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特開2022-188205変化されたFcRnを有する改変された免疫グロブリン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188205
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】変化されたFcRnを有する改変された免疫グロブリン
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20221213BHJP
   C07K 16/32 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20221213BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221213BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221213BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221213BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221213BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20221213BHJP
   C12N 15/06 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K16/32
C07K16/24
C07K16/22
C07K16/28
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/04
A61P31/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/00 A
A61K47/68
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/06 100
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161176
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2018548847の分割
【原出願日】2017-03-14
(31)【優先権主張番号】62/307,686
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】510179537
【氏名又は名称】ウニヴァーシテテット イ オスロ
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 1072,Blindern,0316 Oslo Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】フォス,スティアン
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,ヤン,テリエ
(72)【発明者】
【氏名】サンドリー,インガー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗体を介する治療に用いられる、変化された半減期を有する改変された免疫グロブリンを提供する。
【解決手段】突然変異IgG Fc領域を含む免疫グロブリンであって、前記突然変異IgG Fc領域が、(a)311位のアミノ酸残基がアルギニン、(b)428位のアミノ酸残基がグルタミン酸またはアスパラギン酸、および(c)434位のアミノ酸残基がトリプトファンを含み、アミノ酸残基のナンバリングがEUインデックスに従う、免疫グロブリンを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突然変異IgG Fc領域を含む免疫グロブリンであって、前記突然変異IgG Fc領域が、(a)311位のアミノ酸残基がアルギニン、(b)428位のアミノ酸残基がグルタミン酸またはアスパラギン酸、および(c)434位のアミノ酸残基がトリプトファンを含み、アミノ酸残基のナンバリングがEUインデックスに従う、免疫グロブリン。
【請求項2】
突然変異を欠如する野生型Fc領域を有する親免疫グロブリンと比較してFcRnへの変化された結合を有する、請求項1に記載の免疫グロブリン。
【請求項3】
前記親免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ハイブリッドIgG2/IgG4およびこれらのFc断片からなる群から選択される、請求項2に記載の免疫グロブリン。
【請求項4】
前記親免疫グロブリンが、IgG1またはIgG2であり、前記突然変異IgG Fc領域が、補体因子C1qへの増強された結合を有する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記突然変異IgG Fc領域が、前記親免疫グロブリンと比較して免疫グロブリンの血清半減期を延長する、請求項2~4のいずれか1項に記載の免疫グロブリン。
【請求項6】
SEQ ID NO:2、7、8、11、12、13、14、15および16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の免疫グロブリン。
【請求項7】
癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカーおよび成長因子からなる群から選択される標的に結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫グロブリン。
【請求項8】
それを必要とする対象における疾患の処置または予防での使用のための請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫グロブリン。
【請求項9】
前記疾患が、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片拒絶、および感染性疾患からなる群から選択される、請求項8に記載の免疫グロブリン。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫グロブリンの突然変異Fc領域を含むFc融合断片。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫グロブリンまたはその突然変異Fc領域を含むFc融合断片が免疫原に融合してなる融合タンパク質。
【請求項12】
前記免疫原が、ヒトp75TNF受容体の細胞外部分である、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
対象において免疫応答を生じさせるために使用される請求項11または12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫グロブリンを構築する方法であって、ベクターに基づく発現系を使用する、方法。
【請求項15】
前記免疫グロブリンがモノクローナル抗体であり、組換え技術により突然変異が導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体が、体細胞ハイブリダイゼーション手順により作製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記体細胞ハイブリダイゼーション手順が、マウスにおけるハイブリドーマ生成を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体が、コンビナトリアル抗体ディスプレイ法を用いて作製される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫グロブリンのヒト化形態を作製する方法であって、前記免疫グロブリンが、可変領域(Fv)、フレームワーク領域(FR)および突然変異IgG Fc領域を含み、前記免疫グロブリンのFRの全てまたは実質的に全てを、ヒト抗体に対応する同等のFRに置き換えることを含む、方法。
【請求項20】
前記免疫グロブリンのヒト化形態が、組換えDNA技術を用いて作製される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫グロブリンのヒト化形態が、CDR置換を用いて作製される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫グロブリンのヒト化形態が、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異誘発を用いて作製される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗体を介した治療のための組成物および方法に関する。詳細には本明細書で提供されるのは、変化された半減期を有する改変された免疫グロブリンである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗体は、特異的抗原を結合する免疫タンパク質である。ヒトおよびマウスをはじめとするほとんどの哺乳動物において、抗体は、対合した重鎖および軽鎖ポリペプチド鎖から構築される。各鎖は、個々の免疫グロブリン(Ig)ドメインで構成され、このため一般的用語の免疫グロブリンは、そのようなタンパク質に用いられる。各鎖は、可変領域および定常領域と称される2つの別個の領域で構成される。軽鎖および重鎖可変領域は、抗体間で顕著な配列多様性を示し、標的抗原の結合を担う。定常領域は、より低い配列多様性を示し、重要な生化学的事象を誘起する複数の天然タンパク質の結合を担う。ヒトには、IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、およびIgMを含む5つの異なるクラスの抗体がある。V領域には微妙な差異が存在し得るが、これらの抗体クラス間を識別する特色は、それらの定常領域である。図1は、免疫グロブリンの一般的構造特徴を記載するために、本明細書で用いられるIgG1抗体を示している。IgG抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される四量体タンパク質である。IgG重鎖は、それぞれ重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2、および重鎖定常ドメイン3を指す、VH-CH1-CH2-CH3の順でN末端からC末端へと連結される4つの免疫グロブリンドメイン(それぞれ重鎖可変ドメイン、定常ガンマ1ドメイン、定常ガンマ2ドメイン、および定常ガンマ3ドメインを指す、VH-Cγ1-Cγ2-Cγ3とも称される) から構成される。IgG軽鎖は、それぞれ軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを指す、VL-CLの順でN末端からC末端へと連結される2つの免疫グロブリンドメインから構成される。
【0003】
抗体の可変領域は、分子の抗原結合決定基を含有し、こうしてその標的抗原に対する抗体の特異性を決定する。可変領域は、同じクラス内の他の抗体と配列が最も異なるために、このように呼ばれる。配列可変性の大部分は、相補性決定領域(CDR)において生じる。重鎖および軽鎖に3つずつ、合計6つのCDRがあり、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3と呼ばれる。CDRの外側の可変領域は、フレームワーク(FR)領域と称される。CDRほど多様ではないが、配列可変性が、異なる抗体間でFR領域に生じる。全体として、抗体のこの特徴的構造様式が安定な足場(FR領域)を提供し、その上で実質的な抗原結合多様性(CDR)が免疫系により模索されて、幅広い抗原群に対する特異性が獲得され得る。多数の高解像度構造が異なる生物体由来の種々の可変領域フラグメントについて入手可能であり、いくつかは未結合でありいくつかは抗原と複合体形成している。抗体可変領域の配列および構造的特徴は、十分に特徴づけられており(全体として参照により組み入れられる、Morea et al.,1997,Biophys Chem 68:9-16;Morea et al.,2000,Methods 20:267-279)、抗体の保存された特色が、豊富な抗体改変技法の開発を可能にした(全体として参照により組み入れられる、Maynard et al.,2000,Annu Rev Biomed Eng 2:339-376)。例えば、1つの抗体、例えばネズミ抗体由来のCDRを別の抗体、例えばヒト抗体のフレームワーク領域に移植することが可能である。当該技術分野で「ヒト化」と称されるこのプロセスは、非ヒト抗体からの免疫原性の低い抗体治療薬の作製を可能にする。可変領域を含むフラグメントが抗体の他の領域の非存在下で存在してよく、例えばVH-Cγ1およびVH-CLを含む抗原結合フラグメント(Fab)、VHおよびVLを含む可変フラグメント(Fv)、同じ鎖内で互いに連結されたVHおよびVLを含む一本鎖可変フラグメント(scFv)、ならびに種々の他の可変領域フラグメントを含む(全体として参照により組み入れられる、Little et al.,2000,Immunol Today 21:364-370)。
【0004】
抗体のFc領域は、複数のFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と称される数々の重要な機能的能力を付与する。
【0005】
IgGでは、CH2およびCH3ドメインの両方からのアミノ酸を含むFc上の部位が、エンドサイトーシスされた抗体をエンドソームから血流へ再循環させる受容体である胎児性Fc受容体(FcRn)との相互作用を媒介する(全体として参照により組み入れられる、Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739-766)。このプロセスは、完全長分子のサイズが大きいために腎臓ろ過の除外を伴い、1~3週間の範囲の好適な抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合もまた、細胞内および細胞間の抗体輸送において中心的役割を果たす。Fc上のFcRnへの結合部位は、細菌のプロテインAおよびGが結合する部位でもある。これらのタンパク質による緊密な結合は典型的には、タンパク質精製時にプロテインAまたはタンパク質Gアフィニティークロマトグラフィーを用いることによる、抗体精製の手段として活用される。こうしてFc上のこの領域の忠実度は、抗体の臨床的特性およびそれらの精製の両方にとって重要である。
【0006】
FcRnは、それがIgGの母子間移行を媒介し、IgGおよびアルブミンの血清存続性を調節し、かつ異なる細胞コンパートメント間で両方のリガンドを輸送するため、複数の免疫および非免疫プロセスにおける重要な担い手である。加えてFcRnは、抗原提示および交差提示を増強する。サイトゾル内で見出されるTRIM21とは対照的に、FcRnは、酸性化されたエンドソーム内に主に存在し分極化された細胞層をまたいでリサイクル経路または経細胞輸送経路のいずれかを介してリガンドを輸送する、膜貫通受容体である。しかしFcRnは、免疫複合体のプロセシングとそれに続くT細胞への抗原性ペプチドの提示を増強することもできる。FcRn-IgG相互作用の特徴は、FcRnが厳密にpH依存性の方式でIgG Fcを結合し、酸性pHでは結合するが中性pHでは結合しないか遊離し、このことは細胞の中および外でのFcRn介在性輸送に不可欠である。FcRn-IgG Fc相互作用の改変は、より短いもしくはより長い血清半減期を有する抗体、または細胞層をまたいで輸送されるための変化された能力を有する抗体を生じた。FcRnは、広く発現され、そのため造血細胞または非造血細胞の両方において異なる細胞内の位置で見出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FcRnへのpH依存性結合の増強を示す改善された治療性IgGが、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、抗体を介した治療のための組成物および方法に関する。詳細には本明細書で提供されるのは、変化された半減期を有する改変された免疫グロブリンである。
【0009】
例えば幾つかの実施形態において、本発明は、FcRnへの変化された結合親和性を有する治療性免疫グロブリンを含む組成物であって、免疫グロブリンが、その免疫グロブリンのFc領域に少なくとも1つの突然変異を含む、組成物を提供する。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスである。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、本明細書に記載される免疫グロブリン変異体の1つのFc融合体である。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、例えば、311、434、428、438、または435から選択される位置の1つまたは複数で突然変異を有する。幾つかの実施形態において、突然変異は、例えば、IgG1-Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434W、IgG1-Q311R、IgG1-N434W、IgG3(b)-Q311R/N434W/M428E、IgG3(b)-Q311R/N434W/M438E/R435H、IgG1-M252S/Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434P/M428E、IgG1-Q311R/N434W/M428D、IgG1-Q311R/N434W/M428E/H433K、IgG1-L309K/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309R/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309S/Q311R/N434W/M428E、またはIgG3(b)-Q311R/N434W/M428E/R435Hである(例えば、免疫グロブリンの定常領域は、SEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16から選択されるアミノ酸配列 、またはSEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一の配列を有する)。
【0010】
さらなる実施形態は、Fc領域に少なくとも1つの突然変異を含む免疫グロブリンを含む組成物であって、免疫グロブリンがFcRnへの変化された結合を有し、突然変異が、例えばIgG1-Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434W、IgG1-Q311R、IgG1-N434W、IgG3(b)-Q311R/N434W/M428E、IgG3(b)-Q311R/N434W/M438E/R435H、IgG1-M252S/Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434P/M428E、IgG1-Q311R/N434W/M428D、IgG1-Q311R/N434W/M428E/H433K、IgG1-L309K/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309R/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309S/Q311R/N434W/M428E、またはIgG3(b)-Q311R/N434W/M428E/R435Hから選択される、組成物を提供する。
【0011】
さらに別の実施形態は、FcRnへの変化された結合を有し、Q311R、N434W、およびM428E突然変異を有する、IgG1免疫グロブリンを提供する。
【0012】
幾つかの実施形態において、抗体は、例えば、癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカー、または成長因子から選択される標的に結合する。
【0013】
