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特開2022-188191抗GDF15抗体、組成物および使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188191
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】抗GDF15抗体、組成物および使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221213BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20221213BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/24
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160619
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2021509185の分割
【原出願日】2019-08-15
(31)【優先権主張番号】62/765,289
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/750,393
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/750,479
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/881,064
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン チャールズ ボーモント
(72)【発明者】
【氏名】ダナ エム.ブリーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー レイモンド シャボット
(72)【発明者】
【氏名】タオ ヒー
(72)【発明者】
【氏名】クセンヤ シチョールス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ アール.アプガー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アリスター ランバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】GDF15に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびにこれらの抗体のための方法および使用を提供する。
【解決手段】ヒト増殖分化因子15(GDF15)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、特定の配列番号の配列からなるLCDRならびにHCDRを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト増殖分化因子15(GDF15)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、以下のうち少なくとも1つ:
a)配列番号7、27、36、46、55、62、82、88、95、101、129、138、150、157、174および184の配列からなる群から選択されるLCDR-1アミノ酸配列;
b)配列番号8、28、37、47、70、108、114、122、130、175および185の配列からなる群から選択されるLCDR-2アミノ酸配列;
c)配列番号9、29、38、48、63、76、89、102、176および186の配列からなる群から選択されるLCDR-3アミノ酸配列;
d)配列番号17、32、41、58、66、117、125、133、153、171および179の配列からなる群から選択されるHCDR-1アミノ酸配列;
e)配列番号18、33、42、51、59、67、85、92、98、105、118、126、134、141、146、165、172および180の配列からなる群から選択されるHCDR-2アミノ酸配列;
f)配列番号1、19、43、52、79、111、119、135、147、154、160、173および181の配列からなる群から選択されるHCDR-3アミノ酸配列;ならびに
g)上記(a)~(f)からの少なくとも1つの抗体と、GDF15への結合について競合する抗体
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFcドメインからなる群から選択されるヒトFcドメインを含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pMおよび10pMからなる群から選択されるおよその値のKDまたはその値未満のKDで、ヒトまたはカニクイザルGDF15に結合する、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性部分をコードする、単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項7】
CHO細胞、COS細胞、HEK-293細胞、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞またはSp2.0細胞からなる群から選択される哺乳動物細胞である、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合性断片を作製する方法であって、請求項6に記載の宿主細胞を、前記抗体またはその抗原結合性断片が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養するステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
GDF15の発現によって媒介されるまたはそれと関連する医学的状態、疾患または障害の処置をするための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記状態が、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、慢性心不全、うっ血性心不全またはサルコペニアと関連する悪液質である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
遊離GDF15のレベルを減少させるための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
GDF15の活性を低減させるための請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
GDF15の前記活性が、(a)食物摂取を減少させること;(b)食欲を減少させること;(c)体重を減少させること;(d)体重減少を増加させること;(e)体脂肪量を減少させること;(f)除脂肪量を減少させること;(g)体脂肪量の喪失を増加させること、h)除脂肪筋肉量の喪失を増加させること、i)GFRALに結合すること;(j)RETによって媒介される下流シグナル伝達を増加させること;(k)ERKのリン酸化を増加させること;(l)リボソームタンパク質S6のリン酸化を増加させること;(m)MAPKシグナル伝達経路のRET媒介性の活性化を増加させること;(n)AKTシグナル伝達経路のRET活性化を増加させること;および(o)PLC-γ1シグナル伝達経路の活性化を増加させること、からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
相乗的治療効果を提供する組成物と組み合わせて使用するための、がんを処置するための請求項9に記載の医薬組成物であって、ここで相乗的治療効果を提供する組成物が、
a)相乗的治療有効量の抗CD40アンタゴニスト抗体;または
b)相乗的治療有効量の、アベルマブではないPD-1軸結合性アンタゴニストである、医薬組成物。
【請求項16】
前記PD-1軸結合性アンタゴニストが、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、チスレチズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびササンリマブ(PF-06801591)からなる群から選択される抗PD-1抗体である、請求項15の(b)に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記PD-1軸結合性アンタゴニストが、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、BMS-936559、MEDI4736およびMPDL3280Aからなる群から選択される抗PD-L1抗体であり、前記抗PD-L1抗体が、アベルマブではない、請求項15の(b)に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが、黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、メルケル細胞癌、卵巣がん、乳がん膵がん、尿路上皮がんおよび去勢抵抗性前立腺がんからなる群から選択される、請求項16または17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記がんが、胃がん(gastric cancer)、肉腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫からなる群から選択される、請求項15の(a)に記載の医薬組成物。
【請求項20】
相乗的治療有効量の、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗GDF15抗体および相乗的治療有効量の抗PD-1抗体を含む、がんの処置のためのキット。
【請求項21】
治療有効量の、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗GDF15抗体および治療有効量の抗CD40抗体を含む、がんの処置のためのキット。
【請求項22】
がんの処置のために対象に投与される免疫モジュレーターの治療効果を増強するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記がんが、乳がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、神経膠腫、神経膠芽腫、腎がん、子宮内膜がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
サイトカイン放出症候群(CRS)もしくはサイトカインストームを経験しているまたはCRSもしくはサイトカインストームに対して脆弱な対象において、毒性を減少させるまたは阻害するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記対象が、がん治療を受けており、前記方法が、前記がん治療の効力を低減させない、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記がん治療が、抗CD40抗体、抗CD47抗体、抗CTLA4抗体、抗4-1BB抗体、IL-12またはIL-15などの免疫モジュレーターを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記CRSまたはサイトカインストームの原因が、感染性刺激、状態もしくは症候群を含み、または前記サイトカイン放出症候群もしくはサイトカインストームの原因が、非感染性刺激、状態もしくは症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記感染性刺激、状態または症候群が、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタイン・バーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、エボラウイルス、痘瘡ウイルス、全身性グラム陰性細菌感染症もしくはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群を含み、または前記非感染性刺激、状態もしくは症候群が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、孤発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、スチル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(Muckle-Well Syndrome)(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(Chronic
Infantile Neurological Cutaneous and, Articular)(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性もしくはde novo機能獲得型変異を含むクリオピリノパチー(cryopyrinopathy)、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重症熱傷、外傷、急性呼吸窮迫症候群、免疫療法、モノクローナル抗体治療、薬物使用に対して二次的、毒素の吸入に対して二次的、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、またはRIG-1遺伝子発現のモジュレーションを含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、増殖分化因子15(GDF15)に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびにがんを処置するための本発明の抗GDF15抗体ならびにPD-1軸結合性アンタゴニストおよび/またはCD40阻害剤の組み合わせの使用を含む、その組成物、方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
GDF15は、マクロファージ阻害性サイトカイン1(MIC-1)、前立腺由来因子(PDF)、胎盤骨形成タンパク質(PLAB)、NSAID活性化遺伝子1(NAG-1)および胎盤トランスフォーミング増殖因子β(PTGFB)としても公知であり、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)スーパーファミリーのメンバーである25kDaのジスルフィド連結されたホモダイマーを形成する12kDaの分泌型タンパク質である。正常では、GDF15は、組織中では弱く発現されるか全く発現されず、血漿濃度は低い。GDF15発現は、炎症および悪性腫瘍の間に上方調節され、炎症および腫瘍成長を制限する。この上昇した発現は、がん(例えば、前立腺、膵臓、結腸直腸および胃(gastric))、心不全、慢性腎臓疾患(CKD)、サルコペニアおよび慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、著しく上昇したGDF15の循環濃度(>1~100ng/mL)を生じる。
【0003】
GDF15関連の体重減少が、前臨床モデルにおいて示されている。外因性GDF15投与は、生理学的および病態生理学的条件下で、食物摂取および体重を減少させる。増加した血漿GDF15は、悪液質を有するがん患者における体重減少と関連する(WO2005/099746;WO2009/021293、WO2014/100689、WO2016/049470)。証拠は、がん患者において最も強いが、心不全と関連する悪液質におけるGDF15と体重減少との間の関連もまた報告されている(WO/2015/196142)。ヒトデータと一致して、上昇した血漿GDF15は、マウス腫瘍モデルにおいて、悪液質と関連する。さらに、多変量分析を使用した複数の研究が、多くのがん型(例えば、とりわけ、NSCLC、膵および肉腫)ならびに心不全、CKDおよびCOPDにおける低い生存と関連する独立した予後バイオマーカーとして、GDF15を同定している。
【0004】
より最近、2017年の10月に、GDF15活性、例えば、その代謝効果は、GFR-αファミリーのオーファンメンバーであるその同族受容体GDNFファミリー受容体α様(GFRAL)へのGDF15結合によって媒介されることが報告された。例えば、Hsuら、2017、Nature 550:255~259;Yangら、2017、Nature Med.23(10):1158;およびEmmersonら、2017、Nature Med.23(10):1215を参照のこと。これらの研究は、GFRALに結合するGDF15が、GFRAL媒介性のシグナル伝達経路を活性化し、それによって、受容体チロシンキナーゼRETが活性化され、GFRALの共受容体として作用し、次に、RETが、とりわけ、ERK(pERK)、リボソームタンパク質S6(pS6)、AKT、MAPKおよびホスホリパーゼCガンマ1(PLC-γ1)の下流リン酸化を媒介することを実証した。さらに、これらの研究は、GDF15によるGFRALの活性化が、食欲および嘔吐を制御する神経ペプチドに対する化学感覚ニューロンおよび受容体を含む脳幹の領域である最後野および孤束核において生じることを実証した。最後野は、血液中の化学的メッセンジャーを感知し、代謝および食欲を制御する系を含む自律神経性の生理学的系を制御する。さらに、脳幹のこれらの領域は、血液脳関門(BBB)の外側にあり、これにより、これらの領域は、とりわけ、GFRALまたはGDF15に結合し、GFRAL-GDF15相互作用を防止して、食欲、ボディマス、体重、体脂肪量および食物摂取と関連するGDF15の代謝効果をモジュレートすることができる抗体を含む大分子にアクセス可能になる。したがって、脳幹中に存在するGDF15-GFRAL経路は、GDF15活性によって媒介される疾患、状態および障害をモジュレートするための潜在的な標的である。
【0005】
上昇したGDF15レベルによって媒介されるもしくはそれと関連する悪液質によって引き起こされるまたはそれと関連する体重減少のための治療選択肢の著しい必要が存在したままである。本発明は、この必要を満たす新規の潜在的な治療的抗体を提供する。
【0006】
PD-L1(プログラム死-リガンド1;CD274およびB7ホモログ1[B7-H1]としても公知)は、多くのがんにおいて過剰発現され、予後不良としばしば関連する(Okazaki Tら、Intern.Immun.2007 19(7):813)(Thompson RHら、Cancer Res 2006、66(7):3381)。興味深いことに、腫瘍浸潤性Tリンパ球の大部分は、正常な組織および末梢血中のTリンパ球とは対照的に、PD-1を優勢に発現する。腫瘍反応性T細胞上のPD-L1の同族受容体であるPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)は、損なわれた抗腫瘍免疫応答に寄与し得る(Ahmadzadehら、Blood 2009 1 14(8):1537)。これは、T細胞活性化の減弱および免疫監視の逃避を生じる、PD-1発現T細胞と相互作用するPD-L1発現腫瘍細胞によって媒介されるPD-L1シグナル伝達の利用に起因し得る(Sharpeら、Nat Rev 2002)(Keir MEら、2008 Annu.Rev.Immunol.26:677)。したがって、PD-L1/PD-1相互作用およびシグナル伝達経路(「PD-1軸」とも呼ばれる)の阻害は、腫瘍のCD8+T細胞媒介性の死滅を増強し得る。
【0007】
PD-1軸シグナル伝達の直接的リガンド(例えば、PD-L1、PD-L2[プログラム細胞死1リガンド2およびB7-DC])を介したPD-1軸シグナル伝達の阻害は、がんの処置のためのT細胞免疫(例えば、腫瘍免疫)を増強することが提唱されている。さらに、T細胞免疫と類似の増強が、別の結合パートナー、即ち、B7-1(CD80としても公知)へのPD-L1の結合を阻害することによって観察されている。
【0008】
現在、10よりも多くのがん適応症(A Ribasら、Science、359、1350~1355、2018)ならびに当該分野で公知の他の適応症において、FDAによって承認された少なくとも5つのPD-1軸結合性アンタゴニストが存在する。これらのうち、ニボルマブ(OPDIVO)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、チスレチズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブ、PF-06801591(ササンリマブ(sasanlimab)、RN888)は、各々抗PD-1抗体であるが、アベルマブ(BAVENCIO)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ)、デュルバルマブ(IMFINZI)、BMS-936559(MDX-1105)、MEDI4736、MPDL3280A(YW243.55.s70)は、各々抗PD-L1抗体である。
【0009】
PD-1軸結合性アンタゴニストと1つ以上の抗がん剤との組み合わせ治療は、調査されており、最初の臨床試験は、2009年に開始した。かかる組み合わせに関する新たな臨床試験は、劇的に増加した;それ以来、467の新たな試験が、2017年に登録された(C.Schmidt、Nature、第552巻、21/28 2017年12月)。黒色腫を処置するためのニボルマブ(抗PD-1)およびイピリムマブ(抗CTLA-4)の組み合わせ治療、ならびに非小細胞肺がんを処置するためのペムブロリズマブ(抗PD-1)と化学療法との組み合わせ治療は、それぞれ、2015年および2017年にFDAによって承認されたが、種々のがんを処置し、安定化し、予防し、および/またはその発達を遅延させるための、PD-1軸結合性アンタゴニストを1つ以上の他の抗がん剤と組み合わせる最適な治療的処置を見出す必要が継続している。
【0010】
GDF15は、いくつかの炎症促進因子およびリポ多糖(LPS)によって誘導されることが示され、NF-kBシグナル伝達経路の阻害を介して腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)産生を抑制することによってマクロファージ活性化に中断を課すフィードバック機構に関与している(Bootcovら、1997、PNAS 94(21):11514~11519、Ratnamら、2017、J.Clin.Invest.127(10):3796~3809)。TNFαの減少した発現は、腫瘍化促進性(pro-tumorigenic)のM2表現型に向かうマクロファージ集団の傾向と関連する(Kratochvill、2015、Cell Reports 12(11):1902~1914)。腫瘍関連マクロファージにおけるM2表現型を標的化することは、宿主免疫応答の活性化に焦点を当てたがん治療に対する応答を増強するための潜在的な戦略である。
【0011】
がんのため、特に、固形腫瘍のための治療選択肢の著しい必要が存在したままである。本発明は、これらの必要を満たす、1つ以上の他の抗がん剤を伴うまたは伴わない、新規の潜在的な治療的GDF15抗体を提供する。種々のがんを処置し、安定化し、予防し、および/またはその発達を遅延させるための、1つ以上の他の抗がん剤を伴いまたは伴わずに、PD-1軸結合性アンタゴニストを別の治療剤、例えば、GDF15阻害剤と組み合わせる最適な治療的処置を見出す必要も存在したままである。本発明は、この必要を満たす、本発明のGDF15抗体とPD-1軸結合性アンタゴニストとの新規の潜在的な有用な治療的組み合わせを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、GDF15に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびに使用、および関連の方法を提供する。当業者は、慣用的に過ぎない実験を使用して、本明細書に記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識する、またはそれを確認することができる。かかる等価物は、以下の実施形態(E)によって包含される意図である。
【0014】
E1.GDF15に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【0015】
E2.配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166からなる群のうち1つのHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0016】
E3.配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163からなる群のうち1つのLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE2のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0017】
E4.(a)~(f):
a)配列番号7、27、36、46、55、62、82、88、95、101、129、138、150および157からなる群から選択されるLCDR-1、
b)配列番号8、28、37、47、70、108、114、122および130からなる群から選択されるLCDR-2、
c)配列番号9、29、38、48、63、76、89および102からなる群から選択されるLCDR-3、
d)配列番号17、32、41、58、66、117、125、133および153からなる群から選択されるHCDR-1、
e)配列番号18、33、42、51、59、67、85、92、98、105、118、126、134、141、146および165からなる群から選択されるHCDR-2、
f)配列番号1、19、43、52、79、111、119、135、147、154および160からなる群から選択されるHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE3のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0018】
E5.i)アミノ酸配列GYTFXYNIDを含むHCDR-1であって、式中、XがSまたはTであり、XがSまたはDである、HCDR-1;ii)アミノ酸配列XINPXGXAXQKFQGを含むHCDR-2であって、式中、XがGまたはQであり;XがIまたはNであり;XがFまたはNであり;XがTまたはLであり;XがFまたはNであり;XがYまたはFであり、XがNまたはAである、HCDR-2;およびiii)アミノ酸配列EX10ITTX11GAMDX12を含むHCDR-3であって、式中、X10がAまたはQであり;X11がVまたはIであり;X12がHまたはYである、HCDR-3、を含む、E1からE4に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0019】
E6.i)アミノ酸配列RXSQXYLAを含むLCDR-1であって、式中、XがTまたはAであり、XがSまたはNであり、XがVまたはLであり、XがHまたはSであり、XがNまたはSである、LCDR-1;ii)アミノ酸配列DAXRAXを含むLCDR-2であって、式中、XがSまたはKであり;XがTまたはNであり;XがDまたはTである、LCDR-2;およびiii)アミノ酸配列QQFX1011PX12Tを含むLCDR-3であって、式中、XがWまたはSであり;X10がSまたはNであり;X11がWまたはDであり;X12がWまたはYである、LCDR-3、を含む、E1からE5に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0020】
E7.以下のうち1つ以上
a)配列番号174のアミノ酸配列を含むLCDR-1、
b)配列番号175のアミノ酸配列を含むLCDR-2、
c)配列番号176のアミノ酸配列を含むLCDR-3、
d)配列番号171のアミノ酸配列を含むHCDR-1、
e)配列番号172のアミノ酸配列を含むHCDR-2、
f)配列番号173のアミノ酸配列を含むHCDR-3
を含む、E1からE6のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0021】
E8.配列番号34、106、148、155および166からなる群から選択される少なくとも1つの配列のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE7のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0022】
E9.配列番号30、103、144、151および163からなる群から選択される少なくとも1つの配列のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE8のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0023】
E10.(a)~(f):
a)配列番号27、88、95、101および150からなる群から選択されるLCDR-1
b)配列番号8、28および108からなる群から選択されるLCDR-2
c)配列番号9、29、38、48および102からなる群から選択されるLCDR-3
d)配列番号32、41および153からなる群から選択されるHCDR-1
e)配列番号33、105、146および165からなる群から選択されるHCDR-2
f)配列番号19、52、147および154からなる群から選択されるHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE9のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0024】
E11.配列番号166のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE10のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0025】
E12.配列番号163のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE11のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0026】
E13.以下:
a)配列番号95の配列を含むLCDR-1、
b)配列番号28の配列を含むLCDR-2、
c)配列番号9の配列を含むLCDR-3、
d)配列番号32の配列を含むHCDR-1、
e)配列番号165の配列を含むHCDR-2、および
f)配列番号52の配列を含むHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE12のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0027】
E14.配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2、および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3、を含む、E1からE13のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0028】
E15.以下の置換:
a)ヒト生殖系列VL配列の対応する残基への、LCDR-1中の1、2、3、4、5または6個の置換、
b)ヒトVL生殖系列配列の対応する残基への、LCDR-2中の1、2、3、4または5個の置換、
c)ヒト生殖系列VL配列の対応する残基への、LCDR-3中の1、2、3、4、5または6個の置換、
d)ヒト生殖系列VH配列の対応する残基への、HCDR-1中の1個の置換、
e)ヒト生殖系列VH配列の対応する残基への、HCDR-2中の1、2、3、4、5、6、7または8個の置換
のうち1つ以上を含む、E1からE14のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、ヒト生殖系列VL配列が、IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101からなる群から選択され、ヒト生殖系列VHが、IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104およびIGHV5-5101からなる群から選択される、抗体またはその抗原結合性断片。
【0029】
E16.IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104およびIGHV5-5101からなる群から選択されるヒト生殖系列VH配列に由来するVHフレームワーク配列を含む、E1からE15のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0030】
E17.IGHV1-6901 VHフレームワーク配列を含む、E1からE16のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0031】
E18.IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101からなる群から選択されるヒト生殖系列VL配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1からE17のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0032】
E19.IGKV3-1101 VLフレームワーク配列を含む、E1からE18のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0033】
E20.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE19のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
【0034】
E21.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE20のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%、74%、75%、77%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
【0035】
E22.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE21のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
【0036】
E23.VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含む、E1からE22のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%、58%、60%、63%、71%、72%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、抗体またはその抗原結合性断片。
【0037】
E24.配列番号166に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE23のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0038】
E25.配列番号166に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE24のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0039】
E26.配列番号166のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE25のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0040】
E27.配列番号163に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE26のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0041】
E28.配列番号163に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE27のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0042】
E29.配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE28のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0043】
E30.配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む、E1からE29のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0044】
E31.Fcドメインを含む、E1からE30のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0045】
E32.Fcドメインが、IgA(例えば、IgAまたはIgA)、IgD、IgE、IgMまたはIgG(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)のFcドメインである、E31に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0046】
E33.Fcドメインが、IgGのFcドメインである、E32に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0047】
E34.IgGが、IgG、IgG、IgGまたはIgGからなる群から選択される、E33に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0048】
E35.IgGがIgGである、E34に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0049】
E36.配列番号164に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE35のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0050】
E37.配列番号164に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE36のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0051】
E38.配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1からE37のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0052】
E39.配列番号162に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE38のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0053】
E40.配列番号162に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE39のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0054】
E41.配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE40のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0055】
E42.配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1からE41のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0056】
E43.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物によってコードされるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、E1からE42のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0057】
E44.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物によってコードされるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、E1からE43のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0058】
E45.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされる、E1からE44のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0059】
E46.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされる、E1からE45のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0060】
E47.ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、およびATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、を含む、E1からE46のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0061】
E48.Fc融合タンパク質、モノボディ(monobody)、マキシボディ(maxibody)、二機能性抗体、scFab、scFv、ペプチボディである、E1からE47のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0062】
E49.約10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pMおよび10pMからなる群から選択されるおよその値のKまたはその値未満のKで、ヒトGDF15に結合する、E1からE48に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0063】
E50.約10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pM、13pM、10pMおよび9pMからなる群から選択されるおよその値のKまたはその値未満のKで、カニクイザルGDF15に結合する、E1からE49に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0064】
E51.約8pMまたは9pMのKでカニクイザルGDF15に結合する、E1からE50に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0065】
E52.約8.28pMのKでカニクイザルGDF15に結合する、E1からE51に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0066】
E53.ヒトにおける終末相半減期が、少なくとも約16日間である、E1からE52のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0067】
E54.ヒトにおける終末相半減期が、少なくとも17日間である、E1からE53のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0068】
E55.t-レジトープ(t-regitope)(tReg)調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-24未満である、E1からE54に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0069】
E56.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-24、-26、-27、-30、-32、-33、-34、-35、-36、-37、-38、-39、-40、-41、-42、-43、-50および-51からなる群から選択されるtReg調整済スコア未満である、E1からE55に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0070】
E57.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-26、-34、-36、-41および-42からなる群から選択される、E1からE56に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0071】
E58.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-41または-42である、E1からE57に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0072】
E59.25℃で測定した場合に、少なくとも約10センチポアズ(cP)、少なくとも約15cP、少なくとも約20cP、少なくとも約40cPおよび少なくとも約70cPからなる群から選択される粘度を有する、E1からE58に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0073】
E60.25℃で測定した場合に、約20cPの粘度を有する、E1からE59に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0074】
E61.25℃で測定した場合に、20cPの粘度を有する、E1からE60に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0075】
E62.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約0.05と約0.10との間である、E1からE61に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0076】
E63.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約0.07である、E1からE62に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0077】
E64.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、0.07である、E1からE63に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0078】
E65.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約1.0と約1.5との間である、E1からE64に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0079】
E66.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約1.2である、E1からE65に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0080】
E67.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、1.21である、E1からE66に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0081】
E68.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約0.03と約0.09との間である、E1からE67に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0082】
E69.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、約0.04と0.08との間である、E1からE68に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0083】
E70.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、0.05と0.06との間である、E1からE69に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0084】
E71.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体または抗原結合性断片の結合Kの比が、0.05である、E1からE70に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【0085】
E72.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約71℃以上の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE71に記載の抗体。
【0086】
E73.示差走査熱量測定によって測定した場合に、71℃と72℃との間の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE72に記載の抗体。
【0087】
E74.示差走査熱量測定によって測定した場合に、71℃と72℃との間の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE73に記載の抗体。
【0088】
E75.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約80℃以上の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE74に記載の抗体。
【0089】
E76.示差走査熱量測定によって測定した場合に、80℃と86℃との間の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE75に記載の抗体。
