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特開2022-188116アリルアルコール及びそれらのアシル化生成物のカルボニル化による不飽和カルボン酸の調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188116
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アリルアルコール及びそれらのアシル化生成物のカルボニル化による不飽和カルボン酸の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/12 20060101AFI20221213BHJP
   C07C 57/03 20060101ALI20221213BHJP
   C07D 307/92 20060101ALI20221213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C07C51/12
C07C57/03
C07D307/92
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022150915
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019546167の分割
【原出願日】2018-02-13
(31)【優先権主張番号】17157950.1
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴィース,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】パチェロ,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ペルツァー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲル,ヴォルフガング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低い温度、低い圧力及び/又は低い触媒充填量でのアリルアルコールのカルボニル化のための方法を提供する。
【解決手段】下式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールを、Pd、Ru、Rh、Ir、及びFeから選択される少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしてのトリアルキルホスフィン等の存在下で行い、下式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法である。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【化2】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、並びに、アリルアルコールに対して準化学量論量の、脂肪族C1~C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4~C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7~C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8~C20-ジカルボン酸の無水物、及び式(III.1)及び(III.2)
【化3】
(式中、
R3は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R4は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルであり、
R5は、C1~C5-アルキルである)
のアシル化アリルアルコールから選択される化合物A)の存在下で行い、
前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
【請求項2】
一般式(I)
【化4】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(IV.1)及び(IV.2)
【化5】
(式中、R6は、C1~C5-アルキルである)
の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で及び水の存在下で行い、前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
【請求項3】
一般式(I)
【化6】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【化7】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物B)
【化8】
(式中、
R10及びR11は、互いに独立して、C1~C6-アルキル、C1~C6-フルオロアルキル、又は非置換の若しくはブロモ、ニトロ及びC1~C4-アルキルから選択される置換基によって置換されているフェニルである)
の存在下で行い、
前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
【請求項4】
前記反応を、30バール(3MPa)以下の圧力で行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
カルボニル化を、添加されたハロゲン化水素酸の存在下で行わず、添加されたアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物又はハロゲン化アンモニウムの存在下で行わない、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
カルボニル化の反応混合物のハロゲン化物含有量が、一般式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールの総含有量に対して又は一般式(IV.1)及び(IV.2)のエステルの総含有量に対して、2mol%以下、好ましくは1mol%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物A)が、無水酢酸及び酢酸アリルから選択される、請求項1及び4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用される化合物A)が、カルボニル化のための反応体として使用される式(II.1)又は(II.2)のアルコールに由来する式(III.1)又は(III.2)のエステルである、請求項1及び4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応を、さらに4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジン、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬、好ましくは4-(ジメチルアミノ)ピリジンの存在下で行う、請求項1及び3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジン、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して0.01から5mol%、好ましくは0.05から2mol%、殊に0.1から1mol%の量で使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
遷移金属を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して又は化合物(IV.1)及び(IV.2)の総モル量に対して、0.5mol%以下、好ましくは0.3mol%以下の量で、前記反応のために使用する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
遷移金属が、Pd、Ru、Rh、Ir及びFeから選択され、好ましくは遷移金属としてPdを使用する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
有機リン化合物が、単座及び二座のホスフィンから、好ましくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、トリヘテロシクリルホスフィン及びトリヘタリールホスフィンから選択され、使用される有機リン化合物が、殊にトリフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
化合物A)の総量が、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して50mol%以下、好ましくは30mol%以下である、請求項1及び4から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応を、さらに4-(ジメチルアミノ)-ピリジン、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬以外の塩基の存在下で、好ましくは塩基性N-複素芳香族化合物、トリアルキルアミン、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩、殊にトリエチルアミンの存在下で行う、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応を、添加された非プロトン性有機溶媒の存在下で行う、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応を、80℃以下、好ましくは75℃以下の温度で行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応を、25バール(2.5MPa)以下、好ましくは20バール(2MPa)以下、殊に15バール(1.5MPa)以下の圧力で行う、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応のために使用される一般式(II.1)の化合物が、ネロリドール、リナロール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール及び1-ビニルシクロヘキサノールから選択される、請求項1及び3から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
E-ネロリドールを前記反応のために使用する、請求項1及び3から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
E-ネロリドールをカルボニル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチル-トリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩を80:20から50:50、好ましくは70:30から55:45の重量比で含む反応混合物を得る、請求項1及び3から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記反応のために使用される一般式(II.2)の化合物がファルネソールである、請求項1及び3から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸
【化9】
(式中、
R1及びR2は、異なる定義を有し、R1は、IUPACに従って、より高い優先度を有する)
を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
式(I)のこのE/Z異性体混合物を、1種の異性体の富化に供する、
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(1)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で、式(I-E)の3-(E)酸を少なくとも部分的に3-(E)エステルに変換する酵素触媒エステル化に供して、3-(E)エステル、式(I-E)の非変換3-(E)酸及び式(I-Z)の非変換3-(Z)酸を含む組成物を得;
(2)(1)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を得、また、3-(E)エステルを含む組成物を得;
(3)式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した(2)で得られた組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させ;並びに
(4)場合により、(2)で得られた3-(E)エステルを切断して、式(I-E)の3-(E)酸を得てもよい、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(i)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコールの存在下でエステル化に供して、3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを得;
(ii)(i)で得られた3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを、リパーゼが3-(E)エステルを少なくとも部分的に切断して式(I-E)の3-(E)酸をもたらすリパーゼ触媒酵素的加水分解に供して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iii)(ii)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸を含む組成物を得、また、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iv)(iii)で得られた非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物をエステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸又はその塩を富化した組成物を得;並びに
(v)(iv)で得られた式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させる、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させるための異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
(-)-アンブロクス(VIII)
【化10】
を調製するための方法であって、
a1)請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を得;
d1)(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を環化に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得るか;
又は
a2)請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を環化に供して、スクラレオリド(VII)を得;
d2)スクラレオリド(VII)を還元に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得る、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い温度、低い圧力及び/又は低い触媒充填量でアリルアルコールをカルボニル化するための方法に関する。代替実施形態において、アリルアルコールのアシル化生成物が、カルボニル化のために使用される。本発明は、これらのカルボニル化生成物の変換生成物、具体的には(-)-アンブロクスの調製にも関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコールのカルボニル化生成物は、多数の市販製品の調製のための貴重な中間体である。アリルアルコールであるネロリドール及びファルネソールのカルボニル化によって、例えば、カルボン酸を得ることが可能であり、このカルボン酸を、対応するアルコールへの還元後に環化することで、貴重なアロマケミカルを得ることができる。例えば、E-ネロリドールのカルボニル化による(3E,7E)-ホモファルネシル酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール
【0003】
【化1】
を得ることができ、後者をさらに環化に供することで、(-)-アンブロクス
【0004】
【化2】
を得ることができる。
【0005】
均一系及び不均一系触媒の存在下でアリルアルコールをカルボニル化してそれらのC1伸長直鎖カルボン酸又はカルボン酸エステルを得るための方法が、文献から知られている。しかしながら、これらの方法は、様々な理由から経済的に不利である。例えば、アリルアルコールの直接カルボニル化は、温度及び圧力に関する厳しい条件、並びに高い触媒充填量を要することが知られており、さらに、大抵の場合、高い圧力又は温度又は触媒充填量を用いる場合でも、ともかく高い転化率が達成可能なのは、ハロゲン化物含有添加剤を添加する場合のみである。したがって、アリルアルコールのカルボニル化生成物を経済的に有利に調製することができる方法が必要とされる。
【0006】
Bertleff, W.、Roeper, M.及びSava X. 2007は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、7巻、74~98ページ、2012、Wiley-VCHにおいて、工業関連のカルボニル化方法を記載している。
【0007】
Tsujiらは、J. Am. Chem. Soc. 86、1964、4350~4353において、塩化パラジウム(II)を用いたアリル化合物の触媒カルボニル化を記載している。具体的には、塩化アリル、アリルアルコール及び類似した化合物を有機溶媒中にてCOと反応させ、エタノールとともに対応するカルボン酸エステルを得る。溶媒としてのベンゼン中でアリルアルコールから3-ブテン酸無水物を得る。使用する塩化パラジウムの量は、100バール(10MPa)から150バール(15MPa)の圧力及び80℃超の温度で、アリル化合物に対して5mol%超である。
【0008】
B. Gabrieleらは、the Journal of Molecular Catalysis A、111、1996、43~48において、アリルアルコールをカルボニル化して不飽和酸又はエステルを得ることを記載している。変換は、2mol%から4mol%の使用量にてPd触媒を使用して、50~100バール(5~10MPa)の圧力及び80℃超の温度で、ジメチルアセトアミド又はメタノール/ジメチルアセトアミド混合物中にて行う。
【0009】
T. Mandaiは、Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis、E. Negishi編、Wiley-VCH、New York、2巻、2002、2505~2517における総説において、とりわけ均一系パラジウム触媒を用いるアリル化合物のカルボニル化を記載している。アリルアルコールのカルボニル化は、過酷な反応条件を必要とすることが指摘されている。同様に、構造異性化合物(A)及び(B)などのアセチル化アリルアルコールのカルボニル化は、一般に難しいことも明記されている。しかしながら、この文献の教示によると、変換は、触媒量のNaBrの存在下で成功する。
