(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188188
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20221213BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20221213BHJP
A61B 5/22 20060101ALI20221213BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20221213BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20221213BHJP
A61B 5/397 20210101ALI20221213BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20221213BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20221213BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/113
A61B5/22 100
A61B5/1455
A61B5/11 200
A61B5/397
A61B10/00 L
A61B7/04 A
G16H50/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160412
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2021509339の分割
【原出願日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2019055536
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521234962
【氏名又は名称】株式会社Medical Optfellow
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】松田 謙
(57)【要約】
【課題】患者の体への負担をかけずに呼吸器系疾患の異常を検出することが可能なプログラム等を提供する。
【解決手段】呼吸筋等の動作情報を検出する検出センサから動作情報、呼吸筋等に対する活動電位情報を取得する筋電図センサから活動電位情報を取得し、動作情報及び活動電位情報を入力し、検出センサにより出力される電気信号の極大値及び極小値が所定時間継続して所定量以上増加している場合に第1条件を満たすと判断し、極大値または極小値で形成される近似直線の傾きを算出し極大値または極小値の傾きが予め定めた傾き閾値を超える場合に第1条件を満たすと判断して、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力する学習モデルに、取得した動作情報及び活動電位情報を入力して、慢性閉塞性肺疾患における増悪の有無に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を検出する検出センサから前記動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する筋電図センサから前記活動電位情報を取得し、
前記動作情報及び前記活動電位情報を入力した場合に、
前記検出センサにより出力される電気信号の極大値及び極小値が所定時間継続して所定量以上増加している場合に第1条件を満たすと判断し、さらに、
極大値で形成される近似直線の極大値の傾きを算出し極大値の傾きが予め定めた極大値の傾き閾値を超える場合、または、極小値で形成される近似直線の極小値の傾きを算出し極小値の傾きが予め定めた極小値の傾き閾値を超える場合、前記第1条件を満たすと判断して、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力するよう学習された第1学習モデルに、取得した動作情報及び活動電位情報を入力して、慢性閉塞性肺疾患における増悪の有無に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
患者の生体情報を検出する第2センサから得られる生体情報を取得し、
動作情報、活動電位情報、及び、生体情報を入力した場合に、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力するよう学習された第2学習モデルが加えられ、
取得した動作情報、活動電位情報及び生体情報を入力して慢性閉塞性肺疾患における増悪の有無に関する情報を出力する
処理を実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記検出センサは、呼吸筋または呼吸補助筋の動作情報を検出する圧電素子センサ、伸縮センサ、エコーセンサまたは生体電位センサを含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
マイクを用いて呼吸音、咳音、痰の貯留音または肺雑音を含む生体音情報を取得し、
取得した前記生体音情報、前記動作情報及び前記活動電位情報から、呼吸器系疾患の異常を検出する
処理を実行させる請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
患者の運動量、移動距離、活動量または姿勢を含む活動情報を検出する第3センサにより前記活動情報を取得する
処理を実行させる請求項2に記載のプログラム。
【請求項6】
薬を摂取して所定の時間を経過した後に、前記検出センサから出力される動作情報、及び筋電図センサから出力される活動電位情報を取得し、
取得した動作情報、活動電位情報及び増悪が生じていないことを示す情報を用いて学習済みモデルを再学習する
処理を実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記動作情報及び活動電位情報に基づき、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を検出した場合、前記増悪に関する情報に応じて薬の服薬指導情報を取得し、
取得した前記服薬指導情報を送信する
処理を実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を検出した場合、前記増悪に関する情報に応じて、前記服薬指導情報以外の第2のアドバイス情報を取得し、
取得した第2のアドバイス情報を送信する
処理を実行させる請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を検出する検出センサから前記動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する筋電図センサから前記活動電位情報を取得し、
前記動作情報及び前記活動電位情報を入力した場合に、
前記検出センサにより出力される電気信号の極大値及び極小値が所定時間継続して所定量以上増加している場合に第1条件を満たすと判断し、さらに、
極大値で形成される近似直線の極大値の傾きを算出し極大値の傾きが予め定めた極大値の傾き閾値を超える場合、または、極小値で形成される近似直線の極小値の傾きを算出し極小値の傾きが予め定めた極小値の傾き閾値を超える場合、前記第1条件を満たすと判断して、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力するよう学習された第1学習モデルに、取得した動作情報及び活動電位情報を入力して、慢性閉塞性肺疾患における増悪の有無に関する情報を出力する
情報処理装置が行う情報処理方法。
【請求項10】
呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を検出する検出センサから前記動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する筋電図センサから前記活動電位情報を取得する取得部と、
前記動作情報及び前記活動電位情報を入力した場合に、
前記検出センサにより出力される電気信号の極大値及び極小値が所定時間継続して所定量以上増加している場合に第1条件を満たすと判断し、さらに、
極大値で形成される近似直線の極大値の傾きを算出し極大値の傾きが予め定めた極大値の傾き閾値を超える場合、または、極小値で形成される近似直線の極小値の傾きを算出し極小値の傾きが予め定めた極小値の傾き閾値を超える場合、前記第1条件を満たすと判断して、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力するよう学習された第1学習モデルに、取得した動作情報及び活動電位情報を入力して、慢性閉塞性肺疾患における増悪の有無に関する情報を出力する出力部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)の増悪の診断において、様々な検出技術がある。例えば、特許文献1には、COPD患者由来の生体試料(例えば、血液、血清等)中のIL-27タンパク質又はそれをコードする遺伝子の発現量を測定することによって、COPD患者の増悪指標を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、測定に供する生体試料を、増悪検査を行うCOPD患者から採取するため、COPD患者の体に負担をかける恐れがある。
【0005】
一つの側面では、患者の体への負担をかけずに呼吸器系疾患の異常を検出することが可能なプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を検出する検出センサから前記動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する筋電図センサから前記活動電位情報を取得し、前記検出センサにより検出した動作情報に基づき、第1条件を満たすか否かを判定し、前記筋電図センサから取得した活動電位情報の内から吸気筋とは異なる呼気筋に対応する電気信号を抽出し、抽出した呼気筋に対応する電気信号が所定閾値以上か否かを判定し、前記第1条件を満たし、かつ、呼気筋に対応する電気信号が所定閾値以上であると判定した場合に、慢性閉塞性肺疾患における増悪に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、患者の体への負担をかけずに呼吸器系疾患の異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】COPDにおける増悪に関する情報を検出するシステムの概要を示す説明図である。
【
図3】患者DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図4】マスタDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図6】検出センサの構成例を示すブロック図である。
【
図7】筋電図センサの構成例を示すブロック図である。
【
図8A】検出センサにより検出した動作情報を説明する説明図である。
【
図8B】検出センサにより検出した動作情報を説明する説明図である。
【
図9】筋電図センサにより検出した健常者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。
【
図10A】筋電図センサ4により検出した通常時のCOPD患者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。
【
図10B】筋電図センサ4により検出した増悪時のCOPD患者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。
【
図11】COPDにおける増悪に関する情報の検出処理の動作を説明する説明図である。
【
図12】COPDにおける増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】増悪レベルを検出する処理のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態2のサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図15】増悪検出モデルの生成処理に関する説明図である。
【
図16】増悪検出モデルの生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】増悪検出モデルを用いて増悪に関する情報の検出処理に関する説明図である。
【
図18】増悪検出モデルを用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図19】第2センサを加えて増悪に関する情報の検出処理の動作を説明する説明図である。
【
図20】マイクを加えて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図21】実施形態3のサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図22】第2増悪検出モデルを用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】第2増悪検出モデルの学習処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図24】実施形態4のサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図25】実施形態3のマスタDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図26】アドバイスDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図27】活動内容に応じたアドバイス情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図28】ウォーキングモデルを用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図29】増悪の確率値に応じた電気信号の所定閾値を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図30】実施形態5のサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図31】服薬指示情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図32】治療結果DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図33】増悪に関する情報に応じた薬の服薬指示情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図34】増悪に関する情報に応じた第2のアドバイス情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1は、呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報に基づき、呼吸器系疾患の異常を検出する形態に関する。
