(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188185
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】非統合失調症患者の陰性症状を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20221213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/24
A61P25/16
A61P25/08
A61P25/30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160201
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2018561528の分割
【原出願日】2017-05-23
(31)【優先権主張番号】62/341,590
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】レミ・リュトランジェ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デイビッドソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】統合失調症の臨床診断のないヒト患者において、少なくとも一つの陰性症状を治療するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】該組成物または方法は、式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)の化合物:
【化1】
その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物または多形を含む組成物であって、
統合失調症でないヒト患者の陰性症状を少なくともひとつ治療する方法に使用され、
陰性症状が、感情鈍麻、失語症、無気力、無快感症、非社会性、感情的引きこもり、貧弱な親密さ、受動的/無感動の社会的引きこもり、抽象的思考の困難性、自発性と会話の流暢さの欠如、および常同的思考よりなる群から選択され、ここで、その患者に対し該組成物の治療上の有効量が経口で投与され、その治療上の有効量が化合物Iの総量で一日当たり約1mgから約64mgであり、
化合物Iが患者に少なくとも2週間投与される、組成物。
【請求項2】
化合物Iの治療上の有効量が総量で一日当たり約10mgから約64mg、約20mgから約64mg、または約30mgから約64mgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化合物Iの治療上の有効量が総量で一日当たり32mgから64mgである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
統合失調症でないヒト患者が、精神疾患または神経学的症状と診断される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
該精神疾患または神経学的症状が、認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、自閉症スペクトラム障害(ASD)、双極性障害(BPD)、大鬱病性障害(MDD)、パーキンソン病、側頭葉てんかん、後脳血管障害(CVA)、外傷性脳損傷(TBI)、後脳心的外傷症候群、軽度から中程度の精神発達遅滞、ウイルス性脳炎および薬物依存よりなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該精神疾患または神経学的症状が、FTD、アルツハイマー病、MDD、BPDまたはパーキンソン病である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
最初の治療期間として、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間または少なくとも12週間、化合物Iが患者に投与され、患者がその最初の治療期間において少なくともひとつの陰性症状について改善を経験した場合には、第二の治療期間として、少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも48週間、または患者が陰性症状の寛解を見極めるまで、化合物Iの治療上の有効量の投与が継続される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
統合失調症でないその患者が、以前に抗うつ剤による治療を受けておらず、または不十分な応答および/または我慢できない副作用のために抗うつ剤による前治療を中止している、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
化合物Iが一塩酸塩・二水和物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年5月25日に出願された米国仮出願番号62/341590の優先権および利益を主張し、参照によってその全体がそのまま本願に取り込まれる。
【0002】
開示の分野
いくつかの態様における本件開示は、一般的に陰性症状を治療するための方法および組成物に関係し、より具体的には、統合失調症の臨床診断のない非統合失調症患者における陰性症状を治療するための方法および組成物に関係する。
【背景技術】
【0003】
陰性症状とは一般に、通常機能の低下をいい、五つの主たるサブドメインを含む:それらは感情鈍麻(感情平坦化、鈍麻表情)、失語(会話の貧困)、無気力(意思喪失)、無快感(楽しみを期待し、経験する能力の低下)および非社会性(社会的引きこもり)である。陰性症状は文献でも十分に裏付けされており、集中的に研究された統合失調症の一側面であるが、この種の症状は他の精神科および神経科疾患、例えば、アルツハイマー病およびその他の認知症、特に前頭側頭型認知症(FTD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、両極性障害(BPD)、大うつ病性障害(MDD)、パーキンソン病、側頭葉てんかん、脳卒中、および外傷性脳損傷の患者でも同定されている(例えば、Boone et al, J. of Internat. Neuropsycol. Soc., 2003, Vol 9, pages 698-709; Bastiaansen, J. et al., J. Autsim Dev. Disord. 2011, Vol 41:1256-1266; Getz, K. et al., Am. J. Psychiatry 2002, Vol 159:644-651; Winograd-Gurvich, C. et al., Brain Res. Bulletin, 2006, Vol. 70:312-321; Galynker et al., Neuropsychiatry Neuropsychol Behav Neurol 2000, Vol 13:171-176; Galynker I, et al., J. Nerv. Ment. Dis 1997, Vol 185:616-621; Chaudhury, S., et al., Indian J. of Neurotrauma 2005, Vol 2:13-21; Ameen, S et al., German J. of Psychiatry 2007を参照)。
【0004】
実際、早くも2001年には、陰性症状が精神病に一般的に共通することが提案されていた(Herbener and Harrow, Schizophrenia Bulletin 2001, Vol. 27:527-537)。さらには、いくつかの集団調査報告は一般集団の20~22%がひとつまたはそれ以上の陰性症状を有していて、陰性症状を有する患者の大部分は精神疾患の臨床診断を示していないことが結論されている(Werbeloff, N. et al., PLoS ONE 2015, Vol 10:e0119852; Barrantes-Vidal, N., et al., Schizophr. Res. 2010, Vol 122:219-225)。
現時点では、統合失調症またはその他の精神病や神経症状における陰性症状に対する有効な治療は認められていない。
【発明の概要】
【0005】
ここの開示の一部は、有望な臨床第IIb相の12週ランダム化二重盲検プラセボ制御の並行群臨床治験結果に基づく。同治験では、陰性症状を有する集団244名の統合失調症患者において、プラセボに対するMIN-101・32mgおよび64mgの陰性症状改善の統計的有意な効果が示された。この12週の間、陽性症状は安定なままで、錐体街路症状(EPS)は認められず、MIN-101は他の症状の改善よりむしろ陰性症状に対して直接特異的に効果を及ぼすという概念と一致した。MIN-101はMinerva Neurosciences社(マサチューセッツ州ウォルサム)において、統合失調症患者の陰性症状治療剤として開発が進行中である。
MIN-101(従前はCYR-101またはMT-210)の有効成分は化学名が2-{1-[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]ピペリジン-4-イルメチル}-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン・一塩酸塩二水和物であり、遊離塩の構造は式I(化合物I):
【化1】
である。
化合物Iはσ
2、5-ヒドロキシトリプタミン-2A(5-HT
2A)に対する特異的な親和性を有するが、α1-アドレナリン受容体には低い親和性しか示さない。MIN-101は、ドーパミン、ムスカリン、コリン、およびヒスタミン受容体を含む他の受容体に対しては極めて低い親和性しか示さず、または親和性を有しない。in vivoの官能基研究によれば、MIN-101は、5-HT
2Aおよびσ
2受容体の両方の拮抗剤であることが確立されている。MIN-101の二つの代謝物が同定され、BFB-520およびBFB-999と命名された。BFB-520代謝物は、治療濃度を超えたレベルにおいてQT間隔の延長に関係している。
【0006】
ある側面において、この開示が提供するものは、式(I)の化合物(化合物I)、またはその医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形を含む組成物であり、非統合失調症ヒト患者における少なくとも一つの陰性症状の治療に用いられ、ここでその治療方法には該組成物の治療上の有効量が患者に経口的に投与される。
一態様では、該組成物は経口デリバリー用に製剤化され、治療上の有効量は化合物Iが一日当たり約1mgから約64mgの間である。一態様では、治療上の有効量は化合物Iが一日当たり約10mgから約64mgの間、約20mgから約64mgの間、または約30mgから約64mgの間である。
一態様では、治療上の有効量は化合物Iが一日当たり約8mg、約16mg、約32mgまたは約64mgである。
【0007】
別の側面において、この開示が提供するものは、非統合失調症ヒト患者において少なくとも一つの陰性症状を治療する方法であり、該方法は当該患者に対して、式(I)の化合物(化合物I)、またはその医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の治療上の有効量を投与することが含まれる。一態様では、該方法は一日当たり約1mgから約64mgの化合物Iを経口投与することを含む。一態様では、化合物Iの投与量は一日当たり約10mgから約64mgの間、約20mgから約64mgの間、または約30mgから約64mgの間である。一態様では、化合物Iの投与量は一日当たり約8mg、約16mg、約32mgまたは約64mgである。
【0008】
この開示の両方の側面において、治療される陰性症状は、二次的陰性症状よりはむしろ一次的陰性症状である。一態様では、一次的陰性症状は、感情鈍麻、失語、無気力、無快感および非社会性よりなる群から選択される。一態様では、一次的陰性症状は、感情鈍麻、感情的引きこもり、乏しい親密さ、受動的/無関心な社会的引きこもり、抽象的思考の困難さ、会話の自発性と流暢さの欠如および常同的思考よりなる群から選択される。
【0009】
この開示の上記側面のいくつかの態様においては、非統合失調症患者は精神病または神経症状と診断される。一態様において、その精神病または神経症状は、認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、自閉症スペクトラム障害(ASD)、両極性障害(BPD)、大うつ病性障害(MDD)、境界性パーソナリティ障害、パーキンソン病、側頭葉てんかん、後脳血管障害(CVA)、外傷性脳損傷(TBI)、後脳外傷症候群、軽度から中等度の精神遅滞、ウイルス性脳炎および薬物依存よりなる群から選択される。一態様において、その疾患または症状はMDDまたはBVDである。一態様において、その疾患または症状はパーキンソン病である。
【0010】
この開示の上記側面のいくつかの態様においては、化合物I、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形が、少なくとも一つの陰性症状改善が達成されるために十分な長さの最初の治療期間、患者に投与される。一態様において、その最初の治療期間は少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、または少なくとも12週間である。
【0011】
この開示の上記側面のいくつかの態様において、患者が最初の治療期間において、少なくとも一つの陰性症状改善を経験した場合は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の治療上の有効量の投与を継続し、その第二の治療期間は少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも48週間または患者の陰性症状からの寛解が決定されるまでである。
【0012】
この開示の上記側面のいくつかの態様において、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形が朝または晩に単回投与される。一態様において、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形は少なくとも食事の2時間前に投与される。
