IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駐車支援装置 図1
  • 特開-駐車支援装置 図2
  • 特開-駐車支援装置 図3
  • 特開-駐車支援装置 図4
  • 特開-駐車支援装置 図5
  • 特開-駐車支援装置 図6
  • 特開-駐車支援装置 図7
  • 特開-駐車支援装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188105
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20221213BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221213BHJP
   A61G 3/04 20060101ALI20221213BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R99/00 351
B60W50/14
B60R99/00 330
A61G3/04
B60W30/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149979
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2019021523の分割
【原出願日】2019-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】板東 伸幸
(57)【要約】
【課題】福祉車両の駐車を容易に行うことのできる駐車支援装置を提供する。
【解決手段】この装置は、乗降を補助する補助装置20を有する車両10の駐車を支援する。補助装置20は、車両10の内部に全体が収容された通常状態から同車両10の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものである。車両制御装置30のメモリ38には、車両10の外部における前記乗降状態の補助装置20を利用した乗降のための乗降スペースが記憶されている。駐車支援装置は、車両10の周辺の映像を撮影するカメラ39,40,41R,41Lを有している。車両制御装置30は、カメラ39,40,41R,41Lによって撮影された映像に、メモリ38に記憶された乗降スペースを重ねてディスプレイ36に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、
前記福祉車両の外部における前記乗降状態の前記補助装置を利用した乗降のための乗降スペースを記憶する記憶部と、
前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記乗降スペースを重ねて表示部に表示する実行部と、を有することを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、
前記補助装置が前記通常状態から前記乗降状態に切り替えられるときにおける前記補助装置の移動軌跡を記憶する記憶部と、
前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記移動軌跡を重ねて表示部に表示する実行部と、を有することを特徴とする駐車支援装置。
【請求項3】
乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、
前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、
前記福祉車両の外部における前記乗降状態の前記補助装置を利用した乗降のための乗降スペースを記憶する記憶部と、
前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記乗降スペースと前記福祉車両の操舵角から予測される同福祉車両の移動軌跡とを重ねて表示部に表示する実行部と、を有することを特徴とする駐車支援装置。
【請求項4】
前記補助装置は、前記福祉車両の後方に設置されて前記福祉車両の後方から車椅子ごと乗員を乗降可能にするスロープである
請求項1~3のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記補助装置は、前記福祉車両の後部に設けられて車椅子ごと乗員を乗降可能にする昇降リフトである
請求項1~3のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記補助装置は、前記乗降状態において、前記福祉車両の座席の一部が同福祉車両の側方から車幅方向に向けて前記福祉車両の外部に突出した状態になるものである