【0011】
本実施形態では、検出センサを用いて呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び筋電図センサを用いて呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する。動作情報は、呼吸筋もしくは呼吸補助筋の動作、呼吸筋もしくは呼吸補助筋の動作に伴う胸郭の動作、または肺もしくは横隔膜の収縮膨張に伴う動作に関する情報を含む。取得された動作情報及び活動電位情報に基づき、呼吸器系疾患の異常が検出される。また、呼吸器系疾患の異常が検出された場合、患者または医師宛に検出された異常を出力することができる。なお、以下では、呼吸器系疾患の一つであるCOPDにおける増悪に関する情報を検出する例をあげて説明するが、他の種類の呼吸器系疾患の異常(例えば、喘息、肺炎、間質性肺炎、肺癌等)を検出しても良い。
【0012】
COPDは、空気中の有毒物質・ガス(特に喫煙)により、気道に慢性的な炎症が起こり、結果、気道狭窄・肺胞壁の破壊・喀痰の増加のために気流制限(息が十分に吐けず、このため十分な換気が行えない)が起きる病気である。またCOPDでは、感染等を契機として急速に病態が悪化することがあり、これらは増悪と呼ばれる。通常、増悪を起こすと呼吸状態の著しい低下が認められ、回復後も増悪前の呼吸状態には戻らない。増悪を繰り返すたびに全身状態ならびに予後が不良となる。
【0013】
図1は、COPDにおける増悪に関する情報を検出するシステムの概要を示す説明図である。本実施形態のシステムは、情報処理装置1、情報処理端末2、検出センサ3及び筋電図センサ4を含み、各装置はインターネット等のネットワークNを介して情報の送受信を行う。
【0014】
情報処理装置1は、呼吸筋もしくは呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び呼吸筋もしくは呼吸補助筋に対する活動電位情報等の種々の情報に対する処理、記憶及び送受信を行う情報処理装置である。情報処理装置1は、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。本実施形態において、情報処理装置1はサーバ装置であるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。
【0015】
情報処理端末2は、検出された呼吸器系疾患の異常情報の受信及び表示等を行う端末装置である。情報処理端末2は、例えばスマートフォン、携帯電話、腕時計型携帯端末等のウェアラブルデバイス、タブレット、パーソナルコンピュータ端末等の情報処理機器である。以下では簡潔のため、情報処理端末2を端末2と読み替える。
【0016】
検出センサ3は、呼吸筋または呼吸補助筋の動作情報を検出するセンサである。呼吸筋は、呼吸をするときに胸郭の拡大、収縮を行うために用いられる筋肉であり、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋等を含む。呼吸補助筋は、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、前鋸筋、上後鋸筋、下後鋸筋、広背筋、脊柱起立筋、僧帽筋、腰方形筋、大胸筋、小胸筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋及び腹横筋等を含む筋肉群であり、呼吸の際に補助的に用いる。例えば、ベルト状またはテープ状の検出センサ3を患者の胸部に装着し、患者の呼吸筋及び呼吸補助筋、もしくは呼吸筋、呼吸補助筋の動作に基づく胸郭の動きを検出する。
【0017】
検出センサ3は、例えば圧電素子センサ、伸縮センサ、ベルト状またはテープ状のテープセンサ、エコーセンサ、生体インピーダンスを計測する生体電位センサ等が用いられる。なお、検出センサ3は、上述したセンサに限らず、例えば人体に触れずに呼吸筋及び呼吸補助筋、もしくは呼吸筋、呼吸補助筋の動作に基づく胸郭の動きまたは呼吸自体を検出できる静電容量型の非接触センサであっても良い。圧電素子センサは、圧電体に加えられた力を電圧に変換するセンサであり、例えば圧電素子を利用して呼吸の波形を検出する呼吸モニター用のセンサであっても良い。例えば上述した呼吸モニター用のセンサ(圧電素子センサ)は、測定部位である胸郭に置かれ、測定部の呼吸運動により胸郭に加わる圧力の変化を電圧に変換し、患者の呼吸筋及び呼吸補助筋の動きを検出して波形データとして出力する。なお、上述した測定部位は、胸郭に限らず、例えば腹部または頚部や背部等であっても良い。エコーセンサは、例えば超音波を利用して液体の流量測定、液体識別、物体との距離の測定等を行うセンサである。エコーセンサを用いて、肋骨、横隔膜、肺等の動きを検出する。例えば呼吸における肋骨の移動距離もしくは横隔膜の移動距離、弛緩・収縮情報もしくは肺の移動距離、膨張・収縮情報等を検出する。生体電位センサは、呼吸に伴う肺容積の変化により変わる生体インピーダンスから、間接的に胸郭及び肺の動きを検出する。
【0018】
伸縮センサは、ゴムのように伸縮する変位センサであり、対象者の動きをリアルタイムにモニタリングする。伸縮センサは、例えば特殊な構造を持つカーボンナノチューブとエラストマー素材が層になり、薄いシート状のものである。伸縮センサは、導電性とともにゴムのような伸縮性があり、伸縮量に応じて静電容量が変化する。小さな歪みから大きな歪みまで計測をすることが可能であるため、例えば、胸部に巻いたベルト状の伸縮センサを装着、もしくはシール状の伸縮センサを貼付することにより、関節の変化、筋肉の動き、または呼吸時の胸郭の動きや胸郭の動きのベクトル変化等、これまでは計測が難しかった細かな動作でも正確に計測する。なお、上述した測定部位は、胸部に限らず、例えば腹
部または背部等であっても良い。
【0019】
筋電図センサ4は、筋肉の活動電位を波形で記録するセンサである。周波数も含め、記録された波形の特徴によって、神経または筋肉の障害の有無、種類、性質、部位等の診断に関する情報を取得することができる。筋電図センサ4を用いてCOPDに関わる呼吸筋及び呼吸補助筋に対する評価を行うことにより、COPDにおける増悪に関する情報を検出することができる。
【0020】
なお、本実施形態では、検出センサ3と筋電図センサ4とを分離した形で図示しているが、両者を一体に構成しても良い。また、本実施形態では端末2と、検出センサ3及び筋電図センサ4とを分離した例を示したが、これに限るものではない。例えば、端末2と、検出センサ3及び筋電図センサ4とを全て一体化した装置構成としても良い。
【0021】
続いて、COPDにおける増悪に関する情報の検出処理について説明する。端末2は、検出センサ3を用いて呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び筋電図センサ4を用いて呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する。
【0022】
検出センサ3によって取得された動作情報は、例えば呼吸筋または呼吸補助筋が伸び縮みすることによる胸郭の動きや胸郭の動きのベクトル変化、胸郭の可動域、胸郭の可動速度及び呼吸筋への刺激時間等である。なお、本実施形態では、検出センサ3の一つの種類の圧電素子センサ(例えば、圧電素子が組み込まれたベルト)を用いて動作情報を取得する例をあげて説明するが、伸縮センサまたはテープセンサ、生体電位センサ等の他種類の検出センサ3にも同様に適用される。圧電素子センサが患者の胸部に装着された場合、患者の呼吸筋または呼吸補助筋の動きに応じて圧電素子センサが電圧を発生し、圧電素子から電圧(動作電気信号)が出力される。なお、伸縮センサを用いる場合、伸縮の速度または加速度の変化を計測するようにしても良い。
【0023】
筋電図センサ4によって取得された活動電位情報は、呼吸時に呼吸筋または呼吸補助筋の収縮に伴って発生する活動電流信号であり、活動電位の持続時間、及び活動電位波形を周波数変換した周波数波形等も含む。
【0024】
端末2は、取得した動作情報及び活動電位情報をそれぞれの所定閾値と比較し、COPDにおける増悪に関する情報を検出する条件を満たした場合、端末2は、該増悪に関する情報を検出する。COPDにおける増悪に関する情報は、例えばCOPD増悪の有無を示す情報、または増悪の確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)に応じて分類する増悪レベル情報等であっても良い。COPD患者の呼吸状態、増悪時のCOPD患者の呼吸に特徴的に認められる動的過膨張(高度の気流閉塞に伴うエアトラッピングのため、呼吸の度ごとに肺内の残気量が増加していく病態)の程度、頻度、持続時間等の情報によって、増悪の確率値を判定することができる。例えば、増悪の確率値に応じて四つの増悪レベル(増悪レベル1~増悪レベル4)に分類しても良い。具体的には、例えば増悪の確率値が0.05未満である場合、増悪を生せず増悪レベル1(正常)と判定する。増悪の確率値が0.05以上、且つ0.5未満である場合、増悪の発症リスクが低い増悪レベル2と判定する。増悪の確率値が0.5以上、かつ0.8未満である場合、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3と判定する。増悪の確率値が0.8以上である場合、増悪が生じた増悪レベル4と判定する。
【0025】
なお、本実施形態では、端末2を用いて増悪に関する情報を検出する処理を説明したが、これに限るものではない。例えば、サーバ1が動作情報及び活動電位情報に基づき、増悪に関する情報を検出しても良い。この場合に、サーバ1は、検出した増悪に関する情報を端末2に送信する。
【0026】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読取部16及び大容量記憶部17を含む。
各構成はバスBで接続されている。
【0027】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を含み、記憶部12に記憶された制御プログラム1Pを読み出して実行することにより、サーバ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。なお、
図2では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0028】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1Pを記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、端末2等との間で情報の送受信を行う。
【0029】
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスであり、受け付けた操作情報を制御部11へ出力する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であり、制御部11の指示に従い各種情報を表示する。
【0030】
読取部16は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読取部16を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、大容量記憶部17に記憶しても良い。また、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、大容量記憶部17に記憶しても良い。更にまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0031】
大容量記憶部17は、例えばハードディスク等を含む大容量の記憶装置である。大容量記憶部17は、患者DB171及びマスタDB172を含む。患者DB171は、患者に関する情報を記憶している。マスタDB172は、COPDにおける増悪に関する情報を検出するための各種の閾値を記憶している。
【0032】
なお、本実施形態において記憶部12及び大容量記憶部17は一体の記憶装置として構成されていても良い。また、大容量記憶部17は複数の記憶装置により構成されていても良い。更にまた、大容量記憶部17はサーバ1に接続された外部記憶装置であっても良い。
【0033】
なお、本実施形態では、サーバ1は一台の情報処理装置であるものとして説明するが、複数台により分散して処理させても良く、または仮想マシンにより構成されていても良い。
【0034】
図3は、患者DB171のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。患者DB171は、患者ID列、性別列、名前列、異常有無列、異常詳細列、検出日時列、使用されたセンサ列及びデータ列を含む。患者ID列は、各患者を識別するために、一意に特定される患者のIDを記憶している。性別列は、患者の性別を記憶している。名前列は、患者の名前を記憶している。異常有無列は、患者に対する異常が検出されたか否かを示す情報を記憶している。異常詳細列は、検出した異常の詳細情報を記憶している。検出日時列は、異常を検出した日時情報を記憶している。使用されたセンサ列は、異常を検出した際に
使用されたセンサ情報を記憶している。データ列は、使用されたセンサにより検出したセンサデータを記憶している。センサデータは、例えば時系列データ等である。
【0035】
図4は、マスタDB172のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。マスタDB172は、マスタID列、マスタ名列、センサ列及び閾値列を含む。マスタID列は、各マスタデータを識別するために、一意に特定されるマスタデータのIDを記憶している。マスタ名列は、マスタデータの名称を記憶している。センサ列は、閾値を適用するセンサの名称を記憶している。閾値列は、増悪に関する情報を検出するための比較用の基準値を記憶している。
【0036】
図5は、端末2の構成例を示すブロック図である。端末2は、制御部21、記憶部22、通信部23、入力部24、表示部25及びBluetooth(登録商標)通信部26を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0037】
