(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188122
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アスファルトバインダ中の添加剤としてのステロールブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20221213BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20221213BHJP
E01C 5/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K5/05
E01C5/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151275
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019506701の分割
【原出願日】2017-08-08
(31)【優先権主張番号】62/372,504
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518438209
【氏名又は名称】エー.エル.エム.ホールディング カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】518438210
【氏名又は名称】エルゴン アスファルト アンド エマルションズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レインケ,ジェラルド エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バウムガードナー,ゲイロン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハンズ,アンドリュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バージンアスファルトバインダの元々の特性のいくつかまたは全てを保持または修復するための、リサイクルした、または、再生アスファルトにおけるエージングの影響を遅らせる、低減するあるいは向上させる組成物および方法を提供すること。
【解決手段】バージンアスファルトバインダ、エージングしたアスファルトバインダ、またはその両方、および純粋ステロール:粗ステロールブレンドを含むアスファルトバインダ組成物であって、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含み、前記ステロールブレンドは、前記ステロールブレンドなしで同様にエージングしたアスファルトバインダと比較して、エージングしたアスファルトバインダ組成物に、より小さい負のΔTc値および減少したR値を与えるのに有効な量を含んでいる、アスファルトバインダ組成物を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バージンアスファルトバインダ、エージングしたアスファルトバインダ、またはその両方、および純粋ステロール:粗ステロールブレンドを含むアスファルトバインダ組成物であって、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含み、
前記ステロールブレンドは、前記ステロールブレンドなしで同様にエージングしたアスファルトバインダと比較して、エージングしたアスファルトバインダ組成物に、より小さい負のΔTc値および減少したR値を与えるのに有効な量を含んでいる、アスファルトバインダ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアスファルトバインダ組成物を用いて道路舗装を行う方法であって、前記アスファルトバインダ組成物は、調製され、骨材と混合され、ベース表面に塗布され、そして圧縮される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本願は、2016年8月9日に出願された米国仮出願62/372,504号に対する優先権を主張し、その開示は、参照により本願明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装材料は、舗装表面および橋台の肩部において、未舗装道路における砂利代用物として、ならびにバージンアスファルト舗装における未使用の骨材およびバインダにとっての代替物として、再利用されるときの用途が見つかっている、世界中で最も再利用されている材料の一つである。一般的に、再利用されるアスファルト舗装材料の用途は、表面より下の舗装材料層、または抑えた量のアスファルト基部および表面層に限られている。アスファルトが、時間とともに劣化し、その応力緩和を失い、酸化および脆化し、かつ割れ目を生じ易くなることもあり、このような用途は限られている。これらの結果は、アスファルトにおける有機成分(例えばビチュメン含有バインダ)の、特に環境要因への暴露による、エージングに、主に起因する。エージングしたバインダはまた、極めて粘性である。結果として、再生されたアスファルト舗装材料は、バージンアスファルトと異なる性質を有しており、エージングしたバインダの特性が長期間の性能に影響を与えないように加工しなければならない。
【0003】
混合物の長期的な能力に対する、アスファルトのエージングの影響を低下または遅延させるために、材料が多数研究されている。例えば、再生用添加剤は、再利用原材料(例えば、再生アスファルト舗装(RAP)および/または再生アスファルトシングル(RAS))に起こるエージングを元に戻す明らかな目的をもって、販売されている。アスファルトの回復が実際に起こり得るのではなく、これらの添加剤がRAPおよび/またはRASを含んでいる混合物に使用されているバージンバインダにとって軟化剤として働くというのが、もっともらしい。ある場合に、10重量%以上のこれらの軟化剤は、そのような混合物が製造されるときに、バージンバインダに添加される。
エージングは、ΔTc(エージング後の剛性臨界温度とクリープ臨界温度との差)を測定することによって評価され得る。軟化剤の使用によって、延長された期間の混合物のエージング後であっても許容可能なΔTcを示す再生したバインダ特性を有する混合物を製造することができる。しかし、これらのエージング後の許容可能なバインダの特性は、舗装の初期の間に剛性が著しく低下し得る混合物の製造という代償を払って取得される。
【発明の概要】
【0004】
開示されているのは、バージンアスファルトバインダの元々の特性のいくつかまたは全てを保持または修復するための、リサイクルした、または、再生アスファルトにおけるエージングの影響を遅らせる、低減するあるいは向上させる組成物および方法である。
【0005】
一実施形態において、本発明の開示物は、エージングしたアスファルトバインダの前記エージングを遅らせるまたは修復する方法であって、純粋ステロール:粗ステロールブレンドをアスファルトバインダ組成物に添加することを包含しており、前記アスファルトバインダ組成物は、バージン(virgin)アスファルトバインダ、エージングしたアスファルトバインダ、またはその両方を含み、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含んでいる、方法を提供する。