請求項1~3のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の駐車を支援する駐車支援装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の駐車支援装置は、車両後方の映像を撮影するカメラと、カメラによって撮影した映像を表示するディスプレイとを有している。この装置では、駐車時において、車室内のディスプレイに、カメラで撮影した映像や車両の予想移動軌跡が表示されるようになっている。
【0003】
近年、下肢の不自由な人(高齢者や障がい者など)の車両への乗降を補助する補助装置を有する、いわゆる福祉車両が実用されている。こうした補助装置としては、座席自体を回転移動およびスライド移動させて車両の側方からの乗降を可能にする装置や、乗降用のスロープを車両後方に設置して車両後方から車椅子ごと乗員を乗降可能にする装置などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-132180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
福祉車両では、補助装置を有していない通常車両と比較して、補助装置を利用した乗降が行われる分だけ、車両周辺において必要になる乗降用のスペースが大きくなってしまう。従来の駐車支援装置は、補助装置を有していない通常車両に適合したものになっている。そのため、そうした駐車支援装置を福祉車両に設けたとしても、その駐車支援装置は使いづらいものになり、補助装置を利用したスムーズな乗降が実現されるように車両を駐車することは難しいと云える。
【0006】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、福祉車両の駐車を容易に行うことのできる駐車支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための駐車支援装置は、乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、前記福祉車両の外部における前記乗降状態の前記補助装置を利用した乗降のための乗降スペースを記憶する記憶部と、前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記乗降スペースを重ねて表示部に表示する実行部と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、表示部に表示される福祉車両周辺の映像と乗降スペースとを目視で確認しながら、同福祉車両の駐車を行うことができる。そのため、乗降スペースが確保されることを確認することによる安心感を乗員に与えつつ、福祉車両の駐車を容易に実行することができる。
【0009】
前記課題を解決するための駐車支援装置は、乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、前記補助装置が前記通常状態から前記乗降状態に切り替えられるときにおける前記補助装置の移動軌跡を記憶する記憶部と、前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記移動軌跡を重ねて表示部に表示する実行部と、を有する。
【0010】
上記構成によれば、表示部に表示される福祉車両周辺の映像と補助装置の移動軌跡とを目視で確認しながら、同福祉車両の駐車を行うことができる。そのため、補助装置の移動軌跡を確認することによる安心感を乗員に与えつつ、福祉車両の駐車を容易に実行することができる。
【0011】
前記課題を解決するための駐車支援装置は、乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、前記補助装置は、前記福祉車両の内部に全体が収容された通常状態から前記福祉車両の外部に一部が突出する乗降状態に切り替えられるものであり、前記福祉車両の外部における前記乗降状態の前記補助装置を利用した乗降のための乗降スペースを記憶する記憶部と、前記福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、前記撮影部によって撮影された映像に、前記記憶部に記憶された前記乗降スペースと前記福祉車両の操舵角から予測される同福祉車両の移動軌跡とを重ねて表示部に表示する実行部と、を有する。
【0012】
上記構成によれば、いずれも表示部に表示される福祉車両周辺の映像と、乗降スペースと、予測される同福祉車両の移動軌跡とを目視で確認しながら、同福祉車両の駐車を行うことができる。そのため、福祉車両の移動軌跡と乗降スペースとを確認することによる安心感を乗員に与えつつ、福祉車両の駐車を容易に実行することができる。
【0013】
上記駐車支援装置において、前記補助装置は、前記福祉車両の後方に設置されて前記福祉車両の後方から車椅子ごと乗員を乗降可能にするスロープである。
上記構成によれば、スロープを車両後方に設置して車両後方から車椅子ごと乗員を乗降可能にするタイプの福祉車両において、その駐車を容易に実行することができる。