さらに別の実施形態は、それを必要とする対象における疾患を処置または予防するための本明細書に記載された免疫グロブリンの使用を提供する。幾つかの実施形態において、疾患は、例えば、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片拒絶、または感染性疾患であるが、他の疾患が特別に企図される。幾つかの実施形態において、抗体は、例えば、癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカー、または成長因子から選択される標的に結合するが、他の標的が特別に企図される。
【0014】
さらなる実施形態は、それを必要とする対象に本明細書に記載された免疫グロブリンを提供することを含む、対象における疾患を処置するまたは予防する方法を提供する。
【0015】
さらなる実施形態は、本明細書に記載された免疫グロブリン変異体またはそのFc融合体(例えば、免疫原に融合された)を含むワクチン組成物、および対象において免疫応答を生成するためのその使用を提供する。
【0016】
追加の実施形態が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】pH6.0(上図)および7.4(下図)でのヒトFcRnへの一群のFcを改変されたh9C12 IgG1変異体の結合を示すELISA。
図2】pH6.0(7.8~4000.0nM)および7.4(4000.0nM)でのヒトFcRnへの一群のFcを改変されたh9C12 IgG1変異体の結合を示すSPRセンサーグラム。IgG1-M252Y/S254T/T256Eを対照として含んだ。
図3】IgG1変異体のアミノ酸配列を示すアライメントを示す。Fcを改変されたIgG1変異体の定常ドメインのアミノ酸配列。
図4図3からの配列を示す。
図5】pH6.0および7.4でのヒトFcRnへの一群のFcを改変されたh9C12 IgG1およびIgG3変異体の結合を示すELISAを示す。
図6】pH6.0(1000~15.6nM)(A~D)およびpH7.4(1000nM)(E~F)でのヒトFcRnへの一群のFcを改変されたh9C12 IgG1変異体の結合を示すSPRセンサーグラムを示す。
図7】ヒトFcRn Tg32-Alb-/-トランスジェニックマウスにおける(A)h9C12および(b)NIP IgG1変異体のインビボ半減期(残留率%)を示す。NIP=4-ヒドロキシ-3-ヨード-5-ニトロフェニル酢酸。
図8】IgG変異体の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で用いられる用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す抗体フラグメントを非限定的に含む、様々な抗体構造を包含する。また包含されるのは、Fc領域を有する抗体断片、および免疫グロブリンのFc領域と同等の領域を含む融合タンパク質である。
【0019】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、ダイアボディ、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書内の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義するために用いられる。この用語は、ネイティブ配列のFc領域および変異体のFc領域を包含する。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端へと延在する。しかし、Fc領域のC-末端リジン(Lys447)は、存在してもしなくてもよい。本明細書で他に断りがなければ、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載される通り、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0021】
「エフェクター機能」は本明細書では、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因し得るそれらの生物活性を指すために用いられる。抗体のエフェクター機能の例としては、Clq結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC);貪食;サイトカイン分泌;抗原提示細胞による免疫複合体介在性抗原取り込み;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。タンパク質を参照して用いられる場合の用語「野生型」は、合成タンパク質を生成するように操作されるもの以外の細胞、組織、または生物体のゲノムにコードされるタンパク質を指す。
【0022】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部または全てに特異的に結合しかつそれらに相補的であるエリアを含む、抗原結合分子の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定部分のみに結合でき、その部分はエピロープと称される。抗原結合ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供され得る。好ましくは抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0023】
用語「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残り部分が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。キメラ抗体の場合、例えば非抗原結合成分は、チンパンジーおよびヒトなどの霊長類を含む、非常に多様な種に由来し得る。ヒト化抗体は、キメラ抗体の特に好ましい形態である。
【0024】
抗体の「クラス」は、重鎖に保有される定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらの複数は、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAにさらに分別され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、α、β、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0025】
「免疫グロブリンのFc領域と同等の領域」は、免疫グロブリンのFc領域の天然由来の対立遺伝子変異体に加え、置換、付加、または欠失を生じるが、エフェクター機能(抗体依存性細胞障害など)を媒介する免疫グロブリンの能力を実質的に低下させない変化を有する変異体を包含するものとする。例えば1つまたは複数のアミノ酸は、生物学的機能の実質的な損失なしに免疫グロブリンのFc領域のN-末端またはC-末端から欠失され得る。そのような変異体は、活性への最小の影響を有するように当該技術分野で公知の一般的規則に従って選択され得る(例えば、Bowie,J.U.et al.,Science 247:1306-10(1990))。
【0026】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)(またはCDR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがってHVRおよびFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の順序で出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0027】
用語「完全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」は、本明細書で互換的に用いられ、ネイティブ抗体構造と実質的に類似の構造を有する抗体、または本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0028】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択の際に最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),vols.1-3でのようなサブグループである。一実施形態において、VLの場合、サブグループは、上掲のKabatらでのようなサブグループカッパIである。一実施形態において、VHの場合、サブグループは、上掲のKabatらでのようなサブグループIIIである。
【0029】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基と、を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1種、典型的には2種の可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全ては、非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0030】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列中で超可変性であり、そして/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般にネイティブの4本鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。HVRは一般に、超可変ループからのおよび/または「相補性決定領域(CDR)」からのアミノ酸残基を含み、後者は最も配列可変性高くかつ/または抗原認識に関与する。VH内のCDR1を除き、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は相補性決定領域(CDR)とも称され、これらの用語は、本明細書では抗原結合領域を形成する可変領域の部分を参照して互換的に用いられる。この特定の領域は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,”Sequences of Proteins of Immunological Interest”(1983)、およびChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)に記載されており、それらの定義は、互いに比較される場合アミノ酸残基のオーバーラップまたはサブセットを含む。しかし、抗体またはその変異体のCDRを指すためのいずれかの定義の適用は、本明細書で定義および使用される用語の範囲内のものとする。先に引用された参考資料のそれぞれに定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表1に示す。特定のCDRを包含する厳密な残基番号は、CDRの配列およびサイズに応じて変動するであろう。当業者は、どの残基が抗体の可変領域アミノ酸配列で表される特定のCDRを含むかを、日常的に決定できる。
【0031】
ポリペプチドを参照して用いられる場合の用語「変異体」および「突然変異体」は、1種または複数のアミノ酸が他の、通常は関連するポリペプチドと異なるアミノ酸配列を指す。変異体は、「保存的」変化を有し得、そこで置換されたアミノ酸は、類似の構造または化学的特性を有する。保存的アミノ酸置換の1つのタイプは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;p-アミノフェニルアラニンのような非天然アミノ酸、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。より希少なものとして、変異体は、「非保存的」変化を有し得る(例えば、グリシンとトリプトファンの交換)。類似の微小な変異はまた、アミノ酸欠失もしくは挿入(即ち、付加)、またはその両方も包含し得る。どのアミノ酸残基が、および幾つのアミノ酸残基が、生物活性を減じることなく置換、挿入または欠失され得るかを決定する手引きは、当該技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えば、DNAStarソフトウエアを用いて見出され得る。変異体を、機能的アッセイでテストできる。好ましい変異体は、10%未満の、好ましくは5%未満の、より好ましくは2%未満の変化(置換、欠失などのいずれか)を有する。アミノ酸置換については、以下の命名法を使用する:元のアミノ酸、位置、置換アミノ酸。したがって、位置573におけるリジンのアラニンによる置換は「K573A」と表され、位置573におけるリジンのプロリンによる置換は「K573P」と表される。多重突然変異については、例えば加算記号(「+」)または「/」により区切って表記され、例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」または「G205R/S411F」は、それぞれ、位置205および411での、グリシン(G)をアルギニン(R)に置換し、セリン(S)をフェニルアラニン(F)に置換する突然変異を表す。
【0032】
2つのアミノ酸配列間、または2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「同一性」というパラメータによって記載される。本発明の目的においては、2つのアミノ酸配列間の同一性の度合いは、Needleman-Wunsch アルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends in Genetics 16:276-277)のNeedleプログラム(好ましくはバージョン3.0.0以降)で実行されるように用いて決定される。用いられる任意パラメータ11644.000-EP7は、ギャップ・オープン・ペナルティーが10、ギャップ・エクステンション・ペナルティーが0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」と表示されるNeedleの出力値(-nobriefオプションを用いて得られるもの)を%同一性として使用し、以下の式に従って計算する:
(同一残基数×100)/(アラインメント長-アラインメント中のギャップ総数)。
【0033】
参照配列中のある位置「に対応するアミノ酸位置」という表現、および類似の表現は、一次構造または空間的構造において参照配列中の特定の位置に対応するアミノ酸残基を同定するためのものである。熟練者は、これが、所与の配列を参照配列とアライメントすること、および参照配列の特定の位置で一致するアミノ酸残基を同定することにより実施され得ることを、認識するであろう。
【0034】
Xnnnという表現は、HSA中の位置nnnに対応する位置に存在するアミノ酸残基Xを意味すると意図され、XnnnYという表現は、HSA中の位置nnnに対応する位置に存在する任意のアミノ酸Xの、アミノ酸残基Yでの置換を意味すると意図される。
【0035】
本明細書で用いられる用語「親和性」は、結合対の2つのメンバーの間、例えば、免疫グロブリンとFcRnの間の結合強度の尺度を指す。Kは、解離定数であり、モル濃度の単位を有する。親和性定数は、解離定数の逆数である。親和性定数は、この化学的物体を記載するための一般的用語として用いられる場合もある。それは、結合エネルギーの直接の尺度である。Kの自然対数は、式:ΔG=-RTLN(K)(式中、Rは気体定数であり、温度はケルビン度である)による結合のギブズ自由エネルギーに一次的に関連する。親和性は、実験的に、例えば市販のBiacore SPR装置(GE Healthcare)を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により、決定され得る。
【0036】
本明細書で用いられる用語「上記対象が免疫応答を生じるような条件下で」は、免疫応答(例えば、自然なまたは獲得された)の任意の定性的または定量的な誘導、発生、および/または刺激を指す。
【0037】
本明細書で用いられる用語「免疫応答」は、対象の免疫系による応答を指す。例えば、免疫応答としては、Toll受容体活性化、リンホカイン(例えば、サイトカイン(例えば、Th1またはTh2型サイトカイン)またはケモカイン)発現および/もしくは分泌、マクロファージ活性化、樹状細胞活性化、T細胞活性化(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)、NK細胞活性化、ならびに/またはB細胞活性化(例えば、抗体生成および/または分泌)における検出可能な変化(例えば、増加)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫応答の追加的例としては、MHC分子への免疫原(例えば、抗原(例えば、免疫原性ポリペプチド))の結合ならびに細胞障害性Tリンパ球(「CTL」)の応答を誘導すること、免疫原性ポリペプチドが得られる抗原に対するB細胞の応答(例えば、抗体産生)、および/またはT-ヘルパーリンパ球の応答、および/または遅延型過敏性(DTH)応答の誘導、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞(例えば、任意の発生段階の(例えば形質細胞)の拡張(例えば、細胞集団の成長)、ならびに抗原提示細胞による抗原のプロセシングおよび提示の増加が挙げられる。免疫応答は、対象の免疫系が異物として認識する免疫原(例えば、微生物(例えば、病原)由来の非自己抗原、または異物として認識される自己抗原)に対するものであり得る。したがって、本明細書で用いられる「免疫応答」が非限定的に、自然免疫応答(例えば、Toll受容体シグナルカスケードの活性化)、細胞性免疫応答(例えば、T細胞(例えば、抗原特異性T細胞)および免疫系の非特異性細胞を介する応答)、および液性免疫応答(例えば、B細胞を介する応答(例えば、血漿、リンパおよび/または組織液への抗体の産生および分泌を介する))を含む任意のタイプの免疫応答を指すことが、理解されなければならない。用語「免疫応答」は、抗原および/または免疫原に応答する対象の免疫系の能力の全ての態様を包含することを意味する(例えば、免疫原(例えば、病原)への初期の応答、および適応免疫の結果である獲得された(例えば、記憶)応答の両方)。
【0038】
本明細書で用いられる用語「免疫」は、疾患を引き起こす可能性がある微生物(例えば、病原)への暴露の際の疾患からの防御(例えば、疾患の兆候、症状または状態の予防または減弱化(例えば、抑制))を指す。免疫は、自然なもの(例えば、抗原への過去の暴露の非存在下で存在する非適応な(例えば、非獲得)免疫応答)および/または獲得されたもの(例えば、抗原への過去の暴露に続くBおよびT細胞が介する(例えば、抗原への増加された特異性および反応性を示す)免疫応答)であり得る。
【0039】
本明細書で用いられる用語「免疫原」は、対象において免疫応答を誘発できる物質(例えば、微生物(例えば、細菌、ウイルスまたは真菌)および/またはその一部もしくは成分(例えば、タンパク質抗原))を指す。幾つかの実施形態において、免疫原は、この免疫原(例えば、微生物(例えば、病原または病原産物))に対する免疫を誘起する。
【0040】
用語「被験化合物」は、疾患、疾病、病気、もしくは身体機能の障害を処置もしくは予防するために、またはそれ以外で試料の生理学的状態もしくは細胞状態を変化させるために用いられ得る任意の化学的物体、医薬、薬物などを指す。被験化合物は、既知のおよび潜在的な治療化合物の両方を含む。被験化合物は、本発明のスクリーニング方法を用いてスクリーニングすることにより治療性であと決定され得る。「既知の治療化合物」は、そのような処置または予防に効果的であると示された(例えば、動物試験またはヒトへの投与による過去の経験により)治療化合物を指す。
【0041】
本明細書で用いられる用語「試料」は、その最も広い意味で用いられる。本明細書で用いられる用語「試料」は、その最も広い意味で用いられる。1つの意味ではそれは、組織試料を指し得る。別の意味ではそれは、任意の供給源から得られる標本または培養物、および生体試料を包含することを意味する。生体試料は、動物(ヒトを含む)から得ることができ、液体、固体、組織、および気体を包含する。生体試料としては、血漿、血清などの血液生成物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの例は、本発明に適用可能な試料のタイプを限定するものと解釈されてはならない。ヒト染色体またはヒト染色体に関連する配列の含有が疑われる試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、分裂中期染色体のスプレッド)、ゲノムDNA(溶液中の、またはサザンブロット分析用などの固体担体に結合された)、RNA(溶液中の、またはノーザンブロット分析用などの固体担体に結合された)、cDNA(溶液中の、または固体担体に結合された)などを含み得る。タンパク質の含有が疑われる試料は、細胞、組織の一部、1種または複数のタンパク質を含有する抽出物などを含み得る。