【0010】
【化3】
【0011】
ACS Catal.、4、2014、2977~2989は、総説において、同様に、均一系パラジウム触媒を用いるアリル化合物のカルボニル化を記載している。
【0012】
文献に記載されている通りの方法では、アリルアルコールの直接カルボニル化は、十分に高い反応速度を達成するために、高い圧力若しくは温度若しくは触媒充填量、又は添加剤としてのハロゲン化物の添加を要し、通常はこれらの変換増強手段の少なくとも2つの組合せをも必要とする。
【0013】
例えば、US 4,801,743は、150バール(15MPa)超の圧力及び80℃超の温度における、水の非存在下、並びに触媒活性量の、HF、HCl、HBr及びHIから選択されるハロゲン化水素の存在下での、不均一系Pd触媒を使用するアリルアルコール(2-プロペン-1-オール)のカルボニル化を記載している。
【0014】
EP 0428979 A2は、1から200バール(0.1から20MPa)のCO圧力及び10から250℃の温度における、HBr又はHIの存在下での、均一系Rh触媒を使用するアリルブテノール及びブテノールエステルのカルボニル化を記載している。
【0015】
前述の文献は、アリルアルコールをカルボニル化してそれらのC1伸長直鎖カルボン酸又はカルボン酸エステルを得るための方法を記載している。しかしながら、テルペン様ヒドロカルビル基を有するアリルアルコールのカルボニル化、具体的には、E/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸を得るためのリナロールのカルボニル化及びE/Z-ホモファルネシル酸を得るためのE-ネロリドール又はファルネソールのカルボニル化は、記載されていない。前述の文献に記載されている全ての方法は、それらを前記変換のために使用するには不適当だと思わせる1つ以上の不利な点も有する。例えば、前述の文献に記載されている触媒はあまりにも低い活性を有し、又は、アリルアルコール(具体的には、上述のテルペン様ヒドロカルビル基を有するアリルアルコール)全体を効果的、経済的にカルボニル化できるようにするためには、方法は、(酸、CO圧力、温度に関して)過度に厳しい反応条件を必然的に伴う。
【0016】
例えば、高圧操作を要する方法は、工業的に非常にコストがかかる。上述の方法の多くにおいて、使用される触媒の、カルボニル化されるべき基質に対する量も非常に高い。したがって、一般に生成物と一緒に排出される均一系触媒系を使用する場合、触媒リサイクル及び不可避の触媒損失の結果として高コストが生じる。添加されるハロゲン化水素酸及びその塩の使用もまた問題がある。これらの化合物の高い腐食性のため、特に高品質な鋼から作製された反応器の使用が必要とされる。さらに、この種類のプロセス条件は、E-ネロリドールからホモファルネシル酸への変換には不適当である。なぜなら、E-ネロリドールは、HIなどの強酸に対して十分な安定性を有していないからである。
【0017】
均一系触媒の存在下でE-ネロリドールをカルボニル化してホモファルネシル酸又はホモファルネシル酸アルキルエステルを得る方法は、原理上は公知である。
【0018】
WO 92/06063は、対応するアリルアルコールをカルボニル化することによって、例えば、触媒量の塩化パラジウム(II)を添加して(E)-ネロリドールをカルボニル化することによって、不飽和カルボン酸を調製する方法を記載している。
【0019】
【化4】
【0020】
こうして得られたカルボニル化生成物を還元してホモファルネソール又はモノシクロホモファルネソールを得ること、及びホモファルネソールを酸触媒環化して3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト-[2,1-b]-フラン、アンバーグリス様芳香料を得ることもまた記載されている。この方法の不利な点は、カルボニル化反応が、約70バール(7MPa)の高いCO圧力で起こることである。加えて、0.6mol%の高い触媒充填量が用いられる。
【0021】
EP 0146859 A2は、ハロゲン化パラジウム及び第3級有機ホスフィンの錯体を用いた、低級アルカノール(具体的にはメタノール)の存在下又は非存在下でのカルボニル化によって、4-置換ブタ-3-エン-1-カルボン酸及びそのエステルを調製するための方法を記載している。変換は、200から700バール(20から70MPa)の圧力及び50から150℃の温度で行われる。
【0022】
周囲圧力変換を可能にするCOの代替物がカルボニル化のために使用され得ることも知られている。WO 2015/061764及びTetrahedron: Asymmetry、20、2009、1637~1640は、E-ネロリドールの変換においてCO代替物としてN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMFDMA)を、Pdを触媒として使用すること、及び後続のメタノール中における加水分解によりホモファルネシル酸メチルエステルを得ることを記載している。しかしながら、こうした2段階プロセスは合成的に複雑であり、その上、使用されるCO代替物によりコストがかかるため、こうした2段階プロセスはアリルアルコールの工業規模のカルボニル化には非経済的である。
【0023】
アリルアルコールは、対応するアセテートに変換することができ、これらのアセテートは、比較的に温和な条件(100℃未満で、例えば30バール(3MPa)の圧力)下でのカルボニル化反応において基質として使用することができることも知られている。
【0024】
JOC、53 1988、3832~3828は、酢酸シンナミルから1-ナフトール誘導体へのPd又はPt触媒環化性カルボニル化を記載している。反応は、160℃及び60バール(6MPa)のCOで無水酢酸及びトリエチルアミンの存在下で行われる。無水酢酸の添加について示されている理由は、遊離1-ナフトールはシクロカルボニル化を阻害するため、中間体として形成された1-ナフトールを対応するアセテートに変換する必要性があることである。型に関しては、この反応は、Pd及び無水酢酸の存在下でのカルボニル化であるが、カルボン酸誘導体に至らない。
【0025】
Tetrahedron Letters、29、1988、4945~4948は、酢酸アリルをエタノール中で対応するC1伸長カルボン酸エステルへ変換することを記載している。変換は、30から80バール(3から8MPa)のCO及び50から80℃で行われる。しかしながら、変換は、塩基だけでなく反応を劇的に加速するといわれている触媒量の臭化物イオンの存在下で行われる。この文献は、さらに、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)などのPd(II)触媒を用いて達成された結果が不十分であったことを指摘している。
【0026】
JOC、58、1993、1538~1545は、酢酸アリルのPd(0)触媒アルコキシカルボニル化を記載している。この文献も、反応の加速のためにハロゲン化物イオンの存在が必要であることに言及している。対照的に、カルボニル化における低い反応性だけが酢酸アリルにより生じたものとみなされている。
【0027】
したがって、アリルアルコール、具体的にはE-ネロリドールを直接カルボニル化してホモファルネシル酸(又は対応する塩若しくはエステルなどのホモファルネシル酸の誘導体)を得るための、温和な反応条件下で効果的及び経済的に進行する具体的な方法は、文献にない。これは、30バール(3MPa)以下のCOの領域における圧力で、並びに/又は100℃未満の温度で、並びに/又はハロゲン化水素酸、及びアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくはアンモニウムのハロゲン化物から選択されるハロゲン化合物の非存在下で、或いはこれらの手段の少なくとも2つの組合せで、変換が進行することを意味すると理解される。
【発明の概要】
【0028】
驚くべきことに、触媒量のカルボン酸無水物(例えばAc2O(無水酢酸))の添加だけでも、温和な反応条件下で及び低い触媒充填量で、アリルアルコールを対応するカルボン酸に完全にカルボニル化するのに十分であることが見出された。特に有利な結果はここで、アルキルピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン又はジアルキルアミノピリジン、具体的にはDMAP(4-ジメチルアミノピリジン)などの求核試薬を添加することで達成される。特に驚くべきことに、カルボン酸無水物を添加せず、触媒量のアリルアルコールのアシル化生成物を添加するだけでも、反応を何桁も加速するのに十分である。これらのアリルアルコールのアシル化生成物は、基質自体以外のアリルアルコールとカルボン酸のエステル(例えば酢酸アリル)であってもよい。従来技術に照らして、当業者は、ともかくアリルアルコールのアシル化生成物の使用を考える場合、少なくとも化学量論量のアシル化アリルアルコール(又はアシル化剤)を使用してきた。この反応レジーム(regime)が触媒量の活性化試薬について記載されている通りに作用するという事実は、公知でなく、自明でなかったが、全体的なプロセスの効率には非常に有利である。
【0029】
したがって、本発明の目的は、アリルアルコール又はそのアシル化生成物をカルボニル化して不飽和カルボン酸又はその塩を得るための方法であって、前述の不利な点が回避された方法を提供することである。
【0030】
具体的な実施形態において、本発明の目的は、E-ネロリドールをカルボニル化するための方法であって、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸(ホモファルネシル酸)及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む生成混合物が得られる、方法を提供することである。
【0031】
驚くべきことに、C1伸長不飽和カルボン酸又は対応するカルボン酸塩を得るためのアリルアルコール及びアリルアルコールの誘導体のカルボニル化は、100℃以下の温度で行うことができることがここで見出された。有利には、C1伸長不飽和カルボン酸又は対応するカルボン酸塩を得るためのアルコール及びアリルアルコールの誘導体のカルボニル化は、100℃以下の温度で及び低い圧力で、例えば30バール(3MPa)以下の圧力で行うことができることが見出された。有利には、C1伸長不飽和カルボン酸又は対応するカルボン酸塩を得るためのアルコール及びアリルアルコールの誘導体のカルボニル化は、100℃以下の温度で、同時に0.3mol%未満の低い触媒充填量で、及び同時に低い圧力で、例えば30バール(3MPa)以下の圧力で行うことができることがさらに見出された。変換は、促進用ハロゲン化物を添加することなく行うこともできることがさらに見出された。
【0032】
本発明は、第1に、一般式(I)
【0033】
【化5】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【0034】
【化6】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、反応を、さらに、リガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、並びに、アリルアルコールに対して準化学量論量の、脂肪族C1~C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4~C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7~C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8~C20-ジカルボン酸の無水物、及び式(III.1)及び(III.2)
【0035】
【化7】
(式中、
R3は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R4は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルであり、
R5は、C1~C5-アルキルである)
のアシル化アリルアルコールから選択される化合物A)の存在下で行い、
反応を100℃以下の温度で行う、方法を提供する。
【0036】
一般式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールを該反応のために化合物A)の存在下で使用する本発明の方法の実施形態は、以下「変形1」とも称される。
【0037】
変形1の具体的な実施形態は、一般式(I)
【0038】
【化8】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【0039】
【化9】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、並びに、アリルアルコールに対して準化学量論量の、脂肪族C1~C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4~C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7~C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8~C20-ジカルボン酸の無水物及び式(III.1)及び(III.2)
【0040】
【化10】
(式中、
R3は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R4は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルであり、
R5は、C1~C5-アルキルである)
のアシル化アリルアルコールから選択される化合物A)の存在下で行い、
反応を、100℃以下の温度で及び30バール(3MPa)以下の圧力で行う、方法である。
【0041】
代替実施形態において、カルボニル化のためにアシル化アリルアルコールを使用することが可能である。この変形においても、有利には温和な反応条件下で反応を行うことが可能である。本発明によると、この変形における変換は、水の存在下で行われる。したがって、本発明は、一般式(I)
【0042】
【化11】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(IV.1)及び(IV.2)
【0043】
【化12】
(式中、R6は、C1~C5-アルキルである)
の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で及び水の存在下で行い、反応を100℃以下の温度で行う、方法をさらに提供する。
【0044】
一般式(IV.1)及び(IV.2)の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールを反応のために使用する本発明の方法の実施形態は、以下「変形2」とも称される。
【0045】
変形2の具体的な実施形態は、一般式(I)
【0046】
【化13】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(IV.1)及び(IV.2)
【0047】
【化14】
(式中、R6は、C1~C5-アルキルである)
の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で及び水の存在下で行い、反応を、100℃以下の温度で及び30バール(3MPa)以下の圧力で行う、方法である。
【0048】
さらなる代替実施形態は、一般式(I)
【0049】
【化15】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニル、非置換C5~C12-シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C12-シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているアリールであり、
R2は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【0050】
【化16】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物B)
【0051】
【化17】
(式中、
R10及びR11は、互いに独立して、C1~C6-アルキル、C1~C6-フルオロアルキル、又は非置換の若しくはブロモ、ニトロ及びC1~C4-アルキルから選択される置換基によって置換されているフェニルである)
の存在下で行い、反応を100℃以下の温度で行う、方法に関する。具体的には、反応は、100℃以下の温度及び30バール(3MPa)以下の圧力で行う。
【0052】
この変形においても、有利には温和な反応条件下で反応を行うことが可能である。一般式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールを化合物B)の存在下で反応のために使用する本発明の方法の実施形態は、以下「変形3」とも称される。
【0053】
本発明は、(-)-アンブロクス(VIII)
【0054】
【化18】
を調製するための方法であって、
a1)上記で定義されている通りの方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を得;
d1)(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を環化に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得るか;
又は
a2)上記で定義されている通りの方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を環化に供して、スクラレオリド(VII)を得;
d2)スクラレオリド(VII)を還元に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得る、
方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
一般式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物を調製するための本発明の方法は、以下の利点を有する:
- 方法の変形1は、アリルアルコールの、それらのC1伸長不飽和カルボン酸又は対応するカルボン酸塩への効果的及び経済的な変換を可能にする。従来技術から公知の方法におけるよりもはるかに温和な反応条件(同時に触媒充填量が非常に低い)がここで可能である。具体的には、公知の方法におけるよりも低い温度及び/又は低い圧力及び/又は低い触媒充填量で、変換が可能である。