【0014】
上記駐車支援装置において、前記補助装置は、前記福祉車両の後部に設けられて車椅子ごと乗員を乗降可能にする昇降リフトである。
上記構成によれば、車両後部に設けられた昇降リフトによって車椅子ごと乗員を乗降可能にするタイプの福祉車両において、その駐車を容易に実行することができる。
【0015】
上記駐車支援装置において、前記補助装置は、前記乗降状態において、前記福祉車両の座席の一部が同福祉車両の側方から車幅方向に向けて前記福祉車両の外部に突出した状態になるものである。
【0016】
上記構成によれば、乗降状態において、座席の一部が福祉車両の側方から車幅方向に向けて外部に突出した状態になるタイプの福祉車両において、その駐車を容易に実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、福祉車両の駐車を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の駐車支援装置が適用される車両の二列目座席が通常状態であるときの概略構成図。
図2】同車両の二列目座席が乗降状態であるときの概略構成図。
図3】駐車支援装置の各構成の配置態様を示す概略構成図。
図4】駐車支援装置の構成を示すブロック図。
図5】駐車支援制御の実行時における車両の移動態様の説明図。
図6】駐車時におけるディスプレイの表示内容の一例を示す略図。
図7】駐車支援制御処理の実行手順を示すフローチャート。
図8】他の実施形態の駐車支援装置におけるディスプレイの表示内容の一例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、駐車支援装置の一実施形態について説明する。
図1および図2に示すように、車両10は、運転席11や助手席12、それら運転席11および助手席12の後方において車幅方向に間隔を置いて並ぶ一対の二列目座席13R,13Lを有している。車両10は、下肢の不自由な人(障がい者や高齢者など)の乗降を補助する補助装置20を有する福祉車両である。
【0020】
補助装置20は、図2中に矢印M1で示すように、車両10の左側の二列目座席13Lを同車両10の停止時において移動させるものである。補助装置20は、二列目座席13Lを、車室内において乗員が前方を向いて着座することの可能な通常状態(図1に示す状態)と、車両10の左側からの乗員の着座および離座が可能な乗降状態(図2に示す状態)とのいずれかに切り替える。なお乗降状態では、二列目座席13Lにおける着座方向前側の部分が車両10の外部に突出した状態になる。
【0021】
補助装置20は、二列目座席13Lを移動させるための作動部21を有している。作動部21は動力源としてのモータや二列目座席13Lを案内する案内機構(いずれも図示略)などを有している。
【0022】
車両10には補助装置20を操作するための操作部22が設けられている。操作部22は、二列目座席13Lを通常状態にする際に操作される格納スイッチ23と、二列目座席13Lを乗降状態にする際に操作される展開スイッチ24とを有している。
【0023】
補助装置20は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成される電子制御装置(シート制御装置25)を有している。シート制御装置25には、作動部21が接続されるとともに、各スイッチ23,24の出力信号が取り込まれている。シート制御装置25は、各スイッチ23,24の出力信号をもとに各種の演算を行うとともに、その演算結果に基づき作動部21の作動制御を実行する。
【0024】
作動部21の作動制御では、作動部21の作動による二列目座席13Lの移動中において各スイッチ23,24のいずれかが操作された場合に、同作動部21の作動が停止されるようになっている。本実施形態では、こうした各スイッチ23,24の操作を通じて、乗降状態になったときの二列目座席13Lの位置を微調整することが可能になっている。
【0025】
シート制御装置25はメモリ26を有している。このメモリ26には、補助装置20の前回作動時において二列目座席13Lが乗降状態になったときの同二列目座席13Lの移動位置(調整位置PA)が記憶されている。そして、二列目座席13Lを乗降状態にするべく展開スイッチ24が操作された場合には、メモリ26に記憶されている調整位置PAまで二列目座席13Lを移動させるべく、作動部21の作動制御が実行される。
【0026】
本実施形態の車両10は、駐車を支援する駐車支援機能を有している。
以下、この駐車支援機能を実現するための構成について具体的に説明する。