【0042】
本明細書で用いられる用語「親和性」は、結合対の1つのメンバーの間の、例えば免疫グロブリンとFcRnの間の結合強度の尺度を指す。Kは、解離定数であり、モル濃度の単位を有する。親和性定数は、解離定数の逆数である。親和性定数は、この化学的物体を記載するための一般的用語として用いられる場合もある。それは、結合エネルギーの直接の尺度である。Kの自然対数は、式:ΔG=-RTLN(K)(式中、Rは気体定数であり、温度はケルビン度である)による結合のギブズ自由エネルギーに一次的に関連する。親和性は、実験的に、例えば市販のBiacore SPR装置(GE Healthcare)を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により、決定され得る。
【0043】
本明細書で用いられる用語「上記対象が免疫応答を生じるような条件下で」は、免疫応答(例えば、自然なまたは獲得された)の任意の定性的または定量的な誘導、発生、および/または刺激を指す。
【0044】
本明細書で用いられる用語「免疫応答」は、対象の免疫系による応答を指す。例えば、免疫応答としては、Toll受容体活性化、リンホカイン(例えば、サイトカイン(例えば、Th1またはTh2型サイトカイン)またはケモカイン)発現および/もしくは分泌、マクロファージ活性化、樹状細胞活性化、T細胞活性化(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)、NK細胞活性化、ならびに/またはB細胞活性化(例えば、抗体生成および/または分泌)における検出可能な変化(例えば、増加)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫応答の追加的例としては、MHC分子への免疫原(例えば、抗原(例えば、免疫原性ポリペプチド))の結合、ならびに細胞障害性Tリンパ球(「CTL」)の応答を誘導すること、免疫原性ポリペプチドが得られる抗原に対するB細胞の応答(例えば、抗体産生)、および/またはT-ヘルパーリンパ球の応答、および/または遅延型過敏性(DTH)応答の誘導、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞(例えば、任意の発生段階の(例えば、形質細胞)の拡張(例えば、細胞集団の成長)、ならびに抗原提示細胞による抗原のプロセシングおよび提示の増加が挙げられる。免疫応答は、対象の免疫系が異物として認識する免疫原(例えば、微生物(例えば、病原)由来の非自己抗原、または異物として認識される自己抗原)に対するものであり得る。したがって、本明細書で用いられる「免疫応答」が非限定的に自然免疫応答(例えば、Toll受容体シグナルカスケードの活性化)、細胞性免疫応答(例えば、T細胞(例えば、抗原特異性T細胞)および免疫系の非特異性細胞を介する応答)、および液性免疫応答(例えば、B細胞を介する応答(例えば、血漿、リンパおよび/または組織液への抗体の産生および分泌を介する))を含む任意のタイプの免疫応答を指すことが、理解されなければならない。用語「免疫応答」は、抗原および/または免疫原に応答する対象の免疫系の能力の全ての態様を包含することを意味する(例えば、免疫原(例えば、病原)への初期の応答、および適応免疫の結果である獲得された(例えば、記憶)免疫応答の両方)。
【0045】
本明細書で用いられる用語「免疫」は、疾患を引き起こす可能性がある微生物(例えば、病原)への暴露の際の疾患からの防御(例えば、疾患の兆候、症状または状態の予防または減弱化(例えば、抑制))を指す。免疫は、自然なもの(例えば、抗原への過去の暴露の非存在下で存在する非適応な(例えば、非獲得)免疫応答)および/または獲得されたもの(例えば、抗原への過去の暴露に続くBおよびT細胞が介する(例えば、抗原への増加された特異性および反応性を示す)免疫応答)であり得る。
【0046】
本明細書で用いられる用語「免疫原」は、対象において免疫応答を誘発できる物質(例えば、微生物(例えば、細菌、ウイルスまたは真菌)および/またはその一部もしくは成分(例えば、タンパク質抗原))を指す。幾つかの実施形態において、免疫原は、この免疫原(例えば、微生物(例えば、病原または病原産物))に対する免疫を誘起する。
【0047】
本発明の詳細な記載
本発明は、抗体を介した治療のための組成物および方法に関する。詳細には、本明細書で提供されるのは、変化された半減期を有する改変された免疫グロブリンである。
【0048】
免疫グロブリン分子は、鎖間ジスルフィド結合により共につながれる、2つの同一重鎖および2つの同一軽鎖ポリペプチド鎖で構成される。個々の軽鎖および重鎖は、約110のアミノ酸の領域に折り重なり、保存された三次元コンホメーションを取る。軽鎖は、1つの可変領域(VLと称される)および1つの定常領域(CL)を含むみ、一方で重鎖は、1つの可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3)を含む。領域の対が会合して、不連続の構造を形成する。詳細には軽鎖および重鎖の可変領域であるVLおよびVHが会合して、抗原結合部位を含む「FV」エリアを形成する。
【0049】
重鎖および軽鎖の両方の可変領域は、抗体分子により構造および軽鎖アミノ酸組成において大きな可変性を示すが、定常領域は、可変性をほとんど示さない。各抗体は、重鎖および軽鎖の可変領域をFvエリアへと会合させることにより画定される結合部位を通して抗原を認識し結合する。特定の抗体分子の軽鎖可変領域VLおよび重鎖可変領域VHは、その特定の抗体により認識される抗原エピトープに結合するコンホメーションを抗原結合部位が取れるようにする特異的アミノ酸配列を有する。
【0050】
可変領域内には、アミノ酸配列が抗体により極めて可変性である領域が見出される。3つのこれらのいわゆる「超可変」領域または「相補性決定領域」(CDR)が、軽鎖および重鎖それぞれに見出される。軽鎖由来の3つのCDRおよび対応する重鎖由来の3つのCDRが、抗原結合部位を形成する。
【0051】
多くの免疫グロブリン重鎖および軽鎖のアミノ酸配列が決定されており、抗体分子の2つの重要な特徴を明らかにする。第一に、各鎖は、類似しているが同一でない一連の配列からなり、それぞれが約110アミノ酸長である。これらのリピートのそれぞれは、タンパク質ドメインとして知られるタンパク質構造の不連続でコンパクトに折り畳まれた領域に対応する。軽鎖はそのような2つの免疫グロブリンドメインで構成され、一方でIgG抗体の重鎖は4つ含む。
【0052】
アミノ酸配列の比較により明らかにされた第二の重要な特徴は、重鎖および軽鎖の両方のアミノ末端配列が異なる抗体間で大きく変動することである。配列中の可変性は、第一のドメインに対応する最初の110アミノ酸にほぼ限定され、一方で残りのドメインは、同じアイソタイプの免疫グロブリン鎖の間で一定である。重鎖および軽鎖のアミノ末端可変またはVドメイン(それぞれVおよびV)は一緒に抗体のV領域を構成し、特異的抗原に結合する能力をそこに付与し、一方で重鎖および軽鎖の定常ドメイン(Cドメイン)(それぞれ、CおよびC)はC領域を構成する。複数の重鎖Cドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、例えばC1、C2などとナンバリングされる。
【0053】
先に記載されたタンパク質ドメインは、会合してより大きな球状ドメインを形成する。したがって、完全に折り畳まれ組織化されると、抗体分子は、ヒンジ領域として知られるポリペプチド鎖のフレキシブルなストレッチにより接合される3つの等しいサイズの球状部分を含む。このY形構造の各アームは、軽鎖と重鎖のアミノ末端半分との会合により形成され、Yの本体は、2つの重鎖のカルボキシ末端半分の対合により形成される。重鎖と軽鎖の会合は、C1ドメインとCドメインのように、VドメインとVドメインが対合するようになっている。C3ドメインは互いに対合するが、C2ドメインは相互作用せず、C2ドメインに付着した炭水化物側鎖は2つの重鎖の間に存在する。2つの抗原結合部位は、Yの2つのアームの末端で対合したVおよびVドメインによって形成される。
【0054】
ポリペプチド配列を切断するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が、抗体分子の構造を解体するため、および分子のどの部分がその様々な機能を担うかを決定するために用いられている。プロテアーゼであるパパインによる限定的な消化は、抗体分子を3つのフラグメントに切断する。2つのフラグメントは、同一であり、抗原結合活性を含む。これらは、Fragment antigen binding(フラグメント抗原結合)として、Fabフラグメントと称される。Fabフラグメントは抗体分子の2つの同一アームに対応し、重鎖のVおよびC1ドメインと対合される完全な軽鎖を含む。他のフラグメントは、抗原結合活性を含まず、本来は即座に結晶化することが観察されており、この理由のためFragment crystallizable(結晶化可能なフラグメント)として、Fcフラグメントと命名された。このフラグメントは、対合したC2およびC3ドメインに対応し、エフェクター分子および細胞と相互作用する抗体分子の一部である。重鎖アイソタイプの間の機能的差異は、主にFcフラグメントに存在する。抗体分子のFc部分とFab部分を連結するヒンジ領域は、剛性のヒンジというよりむしろ、実際には柔軟なロープであり、2つのFabアームの独立した運動を可能にする。本発明は、ウイルスターゲットに対する抗体を介した免疫のための組成物および方法に関する。詳細には本明細書で提供されるのは、抗ウイルス活性を有する改変された免疫グロブリンである。
【0055】
本発明は、好ましくは免疫グロブリンのFc領域またはヒンジ領域に、1つまたは複数の突然変異を含む突然変異体免疫グロブリンを提供する。好ましい実施形態において、突然変異は、所望の方法で免疫グロブリンの機能を変化させる。例えば、幾つかの実施形態において、本発明は、抗体のインビボ半減期を増加させるために、FcRN結合を調整するFc領域での少なくとも1つの突然変異を含む、変異体免疫グロブリンの使用を提供する。増加された半減期は、治療的抗体に有利である。
【0056】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、突然変異を含まない免疫グロブリンに比較してFcRNへの変化された結合(上昇または低下した結合親和性)を示す。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスである。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、例えばKabatシステムによるナンバリングの311、428、434、435、または438から選択される1つまたは複数の位置で突然変異を有する。本開示全体を通して、Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)および(1991)のナンバリングシステムが参照される。これらの概論において、Kabatは、各サブクラスでの抗体について多くのアミノ酸配列を列挙し、そのサブクラスでの各残基位置について最も一般的に発生するアミノ酸を列挙している。Kabatは、列挙された配列中の各アミノ酸に残基番号を割り付けるための方法を利用し、残基番号を割り付けるためのこの方法は、この分野での基準になった。この明細書ではKabatナンバリング計画に従う。本発明の目的では、Kabatの概論に含まれない候補抗体のアミノ酸配列に残基番号を割り付けるために、以下のステップに従う。一般に候補配列は、Kabatで任意の免疫グロブリン配列または任意のコンセンサス配列とアラインされる。アライメントは、手作業で、または一般的に許容されたコンピュータプログラムを用いてコンピュータにより実施され得、そのようなプログラムの例はAlign2プログラムである。アライメントは、ほとんどのFab配列に共通する幾つかのアミノ酸残基を用いることにより容易になり得る。例えば、軽鎖および重鎖はそれぞれ、同じ残基番号を有する2つのシステインを典型的に有し;Vドメインでは2つのシステインは典型的には残基番号23および88にあり、Vドメインでは2つのシステイン残基は典型的には22および92とナンバリングされる。フレームワーク残基は必ずではないが一般に、ほぼ同じ番号の残基を有するが、CDRは、サイズが変動するであろう。例えば、アライメントされるKabatでの配列中のCDRよりも長い候補配列からのCDRの場合、さらなる残基の挿入を示すために、典型的には副指数が残基番号に付加される。例えば残基34および36についてはKabat配列と並ぶが、残基35と並ぶ残基をそれらの間に有さない候補配列では、番号35は単に残基に割り付けられない。
【0057】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、定常鎖(constant chain)(例えば、Fcの)変異体である。本明細書に記載される免疫グロブリンは、特定のCDRまたは可変領域配列に限定されず、所望される任意の抗原またはエピトープを認識するように作製されまたは改変され得る。したがって幾つかの実施形態において、突然変異は、例えば、IgG1-Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434W、IgG1-Q311R、IgG1-N434W、IgG3(b)-Q311R/N434W/M428E、IgG3(b)-Q311R/N434W/M438E/R435H、IgG1-M252S/Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434P/M428E、IgG1-Q311R/N434W/M428D、IgG1-Q311R/N434W/M428E/H433K、IgG1-L309K/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309R/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309S/Q311R/N434W/M428E、またはIgG3(b)-Q311R/N434W/M428E/R435Hから選択される(例えば、免疫グロブリンの定常領域は、SEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16から選択されるアミノ酸配列 、またはSEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一の配列を有する)。幾つかの特別な実施形態において、免疫グロブリンは、Q311R、N434W、およびM428E突然変異を有する。
【0058】
先に記載された突然変異は、任意の適切な免疫グロブリン分子中に導入され得る。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、モノクローナル抗体であり、好ましくは組換え技術により生成される。
【0059】
標的抗原(例えば、受容体などの細胞表面タンパク質)に対するモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)の体細胞ハイブリダイゼーション技術などの従来のモノクローナル抗体方法論を含む種々の技術により生成される。幾つかの実施形態において、体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、モノクローナル抗体を生成するための他の技術も、企図される(例えば、Bリンパ球のウイルス性または発癌性形質転換)。ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、ネズミ系である。
【0060】
マウスにおけるハイブリドーマ生成は、確立された手順である。融合用の免疫脾細胞の単離のための免疫化プロトコルおよび技術は、当該技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、ネズミ骨髄腫細胞)および融合手順もまた、公知である。ヒトタンパク質に対するヒトモノクローナル抗体(mAb)は、マウス系よりむしろ完全なヒト免疫系を含むトランスジェニックマウスを用いて作製され得る。トランスジェニックマウスからの脾細胞が、目的の抗原で免疫化され、それを用いて、ヒトタンパク質由来のエピトープに対し特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを生成する。(例えば、Wood et al.,WO91/00906,Kucherlapati et al.,WO91/10741;Lonberg et al.,WO92/03918;Kay et al.,WO92/03917[それぞれが、全体として参照により本明細書に組み入れられる];N.Lonberg et al.,Nature,368:856-859[1994];L.L.Green et al.,Nature Genet.,7:13-21[1994];S.L.Morrison et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,81:6851-6855[1994];Bruggeman et al.,Immunol.,7:33-40[1993];Tuaillon et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,90:3720-3724[1993];およびBruggernan et al.Eur.J.Immunol.,21:323-1326[1991]参照)。
【0061】
モノクローナル抗体は、組換えDNA技術の当業者に公知の他の方法により作製することもできる。「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」と称される他の方法が、特定の抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定および単離するために開発されており、モノクローナル抗体を生成するために用いることができる。(例えば、Sastry et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,86:5728[1989];Huse et al.,Science,246:1275[1989];およびOrlandi et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,86:3833[1989]参照)。上記の通り動物を免疫原で免疫化した後、得られたB細胞プールの抗体レパトアがクローニングされる。オリゴプライマーの混合物およびPCRを利用することにより免疫グロブリン分子の多様な集団の可変領域のDNA配列を得る方法が、一般に公知である。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに保存された3’定常領域プライマーに対するプライマーを、複数のネズミ抗体からの重鎖および軽鎖可変領域のPCR増幅に用いることができる。(例えば、Larrick et al.,Biotechniques,11:152-156[1991]参照)。類似の方策も、ヒト抗体からのヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅するのに用いられてきた(例えば、Larrick et al.,Methods:Companion to Methods in Enzymology,2:106-110[1991]参照)。
【0062】