制御部21はCPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部22に記憶された制御プログラム2Pを読み出して実行することにより、端末2に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。なお、
図5では制御部21を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。記憶部22はRAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部21が処理を実行するために必要な制御プログラム2Pを記憶している。また、記憶部22は、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0038】
通信部23は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、サーバ1等と情報の送受信を行う。入力部24は、キーボード、マウスまたは表示部25と一体化したタッチパネルでも良い。表示部25は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21の指示に従い各種情報を表示する。
【0039】
Bluetooth通信部26は、Bluetoothを用いて通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、検出センサ3及び筋電図センサ4等との間で情報の送受信を行う。なお、
図5では、近距離無線通信手段としてBluetoothを図示しているが、これに限られず、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi等の通信規格を用いても良い。また、有線を用いた通信を採用しても良い。なお、
図5では、Bluetooth通信部26の例を説明したが、これに限るものではない。例えば、5Gまたは4G等の公衆回線網を用いた通信を行っても良い。
【0040】
図6は、検出センサ3の構成例を示すブロック図である。なお、検出センサ3は、上述した圧電素子センサ(例えば、圧電素子が組み込まれたベルトまたはテープ)を用いる例をあげて説明する。検出センサ3は、制御部31、記憶部32、圧電素子33、Bluetooth通信部34及びスピーカ35を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0041】
制御部31は、CPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部32に記憶された制御プログラム3Pを読み出して実行することにより、圧電素子33によって読み取られた圧電体に加えられた力を電圧に変換する制御処理等を行う。記憶部32は、RAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部31が処理を実行するために必要な制御プログラム3Pを記憶している。また、記憶部32は、制御部31が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0042】
圧電素子33は、圧電効果を利用した受動素子であり、圧電体に加えられた力を電圧に変換する。Bluetooth通信部34は、Bluetoothを用いて通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、端末2等との間で電圧情報(例えば、時系列デ
ータ等)の送受信を行う。なお、
図6では、近距離無線通信手段としてBluetoothを図示しているが、これに限られず、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi等の通信規格を用いても良い。また、有線を用いた通信を採用しても良い。スピーカ35は、電気信号を音に変換する装置である。なお、スピーカ35は、Bluetoothのような短距離無線通信方式により検出センサ3に接続されたヘッドセットであっても良い。
【0043】
図7は、筋電図センサ4の構成例を示すブロック図である。筋電図センサ4は、制御部41、記憶部42、筋電計測部43、Bluetooth通信部44及びスピーカ45を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0044】
制御部41は、CPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部42に記憶された制御プログラム4Pを読み出して実行することにより、筋電計測部43によって読み取られた活動電位情報(筋電位)に対する制御処理等を行う。記憶部42は、RAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部41が処理を実行するために必要な制御プログラム4Pを記憶している。また、記憶部42は、制御部41が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0045】
筋電計測部43は、呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を計測する。Bluetooth通信部44は、Bluetoothを用いて通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、端末2等との間で活動電位情報(例えば、時系列データ等)の送受信を行う。なお、
図7では、近距離無線通信手段としてBluetoothを図示しているが、これに限られず、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi等の通信規格を用いても良い。また、有線を用いた通信を採用しても良い。スピーカ45は、電気信号を音に変換する装置である。なお、スピーカ45は、Bluetoothのような短距離無線通信方式により筋電図センサ4に接続されたヘッドセットであっても良い。
【0046】
図8A及び
図8Bは、検出センサ3により検出した動作情報を説明する説明図である。
図8Aは、健常者及びCOPD患者に対する通常呼吸時の呼吸生理を説明する説明図である。人は呼吸運動により体内に酸素を取り入れ、体外に二酸化炭素を排出する。肺は胸膜に包まれ、胸郭内に存在する。肺はそれ自体では伸縮する力がなく、胸郭を形成する肋骨の可動性と横隔膜等の伸縮運動により受動的に膨張・収縮を行う。
【0047】
横隔膜は体の最大の吸気筋として、肋骨の5番、6番あたりに位置し、ドーム状に横たわる形をし、息を吸うときに使用する筋肉である。人が息を吸うとき、すなわち吸気時には横隔膜を含む吸気筋と吸気補助筋が互いに協調しながら収縮し、これにより胸郭を拡げて胸腔内を陰圧にすることで肺を膨張させ、外気を肺内に取り込む。吸気筋・吸気補助筋は、横隔膜、外肋間筋、胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋等を含む。
【0048】
息を吐くとき、すなわち呼気時には、これらの筋肉が収縮を止めて弛緩する。肺は膨らんだゴム風船のように自分で収縮する性質を元々持っているので、胸郭を拡げる筋肉が弛緩することで、肺は自らの縮む力で収縮して呼気を排出する。このため健常者の安静時の呼吸では、呼気筋と呼気補助筋の活動をあまり必要としない。
【0049】
健常者が呼吸(換気)をするときは、吸気筋と吸気補助筋を収縮させて胸郭を広げることで外気を吸い込み、次にこれらの筋肉を弛緩させることで呼気を排出する。しかしCOPD患者は、呼気時間の延長を伴う呼気での換気機能障害のため、吸い込んだ空気を十分に排出しづらくなる。このため健常人ではあまり使用されない呼気筋と呼気補助筋の収縮を用いることで、呼気の排出を補助することとなる。呼気筋・呼気補助筋は、内肋間筋、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋等を含む。
【0050】
図8Bは、健常者及びCOPD患者に対する呼吸筋または呼吸補助筋の動作情報を示すイメージ図である。
図8Bでは、呼吸筋または呼吸補助筋の動作電気信号(動作情報)の波形データを示している。横軸は時間を示し、単位は秒(sec)である。縦軸は電圧を示し、単位はボルト(V)である。
【0051】
図8B上段は健常者に取り付けられた検出センサ3から出力される電圧の時間的変化を示すグラフである。健常者の場合、電圧は時間的変化の少ない極大、極小を周期的に繰り返していることが理解できる。
図8B下段はCOPD患者に取り付けられた検出センサ3から出力される電圧の時間的変化を示すグラフである。COPD患者の場合、健常者と同じく通常時は、時間的変化の少ない極大、極小を周期的に繰り返す。しかしながら、増悪に向かう場合、呼気時の換気障害の悪化に伴う進行性の残気量の増加(動的過膨張)を反映して、極大及び極小の時間的変化が継続的に増加することとなる。
【0052】
本実施形態では一例として、検出センサ3から出力される電圧の極大の単位時間あたりの変化が所定閾値(例えば、傾き0.2)を超えた場合、第1条件を満たすと判断する。具体的には制御部21は以下の処理を行う。制御部21は、検出センサ3から時系列で電圧を取得する。制御部21は、電圧の極大を時系列で求める。制御部21は、所定単位時間(例えば60秒間)の電圧の極大を抽出し、抽出した極大で形成される近似直線の傾きを算出する。制御部21は傾きが予め定めた閾値(例えば、傾き0.2)を超えると判断した場合、第1条件を満たすと判断する。
【0053】
なお、極小または極大と極小の両方を用いて判断しても良いことはもちろんである。更には、極大極小の差分を用いて判断しても良い。また、制御部21は、更に例えば単位時間あたりの極大の平均値が
図8Bの点線で示す閾値を超え、かつ、求めた傾きが閾値を超える場合に、第1条件を満たすと判断しても良い。また例えば制御部21は、所定単位時間(例えば60秒間)の電圧の極大及び極小を抽出し、抽出した極大で形成される近似直線の極大の傾きを算出し、抽出した極小で形成される近似直線の極小の傾きを算出する。制御部21は、極大の傾きが予め定めた極大の傾き閾値を超え、極小の傾きが予め定めた極小の傾き閾値を超え、極小の傾きが極大の傾きを超え、かつ、持続時間が所定時間(例えば10秒)を超えたと判定した場合に、第1条件を満たすと判断しても良い。
【0054】
図9は、筋電図センサ4により検出した健常者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。横軸は時間を示し、単位はミリ秒(msec)である。縦軸は電位(活動電位)を示し、単位はマイクロボルト(μV)である。
図9のグラフ上段は健常者の吸気筋の電位の時間的変化を示す。吸気筋に関しては一定の間隔を置いて約100μVの振幅を有する電位波形が確認される。
図9のグラフ下段は健常者の呼気筋の電位の時間的変化を示す。
図9から明らかなように、健常者の呼気筋はあまり活動せず、このため対応する電位波形も微小となり、ほとんど確認できない。
【0055】
図10A及び
図10Bは、筋電図センサ4により検出したCOPD患者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。なお、横軸と縦軸については
図9と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
図10Aは、通常時のCOPD患者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。COPD患者では、通常時の吸気筋の活動が、
図9での健常者(通常時)の吸気筋の活動より強くなるため、COPD患者の吸気筋の活動電位の振幅が、健常者の吸気筋の活動電位の振幅より大きくなる。また、COPD患者では、通常時の呼気においても呼気筋が収縮するため、
図9と比較して呼気筋の活動電位の振幅が大きくなる。
【0057】
図10Bは、増悪時のCOPD患者の呼吸筋の活動電位情報を説明する説明図である。
COPD患者は増悪が生じた場合、吸気筋を更に収縮させて胸郭を広げることで外気を肺内に取り込もうとする。これにより吸気筋は、通常時より強く収縮することとなり、増悪時の吸気筋の活動電位の振幅は、通常時の吸気筋の活動電位の振幅より大きくなる。また、増悪時には吸気筋の活動電位の持続時間が、通常時の吸気筋の活動電位の持続時間より短くなる。さらに、これらの信号をフーリエ変換により解析すると、増悪が生じた場合の周波数分布は通常時に比較して異なるものとなる。
【0058】
COPD患者は増悪が生じた場合、呼気時間の延長を伴う呼気での換気機能障害の増強が認められる。このため、呼気筋には換気をサポートするため通常より更に強く収縮することが求められる。これにより、増悪時の呼気筋の活動電位の振幅が、通常時の呼気筋の活動電位の振幅より大きくなる。また、呼気の排出に時間を要するため増悪時の呼気筋の活動電位の持続時間も、通常時の呼気筋の活動電位の持続時間より長くなる。さらに、これらの信号をフーリエ変換により解析すると、増悪が生じた場合の周波数分布は通常時に比較して異なるものとなる。
【0059】
図10での点線は、予め定められた呼気筋の通常時と増悪時の活動電位の閾値を示す。COPD患者の呼気筋の活動電位のピーク値と、呼気筋の通常時と増悪時の活動電位の閾値とを比較することにより、増悪を検出することができる。
【0060】
例えば、COPD患者に対し、通常時、増悪時それぞれの活動電位の閾値が設けられ、設けられた閾値に応じて、増悪レベルが定義されても良い。具体的には、端末2の制御部21は、筋電図センサ4により検出した呼気筋の活動電位のピーク値と、通常時、増悪時それぞれの活動電位の閾値とを比較する。
【0061】
制御部21は、呼気筋の活動電位のピーク値が、通常時の呼気筋の活動電位の閾値A未満と判定した場合、増悪の発症リスクが低い増悪レベル2と判定する。制御部21は、呼気筋の活動電位が、通常時の呼気筋の活動電位の閾値A以上であり、且つ、増悪時の呼気筋の活動電位の閾値B(例えば、閾値Aの30%増の値)未満であると判定した場合、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3と判定する。
【0062】
制御部21は、呼気筋の活動電位のピーク値が、増悪時の呼気筋の活動電位の閾値B以上であると判定した場合、増悪が生じた増悪レベル4と判定する。例えば増悪レベル4が判定された場合、制御部21は、増悪に関する情報を表示部25により表示しても良い。
【0063】
なお、すべての活動電位のピーク値が所定閾値以上であることに限るものではない。例えば、端末2は単位時間あたりの活動電位のピーク値が所定閾値以上である回数と、所定回数とを比較し、増悪レベルを判定しても良い。
【0064】
また、呼気筋の活動電位の持続時間により増悪レベルを判定しても良い。例えばCOPD患者に対し、通常時、増悪時それぞれの活動電位の持続時間の閾値が設けられ、設けられた持続時間の閾値に応じて、増悪が生じたか否かを判定しても良い。
【0065】
