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特開2022-188198制駆動力制御システム、パワートレイン、および車両
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  • 特開-制駆動力制御システム、パワートレイン、および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188198
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】制駆動力制御システム、パワートレイン、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20221213BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20221213BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20221213BHJP
   F02D 41/12 20060101ALI20221213BHJP
   F02D 41/30 20060101ALI20221213BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60W10/06
B60W10/184
F02D41/12
F02D41/30
B60T7/12 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160811
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2019015584の分割
【原出願日】2019-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能村 真
(72)【発明者】
【氏名】中根 吉英
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 健
(72)【発明者】
【氏名】野並 誠典
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(57)【要約】
【課題】目標車速追従性と乗り心地とに優れた制駆動力制御システムを提供する。
【解決手段】目標車速を維持するため、制駆動力を制御する制駆動力制御システムであって、パワートレインがエンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力およびフュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力を算出するとともに、制駆動力を発生させる要求を受け付け、最小制駆動力、フュエルカット制駆動力、および要求された制駆動力に基づいて、パワートレインに制駆動力を発生させるパワートレイン制御部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標車速を維持するため、制駆動力を制御する制駆動力制御システムであって、
パワートレインがエンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力およびフュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力を算出するとともに、制駆動力を発生させる要求を受け付け、前記最小制駆動力、前記フュエルカット制駆動力、および前記要求された制駆動力に基づいて、前記パワートレインに制駆動力を発生させるパワートレイン制御部を備える、
制駆動力制御システム。
【請求項2】
前記パワートレイン制御部は、
前記要求された制駆動力が前記フュエルカット制駆動力より大きい場合、前記パワートレインに前記要求された制駆動力と前記最小制駆動力とのうち大きいほうの制駆動力を発生させ、
前記要求された制駆動力が前記フュエルカット制駆動力以下である場合、前記パワートレインに前記フュエルカット制駆動力を発生させる、
請求項1に記載の制駆動力制御システム。
【請求項3】
前記目標車速を維持するために車両に発生させる加速度である要求加速度を算出する要求加速度算出部と、
制動力を発生させる要求を受け付け、前記要求された制動力をブレーキに発生させるブレーキ制御部と、
前記要求加速度に基づいて、前記パワートレイン制御部に制駆動力を要求し、前記ブレーキ制御部に制動力を要求する制駆動力制御部と、をさらに備え、
前記制駆動力制御部は、
前記要求加速度を力に換算した要求制駆動力を算出する制駆動力算出部と、
前記要求制駆動力を前記パワートレイン制御部に要求し、前記パワートレインが要求に応じて発生させる制駆動力を取得し、前記要求制駆動力が前記取得した制駆動力未満である場合、前記要求制駆動力と前記取得した制駆動力との差に相当する制動力を前記ブレーキ制御部に要求する制駆動力分配部と、を含む、
請求項1に記載の制駆動力制御システム。
【請求項4】
目標車速を維持するため、制駆動力を制御する制駆動力制御システムであって、
パワートレインに制駆動力を要求する制駆動力制御部を備え、