キメラマウス-ヒトモノクローナル抗体は、当該技術分野で公知の組換えDNA技術を利用して生成され得る。例えば、ネズミ(または他の種の)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、制限酵素で消化されてネズミFcをコードする領域を除去し、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等部分が置換される(例えば、Robinson et al.,PCT/US86/02269;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;WO86/01533;US4,816,567;欧州特許出願第125,023号[それぞれが、全体として参照により本明細書に組み入れられる];Better et al.,Science,240:1041-1043[1988];Liu et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,84:3439-3443[1987];Liu et al.,J.Immunol.,139:3521-3526[1987];Sun et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,84:214-218[1987];Nishimura et al.,Canc.Res.,47:999-1005[1987];Wood et al.,Nature,314:446-449[1985];およびShaw et al.,J.Natl.Cancer Inst.,80:1553-1559[1988]参照)。キメラ抗体は、抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域由来の同等の配列に置き換えることにより、さらにヒト化され得る。ヒト化キメラ抗体の一般的論評は、S.L.Morrison,Science,229:1202-1207(1985)およびOi et al.,Bio.Techniques,4:214(1986)に提供されている。それらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも一方からの免疫グロブリンFv可変領域の全てまたは一部をコードする核酸配列を単離する、操作する、および発現することを含む。そのような核酸の供給源は当業者に周知であり、例えば、ハイブリドーマを産生する抗GPIIbIIIa抗体である7E3から得ることができる。キメラ抗体またはそのフラグメントをコードする組換えDNAはその後、適当な発現ベクター中にクローニングされ得る。
【0063】
適切なヒト化抗体はあるいは、CDR置換により生成され得る(例えば、US5,225,539[全体として参照により本明細書に組み入れられる];Jones et al.,Nature,321:552-525[1986];Verhoeyan et al.,Science,239:1534[1988];およびBeidler et al.,J.Immunol.,141:4053[1988])。特定のヒト抗体のCDRの全てが、非ヒトCDRの少なくとも一部と置き換えられ得るか、またはCDRの幾つかのみが、非ヒトCDRで置き換えられ得る。Fc受容体へのヒト化抗体の結合に必要とされる複数のCDRを置き換えることだけが、必要である。
【0064】
抗体は、ヒト抗体のCDRの少なくとも一部を非ヒト抗体由来のCDRで置き換えることが可能な任意の方法によりヒト化され得る。ヒト化CDRは、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異誘発を用いて、非ヒトCDRで置き換えることができる。
【0065】
特異的アミノ酸が置換、欠失または付加されているキメラおよびヒト化抗体もまた、本発明の範囲内である。詳細には、好ましいヒト化抗体は、抗原への結合を改善するためなどの、フレームワーク領域にアミノ酸置換を有する。例えば、マウスCDRを有するヒト化抗体において、ヒトフレームワーク領域に位置するアミノ酸は、マウス抗体内の対応する位置にあるアミノ酸で置換され得る。そのような置換は、幾つかの例において抗原へのヒト化抗体の結合を改善することが知られる。幾つかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ネズミ抗体またはそのフラグメントである。他の好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、ウシ抗体またはそのフラグメントである。例えば、ネズミ抗体は、不死化細胞に融合された重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより生成され得る。抗体は、非限定的にIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、IgG4);IgM;IgA1;IgA2;IgAsec;IgD;およびIgEを含む様々なアイソタイプのものであり得る。幾つかの好ましい実施形態において、抗体は、IgGアイソタイプである。他の好ましい実施形態において、抗体は、IgMアイソタイプである。抗体は、完全長(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体)であり得るか、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fvフラグメント)のみを含み得る。
【0066】
好ましい実施形態において、免疫グロブリンは、組換え抗体(例えば、キメラまたはヒト化抗体)、そのサブユニット、または抗原結合フラグメントである(例えば、可変領域、または少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する)。幾つかの実施形態において、免疫グロブリンは、一価である(例えば、1対の重鎖および軽鎖、またはその抗原結合部分を含む)。別の実施形態において、免疫グロブリンは、二価である(例えば、2対の重鎖および軽鎖、またはその抗原結合部分を含む)。
【0067】
幾つかの実施形態において、本発明は、変異体免疫グロブリンまたはそのFc融合体と、免疫原と、を含むワクチン組成物を提供する。本発明は、ワクチン組成物の特定の配合剤により限定されない。実際に、本発明のワクチン組成物は、融合タンパク質に加えて、1種または複数の異なる薬剤を含み得る。これらの薬剤または補因子としては、アジュバント、界面活性剤、添加剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート化剤、油、塩、治療剤、薬物、生物活性剤、抗菌剤、および抗微生物剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬など)が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、融合タンパク質を含むワクチン組成物は、免疫応答を誘導する免疫原の能力を増強する薬剤および/または補因子(例えば、アジュバント)を含む。幾つかの好ましい実施形態において、1種または複数の補因子または薬剤の存在は、免疫応答(例えば、防御的免疫応答(例えば、防御的免疫化))の誘導に必要とされる免疫原の量を減少させる。幾つかの実施形態において、1種または複数の補因子または薬剤の存在は、免疫応答を細胞性の(例えば、T細胞を介する)または液性の(例えば、抗体を介する)免疫応答へとスキューイングするのに用いることができる。本発明は、本発明の治療薬中で用いられる補因子または薬剤のタイプにより限定されない。
【0068】
アジュバントは、Vaccine Design--the Subunit and Adjuvant Approach,Powell and Newmanによる編集,Plenum Press,New York,1995に概ね記載されている。本発明は、用いられるアジュバントのタイプ(例えば、組成物(例えば、医薬組成物)中での使用のための)により限定されない。例えば、幾つかの実施形態において、適切なアジュバントとしては、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が挙げられる。幾つかの実施形態において、アジュバントは、カルシウム、鉄もしくは亜鉛の塩であり得るか、あるいはアシル化チロシン、アシル化糖、カチオンもしくはアニオンで誘導体化された多糖、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であり得る。
【0069】
一般に免疫応答は、抗原と免疫系細胞との相互作用を通して抗原に対して生じる。免疫応答は、広範には2つのカテゴリー、つまり液性免疫応答および細胞を介した免疫応答(例えば、従来はそれぞれ、抗体および細胞エフェクターの防御機構により特徴づけられる)に分類され得る。これらの応答カテゴリーは、Th1型応答(細胞を介する応答)、およびTh2型免疫応答(液性免疫)と呼ばれてきた。
【0070】
免疫応答の刺激は、ある介入に対する免疫系の細胞または成分の直接的または間接的な応答(例えば、免疫原への暴露)から生じ得る。免疫応答は、免疫系細胞(例えば、B細胞、T細胞、樹状細胞、APC、マクロファージ、NK細胞、NKT細胞など)の活性化、増殖または分化;マーカーおよびサイトカインの上方または下方制御された発現;IgA、IgMまたはIgG力価の刺激;脾腫大(脾臓細胞充実度の増加を含む);様々な臓器での過形成および細胞浸潤の混合、を含む多くの方法で測定できる。免疫刺激に関して評定され得る免疫系の他の応答、細胞、および成分は、当該技術分野で公知である。
【0071】
メカニズムの理解は本発明を実践するのに必須ではなく、本発明は任意の特定の作用機序に限定されないが、幾つかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、サイトカインの発現および分泌(例えば、マクロファージ、樹状細胞、およびCD4+T細胞による)を誘導する。特定のサイトカインの発現の調整は、局所でまたは全身で起こり得る。サイトカインプロファイルが免疫応答におけるT細胞調節機能およびエフェクター機能を決定し得ることは、公知である。幾つかの実施形態において、Th1型サイトカインが誘導され得、それにより本発明の免疫刺激組成物が、細胞障害性T細胞を含むTh1型抗原特異性免疫応答を促進し得る(例えば、それにより望まないTh2型免疫応答(例えば、疾患の重症度を高めること(例えば、粘液形成のIL-13誘導)に関与するTh2型サイトカイン(例えば、IL-13)の生成)を回避する)。
【0072】
サイトカインは、T細胞応答を指揮することにおいて役割を担う。ヘルパー(CD4+)T細胞は、Bおよび他のT細胞を含む他の免疫系細胞に作用する可溶性因子の産生を通して哺乳動物の免疫応答を統合する。ほとんどの成熟CD4+Tヘルパー細胞は、2つのサイトカインプロファイル:Th1またはTh2の一方を発現する。Th1型CD4+T細胞は、IL-2、IL-3、IFN-γ、GM-CSFおよび高レベルのTNF-αを分泌する。Th2細胞は、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、GM-CSFおよび低レベルのTNF-αを発現する。Th1型サイトカインは、細胞を介する免疫、ならびにマウスでのIgG2aおよびヒトでのIgG1への免疫グロブリンのクラススイッチングを特徴とする液性免疫の両方を促進する。Th1応答はまた、遅延型過敏症および自己免疫疾患と関連し得る。Th2型サイトカインは、主として液性免疫を誘導し、IgG1およびIgEへのクラススイッチングを誘導する。Th1応答と関連する抗体アイソタイプは一般的に、中和能およびオプソニン化能を有し、Th2応答と関連する抗体は、アレルギー性応答とより関連する。
【0073】
複数の因子が、Th1型またはTh2型応答のいずれかへの免疫応答のスキューイングに影響を及ぼすことが示されている。最もよく特徴づけられた調節因子は、サイトカインである。IL-12およびIFN-γは、陽性のTh1調節因子であり陰性のTh2調節因子である。IL-12は、IFN-γ産生を促進し、IFN-γは、IL-12に正のフィードバックをもたらす。IL-4およびIL10は、Th2サイトカインプロファイルの確立、およびTh1サイトカインの産生の下方制御に重要であると考えられる。
【0074】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、免疫原を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるTh1型免疫応答を刺激する方法を提供する。しかし他の実施形態において、本発明は、免疫原を含む組成物を対象に投与することを含む、対象におけるTh2型の免疫応答を刺激する方法(例えば、T細胞を介する応答の均衡が望ましい場合)を提供する。さらに好ましい実施形態において、アジュバントを用いて(例えば本発明の組成物と共投与されて)、Th1型またはTh2型免疫応答のいずれかへと免疫応答をスキューイングし得る。例えば、Th2応答を誘導する、またはTh1応答を弱めるアジュバントとしては、ミョウバン、サポニン、およびSB-As4が挙げられるが、これらに限定されない。Th1応答を誘導するアジュバントとしては、MPL、MDP、ISCOMS、IL-12、IFN-γ、およびSB-AS2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
Th1型免疫原の複数の他のタイプが、本発明の組成物および方法において使用され得る(例えばアジュバントとして)。これらとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、モノホスホリルリピドA(例えば、特に3-de-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))が使用される。3D-MPLは、モンタナ州のRibi Immunochemによって製造される周知のアジュバントである。化学的にはそれは多くの場合、4、5または6位のいずれかのアシル化鎖を有する3-de-O-アシル化モノホスホリルリピドAの混合物として供給される。幾つかの実施形態において、ジホスホリルリピドA、およびその3-O-脱アシル化変異体が使用される。これらの免疫原のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられるGB2122204Bに記載の方法によって精製および調製され得る。他の精製および合成リポ多糖が、記載されている(例えば、それぞれ全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,005,099号およびEP0729473;Hilgers et al.,1986,Int.Arch.Allergy.Immunol.,79(4):392-6;Hilgers et al.,1987,Immunology,60(1):141-6;ならびにEP0549074参照)。幾つかの実施形態において、3D-MPLは、微粒子配合剤の形態で使用される(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられるEP0689454に記載される、直径0.2μm未満の小さな粒径を有して)。
【0076】
幾つかの実施形態において、サポニンが、本発明の組成物における免疫原(例えばTh1型アジュバント)として使用される。サポニンは、周知のアジュバントである(例えば、Lacaille-Dubois and Wagner(1996)Phytomedicine vol 2 pp363-386参照)。サポニンの例としては、Quil A(南アメリカの樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来)、およびこれらの画分が挙げられる(例えば、それぞれ全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,057,540号;Kensil,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,1996,12(1-2):1-55;およびEP0362279参照)。また本発明において有用であると企図されるのは、溶血性のサポニンQS7、QS17、およびQS21(Quil AのHPLC精製画分;例えば、それぞれ全体として参照により本明細書に組み入れられる、Kensil et al.(1991).J.Immunology 146,431-437、米国特許第5,057,540号、WO96/33739、WO96/11711およびEP0362279参照)である。また有用であると企図されるのは、QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組合せである(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる国際公開第99/10008号参照)。
【0077】
幾つかの実施形態において、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含む免疫原性オリゴヌクレオチドが、アジュバントとして使用される。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略語である。CpGは、全身および粘膜の両経路によって投与される場合のアジュバントとして当該分野で公知である(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、WO96/02555、EP468520、Davis et al.,J.Immunol,1998,160(2):870-876、McCluskie and Davis,J.Immunol.,1998,161(9):4463-6、および米国特許出願公開第20050238660号参照)。例えば、幾つかの実施形態において、免疫刺激性の配列は、プリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミンジンであり、ここでCGモチーフはメチル化されていない。
【0078】
メカニズムの理解は本発明を実践するのに必須ではなく、本発明は任意の特定の作用機序に限定されないが、幾つかの実施形態において、1つまたは複数のCpGオリゴヌクレオチドの存在は、ナチュラルキラー細胞(IFN-γを産生)およびマクロファージを含む様々な免疫サブセットを活性化する。幾つかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、免疫応答を誘導するために本発明の組成物中に配合される。幾つかの実施形態において、CpGの遊離溶液が、抗原(例えば、溶液中に存在する(例えば、参照により本明細書に組み入れられるWO96/02555参照))と共投与される。幾つかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、抗原に共有結合でコンジュゲートされる(例えば、参照により本明細書に組み入れられるWO98/16247参照)か、または水酸化アルミニウムなどの担体と共に配合される(例えば、Brazolot-Millan et al.,Proc.Natl.AcadSci.,USA,1998,95(26),15553-8参照)。
【0079】
幾つかの実施形態において、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバント、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL-2、IFN-γ、IL-4など)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など)、細菌のADP-リボシル化毒素、例えばコレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌の熱不安定性毒素(LT)、特にLT-K63(63位にある野生型アミノ酸がリジンに置換されている)、LT-R72(72位にある野生型アミノ酸がアルギニンに置換されている)、CT-S109(109位にある野生型アミノ酸がセリンに置換されている)、およびPT-K9/G129(9位にある野生型アミノ酸がリジンに置換され、129位にある野生型アミノ酸がグリシンに置換されている)(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み入れられるWO93/13202およびWO92/19265参照))の無毒化突然変異体、および他の免疫原性物質(例えば、本発明の組成物の有効性を高める)などのアジュバントが、本発明の免疫原を含む組成物と共に使用される。
【0080】