- 本発明の方法の変形1において、触媒量(即ち、準化学量論量)の無水物の存在下での変換は、アリルアルコールを温和な反応条件下で及び低い触媒充填量で対応するカルボン酸に完全にカルボニル化するのに十分であることが、特に有利である。特に驚くべきことに、触媒量の他の無水物形成剤(例えば、酢酸アリル(酢酸プロペニル)又はアリルアルコールの異なるアシル化生成物)の添加だけでも、反応を明らかに加速するのに十分である。追加の無水物の添加はここで必要とされない。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、これは、反応条件下で、添加されたアシル化アリルアルコール(例えば、酢酸アリルCH2=CHCH2OAc)の最初のカルボニル化が起きて無水物中間体(例えば、CH2=CHCH2C(O)OAc)が得られ、形成された無水物がその場で、カルボン酸(例えば、CH2=CHCH2CO2H)を排出しながら、使用されたアリルアルコール(例えば、ネロリドール)を活性化し、同時に、新たなアシル化アリルアルコール(例えば、酢酸ネロリジル)を生成し、新たなアシル化アリルアルコールは同様に再びカルボニル化することができ、対応する無水物中間体(酢酸及びホモファルネシル酸の混合無水物)が得られるという事実に起因し得ると考えられる。
- 方法の変形1において触媒量の求核試薬を使用可能であることは、全体的なプロセスの効率に非常に有利である。
- 変形1に従う本発明の方法は、単一の反応段階において、即ち中間体の単離なしに、アリルアルコールをカルボニル化して対応するカルボン酸又はカルボン酸塩を得ることを可能にする。例えば、化学量論量のアシル化剤を使用する第1の反応ステップにおいて使用されるアリルアルコールを活性化する必要はない。
- カルボニル化のために使用されるアリルアルコールが、さらなる内部二重結合を含む場合、これらは基本的にカルボニル化も異性化もされない。
- 方法の代替的な変形2は、アシル化アルコールのカルボニル化に基づき、それらのC1伸長不飽和カルボン酸を温和な反応条件下にて水の存在下でもたらす。
- 変形1及び2に従う方法は、添加されたハロゲン化水素酸及びその塩の使用を省くことを可能にする。
- 変形1に従う方法は、具体的には、テルペン様ヒドロカルビル基を有するアリルアルコールのカルボニル化、具体的には、温和な反応条件下でのE/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸を得るためのリナロールのカルボニル化及びE/Z-ホモファルネシル酸を得るためのE-ネロリドール又はファルネソールのカルボニル化を可能にする。
- 変形1に従う方法によって、有利には、E-ネロリドールをカルボニル化して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸(ホモファルネシル酸)及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩で構成される反応混合物を得ることが可能である。
【0056】
一般式(I)、(II.2)、(III.2)及び(IV.2)
【0057】
【化19】
の化合物において、波状の結合は、化合物が純粋なZ異性体、純粋なE異性体又は任意のE/Z混合物であり得ることを示すことを意図している。一般式(I)、(II.2)及び(IV.2)の化合物において、E及びZ異性体は、2個の異なる置換基R1及びR2が二重結合に結している場合にのみ存在することができることは、当業者にとって自明である。一般式(III.2)の化合物において、E及びZ異性体は、2個の異なる置換基R3及びR4が二重結合に結合している場合にのみ存在し得る。二重結合での立体化学的配置は、Cahn-Ingold-Prelog規則を使って確定される(E/Z表記法、https://en.wikipedia.org/wiki/E-Z_notationを参照されたい)。
【0058】
本発明との関連において、一般式(I)のE/Z混合物は、式(I)のE/Z酸混合物とも称される。一般式(I)のE/Z酸混合物において、R1及びR2は、異なる意味を有する。式(I)のE/Z酸混合物は、式Iの不飽和カルボン酸の3-(E)異性体及び式Iの不飽和カルボン酸の3-(Z)異性体を含む。式Iの不飽和カルボン酸の3-(E)異性体は、以下、式(I-E)の3-(E)異性体と、不飽和カルボン酸の3-(Z)異性体は、式(I-Z)の3-(Z)異性体と称される。
【0059】
化合物I-Z及びI-Eの一般式
【0060】
【化20】
において、置換基R1は、IUPAC(国際純正・応用化学連合)に従って、置換基R2よりも高い優先度を有する。IUPACによると、置換基の優先度の順序は、Cahn-Ingold-Prelog規則に従っている。
【0061】
遷移金属触媒、具体的にはPd触媒カルボニル化はpi-アリル錯体を介して進行し、それにより化合物(II.1)又は化合物(II.2)のいずれかから進行して化合物(I)を含むそれぞれの反応生成物を得ることが可能になると一般に想定される。
【0062】
好ましくは、カルボニル化は、添加されたハロゲン化水素酸の存在下で行われず、添加されたアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物又はハロゲン化アンモニウムの存在下で行われない。「アンモニウム塩」という表現は、NH4 +に由来する塩並びにモノ、ジ、トリ及びテトラオルガニルアンモニウム塩の両方を意味する。具体的には、カルボニル化は、NaCl、NaBr、KCl、KBr、LiCl、LiBrなど、添加されたアルキルハロゲン化物の存在下で行われない。
【0063】
好ましくは、カルボニル化の反応混合物のハロゲン化物含有量は、一般式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールの含有量に対して2mol%以下、好ましくは1mol%以下である。
【0064】
本発明との関連において、「アシル化アリルアルコール」、「カルボン酸アリル」、「アリルアルコールのアシル化生成物」及び「アリルアルコールのアシル化生成物」という用語は、同義語として使用される。
【0065】
「脂肪族」という表現は、本発明との関連において、炭素原子が直鎖又は分岐鎖に配置されているヒドロカルビル基を含む。
【0066】
「アルキル」という表現並びにアルコキシ、アルキルアミノ及びジアルキルアミノにおける全てのアルキル部分は、本発明との関連において、1個から4個(「C1~C4-アルキル」)、1個から6個(「C1~C6-アルキル」)、1個から10個(「C1~C10-アルキル」)、1個から20個(「C1~C20-アルキル」)又は1個から24個(「C1~C24-アルキル」)の炭素原子を有する飽和、直鎖又は分岐の炭化水素基を含む。直鎖又は分岐のC1~C4-アルキルの例は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチルである。直鎖又は分岐のC1~C6-アルキルの例は、C1~C4-アルキルについて示されている定義に加えて、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルである。直鎖又は分岐のC1~C10-アルキルの例は、C1~C6-アルキルについて示されている定義に加えて、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及びそれらの位置異性体である。C1~C20-アルキルの例は、C1~C10-アルキルについて示されている定義に加えて、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、エイコシル及びそれらの位置異性体である。
【0067】
「アルケニル」という表現は、本発明との関連において、2個から4個まで(C2~C4-アルケニル)、6個まで、8個まで、10個まで、16個まで、20個まで又は24個までの炭素原子及び1個、2個、3個又は3個超の二重結合を任意の位置に有する不飽和、直鎖又は分岐の炭化水素基を含む。1個の二重結合を有する直鎖又は分岐のC2~C24-アルケニルの例は、ビニル、アリル(2-プロペン-1-イル)、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、2-ブテン-1-イル、3-ブテン-1-イル、n-ペンテニル、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、n-オクテニル、n-ノネニル、n-デセニル、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル、n-オクタデセニル、オレイル、n-ノナデセニル、n-エイコセニル、n-ヘンエイコセニル、n-ドコセニル、n-トリコセニル、n-テトラコセニル及びそれらの構造異性体である。2個又は3個の二重結合を任意の位置に有する直鎖又は分岐のC4~C24-アルケニルの例は、n-ブタジエニル、n-ペンタジエニル、n-ヘキサジエニル、n-ヘプタジエニル、n-オクタジエニル、n-オクタトリエニル、n-ノナジエニル、n-ノナトリエニル、n-デカジエニル、n-デカトリエニル、n-ウンデカジエニル、n-ウンデカトリエニル、n-ドデカジエニル、n-ドデカトリエニル、n-トリデカジエニル、n-トリデカトリエニル、n-テトラデカジエニル、n-テトラデカトリエニル、n-ペンタデカジエニル、n-ペンタデカトリエニル、n-ヘキサデカジエニル、n-ヘキサデカトリエニル、n-ヘプタデカジエニル、n-ヘプタデカトリエニル、n-オクタデカジエニル、n-オクタデカトリエニル、n-ノナデカジエニル、n-ノナデカトリエニル、n-エイコサジエニル、n-エイコサトリエニル、n-ヘンエイコサジエニル、n-ヘンエイコサトリエニル、n-ドコサジエニル、n-ドコサトリエニル、n-トリコサジエニル、n-トリコサトリエニル、n-テトラコサジエニル、n-テトラコサトリエニル、リノレニル及びそれらの構造異性体である。C2~C24-アルケニルにおけるあらゆる二重結合は(別段に明記されていない限り)、各場合において、独立して、E立体配置又はZ立体配置にあってよい。
【0068】
「シクロアルキル」という表現は、本発明との関連において、3個から8個(「C3~C8-シクロアルキル」)、好ましくは5個から7個の炭素環員(「C5~C7-シクロアルキル」)を有する単環式飽和炭化水素基を含む。C3~C8-シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルである。
【0069】
「ヘテロシクリル」という表現(ヘテロシクロアルキルとも称される)は、本発明との関連において、一般に5個から8個の環原子、好ましくは5個又は6個の環原子を有する単環式飽和脂環式基を包含し、ここで、環炭素原子の1個又は2個は、酸素、窒素、NH及びN(C1~C4-アルキル)から選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子含有基によって置き換えられる。こうしたヘテロ脂環式基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルである。
【0070】
「アリール」という表現は、本発明との関連において、6個から20個の炭素環員を含む単環式、二環式又は三環式の芳香族環系を含む。非置換C6~C10-アリールの例は、フェニル及びナフチルである。C6~C14-アリールの例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルである。置換アリール基は、一般に1個、2個、3個、4個又は5個の同一又は異なる置換基、好ましくは1個、2個又は3個の置換基を有する。適当な置換基は、殊にアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ジアルキルアミノから選択される。C1~C6-アルキルから選択される1個、2個又は3個の置換基を有するアリールの例は、トリル、キシリル及びメシチルである。
【0071】
「ヘタリール」という表現は、本発明との関連において、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される1個、2個、3個又は4個のヘテロ原子を含む5員から6員の芳香族ヘテロ単環、並びに9員又は10員の芳香族ヘテロ二環、例えば、環員として1個から3個の窒素原子、又は1個若しくは2個の窒素原子及び1個の硫黄若しくは酸素原子を含む炭素結合5員ヘテロアリール、例えばフリル、チエニル、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル;環員として1個から3個の窒素原子を含む窒素結合5員ヘテロアリール、例えばピロール-1-イル、ピラゾール-1-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-1-イル及び1,2,4-トリアゾール-1-イル;環員として1個から3個の窒素原子を含む6員のヘテロアリール、例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5-トリアジニル及び1,2,4-トリアジニルを含む。
【0072】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物である。
【0073】
アルカリ金属は、IUPACによる元素周期表の1族元素、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウム、好ましくはリチウム、ナトリウム又はカリウム、殊にナトリウム又はカリウムに対応する。
【0074】
アルカリ土類金属は、IUPACによる元素周期表の2族元素、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム、好ましくはマグネシウム又はカルシウムに対応する。
【0075】
IUPACによる元素周期表の8族は、とりわけ、鉄、ルテニウム及びオスミウムを含む。IUPACによる元素周期表の9族は、とりわけ、コバルト、ロジウム、イリジウムを含む。IUPACによる元素周期表の10族は、とりわけ、ニッケル、パラジウム及び白金を含む。
【0076】
「アンモニウム塩」という表現は、本発明との関連において、NH4 +に由来する塩及びモノ、ジ、トリ及びテトラオルガニルアンモニウム塩の両方を含む。アンモニウム窒素に結合している基は、一般に、各々独立して、水素基、並びに脂肪族、脂環式及び芳香族の炭化水素基から選択される。好ましくは、アンモニウム窒素に結合している基は、各々独立して、水素基及び脂肪族基から選択され、殊に水素及びC1~C20-アルキルから選択される。
【0077】
「アシル」という表現は、本発明との関連において、一般に1個から11個、好ましくは2個から8個の炭素原子を有するアルカノイル基又はアロイル基、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基又はナフトイル基を含む。
【0078】
アセチル化は、本発明との関連において、水素のアセチル基(-C(=O)-CH3)との交換である。
【0079】
より具体的に以下で明記されていない限り、一般式(I)、(II.2)、(III.2)及び(IV.2)は、任意の組成物のE/Z混合物及び純粋な立体配置異性体を指す。加えて、一般式(I)、(II.2)、(III.2)及び(IV.2)は、純粋な形態における全ての立体異性体を、並びに式(II.2)、(III.2)及び(IV.2)の化合物のラセミ混合物及び光学活性混合物を指す。
【0080】
「立体異性体」は、同じ構造であるが三次元空間において異なる原子配置の化合物である。
【0081】
「エナンチオマー」は、互いに対して像と鏡像のように挙動する立体異性体である。
【0082】
「テルペン様ヒドロカルビル基」という用語は、本発明との関連において、形式的な意味で1つ、2つ、3つ又は3つ超のイソプレン単位に由来するヒドロカルビル基を含む。テルペン様ヒドロカルビル基はさらに二重結合を有してもよく、完全に飽和されていてもよい。二重結合は、累積二重結合を除く任意の所望の位置をとることができる。
【0083】
「ファルネソール(3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール)」という用語は、本発明との関連において、(2E,6E)、(2Z,6Z)、(2Z,6E)及び(2E,6Z)異性体、並びに上記ファルネソールの2種、3種又は全ての異性体の混合物を含む。ファルネソールは市販されている。
【0084】
ネロリドールは、1つのキラル中心を有し、E/Z混合物の形態であってよく、4種の立体異性体があることを意味する。「ネロリドール(3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール)」という用語は、本発明との関連において、(3S),(6Z)異性体、(3R),(6Z)異性体、(3S),(6E)異性体、(3R),(6E)異性体、及びそれらの任意の所望の混合物を含む。ネロリドールは市販されている。酢酸ネロリジル(3,7,11-トリメチル-1,6,10-オクタトリエニルアセテート)は、ネロリドールのアセチル化生成物である。それは同様に市販されている。
【0085】
ホモファルネシル酸の別の名前は、4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸である。
【0086】
本発明の第1の実施形態(変形1)は、式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリル型アルコール(アリルアルコール)をカルボニル化して、対応する式(I)のC1伸長不飽和カルボン酸を得ることに関する。
【0087】
式(II.1)の出発化合物は市販されている、又は例えば、対応するカルボニル化合物R1-CO-R2及びハロゲン化ビニルマグネシウムから調製することができる。式(II.1)の化合物はまた、対応するカルボニル化合物及びアセチリド、例えばナトリウムアセチリド、並びにビニル基を得るための後続のエチニル基の部分水素化から調製することができる。
【0088】
本発明の方法との関連において好ましい式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールは、R1及びR2基が、同じ又は異なり、水素、直鎖又は分岐のC1~C16-アルキル、1個又は2個の非共役二重結合を有する直鎖又は分岐のC2~C16-アルケニルであるもの、或いはR1及びR2が、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキル、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルであるものである。
【0089】
殊に好ましいのは、テルペン様ヒドロカルビル基を有する式(II.1)及び(II.2)の化合物である。R1は、好ましくは、直鎖若しくは分岐のC6~C16-アルキル又は1個若しくは2個の非共役二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC6~C16-アルケニルである。R2は、好ましくは、水素又はC1~C4-アルキル、殊にC1~C2-アルキルである。本発明による特に好ましい式(II.1)のアリルアルコールは、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール、1-ビニルシクロヘキサノール、リナロール及びネロリドール、殊にリナロール及びネロリドール、具体的には6E-ネロリドールである。本発明による特に好ましい式(II.2)のアリルアルコールは、ゲラニオール及びファルネソールである。
【0090】
式(II.1)及び(II.2)の化合物が1つ以上の非対称中心を有する場合、エナンチオマー混合物又はジアステレオマー混合物を使用することも可能である。本発明の方法は、式(II.1)及び(II.2)の化合物の混合物で行うことができる。