【0006】
一実施形態において、本発明の開示物は、アスファルトバインダ舗装製造物のためにエージングしたアスファルトバインダを再利用する方法であって、純粋ステロール:粗ステロールブレンドをアスファルトバインダ組成物に添加することを包含しており、前記アスファルトバインダ組成物は、バージン(virgin)アスファルトバインダ、エージングしたアスファルトバインダ、またはその両方を含み、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含んでいる、方法を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明の開示物は、バージンアスファルトバインダ、エージングしたアスファルトバインダ、またはその両方、および純粋ステロールと粗ステロールブレンドを含むアスファルトバインダ舗装組成物であって、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含んでいる、アスファルトバインダ舗装組成物を提供する。
【0008】
さらに別の実施形態において、本発明の開示物は、純粋ステロール:粗ステロールブレンドを、再生(reclaimed)アスファルトバインダに添加することを包含しているエージングしたアスファルトバインダを修復する方法であって、前記ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを10:90から90:10の重量比で含んでいる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、代表的な植物ステロール構造(例えばベータシトステロール)を示す。
【
図2】
図2は、ステロールを有している再精製したエンジンオイルボトム(re-refined engine oil bottoms(REOB))ブレンドについての剛性およびクリープ温度の結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、PG64-22+8%REOBおよび様々な濃度のトール油ピッチおよびステロールのブレンドの10%についての剛性、m値臨界温度およびΔTcを示すグラフである。
【
図5】
図5は、PG64-22+8%REOB+3つのレベルの純粋ステロールとPG64-22+8%REOBについてΔTcの比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示されたアスファルト組成物は、アスファルト組成物の保存、リサイクルおよび再利用を助けるアンチエージング(すなわち、エージングを低減するまたはエージングを遅らせる)ステロールブレンドを含んでいる。アスファルト組成物は、好ましくはエステルまたはエステルブレンドを含む環状有機組成物フリーである。開示された組成物は再生アスファルト、特に、廃棄エンジンオイルなどの軟化剤を含んだアスファルトの再生に、特別な価値を有する。
【0011】
開示されたアスファルト組成物は、向上した物理学的および流体力学的性質(剛性、有効温度範囲、および低温特性など)を有し得るリサイクルされたアスファルトバインダを提供する。いくつかの実施形態において、リサイクルしたアスファルト舗装、リサイクルしたアスファルトシングル、またはアスファルトブレンド中の双方から抽出されたバインダの使用を提供する。いくつかの実施形態は、リサイクルしたアスファルトの潜在的に有害な低温の効果を最少化する一方で、高温での高剛性を可能にするステロールブレンドの添加を提供する。
【0012】
本明細書に示されている見出しは単に読み易くするためのものであり限定として解釈されるべきではない。
【0013】
(略語、頭字語および定義)
「エージングした(Aged)アスファルトバインダ」とは、再生アスファルト中に存在している、または再生アスファルトから再生されたアスファルトまたはバインダを指す。エージングされたバインダは、エージングおよび外気温に曝された結果としてバージンアスファルトまたはバージンビチュメンのものと比較して高い粘度を有する。「エージングされた(aged)バインダ」とは、本明細書に記載の実験室のエージング試験方法を用いてエージングされたバージンアスファルトまたはバージンバインダを指す(例えばRTFOおよびPAV)。「エージングされた(aged)バインダ」とは、硬い、低品質の、または仕様外の、ここで開示するブレンドを添加することにより改良され得るバージンバインダ、特に、EN1427による65℃以上の環球式軟化点および12dmm以下のEN1426による25℃での透過値を有するバージンバインダも指し得る。
【0014】
「骨材」および「建設用骨材(construction aggregate)」は、舗装および舗装用途に有効な、石灰石、花崗岩、トラップ、砂利、破砕された砂利、砂、破砕された石、破砕された岩および鉱滓などの粒子状の鉱物材料を指す。
【0015】
「アスファルトバインダ」は、ビチュメンおよび、骨材(aggregate)と混合して舗装混合物を作るのに適した他の成分を任意で含んでいるバインダ材料を指す。局地的な使用によると、「ビチュメン」は、「アスファルト」または「バインダ」と相互交換可能に、または代替として用いられ得る。
【0016】
「アスファルト舗装」とは、アスファルトおよび骨材の圧縮されたブレンドを指す。
【0017】
「アスファルト舗装混合物」、「アスファルト混合物」および「混合物」とは、圧縮されていないアスファルトと骨材の混合物を指す。局地的な使用によると、「ビチュメン混合物(“bitumen mix”)」または「ビチュメン混合物“bituminousmixture”」とは、「アスファルト舗装混合物」、「アスファルト混合物」または「混合物」と相互交換可能に、または代替として用いられ得る。
【0018】
「瀝青(ビチュメン)」は、天然または製造された、主に高分子量の炭化水素、黒色または暗色(固体、半固体または粘性の)セメント質の物質を指し、アスファルト、タール、ピッチおよびアスファルテンはその典型である。
【0019】
「粗製(Crude)」は、ステロールを含む物質について用いられる場合、十分に精製されておらず、ステロールに追加の成分を含み得るステロールを意味する。
「ニート(Neat)」または「バージン(Virgin)」は、アスファルト舗装またはアスファルトシングルにおいてまだ用いられていない、またはアスファルト舗装またはアスファルトシングルからリサイクルされたものであり、パフォーマンス(Performance)グレードバインダを含み得る。
【0020】
「PAV」は加圧されたエージングベッセル(Pressurized Aging Vessel)試験を指す。PAV試験はASTMD6521-13、加圧されたエージングベッセル(PAV)を用いたアスファルトバインダの加速されたエージングのための標準的技法(Standard Practice for Accelerated Aging of Asphalt Binder Using aPressurized Aging)に記載されているアスファルトの加速されたエージングを促進する。