本発明における用途が見出されるアジュバントのさらなる例としては、ポリ(ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute、米国所在);モノホスホリルリピドA(MPL;Ribi ImmunoChem Research,Inc.,モンタナ州ハミルトン所在)、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)およびトレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi)などのリポ多糖の誘導体;OM-174(リピドAと関連するグルコサミン二糖;OM Pharma SA、スイス メイラン所在);およびリーシュマニアの伸長因子(精製されたリーシュマニアタンパク質;Corixa Corporation、ワシントン州シアトル所在)が挙げられる。
【0081】
アジュバントを、免疫原を含む組成物に添加でき、またはアジュバントを、組成物と組み合わせるまたは共投与する前に、担体、例えばリポソーム、または金属塩(例えば、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム))と共に配合できる。
【0082】
幾つかの実施形態において、免疫原を含む組成物は、単一のアジュバントを含む。他の実施形態において、組成物は、2種以上のアジュバントを含む(例えば、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられる、WO94/00153、WO95/17210、WO96/33739、WO98/56414、WO99/12565、WO99/11241およびWO94/00153参照)。
【0083】
幾つかの実施形態において、免疫原を含む組成物は、1種または複数の粘膜接着剤を含む(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20050281843号参照)。本発明は、使用される粘膜接着剤のタイプにより限定されない。実際に、非限定的にポリ(アクリル酸)(例えば、Carbopolおよびポリカルボフィル)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(例えばアルギナートおよびキトサン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、レクチン、線毛タンパク質、およびカルボキシメチルセルロース、の架橋誘導体を含む種々の粘膜接着剤が、本発明において有用であると企図される。メカニズムの理解は本発明を実践するのに必須ではなく、本発明は任意の特定の作用機序に限定されないが、幾つかの実施形態において、粘膜接着剤が使用されない場合の免疫原への暴露の期間および/または量に比較して、粘膜接着剤が使用される場合に対象が受ける免疫原への暴露の期間および/または量の増加により、粘膜接着剤の使用(例えば、免疫原を含む組成物中で)は、対象(例えば、本発明の組成物を投与された)における免疫応答の誘導を増強する。
【0084】
幾つかの実施形態において、免疫グロブリンおよび/またはワクチン組成物は、適当な塩および緩衝剤と一緒に用いられて組成物を対象に送達させる。緩衝剤は、組成物が患者に導入される際にも用いられる。水性組成物は、医薬的に許容し得る担体または水性媒体中に分散された組成物の有効量を含む。そのような組成物は、接種物とも称される。
【0085】
語句「医薬的または薬理学的に許容し得る」とは、動物またはヒトに投与された場合に有害反応、アレルギー性反応、または他の望まない反応を生じない分子物質および組成物を指す。本明細書で用いられる「医薬的に許容し得る担体」は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。いずれかの従来の媒体または薬剤が、本発明のベクターまたは細胞と不適合である場合を除き、治療組成物中でのその使用が、企図される。補助的有効成分も、組成物中に組み入れられ得る。
【0086】
本発明の幾つかの実施形態において、活性組成物は、古典的な医薬調製物を包含する。本発明によるこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用できる限り、任意の一般的経路を介する。これは経口、鼻孔、口腔、直腸、膣または局所を包含する。あるいは投与は、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によるものであり得る。
【0087】
組成物はまた、非経口または腹腔内投与され得る。遊離塩基または薬理学的に許容し得る塩として活性化合物の溶液が、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適宜混合された水中で調製される。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレンングリコールおよびそれらの混合物、ならびに油の中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防する防腐剤を含有する。
【0088】
注射可能な使用に適した医薬形態は、滅菌水性溶液または分散液および滅菌注射可能な溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によって行うことができる。
【0089】
滅菌注射溶液は、先に列記された様々な他の成分と共に、必要な量で活性化合物を適当な溶媒中に組み入れ、必要に応じて次に濾過滅菌することにより、調製される。一般に分散液は、基本的な分散媒および先に列記されたものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に様々な滅菌有効成分を組み入れることにより調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過されたその溶液から有効成分+任意の所望の追加的成分の粉末を生じる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0090】
配合の後、組成物は、投与配合剤と適合可能な手法で、かつ治療的に有効である量で投与される。配合剤は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの種々の投与剤形で容易に投与される。水性溶液中での非経口投与の場合、例えば、必要に応じて溶液を適宜緩衝し、液体希釈剤をまず十分な生理食塩水またはグルコースで等張にする。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適する。例えば、1つの投与量を、1mlの等張NaCl溶液中に溶解し、1000mlの皮下注入流体に添加するか、または提案された輸液部位に注射し得る(例えば、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」15th Edition、p1035-1038および1570-1580参照)。本発明の幾つかの実施形態において、活性粒子または活性剤は、用量あたり約0.0001~1.0ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0またはさらに約10ミリグラムを含むように治療混合物中に配合される。複数の用量が、投与され得る。
【0091】
他の投与様式に適したさらなる配合剤としては、膣坐薬およびペッサリーが挙げられる。直腸ペッサリーまたは坐薬を用いることもできる。坐薬は、様々な重量および形状の固体投与剤形であり、通常は直腸、膣または尿道への挿入用に製剤化される。挿入後、坐薬は、体腔液で軟化、融解または溶解する。一般に、坐薬の場合、伝統的な結合剤および担体は、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含んでよく;そのような坐薬は、0.5%~10%の、好ましくは1%~2%の範囲で有効成分を含有する混合物から形成され得る。膣坐薬またはペッサリーは通常、球形または卵形であり、それぞれ約5gの重量である。膣用薬剤は、坐薬の古典的概念から離れて、種々の物理的形態で、例えばクリーム、ゲルまたは液体で利用可能である。
【0092】
本発明の状況における「処置すること」は、障害もしくは疾患に関連する症状の全てもしくは一部の軽減、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは増悪の緩徐化、阻害もしくは停止、または疾患もしくは障害を発症するリスクのある対象における疾患もしくは障害の予防もしくは防止を意味する。したがって、例えば、ウイルス感染を処置することは、対象におけるウイルスの複製を阻害もしくは予防すること、または対象におけるウイルス感染の症状を低減することを包含し得る。本明細書で用いられる、本発明の化合物の「治療有効量」は、障害もしくは疾患に関連する症状の全てもしくは一部を軽減する、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは増悪を緩徐化、阻害もしくは停止する、または疾患もしくは障害を発症するリスクのある対象における疾患もしくは障害を予防するあるいはそれらの防止を提供する、化合物の量を指す。
【0093】
対象は、本明細書に記載される化合物の投与により利益を享受する任意の動物である。幾つかの実施形態において、対象は、例えばヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、げっ歯類、例えばラットまたはマウスである。典型的には対象は、ヒトである。
【0094】
本発明で用いられる本明細書に記載される化合物の治療有効量は、投与経路および投与剤形に応じて変動し得る。本発明の化合物の有効量は典型的には、約0.001~100mg/kg/日、より典型的には約0.05~10mg/kg/日の範囲に含まれる。典型的には、本発明で用いられる化合物または複数の化合物は、高い治療指数を示す配合剤を提供するように選択される。治療指数は、LD50とED50の間の比率として表され得る毒性作用と治療効果の間の比率である。LD50は、集団の50%に致死的な用量であり、ED50は、集団の50%において治療的に有効な用量である。LD50およびED50は、動物細胞培養または実験動物での標準的な医薬手順により決定される。本発明は、本明細書に記載された1種または複数の化合物、その医薬的に許容し得る塩、その立体異性体、その互変異性体、またはその溶媒和物を、医薬的に許容し得る担体、賦形剤、結合剤などと混和することにより調製されて、原発性および/または転移性前立腺癌を阻害または処置し得る医薬的組成物および薬剤も提供する。そのような組成物は、例えば顆粒、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、坐薬、注射、エマルジョン、エリキシル、懸濁液または溶液の形態であり得る。本発明の組成物は、例えば、経口、非経口、局所、直腸、鼻腔による、または移植されたリザーバーを介する、様々な投与の経路のために配合され得る。非経口または全身投与としては、皮下、静脈内、腹腔内、および筋肉内注射が挙げられるが、これらに限定されない。以下の投与剤形は、例として示されており、本発明を限定するものと解釈されてはならない。
【0095】
経口、口腔および舌下投与の場合、粉末、懸濁液、顆粒、錠剤、丸薬、カプセル、ゲルカップ、およびカプレットが固体投与剤形として許容できる。これらは、例えば、本発明の1種もしくは複数の化合物またはその医薬的に許容し得る塩もしくは互変異性体を、デンプンまたは他の添加剤などの少なくとも1種の添加剤と混合することにより、調製され得る。適切な添加剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖(cellulose sugar)、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギナート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアガム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成ポリマーまたはグリセリドである。場合により経口投与剤形は、不活性希釈剤などの投与を補助する他の成分、またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、またはパラベンもしくはソルビン酸などの防腐剤、またはアスコルビン酸、トコフェロールもしくはシステインなどの抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味剤、香味剤または芳香剤を含有し得る。錠剤および丸薬は、当該技術分野で公知の適切なコーティング材料でさらに処置され得る。
【0096】
経口投与用の液体投与剤形は、医薬的に許容し得るエマルジョン、シロップ、エリキシル、懸濁液、および溶液の形態であってよく、それは水などの不活性希釈剤を含有し得る。医薬配合剤および薬剤は、非限定的に油、水、アルコール、およびこれらの組み合わせなどの滅菌液を用いて、液体懸濁物または溶液として調製され得る。医薬的に適した界面活性剤、懸濁剤、乳化剤が、経口または非経口投与のために添加され得る。上記の通り、懸濁液は、油を含み得る。そのような油としては、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、コムオイル(com oil)およびオリーブ油が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁調製物は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリドおよびアセチル化脂肪酸グリセリドなどの脂肪酸のエステルも含有し得る。懸濁配合剤は、非限定的にエタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロールおよびプロピレングリコールなどのアルコールを含み得る。非限定的にポリ(エチレングリコール)、鉱物油およびワセリンなどの石油系炭化水素などのエーテル;ならびに水が、懸濁配合剤中で用いられ得る。注射可能な投与剤形は一般に、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて調製され得る水性懸濁液または油性懸濁液を含む。注射可能な形態は、溶液相または、溶媒あるいは希釈剤を用いて調製される懸濁液の形態であり得る。許容し得る溶媒またはビヒクルとしては、滅菌水、リンゲル液、または等張水性生理食塩液が挙げられる。あるいは滅菌オイルが、溶媒または懸濁剤として用いられ得る。典型的には、油または脂肪酸は、非揮発性であり、天然または合成の油、脂肪酸、モノ-、ジ-もしくはトリ-グリセリドを含む。
【0097】
注射の場合、医薬配合剤および/または薬剤は、先に記載された適当な溶液での再構成に適した粉末であり得る。これらの例としては、凍結乾燥、回転式乾燥、または噴霧乾燥された粉末、非晶質粉末、顆粒、沈殿、または微粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射の場合、配合剤は、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤、生物学的利用度調整剤(bioavailability modifiers)およびこれらの組み合わせを含有し得る。
【0098】
直腸投与の場合、医薬配合剤および薬剤は、腸、S字結腸曲、および/または直腸中での化合物の放出のための坐薬、軟膏、浣腸、錠剤またはクリームの形態であり得る。直腸坐薬は、本発明の1種もしくは複数の化合物または化合物の医薬的に許容し得る塩もしくは互変異性体を、許容し得るビヒクル、例えば、通常の貯蔵温度では固相で存在し、直腸などの体内で薬物を放出するのに適したそれらの温度では液相で存在する、カカオバターまたはポリエチレングリコールと、混合することにより調製される。油もまた、軟ゼラチン型および坐薬の配合剤の調製に用いられ得る。水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連の糖溶液、ならびにグリセロールが、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの懸濁剤、ならびに緩衝液および防腐剤を含有し得る懸濁配合剤の調製に用いられ得る。本発明の化合物は、鼻または口を介する吸入により肺に投与され得る。吸入に適した医薬配合剤としては、任意の適当な溶媒および場合により他の化合物、例えば非限定的に、安定化剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、生物学的利用度調整剤およびこれらの組み合わせを含有する溶液、スプレー、乾燥粉末、またはエアロゾルが挙げられる。吸入投与用の配合剤は、賦形剤として、例えば、ラクトース、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココーラートおよびデオキシコーラートを含有する。水性および非水性エアロゾルが典型的に、吸入による本発明の化合物の送達に用いられる。
【0099】
通常、水性エアロゾルは、化合物の水性溶液または懸濁液を従来の医薬的に許容し得る担体および安定化剤と共に配合することにより作製される。担体および安定化剤は、特定の化合物の要件に応じて異なるが、典型的には非イオン性界面活性剤(TWEEN、Pluronic類、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような接種タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖または糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは一般に、等張性溶液から調製される。非水性懸濁液(例えば、フルオロカーボン噴射剤で)を用いて、本発明の化合物を送達することもできる。
【0100】
本発明による使用のための化合物を含有するエアロゾルは、吸入器、噴霧器、加圧パックまたはネブライザーおよび適切な噴射剤、例えば非限定的に、加圧されたジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、窒素、空気、または二酸化炭素を用いて従来通り送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達する弁を提供することにより制御され得る。吸入器または注入器中での使用のための例えばゼラチンの、カプセルおよびカートリッジが、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤とのパウダーミックスを含有して配合され得る。
【0101】
ネブライザーは、化合物の分解をもたらし得るせん断(shear)への薬剤の暴露を最小限にするため、音波ネブライザーを用いる本発明のエアロゾルの送達は有利である。
【0102】
鼻腔投与の場合、医薬配合剤および薬剤は、適当な溶媒(複数可)および場合により他の化合物、例えば非限定的に、安定化剤、抗微生物剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、生物学的利用度調整剤およびこれらの組み合わせを含有するスプレー、点鼻薬、またはエアロゾルであり得る。点鼻薬の形態での投与の場合、化合物は、油性溶液中で、またはゲルとして配合され得る。鼻腔エアロゾルの投与の場合、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、または炭化水素系低沸点溶媒を含む任意の適切な噴射剤が、用いられ得る。本発明の化合物の局所(口腔および舌下)または経皮投与のための投与剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、およびパッチが挙げられる。活性成分は、医薬的に許容し得る担体または賦形剤と、および必要とされ得る、任意の防腐剤または緩衝剤と、滅菌条件下で混合され得る。粉末およびスプレーは、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤と共に調製され得る。軟膏、ペースト、クリームおよびゲルはまた、動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0103】
経皮パッチは、身体への本発明の化合物の制御送達を提供する付加的利点を有する。そのような投与剤形は、薬剤を適当な培地中に溶解するまたは分散することにより作製され得る。吸収増強剤を用いて、皮膚を介する本発明の化合物の流動を増加させることもできる。そのような流動の速度は、速度制御膜を提供すること、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散すること、のいずれかにより制御され得る。