【0090】
E77.示差走査熱量測定によって測定した場合に、84℃と85℃との間の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE76に記載の抗体。
【0091】
E78.示差走査熱量測定によって測定した場合に、約82℃以上の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE77に記載の抗体。
【0092】
E79.示差走査熱量測定によって測定した場合に、83℃と91℃との間の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE78に記載の抗体。
【0093】
E80.示差走査熱量測定によって測定した場合に、87℃と89℃との間の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE79に記載の抗体。
【0094】
E81.E1からE80のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0095】
E82.E1からE81のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0096】
E83.ヒトGDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分の、VL、VH、またはそれら両方をコードする単離された核酸分子であって、配列番号167の核酸配列、配列番号168の核酸配列、またはそれら両方を含む、単離された核酸分子。
【0097】
E84.配列番号167の核酸配列、配列番号168の核酸配列、またはそれら両方を含む、単離された核酸分子。
【0098】
E85.ヒトGDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分の、軽鎖、重鎖、またはそれら両方をコードする単離された核酸分子であって、配列番号169の核酸配列、配列番号170の核酸配列、またはそれら両方を含む、単離された核酸分子。
【0099】
E86.配列番号169の核酸配列、配列番号170の核酸配列、またはそれら両方を含む、単離された核酸分子。
【0100】
E87.配列番号167、168、169または170として示される配列からなる群から選択される少なくとも1つの核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0101】
E88.配列番号167として示される核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0102】
E89.配列番号168として示される核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0103】
E90.配列番号169として示される核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0104】
E91.配列番号170として示される核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0105】
E92.ヒトGDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0106】
E93.ヒトGDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0107】
E94.ヒトGDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性部分をコードする単離された核酸分子であって、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0108】
E95.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0109】
E96.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0110】
E97.ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【0111】
E98.E81からE97のいずれか1つに記載の核酸分子を含む、ベクター。
【0112】
E99.E81からE97のいずれか1つに記載の核酸分子またはE98に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【0113】
E100.哺乳動物細胞である、E99に記載の宿主細胞。
【0114】
E101.CHO細胞、HEK-293細胞、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞またはSp2.0細胞である、E100に記載の宿主細胞。
【0115】
E102.抗体またはその抗原結合性断片を作製する方法であって、E99からE101のいずれか1つに記載の宿主細胞を、前記抗体または抗原結合性断片が前記宿主細胞によって発現される条件下で培養するステップを含む、方法。
【0116】
E103.抗体またはその抗原結合性断片を単離するステップをさらに含む、E102に記載の方法。
【0117】
E104.E1からE80のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【0118】
E105.チオテパ、シクロホスファミド(CYTOXAN)、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン(piposulfan)、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、ウレドパ(uredopa)、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、トリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);ブラタシン、ブラタシノン(bullatacinone))、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL)、ベータ-ラパコン、ラパコール、コルヒチン、ベツリン酸、トポテカン(HYCAMTIN)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、9-アミノカンプトテシン、ブリオスタチン、ペメトレキセド、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む)、ポドフィロトキシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、テニポシド、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、TLK-286、CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimnustine)、エンジイン抗生物質(カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマおよびカリケアマイシンオメガlを含む)、ダイネミシン(dynemicin)、ダイネミシンA、エスペラミシン、ネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射(DOXIL)およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR)、テガフール(UFTORAL)、カペシタビン(XELODA)、エポチロン、5-フルオロウラシル(5-FU)、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、イマチニブ、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フォリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトレキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジコン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシン、アンサミトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン(ELDISINE、FILDESIN)、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、チオテパ、パクリタキセル(TAXOL)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE)、ドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE)、クロラムブシル、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン(VELBAN)、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン(ONCOVIN)、オキサリプラチン、ロイコボリン(leucovovin)、ビノレルビン(NAVELBINE)、ノバントロン、エダトレキセート、ダウノマイシン、アミノプテリン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylomithine)(DMFO)、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEXタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 1 1 7018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON)を含む)、抗プロゲステロン剤、エストロゲン受容体下方調節因子(ERD)、フルベストラント(FASLODEX)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(leutinizing hormone-releasing hormone)(LHRH)アゴニスト(酢酸リュープロリド(LUPRONおよびELIGARD)、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin)を含む)、抗アンドロゲン剤(フルタミド(fiutamide)、ニルタミドおよびビカルタミドを含む);アロマターゼ阻害剤(4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE)、エキセメスタン(AROMASIN)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RJVISOR)、レトロゾール(FEMARA)およびアナストロゾール(ARIMIDEX)を含む)、ビスホスホネート(クロドロネート(BONEFOSまたはOSTAC)、エチドロネート(DIDROCAL)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA)、アレンドロネート(FOSAMAX)、パミドロネート(AREDIA)、チルドロネート(SKELID)およびリセドロネート(ACTONEL)を含む)、トロキサシタビン、アンチセンスオリゴヌクレオチド(PKC-アルファ、Raf、H-Rasおよび上皮増殖因子受容体(EGF-R)を含む)、THERATOPEワクチン、遺伝子治療ワクチン(ALLOVECTINワクチン、LEUVECTINワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンを含む);トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN)、フルベストラント;イマチニブ、EXEL-0862、エルロチニブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イリノテカン(arinotecan)、rmRH(例えば、ABARELIX)、ラパチニブ、二トシル酸ラパチニブ(GW572016としても公知)、17AAG、イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、ボスチニブ(BOSULIF)、パルボシクリブ(IBRANCE)、アキシチニブ(INLYTA)、リンゴ酸スニチニブ(SUTENT)、クリゾチニブ(XALKORI)、エンザルタミド(XTANDI)ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩および/または酸もしくは誘導体のうち2つ以上の組み合わせ、を含む、E104に記載の組成物。
【0119】
E106.GDF15の活性を低減させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の実施形態E1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップ、および抗体の投与前のGDF15の活性を、投与後のGDF15活性のレベルと比較するステップ、を含み、それによって、GDF15の活性を低減させる、方法。
【0120】
E107.GDF15の活性が、
(a)GFRALの結合;
(b)食物摂取を減少させること;
(c)ボディマスを減少させること;
(d)筋肉量を減少させること;
(e)体脂肪量を減少させること;
(f)RETを活性化すること;
(g)ERKのリン酸化(pERK)を増加させること;および
(h)リボソームタンパク質S6(S6)のリン酸化を増加させること
(i)AKTのリン酸化を増加させること;
(j)MAPKのリン酸化を増加させること;および
(k)PLC-γ1のリン酸化を増加させること
からなる群から選択される、E106に記載の方法。
【0121】
E108.遊離GDF15のレベルの低減を必要とする対象において、遊離GDF15のレベルを低減させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の実施形態E1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0122】
E109.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、1ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0123】
E110.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.9ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0124】
E111.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.8ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0125】
E112.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.7ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0126】
E113.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.6ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0127】
E114.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.5ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0128】
E115.投与前の遊離GDF15のレベルが、投与後の遊離GDF15のレベルと比較され、用量および投薬レジメンが、0.4ng/mlを下回る遊離GDF15のレベルまで低減するように調整される、E108に記載の方法。
【0129】
E116.悪液質を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のE1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0130】
E117.悪液質が、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、慢性心不全、うっ血性心不全またはサルコペニアと関連する、E116に記載の方法。
【0131】
E118.がんが、固形腫瘍がん、膵がん、肺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がんまたは精巣がんである、E117に記載の方法。
【0132】
E119.化学療法が、チオテパ、シクロホスファミド(CYTOXAN)、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン(piposulfan)、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、ウレドパ(uredopa)、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、トリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);ブラタシン、ブラタシノン(bullatacinone))、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL)、ベータ-ラパコン、ラパコール、コルヒチン、ベツリン酸、トポテカン(HYCAMTIN)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、9-アミノカンプトテシン、ブリオスタチン、ペメトレキセド、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む)、ポドフィロトキシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、テニポシド、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、TLK-286、CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimnustine)、エンジイン抗生物質(カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマおよびカリケアマイシンオメガlを含む)、ダイネミシン(dynemicin)、ダイネミシンA、エスペラミシン、ネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射(DOXIL)およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR)、テガフール(UFTORAL)、カペシタビン(XELODA)、エポチロン、5-フルオロウラシル(5-FU)、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、イマチニブ、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フォリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトレキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジコン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシン、アンサミトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン(ELDISINE、FILDESIN)、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、チオテパ、パクリタキセル(TAXOL)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE)、ドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE)、クロラムブシル、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン(VELBAN)、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン(ONCOVIN)、オキサリプラチン、ロイコボリン(leucovovin)、ビノレルビン(NAVELBINE)、ノバントロン、エダトレキセート、ダウノマイシン、アミノプテリン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylomithine)(DMFO)、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEXタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 1 1 7018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON)を含む)、抗プロゲステロン剤、エストロゲン受容体下方調節因子(ERD)、フルベストラント(FASLODEX)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(leutinizing hormone-releasing hormone)(LHRH)アゴニスト(酢酸リュープロリド(LUPRONおよびELIGARD)、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin)を含む)、抗アンドロゲン剤(フルタミド(fiutamide)、ニルタミドおよびビカルタミドを含む);アロマターゼ阻害剤(4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE)、エキセメスタン(AROMASIN)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RJVISOR)、レトロゾール(FEMARA)およびアナストロゾール(ARIMIDEX)を含む)、ビスホスホネート(クロドロネート(BONEFOSまたはOSTAC)、エチドロネート(DIDROCAL)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA)、アレンドロネート(FOSAMAX)、パミドロネート(AREDIA)、チルドロネート(SKELID)およびリセドロネート(ACTONEL)を含む)、トロキサシタビン、アンチセンスオリゴヌクレオチド(PKC-アルファ、Raf、H-Rasおよび上皮増殖因子受容体(EGF-R)を含む)、THERATOPEワクチン、遺伝子治療ワクチン(ALLOVECTINワクチン、LEUVECTINワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンを含む);トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN)、フルベストラント;イマチニブ、EXEL-0862、エルロチニブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イリノテカン(arinotecan)、rmRH(例えば、ABARELIX)、ラパチニブ、二トシル酸ラパチニブ(GW572016としても公知)、17AAG、イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、ボスチニブ(BOSULIF)、パルボシクリブ(IBRANCE)、アキシチニブ(INLYTA)、リンゴ酸スニチニブ(SUTENT)、クリゾチニブ(XALKORI)、エンザルタミド(XTANDI)ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩および/または酸もしくは誘導体のうち2つ以上の組み合わせ、である、E117またはE118に記載の方法。
【0133】
E120.化学療法が白金ベースの化学療法である、E119に記載の方法。
【0134】
E121.対象がヒトである、E106からE120のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
E122.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を皮下投与するステップを含む、E106からE121のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
E123.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を静脈内投与するステップを含む、E106からE122のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
E124.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、または4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、7ヶ月毎に1回、8ヶ月毎に1回、9ヶ月毎に1回、10ヶ月毎に1回、11ヶ月毎に1回または12ヶ月毎に1回投与される、E106からE123のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
E125.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約60mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E106からE124のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
E126.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mgと約50mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E106からE125のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
E127.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgからなる群から選択される用量で、1週間に1回投与される、E106からE126のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
E128.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約130mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E106からE124のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
E129.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mgと約125mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E106からE124またはE128のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
E130.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mgおよび約125mgからなる群から選択される用量で、2週間毎に1回投与される、E106からE124またはE128からE129のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
E131.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約400mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E106からE124のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
E132.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mgと約385mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E106からE124またはE131のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
E133.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mgおよび約385mgからなる群から選択される用量で、4週間毎に1回投与される、E106からE124またはE131からE132のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
E134.医薬としての使用のための、E1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物。
【0148】
E135.対象においてGDF15の活性を低減させる際の使用のための、E1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物。
【0149】
E136.GDF15の活性を低減させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
a)配列番号177のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列ならびに配列番号178のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列、もしくは
b)配列番号177のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号178のアミノ酸配列を含むVL
を含む抗体またはその抗原結合性断片
を投与するステップ、ならびに
抗体の投与前のGDF15の活性を、投与後のGDF15活性のレベルと比較するステップ
を含み、それによって、GDF15の活性を低減させる、方法。
【0150】
E137.GDF15の活性を低減させる方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
a)配列番号177のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列;配列番号178のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む抗体もしくはその抗原結合性断片;ならびに薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤を含む、医薬組成物、または
b)配列番号177のアミノ酸配列を含むVH;配列番号178のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片;および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物
を構成する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、それによって、GDF15の活性を低減させる、方法。
【0151】
E138.GDF15の活性が、
(a)GFRALの結合;
(b)食物摂取を減少させること;
(c)ボディマスを減少させること;
(d)筋肉量を減少させること;
(e)体脂肪量を減少させること;
(f)RETを活性化すること;
(g)ERKのリン酸化(pERK)を増加させること;および
(h)リボソームタンパク質S6(S6)のリン酸化を増加させること
(i)AKTのリン酸化を増加させること;
(j)MAPKのリン酸化を増加させること;および
(k)PLC-γ1のリン酸化を増加させること
からなる群から選択される、E137に記載の方法。
【0152】
E139.悪液質を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
a)配列番号177のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列ならびに配列番号178のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列、もしくは
b)配列番号177のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号178のアミノ酸配列を含むVL
を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0153】
E140.悪液質を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
a)配列番号177のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列;配列番号178のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む抗体もしくはその抗原結合性断片;ならびに薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤を含む、医薬組成物、または
b)配列番号177のアミノ酸配列を含むVH;配列番号178のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体またはその抗原結合性断片;および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物
を構成する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0154】
E141.悪液質が、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、慢性心不全、うっ血性心不全またはサルコペニアと関連する、E139またはE140に記載の方法。
【0155】
E142.がんが、固形腫瘍がん、膵がん、肺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がんまたは精巣がんである、E141に記載の方法。
【0156】
E143.化学療法が、チオテパ、シクロホスファミド(CYTOXAN)、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン(piposulfan)、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、ウレドパ(uredopa)、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、トリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);ブラタシン、ブラタシノン(bullatacinone))、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL)、ベータ-ラパコン、ラパコール、コルヒチン、ベツリン酸、トポテカン(HYCAMTIN)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、9-アミノカンプトテシン、ブリオスタチン、ペメトレキセド、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む)、ポドフィロトキシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、テニポシド、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、TLK-286、CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimnustine)、エンジイン抗生物質(カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマおよびカリケアマイシンオメガlを含む)、ダイネミシン(dynemicin)、ダイネミシンA、エスペラミシン、ネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射(DOXIL)およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR)、テガフール(UFTORAL)、カペシタビン(XELODA)、エポチロン、5-フルオロウラシル(5-FU)、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、イマチニブ、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フォリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトレキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジコン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシン、アンサミトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン(ELDISINE、FILDESIN)、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、チオテパ、パクリタキセル(TAXOL)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE)、ドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE)、クロラムブシル、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン(VELBAN)、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン(ONCOVIN)、オキサリプラチン、ロイコボリン(leucovovin)、ビノレルビン(NAVELBINE)、ノバントロン、エダトレキセート、ダウノマイシン、アミノプテリン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylomithine)(DMFO)、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEXタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 1 1 7018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON)を含む)、抗プロゲステロン剤、エストロゲン受容体下方調節因子(ERD)、フルベストラント(FASLODEX)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(leutinizing hormone-releasing hormone)(LHRH)アゴニスト(酢酸リュープロリド(LUPRONおよびELIGARD)、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin)を含む)、抗アンドロゲン剤(フルタミド(fiutamide)、ニルタミドおよびビカルタミドを含む);アロマターゼ阻害剤(4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE)、エキセメスタン(AROMASIN)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RJVISOR)、レトロゾール(FEMARA)およびアナストロゾール(ARIMIDEX)を含む)、ビスホスホネート(クロドロネート(BONEFOSまたはOSTAC)、エチドロネート(DIDROCAL)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA)、アレンドロネート(FOSAMAX)、パミドロネート(AREDIA)、チルドロネート(SKELID)およびリセドロネート(ACTONEL)を含む)、トロキサシタビン、アンチセンスオリゴヌクレオチド(PKC-アルファ、Raf、H-Rasおよび上皮増殖因子受容体(EGF-R)を含む)、THERATOPEワクチン、遺伝子治療ワクチン(ALLOVECTINワクチン、LEUVECTINワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンを含む);トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN)、フルベストラント;イマチニブ、EXEL-0862、エルロチニブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イリノテカン(arinotecan)、rmRH(例えば、ABARELIX)、ラパチニブ、二トシル酸ラパチニブ(GW572016としても公知)、17AAG、イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、ボスチニブ(BOSULIF)、パルボシクリブ(IBRANCE)、アキシチニブ(INLYTA)、リンゴ酸スニチニブ(SUTENT)、クリゾチニブ(XALKORI)、エンザルタミド(XTANDI)ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩および/または酸もしくは誘導体のうち2つ以上の組み合わせ、である、E141またはE142に記載の方法。
【0157】
E144.化学療法が白金ベースの化学療法である、E141に記載の方法。
【0158】
E145.対象がヒトである、E136からE144のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
E146.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を皮下投与するステップを含む、E136からE145のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
E147.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を静脈内投与するステップを含む、E136からE146のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
E148.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、または4ヶ月毎に1回投与される、E136からE147のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
E149.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約60mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E136からE148のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
E150.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mgと約50mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E136からE149のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
E151.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgからなる群から選択される用量で、1週間に1回投与される、E136からE150のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
E152.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約130mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E136からE148のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
E153.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mgと約125mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E136からE148またはE152のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
E154.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mgおよび約125mgからなる群から選択される用量で、2週間毎に1回投与される、E136からE148またはE152からE153のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
E155.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約400mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E136からE148のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
E156.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mgと約385mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E136からE148またはE155のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
E157.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mgおよび約385mgからなる群から選択される用量で、4週間毎に1回投与される、E136からE148またはE155からE156のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
E158.血漿中の遊離GDF15のレベルの低減を必要とする対象の血漿中の遊離GDF15のレベルを低減させる方法であって、E1からE80のいずれか1つに記載の抗体またはE104からE105のいずれか1つに記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【0172】
E159.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、約0.05ng/mL~約3ng/mL内に低減される、E106からE108またはE116からE158のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
E160.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、約0.1ng/mL~約1ng/mL内に低減される、E106からE108またはE116からE159のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
E161.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、約0.4ng/mL~約0.8ng/mL内に低減される、E106からE108またはE116からE160のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
E162.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、0.5ng/mlを下回るまで低減される、E106からE114またはE116からE158のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
E163.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、0.4ng/mlを下回るまで低減される、E106からE158またはE162のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
E164.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、その下限値が、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9ng/mLからなる群から選択され、その上限値が、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9および3.0ng/mLからなる群から選択される範囲まで低減される、E106からE108またはE116からE158のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
E165.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、約0.5ng/mL未満まで低減される、E106からE114またはE116からE158に記載の方法。
【0179】
E166.対象の血漿中の遊離GDF15のレベルが、血漿中の遊離GDF15を検出するための当該分野で公知のアッセイを使用した検出の最も低いレベルを超えて低減される、E106からE165のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
E167.E1からE80に記載の抗体またはその抗原結合性断片、PD-1軸結合性アンタゴニスト、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【0181】