【0091】
本発明によると、方法は、一般式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールが化合物A)の存在下で反応のために使用される変形1に従って実行される。有用な化合物A)は、好ましくは、直鎖又は分岐の一塩基性C1~C12-アルカンカルボン酸の無水物を含む。こうした無水物の例は、無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソプロピオン酸無水物、酪酸無水物、n-吉草酸無水物、並びにギ酸及び酢酸の混合無水物などである。殊に好ましいのは、最大5個までの炭素原子を有するアルカンモノカルボン酸の対称無水物である。同様に適当であるのは、直鎖又は分岐の一塩基性C3~C12-アルケンカルボン酸の無水物である。これらの例は、(メタ)アクリル酸無水物、クロトン酸無水物及びイソクロトン酸無水物である。同様に適当であるのは、直鎖又は分岐の二塩基性C4~C20-アルカンカルボン酸の無水物、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸の無水物である。同様に適当であるのは、直鎖又は分岐の二塩基性C4~C20-アルケンカルボン酸の無水物、例えばマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物である。同様に適当であるのは、脂環式C7~C20-ジカルボン酸の無水物、例えばシクロペンタンジカルボン酸無水物又はシクロヘキサンカルボン酸無水物である。同様に適当であるのは、芳香族C8~C20-ジカルボン酸の無水物、例えばフタル酸無水物、1,8-ナフタレンカルボン酸無水物又は2,3-ナフタレンカルボン酸無水物である。特に好ましいのは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソプロピオン酸無水物、酪酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物又はフタル酸無水物、殊に無水酢酸を使用することである。
【0092】
適当な化合物A)は、同様に、式(III.1)及び(III.2)のエステルである。本発明の方法において、二重結合が末端位置に配置されている(式(III.1)の化合物)かどうか又は二重結合が内部位置に配置されている(式(III.2)の化合物)かどうかは問題でない。したがって、式(III.1)及び(III.2)の化合物の混合物を使用することも可能である。しかしながら、一般に、式(III.1)及び(III.2)の化合物の混合物は使用されない。
【0093】
好ましいのは、R3及びR4基が、同じ又は異なり、水素、直鎖又は分岐のC1~C16-アルキル、1個又は2個の非共役二重結合を有する直鎖又は分岐のC2~C16-アルケニルであるか、或いはR3及びR4が、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキル、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルである、式(III.1)及び(III.2)の化合物である。代替として、式(III.1)及び(III.2)の化合物において、R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に、好ましくは非置換C5~C7-シクロアルキルである。式(III.1)及び(III.2)の化合物において、R5は、好ましくは水素又はC1~C4-アルキルである。具体的には、R5はC1~C2-アルキルである。特に好ましいのは酢酸アリルである。
【0094】
化合物A)として同様に好ましいのは、カルボニル化のための反応体として使用される式(II.1)又は(II.2)のアルコールに由来する式(III.1)又は(III.2)のエステルである。本発明により特に好ましい式(III.1)のエステルは、直鎖又は分岐の一塩基性C1~C3-アルカンカルボン酸と3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール、1-ビニルシクロヘキサノール、リナロール及びネロリドールから選択されるアルコールのエステルである。殊に好ましいのは、酢酸リナロイル及び酢酸ネロリジル、具体的には6E-ネロリジルアセテートである。本発明により特に好ましい式(III.2)の化合物は、酢酸ファルネシルである。
【0095】
式(III.1)及び(III.2)の化合物が1つ以上の非対称中心を有する場合、エナンチオマー混合物又はジアステレオマー混合物を使用することも可能である。
【0096】
一般式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールが反応のために使用される変形1において、カルボニル化は、本発明に従って、使用されるアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物A)の存在下で行われ、即ち化合物A)のモル量は、アリルアルコールのモル量未満である。化合物A)と式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールのモル比は、典型的に0.001:1から約0.95:1の範囲である。好ましくは、化合物A)の総量は、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して50mol%以下、好ましくは40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。0.1:1から0.35:1、具体的には0.15:1から0.30:1の範囲のモル比が特に好ましい。
【0097】
式(I)のカルボン酸の調製のための本発明の方法において、添加された無水物の効果は、添加された式(III.1)及び(III.2)のアシル化アリルアルコールの効果と同等である。
【0098】
加えて、変形1に従うカルボニル化を求核試薬の存在下で行うことが適切であり得る。求核試薬の例は、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン及び4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジンである。適当な4-(C1~C4-アルキル)ピリジンは、4-メチルピリジン及び4-エチルピリジンである。適当な4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)-ピリジンは、4-(ジメチルアミノ)ピリジン及び4-(ジエチルアミノ)ピリジン、殊に4-ジメチルアミノピリジンである。典型的に、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン及び4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジンから選択される求核試薬は、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して0.01から5mol%、好ましくは0.05から2mol%、殊に0.1から1mol%の量で使用される。
【0099】
一般式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物の調製に関する次の注釈は、別段に明記されていない限り、本発明の方法の全ての変形(変形1、変形2及び変形3)に関する。
【0100】
全ての変形において、過剰量の一酸化炭素を使用しても反応に悪い影響はないが、一酸化炭素の量の上限は経済的理由によって決定される。有利には、一酸化炭素は過剰に使用される。一酸化炭素は通常、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量当たり又は化合物(IV.1)及び(IV.2)の総モル量当たり、少なくとも1.1molの量で使用される。
【0101】
(全ての変形による)カルボニル化は、本発明に従って、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下で行われる。使用される遷移金属は、好ましくはパラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム及び鉄、より好ましくはパラジウムである。
【0102】
典型的に、遷移金属触媒は、化合物(II.1)及び(II.2)の総量に対して又は化合物(IV.1)及び(IV.2)の総量に対して、0.5mol%以下、特に0.001から0.3mol%の量で使用される。
【0103】
本発明によると、少なくとも1種の有機リン化合物を、さらに、リガンドとして使用する。適当な有機リン化合物は、単座及び二座リンリガンドである。有機リン化合物の性質は、原則として重要でないので、一般に、式(V)
【0104】
【化21】
(式中、
R7、R8及びR9は、独立して、非置換及び置換アルキル、非置換及び置換シクロアルキル、非置換及び置換ヘテロシクリル、非置換及び置換アリール、並びに非置換及び置換ヘタリールから選択される)
の安価な第3級の単座ホスフィンを使用することが望ましい。
【0105】
好ましくは、R7、R8及びR9は、独立して、
- 非置換又はフェニルによって置換されているC1~C18-アルキル;
- 非置換又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基によって置換されているC5~C8-シクロアルキル;
- 非置換又は1個、2個若しくは3個のC1~C6-アルキル基、C1~C6-アルコキシ基、ジ(C1~C4-ジアルキル)アミノ、SO3H又はSO3M(Mは、Li、Na、K、NH4である)によって置換されているC6~C10-アリール;
- フッ素、塩素及びC1~C10-フルオロアルキルから選択される1個、2個又は3個の基によって置換されているC6~C10-アリール;
- 炭素原子に加えて、窒素原子又は酸素原子を環員として含む5員又は6員の飽和ヘテロシクリル;
- C5~C8-シクロアルキル;或いは
- 炭素原子に加えて、窒素及び酸素から選択されるヘテロ原子を含む5員又は6員のヘタリール
である。
【0106】
式(V)の好ましいホスフィンの例は、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン及びトリシクロアルキルホスフィンである。式(V)の好ましいホスフィンの例は、同様に、トリヘテロシクリルホスフィン及びトリヘタリールホスフィンである。好ましいトリアルキルホスフィンの例は、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリベンジルホスフィンなどである。好ましいトリシクロアルキルホスフィンの例は、トリ(シクロペンチル)ホスフィン、トリ(シクロ-ヘキシル)ホスフィンなどである。好ましいトリアリールホスフィンの例は、トリフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(m-トリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、トリ(ナトリウムメタ-スルホナトフェニル)ホスフィン、ジフェニル(2-スルホナトフェニル)ホスフィン、トリ(1-ナフチル)ホスフィン及びジフェニル-2-ピリジルホスフィンである。好ましいジアルキルアリールホスフィンの例は、ジメチルフェニルホスフィン及びジ-tert-ブチルフェニルホスフィンである。好ましいアルキルジアリールホスフィンの例は、エチルジフェニルホスフィン及びイソプロピルジフェニルホスフィンである。好ましいシクロアルキルジアリールホスフィンの一例は、シクロヘキシルジフェニルホスフィンである。好ましいジシクロアルキルアリールホスフィンの一例は、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンである。好ましいトリアリールホスフィンのさらなる例は、トリ(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p-フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(m-フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(o-フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(p-クロロフェニル)ホスフィン、トリ(m-クロロフェニル)ホスフィン、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(p-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、ジフェニル(o-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(o-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン及びトリ-2-ナフチルホスフィンである。好ましいトリヘタリールホスフィンの一例は、トリ(o-フリル)ホスフィンである。好ましいトリアルキルホスフィンのさらなる例は、トリイソブチルホスフィンである。好ましいトリヘテロシクリルホスフィンの一例は、トリス(1-ピロリジニル)ホスフィンである。殊に好ましいのは、トリフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン及びトリ(シクロヘキシル)ホスフィンである。
【0107】
適当な二座ホスフィンリガンドは、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル(BINAP)、2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DPPB)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2-ビス(ジ-tert-ペンチルホスフィノメチル)ベンゼン及び1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノメチル)ナフタレンである。
【0108】
加えて、遊離形態の、即ち錯体内に結合されていない式(V)のホスフィン、及び/又は二座ホスフィンの存在下で反応を行うことが適切であり得る。
【0109】
有機リン化合物と遷移金属のモル比は、典型的に1:1から10:1、好ましくは2:1から5:1である。具体的には、式(V)の有機リン化合物と遷移金属のモル比は、典型的に1:1から10:1、好ましくは2:1から5:1である。
【0110】
大気酸素を排除して又は大気酸素量を低減してカルボニル化を行うことが有利である。
【0111】
上記でリガンドとして記載されている有機リン化合物に加えて、本発明に従って使用されるカルボニル化触媒は、ハロゲン化物、アミン、アセテート、カルボキシレート、アセチルアセトネート、アリール又はアルキルスルホネート、水素化物、CO、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、N含有複素環、芳香族及び複素芳香族、エーテル、並びに単座ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスホルアミダイト及びホスファイトのリガンドから好ましくは選択される少なくとも1つのさらなるリガンドを含むこともできる。特に適当なさらなるリガンドは、カルボニル、アセテート、アセチルアセトネート及びシクロオレフィン、例えばシクロオクタジエン又はノルボルナジエンである。ハロゲン化物、具体的には塩化物及び臭化物が同様に適当である。
【0112】
適当な遷移金属供給源は、極めて一般的には、遷移金属、遷移金属化合物及び遷移金属錯体であり、ここからカルボニル化触媒が、反応帯域においてカルボニル化条件下にてその場で形成される。
【0113】
適当な上記遷移金属の化合物は、殊に、選択される反応媒体に可溶なもの、例えば、適当なリガンド、例えばカルボニル、アセチルアセトネート、ヒドロキシル、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、メトキシ、アセチル又は他の脂肪族若しくは芳香族のカルボキシレートとの塩又は錯体である。本発明の方法との関連において好ましい遷移金属化合物は、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)、Ru(0)、Rh(I)、Rh(III)、Rh(0)、Ir(I)、Ir(III)、Ir(IV)、Ir(0)化合物、Pd(Il)、Pd(IV)、Pd(0)、Pt(II)、Pt(IV)、Pt(0)化合物、並びにFe(II)及びFe(III)化合物である。
【0114】
適当なルテニウム塩は、例えば、塩化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(IV)、酸化ルテニウム(VI)又は酸化ルテニウム(VIII)、ルテニウムオキソ酸のアルカリ金属塩、例えばK2RuO4若しくはKRuO4、又はルテニウムの錯体である。これらは、金属カルボニル、例えばトリスルテニウムドデカカルボニル若しくはヘキサルテニウムオクタデカカルボニル、又はCOが式PR7R8R9のリガンドによって部分的に置き換えられた混合形態、例えばRu(CO)3(P(C6H5)3)2又はトリス(アセチルアセトナート)ルテニウム(III)を含む。
【0115】
適当なパラジウム化合物又は錯体のための遷移金属供給源の例としては、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、アセチルアセトン酸パラジウム(II)、パラジウム(0)ジベンジリデンアセトン錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(0)、プロピオン酸パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、硝酸パラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリドが挙げられる。
【0116】
遷移金属供給源として適当なロジウム化合物又は錯体の例としては、ロジウム(II)塩及びロジウム(III)塩、例えばカルボン酸ロジウム(II)又はカルボン酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(II)及び酢酸ロジウム(III)などが挙げられる。さらに適当であるのは、ロジウム錯体、例えばロジウムビスカルボニルアセチルアセトネート、アセチルアセトナートビスエチレンロジウム(I)、アセチルアセトナートシクロオクタジエニルロジウム(I)、アセチルアセトナートノルボルナジエニルロジウム(I)、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(I)、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16などである
【0117】
遷移金属供給源として適当な鉄化合物は、Fe2(CO)10、Fe2(CO)9、トリス(アセチルアセトナート)鉄(III)である。
【0118】