【0013】
この開示の上記側面のいくつかの態様において、化合物Iの多形が患者に投与される。一態様において、その多形は化合物(I)・HCl・2H2Oの結晶形(A)[または結晶形(A)という]として知られ、国際特許出願PCT/US2015/062985(公開はWO2016/089766)および米国特許出願14/954264(公開はUS2016-0152597A1)に特徴が記載されていて、その内容をここに全体として引用する。
【0014】
この開示の上記側面のいくつかの態様において、化合物Iまたはその多形結晶形(A)が医薬組成物の一部として患者に投与され、該組成物は投与量約1mgから約64mgの製剤がヒトに投与された場合に、化合物Iまたはその結晶形(A)の最大血漿濃度(Cmax)が50ng/mLを超えないようにする放出調節剤を含んでいる。一態様において、該医薬組成物が与えるBFB-520代謝物の最大血漿濃度(Cmax)は10.0ng/mL未満、5.0ng/mL未満、4.5ng/mL未満、4.0ng/mL未満、3.5ng/mL未満、3.0ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2.0ng/mL未満、1.5ng/mL未満、または1.0ng/mL未満であり、BFB-520の曲線下面積(AUC)は、40hr*ng/mL未満、35hr*ng/mL未満、30hr*ng/mL未満、25hr*ng/mL未満、20hr*ng/mL未満、15hr*ng/mL未満、または10hr*ng/mL未満である。
【0015】
この開示の上記側面のいくつかの態様において、ヒト患者は少なくとも18歳であり、この開示の上記側面の別の態様において、ヒト患者は18歳未満である。
この開示の上記側面のいくつかの態様において、ヒト患者は従前、抗精神剤の治療を受けていない。この開示の上記側面の別の態様において、ヒト患者は応答不十分または耐えられない副作用のために、従前の抗精神剤の治療を中止している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面と併せて読むことにより、先の要約と後に続く発明の説明がより理解されるであろう。
【0017】
【
図1】
図1は、陽性陰性症状尺度(PANSS)の陰性下位尺度スコアにおける基礎線からの平均変化(五角形モデル、縦軸)を表すグラフである。一日当たり、プラセボ(連続線)、MIN-101・32mg(長い点線)およびMIN-101・64mg(短い点線)を12週投与した。
【0018】
【
図2】
図2は、PANSSの三つの因子陰性症状下位尺度スコアにおける基礎線からの平均変化(Y軸)を表すグラフである。一日当たり、プラセボ(連続線)、MIN-101・32mg(長い点線)およびMIN-101・64mg(短い点線)を12週投与した。
【0019】
【
図3】
図3は、BNSSプラセボ(連続線)、MIN-101・32mg(長い点線)およびMIN-101・64mg(短い点線)を12週投与した。全スコアにおける基礎線からの平均変化を表すグラフである。
【0020】
【
図4】
図4は、化合物(I)・HCl・2H
2Oの結晶形(A)の粉末X線回折である。
【0021】
【
図5】
図5は、化合物(I)・HCl・2H
2Oの結晶形(A)のIRスペクトルである。
【0022】
【
図6】
図6は、化合物(I)・HCl・2H
2Oの結晶形(A)の
1H-NMRスペクトルである。
【0023】
【
図7】
図7は、化合物(I)・HCl・2H
2Oの結晶形(A)の
13C-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例に記載の通り、化合物Iの一日用量32mgまたは64mgは、プラセボと比較して、統合失調症患者の陰性症状に対して統計上有意な改善を与えることが示された。これらのデータと化合物Iがσ2活性に拮抗する事実から、本件開示は、非統合失調症ヒト患者においても同様の陰性症状の改善が得られるであろうと予測する。ここで、非統合失調症患者とは、少なくとも一つの陰性症状を示すが統合失調症とは診断されていない患者を意味する。
【0025】
よって本件開示の目的は、非統合失調症患者において少なくとも一つの陰性症状を治療する方法を提供することであり、該方法は、その患者に化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形を含む組成物の治療上の有効量を投与することを含む。
【0026】
本件開示の目的は、また、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形を含み、ヒト患者において少なくとも一つの陰性症状を治療するために使用される組成物を提供することであり、該組成物の治療上の有効量を患者に投与することを包含する方法により使用される。
【0027】
本件開示の目的は、さらには、開示された該組成物と方法を用いて、精神病または神経症状と診断された非統合失調症ヒト患者において、少なくとも一つの陰性症状を治療することである。
【0028】
一態様では、該陰性症状は陰性症状の五つの主要サブドメイン、即ち、感情鈍麻、失語、無気力、無快感および非社会性の一つである。各サブドメインの中心的特徴を以下に記載する。
【0029】
感情鈍麻(感情平坦化、鈍麻表情)は、口頭のそして言葉によらない意思伝達で現れる感情表現の範囲と強度の低下により特徴付けられ、それはイントネーション(プロソディー)、顔の表情、身振り手振り等が含まれる。
【0030】
失語(会話の貧困)は、会話量の減少、自発的会話の低下および会話の流暢さの喪失により特徴付けられる。
【0031】
無気力(意思喪失)は、仕事や勉強、運動、個人衛生、日常の任務のような、目標思考の行為の開始と維持の不足で特徴付けられる。特に努力(認識上および身体上)と重要な組織化を必要とする場合は、このような活動を行う希望の不足によっても特徴付けられる。このサブドメインは、無関心と活力欠乏にも関係する。
【0032】
無快感(楽しみを予想し経験する能力の低下)は、その経験そのものの評価(嗜好)よりも顕著に、そして一貫して損なわれる(完了無快感)ところの、報酬、娯楽またはその他の楽しみの経験(望み)を楽しみとすること(予期無快感)で特徴付けられる。
【0033】
非社会性(社会的引きこもり)は、家族や友人のような他者との社会的交流の評価、動機付けまたは興味の減少、身体上の問題とは独立して親密な(性的な)関係に対する興味の喪失で特徴付けられ、そして子供に対しては、他の子供たちと遊ぶ興味の喪失が含まれ得る。
【0034】
本件出願においては特に言及しない限り、「治療」の語は、陰性症状の改善を目的とする、非統合失調症患者の世話と管理を含むものとし、一つ以上の陰性症状の発現を抑えるために、一つ以上の陰性症状の重篤度若しくは強度、および頻度を抑制するために、そして、追加的な陰性症状の発展を回避し若しくは遅延させるために、またはこれら治療目的の任意の組み合わせのために充分な治療期間と量の化合物Iの投与を含むものとする。一態様において、化合物Iの治療の効果は、患者の陰性症状の重篤度を、基本線(例えば化合物Iによる治療前)と少なくとも一治療期間の後との比較により評価される。一態様において、その治療期間は少なくとも一週間、少なくとも二週間、少なくとも四週間、少なくとも六週間、少なくとも八週間、少なくとも10週間、または少なくとも十二週間である。
【0035】
本件出願においては特に言及しない限り、「対象」および「患者」の語は交換することができ、任意の年齢のヒトをいう。一態様において、非統合失調症患者は6歳またはより高年齢である。一態様において、患者は少なくとも18歳、19歳、20歳、または21歳である。非統合失調症患者はひとつまたはそれより多い陰性症状を示すが、統合失調症の診断はなされていない。ある態様においては、非統合失調症患者は精神病または神経症状の診断はなされていない。別の態様では、非統合失調症患者は精神病または神経症状の診断がなされている。
【0036】
ある態様においては、開示の方法または組成物が、抗精神病薬の治療を受けていない非統合失調症患者の治療に用いられる。本件出願において、抗精神病薬とは化合物Iを含まず、精神病治療のために当局の認可を受けている任意の薬剤をいう。典型的な抗精神病薬には、限定はされないが、フルフェナジン、リスペリドン、オランザピン、クロザピン、ケチアピン、ジブラシドン、アリピプラゾール、セルチンドール、ゾテピン、ペロスピロン等が含まれる。
【0037】
別の態様では、開示の方法または組成物が、以前に抗精神病薬の治療を受けていたが、陰性症状に十分な改善が見られず、および/または薬物の副作用に耐えられずに治療を中断した非統合失調症患者の治療に用いられる。
【0038】
ある態様においては、開示の方法または組成物が、抗うつ病薬の治療を受けていない非統合失調症患者の治療に用いられる。本件出願において、抗うつ病薬とは化合物Iを含まず、大うつ病性障害治療のために当局の認可を受けている任意の薬剤をいう。抗うつ剤の例は、制限はされないが、フルオキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、ベンラファキシン、デュロキセチン、ブプロピオン等が含まれる。
【0039】
別の態様では、開示の方法または組成物が、以前に抗うつ病薬の治療を受けていたが、陰性症状に十分な改善が見られず、および/または薬物の副作用に耐えられずに治療を中断した非統合失調症患者の治療に用いられる。
【0040】
本願に含まれる開示の目的のため、「陰性症状」の語は、典型的には統合失調症に関連する初期の陰性症状、PANSS陰性亜尺度スコアで測定される陰性症状およびBNSSで測定される陰性症状を含む者と理解される。
【0041】
開示の方法では、患者に対して化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の治療上の有効量の投与が用いられる。本願において、「治療上の有効量」とは、少なくとも一つの陰性症状の重篤度を、基本線に対して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%、低下させるために有効な量を意味する。患者における症状の改善は当該技術で一般に受け入れられているいずれの測定道具によって測定されてもよく、限定はされないが、五角形モデルによるPANSS陰性亜尺度スコアやBNSSが含まれる。一態様において、治療上の有効量は、2週間、4週間、または8週間の治療期間の後、PANSS陰性亜尺度スコアにおいて基本線から20%以上の低下をもたらす。
【0042】
開示のさらに別の側面においては、開示の組成物は、具体的に記載された一日当たりの投与量の経口投与と実質的に等しい化合物Iの投与量となるように製剤化され、患者に投与される。当業者は、そのような基本的等価性を与えるような製剤化と投与経路を選択することができる。
【0043】
開示はまた、非統合失調症ヒト患者の少なくともひとつの陰性症状を治療するための医薬の製造における、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の使用を提供する。例えば、その医薬は経口投与に適している。例えば、その医薬は化合物Iの治療上の有効量を有していて、化合物Iの一日当たり約1mgから約64mgの投与量に相当する。
【0044】
治療に当たる医師が上記ガイドラインに沿って、望ましい治療結果とともに、治療される患者の症状と健康状態を基にして最適と信ずる用量および用法レジメを選択してよいことは、当業者により理解されるであろう。例えば、治療に当たる医師は、化合物Iの治療上の有効量より低い用量で治療を開始し、標的とする治療上の有効量に増量することを選択してもよい。例えば、化合物Iの一日用量は単回投与でも複数回の投与でもよい。
【0045】
本願において、約X値から約Y値の範囲として記載する定量的な表現は、各XおよびYの10%上下の値を含み、またXとYの間にある任意の数値を含む。よって例えば、約32mgの用量は、30から34mgの用量を含む。
【0046】
化合物Iに関する全ての参照は、特に断らない限り、全ての薬学的に許容される塩、全ての溶媒和物、および別の物理的形態を含む。ここで記載する全ての用量は、特に断らない限り、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、又は組成物中の賦形剤よりもむしろ、化合物Iの遊離塩重量に基づく。さらには、ここで記載する化合物Iの全ての用量は、特に断らない限り、一律の用量(例えば、患者の体重には依らない)である。
【0047】
本件開示に従う治療の為の投与は、化合物Iはその遊離塩として用いてもよいが、好ましくは、薬学的に許容される塩の形態で使用される。一態様において、開示の方法および組成物中で使用される化合物Iは2-{1-[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]ピペリジン-4-イルメチル}-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン・一塩酸塩・二水和物であり、分子式はC22H23FN2O2・HCl・2H2O、分子量は438.92である。
【0048】
化合物Iは、当該分野の関連する科学文献または標準的な教科書から得られる保護基の使用も含んで、有機分子の調製および官能基の変換と操作に関する標準的な合成法と手順に従って合成され得る。いずれにも限定されないが、有機合成に関する参考教科書としては、Smith, M. B.; March, J. March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th ed.; John Wiley & Sons: New York, 2001; and Greene, T.W.; Wuts, P.G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd; John Wiley & Sons: New York, 1999、が含まれる。化合物(I)の調製法は米国特許7,166,617号に記載されている。
【0049】
開示の方法および組成物においては、化合物Iの結晶形(A)を用いてもよい。化合物Iの結晶形(A)を含む医薬組成物は国際特許出願PCT/US2015/062985(WO2016/089766として公開済み)に記載の通り調製してよい。