具体的には、制御部21は、呼気筋の活動電位の持続時間が、通常時の活動電位の持続時間の閾値未満であると判定した場合、増悪の発症リスクが低い増悪レベル2と判定する。制御部21は、呼気筋の活動電位の持続時間が、通常時の活動電位の持続時間の閾値以上であり、且つ、増悪時の活動電位の持続時間の閾値未満であると判定した場合、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3と判定する。制御部21は、呼気筋の活動電位の持続時間が、増悪時の呼気筋の活動電位の持続時間の閾値以上であると判定した場合、増悪が生じた増悪レベル4と判定する。
【0066】
更にまた、呼気筋の活動電位の閾値、及び持続時間の閾値の双方に基づき、増悪レベルを判定しても良い。例えば、制御部21は、呼気筋の活動電位のピーク値が増悪時の活動電位の閾値以上であり、且つ、呼気筋の活動電位の持続時間が増悪時の呼気筋の活動電位の持続時間の閾値以上であると判定した場合、増悪が生じた増悪レベル4と判定しても良い。
【0067】
また、呼気筋の活動電位の周波数分布により増悪レベルを判定しても良い。例えばCOPD患者に対し、通常時、増悪時それぞれの平均周波数または中央周波数の閾値が設けられ、設けられた平均周波数または中央周波数の閾値に応じて、増悪が生じたか否かを判定しても良い。
【0068】
なお、上述した増悪レベルの判断処理に限るものではない。例えば、吸気筋と呼気筋との両方の活動電位情報、または吸気筋の活動電位情報のみを用いて増悪レベルを判定しても良い。
【0069】
図11は、COPDにおける増悪に関する情報の検出処理の動作を説明する説明図である。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び筋電図センサ4から呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する。動作情報及び活動電位情報は、所定の単位時間(例えば、分刻み、秒刻み等)ごとに計測された時系列データである。また、動作情報及び活動電位情報は、時系列の波形画像であっても良い。更にまた、動作情報及び活動電位情報は、周波数特性グラフであっても良い。具体的には、動作情報及び活動電位情報の時系列データから周波数解析を行い、胸郭の動き及び呼吸筋・呼吸補助筋の活動電位に対応する変動波を抽出する。周波数解析に関しては、例えば、離散化された信号に対して行う離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transformation)を利用しても良い。制御部21は、例えば時系列データ基盤を用いて、取得した動作情報及び活動電位情報を記憶して一元管理しても良い。
【0070】
制御部21は、通信部23を介して、サーバ1の大容量記憶部17のマスタDB172から、COPDにおける増悪に関する情報を検出するための各種の閾値を取得する。なお、COPDにおける増悪に関する情報を検出するための各種の閾値は予めサーバ1から取得されても良く、または端末2の記憶部22に予め記憶されても良い。例えば、呼吸筋の動作電気信号の所定閾値、通常時、増悪時それぞれの呼気筋に係る筋電図の電気信号の所定閾値、通常時、増悪時それぞれの呼気筋の電気信号の持続時間の所定閾値等が取得される。
【0071】
制御部21は、検出センサ3により検出した動作情報に基づき、第1条件を満たしたか否かを判定する。制御部21は、第1条件を満たしたと判定した場合、制御部21は、更に筋電図センサ4により取得した呼気筋に係る活動電位情報及び所定閾値に基づき、増悪に関する情報を検出する。制御部21は、検出した増悪に関する情報を表示部25により表示する。
【0072】
なお、増悪に関する情報が検出された場合、制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、増悪を検出した旨をそれぞれに検出センサ3、筋電図センサ4に送信しても良い。例えば検出センサ3の制御部31は、端末2から送信された増悪を検出した旨を受信し、スピーカ35によりアラームまたは音声情報等をCOPD患者に通知しても良い。筋電図センサ4の制御部41は、端末2から送信された増悪を検出した旨を受信し、スピーカ45によりアラームまたは音声情報等をCOPD患者に通知しても良い。
【0073】
なお、上述した処理で呼気筋に係る活動電位情報の例を説明したが、これに限るもので
はない。例えば、吸気筋に係る活動電位情報、または吸気筋及び呼気筋両方に係る活動電位情報に基づき、増悪に関する情報を検出しても良い。
【0074】
制御部21は、検出した増悪に関する情報を通信部23によりサーバ1に送信する。サーバ1の制御部11は、端末2から送信された増悪に関する情報を通信部13により受信し、受信した増悪に関する情報を大容量記憶部17の患者DB171に記憶する。なお、上述した増悪に関する情報の検出処理に限るものではない。例えば、端末2は検出センサ3及び筋電図センサ4により取得した胸郭の可動域、胸郭の可動速度及び呼吸筋の刺激時間、呼吸筋の活動電位の周波数変化等に基づき、増悪に関する情報を検出しても良い。
【0075】
筋疲労の際には筋電図信号の振幅が増え、周波数成分が高周波領域から低周波領域へと移動する徐波化が生じる。徐波化は増悪時の兆候とする。以下では、呼吸筋の活動電位の周波数変化の例を説明する。端末2は、呼吸筋の筋電図信号のパワースペクトルの測定及びフーリエ変換を行う。パワースペクトルは、筋電図波形を横軸に周波数成分の分布、縦軸に各周波数成分の振幅の二乗(信号のパワー)として変換したものである。
【0076】
端末2は、スペクトルのパワー分布の特徴を表す指標として、平均周波数(MPF : Mean Power Frequency)または中央周波数(MF : Median Power Frequency)の変化値を算出する。平均周波数は、各周波数の平均値である。中央周波数は、パワースペクトルの面積を2つの等しいエリアに分ける周波数である。端末2は、算出した平均周波数または中央周波数の変化値に基づいて、徐波化の傾向を有するか否かを判定する。例えば、高周波帯(例えば、86.4Hz)から徐々に低周波帯(例えば、67.4Hz)に移行している場合、端末2は平均周波数または中央周波数の変化値を算出する。端末2は、算出した変化値が所定閾値以上であると判定した場合、増悪に関する情報を出力する。なお、閾値を複数設けた各閾値に応じて、増悪のレベルを出力するようにしても良い。例えば変化値が第1閾値以上第2閾値未満の場合、増悪レベル3とし、第2閾値以上の場合、増悪レベル4としても良い。また周波数解析を行う筋電図信号は、呼気筋及び吸気筋を含む全てのデータを利用しても良いし、呼気筋または吸気筋のいずれかのデータを活用しても良い。
【0077】
図12は、COPDにおける増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。検出センサ3の制御部31は、Bluetooth通信部34を介して、呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を端末2に送信する(ステップS301)。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から送信された動作情報を受信する(ステップS201)。筋電図センサ4の制御部41は、Bluetooth通信部44を介して、呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を端末2に送信する(ステップS401)。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、筋電図センサ4から送信された活動電位情報を受信する(ステップS202)。
【0078】
制御部21は、通信部23を介して、COPDにおける増悪に関する情報を検出するための各種の閾値を取得するリクエストをサーバ1に送信する(ステップS203)。サーバ1の制御部11は、通信部13を介して、端末2から送信された閾値の取得リクエストを受信する(ステップS101)。制御部11は、受信した閾値の取得リクエストに応じて、大容量記憶部17のマスタDB172から、COPDにおける増悪に関する情報を検出するための各種の閾値を取得する(ステップS102)。制御部11は、通信部13を介して、取得した各種の閾値を端末2に送信する(ステップS103)。
【0079】
端末2の制御部21は、通信部23を介して、サーバ1から送信された各種の閾値を受信する(ステップS204)。制御部21は、受信した閾値及び動作情報に基づき、第1条件を満たしたか否かを判定する(ステップS205)。具体的には、例えば制御部21
は、検出センサ3から時系列で電圧を取得し、取得した電圧の極大を時系列で求める。制御部21は、所定単位時間内(例えば60秒間)の電圧の極大を抽出し、抽出した極大で形成される近似直線の傾きを算出する。制御部21は傾きが予め定めた閾値を超えると判断した場合、第1条件を満たすと判断する。
【0080】
または、例えば制御部21は、所定単位時間の電圧の極大及び極小両方を抽出し、抽出した極大で形成される近似直線の極大の傾きを算出し、抽出した極小で形成される近似直線の極小の傾きを算出する。制御部21は、極大の傾きが予め定めた極大の傾き閾値を超え、極小の傾きが予め定めた極小の傾き閾値を超え、かつ、持続時間が所定時間(例えば10秒)を超えたと判定した場合に、第1条件を満たすと判断する。なお、極小の傾き閾値は極大の傾き閾値よりも大きい値とすれば良い。
【0081】
制御部21は、第1条件を満たしていないと判定した場合(ステップS205でNO)、処理を終了する。制御部21は、第1条件を満たしたと判定した場合(ステップS205でYES)、増悪レベルを検出する処理のサブルーチンを実行する(ステップS206)。なお、増悪レベルの検出処理のサブルーチンに関しては後述する。制御部21は、検出した増悪に関する情報(増悪レベル)を表示部25により表示する(ステップS208)。制御部21は、検出した増悪に関する情報を通信部23によりサーバ1に送信する(ステップS209)。
【0082】
サーバ1の制御部11は、端末2から送信された増悪に関する情報を通信部13により受信する(ステップS104)。制御部11は、受信した増悪に関する情報を大容量記憶部17の患者DB171に記憶する(ステップS105)。具体的には、制御部11は、患者ID、性別、名前、異常(増悪)有無情報、異常の詳細情報、検出した日時情報、異常を検出した際の使用されたセンサ情報、及び使用されたセンサで検出したセンサデータを一つのレコードとして患者DB171に記憶する。
【0083】
なお、本実施形態では、第1条件を満たした場合、更に活動電位情報を用いて、増悪のレベルを決定した例を説明したが、これに限るものではない。例えば、第1条件を満たしていない場合でも、活動電位情報を用いて、増悪のレベルを決定しても良い。
【0084】
なお、上述した処理は、動作情報による増悪判定処理(ステップS205)、活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)の順に行った例を説明したが、これに限るものではない。例えば、先に活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)を行い、次に動作情報による増悪判定処理(ステップS205)を行っても良い。具体的には、端末2の制御部21は、増悪レベルを検出する処理のサブルーチンを実行することにより、増悪レベルを検出する。例えば制御部21は、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3以上であると判定した場合、動作情報に基づいて第1条件を満たしたか否かを判定する。制御部21は、第1条件を満たしたと判定した場合、増悪に関する情報を出力する。
【0085】
または、動作情報による増悪判定処理(ステップS205)、及び活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)を並行して行い、両方を用いて導き出される増悪の判定条件を満たした場合、増悪に関する情報を検出しても良い。具体的には、端末2の制御部21は動作情報に基づき、第1条件を満たしたか否かを判定する。制御部21は、増悪レベルを検出する処理のサブルーチンを実行することにより、増悪レベルを検出する。例えば制御部21は、第1条件を満たし、かつ、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3以上であると判断した場合、増悪に関する情報を出力する。
【0086】
図13は、増悪レベルを検出する処理のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。端末2の制御部21は、筋電図センサ4から取得された電位信号を取得する(ス
テップS01)。制御部21は、所定電位以上でかつ所定の継続時間を超える吸気筋の周期的な電位の変化を検出する。制御部21は周期的な吸気筋の電位の変化を認識した後に、吸気筋の電位の変化間の呼気筋の電位の変化を監視する。制御部21は、吸気筋の電位の変化間の呼気筋の電位を検出する。
【0087】
なお、検出センサ3と筋電図センサ4とを併用することにより吸気筋の電位か呼気筋の電位かを識別しても良い。例えば、検出センサ3が伸縮センサやテープセンサである場合、吸気時にはテープが伸びていくため、テープが伸び始めてから最大伸び(MAX:弾性限界伸び)までのタイミングで、制御部21は、筋電図センサ4から取得された電位信号を吸気筋の電位と判定する。呼気時には、逆にテープが縮み始めるため、テープが最大伸び(MAX)から最小伸び(MIN)までのタイミングで、制御部21は、筋電図センサ4から取得された電位信号を呼気筋の電位と判定する。
【0088】
または、筋電図センサ4から取得された活動電位の波形データの特徴量と、吸気筋の電位を示すラベル及び呼気筋の電位を示すラベルとを含む訓練データを用いて学習した学習モデルを用いて、吸気筋の電位か呼気筋の電位かを識別しても良い。更にまた、筋電図センサ4から取得された活動電位の振幅の平均値が小さい方を呼気筋の電位と判定しても良い。
【0089】
制御部21は、呼気筋のピーク電位が閾値A(通常時の呼気筋の活動電位)未満であるか否かを判断する(ステップS02)。制御部21は、呼気筋のピーク電位が閾値A未満であると判定した場合(ステップS02でYES)、増悪の発症リスクが低い増悪レベル2を判定する(ステップS03)。制御部21は、呼気筋のピーク電位が閾値A以上であると判定した場合(ステップS02でNO)、呼気筋のピーク電位が閾値B(例えば、閾値Aの30%増の値)未満であるか否かを判定する(ステップS04)。
【0090】