【0021】
ステロールまたはステロールの混合物に用いられる場合、「純粋」とは、少なくとも技術的グレードの純度または少なくとも試薬グレードの純度を有することを意味する。
【0022】
「再生アスファルト」および「リサイクルされたアスファルト」とはRAP、RASおよび古い舗装、シングル製造の廃物、屋根用フェルトおよび他の製造物または適用物を指す。
【0023】
「再生アスファルト舗装」および「RAP」とは、以前に使用された道路または舗装または他の類似の構造物から除去または掘削され、任意の種類の公知の方法(粉砕すること、裂くこと、破壊すること、破砕することまたは微粉化することが挙げられる)によって再利用のために処理されたアスファルトを指す。
【0024】
「再生アスファルトシングル」および「RAS」とは、資源(屋根剥ぎ取り物(roof tear-off)、製造業者の廃棄アスファルトシングルおよび使用後廃棄物が挙げられる)由来のシングルを指す。
【0025】
「RTFO」とは、回転薄膜加熱炉試験(Rolling Thin Film Oven Test)を指す。RTFOは、ASTMD2872-12e1、アスファルトの移動膜(Moving Film)における熱および空気の影響についての標準試験方法(回転薄膜加熱炉試験)(Standard Test Method for Effect of Heat and Air on a Moving Film ofAsphalt(Rolling Thin-Film Oven Test))に記載されるように、アスファルトバインダの短期間エージングをシミュレートするためのテストである。
【0026】
「軟化剤」とは、アスファルト混合物の製造処理の間の、新しいビチュメンまたはアスファルト混合物へのリサイクルしたアスファルトの混合および組み込みを容易にする(または促進する)添加剤を指す。
【0027】
「ステロールブレンド」とは、アスファルトバインダのエージングの速度を遅らせる、または、バージンアスファルトやバージンバインダが有している元々の特性のいくつかまたは全部を保持あるいは回復するために、エージングしたバインダ(例えばリサイクルした、または再生したアスファルト)と組み合わされ得る純粋ステロールおよび粗ステロールの組成物、混合物およびブレンドを指す。
【0028】
「ΔTc」は、剛性臨界温度とクリープ臨界温度との間の差を指す。剛性臨界温度とは、ASTM D6648に準拠してテストされたバインダが、300Mpaの曲げクリープ剛性を有する温度であり、クリープ臨界温度とは、ASTM D6648に準拠してテストされたクリープ時間に対する曲げクリープ剛性の傾きが、絶対値0.300を有する温度である。あるいは、剛性臨界温度およびクリープ臨界温度は、Sui, C., Farrar, M., Tuminello, W., Turner, T., A らによる「New Technique for Measuring low-temperature Properties of AsphaltBinders with Small Amounts of Material, Transportation Research Record: No1681, TRB 2010」に記載された4mm動的剪断レオメータ(DSR)試験および分析手法によって決定することができる。Sui, C., Farrar, M. J., Harnsberger, P. M., Tuminello, W.H., Turner,T. F.らによる「New Low Temperature Performance GradingMethod Using 4 mm Parallel Plates on a Dynamic Shear Rheometer」も参照されたい。「TRB Preprint CD, 2011」では、剛性臨界温度とは、緩和弾性率が143MPaに等しくなる温度であり、クリープ臨界温度とは、緩和時間に対する緩和弾性率のマスター曲線の傾きの絶対値が0.275に等しくなる温度である、とされている。
【0029】
全ての重量、部および割合は他に記載されていなければ重量当たりである。
【0030】
(バインダ)
現在のビチュメン舗装技法は、舗装されるビチュメン中の成分としてRAPおよび/またはRASの高いパーセンテージの使用を含む。舗装混合物の重量当たり、典型的にRAP濃度は、50%に達し、RAS濃度は6%に達し得る。典型的なRAPのビチュメン含量は5~6重量%であり、典型的なRASのビチュメン含量は20~25重量%である。結論として、重量当たり50%のRAPを含んでいるビチュメン混合物は、最終ビチュメン混合物に寄与する2.5%~3%RAPビチュメンを含み、重量当たり6%のRASを含んでいるビチュメン混合物は、最終ビチュメン混合物に寄与する1.2%~1.5%RASビチュメンを含むであろう。RAPおよびRASの両方の多くの例において、リサイクルした添加剤はバインダ混合物に組み合わされる;例えば20%~30%RAPおよび5%~6%RASはバインダ混合物に組み込まれる。RAPおよびRASの典型的なバインダ含量に基づいて20%~30%RAPおよび5%~6%RASを含んでいるバインダ混合物は、RAPおよびRASの組み合わせに由来する(総混合物重量当たり)2%~3.3%程度のバインダとなり得る。典型的なビチュメン舗装混合物は、約5.5%の総ビチュメンを含んでおり、従って、これらのリサイクル源からのビチュメン混合物中、約36%~60%程度の総ビチュメンが存在し得る。
【0031】
ビチュメン混合物に用いられるバージンバインダに関連するこれらの再生(reclaimed)資源中のビチュメンの性質は、表1に示されている。ΔTcパラメータを決定するために、Western Research Instituteの4mm動的剪断レオメータ(DSR)試験手法およびデータ解析方法を採用した(Sui, C., Farrar, M., Tuminello, W., Turner, T., A New Technique forMeasuring low-temperature Properties of Asphalt Binders with Small Amounts ofMaterial, Transportation Research Record: No 1681, TRB 2010を参照のこと。また、Sui, C., Farrar, M. J., Harnsberger, P. M., Tuminello, W.H., Turner,T. F., New Low Temperature Performance Grading Method Using 4 mm ParallelPlates on a Dynamic Shear Rheometer. TRB Preprint CD, 2011も参照のこと)。
【0032】
【表1】
表2はエージングの異なる期間後の、バージンバインダおよび使用後廃棄物シングルから再生したビチュメンによって製造したブレンドの高温および低温の特性を示す。表2に示されているのは、また、RAPおよび/またはRASを含んでいる混合物の高温および低温特性である。これらの混合物のいくつかは延長した実験室のエージングを受け、いくつかは界磁鉄心から得たものである。