使用される触媒は、液体反応媒体中に均一に溶解させてもよく、又は多相反応の場合は、いわゆる均一系触媒として反応媒体の液相中に溶解させてもよく、又はいわゆる不均一系触媒として担持若しくは非担持形態であってよい。
【0119】
変換がさらなる共反応体の非存在下で行われる場合、式(I)の酸が得られる。得られた式(I)の酸は、当業者に本質的に公知の方法によって、例えば蒸留によって反応混合物から除去することができ、残りの触媒は、さらなる反応において利用することができる。式(I)の酸は、反応混合物から抽出することによって得ることもできる。
【0120】
カルボニル化は、(全ての変形において)塩基の存在又は非存在下で行うことができる。塩基は、求核試薬と異なる。適当な塩基は、無機及び有機塩基である。好ましい無機塩基の例は、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩である。好ましいアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムであり、特に好ましいのはナトリウムである。好ましいアルカリ土類金属は、マグネシウム及びカルシウムである。適当な塩基は、同様に、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン及び4-(ジ-(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジン、例えば4-(ジメチルアミノ)ピリジンから選択される求核試薬以外の有機塩基である。塩基、例えば追加のアミンの存在は、一般式(I)のカルボン酸の塩の形成を促進するため、転化率は明らかに改善される。加えて、反応条件下で無水物から形成する酸は、塩基によって中和又は緩衝される。順じて、熱的手段によって、例えば反応生産物の蒸留によって、又は酸性化することによって、式(I)のカルボン酸の塩から遊離酸を発生させることが可能である。好ましいのは、4-(ジメチルアミノ)ピリジンなど求核試薬以外のアミンの存在下でカルボニル化を行うことである。より詳細には、第3級アミン又は塩基性N-複素芳香族化合物が使用される。
【0121】
第3級アミンの例は、トリアルキルアミン、具体的にはトリ(C1~C15-アルキル)アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシル-アミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);芳香族アミン、例えばジメチルアニリン又はトリベンジルアミン;環状アミン、例えばN-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N'-ジメチルピペラジンを含む。これらの中で、好ましいのは、トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンである。同様に適当であるのは、N-複素芳香族化合物、例えばピリジン、N-メチルイミダゾール又はキノリンである。4-(C1~C4-アルキル)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン及び4-(ジ-(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジン、例えば4-(ジメチルアミノ)-ピリジンから選択される求核試薬以外の塩基は、典型的に、化合物(I)1モル当たり0.8molから1.2molの量で使用される。
【0122】
アミンの存在下でのカルボニル化の場合において殊に、反応混合物の酸性化及び抽出は、遊離酸を得る適当な方法である。代替として、遊離酸は蒸留によって反応混合物から分離することができる。なぜなら、式(I)の不飽和酸の塩が熱の作用下で分解して、式(I)の遊離不飽和酸及びアミンが得られるからである。
【0123】
(全ての変形における)カルボニル化は、添加された不活性溶媒の存在又は非存在下で行うことができる。不活性溶媒は、反応条件下で、使用される化合物、即ち反応体、生成物及び触媒と化学的に反応しない溶媒を意味すると理解される。適当な不活性溶媒は、非プロトン性有機溶媒、例えば芳香族炭化水素、例えばトルエン又はキシレン、脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、及び環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサンである。実用上の理由により、カルボニル化は、好ましくは、不活性溶媒の非存在下で行われる。しかしながら、使用される反応体が反応条件下で難溶である場合、溶媒の使用が望ましい。
【0124】
カルボニル化は、連続的に、半連続的に又はバッチ式で行うことができる。
【0125】
(全ての変形における)圧力は、大気圧から90バール(9MPa)以下、好ましくは30バール(3MPa)以下、より好ましくは25バール(2.5MPa)以下、より好ましくは20バール(2MPa)以下、殊に15バール(1.5MPa)以下など、広い範囲内で選択することができる。適当な圧力範囲は、例えば、1.1から90バール(0.11から9MPa)、1.1から30バール(0.11から3MPa)、2から20バール(0.2から2MPa)、5から15バール(0.5から1.5MPa)である。
【0126】
(全ての変形における)反応温度は、室温(25℃)から100℃の広い範囲内で選択することができるが、それは、好ましくは80℃以下、殊に75℃以下である。
【0127】
本発明の方法の具体的な実施形態において、カルボニル化は、90℃以下の温度で及び20バール(2MPa)以下の圧力で行われる。
【0128】
適当な耐圧反応器は、同様に、当業者に公知であり、例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie [Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry]、1巻、第3版、1951、769ページ以降に記載されている。一般に、所望であれば撹拌機器具及び内張を備え得るオートクレーブが、本発明の方法のために使用される。
【0129】
本発明に従って使用された触媒は、当業者に公知の通例の方法によってカルボニル化反応の生産物から分離することができ、カルボニル化のために再使用することができる。
【0130】
反応混合物は、当業者に公知の通例の方法によって後処理に供することができる。この目的のため、カルボニル化において得られた反応混合物は、以下の構成成分の少なくとも1種の除去のために少なくとも1つの後処理ステップに供することができる:
- カルボニル化触媒、
- 式(II.1)及び(II.2)又は(IV.1)及び(IV.2)の非変換化合物、
- 式(I)の化合物以外の反応生成物、
- 溶媒。
【0131】
本発明のさらなる実施形態(変形2)は、上で説明されている通り、式(IV.1)及び(IV.2)の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールをカルボニル化して、対応する式(I)のC1伸長不飽和カルボン酸又はその塩を得ることに関し、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における式(IV.1)及び(IV.2)の化合物から選択される化合物と一酸化炭素との反応を含み、反応は、さらに、リガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で及び水の存在下で行い、反応は100℃以下の温度で行う。
【0132】
本発明の方法との関連において好ましい式(IV.1)及び(IV.2)の化合物は、R1及びR2基が、同じ又は異なり、水素、直鎖又は分岐のC1~C16-アルキル、1個又は2個の非共役二重結合を有する直鎖又は分岐のC2~C16-アルケニルであるもの、或いはR1及びR2が、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキル、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐C1~C6-アルキル基を有するC5~C7-シクロアルキルであるものである。
【0133】
殊に好ましいのは、テルペン様ヒドロカルビル基を有する式(IV.1)及び(IV.2)の化合物である。R1は、好ましくは、直鎖若しくは分岐のC6~C16-アルキル、又は1個若しくは2個の非共役二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC6~C16-アルケニルである。R2は、好ましくは水素又はC1~C4-アルキル、殊にC1~C2-アルキルである。R6は、好ましくはC1~C2-アルキルである。特に好ましいのは、本発明によると、直鎖又は分岐の一塩基性C1~C3-アルカンカルボン酸、並びに3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール、1-ビニルシクロヘキサノール、リナロール及びネロリドールから選択されるアリルアルコールのエステルである。特に好ましいのは、本発明によると、酢酸リナロイル及び酢酸ネロリジル、具体的には6E-ネロリジルアセテートである。本発明に従って特に好ましい式(IV.2)の化合物は、酢酸ファルネシルである。
【0134】
式(IV.1)及び(IV.2)の化合物が1つ以上の非対称中心を有している場合、エナンチオマー混合物又はジアステレオマー混合物を使用することも可能である。本発明の方法は、式(IV.1)及び(IV.2)の化合物の混合物を用いて行うことができる。しかしながら、好ましいのは、式(IV.1)又は式(IV.2)のいずれかの化合物を使用することである。
【0135】
式(IV.1)の化合物は、例えば、式R6-C(O)OHのカルボン酸を式(II.1)のアリルアルコールを用いてエステル化することによって、式(IV.2)の化合物は、例えば、式R6-C(O)OHのカルボン酸を式(II.2)のアリルアルコールを用いてエステル化することによって、得ることができる。
【0136】
本発明によると、カルボニル化は、水の存在下で行われる。水と式(IV.1)及び(IV.2)の化合物の総モル量のモル比は、典型的に1:1から10:1の範囲であるが、好ましくは1.1:1から3:1の範囲である。
【0137】
適当な遷移金属触媒、リガンドとしての適当な有機リン化合物、反応温度、反応圧力、反応時間、溶媒の使用、求核試薬の使用、求核試薬以外の塩基の使用、具体的には4-(ジメチルアミノ)ピリジン以外のアミンの使用、及び反応器具に関して、上記の記述が参照される。
【0138】
本発明のさらなる実施形態(変形3)は、上記の通り、一般式(II.1)及び(II.2)の化合物をカルボニル化して、対応する式(I)のC-1伸長不飽和カルボン酸又はその塩を得ることに関し、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における、式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択される化合物と一酸化炭素との反応を含み、反応は、さらに、リガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物B)の存在下で行い、反応は100℃以下の温度で行う。化合物Bにおいて、R10及びR11は、好ましくは同じ意味を有する。有用な化合物B)は、好ましくは、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、フェニルスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物、4-ブロモフェニルスルホン酸無水物及び4-ニトロフェニルスルホン酸無水物を含む。
【0139】
一般式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールが反応のために使用される変形3において、カルボニル化は、本発明によると、使用されるアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物B)の存在下で行われ、これは化合物B)のモル量がアリルアルコールのモル量未満であることを意味する。化合物B)と式(II.1)及び(II.2)の化合物から選択されるアリルアルコールのモル比は、典型的に0.001:1から約0.95:1の範囲である。好ましくは、化合物B)の総量は、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して50mol%以下、好ましくは40mol%以下である。0.1:1から0.35:1、殊に0.15:1から0.30:1の範囲のモル比が特に好ましい。
【0140】
変形3によって式(I)のカルボン酸を調製するための本発明の方法において、添加されたスルホン酸無水物の効果は、変形1における添加された化合物A)の効果と同等である。
【0141】
適当な遷移金属触媒、リガンドとしての適当な有機リン化合物、反応温度、反応圧力、反応時間、溶媒の使用、求核剤の使用、求核試薬以外の塩基の使用、及び反応器具に関して、上記の記述が参照される。
【0142】
変形3によるカルボニル化は、好ましくは、100℃以下の温度で及び30バール(3MPa)以下の圧力で行われる。
【0143】
本発明の方法の変形1、2及び3において、ファルネソール又はネロリドールなどの市販の物質から出発してホモファルネシル酸を温和な反応条件下で高収率で得ることが可能である。
【0144】
より詳細には、本発明の方法は、E/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸をリナロールから温和な反応条件下で調製するのに適当である。
【0145】
より詳細には、本発明の方法は、同様に、E-ネロリドールから出発して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩を80:20から50:50、好ましくは70:30から55:45の重量比で調製するのに適当である。得られた異性体混合物における(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の割合は、一般に、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の割合よりも高い。得られた組成物は、1種の異性体の少なくとも部分的な富化に供することができる。
【0146】
変形1、2及び3に従う方法において、一般に、式(I)のE/Z異性体混合物又はその塩は、式(I)におけるR1及びR2が異なる意味を有する場合に得られる。式(I)のE/Z異性体混合物は、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸
【0147】
【化22】
(式中、R1及びR2は異なる定義を有し、R1はIUPACによればより高い優先度を有する)
を含む。
【0148】
多くの場合、2種の異性体の一方のみが価値のある生成物である。好ましいのは、本発明の方法によって得られる式(I)のE/Z異性体混合物を、1種の異性体の少なくとも部分的な富化に供することである。1種の異性体の部分的な富化のための、こうした混合物の可能な異性体分離は、クロマトグラフィー若しくは蒸留によって又はEP 17157974.1に記載されている通りに行うことができる。
【0149】
価値のある生成物は、多くの場合、式(I-E)の3-(E)酸であり、著しい量で同様に得られる式(I-Z)の3-(Z)酸でない。
【0150】
したがって、第1に、本発明に従って得られる式IのE/Z異性体混合物を含む組成物から、式(I-E)の3-(E)酸の少なくとも一部を分離すること、及び望まれない式(I-Z)の3-(Z)酸を少なくとも部分的に、価値のある生成物、即ち式(I-E)の3-(E)酸に変換することが、経済的に望ましい。
【0151】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、式(I)のE/Z異性体混合物を調製するための本発明の方法は、以下の追加のステップを含む:
(1)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で、式(I-E)の3-(E)酸を少なくとも部分的に3-(E)エステルに変換する酵素触媒エステル化に供して、3-(E)エステル、式(I-E)の非変換3-(E)酸及び式(I-Z)の非変換3-(Z)酸を含む組成物を得る;
(2)(1)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を得、また、3-(E)エステルを含む組成物を得る;
(3)式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した(2)で得られた組成物を、異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させる;並びに
(4)場合により、(2)で得られた3-(E)エステルを切断して、式(I-E)の3-(E)酸を得る。
【0152】
3-(E)-不飽和カルボン酸及び3-(Z)-不飽和カルボン酸の混合物をアルコールで酵素触媒エステル化するための方法は、例えば、EP 17157974.1から知られている。
【0153】
多くのリパーゼは、高い基質選択性でエステル化を触媒することが可能である。好ましくは、リパーゼは、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ(CALB)又はポリマー担体上に固定された形態、例えばNovozym 435(登録商標)である。酵素触媒エステル化は、好ましくは脂肪族アルコールの存在下で行われる。適当な脂肪族アルコールは、C1~C20-アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール及びn-オクタノールである。酵素触媒エステル化は、場合により、希釈剤又は溶媒の存在下で行うことができる。適当な希釈剤又は溶媒の例は、殊に脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン;ジアルキルエーテル、例えばメチルtert-ブチルエーテル及びジイソプロピルエーテルである。3-(E)酸の1当量当たり典型的に1~5当量のアルコールが使用される。エステル化は、典型的に0から80℃の範囲内の温度で行われる。
【0154】
リパーゼは、式(I-E)の3-(E)酸を、対応する式(I-Z)の3-(Z)酸よりもはるかに迅速に、アルコールでエステル化する。したがって、3-(E)エステル、式(I-E)の非変換3-(E)酸及び式(I-Z)の非変換3-(Z)酸を含む分離可能な組成物が得られる。
【0155】
ステップ(1)で得られた組成物は、抽出又は蒸留によって分離することができる。
【0156】
ステップ(4)において、ステップ(2)で単離された3-(E)エステルを、場合により、酸、塩基又は酵素触媒エステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩を得る。式(I-E)の化合物は、多くの場合、価値のある生成物であるので、エステル切断を行うことが適切である。
【0157】
さらに好ましい実施形態において、式(I)のE/Z異性体混合物を調製するための本発明の方法は、以下の追加のステップを含む:
(i)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコールの存在下でエステル化に供して、3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを得る;