E168.E1からE80に記載の抗体またはその抗原結合性断片、PD-1軸結合性アンタゴニスト、および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物であって、ただし、PD-1軸結合性アンタゴニストがアベルマブではない、医薬組成物。
【0182】
E169.がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPD-1軸結合性アンタゴニスト、および一定量のE1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、または一定量のE167からE168に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、がんを処置する際に有効である、方法。
【0183】
E170.がんを処置する方法であって、それを必要とする患者に、一定量のPD-1軸結合性アンタゴニスト、および一定量のE1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、または一定量のE167から169に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、がんを処置する際に有効であり、PD-1軸結合性アンタゴニストがアベルマブではない、方法。
【0184】
E171.それらの量が一緒になって、がんを処置する際に相乗的治療効果を提供する、E169からE170に記載の方法。
【0185】
E172.PD-1軸結合性アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、E169に記載の方法。
【0186】
E173.PD-1軸結合性アンタゴニストが、抗PD-L1抗体であり、ただし、抗PD-L1抗体がアベルマブではない、E169に記載の方法。
【0187】
E174.PD-L1抗体が、アベルマブ、アテゾリズマブまたはデュルバルマブからなる群から選択される、E172に記載の方法。
【0188】
E175.PD-L1抗体が、アテゾリズマブまたはデュルバルマブである、E172に記載の方法。
【0189】
E176.PD-1軸結合性アンタゴニストが、アベルマブであり、約10mg/kg Q2Wまたは約800mg Q2Wの量で静脈内投与される、E172に記載の方法。
【0190】
E177.PD-1軸結合性アンタゴニストが、抗PD-1抗体である、E168に記載の方法。
【0191】
E178.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレチズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびササンリマブ(PF-06801591、RN888、mAb7)からなる群から選択される、E177に記載の方法。
【0192】
E179.PD-1軸結合性アンタゴニストが、ササンリマブであり、約300mg Q4Wまたは約600mg Q6Wの量で皮下投与される、E178に記載の方法。
【0193】
E180.がんが、黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、メルケル細胞癌、卵巣がん、乳がん、膵がん、尿路上皮がんおよび去勢抵抗性前立腺がんからなる群から選択される、E170からE180のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
E181.がんが腎細胞癌である、E180に記載の方法。
【0195】
E182.がんが膵がんである、E181に記載の方法。
【0196】
E183.E1からE80のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合性部分を使用して、サンプル、組織または細胞中のGDF15を検出する方法であって、サンプル、組織または細胞を抗体と接触させるステップおよび抗体を検出するステップを含む、方法。
【0197】
E184.がんの処置を必要とする患者において、がんを処置するための方法であって、患者に、相乗的治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニストおよび相乗的治療有効量のGDF15阻害剤を含む組み合わせ治療を投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、相乗的治療効果を提供し、それによって、がんを処置する、方法。
【0198】
E185.がんの処置を必要とする患者において、がんを処置する方法であって、患者に、相乗的治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニストおよび相乗的治療有効量のGDF15阻害剤を含む組み合わせ治療を投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、相乗的治療効果を提供し、それによって、がんを処置し、PD-1軸結合性アンタゴニストがアベルマブではない、方法。
【0199】
E186.GDF15阻害剤が、E1からE80のいずれかに記載の抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片である、E184からE185に記載の方法。
【0200】
E187.抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片が、
a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
b)配列番号28のaa配列を含むLCDR-2;
c)配列番号9のaa配列を含むLCDR-3;
d)配列番号32のaa配列を含むHCDR-1;
e)配列番号165のaa配列を含むHCDR-2;および
f)配列番号52のaa配列を含むHCDR-3
を含む、E186に記載の方法。
【0201】
E188.PD-1軸結合性アンタゴニストが、PD-1に特異的に結合する抗体であって、
a)配列番号216アミノ酸配列を含むLCDR-1;
b)配列番号217のaa配列を含むLCDR-2;
c)配列番号218のaa配列を含むLCDR-3;
d)配列番号210のaa配列を含むHCDR-1;
e)配列番号213のaa配列を含むHCDR-2;および
f)配列番号215のaa配列を含むHCDR-3
を含む抗体である、E187に記載の方法。
【0202】
E189.PD-1軸結合性アンタゴニストが、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、チスレチズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびササンリマブ(PF-06801591)からなる群から選択される抗PD-1抗体である、E186に記載の方法。
【0203】
E190.抗PD-1抗体が、ササンリマブ(PF-06801591)である、E188からE189に記載の方法。
【0204】
E191.PD-1軸結合性アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、E186に記載の方法。
【0205】
E192.ササンリマブが、約300mg Q4Wまたは約600mg Q6Wの量で皮下投与される、E190に記載の方法。
【0206】
E.193.PD-L1抗体が、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、BMS-936559、MEDI4736およびMPDL3280Aからなる群から選択される、E191に記載の方法。
【0207】
E194.抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む、E187に記載の方法。
【0208】
E195.抗GDF15抗体が、配列番号164のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む、E194に記載の方法。
【0209】
E196.抗PD-1抗体が、配列番号197のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号199のアミノ酸配列を含むLCを含む、E195に記載の方法。
【0210】
E197.がんが、黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、メルケル細胞癌、卵巣がん、乳がん、膵がん、尿路上皮がんおよび去勢抵抗性前立腺がんからなる群から選択される、E184-E196に記載の方法。
【0211】
E198.がんが、腎細胞癌または膵がんである、E184からE197に記載の方法。
【0212】
E199.相乗的治療有効量の抗PD-1抗体および相乗的治療有効量の抗GDF15抗体を含む、がんの処置のためのキット。
【0213】
E200.がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のE1からE80のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0214】
E201.がんが、例えば、限定なしに、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、神経膠芽腫、神経膠腫、脳腫瘍、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、肝臓がん、子宮がん、骨がん、白血病、リンパ腫、肉腫、血液がん、甲状腺がん、胸腺がん、眼がんおよび皮膚がんである、E200に記載の方法。
【0215】
E202.1つ以上のさらなる治療剤を投与するステップをさらに含む、E200またはE201に記載の方法。
【0216】
E203.さらなる治療剤が、化学療法、ワクチン、CAR-T細胞ベースの治療、放射線療法、サイトカイン治療、ワクチン、二重特異性抗体、他の免疫抑制経路の阻害剤、血管新生の阻害剤、T細胞活性化因子、代謝経路の阻害剤、mTOR阻害剤、アデノシン経路の阻害剤、INLYTA、ALK阻害剤およびスニチニブが含まれるがこれらに限定されないチロシンキナーゼ阻害剤、BRAF阻害剤、エピジェネティック修飾因子、Treg細胞および/または骨髄系由来サプレッサー細胞の阻害剤または枯渇因子、JAK阻害剤、STAT阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、生物治療剤(VEGF、VEGFR、EGFR、Her2/neu、他の増殖因子受容体、CD20、CD40、CD-40L、CTLA-4、OX-40、4-1BBおよびICOSに対する抗体が含まれるがこれらに限定されない)、免疫原性剤(例えば、減弱されたがん性細胞、腫瘍抗原、抗原提示細胞、例えば、腫瘍由来の抗原または核酸でパルスした樹状細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、例えばGM-CSFであるがこれに限定されない免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞)、STINGアゴニストならびにtoll様受容体(例えば、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9)アゴニストから選択される、E202に記載の方法。
【0217】
E204.さらなる治療剤が、抗CD40抗体である、E202に記載の方法。
【0218】
E205.化学療法が、チオテパ、シクロホスファミド(CYTOXAN)、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン(piposulfan)、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、ウレドパ(uredopa)、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、トリメチロールメラミン(trimethylolomelamine);ブラタシン、ブラタシノン(bullatacinone))、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL)、ベータ-ラパコン、ラパコール、コルヒチン、ベツリン酸、トポテカン(HYCAMTIN)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、9-アミノカンプトテシン、ブリオスタチン、ペメトレキセド、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成アナログを含む)、ポドフィロトキシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、テニポシド、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、TLK-286、CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimnustine)、エンジイン抗生物質(カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマおよびカリケアマイシンオメガlを含む)、ダイネミシン(dynemicin)、ダイネミシンA、エスペラミシン、ネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射(DOXIL)およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR)、テガフール(UFTORAL)、カペシタビン(XELODA)、エポチロン、5-フルオロウラシル(5-FU)、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、イマチニブ、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フォリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン(bisantrene)、エダトレキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジコン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシン、アンサミトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン(ELDISINE、FILDESIN)、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、チオテパ、パクリタキセル(TAXOL)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE)、ドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE)、クロラムブシル、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン(VELBAN)、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン(ONCOVIN)、オキサリプラチン、ロイコボリン(leucovovin)、ビノレルビン(NAVELBINE)、ノバントロン、エダトレキセート、ダウノマイシン、アミノプテリン、イバンドロネート、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylomithine)(DMFO)、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEXタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 1 1 7018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON)を含む)、抗プロゲステロン剤、エストロゲン受容体下方調節因子(ERD)、フルベストラント(FASLODEX)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(leutinizing hormone-releasing hormone)(LHRH)アゴニスト(酢酸リュープロリド(LUPRONおよびELIGARD)、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin)を含む)、抗アンドロゲン剤(フルタミド(fiutamide)、ニルタミドおよびビカルタミドを含む);アロマターゼ阻害剤(4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE)、エキセメスタン(AROMASIN)、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール(RJVISOR)、レトロゾール(FEMARA)およびアナストロゾール(ARIMIDEX)を含む)、ビスホスホネート(クロドロネート(BONEFOSまたはOSTAC)、エチドロネート(DIDROCAL)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA)、アレンドロネート(FOSAMAX)、パミドロネート(AREDIA)、チルドロネート(SKELID)およびリセドロネート(ACTONEL)を含む)、トロキサシタビン、アンチセンスオリゴヌクレオチド(PKC-アルファ、Raf、H-Rasおよび上皮増殖因子受容体(EGF-R)を含む)、THERATOPEワクチン、遺伝子治療ワクチン(ALLOVECTINワクチン、LEUVECTINワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンを含む);トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN)、フルベストラント;イマチニブ、EXEL-0862、エルロチニブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イリノテカン(arinotecan)、rmRH(例えば、ABARELIX)、ラパチニブ、二トシル酸ラパチニブ(GW572016としても公知)、17AAG、イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、ボスチニブ(BOSULIF)、パルボシクリブ(IBRANCE)、アキシチニブ(INLYTA)、リンゴ酸スニチニブ(SUTENT)、クリゾチニブ(XALKORI)、エンザルタミド(XTANDI)ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩および/または酸もしくは誘導体のうち2つ以上の組み合わせ、である、E203に記載の方法。
【0219】
E206.化学療法が白金ベースの化学療法である、E203に記載の方法。
【0220】
E207.対象がヒトである、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
E208.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を皮下投与するステップを含む、E200からE207のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
E209.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物を静脈内投与するステップを含む、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
E210.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、または4ヶ月毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
E211.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約60mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
E212.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mgと約50mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
E213.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgからなる群から選択される用量で、1週間に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
E214.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約130mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
E215.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mgと約125mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
E216.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mgおよび約125mgからなる群から選択される用量で、2週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
E217.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約0.1mgと約400mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
E218.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mgと約385mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
E219.抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物が、約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mgおよび約385mgからなる群から選択される用量で、4週間毎に1回投与される、E200からE206のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
E220.がんの処置を必要とする対象において、がんを処置する方法であって、治療有効量のE1からE80に記載の抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0234】
E221.対象に、有効量の1つ以上のさらなる治療剤を投与するステップをさらに含む、E220に記載の方法。
【0235】
E222.さらなる治療剤が、抗CD40抗体またはその抗原結合性断片である、E221に記載の方法。
【0236】
E223.がんが、胃がん(gastric cancer)、肉腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫からなる群から選択される、E220からE222のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
E224.対象がヒトである、E220から223のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
E225.がんの処置のために対象に投与される免疫モジュレーターの治療効果を増強するための方法であって、免疫モジュレーターを受けている対象に、有効量のE1からE80に記載の抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0239】
E226.がんが、乳がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、神経膠腫、神経膠芽腫、腎がん、子宮内膜がんおよび結腸直腸がんからなる群から選択される、E225に記載の方法。
【0240】
E227.サイトカイン放出症候群(CRS)の処置または予防を必要とする対象において、CRSを処置または予防するための方法であって、対象に、有効量のE1からE80に記載の抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、それによって、対象においてCRSを処置または予防する、方法。
【0241】
E228.サイトカイン放出症候群(CRS)もしくはサイトカインストームを経験しているまたはサイトカイン放出症候群もしくはサイトカインストームに対して脆弱な対象において、毒性を減少させるまたは阻害する方法であって、対象に、有効量のE1からE80に記載の抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片またはE104もしくはE105に記載の医薬組成物を投与することを含む、組成物を投与するステップを含む、方法。
【0242】
E229.少なくとも1つの炎症促進性サイトカインの産生が、サイトカイン放出症候群もしくはサイトカインストームを経験しているまたはサイトカイン放出症候群もしくはサイトカインストームに対して脆弱であり、E1からE80に記載の抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片もE104またはE105に記載の医薬組成物も投与されていない対象と比較して、上記対象において減少または阻害される、E227またはE228に記載の方法。
【0243】
E230.対象が、がん治療を受けており、上記方法が、がん治療の効力を低減させない、E227からE229のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
E231.がん治療が、免疫モジュレーターを含む、E230に記載の方法。
【0245】
E232.抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片の投与が、がん治療の前に、それと同時発生的に、またはその後に行われる、E230またはE231に記載の方法。
【0246】
E233.免疫モジュレーターが、抗CD40抗体、抗CD47抗体、抗CTLA4抗体、抗4-1BB/CD137抗体、インターロイキン12(IL-12)またはIL-15である、E231からE232のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
E234.CRSまたはサイトカインストームの原因が、感染性刺激、状態もしくは症候群を含み、またはサイトカイン放出症候群もしくはサイトカインストームの原因が、非感染性刺激、状態もしくは症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む、E228からE233のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
E235.感染性刺激、状態または症候群が、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタイン・バーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、エボラウイルス、痘瘡ウイルス、全身性グラム陰性細菌感染症もしくはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群を含み、または非感染性刺激、状態もしくは症候群が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、孤発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、スチル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(Muckle-Well Syndrome)(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(Chronic
Infantile Neurological Cutaneous and, Articular)(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性もしくはde novo機能獲得型変異を含むクリオピリノパチー(cryopyrinopathy)、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重症熱傷、外傷、急性呼吸窮迫症候群、免疫療法、モノクローナル抗体治療、薬物使用に対して二次的、毒素の吸入に対して二次的、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、またはRIG-1遺伝子発現のモジュレーションを含む、E234に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0249】
図1-1】図1Aは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T1)を示すグラフを示す。T1は、抗体のC2が50%折り畳まれていない温度を示す。
図1-2】図1Bは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T2)を示すグラフを示す。T2は、抗体のFabが50%折り畳まれていない温度を示す。
図1-3】図1Cは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T3)を示すグラフを示す。T3は、抗体のC3が50%折り畳まれていない温度を示す。
図2図2は、Anton Parr機器によって分析した、GDF15_001の粘度を示す。許容できる粘度限界(20cP)には、約140mg/mlにおいて到達する。
図3図3は、健康な雄性C57Bl6Nマウスにおけるアデノ随伴ウイルス(AAV)-ヒトGDF15注射後のヒト血漿GDF15濃度を示す。血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems DGD150)を介して、AAV注射の13日後および14日後(図3の-2日目および-1日目に対応する)に測定した。水平線は、平均を示す。1群当たりn=9。
図4図4は、健康なマウスにおいてGDF15誘導性の体重減少を逆転するGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、AAV-ヒトGDF15注射のタイミング(-15日目)および最初のモノクローナル抗体(mAb)用量のタイミング(0日目)を指す。健康な雄性C57Bl6Nマウスを、GDF15_001(30mg/kg、皮下(SC)、3日毎(Q3D))または免疫グロブリンG(IgG)対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=8。自己回帰(1)共分散構造を用いた反復測定ANOVAを使用して、投薬期間の4~6日目にわたる処置群間のベースライン体重からのパーセント変化を比較した。Tukey-Kramer多重比較調整を使用して、反復測定分散分析(ANOVA)における処置群比較のために実験ワイズ(experiment-wise)エラー率を制御した。*は、対照+IgG(4~6日目)に対してp<0.0001であり;†は、GDF15+GDF15_001(4~6日目)に対してp<0.0001である。
図5図5は、GDF15誘導性の脂肪組織量喪失を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。健康な雄性C57Bl6Nマウスに、-15日目にAAV-ヒトGDF15を注射し、その後、0日目に開始する最初のmAb用量が続いた。GDF15_001(30mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、6日間継続した。身体組成を、磁気共鳴画像化(MRI)を介して、6日目に測定した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=8。ANOVAを用いて実施した統計分析。*は、対照+IgGに対してp<0.0001であり、†は、GDF15+GDF15_001に対してp<0.01である。
図6図6は、GDF15誘導性の除脂肪組織量喪失を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。健康な雄性C57BL6Nマウスに、-15日目にAAV-ヒトGDF15を注射し、その後、0日目に開始する最初のmAb用量が続いた。GDF15_001(30mg/kg、皮下、3日毎)またはIgG対照によるmAb処置を、6日間継続した。身体組成を、MRIを介して6日目に測定した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=8。ANOVAを用いて実施した統計分析。*は、対照+IgGに対してp<0.01であり;†は、GDF15+GDF15_001に対してp<0.01である。
図7図7は、健康な雄性C57Bl6NマウスにおけるAAV-マウスGDF15注射後のマウス血漿GDF15濃度を示すグラフを示す。血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems MGD150)を介して、AAV注射の9日後(図5の9日目に対応する)に測定した。水平線は、平均を示す。1群当たりn=6。平均血漿GDF15レベルを、不等分散についてSatterthwaite調整を使用するt検定を用いて、処置間で比較した。*は、対照に対してp<0.001である。
図8図8は、健康なマウスにおいてGDF15誘導性の体重減少を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、AAV-マウスGDF15注射のタイミング(0日目)および最初のmAb用量のタイミング(11日目)を指す。健康な雄性C57Bl6Nマウスを、GDF15_001(30mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=10。無構造の共分散構造を用いた反復ANOVAを使用して、投薬期間の12~16日目にわたる処置群間のベースライン体重のパーセントを比較した。統計的に有意な処置×時間相互作用の存在下で、処置群間の比較を、完全無作為化設計に適切なANOVAを使用して、ベースライン体重のパーセントについて16日目に実施した。*は、16日目の対照+IgGに対してp<0.0001であり、†は、16日目のhGDF15+PF-06946860に対してp<0.0001である。
図9図9は、健康なマウスにおいてGDF15処置後に食物摂取を増加させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。健康な雄性C57Bl6Nマウスを、GDF15_001(30mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。食物摂取を毎日測定し、累積食物摂取を計算した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=8~10。Bonferroni多重比較調整を使用するANOVAを、11~16日目にわたる累積食物摂取の処置群比較のために使用した。*は、対照+IgGに対してp<0.001であり、†は、対照+GDF15_001に対してp<0.001であり、GDF15+GDF15_001 対 GDF15+IgGでp=0.0505である。
図10図10は、HT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおいて体重減少を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、HT-1080細胞皮下埋め込みのタイミング(-13日目)および最初のmAb用量のタイミング(0日目)を指す。雌性重症複合免疫不全マウスを、GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=9~10。自己回帰(1)共分散構造を用いた反復測定ANOVAを使用して、投薬期間の9~11日目(このとき、疾患は安定化されており、動物は、体重減少に起因して脱落し始めてはいなかった)にわたる処置群間のベースライン体重からのパーセント変化を比較した。*=HT-1080+IgG 対 NTB+PBSおよびHT-1080+GDF15_001(9~11日目)でp<0.0001。
図11図11は、HT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおいて体脂肪量喪失を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、-13日目にHT-1080細胞を(皮下で)埋め込み、その後、0日目に開始する最初のmAb用量が続いた。GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、18日間継続した。身体組成を、echo MRIを介して18日目に測定した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=9~10。ANOVAを用いて実施した統計分析。*=HT-1080+IgG 対 NTB+PBSおよびHT-1080+GDF15_001でp<0.0001。
図12図12は、HT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおいて無腫瘍除脂肪組織量喪失を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、-13日目にHT-1080細胞を(皮下で)埋め込み、その後、0日目に開始する最初のmAb用量が続いた。GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、18日間継続した。身体組成を、echo MRIを介して18日目に測定した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=9~10。ANOVAを用いて実施した統計分析。*=HT-1080+IgG 対 NTB+PBSでp<0.001、†=HT-1080+IgG 対 HT-1080+GDF15_001でp<0.0001。
図13図13は、HT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおいて生存を延長させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、-13日目にHT-1080細胞を(皮下で)埋め込み、その後、0日目に開始する最初のmAb用量が続いた。GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、死亡または安楽死(Institutional Animal Care and Use Committeeガイドラインに従う不健康および/または>30%の体重減少によって決定される)まで継続した。1群当たりn=9~10。Kaplan-Meier生存曲線を、ログランク統計量を使用して生存時間(failure-time)データにフィットさせて、処置群を比較した。は、HT-1080+GDF15_001群に対してp<0.0001である。
図14図14は、中立温度環境(thermoneutrality)(86°F)で収容したHT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおけるヒト血漿GDF15濃度を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、-13日目にHT-1080細胞を(皮下で)埋め込み、その後、0日目に開始する最初のmAb(IgG対照、10mg/kg、SC、Q3D)用量が続いた。血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems DGD150)を介して18日目に測定した。水平線は、平均を示す。n=7。
図15図15は、中立温度環境(86°F)で収容したHT-1080(ヒト線維肉腫細胞株)腫瘍保有マウスにおいて体重減少を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、HT-1080細胞皮下埋め込みのタイミング(-13日目)および最初のmAb用量のタイミング(0日目)を指す。雌性重症複合免疫不全マウスを、GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=10。無構造の共分散構造を用いた反復測定ANOVAを使用して、投薬期間の1~13日目にわたる処置群間のベースライン体重のパーセントを比較し、その後、ANOVAを使用する7日目および13日目における処置群間の比較が続いた。次いで、処置群間の目的の比較を、ANOVAからのプールした分散推定値を使用するt検定を用いて試験した。Bonferroni多重比較調整を使用して、処置群比較についての実験ワイズエラー率を制御した。*=NTB+IgGおよびHT-1080+GDF15_001(7日目および13日目)に対してp<0.0001。
図16図16は、PA-0165(ヒト膵腫瘍肝臓転移に由来する)腫瘍保有マウスにおけるヒト血漿GDF15濃度を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、-18日目にPA-0165腫瘍組織を(皮下で)埋め込み、その後、0日目に開始する最初のmAb(IgG対照、10mg/kg、SC、Q3D)用量が続いた。血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems DGD150)を介して、27日目に測定した。水平線は、平均を示す。n=14。
図17図17は、PA-0165(ヒト膵腫瘍肝臓転移に由来する)腫瘍保有マウスにおいて体重減少を予防するGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、PA-0165腫瘍組織皮下埋め込みのタイミング(-18日目)および最初のmAb用量のタイミング(0日目)を指す。雌性重症複合免疫不全マウスを、GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=10~17。無構造の共分散構造を用いた反復測定分散分析を使用して、投薬期間の10~16日目にわたる処置群間のベースライン体重のパーセントを比較した。統計的に有意な処置×時間相互作用の存在下で、処置群間の比較を、反復測定ANOVAからのプールした分散推定値を使用するt検定を用いて16日目に実施した。Bonferroni多重比較調整を使用して、処置群比較についての実験ワイズエラー率を制御した。*=NTB+PBSおよびPA-0165+GDF15_001に対してp<0.0001。
図18図18は、PA-0165(ヒト膵腫瘍肝臓転移に由来する)腫瘍保有マウスにおいて生存を延長させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、0日目に開始する最初のmAb用量の18日前に、PA-0165腫瘍組織を(皮下で)埋め込んだ。GDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、死亡または安楽死(Institutional Animal Care and Use Committeeガイドラインに従う不健康および/または>30%の体重減少によって決定される)まで継続した。1群当たりn=17。Kaplan-Meier生存曲線を、ログランク統計量を使用して生存時間データにフィットさせて、処置群間の生存率を比較した。は、PA-0165+GDF15_001に対してp<0.01である。
図19図19は、中立温度環境(86°F)におけるRENCA(マウス腎腺癌細胞株)腫瘍保有マウスにおけるマウス血漿GDF15濃度を示すグラフを示す。雌性Balb/cマウスに、RENCA細胞を(皮下で)埋め込み、血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems MGD150)を介して、研究の終了時(図17に対応する)に測定した。値は、平均である。1群当たりn=10~12。異質分散についてKenward-Roger調整を用いたANOVAを、Tukey-Kramer多重比較調整を使用して、処置群間の累積食物摂取および自然対数変換した血漿GDF15比較のために使用して、実験ワイズエラー率を制御した。幾何平均を、自然対数変換したGDF15平均および95%信頼区間推定値について生成した。全ての応答変数を、Shapiro-Wilks TestおよびQ-Q Plotsを用いて、正規性の仮定を満たすかどうかについて評価した。*は、NTB+ビヒクルとはp<0.0001異なり、‡は、NTB+ソラフェニブとはp<0.0001異なり、†は、RENCA+ソラフェニブ+IgGに対してp<0.01である。
図20図20は、抗がん剤で処置し、中立温度環境(86°F)で収容したRENCA(マウス腎腺癌細胞株)腫瘍保有マウスにおいて体重減少を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、RENCA細胞皮下埋め込みのタイミング(-12日目)、最初のソラフェニブ用量のタイミング(-2日目)および最初のmAb用量のタイミング(0日目)を指す。雌性Balb/cマウスを、ソラフェニブ(15mg/kg、PO、QD)およびGDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=10~12。異質自己回帰(1)共分散構造を用いた反復測定ANOVAを使用して、投薬期間の3~7日目および13~17日目にわたる処置群間のベースライン体重からのパーセント変化を比較した。Tukey-Kramer多重比較調整を使用して、反復測定ANOVAにおける処置群比較のために、実験ワイズエラー率を制御した。**は、NTB+ビヒクル(3~7日目)とはp<0.0001異なり、*は、NTB+ソラフェニブ(13~17日目)とはp<0.0001異なり、†は、RENCA+ソラフェニブ+GDF15_001(13~17日目)に対してp<0.0001である。
図21図21は、抗がん剤で処置し、中立温度環境(86°F)で収容したRENCA(マウス腎腺癌細胞株)腫瘍保有マウスにおいて生存を延長させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性Balb/cマウスに、最初のソラフェニブ用量の10日前に、RENCA細胞を(皮下で)埋め込み、その後、2日後(0日目に対応する)に、最初のmAb用量が続いた。ソラフェニブ(15mg/kg、PO、QD)、およびGDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、死亡または安楽死(Institutional Animal Care and Use Committeeガイドラインに従う不健康および/または>30%の体重減少によって決定される)まで継続した。1群当たりn=10~12。Kaplan-Meier生存曲線を、ログランク統計量を使用して生存時間データにフィットさせて、処置群間の生存率を比較した。*は、RENCA+ソラフェニブ+GDF15_001に対してp<0.01である。
図22図22は、NSX-26115(ヒト非小細胞肺癌腺癌に由来する)腫瘍保有マウスにおけるヒト血漿GDF15濃度を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、NSX-26115腫瘍組織を(皮下で)埋め込み、血漿GDF15を、ELISA(R&D Systems DGD150)を介して、研究の終了時(図20に対応する)に測定した。1群当たりn=10~12。異質分散についてKenward-Roger調整を用いたANOVAを使用して、異なる処置群間での血漿中のGDF15レベルを比較した。正規性を、ヒストグラムおよびShapiro-Wilk検定を使用して評価し、等分散性を、Levene検定を使用して評価した。処置群の一対比較を、Tukey-Kramer法を使用して、多重比較のために調整した。*は、全ての他の群に対してp<0.01である。
図23図23は、抗がん剤で処置したまたは処置しなかったNSX-26115(ヒト非小細胞肺癌腺癌に由来する)腫瘍保有マウスにおいて体重減少を逆転させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。矢印は、NSX-26115腫瘍組織皮下埋め込みのタイミング(-30日目)、最初のシスプラチン用量のタイミング(0日目)および最初のmAb用量のタイミング(0日目)を指す。雌性重症複合免疫不全マウスを、シスプラチン(5mg/kg、IP、Q7D)および/またはGDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)もしくはIgG対照で処置した。値は、平均±SEMである。1群当たりn=10~12。一次自己回帰共分散構造を用いた反復ANOVAを使用して、17~19日目からのデータを使用して、処置群間の経時的な体重におけるパーセント変化を比較した。この時点で、疾患は、安定状態であり、処置と日数との間に有意な相互作用は存在しなかった。多変量正規性を、歪度および尖度について、Mardia検定を使用して評価した。処置による一元配置ANOVAを10日目に実施して、投薬スケジュールによって知らされる最大シスプラチン効果の日における処置群間の差異を評価した。処置群の全ての一対比較を、Tukey-Kramer法を使用して、多重比較のために調整した。*は、NTB+ビヒクル(17~19日目)に対してp<0.0001であり、‡は、NSX-26115+GDF15_001(17~19日目)に対してp<0.0001であり、†は、NTB+シスプラチン(17~19日目)に対してp<0.001であり、§は、NSX-26115+シスプラチン+GDF15_001(17~19日目)に対してp<0.0001であり、‡‡は、NTB+ビヒクル(10日目)に対してp<0.01であり、**は、NSX-26115+IgG(10日目)に対してp<0.0001である。
