dのレベルの比較により明らかなとおり、II型細胞上のC3またはC3活性化産物のレベル上昇により証明され得る。換言すると、溶解がないパネルよりも、最大溶解パネルにおいて細胞上に存在するC3dが多い。I型細胞は機能的CD59を有し、それゆえに、コンバターゼを不活化し、II型細胞ほど多くのC3dを蓄積しない。しかしながら、蓄積するC3dの量を、より脆弱性細胞(II型およびIII型)の溶解量の代用指標として使用できる。それゆえに、I型細胞上のC3d減少は、溶解に対する保護の指標である。I型、II型およびIII型細胞の相対的パーセンテージの、最大溶解対照パネル(Mg
2+)に存在するパーセンテージから、溶解がない対照パネル(熱不活性化血清)に存在するパーセンテージへのシフトは、補体介在溶解に対する保護の指標である。これらのパーセンテージを下の表に示す。表11における%C’3なるタイトルのカラムは、C3およびC3活性化産物の存在について“陽性”と見なされる(“C3負荷”)細胞のパーセンテージである。
図12(A)および(B)および表11に見られるとおり、CA28およびCA28-2GS-BFは、試験した濃度にわたりPNH赤血球溶解の同等な保護を示し、100μL/ml以上の化合物濃度でPNH赤血球に事実上C3負荷はない。100μg/ml以上のコンプスタチン類似体存在下でのIII型、II型およびI型細胞のパーセンテージは、溶解がない対照と本質的に同じであり、本アッセイにより証明されるとおり、補体介在溶解からの完全な保護を示すことは注目すべきである。100μg/ml未満、60μg/ml以上、例えば、少なくとも70μg/ml、少なくとも80mg/mlまたは少なくとも90μg/mlであるが、100μg/ml未満の濃度はこの実験では試験しなかったが、また顕著な保護を提供し得る。100μL/ml CA28-2GS-BFは、ここに記載するとおりインビボで容易に達成可能な約2.5μMの濃度を表す。
【0615】
【0616】
実施例19:PNH患者からの赤血球上のC3沈着に対するコンプスタチン類似体およびSolirisの効果
実施例18に記載したものに類する実験を行い、さらにコンプスタチン類似体CA28-2GS-BFの保護的効果を示し、抗C5抗体Solirisと比較した。実施例18におけるとおりの修飾Hamアッセイを、補体阻害剤非存在下(左パネル)またはSoliris存在下(中央パネル)またはCA28-2GS-BF存在下(50μg/ml)(右パネル)の何れかで、活性化補体の存在下でインキュベートしたPNH RBCを使用して行った。CD59およびC3dに対する抗体を使用して、抗体染色後、フローサイトメトリーを行った。結果を
図13に示す。この図において、四分円1(Q1)および四分円3(Q3)がIII型細胞を表す。四分円2(Q2)および四分円4(Q4)がI型およびII細胞を表す。Q1およびQ2は、顕著で、異常に高量のC3活性化産物(例えば、C3d)沈着がある細胞を示す。Q3およびQ4は、顕著なC3d沈着がないかまたは幾分高いレベルであるが、(Q4の右部分)より低い細胞を示す。異なる四分円における細胞のパーセンテージを、
図13の各パネルの下および次の表12に示す。
【表22】
【0617】
見られるとおり、阻害剤非存在下で、細胞の大多数はQ4(C3活性化産物沈着が低レベルのI型またはII型)に属する。III型細胞は主に溶解されており、したがってそのパーセンテージ(Q1およびQ3)は低い。C3沈着産物を蓄積するQ2細胞は最終的に溶解し、それゆえに、数値は低いままである。エクリズマブ存在下で、III型細胞は少なくとも最初は溶解から保護されるが、阻害剤がないパネルと比較して、Q1細胞が高いパーセンテージであることにより示されるとおり、C3活性化産物(例えば、C3d)を蓄積する(36.79%対0.09%)。Q2+Q4細胞(I型およびII型)の相対的比率は、III型細胞の生存増加の結果、下がる。しかしながら、C3活性化産物(例えば、C3d)の顕著な沈着がIII型細胞で起こり、これは、最終的に溶解またはクリアランス(インビボ)に至ることは明らかである。CA28-2GS-BFで処理したPNH RBC(右パネル)は、エクリズマブでの結果と対照的に、I型、II型またはIII型の何れであるかに関係なく、C3dが本質的に沈着しない。Q1およびQ2における細胞のパーセンテージは無視できる。阻害剤がないまたはエクリズマブでの結果と比較して、III型細胞(61.55%)のパーセンテージが劇的に増加し、(C3d沈着が無いことと共に)CA28-2GS-BFによる溶解からの保護の増強が示される。
【0618】
実施例20:健常対象における長時間作用型コンプスタチン類似体のフェーズ1臨床試験
40kD直鎖状PEGおよび、各々C末端がPEG部分への結合のためにAEEAc-Lysを含む部分により伸張された配列番号28のアミノ酸配列を有するペプチドを含む2個のスタチン類似体部分(一方は直鎖状PEGの各末端に結合)を含む長時間作用型コンプスタチン類似体の2個のフェーズ1、無作為化、二重盲検式、プラセボ対照臨床試験を、安全性、耐容性、薬物動態学および薬力学を評価するために開始した。単一用量漸増(SAD)治験および複数用量漸増(MAD)治験。この化合物は、実施例20~26において便宜上LACA-40と称する。単一用量漸増において、健常対象を、5%デキストロース中45mg~1440mg(45mg、90mg、180mg、360mg、720mgまたは1440mg)の用量範囲の6コホートの一つに無作為化する。LACA-40を、治験1日目、続いて投与レベルによりモニタリング29日または43日に皮下注射により投与する。各コホートは、薬物を受ける4対象およびプラセボを受ける1または2対象を含む。複数用量漸増において、LACA-40を、健常対象に連続28日間連日、続いて最後の投与後モニタリングの56日に皮下注射により投与する。対象は、30mg~270mg/日(30mg/日、90mg/日、180mg/日または270mg/日)の用量範囲の4コホートの一つに参加する。各コホートは、薬物を受ける4対象およびプラセボを受ける1対象を含む。安全性を集中的な臨床モニタリングにより評価する。連続血液サンプリングを、血清中のLACA-40濃度の決定のために実施する。血液サンプルを、補体活性の関連するマーカー(C3、CH50およびAP50)を決定するためにも得る。さらなる関連するPDマーカー(インタクトC3、iC3b、C3a、C4aおよびC5a)を、後半のコホートにおいて測定する。複数投与前、対象はナイセリア・メニンギティディス、ストレプトコッカス・ニューモニエおよびB型ヘモフィルス・インフルエンザエ(Hib)ワクチン接種を受ける。
【0619】
結果
フェーズ1単一用量漸増治験において、計24健常対象が、1440mgまでの用量の単一用量のLACA-40を受け、複数用量漸増において、計16健常対象が、270mg/日までの用量で連続28日LACA-40の複数用量を受け、治験において、11健常対象が、プラセボの単一または複数投与を受け、分析により、LACA-40が治験薬中断に至る重篤な有害事象または治療下で発現した有害事象または報告された重篤な有害事象なく、両治験で十分に耐容性であることが確認された。加えて、臨床的に関連する安全性シグナルは、何れかの治験からの検査値、バイタルサイン、身体診察または心電図結果の審査により観察されなかった。
LACA-40の薬物動態学は全臨床データから導かれた予測と一致し、わずかに対象間可変性があった。
複数用量漸増において、LACA-40の血漿濃度は投与量により直線的に増加し、14~28日に最大濃度に到達することが観察された。血清濃度は、28日の連日投与後の定常状態と近かった。
両方の治験において、C3へのLACA-40結合の指標であるC3の用量依存的増加が観察された。
単一用量漸増治験において、代替経路介在溶血活性(AP50)の減少が、1440mg LACA-40の1回投与後に観察された。