(ii)(i)で得られた3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを、リパーゼが3-(E)エステルを少なくとも部分的に切断して式(I-E)の3-(E)酸をもたらすリパーゼ触媒酵素的加水分解に供して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得る;
(iii)(ii)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸を含む組成物を得、また非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得る;
(iv)(iii)で得られた非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物をエステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸又はその塩を富化した組成物を得る;並びに
(v)(iv)で得られた式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させる。
【0158】
好ましくは、ステップ(i)におけるエステル化は、脂肪族アルコールを用いて行われる。適当な脂肪族アルコールは、C1~C20-アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、secブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール及びn-オクタノールである。エステル化は、酸、塩基又は酵素触媒作用下で行うことができる。エステル化は、典型的に0から80℃の範囲内の温度で行われる。
【0159】
3-(E)-不飽和カルボン酸及び3-(Z)-不飽和カルボン酸の混合物を水の存在下で酵素触媒エステル切断するための方法は、例えば、EP 17157974.1から知られている。
【0160】
多くのリパーゼは、高い基質選択性でエステル切断を触媒することが可能である。ステップ(ii)において、ステップ(i)で得られた組成物を、水及びリパーゼ酵素の存在下で、酵素触媒エステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得る。リパーゼは、好ましくはカンジダ・アンタルクチカリパーゼ(CALB)又はポリマー担体上に固定された形態、例えばNovozym 435(登録商標)である。
【0161】
ステップ(ii)で得られた組成物は、蒸留又は抽出によって分離することができる。これにより、式(I-E)の3-(E)酸を含む組成物が得られる。同様に得られるのは、3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを含む組成物である。
【0162】
ステップ(iv)におけるエステル切断は、酸、塩基又は酵素触媒作用下で行うことができる。これにより、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩及び式(I-Z)の3-(Z)酸又はその塩を含み、ステップ(i)で使用される組成物と比較して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量が低減されるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸の含有量が増加された組成物が得られる。
【0163】
前述の方法のステップ(3)及び(v)において、得られた組成物を、式(I-Z)の3-(Z)酸から式(I-E)の3-(E)酸への異性化に供して、価値のある生成物の割合を増加させる。異性化は、好ましくは、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行われる。適当な無水物は、脂肪族C1~C12モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4~C20ジカルボン酸の無水物、脂環式C7~C20ジカルボン酸の無水物、芳香族C8~C20ジカルボン酸の無水物、脂肪族スルホン酸の無水物及び芳香族スルホン酸の無水物である。適当な塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アミン、塩基性N-複素芳香族化合物、塩基性イオン交換体及びそれらの混合物である。異性化は、好ましくは、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う。方法は、有利には60から175℃、好ましくは70から160℃の温度で行うことができる。
【0164】
圧力は重要でない。したがって、異性化は、高圧、減圧又は大気圧で行うことができる。標準圧力で反応温度未満の沸点を有する塩基及び/又は無水物を使用する場合、方法は、圧力反応器で適宜行われる。有利には、異性化は、本発明の方法の条件下で行うこともできる。有利には、遷移金属触媒の存在は、異性化のために必要とされない。
【0165】
本発明の方法によって得られた一般式(I)の化合物は、酸基又はエステル基から対応するアルコールへの変換を伴う還元に供することができる。具体的な実施形態において、まず第1に、上記の通りに得ることができる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を、分離に供して、例えば上記の通りの(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)
【0166】
【化23】
を得る。
【0167】
(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)は、同様に、アロマケミカルの調製のための重要な中間体である。
【0168】
本発明は、(-)-アンブロクスの調製をさらに提供する。調製は、下記のスキーム1に示されている通り、立体異性的に純粋な(3E/7E)-ホモファルネシル酸から出発する公知の方法によって行うことができる。
【0169】
【化24】
【0170】
シクラーゼ酵素を使用する、不飽和基質、例えばテルペン様炭化水素の生体触媒環化を記載しているEP 16156410、WO 2010/139719及びWO 2012/066059の開示が、本明細書において全体で参照される。
【0171】
スクラレオリド(VII)は、例えば、本発明に従って調製される(3E/7E)-ホモファルネシル酸のシクラーゼ触媒変換によって得ることができる。スクラレオリド(VII)を、次いで、例えばLiAlH4又はNaBH4との反応によって化学的に還元して、アンブロクス-1,4-ジオールを得ることができる(Mookherjeeら; Perfumer and Flavourist (1990)、15:27を参照されたい)。アンブロクス-1,4-ジオールは、次いで、公知の方法によって(-)-アンブロクスにさらに変換することができる。
【0172】
末端カルボン酸基の水素化に関して、対応するアルコールを得るための良好な選択性を可能にする水素化触媒は、同様に当業者に公知である。化合物(I)中に存在する二重結合の水素化及び異性化は、基本的に回避することができる。
【0173】
同様に知られているのは、(3E,7E)-ホモファルネソールのアンブロクスへの環化であり、酵素的及び化学的環化の両方の記載がある。これに関して、以下の文献の開示が参照される:
【0174】
P. F. Vladら Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii、Engl. Transl. 1991、746は、超酸(2-ニトロプロパン中のフルオロスルホン酸)を使用する環化反応を記載している。さらに適当な方法は、H. Yamamotoら J. Am. Chem. Soc. 2002、3647によって記載されている通り、O-(o-フルオロベンジル)ビノール及びSnCl4の存在下でのホモファルネシルトリエチルシリルエーテルのエナンチオ選択的ポリエン環化を含む。
【0175】
好ましいのは、WO 2010/139719に記載されている通りの生体触媒環化である。これに従って、ステップd1)における環化は、酵素としてホモファルネソール-アンブロクスシクラーゼの活性を有するポリペプチドの存在下で行う。
【0176】
この変形による(-)-アンブロクスの調製のため、ホモファルネソールを、ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼと接触させ及び/又はインキュベートし、次いで、形成されたアンブロクスを単離する。
【0177】
一実施形態において、ホモファルネソールを、ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼと媒体中で接触させ、及び/又はそれとインキュベートし、それにより、ホモファルネソールをシクラーゼの存在下でアンブロクスに変換する。好ましくは、媒体は水性反応媒体である。水性反応媒体は、好ましくは、一般に好ましくは5から8のpHを有する緩衝溶液である。使用される緩衝液は、シトレート、ホスフェート、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)又はMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液であってよい。加えて、反応媒体は、さらなる添加剤、例えば界面活性剤(例えば、タウロデオキシコレート)を含むことができる。
【0178】
ホモファルネソールは、好ましくは、5から100mM、より好ましくは15から25mMの濃度で酵素反応において使用される。この反応は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。
【0179】
酵素的環化は、使用されるシクラーゼの不活性化温度未満の反応温度で適宜行われる。ステップd1)における反応温度は、好ましくは、-10から100℃、より好ましくは0から80℃、特に15から60℃、殊に20から40℃の範囲内である。
【0180】
アンブロクス反応生成物は、有機溶媒で抽出し、場合により、精製のために蒸留することができる。適当な溶媒を、以下に具体的に挙げる。
【0181】
単相水性系と同様に、二相系を使用することも可能である。この変形において、非水相において形成されたアンブロクスを富化して、それを単離することが可能である。第2の相はここで、好ましくはイオン性液体及び水不混和性有機溶媒から選択される。反応後、有機相におけるアンブロクスは、生体触媒を含む水相から容易に分離可能である。非水性反応媒体は、液体反応媒体の総重量に対して1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の水を含む反応媒体を意味すると理解される。より詳細には、反応は、有機溶媒中で行うことができる。適当な有機溶媒は、例えば、5個から8個の炭素原子を好ましくは有する脂肪族炭化水素、例えばペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン若しくはシクロオクタン、1個若しくは2個の炭素原子を好ましくは有するハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン若しくはテトラクロロエタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン若しくはジクロロベンゼン、4個から8個の炭素原子を好ましくは有する脂肪族の非環式及び環式のエーテル若しくはアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はエステル、例えば酢酸エチル若しくは酢酸n-ブチル、又はケトン、例えばメチルイソブチルケトン若しくはジオキサン、又はそれらの混合物である。特に好ましいのは、前述のヘプタン、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルを使用することである。
【0182】
適当な酵素は、本明細書において参照により全体で組み込まれるWO 2010/139719に記載されている。これに従って、酵素は、以下から選択される少なくとも1つの核酸分子を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドである:
a)配列番号2、5、6、7、8、9、10又は11を含むポリペプチドをコードする核酸分子;b)配列番号1に示されている配列の少なくとも1種のポリヌクレオチドを含む核酸分子;c)配列が配列番号2、5、6、7、8、9、10又は11の配列と少なくとも46%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子;d)配列番号2、5、6、7、8、9、10又は11に従う配列と機能的に同等のポリペプチド又はこれらの配列の断片である(a)から(c)に従う核酸分子;e)配列番号3及び4に従うプライマーによってcDNAバンクから若しくはゲノムDNAから核酸分子を増幅すること、又はデノボ合成によって核酸分子を化学的に合成することによって得られる、ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子;f)(a)から(c)に従う核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子;g)(a)から(c)に従う核酸分子又は少なくとも15nt、好ましくは20nt、30nt、50nt、100nt、200nt若しくは500ntであるその断片を、プローブとしてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で使用して、DNAバンクから単離することができる、ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子;並びにh)ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子(ここで、ポリペプチドの配列は、配列番号2、5、6、7、8、9、10又は11の配列と少なくとも46%の同一性を有する);i)ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子(ここで、ポリペプチドは、a)からh)に記載されているものからなる群から選択される核酸分子によってコードされ、モノクローナル抗体によって単離されている又は単離することができる);j)ホモファルネソール-アンブロキサンシクラーゼの活性を有する機能的に同等のポリペプチドをコードする核酸分子(ここで、ポリペプチドは、a)からh)に記載されているものからなる群から選択される核酸分子によってコードされるポリペプチドと類似した又は同様の結合部位を有する)。
【0183】
アロマケミカル(芳香料及び香料)及びその調製のための方法が多数存在するにもかかわらず、極めて多様な使用分野及び単純な合成経路についてそれらを利用可能にするために所望される多数の特性を満足させることができるようにするため、新規な構成成分が常に必要とされる。本発明の方法は、新規な及びすでに公知のアロマケミカル、例えば(-)-アンブロクスの提供において目的の合成単位として働くことができる一般式(I)の化合物の有効な調製を可能にする。酸官能基の水素化後、順じて対象の合成単位となり得るとともに界面活性剤アルコールとしての使用に適当であり得るアルコールを得ることが可能である。
【実施例0184】
本発明を、次に続く実施例によって詳細に説明する。次に続く実施例は、本発明が、有利には異なる反応体及び遷移金属触媒を用いて行うことができることを示している。
【0185】
略語:
Ac2Oは、無水酢酸を表し;DMAPは、4-(ジメチルアミノ)ピリジンを表し;eq.は、当量を表し;Fe(acac)3は、トリス(アセチルアセトナート)鉄(III)を表し;面積%は、面積パーセントを表し;GCは、ガスクロマトグラフィーを表し;[Ir(COD)Cl]2は、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリドを表し;MTBEは、メチルtert-ブチルエーテルを表し;NEt3は、トリエチルアミンを表し;org.は、有機を表し;P(Cy)3は、トリシクロヘキシルホスフィンを表し;Pd(acac)2は、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム(II)を表し;Pd(dba)2は、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を表し;Pd(OAc)2は、酢酸パラジウム(II)を表し;Rh(CO)2(acac)は、(アセチルアセトナート)ジカルボニルロジウム(I)を表し;Ru(acac)3は、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム(III)を表し;Acid sel.は、酸選択率を表し;THFは、テトラヒドロフランを表し;TPPは、トリフェニルホスフィンを表し;rpmは、1分当たりの回転を表す。
【0186】
生成物は、GC、1H NMR及び13C NMR分析を利用して同定した。反応混合物の後処理は、最適化しなかった。
【0187】
[例1]
リナロールから出発するPd触媒カルボニル化
酢酸パラジウム(II)(19mg、0.085mmol)、トリフェニルホスフィン(51mg、0.195mmol)及びDMAP(49mg、0.4mmol)を最初に、ガラスオートクレーブにアルゴン下で投入した。リナロール(10.8g、70mmol)、トリエチルアミン(6.9g、68mmol)及び無水酢酸(2g、20mmol)をアルゴン向流にて添加した。引き続いて、10バール(1MPa)のCOを適用し、混合物を1000rpmにてこの圧力で及び内部温度60℃で24時間の間撹拌した。その後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、94%の転化率と62%のE/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸目的生成物の選択率を示した。
【0188】
反応が終了した後、MTBE(25mL)及びNaOH水溶液(5%、70mL)を添加した。相を分離させ、水相をMTBE(2×50mL)で洗浄した。水相をH2SO4(20%)でpH=1にし、MTBE(3×50mL)で抽出した。酸性抽出物からの有機相を合わせ、水(3×70mL)で中性まで洗浄し、MgSO4で脱水した。濃縮後、7.1g(56%)のE/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸を、55:45のE/Z比(1H NMR)で得た。NMRデータは、Snyderら Angew. Chem.、121、2009、8039のデータに対応する。13C NMR(CDCl3)、E-ホモミルセニルカルボン酸:179.9, 139.5, 131.7, 125.1, 116.2, 40.2, 34.0, 27.2, 26.2, 18.0, 16.6;Z-ホモミルセニルカルボン酸:179.9, 139.5, 132.1, 124.8, 117.0, 34.0, 32.6, 27.0, 26.2, 23.7, 18.0.