図24図24は、抗がん剤で処置したNSX-26115(ヒト非小細胞肺癌腺癌に由来する)腫瘍保有マウスにおいて生存を延長させるGDF15_001の能力を示すグラフを示す。雌性重症複合免疫不全マウスに、最初のシスプラチンおよびmAb用量(0日目に対応する)の30日前に、NSX-26115腫瘍組織を(皮下で)埋め込んだ。シスプラチン(5mg/kg、IP、Q7D)、およびGDF15_001(10mg/kg、SC、Q3D)またはIgG対照によるmAb処置を、死亡または安楽死(Institutional Animal Care and Use Committeeガイドラインに従う不健康および/または>30%の体重減少によって決定される)まで継続した。1群当たりn=10~12。ログランク検定を用いたKaplan-Meier生存曲線を使用して、早期安楽死まで、群間の生存を比較した。*は、NSX-26115+シスプラチン+GDF15_001に対してp<0.0001である。
図25図25は、対象における出発遊離GDF15レベルの関数として、GDF15_001について、投薬間隔を通じて、対象における遊離GDF15レベルを0.5ng/mL未満まで低減させることが可能である毎週皮下用量を示唆するグラフを示す。
図26図26は、対象における出発遊離GDF15レベルの関数として、GDF15_001について、投薬間隔を通じて、対象における遊離GDF15レベルを0.5ng/mL未満まで低減させることが可能である隔週皮下用量を示唆するグラフを示す。
図27図27は、対象における出発遊離GDF15レベルの関数として、GDF15_001について、投薬間隔を通じて、対象における遊離GDF15レベルを0.5ng/mL未満まで低減させることが可能である毎月皮下用量を示唆するグラフを示す。
図28図28は、本発明のGDF15抗体に対応する配列番号を示す表を提供する。
図29図29は、抗GDF15処置(黒三角)、抗CD40抗体処置(白抜きの丸)および組み合わせ処置(逆さまの白抜きの三角)の結果をまとめるグラフを示す。MHCII発現レベルは、腫瘍浸潤性マクロファージ集団における平均蛍光強度(MFI)として示される。
図30図30は、抗GDF15処置(黒三角)、抗CD40抗体処置(白抜きの丸)および組み合わせ処置(白抜きの三角)の結果をまとめるグラフを示す。
図31図31は、抗GDF15処置(逆さまの黒三角)、抗CD40抗体処置(白抜きの三角)および組み合わせ処置(黒四角)の結果をまとめるグラフを示す。
図32図32は、抗GD15_297抗体処置(白抜きの丸)および抗GD15_001抗体処置(白抜きの三角)の結果をまとめるグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0250】
発明の詳細な説明
本発明は、GDF15に特異的に結合し、GDNFファミリー受容体α様タンパク質(GFRAL)と相互作用するGDF15の能力が含まれるがこれに限定されないGDF15活性を低減させるまたは阻害する、抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本発明は、GDF15抗体を作製、調製または産生するためのプロセスもまた提供する。本発明の抗体は、GDF15、筋肉量の喪失、体重の喪失、脂肪重量の喪失、減少した食物摂取などによって特徴付けられる過剰増殖障害が含まれるがこれらに限定されないGDF15活性によって媒介されるまたはそれと関連する障害または状態の診断、予防および/または処置において有用である。本発明は、抗体の発現、ならびに本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物、例えば、抗体の使用のための医薬の調製および製造をさらに包含する。
【0251】
GDF15に結合する抗体またはその抗原結合性部分をコードするポリヌクレオチドが提供される。抗体重鎖もしくは軽鎖、またはそれら両方をコードするポリヌクレオチドもまた提供される。抗GDF15抗体を発現する宿主細胞が提供される。GDF15に対する抗体を使用する処置の方法が提供される。かかる方法には、炎症性および免疫疾患ならびに過剰増殖障害が含まれるがこれらに限定されない、GDF15発現および/またはGFRALへのGDF15結合と関連するまたはそれによって媒介される疾患を処置する方法が含まれるがこれらに限定されない。
【0252】
本明細書で使用されるセクション見出しは、構成のみを目的としており、記載される主題を限定すると解釈すべきではない。
【0253】
特許出願、特許公開およびGenbankアクセッション番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献がその全体が参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されるかのように、本明細書で参照によって組み込まれる。
【0254】
本明細書に記載されるまたは本明細書で言及される技術および手順は、一般に、十分に理解され、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら編(2003));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編(1987));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney)編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999));The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、1993);ならびにそれらの最新版に記載される広く利用される方法論などの、当業者による従来の方法論を使用して、一般に使用される。
【0255】
抗体
「抗体」または「Ab」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、特異的標的または抗原(Ag)、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどを認識しそれに結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、所与の抗原(例えば、GDF15)に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、インタクトな抗体の抗原結合性断片(または部分)が含まれるがこれらに限定されない、任意の型の抗体を包含し得る。
【0256】
用語「抗原」は、Agを認識する抗体を産生するため、または発現ライブラリー(例えば、とりわけ、ファージ、酵母またはリボソームディスプレイライブラリー)をスクリーニングするために、免疫適格性脊椎動物の免疫化のために使用される分子実体を指す。本明細書で、Agは、より広い用語であり、Abによって特異的に認識される標的分子を含むこと、したがって、Abを生じさせるための免疫化プロセスにおいて、またはAbを選択するためのライブラリースクリーニングにおいて使用される分子の断片または模倣物を含むことを一般に意図する。したがって、GDF15に結合する本発明の抗体について、そのモノマーおよびマルチマー、例えば、ダイマー、トリマーなどを含む、哺乳動物種由来の全長GDF15(例えば、ヒト、サル、マウスおよびラットGDF15)、ならびにGDF15の短縮型および他のバリアントが、抗原と呼ばれる。
【0257】
抗体の「抗原結合性断片」は、抗原に(好ましくは、実質的に同じ結合親和性で)特異的に結合する能力を保持する、全長抗体の断片を指す。抗原結合性断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)1つのVHドメインからなるdAb断片(Wardら、1989 Nature 341:544~546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド連結されたFv(dsFv)、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体および細胞内抗体、が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価分子(単鎖Fv(scFv)としても公知)を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、接合され得る;例えば、Birdら Science 242:423~426(1988)およびHustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879~5883を参照のこと。他の形態の単鎖抗体、例えば、ダイアボディ(diabody)もまた包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、これらのドメインをもう一方の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を創出する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holligerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448;Poljakら、1994、Structure 2:1121~1123を参照のこと)。
【0258】
抗体「可変ドメイン」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。当該分野で公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
【0259】
「相補性決定領域」(CDR)は、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触、Northおよび/もしくはコンフォメーション定義または当該分野で周知のCDR決定の任意の方法の定義に従って同定され得る。例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版(超可変領域);Chothiaら、1989、Nature 342:877~883(構造的ループ構造)を参照のこと。特定の抗体中のCDRを構成するアミノ酸残基の同一性は、当該分野で周知の方法を使用して決定され得る。CDRのAbM定義は、KabatとChothiaとの間の妥協であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))を使用する。CDRの「接触」定義は、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732~745に示される、観察された抗原接触に基づく。CDRの「コンフォメーション」定義は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基に基づく(例えば、Makabeら、2008、J.Biol.Chem.、283:1156~1166を参照のこと)。Northは、異なる好ましいセットのCDR定義を使用して、カノニカルなCDRコンフォメーションを同定している(Northら、2011、J.Mol.Biol.406:228~256)。CDRの「コンフォメーション定義」と本明細書で呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る(Makabeら、2008、J Biol.Chem.283:1156~1166)。なお他のCDR境界定義は、上記アプローチのうちの1つに厳密に従わなくてもよいが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複するが、これらは、特定の残基もしくは残基の群またはさらにはCDR全体であっても抗原結合に顕著には影響しないという予測または実験的知見に照らして、短縮または延長され得る。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。1つよりも多くのCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDR(または抗体の他の残基)は、Kabat、Chothia、North、拡張型(extended)、AbM、接触および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0260】
「フレームワーク」(FR)残基は、CDR残基以外の抗体可変ドメイン残基である。VHまたはVLドメインフレームワークは、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4でCDRが散在する4つのフレームワークサブ領域FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0261】
当該分野で公知のように、抗体の「定常領域」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0262】
用語「Fc領域」、「Fcドメイン」および「Fc」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、免疫グロブリン(Ig)分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能な断片と相関する、Ig分子の部分を指す。本明細書で使用する場合、これらの用語は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外する抗体の定常領域に関し、その領域の部分にさらに関する。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対してN末端側の可動性ヒンジ、またはそれらの部分を指す。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含み得る。
【0263】
IgGについて、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3(Cガンマ2およびCガンマ3)ならびにCγ1(Cガンマ1)とCγ2(Cガンマ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、この番号付けは、Kabatら、1991に記載されるように、Edelmanら、1969、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78~85のEUインデックスに従う。典型的には、Fcドメインは、ヒトIgG1定常ドメインのアミノ酸残基約236~約447を含む。例示的なヒト野生型IgG1 Fcドメインアミノ酸配列は、配列番号31に示される。Fcポリペプチドは、単離状態にあるこの領域、または抗体もしくはその抗原結合性部分、またはFc融合タンパク質と関連したこの領域を指し得る。
【0264】
重鎖定常ドメインは、Fc領域を含み、IgG重鎖のCH1ドメインおよびヒンジならびにCH2およびCH3(ならびに、任意選択により、IgAおよびIgEのCH4)ドメインをさらに含む。
【0265】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、Fcドメインを含む。Fcドメインは、IgA(例えば、IgAまたはIgA)、IgD、IgE、IgMまたはIgG(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)に由来し得る。
【0266】
「Fc融合」タンパク質は、1つ以上のポリペプチドがFcポリペプチドに作動可能に連結されたタンパク質である。Fc融合は、免疫グロブリンのFc領域を融合パートナーと組み合わせる。
【0267】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原のエリアまたは領域、例えば、抗体と相互作用する残基を含むエリアまたは領域を指す。エピトープは、線状またはコンフォメーションであり得る。
【0268】
その最も詳細なレベルでは、AgとAbとの間の相互作用のためのエピトープは、Ag-Ab相互作用中に存在する原子接触を定義する空間座標、ならびに結合熱力学へのそれらの相対的寄与についての情報によって、定義され得る。あまり詳細でないレベルでは、エピトープは、AgとAbとの間の原子接触を定義する空間座標によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、具体的な基準によって、例えば、AbおよびAg中の原子(例えば、重原子、即ち、非水素原子)間の距離によって定義される、それが含むアミノ酸残基によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、機能を介して、例えば、他のAbとの競合結合によって、特徴付けられ得る。エピトープはまた、別のアミノ酸による置換(例えば、アラニンスキャニングを使用する)がAbとAgとの間の相互作用の特徴を変更するアミノ酸残基を含むものとして、より一般に定義され得る。
【0269】
使用されるエピトープマッピング法に依存するエピトープの説明および定義が、異なるレベルの詳細さで得られるという事実から、同じAg上の、異なるAbに対するエピトープの比較は、異なるレベルの詳細さで同様に実施することができるということになる。
【0270】
例えばX線構造から決定される、アミノ酸レベルで記載されるエピトープは、それらが同じセットのアミノ酸残基を含む場合、同一であると言われる。エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸がそれらのエピトープによって共有される場合、重複すると言われる。エピトープは、アミノ酸残基がそれらのエピトープによって共有されない場合、別々(独自)であると言われる。
【0271】
競合結合によって特徴付けられるエピトープは、対応する抗体の結合が相互に排他的である場合、即ち、1つの抗体の結合が、他の抗体の同時のまたは連続的な結合を排除する場合、重複していると言われる。エピトープは、抗原が、両方の対応する抗体の結合を同時に受け入れることが可能である場合、別々(独自)であると言われる。
【0272】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で相互交換可能に使用される)抗体は、当該分野で十分に理解された用語であり、かかる特異的または優先的結合を決定するための方法もまた、当該分野で周知である。分子は、それが代替的な細胞または物質と反応または会合する場合よりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、GDF15、PD-1またはPD-L1エピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、それが他のGDF15、PD-1もしくはPD-L1エピトープまたは非GDF15、PD-1、PD-L1エピトープに結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。一般に、必ずではないが、結合に対する言及は、優先的結合を意味する。「特異的結合」または「優先的結合」は、サンプル中の特定の分子を認識しそれに結合するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も結合もしない、化合物、例えば、タンパク質、核酸、抗体などを含む。例えば、サンプル中の同族リガンドまたは結合パートナー(例えば、腫瘍抗原に結合する抗ヒト腫瘍抗原抗体、PD-L1またはPD-L2に結合するPD-1分子など)を認識しそれに結合するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も結合もしない抗体またはペプチド受容体は、その同族リガンドまたは結合パートナーに特異的に結合する。したがって、指定されたアッセイ条件下で、特定された結合部分(例えば、抗体もしくはその抗原結合性部分または受容体もしくはそのリガンド結合性部分)は、特定の標的分子に優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の構成要素には、顕著な量では結合しない。
【0273】
種々のアッセイフォーマットが、目的の分子に特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために使用され得る。抗原と特異的に反応する抗体、または同族リガンドもしくは結合パートナーに特異的に結合する受容体もしくはそのリガンド結合性部分を同定するために使用され得る多くのアッセイの中では、例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA)およびウエスタンブロット分析である。典型的には、特異的または選択的反応は、背景シグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、背景の10倍を超え、さらにより具体的には、抗体は、平衡解離定数(K)が、≦1μM、好ましくは≦100nM、より好ましくは≦10nM、さらにより好ましくは≦100pM、なおより好ましくは≦10pM、さらにより好ましくは≦1pMである場合、抗原に「特異的に結合する」と言われる。
【0274】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、抗原への第1の抗体またはその抗原結合性部分の結合が、第2の抗体またはその抗原結合性部分による同じ抗原の引き続く結合を低減させることを意味する。一般に、第1の抗体の結合は、同じ抗原への第2の抗体の結合が低減されるような、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープ(もしくはその部分)への結合を創出する。標準的な競合アッセイが、2つの抗体が互いに競合するかどうかを決定するために使用され得る。抗体競合についての1つの適切なアッセイには、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーを使用して、典型的には、バイオセンサーシステム(例えば、BIACOREシステム)を使用して相互作用の程度を測定することができる、Biacoreテクノロジーの使用が関与する。例えば、SPRは、第2の抗体の結合を阻害する1つの抗体の能力を決定するために、in vitro競合的結合阻害アッセイにおいて使用され得る。抗体競合を測定するための別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを使用する。
【0275】
さらに、それらの競合に基づいて抗体を「ビニング」(binning)するためのハイスループットプロセスが、国際特許出願公開WO2003/48731に記載されている。競合は、1つの抗体(または断片)がGDF15への別の抗体(または断片)の結合を低減させる場合に存在する。例えば、逐次的な結合競合アッセイが使用され得、異なる抗体は逐次的に添加される。第1の抗体は、飽和に近い結合に到達するまで添加され得る。次いで、第2の抗体が添加される。GDF15への第2の抗体の結合が検出されない場合、または第1の抗体の非存在下での並行アッセイ(その値が100%と設定され得る)と比較して、顕著に低減される(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%の低減)場合、これら2つの抗体は、互いに競合するとみなされる。
【0276】
バリアント抗体は、上で議論した特定の配列および断片からの、1、2、3、4、5、最大で10、最大で20、最大で30、またはそれよりも多くのアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含み得る。「欠失」バリアントは、個々のアミノ酸の欠失、アミノ酸の小さい群、例えば、2、3、4もしくは5アミノ酸の欠失、またはより大きいアミノ酸領域の欠失、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の欠失を含み得る。「挿入」バリアントは、個々のアミノ酸の挿入、アミノ酸の小さい群、例えば、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、またはより大きいアミノ酸領域の挿入、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の挿入を含み得る。「置換」バリアントには、好ましくは、1つ以上のアミノ酸の、同じ数のアミノ酸による置き換え、および保存的アミノ酸置換を行うことが関与する。例えば、アミノ酸は、類似の特性を有する代替的アミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸または別の脂肪族アミノ酸で置換され得る。適切な置換基を選択するために使用され得る20種の主要アミノ酸の一部の特性は、以下の通りである:
【0277】
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発のために最も目的とされる部位には、超可変領域が含まれるが、フレームワーク変更もまた企図される。保存的置換は、「保存的置換」の見出しの下で、表1中に示される。かかる置換が生物学的活性における変化を生じる場合、以下に示される「例示的な置換」と称される、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載される、より実質的な変化が導入され得、産物がスクリーニングされ得る。
【0278】
【表1】
【0279】
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)例えば、ベータ-シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換のエリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩、を維持することに対するそれらの効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、以下の群へと分けられる:
i.非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
ii.電荷なし極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
iii.酸性(負に荷電):Asp、Glu;
iv.塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
v.鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
vi.芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0280】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを、別のクラスと交換することによって行われる。
【0281】
例えば、行われ得る1つの型の置換は、抗体中の化学的に反応性であり得る1つ以上のシステインを、別の残基、例えば、限定なしに、アラニンまたはセリンに変化させることである。例えば、非カノニカルなシステインの置換が存在し得る。置換は、抗体の可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中で行われ得る。一部の実施形態では、システインは、カノニカルである。抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するためおよび異常な架橋結合を防止するために、一般にはセリンで置換され得る。逆に、システイン結合は、特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合、その安定性を改善するために抗体に付加され得る。
【0282】
「生殖系列化(germlining)」として公知のプロセスでは、VHおよびVL配列中の特定のアミノ酸が、生殖系列VHおよびVL配列中に天然に見出されるアミノ酸と一致するように変異され得る。特に、VHおよびVL配列中のフレームワーク領域のアミノ酸配列は、抗体が投与された場合の免疫原性のリスクを低減させるために、生殖系列配列と一致するように変異され得る。本明細書で使用する場合、用語「生殖系列」は、それらが生殖細胞を介して親から子孫に受け継がれるときの、抗体遺伝子および遺伝子セグメントのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を指す。この生殖系列配列は、B細胞成熟化の過程の間の組換えおよび超変異事象によって変更された、成熟B細胞中の抗体をコードするヌクレオチド配列から識別される。特定の生殖系列を「利用する」抗体は、その生殖系列ヌクレオチド配列またはそれが特定するアミノ酸配列と最も密接にアラインするヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有する。かかる抗体は、生殖系列配列と比較して、頻繁に変異される。ヒトVHおよびVL遺伝子についての生殖系列DNA配列は、当該分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照のこと;Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242;Tomlinsonら、J.Mol.Biol.227:776~798、1992;およびCoxら、Eur.J.Immunol.24:827~836、1994もまた参照のこと)。
【0283】
結合親和性
抗体の結合親和性は、特定の抗原-抗体相互作用の解離速度を指すK値として表され得る。Kは、「オフレート(off-rate)(koff)」とも呼ばれる解離の速度の、会合速度、即ち「オンレート(on-rate)(kon)」に対する比である。したがって、Kは、koff/konと等しく、モル濃度(M)として表され、Kが小さいほど、結合の親和性はより強い。抗体についてのK値は、当該分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。Kdを測定するための1つの例示的な方法は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを典型的には使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)である。BIAcore動態分析は、それらの表面上に固定化された分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの、抗原の結合および解離を分析することを含む。抗体のKdを決定するための別の方法は、Bio-Layer Interferometryを使用すること、典型的には、OCTETテクノロジー(Octet QKe system、ForteBio)を使用することによる。あるいは、またはさらに、Sapidyne Instruments(Boise、Id.)から入手可能なKinExA(Kinetic Exclusion Assay)アッセイもまた使用され得る。
【0284】
GDF15に対する抗体
本発明は、抗GDF15抗体を提供する。抗GDF15抗体、好ましくは、高親和性抗体は、GDF15がその標的細胞に対して作用すると考えられる血漿および複数の組織区画において有効であり得る。本発明の抗体は、とりわけ、がん、心不全またはCOPDと関連する悪液質の発達および進行を駆動する経路を改変する潜在力を有する。
【0285】
中和または「遮断」抗体は、GDF15へのその結合が、GDF15もしくはGDF15断片とGDF15受容体、例えば、GFRALもしくはGDF15受容体構成要素との間の相互作用を妨害、制限もしくは阻害する;および/または(ii)GDF15の少なくとも1つの生物学的機能の阻害を生じる、抗体を指す。本発明の抗体による中和を決定するためのアッセイは、本明細書の他の場所に記載されており、当該分野で周知である。
【0286】
本明細書で使用する場合、用語「GDF15」には、ヒトGDF15のバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。本発明の一部の態様では、抗体は、ヒト以外の種からのGDF15、例えば、マウス、ラットまたは非ヒト霊長類のGDF15、ならびに異なる形態のGDF15と交差反応する。他の態様では、抗体は、ヒトGDF15に対して完全に特異的であり得、種または他の型の交差反応性を示さなくてもよい。本明細書で使用する場合、GDF15という用語は、文脈上他のように定められない限り、天然に存在するヒトGDF15を指す。したがって、「GDF15抗体」、「抗GDF15抗体」または他の類似の指定は、GDF15型のリガンドもしくはアイソフォームと特異的に会合、結合もしくは反応する任意の抗体(本明細書で定義される)、またはその断片もしくは誘導体を意味する。UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q99988.1によって示される全長成熟形態のヒトGDF15は、本明細書で配列番号1として提供される。
【0287】
いずれの特定の理論に束縛されることも望まないが、GDF15との相互作用の際に、GFRALは、原癌遺伝子チロシンタンパク質キナーゼ受容体Ret(RET)と相互作用し、MAPKシグナル伝達経路およびAKTシグナル伝達経路の活性化を介して細胞シグナル伝達を誘導する。次いで、RETシグナル伝達は、例えば、とりわけ、ERK、S6のリン酸化を誘導または媒介する。本明細書で使用する場合、用語「GFRAL」には、ヒトGFRALのバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。全長成熟形態のヒトGFRALは、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q6UXV0によって示される。本明細書で使用する場合、用語「RET」には、ヒトRETのバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。全長成熟形態のヒトRETは、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P07949によって示される。
【0288】
GDF15の「生物学的機能」または「生物学的活性」は、組織における炎症およびアポトーシス経路、ならびに細胞傷害後の細胞のストレス応答プログラムを調節することを含む意味である。GDF15の「生物学的機能」または「生物学的活性」には、とりわけ、当該分野で現在公知のまたは後に同定される、悪液質を増加させること、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量、減少した除脂肪量、GFRALの結合、RETの活性化、ERKのリン酸化、およびS6のリン酸化を媒介することが含まれる。GDF15の生物学的機能または生物学的活性は、GDF15とその同族受容体GFRALとの間の相互作用によって媒介され得るが、その必要はない。
【0289】
本発明は、GDF15の生物学的活性をモジュレートし得る抗体またはその抗原結合性部分を含む。即ち、本発明は、その抗体が、(a)食物摂取を増加させる;(b)食欲を増加させる;(c)体重を増加させる;(d)体重減少を減少させる;(e)体脂肪量を増加させる;(f)除脂肪量を増加させる;(g)体脂肪量の喪失を減少させる、(h)除脂肪筋肉量の喪失を減少させる、(i)GFRALへのGDF15結合を減少させる;(j)RETによって媒介される下流シグナル伝達を減少させる;(k)ERKのリン酸化を減少させるもしくは阻害する;(l)S6のリン酸化を減少させるもしくは阻害する;(m)MAPKシグナル伝達経路のRET活性化を減少させる;(n)AKTシグナル伝達経路のRET活性化を減少させる;および/または(o)PLC-γ1シグナル伝達経路の活性化を減少させるような、GDF15に特異的に結合し、少なくとも1つの検出可能なGDF15活性をモジュレートする、単離された抗体またはその抗原結合性部分を含む。
【0290】
GDF15の生物学的活性およびGDF15依存的シグナル伝達活性は、多くの当該分野で認識されたアッセイの中でも、GFRALおよびRETを共発現するHEK293またはCHO細胞を使用して、in vitroで評価され得る。GDF15による刺激後のMAPK経路の活性化は、とりわけ、ルシフェラーゼベースの遺伝子レポーターシステム(例えば、PathDetect、Agilent Technologies)を使用して測定され得る。均一時間分解蛍光テクノロジー(Cisbio Inc.)に基づくリン酸化タンパク質アッセイもまた、その受容体に結合するGDF15に応答したMAPKおよびAKT経路の活性化(例えば、リン酸化ERK1/2)を測定するための直交アプローチとして使用され得る。GDF15依存的シグナル伝達を防止する中和抗体の能力は、漸増濃度の抗GDF15抗体の非存在下または存在下で、細胞を固定濃度のGDF15と共にインキュベートすることによっても評価され得る。
【0291】
本発明の一態様では、本発明のGDF15抗体は、配列番号166として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号163として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と、ヒトGDF15への結合について競合する、および/またはそれと同じエピトープに結合する、抗体を包含する。
【0292】
本発明の一態様では、本発明のGDF15抗体は、GFRALとのGDF15の結合を阻害するまたは低減させる抗体を包含する。
【0293】
一態様では、本発明は、GFRALとのGDF15の結合を阻害するにあたり、配列番号166として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号163として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体を包含する。
【0294】
本発明の一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1重鎖定常領域、例えば、配列番号164として示されるGDF15重鎖を含む。他の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、カッパ軽鎖定常領域、例えば、配列番号162として示されるGDF15軽鎖を含む。
【0295】
表2は、本発明の抗GDF15抗体のアミノ酸(タンパク質)配列および関連の核酸(DNA)配列を提供する。Kabatによって、およびChothiaによって定義される抗GDF15 VHおよび抗GDF15 VLのCDRは、別々の配列として示される。
【0296】
一部の態様では、CDRは、配列番号171、172、173、174、175および176を含む。これらのCDR配列は、以下の実施例1~10に示される好ましい配列分析および生物物理学的プロファイルデータに基づくコンセンサスを取り込む。これらのCDR配列は、それらの配列、結合、熱安定性、低いpHにおける安定性、および粘度プロファイルに基づく利点を保有する。
【0297】
【表2-1】
【0298】
【表2-2】
【0299】
【表2-3】
【0300】
【表2-4】
【0301】
【表2-5】
【0302】
【表2-6】
【0303】
【表2-7】
【0304】
【表2-8】
【0305】
【表2-9】
【0306】
【表2-10】
【0307】
【表2-11】
【0308】
【表2-12】
【0309】
【表2-13】
【0310】
【表2-14】
【0311】
【表2-15】
【0312】
【表2-16】
【0313】
【表2-17】
【0314】
ある特定の実施形態では、置換は、(ドナー)CDR残基が、例えば、米国特許出願公開第2017/0073395号およびTownsendら、2015、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 112(50):15354~15359に記載されるように、ヒトアミノ酸含量を増加させ、抗体の免疫原性を潜在的に低減させるように、対応するヒト生殖系列(アクセプター)残基で置き換えられる、ヒト生殖系列置換である。例えば、ヒト生殖系列IGHV1-6901フレームワークが使用され、例示的な抗体、GDF15_001VH(配列番号166)が比較される場合、GDF15_001抗体(配列番号32)およびヒト生殖系列IGHV1-6901のHCDR-1のアラインメントは、以下の通りである:
【0315】
【表3】
【0316】
アミノ酸位置番号26、28、29、30、31、32および34について、ヒト生殖系列残基(アクセプター)と対応するGDF15_001残基(ドナー)とは同じであり、生殖系列置換は不可能である。位置27、33および35(太字かつ下線付き)について、ヒト生殖系列(アクセプター)残基と対応するGDF15_001(ドナー)残基とは異なる。これらの位置におけるGDF15_001の残基は、ヒト残基含量をさらに増加させるために、対応するヒト生殖系列IGHV1-6901残基で置き換えられ得る。ヒトアミノ酸残基の含量を増加させる一方で、マウス残基の含量を最小化し、それによって、ヒトにおける抗体に対する任意の潜在的な免疫原性、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)免疫応答を減少させつつ、結合特徴、例えば、エピトープ結合、親和性などを保存するために、同じプロセスが、各重鎖および軽鎖CDRについて踏襲され得る。
【0317】
抗体CDR中にヒト生殖系列残基を導入するための方法およびライブラリーは、米国特許出願公開第2017/0073395号およびTownsendら、2015、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.112(50):15354~15359に詳細に記載されており、これらは共に、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。
【0318】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。一部の態様では、以下の生殖系列からのVHフレームワークが使用され得る:IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104またはIGHV5-5101(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。一部の態様では、以下の生殖系列からのVLフレームワークが使用され得る:IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。ヒト生殖系列フレームワークの配列は、種々の公的データベース、例えば、V-base、IMGT、NCBIまたはAbysisから入手可能である。
【0319】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列を含むVLフレームワークを含み得る。VLフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VLフレームワークは、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%、58%、60%、63%、71%、72%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVLフレームワークを含む。一部の態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の態様では、パーセント(%)同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVLとの類似性に基づく。
【0320】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。VHフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VHフレームワークは、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%、74%、75%、77%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVHフレームワークを含む。一部の態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の態様では、%同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVHとの類似性に基づく。
【0321】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含み得る。VHは、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のアミノ酸配列を含み得る。
【0322】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含み得る。VLは、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のアミノ酸配列を含み得る。
【0323】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のうち少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3を含む。
【0324】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のうち少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3をさらに含む。
【0325】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号163のアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、ならびに配列番号166のアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3を含む。
【0326】
抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号163のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含み得る。VLは、配列番号163のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号163のアミノ酸配列を含み得る。
【0327】
抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号166のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含み得る。VHは、配列番号166のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号166のアミノ酸配列を含み得る。
【0328】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号164のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むHCを含み得る。HCは、配列番号164のアミノ酸配列を含み得る。
【0329】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号162に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むLCを含み得る。LCは、配列番号162のアミノ酸配列を含み得る。
【0330】
PD-1軸結合性アンタゴニスト
用語「PD-1軸結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-1シグナル伝達軸(「PD-1/PD-L経路」または「PD-1/PD-Lシグナル伝達経路」とも呼ばれる)上でのシグナル伝達から生じるT細胞機能障害を除去して、結果が、T細胞機能の回復または増強であるような、その結合パートナーのいずれか1つ以上との、PD-1軸結合性パートナーの相互作用を阻害する分子を指す。本明細書で使用する場合、PD-1軸結合性アンタゴニストには、PD-1結合性アンタゴニスト、PD-L1結合性アンタゴニストおよびPD-L2結合性アンタゴニストが含まれる。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。
【0331】
一部の態様では、PD-1軸アンタゴニスト、PD-1軸結合性アンタゴニスト、PD-1結合性アンタゴニストおよび抗PD-L1抗体には、アベルマブが含まれない。即ち、任意選択により、アベルマブは、PD-1軸シグナル伝達軸を阻害する薬剤から排除される。
【0332】
本発明の処置方法、医薬および使用における使用のための例示的なPD-1軸結合性アンタゴニストには、限定なしに、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、国際特許出願公開第WO2010/027827およびWO2011/066342に記載される、シグナル配列ありまたはなしのAMP-224、国際特許出願公開第WO2016/092419に開示されるmAb7およびmAb15、ならびにWO2013/079174に記載されるアベルマブが含まれる。WO2010/027827、WO2011/066342、WO2016/092419およびWO2013/079174の開示は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。表3は、例示されたPD-1軸結合性アンタゴニストの一部の種々の配列を列挙する。
【0333】
【表4-1】
【0334】
【表4-2】
【0335】
用語「PD-1結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-1に特異的に結合し、PD-1と、その結合パートナー、例えば、PD-L1、PD-L2のうち1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、それによって、PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合性アンタゴニストには、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-1抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、それによって、機能障害性T細胞をあまり機能障害性でなくするように、PD-1を介したシグナル伝達を介して媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレチズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-554、セミプリマブおよびPF-06801591が含まれるがこれらに限定されない抗PD-1抗体である。
【0336】