【0104】
先に記載されたそれらの代表的投与剤形の他に、医薬的に許容し得る賦形剤および担体が、当業者に概ね公知であり、したがって本発明に含まれる。そのような賦形剤および担体は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる”Remingtons Pharmaceutical Sciences” Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)に記載される。
【0105】
本発明の配合剤は、以下に記載される通り短期作用性、急速放出性、長期作用性、および持続放出性であるように設計され得る。したがって、医薬配合剤はまた、制御放出用にまたは緩徐な放出用に配合され得る。本発明はまた、例えば、ミセルもしくはリポソーム、または幾つかの他の封入形態も含み得、あるいは長期貯蔵および/または送達効果を提供するように長期放出形態で投与され得る。それゆえ、医薬配合剤および薬剤は、ペレットまたは円筒形へと圧縮され得、およびデポ注射またはステントなどのインプラントとして筋肉内または皮下に埋入され得る。そのようなインプラントは、シリコーンおよび生分解性ポリマーなどの公知の不活性材料を用い得る。
【0106】
特定の投与量が、疾患の状態、対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別、および食事、投与間隔、投与経路、排出率、ならびに薬物の併用に応じて調整され得る。有効量を含有する上記投与剤形のいずれも、日常的実験の限度内に十分含まれ、それゆえ本発明の範囲内に十分含まれる。
【0107】
本発明の幾つかの実施形態において、任意の数の障害の処置および予防のための方法および組成物が、提供される。治療抗体は、例えば、癌、自己免疫疾患、感染(例えば、ウイルス感染)などの処置に用途を見出す。
【0108】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される免疫グロブリンは、別の治療剤(例えば、抗癌剤、免疫抑制剤、または抗ウイルス薬)との組み合わせで投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される免疫グロブリンでの処置は、数分~数週間の範囲の間隔で他の薬剤に先立つ、または他の薬剤に続く。他の薬剤および免疫グロブリンが細胞に別々に適用される実施形態において、各送達時間の間で大幅に長い期間が過ぎないことを一般に確実にして、複数の治療薬が細胞に対し有利に組み合わされた効果を発揮できるようにする。そのような例では、細胞が互いの12~24時間以内に、より好ましくは互いの約6~12時間以内に両方の様式と接触されることが企図され、約12時間のみの遅延時間が最も好ましい。しかし幾つかの状況において、各投与の間に数日(2~7)~数週間(1~8)が経過するように、処置期間を顕著に延長することが望ましい場合がある。
【0109】
幾つかの実施形態において、本発明の免疫療法組成物または他の薬剤の1回を超える投与が、利用される。以下に例示される通り、免疫グロブリンが「A」であり他の薬剤が「B」であるる、様々な組み合わせが用いられ得る:A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、B/A/A、A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、B/B/B/A、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/A、A/A/B/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/A/B。他の組み合わせが、企図される。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の1種または複数の化合物および追加の活性剤が、対象に、より典型的にはヒトに、連続で一定間隔内に投与され、化合物は他の薬剤と一緒に作用して、他の方法で投与された場合に得られる利益よりも高い利益を提供できる。例えば、追加の薬剤は共配合剤(co-formulation)により共投与され得るか、同時に投与され得るか、または異なる時点で任意の順序で連続して投与され得るが、同時に投与されない場合、それらは所望の治療または防止効果を提供するように十分に近い時間に投与されなければならない。幾つかの実施形態において、化合物および追加の活性剤は、重複する時間において効果を発揮する。各追加の活性剤は、別個に、任意の適当な形態でかつ任意の適切な経路で投与され得る。他の実施形態において、化合物は追加の活性剤の投与の前、その投与と同時にまたはその投与の後に投与される。様々な例において、化合物および追加の活性剤は、約1時間未満離して、約1時間離して、約1時間~約2時間離して、約2時間~約3時間離して、約3時間~約4時間離して、約4時間~約5時間離して、約5時間~約6時間離して、約6時間~約7時間離して、約7時間~約8時間離して、約8時間~約9時間離して、約9時間~約10時間離して、約10時間~約11時間離して、約11時間~約12時間離して、24時間以下または48時間以下離して、投与される。他の例において、化合物および追加の活性剤は、同時に投与される。さらに別の例において、化合物および追加の活性剤は、共配合剤により同時に投与される。
【0111】
他の例において、化合物および追加の活性剤は、約2~4日離して、約4~6日離して、約1週間離して、約1~2週間離して、または2週間より長く離して、投与される。
【0112】
特定の例において、本発明の化合物および場合により追加の活性剤は、周期的に対象に投与される。周期的治療は、一定期間の第一の薬剤の投与、それに続く一定期間の第二の薬剤および/または第3の薬剤の投与およびこの連続投与の繰り返しを含む。周期的治療は、種々の利益を提供でき、例えば、治療の1つもしくは複数への耐性の発生を低減し、治療の1つもしくは複数の副作用を回避もしくは低減し、および/または処置の有効性を改善できる。
【0113】
他の例において、本発明の幾つかの実施形態の1種または複数の化合物、ならびに場合により追加の活性剤は、約3週間未満の、約2週間ごとに1回の、約10日ごとに1回のまたは約1週間ごとに1回の周期で投与される。1つの周期は、1周期ごとに約90分にわたる、1周期ごとに約1時間にわたる、1周期ごとに約45分にわたる、1周期ごとに約30分にわたるまたは1周期ごとに約15分にわたる、輸液による本発明の化合物および場合により第二の活性剤の投与を含み得る。各サイクルは、少なくとも1週間の休薬、少なくとも2週間の休薬、少なくとも3週間の休薬を含み得る。投与される周期の数は、約1~約12周期、より典型的には約2~約10周期、より典型的には約2~約8周期である。数クールの処置薬が対象に同時に投与されてよく、即ち追加の活性剤の個々の用量が別個にしかし一定間隔のうちに投与され、本発明の化合物が追加の活性剤と一緒に作用し得る。例えば、ある成分は、2週間ごとに1回または3週間ごとに1回投与され得る他の成分と併せて1週間に1回投与され得る。換言すると、治療薬が同時にまたは同日に投与されなくとも、投与レジメンは同時に実施される。
【0114】
追加の活性剤が、本発明の化合物(複数可)と相加的に、またはより典型的には相乗的に作用し得る。一例において、1種または複数の本発明の化合物は、同じ医薬組成物中で1種または複数の活性剤と同時に投与される。別の例において、1種または複数の本発明の化合物は、別の医薬組成物中で1種または複数の第二の活性剤と同時に投与される。さらに別の実施形態において、1種または複数の本発明の化合物は、第二の活性剤の投与の前にまたは後に投与される。本発明は、同一または異なる投与経路、例えば経口および非経口による、本発明の化合物および第二の活性剤の投与を企図する。特定の実施形態において、本発明の化合物が、非限定的に毒性を含む有害な副作用を潜在的に生じる第二の活性剤と同時に投与される場合、第二の活性剤は、有害副作用が誘発される閾値未満に収まる用量で有利に投与され得る。
【0115】
サイトカインなどの可溶性因子および膜貫通受容体を含む膜結合因子の両方を含む、標的抗原の以下の列挙に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ、および/またはエピトープを含むが限定されない事実上任意の抗原が、IgG変異体により標的にされ得る:17-IA、4-1BB、4Dc、6-ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレッシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、アルファ-1-アンチトリプシン、アルファ-V/ベータ-1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利用因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、B-リンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2 BMP-2a、BMP-3オステオゲニン、BMP-4、BMP-2b、BMP-5、BMP-6 Vgr-1、BMP-7(OP-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-DNA、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cAMP、癌胎児性抗原(CEA)、癌関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、Cd3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、Cd55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス菌毒素、ウェルシュ菌毒素、CKb8-1、CLC、CMV、CMV UL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、Dase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、ET-1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、FLIP、Flt-3、Flt-4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3)、GDF-8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-アルファ1、GFR-アルファ2、GFR-アルファ3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP-capまたはNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV) gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV) gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心臓ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IGFBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18R、IL-23、インターフェロン (INF)-アルファ、INF-ベータ、INF-ガンマ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンアルファ2、インテグリンアルファ3、インテグリンアルファ4、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ5(アルファV)、インテグリンアルファ5/ベータ1、インテグリンアルファ5/ベータ3、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ1、インテグリンベータ2、インターフェロンガンマ、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF-1)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、レェフティー、ルイスY抗原、ルイスY関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺表面活性物質、黄体形成ホルモン、リンフォトキシンベータ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、メタロプロテアーゼ、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP、MIP-1-アルファ、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管阻害物質、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、
NCA90、NCAM、NCAM、ネプリリシン、ニューロトロフィン-3、-4、または-6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGF-ベータ、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK-1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤性アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロレラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器多核体ウイルス(RSV)F、RSV Fgp、Ret、リウマトイド因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF-1、セリン、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、SIGIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAP-II、TACE、TACI、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TARC、TCA-3、T細胞受容体(例えば、T細胞受容体アルファ/ベータ)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、睾丸PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-アルファ、TGF-ベータ、TGF-ベータ(Pan特異性)、TGF-ベータ R1(ALK-5)、TGF-ベータ RII、TGF-ベータ RIIb、TGF-ベータRIII、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ4、TGF-ベータ5、トロンビン、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF-アルファ、TNF-アルファベータ、TNF-ベータ2、TNFc、TNF-RI、TNF-RII、TNFRSF10A(TRAIL R3Apo-2、DR4)、TNFRSF10B(TRAIL R2DR5、KILLER、TRICK-2A、TRICK-B)、TNFRSF10C(TRAIL R3DcR1、LIT、TRID)、TNFRSF10D(TRAIL R4DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1A(TNF R1CD120a、p55-60)、TNFRSF1B(TNF RII CD120b、p75-80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3(LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas Apo-1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1 BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTRAIL R2TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFRSF25(DR3Apo-3、LARD、TR-3、TRAMP、WSL-1)、TNFSF10(TRAIL Apo-2リガンド、TL2)、TNFSF11(TRANCE/RANKリガンドODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo-3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGHT HVEMリガンド、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンドAITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンドgp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンドCD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(FasリガンドApo-1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンドCD70)、TNFSF8(CD30リガンドCd153)、TNFSF9(4-1BBリガンドCD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェリン受容体(transferring receptor)、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、腫瘍関連抗原CA125、腫瘍関連抗原発現ルイスY関連炭水化物、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VE-カドヘリン-2、VEFGR-1(fit-1)、VEGF、VEGFR、VEGFR-3(flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、フォン・ヴィレブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、ならびにホルモンおよび成長因子の受容体。
【0116】
当業者は、前述の標的の列挙が、特異的タンパク質および生体分子のみならず、それを含む生化学的経路および複数の経路を参照していることを認識するであろう。例えば、標的抗原としてのCTLA-4の参照は、CTLA-4、B7-1、B7-2、CD28、およびこれらのタンパク質を結合する任意の他の未発見のリガンドまたは受容体を含むT細胞共刺激経路を構成するリガンドおよび受容体もまた標的であることを示唆する。したがって、本明細書で用いられる標的は、特異的生体分子のみならず、前記標的と相互作用する一連のタンパク質および、前記標的が属する生化学的経路のメンバーも参照する。当業者は、前述の標的抗原、それらを結合するリガンドもしくは受容体、またはそれらの対応する生化学的経路の他のメンバーのいずれかが、Fc融合体を作製するために本発明のFc変異体に動作可能に連結され得ることを、さらに認識するであろう。したがって例えば、EGFRを標的とするFc融合体は、EGF、TGF-b、またはEGFRを結合する発見された、もしくは未発見の任意の他のリガンドへFc変異体を動作可能に連結させることにより構築され得る。したがって本発明のFc変異体は、EGF、TGF-b、またはEGFRを結合する発見された、もしくは未発見の任意の他のリガンドを結合するFc融合体を作製するために、EGFRに動作可能に連結され得る。したがって、非限定的に前述の標的およびそれらの対応する生化学的経路を構成するタンパク質を含む、リガンド、受容体、または幾つかの他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインのいずれに関わらず、事実上任意のポリペプチドが、本発明のFc変異体に動作可能に連結されて、Fc融合体を開発できる。