【0189】
[例1.1~1.12]
リナロールから出発するPd触媒カルボニル化
例1を反復した。リナロールのカルボニル化のための供給原料、24時間後の転化率、及びE/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸目的生成物の選択率は、表Iに示されている。
【0190】
【表1】
【0191】
比較例1.10は、10バール(1MPa)にてEP 0146859(PdCl2/TPP)の条件下で無水物供給源の非存在下で変換が達成されず、100℃であっても、目的生成物への転化率が多くとも非常に小さかったことを示す(比較例1.11)。比較例1.12は、Pd(OAc)2を使用する場合において無水物供給源の非存在下では最小の転化率しか達成されなかったことを示す。
【0192】
[例1.13~1.17]
周期表の8族及び9族の遷移金属触媒を使用する、リナロールから出発するカルボニル化
例1を反復した。リナロールのカルボニル化のための供給原料、24時間後の転化率、及び目的生成物(E/Z-4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン酸)の選択率は、表IIに示されている。
【0193】
【表2】
【0194】
[例2]
3-メチル-1-ペンテン-3-オールのカルボニル化
酢酸パラジウム(II)(22mg、0.1mmol)、トリフェニルホスフィン(52mg、0.2mmol)及びDMAP(49mg、0.4mmol)を最初に、ガラスオートクレーブにアルゴン下で投入した。3-メチル-1-ペンテン-3-オール(6.7g、67mmol)、トリエチルアミン(6.7g、67mmol)及び無水酢酸(2g、20mmol)をアルゴン向流にて添加した。引き続いて、10バール(1MPa)のCOを適用し、混合物を1000rpmにてこの圧力で及び内部温度60℃で24時間の間撹拌した。その後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、70%の転化率と75%のE/Z-(4-メチル)-3-ヘキセン酸目的生成物の選択率を示した。
【0195】
反応が終了した後、MTBE(25mL)及びNaOH水溶液(5%、50mL)を添加した。相を分離させ、水相をMTBE(2×25mL)で洗浄した。水相をH2SO4(20%)でpH=1にし、MTBE(3×25mL)で抽出した。酸性抽出物からの有機相を合わせ、水(5×25mL)で中性に洗浄し、MgSO4で脱水した。濃縮後、2.3g(27%)のE/Z-(4-メチル)-3-ヘキセン酸を、淡黄色の油として3:2のE/Z比(1H NMR)で得た。13C NMR(d8-トルエン):E-(4-メチル)-3-ヘキセン酸:179.7, 140.8, 114.5, 33.7, 32.5, 16.1, 12.6;Z-(4-メチル)-3-ヘキセン酸:179.7, 141.1, 115.5, 33.4, 25.2, 22.8, 12.6.
【0196】
[例3]
1-ヘプテン-3-オールのカルボニル化
酢酸パラジウム(II)(22mg、0.1mmol)、トリフェニルホスフィン(52mg、0.22mmol)及びDMAP(55mg、0.45mmol)を最初に、ガラスオートクレーブにアルゴン下で投入した。1-ヘプテン-3-オール(7.6g、66mmol)、トリエチルアミン(6.7g、67mmol)及び無水酢酸(1.8g、17mmol)をアルゴン向流にて添加した。引き続いて、10バール(1MPa)のCOを適用し、混合物を1000rpmにてこの圧力で及び内部温度60℃で24時間の間撹拌した。その後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、75%の転化率と50%のE/Z-3-オクテン酸目的生成物の選択率を示した。
【0197】
反応が終了した後、MTBE(25mL)及びNaOH水溶液(5%、50mL)を添加した。相を分離させ、水相をMTBE(2×50mL)で洗浄した。水相をH2SO4(約20mL、20%)でpH=1にし、MTBE(3×50mL)で抽出した。酸性抽出物からの有機相を合わせ、水(4×50mL)で中性に洗浄し、MgSO4で脱水した。濃縮後、78:22のE/Z比(1H NMR)を有するE/Z-3-オクテン酸2.4g(26%)を得た。NMRデータは、Wirthら Org. Lett.、9、2007、3169からのデータに対応する。13C NMR(d8-トルエン)、E-3-オクテン酸:179.4, 135.0, 121.4, 38.0, 32.5, 31.6, 22.6, 14.1.
【0198】
[例4]
E-ネロリドールのカルボニル化
酢酸パラジウム(II)(46mg、0.2mmol)、トリフェニルホスフィン(120mg、0.46mmol)及びDMAP(56mg、0.46mmol)を最初に、鋼オートクレーブにアルゴン下で投入した。E-ネロリドール(34g、152.6mmol)、トリエチルアミン(17g、167mmol)及び無水酢酸(3.6g、35mmol)をアルゴン向流にて添加した。引き続いて、10バール(1MPa)のCOを適用し、混合物を1000rpmにてこの圧力で及び内部温度70℃で24時間の間撹拌した。24時間後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、95%の転化率と81%のE/Z-ホモファルネシル酸目的生成物の選択率を示した。
【0199】
反応が終了した後、粗生成物をクーゲルロール蒸留(1mbar(0.1kPa)、170℃まで)によって精製した。これにより、E/Z-ホモファルネシル酸23g(61%)を97%の純度(GC)でE-ホモファルネシル酸:Z-ホモファルネシル酸の異性体比64:36(GC)で得た。
【0200】
13C NMR(CDCl3):E-ホモファルネシル酸:179.1, 139.8, 135.4, 131.4, 124.4, 123.8, 114.9, 33.6, 39.8, 39.6, 26.8, 25.8, 26.4, 17.8, 16.5, 16.1;Z-ホモファルネシル酸:179.2, 139.7, 135.7, 131.2, 124.5, 123.7, 115.9, 39.8, 33.5, 32.2, 26.8, 26.3, 25.7, 23.4, 17.7, 16.0.
【0201】
例4を反復した。E-ネロリドールのカルボニル化のための供給原料、24時間及び6時間後の転化率、並びにE/Z-ホモファルネシル酸目的生成物(2種の異性体の総和)の収率を、表IIIに示す。
【0202】
【表3】
【0203】
[例5]
E-ネロリジルアセテートのカルボニル化
酢酸パラジウム(II)(50mg、0.22mmol)、トリフェニルホスフィン(130mg、0.5mmol)及びDMAP(70mg、0.57mmol)を最初に、鋼オートクレーブにアルゴン下で投入した。E-ネロリジルアセテート(42.5g、142mmol)、トリエチルアミン(9g、89mmol)及び水(2.8g、156mmol)をアルゴン向流にて添加した。引き続いて、10バール(1MPa)のCOを適用し、混合物を1000rpmにてこの圧力で及び内部温度70℃で24時間の間撹拌した。その後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、97%の転化率と71%のE/Z-ホモファルネシル酸の選択率を示した。E-ホモファルネシル酸:Z-ホモファルネシル酸の比=64:36(GC)。
【0204】
例5を反復した。E-ネロリジルアセテートのカルボニル化の供給原料、4時間及び24時間後の転化率、並びにE/Z-ホモファルネシル酸目的生成物(2種の異性体の総和)の収率を、表IVに示す。
【0205】
【表4】
【0206】
[例6]
1-ビニルシクロヘキサノールのカルボニル化
酢酸パラジウム(II)(22mg、0.1mmol)、トリフェニルホスフィン(54mg、0.21mmol)及びDMAP(50mg、0.41mmol)を最初に、ガラスオートクレーブにアルゴン下で投入した。1-ビニルシクロヘキサノール(8.35g、66mmol)、トリエチルアミン(6.7g、67mmol)及び無水酢酸(1.8g、17mmol)をアルゴン向流にて添加し、10バール(1MPa)のCOを適用した。混合物を1000rpmにて内部温度60℃で20時間の間撹拌し、圧力を10バール(1MPa)で保持し、48時間後に、混合物を室温に冷却し、脱圧した。GC転化率:54%;3-シクロヘキシリデンプロパン酸の選択率:63%。
【0207】
反応が終了した後、MTBE(25mL)及びNaOH水溶液(5%、50mL)を添加した。相を分離させ、水相をMTBE(2×50mL)で洗浄した。水相をH2SO4(約30mL、20%)でpH=1にし、MTBE(3×50mL)で抽出した。酸性抽出物からの有機相を合わせ、水(4×50mL)で中性に洗浄し、MgSO4で脱水した。濃縮により3-シクロヘキシリデンプロパン酸3.1g(31%)を得た。13C NMR(d8-トルエン):180.0, 143.8, 112.9, 37.5, 33.3, 29.4, 29.0, 28.1, 27.4.