【0050】
一態様として、化合物Iと薬学的に許容される酸との別の塩、例えば機能的に遊離した塩と酸から誘導される塩を治療に用いることもでき、酸には、限定はされないが、パルミチン酸、臭化水素酸、リン酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸が含まれる。
【0051】
本願に記載の通り、化合物Iの全ての溶媒和物、全ての別の物理的形状またはその薬学的に許容される誘導体は、また、この開示の範囲内に包含され、限定はされないが、別の結晶形、非結晶体、多形等も含まれる。式Iの化合物(または化合物I)の全ての参照はその薬学的に許容される全ての塩、全ての溶媒和物、別の全ての物理的形態を含む。
【0052】
治療目的の投与においては、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩は純粋な形状で投与されてもよいが、好ましくは、任意の薬学的に許容される有効な組成物に製剤化されてもよく、それは体内で有効成分の有効濃度を与える。
【0053】
本願で化合物または組成物について用いられる「薬学的に許容される」との語は、化合物または組成物の生物学的利用率を高め、または促進するため、患者において化合物の利用率または溶解度を高め、または増大させ得る化合物または組成物の形態をいう。一態様において、本開示は個々で具体化された化合物または組成物の薬学的に許容される、水和物、溶媒和物、立体異性体、または非結晶を包含する。例えば、「薬学的に許容される塩」の語は、一つまたはそれ以上の組成物の塩の形態を記載するものであり、該組成物は患者の胃腸管中の胃液において化合物および/または組成物の溶解および生物学的利用率を促進するために、化合物の溶解度を高めるべく提供されたものである。一態様において、薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機の酸および塩基を含む。適切な塩はカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アンモニウム塩、および薬学領域でよく知られた多くの他の酸の中から誘導されるものを含む。ナトリウム塩およびカリウム塩はカルボン酸や遊離リン酸の中和塩として好ましく、本開示に包含される。「塩」の語は、本開示に包含される化合物の使用と一致する任意の塩を意味するものとする。うつ病の治療を含み、この化合物の薬学的な適用の際には、「塩」の語は薬学的に許容される塩を意味するものとし、薬剤としての化合物Iの使用と矛盾はない。
【0054】
本願において「薬学的に許容される誘導体」または「誘導体」の語は、任意の薬学的に許容されるプロドラッグ体(エステル、エーテルまたはその他のプロドラッグ群)を記載し、それは患者に投与されると、直接または間接に本件化合物またはその活性代謝物を提供する。
【0055】
上記の通り、組成物は化合物の薬学的に許容される塩を組成物中に含む。他の態様においては、上記化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために用いられる酸は、無毒性の酸付加塩、即ち、薬学的に許容されるアニオンを含む塩を形成する酸であって、中でも、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩[即ち、1,1'-メチレンビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸)塩]等がある。
【0056】
一態様として、組成物は本件化合物の塩基付加塩を含む。本来は酸性である本化合物の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として用いられる化学塩基は、そのような化合物と無毒性の塩基塩を形成するものである。そのような無毒性の塩基塩は、限定はされないが、薬学的に許容されるカチオンから誘導される塩基塩を含み、例えばアルカリ金属カチオン(例えばカリウム、ナトリウム)、アルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム、マグネシウム)、アンモニウム、N-メチルグルカミン(メグルミン)のような水溶性アミン付加塩、低級アルカノールアンモニウムおよびその他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩である。
【0057】
薬学的に許容される塩または複合体の語は、ここで使用されているように、親化合物の望ましい生物活性を保持し、もしあれば、望まない毒性作用が最小である塩又は複合体(例えば溶媒和物、多形体)をいう。そのような塩の非制限的な例は、
(a)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等)と形成する酸付加塩、および、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸のような有機酸と形成する塩;
(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、ナトリウム、カリウム等のような多価金属カチオン、またはN,N-ジベンジルエチレンジアミン、アンモニウム若しくはエチレンジアミンと形成する塩基付加塩;
(c)例えば、亜鉛-タンニン酸塩のような上記(a)と(b)の組み合わせ;である。
【0058】
化合物の修飾は、溶解度、生物学的利用率および活性種の代謝速度に影響し、これにより活性種デリバリーを制御することができる。さらに該修飾は化合物の精神安定剤作用に影響することがあり、ある場合には親化合物の活性を超えることもあり得る。このことは誘導体を調製し、本願に記載した方法または当業者に知られた別の方法で試験すれば、容易に評価することができる。
【0059】
一態様において、組成物はひとつまたはそれ以上の薬学的に許容される担体を用いて、慣用法に従い製剤化されてもよいし、また放出制御化製剤として投与されてもよい。これら医薬組成物で使用できる薬学的に許容される担体としては、制限はされないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和野菜脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロラミンのような塩または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース関連物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれる。
【0060】
ここで含まれる組成物は、経口投与してよい。別の態様では、組成物は非経口的に、吸入スプレイ、局所投与、経直腸、経鼻、経口腔、経膣、または埋め込み容器を介して投与してもよい。ここで用いられる「非経口」の語は、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内、頭蓋内注射または注入を含む。当業者に理解されるように、ここに含まれる態様を眺めた上で、有効成分または成分(例えば式Iの化合物)の用量は、選択した投与経路に基づいて上方又は下方に調整される。さらには、任意の選択された用量剤形に対する有効成分の用量最適化が望ましいこと、そして本願に記載の方法、または当業者に知られた方法で抗不安化合物の有効性を評価できることが理解されるであろう。
【0061】
ここで具体化された医薬組成物は任意の経口可能な用量形態で経口投与することができ、限定はされないが、その形態には、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液が含まれる。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体としては乳糖およびコーンスターチが含まれる。一態様においては、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤が追加される。カプセル形態の経口投与については、通常の希釈剤としては乳糖および/または乾燥コーンスターチが、二つの非制限的例として、含まれる。経口の使用に水性懸濁剤が必要な場合、有効成分と乳化剤および懸濁剤が組み合わされる。望まれるなら、ある種の甘味料、香料または着色料を追加してもよい。
【0062】
本願開示に含まれる医薬組成物は、また、鼻エアロゾルまたは吸入により投与してもよい。そのような組成物は薬物製剤化の分野でよく知られている技術に基づいて、生理食塩水溶液で、ベンジルアルコールまたはその他の保存剤、生物学的利用率向上のための吸収促進剤、フッ素化炭素およびその他の溶解剤若しくは分散剤を用いて調製される。
【0063】
一態様において、化合物Iの治療上の有効量は、精神病若しくは神経症状の治療のため処方された任意の他の薬剤とは独立して投与される。
【0064】
別の態様において、合併症状(精神病または神経症状を含む)を治療するための一つまたはそれ以上の薬物投与と関連して、化合物Iの治療上の有効量が投与される。そのような別の薬物投与は当業者に既知の、或いは、式Iの化合物の上記投与と同様の形態および用量で投与若しくは併せて投与される。別の薬物投与は化合物Iの前、後または同時に、望まれる治療期間の投与がなされる。
【0065】
本願開示は以下の態様を含むが、これらに限定はされない。
態様1:式Iの化合物(化合物I)
【化2】
またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形を含み、
非統合失調症ヒト患者における少なくとも一つの陰性症状の治療方法に用いられ、ここでその治療方法は該組成物の治療上の有効量を患者に経口的に投与することを含み、またその有効量は化合物Iの一日用量約1mgから約64mgである。
【0066】
態様2:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量約10mgから約64mg、20mgから約64mgまたは約30mgから約64mgである、態様1の組成物
【0067】
態様3:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量30mgから64mgである、態様2の組成物
【0068】
態様4:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量約8mg、約16mg、約32mgまたは約64mgである、態様1の組成物
【0069】
態様5:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量32mgである、態様4の組成物
【0070】
態様6:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量64mgである、態様4の組成物
【0071】
態様7:非統合失調症ヒト患者における少なくとも一つの陰性症状を治療する方法であって、該方法は化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の治療上の有効量をその患者に経口投与することを含み、その治療上の有効量は化合物Iの一日用量約1mgから約64mgである。
【0072】
態様8:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量約10mgから約64mg、約20mgから約64mgまたは約30mgから約64mgである、態様7の方法。
【0073】
態様9:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量30mgから64mgである、態様8の方法。
【0074】
態様10:化合物Iの一日用量が約8mg、約16mg、約32mgまたは約64mgである、態様7の方法。
【0075】
態様11:治療上の有効量が化合物Iの一日用量32mgである、態様10の方法。
【0076】
態様12:治療上の有効量が化合物Iの一日用量64mgである、態様10の方法。
【0077】
態様13:式Iの化合物(化合物I):
【化3】
またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物若しくは多形の、非統合失調症ヒト患者における少なくとも一つの陰性症状を治療するための薬剤の製造における使用であって、その方法は組成物の治療上の有効量をその患者に経口投与することを含み、その治療上の有効量は化合物Iの一日用量約1mgから約64mgである。
【0078】
態様14:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量約10mgから約64mg、20mgから約64mgまたは約30mgから約64mgである、態様13の使用。
【0079】
態様15:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量30mgから64mgである、態様13の使用。
【0080】
態様16:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量約8mg、約16mg、約32mgまたは約64mgである、態様13の使用。
【0081】
態様17:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量32mgである、態様13の使用。
【0082】
態様18:治療上の有効量が、化合物Iの一日用量64mgである、態様13の使用。
【0083】
態様19:陰性症状が感情鈍麻、失語、無気力、無快感および非社会性よりなる群から選択される、態様1~18のいずれかの組成物、方法または使用。
【0084】
態様20:陰性症状が感情鈍麻、感情的引きこもり、乏しい親密さ、受動的/無関心な社会的引きこもり、抽象的思考の困難さ、会話の自発性と流暢さの欠如および常同的思考よりなる群から選択される、態様1~18のいずれかの組成物、方法または使用。
【0085】
態様21:非統合失調症患者が精神病または神経症状と診断される、態様1~20のいずれかの組成物、方法または使用。
【0086】
