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特開2022-188076組織マトリックス材料および酵素接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188076
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】組織マトリックス材料および酵素接着剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/36 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61L27/36 410
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022146814
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2019540355の分割
【原出願日】2018-01-29
(31)【優先権主張番号】62/452,014
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504154148
【氏名又は名称】ライフセル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LifeCell Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ステック,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ポマリュ,ミン,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】オウンズ,リック,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シーマン,リチャード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コラーゲン含有組織製品を互いに、または組織に接合するための改良された方法を提供する。
【解決手段】組織製品の製造方法であって、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、前記第1の材料の一部分を処理して、その部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織製品の製造方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、
前記第1の材料の一部分を処理して、その部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む少なくとも1の追加の材料を選択するステップと、
少なくとも1の追加の材料の一部分を処理して、少なくとも1の追加の材料の一部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された少なくとも1の追加の材料の一部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した少なくとも1の追加の材料の一部分を、第1の材料または第2の材料と物理的に接触させるステップとをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物が、水溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、粒子状であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、無細胞組織マトリックスであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織、筋肉および腸組織から選択される組織に由来する組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記第1の材料および前記第2の材料の各々が無細胞組織マトリックスのシートを含み、前記第1の材料および前記第2の材料が互いに接触されて多層シートがもたらされることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記多層シートが無細胞筋マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法に従って製造された組織製品。
【請求項13】
治療方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料を選択するステップと、
材料の一部分を処理して、その部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物が、水溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、無細胞組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織および腸組織から選択される組織に由来する組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
治療方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料を選択するステップであって、材料の表面に近接する材料の一部分が部分的に変性したコラーゲンを含む、ステップと、
部分的に変性したコラーゲンを含む部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物が、水溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20乃至22の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、無細胞組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織および腸組織から選択される組織に由来する組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20乃至26の何れか一項に記載の方法において、