【0033】
【表2】
表1および2は高いバインダ置換レベルのリサイクルした材料、特に使用後廃棄物シングルを組み入れることの影響を示している。データは、これらのリサイクルした成分からビチュメンの影響を緩和し、最終混合物中の総ビチュメンのさらなる酸化的エージングを遅らせるためのビチュメンおよびビチュメン混合物に添加剤を組み入れることの望ましさを示している。表2の最後の3列は、空気-混合物の境界面から離れるほど、ΔTcパラメータへの影響は小さくなることを示している。このパラメータはバインダ特性におけるエージングの影響、より詳細にはバインダの曲げ特性におけるエージングの影響を評価するために用いられ得る;曲げ特性は「低温クリープグレード」として参照される特性によって特徴づけられる。
【0034】
2011年に公開された研究は、界磁鉄心からの再生したバインダのデータに基づいて、ΔTcは舗装が非ロード関連性の混合物のクラッキングの危険があるポイントに到達したとき、また、潜在的故障限界に到達したときを同定するように用いられる。その研究において、著者らは、クリープ温度およびm-臨界温度から剛性臨界温度を引き、劣った性能特性を有するバインダは正であるΔTc値を算出した。2011年の産業調査は減算の順序を逆にすることに同意し、従って、剛性臨界温度バインダから減算される場合、m-臨界温度が劣った性能特性を示す負のΔTc値を算出する。産業は通常劣った性能のバインダが、より直観的と思われる低下した性能としてより負になることに同意した。従って、今日産業で、および本願に用いられているように、ΔTcの警告限界値は-3℃であり、潜在的失敗(failure)値は-5℃である。言い換えれば、-5℃は-3℃より負であり、従って、-5℃のΔTc値は-3℃のΔTc値よりも悪い。
【0035】
2つの連邦道路局専門家任務群会議における報告は、フィールド試験プロジェクトから再生されたバインダのΔTc値と疲労クラッキングに関連する舗装の損傷の重篤度との間の相関を示した。さらに、これらのフィールド試験プロジェクトを構築するために用いられるバインダが40時間のPAVエージングに供されるとき、ΔTc値は、疲労クラッキング、特にビチュメン混合物表面におけるバインダの緩和の消失の結果と一般に考えられる下向きの疲労クラッキングに関連する舗装の損傷に相関を示した。
【0036】
従って、過剰な負のΔTc値の発現について低減した感度を有するビチュメン材料を含むビチュメン混合物を得ることが望ましい。
【0037】
表1におけるデータは、製油所において製造された典型的なバージンバインダが40時間のPAVエージング後、-3℃を超えるΔTcを維持できることを示している。さらに表1のデータは、RAPから再生したバインダは-4℃を下回るΔTcを有し、新たなビチュメン混合物の高いRAPレベルの影響が評価されるべきであるということを示している。さらに、RASを再生したバインダについて極端に負のΔTc値はビチュメン混合物中のRASの組み込みの全体的な影響に対しさらなる精査を必要とする。
【0038】
表2は実験室エージング化でのビチュメン混合物のエージングの後、混合物からのバインダの再生を行うことが可能であること、および再生されたバインダのΔTcの測定を示している。AASHTO R30における、ビチュメン混合物の長期間のエージングの手順は、85℃で5日間の圧縮した混合物のエージングを詳述している。いくつかの調査研究ではより厳しいエージングの影響を調査するためにエージング時間を延長した。最近、エージングは12および24時間、135℃でビチュメン混合物を消失させ、いくつかの例では長期間についても圧縮混合物のエージングに選択肢として示された。これらのエージングプロトコールの目標は、サービスの5年以上、より好ましくはサービスの8~10年間のフィールドエージングの典型と同様の迅速なバインダエージングを製造することである。例えば、舗装の上部1/2インチから抽出した再生アスファルトまたはリサイクルしたアスファルトのΔTcは、135℃で12時間のエージングより厳しかったが、135℃で24時間よりは厳しくなかった。
【0039】
表2の最初の2列のデータは、なぜ、リサイクル産物を含む混合物の長期間のエージングが重要であるのかを示している。エージングしていない混合物から再生されたバインダ(列1)は、-1.7℃のΔTcを示したが、5日エージングした混合物から再生されたバインダは、-4.6℃のΔTcを示した。
【0040】
(純粋ステロール:粗ステロールブレンド)
開示されたステロールブレンド(純粋ステロール:粗ステロール)は、アスファルトバインダのエージング速度を変化させ得る(例えば、減少、または遅らせる)、または、エージングされた、またはリサイクルされたバインダを修復または再生してバージンアスファルトバインダのいくつかまたはすべての特性を示す。例えば、ステロールブレンドは、物理的または流体学的性質(アスファルトバインダの剛性、有効温度範囲、および低温特性など)を、変更または向上させ得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記ステロールブレンドは、トリテルペノイド(特にステロールまたはスタノール)の分類に属する。開示されているブレンド(例えばトリテルペノイド)は、アスファルテンとともに有効に機能し得る。アスファルテンは、いくつかのレベルの不飽和を伴う広範な範囲の縮合環系を包含する。典型的なバインダのアスファルテン含量は10%未満から20%を超える範囲であり得る。アスファルテンは概して、n-ヘプタン中で不溶である物質として説明されている。正確な構造は未知であり、異なるバインダの性能挙動に基づいて任意の2つのバインダ、特に異なる粗製の資源由来のものにおけるアスファルテンの構造が同一であることはありそうにない。アスファルテンはその色および剛性およびバインダ中のそれらの量がバインダをエージングするにつれて増大するバインダをもたらす。結論として、RAPおよび/またはRASまたは両方の組み合わせの添加はアスファルテン含量を増加させる要因となる。カルボニルおよびスルホキシドなどの他の酸化産物に伴うアスファルテン含量の増加は、ビチュメン混合物の剛性およびその最終的な失敗の原因となる。それらの化学的性質そのものにより、アスファルテンは脂肪族化合物中に容易に溶解可能ではない。芳香族炭水化物は、アスファルテンを容易に溶解し、芳香族プロセスオイルはリサイクルした混合物に用いられた。しかし、これらの油は、列挙された潜在的発がん物質を包含する多核性の芳香族化合物を含んでおり、それゆえ好ましい添加剤ではない。ほとんどの植物ベースの油は、あるレベルの不飽和を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素であり、それゆえ混合物中のバインダ全体の軟化においてエージングを遅らせるのに有効でない。
【0042】