図3および図4に示すように、車両10には周囲の障害物を検知するための超音波センサが複数(本実施形態では、12個)取り付けられている。具体的には、車両10の四隅にはそれぞれクリアランスソナー31が取り付けられている。これらクリアランスソナー31によって、車両10の斜め前方や斜め後方の障害物が検出される。また車両10の前部には2つのフロントセンサ32が車幅方向に間隔を置いて取り付けられている。フロントセンサ32によって車両10の前方の障害物が検出される。さらに車両10の後部には2つのリアセンサ33が車幅方向に間隔を置いて取り付けられている。リアセンサ33によって車両10の後方の障害物が検出される。また車両10の両側部には、それぞれ前後方向に間隔を置いて2つずつ、合計4つのサイドセンサ34が取り付けられている。車両10の右側のサイドセンサ34によって右側の障害物が検出されるとともに、車両10の左側のサイドセンサ34によって左側の障害物が検出される。
【0027】
車両10における運転席11(図1参照)の近傍には駐車支援スイッチ35が取り付けられている。駐車支援スイッチ35は、駐車支援機能の1つである自動駐車の実行を選択する際に、乗員によって操作される操作スイッチである。
【0028】
また車両10における運転席11の近傍には表示部としてのディスプレイ36が取り付けられている。ディスプレイ36はタッチパネル式のものであり、このディスプレイ36には車両10の運転中において適宜のタイミングで各種の操作スイッチが表示されるようになっている。
【0029】
車両10には、ステアリングホイール14(詳しくは、ステアリングシャフト)を回転駆動するためのアクチュエータ37が設けられている。
車両10は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成される電子制御装置(車両制御装置30)を有している。この車両制御装置30には、クリアランスソナー31の出力信号や各センサ32,33,34の出力信号が取り込まれるとともに、ディスプレイ36が接続されている。そして車両制御装置30は、各センサの出力信号や各操作スイッチの操作状況をもとに各種の演算を行うとともに、その演算結果に基づき上記アクチュエータ37の作動制御を実行する。
【0030】
車両制御装置30は記憶部としてのメモリ38を有している、このメモリ38には、車両10の外部において前記補助装置20を利用した乗降のために必要になるスペース(乗降スペースSB)が記憶されている。図2に示すように、乗降スペースSBは、車両10の外部において二列目座席13Lが移動する軌跡であるスペースSP1や、車両10の外部における二列目座席13Lに対する着座や離座に必要なスペースSP2、車両10の外部において乗降状態の二列目座席13Lの近くにまで車椅子を走行させるために必要なスペースSP3を含んでいる。本実施形態では、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果から上記スペースSP1,SP2,SP3からなるスペース(線L1と車体とに挟まれた部分)の適正値が予め求められており、同スペースが上記乗降スペースSBとして車両制御装置30のメモリ38に記憶されている。
【0031】
次に、車両10の駐車を支援する駐車支援制御の実行態様について説明する。
図5に一例を示すように、駐車支援制御の実行に先立ち、駐車スペースSPよりも手前の位置P1に車両10が停止される。そして、この位置P1において駐車支援スイッチ35がオン操作される。これにより、駐車支援制御の実行が開始される。
【0032】
駐車支援制御では先ず、車両10を駐車するための駐車スペースSPの計測が行われる。具体的には、運転者によるステアリングホイール14、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作を通じて、次のように車両10が走行される。すなわち、図5中に白抜きの矢印で示すように、駐車スペースSPの前方側(図5における左側)の位置P2を車両10に通過させた後に、駐車スペースSPから離間させる方向にステアリングホイール14を操作した状態で若干走行させた位置P3において同車両10を停止させる。こうした車両10の走行に合わせて、クリアランスソナー31、フロントセンサ32、リアセンサ33およびサイドセンサ34によって車両10の周辺の障害物との距離が計測される。そして、そのときどきの車両10の位置と上記距離との関係をもとに、駐車スペースSPについての路面平面上の2次元の位置データが作成されて車両制御装置30のメモリ38に記憶される。本実施形態では、車両制御装置30が、車両10を駐車するための駐車スペースSPを計測する計測部に相当する。
【0033】
また、このときの車両10の停止位置(図5における位置P3)と上記駐車スペースSPとの関係をもとに、車両10を駐車スペースSPに納めることの可能な走行ルートRTが算出されて、車両制御装置30のメモリ38に記憶される。なお本実施形態では、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに車両10の停止位置と駐車スペースSPと同停止位置からの駐車スペースSPへの駐車に適した車両10の走行ルートRTとの関係が予め求められており、その関係が車両制御装置30のメモリ38に記憶されている。