【0208】
[例7]
E/Z-ホモファルネシル酸を含む組成物の異性体分離及びE-ホモファルネシル酸の富化のための異性化
異性体分離:
例4において得られた混合物をn-ヘプタン(100g)中に溶解し、イソプロパノール(10g)及びNovozym 435(0.5g)を添加し、混合物を60℃で約17時間の間撹拌した。酵素を次いで濾別した。0℃の温度で、メタノール及び水を添加し、反応混合物のpHを12~13に10℃未満の温度にてNaOH水溶液を添加することによって調整した。相を分離させて、(3E,7E)-ホモファルネシル酸イソプロピルエステルを主な構成成分として含む有機相、及び3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:さらなる化合物を68%:14%:17%:1%の比(HPLC)で含む組成物を有する水相を得た。
【0209】
異性化:
酢酸パラジウム(II)(22mg、0.098mmol)、トリフェニルホスフィン(58mg、0.22mmol)及びDMAP(25mg、0.2mmol)を最初に、鋼オートクレーブにアルゴン下で投入した。3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:さらなる化合物(68%:14%:17%:1%の比)の酸混合物(17.5g、51mmol)、トリエチルアミン(8.1g、80mmol)及び無水酢酸(1.7g、17mmol)をアルゴンの対向流で添加し、COを20バール(2MPa)で注入した。引き続いて、混合物を内部温度140℃で14時間の間撹拌した(1000rpm)。この過程において、圧力を20バール(2MPa)に維持した。この後、室温に冷却し脱圧した。これにより、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:さらなる化合物を22%:33%:21%:24%の比(HPLC)で含む組成物が得られた。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0209
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0209】
異性化:
酢酸パラジウム(II)(22mg、0.098mmol)、トリフェニルホスフィン(58mg、0.22mmol)及びDMAP(25mg、0.2mmol)を最初に、鋼オートクレーブにアルゴン下で投入した。3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:さらなる化合物(68%:14%:17%:1%の比)の酸混合物(17.5g、51mmol)、トリエチルアミン(8.1g、80mmol)及び無水酢酸(1.7g、17mmol)をアルゴンの対向流で添加し、COを20バール(2MPa)で注入した。引き続いて、混合物を内部温度140℃で14時間の間撹拌した(1000rpm)。この過程において、圧力を20バール(2MPa)に維持した。この後、室温に冷却し脱圧した。これにより、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:さらなる化合物を22%:33%:21%:24%の比(HPLC)で含む組成物が得られた。
本発明の態様として、例えば以下を挙げることができる。
[項1]
一般式(I)
【化25】
(式中、
R 1 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニル、非置換C 5 ~C 12 -シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているC 5 ~C 12 -シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているアリールであり、
R 2 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニルであるか、或いは
R 1 及びR 2 は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C 5 ~C 7 -シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 6 -アルキル基を有するC 5 ~C 7 -シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【化26】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、並びに、アリルアルコールに対して準化学量論量の、脂肪族C 1 ~C 12 -モノカルボン酸の無水物、脂肪族C 4 ~C 20 -ジカルボン酸の無水物、脂環式C 7 ~C 20 -ジカルボン酸の無水物、芳香族C 8 ~C 20 -ジカルボン酸の無水物、及び式(III.1)及び(III.2)
【化27】
(式中、
R 3 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニル、非置換C 5 ~C 12 -シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているC 5 ~C 12 -シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているアリールであり、
R 4 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニルであるか、或いは
R 3 及びR 4 は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C 5 ~C 7 -シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 6 -アルキル基を有するC 5 ~C 7 -シクロアルキルであり、
R 5 は、C 1 ~C 5 -アルキルである)
のアシル化アリルアルコールから選択される化合物A)の存在下で行い、
前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
[項2]
一般式(I)
【化28】
(式中、
R 1 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニル、非置換C 5 ~C 12 -シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているC 5 ~C 12 -シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているアリールであり、
R 2 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニルであるか、或いは
R 1 及びR 2 は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C 5 ~C 7 -シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 6 -アルキル基を有するC 5 ~C 7 -シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(IV.1)及び(IV.2)
【化29】
(式中、R 6 は、C 1 ~C 5 -アルキルである)
の化合物から選択されるアシル化アリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で及び水の存在下で行い、前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
[項3]
一般式(I)
【化30】
(式中、
R 1 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル、1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニル、非置換C 5 ~C 12 -シクロアルキル又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているC 5 ~C 12 -シクロアルキル、或いは非置換アリール又は1個、2個若しくは3個のC 1 ~C 6 -アルキル基によって置換されているアリールであり、
R 2 は、水素、直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 24 -アルキル又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC 2 ~C 24 -アルケニルであるか、或いは
R 1 及びR 2 は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C 5 ~C 7 -シクロアルキルであるか、又は1個、2個若しくは3個の直鎖若しくは分岐のC 1 ~C 6 -アルキル基を有するC 5 ~C 7 -シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【化31】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしての少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論量の化合物B)
【化32】
(式中、
R 10 及びR 11 は、互いに独立して、C 1 ~C 6 -アルキル、C 1 ~C 6 -フルオロアルキル、又は非置換の若しくはブロモ、ニトロ及びC 1 ~C 4 -アルキルから選択される置換基によって置換されているフェニルである)
の存在下で行い、
前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
[項4]
前記反応を、30バール(3MPa)以下の圧力で行う、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
カルボニル化を、添加されたハロゲン化水素酸の存在下で行わず、添加されたアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物又はハロゲン化アンモニウムの存在下で行わない、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
カルボニル化の反応混合物のハロゲン化物含有量が、一般式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールの総含有量に対して又は一般式(IV.1)及び(IV.2)のエステルの総含有量に対して、2mol%以下、好ましくは1mol%以下である、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
化合物A)が、無水酢酸及び酢酸アリルから選択される、項1及び4から6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
使用される化合物A)が、カルボニル化のための反応体として使用される式(II.1)又は(II.2)のアルコールに由来する式(III.1)又は(III.2)のエステルである、項1及び4から6のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記反応を、さらに4-(ジ(C 1 ~C 4 -アルキル)アミノ)ピリジン、4-(C 1 ~C 4 -アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬、好ましくは4-(ジメチルアミノ)ピリジンの存在下で行う、項1及び3から8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
4-(ジ(C 1 ~C 4 -アルキル)アミノ)ピリジン、4-(C 1 ~C 4 -アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して0.01から5mol%、好ましくは0.05から2mol%、殊に0.1から1mol%の量で使用する、項9に記載の方法。
[項11]
遷移金属を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して又は化合物(IV.1)及び(IV.2)の総モル量に対して、0.5mol%以下、好ましくは0.3mol%以下の量で、前記反応のために使用する、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
[項12]
遷移金属が、Pd、Ru、Rh、Ir及びFeから選択され、好ましくは遷移金属としてPdを使用する、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
[項13]
有機リン化合物が、単座及び二座のホスフィンから、好ましくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、トリヘテロシクリルホスフィン及びトリヘタリールホスフィンから選択され、使用される有機リン化合物が、殊にトリフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィンである、項1から12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
化合物A)の総量が、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して50mol%以下、好ましくは30mol%以下である、項1及び4から13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
前記反応を、さらに4-(ジメチルアミノ)-ピリジン、4-(C 1 ~C 4 -アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬以外の塩基の存在下で、好ましくは塩基性N-複素芳香族化合物、トリアルキルアミン、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩、殊にトリエチルアミンの存在下で行う、項1から14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
前記反応を、添加された非プロトン性有機溶媒の存在下で行う、項1から15のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
前記反応を、80℃以下、好ましくは75℃以下の温度で行う、項1から16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
前記反応を、25バール(2.5MPa)以下、好ましくは20バール(2MPa)以下、殊に15バール(1.5MPa)以下の圧力で行う、項1から17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
前記反応のために使用される一般式(II.1)の化合物が、ネロリドール、リナロール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール及び1-ビニルシクロヘキサノールから選択される、項1及び3から18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
E-ネロリドールを前記反応のために使用する、項1及び3から18のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
E-ネロリドールをカルボニル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチル-トリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩を80:20から50:50、好ましくは70:30から55:45の重量比で含む反応混合物を得る、項1及び3から20のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
前記反応のために使用される一般式(II.2)の化合物がファルネソールである、項1及び3から19のいずれか一項に記載の方法。
[項23]
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸
【化33】
(式中、
R 1 及びR 2 は、異なる定義を有し、R 1 は、IUPACに従って、より高い優先度を有する)
を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
式(I)のこのE/Z異性体混合物を、1種の異性体の富化に供する、
項1から22のいずれか一項に記載の方法。
[項24]
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(1)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で、式(I-E)の3-(E)酸を少なくとも部分的に3-(E)エステルに変換する酵素触媒エステル化に供して、3-(E)エステル、式(I-E)の非変換3-(E)酸及び式(I-Z)の非変換3-(Z)酸を含む組成物を得;
(2)(1)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を得、また、3-(E)エステルを含む組成物を得;
(3)式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した(2)で得られた組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させ;並びに
(4)場合により、(2)で得られた3-(E)エステルを切断して、式(I-E)の3-(E)酸を得てもよい、
項23に記載の方法。
[項25]
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(i)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコールの存在下でエステル化に供して、3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを得;
(ii)(i)で得られた3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを、リパーゼが3-(E)エステルを少なくとも部分的に切断して式(I-E)の3-(E)酸をもたらすリパーゼ触媒酵素的加水分解に供して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iii)(ii)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸を含む組成物を得、また、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iv)(iii)で得られた非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物をエステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸又はその塩を富化した組成物を得;並びに
(v)(iv)で得られた式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させる、
項23に記載の方法。
[項26]
式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させるための異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、項24又は25に記載の方法。
[項27]
(-)-アンブロクス(VIII)
【化34】
を調製するための方法であって、
a1)項1から26のいずれか一項に記載の方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を得;
d1)(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を環化に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得るか;
又は
a2)項1から26のいずれか一項に記載の方法によって得られる(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を環化に供して、スクラレオリド(VII)を得;
d2)スクラレオリド(VII)を還元に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得る、
方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであり、
R2、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキルであるか、或いは
R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルである)
の少なくとも1種の不飽和カルボン酸又はその塩を含む組成物を調製するための方法であって、
一般式(II.1)及び(II.2)
【化2】
の化合物から選択されるアリルアルコールを、Pd、Ru、Rh、Ir、及びFeから選択される元素周期表の8族、9族及び10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下における一酸化炭素との反応によるカルボニル化に供し、前記反応を、さらにリガンドとしてのトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、シクロアルキルジアリールホスフィン、ジシクロアルキルアリールホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、トリヘテロシクリルホスフィン及びトリヘタリールホスフィンから選択される少なくとも1種の有機リン化合物の存在下で、並びに、アリルアルコールに対して準化学量論量の、脂肪族C1~C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4~C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7~C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8~C20-ジカルボン酸の無水物、及び式(III.1)及び(III.2)
【化3】
(式中、
R3は、水素、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキル、又は1個、2個、3個若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分岐のC2~C24-アルケニルであり、
R4、直鎖若しくは分岐のC1~C24-アルキルであるか、或いは
R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に、非置換C5~C7-シクロアルキルであり
R5は、C1~C5-アルキルである)
のアシル化アリルアルコールから選択される化合物A)の存在下で行い、
前記反応を100℃以下の温度で行う、方法。
【請求項2】
前記反応を、30バール(3MPa)以下の圧力で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボニル化を、添加されたハロゲン化水素酸の存在下で行わず、添加されたアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物又はハロゲン化アンモニウムの存在下で行わない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
カルボニル化の反応混合物のハロゲン化物含有量が、一般式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールの総含有量に対して、2mol%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
カルボニル化の反応混合物のハロゲン化物含有量が、一般式(II.1)及び(II.2)のアリルアルコールの総含有量に対して、1mol%以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化合物A)が、無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソプロピオン酸無水物、及び酪酸無水物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される化合物A)が、カルボニル化のための反応体として使用される式(II.1)又は(II.2)のアルコールに由来する式(III.1)又は(III.2)のエステルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用される化合物A)が、酢酸アリル、酢酸リナリル、酢酸ネロリジル、及び酢酸ファルネシルから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応を、さらに4-(ジ(C1~C4-アルキル)アミノ)ピリジン、4-(C1~C4-アルキル)ピリジン及び4-(1-ピロリジニル)ピリジンから選択される求核試薬の存在下で行う、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
求核試薬が4-(ジメチルアミノ)ピリジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
核試薬を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して0.01から5mol%の量で使用する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
遷移金属を、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して、0.5mol%以下の量で、前記反応のために使用する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
遷移金属が、Pdである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
有機リン化合物が、トリフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィンから選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化合物A)の総量が、化合物(II.1)及び(II.2)の総モル量に対して50mol%以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応を、さらにトリアルキルアミンの存在下で行う、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応を、添加された非プロトン性有機溶媒の存在下で行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応を、80℃以下の温度で行う、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応を、25バール(2.5MPa)以下の圧力で行う、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記反応のために使用される一般式(II.1)の化合物が、ネロリドール、リナロール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール及び1-ビニルシクロヘキサノールから選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
E-ネロリドールを前記反応のために使用する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
E-ネロリドールをカルボニル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチル-トリデカ-3,7,11-トリエン酸又はその塩を80:20から50:50の重量比で含む反応混合物を得る、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記反応のために使用される一般式(II.2)の化合物がファルネソールである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸
【化4】
(式中、
R1及びR2は、異なる定義を有し、R1は、IUPACに従って、より高い優先度を有する)
を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
式(I)のこのE/Z異性体混合物を、1種の異性体の富化に供する、
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(1)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で、式(I-E)の3-(E)酸を少なくとも部分的に3-(E)エステルに変換する酵素触媒エステル化に供して、3-(E)エステル、式(I-E)の非変換3-(E)酸及び式(I-Z)の非変換3-(Z)酸を含む組成物を得;
(2)(1)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を得、また、3-(E)エステルを含む組成物を得;
(3)式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した(2)で得られた組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させ;並びに
(4)場合により、(2)で得られた3-(E)エステルを切断して、式(I-E)の3-(E)酸を得てもよい、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式(I)の少なくとも1種の不飽和カルボン酸を含む組成物が、式(I-E)の3-(E)酸及び式(I-Z)の3-(Z)酸を含む式(I)のE/Z異性体混合物であり、
さらに、
(i)式(I)のE/Z異性体混合物を含む組成物を、アルコールの存在下でエステル化に供して、3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを得;
(ii)(i)で得られた3-(E)エステル及び3-(Z)エステルを、リパーゼが3-(E)エステルを少なくとも部分的に切断して式(I-E)の3-(E)酸をもたらすリパーゼ触媒酵素的加水分解に供して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iii)(ii)で得られた組成物を分離して、式(I-E)の化合物の3-(E)酸を含む組成物を得、また、非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物を得;
(iv)(iii)で得られた非変換3-(E)エステル及び非変換3-(Z)エステルを含む組成物をエステル切断に供して、式(I-E)の3-(E)酸又はその塩を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸又はその塩を富化した組成物を得;並びに
(v)(iv)で得られた式(I-E)の3-(E)酸を減少させるとともに式(I-Z)の3-(Z)酸を富化した組成物を異性化に供して、式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させる、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
式(I-E)の3-(E)酸の含有量を増加させるための異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
(-)-アンブロクス(VIII)
【化5】
を調製するための方法であって、
a1)請求項1から27のいずれか一項に記載の方法によって(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c1)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を得;
d1)(3E,7E)-ホモファルネソール(VI)を環化に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得るか;
又は
a2)請求項1から27のいずれか一項に記載の方法によって(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を用意し;
b2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の混合物を分離に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を得;
c2)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を環化に供して、スクラレオリド(VII)を得;
d2)スクラレオリド(VII)を還元に供して、(-)-アンブロクス(VIII)を得る、
方法。
【外国語明細書】