【0117】
適切な抗原の選択は、所望の適用に依存する。抗癌処置の場合、その発現が癌性細胞に制限される標的を有することが望ましい。抗体療法に特に適応し易いことが立証されているいくつかの標的は、シグナル伝達機能を有するものである。他の治療抗体は、受容体とその同族リガンドの間の結合を阻害することによる受容体のシグナル伝達を遮断することにより、その効果を発揮する。治療抗体の他の作用機序は、受容体の下方制御を引き起こすことである。他の抗体は、標的抗原を介するシグナル伝達により働くわけではない。幾つかの例では、感染性疾患薬に対する抗体が、用いられる。
【0118】
一実施形態において、本発明のFc変異体は、サイトカインに対する抗体中に組み込まれる。あるいはFc変異体は、サイトカインに融合またはコンジュゲートされる。本明細書で用いられる「サイトカイン」は、細胞内媒介物質として別の細胞に作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質の一般的用語を意味する。例えば、参照により明白に組み入れられるPenichet et al.,2001,J Immunol Methods 248:91-101に記載される通り、サイトカインは抗体に融合されて、数々の所望の特性を提供できる。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-アルファおよび-ベータ;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-ベータなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF-アルファおよびTGF-ベータなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-アルファ、-ベータおよび-ガンマなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15などのインターロイキン(IL);TNF-アルファまたはTNF-ベータなどの腫瘍壊死因子;C5a;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書で用いられるサイトカインという用語は、天然供給源または組換え細胞培養物からのタンパク質、および天然配列のサイトカインの生物的に活性な均等物を包含する。
【0119】
TNFスーパーファミリーメンバーなどの、サイトカインおよび可溶性の標的は、本発明の変異体との使用のための好ましい標的である。例えば、抗VEGF、抗CTLA-4および抗TNF抗体、またはそれらのフラグメントは、FcRn結合を増加させるFc変異体の使用にとって特に良好な抗体である。これらの標的への治療薬は多くの場合、自己免疫疾患の処置に関与し、長期間にわたり複数回の注射を必要とする。それゆえ、本発明の変異体から得られる、より長い血清半減期およびより少ない処置回数が、特に好ましい。
【0120】
臨床試験または開発での使用が認可された複数の抗体およびFc融合体は、本発明のFc変異体から利益を享受し得る。これらの抗体およびFc融合体は、本明細書では「臨床製品および候補」と称される。したがって好ましい実施形態において、本発明のFcポリペプチドは、様々な臨床製品および候補において用途を見出し得る。例えば、CD20を標的とする多数の抗体は、本発明のFcポリペプチドから利益を享受し得る。例えば本発明のFcポリペプチドは、非ホジキンリンパ腫の処置で認可されたキメラ抗CD20であるリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC/Genentech/Roche)(例えば、米国特許第5,736,137号参照);Genmabにより現在開発されている抗CD20抗体であり、米国特許第5,500,362号に記載されている抗CD20抗体であるHuMax-CD20、AME-133(Applied Molecular Evolution)、hA20(Immunomedics,Inc.)、HumaLYM(Intracel)、およびPRO70769(PCT/US2003/040426、表題「Immunoglobulin Variants and Uses Thereof」)と実質的に類似の抗体において用途を見出し得る。EGFR(ErbB-1)、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)を含む、上皮成長因子受容体のファミリーのメンバーを標的とする多数の抗体が、本発明のFcポリペプチドから利益を享受し得る。例えば、本発明のFcポリペプチドは、乳癌を処置するために認可されたヒト化抗Her2/neu抗体であるトラツヅマブ(Herceptin(登録商標)、Genentech)(例えば、米国特許第5,677,171参照);Genentechにより現在開発されているペルツズマブ(rhuMab-2C4、Omnitarg(商標);米国特許第4,753,894号に記載された抗Her2抗体;種々の癌についての臨床試験でのキメラ抗EGFR抗体であるセツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Imclone)(米国特許第4,943,533号;PCT WO96/40210);Abgenix-Immunex-Amgenにより現在開発されているABX-EGF(米国特許第6,235,883号);Genmabにより現在開発されているHuMax-EGFr(米国特許出願第10/172,317号);425、EMD55900、EMD62000、およびEMD72000(Merck KGaA)(米国特許第5,558,864号;Murthy et al.1987,Arch Biochem Biophys.252(2):549-60;Rodeck et al.,1987,J Cell Biochem.35(4):315-20;Kettleborough et al.,1991,Protein Eng.4(7):773-83);ICR62(Institute of Cancer Research)(PCT WO95/20045;Modjtahedi et al.,1993,J.Cell Biophys.1993,22(1-3):129-46;Modjtahedi et al.,1993,Br J.Cancer.1993,67(2):247-53;Modjtahedi et al,1996,Br J Cancer,73(2):228-35;Modjtahedi et al,2003,Int J Cancer,105(2):273-80);TheraCIM hR3(カナダのYM BiosciencesおよびキューバのCentro de Immunologia Molecular)(米国特許第5,891,996号;米国特許第6,506,883号;Mateo et al,1997,Immunotechnology,3(1):71-81);mAb-806(Ludwig Institute for Cancer Research,Memorial Sloan-Kettering)(Jungbluth et al.2003,Proc Natl Acad Sci USA.100(2):639-44);KSB-102(KS Biomedix);MR1-1(IVAX,National Cancer Institute)(PCT WO0162931A2);およびSC100(Scancell)(PCT WO01/88138)と実質的に類似の抗体において用途を見出し得る。別の好ましい実施形態において、本発明のFcポリペプチドは、B細胞慢性リンパ球性白血病の処置について現在認可されているヒト化モノクローナル抗体アレムツズマブ(Campath(登録商標)、Millenium)において用途を見出し得る。本発明のFcポリペプチドは、Ortho Biotech/Johnson & Johnsonにより開発された抗CD3抗体であるムロモナブ-CD3(Orthoclone OKT3(登録商標))、IDEC/Schering AGにより開発された抗CD20抗体であるイブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、Celltech/Wyethにより開発された抗CD33(p67タンパク質)抗体であるゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、Biogenにより開発された抗LFA-3Fc融合体であるアレファセプト(Amevive(登録商標))、Centocor/Lillyにより開発されたアブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、Novartisにより開発されたバシリキシマブ(Simulect(登録商標))、Medimmuneにより開発されたパリビズマブ(Synagis(登録商標))、Centocorにより開発された抗TNFアルファ抗体であるインフリキシマブ(Remicade(登録商標))、Abbottにより開発された抗TNFアルファ抗体であるアダリムマブ(Humira(登録商標))、Celltechにより開発された抗TNFアルファ抗体であるHumicade(商標)、Immunex/Amgenにより開発された抗TNFアルファFc融合体であるエタネルセプト(Enbrel(登録商標))、Abgenixにより開発された抗CD147抗体であるABX-CBL、Abgenixにより開発された抗IL8抗体であるABX-IL8、Abgenixにより開発された抗MUC18抗体であるABX-MA1、Antisomaにより開発された抗MUC1であるペムツモマブ(R1549、90Y-muHMFG1)、Antisomaにより開発された抗MUC1抗体であるTherex(R1550)、Antisomaにより開発されたAngioMab(AS1405)、Antisomaにより開発されたHuBC-1、Antisomaにより開発されたThioplatin(AS1407)、Biogenにより開発された抗アルファ-4-ベータ-1(VLA-4)およびアルファ-4-ベータ-7抗体であるAntegren(登録商標)(ナタリズマブ)、Biogenにより開発された抗VLA-1インテグリン抗体であるVLA-1 mAb、Biogenにより開発された抗リンフォトキシンベータ受容体(LTBR)抗体であるLTBR mAb、Cambridge Antibody Technologyにより開発された抗TGF-β2抗体であるCAT-152、Cambridge Antibody TechnologyおよびAbbottにより開発された抗IL-12抗体であるJ695、Cambridge Antibody TechnologyおよびGenzymeにより開発された抗TGFβ1抗体であるCAT-192、Cambridge Antibody Technologyにより開発された抗エオタキシン1抗体であるCAT-213、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences Inc.により開発された抗Blys抗体であるLymphoStat-B(商標)、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences Inc.により開発された抗TRAIL-R1抗体であるTRAIL-R1 mAb、Genentechにより開発された抗VEGF抗体であるAvastin(商標)(ベバシズマブ、rhuMAb-VEGF)、Genentechにより開発された抗HER受容体ファミリー抗体、Genentechにより開発された抗組織因子抗体であるAnti-Tissue factor(ATF) 、Genentechにより開発された抗IgE抗体であるXolair(商標)(オマリズマブ)、GenentechおよびXomaにより開発された抗CD11a抗体であるRaptiva(商標)(エファリズマブ)、GenentechおよびMillenium Pharmaceuticalsにより開発されたMLN-02抗体(旧名称LDP-02)、Genmabにより開発された抗CD4抗体であるHuMax CD4、GenmabおよびAmgenにより開発された抗IL-15抗体であるHuMax-IL15、GenmabおよびMedarexにより開発されたHuMax-Inflam、GenmabおよびMedarexおよびOxford GcoSciencesにより開発された抗HeparanaseI抗体であるHuMax-Cancer、 GenmabおよびAmgenにより開発されたHuMax-Lymphoma、Genmabにより開発されたHuMax-TAC、IDEC Pharmaceuticalsにより開発されたIDEC-131および抗CD40L抗体、IDEC Pharmaceuticalsにより開発された抗CD4抗体であるIDEC-151(クレノリキシマブ)、IDEC Pharmaceuticalsにより開発された抗CD80抗体であるIDEC-114、IDEC Pharmaceuticalsにより開発された抗CD23であるIDEC-152、IDEC Pharmaceuticalsにより開発された抗マクロファージ遊走阻止因子(anti-macrophage migration factor)(MIF)抗体、Imcloneにより開発された抗イディオタイプ抗体であるBEC2、Imcloneにより開発された抗KDR抗体であるIMC-1C11、Imcloneにより開発された抗flk-1抗体であるDC101、
Imcloneにより開発された抗VEカドヘリン抗体、Immunomedicsにより開発された抗癌胎児性抗原(CEA)抗体であるCEA-Cide(商標)(タベツズマブ)、Immunomedicsにより開発された抗CD22抗体であるLymphoCide(商標)(エプラツズマブ)、Immunomedicsにより開発されたAFP-Cide、Immunomedicsにより開発されたMyelomaCide、Immunomedicsにより開発されたLkoCide、Immunomedicsにより開発されたProstaCide、Medarexにより開発された抗CTLA4抗体であるMDX-010、Medarexにより開発された抗CD30抗体であるMDX-060、Medarexにより開発されたMDX-070、Medarexにより開発されたMDX-018、MedarexおよびImmuno-Designed Moleculesにより開発されたOsidem(商標)(IDM-1)および抗Her2抗体、MedarexおよびGenmabにより開発された抗CD4抗体であるHuMax(商標)-CD4、MedarexおよびGenmabにより開発された抗IL15抗体であるHuMax-IL15、MedarexおよびCentocor/J&Jにより開発された抗TNFα抗体であるCNTO 148、Centocor/J&Jにより開発された抗サイトカイン抗体であるCNTO1275、MorphoSysにより開発された抗細胞間接着分子-1(ICAM-1)(CD54)抗体であるMOR101およびMOR102、MorphoSysにより開発された抗線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR-3)抗体である MOR201、Protein Design Labsにより開発された抗CD3抗体であるNuvion(登録商標)(ビシリズマブ)、Protein Design Labsにより開発された抗ガンマインターフェロン抗体であるHuZAF(商標)、Protein Design Labsにより開発された抗α5β1インテグリン、Protein Design Labsにより開発された抗IL12、Xomaにより開発された抗Ep-CAM抗体であるING-1、ならびにXomaにより開発された抗ベータ2インテグリン抗体であるMLN01を含むが限定されない、他の臨床製品および候補と実質的に類似の種々の抗体またはFc融合体において用途を見出し得、この段落で上に引用された参考資料の全てが、参照により本明細書に明白に組み入れられる。
【0121】
本発明のFcポリペプチドは、前述の臨床候補および製品中に、またはそれらと実質的に類似の抗体およびFc融合体中に組み込まれ得る。本発明のFcポリペプチドは、ヒト化された、親和性成熟された、改変された、または幾つかの他の方法で修飾された前述の臨床候補および製品のバージョン中に組み込まれ得る。
【0122】
一実施形態において、本発明のFcポリペプチドは、自己免疫、炎症、または移植片の適応症の処置に用いられる。そのような疾患の関連する標的抗原ならびに臨床製品および候補としては、LDP-02などの抗α4β7インテグリン抗体、LDP-01などの抗β2インテグリン抗体、5G1.1などの抗補体(C5)抗体、BTI-322およびMEDI-507などの抗CD2抗体、OKT3およびSMART抗CD3抗体などの抗CD3抗体、IDEC-151、MDX-CD4およびOKT4Aなどの抗CD4抗体、抗CD11a抗体、IC14などの抗CD14抗体、抗CD18抗体、IDEC152などの抗CD23抗体、Zenapaxなどの抗CD25抗体、5c8、AntovaおよびIDEC-131などの抗CD40L抗体、MDX-33などの抗CD64抗体、IDEC-114などの抗CD80抗体、ABX-CBLなどの抗CD147抗体、CDP850などの抗Eセレクチン抗体、ReoPro/アブシキシマブ(Abcixima)などの抗gpIIb/IIIa抗体、ICM3などの抗ICAM-3抗体、VX-740などの抗ICE抗体、MDX-33などの抗FcR1抗体、rhuMab-E25などの抗IgE抗体、SB-240683などの抗IL-4抗体、SB-240563およびSCH55700などの抗IL-5抗体、ABX-IL8などの抗IL-8抗体、抗インターフェロンガンマ抗体、CDP571、CDP870、D2E7、インフリキシマブ、MAK-195Fなどの抗TNF(TNF、TNFa、TNFa、TNF-アルファ)抗体、ならびにAntegrenなどの抗VLA-4抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
FcRnへの増加された結合を有するものなどの本発明のFc変異体は、TNF阻害剤分子中で用いられて、増強された特性を提供し得る。有用なTNF阻害剤分子としては、哺乳動物においてTNF-アルファの作用を阻害する任意の分子が挙げられる。適切な例としては、Fc融合体Enbrel(登録商標)(エタネルセプト)、ならびに抗体Humira(登録商標)(アダリムマブ)およびRemicade(登録商標)(インフリキシマブ)が挙げられる。FcFn結合を増加させるように本発明のFc変異体を用いて改変されたモノクローナル抗体(RemicadeおよびHumiraなど)は、半減期の増加を通してより良好な有効性に転換し得る。
【0124】
幾つかの実施形態において、感染性疾患に対する抗体が、用いられる。真核細胞に対する抗体としては、非限定的にサッカロマイセス・セレビシエ、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス・フラギリス、K.ラクティス、ピキア・グイレリモンジイ、P.パストリス、シゾサッカロミケス・ポンベ、プラスモジウム・ファルシパリウム、およびヤロウィア・リポリティカを含む酵母細胞を標的とする抗体が挙げられる。
【0125】
さらなる真菌細胞に対する抗体もまた有用であり、とりわけカンジダ・グラブラータ、カンジダ・アルビカンス、C.クルーセイ、C.ルシタニエおよびC.マルトーサを含むカンジダ菌株、ならびにアスペルギルス、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、コクシジオイデス、ブラストマイセス、およびペニシリウムの種に関連する標的抗原を含む。
【0126】
原虫に関連する標的抗原に対する抗体としては、トリパノソーマ、レイシュマニア・ドノバニイを含むレイシュマニア種、プラスモジウムspp.、ニューモシスティス・カリニ、クリプトスポリジウム・パルバム、ギアルジア・ランブリア、エンタモエバ・ヒストリティカ、およびシクロスポラ・カエタネンシスに関連する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