態様22:精神病または神経症状が、認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、自閉症スペクトラム障害(ASD)、両極性障害(BPD)、大うつ病性障害(MDD)、パーキンソン病、側頭葉てんかん、後脳血管障害(CVA)、外傷性脳損傷(TBI)、後脳外傷症候群、軽度から中等度の精神遅滞、ウイルス性脳炎および薬物依存よりなる群から選択される、態様21の組成物、方法または使用。
【0087】
態様23:精神病または神経症状が、FTDまたはアルツハイマー病である、態様22の組成物、方法または使用。
【0088】
態様24:精神病または神経症状が、MDDまたはBPDである、態様22の組成物、方法または使用。
【0089】
態様25:精神病または神経症状がパーキンソン病である、態様22の組成物、方法または使用。
【0090】
態様26:最初の治療期間の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間または少なくとも12週間、化合物Iが患者に投与される、態様1~25のいずれかの組成物、方法または使用。
【0091】
態様27:患者が最初の治療期間において少なくとも一つの陰性症状の改善を経験したら、第二の治療期間である少なくとも12週間、少なくとも24週間または少なくとも48週間または患者が陰性症状の寛解を決定するまで、化合物Iの治療上の有効量の投与が継続される、態様26の組成物、方法または使用。
【0092】
態様28:化合物Iが午前中、空腹条件で食事の少なくとも2時間前に単回投与される、態様1~27のいずれかの組成物、方法または使用。
【0093】
態様29:化合物Iの多形結晶型(A)が患者に投与される、態様1~28のいずれかの組成物、方法または使用。
【0094】
態様30:化合物Iまたは化合物Iの多形結晶型(A)が医薬組成物の一部として投与され、該組成物が、製剤の約1mgから約64mgがヒトに投与された場合に、化合物Iの最大血清濃度(Cmax)が50ng/mL未満となるような放出調節剤を含む、態様1~29のいずれかの組成物、方法または使用。
【0095】
態様31:医薬組成物が与えるBFB-520代謝物の最大血清濃度(Cmax)が5.0ng/mL未満、4.5ng/mL未満、4.0ng/mL未満、3.5ng/mL未満、3.0ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2.0ng/mL未満、1.5ng/mL未満または1.0ng/mL未満であり、BFB-520の曲線下面積(AUC)が40hr*ng/mL未満、35hr*ng/mL未満、30hr*ng/mL未満、25hr*ng/mL未満、20hr*ng/mL未満、15hr*ng/mL未満または10hr*ng/mL未満である、態様29または30の組成物、方法または使用。
【0096】
態様32:非統合失調症患者が抗精神薬による治療を受けていない、態様1~31のいずれかの組成物、方法または使用。
【0097】
態様33:非統合失調症患者が不十分な応答を経験し、および/または副作用に耐えられなかったために従前の抗精神薬による治療を中止した、態様1~31のいずれかの組成物、方法または使用。
【0098】
態様34:非統合失調症患者が抗うつ薬による治療を受けていない、態様1~33のいずれかの組成物、方法または使用。
【0099】
態様35:非統合失調症患者が不十分な応答を経験し、および/または副作用に耐えられなかったために従前の抗うつ薬による治療を中止した、態様1~33のいずれかの組成物、方法または使用。
【0100】
態様36:投与された化合物Iの形態が、2-{1-[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]ピペリジン-4-イルメチル}-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン・一塩酸塩二水和物である、態様1~35のいずれかの組成物、方法または使用。
【0101】
態様37:化合物Iの一日用量が単回用量で投与される、態様1~36のいずれかの組成物、方法または使用。
【0102】
態様38:化合物Iの一日用量が複数回、例えば一日二回、三回または四回で投与される、態様1~36のいずれかの組成物、方法または使用。
【0103】
陽性および陰性症状尺度(PANSS)
以下に示すのは、実施例に記載の臨床試験で用いられた陽性および陰性症状尺度(PANSS)の記載である。
陽性および陰性症状尺度(PANSS)の評価基準
【0104】
[一般評価指針]
今回の評価作業で集められたデータをPANSS評価に供する。各30項目は具体的定義と、すべての七つの評価点についての定着した基準が添えられている。これら七つのポイントは以下の通り、精神病理学上の増加するレベルを表している:
1.なし
2.ごく軽度
3.軽度
4.中程度
5.やや重度
6.重度
7.最重度
評点を割り当てる際、その定義から判断されるように、項目が全て存在するのか最初に判断しなければならない。その項目がなければスコアは1であり、もし存在すれば、固定ポイントから固有の基準を参照し、その重篤度を決定しなければならない。例え患者がより下位の基準に適合しても、常に最高位の評価点を割り当てる。重篤度の判断に当たっては、評価者は総合的な視点を使用して、どの固定ポイントが患者の機能を最もよく特徴付けているかを決定し、記述の要素全てが観察されるか否かを評価しなければならない。
症状重篤度が漸増するレベルに対応する評価点2から7:
評価2(ごく軽度)は、病状に疑問のある、微妙な、または疑わしいことを意味し、または通常範囲の極限を暗示するかも知れない。
【0105】
評価3(軽度)は、その存在が明らかに確立されているが、殆ど表に現れず、日常的な機能にも干渉しない症状を示す。
評価4(中程度)は、重篤な問題を表すが、時折現れるだけ、または日常生活に邪魔することがある程度までのみである症状を特徴付ける。
評価5(やや重度)は、ヒトの機能に明瞭な影響を及ぼすが、全てを費やすほどではなく、通常、任意に封じ込めることが可能な、際だった病状を示す。
評価6(重度)は、度々現れて、命に対して極めて破壊的であることを示し、しばしば直接的な管理を必要とする全体的な病変を表す。
評価6(最重度)は、最も重篤な精神病理学レベルをいい、病状が劇的に多くのまたは主要な機能に劇的に干渉し、典型的には多分野における綿密な管理と支援を必要とする。
各項目は本マニュアルで提供される定義と基準と協議して評価される。評価は各特徴に従い、PANNS評価フォーム上で適切な番号を丸で囲むことによりなされる。
【0106】
[PANSS評価フォーム]
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0107】
スコア化の指示
PANSSに包含される30項目の内、陽性尺度が7、陰性尺度が7、そして一般の精神病理学が残りの16項目である。これらスコアは各項目を横断的に評価して集計されるので、陽性および陰性尺度は7~49、一般の精神病理学関係は16~112の範囲が可能である。加えて、陽性尺度から陰性尺度を引くことにより混合尺度が用いられる。これは、-42から+42の範囲の二極性指数を与えるが、これは本質的に、一方の症状に対する他方の症状の優性度を反映するスコアである。
【0108】
陽性尺度(P)
P1.妄想 根拠がなく、非現実的で風変わりな確信。
評価の基本:面接中に表明された思考内容と、それが、社会関係や行動に及ぼす影響を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 曖昧な、具体性のない、そして頑強とはいえない一、二の妄想の存在。思考や、社会関係、行動には影響せず。
4.中等度 万華鏡の配列のごとき壊れやすい、そして不安定な妄想、またはしっかりした妄想で、時々、思考や、社会関係、行動に影響する。
5.やや重度 多くのしっかりした妄想が存在し、それらは頑強で時々、思考や、社会関係、行動に影響する。
6.重度 具体的で、ことにより体系化された、頑強な複数の妄想が安定して存在し、明らかに思考や、社会関係、行動に影響する。
7.最重度 高度に体系化され、または極めて多数の妄想が安定して存在し、患者の主たる生活面を支配する。しばしば、不適切かつ無責任な行為に至り、患者又は他人の安全を危うくするおそれあり。
【0109】
P2.概念の統合障害 目的指向性の混乱として特徴づけられるような、思考過程の統合不全、例えば、迂遠、関連性喪失、脱線思考、非論理性や思考途絶。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 思考は迂遠、脱線的または非論理的。目的指向の思考が困難で、圧力下では思路弛緩が明らかとなり得る。
4.中程度 伝達が短く構成されていれば考えに集中できるが、より複雑な伝達や最小のプレッシャーがある場合は不正確または見当違いとなる。
5.やや重度 一般に、考えを纏めるのが困難で、しばしば見当違いを起こし、プレッシャーがなくても孤独感と関連性喪失を認める。
6.重度 思考が深刻に頓挫し内部的に一貫性がなく、殆ど定常的にひどい見当違いと思考過程の混乱を来す。
7.最重度 思考が中断され、患者が支離滅裂となる。著しい関連性喪失で伝達が全くできず、例えば、「言葉のサラダ」または無言症の状態。
【0110】
P3.幻覚による行動 外的刺激によらないで惹起された知覚を示すような行動や言語上の報告。聴覚、視覚、嗅覚、体性感覚の領域に起こる。
評価基本 家族ないし看護職員の行動報告と共に、面接中にみられた言語上の報告と、身体的明示に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 一つ二つの、明確に形成されたが滅多にない幻覚。その他、思考や行動のゆがみに至らない、多くの漠然とした異常な知覚。
4.中程度 幻覚が頻繁に生じるが連続しない。患者の思考と行動は影響されるが、小さな程度内に留まる。
5.やや重度 幻覚が頻繁に生じ、二つ以上の感覚的様態を含んで、思考や行動のゆがみを生じる傾向がある。患者はこれら経験を妄想的に解釈し、感情的、そして時には言葉上で応答する。
6.重度 幻覚が殆ど連続的に存在し、主に思考と行動の混乱を引き起こす。患者はこれらを現実の知覚と考え、動作はしばしば感情的そして言葉上の応答によって妨げられる。
7.最重度 患者は幻覚に殆ど夢中になり、事実上思考と行動を支配する。幻覚が厳正な解釈を提供して、言語と行動による応答を現実に支配し、これは幻覚の支配に服従することを含む
【0111】
P4.興奮 増大した運動行動、刺激に対する増加応答、過剰警戒または過度の情緒不安定に反映される過剰行動。
評価基本 家族ないし看護職員の行動報告と共に、面接中にみられた行動上の明示。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 面接中を通じてやや興奮気味で、過剰警戒、または少し無闇に興奮するが、明らかな興奮発作、顕著な情緒不安定はなし。話し方は少し高圧的
4.中程度 面接中を通じて動揺や無闇な興奮が明白であり、話し方や一般的移動に影響する。散発的な発作爆発あり。
5.やや重度 有意な過剰行動または運動活動の発作の頻発が観察され、患者はいつでも数分間以上静止していることが困難。
6.重度 顕著な興奮が面談を支配し、注意力を制限し、食事や睡眠のような個人的機能にある程度影響する。
7.最重度 顕著な興奮が深刻に食事や睡眠に影響し、個人間の意思疎通が事実上できない。話し方や運動活動の加速が、矛盾と疲労困憊を来す。
【0112】
P5.誇大性 過大な自己主張と優越性の非現実的な確信 常軌を逸した能力、富、知識、名声、権力、道徳的正当性の妄想が包含される。
評価基本 面接中に表明される思考内容とそれが行動に及ぼす影響について評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 誇大症または高慢さが明白であるが、誇大な妄想なし。
4.中程度 明瞭にそして非現実的に他人より優れていると感じる。特別な立場や能力について僅かに形成された妄想があり得るが、行動は起こさない。
5.やや重度 顕著な能力、地位、権力に関する明瞭な妄想が現れ、態度に影響するが、行動には影響しない。
6.重度 二つ以上のパラメータ(富、知識、名声等)を含む顕著な優越性の明瞭な妄想が現れ、意思疎通に著しく影響して行動を伴う。
7.最重度 思考の意思疎通や行動は、驚異的な能力、富、知識、名声、権力および/または道徳的地位の多数の妄想で支配され、奇妙な性質を呈するかも知れない。
【0113】
P6.猜疑心/迫害 迫害されるという非現実的で誇張された観念であって、用心深く疑い深い態度、過度の警戒心、他人が自分を傷つけるというあからさまな妄想に示される。
評価基本 面接中に表明される思考内容とそれが行動に及ぼす影響に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 用心深く、またはあからさまに不信感を抱いた態度を示すが、思考と意思疎通、挙動は最小限度で影響される。
4.中程度 不信感が明白に示され、面談および/または挙動に割り込んでくるが被害妄想の証拠なし。または、漫然と形成された被害妄想の兆候があるかも知れないが、患者の態度や人間関係に影響するようには思われない。
5.やや重度 患者が顕著な不信感を示して、人間関係の広範囲の混乱に至り、あるいは人間関係と挙動に限定的な影響をおよぼす、明確な被害妄想がある。
6.重度 明確な被害妄想が蔓延し、それが体系化されて人間関係を著しく妨げる。
7.最重度 体系化された被害妄想のネットワークが、患者の思考、社交関係および挙動を支配する。
【0114】
P7.敵意 怒り、憤りの言語的ないし非言語的表明があり、皮肉、受動・攻撃行動、言語的暴力および攻撃性を包含する。
評価基本 面接中にみられる対人行動と家族ないし看護職員の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 皮肉や無礼、敵対的表現、時折の興奮性のような間接的または制限的伝達。
4.中程度 公然と敵対的態度を表し、しばしば興奮性と怒り、憤りの直接的表現を示す
5.やや重度 患者は大変興奮し、時折言語的に罵倒しまたは脅迫する
6.重度 非強調性と暴言や脅迫が顕著に面談に影響し、社会的関係に深刻な影響を及ぼす。患者は暴力的、破壊的であり得るが身体上攻撃的ではない。
7.最重度 顕著な怒りが極度の非協調性または他者に対する身体的攻撃の話を生み出して、意思疎通を不可能とする。
【0115】
陰性尺度(N)
N1. 感情の平板化 表情、適切な感情表現や意思伝達の仕草の減少で特徴付けられる、感情反応性の減少。