前記制駆動力制御部は、前記パワートレインがエンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力、フュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力、および所定の要求制駆動力を取得し、前記最小制駆動力、前記フュエルカット制駆動力、および前記要求制駆動力に基づいて、制駆動力を前記パワートレインに要求する制駆動力要求部を含む、
制駆動力制御システム。
【請求項5】
前記制駆動力要求部は、
前記要求制駆動力が前記最小制駆動力以上である場合、前記要求制駆動力を前記パワートレインに要求し、
前記要求制駆動力が前記最小制駆動力未満かつ前記フュエルカット制駆動力より大きい場合、前記最小制駆動力を前記パワートレインに要求し、前記要求制駆動力と前記最小制駆動力との差に相当する制動力をブレーキに要求し、
前記要求制駆動力が前記フュエルカット制駆動力以下である場合、前記フュエルカット制駆動力を前記パワートレインに要求し、前記要求制駆動力と前記フュエルカット制駆動力との差に相当する制動力を前記ブレーキに要求する、
請求項4に記載の制駆動力制御システム。
【請求項6】
前記目標車速を維持するために車両に発生させる加速度である要求加速度を算出する要求加速度算出部と、
前記最小制駆動力および前記フュエルカット制駆動力を算出するとともに、制駆動力を発生させる要求を受け付け、前記要求された制駆動力を前記パワートレインに発生させるパワートレイン制御部と、
制動力を発生させる要求を受け付け、前記要求された制動力をブレーキに発生させるブレーキ制御部と、をさらに備え、
前記制駆動力制御部は、前記要求加速度を力に換算した前記要求制駆動力を算出する制駆動力算出部をさらに備える、
請求項4に記載の制駆動力制御システム。
【請求項7】
目標車速を維持するために制動力を制御するパワートレインであって、
エンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力およびフュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力を算出するとともに、制駆動力を発生させる要求を受け付け、前記要求された制駆動力、前記最小制駆動力、および前記フュエルカット制駆動力に基づいて、制駆動力を発生させる、
パワートレイン。
【請求項8】
請求項1に記載の制駆動力制御システムを備える、車両。
【請求項9】
請求項4に記載の制駆動力制御システムを備える、車両。
【請求項10】
請求項7に記載のパワートレインを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され車両の制駆動力を制御する制駆動力制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、ACC(Adaptive Cruise Control)、ASL(Adjustable Speed Limiter)、CRC(Cruise Control System)等とよばれる車速を自動的に維持する機能を有する運転支援装置が搭載されている。このような運転支援装置は、カメラや車速センサ等から取得する情報に基づいて、目標車速を実現、維持するための指令を生成して出力する。これに基づいて、パワートレインやブレーキが制御され、パワートレインが制動力あるいは駆動力である制駆動力を発生させたり、ブレーキが制動力を発生させたりすることにより、目標の車速が実現、維持される。
【0003】
制駆動力を車両の進行方向を正の向きとすると、例えば車両が降坂路を走行中に一定の車速を維持する場合、パワートレインには制駆動力を小さくすることが要求され、エンジンブレーキが期待される。パワートレインに要求される制駆動力がエンジンのフュエルカットを実行しないと実現できない制駆動力より小さくなると、フュエルカットが発生する。フュエルカットが発生するとパワートレインが発生させる制駆動力が非連続的に小さくなり、パワートレインに要求される制駆動力を下回り、車両が減速する。車両を加速するためパワートレインに要求される制駆動力を大きくすると、フュエルカットの実行が解除されるが、これによって、今度はパワートレインに要求される制駆動力より大きな制駆動力が発生する。このように、降坂路等において一定車速を維持する場合、フュエルカットの実行と実行解除とが繰り返され、フュエルカット実行時の制動力であるフュエルカット制動力とフュエルカット非実行時の最小の制駆動力である最小制駆動力との間で、パワートレインが発生させる制駆動力が急峻に小さくなったり大きくなったりするハンチングが発生することがあり、乗り心地が悪化することがあった。
【0004】
特許文献1は、目標車速を維持するために要求される要求制駆動力を、パワートレインに発生させる制御を行う場合において、このようなハンチングの発生を検出すると、フュエルカットを禁止することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-61179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目標車速を維持する場合に、上述のようにハンチングを検出した場合にフュエルカットを抑制することによって、ハンチングを抑制する方法における課題を、図5を参照して説明する。図5は、横軸に時刻を取り、縦軸に車両の実速度、パワートレインへの要求制駆動力、パワートレインが発生させている実制駆動力をそれぞれ取ったグラフである。時刻T0までは上述のハンチングが発生している。ハンチングが検出された後、時刻T0以降T1までは、フュエルカットが抑制され、ハンチングが抑制できている。