【0034】
そして、駐車スペースSPの計測と走行ルートRTの算出とが完了すると、車両10の操舵角を自動的に制御する自動駐車制御の実行が開始される。この自動駐車制御では、運転者によるアクセルペダルやブレーキペダルの操作に合わせてアクチュエータ37の作動制御が実行されて、車両10が上記走行ルートRTをトレースするように、車両10の操舵角が自動的に制御される。この自動駐車制御を通じて、運転者がステアリングホイール14を操作せずとも、アクセルペダルおよびブレーキペダルを操作することによって、車両10が駐車スペースSPに自動的に駐車される。
【0035】
図6に示すように、本実施形態の車両10は、駐車支援機能の1つとして、シフトレバーがリバース位置に操作されたときに車両10を上空から見下ろしたように見える映像をディスプレイ36に表示する機能(いわゆるパノラミックビュー機能)を有している。このパノラミックビュー機能により、車両10の駐車時において運転席11から周囲の状況をリアルタイムに見渡すことができるため、同車両10の駐車を容易に行うことができるようになる。
【0036】
図3および図4に示すように、車両10には周囲の映像を撮影する撮影部としての4つのカメラが取り付けられている。具体的には、車両10の前部には前方の映像を撮影するためのフロントカメラ39が設けられており、車両10の後部には後方の映像を撮影するためのリアカメラ40が設けられている。また、車両10の右側のサイドミラー15Rには右側の映像を撮影するためのサイドカメラ41Rが設けられており、車両10の左側のサイドミラー15Lには右側の映像を撮影するためのサイドカメラ41Lが設けられている。これらカメラ39,40,41R,41Lの出力信号は車両制御装置30に取り込まれている。ディスプレイ36に表示される上記映像は、各カメラ39,40,41R,41Lによって撮影された映像をもとに車両制御装置30の演算処理を通じて作成される。
【0037】
また図6に示すように、本実施形態の車両10では、ディスプレイ36に上記映像を表示させることに加えて、前記補助装置20を利用した乗降のために必要になるスペース(後述する乗降スペースSR)を表示させるようにしている。具体的には、乗降スペースSRの車幅方向における外側の外郭線(図6における線L1)がディスプレイ36に表示される。これにより、ディスプレイ36に表示される車両10周辺の映像と乗降スペースSRとを目視で確認しながら、同車両10の駐車を行うことができる。そのため、乗降スペースSRが確保されることを確認しつつ、車両10の駐車を容易に実行することができる。
【0038】
さらに本実施形態では、乗降スペースを確保した状態での車両10の駐車を容易にするために、駐車支援制御を、車両制御装置30のメモリ38に記憶された乗降スペースSBに基づき実行するようにしている。
【0039】
以下、本実施形態の駐車支援制御にかかる処理(駐車支援制御処理)の実行手順を、その作用効果とともに、図7を参照しつつ詳細に説明する。なお図7のフローチャートに示される一連の処理は、駐車支援制御処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として車両制御装置30によって実行される。本実施形態では、車両制御装置30が、乗降スペースSBに基づいて車両10の駐車支援を実行する実行部に相当する。
【0040】
図7に示すように、駐車支援制御の実行を開始するべく駐車支援スイッチ35がオン操作されると(ステップS11:YES)、駐車スペースSPを計測するための空間認識処理が実行される(ステップS12)。空間認識処理では、運転者の操作による車両10の走行に合わせて、前述した態様で駐車スペースSPを計測する処理が実行される。
【0041】
その後、車両制御装置30のメモリ38に記憶されている乗降スペースSBとシート制御装置25のメモリ26に記憶されている調整位置PAとに基づいて乗降スペースSRが算出(設定)される(ステップS13)。詳しくは、シート制御装置25のメモリ26に記憶されている調整位置PAが読み込まれるとともに、同調整位置PAによって乗降スペースSBを補正した値が最終的な乗降スペースSRとして算出されて、車両制御装置30のメモリ38に記憶される。
【0042】
なお本実施形態では、発明者による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに乗降スペースSBと調整位置PAと補助装置20を利用した乗降のために必要になるスペースとの関係が予め求められており、その関係が車両制御装置30のメモリ38に記憶されている。ステップS13の処理では、この関係から、乗降スペースSBと調整位置PAとに基づき乗降スペースSRが算出される。乗降スペースSRとしては、具体的には、調整位置PAが二列目座席13Lの車外への張り出し量が大きいことを示す位置であるときほど車幅方向の幅が大きくなるように乗降スペースSBを補正した値が算出される。本実施形態では、車両制御装置30が設定部に相当する。