【0620】
LACA-40の複数用量漸増治験の第三コホートにおいて、180mg/日の用量レベルで、エクスビボ血清誘発溶血の減少が、処置開始後7日で早くも観察され、処置期間中継続し、4対象中2対象で80%を超える、残りの2対象で60%を超える最大に達した(
図14)。LACA-40の複数用量漸増治験の第四コホートにおいて、270mg/日の用量レベルで、エクスビボ血清誘発溶血の減少が、処置開始後7日で早くも観察され、処置期間中継続し、4対象中3対象で80%を超える最大に達した。四番目の対象は異常値であり、ベースラインに対して約40%の減少を示した。
エクスビボ血清誘発溶血の阻害パーセントを、補体を代替経路(AP)により活性化したとき、ウサギ赤血球の溶血についての標準アッセイに基づき決定した。ウサギ赤血球は、ヒトAPの自発性アクティベーターである。アッセイは、Ca
2+とキレート化するために(古典的経路およびレクチン経路による補体活性化を阻害するため)EGTAを添加した血清中でウサギ赤血球をインキュベートしたとき、APコンバターゼが形成され、C3の活性化および続く赤血球の溶解がもたらされ、これが分光光度法による遊離ヘモグロビンの検出により検出できるとの事実を利用できる。このアッセイは、実際の溶血阻害パーセントを、陰性対照サンプルが血清を欠くのに対し、血清が対象からのサンプルに存在し、これらのサンプルにおけるベースライン吸光度に寄与するため、過小評価する可能性があることは注意すべきである。
注意すべき点は、PNH患者における、C5に結合する補体阻害剤であるエクリズマブの臨床試験において、エクスビボ血清誘発溶血(PNH患者からの血清を使用)の80%阻害が、PNH処置にかなり有効であると示されたことである(Hillmen, P., et al., N Engl J Med 2004; 350:552-9)。本実施例は、それ故に、薬理学的に関連するレベルの補体阻害が、少なくとも180mg/日用量のLACA-40で達成されたことを確認する。本実施例は、さらに、薬理学的用量のLACA-40が安全で、十分に耐容され、LACA-40の薬物動態/薬力学(PK/PD)プロファイルは、連日SC投与を支持し、180mgおよび270mgの連日LACA-40用量は、投与開始7日後早くも溶血活性を優に減少させ、この阻害が投与期間をとおして維持されたことを確認する。
ある態様において、これらの治験からのPKデータを使用して、LACA-40が投与されるPNH患者または他の患者における用量選択の助けとして使用し得るPK/PDモデルが開発されている。
【0621】
本発明は、低用量のLACA-40もまたPNHに有効であり得ることを企図する。例えば、エクスビボ血清誘発溶血アッセイは、血管内溶血を反映する、MACによる溶血しか測定しない。LACA-40(およびここに記載するある他の化合物)は、細胞をMACから保護し、またエクリズマブにより改善されない血管外溶血および潜在的機能不全の原因である、C3フラグメント、例えば、C3bによるオプソニン化からも保護する。それ故に、何らかの特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明は、PNHの処置における有効性が、ある実施態様において、少なくとも一部血管外溶血阻害のため、エクスビボ血清誘発溶血の80%を阻害するのに必要であるより低い用量でも達成され得ることを教示する。
それ故に、数ある中で、本実施例は、有効な効果が、40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体の皮下投与(例えば、適切な期間、例えば少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間またはそれ以上の連日皮下投与)で達成できることを示す。本実施例は、特に、有効な効果が、180mg/日の連日投与で達成されることを示し、特に、高用量および低用量の両方が、適当な状況において十分に望ましいかもしれないことを企図する。本実施例はまた、特に270mg/日の連日投与で達成された有効な効果を示し、特に高用量および低用量の両方が、適当な状況において十分に望ましいかもしれないことを企図する。
さらに、提供されたLACA-40の投与レジメンで達成された効果的な結果の具体的証明に鑑み、本実施例は、このようなレジメンにおける、長時間作用型コンプスタチン類似体および特に少なくとも2個のスタチン類似体部分を含む類似体および/または約40kDの分子量(例えば、特に約20kD、30kD、40kDなどの分子量を含む、約10kD~約50kDの範囲内)のPEG部分を含む類似体の特定の有用性を確認する。
【0622】
これに代えてまたはこれに加えて、本実施例は、ここに記載する投与レジメン(上記参照)での約50kDを超えない総分子量を有する長時間作用型コンプスタチン類似体の特定の有用性を示す。
【0623】
実施例21:PNHを有する対象におけるLACA-40のフェーズIb臨床試験
LACA-40のフェーズIb単一および複数用量漸増臨床試験を、PNHを有する成人患者においてエクリズマブ(Soliris)と関連してLACA-40の安全性、耐容性、PKおよびPDを評価するために使用した。この臨床試験において、5%デキストロース中のLACA-40の皮下用量を、PNHを有する患者に投与し、全て同時のエクリズマブ治療がある。治験に参加するために、患者は、少なくとも18歳であり、体重55kgを超え、少なくとも3ヶ月エクリズマブで処置されており、スクリーニング時ヘモグロビン<10g/dLを有するかまたはスクリーニングの前12ヶ月以内に少なくとも1回輸血されており、>30,000/mm3の血小板数および好中球絶対数>500細胞/μLを有しなければならない。投与に先立ち、全対象は、ナイセリア・メニンギティディスに対する予防的経口抗生物質を開始し、ワクチン接種を受ける。コホート3および4における対象は、ストレプトコッカス・ニューモニエおよびB型ヘモフィルス・インフルエンザエ(Hib)に対するワクチン接種も受ける。
【0624】
最初の2コホートの各々は、単一用量のLACA-40を受け、続いて少なくとも28日モニタリングされる、2患者からなる。このモニタリング期の後に単一用量が十分耐容性であると結論付けられたならば、次いで、患者は、さらに連続28日LACA-40連日皮下投与のレジメンを受ける。第三および第四コホートは、それぞれ2患者および6患者からなり、連続28日間LACA-40の連日皮下を受ける。用量試験は次のとおりである。
【表23】
【0625】
安全性を臨床モニタリングにより評価し、全薬物は、対象の自宅または診療所で有資格看護師により投与された。連続血清血液サンプルを、LACA-40濃度の決定のために採取した。乳酸脱水素酵素(LDH)、ヘモグロビンレベル、RBC PNHクローン分布、輸血の必要性、補体レベル、RBCへのC3フラグメント沈着および網状赤血球を含む、薬力学(PD)活性および有効性のシグナルを評価した。
【0626】
結果
最初の3コホートが投与を完了したとき、分は、LACA-40は、LACA-40の投与と無関係であると考えられた報告された一つの重篤な有害事象があり、十分に耐容性であった。
2対象が、薬理学的活性用量の180mgの投与を完了したとき、両者は臨床的改善および関連する血液バイオマーカーの変化を示していた。ヘモグロビンレベルは、両対象で処置の最初の2週間に上昇し、28日間の処置の最後まで安定なままであった。LDHは一対象で約1.5x ULNで安定であり、他方の対象で1.5x ULNから正常範囲内まで減少した。PNH III型(CD59陰性)RBCの比率は、両対象でほぼ倍増し、それぞれ1日目から29日目まで22.3%から52%および32.5%から62.5%に増加した。RBC輸血の必要性も、最近の病歴データと比較して、投与期間の間減少した。処置関連の重篤な有害事象は報告されておらず、中断に至る処置関連有害事象もない。投与はコホート4に進んだ(連日270mg)。