しかし、この間、要求制駆動力に対して実制駆動力が大きいため車両の速度は増加する。実車速の目標車速からの乖離を抑制するため、その後時刻T1以降T2までは、フュエルカットを実行して、車両を減速する。以後、フュエルカットの実行と実行解除との繰り返しが発生する。このように、ハンチングを抑制するために単にフュエルカットを抑制することは、実質的に、実車速と目標車速との乖離の許容範囲を広げて、フュエルカットの実行と実行解除との繰り返しの周期を長くすることを意味する。また、ハンチングを検出することによってフュエルカットを抑制することは、最初のハンチングの発生を回避することができないことを意味する。そのため、目標車速への追従性と乗り心地とに依然として向上の余地がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、目標車速を維持するために車両に発生させる制駆動力の制御において、好適な目標車速への追従性と乗り心地とを実現できる、制駆動力制御システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、目標車速を維持するため、制駆動力を制御する制駆動力制御システムであって、パワートレインがエンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力およびフュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力を算出するとともに、制駆動力を発生させる要求を受け付け、最小制駆動力、フュエルカット制駆動力、および要求された制駆動力に基づいて、パワートレインに制駆動力を発生させるパワートレイン制御部を備える、制駆動力制御システムである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の他の局面は、目標車速を維持するため、制駆動力を制御する制駆動力制御システムであって、パワートレインに制駆動力を要求する制駆動力制御部を備え、制駆動力制御部は、パワートレインがエンジンのフュエルカットを実行せずに発生可能な最小の制駆動力である最小制駆動力、フュエルカットを実行して発生させる制駆動力であるフュエルカット制駆動力、および所定の要求制駆動力を取得し、最小制駆動力、フュエルカット制駆動力、および要求制駆動力に基づいて、制駆動力をパワートレインに要求する制駆動力要求部を含む、制駆動力制御システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、目標車速を維持するために車両に発生させる制駆動力の制御において、好適な目標車速への追従性と乗り心地とを実現できる、制駆動力制御システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1、第2実施形態に係る制駆動力制御システムの機能ブロックを示す図
図2】本発明の第1実施形態に係る処理を示すシーケンス図
図3】本発明の第1、第2実施形態に係る処理を示すグラフ
図4】本発明の第2実施形態に係る処理を示すシーケンス図
図5】従来技術に係る処理を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る制駆動力制御システムにおいては、要求されている制駆動力が、フュエルカット非実行時にパワートレインが発生させる制駆動力より小さくても、フュエルカット実行時にパワートレインが発生させる制駆動力より大きい場合は、フュエルカットを抑制する。また、フュエルカット非実行時および実行時において、パワートレインだけでは発生できない範囲の制駆動力が要求されている場合は、ブレーキに制動力を発生させることで、車両が発生させる制駆動力を、要求された制駆動力に一致させる。これにより、目標車速への好適な追従性と、制駆動力の急峻な変化のない好適な乗り心地とを実現できる。以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<構成>
図1に、本実施形態に係る制駆動力制御システム1およびその周辺機器の機能ブロック図を示す。制駆動力制御システム1は、要求加速度算出部10、制駆動力制御部20、パワートレイン50を制御するパワートレイン制御部30、ブレーキ60を制御するブレーキ制御部40を備える。
【0014】
要求加速度算出部10は、ACC等の目標車速を実現、維持する機能を有する運転支援装置に設けられる。要求加速度算出部10は、車速センサ、カメラ等から取得する車両および車両の周囲の状態を表す情報やあらかじめ設定された情報に基づいて、目標車速を設定し、目標車速を実現、維持するための制御情報として、車両に発生させる加速度である要求加速度を算出する。
【0015】
制駆動力制御部20は、制駆動力算出部21と、制駆動力分配部22とを含む。制駆動力算出部21は、要求加速度算出部10から要求として上述の要求加速度を受け付け、要求加速度を車両に発生させる力に換算して要求制駆動力を算出する。要求制駆動力は、例えば車両の進行方向を正の向きとする値で表される。要求制駆動力は、例えば、要求加速度、予め設定された車両の重量に基づいて算出することができる。また、算出にあたり、車速センサ等から取得した車両の実速度に基づくフィードバックや、各種センサから取得した路面の傾斜等に基づく補正等の演算をしてもよい。制駆動力分配部22は、要求制駆動力に基づいて、パワートレイン制御部30に制動力または駆動力である制駆動力を要求し、あるいはさらに、ブレーキ制御部40に制動力を要求する。