部分的に変性したコラーゲンを含む一部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップ、並びに、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップが、
組織部位をトランスグルタミナーゼと接触させること、および、
部分的に変性したコラーゲンを含む材料の表面を、組織部位と接触させることによって行われることを特徴とする方法。
【請求項28】
組織治療製品であって、
実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスを有する無細胞組織マトリックスと、部分的に変性したコラーゲンを含む表面領域とを備え、部分的に変性したコラーゲンが、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスと同じ組織から形成されるコラーゲンマトリックスを含み、部分的に変性したコラーゲンが、無傷の組織マトリックスの天然コラーゲン骨格から形成されるとともに、無傷の組織マトリックスに結合されていることを特徴とする製品。
【請求項29】
請求項28に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、粒子状であることを特徴とする製品。
【請求項30】
請求項28または29に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする製品。
【請求項31】
請求項28乃至30の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織および腸組織から選択される組織に由来する組織から生成されていることを特徴とすることを特徴とする製品。
【請求項32】
請求項28乃至30の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする製品。
【請求項33】
請求項28乃至30の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする製品。
【請求項34】
組織治療製品であって、
コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む第1の材料と、
コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む少なくとも1の第2の材料とを含み、
第1の材料および第2の材料が、グルタミン残基のガンマ-カルボキシアミド基と第一級アミノ酸との間に形成された結合によって互いに接合されていることを特徴とする製品。
【請求項35】
組織製品を製造する方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、
第1の材料の一部分を処理して、第1の材料の一部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させ、それによってコラーゲン含有組織マトリックスに接続される部分的に変性されたコラーゲンの部分を形成するステップとを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織製品に関するものであり、それには、トランスグルタミナーゼを使用して組織製品を使用および処理する方法が含まれる。
【0002】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2017年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/452,014号の優先権を主張するものであり、その全体が引用により本明細書に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
様々な組織由来製品が、病変または損傷した組織および器官を再生、修復または他の方法で治療するために使用されている。そのような製品は、無傷の組織移植片または無細胞または再構成無細胞組織(例えば、細胞播種の有無にかかわらず、皮膚、腸または他の組織由来の無細胞組織マトリックス)を含むことができる。また、そのような製品は、ハイブリッド材料または複合材料、例えば、組織由来の材料を含むコーティングまたはカバーを有するポリマーメッシュ基材などの合成要素を含む材料を含むことができる。
【0004】
ある場合には、コラーゲン含有組織マトリックス製品を互いにまたは体内の組織に接合することが望ましいことがある。現在は、例えば、接着剤、機械的固定システム(例えば、縫合糸)または化学的変更を含む、そのような材料または組織を接合するための様々な方法がある。しかしながら、現在のデバイスおよび方法は、いくつかの用途にとって理想的ではない場合がある。
【0005】
例えば、いくつかの外科用接着剤は、表面的な使用には適しているが、体内の深部への移植には推奨されていない。加えて、機械的固定機構は使用するのに時間がかかり、組織面の間に間隙を残すことがあり、そのような間隙が血清腫形成のような合併症を引き起こす可能性があるため、望ましくないことがある。さらに、接着剤または他の化学的接合機構は、再生組織マトリックスに望ましくない変化を生じさせるか、またはそれ自体が所望の細胞の内方成長および血管新生を妨げるバリア層を形成することがあり、接着剤によっては、移植に不適切な有毒な副産物が発生することがある。
【0006】
そこで、本開示は、コラーゲン含有組織製品を互いに、または組織に接合するための改良された方法を提供する。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態によれば、組織製品を製造する方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、第1の材料の一部分を処理して、第1の材料の一部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを含むことができる。
【0008】