【0043】
ここで本実施形態の車両10では、乗降状態における二列目座席13Lの位置を微調整することによって、補助装置20を利用した乗降に必要なスペースが変化してしまう。本実施形態では、駐車支援制御において用いられる乗降スペースSRが調整位置PAに応じて補正(可変設定)されるため、そうした乗降のために必要になるスペースの変化に合わせて車両10の駐車支援を行うことができるようになる。
【0044】
その後、乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車が可能であるか否かが判断される(ステップS14)。具体的には、車両10の平面視での外形に上記乗降スペースSRを付与したスペースと上記駐車スペースSPとを比較することによって、車両10および乗降スペースSRが駐車スペースSPに納まるか否かが判断される。
【0045】
乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車が可能であると判断される場合には(ステップS14:YES)、車両10および乗降スペースSRが駐車スペースSPに納まるようになる前記走行ルートRTが算出されて、同走行ルートRTをもとに自動駐車制御が実行される(ステップS15)。このように本実施形態によれば、十分に大きな駐車スペースがある場合には、乗降スペースSRを確保した状態での車両10の自動駐車制御が実行される。
【0046】
一方、乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車が不能であると判断される場合には(ステップS14:NO)、乗降スペースSRを確保した状態での駐車が必要であるか否かが判断される(ステップS16)。具体的には、乗降スペースSRが必要であることを選択する第1スイッチと、乗降スペースSRが不要であることを選択する第2スイッチとがディスプレイ36に表示されるとともに、それらスイッチの操作状態が監視される。
【0047】
そして、第1スイッチが操作された場合には、乗降スペースSRを確保した状態での駐車が必要であると判断されるが(ステップS16:YES)、このとき乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車が不能であるため、自動駐車制御を実行することなく、本処理は一旦終了される。なお、この場合には駐車支援制御の実行を中止する旨の内容がディスプレイ36に表示される。これにより、運転者に、別の場所での駐車支援の実行が促される。
【0048】
上記第2スイッチが操作された場合には、乗降スペースSRを確保した状態での駐車が不要であるとして(ステップS16:NO)、乗降スペースSRを確保しない状態での駐車が可能であるか否かが判断される(ステップS17)。具体的には、車両10の平面視での外形と上記駐車スペースSPとを比較することによって、車両10が駐車スペースSPに納まるか否かが判断される。
【0049】
そして、車両10が駐車スペースSPに納まる場合には、乗降スペースSRを確保しない状態での駐車が可能であると判断される(ステップS17:YES)。この場合には乗降スペースSRを考慮することなく、車両10が駐車スペースSPに納まるようになる前記走行ルートRTが算出されて、同走行ルートRTをもとに自動駐車制御が実行される(ステップS18)。このように本実施形態によれば、乗降スペースSRを確保できない程度に駐車スペースSPが小さい場合であっても、車両10が駐車スペースSPに納まる態様での自動駐車制御を実行することができる。
【0050】
なお、車両10が駐車スペースSPに納まらない場合には(ステップS17:NO)、乗降スペースSRが確保されない状態での車両10の駐車さえも不能であるとして、自動駐車制御を実行することなく、本処理は一旦終了される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)車両制御装置30のメモリ38に記憶された乗降スペースSBに基づいて車両10の駐車支援が実行される。これにより、車両10の外部における乗降スペースSRを考慮しつつ車両10の駐車支援を実行することができるため、駐車支援を通じて乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車を容易に行うことができる。
【0052】
(2)車両10の操舵角を自動的に制御する自動駐車制御を車両10の駐車支援として実行するようにしたため、乗降スペースSRを確保した状態での車両10の自動駐車を容易に行うことができる。
【0053】