3対象がSC LACA-40 270mg/日での28日投与を完了したとき、全3対象は、関連する血液バイオマーカーの変化と共に類似の臨床的改善を示した。Hbレベルは増加し、LDHレベルは減少し、網状赤血球は減少しおよびPNH III型 RBCのパーセンテージは増加した。リスク/ベネフィットプロファイルの評価に基づき、進行中のエクリズマブ治療に加えて、270mg/日コホートにおいて、さらに56日の計84日処置の不断の連続的投与を可能とするプロトコル補正が承認された。3対象全て、LACA-40での処置開始以降、RBC輸血を必要としなかった。
【0627】
これらのデータは、薬理学的用量のLACA-40は、PNHを有する対象に安全かつ十分耐容され、LACA-40の連日SC投与は、PNH患者における溶血活性の持続性阻害を提供することを確認する。これらのデータは、さらに、C3の阻害が、抗C5処置(例えば、エクリズマブ処置)に最適以下の応答であるPNHを有する対象に臨床的有用性を提供することを確認する。
本発明は、それ故に、単独処置としてであれ、他の治療(例えば、エクリズマブ治療)との組み合わせであれ、40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体の皮下投与(例えば、適切な期間、例えば少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間以上、連日皮下投与、例えば、数ヶ月または数年継続)を企図する。
【0628】
実施例22:PNH患者におけるLACA-40のフェーズ1b臨床試験
未処置のPNHを有する患者におけるLACA-40のフェーズ1bオープンラベル臨床試験を、LACA-40の反復投与の安全性、PK、PDおよび予備的有効性を評価するために実施した。溶血性PNHと診断された男性および女性患者は適格である。対象は、前の12ヶ月に輸血を必要としており、正常上限(ULN)の>2倍の乳酸脱水素酵素(LDH)レベルが必要である。投与に先立ち、対象は、ナイセリア・メニンギティディス、ストレプトコッカス・ニューモニエおよびB型ヘモフィルス・インフルエンザエ(Hib)に対するワクチン接種され、予防的経口抗生物質を開始する。5%デキストロース中のLACA-40の用量が少なくとも28日間および最大連続84日間、皮下注射により投与される。(この状況での未処置は、補体阻害剤で先に処置されていない患者を意味する。)各3患者の2コホートが登録される。第一コホートの180mg/日および第二コホートの270mg/日の用量が試験される。これら用量を、1.8ml体積で、1日1回注射はまたは0.9mlの1日2回注射として、投与する。治験の一次有効性エンドポイントは、血管内溶血の指標としてのLDHレベルの測定である。測定した有効性の他の関連するマーカーは、ヘモグロビン、RBC PNHクローン分布、総溶血性補体活性(CH50)、代替経路介在溶血活性(AP50)、輸血の必要性、網状赤血球数および血液細胞へのC3フラグメント沈着(血管外溶血の可能性の指標として)を含む。C3フラグメント沈着測定を、例えば、上記のとおり、フローサイトメトリーにより行う。C3b、C3cおよびC3dと交差反応する抗体を使用する。
【0629】
結果
コホート1
コホート1の完了後、2対象は、180mgのLACA-40の投与を28日間受けており、1対象は、最初の投与後の反応により同意を撤回した。1日目から29日目で、LDHレベルのそれぞれ2078U/Lから1082U/Lおよび1325U/Lから709U/L(正常100~250U/L)の顕著な減少が、28日間の処置を受けた両対象で観察された。パート2への継続の基準を達成した対象はいなかった。
スクリーニングヘモグロビン(Hb)レベルは80g/L未満であり、両対象は、LACA-40投与前3週間で輸血を受けた。Hbレベルは両対象で80g/L以上が維持され、投与期間中何れも輸血は必要なかった。両対象は、LACA-40での処置停止約4週間以内に輸血を受けた。
PNH III型(CD59陰性)RBCの画分は両対象でほぼ3倍となり、それぞれ、1日目の5.1%および13.4%から29日目の17.4%および37.6%に増加した。
28日の投与を完了した両対象において、LACA-40は安全かつ十分耐容されると考えられた。第三の対象はLACA-40の最初の投与を受けた5~6時間後悪心、嘔吐および発疹を発症した。この事象は、LACA-40と関係する可能性がある重篤な有害事象として報告された。治験の継続を支持するために、この反応をさらにLACA-40およびPEG 40kDを用いるインビトロ細胞反応性試験および皮膚プリックテストで試験した。試験は、T細胞活性化の証拠がないと結論付けられ、皮膚試験は陰性であった。それ故に、該対象が治験に再び入るのは医学的に安全であると考えられた。該対象は、しかしながら、個人的理由で同意を撤回した。
【0630】
コホート2
SC注射により投与される270mg/日LACA-40で処置された2対象が28日処置期間完了後、両対象は、正常上限の2x内までのLDHレベルの顕著な減少およびPNH III型RBCの増加を示した。このコホートにおける対象は、全データの審査後、臨床的有用性が観察され、治験医により依頼されたならば、連日LACA-40を継続して受けることが適格であった。処置した両対象は、84日までの継続投与の予定した基準を満たした。1対象は個人的理由から治験を離れた。他方の対象は投与を続け、57日目に試験したとき、LDHの減少持続を示し続けた。コホート2における次の対象への投与は未決定である。
要約すると、連日投与されたLACA-40は、安全かつ十分耐容され、エクリズマブを受けていなかったPNHを有する患者における溶血を持続的に抑制した。
さらに、本発明は、特にここに記載するあるLACA-40組成物(上記参照)を含む、あるLACA組成物の送達に特に有用な、デバイス(例えば、針ゲージ、針口径および/または壁厚など)のある望ましい特徴に特に関連する、ある洞察を特に提供する。
【0631】
実施例23:硝子体内LACA-40の前臨床試験
サルにおける前臨床試験を、硝子体内注射したときのLACA-40の安全性および薬理学を評価するために実施した。カニクイザルに硝子体内投与したLACA-40は血流に分配され、さらに体に分配されるおよび/またはゆっくり排泄される。50μL/目または100μL/目体積での5%デキストロース中、24.8mg/目までの用量での9ヶ月にわたる反復硝子体内注射後のLACA-40の硝子体および血清濃度の毒物動態学分析の結果は、複数注射にわたり薬物の眼内または血清蓄積はほとんどなかったことを示した。加えて、各サルからの両眼および約50のさらなる組織の完全毒性学的審査、間接および細隙灯、スペクトラルドメイン光コヒーレンストモグラフィ、網膜電図検査および眼圧測定による眼科学的評価および病理組織学的試験は、試験した何れの用量でもLACA-40介在変化がないことを確認する。
サルにおけるLACA-40の単一硝子体内投与(両眼に10mg/目)の薬物動態プロファイルの評価は、約3.2日間の硝子体半減期を確認した。硝子体内注射後、LACA-40の血清濃度は、投与7日後まで増加し、次いで減少し始めて、10.4日間の見かけの半減期であった。
数ある中で、本発明は、個々の投与のタイミングが、特にここに記載するLACA-40の半減期に鑑みて、所望のPKパターンを確実にするために選択される、40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体のための投与レジメンを企図する。
【0632】
実施例24:AMDを有する対象におけるLACA-40のフェーズ1b単一用量漸増臨床試験