一実施形態によれば、治療方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料を選択するステップと、材料の一部分を処理して、その部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させるステップと、コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップとを含むことができる。
【0009】
別の実施形態によれば、組織治療製品が提供される。この製品は、コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む第1の材料と、コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む少なくとも1の第2の材料とを含むことができ、第1の材料および第2の材料が、グルタミン残基のガンマ-カルボキシアミド基と第一級アミノ酸との間に形成された結合によって互いに接合されている。
【0010】
別の実施形態によれば、治療方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料を選択するステップを含むことができる。材料の表面に近接する材料の一部分は、部分的に変性したコラーゲンを含む。この方法は、部分的に変性したコラーゲンを含む部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップを含むことができる。この方法は、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップを含むことができる。
【0011】
別の実施形態によれば、組織治療用製品が提供される。この製品は、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスを有する無細胞組織マトリックスと、部分的に変性したコラーゲンを含む表面領域とを含むことができ、部分的に変性したコラーゲンが、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスと同じ組織から形成されるコラーゲンマトリックスを含み、部分的に変性したコラーゲンが、無傷の組織マトリックスの天然コラーゲン骨格から形成されるとともに、無傷の組織マトリックスに結合されている。
【0012】
一実施形態によれば、組織製品を製造する方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、第1の材料の一部分を処理して、第1の材料の一部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させ、それによってコラーゲン含有組織マトリックスに接続される部分的に変性されたコラーゲンの部分を形成するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、様々な実施形態に係る、トランスグルタミナーゼを使用して組織製品を接合するためのプロセスを例示している。
図2図2は、開示のプロセスを使用して処理することができるシート状の組織製品の斜視図である。
図3図3は、様々な実施形態に係る、乳房インプラントまたは組織エキスパンダとともに移植された組織製品であって、組織製品を周囲の組織に結合するためにトランスグルタミナーゼを組み込んでいる組織製品の側面図である。
図4図4は、開示のトランスグルタミナーゼ処理方法を取り入れた腹部部位を治療するためのシート状の組織製品の使用を例示している。
図5図5Aは、実施例1に記載されるように調製されたマッソンのトリクローム染色を伴う組織マトリックス組織学的切片を例示している。図5Bは、実施例1に記載されるように調製されたマッソンのトリクローム染色を伴う組織マトリックス組織学的切片を例示しており、表面領域が、レーザ処理によって部分的に変性したコラーゲンを有するものとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、本開示に係る特定の例示的な実施形態を詳細に参照する。その特定の例が添付図面に示されている。同一または類似の部分を指すために、可能な限り、図面全体を通して同じ符号を使用するものとする。
【0015】
本出願において、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含んでいる」という用語、並びに、「含む」および「含まれる」などの他の形態の使用は限定的なものではない。本明細書に記載の任意の範囲は、両端点と、両端点間の全ての値を含むものと理解されたい。
【0016】
本明細書で使用されている節の見出しは、編成目的のためだけであり、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特許、特許出願、論文、書籍および論文に限定される訳ではないが、それらを含む、本出願で引用したすべての文書または文書の一部は、如何なる目的に対しても、その全体が引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【0017】
患者を治療するための製品を製造するために、様々なヒトおよび動物の組織を使用することができる。例えば、様々な疾患および/または構造的損傷に起因して(例えば、外傷、手術、萎縮、および/または長期の摩耗や変性により)損傷または喪失したヒト組織の再生、修復、増加、補強および/または治療のための様々な組織製品が製造されている。そのような製品は、例えば、無細胞組織マトリックス、組織同種移植片または異種移植片、および/または再構成組織(すなわち、成長できる材料をもたらすために細胞が播種された、少なくとも部分的に脱細胞化された組織)を含むことができる。
【0018】
組織製品は、様々な異なる生物学的および機械的特性を提供するように選択することができる。例えば、組織の内方成長および再構築を可能にして、マトリックスの移植部位に通常見られる組織の再生を助けるように、無細胞組織マトリックスまたは他の組織製品を選択することができる。例えば、無細胞組織マトリックスは、筋膜上または筋膜内に移植されるとき、過度の線維症または瘢痕形成なしに筋膜の再生を可能にするように選択され得る。特定の実施形態では、組織製品は、それぞれヒトおよびブタの無細胞真皮マトリックスであるALLODERM(登録商標)またはSTRATTICE(商標)から形成することができる。代替的には、他の適切な無細胞組織マトリックスを利用可能である。例えば、いくつかの生物学的足場材料が、Badylak et al.,「Extracellular Matrix as a Biological Scaffold Material:Structure and Function」,Acta Biomaterialia(2008),doi:10.1016/j.actbio.2008.09.013に記載されている。