PF-06801951は、ササンリマブ(CAS登録番号2206792-50-7)、RN888とも呼ばれ、それらの全体が本明細書に示されるかのように参照によって組み込まれる国際特許出願公開第WO2016/092419に開示されている。ササンリマブは、ヒト化されたヒンジ領域安定化IgG4-カッパ(κ)モノクローナル抗体である。ササンリマブ(PF-06801951;RN888)のアミノ酸配列は、以下の表4に示される。
【0337】
具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ニボルマブである。別の具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ペムブロリズマブである。別の具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ピディリズマブである。
【0338】
用語「PD-L1結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-L1に特異的に結合し、PD-L1と、その結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。一部の態様では、PD-L1結合性アンタゴニストには、アベルマブは含まれない。具体的な態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、PD-1および/またはB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストには、PD-L1と、その結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1のうち1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-L1抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、機能障害性T細胞をあまり機能障害性でなくするように、PD-L1を介したシグナル伝達によって媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、アベルマブ(国際特許出願公開第WO2013/079174において、A09-246-2として開示される)である。一部の態様では、アベルマブは、PD-1軸アンタゴニストとしては含まれない。
【0339】
別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブである。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(MDX-1105)である。
【0340】
本明細書で使用する場合、抗ヒトPD-L1抗体は、成熟ヒトPD-L1に特異的に結合する抗体またはその部分を指し、成熟ヒトPD-L1分子は、以下の配列のアミノ酸19~290からなる:
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号221)
【0341】
【表5-1】
【0342】
【表5-2】
【0343】
用語「PD-L2結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-L2に特異的に結合し、PD-L2と、その結合パートナー、例えば、PD-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L2結合性アンタゴニストは、PD-1へのPD-L2の結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L2アンタゴニストには、PD-L2に特異的に結合し、PD-L2と、その結合パートナー、例えば、PD-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-L2抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、機能障害性T細胞をあまり機能障害性でなくするように、PD-L2を介したシグナル伝達を介して媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、PD-L2イムノアドヘシンである。
【0344】
核酸
本発明は、本明細書に記載される抗体部分および改変抗体を含む本発明の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた提供する。本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法もまた提供する。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の手順によって作製および発現され得る。
【0345】
所望の抗体またはその抗原結合性断片およびかかる抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸の配列は、標準的な配列決定技術を使用して決定され得る。所望の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸配列は、組換え産生および特徴付けのために、種々のベクター(例えば、クローニングおよび発現ベクター)中に挿入され得る。重鎖または重鎖の抗原結合性断片をコードする核酸、および軽鎖または軽鎖の抗原結合性断片をコードする核酸は、同じベクターまたは異なるベクター中にクローニングされ得る。
【0346】
一態様では、本発明は、以下のGDF15抗体およびその抗原結合性部分のいずれかのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する:
GDF15_001、GDF15_002、GDF15_003、GDF15_004、GDF15_005、GDF15_006、GDF15_007、GDF15_008、GDF15_009、GDF15_010、GDF15_011、GDF15_012、GDF15_013、GDF15_014、GDF15_015、GDF15_017、GDF15_018、GDF15_020、GDF15_021、GDF15_022、GDF15_100、GDF15_200、GDF15_297、GDF15_301、GDF15-470
【0347】
本発明は、(i)配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161、166、11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158、163、166、183、187、189、191、193および195からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0348】
本発明は、配列番号167、168、169および170のうち1つ以上として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号167として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号168として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号169として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号170として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。遺伝コードの縮重に起因して、本発明は、配列番号170の位置番号1344におけるヌクレオチドがA、C、G、Tであり得、および/または位置番号1347におけるヌクレオチドがA、C、G、Tであり得る、核酸配列をさらに提供する。配列番号170中に提供される最後の2つのコドンは、それぞれ、プロリンおよびグリシンをなおもコードする。
【0349】
本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、GDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供する。さらに、本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。本発明は、GDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドをさらに提供する。
【0350】
本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびGDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、を含むポリヌクレオチドもまた提供する。
【0351】
別の態様では、本発明は、抗GDF15抗体をコードするポリヌクレオチドおよびそのバリアントを提供し、かかるバリアントポリヌクレオチドは、本明細書で開示または言及される核酸配列のいずれかに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を共有する。これらの量は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0352】
本発明は、本明細書に記載される核酸分子によってコードされるポリペプチドを提供する。
【0353】
一実施形態では、VHおよびVLドメインもしくはその抗原結合性部分、または全長HCもしくはLCは、別々のポリヌクレオチドによってコードされる。あるいは、VHおよびVLもしくはその抗原結合性部分、またはHCおよびLCは共に、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0354】
任意のかかる配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含み、一対一の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコードまたは非コード配列が、本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいがその必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されてもよいがその必要はない。
【0355】
ポリヌクレオチドは、抗体もしくはその一部分をコードする核酸配列を含み得、またはかかる配列のバリアントを含み得る。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの結合特徴がネイティブ抗体分子と比較して減弱されるような、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。バリアント核酸配列によってコードされるポリペプチドの結合特徴に対する影響は、一般に、本明細書に記載されるように評価され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、いずれの置換、付加、欠失および/もしくは挿入も含まない元の(親)抗体またはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約80%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約90%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約95%の同一性を示す。これらのパーセント同一性は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0356】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載されるように、最大の対応を求めてアラインした場合に同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、比較ウインドウにわたって配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は、本明細書で使用する場合、少なくとも約20、通常は30~約75または40~約50連続する位置のセグメントを指し、ここで、配列は、2つの配列を最適にアラインした後に、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。
【0357】
比較のための配列の最適なアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して、Lasergene(登録商標)スイートのバイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)中のMegAlign(登録商標)プログラムを使用して実施され得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC、第5巻、補遺3、345~358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626~645頁、Methods in Enzymology、第183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151~153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11~17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406~425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:726~730。
【0358】
一部の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20個の位置の比較のウインドウにわたって、2つの最適にアラインされた配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5~15パーセントまたは10~12パーセントの付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一な核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得、一致した位置の数を参照配列中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)によって除算し、結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
【0359】
ポリヌクレオチドバリアントはまた、またはあるいは、遺伝子、またはその一部分もしくは相補体に対して実質的に相同であり得る。かかるポリヌクレオチドバリアントは、抗体をコードする天然に存在するDNA配列(または相補的配列)に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能である。
【0360】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で事前洗浄すること;約50℃~65℃、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)で一晩ハイブリダイズさせること;その後、0.1%SDSを含む2×、0.5×および0.2×SSCの各々で、65℃で20分間2回洗浄すること、を含む。
【0361】
本明細書で使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下の条件である:(1)洗浄のために、低いイオン強度および高い温度、例えば、50℃で、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用する;(2)ハイブリダイゼーションの間に、変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5と共に、42℃で使用する;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃および50%ホルムアミド中で55℃での洗浄、その後の、EDTAを含む0.1×SSCからなる55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する。当業者は、例えば、プローブ長さなどの因子に適応するために、必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識する。
【0362】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者によって理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を保有する。それにもかかわらず、コドン使用における差異に起因して変動するポリヌクレオチドは、本開示によって具体的に企図される。さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1つ以上の変異、例えば、欠失、付加および/または置換の結果として変更された内因性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有し得るが、その必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を使用して同定され得る。
【0363】
本開示のポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え法またはPCRを使用して得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を産生するために、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用することができる。
【0364】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター中に挿入され得、このベクターは、次に、本明細書でさらに議論されるように、複製および増幅に適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配(F-mating)またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。いったん導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照のこと。
【0365】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生産を可能にする。PCRテクノロジーは、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0366】
RNAは、適切なベクター中の単離されたDNAを使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAへと転写される場合、RNAは、例えば、Sambrookら、1989に示される、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0367】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、目的の1つ以上の遺伝子または配列を宿主細胞中に送達すること、好ましくは、それを宿主細胞において発現させることが可能な、構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAもしくはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドもしくはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連したDNAもしくはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAもしくはRNA発現ベクター、および特定の真核生物細胞、例えば、産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0368】
適切なクローニングおよび発現ベクターは、種々の構成要素、例えば、プロモーター、エンハンサーおよび他の転写調節配列を含み得る。ベクターはまた、異なるベクター中への抗体可変ドメインの引き続くクローニングを可能にするように構築され得る。適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を保有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を保有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターが、供給業者、例えば、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenから入手可能である。発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは、一般に、本開示に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可欠な一部として、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスが含まれるウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開番号WO87/04462に開示される発現ベクターが含まれるがこれらに限定されない。ベクター構成要素には、一般に、以下のうち1つ以上が含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つ以上のマーカー遺伝子;適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(即ち、翻訳)のために、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および停止コドンなどの、1つ以上の翻訳制御エレメントもまた通常は必要とされる。
【0369】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターおよび/またはポリヌクレオチド自体は、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)が含まれるいくつかの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0370】
したがって、「宿主細胞」には、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターの取り込みのための、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターのレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、天然の、偶然のまたは意図的な変異に起因して、(形態学的に、またはゲノムDNA相補性において)元の親細胞とは必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドでin vivoでトランスフェクトおよび/または形質転換された細胞が含まれる。
【0371】
抗体またはその抗原結合性断片は、適切な宿主細胞を使用して、組換え作製され得る。抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸は、発現ベクター中にクローニングされ得、これは次いで、組換え宿主細胞における抗体の合成を得るために、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中に導入され得る。好ましい宿主細胞には、当該分野で周知の多くの細胞の中で、CHO細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞、NS0細胞またはSp2.0細胞が含まれる。抗体断片は、全長抗体のタンパク質分解性もしくは他の分解によって、組換え法によって、または化学的合成によって産生され得る。抗体のポリペプチド断片、特に、最大で約50アミノ酸のより短いポリペプチドは、化学的合成によって簡便に作製され得る。タンパク質およびペプチドのための化学的合成の方法は、当該分野で公知であり、市販されている。
【0372】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、親和性成熟され得る。例えば、親和性成熟された抗体は、当該分野で公知の手順によって産生され得る(Marksら、1992、Bio/Technology、10:779~783;Barbasら、1994、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809~3813;Schierら、1995、Gene、169:147~155;Yeltonら、1995、J.Immunol.、155:1994~2004;Jacksonら、1995、J.Immunol.、154(7):3310~9;Hawkinsら、1992、J.Mol.Biol.、226:889~896;およびWO2004/058184)。
【0373】
免疫原性
免疫原性は、抗体およびFc融合タンパク質が含まれるタンパク質治療薬の開発および利用に対する主な障壁である。タンパク質配列、投与の経路および頻度、ならびに患者集団が含まれるがこれらに限定されないいくつかの因子が、タンパク質免疫原性に寄与し得る。免疫応答は、典型的には、マウス抗体などの非ヒトタンパク質に対して最も激しいが、主にまたは完全にヒト配列内容を有する治療薬であっても、免疫原性であり得る。免疫原性は、外来として把握される物質に対する複雑な一連の応答であり、これには、中和および非中和抗体の産生、免疫複合体の形成、補体活性化、肥満細胞活性化、炎症ならびにアナフィラキシーが含まれ得る。望まれない免疫応答は、抗原認識を直接妨害すること、エフェクター分子との相互作用を変更すること、または治療薬の血清半減期もしくは組織分布を乱すことによって、抗体およびFc融合タンパク質治療薬の効力を低減させ得る。
【0374】
タンパク質治療薬は、Providence、R.I.のEpivax,Inc.によって提供されるような市販のサービスを使用して、潜在的な免疫原性エピトープの存在を予測するために分析され得る。一部の実施形態では、in silicoアルゴリズムが、クラスII MHC分子に結合するエピトープを予測できる。かかるアルゴリズムを用いたポリペプチドのデータセットの分析は、予測されたエピトープを提供する。予測されたエピトープは、自動ペプチド合成または組換えDNA技術の標準的な方法によって調製されるペプチドを作製するために使用される。Epivaxから提供されたスコアリング情報は、集団中に認識された予測されたエピトープがどのように広がっているかの指標を提供し得る。
【0375】
以下の実施例10に記載されるように、本発明の抗体を、EpiVaxによって開発されたEpiMatrixアルゴリズムを使用して、本明細書でT細胞エピトープ、「T-レジトープ」または「tReg」とも呼ばれる、T細胞によって認識されるエピトープの存在についてスクリーニングした。抗体配列は、重複する9マーフレームへと分類解析され、各フレームは、最後が8アミノ酸重複する。次いで、得られたフレームの各々は、8つの一般的なMHCクラスII HLA対立遺伝子(DRB10101、DRB10301、DRB10401、DRB10701、DRB10801、DRB11101、DRB11301およびDRB11501)のパネルに関して、予測される結合親和性についてスコアリングされる。生スコアは、無作為に生成されたペプチドの大きいサンプルのスコアに対して標準化され、得られた「Z」スコアが報告される。
【0376】
全体的配列スコアであるtReg調整済スコアは、抗体の免疫原性を予測するために、EpiMatrix Zスコアを使用して計算され得る。実施例10に記載されるように、tReg調整済スコアは、9マーフレームのEpiMatrix Zスコアを合計し(中間合計)、HLA型観測の数を指摘することによって計算される。9マーおよびHLA型の全ての個々の組み合わせ(「観測」)が、その9マーがエピトープであるかどうかにかかわらず、試験される。特定の観測が、そのペプチドが所与のHLA型に対する結合子の上位5%にあることを示す場合、この観測についてのEpiMatrix Zスコアが、タンパク質配列全体と関連する中間合計に加算される。試験した観測の総数もまた記録される。唯一の例外は、EpiVaxによって開発されたISPRIソフトウェアパッケージによって「T-レジトープ」として同定された9マーについての全ての観測が、ゼロのEpiMatrixスコアを有すると仮定されることである。本明細書で使用する場合、「T-レジトープ」は、天然の調節性T細胞を活性化し、望まれない免疫応答を低減させることが潜在的にできる、モノクローナル抗体フレームワーク領域内のアミノ酸配列である。tReg調整済スコアは以下のように計算される:tReg調整済スコア=(中間合計)1000/(観測の数)。中間合計では、0.052.2248のベースラインスコアが、各観測(T-レジトープを含む)から減算される。より低いtReg調整済スコアは、免疫原性リスクのより低い潜在力を予測する。
【0377】
使用
悪液質を処置するための方法
一部の態様では、本発明は、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片を使用して、GDF15活性を低減させるまたは阻害するための治療方法であって、治療有効量の、抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。処置される障害は、GDF15活性またはシグナル伝達の除去、阻害または低減によって改善、寛解、阻害または予防される任意の疾患または状態である。
【0378】
本発明は、遊離GDF15のレベルの低減を必要とする対象において、遊離GDF15のレベルを低減させる方法を包含する。この方法は、対象における遊離GDF15のレベルを決定するステップ、治療的量の本発明の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップ、および抗体またはその抗原結合性断片の投与前のGDF15のレベルを、投与後の遊離GDF15のレベルと比較するステップ、を含み、それによって、対象において遊離GDF15のレベルを低減させる。
【0379】
一実施形態では、遊離GDF15のレベルの低減は、GDF15の望ましくない、有害なまたは望まれない生物学的活性を低減させる。GDF15のかかる活性には、(a)食物摂取を減少させること;(b)食欲を減少させること;(c)体重を減少させること;(d)体重減少を増加させること;(e)体脂肪量を減少させること;(f)除脂肪量を減少させること;(g)体脂肪量の喪失を増加させること、h)除脂肪筋肉量の喪失を増加させること、i)GFRALに結合すること;(j)RETによって媒介される下流シグナル伝達を増加させること;(k)ERKのリン酸化を増加させること;(l)S6のリン酸化を増加させること;(m)MAPKシグナル伝達経路のRET媒介性の活性化を増加させること;(n)AKTシグナル伝達経路のRET活性化を増加させること;および(o)PLC-γ1シグナル伝達経路の活性化を増加させること、が含まれるがこれらに限定されない。
【0380】
一実施形態では、本発明は、GDF15の生物学的活性の低減を必要とする対象において、GDF15の生物学的活性を低減させる方法を含む。この方法は、治療的量の本発明の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、それによって、GDF15の生物学的活性を低減させる。
【0381】
一態様では、GDF15の生物学的活性には、(a)食物摂取を減少させること;(b)食欲を減少させること;(c)体重を減少させること;(d)体重減少を増加させること;(e)体脂肪量を減少させること;(f)除脂肪量を減少させること;(g)体脂肪量の喪失を増加させること、h)除脂肪筋肉量の喪失を増加させること、i)GFRALに結合すること;(j)RETによって媒介される下流シグナル伝達を増加させること;(k)ERKのリン酸化を増加させること;(l)S6のリン酸化を増加させること;(m)MAPKシグナル伝達経路のRET媒介性の活性化を増加させること;(n)AKTシグナル伝達経路のRET活性化を増加させること;および(o)PLC-γ1シグナル伝達経路の活性化を増加させること、が含まれるがこれらに限定されない。
【0382】
用語「処置」または「処置された」には、予防的および/または治療的処置が含まれる。状態の臨床所見の前に投与される場合、処置は、予防的とみなされる。治療的処置には、例えば、疾患の重症度を寛解もしくは低減させる、または疾患の長さを短縮することが含まれる。
【0383】
本明細書で使用する場合、用語「悪液質」には、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性心不全、うっ血性心不全、サルコペニア、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコペニアおよび慢性腎臓疾患(CKD)を含むいくつかの慢性疾患と共に生じる代謝障害および併存症が含まれる。
【0384】
本発明は、GDF-15によって媒介されるまたはそれと関連する疾患、障害または状態を処置する方法を包含する。一態様では、障害は、悪液質である。他の態様では、障害は、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、慢性心不全、うっ血性心不全またはサルコペニアと関連する悪液質である。一部の態様では、がんは、固形腫瘍がん、膵がん、肺がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がんまたは精巣がんである。一部の態様では、化学療法は、白金ベースの化学療法である。疾患または障害または症状は、軽減され得る、または重症度、持続時間、もしくは発生の頻度が低減され得る。
【0385】
本発明は、処置の定義された方法における使用のための、本明細書で定義される抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物をさらに包含する。本明細書に記載される処置の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態もまた、その処置における使用のための、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造のための、抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物に関するさらなる実施形態である。
【0386】
抗体およびその抗体断片は、1つ以上のさらなる治療的に活性な化合物と組み合わせて投与され得る。さらなる治療的に活性な化合物には、悪液質と関連する慢性障害の処置のために使用される薬剤、抗がん剤(例えば、免疫療法および化学療法)、細胞ストレスを誘導する抗がん剤(例えば、白金ベースの化学療法剤、例えば、シスプラチン)、筋肉同化剤(例えば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)、ミオスタチン阻害剤およびアクチビンA受容体阻害剤)、抗炎症剤(例えば、JAK阻害剤、IL-6阻害剤、IL-8阻害剤)、食欲刺激薬(例えば、グレリン模倣物、メラノコルチン4受容体阻害剤)および代謝を改善する薬剤(例えば、メトホルミン)が含まれる。抗体またはその抗原結合性断片が含まれる、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る。あるいは、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物で、対象に同時発生的に投与され得る。予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0387】
「化学療法剤」は、がんの処置において有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN);スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミンが含まれる、エチレンイミンおよびメチロールメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL);ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR)、アセチルカンプトテシン、スコポレチンおよび9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK-286;CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマIおよびカリケアマイシンオメガll(例えば、Nicolaouら、Angew.Chem Intl.Ed.Engl.、33:183~186(1994)を参照のこと);ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射(DOXIL)およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR)、テガフール(UFTORAL)、カペシタビン(XELODA)、エポチロンおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンおよびイマチニブ(2-フェニルアミノピリミジン誘導体)、ならびに他のc-it阻害剤;抗副腎薬、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジコン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDIS1NE、FILDESIN);ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE)およびドセタキセル(TAXOTERE);クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN);白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN);オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE);ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、ボスチニブ(BOSULIF)、パルボシクリブ(IBRANCE)、アキシチニブ(INLYTA)、リンゴ酸スニチニブ(SUTENT)、クリゾチニブ(XALKORI)、エンザルタミド(XTANDI);上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸もしくは誘導体;ならびに上記のうち2つ以上の組み合わせ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの組み合わせ治療の略称であるCHOP、ならびに5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN)による処置レジメンの略称であるFOLFOX、が含まれる。
【0388】
化学療法剤のさらなる例には、がんの成長を促進し得るホルモンの効果を調節、低減、遮断または阻害するように作用し、全身性または全身処置の形態である場合が多い、抗ホルモン剤が含まれる。これらは、ホルモン自体であり得る。例には、例えば、タモキシフェン(NOLVADEXタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 11 7018、オナプリストンおよびトレミフェン(FARESTON(登録商標))が含まれる、抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);抗プロゲステロン剤;エストロゲン受容体下方調節因子(ERD);エストロゲン受容体アンタゴニスト、例えば、フルベストラント(FASLODEX);卵巣を抑制またはシャットダウンするように機能する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、酢酸リュープロリド(LUPRONおよびELIGARD)、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン;抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;ならびに副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE)、エキセメスタン(AROMASIN)、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(RJVISOR)、レトロゾール(FEMARA)およびアナストロゾール(ARIMIDEX)などが含まれる。さらに、化学療法剤のかかる定義には、ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOSまたはOSTAC)、エチドロネート(DIDROCAL)、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA)、アレンドロネート(FOSAMAX)、パミドロネート(AREDIA)、チルドロネート(SKELID)またはリセドロネート(ACTONEL);ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路中の遺伝子、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Rasおよび上皮増殖因子受容体(EGF-R)などの発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPEワクチンならびに遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTINワクチン、LEUVECTINワクチンおよびVAXIDワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN);抗エストロゲン剤、例えば、フルベストラント;Kit阻害剤、例えば、イマチニブまたはEXEL-0862(チロシンキナーゼ阻害剤);EGFR阻害剤、例えば、エルロチニブまたはセツキシマブ;抗VEGF阻害剤、例えば、ベバシズマブ;イリノテカン;rmRH(例えば、ABARELIX);ラパチニブおよび二トシル酸ラパチニブ(GW572016としても公知のErbB-2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);17AAG(ヒートショックタンパク質(Hsp)90毒であるゲルダナマイシン誘導体)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸または誘導体が含まれる。
【0389】
「化学療法」は、本明細書で使用する場合、がんの処置のための、上で定義した化学療法剤、または2、3もしくは4つの化学療法剤の組み合わせを指す。化学療法が1つよりも多くの化学療法剤からなる場合、それらの化学療法剤は、同じ日、または同じ処置サイクル中の異なる日に、患者に投与され得る。
【0390】
「白金ベースの化学療法」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの化学療法剤が白金の配位錯体である化学療法を指す。例示的な白金ベースの化学療法には、限定なしに、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、シスプラチンと組み合わせたゲムシタビン、ペメトレキセド(pemetremed)と組み合わせたカルボプラチンが含まれる。
【0391】
「白金ベースのダブレット」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの化学療法剤が白金の配位錯体である、2つおよび2つ以下の化学療法剤を含む化学療法を指す。例示的な白金ベースのダブレットには、限定なしに、シスプラチンと組み合わせたゲムシタビン、ペメトレキセドと組み合わせたカルボプラチンが含まれる。
【0392】
本明細書で使用する場合、用語「全身性抗がん治療」は、がんの転帰を変化させることを一般的に意図した、世界の任意の国の規制機関によって承認された、または世界の任意の国の規制機関の監督下で実施されたヒト臨床試験における、医薬品の全身性投与を指す。全身性抗がん治療には、化学療法、ホルモン療法、標的化抗がん治療、がんワクチン、腫瘍溶解性ワクチンおよび養子T細胞治療が含まれるがこれらに限定されない。
【0393】
がんを処置する方法
本発明は、がんを処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量のGDF15抗体を投与するステップを含む方法を包含する。一部の実施形態では、がんは、胃がん(gastric cancer)、肉腫、リンパ腫、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、神経膠腫、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛癌、結腸がん、口腔がん、皮膚がんおよび黒色腫からなる群から選択される。一部の実施形態では、対象は、局所進行性もしくは転移性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん(SCHNC)、卵巣癌、肉腫、または再燃性もしくは難治性古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に処置された成人患者である。一部の実施形態では、がんは、白金抵抗性および/もしくは白金難治性がん、例えば、白金抵抗性および/もしくは難治性卵巣がん、白金抵抗性および/もしくは難治性乳がんまたは白金抵抗性および/もしくは難治性肺がんなどであり得る。
【0394】
別の態様では、本発明は、腫瘍を有する対象において、腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0395】
別の態様では、本発明は、対象において、がん細胞の転移を阻害または予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0396】
別の態様では、本発明は、腫瘍を有する対象において、腫瘍退縮を誘導する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0397】
一部の実施形態では、この方法は、有効量の第2の治療剤を投与するステップをさらに含み得る。一部の実施形態では、第2の治療剤は、例えば、免疫モジュレーターである。用語「免疫モジュレーター」は、免疫応答(本明細書で定義される)を変更(例えば、阻害、減少、増加、増強または刺激)することが可能な物質、または宿主哺乳動物の自然、体液性もしくは細胞性免疫系の任意の構成要素の働きを指す。したがって、用語「免疫モジュレーター」は、本明細書で定義される「免疫エフェクター細胞エンハンサー」および本明細書で定義される「免疫抑制性細胞阻害剤」、ならびに哺乳動物の免疫系の他の構成要素に影響を与える物質を包含する。一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、抗CD40アゴニスト抗体であり得る。
【0398】
本発明は、処置の定義された方法における使用のための、本明細書で定義される抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物をさらに包含する。本明細書に記載される処置の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態もまた、その処置における使用のための、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造のための、抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物に関するさらなる実施形態である。
【0399】
したがって、がんの処置における使用のための、または腫瘍の成長もしくは進行の阻害を必要とする対象において腫瘍の成長もしくは進行を阻害するための、本明細書で提供される抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物もまた提供される。
【0400】
がんの処置のための医薬の製造における、または腫瘍の成長もしくは進行の阻害を必要とする対象において腫瘍の成長もしくは進行を阻害するための、本明細書で提供される抗GDF15抗体のいずれかの使用もまた提供される。
【0401】
抗体およびその抗体断片は、1つ以上のさらなる治療的に活性な化合物と組み合わせて投与され得る。さらなる治療的に活性な化合物には、悪液質と関連する慢性障害の処置のために使用される薬剤、抗がん剤(例えば、免疫療法および化学療法)、細胞ストレスを誘導する抗がん剤(例えば、白金ベースの化学療法剤、例えば、シスプラチン)、筋肉同化剤(例えば、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)、ミオスタチン阻害剤およびアクチビンA受容体阻害剤)、抗炎症剤(例えば、JAK阻害剤、IL-6阻害剤、IL-8阻害剤)、食欲刺激薬(例えば、グレリン模倣物、メラノコルチン4受容体阻害剤)および代謝を改善する薬剤(例えば、メトホルミン)が含まれる。
【0402】
抗体またはその抗原結合性断片が含まれる、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る。あるいは、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物で、対象に同時発生的に投与され得る。予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0403】
用語「免疫応答」は、宿主哺乳動物の免疫系による、特定の物質(例えば、抗原または免疫原)に対する任意の検出可能な応答、例えば、自然免疫応答(例えば、Toll受容体シグナル伝達カスケードの活性化)、細胞媒介性の免疫応答(例えば、T細胞、例えば、抗原特異的T細胞、および免疫系の非特異的細胞によって媒介される応答)、および体液性免疫応答(例えば、B細胞によって媒介される応答、例えば、抗体の産生、ならびに血漿、リンパ液および/または組織液中への抗体の分泌)を指す。
【0404】
用語「免疫原性」は、アジュバントの存在下または非存在下で、単独であっても担体と連結された場合であっても、免疫応答を引き起こす、惹起する、刺激するもしくは誘導する、または特定の抗原に対する既存の免疫応答を改善する、増強する、増加させるもしくは延長させる、物質の能力を指す。