評価基本 感情基調や感情反応性の身体的表現を面接時の観察に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 表情や意思伝達の仕草の変化が堅苦しく、取り繕った、見せかけの、調節に欠ける様子。
4.中程度 表情およびいくつかの表現上の仕草の範囲が減少して、遅鈍状の顔貌を来す。
5.やや重度 たまに表情の変化があるが、感情が一般に平坦で、意思伝達の仕草も乏しい。
6.重度 大抵の場合、顕著な平坦さと感情の欠如が示される。興奮、激怒または不適切な制限なしの笑いといった、調節できない極度に感情的な放出があり得る。
7.最重度 表情の変化や意思伝達の仕草の根拠が事実上欠落。患者は実のない、木のような表情を常に示す。
【0116】
N2.感情的ひきこもり 周囲の出来事に対して、興味や関心を示さないこと。
評価基本 面接時の対人行動の観察と家族ないし看護職員の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 通常、率先性に欠き、周辺の出来事に興味を示さない。
4.中程度 患者は一般に環境または課題から感情的に距離を置くが、促せば立ち向かう。
5.やや重度 患者は約束のあらゆる努力に抵抗して、明らかに周辺の人々や環境から感情的に切り離される。患者は冷ややかでおとなしく目的のないように見えるが、少なくとも短時間の意思伝達に参加し、時には補助を得ながら個人の義務に付き合うことはできる。
6.重度 関心と感情的関与の明らかな欠如が他人との会話を制限し、人的機能を度々放置する。患者は監視が必要。
7.最重度 関心と感情的関与の深刻な欠如の結果、患者は殆ど全体的に引きこもり、意思伝達をせず、人的必要性を放棄する。
【0117】
N3.疎通性の障害 会話の共感性と開放性に欠け、面接者への親近感や関心もないこと。言語的・非言語的コミュニケーションの減少と対人的距離によって明らかになる。
評価基本 面接時の対人行動に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 会話は堅苦しい、緊迫した、または見せ掛けの口調で特徴付けられる。感情的深みを欠き、人間味のない知的水準に留まる傾向がある。
4.中程度 典型的には患者は打ち解けず、対人的距離が明白。質問に対しては機械的に答えて、退屈な挙動または無関心を表す。
5.やや重度 関係遮断が明白で明らかに面談の生産性を妨げる。
6.重度 患者は極めて無関心で顕著な対人的距離あり。回答は投げやり的で、関わりの非言語的形跡は殆どなし。直視をしばしば避ける。
7.最重度 患者は殆ど全般的に面談に無関心。面談中、患者は無関心で、常に言語的および非言語的意思疎通を避ける。
【0118】
N4.受動性/無関心による社会的ひきこもり 受動性、無欲性、欲動欠如、意志欠如のため、社会交流に対して関心や自主性が減少。そのため対人関係は減少し、日常生活にも無関心になる。
評価基本 社会性について家族ないし看護職員の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 時折、社会活動に関心を示すが自主性は乏しい。通常は、他者から接近される時だけ、彼らとともに従事する。
4.中程度 多くの社会活動に従って受動的に動くが、無関心または機械的な対応。勢いを失う傾向あり。
5.やや重度 少数の活動にのみ受動的に関与するが事実上無関心または自主性なし。一般的に他者と話すことは殆どない。
6.重度 無関心で孤立化の傾向があり、社会活動への関与は極めて稀で、しばしば人的必要性を放置する。自発的な社会接触は殆どなし。
7.最重度 無関心、孤立化そして人的怠慢が深刻。
【0119】
N5.抽象的思考の困難 抽象的・象徴的形式で思考することが障害されていて、問題解決において、分類することや一般化すること、具体的なまたは自己中心的な考えを超えて進めることが困難であることによって認められる。
評価基本 面接の中での、類似性とことわざ解釈に関する質問への反応、および具体的対抽象的思考の使用を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 より難しいことわざについて文字通りのまたは個人的解釈を与える傾向があって、かなり抽象的または遠くで関連するような概念については問題があり得る。
4.中程度 ときどき具体的方法を利用する。多くのことわざとある種の範囲については困難性がある。機能面と特徴により、注意が散漫になる傾向がある。
5.やや重度 主として具体的方法で対処し、多くのことわざや範囲において困難を示す。
6.重度 比喩表現やことわざはいずれもその抽象的意味を把握することができず、単純な類似性のみ分類を定式化できる。思考は空虚または機能面と特徴および特異な解釈に組み込まれてしまう。
7.最重度 具体的方法を用いる思考のみが可能。ことわざ、共通の比喩若しくは直喩、単純な分類の理解はできない。特徴および機能面も分類の基礎とできない。この評価は、顕著な認識障害のために、試験官と最小の対話さえできない人々にも適用され得る。
【0120】
N6.会話の自発性と流暢さの欠如 無気力、意欲低下、防衛、あるいは認知面での欠陥と関連して会話の正常な流れが滞ること。これは言語的な交流の過程における流暢さや生産性の減少として現れる。
評価基本 面接中に観察される認知・言語過程を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 会話に自主性は殆どなし。患者の返答は短く、飾りのないもので、面談者の直接的指導型の質問が必要。
4.中程度 会話に自由な流れはなく、起伏があり、または不完全と思われる。適切な応答を引き出し会話を進めるために、指導的質問がしばしば必要である。
5.やや重度 患者は、自主性と開放性を顕著に欠き、面談者の質問に一、二語の短い文章で答えるのみ。
6.重度 意思伝達を回避または短縮するため、患者の応答は主に数語または短い文章(例えば、「知りません」「勝手に言えません」)に限られる。結果として、会話は大いに損なわれ面談は極めて非生産的である。
7.最重度 言語上のアウトプットは最大でもたまに発言に限られ、会話することは不可。
【0121】
N7.常同的思考 思考の流暢さ、自発性、柔軟さが減り、硬直化して繰り返しが多く、貧弱な思考内容である。
評価基本 面接の際に観察される認知・言語過程を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 態度や信念の中にいくらか硬直性が見られる。患者は、代わりの状況を考えることを拒否し、またはある考えから別の考えに写ることが難しいかも知れない。
4.中程度 会話が反復される主題の周辺を回って、新たなトピックへ写ることが難しい。
5.やや重度 面談者の努力にも拘わらず、思考が硬直し、会話が2,3の支配的な主題のみに限定されることが繰り返される。
6.重度 要求、陳述、考え又は質問の繰り返しが制御できず、会話を深刻に邪魔する。
7.最重度 思考と行動、会話が固定化された考えまたは限定されたフレーズに支配され、患者の意思疎通の全体的硬直、不適切および制限に繋がる。
【0122】
総合精神病理評価尺度(G)
G1.心気症-病気であるとかあるいは調子が悪いという、身体に関する訴えや確信。これは、調子が悪いという漠然とした感覚から不治の身体疾患であるという明らかな妄想まで範囲が広い。
評価基本 面接で表明される思考内容を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 健康または身体の不調に関する明確な心配があるが、しかし妄想的確信はなく、安心感によって深入りは軽減される。
4.中程度 乏しい健康または身体の不調に関する不満があるが、しかし妄想的確信はなく、安心感によって深入りは軽減される。
5.やや重度 身体の病気、不調に関して、患者は多くの、またはしばしば不満を示すが、或いはこれら主題を含むが夢中にはならない一、二の明確な妄想を明らかにする。
6.重度 身体的病気または組織上の不調に関する明確な妄想に、患者は夢中になるが、感情は完全にはこれら主題に没頭せず、面談者の努力で思考をそらすことはできる。
7.最重度 多くの、そして何度も身体的妄想が報告され、または患者の情緒や思考を総じて支配する、破局的性質の身体的妄想のみが報告される。
【0123】
G2.不安-神経過敏、心配、憂慮、焦燥感という主観的経験をいい、現在あるいは将来についての過度の心配から恐慌感までの範囲がある。
評価基本 面接中に表明された内容とそれに相応する身体症状を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 いくつかの不安、過剰の心配、または主観的不穏を表明するが肉体的、および行動上の結果は報告されず、示されない。
4.中程度 患者は明瞭な神経質症状を訴え、それは僅かな手の震えや過度の発汗のような温和な身体的発現に反映される。
5.やや重度 患者は、例えば顕著な緊張、乏しい集中性、動悸または睡眠障害といった有意な身体的および行動的結果を伴う深刻な不安の問題を訴える。
6.重度 主観的状態は、病的な恐怖、顕著な情動不安または多くの身体的明示に関係する、殆ど絶え間のない不安がある。
7.最重度 患者の生活は、不安により深刻に混乱される。それは、殆ど絶え間のない、そして時々パニックの割合に届く病的恐怖に関連し、または実際にパニック攻撃により示される不安である。
【0124】
G3.罪悪感 過去に実際にあった、または想像上の悪行に対する自責感や自己非難。
評価基本 面接で表明された罪悪感とそれが行動や思考に及ぼしている影響を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 質問により、軽微な事故に対する漠然とした罪悪感または自己非難が引き出されるが、明らかに患者は過度に関係しない。
4.中程度 本人の生活における実際の軽微な事故に関して、自らの責任に対する懸念を表明するが、それに夢中になるのでなく態度と行動は本質的に影響されない。
5.やや重度 患者は、自分が罰せられるべきとの卑下または信念に関連して、強い罪悪感を表明する。罪悪感は妄想的でもあり、自発的にボランティア活動し、関心事または落ち込みモードの根源となり得るが、面談者により軽減されることはできない
6.重度 罪悪の強い考えが妄想的性質を呈し、絶望と無価値の考え方に繋がる。患者は自らが刑罰のような厳しい制裁を受けるべきと信じる。
7.最重度 患者の生活は、不動の妄想または罪悪感で支配され、終身刑、拷問または死刑のような極端な刑罰に値すると感じる。これは、他者の問題を自己の悪行に帰属させる自殺思考に関係する可能性がある。
【0125】
G4.緊張 硬直、振戦、多量の発汗、落ち着きのなさのように、恐怖感、不安感、焦燥感が明らかに身体上に表されていること
評価基本 不安であることを証拠だてる言語的表明と面接中に観察される緊張の身体的表現の重篤性を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 軽い硬直性、時々見られる落ち着きのなさ、場所の移動、細かく速い震えといった姿勢と動きが、僅かな懸念を示す。
4.中程度 そわそわした挙動、明白な手の震え、過度の発汗または神経質な癖のような、種々の明示から、明らかに神経質な外観が現れる。
5.やや重度 緊張した震え、多量の汗と落ち着きのなさ、といった多くの明示から顕著な緊張が示されるが、面談中の行為は有意な影響を受けない。
6.重度 顕著な緊張により、人との意思疎通が妨げられる。患者は,例えば、常にそわそわして、長時間じっと座っておられず、また過呼吸が見られる。
7.最重度 運動の加速やパニックの兆候から極度の緊張が示され、例えば、急速な落ち着きのない歩調合わせ、一分以上座っておられないことがあって、持続した会話ができない。
【0126】
G5.衒奇症と不自然な姿勢 不器用な、気取った、混乱した、あるいは奇妙な外見により特徴づけられる不自然な姿勢。
評価基本 面接時の身体による表現の観察と看護職員ないし家族からの報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 動きが不器用で姿勢が僅かに硬直化している。
4.中程度 動きがとりわけ不器用またはまとまりがなく、または不自然な姿勢が短時間維持される。
5.やや重度 奇妙な儀式やゆがめられた姿勢が観察され、また異常な姿勢が長時間持続される。
6.重度 奇妙な儀式、定型化されたまたは典型的な動きがしばしば充実し、又は制御された姿勢が長時間持続される。
7.最重度 儀式主義的、定型的または典型的動きに事実上常時包含されることにより、または多くの時間持続する不自然な硬直化した姿勢により、機能が深刻に損なわれる。
【0127】
G6.うつ 悲哀、落胆、無力、虚無などの感情。
評価基本 面接中に表明されるうつ気分と、態度や行動への影響を観察して評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 質問に対してのみ悲しみや落胆を表明するが、一般的態度や振る舞いから、うつは示されない。
4.中程度 悲しみや絶望の明白な感情があり、自発的に漏らすこともあるが、うつ気分は行動や社会機能に主たる影響は与えず、患者は通常元気づく。
5.やや重度 明白なうつ気分は自明な悲しみ、悲観主義、社会的興味の喪失、精神運動遅延、および食欲と睡眠の干渉に関連する。患者は容易には元気になれない。
6.重度 顕著なうつ気分は、持続的な苦悩感、しばしば号泣、絶望と無価値と関連する。加えて、食欲および/または睡眠、並びに通常の運動と社会機能に主たる干渉が存在し、自己無視の兆候があり得る。
7.最重度 うつ感情が多くの主たる機能に深刻に干渉する。しばしばの号泣、明白な身体的症状、損なわれた集中力、精神運動遅延、社会的無関心、自己無視、うつ的または虚無的な妄想および/または自殺思考若しくは行動等が明示される。
【0128】
G7.運動減退 動作や会話が停滞したり少なくなったり、刺激に対する反応が減少したり、体の調子が低下することに示される運動活性の減退。
評価基本 面接中に観察される症状と看護職員ないし家族の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 わずかながら、会話や動作の速度の減少が見られる。患者の会話や仕草に生産性は低い。
4.中程度 患者の動作は明らかに遅く、また、反応潜伏時間が長く、間が延長され、速度がゆっくりなど会話の特徴がある。
5.やや重度 運動活動の顕著な減退が意思疎通を極めて非生産的にして、社会および職業的立場における機能を区切る。患者は通常、座るか横たわるのが認められる。