滲出型AMDであり、抗VEGF治療(特に、Lucentis(登録商標)、Eylea(登録商標)またはAvastin(登録商標))を受けている患者におけるLACA-40のフェーズ1オープンラベル、単一用量漸増臨床試験を、LACA-40の安全性、耐容性およびPKを評価するために開始した。この治験において、患者は、硝子体内注射により単一用量のLACA-40を受け、続いて113日間のモニタリングがある。元々、治験に、各3患者で、100マイクロリットル体積で5%デキストロース中5mg、10mgおよび20mgのLACA-40の3コホートの9患者を登録することが計画された。全3コホートの登録が完了した後、第三コホートを3患者から計12患者に拡張した。LACA-40は最初の9患者で十分耐容性であり、重篤な有害事象は報告されなかった。
本発明は、40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体が硝子体内注射により投与される、投与レジメンを提供する。ある実施態様において、40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体は唯一の治療として投与され、ある実施態様において、他の治療(例えば、抗VEGF治療)と、患者が両方に同時に曝されるように、組み合わせて投与される。
【0633】
本実施例は、特に40kD直鎖状PEGおよび2個のスタチン類似体部分を含む長時間作用型コンプスタチン類似体が、VEGF治療を受けている対象に硝子体内注射により投与される、投与レジメンを記載し、支持する。ある実施態様において、抗VEGF治療およびLACA-40での治療の両方で処置される対象は、抗VEGF剤の投与を、LACA-40での治療を受けていない以外、同等な対象で利用するより長い間隔で投与された。多様な抗VEGF剤が開発されている(例えば、Lanzetta Br J Opthamol 97:1497, 2013にレビュー)。例えば、ある抗VEGF剤について報告される投与レジメンは、4週間(q4)またはPRN毎に投与されるラニビズマブ0.5mgまたはベバシズマブ1.25mgの硝子体内注射を含み、ある実施態様において、このようなレジメンは、ここに記載する抗VEGF組み合わせ治療レジメンを評価する適当な参照レジメンとして働く。
本実施例を含むここに提供する開示に鑑みて、当業者は、提供されるのは、例えば、LACA-40および抗VEGF剤の各々が硝子体内に投与される、ある組み合わせ治療レジメンであり、ある実施態様において、LACA-40および抗VEGFを、ある(全てで必要ではないが)用量で単一注射において一緒に投与し得る。ある実施態様において、LACA-40の投与がないときより、抗VEGFの少ない投与が、選択した期間、投与される。
【0634】
実施例25:地図状萎縮を有する対象におけるLACA-40のフェーズ2単一用量漸増臨床試験
GAを有する患者におけるLACA-40の無作為化、単盲検、シャム対照臨床試験を実施する。約240患者が治験に登録される。治験における患者は、加齢黄斑変性に二次的な網膜黄斑のGAと診断されており、眼底自発蛍光像ならびに次のFAFのスクリーニング像により確認して総GA面積は≧2.5mm2および≦17.5mm2(それぞれ1および7円板面積[DA])である基準を使用する中央読影センターで無作為化前14日以内に確認されている。
患者を、2:2:1:1方法で、毎月LACA-40、隔月LACA-40、毎月偽注射または隔月偽注射を受けるように無作為化する。LACA-40アームの患者は、12ヶ月間、毎月または隔月で、0.1cc体積で15mgのLACA-40の投与を硝子体液への注射により受け、続いて処置終了後6ヶ月のモニタリングがある。偽注射コホートにおいて、患者は模擬注射を受ける。GAを有する患者の少なくとも単目におけるLACA-40の複数硝子体内注射の安全性、耐容性、PKおよび活性の証拠を評価する。一次有効性エンドポイントは、ベースラインから12ヶ月目のGA病変サイズの変化である。治験は、ベースラインから12ヶ月目でLACA-40アームとシャム対照アームの間の病変サイズ増殖の少なくとも30%の減少が検出されるように設計する。一次安全性エンドポイントは、局所および全身治療下で発現した有害事象の数および重症度である。
【0635】
実施例26:中間型AMDを有する対象におけるLACA-40のフェーズ2単一用量漸増臨床試験
中間型AMDを有する患者におけるLACA-40の無作為化、単盲検、シャム対照臨床試験を実施する。治験における患者は、中間型加齢黄斑変性と診断されている。治験の目的は、LACA-40が中間型AMDからGAまたは滲出型AMDへの進行を防ぐことができるか否かである。
患者を、2:2:1:1方法で、毎月LACA-40、隔月LACA-40、毎月偽注射または隔月偽注射を受けるように無作為化する。LACA-40アームの患者は、少なくとも12ヶ月間、毎月または隔月で、0.1cc体積で15mgのLACA-40の投与を硝子体液への注射により受け、続いて処置終了後6ヶ月のモニタリングがある。偽注射コホートにおいて、患者は模擬注射を受ける。中間型AMDを有する患者における少なくとも単目のLACA-40の複数硝子体内注射の安全性、耐容性および活性の証拠を評価する。有効性エンドポイントは、偽注射を受けた患者に比して、LACA-40処置患者における発生の減少は、有効性の証拠を表す中間型AMDからGAおよび/または滲出型AMDへの進行の増加および高リスクドルーゼンの数および/または体積ならびに総ドルーゼン数および/または体積の変化を含む。偽注射を受けた患者に比して、LACA-40処置患者におけるドルーゼンの数、体積および/または増殖速度の大きな減少は、有効性の証拠を表し、一次安全性エンドポイントは、局所および全身治療下で発現した有害事象の数および重症度である。
【0636】
実施例27:吸入CA28の前臨床試験
単一用量または反復投与の吸入試験をイヌおよびカニクイザルで実施した。試験した最高吸入用量で、何れの動物でも薬物関連所見はなかった。これらの用量は、イヌにおける7日間反復投与試験で25mg/kg/日、サルにおける単一用量試験で80mg/kgおよびサルにおける14日間反復投与で30mg/kg/日であった。
豚回虫曝露モデルを使用して、コルチコステロイドと比較したカニクイザルにおけるインビボでのCA28の薬理効果を試験した。20mg/日または15mg/kg/日(連続14日)の噴霧CA28の用量は、14日処置期間中および処置終了28日、薬物のウォッシュアウト後の両方で、アレルゲン暴露後、肺における炎症性サイトカインレベルの制御に薬理効果を有した(気管支肺胞洗浄液で測定して)。
【0637】
実施例28:健常対象における吸入CA28のフェーズ1単一および複数用量漸増臨床試験
コンプスタチン類似体(CA28)の連日噴霧製剤のフェーズ1オープンラベル、無作為化、プラセボ対照、単一および複数用量漸増臨床試験を、健常ボランティアにおける薬物の単一および複数吸入投与の安全性、耐容性およびPKを評価するために実施した。CA28溶液(2%グリセロール中)またはプラセボ(2%グリセロール)を、PARI TurboBOY(登録商標)S圧縮装置により駆動する断続装置を備えたPARI LC Sprint(登録商標)ジェットネブライザーで、で投与した。治験の単一用量漸増部において、16対象が、各4対象の4コホートに登録された。これらの対象に、20mg~350mg範囲(20mg、60mg、150mgまたは350mg)の単一用量のCA28を投与し、処置後14日間モニターした。治験のこの部において、CA-28は、十分に耐容性であり、重篤な有害事象は報告されなかった。
4対象が治験の複数用量漸増部の第一ホートに登録された。これらの対象は、60mg/日用量の薬物を処置の連続14日間受けた。しかしながら、60mg/日用量での処置の9日後、1対象が薬物の薬理学と関連する可能性があると考えられた潜在的細菌感染症と一致する兆候および症状を発症した。治験を中断し、続いて、30mg/日を受けている対象で再開した。他の対象は、30mg/日用量での処置10日後、薬物の薬理学と関連する可能性があると考えられた潜在的細菌感染症と一致する兆候および症状を発症した。その後治験は終了された。