【0405】
本明細書で提供されるがんを処置するための組成物および方法は、1つ以上の他の免疫モジュレーターをさらに含み得る。
【0406】
一部の実施形態では、免疫モジュレーターは、抗CD40アゴニスト抗体であり得る。抗体は、例えば、ヒト、ヒト化または一部ヒトキメラ抗CD40抗体であり得る。特異的抗CD40モノクローナル抗体の例には、G28-5、mAb89、EA-5もしくはS2C6モノクローナル抗体、CP870893、またはAPX005Mが含まれる。特定の実施形態では、抗CD40アゴニスト抗体は、CP870893またはダセツズマブ(SGN-40)である。
【0407】
CP-870,893は、抗腫瘍治療として臨床的に調査された完全ヒトアゴニスト抗CD40モノクローナル抗体である。CP870,893の構造および調製は、WO2003040170に開示されており、そこで、抗体CP870,893は、抗体「21.4.1」として同定されている。CP-870,893の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号46および配列番号48に示され、WO2003040170の表7中にも示される。臨床試験では、CP870,893は、一般には注入1回当たり0.05~0.25mg/kgの範囲の用量で、静脈内注入によって投与された。本明細書で提供されるがんを処置するための方法では、CP-870,893は、皮内、皮下または外用投与され得る。
【0408】
ダセツズマブ(SGN-40またはhuS2C6としても公知;CAS番号88-486-59-9)は、インドレントリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫および多発性骨髄腫に対する臨床試験において調査された別の例示的な抗CD40アゴニスト抗体である。本明細書で提供されるがんを処置するための方法では、ダセツズマブは、皮内、皮下または外用投与され得る。
【0409】
サイトカイン放出症候群(CRS)
本発明は、CRSを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のGDF15抗体を投与するステップを含む方法を包含する。CRSは、モノクローナル抗体およびT細胞免疫療法剤の投与後に時折見られる全身性炎症応答である(Shimabukuro-Vornhagenら、Journal for ImmunoTherapy of Cancer 6、56(2018))。CRSの病態生理学、およびCRSの全身性炎症応答を永続させる種々のサイトカインの大量放出を誘発する起因事象については、ほとんど知られていない。
【0410】
一部の実施形態では、本発明は、CRSの処置を必要とする対象において、CRSを処置する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0411】
他の実施形態では、この方法は、有効量の第2の治療剤を投与するステップをさらに含み得る。第2の治療剤には、抗炎症剤、例えば、IL-6阻害剤、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)阻害剤、インターフェロンガンマ(IFN-γ)阻害剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬および/または抗生物質が含まれる。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗体、例えば、トシリズマブおよび/またはシルツキシマブである。
【0412】
本発明は、CRSを処置するための方法における使用のための、本明細書で定義されるGDF15抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物もまた提供する。本発明は、CRSを処置するための医薬の製造における、本明細書で定義されるGDF15抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物の使用もまた提供する。本明細書に記載される処置の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態もまた、その処置における使用のための、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造のための、抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物に関するさらなる実施形態である。
【0413】
GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストの組み合わせ治療
本発明は、がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、PD-1軸結合性アンタゴニストと組み合わせたGDF15抗体を投与するステップを含み、この組み合わせが、がんを処置する際に有効である、方法を包含する。即ち、本明細書で開示されるデータは、抗GDF15抗体およびPD-1軸アンタゴニストの組み合わせが、がんの処置において治療効果を提供することを実証している。このデータは、抗GDF-15およびPD-1軸アンタゴニストの組み合わせが、単独で投与される各治療の予測される相加的効果よりも高い治療効果である相乗的治療効果を提供することをさらに実証している。
【0414】
本発明は、がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、がんを処置する際に有効である、一定量のPD-1軸結合性アンタゴニストと組み合わせた一定量のGDF15阻害剤を投与するステップを含む、方法を包含する。本発明は、がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、一定量のGDF15阻害剤および一定量のPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、がんを処置する際に有効である、方法もまた包含する。別の実施形態では、本発明は、がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、一定量のGDF15阻害剤および一定量のPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、がんの処置において相乗的効果を達成する、即ち、組み合わせが「相乗的」である、方法に関する。一態様では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体GDF15_001であり、PD-1軸結合性アンタゴニストは、アベルマブ、PF-06801591(ササンリマブ、RN-888)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。本発明は、がんの処置における使用のための、GDF15阻害剤およびPD-1軸結合性アンタゴニストならびに薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を包含する。本発明は、がんの処置における使用のための、相乗的有効量のGDF15阻害剤、相乗的治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニストおよび薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物を包含する。この組成物は、例えば、少なくとも1つの化学療法剤であるがこれに限定されないさらなる治療剤をさらに含み得る。
【0415】
当業者は、本明細書で提供される開示に基づいて、本発明のがんを処置する方法が、がんを処置するために、少なくとも1つのさらなる治療剤で以前に処置されたまたはそれを現在受けている患者に、相乗的治療有効量の抗GDF15抗体および相乗的治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体など)を投与するステップを包含することを理解する。かかるさらなる治療剤は、がんを処置するための標準治療である薬剤を包含する。即ち、本発明の組み合わせ治療は、手術、放射線、化学療法、および当該分野で公知の任意の他の治療が含まれるがこれらに限定されない異なる治療をすでに受けているがん患者の治療レジメンに追加され得る。
【0416】
当業者は、公知の方法に従って、患者に投与するために本発明の組み合わせにおいて使用される、各化合物の適切な量、用量または投薬量を、年齢、体重、総体的な健康、投与される化合物、投与の経路、処置を必要とするがんの性質および進行、他の薬物療法の存在などの因子を考慮に入れて、決定することができる。
【0417】
ある実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体またはその抗原結合性部分であり、約0.025mg/kg~約20mg/kgの初期用量で、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。初期用量の後には、1つ以上の引き続く用量が続き得る。一部の実施形態では、1つ以上の引き続く用量は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎の少なくともいずれかで投与され得る。
【0418】
一部の実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、約0.25mg~約2000mgの固定用量として、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗体は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎に投与される。
【0419】
一部の実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、抗GDF15抗体は、毎週約0.1~約60mgの固定用量として、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、毎週約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgの固定用量として投与される。
【0420】
一部の実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、抗GDF15抗体は、1週間おきに約0.1~約130mgの固定用量として、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、隔週で約5mg、約10mg、約12mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mgおよび約125mgの固定用量として投与される。
【0421】
一部の実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、抗GDF15抗体は、21日(±2日)毎に約0.1~約400mgの固定用量として、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、21日(±2日)毎に投与される約15mg、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mgおよび約385mgの固定用量として投与される。
【0422】
一部の実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、抗GDF15抗体は、28日(±2日)毎に約0.1~約400mgの固定用量として、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、28日(±2日)毎に投与される約15mg、約25mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mgおよび約385mgの固定用量として投与される。
【0423】
本発明の方法の実施は、種々の投与または投薬レジメンを介して達成され得る。本発明の組み合わせの化合物は、間欠的に、同時発生的にまたは逐次的に投与され得る。ある実施形態では、本発明の組み合わせの化合物は、同時発生的な投薬レジメンで投与され得る。
【0424】
投与または投薬レジメンの反復は、がん細胞の所望の低減または減弱を達成するために、必要に応じて実施され得る。「持続的投薬スケジュール」は、本明細書で使用する場合、用量中断なしの、例えば、処置なしの日なしの、投与または投薬レジメンである。処置サイクル間の用量中断なしの21日または28日の処置サイクルの反復は、持続的投薬スケジュールの一例である。ある実施形態では、本発明の組み合わせの化合物は、持続的投薬スケジュールで投与され得る。ある実施形態では、本発明の組み合わせの化合物は、持続的投薬スケジュールで、同時発生的に投与され得る。
【0425】
ある実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体である。一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、GDF15_001である。
【0426】
一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、PD-L1結合性アンタゴニストである。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、例えば、MEDI4736、MPDL3280A(YW243.55.s70)、BMS-936559(MDX-1105)、アベルマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブであるがこれらに限定されない抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、アベルマブであり、処置の過程を通じて、約14日間(±2日間)または約21日間(±2日間)または約30日間(±2日間)の間隔で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20mg/kgの用量で、静脈内投与され得る。一部の実施形態では、アベルマブは、処置の過程を通じて、約14日間(±2日間)または約21日間(±2日間)または約30日間(±2日間)の間隔で、約80、150、160、200、240、250、300、320、350、400、450、480、500、550、560、600、640、650、700、720、750、800、850、880、900、950、960、1000、1040、1050、1100、1120、1150、1200、1250、1280、1300、1350、1360、1400、1440、1500、1520、1550または1600mg、好ましくは800mg、1200mgまたは1600mgの一律用量として投与される。ある特定の実施形態では、対象には、本明細書に記載されるPD-1軸結合性アンタゴニストのいずれかを含む医薬の静脈内(IV)注入が投与される。ある特定の実施形態では、対象には、本明細書に記載されるPD-1軸結合性アンタゴニストのいずれかを含む医薬の皮下(SC)注入が投与される。
【0427】
一部の実施形態では、PD-1軸アンタゴニストは、PD-1軸結合性アンタゴニストである。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体、例えば、PF-06801591(ササンリマブ、RN888)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、チスレリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブであり、抗GDF15抗体は、処置の過程を通じて、約14日間(±2日間)または約21日間(±2日間)または約30日間(±2日間)の間隔で、約1、2、3、4、5、6、7または8mg/kgの用量で、静脈内または皮下投与されるが、好ましくは皮下投与される。一部の実施形態では、US2016/159905に開示されるPF-06801591(ササンリマブ、RN-888)は、約14日間(±2日間)または約21日間(±2日間)または約30日間(±2日間)または約35日間(±2日間)または約42日間(±2日間)の間隔で、約80、150、160、200、240、250、300、320、350、400、450、500、550または600mg、好ましくは300mgの一律用量として投与される。一部の実施形態では、PF-06801591(ササンリマブ、RN888)は、300mg Q4Wの量で皮下投与される。一部の実施形態では、PF-06801591(ササンリマブ、RN888、mAb7)は、600mg Q6Wの量で皮下投与される。
【0428】
さらに、本発明は、がんを処置するための方法であって、それを必要とする患者に、一定量のGDF15抗体および一定量のPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するステップを含み、これらの量が一緒になって、別々の効果が一緒に加算された抗GDF15抗体の治療効果およびPD-1軸結合性阻害剤の治療効果よりも大きい、がんの処置における相乗的効果を達成する、方法に関する。本発明の方法または使用は、標的化された治療剤、特に、GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストの相乗的組み合わせに関する。実施形態の一態様では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、PD-1軸結合性アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、チスレリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブ、PF-06801591(ササンリマブ、RN888、mAb7)、アベルマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。実施形態の一態様では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体であり、PD-1軸結合性アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、チスレリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブ、PF-06801591(ササンリマブ、RN888、mAb7)、アテゾリズマブ、デュルバルマブからなる群から選択され、アベルマブではない。
【0429】
本発明によれば、一定量の第1の化合物または構成要素、例えば、GDF15阻害剤が、一定量の第2の化合物または構成要素、例えば、PD-1軸結合性アンタゴニスト(これにはアベルマブは含まれない)と共に投与され、これらの量が一緒になって、がんの処置において有効である。一緒になって有効であるこれらの量は、処置されている障害の症状のうち1つ以上を、ある程度まで緩和する。がんの処置に関して、有効量は、(1)腫瘍のサイズを低減させる効果、(2)腫瘍転移発生を阻害する(即ち、ある程度まで減速させる、好ましくは停止させる)効果、(3)腫瘍成長もしくは腫瘍侵襲性をある程度まで阻害する(即ち、ある程度まで減速させる、好ましくは停止させる)効果、および/または(4)がんと関連する1つ以上の徴候もしくは症状をある程度まで緩和する(または、好ましくは、排除する)効果、を有する量を指す。用量および投与レジメンの治療的または薬理学的有効性は、疾患進行前の時間の延長として測定され得る、これらの特定の腫瘍を有する患者における疾患制御および/または全生存を誘導、増強、維持または延長させる能力としても特徴付けられ得る。
【0430】
本発明は、単独での、または他の治療と組み合わせた、本開示の抗GDF15抗体またはその抗原結合性部分を必要とする対象への、単独での、または他の治療と組み合わせた、本開示の抗GDF15抗体またはその抗原結合性部分の投与のための方法を提供する。本開示の組み合わせ治療(例えば、抗GDF15およびPD-1軸アンタゴニスト)は、対象に、付随的または逐次的に投与され得る。本開示の抗GDF15およびPD-1軸アンタゴニスト組み合わせ治療は、周期的にも投与され得る。周期的治療には、治療(例えば、薬剤)のうち1つの副作用を回避もしくは低減させるために治療(例えば、薬剤)のうち1つに対する抵抗性の発達を低減させるため、および/または治療の効力を改善するために、一定期間にわたる第1の治療(例えば、第1の予防剤または治療剤)の投与、その後の、一定期間にわたる第2の治療(例えば、第2の予防剤または治療剤)の投与、およびこの逐次的な投与、を反復すること、即ち、サイクルが関与する。
【0431】
本発明は、処置の定義された方法における使用のための、本明細書で定義される抗GDF15抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物をさらに包含し、この抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物は、本明細書で定義されるように、PD-1軸結合性アンタゴニストと組み合わせて投与される。本明細書に記載される処置の方法に言及する実施形態では、かかる実施形態もまた、その処置における使用のための、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造のための、抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物に関するさらなる実施形態である。
【0432】
本開示の組み合わせ治療の治療(例えば、予防剤または治療剤)は、対象に同時発生的に投与され得る。用語「同時発生的に」は、治療(例えば、予防剤または治療剤)の投与が正確に同時であることに限定されないが、むしろ、それらが他の方法で投与された場合よりも大きい増加した利益を提供するように他の治療(例えば、アベルマブが含まれない場合があるPD-1軸アンタゴニスト)と一緒に抗体が作用できるような、より好ましくは、別々に投与された2つの治療の相加的効果よりも大きい治療効果である「相乗的治療効果」を組み合わせ治療が提供するような順番で、かつそのような時間間隔内に、本開示のGDF15抗体またはその抗原結合性部分を含む医薬組成物が対象に投与されることを意味する。例えば、各治療は、対象に、同時に、または異なる時点において任意の順序で逐次的に投与され得る;しかし、同時に投与されない場合、これらは、所望の治療効果または予防効果を提供するために、時間的に十分に接近して投与すべきである。各治療は、任意の適切な形態で、任意の適切な経路によって、対象に別々に投与され得る。抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、任意の本発明の抗体、好ましくは、GDF-15_001であり得る。PD-1軸アンタゴニストには、PD-1結合性アンタゴニスト、PD-L1結合性アンタゴニストおよびPD-L2結合性アンタゴニストが含まれるがこれらに限定されない。他の態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片である。さらなる態様では、抗PD-1抗体には、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびPF-06801591(ササンリマブ、RN888)が含まれるがこれらに限定されない。他の態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片である。他の態様では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(MDX-1105)、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブである。他の態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性断片であるが、アベルマブではない。
【0433】
種々の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、PD-1軸アンタゴニスト(例えば、とりわけ、抗PD-1抗体、アベルマブが含まれない場合がある抗PD-L1抗体、または抗PD-L2抗体)の投与から、15分未満、30分未満、1時間未満離れて、約1時間離れて、約1時間~約2時間離れて、約2時間~約3時間離れて、約3時間~約4時間離れて、約4時間~約5時間離れて、約5時間~約6時間離れて、約6時間~約7時間離れて、約7時間~約8時間離れて、約8時間~約9時間離れて、約9時間~約10時間離れて、約10時間~約11時間離れて、約11時間~約12時間離れて、24時間離れて、48時間離れて、72時間離れて、または1週間離れて、対象に投与される。他の実施形態では、2つ以上の治療(例えば、抗GDF15抗体、アベルマブが含まれない場合がある抗PD-L1抗体、および化学療法剤)は、同じ患者来院内に、患者に投与される。
【0434】
組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、同じ医薬組成物中で対象に投与され得る。あるいは、組み合わせ治療の予防剤または治療剤は、別々の医薬組成物で、対象に同時発生的に投与され得る。予防剤または治療剤は、同じまたは異なる経路の投与によって、対象に投与され得る。
【0435】
診断方法
本発明の抗GDF15抗体、抗体組成物および方法は、イムノアッセイ、ならびにGDF15媒介性障害の診断、および処置の評価のための使用を含む、in vitroおよびin vivoの有用性を有する。これらの方法は、GDF15の存在、より好ましくは、増加したレベルのGDF15と関連する障害を有するヒト患者を診断、評価および処置するために特に適切であり、ここで、増加したレベルのGDF15は、健康なヒトボランティアにおける遊離GDF-15の血漿濃度を上回る増加したレベルを包含する。GDF15の存在と関連するこの障害には、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓疾患、慢性心不全、うっ血性心不全またはサルコペニアと関連する悪液質が含まれるがこれらに限定されない。
【0436】
本発明は、サンプル中のGDF15の存在を検出するための方法であって、GDF15を含むと疑われるサンプルを、GDF15に対して特異的な抗体と接触させるステップ、および抗体と結合したGDF15の存在を検出するステップを含み、それによって、サンプル中のGDF15を検出する、方法を提供する。GDF15が固体支持体に結合され、サンプルがそれに添加されて、サンプル中のGDF15に抗体を結合させるアッセイが含まれるがこれに限定されない、抗体と結合したGDF15を検出するための方法が、当該分野で周知である。固体支持体に結合した抗体と同じまたはそれとは異なる第2のGDF15抗体が添加され、直接的標識化(即ち、第2の抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる)によって、または例えば、第2の抗体の定常ドメインと反応し、検出可能な標識を含む、別の種由来の第3の抗体を添加することによって、検出され得る。したがって、このアッセイは、サンプル中のGDF15の存在または非存在を検出するために使用され得る。
【0437】
別の実施形態では、本発明は、サンプル中のGDF15の存在を検出するためのキットであって、GDF15に対して特異的な抗体、アプリケーター、およびそれらの使用のための指導用材料を含む、キットを含む。
【0438】
本発明は、サンプル中のGDF15の濃度を決定するための方法であって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手を提供するステップ;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供するステップ;サンプル、抗体および標識された競合相手を組み合わせるステップであって、サンプル中のGDF15が、抗体への結合について、標識された競合相手と競合する、ステップ;ならびに標識の検出によって、抗体に結合していない標識された競合相手の量を測定することによって、このサンプル中のGDF15の濃度を決定するステップ、を含む方法もまた提供する。サンプルの非存在下で抗体に結合した標識された競合相手の量が、サンプルが添加された場合の抗体に結合した標識された競合相手の量と比較される。サンプルの存在下での結合した標識された競合相手の減少の量は、サンプル中に存在する標識されていないGDF15の量の指標であり、その結果、このアッセイは、サンプル中のGDF15の存在およびレベルを評価するために使用され得る。
【0439】
一実施形態では、本発明は、対象において、増加したレベルのGDF15と関連する疾患または障害に対する処置の有効性を評価するための方法であって、対象に処置を投与するステップ、および処置の前に対象から得られたサンプル中のGDF15のレベルを、処置の後に対象から得られた他の点では同一のサンプル中のGDF15のレベルと比較するステップ、を含み、サンプル中のGDF15のレベルが、GDF15特異的抗体を使用して評価され、さらに、処置の前に対象から収集されたサンプル中のGDF15のレベルと比較した、処置の後に対象から収集されたサンプル中のGDF15のより低いレベルが、処置の過程の有効性の指標である、方法を提供する。
【0440】
GDF15特異的抗体または標識された競合相手に関して、「標識された」という用語は、検出可能な物質を抗体または標識された競合相手にカップリングする(即ち、物理的に連結する)ことによる直接的標識化、ならびにそれを直接標識される別の試薬にカップリングすることによる、抗体または標識された競合相手の間接的標識化を含む。間接的標識化の一例には、蛍光標識した二次抗体を使用した一次抗体の検出が含まれる。本発明のポリペプチドの検出のためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光が含まれる。
【0441】
用語「生物学的サンプル」は、対象から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体を含む意図である。
【0442】
本明細書に記載される抗体、標識された競合相手、および潜在的な治療的化合物は、様々な検出システムを用いたいくつかの他の均一および不均一イムノアッセイのいずれかとの使用のためにも適切である。
【0443】
組成物
本発明のGDF15抗体は、医薬組成物として製剤化され得る。医薬組成物は、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態の、薬学的に許容できる担体、賦形剤および/または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)をさらに含み得る。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム(octadecyldimethylbenzyl ammonium chloride);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストランが含まれる、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤は、本明細書にさらに記載される。
【0444】
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載されるPD-1軸アンタゴニストおよび本明細書に記載されるGDF15阻害剤をさらに含み得る。一実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体GDF15_001またはGDF15_297であり、PD-1軸アンタゴニストは、任意選択により、アベルマブ、PF-06801591(「ササンリマブ」および「RN-888」およびmAb7とも呼ばれ、全てWO2016/092419に開示されている)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。一実施形態では、PD-1軸アンタゴニストには、アベルマブは含まれない。
【0445】
本開示の医薬化合物には、1つ以上の薬学的に許容できる塩が含まれ得る。かかる塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに非毒性有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族ならびに芳香族スルホン酸などに由来するものが含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに非毒性有機アミン、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが含まれる。
【0446】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容できる抗酸化剤もまた含み得る。薬学的に許容できる抗酸化剤の例には、以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0447】
本開示の医薬組成物において使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0448】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤もまた含み得る。微生物の存在の防止は、無菌化手順、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めること、の両方によって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0449】
医薬組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、高い薬物濃度に適切な、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の秩序立った構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが適切である。注射可能な組成物の延長された吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0450】
無菌の注射可能な溶液は、上に列挙した成分のうち1つまたはその組み合わせと共に、適切な溶媒中に活性化合物を要求される量で取り込み、その後、必要に応じて、無菌化精密濾過することによって、調製され得る。
【0451】
一般に、分散物は、基本分散媒および上に列挙したものからの要求される他の成分を含む無菌のビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製の好ましい方法は、その以前に無菌濾過された溶液から、活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0452】
本開示の医薬組成物は、点眼投与に適切な製剤で、調製、包装または販売され得る。かかる製剤は、例えば、水性または油性液体担体中の活性成分の0.1%~1.0%(w/w)溶液または懸濁物を例えば含む点眼薬の形態であり得る。かかる点眼薬は、緩衝剤、塩、または本明細書に記載されるさらなる成分のうち1つ以上の他のものをさらに含み得る。有用な他の点眼投与可能な製剤には、微結晶形態で、またはリポソーム調製物中に、活性成分を含むものが含まれる。
【0453】
本明細書で使用する場合、「さらなる成分」には、以下のうち1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;生理学的に分解可能な組成物、例えば、ゼラチン;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、乳化破壊剤(demulcent);緩衝液;塩;増粘剤;フィラー;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および薬学的に許容できるポリマー性または疎水性材料。本開示の医薬組成物中に含められ得る他の「さらなる成分」は、当該分野で公知であり、例えば、本明細書で参照によって組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Genaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1985)に記載されている。
【0454】
一実施形態では、GDF15抗体またはその抗原結合性部分は、約5~6の範囲のpHで、酢酸ナトリウム、ポリソルベート80および塩化ナトリウムと共に、5mg/mL、または一部の実施形態では、約10mg/mL、または一部の実施形態では、約15mg/mL、または一部の実施形態では、約20mg/mLの抗体、または一部の実施形態では、約25mg/mL、または一部の実施形態では、約50mg/mLを含む無菌の水溶液として、静脈内製剤で投与される。一部の実施形態では、静脈内製剤は、pH5.5で、20mM酢酸ナトリウム、0.2mg/mLポリソルベート80および140mM塩化ナトリウムと共に、5または10mg/mLの抗体を含む、無菌の水溶液である。さらに、抗体またはその抗原結合性部分を含む溶液は、多くの他の化合物の中でも、ヒスチジン、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリシン、ポリ(エチレン)グリコール、EDTA、メチオニンおよびそれらの任意の組み合わせ、ならびに当該分野で公知の多くの他の化合物を含み得る。
【0455】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、50mg/mLの本開示のGDF15抗体または抗原結合性部分、20mMヒスチジン、8.5%スクロースおよび0.02%ポリソルベート80、0.005%EDTA;別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、100mg/mLの本開示のGDF15抗体または抗原結合性部分、10mMヒスチジン、5%スクロースおよび0.01%ポリソルベート80。この組成物は、液体製剤として、または凍結乾燥された粉末として、提供され得る。粉末が最大体積で再構成される場合、組成物は、同じ製剤を保持する。あるいは、粉末は、半分体積で再構成され得、その場合、組成物は、pH5.8で、100mgの本開示のGDF15抗体またはその抗原結合性部分、20mMヒスチジン、10%スクロースおよび0.02%ポリソルベート80を含む。
【0456】
一実施形態では、用量の一部は、静脈内ボーラスによって投与され、残りは、抗体製剤の注入によって投与される。例えば、GDF15抗体またはその抗原結合性部分の0.01mg/kg静脈内注射は、ボーラスとして与えられ得、抗体用量の残りは、静脈内注射によって投与され得る。所定の用量のGDF15抗体またはその抗原結合性部分は、例えば、1時間半~2時間~5時間の期間にわたって、投与され得る。
【0457】
治療剤に関して、この薬剤が例えば小分子である場合、これは、当該分野で周知のように、例えば、生理学的に許容できるカチオンまたはアニオンと組み合わせた、生理学的に許容できるエステルまたは塩の形態で、医薬組成物中に存在し得る。
【0458】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を、担体または1つ以上の他の補助成分と関連させるステップ、および次いで、必要な場合または望ましい場合、産物を所望の単回用量単位または複数用量単位へと成形または包装するステップを含む。
【0459】
一実施形態では、本開示の組成物は、エンドトキシンおよび/または関連の発熱性物質を実質的に含まない、発熱物質を含まない製剤である。エンドトキシンには、微生物の内側に制限される毒素が含まれ、これは、微生物が破壊または死亡した場合に放出される。発熱性物質には、細菌および他の微生物の外膜からの、発熱誘導性の熱安定性物質(糖タンパク質)もまた含まれる。これらの物質は共に、ヒトに投与されると、発熱、低血圧およびショックを引き起こし得る。潜在的な有害作用に起因して、静脈内投与される医薬薬物溶液から、低い量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物適用のための、単一の1時間の期間における、体重1キログラム当たり1用量当たり、5エンドトキシン単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention、Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。治療的タンパク質が、体重1キログラム当たり数百または数千ミリグラムの量で投与される場合、微量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。一実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。別の実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、約10EU/mg未満、または約5EU/mg未満、または約1EU/mg未満、または約0.1EU/mg未満、または約0.01EU/mg未満、または約0.001EU/mg未満である。
【0460】
一実施形態では、本開示は、組成物を投与することを含み、この投与は、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、腟、直腸、舌、舌下、頬、頬内、静脈内、皮膚、皮下または経皮である。
【0461】
別の実施形態では、本開示は、他の治療、例えば、手術、化学療法、ホルモン療法、生物学的治療、免疫療法または放射線治療と組み合わせて、組成物を投与することをさらに含む。
【0462】
投薬量
本開示のGDF15抗体またはその抗原結合性部分を含む医薬組成物または無菌の組成物を調製するために、抗体は、薬学的に許容できる担体または賦形剤と混合される。治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥された粉末、スラリー、水溶液、ローションまたは懸濁物の形態の、生理学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott,Williams,and Wilkins、New York、N.Y.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.を参照のこと)。
【0463】
治療薬のために投与レジメンを選択することは、実体の血清または組織ターンオーバー速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞のアクセス可能性が含まれるいくつかの因子に依存する。ある特定の実施形態では、投与レジメンは、許容できるレベルの副作用と合致した、患者に送達される治療薬の量を最大化する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の実体、および処置されている状態の重症度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際のガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak、1996、Antibody Therapy、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)、1991、Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Bach(編)、1993、Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Baertら、2003、New Engl.J.Med.348:601~608;Milgromら、1999、New Engl.J.Med.341:1966~1973;Slamonら、2001、New Engl.J.Med.344:783~792;Beniaminovitzら、2000、New Engl.J.Med.342:613~619;Ghoshら、2003、New Engl.J.Med.348:24~32;Lipskyら、2000、New Engl.J.Med.343:1594~1602を参照のこと)。
【0464】
適切な用量の決定は、例えば、当該分野で公知の、または処置に影響を与えると疑われるもしくは処置に影響を与えると予測される、パラメーターまたは因子を使用して、臨床医によってなされる。一般に、用量は、最適な用量よりもいくらか少ない量で開始し、任意の負の副作用と比較して所望のまたは最適な効果が達成されるまで、その後小さい増分ずつ増加される。
【0465】
「GDF15のレベルを低減させる」または「GDF15のレベルを低下させる」は、これらの用語が本明細書で使用される場合、任意の治療的介入の前の遊離GDF15のレベルと比較して、遊離GDF15のレベルを低下させることを意味する。本明細書で使用する場合、「遊離GDF15」は、結合していない、またはさもなくば別の分子(例えば、血漿中などに存在する抗体または結合分子)との複合体中に存在しないGDF15を意味する。
【0466】
GDF15のレベルには、対象における遊離GDF15のレベルが含まれ、このレベルは、本明細書で開示される方法または当該分野で公知の遊離GDF15のレベルを評価するための任意の他の方法を使用して、評価される。
【0467】
一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、本発明の抗体の投与前の対象におけるGDF15のレベルと比較して低減される。一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、増加したレベルの遊離GDF15と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害または状態に対象が罹患していないことと関連するまたはそれを示す標準的なレベルの遊離GDF15と比較して低減される。一実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、血漿中で約0.05ng/mL~約3ng/mLである。別の実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、その下限値が、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9ng/mLからなる群から選択され、その上限値が、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9および3.0ng/mLからなる群から選択される範囲内である。さらなる実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、1ng/mL未満、好ましくは0.9ng/mL未満、さらにより好ましくは0.8ng/mL未満、なおより好ましくは0.7ng/mL未満、さらにより好ましくは0.6ng/mL未満、なおより好ましくは0.5ng/mL未満、さらにより好ましくは0.4ng/ml未満である。一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、血漿中のレベルである。
【0468】
本発明は、0.5ng/mL未満の遊離GDF15レベルに限定されない;そのかわり、治療レベルは、特定の対象について、0.5ng/mLよりも低くても高くてもよいことが、当業者によって理解される。したがって、本発明は、増加したレベルの遊離GDF15によって媒介されるまたはそれと関連する検出可能な有害作用の減少またはその完全な欠如が存在するレベルまで、遊離GDF15のレベルを低減させることを包含する。かかる効果には、悪液質、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量、減少した除脂肪量などが含まれるがこれらに限定されない。
【0469】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投薬量」、「有効用量」、「有効量」または「治療有効量」は、任意の1つ以上の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を低下させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に存在する中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症状を含む、疾患の開始を遅延させること、が含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、検出可能な臨床結果、例えば、体重減少の速度を低減もしくは減少させること、または活性GDF15の高い発現から生じる1つ以上の症状(例えば、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量および減少した除脂肪量)を低減させること、疾患を処置するために要求される他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、および/もしくは患者の疾患の進行を遅延させること、が含まれる。有効投薬量は、1つ以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、予防的処置または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1つ以上の治療剤を投与する観点から検討され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0470】
一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の有効投薬量は、健康なヒトボランティアおよび罹患患者における遊離GDF-15の血漿濃度に基づく。全体の有効な用量は、罹患患者における遊離GDF-15の初期血漿濃度に基づく。一実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔全体にわたって、定常状態で、対象における遊離GDF15レベルを、健康なヒトボランティアにおいて測定された同じまたはより低い平均レベルまで低下または低減させる能力を有する投薬量であり得る。別の実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔全体にわたって、定常状態で、患者における遊離GDF15レベルを、0.5ng/mL未満まで低下または低減させる能力を有する投薬量であり得る。なお別の実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔を通じて、定常状態で、対象における遊離GDF15レベルを、0.5ng/mL未満まで低下または低減させることができる、70kgの対象に与えられる投薬量であり得る。