制御部21は、呼気筋のピーク電位が閾値B未満であると判定した場合(ステップS04でYES)、増悪の発症リスクが高い増悪レベル3を判定する(ステップS05)。制御部21は、呼気筋のピーク電位が閾値B以上であると判定した場合(ステップS04でNO)、増悪が生じた増悪レベル4を判定する(ステップS06)。制御部21は、判定した増悪レベルの判定結果を返却し(ステップS07)、サブルーチンを終了してリターンする。
【0091】
なお、上述した処理で呼気筋に係る活動電位情報の例を説明したが、これに限るものでもない。例えば、吸気筋に係る活動電位情報、または吸気筋及び呼気筋両方に係る活動電位情報に基づき、増悪レベルを検出しても良い。
【0092】
また、本実施形態では、活動電位のピーク電位を用いたが、これに限るものではない。例えば、活動電位の持続時間、活動電位の周波数分布等を用いても良い。以下に、持続時間を用いる例を説明する。制御部21は、呼気筋の電位信号の変化に基づき、
図10Bの点線で示す開始タイミングと終了タイミングとを検出する。具体的には、制御部21は、電位信号の所定閾値を超える時間的変化が連続して生じ始めたタイミングを開始タイミングとして検出する。また制御部21は、開始タイミングを検出した後に、電位信号の所定閾値を超えない時間的変化が連続して生じ始めたタイミングを終了タイミングとして検出する。制御部21は、開始タイミングから終了タイミングまでの時間が、予め定めた閾値を超える場合に、増悪に関する情報を出力する。なお、複数の閾値を設け、第1の閾値以上第2の閾値未満の場合に増悪レベルを3、第2の閾値以上の場合に増悪レベル4としても良い。
【0093】
本実施形態によると、検出センサ3により取得した動作情報、及び筋電図センサ4によ
り取得した活動電位情報に基づき、呼吸器系疾患の異常を検出することができる。これにより、増悪検査を行うCOPD患者から生体試料(例えば、血液、血清等)を採取せず、患者の体への負担を軽くすることが可能となる。
【0094】
(実施形態2)
実施形態2は、ディープラーニングにより構築された増悪検出モデルを用いて、COPDにおける増悪に関する情報を検出する形態に関する。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0095】
図14は、実施形態2のサーバ1の構成例を示すブロック図である。なお、
図2と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。大容量記憶部17は、増悪検出モデル173を含む。増悪検出モデル173は、COPDにおける増悪に関する情報を検出する検出器であり、機械学習により生成された学習済みモデルである。当該学習済みモデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用される。以下では、ディープラーニングにより構築された増悪検出モデル173を用いて、増悪に関する情報を検出する処理を説明する。
【0096】
図15は、増悪検出モデル173の生成処理に関する説明図である。
図15では、機械学習を行って増悪検出モデル173を生成する処理を概念的に図示している。
図15に基づき、増悪検出モデル173の生成処理について説明する。
【0097】
本実施形態でのサーバ1は、増悪検出モデル173として、検出センサ3から取得した動作情報に関する電気信号の画像、及び筋電図センサ4から取得した活動電位情報の画像内における増悪箇所の波形画像の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、波形画像を入力とし、COPDにおける増悪に関する情報の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)する。なお、上述した波形画像に限らず、周波数を解析した後の画像に対するディープラーニングを行っても良い。ニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)であり、波形画像の入力を受け付ける入力層と、異常の有無を示す情報(識別結果)を出力する出力層と、波形画像の画像特徴量を抽出する中間層とを有する。
【0098】
入力層は、波形画像に含まれる各画素の画素値の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された画素値を中間層に受け渡す。中間層は、波形画像の画像特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した画像特徴量を出力層に受け渡す。例えば増悪検出モデル173がCNNである場合、中間層は、入力層から入力された各画素の画素値を畳み込むコンボリューション層と、コンボリューション層で畳み込んだ画素値をマッピングするプーリング層とが交互に連結された構成を有し、波形画像の画素情報を圧縮しながら最終的に画像の特徴量を抽出する。出力層は、COPDにおける増悪箇所を識別した識別結果を出力する一又は複数のニューロンを有し、中間層から出力された画像特徴量に基づいて増悪に関する情報の有無を識別する。
【0099】
なお、本実施の形態では増悪検出モデル173がCNNであるものとして説明するが、増悪検出モデル173はCNNに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、回帰木等、他の学習アルゴリズムで構築された学習済みモデルであっても良い。
【0100】
図15に示すように、例えば、入力1は検出センサ3により検出した所定時間(例えば、60秒間)の呼吸筋の動作情報の波形画像であり、入力2は筋電図センサ4により検出した所定時間(例えば、60秒間)の呼吸筋に係る活動電位情報の波形画像である。動作情報の波形画像(入力1)及び活動電位情報の波形画像(入力2)は、同じタイミングの
信号を示す波形画像である。サーバ1の制御部11が、メモリに記憶された学習済みの増悪検出モデル173からの指令に従って、入力した動作情報及び活動電位情報の波形画像から、増悪に関する情報を検出して出力する。
【0101】
出力された増悪に関する情報は、例えば増悪の有無の情報、増悪の確率値、増悪の確率値に応じて分類される増悪レベル等であっても良い。上述した呼吸筋に係る活動電位情報の波形画像(入力2)は、吸気筋の電位の変化と呼気筋の電位の変化とを合成して形成した電位の変化を示す波形画像である。なお、入力2は呼気筋電位の変化のみ、もしくは吸気筋電位の変化のみを示す波形画像であっても良い。または、入力1と入力2とを合成した画像を増悪検出モデル173に入力しても良い。または、入力1は呼吸筋の動作情報の時系列データであり、入力2は呼吸筋に係る活動電位情報の時系列データであっても良い。更にまた、入力1及び入力2は、波形画像と時系列データとの組み合わせであっても良い。
【0102】
サーバ1は、動作情報に関する電気信号の画像及び活動電位情報の画像と、各画像における増悪に関する情報とが対応付けられた教師データを用いて学習を行う。教師データは、動作情報に関する電気信号の画像及び活動電位情報の画像と、増悪に関する情報とがラベル付けされたデータである。サーバ1は、教師データである波形画像を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層からCOPDにおける増悪の有無を示す識別結果を取得する。なお、出力層から出力される識別結果は増悪の有無を離散的に示す値(例えば「0」又は「1」の値)であっても良く、連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)であっても良い。例えばサーバ1は、出力層から出力される識別結果として、COPDにおける増悪の有無のほかに、増悪の確率値等を識別した識別結果を取得する。その他、出力層から複数のレベル、例えばレベル1からレベル4それぞれの確率値を出力するようにしても良い。
【0103】
サーバ1は、出力層から出力された識別結果を、教師データにおいて波形画像に対しラベル付けされた情報、すなわち正解値と比較し、出力層からの出力値が正解値に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数等である。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えばサーバ1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。
【0104】
サーバ1は、教師データに含まれる各波形画像について上記の処理を行い、増悪検出モデル173を生成する。サーバ1は、検出センサ3から動作情報に関する電気信号の画像、及び筋電図センサ4から活動電位情報の画像を取得した場合、メモリに記憶された学習済みの増悪検出モデル173からの指令に従って、COPDにおける増悪に関する情報を検出する。なお、サーバ1が、学習済みの増悪検出モデル173を生成した後に、端末2は当該学習済みの増悪検出モデル173をダウンロードしてインストールした場合、端末2が学習済みの増悪検出モデル173を用いて増悪に関する情報を検出しても良い。この場合、端末2は、検出センサ3から動作情報に関する電気信号の画像、及び筋電図センサ4から活動電位情報の画像を取得し、増悪検出モデル173を用いて増悪に関する情報を検出する。なお、端末2は、増悪検出モデル173に対し、教師データを用いて学習または再学習処理を行っても良い。
【0105】
なお、本実施形態では、波形画像を増悪検出モデル173の入力値に用いるが、これに限るものではない。例えば、増悪検出モデル173としてRNN(Recurrent Neural Network)に係るニューラルネットワークを用いても良い。この場合に検出センサ3から取得した動作情報、及び筋電図センサ4から取得した活動電位情報の時系列データを入力値として、COPDにおける増悪に関する情報を検出しても良い。
【0106】
また学習モデルは、動作情報と増悪に関する情報とを含む教師データに基づき学習された第1学習モデル、及び、活動電位情報と増悪に関する情報とを含む教師データに基づき学習された第2学習モデルの2つを用意しても良い。この場合、第1学習モデルは、
図8に示す電圧波形、電圧波形画像、当該電圧波形を周波数変換した周波数波形、または当該周波数波形画像を入力データとし、増悪の確率を出力データとする。サーバ1は、これらの教師データを元に第1学習モデルの学習を行う。
【0107】
第2学習モデルは、
図10A及び10Bに示す吸気筋及び呼気筋に係る活動電位波形、活動電位波形画像、当該活動電位波形を周波数変換した周波数波形、または当該周波数波形画像を入力データとし、増悪の確率を出力データとする。サーバ1は、これらの教師データを元に第2の学習モデルの学習を行う。なお、呼気筋もしくは吸気筋に係る波形画像のみに基づいて第2の学習モデルの学習を行っても良い。
【0108】
推定時において第1学習モデルの出力確率が、所定閾値(例えば80%)以上の場合、またはステップS205でYESの場合、第2学習モデルによる推定処理を行う。制御部21は、第2学習モデルに吸気筋及び呼気筋に係る活動電位波形、活動電位波形画像、当該活動電位波形を周波数変換した周波数波形、または当該周波数波形画像を入力する。制御部21は、第2学習モデルからの増悪の確率を出力する。
【0109】
なお、上述した第1学習モデル及び第2学習モデルによる推定処理の順序に限るものではない。例えば、第2学習モデルによる推定処理を行い、第2学習モデルから出力された増悪の確率が所定閾値以上である場合、第1学習モデルによる推定処理を行っても良い。または、第1学習モデルによる推定処理及び第2学習モデルによる推定処理を並行して行い、第1学習モデル及び第2学習モデルを用いて出力された増悪の確率に基づいて増悪を判定しても良い。また、第1条件については実施の形態1の方法により判断を行い、活動電位波形に対しては第2学習モデルを利用するようにしても良い。さらに第1条件については第1学習モデルを利用し、活動電位波形については実施の形態1の方法により判断しても良い。
【0110】
図16は、増悪検出モデル173の生成処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16に基づき、増悪検出モデル173の生成処理の処理内容について説明する。
【0111】
制御部11は、検出センサ3により取得した動作情報の画像、及び筋電図センサ4により取得した活動電位情報の画像と、COPDにおける増悪に関する情報とが対応付けられた教師データを取得する(ステップS121)。教師データは、例えば動作情報及び活動電位情報の画像と、増悪に関する情報(例えば、増悪の確率値等)とをラベル付けしたデータである。
【0112】
制御部11は、複数の教師データを用いて、動作情報及び活動電位情報の波形画像を入力した場合に、COPDにおける増悪に関する情報の有無を示す情報(例えば、レベル1~レベル4)を出力する増悪検出モデル173(学習済みモデル)を生成する(ステップS122)。具体的には、制御部11は、教師データである波形画像をニューラルネットワークの入力層に入力し、増悪に関する情報を識別した識別結果を出力層から取得する。制御部11は、取得した識別結果を教師データの正解値(波形画像に対してラベル付けられた情報)と比較し、出力層から出力される識別結果が正解値に近づくよう、中間層での演算処理に用いるパラメータ(重み等)を最適化する。制御部11は、生成した増悪検出モデル173を大容量記憶部17に格納し、一連の処理を終了する。
【0113】
図17は、増悪検出モデル173を用いた増悪に関する情報の検出処理に関する説明図
である。
図17では、波形画像からCOPDにおける増悪に関する情報を検出する様子を概念的に図示している。
図17に基づき、COPDにおける増悪に関する情報の検出処理について説明する。
【0114】
学習済みの増悪検出モデル173がインストールされた端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から動作情報に関する電気信号の画像、及び筋電図センサ4から活動電位情報の画像を取得する。なお、動作情報及び活動電位情報は、上述した波形画像に限らず、時系列データであっても良い。動作情報及び活動電位情報が時系列データである場合、制御部21は、取得した時系列データに基づいて波形画像を生成しても良い。制御部21は、取得した動作情報に関する電気信号の画像、及び活動電位情報の画像を増悪検出モデル173に入力する。
【0115】
制御部21は、増悪検出モデル173の中間層にて波形画像の特徴量を抽出する演算処理を行い、抽出した特徴量を増悪検出モデル173の出力層に入力して、COPDにおける増悪の有無に関する情報を出力として取得する。図示のように、制御部21は、増悪の確率値、及び増悪の確率値に応じて分類する増悪レベル情報(例えば、増悪レベル1~増悪レベル4)を出力する。制御部21は、増悪検出モデル173を用いて、波形画像から増悪に関する情報を検出した場合、COPDにおける増悪に関する情報を検出した旨の検出結果を表示部25により表示する。
【0116】