(3)十分に大きな駐車スペースSPがある場合には、乗降スペースSRを確保した状態での車両10の自動駐車制御を実行することができる。しかも、乗降スペースSRを確保できない程度に駐車スペースSPが小さい場合であっても、車両10が駐車スペースSPに納まる態様での自動駐車制御を実行することができる。このように本実施形態によれば、車両10の自動駐車制御を高い自由度で実行することができる。
【0054】
(4)ディスプレイ36に表示される車両10周辺の映像と乗降スペースSRとを目視で確認しながら、同車両10の手動操作による駐車や自動駐車制御を通じた駐車を行うことができる。そのため、乗降スペースSRが確保されることを確認することによる安心感を乗員に与えつつ、車両10の駐車を容易に実行することができる。
【0055】
(5)駐車支援制御に用いる乗降スペースSRを調整位置PAに応じて可変設定するようにした。そのため、二列目座席13Lの位置の微調整に起因する乗降に必要なスペースの変化に合わせて車両10の駐車支援を行うことができる。したがって、駐車支援を通じて乗降スペースSRを確保した状態での車両10の駐車をより容易に行うことができる。
【0056】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・車両制御装置30のメモリ38に記憶されている乗降スペースSBや調整位置PAによって補正された乗降スペースSRを、手動操作によって変更(可変設定)できるようにしてもよい。ここで、補助装置20を利用した乗降のためのスペースの大きさは、補助装置20を利用して車両10に乗降する人の体格や、その人が使用する車椅子のサイズなどによって異なる。この点、上記構成によれば、乗降スペースSB,SRを使用者が必要とする大きさに設定することができるため、この乗降スペースSB,SRをもとに車両10の駐車を好適に行うことができる。上記構成の一例を図8に示す。図8に示す例では、ディスプレイ36に、車両10および乗降スペースSRが表示されることに加えて、同乗降スペースSRを拡張する際に操作される拡張スイッチ51と、乗降スペースSRを縮小する際に操作される縮小スイッチ52とが表示されている。そして、それらスイッチ51,52の操作を通じて、乗降スペースSRの大きさをディスプレイ36上で確認しつつ変更可能になっている。
【0057】
・乗降スペースSRの車幅方向外側の外郭線L1(図6参照)をディスプレイ36に表示させることに代えて、乗降スペースSRの全体をハッチングをかけた状態でディスプレイ36に表示させるなどしてもよい。ディスプレイ36に乗降スペースSRを表示させる態様は任意に変更することができる。
【0058】
・上記実施形態の運転支援装置は、リアカメラ40によって撮影された車両後方の映像をディスプレイ36に表示するバックモニター機能を有する車両にも適用することができる。この場合には、ディスプレイ36に、操舵角等から予測される車両の移動軌跡と、乗降スペースSRの移動軌跡とを合わせて表示させることが好ましい。
【0059】
・駐車支援制御の実行開始前や実行開始時に、乗降スペースSRを確保した状態での自動駐車、および乗降スペースSRを確保しない状態での自動駐車の何れを実行するのかを選択するようにしてもよい。こうした構成は、車両10に、乗降スペースSRを確保した状態での自動駐車を選択する際に操作される確保スイッチと、乗降スペースSRを確保しない状態での自動駐車を選択する際に操作される非確保スイッチとを設けることによって実現することができる。
【0060】
・アクセル操作、ブレーキ操作、および操舵角操作を自動的に制御するようにしたり、前進/後進の切替操作、アクセル操作、ブレーキ操作、および操舵角操作を自動的に制御するようにしたりするなど、自動駐車制御の実行態様は任意に変更可能である。同構成によっても、自動駐車制御を含む駐車支援制御を乗降スペースSRに基づき実行することにより、乗降スペースSRを確保した状態での車両の自動駐車を容易に行うことができる。
【0061】
・乗降スペースSBに基づいて駐車支援制御を実行する構成、およびディスプレイ36に乗降スペースSRを表示させる構成のうちの一方を省略してもよい。
・車両制御装置30のメモリ38に記憶される乗降スペースSBとしては、スペースSP1,SP2,SP3からなるスペースを設定することに限らず、任意の大きさのスペースを設定することができる。例えばスペースSP1,SP2,SP3のうちのいずれか2つからなるスペースを乗降スペースSBに設定したり、スペースSP1,SP2,SP3のうちのいずれか1つを乗降スペースSBに設定したりすることができる。
【0062】
・乗降スペースSBを調整位置PAによって補正して最終的な乗降スペースSRを設定する構成を省略してもよい。この場合には、駐車支援制御処理の各処理において用いられる乗降スペースやディスプレイ36に表示させる乗降スペースとして、車両制御装置30のメモリ38に記憶された乗降スペースSBを採用すればよい。
【0063】
・上記実施形態にかかる駐車支援装置は、二列目座席13Lを手動で移動させることによって通常状態にしたり乗降状態にしたりするタイプの補助装置を有する福祉車両にも適用することができる。