両対象は、細菌性病原体の指標である、第一選択抗生物質処置数時間以内に応答した。この治験において、対象はナイセリア・メニンギティディスに対してワクチン接種し、感染の兆候について密接にモニターした。細菌培養は全て陰性であったが、ヘモフィルス・インフルエンザエまたはストレプトコッカス・ニューモニエが、C3欠損個体がナイセリア・メニンギティディス、ヘモフィルス・インフルエンザエおよびストレプトコッカス・ニューモニエでの感染のリスクが増加することが知られているため、発熱のエピソードと関連付けられるはずである。これらの3病原体に対するワクチンは入手可能であり、感染のリスクは、ワクチンと、おそらく、予防的抗生物質(例えば、ペニシリンV)の追加により管理できると考えられる。
【0638】
実施例29:LACAとds siRNAの組み合わせ治療
実施例20、21および22を、(i)各場合に5倍減少したLACA-40の用量および投与体積の使用;(ii)各場合に10倍減少したLACA-40の用量および投与体積の使用;(iii)LACA-40の連日投与の代わりに毎週投与の使用により処置される、さらなるコホートで繰り返す。対象をまた毎週または毎月皮下投与する、C3発現を阻害する二本鎖siRNAでも処置する。
【0639】
実施例30:LACAとss siRNAまたはASOでの組み合わせ治療
対象が二本鎖siRNAではなく、C3発現を阻害する一本鎖siRNAまたはC3発現を阻害するASOで処置される以外、実施例29を繰り返した。
【0640】
当業者は日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施態様の均等物を多数認識する、あるいは確認することが可能であろう。本発明の範囲は上記“説明”に限定されることが意図されるものではなく、添付の“特許請求の範囲”に記載されているとおりのものである。本発明は、何れかの具体的な実施例または何れかの具体的な実施態様で得られる特定の結果に依存するものでは決してないことが理解される。別途明示されない限り、あるいは文脈から特に明らかでない限り、単数表現は1個を意味することも2個以上を意味することもある。別途明示されない限り、あるいは文脈から特に明らかでない限り、あるグループの1個以上の要素間に“または(もしくは、あるいは)”を含む請求項または記載は、そのグループの1個、2個以上またはすべての要素が所与の製造物または工程に存在する、用いられる、あるいは関連する場合に満たされるものする。本発明は、所与の製造物または工程にグループのちょうど1個の要素が存在する、用いられる、あるいは関連する実施態様を包含する。例えば、特に限定されないが、請求項または記載が、特定の位置にある残基が特定のグループのアミノ酸またはアミノ酸類似体から選択され得ることを表している場合、本発明は、その位置にある残基が、挙げられているアミノ酸またはアミノ酸類似体の何れかである個々の実施態様を包含することが理解される。また本発明は、所与の製造物または工程にグループの2個以上またはすべての要素が存在する、用いられる、あるいは関連する実施態様も包含する。さらに、本発明は、記載されている請求項の1個以上または上の記述による1個以上の制限、構成要素、条項、記述用語などが別の請求項に導入されているあらゆる変更、組合せおよび置換を包含することを理解するべきである。例えば、別の請求項に従属する何れかの請求項が、同じ基本請求項に従属する他のすべての請求項に記載されている1個以上の構成要素、制限、条項または記述用語が含まれるよう改変され得る。さらに、請求項に組成物が引用されている場合、特に明示されない限り、あるいは矛盾または不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている何れかの方法に従って組成物を投与する方法および本明細書に開示されている何れかの目的で組成物を使用する方法が本発明の範囲内にあること、また本明細書に開示されている何れかの製造方法に従って組成物を製造する方法が本発明の範囲内にあることを理解するべきである。対象を処置する方法は、そのような処置を必要とする対象(例えば、疾患に罹患したことがある対象または疾患に罹患するリスクの高い対象)を準備する段階、対象が疾患に罹患していると診断する段階および/または細胞反応性コンプスタチン類似体により処置する対象を選択する段階を含み得る。構成要素がリストで示されている場合、構成要素の各サブグループも開示されることになり、また何れかの構成要素がそのグループから除去され得ることを理解するべきである。簡潔にするため、本明細書にはここに挙げた実施態様のうち一部のみが具体的に引用されているが、本発明はここに挙げた実施態様をすべて包含するものである。一般に、本発明または本発明の実施態様が特定の構成要素、特徴などを含むものとして記載されている場合、本発明の特定の実施態様または本発明の特定の実施態様は、そのような構成要素、特徴などからなる、あるいは実質的にそれよりなるものであることも理解するべきである。本明細書の様々な表題の下で様々な疾患、障害および状態について述べられているが、これは便宜的なものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【0641】
範囲が記載されている場合、その終点も含まれる。さらに、特に明示されない限り、あるいは文脈および当業者の理解から特に明らかでない限り、範囲として表されている値が、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本発明の様々な実施態様で記載されている範囲内にある何れかの具体的な値または部分範囲が、その範囲の下限の10分の1の単位まで想定され得るものであることを理解するべきである。本発明の何れかの特定の実施態様、実施態様、構成要素、特徴などは、本明細書に明確に記載されていない場合であっても、請求項から明確に除外され得る。例えば、何れかのコンプスタチン類似体、官能基、結合部分、疾患または適応が明確に除外され得る。
範囲が記載されている場合、その終点も含まれる。さらに、特に明示されない限り、あるいは文脈および当業者の理解から特に明らかでない限り、範囲として表されている値が、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本発明の様々な実施態様で記載されている範囲内にある何れかの具体的な値または部分範囲が、その範囲の下限の10分の1の単位まで想定され得るものであることを理解するべきである。本発明の何れかの特定の実施態様、実施態様、構成要素、特徴などは、本明細書に明確に記載されていない場合であっても、請求項から明確に除外され得る。例えば、何れかのコンプスタチン類似体、官能基、結合部分、疾患または適応が明確に除外され得る。
さらに、本発明は次の態様を含む。
項1.対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に
(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および
(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体、
を、対象が両方に暴露されるように一方または両方を投与し、
ここで、INAAおよびコンプスタチン類似体の各々が少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従って投与される、方法。
項2.対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、INAAが代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与される、方法。