【0019】
本明細書において、「組織製品」とは、細胞外マトリックスタンパク質を含有する任意のヒトまたは動物の組織をいう。「組織製品」は、無細胞または部分的に脱細胞化された組織マトリックス、外因性細胞が再増殖した脱細胞化組織マトリックス、および/または細胞組織を含むことができる。「組織製品」は、例えば、可撓性シートとして、粒子状もしくは切断/成形片として、またはバルク塊(例えば、箱形、卵形、球形または不規則な3D形状)として様々な形状または形態であり得る。組織製品は、2以上の異なる組織タイプ、例えば、真皮と筋肉、真皮と筋膜、筋肉と筋膜、または真皮と脂肪組織、または他の組合せによる組織マトリックスを含むハイブリッド製品を含むことができる。
【0020】
本明細書において、「無細胞組織マトリックス」(例えば、ATM)という用語は、一般に、細胞および/または細胞成分を実質的に含まない任意の組織マトリックスを指す。皮膚、皮膚の一部(例えば、真皮)、並びに、脂肪、血管、心臓弁、筋膜、軟骨、骨、筋肉(骨格筋または非骨格筋)および神経結合組織などの他の組織を使用して、本開示の範囲内において、無細胞マトリックスを形成することができる。無細胞組織マトリックスは、いくつかの方法で、それらが細胞および/または細胞成分を実質的に含まないか否かを判定するために試験または評価することができる。例えば、処理された組織を光学顕微鏡で検査して、細胞(生きているか死んでいるか)および/または細胞成分が残っているか否かを判定することができる。さらに、特定のアッセイを用いて細胞または細胞成分の存在を同定することができる。
【0021】
トランスグルタミナーゼは、グルタミン残基のガンマ-カルボキシアミド基とリジン残基のアミノ基または他の第一級アミノ基との結合を触媒する、細菌、植物および動物において発現される酵素である。トランスグルタミナーゼは、肉、ヨーグルト、豆腐などのたんぱく質に富んだ食品を結合し、その物理的性質を改善するために食品業界で使用されている。また、トランスグルタミナーゼは、ヒドロゲルおよびシーラントとして医療デバイス業界で使用するためにも現在研究されている。Aberle,T.et al.,「Cell-type Specific Four Component Hydrogel」,PLoS ONE 9(1):e86740(Jan.2004)を参照されたい。
【0022】
本発明者等は、トランスグルタミナーゼが、2以上のコラーゲン含有材料どうしの結合を触媒するために使用されることを認識している。2以上のコラーゲン含有材料は、無細胞組織マトリックスを含む、上述した「組織製品」を含むことができ、または患者に見られる組織製品および組織(例えば、腹壁、乳房または他の組織部位において移植部位を囲む筋膜または他の組織)を含むことができる。
【0023】
トランスグルタミナーゼはコラーゲン含有材料に対してある酵素的効果を有するが、本発明者等は、トランスグルタミナーゼを使用して2以上の材料を結合または接合することが、組織の表面またはその近傍でコラーゲンの部分変性を引き起こして、コラーゲンアミノ酸のアミン基およびアシル基が酵素的架橋に利用し易くすることにより、改善できることも見出している。材料の表面またはその近傍に含まれるコラーゲンを部分的に変性させることによって、変性コラーゲンは組織製品のフィブリル状コラーゲンネットワークに結合されたままとなり、他の組織製品または移植部位の組織などの他の材料との結合を助けるために外因性ゼラチンが必要なくなる。
【0024】
一実施形態によれば、組織製品を製造する方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、第1の材料の一部分を処理して、その部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを含むことができる。
【0025】
別の実施形態によれば、組織治療用製品が提供される。この製品は、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスを有する無細胞組織マトリックスと、部分的に変性したコラーゲンを含む表面領域とを含むことができ、部分的に変性したコラーゲンが、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスと同じ組織から形成されるコラーゲンマトリックスを含み、その結果、部分的に変性したコラーゲンが、無傷の組織マトリックスの天然コラーゲン骨格から形成されるとともに、無傷の組織マトリックスに結合されている。
【0026】
別の実施形態によれば、治療方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料を選択するステップと、材料の一部分を処理して、その部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させるステップと、コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、組織部位と物理的に接触させるステップとを含むことができる。
【0027】
別の実施形態によれば、組織治療用製品が提供される。この製品は、コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む第1の材料と、コラーゲン含有無細胞組織マトリックスを含む少なくとも1の第2の材料とを含むことができ、第1の材料および第2の材料が、グルタミン残基のガンマ-カルボキシアミド基と第一級アミノ酸との間に形成された結合によって互いに接合されている。
【0028】
一実施形態によれば、組織製品を製造する方法が提供される。この方法は、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、第1の材料の一部分を処理して、第1の材料の一部分の表面近くのコラーゲンを部分的に変性させ、それによってコラーゲン含有組織マトリックスに接続される部分的に変性されたコラーゲンの部分を形成するステップとを含むことができる。