トリテルペノイドは、ステロール、トリテルペン サポニン、および関連する構造物を含む植物の天然の産物の主要な群である。トリテルペノイドは天然または合成の原料からなり得る。典型的にそれらは植物材料から抽出によって得られる。トリテルペノイドの単離のための抽出処理は例えば、国際出願WO2001/72315Al号およびWO2004/016336Al号に記載されており、それらの全文が参照によって本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0043】
トリテルペノイドは、植物ステロールおよび植物スタノールを包含している。開示されたトリテルペノイドは、本明細書に記載された任意の植物ステロールまたはスタノールのエステル化されていない形態を指す。
【0044】
例示的な植物ステロールとしては、カンペステロール、スティガステロール、スティグマステロール、β-シトステロール、Δ5-アベノステロール、Δ7-スティガステロール、Δ7-アベノステロール、ブラシカステロールまたはそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、ステロールブレンドは重水なステロールとしてβ-シトステロールを含んでいる。市販されている純粋なステロールおよび純粋なステロールのブレンドとしてはβ-シトステロール(β-シトステロール~40-60%;カンペステロール~20-40%;カンペステロール~5%)として参照される、MP Biomedicals (カタログ番号02102886)から入手可能であるものが挙げられる。いくつかの実施形態において、純粋なステロールは、少なくとも70重量%のステロールを有しており、いくつかの実施形態において、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%または少なくとも95重量%を有している。
【0045】
例示的な粗植物ステロールとしては、顕著な量のステロールを含んでいる、改変されたまたは改変されてない天然の産物を包含し、コーン油、小麦麦芽オイル、サルサパリラの根、ダイズピッチおよびコーン油ピッチのような多様な植物資源が挙げられる。例えば、トール油ピッチは木材、特にマツ材から紙を調製する処理の間に得られる。トール油ピッチは、ロジン、脂肪酸、酸化物、エステル化した物質を含んでおり、かなりの程度の部分はステロールエステルである。粗ステロールの植物資源は種々の製造プロセスから残ったフーツ(foots)またはテーリング(tailing)であるものにおいては高価ではない。
いくつかの実施形態において、粗ステロール源としては、スティグマステロール、β-シトステロール、カンペステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、コレステロールおよびラノステロールまたはそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、粗ステロール源としては、ダイズ油、コーン油、米糠油、ピーナッツオイル、ヒマワリ種子油、ベニバナ油、綿実油、ナタネ油、コーヒー種子油、小麦麦芽オイル、トール油および羊毛脂が挙げられる。いくつかの実施形態において、粗ステロールとしては、生物由来資源または生物由来資源の部分的に蒸留した残渣が挙げられる。いくつかの実施形態において、粗ステロールとしては、トール油ピッチ、ダイズ油またはコーン油が挙げられる。
【0046】
開示された植物資源由来の、オイルテ-リングまたはピッチは好適な粗ステロール源である。米国特許第2,715,638号(1955年8月16日、Albrecht)には、トール油ピッチからステロールを再生するための処理であって、それにより中性化処理によって脂肪酸不純物が除去される処理を開示している。これに従えば、ステロールエステルは鹸化され、遊離のステロールは続いて再生され、イソプロパノールで洗浄され、そして乾燥される。十分に精製されれば、再生された遊離のステロールは、開示された純粋ステロール:粗ステロールブレンド中の粗ステロールとしてではなく、純粋ステロールとして用いられてもよい。
粗ステロールは好ましくは植物資源から得られる。粗ステロールは、所望のステロールまたは複数のステロールに加えて成分を含んでいてもよい。粗ステロールのための例示的な植物資源としてはトール油ピッチ、粗トール油、サトウキビ油、温泉スキミング(hot well skimmings)、綿実ピッチ、ダイズピッチ、コーン油ピッチ、小麦麦芽油またはライ麦麦芽オイルが挙げられる。いくつかの実施形態においてトール油ピッチは粗ステロールの原料である。トール油ピッチは約30~40%の不鹸化分子を含み得る。不鹸化物はアルカリ水酸化物と反応しない分子である。トール油ピッチ中の維持されている脂肪酸およびロジン酸は容易に水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと反応して、それにより不鹸化物は容易に分離し得る。不鹸化分画の45%はシトステロールを含み得ることが示された。従って、トール油ピッチサンプルはおよそ13.5重量%~18重量%のステロール分子を含み得る。いくつかの実施形態において、前記粗製ステロールは、食品等級に満たない純度(例えば85重量%ステロール)を有し得るか、または85重量%を超えてステロールを含んでおり、材料を食品用途に不適当にする不純物もしくは混入物も含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、粗ステロールは、コレステロールなどの動物に由来し得る。
【0048】
アスファルト組成物に添加される純粋ステロール:粗ステロールブレンドは、例えば、アスファルト組成物におけるバージンバインダの約0.5~約15重量%、約1~約10重量%または約1~約3重量%の範囲であってもよい。ある実施形態では、ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを、10:90から90:10の比率で包み得る。ある実施形態では、ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを、少なくとも20:80、30:70または40:60の比率で含み得る。さらに、ある実施形態では、ステロールブレンドは、純粋ステロール対粗ステロールを、80:20、70:30または60:40よりも少ない比率で含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、純粋ステロール:粗ステロールブレンドは、再生ビチュメン材料を含んでいるバインダにおける流体力学的特性の劣化を変更、低下、または遅延させ得る。当該再生ビチュメン材料は、軟化剤(例えば、RAS、RAP、REOB、バージンパラフィンもしくはナフタレン基油、未処理もしくは未再精製の排ドレーン油もしくは廃エンジンオイル材料、真空塔のアスファルト増量剤、パラフィン系またはナフタレン系のプロセスオイル、または潤滑基油)を含んでいる。いくつかの実施形態において、アスファルトまたはアスファルト舗装に使用されるときのステロールブレンドは、アスファルトまたはアスファルト舗装がエージングされるときの-5℃以上のΔTcを維持している。
【0050】