項3.対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、コンプスタチン類似体が代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、平均で95%以下、所望により50%~95%血清補体活性を阻害するのに有効な量で投与される、方法。
項4.対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)クリアランス低減部分(CRM)および少なくとも1つのコンプスタチン類似体部分を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、ここで、コンプスタチン類似体が平均約300mg/日未満の量で投与される、方法。
項5.コンプスタチン類似体がそれに結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するクリアランス低減部分(CRM)である、項1~4の何れかに記載の方法。
項6.対象における補体活性化を阻害する方法であって、対象に(a)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)結合した少なくとも2つのコンプスタチン類似体部分を有するクリアランス低減部分(CRM)を含むコンプスタチン類似体を投与することを含み、所望により、ここで、(i)コンプスタチン類似体が代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与される;(ii)INAAが代替経路アッセイ、古典経路アッセイまたは両者を使用して測定して、血清補体活性を平均で90%以下で阻害するのに十分な量で投与される;(iii)INAAおよびコンプスタチン類似体の両者が少なくとも2日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される;または(iv)(i)、(ii)および(iii)の任意の組み合わせである、方法。
項7.補体介在障害の処置が必要な対象を処置する方法であって、項1~6の何れかに記載のとおり対象にa)C3の発現を阻害する阻害性核酸剤(INAA);および(b)コンプスタチン類似体を投与することを含む、方法。
項8.コンプスタチン類似体が少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、項1~7の何れかに記載の方法。
項9.INAAおよびコンプスタチン類似体が両者とも少なくとも7日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、項1~8の何れかに記載の方法。
項10.INAAおよびコンプスタチン類似体が両者とも7~31日間の投与間隔を有する投与レジメンに従い投与される、項1~9の何れかに記載の方法。
項11.コンプスタチン類似体およびINAAが、所望により異なる投与スケジュールに従い、別々に投与される、項1~10の何れかに記載の方法。
項12.コンプスタチン類似体およびINAAが、同じ投与スケジュールに従い、別々に投与される、項1~11の何れかに記載の方法。
項13.コンプスタチン類似体およびINAAが同一組成物で投与される、項1~12の何れかに記載の方法。
項14.コンプスタチン類似体が、ヒト対象に静脈内または皮下投与したとき、24時間~10日間の半減期を有する、項1~13の何れかに記載の方法。
項15.INAAが、C3の定常状態血漿レベルを50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、項1~14の何れかに記載の方法。
項16.INAAが、古典経路溶血アッセイ、代替経路溶血アッセイまたは両者を使用して測定して、血漿または血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、項1~15の何れかに記載の方法。
項17.INAAが、代替経路アッセイを使用して測定して、血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、項1~16の何れかに記載の方法。
項18.代替経路アッセイが溶血またはELISA(酵素結合免疫吸着法)に基づく、項17に記載の方法。
項19.INAAが、古典経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を50%~95%減少させるのに有効な量で投与される、項1~18の何れかに記載の方法。
項20.INAAおよびコンプスタチン類似体が、古典経路溶血アッセイ、代替経路溶血アッセイまたは両者により測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、項1~19の何れかに記載の方法。
項21.INAAおよびコンプスタチン類似体が、古典経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、項1~20の何れかに記載の方法。
項22.INAAおよびコンプスタチン類似体が、代替経路アッセイにより測定して、血漿補体活性を90%を超えて、95%を超えてまたは99%を超えて減少させるのに有効な量で投与される、項1~21の何れかに記載の方法。
項23.INAAがヒトC3 RNAの少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30連続ヌクレオチドと完全相補性である領域を含む鎖を含む、項1~22の何れかに記載の方法。
項24.INAAがヒトC3メッセンジャーRNA(mRNA)の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30連続ヌクレオチドと完全相補性である領域を含む鎖を含む、項1~23の何れかに記載の方法。
項25.INAAが二本鎖核酸を含むかまたは核酸が一本鎖核酸を含む、項1~24の何れかに記載の方法。
項26.INAAがRNAi剤を含む、項1~25の何れかに記載の方法。
項27.INAAが二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む、項1~26の何れかに記載の方法。
項28.INAAがDicer基質siRNAを含む、項1~27の何れかに記載の方法。
項29.INAAがアンチセンス鎖を含み、ここで、2~7位のヌクレオチドがヒトC3 mRNAにおける標的領域と完全相補性である、項1~28の何れかに記載の方法。
項30.INAAがヒトC3 mRNAの3’非翻訳領域(UTR)における標的領域と相補性である鎖を含む、項1~29の何れかに記載の方法。
項31.INAAが、ヒトC3 mRNAとハイブリダイズしたとき、5未満の不適合または非対応非オーバーハング塩基を有する鎖を含む、項1~30の何れかに記載の方法。
項32.INAAが1個または2個の3’オーバーハングを有する二本鎖核酸を含み、所望により各オーバーハングが独立して1~4塩基長である、項1~31の何れかに記載の方法。
項33.INAAが15~30塩基対長、所望により17~25、17~23、17~21、23~27、19~21、21~23または23~25塩基対長の二本鎖領域を含む二本鎖核酸を含む、項1~32の何れかに記載の方法。
項34.INAAが1以上の位置で修飾を含み、所望により、修飾が(a)1以上の非ホスホジエステル主鎖結合;および/または(b)所望により2’-メトキシエチル、2’-O-アルキル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-ヒドロキシルからなる群から選択される、1以上の2’糖修飾およびこれらの組み合わせの1以上を含む、項1~33の何れかに記載の方法。