6.重度 動きは極めてゆっくりで、活動や会話が最小となる。本質的に一日中座っているか、横になって過ごす。
7.最重度 患者は殆ど完全に動かず、事実上、外部刺激にも応答しない。
【0129】
G8.非協調性 面接者、病院職員、家族など重要な他者の意向に同調することを拒否する活動をする。不信感、防衛、頑固さ、拒絶、権威に対する反発、敵意あるいは好戦性などを伴うこともある。
評価基本 面接中に観察される対人行動と看護職員ないし家族の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 恨み、焦燥、皮肉の態度に適合する。微妙な調査に対して不快なまで反対するかも知れない。
4.中程度 例えば、自分でベッドメーキングする、予定された計画に参加する、といった通常の社会上の要求に適合することを、しばしば完全に拒絶する。患者は、敵意のある、防衛的な否定的態度を企画するかも知れないが、通常、一緒に働くことはできる。
5.やや重度 患者は通常、環境の要求を承諾しない。そして他人により、「のけ者」として、または「態度に真剣な問題」を抱えた人間として特徴付けられる。非協調性は明白な防御または多くの質問に対処する面談者そして不本意性に対して怒りっぽいことに投影される。
6.重度 患者は大変非協調的で悲観的、好戦的である。多くの社会的要求に適合することを拒絶し、全面談を開始または終了することを望まない。
7.最重度 積極的な抵抗が、事実上機能の全ての主要分野に衝撃を与える。患者は社会活動への参加、個人的衛生状態への気配り、家族や職員と会話し面談に参加することも
いずれも拒否するかも知れない。
【0130】
G9.不自然な思考内容 風変わり、夢想的あるいは奇異な考えに特徴づけられる思考。その内容は的外れや典型的でないものから、歪んだ、不合理な、そして明らかに不条理なものまで含まれる。
評価基本 面接中に表明された思考内容を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 思考内容が奇妙、独特であり、またはよく知られた考えが不規則に構成されている。
4.中程度 考えがしばしば歪曲され、時には奇怪に見える。
5.やや重度 患者は奇妙な、空想的な思考(国王の養子になるとか、死刑囚監房からの逃亡者であるとか)を多く表明する。または明らかにばかげたもの(例えば、数百人の子供を持つとか、歯の詰め物や外部空間から無線メッセージを受けない)もある。
6.重度 患者は、非論理的、不条理な考えを表明し、あるものは極めて奇妙な(三つの頭を持ち、別世界からの訪問者である等)考えである。
7.最重度 思考が不条理、奇妙さおよび奇怪な考えで満たされている。
【0131】
G10.見当識障害 人物、場所、そして時間を含む環境と自分との関係に対する認識の欠如であって、さくらんや自閉が原因として考えられる。
評価基本 見当識に関した質問に対する反応を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 一般的な位置づけは適切だが、個別の対応には困難あり。例えば、患者は自分の位置を知っているが、所在地住所は知らない;病院の職員氏名は知っていても彼らの機能は知らない;何月か知っていても週の翌日は言えない;二日以上日付を誤る、等々。職員を識別する能力はあるが市長、知事、大統領はできないように、興味が狭くなり、それは,直接的であるが拡張できない環境で示される。
4.中程度 人、場所、時間を認識することは、部分的にしかできない。例えば、患者は自分が病院にいることは知っているが、その名前は知らない;市の名前は知っていても区や地域の名前は知らない;一次療法士の名前は分かるが他の多くの直接看護者は知らない;季節や年は分かっても月は不確か等。
5.やや重度 人、場所、時間の認識においてかなりの間違いがある。患者は自分の居場所に着いて漠然とした認識しかなく、自分の周辺の多くの人々をよく知らない。患者は年を正確またはほぼ正確に理解しても、今月、曜日または季節さえ知らない。
6.重度 人、場所、時間の認識において顕著な間違いがある。例えば、患者は自分の居場所を知らないし、日付は1年以上混乱する;現在生活において一人二人しか個人の名前を挙げることができない。
7.最重度 患者は人、場所、時間について完全に混乱していると思われる。人の居場所、現在の年、両親のような最も親しい家族、配偶者、友人、一次療法者等について総合的に混乱又は完全に無知である。
【0132】
G11.注意の障害:注意の集中困難をいう。内的・外的な刺激により注意散漫となり、新しい刺激に対して注意を移したり、保持したり、構えたりすることに困難を示す。
評価基本 面接中の所見に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 面談に対する注意の散漫や躓きに対してしばしば脆弱性を呈し、集中に限界がある。
4.中程度 容易な注意散漫的傾向、与えられた主題に注意力を長い時間維持することの困難性、新しいトピックに注意を移す問題により、会話が影響される。
5.やや重度 乏しい集中力、中医療の散漫性、焦点を適切に移動させることの困難性により会話がひどく阻害される。
6.重度 患者の注意は短い時間のみ、または内的・外的な刺激による顕著な散漫性のため、やっとの思いで抑制され得る。
7.最重度 短い会話さえできないほど、注意力が邪魔される。
【0133】
G12.判断力と洞察力の欠如 自分自身の精神状態、生活状況に対する自覚または理解の障害。この障害は過去あるいは現在の精神疾患や精神症状を理解できないこと、そして精神科への入院あるいは治療に対する拒否、結果に対する見通しのまずさが目立つ決断や、非現実的な長期ないし短期的計画などによって示される。
評価基本 面接中に表明される思考内容を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 精神疾患は認識するが、その重篤度、治療の意味、再発を回避する処置を講じることを過小評価する。
4.中程度 患者は病気について漠然とした、浅薄な認識しかない。病気であることの肯定が変動したり、主要な症状、例えば妄想、未整理の思考、不信感やひきこもり等の認識があまりないのかも知れない。患者は、不安、緊張、睡眠障害といったより軽度な症状改善といった用語で治療の必要性を合理化するかも知れない。
5.やや重度 過去の精神疾患は認識するが現在の疾患は認めない。指摘されると、患者は譲歩して、ある種の無関係な、または重要でない症状の存在を言うかも知れない。それは、全くの誤解や妄想的思考により釈明をする傾向がある。精神疾患の治療の必要性は同じく、認識されない。
6.重度 患者は、精神疾患など罹患したことはないと否定する。過去または現時点において精神的症状の存在を否認し、従順ではあるが、治療や入院の必要性を否定する。
7.最重度 過去及び現在の精神病を強烈に否定する。現在の入院と治療は妄想的解釈を与え(例えば、悪事に対する罰として、迫害者による迫害行為として)、患者は療法士、投薬その他の治療行為に対する協力を拒絶する。
【0134】
G13.意志の障害 思考、動作、行動、会話における自主的な開始、持続、および制御の障害。
評価基本 面接中に認められる思考内容および行動を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 会話と思考において、いくつか優柔不断性が認められ、それが幾分か、言葉による認知過程の妨げになるかも知れない。
4.中程度 患者は決定に至る際に、しばしば態度を決めかね、明らかな困難性を示す。会話は思考の修正で損なわれ、結果として言葉による認知機能が明らかに損なわれる。
5.やや重度 意思の混乱が思考と行動に干渉し、患者は目立った優柔不断性を示して、社会的および運動活動の開始と継続が妨げられる。これはたどたどしい話し方によっても示される。
6.重度 意思の混乱が、身支度や毛繕いといった単純な無意識の運動機能に干渉し、話し方に大きく影響を与える。
7.最重度 意思力がほぼ完全に障害され、運動と会話が総合的に阻害されて、不動性と無言になる。
【0135】
G14.衝動性の調節障害 内的な要請に対する行動の抑制や調節の障害であって、それは後先を考えることなく、突発的で調整を欠いた、気まぐれなまたは誤った緊張と感情の開放をもたらす。
評価基本 面接中の行動と看護職員ないし家族の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 患者はストレスに直面すると、容易に怒り、不満を抱き、または満足を否定する傾向があるが、衝動的に行動することは稀である。
4.中程度 患者は最小の挑発に対して、怒り、罵る。時々脅迫的、破壊的となり、身体的対立または小さな乱闘になったことがある。
5.やや重度 患者は再発性の衝動発現を示し、ののしりや財産の破壊、身体的脅威が含まれる。重大な暴行を含むことがあり得、患者の隔離、身体的拘束、PRN鎮静が必要となる。
6.重度 患者は頻繁に衝動的な攻撃性を示し、強迫的、要求的、破壊的であり、見かけ上、後先のことを考えていない。患者は、攻撃的な行動を示し、性的な攻撃性を有し、幻覚上の指示に応じて行動する。
7.最重度 患者は、殺人癖があり、性的暴行性、繰り返す残忍性を有し、自己破壊的である。危険な衝撃を制御することができないので、直接的監視と外的な束縛を常時必要とする。
【0136】
G15.没入性 内的に生じた思考と感情、および自閉的な体験に没頭し、現実的な見当識と適切な行動が失われる。
評価基本 面接中に認められた対人行動を評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 個人的必要性や問題が過剰に会話に含まれ、話が脱線して自己中心的主題に戻り、他人に対して示された関心が減少する等する。
4.中程度 患者はしばしば、まるで白日夢か内的経験に拘わって、自己陶酔に陥ると思われ、それが他者との意思疎通に干渉する。
5.やや重度 患者はしばしば、うつろな凝視、つぶやき、独り言の存在、または典型的な運動パターンへの関与のような、自閉的経験に携わっているように見え、それは社会的な意思疎通機能を邪魔する行動で示される。
6.重度 自閉的経験に対して顕著に没頭し、それが集中力や、会話の能力、環境への順応を区切ってしまう。患者はしばしば、微笑し、笑い、つぶやき、または独り言を叫ぶかも知れない。
7.最重度 総じて自閉的経験に対して没頭し、それが行動の全ての主たる領域に大きく影響する。患者は幻覚に対して言葉で、または行動で常に応答し、他人または外的環境に殆ど注意を払わない。
【0137】
G16.積極的社会回避:
自主的な社会回避:根拠のない恐怖感や敵意あるいは不信感を伴い、社会との関わりが減少していること。
評価基本 看護職員ないし家族の報告に基づいて評価する。
1.なし 定義が当たらない。
2.ごく軽度 病的かは疑問;通常の限界の上限ともいえる。
3.軽度 患者は要すれば社会機能に参加するが、他人の存在で容易に病気と思われ、一人で時間を過ごすことを好む。
4.中程度 患者は嫌々、全てのまたは殆どの社会活動に参加するが、しかし、説得する必要があり、不安感、不信感または敵意を時期早々に終了させてもよい。
5.やや重度 患者は関与させようとする他者の努力にもかかわらず、恐れながらまたは怒りながら社会的交流を避ける。組織化されていない時間を一人で過ごす傾向がある。
6.重度 患者は、畏れや敵意または不信感のため、社会活動に殆ど参加しない。働きかけると、患者は交流を中断する強い傾向があり、一般的に自らを他人と隔離する傾向がある。
7.最重度 深い恐怖、敵意、または被害妄想のため、患者は社会活動に関与できない。可能な限度において交流をすべて避け、他人から隔離されたままにいる。
【0138】
簡易陰性症状尺度
以下は、実施例の臨床研究で用いられた簡易陰性症状尺度(BNSS)の記述である。
【表2】
【0139】
簡便な陰性症状尺度(マニュアル)
この評価手段は、統合失調症および統合失調症性疾患について陰性症状の重篤度の原段階を測定するために作成された。陰性症状は、同じ文化および同じ年代の人に通常存在する行動や主題の経験の減少または不存在である。陰性症状には、無快感症、非社会性、意欲喪失、感情鈍麻、および失語が含まれるが、他の症状がこの中に属することもある。陰性症状は他の統合失調症および関連する疾患(精神障害、無秩序、憂鬱および不安症状を含む)および認知不足とは明確に区別される。トレーニング目的で作成された本マニュアルは、プローブとアンカーの他に項目を含む。ワークブックは評価の際に用いられるが、プローブとアンカーのみを含む。スコアシートは別の書面となる。
尺度は治療の試みに使用するためのものであるが、非研究目的の臨床評価や変化の追跡等、他の用途にも応用される。この尺度において陰性症状サブタイプや症候群を定義する試みはしていない。五つの亜尺度が含まれ、各陰性症状の一つを上記に掲げた。これら亜尺度の一つに含まれない、別の項目があり、苦痛の項目である。
【0140】
評価は全て半構造化面接に基づき試みと質問を伴う。半構造化面接の内容を最小として含ませることが大切である。しかしながら、項目を評価するために必要な追加の質問は何でもすべきである。項目は7点尺度(0-6)に基づいて評価され、アンカー点は通常、症状なし(0)から重篤(6)の範囲で評価される。評価はアンカーに基づいてなされるべきで、精神疾患の人が通常どのように振る舞うかを予想して調整することは避けるべきである。評価の時間枠は一週間であり、患者の全生存期間に基づく評価は避けなければならない。患者に時々この時間枠を思い出させることは必要かも知れない。この章の尺度における多くの評価は自己報告を必要とするが、面接中の患者の観察もまた、評価中に外部の観察者から提供される観察と同様、適切なものとして、評価をする際には重要視されるべきである。
個別の項目について、患者はある領域では通常の能力発揮だが、他では明らかに機能障害の場合があり得る。この場合、患者の評価は最大の異常でも最小の異常でもなく、その項目における能力発揮の統合とすべきである;即ち、その患者はその領域における彼又は彼女の能力発揮全体の最も代表的なスコアを与えられるべきである。なお、尺度の二つのスコア、例えば3と4が同点となるような場合は低い方を選択する。尺度全般にわたり、評価者は、亜尺度中で一つの項目の評価を他の項目に、またはある亜尺度から他の亜尺度へ持ち越さないよう努力しなければならない。例えば、低下した声の表現性(感情鈍麻における)は、低下した口頭のアウトプット(会話不足)の評価に影響しない。一般に、無快感症、非社会性および意欲喪失の評価は、その患者に対して合理的に得られるものに基づきなされるべきであり、多くの場合、ある形の喜び、社会化、そして得られる率先の機会があるべきである。