いくつかの実施形態において、純粋ステロール:粗ステロールブレンドは、-5.0℃以上のΔTcを有しているアスファルトバインダ組成物をもたらし得る。いくつかの実施形態において、ステロールブレンドは、40時間PAVエージング後に、-5.0℃以上のΔTcを有しているアスファルトバインダをもたらし得る。さらなる他の実施形態において、開示されているステロールブレンドは、エージングの後に、ステロールブレンドなしで同じようにエージングされたバインダと比べたときに、より小さい負のΔTcおよび減少したR値を有しているバインダをもたらし得る。
【0051】
(軟化剤および他の添加剤)
バインダにおいて用いられ得る軟化剤としては廃棄エンジンオイルおよびREOBを得るためにさらに処理され得る廃棄エンジンオイルが挙げられる。REOBは安価な軟化添加剤であり、減圧下または大気圧条件のいずれかでの廃棄エンジンオイルの蒸留後に維持されている残留物から得られるアスファルト増量剤である。再精製処理から得た蒸留画分は新たな乗り物用の潤滑油に再処理されるが、底部は、内部燃焼エンジンからの金属および他の粒子の存在により利用可能な市場がなかった。また、これらの底部はパラフィン炭化水素および元の潤滑油に組み入れられた添加剤を含んでいる。長年の間、REOBは、アスファルト増量剤としていくつかの会社により用いられていたが、使用は局所的であった。
【0052】
より多量の廃棄エンジンオイルが、製造され、REOBとしてアスファルトバインダ市場で販売されている。REOBの使用は、エージングされたときに、-4℃以下のΔTc値を有し、結果として舗装において劣った性能を有する混合物をもたらす。REOBが5重量%という低いレベルでいくつかのアスファルトに添加される場合、結果として40時間後のΔTcを生じる。PAVエージングは-5℃以下になり得る(すなわち、より負である)。金属試験の手段によってREOBを含むことを示されたフィールド混合物から再生されたバインダは、同一のエージおよび同一の骨材および同一時間舗装されているが、REOBを含んでいないフィールド混合物よりも大きい損傷を示した。
【0053】
開示された純粋ステロール:粗ステロールブレンドは、ΔTc(例えば、40時間のPAVエージングを用いて評価される)における廃棄エンジンオイル(例えばREOB)の影響を緩和し、リサイクルしたアスファルトのエージング率を一新または遅延させ得る。
【0054】
開示されたステロールブレンドは、他の軟化剤の影響を緩和するために用いられ得る。これらの他の軟化剤としては、合成またはバージン潤滑油(ExxonMobil CorpのMOBIL(商標)1 合成油、およびChevron USA Inc.のHAVOLINE(商標)10W40油)、バージンパラフィンまたはナフテンベース油、未処理または再精製していない廃棄排油または廃棄エンジンオイル材料、減圧塔アスファルト増量剤(エンジンオイルを用いた再精製から得た蒸留画分)およびパラフィンまたはナフテンプロセスオイルが挙げられる。
【0055】
アスファルト組成物は、開示されたステロールブレンドに加えて他の成分を含み得る。そのような他の成分としては、エラストマー、非ビチュメン質のバインダ、接着促進剤、軟化剤、復活剤および他の好適な成分が挙げられる。
【0056】
有効なエラストマーとしては、例えば、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、反応性エチレンターポリマー(例えば、ELVALOY(商標))、ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックターポリマー、イソプレン-スチレンブロックコポリマーおよびスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックターポリマー、クロロプレンポリマー(例えばネオプレン)および類似物が挙げられる。乾燥したエラストマー添加剤が地面ゴム材料として挙げられ得る。
【0057】
従来の復活剤は、ASTM D4552に規定されている、RA-1、RA-5、RA-25およびRA-75などのタイプに分類される。開示されるアスファルト組成物における使用のための復活剤は、例えば、RA-1復活剤、RA-5復活剤、またはそれらの混合物などのマルテン留分に類似していてもよい。復活剤の例としては、Holly Frontier から入手できるHYDROLENE (商標)ブランドのアスファルトオイル、American Refining Group社から入手できるKENDEX (商標)ブランドのアスファルトオイル、またはTricor Refining社から入手できるGolden BearPreservation Products RECLAMITE (商標)ブランドのアスファルトオイルがある。ASTM基準D4552を満たし、RA-1に分類されるアスファルトオイルは、PG64といったより硬いアスファルトに適しており、RA-5、RA-25およびRA-75オイルは、PG52など粘度の低いアスファルトにも使用されてもよい。復活剤は、芳香族および樹脂が豊富で、少量の飽和化合物を含む再生剤も含み得る。
【0058】
開示されたアスファルト組成物は、適用可能なASTM仕様書に記載されているような多くの標準試験方法に従って性状決定され得る。例えば、開示された組成物は、流体学的試験(すなわち動的剪断レオメータ、回転粘度、および曲げビーム)を用いて性状決定され得る。
【0059】
低温(例えば-10℃)において、道路表面はクラッキング耐性が必要である、周囲条件下で、剛性および疲労特性は重要である。上昇した温度において、道路はアスファルトが軟らかくなり過ぎる場合、わだち掘れに耐える必要がある。3つの一般的な温度条件で舗装された道路表面の性能と関連するバインダの流体学的特性を同定するためにアスファルト産業によって基準が確立された。
【0060】
ある実施形態では、バインダはバインダのブレンドを含む。ある実施形態では、バインダのブレンドは、バージンバインダと再生アスファルトから抽出したバインダとを含む。例えば、RAS材料から抽出されるバインダは、製造業者の廃棄アスファルトシングル、消費者の廃棄アスファルトシングル、または製造業者、消費者の廃棄アスファルトシングルのブレンドから抽出されたバインダの混合物から抽出してもよい。ある実施形態では、バインダブレンドは、バージンバインダおよびリサイクルされたバインダを含んでもよい。バージンバインダは、バインダブレンドの60~95重量%であり得るし、RASなどの再生アスファルトの2~100重量%であり得る。ある実施形態では、バインダブレンドは、バージンバインダの約0.5~約15.0重量%のステロールブレンドの添加を含み得る。ある実施形態では、バインダブレンドは、約0.2~約1.0重量%の純粋ステロール:粗ステロールブレンドの添加を含み得る。ステロールブレンドは、RASを含むアスファルトバインダブレンドの高温および低温特性、ならびに高温側および低温側の両方に対するPGグレードを向上させることが示された。
【0061】
純粋ステロール:粗ステロールブレンドをバージンバインダと混合またはブレンドすることによって、アスファルトバインダ組成物を調製し、ビチュメン混合物またはブレンドを作製してもよい。ビチュメン混合物またはブレンドは、リサイクルされたアスファルト(例えば、RASおよび/またはRAP)および骨材に添加することができる。当業者ならば、成分をどのような順序で添加し、混合することも可能であると認識するであろう。