【0029】
以下に、上述した方法および製品のより詳細な説明を提供する。図1は、様々な実施形態に係るトランスグルタミナーゼを使用して組織製品を接合するためのプロセスを例示している。図2は、開示のプロセスを使用して処理することができるシート状の組織製品の斜視図である。また、図3は、様々な実施形態に係る、乳房インプラントまたは組織エキスパンダとともに移植された組織製品であって、組織製品を周囲の組織に結合するためにトランスグルタミナーゼを組み込んでいる組織製品の側面図であり、図4は、開示のトランスグルタミナーゼ処理方法を取り入れた腹部部位を治療するためのシート状の組織製品の使用を例示している。
【0030】
図1は、組織製品を互いに接合する方法、または組織製品を組織と生体内で接合する方法を実施するための全体的スキームを提供する。図示のように、このプロセスは、所望の組織製品10の選択から始まる(ステップ100)。上述したように、組織製品は、様々なコラーゲン含有材料のいずれか、例えば、無細胞または部分脱細胞化組織マトリックス、外因性細胞が再増殖した脱細胞化組織マトリックス、および/または細胞組織を含むことができる。
【0031】
組織製品は、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織、筋肉および腸組織から選択される組織を含むことができる。場合によっては、組織製品は皮膚由来の組織から製造され、付随する表皮を有する又は有さない真皮組織マトリックスを含むことができる。場合によっては、組織製品は筋肉から製造され、骨格組織または非骨格組織を含む筋肉組織マトリックスを含むことができる。
【0032】
組織製品は、無傷の無細胞組織マトリックスのシートまたは他の形態を使用することに加えて、またはその代わりに、粒子状組織マトリックスまたは再構成組織マトリックスを組み込んだスポンジまたは同様の材料に加工およびリフォームされる組織マトリックスを含むことができる。例えば、組織マトリックスのスポンジは、粒子または断片をもたらすように、組織マトリックスを切断、粉砕または細断することによって形成することができる。その後、粒子または断片を水の添加によりスラリーに形成し、容器内に(例えば、シート状または他の形状として)流し込むか、または(例えば、空気乾燥または凍結乾燥により)乾燥する前に基材に塗布することができる。いくつかの実施形態では、材料を架橋または他の方法で安定化させるために、任意選択的な安定化ステップを実行することができる。ポリマー基材とともに使用する又は使用しないスポンジまたはコーティングを含む例示的な組織製品は、2016年7月5日にLifeCell Corporationに発行された米国特許第9,382,422号に開示されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、組織マトリックスのスポンジが脂肪組織から形成される。適切な脂肪組織は、米国特許出願公開第2012/0310367号(Connorによる2012年5月30日に出願された米国特許出願第13/483,674号)に概略的に記載されている。そのような脂肪材料は、概して、材料の機械的均質化、洗浄、再懸濁および安定化によって形成することができる。材料は(例えば、安定化の前または後に凍結乾燥により)乾燥されるようにしてもよい。安定化はさらに、スポンジを他の材料に結合または付着させるために使用され得る。滅菌は、本明細書に記載のデバイスの構成要素を接合した後に行うようにしてもよい。さらに、スポンジは、無傷の無細胞組織マトリックス成分と接触している間に形成されるようにしてもよく、あるいは接合の前に別々に形成されるようにしてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、多層組織製品が筋肉組織マトリックスから形成される。筋肉組織は、平滑筋、心筋、骨格筋またはそれらの組合せから選択することができる。筋肉組織マトリックスの各層は、トランスグルタミナーゼによる処理によって接合することができる。多層組織製品は、無細胞筋肉組織マトリックスの層と、任意の天然組織由来の追加の無細胞組織マトリックスの少なくとも1の層とを含むことができる。
【0035】
次いで、組織製品を選択した後、表面またはその近傍の組織製品の一部を処理してコラーゲンを変性させるか又は部分的に変性させることができる(ステップ110)。例えば、図1に示すように、平らなシートの表面13を処理してコラーゲンを変性させることができる。また、シートの片面の全表面13の処理が示されているが、意図する用途に応じて、全表面または表面の局所領域(例えば、特定のスポット、形状または領域)を処理することが可能であることを理解されたい。
【0036】
変性プロセスは、いくつかの方法で実施することができる。組織マトリックスコラーゲンの変性の制御方法は、物理的または機械的プロセス(例えば、磨耗)、熱的プロセス、化学的プロセス(例えば、酸、塩基または他のタンパク質変性剤)、酵素変性、光の照射(例えば、加熱またはエネルギー付与のためのレーザ)またはそれらの組合せを含むことができる。
【0037】
ある場合には、製品は、変性後に、後で使用するまで貯蔵用に包装することができる。そのため、製品は、部分的な変性を受けた包装された組織マトリックスを含み、それを外科医が使用することができる。外科医は、移植の前またはそれと同時にトランスグルタミナーゼの塗布を含む後続のステップの適用を完了することができる。
【0038】
変性後、トランスグルタミナーゼ組成物16を処理された組織14の一部分に塗布し(ステップ120)、それによって変性コラーゲンおよびトランスグルタミナーゼを含有する領域20を形成することができる。
【0039】
トランスグルタミナーゼ組成物は、様々な方法で形成することができる。例えば、トランスグルタミナーゼは、溶液で提供することができ、または貯蔵形態(例えば、乾燥粉末または他の適切な貯蔵形態)から溶液に形成することができる。溶液は、任意の適切な緩衝剤、例えば、リン酸緩衝食塩水、または酵素活性を維持または支持し、酵素または組織製品に損傷を与えないであろう他の生物学的に適合した緩衝剤を含むことができる。