【0471】
「個体」、「患者」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物には、家畜、スポーツ動物(sport animal)、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットもまた含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、個体は、その受容体へのGDF15結合およびそれによって媒介されるシグナル伝達によって媒介されるまたはそれと関連する疾患、障害または状態のリスクがあるとみなされる。ある特定の実施形態では、対象は、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性心不全、うっ血性心不全、サルコペニア、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコペニアおよび慢性腎臓疾患(CKD)と関連する悪液質を有する。
【0472】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物の約0.025mg/kg~約20mg/kgの初期用量を投与することを含む。初期用量には、1つ以上の引き続く用量が後に続き得る。一部の実施形態では、1つ以上の引き続く用量は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎の少なくともいずれかで投与され得る。
【0473】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.25mg~約2000mgの固定用量を投与することを含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎に投与される。
【0474】
他の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約60mgの固定用量を毎週投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、毎週投与される約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgである。
【0475】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約130mgの固定用量を1週間おきに投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、隔週で投与される約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mgおよび約125mgである。
【0476】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約400mgの固定用量を4週間毎に投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、4週間毎に投与される約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mgおよび約385mgである。
【0477】
キット
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むキットまたは製造品、および使用のための指示もまた提供する。したがって、一部の実施形態では、コンテナ、コンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、およびそれを必要とする患者の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。
【0478】
ある特定の実施形態では、キットは、乾燥タンパク質を有する第1のコンテナおよび水性製剤を有する第2のコンテナの両方を含み得る。ある特定の実施形態では、単一および複数チャンバーの事前充填シリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。
【0479】
一実施形態では、本発明は、サンプル中のGDF15の濃度を決定するためのキットであって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;アプリケーター;およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0480】
本発明は、試験サンプル中のGDF15の量を決定するための競合的イムノアッセイキットであって、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;検出可能な標識にコンジュゲートされたGDF15を含む標識された競合相手を含み;標識された競合相手が、抗体との結合について、試験サンプル中のGDF15と競合し、さらに、標識が、試験サンプル中のGDF15の量を示すシグナルを提供する、競合的イムノアッセイキットをさらに提供する。例示的な実施形態では、GDF15を含まない他の点では同一のサンプル中の抗体によって結合された標識と比較した、試験サンプル中の抗体によって結合された標識における減少は、試験サンプル中のGDF15の量の指標である。
【0481】
一実施形態では、本発明は、サンプル中のGDF15の濃度を決定するためのキットであって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;アプリケーター;およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0482】
代替的な実施形態では、本発明は、悪液質のリスクがあるヒト患者を同定するためのキットであって、GDF15特異的抗体またはその抗原結合性断片、アプリケーター、およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0483】
一部の実施形態では、第1のコンテナ、このコンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内のPD-1軸結合性アンタゴニストを含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。
【0484】
本発明は、第1のコンテナ、このコンテナ内の相乗的治療有効量の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニストを含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の組み合わせ処置のために相乗的治療有効量の抗GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品を包含する。
【0485】
一部の態様では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、PD-1抗体またはその抗原結合性断片、PD-L1抗体またはその抗原結合性断片、およびPD-L2抗体またはその抗原結合性断片からなる群から選択される。一部の態様では、PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびPF-06801591(ササンリマブ、RN888)からなる群から選択される。他の態様では、PD-L1抗体は、任意選択により、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブからなる群から選択される。他の態様では、PD-L1抗体は、アベルマブではない。
【0486】
他の実施形態では、第1のコンテナ、このコンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の抗がん治療剤を含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体および抗がん治療剤を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。一部の態様では、抗がん治療剤は、抗CD40抗体である。
【0487】
本発明は、第1のコンテナ、このコンテナ内の相乗的治療有効量の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の治療有効量の抗がん治療剤を含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の組み合わせ処置のために相乗的治療有効量の抗GDF15抗体および抗がん治療剤を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品を包含する。一部の実施形態では、抗がん治療剤は、抗CD40抗体である。
【0488】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する指示は、一般に、意図した処置のための投薬量、投薬スケジュール、および投与の経路に関する情報を含む。コンテナは、単位用量、バルク包装(例えば、多用量包装)またはサブ単位用量であり得る。本発明のキット中に供給される指示は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学保存ディスク上で運搬される指示)もまた許容できる。
【0489】
本発明のキットは、適切な包装中にある。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、インヘラー、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)または注入デバイス、例えば、ミニポンプと組み合わせた使用のための包装もまた企図される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。コンテナもまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。コンテナは、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0490】
キットは、任意選択により、さらなる構成要素、例えば、緩衝液および説明情報を提供し得る。通常、キットは、コンテナ、およびコンテナ上にあるまたはそれと関連したラベルまたは添付文書を含む。
【0491】
定義
「約」または「およそ」は、本明細書で他に定義されない限り、測定可能な数値変数と併せて使用される場合、変数の示された値、および示された値の実験誤差(例えば、平均についての95%信頼区間)または示された値の10パーセントのいずれか大きい方以内の、変数の全ての値を指す。数値範囲は、範囲を規定する数字を含む。
【0492】
用語「同一性」は、当該分野で公知のように、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関連性を指す。当該分野では、「同一性」は、場合によっては、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のストリング間の一致によって決定され得る、ポリペプチドまたは核酸分子配列間の配列関連の程度もまた意味する。「同一性」は、特定の数理モデルのコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメントを用いて、2つ以上の配列間の同一の一致のパーセントを測定する。
【0493】
用語「類似性」は、関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、同一の一致および保存的置換一致の両方を含む類似性の尺度を指す。保存的置換は、ポリペプチドには当てはまり、核酸分子には当てはまらないので、類似性は、ポリペプチド配列比較のみを扱う。2つのポリペプチド配列が、例えば、20個のうち10個の同一なアミノ酸を有し、残りが全て非保存的置換である場合、パーセント同一性および類似性は、共に50%である。同じ例において、保存的置換が存在する5つのさらなる位置が存在する場合、パーセント同一性は、50%のままであるが、パーセント類似性は、75%(20個のうち15個)である。したがって、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド配列間の類似性の程度は、その2つの配列間のパーセント同一性よりも高い。
【0494】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すこと、または選択肢が相互に排他的であることを指すことが明確に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢および「および/または」のみを指す定義を支持する。本明細書で使用する場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、明確に他が示されない限り、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、単語「含む(comprising)」と併せて使用される場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは1つよりも多くを意味し得る。本明細書で使用する場合、「別の」は、少なくとも第2のものまたはそれ以上を意味し得る。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。単語「含む(comprises/comprising)」および単語「有する(having)/含む(including)」は、本発明に関して本明細書で使用される場合、述べられた特色、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するために使用されるが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または追加を除外しない。
【0495】
本明細書で使用する場合、患者に投与されるカルボプラチンの量を記述する場合、用語「計算されたAUC 3用量」、「計算されたAUC 4用量」、「計算されたAUC 5用量」、「計算されたAUC 6用量」などは、それぞれ3、4、5および6mg・分/mLである標的化された曲線下面積(AUC)ならびに患者の糸球体濾過率(GFR、mL/分)に基づいて、以下のCalvert式に従って計算されたカルボプラチンの量を指す:2018年2月に改訂されたNational Comprehensive Cancer Network(登録商標)(NCCN)Chemotherapy Order Templates Appendix Bに記載される、カルボプラチン用量(mg)=標的AUC(mg・分/mL)×(GFR+25)。
【0496】
本明細書で使用する場合、用語「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に対して作用し、またはそのタンパク質を産生する細胞に対して自己分泌効果を有する、1つの細胞集団によって放出されるタンパク質を一般に指す。かかるサイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン;インターロイキン(「IL」)、例えば、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2が含まれる、IL-1、IL-la、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17A-F、IL-18~IL-29(例えば、IL-23)、IL-31;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-aまたはTNF-β、TGF-l-3;ならびに白血病阻害因子(「LIF」)、毛様体神経栄養因子(「CNTF」)、CNTF様サイトカイン(「CLC」)、カルジオトロフィン(「CT」)およびkitリガンド(「L」)が含まれる他のポリペプチド因子が含まれる。
【0497】
本明細書で使用する場合、用語「ケモカイン」は、白血球の走化性および活性化を選択的に誘導する能力を有する可溶性因子(例えば、サイトカイン)を指す。これらはまた、血管新生、炎症、創傷治癒および腫瘍形成のプロセスを誘発する。ケモカインの例には、マウスケラチノサイト化学誘引物質(KC)のヒトホモログであるIL-8が含まれる。
【0498】
用語「がん」、「がん性」または「悪性」は、調節されない細胞成長によって典型的には特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すまたは記述する。がんの例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫および肉腫が含まれるがこれらに限定されない。かかるがんのより特定の例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵がん、多形神経膠芽腫、子宮頸がん、脳腫瘍、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸癌および頭頸部がんが含まれる。がんの別の特定の例には、腎細胞癌が含まれる。
【0499】
用語「処置する」は、本明細書で使用する場合、他に示されない限り、かかる用語が適用される障害もしくは状態、またはかかる障害もしくは状態の1つ以上の症状を逆転させること、軽減すること、その進行を阻害すること、またはそれを予防することを意味する。
【0500】
本発明に従って処置される「患者」には、例えば、ヒト、サルまたは他の下位霊長類、ウマ、イヌ、ウサギ、モルモットまたはマウスであるがこれらに限定されない、任意の温血動物が含まれる。例えば、患者は、ヒトである。医学分野の当業者は、非小細胞肺がんに罹患しており処置を必要としている個々の患者を容易に同定することができる。
【0501】
用語「処置レジメン」、「投薬プロトコール」および投薬レジメンは、本発明の組み合わせ中の各治療剤の用量および投与のタイミングを指すために、相互交換可能に使用される。
【0502】
「寛解させる」は、処置を投与しない場合と比較した、1つ以上の症状の低下または改善を意味する。「寛解させる」は、症状の持続時間における短縮または低減もまた含む。
【0503】
「腫瘍」は、がんと診断されたまたはがんを有すると疑われる対象に適用される場合、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、これには、原発性腫瘍および二次新生物が含まれる。固形腫瘍は、通常は嚢胞も液体エリアも含まない、組織の異常な成長または塊である。異なる型の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の型に由来して名付けられている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫およびリンパ腫である。白血病(血液のがん)は、一般に、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute、Dictionary of Cancer Terms)。
【0504】
「腫瘍負荷」は、「腫瘍量」とも呼ばれ、身体中に分布した腫瘍材料の総量を指す。腫瘍負荷は、リンパ節および骨髄を含む身体中のがん細胞の総数または腫瘍の全体サイズを指す。腫瘍負荷は、例えば、例えばキャリパーを使用して対象からの除去の際の腫瘍の寸法を測定すること、または身体中にありながら、画像化技術、例えば、超音波、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)もしくは磁気共鳴画像化(MRI)スキャンを使用して腫瘍の寸法を測定することなどの、当該分野で公知の種々の方法によって決定され得る。
【0505】
用語「腫瘍サイズ」は、腫瘍の長さおよび幅として測定され得る、腫瘍の全体サイズを指す。腫瘍サイズは、例えば、例えばキャリパーを使用して対象からの除去の際の腫瘍の寸法を測定すること、または身体中にありながら、画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CTもしくはMRIスキャンを使用して腫瘍の寸法を測定することなどの、当該分野で公知の種々の方法によって決定され得る。
【0506】
「個々の応答」または「応答」は、限定なしに、(1)減速もしくは完全な抑止を含む、疾患進行(例えば、がん進行)の、ある程度までの阻害;(2)腫瘍サイズにおける低減;(3)隣接末梢臓器および/もしくは組織中へのがん細胞浸潤の阻害(即ち、低減、減速または完全な停止);(4)転移の阻害(即ち、低減、減速または完全な停止);(5)疾患もしくは障害(例えば、がん)と関連する1つ以上の症状の、ある程度までの緩和;(6)全生存および無増悪生存を含む生存の長さにおける増加もしくは延長;ならびに/または(7)処置後の所与の時点における減少した死亡率、が含まれる、個体にとっての利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
【0507】
医薬による処置に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」および類似の言い回しは、疾患または障害、例えばがんのリスクがある、またはそれを患っている患者に付与される、臨床的または治療的利益を指す。一実施形態では、かかる利益には、以下のうちいずれか1つ以上が含まれる:生存(全生存および/または無増悪生存を含む)を延長させること;客観的応答(完全奏功または部分奏功を含む)を生じさせること;またはがんの徴候もしくは症状を改善すること。
【0508】
「客観的応答」は、完全奏功(CR)または部分奏功(PR)を含む、測定可能な応答を指す。一部の実施形態では、「客観的応答率(ORR)」は、完全奏功(CR)率および部分奏功(PR)率の合計を指す。
【0509】
「完全奏功」または「CR」は、本明細書で使用する場合、処置に応答した、がんの全ての徴候の消失(例えば、全ての標的病変の消失)を意味する。これは、がんが治癒したことを必ずしも意味しない。
【0510】
本明細書で使用する場合、「部分奏功」または「PR」は、処置に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病変のサイズにおける、または身体中のがんの程度における減少を指す。例えば、一部の実施形態では、PRは、ベースライン最長直径(SLD)を参照とした、標的病変のSLDの合計における、少なくとも30%の減少を指す。
【0511】
「持続的応答」は、処置の休止後の、腫瘍成長を低減させることに対する、持続的な効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、医薬投与期の開始時のサイズと比較して、同じサイズまたはより小さいサイズであり得る。一部の実施形態では、持続的応答は、処置持続時間と少なくとも同じ、処置持続時間の長さの少なくとも1.5×、2×、2.5×もしくは3×の長さの、またはそれよりも長い、持続時間を有する。
【0512】
本明細書で使用する場合、「無増悪生存」(PFS)は、処置されている疾患(例えば、がん)が悪化しない、処置の間およびその後の時間の長さを指す。無増悪生存には、患者が完全奏功または部分奏功を経験した時間の量、ならびに患者が安定疾患(stable disease)を経験した時間の量が含まれ得る。
【0513】
一部の実施形態では、「客観的応答」、「完全奏功」、「部分奏功」、「進行性疾患」、「安定疾患」、「無増悪生存」、「応答の持続時間」が含まれる、がんを処置する方法の抗がん効果は、本明細書で使用する場合、転移性CRPC以外の局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者においては、RECIST v1.1(Eisenhauerら、Eur J of Cancer 2009;45(2):228~47)を使用し、転移性CRPCを有する患者においては、RECIST v1.1およびPCWG3(Scherら、J Clin Oncol 2016 Apr 20;34(12):1402~18)を使用して、治験責任医師によって定義および評価されるとおりである。Eisenhauerら、Eur J of Cancer 2009;45(2):228~47およびScherら、J Clin Oncol 2016 Apr 20;34(12):1402~18の開示は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。
【0514】
一部の実施形態では、「免疫関連客観的応答」(irOR)、「免疫関連完全奏功」(irCR)、「免疫関連部分奏功」(irCR)、「免疫関連進行性疾患」(irPD)、「免疫関連安定疾患」(irSD)、「免疫関連無増悪生存」(irPFS)、「免疫関連の応答の持続時間」(irDR)が含まれる、処置の抗がん効果は、本明細書で使用する場合、転移性CRPCを有する患者以外の、局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者について、免疫関連応答基準(irRECIST、Nishinoら、J Immunother Cancer 2014;2:17)によって定義および評価されるとおりである。Nishinoら、J Immunother Cancer 2014;2:17の開示は、その全体が本明細書で参照によって組み込まれる。
【0515】
本明細書で使用する場合、「全生存」(OS)は、特定の持続時間の後に生存している可能性が高い、群中の個体のパーセンテージを指す。
【0516】
「生存を延長させる」は、未処置の患者と比較して(即ち、医薬で処置されていない患者と比較して)、処置された患者において全生存または無増悪生存を増加させることを意味する。
【0517】
本明細書で使用する場合、「薬物関連毒性」、「注入関連反応」および「免疫関連有害事象」(「irAE」)、およびそれらの重症度またはグレードは、National Cancer Institute’s Common Terminology Criteria for Adverse Events v 4.0(NCI CTCAE v 4.0)に例示および定義されるとおりである。
【0518】
本明細書で使用する場合、「~と組み合わせた」または「~と併せた」は、別の処置モダリティに加えた、1つの処置モダリティの投与を指す。このように、「~と組み合わせた」または「~と併せた」は、個体への他の処置モダリティの投与の前、その間またはその後の、1つの処置モダリティの投与を指す。
【0519】
「低用量」は、本明細書で使用する場合、臨床設定において典型的に使用される量または用量よりも低い、物質、薬剤、化合物または組成物の量または用量を指す。
【0520】
用語「進行性」には、本明細書で使用する場合、固形腫瘍と関連する場合、局所進行性(非転移性)疾患および転移性疾患が含まれる。治癒を意図して処置されてもされなくてもよい局所進行性固形腫瘍、および治癒を意図して処置することができない転移性疾患は、本発明において使用される「進行性固形腫瘍」の範囲内に含まれる。当業者は、患者における進行性固形腫瘍を認識および診断することができる。
【0521】
「応答の持続時間」は、本発明の目的のために、薬物処置に起因する腫瘍モデル成長阻害の報告の時間から、処置前成長速度と類似の回復された成長速度の獲得の時間までを意味する。
【0522】
用語「相加的」は、2つの化合物、構成要素または標的化された薬剤の組み合わせの結果が、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の合計以下であることを意味するために使用される。用語「相加的」は、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の使用を超える、処置されている疾患状態または障害における改善が存在しないことを意味する。
【0523】
用語「シナジー」または「相乗的」は、2つの化合物、構成要素または標的化された薬剤の組み合わせの効果が、各薬剤が単独で提供する効果の合計よりも大きいことを意味するために使用される。用語「シナジー」または「相乗的」は、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の別々の使用を超える、処置されている疾患状態または障害における改善が存在することを意味する。処置されている疾患状態または障害におけるこの改善は、「相乗的効果」または「相乗的治療効果」である。「相乗的量」、「相乗的有効量」または「相乗的治療有効量」は、組み合わせて投与された場合に相乗的効果を生じる化合物、構成要素または標的化された薬剤の量であり、「相乗的」は、本明細書で定義される。2つ以上の構成要素間の相乗的相互作用を決定すると、効果のための最適な範囲および効果のための各構成要素の絶対的用量範囲が、処置を必要とする患者への、異なるw/w(重量/重量)比範囲および用量にわたる構成要素の投与によって断定的に測定され得る。しかし、in vitroモデルまたはin vivoモデルにおけるシナジーの観察は、ヒトおよび他の種における効果を予測し得、in vitroモデルまたはin vivoモデルは、本明細書に記載されるように、相乗的効果を測定するために存在し、かかる研究の結果は、ヒトおよび他の種において要求される有効用量および血漿濃度比範囲ならびに絶対的用量および血漿濃度を、薬物動態学的/薬力学的方法の適用によって予測するためにも使用され得る。
【0524】
等価物
上述の説明および以下の実施例は、本開示のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の形態を記載する。しかし、上述がテキスト中に出現し得ることがどんなに詳述されても、本開示が多くの方法で実施され得、本開示が添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物に従って実施されるべきであることが、理解される。
【0525】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される開示から逸脱することなしになされ得ることが理解される。以下の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図しない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0526】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用される全ての参考文献、ならびにまだ引用されていない範囲までその中で引用される参考文献は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料のうち1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない本出願とは異なるまたはそれと矛盾する場合、本出願が支配する。
【0527】
一般技術
本発明は、当然変動し得る、それを作製する特定の合成方法に限定されないことを理解すべきである。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションと併せて使用される術語体系、ならびにそれらの技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。
【0528】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の技術範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);SambrookおよびRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(2002);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1998);Coliganら、Short Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、NY(2003);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献中で完全に説明されている。
【0529】
酵素反応および精製技術は、当該分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、生化学、免疫学、分子生物学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学と併せて使用される術語体系、ならびにそれらの実験室手順ならびに技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。標準的な技術が、化学的合成、化学的分析、医薬の調製、製剤および送達、ならびに患者の処置のために使用される。
【0530】
生物学的寄託
本発明の代表的な材料は、2018年4月4日に、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110-2209、USAに寄託された。ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するベクターGDF15_001-VHは、抗体GDF15_001の重鎖可変領域をコードするDNA挿入物を含むプラスミドを含み、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するベクターGDF15_001-VLは、抗体GDF15_001の軽鎖可変領域をコードするDNA挿入物を含むプラスミドを含む。これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。これは、寄託の日から30年間にわたって寄託物の生存可能な培養物の維持を保証する。寄託物は、Pfizer Inc.とATCCとの間での同意を条件として、ブダペスト条約の条項の下でATCCによって入手可能にされ、これは、関連する米国特許の発行の際、または任意の米国もしくは外国の特許出願の公衆への公開の際のいずれか早い方の時点における、公衆への寄託物の培養物の子孫の恒久的かつ無制限の入手可能性を保証し、米国特許商標庁長官が米国特許法122条およびそれに従う長官規則(特に886 OG 638に関連した米国特許規則1.14を含む)に従って資格ありと決定した者への子孫の入手可能性を保証する。
【0531】
本出願の譲受人は、寄託にかかる材料の培養物が、適切な条件下で培養した場合に万一死んだり失われたり破壊されたりしたときには、通知があり次第それらの材料が同一物の別のもので速やかに置き換えられることに同意している。寄託された材料の入手可能性は、その特許法に従って任意の政府の権限の下で与えられた権利に違反して本発明を実施することの許諾として解釈すべきではない。
【実施例0532】
(実施例1)
抗GDF15抗体
抗体のパネル(表2および5ならびに図29を参照のこと)を生成し、様々な結合および生物物理学的アッセイを横断して比較した。
【0533】
本発明の抗GDF15抗体を、それらのアミノ酸配列、およびCDR領域中の「ホットスポット」(例えば、潜在的なグリコシル化、酸化および化学的分解の部位)の存在に基づいて分析した。抗GDF15抗体のホットスポット配列分析は、以下の表5に示される。GDF15_005、GDF15_006、GDF15_007、GDF15_008、GDF15_009およびGDF15_200は、CDR領域中のN結合型グリコシル化部位の存在を実証し、さらなる研究のためには選択しなかった。
【0534】
【表6-1】
【0535】
【表6-2】
【0536】
(実施例2)
抗GDF15抗体の結合特性:SPRによる、ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15への結合活性
ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15に対する抗体GDF15_001(配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む)の結合親和性を、10Hzの収集速度で37℃でBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用して決定した。マウスFc-ヒトGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15;配列番号2)、マウスFc-マウスGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15;配列番号5)およびマウスFc-カニクイザルGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15;配列番号4)を、製造業者のプロトコールに従ってMouse Antibody Capture Kit(BR100838、GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ(カタログ番号BR100534、GE Healthcare)表面の3つの異なるフローセル上に捕捉した。ランニングおよびサンプル緩衝液は、10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%P-20(HBS-EP+)であった。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15の最終捕捉レベルは、それぞれ、40レゾナンスユニット(RU)、32RUおよび25RUであった。フローセル1を、参照フローセルとして使用した。10nMから0.625nMまでの範囲の濃度を有するGDF15_001の2倍希釈シリーズを、120秒間にわたってセンサー表面上に注入した。解離を2.8時間にわたってモニタリングし、表面を、10mMグリシンpH1.7で再生させた。結合親和性および速度定数を、得られたセンサーグラムデータを、BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0(GE Healthcare)で1:1 Langmuirモデルにフィットさせることによって、マウスおよびカニクイザルGDF15について決定した。親和性値を、以下の表6に示すように決定した。
【0537】
マウスFc-ヒトGDF15に対するGDF15結合性抗体のいくつかのクローンの結合親和性もまた、実施例2で本明細書に記載される方法論を使用して決定し、以下の表6に示す。二価フォーマットで試験した全てのクローンは、150pMを下回る見かけのKD値を実証し、これは、これらが、ヒトGDF15に対する強い結合子であることを示唆している。さらに、カニクイザルおよびマウスGDF15へのクローンGDF15_001の結合を、上で言及したBIAcoreアッセイを使用して測定した(表7)。クローンGDF15_001は、カニクイザルGDF-15への強い結合を示し(見かけのKD 8.28pM)、マウスGDF15への結合を維持し(見かけのKD 142.3pM)、このことが、クローンGDF15_001を、両方の種における前臨床研究にとって適切なものにしている。
【0538】
【表7-1】
【0539】
【表7-2】
【0540】
【表8】
【0541】
(実施例3)
抗GDF15抗体の結合特性:SPRによる、ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15へのモノマー性抗GDF15抗体の結合活性
GDF15へのGDF15_001結合の、結合力効果(avidity effect)なしのKD値を理解するために、モノマー性Fc-Fabを産生し、実施例2で使用したのと同じアッセイにおいて試験した。ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15に対するモノマー性GDF15_001の結合親和性を、10Hzの収集速度で37℃でBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用して決定した。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15を、製造業者のプロトコールに従ってMouse Antibody Capture Kit(BR100838、GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ(カタログ番号BR100534、GE Healthcare)表面の3つの異なるフローセル上に捕捉した。ランニングおよびサンプル緩衝液は、10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%P-20(HBS-EP+)であった。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15の最終捕捉レベルは、それぞれ、19レゾナンスユニット(RU)、22RUおよび19RUであった。フローセル1を、参照フローセルとして使用した。10nMから1.25nMまでの範囲の濃度を有するモノマー性GDF15_00の2倍希釈シリーズを、120秒間にわたってセンサー表面上に注入した。解離を1200秒間にわたってモニタリングし、表面を、10mMグリシンpH1.7で再生させた。結合親和性および速度定数を、得られたセンサーグラムデータを、BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0(GE Healthcare)で1:1 Langmuirモデルにフィットさせることによって決定した。モノマー性クローンGDF15_001は、以下の表8に示すように、マウスGDF15へのより弱い結合(KD 1965.0pM)と共に、ヒト(KD 21.3pM)およびカニクイザルGDF15(KD 62.0pM)への強い結合を実証した。
【0542】
【表9】
【0543】
(実施例4)
抗GDF15抗体の結合特性:ヒトGDF15へのGDF15_001の結合特異性
ヒトGDF15へのGDF15_001の結合特異性を評価するために、さらなるTGFβファミリーメンバーへのGDF15_001結合を試験した。分析を、Octet Red機器で実施した。
【0544】
OctetRED 384(ForteBio、Menlo Park、CA)を使用して、ヒトGDNF(R&D、212-GD/CF)、ヒトインヒビンA(R&D、8506-AB/CF)、ヒトアクチビンB(R&D、659-AB/CF)、ヒトTGFβ-1(R&D、240-B/CF)、ヒトBMP2(R&D、355-BM/CF)、ヒトBMP3b(R&D、1543-BP/CF)、ヒトBMP6(R&D、507-BP/CF)、ヒトBMP9(R&D、3209-BP/CF)、ヒトBMP11(R&D、1958-CD/CF)、ヒトGDF8(Pfizer、41075-201)および対照ヒトGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15)を含む10種のTGFβファミリーメンバーへの、モノマー性GDF15_001(CH23LS-GBT-GDF15_001)のオフターゲット結合を評価した。TGFβファミリーメンバーを、10mM酢酸ナトリウムpH4.5中で10ug/mlになるように希釈し、製造業者の指示に従って、AR2Gバイオセンサー(カタログ番号18-5092、ForteBio)上にアミンカップリングした。モノマー性GDF15_001を、キネティクス(kinetics)緩衝液(カタログ番号18-5032 ForteBio)中で200nMになるように希釈した。Octetアッセイを、300秒の会合時間および180秒の解離時間で室温で実施した。データを二重参照し(Myszka,D.、J.Mol.Recognit 1999;279~284)、Octet Data Analysisソフトウェアバージョン8.1(ForteBio)で分析した。
【0545】
GDF15_001は、期待通り、ヒトGDF15に結合した。他のTGFβファミリーメンバー(GDF-11、BMP-9、GDF-8、BMP-2、BMP-6、TGFβ-1、アクチビン-B、インヒビン-A)への結合は、200nMのモノマー性クローンGDF15_001では検出されず、これは、これらの他の関連のファミリーメンバーには結合しない、GDF15_001の高い特異性を実証している。GDF15_001の高い特異性は、オフターゲット結合のリスクを最小化し、GDF15_001が、潜在的な新規の有用なヒト治療薬であることを示している。
【0546】
(実施例5)
抗GDF15抗体は、GFRALへのGDF15結合を防止する
GFRALの細胞外ドメインへのヒトGDF15結合を防止するGDF15_001の能力を、競合アッセイによって評価した。分析を、BIAcore T200機器(GE Healthcare、Chicago、IL)を使用して実施した。
【0547】
GDF15_001を、10nMから2.5nMまでの範囲の濃度で、10nMヒトGDF-15中に滴定した。混合物GDF-15、GDF15_001および対照を、CM4センサーチップ上に直接固定化したヒトGFRALの細胞外ドメイン上に注入した。GFRALへのヒトGDF15結合の濃度依存的阻害が観察された。ヒトGFRAL ECDへのヒトGDF15の結合は、7.5nM GDF15_001によって完全に遮断された。
【0548】
これらのデータは、GDF15_001が、ヒトGDF15とその同族受容体GFRALとの間の相互作用を遮断し、それによって、GFRALシグナル伝達を妨害できることを実証している。これは、GDF15_001が、GFRALへのGDF15結合によって媒介される活性を減少させるための新規の潜在的に有用な治療薬であり得ることをさらに実証している。
【0549】
(実施例6)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:熱安定性
抗GDF15抗体の熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。タンパク質を、リン酸緩衝溶液(PBS)中に、400μlの体積中0.3mg/mlになるように希釈した。PBSを、参照セルにおいて緩衝液ブランクとして使用した。PBSは、137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM NaHPOおよび1.47mM KHPO、pH7.2を含んだ。サンプルを、Autosampler(Malvern Instruments Ltd、Malvern、UK)を用いて、MicroCal VP-Capillary DSCのサンプルトレイ中に分配した。サンプルを、10℃で5分間平衡化し、次いで、1時間当たり100℃の速度で、110℃までスキャンした。16秒間のフィルタリング期間を選択した。生データをベースライン補正し、タンパク質濃度を標準化した。Origin Software 7.0(OriginLab Corporation、Northampton、MA)を使用して、データを、適切な数の遷移を有するMN2-State Modelにフィットさせた。
【0550】
遷移温度は、図1A、1Bおよび1Cに示され、表9に列挙される。T1は、抗体のC2が50%折り畳まれていない温度を示す。T2は、抗体のFabが50%折り畳まれていない温度を示す。T3は、抗体のC3が50%折り畳まれていない温度を示す。65℃を超える融解温度(T1)を有する全てのクローンは、安定なクローンとして設計され、これは、製造および貯蔵の間、安定である。
【0551】
【表10】
【0552】
(実施例7)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:サイズ排除クロマトグラフィー
抗体クローンを、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)によって分析した。タンパク質を、リン酸緩衝溶液(PBS)中に1.0mg/mlになるように希釈し、20mMリン酸ナトリウムpH7.2、400mM NaClを含むアイソクラチックランニング緩衝液を用いたYMC-Pack Diol-200、300×8mmカラム上でのaSECによって分析した。ネイティブSECを使用して、高分子量(凝集体)およびモノマー性のインタクトな抗体の相対的な量を決定した。パーセント凝集体を、総(凝集体およびモノマー)ピーク面積によって除算し、100を乗算した、高分子量のピーク面積として計算した。分での保持時間を記録し、アッセイ対照と比較した。aSEC分析からの、標準の保持時間およびピーク形状を有する抗体クローンは、固定相樹脂との最小の相互作用および最適な疎水性を示唆し得、これらは、有用な特徴であり、抗体が、潜在的な有用な治療薬であり得ることを示している。
【0553】
試験した各抗体クローンについての保持時間を、表10に示す。GDF15_002は、遅延された保持時間および広いピーク形状を示し、したがって、さらには研究しなかった。
【0554】
【表11】
【0555】
(実施例8)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:低pHにおける安定性
抗体はプロテインA捕捉によって精製され、溶出は低pH条件であるので、抗GDF15抗体クローンを、低pH維持安定性について試験した。PBS、pH7.2中1.0mg/mlの抗体を、グリシンpH3.4で酸性化し、25℃で5時間インキュベートし、次いで、Tris塩基で中和し、aSEC上に流して、高分子量種(HMMS)および低分子量種(LMMS)の量を決定した、表11。試験した全てのクローンは、低pHチャレンジ後に、HMMSの許容できる量の増加(<5%)を示す。これは、抗GDF15抗体が、精製プロセスの間安定のままであり、潜在的に有用な治療薬であり得ることを示している。
【0556】
【表12】
【0557】
(実施例9)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:粘度
GDF15_001の粘度を、Anton Paar機器によって分析した。GDF15_001を、30kDa分子量カットオフAmicon遠心濾過ユニット(EMD Millipore、Billerica、MA)を使用して、215mg/mLに濃縮した。46~178mg/mLの範囲の一連の希釈を、20mMヒスチジン、85g/Lスクロース、0.05mg/ml EDTA pH5.8緩衝液を希釈剤として用いて調製した。タンパク質濃度を、SoloVPE Variable Pathlength System(C Technologies,Inc、Bridgewater、NJ)での280nm分析によって決定した。粘度測定を、25℃で150rpmの一定の回転速度で、MCR-302血流計(Anton Paar USA Inc.、Ashland、VA)上でCP25-1円錐およびプレートを使用して実施した。各々10秒間の合計10個の測定値を、サンプル1つ当たり収集し、データを、Rheoplus(Anton Paar USA Inc.)V 3.62ソフトウェアを使用して分析した。粘度は、センチポアズ(cP)単位で報告する。