【0062】
アスファルト組成物は、機械的または熱的対流を適用することによって調製され得る。ある実施形態では、アスファルト組成物を調製する方法には、純粋ステロール:粗ステロールブレンドを約100℃~約250℃の温度でバージンアスファルトと混合またはブレンドすることが含まれる。ある実施形態では、ステロールブレンドは、約125℃~約175℃、または180℃~205℃の温度でバージンアスファルトに混合される。ある実施形態では、アスファルト組成物は、アスファルト、ステロールブレンドおよび軟化剤と混合される。さらに別の実施形態では、アスファルト組成物は、RAS、ステロールブレンドおよび骨材と混合される。
ΔTcパラメータを決定するために、上述したような4mmDSRの試験手順およびWestern Research Instituteのデータ分析が使用された。DSRの試験手順および方法は、2016年6月10日に出願された国際出願PCT/US2016/37077号、2016年12月5日に出願された国際出願PCT/US2016/064950号、および2016年12月5日に出願された国際出願PCT/US2016/064961号に開示されており、それらの全文が参照によって本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0063】
また、ΔTcパラメータは、AASHTO T313またはASTM D664にもとづく、曲げビームレオメータ(Bending Beam Rheometer(BBR))試験方法を用いて決定され得る。BBR試験方法が用いられる場合、試験は、300MPaの剛性失敗基準についての結果、および0.300のクリープまたはm-値失敗基準が失敗基準以下である結果で得られ、ある結果は前記の失敗基準より上の結果が得られるように、十分な温度の数で行われることが用いられるということが重要である。ΔTc値が-5℃未満であるバインダについてのある例においては、これは3つ以上の試験温度でBBR試験を行わなければならない。前記に参照されるBBR基準要件を満たしていない場合のデータから算出されるΔTc値は完全に正確であるとは考えられない。
【0064】
舗装表面の性質および変化はアスファルトにおいて明らかにされ得る。これらの表面の性質は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて決定される。AFMは、以下の参照、R. M. Overney, E. Meyer, J. Frommer, D. Brodbeck, R. Luthi, L.Howald, H.-J. Guntherodt, M. Fujihira, H. Takano, and Y. Gotoh, “FrictionMeasurements on Phase-Separated Thin Films with a Modified Atomic ForceMicroscope”, Nature, 1992, 359, 133-135;
E. zer Muhlen and H. Niehus,“Introduction to Atomic Force Microscopy and its Application to the Study ofLipid Nanoparticles”, Chapter 7 in Particle and Surface CharacterizationMethods, R. H. Muller and W. Mehnert Eds, Medpharm Scientific
Pub, Stuttgart,1997; H. Takano, J.R. Kenseth, S.-S. Wong, J.C. O’Brien, M.D. Porter, “Chemicaland Biochemical Analysis Using Scanning Force Microscopy”, Chemical Reviews1999, 99, 2845-2890に記載されている。
【0065】
ATFは、高分解能、原子および分子レベルの3次元イメージングを示す走査型顕微鏡の一種である。ATFは、形態的なイメージングおよび力測定の両方に用いられ得る。形態的なイメージングは、サンプル表面を横断するカンチレバー/チップをスキャンすることに関与する。レーザビームはカンチレバーの背後に反射し、カンチレバー偏向が一感受性の光ダイオード検出器で検出される。この偏向は、サンプル表面における位相的高さの変化を測定するために電子システムによって処理される。
【0066】
表面の欠陥は、イメージ表面上の平均の粗さとして表される、表面粗さとして、μmにおいて表されるサンプルの表面の外側に伸びている当該粗さの平均高さに基づいて、そして、μm2として表される欠陥データ(すなわち、サンプルの非平滑正面)を用いて、およびイメージ領域のパーセントとして(例えば400μm2のイメージ領域のパーセントとして)測定され得る。AFMはアスファルト組成物におけるステロールブレンドの効果を測定するために用いられ得、上述の2016年12月5日に出願された国際出願PCT/US2016/37077号、PCT/US2016/064950号および2016年12月5日に出願されたPCT/US2016/064961号では、アスファルト組成物に対する純粋ステロールの効果を測定するために用いられた。
【0067】
小さなビーズをスチール製スタブに適用することによって、AFMのためのバインダを調製することができる。ナイフを使って、ビーズをスタブの表面に対して擦り付け、得られたフィルムを115℃まで約2分間加熱してフィルムの表面を平滑にすることができる。AFM画像は、Bruker Dimension Icon-PT(商標)走査プルーブ顕微鏡にて、室温で取得することができる。局所画像およびフリクション画像の両方とも、アスファルトフィルムを、室温で72時間から96時間アニールした後に取得することができる。アンチモニを注入したシリコン製のカンチレバーチップAFMプローブ(Bruker 社製)を測定に使用することができる。局所画像は、表面の特徴に関連付けられた垂直方向の上昇および降下を示し、フリクション画像は、弾性、接着特性に基づく表面の材料の区別化を可能にする。
【0068】
いくつかの実施形態において、アスファルト組成物におけるエージングを同定し、エージングを遅らせるか、エージングされたアスファルトを修復する方法は、表面の損傷の有無についてアスファルト組成物を分析することを包含し、アスファルトは最小の表面損傷が検出された場合にエージングされているものとして決定し、エージングされたアスファルトバインダ組成物に純粋ステロール:粗製ステロールブレンドおよびバージンバインダを添加して、さらなるエージングを低減または遅延させる、方法である。いくつかの実施形態において、エージングされたアスファルト組成物としてはリサイクルされたアスファルト、軟化剤および復活剤を含んでいる。例えば、いくつかのアスファルト組成物は、RAS,RAP、REOB、バージンパラフィンベース油またはナフテンベース油、無処理または再精製していない廃棄排油または廃棄エンジンオイル材料、減圧塔アスファルト増量剤、パラフィンまたはナフテンプロセスオイルおよび潤滑ベース油を含んでいる。ある実施形態において、ステロールブレンドを含むアスファルト組成物の平均の粗さは1.5~350μm、3.6~232μmまたは10~230μmである。