図18は、増悪検出モデル173を用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。検出センサ3の制御部31は、Bluetooth通信部34を介して、動作情報に関する電気信号の画像を端末2に送信する(ステップS331)。学習済みの増悪検出モデル173がインストールされた端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から送信された動作情報に関する電気信号の画像を受信する(ステップS231)。
【0117】
なお、制御部21は、検出センサ3から動作情報に関する電気信号の生データをBluetooth通信部26により受信しても良い。この場合、例えば制御部21は、受信した電気信号の生データを深層学習済みの画像生成モデルに入力し、該画像生成モデルを用いて、電気信号の画像を出力しても良い。
【0118】
筋電図センサ4の制御部41は、Bluetooth通信部44を介して、活動電位情報の画像を端末2に送信する(ステップS431)。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、筋電図センサ4から送信された活動電位情報の画像を受信する(ステップS232)。制御部21は、増悪検出モデル173を用いてCOPDにおける増悪に関する情報を検出し(ステップS233)、検出した増悪に関する情報を表示部25により表示する(ステップS234)。
【0119】
本実施形態によると、増悪検出モデル173を用いて呼吸器系疾患の異常を検出することにより、速く且つ高精度に診断することが可能となる。
【0120】
(実施形態3)
実施形態3は、呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報に、さらに患者の生体情報を加えて、呼吸器系疾患の異常を検出する形態に関する。なお、実施形態3では、呼吸器系疾患の一つであるCOPDにおける増悪に関する情報を検出する例をあげて説明する。
【0121】
本実施形態では、患者の生体情報を検出する第2センサ5を含む。第2センサ5は、例えば、経皮的動脈血酸素飽和度を検出するオキシメータ、生体から発せられる生体音を収
音するマイク、心臓の拍動に伴う心筋の活動電位または活動電流を記録し、これによりRRI(R-R Interval)及びCV-RR(Coefficient of Variation R-R interval)の解析も可能な心電計、血圧を検出する血圧計、体温を検出する体温計、経皮的動脈血二酸化炭素分圧(PtcCO2)の測定装置、心臓の拍動数を計測する脈拍計、心拍の周波数を解析する心拍変動測定器、生体インピーダンスを計測する生体電位センサ、または発汗センサ等を含む。
【0122】
生体電位センサは、呼吸に伴う生体電気インピーダンスの変化を検出する。生体電気インピーダンスの変化は、胸郭上に配置した電極から高周波電流を通電して得られる胸郭インピーダンス(Z)を測定することにより、換気に伴う肺容積変化に応じた胸郭インピーダンスの変化量である呼吸性インピーダンス(ΔZ)を利用することで換気状態を把握するものである。即ち、呼吸に伴う胸郭インピーダンス(Z)の変化量(ΔZ)は、肺内気量(VL)の変化量(ΔVL)に応じて変化する。ΔZ=α(非負の比例係数)・ΔVLと仮定できる。胸郭インピーダンスの変化量ΔZは、吸気によって増加し(ΔZ>0)、呼気によって減少する(ΔZ<0)。従って、生体電位インピーダンスを測定することにより、肺の換気量が推定できる。
【0123】
また、第2センサ5は、人体に触れずにベッド又は寝具下等に設置された非接触型のバイタルセンサであっても良い。非接触型のバイタルセンサは、小型マイクロ波レーダにより呼吸運動と心臓の鼓動に伴う体表面の微小な動き(心拍・呼吸)を計測し、赤外サーモカメラにより体表面から放出される赤外線(体温)を計測する。生体情報は、生体組織の状態及び組織が機能している場合の情報を反映した信号であり、例えば、脈拍、体動、呼吸等の生体現象によって体内から発せられる信号である。
【0124】
図19は、第2センサ5を加えて増悪に関する情報の検出処理の動作を説明する説明図である。なお、
図19では、第2センサ5の一つの種類のマイクを用いてCOPDにおける増悪に関する情報を検出する例をあげて説明する。なお、マイクに限らず、例えば複数の第2センサ5を用いて、増悪に関する情報が検出されても良い。マイクは、生体から発せられる生体音を収音する音センサである。例えばマイクを用いて、呼吸音、咳音、痰の貯留音または肺雑音等を含む生体音情報を取得し、周波数解析も行うことができ、これらの情報を学習モデルに入力する。
【0125】
経皮的動脈血二酸化炭素分圧(PtcCO2)測定装置を用いる場合、PtcCO2に対応する値を学習モデルに入力する。増悪時にはPtcCO2が増加する傾向にある。またPtcCO2が高度に高くなった場合、呼吸の抑制が認められ、動作情報及び活動電位情報にも変動が生じる。学習モデルの学習の際には、履歴(過去の患者の計測履歴)に基づき得られた動作情報、活動電位情報及びPtcCO2に対応する値と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0126】
心電図を利用する場合、心電図計から出力される電位を学習モデルに入力する。増悪時には心電図に右心負荷所見が認められ易くなる。また、増悪時には心房細動と呼ばれる不整脈が生じ易く、これに対応した電位の変化が生じる。その他、増悪時には体調不良のため交感神経が副交感神経に比べ優位になり、これに伴いRRI(心電図上のR波とR波の間隔)の短縮ならびにRRIの変動係数であるCV-RRの低下が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び心電図計の出力電位と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0127】
血圧計を用いる場合、血圧を学習モデルに入力する。増悪時には、上記のように交感神経が優位となり、この際には血圧が上昇する。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び血圧と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学
習処理を行う。
【0128】
体温計を用いる場合、体温計から得られる体温を学習モデルに入力する。増悪は、細菌またはウイルスによる呼吸器感染症が契機となることがあり、このような時には炎症所見として体温の上昇が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び体温と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0129】
脈拍計を用いる場合、単位時間あたりの脈拍数または脈拍数の時間的変化を学習モデルに入力する。増悪時には、上記のように交感神経が優位となり、これにより脈拍数の上昇が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び脈拍数と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0130】
心拍変動測定器を用いる場合、単位時間あたりのLF(低周波)/HF(高周波)比またはLF/HF比の時間的変化を学習モデルに入力する。増悪時には、上記のように交感神経が優位となり、これによりLF/HF比の上昇が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及びLF/HF比と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0131】
生体電位センサを用いる場合、単位時間あたりの胸郭インピーダンスの変化量ΔZまたは胸郭インピーダンスの変化量ΔZの時間的変化を学習モデルに入力する。増悪時には、換気障害に伴う肺容積変化の減少が認められ、これにより胸郭インピーダンスの変化量ΔZの低下が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び胸郭インピーダンスの変化量ΔZと、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。
【0132】
発汗センサを用いる場合、単位時間あたりの発汗量または発汗量の時間的変化を学習モデルに入力する。増悪時には、上記のように交感神経が優位となり、これにより発汗量の上昇が認められる。学習モデルの学習の際には、履歴に基づき得られた動作情報、活動電位情報及び発汗量と、増悪レベルとを含む教師データを用いて学習処理を行う。なお、以上述べた第2センサを複数組み合わせて学習モデルに入力しても良い。
【0133】
端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、及び筋電図センサ4から呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する。制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、マイクから生体音情報を取得する。例えば、呼吸音、咳音、痰の貯留音、肺雑音に関して周波数、強度、持続時間または音質等の生体音情報が取得されても良い。制御部21は、取得した動作情報、活動電位情報及び生体音情報に基づき、COPDにおける増悪に関する情報を検出する。
【0134】
例えば、実施形態1で記述した動作情報及び活動電位情報により増悪に関する情報を検出する処理を基にして、更に生体音情報を加えて増悪に関する情報を検出しても良い。具体的には、端末2の制御部21は、動作情報及び活動電位情報に基づき、増悪に関する情報を検出した場合、マイクにより取得した生体音情報(例えば、呼吸音等)により引き続き増悪を判定する。COPD患者は増悪が生じた場合、呼吸音の減弱、呼気の延長、咳または痰の回数の増加、肺雑音の増加等の生体反応が生じるため、制御部21は、生体音情報に基づいて増悪に関する情報を検出する。制御部21は、検出した増悪に関する情報を表示部25により表示する。制御部21は、通信部23を介して、検出した増悪に関する情報をサーバ1に送信する。サーバ1の制御部11は、端末2から送信された増悪に関する情報を通信部13により受信し、受信した増悪に関する情報を大容量記憶部17の患者
DB171に記憶する。
【0135】
なお、本実施形態では、第2センサ5と検出センサ3と筋電図センサ4とを分離した形で図示しているが、両者を一体に構成しても良い。また、第2センサ5の配置場所は体の特定の部位に限定されるものではなく、非接触型であっても構わない。また、本実施形態では端末2と、第2センサ5を分離した形で図示しているが、これに限るものではない。例えば、端末2と、検出センサ3及び筋電図センサ4、第2センサ5とを全て一体化した装置構成としても良いし、端末2と第2センサ5を一体化した装置構成(例えば、腕時計型携帯端末等のウェアラブルデバイス等)であっても構わない。また時計型の第2センサ5をユーザに装着させておき、第2センサ5により異常を検出した場合に、検出センサ3及び筋電図センサ4をユーザの体に取り付けさせる形態であっても良い。
【0136】
図20は、マイクを加えて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図12と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、マイクから生体音情報(例えば、呼吸音等)を取得する(ステップS241)。制御部21は、動作情報及び活動電位情報に基づき、COPDにおける増悪に関する情報を検出した場合(ステップ203~206)、呼吸音が減弱しているか否かを判定する(ステップS242)。呼吸音の減弱の判定処理に関しては、例えば呼吸音の周波数を用いて判定しても良い。
【0137】
制御部21は、取得した呼吸音が減弱していないと判定した場合(ステップS242でNO)、処理を終了する。制御部21は、取得した呼吸音が減弱していると判定した場合(ステップS242でYES)、ステップS207を実行する。なお、
図20では、生体音情報の一つの呼吸音の例を説明したが、これに限るものではない。ほかの咳音、痰の貯留音、肺雑音、または上述した各種の音情報の組み合わせにより、COPDにおける増悪に関する情報が検出されても良い。
【0138】
なお、上述した処理は、動作情報による増悪判定処理(ステップS205)、活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)後に、呼吸音が減弱しているか否かの判定(ステップS242)を行った例を説明したが、これに限るものではない。例えば、先に呼吸音が減弱しているか否かの判定(ステップS242)を行い、その後に活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)、次に動作情報による増悪判定処理(ステップS205)を行い、増悪に関する情報を検出しても良い。
【0139】
または、呼吸音が減弱しているか否かの判定(ステップS242)、動作情報による増悪判定処理(ステップS205)、及び活動電位情報による増悪判定処理(ステップS206)を並行して行い、三者を用いて導き出される増悪の判定条件を満たした場合、増悪に関する情報を検出しても良い。
【0140】
続いて、動作情報、活動電位情報及び第2センサ5により取得した生体情報に基づき、ディープラーニングにより構築された学習済みモデルを用いて、増悪に関する情報を検出する処理を説明する。
【0141】
図21は、実施形態3のサーバ1の構成例を示すブロック図である。なお、
図14と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。大容量記憶部17は、第2増悪検出モデル174を含む。第2増悪検出モデル174は、ディープラーニングにより構築された増悪検出モデルである。第2増悪検出モデル174は、動作情報に関する電気信号の画像、活動電位情報の画像、及び第2センサ5により取得した生体信号画像内における増悪箇所の波形画像の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、波形画像を入力とし、COPDにおける増悪に関する情報の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)する。なお、第2増悪検出モデル174の生成処理に関しては、実施形態1の増悪検出モデル173の生成処理と同様であるため、説明を省略する。
【0142】