項35.INAAが1以上の位置で修飾を含み、所望により、修飾が2’-O-メチル修飾、2’-フルオロ修飾または両者を含む、項1~34の何れかに記載の方法。
項36.INAAが二本鎖であり、一方または両方の鎖に1以上の修飾を含み、所望により、修飾が交互のパターンである、項1~35の何れかに記載の方法。
項37.INAAが、所望により7位に、少なくとも一つの非環式または脱塩基残基位置を含むアンチセンス鎖を含む、項1~36の何れかに記載の方法。
項38.INAAが、所望により7位に、少なくとも一つのアンロックド核酸を含むアンチセンス鎖を含む、項1~37の何れかに記載の方法。
項39.INAAがヒトC3 RNAにおける標的領域と相補性である一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、項1~38の何れかに記載の方法。
項40.ASOがC3 mRNAのRNase H介在分解を促進する、項39に記載の方法。
項41.INAAがターゲティング部分と物理的に結合している、項1~40の何れかに記載の方法。
項42.INAAが肝細胞のINAAによる取り込みを促進するターゲティング部分を含み、所望により、ターゲティング部分がGalNacを含む、項1~42の何れかに記載の方法。
項43.INAAが送達剤と物理的に結合しており、所望により、送達剤が脂質、粒子または脂質含有粒子を含む、項1~42の何れかに記載の方法。
項44.クリアランス低減部分(CRM)がポリマーを含む、項1~43の何れかに記載の方法。
項45.CRMがPEGを含む、項1~44の何れかに記載の方法。
項46.CRMが約10kD~約50kD、例えば、約35kD~約45kD、例えば、約40kDの分子量を有する、項1~45の何れかに記載の方法。
項47.コンプスタチン類似体が各末端に結合したコンプスタチン類似体部分有する直鎖状ポリマーを含む、項1~46の何れかに記載の方法。
項48.各コンプスタチン類似体部分が配列番号3~36、37、37A、38A、39A、40Aまたは41Aの何れかに示すアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む、項1~47の何れかに記載の方法。
項49.各コンプスタチン類似体部分が配列番号28、32または34の何れかに示すアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む、項1~48の何れかに記載の方法。
項50.各コンプスタチン類似体部分が11アミノ酸長の環状部分を含む環状ペプチドを含み、ここで、ペプチドの配列がコンプスタチン(配列番号8)の配列またはコンプスタチンより高い活性を有するコンプスタチンの配列と少なくとも50%同一である、項1~49の何れかに記載の方法。
項51.各コンプスタチン類似体部分が11アミノ酸長の環状部分を含む環状ペプチドを含み、ここで、ペプチドの配列がコンプスタチン(配列番号8)の配列またはコンプスタチンより高い活性を有するコンプスタチンの配列と少なくとも50%同一であり、ここで、ペプチドが少なくとも一つの非標準的アミノ酸を含み、所望により少なくとも一つの非標準的アミノ酸が一個または複数ハロゲン化されたアミノ酸、N-アルキルアミノ酸または芳香族アミノ酸である、項1~50の何れかに記載の方法。
項52.各コンプスタチン類似体部分がコンプスタチンの配列と比較して1、2、3または4置換有する配列を含むペプチドを含み、ここで、ペプチドはコンプスタチンの2位と12位に対応する位置のアミノ酸間の結合により環化されており、ここで、コンプスタチンの配列における1、2、3または4アミノ酸は非標準的アミノ酸により置き換えられており、所望により少なくとも一つの非標準的アミノ酸が一個または複数ハロゲン化されたアミノ酸、N-アルキルアミノ酸または芳香族アミノ酸である、項1~51の何れかに記載の方法。
項53.コンプスタチン類似体が配列番号8の4位に対応する位置に1-メチルTrpを有する環状ペプチドを含む1以上のコンプスタチン類似体部分を含む、項1~52の何れかに記載の方法。
項54.コンプスタチン類似体が配列番号8の8位に対応する位置にN-メチルGlyを有する環状ペプチドを含む1以上のコンプスタチン類似体部分を含む、項1~53の何れかに記載の方法。
項55.コンプスタチン類似体が1以上のコンプスタチン類似体部分に結合した1以上のクリアランス低減部分を含み、ここで、各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された配列番号3~36の何れかに示すアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、アミノ酸の1以上が1級または2級アミンを含む側鎖を有し、環状ペプチドと、所望によりオリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、各クリアランス低減部分は、所望によりポリエチレングリコール(PEG)を含み、ここで、各クリアランス低減部分は1以上のコンプスタチン類似体部分により結合部分と共有結合し、ここで、結合部分は不飽和アルキル部分、非芳香族環状環系を含む部分、芳香族部分、エーテル部分、アミド部分、エステル部分、カルボニル部分、イミン部分、チオエーテル部分および/またはアミノ酸残基を含む、項1~54の何れかに記載の方法。
項56.コンプスタチン類似体が2個のコンプスタチン類似体部分が結合したクリアランス低減部分を含み、ここで、(a)各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸ペプチドの環状部分と柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、所望により、スペーサーはオリゴ(エチレングリコール)部分を含み;そして(b)クリアランス低減部分は直線状ポリマーを含み、ここで、直線状ポリマーの各末端はカルボニル基を含むリンカー部分を介してコンプスタチン類似体部分の一つに結合されている、項1~55の何れかに記載の方法。
項57.コンプスタチン類似体が2個のコンプスタチン類似体部分が結合したクリアランス低減部分を含み、ここで、(a)各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸ペプチドの環状部分と柔軟なまたは堅いスペーサーにより離され、所望によりここで、スペーサーはオリゴ(エチレングリコール)部分を含み;および(b)クリアランス低減部分は直線状ポリマーを含み、ここで、直線状ポリマーの各末端はカルバメートまたはアミドを介してコンプスタチン類似体部分の一つに結合されている、項1~56の何れかに記載の方法。
項58.各コンプスタチン類似体部分は、1級または2級アミンを含む側鎖を有する少なくとも一つのアミノ酸を含むアミノ酸配列により伸長された環状ペプチドを含み、所望により、1級または2級アミンを含む側鎖を有する少なくとも一つのアミノ酸は環状ペプチドのC末端のリシンである、項1~57の何れかに記載の方法。
項59.各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸はオリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されており、ここで、オリゴ(エチレングリコール)部分は(-(O-CH
2
-CH
2
-)
n
(ここで、nは1~10である)である、項1~58の何れかに記載の方法。
項60.各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸は共有結合により結合した-(CH
2
)
m
-および-(O-CH
2
-CH
2
-)
n
(ここで、mは1~10であり、nは1~10である).オリゴ(エチレングリコール)部分を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されており、所望によりmは1であり、nは2である、項1~59の何れかに記載の方法。