【0040】
さらに、様々なトランスグルタミナーゼを使用することができ、それには、生物学的に適合性があり、患者に移植することができ、所望の時間枠内に所望の触媒結果をもたらすのに十分な活性を有するあらゆるものが含まれる。トランスグルタミナーゼは既知のものであり、微生物、植物、動物または組換え技術によって作られた酵素を含むことができる。使用される特定の酵素に応じて、補因子の追加、pHの制御、または温度もしくは他の環境条件の制御などの変更が、適切な酵素活性を可能にするために必要とされることがある。微生物トランスグルタミナーゼは、金属イオンの存在を必要としないことがあるため有効であり得るが、任意の適切なトランスグルタミナーゼを使用することができる。
【0041】
酵素組成物は、任意の適切な機械的手段を用いて組織製品の表面に塗布することができる。例えば、組成物は、単純なブラッシング(例えば、機械的アプリケータ16の使用)、噴霧、浸漬、ローリングまたは他の任意の適切な方法によって塗布することができる。
【0042】
トランスグルタミナーゼを塗布した後、部分変性およびトランスグルタミナーゼ塗布を含むように処理されたコラーゲン含有組織マトリックスを、1または複数の追加のコラーゲン含有組織製品10’または組織と接触させることができる(ステップ130)。例えば、図1に示すように、処理された部分20を含む組織製品10を、別の組織製品の表面22と接触させ、それによってトランスグルタミナーゼを他の組織製品10’または組織と接触させることができる。
【0043】
図1に示すプロセスは、ある組織の表面に対するトランスグルタミナーゼの塗布および変性を含むが、同等の変更を加えることもできる。例えば、ある場合には、部分変性および/またはトランスグルタミナーゼの塗布は、分けられるか、または繰り返されるようにしてもよい。例えば、ある場合には、酵素が一方の表面22に塗布され、部分変性プロセスが他方の表面20に適用される。あるいは、両表面20、22が部分変性およびトランスグルタミナーゼ塗布を受けるようにしても、またはトランスグルタミナーゼが一方の表面のみに直接塗布されている間に、両表面20、22が部分的変性を受けるようにしてもよい。
【0044】
上述したように、組織製品は、様々な形状、形態および組織を含むことができる。例えば、図1および図2に示すように、組織製品10は、上述したように、処理される少なくとも1の表面20を有する可撓性軟組織または無細胞組織マトリックスのシートを含むことができる。ある場合には、組織製品の複数(2以上)のシート10を接合して多層シートを形成することができる。シートは、例えば、無細胞真皮組織マトリックス、無細胞筋肉組織マトリックス、または異なる種類の組織マトリックス製品の組合せ(例えば、骨格筋マトリックス、脂肪マトリックスまたは他の組織と積層または接合した無細胞真皮マトリックス)を含むことができる。
【0045】
上述したように、変性コラーゲンは、組織マトリックスと一体的に結合されるように形成することができる。すなわち、部分変性コラーゲンが、天然コラーゲン骨格から形成されるとともに、無傷の組織マトリックスに結合されるように、部分変性コラーゲンは、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスと同じ組織から形成されたコラーゲンマトリックスを含む。このため、例えば、図2に示すように、組織製品10は、上面34および底面32を有する単一シートの無細胞マトリックスから形成することができる。いくつかの実施形態では、1または複数の表面32、34の近傍のコラーゲンの一部分を変性するように、組織マトリックス30を処理することができる。その処理は、側面(符号が付されていない)のような任意の表面または任意の所望の表面部分(例えば、不規則な形状の材料または平らなシート以外の形状を有する材料のための表面部分)を含むことができる。
【0046】
前述したように、2以上の組織製品を互いに接合するのではなく、またはそれに加えて、例えば生体内で組織製品を組織に付着させるために、本発明の方法を使用することができる。組織治療製品を組織に結合させるための本方法の使用は、多くの可能性のある利点を提供することができる。例えば、ある場合には、周囲の組織への組織製品(例えば、組織または組織マトリックスのシート)の確実な付着を提供することは、漿液腫などの合併症を防ぐのに役立つことができ、あるいは移動や動きが問題になる場合は、組織製品を定位置に固定するのに役立つことができる。
【0047】
このため、本明細書に提示されるデバイスおよび方法は、乳房内または近傍(例えば、増強、再建または審美的処置のため)、腹壁(ヘルニア治療のため、切開(例えば、正中線、ストマ周辺)などを補強するため)、他の結合組織部位(腱、靭帯、筋膜)、頭蓋内(硬膜置換のため)、または無細胞組織マトリックスまたは同様の製品が望まれる他の任意の位置を含む様々な解剖学的部位で使用できる。
【0048】
図3および図4は、本開示の組織製品を使用することができる位置を一例として示している。例えば、図3は、乳房300内への組織製品10の移植を示している。製品は、乳房インプラント310または組織エキスパンダの近傍に移植されている。重要なことに、部分的に変性されかつコラゲナーゼで処理されたコラーゲンを有する表面20は、(乳房皮膚320の下方でかつインプラント310とは反対を向いて)皮下組織または他の周囲組織と接触して置かれている。このため、製品10が周囲の組織に結合または付着し、それにより製品10を定位置に固定し、かつ/またはスペースが形成されるのを妨げることができる。
【0049】
図4は、例えば正中線切開部形成後に、または他の介入とともに、組織マトリックス10を腹壁150内で使用することができる様々な位置を例示している。図示のように、組織マトリックス10は、様々な筋膜層間の位置に対応する様々な位置170、171、172、173、174に配置することができる。そして、前述したように、デバイスは、片面または両面において、本明細書に記載のプロセスで処理することができる。例えば、171、172、173として示されるような2つの筋膜間または他の組織層の間に配置された製品は、移動または空間形成を防ぐために両面で処理されるようにしてもよい。反対に、腹腔内位置(アイテム174)のような位置に埋め込まれたデバイスは、腹膜または腹壁を向く面のみが処理され、腹部内臓を向く面は処理されないようにしてもよい。他の腹部の位置または体内の他の位置についても同様の考え方が検討されるであろう。