図22は、第2増悪検出モデル174を用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図18と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。第2センサ5は、Bluetooth通信を利用して生体情報の画像を端末2に送信する(ステップS541)。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、第2センサ5から送信された生体情報の画像を受信する(ステップS243)。
【0143】
生体情報は、例えば経皮的動脈血酸素飽和度を検出するオキシメータにより取得した酸素解離曲線データであっても良い。COPD患者は増悪がある場合、経皮的酸素濃度が低下するため、酸素解離曲線データの画像に基づいて増悪に関する情報を検出することができる。なお、経皮的動脈血酸素飽和度に限るものではない。生体情報の画像は、例えば呼吸数または心拍数に対する時系列データの時間的変化を示すフラグ、マイクの波形データ等であっても良い。
【0144】
制御部21は、端末2にインストールされた第2増悪検出モデル174を用いてCOPDにおける増悪に関する情報を検出する(ステップS244)。なお、第2増悪検出モデル174を用いた増悪に関する情報の検出処理に関しては、実施形態1の増悪検出モデル173を用いた増悪に関する情報の検出処理と同様であるため、説明を省略する。
【0145】
図23は、第2増悪検出モデル174の学習処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図23に基づき、第2増悪検出モデル174の学習処理の処理内容について説明する。
【0146】
制御部11は、検出センサ3により取得した動作情報の画像、筋電図センサ4により取得した活動電位情報の画像、及び第2センサ5により取得した生体情報の画像と、COPDにおける増悪に関する情報とが対応付けられた教師データを取得する(ステップS151)。教師データは、例えば動作情報、活動電位情報及び生体情報の画像と、増悪に関する情報(例えば、増悪の確率値等)とをラベル付けしたデータである。
【0147】
制御部11は、教師データを用いて、動作情報、活動電位情報及び生体情報の画像を入力した場合に増悪の有無に関する情報を出力する第2増悪検出モデル174を学習する(ステップS152)。具体的には、制御部11は、教師データである波形画像をニューラルネットワークの入力層に入力し、増悪に関する情報を識別した識別結果を出力層から取得する。制御部11は、取得した識別結果を教師データの正解値(波形画像に対してラベル付けられた情報)と比較し、出力層から出力される識別結果が正解値に近づくよう、中間層での演算処理に用いるパラメータ(重み等)を最適化する。制御部11は、学習した第2増悪検出モデル174を大容量記憶部17に格納し、一連の処理を終了する。
【0148】
本実施形態によると、検出センサ3により取得した動作情報、筋電図センサ4により取得した活動電位情報、及び第2センサ5により取得した生体情報に基づき、呼吸器系疾患の異常を検出することができる。
【0149】
本実施形態によると、生体情報を補助手段とし、動作情報及び活動電位情報と共に増悪に関する情報を検出する。これにより、例えば実施形態1の検出処理によって、増悪に関する情報が誤って検出されても、生体情報に基づいて増悪に関する情報の補正を行うことが可能となる。
【0150】
(実施形態4)
実施形態4は、実施形態3を基にして、更に活動(労作)情報を検出する第3センサを用いて、呼吸器系疾患の異常を検出する形態に関する。なお、実施形態4では、呼吸器系疾患の一つであるCOPDにおける増悪に関する情報を検出する例をあげて説明する。本実施形態では、第3センサ6を含む。第3センサ6は、患者の運動量、移動距離、活動量または姿勢を含む活動情報を検出し、例えば加速度センサ、GPS(Global Positioning System/Global Positioning Satellite)センサ、またはジャイロセンサ(角速度センサ)等である。なお、複数の第3センサ6を用いて、活動(労作)情報が検出されても良い。
【0151】
図24は、実施形態4のサーバ1の構成例を示すブロック図である。なお、
図21と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。大容量記憶部17は、アドバイスDB175及びウォーキングモデル176を含む。アドバイスDB175は、活動内容、増悪に関する情報等に応じたアドバイス情報を記憶している。
【0152】
活動内容は、例えばウォーキング、自転車、階段昇降、ジョギング、呼吸リハビリ運動等を含み、第3センサ6により取得する。例えば、端末2の制御部21は、加速度センサを用いて身体活動をモニタリングし、姿勢、速度、移動距離等の加速度データ(活動情報)を取得し、取得した加速度データに応じて活動内容を特定する。なお、活動内容の特定に関しては、上述した特定処理に限るものではない。例えば、活動内容を選択可能な画面がユーザに表示されている場合、ユーザのタッチ操作により活動内容を特定しても良い。
【0153】
ウォーキングモデル176は、活動内容がウォーキングである場合、ディープラーニングにより構築された専用の増悪検出モデルである。例えば、動作情報に関する電気信号の画像、活動電位情報の画像、及び第2センサ5により取得した生体信号画像がウォーキングモデル176に入力される。ウォーキングモデル176は、ウォーキングに応じて、入力した画像内における増悪箇所の波形画像の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、波形画像を入力とし、COPDにおける増悪に関する情報の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)する。なお、ウォーキングモデル176の生成処理に関しては、実施形態1の増悪検出モデル173の生成処理と同様であるため、説明を省略する。
【0154】
また、第2センサ5による生体信号画像を用いずに、動作情報及び活動電位情報に基づき、ウォーキングモデル176が生成されても良い。
【0155】
なお、本実施形態では、ウォーキングモデル176の例をあげて説明するが、これに限らず、活動内容ごとにそれぞれのモデル(例えば、自転車モデル、階段昇降モデル、ジョギングモデル、呼吸リハビリモデル等)を利用しても良い。例えば、呼吸リハビリとなる活動が特定された場合、動作情報に関する電気信号の画像、活動電位情報の画像、及び第2センサ5により取得した生体信号画像を入力とし、COPDにおける増悪に関する情報を出力する学習済みの呼吸リハビリモデルを用いて増悪に関する情報を検出しても良い。呼吸リハビリモデルは、検出センサ3により検出した呼吸リハビリ時の動作情報の画像、筋電図センサ4により検出した呼吸リハビリ時の活動電位情報の画像、及び第2センサ5により取得した生体信号画像の特徴量を学習することで、呼吸リハビリ時の身体反応状況に応じて、増悪に関する情報を検出する。
【0156】
図25は、実施形態3のマスタDB172のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、
図4と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。マスタDB172は、活動内容列を含む。活動内容列は、身体活動に応じて行動の種類を記憶している。例えば、活動内容が階段昇降、ウォーキング等である。
【0157】
図26は、アドバイスDB175のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。アドバイスDB175は、アドバイスID列、活動内容列、増悪情報列及びアドバイス列を含む。アドバイスID列は、各アドバイスを識別するために、一意に特定されるアドバイスのIDを記憶している。活動内容列は、身体活動に応じて行動の種類を記憶している。増悪情報列は、増悪に関する情報を記憶している。アドバイス列は、活動内容及び増悪に関する情報に応じて、患者に対するアドバイス情報を記憶している。
【0158】
続いて、活動内容に応じたアドバイス情報の送信処理について説明する。
図27は、活動内容に応じたアドバイス情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を取得し(ステップS261)、筋電図センサ4から呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する(ステップS262)。制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、第2センサ5により生体情報を取得し(ステップS263)、第3センサ6により患者の運動量、移動距離、活動量または姿勢を含む活動情報を取得する(ステップS264)。
【0159】
制御部21は、取得した活動情報に基づいて活動内容を特定する(ステップS265)。制御部21は、取得した動作情報、活動電位情報及び生体情報に基づき、増悪に関する情報を検出する(ステップS266)。なお、増悪に関する情報の検出処理に関しては、実施形態3での検出処理と同様であるため、説明を省略する。制御部21は、通信部23を介して、検出した増悪に関する情報、及び特定した活動内容に基づき、アドバイスの取得リクエストをサーバ1に送信する(ステップS267)。サーバ1の制御部11は、通信部13を介して、端末2から送信されたアドバイスの取得リクエストを受信する(ステップS161)。
【0160】
制御部11は、受信したアドバイスの取得リクエストに応じて、大容量記憶部17のアドバイスDB175からアドバイス情報を取得する(ステップS162)。制御部11は、通信部13を介して、取得したアドバイス情報を端末2に送信する(ステップS163)。端末2の制御部21は、サーバ1から送信されたアドバイス情報を通信部23により受信し(ステップS268)、受信したアドバイス情報を表示部25により表示する(ステップS269)。例えば、増悪レベル2(リスクが低い)であるジョギング中の患者に対し、アドバイス情報「呼吸に走るリズムを合わせましょう!」を表示しても良い。また、増悪レベル3(リスクが高い)である階段を上っている患者に対し、アドバイス情報「一旦止まって、呼吸を整えましょう!」を表示しても良い。更にまた、増悪レベル4(増悪)であるウォーキング中の患者に対し、アドバイス情報「短時間作用型吸入β2刺激薬を使用してください!」を表示しても良い。
【0161】
続いて、機械学習によって構築した活動ごとのモデルを用いてCOPDにおける増悪に関する情報を検出する処理について説明する。なお、本実施形態では、ウォーキングする際に利用可能なウォーキングモデル176に基づいて説明するが、ほかの活動内容でも同様に適用できる。活動内容に応じて、運動量、活動量、姿勢等が異なるため、COPDにおける増悪に関する情報を検出する検出結果にも影響を与える。ある特定の活動(例えば、ウォーキング)に対し、該特定の活動状態から取得した各種の波形画像の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、波形画像を入力とし、COPDにおける増悪に関する情報の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築することができる。よって、該学習済みの専用モデルを用いて、該特定の活動におけるCOPDの増悪に関する情報を検出する精度が高くなる。
【0162】
図28は、ウォーキングモデル176を用いて増悪に関する情報を検出する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図27と重複する内容については同一の符号を付
して説明を省略する。端末2の制御部21は、ステップS265で特定した活動内容に応じて、学習済みの活動学習モデルを特定する(ステップS270)。例えば、制御部21は、ステップS264で取得した活動情報からウォーキングとなる活動内容を特定した場合、予めインストールされたウォーキングモデル176を特定し、COPDにおける増悪に関する情報を検出する。すなわち、活動内容ごとの学習済みの活動学習モデルを利用することにより、COPDにおける精度が高い増悪に関する情報を検出することができる。
【0163】
続いて、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値の変更処理を説明する。
【0164】
活動内容に応じて運動量等が変化するため、これに合わせてCOPDにおける増悪の有無に関する情報の判定基準を変更させる。以下では、活動内容に応じて、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値変更の例をあげて説明する。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、第3センサ6により検出した活動情報を取得する。制御部21は、取得した活動情報に応じて、活動内容を特定する。制御部21は、特定した活動内容に基づき、サーバ1の大容量記憶部17のマスタDB172から、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値を取得する。そして制御部21は、取得した新たな閾値に基づき、増悪に関する情報を検出する際に判定処理を行う。例えば、端末2の制御部21は活動内容をウォーキングと特定した場合、制御部21はサーバ1の大容量記憶部17のマスタDB172から、ウォーキングに対応する活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値を取得する。ウォーキングの場合、運動量がアップするため、増悪に関する情報を検出するための電気信号の閾値は、安静時の閾値より高くなる。
【0165】
なお、上述した電気信号の閾値の変更処理の例を説明したが、これに限るものではない。検出センサ3により取得した動作情報を判定するための第1条件、第2センサ5により取得した生体情報を判定するための生体情報の所定閾値を変更することができる。例えば、端末2は検出センサ3を用いて増悪の検出処理を行った場合、活動内容に応じて、呼気筋の動作電気信号閾値を変更する。例えば、端末2は活動内容をウォーキングと特定した場合、運動量がアップするため、電圧の極大の傾き閾値または極小の傾き閾値を高く変更する。
【0166】
また、端末2は第2センサ5を用いて増悪の検出処理を行った場合、活動内容に応じて、第2センサ5の各種の閾値を変更しても良い。例えば第2センサ5がマイクである場合、端末2の制御部21は音声データを取得する。制御部21は音声データを周波数変換し、特定周波数帯のパワーが所定閾値を超えるか否か判断する。制御部21は所定閾値を超える場合、増悪の可能性があると判断し、検出センサ3及び筋電図センサ4を用いた判断を行う。ここで制御部21は活動内容に応じて上述した所定閾値を変化させる。
【0167】
なお、上述した活動内容に応じた所定閾値を変更する処理に限るものではない。例えば、増悪検出モデル173を用いて、出力した増悪の確率値に応じて、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値を変更しても良い。