【0141】
I.無快感症の亜尺度
この亜尺度は喜びの二つの側面を測定する:一つは活動中の喜び(強度と頻度は別個に評価する)であり、もうひとつは未来の活動において期待または予測される喜びである。
この亜尺度における全ての三つの項目に対し、社会活動、身体的感覚、娯楽の活動、および仕事/学校を含んで、患者にとっての喜びとなり得るすべての源を検討する。強度の評価は、患者がその領域で持った(又は期待した)最も強い喜びに、そして患者の記述に基づく。評価者は、無快感症の亜尺度においては、社会活動に関連した喜びを検討し、意欲喪失の亜尺度では社会活動の率先性と貫徹性を検討する。
[プローブ質問:項目1&2]
【表3】
【0142】
項目1: 活動中の喜びの強度
0:正常 いろいろな活動を十分楽しめる。喜びの強度に機能障害はない。
1:懐疑的 他の人ほど極度に楽しめないが、依然、正常の範囲内にある。
2:軽度 活動における楽しみの強度が若干減少し、正常の範囲外にある。
3:中程度 多くの活動において楽しみの強度が若干減少し、強度がもっと減少する場合もいくつかある。
4:かなり重度 多くの活動において楽しみの強度が少なくともかなり減少し、一つの分野では深刻に減少する。
5:重度 多くの活動において楽しみの強度が深刻に減少する。楽しみを経験する能力は残るが、強く楽しめる経験が何であっても、僅かな楽しみしか経験できない。
6:最重度 環境がどうであろうと、楽しみを経験できない。
【0143】
項目2: 活動中の喜びの頻度
0:正常 いろいろな活動をしばしば楽しめる。楽しめる頻度に機能障害はない。
1:懐疑的 他の人ほどしばしば楽しめないが、依然、正常の範囲内にある。
2:軽度 活動における楽しみの頻度が若干減少し、正常の範囲外にある。
3:中程度 多くの活動において楽しみの頻度が若干減少し、頻度がもっと減少する場合もいくつかある。
4:かなり重度 多くの活動において楽しみの頻度が少なくともかなり減少し、一つの分野では深刻に減少する。
5:重度 多くの活動において楽しみの頻度が深刻に減少する。楽しみを経験する能力は残るが、強く楽しめる経験が何であっても、僅かな楽しみしか経験できない。
6:最重度 環境がどうであろうと、楽しみを経験できない。
【0144】
項目3: 未来の活動において期待または予測される喜び
[プローブ質問]
【表4】
【0145】
いくらかの患者は、この項目の基本である期待する楽しみの概念を理解することが難しいかも知れない。それは認知の障害、包括的な喜びの欠落または何か他の理由に依るのかも知れない。もし患者が、その概念を理解できなければ、スコアを6とし、下記の項目イエスにチェックを入れる。
0:正常 未来の活動を考える時、楽しみを経験できる。未来の活動の楽しみを予測することに障害はない。
1:懐疑的 未来の活動を考える時、他の人ほど楽しみがないが、正常の範囲内である。
2:軽度 未来の活動を考える時、楽しみが若干減少し、それは正常の範囲外である。
3:中程度 未来の活動を考える時、楽しみが正常な程度より明らかに減少するが、楽しみはいくらか経験ができる。
4:かなり重度 いくつかの未来の活動について考えると、楽しみを経験できるかも知れないが、通常はできない。
5:重度 楽しいはずの活動を考える時でも、未来の活動について考えることに楽しみを経験することは稀である。
6:最重度 未来の活動が何であろうと、未来の活動について考えることに楽しみはない。
【0146】
II.苦悩
この項目は、患者の不快なまたは苦悩のあらゆる感情についての経験を評価する:悲しみ、憂鬱、不安、嘆き、怒り等々。苦悩の源は考慮しない、例えば、精神的症状に関連する不快な感情はここで考える。
項目4: 苦悩
[プローブ質問]
【表5】
0:正常 正常な能力で苦悩や不愉快なことを経験する。
1:懐疑的 動揺させるようなことに直面しても他人ほど悩まず、依然、正常な範囲内である。
2:軽度 動揺させるようなことに直面すると、正常よりも僅かに悩む。
3:中程度 動揺させるようなことに直面すると、正常よりも明らかに動揺が少ないが、いくらか悩みは経験する。
4:かなり重度 大いに悩むかも知れないが、通常、そのためには厳しい課題が必要である。
5:重度 厳しい課題に直面しても、僅かな苦悩を経験するのみ。
6:最重度 どのような課題に出会っても、苦悩の経験はない。
【0147】
III.非社会性亜尺度
非社会性は社会活動を減少させ、他人との密接な関係形成に対する関心の低下を伴う。この亜尺度は、無感動の非社会性を捉えることを意図したものである。
項目評価は、内的経験と観察される行動の両方の報告に基づく;前者は患者が価値を認め、密な社会的結合を望む程度を含み、後者は患者が実際に他人との交流に従事する範囲である。これら項目は、疑わしい引きこもりの評価を避けることを意図する。
非社会的行動は以下を包含する;
a) 社会的環境においては、表面上または短い交換だけ関与し、打ち解けず、または背景にまで後退し、
b) 個人的事項を議論する相手がおらず、
c) 他人との活動や事件への関与に欠く。
非社会的な内部経験は以下を包含する;
a) 近い親密な関係は重要でなく、無価値であるとの信念、
b) 他人との共有や相互ケアに対する関心の欠如、
c) 非社会的活動に対する優先傾向、
d) 隔離されても孤独感がなく、
e) 他人と共に働き協力する関心が欠如。
【0148】
行動と内的経験のスコアは全く異なってもよい、つまり、行動は、内的経験と調和しなくてもよい。例えば、患者は社会的スキルが乏しくまたは被害妄想-項目5で高い(障害された)スコア-のため隔離され得るが、非常に孤独で他人のことを強く考え、関係を望んで項目6では正常なスコアとなり得る。
評価は家族関係、親密な関係、友人関係の領域でなされるべきで、もし患者がその中の誰かについて何も述べない場合は、面談者が尋ねる必要がある。評価者との交流もまたスコア化において考慮すべきである。もし患者が家族と接触できないので(死亡した、または接触を拒否している)接触がなく、またはその他の社会的機会がないのであれば、接触がないことは非社会性評価において考慮すべきではない。
患者の生活上不可避の現実も許容される必要がある。例えば、患者が慢性的に収容されていて、または入院患者なので、家族や友人と接触できないこともある。このような場合、他の患者や職員を含めて、患者にとって受け入れられるものに基づいて評価はなされるべきである。そのような環境においても、他者との関係を形成し、またはしないこと、孤独を感じること、または感じないことは可能である。
【0149】
項目5: 非社会性 行動
[プローブ質問]
【表6】
0:障害なし しばしば他者と関わりを持ち、一人以上の人達と個人的なことについて隠さず議論する。正常な範囲内にある。
1:極めて僅かな欠陥 大抵の個人的なことを議論できる緊密な関係を持ち、他者と個人的なことを議論する。
2:軽度な欠陥 社会的交流は稀ではないが、多くの人々ほど積極的ではなく、いくらかの個人的なことのみを議論する。関係は、緊密ではない。
3:中程度の欠陥 他者との緊密な関係はない、事件への関係と関与には無頓着だが、通常、他者を避けることはない。
4:かなり重度の欠陥 他社との契約や関与は稀で表面的になりがちで、他者を避ける傾向もある。一般に、個人的なことを他者と議論しない。
5:重度の欠陥 他者との関与は殆ど常に表面的で、選択して、他者と一緒に過ごさない。
6:最重度の欠陥 他者と交流することは稀で、多くの時間、他者を積極的に避ける。
【0150】
項目6:非社会性 内的経験
[プローブ質問]
【表7】
【0151】
0:障害なし 患者は人間関係に大変関心があり、他人との関係を人生における最も重要な部分と考えて、孤立すると孤独感を感じ、ひとりにならないことを望む。
1:極めて僅かな欠陥 患者は人間関係を大切と考え、他人に興味がある。孤立すると孤独感を感じ、ひとりにならないことを望む。
2:軽度な欠陥 患者は家族との密接な関係を多少重要と考え、他人との関係にもかなり関心はあるが、近い、密接な関係ではなく、時々、関係を考える。
3:中程度の欠陥 患者は密接な関係を重要と考えず、しばしば密接になることを望む。
4:かなり重度の欠陥 他人と密接な関係になったとき、我慢をし、又は放置することができる。一般に他人と個人的なことを議論することは希望せず、より近い関係を希望し、または失って不自由することは稀である。
5:重度の欠陥 患者は他人との密接な関係に殆ど関心を経験せず、殆ど重要性を考えないが、寂しくはない。
6:最重度の欠陥 患者は他人との関係に関心がなく、密接な関係を失っても不自由しない。
【0152】
IV.意欲喪失の亜尺度
意欲喪失は活動の持続および開始の減退である。行動と内的経験の二つの評価は、活動における開始と持続の失敗として、核陰性症状、例えば減少した機会や偏執症的信念、を反映しない、いくつかの根源の為かも知れない。患者は、目標指向的行動は減少し得るが、そのような行動に従事することを希望すれば、意欲喪失についての比較的低い評価を依然として受けるかも知れない。例えば、うつ患者は、目標指向的行動を開始し、持続することは困難であって、項目7において高スコア(欠落)を貰うかも知れない。しかしながら同じ患者が、罪悪感を覚え自己の成果未達を恥じ、自分の義務をしばしば考えて、項目8では低スコア(通常)で済むかも知れない。
評価は仕事、学校、趣味/レクリエーション/娯楽、および自己管理の達成度に基づく必要がある。社会活動は、ここの亜尺度ではなく、非社会性亜尺度で評価される。自己管理は、身繕い、洗濯、住居を得ること、家族の維持、健康関連の予約を包含し、その他の活動もまた自己管理の一部であろう。患者は、機会がなかったことを罰せられるべきでない。例えば、入院患者の場合、退院が近づいてなければ、住居を捜さなかったとして罰するのは適切ではないだろう。以下のプローブでは仕事は大まかに定義され、家事、子供の世話、療養中の家族の世話等々が含まれる。動揺に、患者は収入が殆どない、または身体的障害があれば、レクリエーション活動に参加することは困難かも知れず、この分野の開始と持続は重要と考えられない。
この分野の行動と内的経験の評価では、一つの領域に対する非常に強い契機付けと興味が、興味が患者の可能な時間と努力の多くを占めるのであれば、相対的に普通の評価に繋がる。例えば、小さな子供の世話をする人は他のことに向ける時間が殆どなく、その任務に没頭すれば、意欲喪失亜尺度上は通常のスコアかも知れない。非社会性の場合と同じく、患者の生活上不可避の現実に対してはいくらか酌量されるべきであろう。例えば、施設に慢性的に収容されている患者、または入院患者は、競争の激しい雇用や教育を追求することはできない。評価は、例えば病棟内で利用できる活動のような、患者にとって利用できるものを基準として、なされるべきである。そのような環境でさえ、することを見つけ、しないことを選択し、退屈するまたはしないことは可能である。
【0153】
項目7 意欲喪失:行動
[プローブ質問]
【表8】
【0154】
0:障害なし 十分普通の範囲で、患者は仕事または学校、レクリエーション/趣味/娯楽、および自己管理を開始し、持続する。
1:極めて僅かな欠陥 活動の開始と持続において、多くの人々よりも幾分一貫性がないが、臨床上の疑問の関係に過ぎない。
2:軽度な欠陥 活動の開始と持続において軽度な欠陥があり、例えば、この一週間活動を適切に開始したが、持続は抑え気味。または、患者と同程度の頻度で、他人が主導権を発揮する。
3:中程度の欠陥 活動の開始と持続において顕著な欠陥があり、しばしば活動を開始せず、または長い期間持続しない。他人がしばしば活動の推進力を提供する。
4:かなり重度の欠陥 開始に重大な欠陥あり;いくつかの活動を開始するが長く続かない。通常、他人が活動の推進力を提供する。
5:重度の欠陥 活動の開始と持続が明白に欠如する。時々、活動開始しても持続しない。患者の活動において、ほとんど全て他人が活動の推進力を提供する。
6:最重度の欠陥 活動開始が総合的に欠落する。
【0155】
項目8:意欲喪失 内的経験
[プローブ質問]
【表9】
【0156】
0:障害なし 患者は、学校/仕事、レクリエーション活動、および自己管理に興味を持つ。これらのことをしばしば考え、自己管理していると報告する。本領域では明らかに正常である。
1:極めて僅かな欠陥 これら事項に関して、多くの人々よりも幾分興味が薄く、動機付けが少ないが、臨床上の疑問の関係に過ぎない。
2:軽度な欠陥 患者は通常、これら領域に動機づけられるが、しばしば興味や動機付けの欠落を示す。これら事項を考え、管理していると報告するが、通常よりも若干劣る。
3:中程度の欠陥 患者は通常、これら領域に動機づけられるが、興味や動機付けにつき明らかな欠落がある。仕事環境に留まるが、何の改良にも興味を示さず、人間関係や娯楽を考えることに殆ど時間を使わない。
4:かなり重度の欠陥 患者は、この領域に僅かに動機付けられるのみ、考えることも
5:重度の欠陥 この領域における興味や動機付けを明らかに欠く。考えたり、管理することも殆どない。
6:最重度の欠陥 本質的にこの領域に興味なし;考えたり、管理することもない。
【0157】
V.感情鈍麻の亜尺度
感情鈍麻とは、感情の外向け表現における減少であり、面談刺激は感情を取り出すように仕組まれる。もし患者が、感情経験について尋ねる促進に対応しなければ、この項目は面接中の他の質問への応答に基づいて評価することができる。項目の評価は、面接中の他の質問への応答に基づいて評価することができる
顔の表情
顔の表情を評価するときは、顔面の全ての部分を横断する顔面の動き、例えば、両目(例えば眉を挙げる)、口もと(微笑み、または、しかめっ面)および顔面中央(例えば、うんざりした時のしかめっ面)を含めて考える。
【0158】
項目9:顔の表情
0:障害なし 十分通常の範囲内で、感情経験を話すとき、顔の表情の多くの適切な変化と共に活性化される。
1:極めて僅かな欠陥 感情経験を再集計するとき、顔の表情の頻度と強度において、臨床上疑しい関係にある極めて微少な減少あり。
2:軽度な欠陥 顔の表情の頻度と強度において、軽度の減少あり;各感情経験を再集計する間、顔面に少なくとも二つの変化を示す。
3:中程度の欠陥 各質問に対して顔面にたった一つの変化しか示さないなど、顔の表情の頻度と強度において顕著な減少あり;
4:かなり重度の欠陥 感情経験を再集計する際、たった一、二の質問に対し、顔の表情を示して、顔の表情の重大な欠陥あり;会話全体の中で三、四の変化のみかも知れない。