【0050】
実施例1
上述したように、組織マトリックスの表面近傍のコラーゲンを部分的に変性させるのに利用可能な様々な方法がある。一実施例として、無細胞ブタ真皮の表面を、60Wで5000Hzの周波数および7.5cm/sの速度を使用してEPILOG(登録商標)Legend XL120 COレーザへの曝露後に、部分的に変性させた。その後、得られた組織500を、未処理の無細胞ブタ真皮(図5A)と比較してコラーゲン変性の程度(図5B)を評価するために、マッソンのトリクロームを用いて組織染色の処理を行った。図示のように、レーザ処理は、マトリックスの表面から有限の距離のところでコラーゲンの部分的な変性を可能にし、それにより、下方にあるマトリックスと密接に接触しかつそれに接続された変性表面510の形成を可能にする。
【0051】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示した本発明の実施から当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示としてのみ考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲および主旨は特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織製品の製造方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、
前記第1の材料の一部分を処理して、その部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織製品の製造方法であって、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む第1の材料を選択するステップと、
前記第1の材料の一部分を処理して、その部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップであって、部分的に変性されたコラーゲンが、前記コラーゲン含有組織マトリックスの天然コラーゲンネットワークに結合されたままであるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した部分を、コラーゲン含有組織マトリックスを含む第2の材料と物理的に接触させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む少なくとも1の追加の材料を選択するステップと、
少なくとも1の追加の材料の一部分を処理して、少なくとも1の追加の材料の一部分の表面付近のコラーゲンを部分的に変性させるステップと、
コラーゲンを部分的に変性させるために処理された少なくとも1の追加の材料の一部分を、トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物と接触させるステップと、
トランスグルタミナーゼを含む組成物と接触した少なくとも1の追加の材料の一部分を、第1の材料または第2の材料と物理的に接触させるステップとをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
トランスグルタミナーゼ酵素を含む組成物が、水溶液を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、粒子状であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、無細胞組織マトリックスであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織、筋肉および腸組織から選択される組織に由来する組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記第1の材料および前記第2の材料の各々が無細胞組織マトリックスのシートを含み、前記第1の材料および前記第2の材料が互いに接触されて多層シートがもたらされることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記多層シートが無細胞筋マトリックスを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
組織治療製品であって、
実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスを有する無細胞組織マトリックスと、部分的変性およびトランスグルタミナーゼ処理コラーゲンを含む表面領域とを備え、部分的変性コラーゲンが、実質的に無傷の無細胞コラーゲン組織マトリックスと同じ組織由来のコラーゲンマトリックスを含み、部分的変性コラーゲンが、無傷の組織マトリックスの天然コラーゲン骨格由来のものであるとともに、無傷の組織マトリックスの天然コラーゲンネットワークと結合関係にあることを特徴とする製品。
【請求項13】
請求項12に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、粒子状であることを特徴とする製品。
【請求項14】
請求項12または13に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスを含む材料が、シートの形態であることを特徴とする製品。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、皮膚、筋膜、脂肪、心膜組織、硬膜、臍帯組織、胎盤組織、心臓弁組織、靭帯組織、腱組織、動脈組織、静脈組織、神経結合組織、膀胱組織、尿管組織および腸組織から選択される組織から得た組織由来のものであることを特徴とすることを特徴とする製品。
【請求項16】
請求項12乃至14の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉由来の組織から生成されることを特徴とする製品。
【請求項17】
請求項12乃至14の何れか一項に記載の製品において、
コラーゲン含有組織マトリックスが、筋肉組織マトリックスを含むことを特徴とする製品。
【外国語明細書】