【0168】
図29は、増悪の確率値に応じた電気信号の所定閾値を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。学習済みの増悪検出モデル173がインストールされた端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報を取得する(ステップS271)。制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、筋電図センサ4から呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報を取得する(ステップS272)。
【0169】
制御部21は、増悪検出モデル173を用いてCOPDにおける増悪に関する情報を検出する(ステップS273)。制御部21は、検出した増悪に関する情報から増悪の確率値を取得する(ステップS274)。例えば、取得された増悪の確率値が0.3である場合、増悪の発症リスクがあるため、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値の変更が必要となる。
【0170】
制御部21は、通信部23を介して、取得した増悪の確率値をサーバ1に送信する(ステップS275)。サーバ1の制御部11、通信部13を介して、端末2から送信された増悪の確率値を受信する(ステップS171)。制御部11は、受信した増悪の確率値に応じて、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値を算出する(ステップS172)。算出アルゴリズムに関しては、例えば増悪の発症リスクがある場合、既存の電気信号の所定閾値に0~1間の係数を乗じて算出しても良い。すなわち、増悪の発症リスクがある場合、増悪検出の判定基準が厳しくなる。制御部11は、算出した電気信号の所定閾値を大容量記憶部17のマスタDB172に更新する(ステップS173)。
【0171】
続いて、検出センサ3、筋電図センサ4及び第3センサ6を用いたCOPDにおける増悪に関する情報の検出処理について説明する。例えば、第3センサ6はジャイロセンサである。端末2は、検出センサ3を用いて呼吸筋または呼吸補助筋の動作に関する動作情報、筋電図センサ4を用いて呼吸筋または呼吸補助筋に対する活動電位情報、及びジャイロセンサを用いて足のふらつき値を取得する。端末2は、取得した足のふらつき値が所定閾値以上であるか否かを判定する。端末2は、取得した足のふらつき値が所定閾値以上であると判定した場合、実施形態1と同様の処理により、取得した動作情報及び活動電位情報に基づいて増悪に関する情報を検出する。なお、足のふらつきの検出処理に関しては、ジャイロセンサにより取得したジャイロセンサデータを入力とし、ふらつきを検出する学習済みのふらつき検出モデルを利用しても良い。
【0172】
なお、本実施形態では、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を判定するための電気信号の所定閾値の変更処理を説明したが、これに限るものではない。他の判定用の閾値に対しても、上述した処理内容により変更しても良い。
【0173】
本実施形態によると、活動内容に応じた呼吸器系疾患の異常を検出することに関し、安静時では発見しにくい増悪に関する症状に対しても、増悪の検出率を高めることが可能となる。
【0174】
本実施形態によると、活動内容に応じたそれぞれの学習済みの活動学習モデルを利用することにより、身体活動量の実態を考慮して安静時以外の活動(例えば、ジョギング等の高強度の活動)の場合でも、COPDにおける増悪に関する情報を検出することが可能となる。
【0175】
本実施形態によると、活動内容または増悪の確率値に応じて、増悪の有無に関する情報を判定するための電気信号の所定閾値を適切に変更することが可能となる。
【0176】
(実施形態5)
実施形態5は、COPDにおける増悪に関する情報を検出した場合、検出した増悪に関する情報に応じて、薬の服薬指示情報または服薬指示情報以外の第2のアドバイス情報を送信する形態に関する。なお、実施形態1~4と重複する内容については説明を省略する。
【0177】
図30は、実施形態5のサーバ1の構成例を示すブロック図である。なお、
図24と重
複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。大容量記憶部17は、服薬指示情報DB177及び治療結果DB178を含む。服薬指示情報DB177は、COPD患者に対して、あらかじめ増悪時に使用するために処方されている薬に対する服薬指示の情報を記憶している。治療結果DB178は、増悪に関する情報を検出した患者に対して、あらかじめ増悪時に使用するために処方されている薬の摂取に関する情報、及び薬を摂取した後の計測データを記憶している。
【0178】
図31は、服薬指示情報DB177のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。服薬指示情報DB177は、服薬指示ID列、患者ID列、増悪情報列、服薬指示列及びアドバイス列を含む。服薬指示ID列は、各服薬指示を識別するために、一意に特定される服薬指示のIDを記憶している。患者ID列は、患者を特定する患者IDを記憶している。増悪情報列は、増悪に関する情報を記憶している。服薬指示列は、増悪に関する情報に応じた薬の服薬指示の情報を記憶している。アドバイス列は、増悪に関する情報に応じて服薬指示の情報以外の第2のアドバイス情報を記憶している。
【0179】
図32は、治療結果DB178のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。治療結果DB178は、管理ID列、患者ID列、服薬指示ID列、薬摂取状況列及び計測データ列を含む。管理ID列は、各治療結果のデータを識別するために、一意に特定される治療結果のデータのIDを記憶している。患者ID列は、患者を特定する患者IDを記憶している。服薬指示ID列は、服薬指示を特定する服薬指示IDを記憶している。薬摂取状況列は、増悪に関する情報を検出した患者に対して服薬指示された薬の摂取の状況(ステータス)を記憶している。例えば、薬摂取状況列に「摂取済み」、「摂取中」または「未摂取」等が記入されても良い。
【0180】
計測データ列は、動作情報列、活動電位情報列及び生体情報列を含む。動作情報列は、増悪に関する情報を検出した患者が服薬指示された薬を摂取した後に、該患者に対し、検出センサ3により取得した動作情報を記憶している。活動電位情報列は、増悪に関する情報を検出した患者が服薬指示された薬を摂取した後に、該患者に対し、筋電図センサ4により取得した活動電位情報を記憶している。生体情報列は、増悪に関する情報を検出した患者が服薬指示された薬を摂取した後に、該患者に対し、第2センサ5により取得した生体情報を記憶している。
【0181】
図33は、増悪に関する情報に応じた、あらかじめ増悪時に使用するために処方されている薬に対する服薬指示情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。端末2の制御部21は、Bluetooth通信部26を介して、検出センサ3から動作情報を取得し(ステップS281)、筋電図センサ4から活動電位情報を取得する(ステップS282)。制御部21は、COPDにおける増悪に関する情報を検出するか否かを判定する(ステップS283)。なお、増悪に関する情報の検出処理に関しては、実施形態1での増悪に関する情報の検出処理と同様であるため、説明を省略する。制御部21は、COPDにおける増悪に関する情報を検出していないと判定した場合(ステップS283でNO)、処理を終了する。
【0182】
制御部21は、COPDにおける増悪に関する情報を検出したと判定した場合(ステップS283でYES)、増悪に関する情報に応じた薬の服薬指示情報を取得する(ステップS284)。例えば、制御部21は、医師が増悪に関する情報を確認し、あらかじめ処方していた薬に対して行う直接の服薬指示情報を通信部23若しくは入力部24により受け付けても良く、または記憶部22から増悪に関する情報に応じて、あらかじめ処方されている薬に対する服薬指示の情報を取得しても良い。薬の服薬指示情報は、薬の種類(例えば、短時間作用型吸入β2刺激薬等)、名称(例えば、メプチン)、服用方法及び副作用等を含む。制御部21は、取得した服薬指示情報を表示部25により表示する(ステップS285)。制御部21は、通信部23を介して、取得した服薬指示情報をサーバ1に送信する(ステップS286)。
【0183】
サーバ1の制御部11は、端末2から送信された増悪に関する情報に応じた薬の服薬指示情報を通信部13により受信し(ステップS181)、受信した服薬指示情報を大容量記憶部17の服薬指示情報DB177に記憶する(ステップS182)。具体的には、制御部11は、服薬指示IDを割り振って、患者ID、増悪に関する情報及び服薬指示情報を一つのレコードとして服薬指示情報DB177に記憶する。
【0184】
図34は、増悪に関する情報に応じた第2のアドバイス情報を送信する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図33と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。端末2の制御部21は、ステップS283でCOPDにおける増悪に関する情報を検出したと判定した場合、増悪に関する情報に応じる第2のアドバイス情報を取得する(ステップS291)。第2のアドバイス情報は、上述した服薬指示情報以外の意見・提案等であり、COPDの治療に対する有益な情報等であっても良い。第2のアドバイス情報としては、例えば「ウォーキングをしてください。」、「基礎的なトレーニングをしてください。」等の運動療法に関する情報、または「食べ過ぎに注意してください。」、「栄養管理をしてください。」等の栄養療法に関する情報が含まれる。なお、第2のアドバイス情報の取得処理に関しては、上述した服薬指示情報の取得処理と同様であるため、説明を省略する。制御部21は、取得した第2のアドバイス情報を表示部25により表示する(ステップS292)。制御部21は、通信部23を介して、取得した第2のアドバイス情報をサーバ1に送信する(ステップS293)。
【0185】
サーバ1の制御部11は、端末2から送信された増悪に関する情報に応じた第2のアドバイス情報を通信部13により受信し(ステップS191)、受信した第2のアドバイス情報を大容量記憶部17の服薬指示情報DB177に記憶する(ステップS192)。具体的には、制御部11は、服薬指示IDを割り振って、患者ID、増悪に関する情報及び第2のアドバイス情報を一つのレコードとして服薬指示情報DB177に記憶する。
【0186】
なお、上述した服薬指示情報または第2のアドバイス情報がそれぞれに端末2に送信されたが、これに限るものではない。例えば、サーバ1の制御部11は、検出した増悪に関する情報に応じて、服薬指示情報を第2のアドバイス情報と共に端末2に送信しても良い。
【0187】
また、患者が服薬指示された薬を摂取した後に、薬の摂取に関する情報、及び薬を摂取した後の計測データを記憶することができる。具体的には、制御部11は、通信部13または入力部14を介して、増悪に関する情報を検出した患者に対して服薬指示された薬の摂取に関する情報を取得する。制御部11は、通信部13を介して、検出センサ3から薬の摂取後の動作情報、筋電図センサ4から薬の摂取後の活動電位情報、及び第2センサ5から薬の摂取後の生体情報を含む計測データを取得する。
【0188】
制御部11は、取得した薬の摂取に関する情報、及び薬を摂取した後の計測データを大容量記憶部17の治療結果DB178に記憶する。具体的には、制御部11は、管理IDを割り振って、患者ID、服薬指示ID、薬の摂取状況、動作情報、活動電位情報及び生体情報を一つのレコードとして治療結果DB178に記憶する。
【0189】
続いて、薬を摂取した後の計測データを用いて、第2増悪検出モデル174の再学習処理の処理内容について説明する。COPD患者が薬を摂取して所定の時間を経過した後に、制御部11は、検出センサから出力される動作情報、及び筋電図センサから出力される活動電位情報を含む計測データと、増悪が生じていないことを示す情報(例えば、レベル1)とが対応付けられた第2教師データを取得する。制御部11は、第2教師データを用いて、動作情報及び活動電位情報を入力した場合に増悪の有無に関する情報を出力する増悪検出モデル173(学習済みモデル)を再学習する。制御部11は、再学習した増悪検出モデル173を大容量記憶部17に格納し、一連の処理を終了する。
【0190】
また、患者の薬摂取後の評価、及びその後の対応も行うことが可能となる。例えば、気管支拡張作用のある短時間作用型吸入β2刺激薬の服薬指示を行った患者が、薬を吸入しても、動的過膨張等の増悪状態の改善が認められない場合、病院受診の指示を患者宛に送信する等の対応が可能となる。
【0191】
本実施形態によると、COPDにおける増悪に関する情報を検出した場合、検出した増悪に関する情報に応じて、薬の服薬指示情報を患者宛に送信することが可能となる。
【0192】
本実施形態によると、COPDにおける増悪に関する情報を検出した場合、検出した増悪に関する情報に応じて、服薬指示情報以外の第2のアドバイス情報を患者宛に送信することが可能となる。
【0193】
本実施形態によると、薬を摂取した後の計測データを用いて、第2増悪検出モデルを再学習することにより、増悪に関する情報の検出精度を向上することが可能となる。
【0194】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0195】
1 情報処理装置(サーバ)
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 読取部
17 大容量記憶部
171 患者DB
172 マスタDB
173 増悪検出モデル
174 第2増悪検出モデル
175 アドバイスDB
176 ウォーキングモデル
177 服薬指示情報DB
178 治療結果DB
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
1P 制御プログラム
2 情報処理端末(端末)
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 表示部
26 Bluetooth通信部
2P 制御プログラム
3 検出センサ
31 制御部
32 記憶部
33 圧電素子
34 Bluetooth通信部
3P 制御プログラム
4 筋電図センサ
41 制御部
42 記憶部
43 筋電計測部
44 Bluetooth通信部
4P 制御プログラム
5 第2センサ
6 第3センサ