【0558】
GDF15_001の粘度を、図2に示す。このデータは、許容できる粘度限界(20cP)には、約140mg/mlにおいて到達することを示しており、これが、GDF15_001の皮下注射を実現可能なものにしており、この抗体が有用な潜在的な治療薬であることをさらに示している。
【0559】
(実施例10)
抗GDF15抗体の免疫原性
非生殖系列T細胞エピトープの検出、および計算されたtReg調整済スコアに基づいて、本発明の抗GDF15抗体および当該分野で公知の別の抗GDF15抗体、例えば、hu01G06(hu01G06のVHおよびVL配列は、それぞれ配列番号177および配列番号178として本明細書で提供される(VH、WO2014/100689の配列番号248、およびVL、WO2014/100689の配列番号254))の免疫原性を予測した。より低いtReg調整済スコアは、免疫原性リスクのより低い潜在力を予測する。
【0560】
配列を、2つのプロトコール(以下のプロトコール1および2)を使用して分析して、エピトープを同定した。いずれかのプロトコールについて本明細書に記載される規則によって同定された任意の配列を、エピトープとみなした。配列を、アミノ酸9マーのレベルで試験した。
【0561】
プロトコール1 - ISPRI/EpiMatrix:配列を、ISPRIソフトウェアパッケージ(ISPRI v 1.8.0、EpiVax Inc.、Providence、RI(2017);Schaferら Vaccine 16(19)、1880~84(1998))でのEpiMatrix分析に供した。生結果は、8つの異なるHLA型に対する各9マーアミノ酸断片の結合の可能性のランキングを提供する。したがって、各9マーについて、8つの予測(「観測」)が存在する。これらの9マーを、配列の各個々の直線的な番号付け位置で開始して生成する。同じ9マーが同じ配列中に1回よりも多く存在することが可能である。任意の4つの観測が、9マーが結合子の上位5%にあることを示す場合、これは、少なくとも4つのHLA型について、それが結合子の上位5%にあることを意味し、9マーは、予測されたエピトープとみなされる。あるいは、8つの予測のうちいずれか1つが、9マーが結合子の上位1%にあることを示す場合、この9マーも、予測されたエピトープとみなされる。
【0562】
プロトコール2 -IEDBコンセンサス法:配列を、免疫エピトープデータベース(IEDB)(IEDB MHC-II Binding Predictions、http://www.iedb.org;Vitaら、Nucleic Acids Res.Jan 28(43)、D405~12(2015))においてMHC-II binding Consensus Method(Wangら、BMC Bioinformatics 11、568(2010);Wangら、PLoS Comput Biol.4(4)、e1000048(2008))を使用する分析に供した。ソフトウェアのアウトプットは、結果を15マーずつ配置する。コンセンサススコアおよびパーセンタイルランキングが、15マーおよびHLA型の各組み合わせについて提供される。しかし、各15マーのコンセンサスが由来する個々のスコアは、15マー中に見出される特定の9マーのランキングである:コンセンサスのために使用される各方法は、15マー内の9マーについてのパーセンタイルランクを報告し、15マー全体についての値として取られたコンセンサスは、中央値スコアを有する9マーについての予測である。9マーは、(a)それが15マーを代表するコンセンサスとして選択される場合、および(b)検討されているHLA型に対する結合子の上位10%中にパーセンタイルランキングを有する場合、ならびに基準(a)および(b)が、同じ9マーについて3つ以上の別個のHLA型(即ち、3つの観測)について生じる場合、エピトープとして分類される。検討したHLA型は、DRB101、103、104、107、108、111、113および115であり、これらは、標準的なISPRI/EpiMatrix報告では、同じHLA型である。プロトコール1との比較の容易さのために、データは、予測された9マーエピトープのリストを得るために再解釈されるが、コンセンサス法の一次アウトプットは、15マーのランキングである。
【0563】
各エピトープは、生殖系列または非生殖系列エピトープとして分類される。抗体について、各エピトープは、抗体内でのその位置(例えば、CDRまたは非CDR)に基づいて、さらに分類される。IMGT(www.imgt.org)から得られたヒトVドメインの配列をフィルタリングして、偽遺伝子またはオープンリーディングフレームとしてアノテーションされる生殖系列を除去する。残りの配列中に見出される任意の予測された9マーエピトープは、生殖系列エピトープとみなされる。JもしくはC領域(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)またはこれらの領域間の接合部中に見出されるエピトープもまた、生殖系列エピトープとして分類した。さもなければ、エピトープは、非生殖系列エピトープとして分類した。
【0564】
CDR定義は、Kabatの方法に基づき、ここで、CDRは、以下の残基を含むと定義される:HCDR-1(例えばH35Aであるが、H36未満の挿入を含むH26~H35)、HCDR-2(H50~H65包含的)、HCDR-3(H95~H102包含的)、LCDR-1(L24~L34包含的)、LCDR-2(L54~L56包含的)、LCDR-3(L89~L97、包含的)。予測された9マーエピトープは、そのアミノ酸のうちいずれか1つがCDR領域の一部である場合、CDRエピトープとして定義される。
【0565】
全体的配列スコア(tReg調整済スコア):個々の鎖について、または抗体VHおよびVLドメインの対形成について、全体的スコアは、以下に記載されるように、構成成分9マーの各々を合計することによって計算され得る。
【0566】
9マーおよびHLA型の全ての個々の組み合わせ(「観測」)を、9マーがエピトープであるかどうかにかかわりなく試験した。特定の観測が、そのペプチドが所与のHLA型に対する結合子の上位5%にあることを示す場合、この観測についてのEpiMatrix Zスコアが、タンパク質配列全体と関連する中間合計に加算される。試験した観測の総数もまた記録される。唯一の例外は、ISPRIによって「T-レジトープ」(天然の調節性T細胞を活性化し、望まれない免疫応答を低減させることが潜在的にできる、モノクローナル抗体フレームワーク領域内のアミノ酸配列)として同定された9マーについての全ての観測が、ゼロのEpiMatrixスコアを有すると仮定されることである。
【0567】
中間合計では、0.052.2248のベースラインスコアが、各観測(T-レジトープを含む)から減算される。最終スコアは、以下のように計算される:tReg調整済スコア=(中間合計)1000/(観測の数)。
【0568】
計算されたスコアを、表12に列挙する。上述のように、より低いスコアは、より低い予測される免疫原性潜在力を示す。本発明の抗GDF15抗体は、hu01G06よりも低いスコアを有した。クローンGDF15_001、GDF15_004、GDF15_005およびGDF15_013は、最も低いスコアを有し、したがって、免疫原性応答を惹起する、最も低い潜在的な予測されたリスクを有した。これは、本発明の抗体が潜在的な有用な治療薬であることをさらに示している。
【0569】
【表13】
【0570】
GDF15_001およびhu01G06の予測されたT細胞エピトープもまた、上記in silico方法に基づいて比較した。以下の表13に示すように、hu01G06は、重鎖中に2つの予測されたT細胞エピトープを有し、軽鎖中に1つの予測されたT細胞エピトープを有するが、GDF15_001は、いずれの予測されたT細胞エピトープも有さない。これは、GDF15_001がまた、hu01G06と比較した場合に、免疫原性応答を惹起するより低い潜在的なリスクを有することを示している。これは、GDF15_001が、改善された特徴を有する潜在的な有用な新規の治療薬であることをさらに示している。
【0571】
【表14】
【0572】
(実施例11)
健康なマウスにおけるヒトおよびマウスGDF15の阻害
ヒトGDF15活性を阻害するGDF15_001の能力を、アデノ随伴ウイルス(AAV)-ヒトGDF15で処置した健康なC57Bl6Nマウスにおいて評価した。AAV-ヒトGDF15処置の2週間後、循環ヒトGDF15レベルは、およそ17ng/mLまで増加し(図3)、体重は15%減少した(図4)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、AAV-ヒトGDF15処置マウスにおいて、体重(図4)、脂肪(図5)および除脂肪量喪失(図6)を迅速に逆転させた。GDF15_001は、AAV対照ベクター処置マウスでは効果を有さなかった。
【0573】
マウスGDF15活性を阻害するGDF15_001の能力もまた、AAV-マウスGDF15で処置した健康なC57Bl6Nマウスにおいて評価した。AAV-マウスGDF15投与の11日後、循環マウスGDF15レベルは、およそ3ng/mLまで増加し(図7)、体重は、およそ10%減少した(図8)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、AAV-ヒトGDF15処置マウスにおいて、体重減少を迅速に逆転させ(図8)、食物摂取を増加させた(図9)。GDF15_001は、AAV対照ベクター処置マウスでは効果を有さなかった。
【0574】
これらのデータは、GDF15_001が、増加したレベルのGDF15の存在下であってさえも、健康なマウスにおいて、除脂肪量および体脂肪量喪失の両方に起因する体重減少を逆転させ、食物摂取を増加させることを実証している。
【0575】
(実施例12)
線維肉腫腫瘍(HT-1080)保有マウスにおけるヒトGDF15の阻害
GDF15_001が腫瘍保有マウスにおいて悪液質を逆転させ得、寿命を増加させ得るかどうかを決定するために、重症免疫不全(SCID)マウスに、HT-1080ヒト線維肉腫細胞を皮下で埋め込んだ。腫瘍埋め込みの2週間後、体重は、およそ10%減少した(図10)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、体重質量喪失(図10)、体脂肪量喪失(図11)および除脂肪量喪失(図12)を迅速に逆転させた。身体組成改善に加えて、GDF15_001は、IgG対照と比較して、生存を増加させた(図13)。
【0576】
基礎代謝速度の低温ストレス上昇が排除される中立温度条件下でのHT-1080腫瘍保有マウスにおけるGDF15_001の代謝利益を確認するために、研究を、マウスを86°Fで収容して反復した。循環ヒトGDF15は、約5ng/mLまで上昇した(図14)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、体重減少の迅速な逆転を維持した(図15)。GDF15_001は、他の点では同一の非腫瘍保有マウスでは、これらのパラメーターのいずれに対しても効果を有さなかった。
【0577】
これらのデータは、GDF15_001が、腫瘍保有マウスにおいて生存を増加させ、悪液質を逆転させることを実証している。したがって、これらの結果は、GDF15_001が、潜在的な新規のヒト治療薬であることをさらに示している。
【0578】
(実施例13)
膵腫瘍保有マウスにおけるヒトGDF15の阻害
GDF15_001が腫瘍保有マウスにおいて悪液質を逆転させ得、寿命を増加させ得るかどうかをさらに評価するために、SCIDマウスに、膵腫瘍肝臓転移に由来するPA-0165腫瘍組織断片を、皮下で埋め込んだ。循環ヒトGDF15は、約2ng/mLまで上昇した(図16)。腫瘍埋め込みの4週間後、体重は、およそ10%減少した(図17)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、体重減少を完全に防止した(図17)。体重改善に加えて、GDF15_001は、IgG対照と比較して、生存を増加させた(図18)。
【0579】
これらのデータもまた、GDF15_001が、腫瘍保有マウスにおいて生存を増加させ、悪液質を逆転させることを実証している。したがって、これらの結果は、GDF15_001が、潜在的な新規のヒト治療薬であることをさらに示している。
【0580】
(実施例14)
抗がん剤で処置した腫瘍保有マウスにおけるヒトGDF15の阻害
GDF15_001が抗がん剤で処置した腫瘍保有マウスにおいて悪液質を逆転させ得、生存を増加させ得るかどうかを決定するために、BALB/cマウスに、RENCA(マウス腎腺癌)細胞を皮下で埋め込んだ。循環マウスGDF15は、約8ng/mLまで上昇した(図19)。腫瘍サイズが100mgに達した時点で、抗がん剤ソラフェニブによる処置を開始し、その後、10%体重減少が達成された時点で、GDF15_001またはIgG対照を添加した(図20)。ソラフェニブ処置マウスへのGDF15_001の投与は、体重減少を完全に逆転させた(図20)。体重改善と共に、ソラフェニブ+GDF15_001の組み合わせは、ソラフェニブ+IgG対照と比較して、生存を増加させた(図21)。
【0581】
体重を改善するGDF15_001の能力を、抗がん剤シスプラチンで処置した腫瘍保有マウスにおいても試験した。SCIDマウスに、NSX-26115(ヒト非小細胞肺癌腺癌に由来する)腫瘍組織断片を、皮下で埋め込んだ。循環ヒトGDF15は、約4.5ng/mLまで上昇した(図22)。腫瘍サイズが100mgに達した時点で、10%体重減少が達成され、抗がん剤シスプラチンによる処置を、GDF15_001またはIgG対照と共に開始した(図23)。GDF15_001またはIgG対照を、シスプラチンなしでも与えた。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、シスプラチンを与えた場合または与えなかった場合に、体重減少を逆転させた(図23)。体重改善と共に、シスプラチン+GDF15_001の組み合わせは、シスプラチン+IgG対照と比較して、生存を増加させた(図24)。
【0582】
これらのデータもまた、GDF15_001が、抗がん剤で処置した腫瘍保有マウスにおいて生存を増加させ、悪液質を逆転させることを実証している。したがって、これらの結果は、GDF15_001が、新規の潜在的なヒト治療薬であることをさらに示している。
【0583】
(実施例15)
抗GDF15抗体の投薬
悪液質の処置のための抗GDF15抗体についての有効な用量および投薬レジメンを同定することに関連する課題が存在する。全体の有効な用量は、可変であることが公知の、患者における初期循環GDF15濃度に依存する。さらに、悪液質患者における遊離GDF15レベルは、治療に応答して異なる速度で低減される。したがって、有効な用量は、投薬間隔を通じて、定常状態で(即ち、用量後の最大濃度が、以前の用量後の最大濃度と実質的に同じになるような、いくつかの用量の後に)、遊離GDF15レベルを、0.5ng/mL未満まで低減させる、70kgの患者に与えられる量として、所与の投薬間隔について定義され得る。この遊離GDF15レベルは、健康な対象について報告されたデータに基づいて選択する(Wollertら、2017、J Appl Lab Med 1(5):510~521)。したがって、本明細書で開示される有効な投薬量は、罹患対象における出発遊離GDF15レベルの関数、および0.5ng/mL未満までのそのレベルの低減として記述される。サンプル中の遊離GDFレベルは、例えば、電気化学発光イムノアッセイ、例えば、ELECSYS GDF15アッセイ(Roche Diagnostics)を使用して測定され得る。ELECSYS GDF15アッセイは、ビオチン-ストレプトアビジンテクノロジーを使用し、サンドイッチイムノアッセイ原理に基づく(Wollertら、2017を参照のこと)。当該分野で公知の、サンプル中の遊離GDF15の量を測定できる他のアッセイもまた、患者における遊離GDF15レベルを決定するために使用され得る。
【0584】
本明細書で開示される抗体について有効な用量および用量レジメンを予測するための課題を克服するために、2コンパートメント薬物動態学的モデルを開発した。抗GDF15抗体の皮下投薬を、デポ中に特定された量を投薬することによってシミュレートしたが、これは次いで、特定された速度kで中央コンパートメント中に吸収される。抗体は、末梢コンパートメント中に分布し、次いで、中央コンパートメントから除去される。本明細書で使用する場合、用語「デポ」は、薬物が蓄積する部位(例えば、皮下空間)を指し、用語「中央コンパートメント」は、脈管空間および高度に灌流される臓器(例えば、肝臓、腎臓および肺)を指し、用語「末梢コンパートメント」は、あまり灌流されない組織(例えば、脂肪および筋肉)を指す。
【0585】
GDF15_001についてのパラメーターを、ヒトFcRn発現マウスにおけるGDF15_001の薬物動態学的研究におけるパラメーターから拡大することによって決定した。簡潔に述べると、6匹のマウスに、1mg/kgのGDF15_001を静脈内投薬し、1000時間にわたってモニタリングした;得られた抗体薬物動態学的を、2コンパートメント薬物動態モデルにフィットさせた。本明細書で開示される他の抗体についてのパラメーターを、類似の様式で決定することができた。GDF15_001は、中央コンパートメントにおいて産生され、末梢コンパートメントに分布し、両方の空間から除去される。体積および分布速度は、上記薬物動態学的研究においてGDF15_001について決定したものと同じになると仮定された。ターンオーバーを、2人の健康なボランティアにおける循環GDF15中への安定なアイソトープ標識されたアミノ酸の取り込みを定量化する実験に基づいて、GDF15_001について16.6時間の半減期を与えるように選択した(実験方法論は、本質的に、Lassmanら、2014、Clin Chem 60(9):1217~1224に提供されるとおり)。GDF15合成速度を、特定された循環レベルのGDF15を与えるように選択した。この循環レベルは、所与の疾患について報告された最も高いレベル(対応する状態を有する全ての患者を処置するため)、より低いが、対象の特定されたごく一部についての値をなおも上回る閾値(ほとんどの患者の処置を可能にしつつ最大用量を制御するため)、またはより正確な個別化された用量を可能にするために特定の対象について決定された特定のレベル、を示し得る。ヒト疾患と関連するGDF15レベルの範囲については、例えば、Mutluら、2015、Inflammation 38(5):1805~1813;Monteroら、2016、PLoS One 11(2):e0148709;KempfおよびWollert、2009、Heart Fail Clin 5(4):537~547;ならびにLernerら、2016、Oncol Lett 12(5):4219~4223を参照のこと。
【0586】
中央および末梢コンパートメントの両方において、GDF15は、抗体についての会合および解離速度定数に基づいて、抗GDF15抗体に可逆的に結合できる。GDF15_001について、これらのパラメーターは、Biacore測定に基づいて、それぞれ、1.59×10-1-1(k)および3.42×10-5-1(k)(21.3pMの平衡解離定数と等しい)と決定された(上記表8を参照のこと)。類似のアッセイが、本明細書で開示された他の抗体について実施され得る、またはパラメーターが、用量に対する親和性変化の影響を調査するためのインプットパラメーターとして使用され得る。いずれの特定の理論に束縛されることも望まないが、抗体/GDF15複合体は、2つのコンパートメント間に分布し、抗体自体について決定されたのと同じ薬物動態学的パラメーターを使用して、中央コンパートメントから除去される。2コンパートメント投薬モデルについてのパラメーターを、表14に示す。
【0587】
【表15】
【0588】
対象における出発遊離GDF15レベルの関数としての、GDF15_001についての予測された治療有効皮下用量を、表15、16および17ならびに図25、26および27に示す。毎週、隔週およびおよそ毎月の投薬についての予測された治療有効用量が示される。
【0589】
本明細書で提供される投薬データは、GDF15_001が、遊離GDF15のレベルの、潜在的に治療的なレベルターンオフ低減を達成できるような量および投薬間隔で投与され得ることを示唆している。これらの結果は、GDF15_001の投薬が、実現可能でありかつ患者の服薬遵守を保証する投薬レジメンで達成および維持され得ることを実証している。
【0590】
【表16】
【0591】
【表17】
【0592】
【表18】
【0593】
(実施例16)
RCCの皮下モデルにおける抗PD-1(F2)抗体および抗GDF15(GDF15-297)による組み合わせ処置
本明細書で開示されるデータは、マウスRENCA転移性腎細胞癌(RCC)モデルにおける抗GDF15抗体および抗PD1抗体組み合わせ治療の相乗的治療効果を実証している。
【0594】
腫瘍保有動物を、以下のように生成した:6~8週齢の雌性BALB/cマウスを、Jackson Laboratoriesから購入した。全ての動物を、CIDにおいて病原体なしの生態動物園設備中に収容し、実験を、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)ガイドラインに従うプロトコールに従って実施した。RENCA細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。細胞を、10%胎仔ウシ血清(FBS)、2mM L-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%二酸化炭素(CO)中37℃で培養し、Research Animal Diagnostic Laboratory(RADIL)(Columbia、MO)において、病原体についてIMPACT試験した。対数成長期にある成長中の病原体なしの細胞を回収し、腫瘍接種に使用した。BALB/cマウスの右脇腹に、0.1mLの無血清DMEM中0.2×10のRENCAを皮下接種した。
【0595】
腫瘍体積分析を、以下のように実施した:腫瘍が標的サイズに達した時点で、マウスを処置群へと無作為化した。処置を、無作為化と同日、即ち、0日目に開始した。腫瘍サイズを、キャリパーを使用して2つの次元で毎週2回測定し、体積を、以下の式を使用して、立法ミリメートルで表した:V=0.5L×W、式中、Lは、腫瘍の最長直径であり、Wは、Lと直交する直径である。体重を、毎週2回記録した。
【0596】
この研究で使用した治療的抗体は、以下であった:マウス抗マウスPD1 F2(マウス免疫グロブリンG1[mIgG1])、およびFc中にマウスIgG1エフェクター機能ヌルD265A、即ち、アミノ酸残基番号265におけるアスパラギン酸(Asp、D)からアラニン(Ala、A)への変異を含むマウス抗マウスGDF15_0297。抗体GDF15_0297は、本質的に、その抗体に同様に結合する、GDF15_001のマウス代理抗体である。同様に、F2は、ササンリマブ(RN888)に同様に結合するマウス代理抗体である。抗PD1抗体および抗GDF15抗体を各々、リン酸緩衝溶液(PBS)(Life Technologies)中に2mg/mLの濃度になるように希釈し、「処置0日目」(d0)にマウス1匹当たり10mg/kgで腹腔内(ip)投薬した。一元配置または二元配置ANOVAを適用して、アイソタイプ対照(陰性対照マウスIgG1)または他の処置群と比較した、複数の群間の統計的差異を比較した。独立t検定を適用して、2つの群間の統計的差異を比較した。P<0.05を、有意な差異とみなした。
【0597】
RENCAモデルを使用して、平均出発腫瘍サイズ25~38mmのrRCCモデル(1群当たりn=10匹の動物)における、抗PD1と組み合わせた抗GDF15の治療効力を評価した。動物を、処置の開始後2週間にわたってモニタリングした。処置、即ち、抗GDF15および抗PD1のi.p.投与を、移植の11日後に開始した。抗GDF15抗体および抗PD1抗体の組み合わせ処置は、対照アイソタイプ処置群と比較した場合、RENCA rRCC皮下腫瘍の進行を有意に阻害した。抗GDF15単剤療法および抗PD1単剤療法は、この設定では、腫瘍進行を阻害するのに有効ではなかった(表18および表19)。
【0598】
【表19】
【0599】
【表20】
【0600】
表19に示される統計分析結果は、抗PD1と組み合わせた抗GDF15抗体による処置が、RCCがんモデルにおいて、初期段階の腫瘍進行において相乗的効果を有することを実証している。
【0601】
(実施例17)
抗PD1抗体および抗GDF15抗体の組み合わせによる膵がんの処置
この実施例は、マウス転移性膵腺癌モデル、即ち、Pan02モデルにおける、抗GDF15抗体および抗PD1抗体組み合わせ治療の相乗的治療効果を示す。同所性モデルにおける腫瘍成長の同定を促進するために、Pan02(NHI/NCI)細胞に、ホタルルシフェラーゼ構築物を感染させて、Pan02-ルシフェラーゼ細胞を生成した。
【0602】
6~8週齢の雌性B6(Cg)-Tyrc-2J/J(B6アルビノ)マウスを、Jackson Laboratoriesから購入した。全ての動物を、CIDにおいて病原体なしの生態動物園設備中に収容し、実験を、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)ガイドラインに従うプロトコールに従って実施した。
【0603】
Pan02細胞株は、NHI/NCIから得た。細胞を、10%胎仔ウシ血清(FBS)、2mM Lグルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%二酸化炭素(CO)中37℃で培養し、Research Animal Diagnostic Laboratory(RADIL)(Columbia、MO)において、病原体についてIMPACT試験した。対数成長期にある成長中の病原体なしの細胞を回収し、腫瘍移植に使用した。アルビノB6マウスの膵臓に、0.2×10mLのPan02-ルシフェラーゼ無血清DMEMおよびマトリゲル(Corning、参照356237)を含む腫瘍細胞:マトリゲル混合物20μLを注射した。移植の4日後、腫瘍負荷を、冷光のレベルによって評価した。動物を群に階層化し、試験を開始した。ルシフェラーゼ発光を検出するために、動物に、食塩水中30mg/mLのD-ルシフェリン一ナトリウム塩(Pierce、番号88292)0.1mLを注射した。冷光のレベルを、中間ビニング、1F/ストップでの1~15秒露光後に、IVIS Spectrum CT(Caliper Life Science)で検出した。画像を、LivingImage 4.5.1 Softwareによって分析した。腫瘍負荷を、背景値を減算した後の、ROI(関心領域)における光子/秒として計算した。一例では、登録の時点における平均発光は、4.810光子/秒であった。別の例では、登録の時点における平均発光は、1.810光子/秒であった。
【0604】
マウス抗マウスPD1F2抗体(マウス免疫グロブリンG1[mIgG1])およびマウス抗マウスGDF15_0297抗体は、実施例16に記載されるとおりであった。抗PD1抗体および抗GDF15抗体を各々、リン酸緩衝溶液(PBS)(Life Technologies)中に2mg/mLの濃度になるように希釈し、マウス1匹当たり10mg/kgで腹腔内(ip)投薬した。別の例では、抗PD1抗体を、1mg/mLの濃度になるように希釈し、マウス1匹当たり5mg/kgで投薬した。各場合において、PD-1抗体およびGDF15抗体を、同日(処置0日目)に投与した。
【0605】
腫瘍進行を、処置動物における冷光のレベルに基づいて毎週モニタリングした。冷光のレベルを、上記のように決定した。体重を毎週記録した。
【0606】
移植後35日目に、アイソタイプ抗体、抗GDF15抗体、抗PD1抗体および抗GDF15抗体+抗PD1組み合わせからの、動物間での腫瘍負荷における変化を、以下の式に従って決定した:腫瘍負荷における変化=(d35における光子束-d4における光子束)/4日目における光子束。抗GDF15抗体+抗PD1抗体処置は、Pan02腫瘍を移植した動物の腫瘍負荷を有意に低減させ、抗PD1、抗GDF15およびアイソタイプ群(それぞれ、4/12;1/12および0/12)と比較して、12匹の動物のうち8匹が、腫瘍退縮の徴候を示すという結果を生じた。結果を、以下の表20にまとめる。表20では、1群当たり12匹の動物の各々からの個々の結果が示される。
【0607】
【表21】
【0608】
腫瘍負荷におけるこれらの変化は、抗GDF15抗体+抗PD1抗体処置動物の増加した生存に対応し、平均生存は、66日間(抗PD1)、52.5日間(抗GDF15)および45日間(アイソタイプ対照)にわたる生存と比較して、90日間まで増加した。実験の終了時(145日目)の対照アイソタイプ群のp値と比較した場合、p値は、p<0.0001(抗GDF15+抗PD1)、p=0.0010(抗PD1)であり、統計的に有意でなかった(ns)(抗GDF15)。79日目には、組み合わせた抗GDF15+抗PD1および抗PD1単剤療法で処置した動物の生存間に、Matel-Cox検定によって確立されたp=0.05およびGehan-Breslow-Wilcoxon検定によって確立されたp=0.042に反映される、統計的に有意な差異が存在した。
【0609】
別の例では、登録の時点における冷光発光1.810光子/秒によって推定された平均腫瘍負荷を有するPan02膵モデル(1群当たりn=13匹の動物)において、5mg/kgの抗PD1抗体と組み合わせた10mg/kgの抗GDF15抗体の治療効力を評価した。処置を、移植の4日日後に開始した。39日目に、抗GDF15+抗PD1処置群の腫瘍体積は、動物の38%において、検出限界を下回るまで低下した。PD1単剤療法は、動物の15%のみにおいて腫瘍低減を生じたが、アイソタイプ対照および抗GDF15単剤療法は共に、この設定では治療利益を示さなかった。
【0610】
これらの結果は、抗PD1と組み合わせた抗GDF15抗体による処置が、同所性膵がんモデルにおける進行に対して、別々に提供された各処置の相加的効果よりも高い相乗的抗腫瘍効果を提供することを実証している。
【0611】
したがって、これらのデータは、抗GDF15およびPD-1軸アンタゴニストの組み合わせ治療が、がんの処置のための新規の有用な相乗的治療であることを実証している。
【0612】
(実施例18)
がん免疫療法における効力を試験するためのマウス同系モデルの選択
抗GDF15治療の治療効力を決定するための適切なモデルの選択のために、以下のマウス同系細胞株を試験した:MC38(University of California、Los Angeles、CAのAntoni Ribas博士の厚意による提供)、Pan02(NHI/NCI)、4T1(ATCC)、RENCA(ATCC)、CT26(ATCC)、ID8(University of KansasおよびUniversity of Kansas Medical Center)、LL2(ATCC)、B16F10(ATCC)およびGL261(NHI/NCI)。順化培地中のGDF15レベルを、マウスGDF15 ELISAキット(R&D Systems、MGD 150)によって分析した。細胞を、6ウェル細胞培養ディッシュ(353224、Corning)中に3連の0.3×10細胞/ウェルでプレートし、48時間培養した。上清を収集し、2.000rpmで5~10分間遠心分離し、新たなチューブに移し、+4℃で貯蔵した。生/死細胞の量を、BioRad TC 20細胞カウンターによって、トリパンブルー排除法によって推定した。各サンプルについての体積および細胞数を記録した。結果を表21に示す。
【0613】
【表22】
【0614】
適切なin vivoモデルの選択のために、腫瘍保有動物からの血液を、後眼窩法によって収集し、microtainer血液収集チューブ(365967、BD)に移した。腫瘍体積を記録し、適用できる場合、200mmに調整した。Pan02同所性腫瘍を保有する動物からの血清を、後期段階の動物(移植の35~40日後)から収集した。無腫瘍の遺伝的背景が一致した動物の血清を、対照として収集した。マウスGDF15レベルを、マウスGDF15 ELISAキットによって決定し、表22に示す。
【0615】
【表23】
【0616】
転移性腎RCCマウスモデル(RENCA)および膵がんモデル(Pan02)を、in vivoでのGDF15の最も高い産生体として同定し、in vivo研究においてさらに使用して、がん免疫学ベースの治療と組み合わせた抗GDF15治療の治療的潜在力を決定した。
【0617】
(実施例19)
抗CD40抗体および抗GDF15抗体による組み合わせ処置
この実施例は、マウスRENCA転移性RCCモデルにおける抗GDF15抗体および抗CD40抗体組み合わせ治療の治療活性を示す。
【0618】
6~8週齢の雌性BalbCマウスを、Jackson Laboratoriesから購入した。全ての動物を、CIDにおいて病原体なしの生態動物園設備中に収容し、実験を、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)ガイドラインに従うプロトコールに従って実施した。
【0619】
RENCA細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。細胞を、10%胎仔ウシ血清(FBS)、2mM L-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%二酸化炭素(CO)中37℃で培養し、Research Animal Diagnostic Laboratory(RADIL)(Columbia、MO)において、病原体についてIMPACT試験した。対数成長期にある成長中の病原体なしの細胞を回収し、腫瘍接種に使用した。BalbCマウスの右脇腹に、0.1mLの無血清DMEM中0.2×10のRENCAを皮下接種した。
【0620】
抗マウスCD40抗体FGK45(マウスIgG1)および抗マウスGDF15抗体GDF_0297(アミノ酸残基番号265においてアスパラギン酸からアラニンへの置換(D265A)を含むマウスエフェクター機能ヌルIgG1 Fcを含む)を、リン酸緩衝溶液(PBS)(Life Technologies)中に2mg/mLの濃度になるように希釈し、マウス1匹当たり10mg/kgで腹腔内(ip)投薬した。別の例では、抗CD40を、1mg/mLの濃度になるように希釈し、マウス1匹当たり5mg/kgで投薬した。
【0621】
腫瘍が標的サイズに達した時点で、マウスを処置群へと無作為化した。処置を、無作為化と同日に開始した。腫瘍サイズを、キャリパーを使用して2つの次元で毎週2回測定し、体積を、以下の式を使用して、立法ミリメートルで表した:V=0.5L×W、式中、Lは、腫瘍の最長直径であり、Wは、Lと直交する直径である。体重を、毎週2回記録した。
【0622】
腫瘍浸潤性および脾臓白血球の状態に対する組み合わせ処置の転帰を分析するために、以下の分析を実施した。腫瘍を、改変を伴った製造業者のプロトコールに従って、穏やかなMACS(商標)およびMiltenyi Mouse Dissociation Kit(Miltenyi Biotec)を使用して、単一細胞懸濁物へと散在させた。Ammonium-Chloride-Potassium(ACK)Lysing Buffer(Life Technologies)を使用して、赤血球を除去した。細胞を、FACS染色緩衝液(10%FBSを補充したPBS)で2回洗浄し、最後に、FACS染色緩衝液中に再懸濁した。脾臓白血球のために、摘出した脾臓を、0.2mg/mLのLiberase TL(5401020001、Roche)および20u/mLのDNase I(Roche 4716728001、Roche)を含む、3mLのDigestion Solutionで灌流した。脾臓を、穏やかに揺らしながら、37℃で15分間インキュベートした。インキュベーションの終了時に、酵素活性を、1mLのFBSを添加することによってクエンチし、脾臓を、小片へとスライスし、50mLのコニカルチューブに裏ごしし、細胞を、PBS中で洗浄し、1500rpmで5分間遠心分離し、得られたペレットを、冷MACS緩衝液中に再懸濁した。ACK Lysing Bufferを使用して、赤血球を除去した。
【0623】
細胞の一部を、PBS中10%のラット血清中、0.5μg/10細胞のマウスBD Fc Block(Biolegend、101310)と共に10分間事前インキュベートし、その後、表現型決定mAbを添加して、免疫細胞を特異的に染色した。細胞表面抗原を、細胞を4℃で30分間インキュベートすることによって標識した。未結合のmAbを除去した後、細胞を、FACS染色緩衝液で2回洗浄し、固定緩衝液(PBS+1%パラホルムアルデヒド)中で固定し、フローサイトメトリーによって分析するまで、暗中で4℃で貯蔵した。細胞内染色を、製造業者のプロトコールに従ってFoxp3/Transcription Factor Staining Bufferセット(eBioscience)を使用して実施した。フローサイトメトリーデータを、Fortessa(商標)SORP(BD Biosciences)を使用して獲得し、FlowJo(商標)(TreeStar Inc.)を使用して分析した。
【0624】
細胞表面または細胞内染色のために使用した抗体は、BD Biosciences、eBioscience、InvitrogenまたはBiolegendから購入した。これらは、ラット抗マウスCD45-PerCP-Cy5.5(クローン30-F11、BD Biosciences)、ラット抗マウスCD11b Texas Red(M1/70、BD Biosciences)、ラット抗マウスCD25-BUV395(PC61、BD Biosciences)、ラット抗マウスLy6G-FITC(1A8、BD Biosciences)、ラット抗マウスCD90.2-BV786(53-2.1、BD Biosciences)、ラット抗マウスCD8-BV650(53-6.7、BD Biosciences)、ラット抗マウスLy6C-BV421(AL-21、BD Biosciences)、ラット抗マウスF4/80-PECy7(BM8、Invitrogen(商標))、ラット抗マウスCD86-BV605(GL1、BD Biosciences)、アルメニアンハムスター抗マウスCD49a-APC(HMA1、BioLegend)、ラット抗マウスMHCII(IA-IE)-Alexa Fluor 700(M5/114.15.2、BioLegend)、ラット抗マウスCD4-V450(RM4-5、BD Biosciences)、ラット抗マウスFoxp3-PE(FJK-16s、eBioscience)であった。染色アーチファクトを回避するために、サンプルを、Brilliant Stain Buffer(BD Biosciences)中で維持した。生細胞を、LIVE/DEAD Fixable eFluor(商標)780 Dead Cell Stain Kit(Invitrogen)を使用して、死細胞から分離した。
【0625】
結果を、平均±SEMとして表した。統計分析を、GraphPad Prism 6.0を使用して実施した。一元配置または二元配置ANOVAを適用して、アイソタイプ対照または他の処置群と比較した、複数の群間の統計的差異を比較した。独立t検定を適用して、2つの群間の統計的差異を比較した。P<0.05を、有意な差異とみなした。
【0626】
RENCAモデルを使用して、平均出発腫瘍サイズ25~38mmのrRCCモデル(1群当たりn=10匹の動物)における、抗CD40と組み合わせた抗GDF15の治療効力を評価した。動物を、腫瘍体積が2000mmに達した時点、または20%体重減少の時点で、屠殺した。アイソタイプ、抗GDF15抗体単独、および抗CD40抗体単独、および抗GDF15抗体+抗CD40抗体組み合わせについての、腫瘍を有する動物の中央値生存は、それぞれ、26、25.5、32.5および34日間であった。抗CD40抗体+抗GDF15抗体群はまた、アイソタイプ、抗GDF15抗体単独および抗CD40抗体単独群における0%と比較して、30%の完全奏功者を生じた。
【0627】
別々の研究では、抗CD40抗体の2つの異なる投薬量(10mg/kgおよび5mg/kg)と組み合わせた抗GDF15抗体の治療効力を、平均出発腫瘍サイズ47~54mmのRENCA再発性腎細胞癌(rRCC)モデル(1群当たりn=10匹の動物)において評価した。結果を、表23および表24にまとめる。
【0628】
【表24-1】
【0629】
【表24-2】
【0630】
【表25】
【0631】
アイソタイプ、抗GDF15抗体単独、抗CD40抗体(5mg/kg)、抗CD40抗体(10mg/kg)、および抗GDF15抗体(10mg/kg)+抗CD40抗体(5mg/kg)組み合わせ、および抗GDF15抗体(10mg/kg)+抗CD40抗体(10mg/kg)組み合わせについての、腫瘍を有する動物の中央値生存は、それぞれ、29.5、29.5、36、36、38および44.5日間であった。
【0632】
抗GDF15媒介性の抗腫瘍応答における腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の寄与を決定するために、TILを、最後の処置の24時間後に、RENCA腫瘍から単離し、抗腫瘍免疫応答と関連するマーカーについて分析した。結果を図29にまとめる(独立t検定によって決定したp値;p=0.0026)。
【0633】
組み合わせ処置[抗GDF15抗体(10mg/kg)+抗CD40抗体(10mg/kg)]は、アイソタイプ処置群と比較して、腫瘍中のCD11b+;F4/80+;Ly6C-細胞としてゲートされる活性化状態(MHCII MFI)のマクロファージを、平均して187%増加させた(図29)。対照的に、抗CD40単剤療法は、MHCII MFIを67%増加させた(図29)。抗GDF15単剤療法は、マクロファージの活性化状態を増加させなかった(図29)。
【0634】
アイソタイプおよび抗GDF15群におけるCD8+T細胞/調節性T細胞(Treg)の比は、それぞれ、2.4および2.1であった(図30、黒丸および黒三角)。CD8+T細胞/Treg比は、抗CD40抗体処置単独では、17まで増加した(図30、白抜きの丸)。対照的に、抗GDF15抗体プラス抗CD40抗体による組み合わせ処置は、84のCD8+T細胞/Treg比を生じた(図30、白抜きの三角)。
【0635】
これらの結果は、抗CDF15ベースの治療が、抗CD40治療の抗腫瘍効力を増強する際に有効であることを実証している。
【0636】
RRCモデルにおいて抗CD40治療の抗腫瘍効力を増強することに加えて、抗GDF15ベースの治療は、処置動物の体重減少として現れる抗CD40誘導性の毒性を和らげた。抗CD40ベースの治療は、処置動物において4.43%の体重減少を生じたが、抗GDF15抗体+抗CD40抗体組み合わせ群は、アイソタイプ対照処置群における1.2%の体重増加と比較して、1.5%の体重増加を実証した(各群中n=20匹の動物、抗CD40抗体 対 抗CD40抗体+抗GDF15抗体、独立t検定によってp=0.0006)。抗CD40抗体+抗GDF15抗体群における体重の回復には、処置動物の血清中の、サイトカイン媒介性の毒性と一般に関連するサイトカイン発現の低減が伴った。
【0637】
血清サンプルを、実施例1に記載されるように、処置動物から収集した。サイトカインレベルを、Meso Scale Discover(登録商標)のV-PLEX(登録商標)Proinflammatory Panel 1(マウス)Kit(Mescoscale(登録商標)K15048D)によって分析した。各サンプルを、Diluent 41(Mescoscale(登録商標)R50AH-1)で1対4希釈し、製造業者のプロトコールに従って、3連でアッセイした。結果を、Meso Scale Discovery(登録商標)Quickplex(登録商標)SQ 120機械およびDiscovery workbenchソフトウェアによって分析した。以下のサイトカインの発現を分析した:IFNγ、IL10、IL12p70、IL1ベータ、IL2、IL4、IL5、IL6、KC/GRO、TNFα。図31に示されるように、いくつかの炎症促進性サイトカイン(IFNγ(IFNg)、TNFα(TNFa)、IL6、IL10、KC/GRO)の発現レベルは、抗GDF15処置への曝露後に、抗CD40処置群において有意に低減された(n=5、抗CD40 対 抗CD40+抗GDF15、二元配置ANOVA検定によってp=0.0044)。
【0638】
これらの結果は、抗CD40と組み合わせた抗GDF15抗体による処置が、腫瘍部位におけるCD11b+;F4/80+細胞の増加したレベルの活性化および増加したCD8T細胞/調節性T細胞(Treg)比が伴う、相乗的抗腫瘍効果を有することを実証している。さらに、抗GDF15治療は、増加したサイトカイン産生と関連する抗CD40治療毒性の臨床徴候を和らげる。
【0639】
(実施例20)
抗CD40抗体および抗GDF15抗体による膵がんの処置
この実施例は、マウス膵腺癌モデル(Pan02)における抗GDF15抗体および抗CD40抗体組み合わせ治療の治療活性を示す。腫瘍保有動物を、実施例19に記載されるように生成した。腫瘍負荷を、背景値を減算した後の、ROI(関心領域)における光子/秒として計算した。登録の時点における平均発光は、4.810光子/秒であった。
【0640】
この研究のために、使用した抗体は以下であった:マウス抗マウスCD40抗体FGK45(マウス免疫グロブリンG1[mIgG1])(10mg/kg)およびマウス抗マウスGDF15_0297(マウスIgG1エフェクター機能ヌルD265A変異)(10mg/kg)。
【0641】
抗GDF15抗体+抗CD40抗体処置動物の中央値生存は、抗CD40抗体単独処置群における106日間、抗GDF15抗体単独処置群における52.5日間、およびアイソタイプ対照群における45日間と比較して、126.5日間であった。
【0642】
これらの結果は、抗CD40と組み合わせた抗GDF15抗体による処置が、膵がんの進行に対して相乗的抗腫瘍効果を有することを実証している。
【0643】
(実施例21)
GDF15中和抗体は、マクロファージ媒介性の腫瘍死滅のGDF15媒介性の阻害を逆転させる
この実施例は、マクロファージの腫瘍死滅活性をモジュレートすることにおけるGDF15機能を示す。
【0644】
腹腔マクロファージを、3%のBrewer Thioglycollate培地(B2551、Sigma)1mLによるip注射の5日後に、C57Bl6マウスから単離した。マクロファージを、完全マクロファージ培地(10%熱不活性化FBS、2mM L-グルタミン、100u/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン、10μMピルビン酸ナトリウム、100μM非必須アミノ酸、25mM HEPES[pH7.4]、50μM β-メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640)単独中で、または試験したサイトカインおよび抗体の存在下で、24ウェル細胞培養プレート中0.35×10細胞/ウェルの濃度で蒔いた。以下のサイトカインおよび抗体を研究において使用した:組換えマウスGDF15(大腸菌(E.coli)精製、RD systems 8944-GD)、抗マウスGDF15_0297抗体「297」および抗GDF15_001。組換えマウスGDF15(10nM)および抗体(各々100nM)との3時間のインキュベーション後に、細胞を、LPS(10ng/ml、L2654、Sigma)およびIFNγ(100u/ml、485M100/CF、R&D Systems)処置に供して、マクロファージの活性化を達成した。次の日、Pan02細胞を、製造業者の指示に従ってCSFE(C34554、Invitrogen)を用いて標識し、活性化されたマクロファージと共に1:4の比で共に蒔いた。24時間後、マクロファージおよび腫瘍細胞を、TrypLE Express(商標)とのインキュベーション後に収集し、実施例17に記載されるように、FACSによって分析した。骨髄系細胞を、ラット抗マウスCD11b BUV395(M1/70、BD Biosciences)によって同定し、腫瘍細胞を、CSFE陽性/CD11b陰性集団として同定し、生細胞を、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)(62247、Thermo Scientific)によって、死細胞から分離した。
【0645】
図32に示されるように、組換えGDF15は、マクロファージ媒介性の腫瘍細胞死滅を阻害した(黒三角)。このGDF15媒介性の阻害は、抗GDF15抗体による処置によって逆転された(白抜きの丸および白抜きの三角)。
【0646】
これらの結果は、抗GDF15抗体による処置が、免疫細胞の抗腫瘍原性活性を促進する際に有効であることを実証している。
【0647】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される発明から逸脱することなしになされ得ることが理解される。上述の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図しない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0648】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用される全ての参考文献、ならびにまだ引用されていない範囲までその中で引用される参考文献は、全ての目的のために、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料のうち1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない本出願とは異なるまたはそれと矛盾する場合、本出願が支配する。
【0649】
種々の改変およびバリエーションが、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに本発明においてなされ得ることが、当業者に明らかである。本発明の他の実施形態は、本明細書で開示される発明の仕様および実施を考慮して、当業者に明らかである。仕様および例は、例示にすぎないとみなされる意図であり、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図30
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【配列表】
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