原核生物性抗原に対する抗体もまた有用であり、バチルス・アントラシスを含む炭疽菌;ビブリオ属、例えばV.コレラ;エシェリキア属、例えば腸管毒素原性大腸菌、赤痢菌、例えばS・ディゼンテリエ;サルモネラ菌、例えばS.チフィ;マイコバクテリウム属、例えばM.ツベルクローシス、M.レプラエ;クロストリジウム属、例えばボツリヌス菌、C.テタニ、C.ディフィシレ、ウェルシュ菌;コリネバクテリウム属、例えばC.ジフテリア;ストレプトコッカス属、S.ピオゲネス、S.ニューモニエ;スタフィロコッカス属、例えば黄色ブドウ球菌;ヘモフィルス属、例えばH.インフルエンザ;ナイセリア属、例えばN.メニンギティディス、N.ゴノルホエア;エルシニア属、例えばY.ランブリア、Y.ペスティス;シュードモナス属、例えばP.アエルギノーサ、P.プチダ;クラミジア属、例えばC.トラコマティス;ボルデテラ属、例えばB.ペルツスシス;トレポネーマ属、例えばT.パラジウム;B.アントラシス、Y.ペスティス、ブルセラspp.、F.ツラレンシス、B.マレイ、B.シュードマレイ、B.マレイ、B.シュードマレイ、ボツリヌス菌、サルモネラspp.、SEB V.コレラ毒素B、大腸菌O157:H7、リステリアspp.、トリコスポロン・ベイゲリ、ロドトルラ種、ハンセヌラ・アノマーラ、エンテロバクターsp.、クレブシエラsp.、リステリアsp.、マイコプラズマsp.などを含むが限定されない病原性および非病原性原核生物などの適切な細菌に対する抗体を含む。
【0128】
幾つかの態様において、抗体は、ウイルス感染に対するものであり、これらのウイルスとしては、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルス、トガウイルス(例えば風疹ウイルス)、パルボウイルス、ポックスウイルス(例えば天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、エンテロウイルス(例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A、B、およびCを含む)、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エスプタイン・バーウイルス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス(例えば狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HTLV-Iおよび-IIを含む)、パポバウイルス(例えばパピローマウイルス)、ポリオーマウイルス、およびピコルナウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
実験
実施例1
改善されたFcRn結合のためのFc改変
胎児性Fc受容体(FcRn)は、ヒトにおいてIgGの3週間のIgG半減期を調節する。FcRnへの改善されたpH依存性結合のためのIgG抗体の改変は、延長された半減期/変化された薬物動態および細胞輸送特性を有する抗体の例をもたらした。
【0130】
材料と方法
細胞培養. 細胞株HEK293Eを、加湿された5%CO、95%空気のインキュベータ中で37℃にて10%FBS、100U/mLペニシリン、100μgストレプトマイシンを補充したDMEM中に保持した。
【0131】
可溶性組換えヒトFcRnの産生. 日本住血吸虫由来のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)をコードするcDNAにC-末端融合された3つの細胞外ドメイン(α1~α3)をコードするcDNAを含有する、野生型ヒトFcRnの組換えトランケート型をコードする真核生物pcDNA3ベクターの構築が、記載されている(Berntzen,G.,et al.,J Immunol Methods,2005.298(1-2):p.93-104;Andersen,J.T.,et al.,FEBS J,2008.275(16):p.4097-110)。ベクターは、ヒトβ-ミクログロブリンをコードするcDNAおよびエプスタイン・バーウイルスの複製起点配列も含有する。GSTタグ付きhFcRnを、Polyethyleneimine Max(Polysciences)を用いてヒト胚腎293E(HEK293E)細胞の一過性トランスフェクションにより産生し、受容体を、記載された通り(Berntzen et al.,上掲;Andersen et al.,上掲)GSTrap FFカラムを用いて回収された上清から精製した。
【0132】
モノマーのHisタグ付きヒトFcRnを、バキュロウイルス発現ベクター系を用いて産生した(Kim,J.K.,et al.,FcRn.Eur J Immunol,1999.29(9):p.2819-25)。Hisタグ付きヒトFcRnをコードするウイルスストックは、Dr.Sally Ward氏(University of Texas、Southwestern Medical Center、テキサス州ダラス所在)からの贈与であった。手短に述べると、ヒトFcRnを、Ni2+イオンを供給されるHisTrap HPカラム(GE Healthcare)を用いて精製した。カラムを、0.05%アジ化ナトリウム含有1×PBSで前もって平衡化し、上清のpHを0.05%アジ化ナトリウム含有1×PBS(pH10.9)で調整した後、流速5ml/分をHisTrap HPカラムにアプライした。カラムを200mLの1×PBS と、その後50mlの25mmイミダゾール、1×PBS(pH7.3)を用いて洗浄し、ヒトFcRnを250mmイミダゾール、1×PBS(pH7.4)で溶出した。採取されたタンパク質をAmicon Ultra-10 Filter Unit(Millipore)を用いて1×PBSにバッファー交換し、続いてモノマー画分を単離した。HiLoad 26/600 Superdex200 prep gradeカラム(GE Healthcare)を用いてモノマー画分を単離した後、タンパク質を、Amicon Ultraカラム(Millipore)を用いて濃縮し、4℃で貯蔵した。
【0133】
Fc改変されたIgG1変異体の構築および産生. ヒト化9C12 IgG1変異体をコードするベクターは、pLNOH2/pLNOk発現系に基づいた(Norderhaug,L.,et al.,J Immunol Methods,1997.204(1):p.77-87)。具体的には、ハイブリドーマ細胞株TC31-9C12.C9(Developmental Studies Hybridoma Bank,University of Iowa)(Varghese,R.,et al.,J Virol,2004.78(22):p.12320-32)に由来する重(H)鎖および軽(L)鎖可変(V)遺伝子を、エンドヌクレアーゼBsmI/BsiWIにより認識される制限部位が隣接するクローニングカセットとして合成した。遺伝子フラグメントをその後、pLNOH2-NIPhIgG1-WT-oriPおよびNIPpLNOk-oriPにサブクローニングし、それぞれキメラヒトH鎖およびL鎖をコードするpLNOH2-HexonhIgG1-WT-oriPおよびHexonLNOk-oriPを得た。ベクターpLNOH2-HexonhIgG1-WT-oriPをコードするH鎖を、C2およびC3遺伝子フラグメントを所望の突然変異を含むフラグメントと交換することにより、h9C12変異体の作製にさらに用いた。C2フラグメントを、エンドヌクレアーゼAgeIおよびSfiIにより認識される特有の制限部位を用いて交換し、C3を、SfiIおよびBamHIを用いて交換した(全てNew England Biolabs製)。Lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いるHEK293E細胞中へのH鎖およびL鎖の両ベクターのコトランスフェクションに続いて、h9C12 IgG1変異体を、C1特異性CaptureSelectカラム(Life Technologies)を用いて採取された上清から精製した。モノマー画分を、Superdex 200カラム(GE Healthcare)を用いるSECクロマトグラフィーにより単離した。タンパク質の完全性を、非還元SDS-PAGE(Life Technologies)により検証した。
【0134】
ELISA. 組換えAdV5ヘキソン(Abd Serotech)(PBSで1μg/mlに希釈)を96ウェルプレート(Nunc)にコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。残りの表面積を、PBS/4%脱脂乳(S)(Acumedia)を用いてブロックした後、PBS/0.005%Tween20(T)で4回洗浄した。PBS/T/Sで希釈された滴定量のh9C12変異体をウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。上記の通り洗浄した後、PBS/S/Tで希釈された可溶性GSTタグ付きヒトFcRnをウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。上記の通り洗浄した後、HRPコンジュゲート化抗GST抗体(1:8000)を、添加されたPBS/S/T(Rockland Immunochemicals、米国所在)中で希釈した後、室温で1時間インキュベートした。上記の通り洗浄した後、テトラメチルベンジジン(TMB)溶液(CalBiochem)を添加することにより、結合したヒトFcRnを視覚化した。反応を、100μlの1M HClの添加により停止させて、450nmでの吸収を、SUNRISEプレートリーダー(TECAN)を用いて記録した。ELISAを、pH6.0またはpH7.4のPBSを用いて実施した。
【0135】
SPR. Biacore 3000装置(GE Healthcare)を、全ての反応速度測定に用いた。ヒト化9C12 IgG1変異体を、製造業者の使用説明書に従い、CM5センサーチップ上にアミンカップリングにより固定した。カップリングを、10mM酢酸ナトリウム、pH4.5(GE Healthcare)中に溶解された1~2.5μg/mlのIgG1変異体を注入することにより実施した。HBS-P緩衝液(0.01M HEPES、0.15NaCl、0.005%界面活性剤P20、pH7.4)を、ランニング用緩衝液および希釈用緩衝液として用いた。次に、可溶性モノマーヒトFcRnの濃度系列を注入した。反応速度分析を、BIAevaluation Softwareを用いて実施し、結合データを単純な一次(1:1)Langmuir生体分子相互作用モデルにフィットさせた。
【0136】
結果
本明細書に記載されるのは、以下の通りヒトFcRnへの変化された結合を有するFcが改変されたIgG抗体である。三重突然変異体Q311R/N434W/M428Eは、発表された実施例を超える改善されたpH依存性結合を示す。
【表1】
【表2】
【0137】
実施例2
この実施例は、ヒトFcRnへの変化された結合を有するさらなるIgG1およびIgG3変異体を記載する。
【0138】
材料と方法
インビボ試験 - C57BL/6J遺伝子バックグランドのTg32-Alb-/-マウスは、FcRn HC(Fcgrttm1Dcr)およびアルブミン(Albem12Mvw)のヌル対立遺伝子を含み、ネイティブhFcRnプロモーターの制御下でhFcRn HC(FCGRT)のゲノムトランスジーンを発現する。Tg32-Alb-/-マウス(性別:雌、週齢:7~9週齢、体重17~27g、5匹/群)は、腹腔内注射により5mg/kg IgG1変異体を受けた。血液試料(25μl)を、注射後1、3、5、7、10、12、16、19、23、30および37日目に後眼窩静脈叢から採取した。試料採取後、血液を直ちに1%K3-EDTA 1μlと混合して凝固を防ぎ、その後4℃にて17000×gで5分間遠心分離した。血漿を単離し、50%グリセロール/PBS溶液中で1:10に希釈し、その後ELISAによる分析まで-20℃で貯蔵した。インビボ試験は、The Jackson Laboratory(メイン州バーハーバー所在)で実施した。
【0139】
表面プラズモン共鳴 - Biacore T200装置(GE Healthcare)を、全ての反応速度測定に用いた。9C12変異体を、製造業者の使用説明書に従い、CM5センサーチップ上にアミンカップリングにより固定した。全ての実験で、pH6.0のリン酸緩衝液(67mMリン酸塩、0.15M NaCl、0.005%Tween20)またはpH7.4のHBS-P緩衝液(0.1M HEPES、0.15NaCl、0.005%界面活性剤P20)を、それぞれランニング用緩衝液および再生用緩衝液として用いた。組換えヒトFcRnの濃度系列(1000.0~15.6)nMを、25℃にて流速50μl/分で注入した。反応速度分析を、BIAevaluation Softwareを用いて実施し、結合データを単純な一次(1:1)Langmuir生体分子相互作用モデルにフィットさせた。
【0140】
ELISA - 実施例1に記載された通り実施した。
【表3】
【0141】
結果
結果を、図5~7および表3~5に示す。

【表4】
【表5】
【表6】
【0142】
先の詳述に列挙された全ての発行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明に記載された方法およびシステムの様々な修正および変更は、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく当業者に明白となろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連づけて記載したが、特許請求された本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが、理解されなければならない。事実、関連分野の当業者に明白な本発明を実施するための記載された様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0143】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]変異したFcRnに対する変化された結合親和性を有する治療性免疫グロブリンを含む組成物であって、前記免疫グロブリンが、前記免疫グロブリンのFc領域に少なくとも1つの突然変異を含む、組成物。
[2]前記免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスである、[1]に記載の組成物。
[3]前記免疫グロブリンが、311、434、428、438、および435からなる群から選択される位置の1つまたは複数で突然変異を有する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記突然変異が、IgG1-Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434W、IgG1-Q311R、IgG1-N434W、IgG3(b)-Q311R/N434W/M428E、IgG3(b)-Q311R/N434W/M438E/R435H、IgG1-M252S/Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434P/M428E、IgG1-Q311R/N434W/M428D、IgG1-Q311R/N434W/M428E/H433K、IgG1-L309K/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309R/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309S/Q311R/N434W/M428E、およびIgG3(b)-Q311R/N434W/M428E/R435Hからなる群から選択される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]前記免疫グロブリンの定常領域が、SEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、[4]に記載の組成物。
[6]前記突然変異が、前記突然変異をレーシングする(lacing)免疫グロブリンに比較して免疫グロブリンの血清半減期を延長する、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]免疫グロブリンのFc領域に少なくとも1つの突然変異を含む前記免疫グロブリンを含む組成物であって、前記免疫グロブリンが、FcRnへの変化された結合を有し、前記突然変異が、IgG1-Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434W、IgG1-Q311R、IgG1-N434W、IgG3(b)-Q311R/N434W/M428E、IgG3(b)-Q311R/N434W/M438E/R435H、IgG1-M252S/Q311R/N434W/M428E、IgG1-Q311R/N434P/M428E、IgG1-Q311R/N434W/M428D、IgG1-Q311R/N434W/M428E/H433K、IgG1-L309K/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309R/Q311R/N434W/M428E、IgG1-L309S/Q311R/N434W/M428E、およびIgG3(b)-Q311R/N434W/M428E/R435Hからなる群から選択される、組成物。
[8]前記突然変異が、前記突然変異をレーシングする免疫グロブリンに比較して免疫グロブリンの血清半減期を延長する、[6]に記載の組成物。
[9]前記免疫グロブリンの定常領域が、SEQ ID NO:2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、および16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、[7]または[8]に記載の組成物。
[10]FcRnへの変化された結合を有するIgG1免疫グロブリンを含む組成物であって、前記免疫グロブリンが、Q311R、N434W、およびM428E突然変異を有する、組成物。
[11]前記突然変異が、前記突然変異をレーシングする免疫グロブリンに比較して免疫グロブリンの血清半減期を延長する、[10]に記載の組成物。
[12]前記抗体が、癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカー、および成長因子からなる群から選択される標的に結合する、[1]~[11]のいずれか1つに記載の組成物。
[13]それを必要とする対象において疾患を処置または予防するための[1]~[12]のいずれか1つに記載の免疫グロブリンの使用。
[14]前記疾患が、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片拒絶、および感染性疾患からなる群から選択される、[13]に記載の使用。
[15]前記抗体が、癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカー、および成長因子からなる群から選択される標的に結合する、[13]または[14]に記載の使用。
[16]それを必要とする対象に[1]~[12]のいずれか1つに記載の免疫グロブリンを提供すること、
を含む、対象において疾患を処置するまたは予防する方法。
[17]前記疾患が、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片拒絶、および感染性疾患からなる群から選択される、[16]に記載の方法。
[18]前記抗体が、癌マーカー、サイトカイン、感染性疾患マーカー、および成長因子からなる群から選択される標的に結合する、[16]または[17]に記載の方法。
[19][1]~[12]のいずれか1つに記載の免疫グロブリンのFc融合体。
[20][1]~[12]のいずれか1つに記載の免疫グロブリンまたは免疫原に融合された[19]に記載のFc融合体を含む融合タンパク質。
[21][20]に記載の融合タンパク質を含むワクチン組成物。
[22]対象において免疫応答を生じるための[21]に記載のワクチン組成物の使用。
[23]対象が前記免疫原に対して免疫応答を生じるような条件下で前記対象に[21]に記載のワクチン組成物を投与すること、を含む、対象において免疫応答を生成する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
【配列表】
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