【0064】
・上記実施形態にかかる駐車支援装置は、乗降用のスロープを車両後方に設置して車両後方から車椅子ごと乗員を乗降可能にするタイプ(スロープタイプ)の福祉車両や、車両後部に設けられた昇降リフトによって車椅子ごと乗員を乗降可能にするタイプ(リアリフトタイプ)の福祉車両などにも適用することができる。こうした構成では、車両のタイプに見合う乗降スペースを同車両の記憶部に記憶させておくようにすればよい。
【0065】
(課題を解決するための手段に関する付記)
上記課題を解決するための手段は、上記実施形態およびその変形例から把握できる技術思想である以下の(付記項1)~(付記項5)を含む。
【0066】
(付記項1)
乗降を補助する補助装置を有する福祉車両の駐車を支援する駐車支援装置において、前記福祉車両の外部における前記補助装置を利用した乗降のための乗降スペースを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記乗降スペースに基づいて前記福祉車両の駐車支援を実行する実行部と、を有することを特徴とする駐車支援装置。
【0067】
上記付記項1によれば、福祉車両の外部における乗降スペースを考慮しつつ、福祉車両の駐車支援を実行することができる。そのため、駐車支援を通じて、乗降スペースを確保した状態での福祉車両の駐車を容易に行うことができる。
【0068】
(付記項2)
前記実行部は、前記駐車支援として、前記福祉車両の操舵角を自動的に制御する自動駐車制御を実行する、付記項1に記載の駐車支援装置。
【0069】
上記付記項2によれば、乗降スペースを確保した状態での福祉車両の自動駐車を容易に行うことができる。
(付記項3)
前記福祉車両は、同福祉車両を駐車するための駐車スペースを計測する計測部を有し、前記実行部は、前記計測部によって計測された前記駐車スペースに前記福祉車両および前記乗降スペースが納まる場合には、前記福祉車両および前記乗降スペースが前記駐車スペースに納まるように前記自動駐車制御を実行し、前記計測部によって計測された前記駐車スペースに前記福祉車両および前記乗降スペースが納まらない場合には、前記福祉車両が前記駐車スペースに納まるように前記自動駐車制御を実行する、付記項2に記載の駐車支援装置。
【0070】
上記付記項3によれば、十分に大きな駐車スペースがある場合には、乗降スペースを確保した状態での福祉車両の自動駐車を実行することができる。しかも、乗降スペースを確保できない程度に駐車スペースが小さい場合であっても、福祉車両が駐車スペースに納まる態様での自動駐車を実行することができる。このように上記構成によれば、福祉車両の自動駐車を高い自由度で実行することができる。
【0071】
(付記項4)
前記福祉車両は、同福祉車両の周辺の映像を撮影する撮影部と、該撮影部によって撮影された映像を表示する表示部と、を有し、前記実行部は、前記駐車支援として、前記撮影部によって撮影された映像とともに前記記憶部に記憶された前記乗降スペースを前記表示部に表示するものである、付記項1~付記項3のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【0072】
上記付記項4によれば、表示部に表示される福祉車両周辺の映像と乗降スペースとを目視で確認しながら、同福祉車両の駐車を行うことができる。そのため、乗降スペースが確保されることを確認することによる安心感を乗員に与えつつ、福祉車両の駐車を容易に実行することができる。
【0073】
(付記項5)
前記乗降スペースを可変設定する設定部を有する、付記項1~付記項4のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【0074】
乗降スペースの大きさは、補助装置を利用して福祉車両に乗降する人の体格や、その人が使用する車椅子のサイズなどによって異なる。この点、上記付記項5によれば、乗降スペースを使用者が必要とする大きさに設定することができるため、この乗降スペースをもとに福祉車両の駐車を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
10…車両、11…運転席、12…助手席、13R,13L…二列目座席、14…ステアリングホイール、15R,15L…サイドミラー、20…補助装置、21…作動部、22…操作部、23…格納スイッチ、24…展開スイッチ、25…シート制御装置、26…メモリ、30…車両制御装置、31…クリアランスソナー、32…フロントセンサ、33…リアセンサ、34…サイドセンサ、35…駐車支援スイッチ、36…ディスプレイ、37…アクチュエータ、38…メモリ、39…フロントカメラ、40…リアカメラ、41R,41L…サイドカメラ、51…拡張スイッチ、52…縮小スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8