【0016】
パワートレイン制御部30は、車両が備えるパワートレイン50を制御して制駆動力を発生させることができる。パワートレイン50は、エンジンを有し、制動力を発生させる場合は、エンジンの温度等のパワートレイン50の各種状態や制動力の値に応じてエンジンのフュエルカットを実行する。また、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50の各種状態を監視し、パワートレイン50が現在フュエルカットを実行しないで発生させることが可能な最小の制駆動力である最小制駆動力と、パワートレイン50が現在フュエルカットを実行した場合に発生させるフュエルカット制駆動力とを算出することができる。パワートレイン50は、最小制駆動力以上の制駆動力を発生させる場合は、フュエルカットを実行しないこととなり、フュエルカット制駆動力を発生させる場合は、フュエルカットを実行することとなる。
【0017】
ブレーキ制御部40は、車両が備えるブレーキ60を制御して制動力を発生させることができる。
【0018】
<処理>
図2は、制駆動力制御システム1が行う制駆動力制御処理の一例を示すシーケンス図である。図2を参照して、制駆動力制御処理の一例を説明する。図2に示すフローは、ACCのような運転支援機能の実行中に繰り返し実行される。
【0019】
(ステップS101):要求加速度算出部10は、上述のように要求加速度を算出する。また、要求加速度算出部10は、制駆動力制御部20に要求加速度を通知する。
【0020】
(ステップS102):制駆動力制御部20の制駆動力算出部21は、ステップS101で通知された要求加速度を受け付け、要求加速度に基づいて、上述のように要求制駆動力を算出する。また、制駆動力制御部20の制駆動力分配部22は、要求制駆動力を発生させるよう、パワートレイン制御部30に要求する。
【0021】
(ステップS103):パワートレイン制御部30は、ステップS102で要求された要求制駆動力を受け付け、要求制駆動力に基づいてパワートレイン50に発生させる制駆動力を次のように決定する。まず、パワートレイン制御部30は、上述の最小制駆動力およびフュエルカット制駆動力を算出する。
【0022】
(1-1)要求制駆動力がフュエルカット制駆動力より大きい場合:
パワートレイン制御部30は、要求制駆動力と最小制駆動力とのうち、大きいほうをパワートレイン50に発生させる。この場合、パワートレイン50は結果的にフュエルカットを実行しない。
【0023】
(1-2)要求制駆動力がフュエルカット制駆動力以下である場合:
パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカット制駆動力を発生させる。この場合、パワートレイン50は結果的にフュエルカットを実行する。
【0024】
以上のように、パワートレイン50に発生させる制駆動力は要求制駆動力に等しいか、要求制駆動力より大きくなる。すなわち、要求制駆動力が小さく、制動力が要求されている場合、パワートレイン50が発生させる制動力が要求制駆動力に対して不足する場合がある。
【0025】
(ステップS104):パワートレイン制御部30は、ステップS103で決定した、パワートレイン50に発生させる制駆動力を制駆動力制御部20に通知する。
【0026】
(ステップS105):制駆動力制御部20の制駆動力分配部22は、要求制駆動力と、ステップS104で通知されたパワートレイン50に発生させる制駆動力とに基づいて、次のようにブレーキ60に発生させる制動力を決定する。
【0027】
(1-3)要求制駆動力がパワートレイン50に発生させる制駆動力未満である場合:
制駆動力分配部22は、要求制駆動力とパワートレイン50に発生させる制駆動力との差に相当する制動力をブレーキ制御部40に要求する。すなわち、要求制駆動力が小さく、制動力が要求されているが、パワートレイン50だけでは要求制駆動力を発生させることができない場合、ブレーキ60が不足分の制動力を補うように作動する。
【0028】
(1-4)要求制駆動力がパワートレイン50に発生させる制駆動力に等しい場合:
制駆動力分配部22は、ブレーキ制御部40に制動力を発生させる要求をしない。あるいは、制駆動力分配部22は、ブレーキ制御部40に制動力として0(N)を要求する。
【0029】
制駆動力分配部22は、ブレーキ制御部40から、現在ブレーキが発生させることができる制動力の範囲を取得し、ブレーキ制御部40に要求する制動力を取得した範囲内で決定してもよい。例えば、上述の(1-3)の場合において、要求制駆動力とパワートレイン50に発生させる制駆動力との差に相当する制動力の絶対値が、現在ブレーキが発生させることができる制動力の絶対値の最大値を超えている場合、この最大値に相当する制動力をブレーキ制御部40に要求してもよい。
【0030】
(ステップS106):パワートレイン制御部30は、ステップS103で決定した制駆動力を、パワートレイン50に発生させる。
【0031】
(ステップS107):ブレーキ制御部40は、ステップS105で制駆動力制御部20から制動力を発生させることを要求された場合、ブレーキ60に要求された制動力を発生させる。
【0032】