5:重度の欠陥 全ての質問に対する応答の中で、肯定的および否定的な顔の表情に明らかな欠落あり;全体の会話の中でたった一、二の僅かな顔の表情の変化を示すだけかも知れない。
6:最重度の欠陥 会話を通じて、総合的に、またはほぼ総合的に顔の表情の欠落あり。
口頭の表現
感情鈍磨の一つの成分は声の変調で、速度、声の大きさ、話されることの声高さが含まれる。ここでは、話される内容や量は評価しない。
【0159】
項目10:口頭表現
0:障害なし 三つの次元、即ち、速度、大きさおよび声高さの全てにおいて、正常な変化。
1:極めて僅かな欠陥 三つの次元のいずれか一つに僅かな減少あり。
2:軽度な欠陥 二つの次元で軽微な減少、または一つの次元で中程度の減少あり。
3:中程度の欠陥 一つの次元でかなりの減少あり。
4:かなり重度の欠陥 二つ又は三つの次元でかなりの減少、または一つの側面で重度の減少あり。
5:顕著な欠陥 少なくとも一つの次元で重度の減少、そして別の少なくとも一つの次元でかなりの減少あり。
6:重度の欠陥 二つ又は三つの次元(速度、大きさおよび声高さ)で重度の減少あり。
9:評価なし 患者は話をしない。
【0160】
表現の仕草
表現の仕草とは手でなされる仕草のみならず、頭(例えば、頷き)、両肩(すぼめる)および胴体(前かがみ)も含まれる。ここでは、運動障害の動きは評価しない。
項目11 表現の仕草
0:障害なし 仕草は十分正常な範囲内;感情経験を再集計するとき、腕、手、両肩、頭および/または体を用いる。
1:極めて僅かな欠陥 表現の仕草の頻度に、極めて微少な減少あり。臨床上疑しい関係にある、腕、手、頭または体の使用の僅かな減少
2:軽度な欠陥 表現の仕草の頻度に、軽度の減少あり。各感情経験を再集計する間、少なくとも二つの表現の仕草を示す。
3:中程度の欠陥 表現の仕草の頻度に、かなりの減少あり。各質問に応答して僅かな仕草を示すことがある。
4:かなり重度の欠陥 たった一、二の質問に対する応答で示される表現上の仕草に顕著な欠陥あり;会話全体を通じて、たった三つ、四つの仕草しか示さないかも知れない。
5:顕著な欠陥 表現上の仕草に明白な欠陥あり;全ての質問に対して仕草の回数減少が起こる。会話全体を通じて、たった一つ、二つの僅かな仕草しか示さないかも知れない。
6:重度の欠陥 殆ど全体的に表現上の仕草が欠落する;各感情経験を再集計する際、腕、手、頭または体が事実上動かされない。
【0161】
VI.失語の亜尺度
失語の亜尺度に対して特別のプローブはない;会話を通じてなされる全ての質問に対する応答を基に評価される。
会話の量
この項目は話される単語の量を参照する。無秩序、造語、精神病的内容といったその他の会話異常は、ここでは評価しない。例えば、無秩序な主題は大量の会話を生み出し、この項目では低スコア(正常)とされる。
【0162】
項目12 会話の量
0:障害なし 正常な会話量か、または患者は過度に話をする。
1:極めて僅かな欠陥 会話量が疑問な程度だけ減少;回答は通常は簡潔である。
2:軽度な欠陥 回答は通常短い。
3:中程度の欠陥 多くの回答が、単語ひとつ、二つのみ。
4:かなり重度の欠陥 少なくとも半分の回答が単語一つ、二つのみ。
5:顕著な欠陥 殆どの回答が単語一つ、二つのみ。
6:重度の欠陥 全部または殆ど全部の回答が単語一つ、二つのみ。
9:評価せず 患者は話をしない。
【0163】
自発的詳細化
この項目は、面談者の質問に応答するため、正確に必要なことを超えて与えられる情報量を評価する。患者の応答が適切か否かは検討しないので、この意味で詳細化とは、回答を明確化するために与えられる適切な背景情報の他、不適切な、または不要な資料、妄想的な、または考えが混乱した応答も含まれ得る。
【0164】
項目13 自発的詳細化
0:障害なし 患者は通常、質問の応答に必要なこと以上の情報を提供するが、この情報は適切かも知れないし、そうでないかも知れない。患者は過度に話し好きか、または会話に圧力を感じるかも知れない。
1:極めて僅かな欠陥 患者はしばしば、質問の応答に必要なこと以上の情報を提供するが、時々、多くの情報が適切であったかも知れない。
2:軽度な欠陥 患者は何度か追加の情報を与えるが、回答は通常、必要な情報に限られる。
3:中程度の欠陥 患者は折に触れて追加の情報を与える;面談者は時折、より詳細を尋ねる。
4:かなり重度の欠陥 患者は滅多に、質問の応答に必要なこと以上の情報を提供しない;面談者は何度か、より詳細を尋ねる。
5:顕著な欠陥 殆ど全ての回答が必要な情報に限定され、またはそれ以下である;面談者はしばしば、より詳細を尋ねる必要がある。
6:重度の欠陥 面談中、いかなる点についても自発的な詳細化はない。
9:評価せず 患者は会話をしない。
ここに包含される態様は続く実施例を参照して記述される。これら実施例は説明目的のために限定され、ここで開示される内容は決してこれら実施例に限定して解釈されず、むしろ、ここでの教唆により明白となったあらゆる変化体も包含されると解されるべきである。
【実施例0165】
実施例1 MIN-101は陰性症状を有する統合失調症患者の陰性症状を改善する。
MN-101の有効性、安全性および耐性を評価するため、陰性症状を有する統合失調症患者に対して、有望な第IIb相臨床試験(12週、ランダム化、二重盲検、プラセボ並行)を実施した。この試験は、主要評価項目としてPANSSのPSMを用いて、陰性症状に対するMIN-101単独療法の有効性の評価を意図した。ロシアおよび欧州5カ国の計32医療施設において、全部で244名の患者をMIN-101の一日用量が32mg、64mgおよびプラセボを投与する等しいグループに無作為に分けた。
治験に参加するためには、患者は登録前3ヶ月間に陽性および陰性症状が安定して見られたことを必要とした;PANSS陰性サブスコア20以上、そして次のPANSSスコアが4未満:興奮、過活動、敵意、猜疑心、非協力性、衝動性の調節障害。プロトコール記載の試験対象者および除外基準を以下に示す:
【0166】
試験対象患者基準
各候補患者は治験に登録されるため、薬物投与前に次の基準を見たさなければならない。
1.患者または患者の法定代理人はインフォームド・コンセントを提供すること。
2.18歳以~60歳まで(18歳、60歳を含む)の男性または女性。
3.患者は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)と連結した精神医学的面接により確立された、精神疾患の統計および診断マニュアル第5版(DSM-5)に定義された統合失調症の診断基準を満たすこと。
4.患者は、精神科医の治療により、ここ3ヶ月間安定した統合失調症の陽性症状が安定していること。
5.患者は、精神科医の治療により、ここ3ヶ月間統合失調症の陰性症状が観られること。
6.患者は、PANSS陰性サブスコアが少なくとも20であること。
7.患者は、PANSSの以下の項目スコアが4未満:
P4:興奮、過活動
P7:敵意
P6:猜疑心
P8:非協力性
P14:衝動性の調節障害
8.患者は、洗浄期間のはじめは患者の安全性に危険が及ばない限り、向精神薬が中止され得る間は、精神作用性たり得る。
9.最終月は向精神剤治療に変更はしない(投与理由により行われる場合、または治験依頼者の医学責任者の同意がある場合は許容される)
10.自己、他人および所有物に対する暴力の病歴なし。
11.治験責任医師の意見において、患者に対し別の向精神薬療法への転換または新たな向精神薬療法の開始が指示されていること。
12.妊娠可能性がある女性の患者の場合、妊娠の検査が陰性でなければならない、そして二重障壁の避妊方法を適用しなければならない。
13.患者は、最初の薬物投与前に遺伝子型決定試験により決定される、通常の代謝活性群(P450 CYP2D6)でなければならない。
14.患者は治験の性質を理解できなければならない。
15.治験責任医師が、信用でき、評価手続に協力的でありそうだと考える患者であること。
【0167】
患者の除外基準
以下のいずれかの基準に合致する候補患者は、薬物投与前に治験参加から排除される。
1.現在、二極性障害、パニック障害、強迫性障害または精神遅滞がある。
2.患者の状況が、物質(例えば、薬物乱用、薬物療法)の直接的な生理的影響によるもの、または一般的な薬物条件によるもの。
3.自殺または自殺の試みの重大なリスク、または自己若しくは他人への危険性があること。
4.スクリーニング時の3ヶ月の間、物質乱用(カフェインおよびタバコを除く)の病歴のある患者。
5.処方されたベンゾジアゼピン、および急性の痛み(例えば、抜歯)の発現に対して最近処方されたオピオイド関連を除き、尿中薬物検査で陽性。
6.許容された以外の向精神剤を中止することができない患者。
7.スクリーニング時の6ヶ月の間、クロザピンの投与を受けた患者。[国特有の例外:ロシア患者で、不眠症治療のための100 mg/day未満の投与は許容される。]
8.デポ型抗精神病剤の投与を受けた患者は、最後の投与から4週間後は治験に参加できる。
9.他の主要な、または不安定な症状;神経学的、脳神経外科的(例えば、頭部外傷)、代謝性、肝臓性、腎臓性、血液学的、肺性、心血管性、胃腸管性、泌尿器学的症状の病歴のある患者。
10.てんかん発作(小児熱性発作の病歴の患者は治験に参加可能)の病歴のある患者。
11.スクリーニング時の3ヶ月の間、電気ショック療法(ECT)、迷走神経刺激法(VNS)、または反復経頭蓋磁気刺激(r-TMS)を受けた患者、または治験中にECT、VNSまたはr-TMSを受ける予定のある患者。
12.血液学、血液化学、ECGまたは基本外来での理学的検査において異常のある患者。
13.肥満度指数(BMI)が35を超える患者。
14.現在、全身感染(例えば、B型肝炎ウィルス[HBV]、C型肝炎ウィルス[HCV]、ヒト免疫不全ウィルス[HIV]、または結核[TB])の患者。B型肝炎コア抗体試験において陽性で、B型肝炎表面抗原[HBsAg]試験で陰性の患者は、アミノトランスフェラーゼ値(アラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ[ALT/SGOT]およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ[AST/SGOT])が通常の上限(ULN)の2倍を超えなければ、治験に参加してもよい。
15.QT間隔を増加させるような他の薬物療法(例えば、パロキセチン、フルオキセチン、デュロキセチン、アミオダロン等)を同時に行う必要のある、または必要かも知れない患者。
16.CYP2D6を阻害する療法が必要な患者。
17.治験において安全性の問題となり得る、臨床上重大な心電図(ECG)異常のある患者で、Fridericiaの式(QTcF)を用いて心拍数で補正したQT間隔が男性で430 ミリ秒超え、女性で460 ミリ秒超えの場合。
18.病歴またはスクリーニングのECG検査に基づいて、心筋梗塞の病歴のある患者。
19.家族性または個人的に長QT症候群、または心室性不整脈(例えば、低カリウム血症、低マグネシウム血症)の追加危険因子のある患者。
20.妊娠の可能性のある女性、または男性で、容認された方法による避妊法を利用できない、または望まない場合。
21.妊娠テスト陽性の女性、授乳中の女性、または治験中に妊娠計画のある女性。
22.スクリーニング前3ヶ月の期間に別の臨床治験に参加した患者。
【0168】
三つの群はすべて、直下の表に示された人口学的および基本疾患特性に関して調和が取れていた。
【表10】
【0169】
プラセボおよび治療群についての12週にわたる治療における、PANNS陰性亜尺度スコアの基礎からの平均変化を
図1に示す。統計的に有意な改善がいずれの用量にも見られた:
32mg P≦0.023、効果量0.45
64mg P≦0.003、効果量0.57
【0170】
図2に示すようにこの治験はさらに、MIN-101のいずれの用量もプラセボに対する統計的に有意な効果を有することを示した(PANSSの三つの因子における陰性症状亜尺度):
32mg P≦0.006、効果量0.55
64mg P≦0.003、効果量0.70
さらにまた、MIN-101のプラセボに対する統計的に有意な効果は、PANSSの総合スコアにおいても示された:
32mg 有意差なし、効果量0.35
64mg P≦0.003、効果量0.59
【0171】
MIN-101の二つの用量による陰性症状の改善は、
図3に示すとおり、BNSS総合スコアを用いた測定によっても観察された。
MIN-101は一般に耐性がよいと報告されていて、副作用の発現および型はMIN-101群とプラセボ群との間で有意な違いはなかった。先の非臨床および臨床経験に基づいて、QTcF、心機能の測定を入念にモニターした。QTcF延長による中止の基準はプロトコールに組み入れた。MIN-101を投与した162名中二人の患者が、この基準により治験を中断したが、いずれも高用量(64mg)投与の患者であった。現在上市されている多くの抗精神薬と異なり、代謝性副作用、体重減少、錐体外路症状、およびプロラクチン上昇はいずれも認められなかった。
【0172】
等価物および参照による組み込み
特定の好ましい態様を参照のため、ここに発明を記述する。しかしながら、当業者にとってその変化体が明らかなように、ここでなされる開示に基づいて、本発明が限定されると考えるべきではない。
特段の定義のない限り、ここでの技術的および科学的な術語はすべて、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。文脈において明確な指定のない限り、明細書およびクレームにおいて、単数形は複数形を包含するものとする。
本発明の記述の少なくともある部分は、発明の明確な理解のために関係する要素に焦点を当てて単純化され、当業者が理解し、発明の部分を占めるかも知れない他の要素は、明確化の目的でこれを除外していると理解すべきである。しかしながら、そのような要素は当業者によく知られており、必ずしも発明の理解を容易にするとは限らないので、そのような記述はここではしていない。
さらには、方法がここで記載された工程の特定の順番に依存しない限度において、工程の特定の順番はクレーム上の制限と考えるべきではない。本開示の方法に向けたクレームは、記載された順番になされる工程に限定されず、当業者は工程が変化してもよいこと、そしてそれでも本開示の範囲と精神の中にあることを理解できる。
ここで引用された全ての特許、特許出願、参考文献および刊行物は、参照により完全にそっくりそのまま、ここに組み込まれる。