本発明は、以下の限定されない実施例においてさらに例示されている。当該実施例において、すべての部およびパーセンテージは他に示されていなければ重量当たりである。
【実施例0069】
〔実施例1〕
純粋ステロールのみと比較した粗ステロールおよび純粋ステロールのブレンドのREOBを含んでいるバインダのエージング特性に対する効果を精査するために、PG64-22ベースのアスファルトを使用した。様々なサンプルをASTM D65217に従ってPAV中で20時間および40時間エージングし、ASTM D2872に従ってRFTOによってエージングした。
【0070】
ブレンドは、SPXFlow 社製の低剪断LIGHTNIN(商標)ミキサを用いて1ガロンの容器中で187.8℃から-204℃(370~400°F)の温度で成分をおよそ30分間混合して作製された。
【0071】
ブレンドの成分は、92%64-22バインダ、8%REOB、ならびにトール油ピッチ(Union Camp社から入手)の形態の粗ステロールおよび純粋ステロール(MPBiomedical社から入手)のブレンドとして提供された様々な濃度のステロールを含む。
【0072】
トール油ピッチなどの粗ステロール原料中のステロールは、約15%のステロールを含有すると仮定した。従って、以下のサンプルは、以下のように推定されるステロール量を含む。
【0073】
1. 85%トール油ピッチ+15%純粋ステロール:ステロール量はトール油ピッチ由来(0.85×15)+純粋ステロール由来(15)=27.7%の推定されたステロール
2. 60%トール油ピッチ+40%純粋ステロール:ステロール量はトール油ピッチ由来(0.60×15)+純粋ステロール由来(40)=49%の推定されたステロール
3. 30%トール油ピッチ+70%純粋ステロール:ステロール量はトール油ピッチ由来(0.3×15)+純粋ステロール由来ステロール量(70)=74.5%の推定されたステロール
前記各ブレンドの10%を、8%REOBを含むPG64-22に添加した場合、(トール油ピッチ中15%のステロールという仮定に基づくと)、前記各ブレンドは2.8%のステロール、4.9%のステロール、および7.4%のステロールを含むことになる。
【0074】
結果は、以下の表3に示す。
【0075】
【表3】
図4は、表3に示す剛性臨界温度、m値臨界温度およびΔTc値についてのデータのプロットである。
図4にプロットしたデータは、トール油ピッチおよび純粋ステロールのブレンドが、トール油ピッチおよびステロールを含まないブレンドに対して、8%REOBを含むPG64-22のΔTc値を向上させることを示す。ブレンド中の総ステロールの用量反応があり、バインダのエージングの進行に伴うΔTc値が全般的な劣化があると思われる。しかし、ブレンド中のより高レベルのステロールによって、60時間のPAVエージング後でも許容できるΔTc特性を維持する。
【0076】
表4は、アスファルトにブレンドしたトール油ピッチ、アスファルトにブレンドした純粋ステロール、およびトール油ピッチの純粋ステロールとのブレンドそれぞれについての、PG64-22+8%REOBとのそれらのブレンドにおける、20時間および40時間PAVエージングに対する独立の効果を示している。
【0077】
【表4】
表4のデータ、5%および10%トール油ブレンドおよび2.5%純粋ステロール組成物に対する20時間PAVの残留物については、ΔTc値は同様であり、PG64-22中に8%REOBを含み、その他の添加剤を含まないブレンドよりも、およそ1℃だけ高い。このことは、バインダ中の8%REOBの劣化に対するこれらのブレンドの影響は小さいということを示している。10%用量のトール油+純粋ステロールにより産生した20時間PAV残留物に対するΔTcのデータは、トール油のみあるいは純粋ステロールのみのブレンドよりもおよそ1℃高い結果を示した。40時間PAVの残留物については、5%および10%トール油ブレンドおよび2.5%純粋ステロールの組成物では、同様の結果を示し、すべて、PG64-22+8%REOBのブレンドよりも、1~2℃高いΔTc値を示している。5%および7%純粋ステロールブレンドは、PG64-22+REOBのブレンドよりも、3.5~4.5℃だけ高いΔTc値を有している。40時間PAVでは、トール油ピッチおよび純粋ステロールのブレンドは、純粋ステロールと同様のΔTc特性を示しており、このことは、純粋ステロールより少量含まれるバイオオイルまたはバイオオイルピッチ残留物と純粋ステロールをブレンドすることによって、純粋ステロールを使って達成するのと同様の結果を得ることが可能であることを示している。
【0078】
図5は、純粋ステロールについてのΔTc値の結果と、PG64-22ベースバインダ+8%REOBを用いたトール油ピッチおよび純粋ステロールとのブレンドについてのΔTc値の結果との関係をグラフに示したものである。
図5は、これら2セットの材料に関する20、40、60時間のPAVエージングでのΔTcの挙動における類似性を示す。PG64-22+8%REOBの60時間PAVのデータは無い。しかし、最低用量レベルのステロールは40時間PAVのレベルでのステロールを含まないブレンドについてのΔTc値の結果と比肩する60時間PAVにおけるΔTc値を有するということは明らかである。
【0079】
〔実施例2〕
純粋ステロール:粗ステロールブレンドがバインダのエージング特性に与える効果を調べるために、20時間PAVエージングしたRAPを用いた。20時間エージングしたRAPは、ASTM D65217に従って、PAV(Pressured aging vessel)中でそれぞれエージングした。RAPは、5%のバイオオイル(ミネソタ州カーギルから入手した(Cargill 1103))、または5%の純粋ステロールブレンドとブレンドした。各RAPは、様々なステロールブレンドと混合する前に、テストした。
【0080】
ブレンドは、3オンスのスズ製容器中で成分を混合することによって製造した。スズ製容器は、蓋をして、60℃(140°F)のオーブンに一晩中置いて、成分を温めつつ混合した。一晩中温めた後、サンプルを手で撹拌し、25mmDSRテストの手法で高温剛性特性をテストし、低温特性は4mmDSRのテスト手法を用いて決定した。結果を表5に報告する。
【0081】
【表5】
表5の結果は、バイオオイルはRAPの高温グレードを9.6℃低下させ、低温PGグレードを9.8℃降下させることを示している。ΔTc値は、1.1℃つまり17.5%向上し、R値は1.53%だけ低下した。このことは、軟化剤の添加は、RAPバインダの低温緩和特性をほとんど向上させないことを示している。ステロールの添加は、高温グレードを5.9℃低下させ、低温グレードを1.6℃降下させた。しかし、ΔTc値は、3.2℃つまり72.3%向上した一方で、R値が15.35%減少した。これら比較データは、ステロールの添加は、単にRAPを軟化する以上の作用があることを示している。