以上のステップS101~S107の処理が繰り返し実行される。図3を参照して、以上の処理による制駆動力制御の例を説明する。図3は、横軸に時刻を取り、縦軸に車両の実速度、要求制駆動力、実制駆動力をそれぞれ取ったグラフである。パワートレイン50が発生させている実制駆動力を太い破線で示し、パワートレイン50が発生させている実制駆動力およびブレーキ60が発生させている実制動力の合計を太い実線で示す。
【0033】
図3に示す例では、時刻T0で、上記処理が開始される。目標車速実現のため、要求制駆動力が徐々に小さくなり、時刻T1で、要求制駆動力が最小制駆動力に等しくなる。その後、要求制駆動力が最小制駆動力より小さくなり、時刻T2でフュエルカット制駆動力に等しくなり、さらにその後要求制駆動力がフュエルカット制駆動力より小さくなる。なお、図3には、目標車速、最小制駆動力、フュエルカット制駆動力の例を合わせて示す。図3には、一例としてこれらを一定値で表したが、実際には運転支援装置の動作やパワートレイン50の状態によって変動することがある。これらの値が変動する場合であっても同様の処理が可能である。
【0034】
時刻tがT0<t≦T1である期間は、上述の(1-1)および(1-4)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させずに要求制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に制動力を発生させない。
【0035】
時刻tがT1<t<T2である期間は、上述の(1-1)および(1-3)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させずに最小制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に要求制駆動力と最小制駆動力との差に相当する制動力を発生させる。
【0036】
時刻tがt=T2である時、上述の(1-2)および(1-4)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させてフュエルカット制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に制動力を発生させない。
【0037】
時刻tがT2<tである期間は、上述の(1-2)および(1-3)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させてフュエルカット制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に要求制駆動力とフュエルカット制駆動力との差に相当する制動力発生させる。
【0038】
以上のように、本実施形態においては、パワートレイン50とブレーキ60とを連携動作させ、車両に発生させる制駆動力を要求制駆動力に好適に一致させることができる。
【0039】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る制駆動力制御システム1は、パワートレイン制御部30がパワートレイン50に発生させる制駆動力を決定する。これに対して、本発明の第2実施形態に係る制駆動力制御システム1は、構成は第1実施形態と同様であるが、制駆動力制御部20がパワートレイン50に発生させる制駆動力を決定する点が異なる。
【0040】
<処理>
図4は、制駆動力制御システム1が行う制駆動力制御処理の一例を示すシーケンス図である。図4を参照して、制駆動力制御処理の一例を説明する。第1実施形態と同様の事項については説明を省略または簡略化する。
【0041】
(ステップS201):要求加速度算出部10は、要求加速度を算出し、制駆動力制御部20に通知する。
【0042】
(ステップS202):制駆動力制御部20の制駆動力算出部21は、要求加速度に基づいて、要求制駆動力を算出する。
【0043】
(ステップS203):パワートレイン制御部30は、最小制駆動力およびフュエルカット制駆動力を算出し、制駆動力制御部20に通知する。なお、本ステップの処理は、パワートレイン制御部30において、例えば定期的に行われる処理であり、制駆動力制御部20は常時、最小制駆動力およびフュエルカット制駆動力を取得することができる。
【0044】
(ステップS204):制駆動力制御部20の制駆動力分配部22は、ステップS202で算出した要求制駆動力と、ステップS203で通知された最小制駆動力およびフュエルカット制駆動力とに基づいて、パワートレイン50に発生させる制駆動力を次のように決定し、パワートレイン制御部30に要求する。
【0045】
(2-1)要求制駆動力が最小制駆動力以上である場合:
制駆動力分配部22は、要求制駆動力をパワートレイン制御部30に要求する。
【0046】
(2-2)要求制駆動力が最小制駆動力未満かつフュエルカット制駆動力より大きい場合:
制駆動力分配部22は、最小制駆動力をパワートレイン制御部30に要求する。
【0047】
(2-3)要求制駆動力がフュエルカット制駆動力以下である場合:
制駆動力分配部22は、フュエルカット制駆動力をパワートレイン制御部30に要求する。
【0048】
(ステップS205):制駆動力制御部20の制駆動力分配部22は、ステップS202で算出した要求制駆動力と、ステップS203で通知された最小制駆動力およびフュエルカット制駆動力とに基づいて、ブレーキ60に発生させる制動力を次のように決定し、制動力を発生させる場合は、決定した制動力をブレーキ制御部40に要求する。
【0049】
(2-4)要求制駆動力が最小制駆動力以上である場合:
制駆動力分配部22は、ブレーキ制御部40に制動力を発生させる要求をしない。あるいは、制駆動力分配部22は、ブレーキ制御部40に制動力として0(N)を要求する。
【0050】
(2-5)要求制駆動力が最小制駆動力未満かつフュエルカット制駆動力より大きい場合:
制駆動力分配部22は、要求制駆動力と最小制駆動力との差に相当する制動力をブレーキ制御部40に要求する。
【0051】
(2-6)要求制駆動力がフュエルカット制駆動力以下である場合:
制駆動力分配部22は、要求制駆動力とフュエルカット制駆動力との差に相当する制動力をブレーキ制御部40に要求する。
【0052】
(ステップS206):パワートレイン制御部30は、ステップS204で要求された制駆動力を、パワートレイン50に発生させる。パワートレイン制御部30は、要求された制駆動力がフュエルカット制駆動力より大きい場合、結果的にパワートレイン50にフュエルカットを実行させずに要求された制駆動力を発生させる。また、パワートレイン制御部30は、要求された制駆動力がフュエルカット制駆動力以下の場合、結果的にパワートレイン50にフュエルカットを実行させて要求された制駆動力を発生させる。
【0053】
(ステップS207):ブレーキ制御部40は、ステップS205で制駆動力制御部20から制動力を発生させることを要求された場合、ブレーキ60に要求された制動力を発生させる。
【0054】
以上のステップS201~S207の処理が繰り返し実行される。以上の処理による制駆動力制御の結果は、第1実施形態と同様となる。これを示すため、図3を参照して、本実施形態の処理による制駆動力制御の例を説明する。
【0055】
時刻tがT0<t≦T1である期間は、上述の(2-1)および(2-4)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させずに要求制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に制動力を発生させない。
【0056】
時刻tがT1<t<T2である期間は、上述の(2-2)および(2-5)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させずに最小制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に要求制駆動力と最小制駆動力との差に相当する制動力を発生させる。
【0057】
時刻tがt=T2である時、上述の(2-3)および(2-6)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させてフュエルカット制駆動力を発生させる。この場合、要求制駆動力とフュエルカット制駆動力との差に相当する制動力が0(N)であるので、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に制動力を発生させない。
【0058】
時刻tがT2<tである期間は、上述の(2-3)および(2-6)に該当し、パワートレイン制御部30は、パワートレイン50にフュエルカットを実行させてフュエルカット制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に要求制駆動力とフュエルカット制駆動力との差に相当する制動力を発生させる。
【0059】
以上のように、本実施形態においても第1実施形態と同様、パワートレイン50とブレーキ60とを連携動作させ、車両に発生させる制駆動力を要求制駆動力に好適に一致させることができる。
【0060】
(効果)
本発明の各実施形態によれば、要求制駆動力が、フュエルカット非実行時にパワートレインが発生させる駆動力より小さくても、フュエルカット実行時にパワートレインが発生させる制駆動力より大きい場合は、フュエルカットを抑制する。また、フュエルカット非実行時および実行時において、要求制駆動力がパワートレインだけでは発生できない範囲である場合は、ブレーキに制動力を発生させることで、車両が発生させる制駆動力を、要求された制駆動力に一致させる。これにより、車両が発生させる制駆動力が、目標車速を維持するための要求制駆動力から乖離することがなく、またフュエルカットに起因して非連続的に変化することがないため、目標車速への好適な追従性と、制駆動力の急峻な変化のない好適な乗り心地とを実現できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、制駆動力制御システムだけでなく、制駆動力制御システムの各部および各部のコンピュータが実行する制御方法、制御プログラムおよびこれを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、制駆動力制御システムを搭載した車両等として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両等に搭載される制駆動力システムに有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 制駆動力制御システム
10 要求加速度算出部
20 制駆動力制御部
21 制駆動力算出部
22 制駆動力分配部
30 パワートレイン制御部
40 ブレーキ制御部
50 パワートレイン
60 ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5