項61.各コンプスタチン類似体部分がN末端、C末端または両方で1以上の末端アミノ酸により伸長された環状ペプチドを含み、ここで、1以上のアミノ酸は8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEAc)または11-アミノ-3,6,9-トリオキサンデカン酸を含む柔軟なまたは堅いスペーサーによりペプチドの環状部分から離されている、項1~60の何れかに記載の方法。
項62.コンプスタチン類似体がCA28-2TS-BFまたはCA28-2GS-BFを含む、項1~61の何れかに記載の方法。
項63.コンプスタチン類似体が皮下または経口投与される、項1~62の何れかに記載の方法。
項64.コンプスタチン類似体およびINAAが皮下投与される、項1~63の何れかに記載の方法。
項65.コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が1日1回以下で投与される、項1~64の何れかに記載の方法。
項66.コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が各々投与あたり1ml以下の体積で皮下投与される、項1~65の何れかに記載の方法。
項67.コンプスタチン類似体、INAAまたは両者が投与あたり0.5ml以下の体積で皮下投与される、項1~66の何れかに記載の方法。
項68.コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~500mgの量で投与される、項1~67の何れかに記載の方法。
項69.コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~270mgの量で投与される、項1~68の何れかに記載の方法。
項70.コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~180mgの量で投与される、項1~69の何れかに記載の方法。
項71.コンプスタチン類似体が投与あたり20mg~50mgまたは投与あたり50mg~100mgまたは投与あたり100mg~150mgまたは投与あたり150mg~200mgまたは投与あたり200mg~250mgの量で投与される、項1~70の何れかに記載の方法。
項72.対象が補体介在障害を有する、項1~71の何れかに記載の方法。
項73.対象が補体制御における欠損を有し、所望により、欠損が対象の細胞の少なくとも一部より1以上の補体制御タンパク質の異常に低い発現を含む、項1~72の何れかに記載の方法。
項74.補体介在障害が慢性障害である、項1~73の何れかに記載の方法。
項75.補体介在障害が赤血球への補体介在損傷を含み、所望により、障害が発作性夜間血色素尿症または非典型溶血性尿毒症症候群である、項72~74の何れかに記載の方法。
項76.補体介在障害が自己免疫性疾患であり、所望により、障害が多発性硬化症である、項72~74の何れかに記載の方法。
項77.補体介在障害が腎臓に関与し、所望により、障害が膜性増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎または急性腎傷害である、項72~74の何れかに記載の方法。
項78.補体介在障害が中枢または末梢神経系または神経筋接合部に関与し、所望により、障害が視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、多巣性運動神経障害または重症筋無力症である、項72~74の何れかに記載の方法。
項79.補体介在障害が呼吸器系に関与し、所望により、障害が肺線維症により特徴付けられる、項72~74の何れかに記載の方法。
項80.補体介在障害が血管系に関与し、所望により、障害が脈管炎により特徴付けられる、項72~74の何れかに記載の方法。
項81.コンプスタチン類似体部分がX’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly(配列番号3)のコア配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、X’aaおよびXaaがTrpおよびTrpの類似体から選択される、項1~80の何れかに記載の方法。。
項82.コンプスタチン類似体部分がX’aa-Gln-Asp-Xaa-Gly-X”aa(配列番号4)のコア配列を有する環状ペプチドを含み、ここで、X’aaおよびXaaが各々独立してTrpおよびTrpの類似体から選択され、X”aaはHis、Ala、単一メチル非分枝アミノ酸、Phe、TrpおよびTrpの類似体から選択される、項1~81の何れかに記載の方法。
項83.X’aa2およびX”aa4がCysであり、X”aa1が所望によりAlaまたは単一メチル非分枝アミノ酸である、項81または82に記載の方法。
項84.コンプスタチン類似体部分が配列:
Xaa1-Cys-Val-Xaa2-Gln-Asp-Xaa2*-Gly-Xaa3-His-Arg-Cys-Xaa4(配列番号6);
(式中、Xaa1はIle、Val、Leu、B
1
-Ile、B
1
-Val、B
1
-LeuまたはGly-IleもしくはB
1
-Gly-Ileを含むジペプチドであり、B
1
は第一遮断部分であり;
Xaa2およびXaa2*は独立してTrpおよびTrpの類似体から選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnの何れかのカルボキシ末端-OHは所望により第二遮断部分B
2
で置換されていてよい;そして
2個のCys残基はジスルフィド結合により結合している。〕
を有する環状ペプチドを含む、項1~83の何れかに記載の方法。
項85.Xaa1がIle、Val、Leu、Ac-Ile、Ac-Val、Ac-LeuまたはGly-IleまたはAc-Gly-Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2およびXaa2*はTrpおよびTrpの類似体から独立して選択され;
Xaa3はHis、AlaまたはAlaの類似体、Phe、TrpまたはTrpの類似体であり;
Xaa4はL-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、Thr-AlaおよびThr-Asnから選択されるジペプチドまたはThr-Ala-Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L-Thr、D-Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnの何れかのカルボキシ末端-OHは所望により-NH
2
で置換されていてよい、項84に記載の方法。
項86.Xaa2がトリプトファンの1位もしくは5位に低級アルコキシまたは低級アルキル置換基またはトリプトファンの5位もしくは6位にハロゲン置換基を含むTrpの類似体である、項84または85に記載の方法。
項87.Xaa2がトリプトファンの1位もしくは5位に低級アルコキシまたは低級アルキル置換基またはトリプトファンの5位もしくは6位にハロゲン置換基を含むTrpの類似体であり、Xaa2*がTrpである、項84または85に記載の方法。
項88.投与の段階が、INAAをコンプスタチン類似体を受けている対象に投与することを含む、項1~87の何れかに記載の方法。
項89.投与の段階が、コンプスタチン類似体をINAAを受けている対象に投与することを含む、項1~87の何れかに記載の方法。
項90.投与の段階がコンプスタチン類似体およびINAA両者を投与することを含む、項1~87の何れかに記載の方法。
項91.投与の段階がコンプスタチン類似体およびINAAの両者を含む組成物を投与することを含む、項90に記載の方法。