(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188209
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法、温度調整用金型およびブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20221213BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221213BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20221213BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
B29B11/08
B29C45/78
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161359
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2020170354の分割
【原出願日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2019052406
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019052497
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019073979
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
(72)【発明者】
【氏名】長崎 淳
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホットパリソン式のブロー成形において成形サイクルを短縮するともに、賦形された容器の後収縮を抑制する。
【解決手段】樹脂製容器の製造方法は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で製造されたプリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、温度調整されたプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。射出成形工程においては、プリフォームの外形が維持できる程度の高温状態でプリフォームを型から離型させる。ブロー成形工程においては、プリフォームをブロー成形する一対のブローキャビティ割型に冷媒を循環させて冷却する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程において、前記プリフォームの外形が維持できる程度の高温状態で前記プリフォームを型から離型させ、
前記ブロー成形工程において、前記プリフォームをブロー成形する一対のブローキャビティ割型に冷媒を循環させて冷却する
樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する方法であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
ホットパリソン式のブロー成形方法に関しては、成形サイクルの短縮を目的として種々の提案がなされている。成形サイクルの短縮化には、例えば特許文献1、2のように、律速段階であるプリフォームの射出成形時間(プリフォームの冷却時間)を短縮することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017-098673号
【特許文献2】特開平5-185493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホットパリソン式のブロー成形で成形サイクルを短縮すると、ブロー成形工程でのブロー成形金型の冷却時間も短くなる。そのため、高サイクルの連続成形時にブロー成形の回数が増加するにつれて、ブロー成形金型は徐々に昇温してゆく。ブロー成形金型が昇温すると、賦形された容器が十分に冷却されないことから離形後に容器が不規則に後収縮してしまい、容器が外観や寸法の要求仕様を満たさないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ホットパリソン式のブロー成形において成形サイクルを短縮するともに、賦形された容器の後収縮を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂製容器の製造方法は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で製造されたプリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、温度調整されたプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。射出成形工程においては、プリフォームの外形が維持できる程度の高温状態でプリフォームを型から離型させる。ブロー成形工程においては、プリフォームをブロー成形する一対のブローキャビティ割型に冷媒を循環させて冷却する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ホットパリソン式のブロー成形において成形サイクルを短縮するともに、賦形された容器の後収縮を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ブロー成形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】温度調整工程における第1の冷却ブローの例を示す図である。
【
図3】温度調整工程における第2の冷却ブローの例を示す図である。
【
図5】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態および比較例のブロー成形方法におけるプリフォームの温度変化例を示すグラフである。
【
図7】温度調整工程での第1の冷却ブローと第2の冷却ブローの動作例を示す図である。
【
図8】第2実施形態におけるブロー成形工程の動作例を示す図である。
【
図9】ブローキャビティ割型ユニットにおける冷媒流路の構成例を示す図である。
【
図10】ブロー成形装置の温度調整工程の変形例を示す図である。
【
図11】ブロー成形装置の温度調整工程のさらなる変形例を示す図である。
【
図12】
図11に示す第1のエア導入部材の流路の切り替えを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面において、容器およびプリフォームの形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
(第1実施形態)
<ブロー成形装置の説明>
まず、
図1を参照して容器10を製造するためのブロー成形装置20について説明する。
図1は、ブロー成形装置20の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム11を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0012】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0013】
(搬送機構26)
搬送機構26は、
図1の紙面垂直方向の軸を中心に回転する回転板(不図示)を備える。回転板には、プリフォーム11または樹脂製容器(以下、単に容器と称する)10の首部12を保持するネック型27(
図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、回転板を回転させることで、ネック型27で首部12が保持されたプリフォーム11(または容器10)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、回転板を昇降させることもでき、射出成形部21におけるプリフォームの型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0014】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、
図2、
図3に示すプリフォーム11を製造する。射出成形部21には、プリフォーム11の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0015】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム11が製造される。
ここで、プリフォーム11の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム11の開口側の端部には、首部12が形成されている。
【0016】
また、容器10およびプリフォーム11の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0017】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム11を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム11の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0018】
本実施形態において、射出成形部21では、例えば、ウォーターサーバーで用いられる大型の樹脂製容器(充填量が約12L~15L(約3~5ガロン))用のプリフォーム11が製造される。この大型の樹脂製容器は、透明性に加え、高い剛性(荷重強度)や衝撃耐性(落下強度)が求められる。材料がPETである場合は射出成形部21で十分な冷却時間を設けたとしても、容器10の透明性を確保するには、プリフォーム11の胴部の厚さは最大で約10mm程度が限度である。剛性を高めるには、容器10の胴部や肩部を肉厚化(高重量化)させる必要性があるが、プリフォーム11の厚さには制限がある。よって、この容器10のプリフォーム11は、胴部の長さ/首部12の長さの比率が大きく設定され、胴部が肉厚でその長さが容器の胴部長とほぼ同じに設定された形状になっている。このプリフォーム11は、例えば、全長が約400~470mm、胴部の長さが約330~400mm、胴部の直径が約50~55mm、重量が約500~750g、とされる。
【0019】
(温度調整部22)
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム11の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高熱のプリフォーム11を冷却する機能も担う。
【0020】
図2、
図3に示すように、温度調整部22は、温度調整用の金型ユニット(温調ポット)30を有する。金型ユニット30は、プリフォーム11を収容可能なキャビティ型31と、第1のエア導入部材32と、を備える。
【0021】
キャビティ型31は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11と略同じ形状の温調空間を有する金型であり、支持台37の上に配置されている。本実施形態のキャビティ型31は、上段型31aと下段型31bとを有し、上下2段に分割された構成である。
【0022】
上段型31aおよび下段型31bのそれぞれの内部には、温度調整媒体(冷却媒体)の流れる流路(不図示)が形成されている。そのため、キャビティ型31の温度は、上段型31aおよび下段型31bの内部に流れる温度調整媒体により所定の温度に保たれる。上段型31aと下段型31bの温度調整媒体の温度を変更することで、プリフォーム11の温度分布をプリフォーム11の長手方向に変化させてもよい。
なお、キャビティ型31の温度調整媒体の温度は特に限定されるものではないが、例えば、5℃~80℃、好ましくは30℃から60℃の間の範囲内で適宜選択することが可能である。
【0023】
ここで、キャビティ型31の構成は、本実施形態の構成に限定されることはない。例えば、キャビティ型31は上下に3段以上に分かれた構成としてもよい。また、例えば、キャビティ型31は、プリフォーム11の長手方向に分割される一対の割型で構成されていてもよい。キャビティ型31を割型で構成する場合には、温度調整後のプリフォーム11の胴部が首部よりも太くなるようにすることもできる。
【0024】
第1のエア導入部材32は、温度調整部22でプリフォーム11を保持しているネック型27に対して進退可能に配置される。
図2、
図3は、第1のエア導入部材32が図中下側に伸張(下降)してネック型27の内部に挿入された状態を示している。
【0025】
第1のエア導入部材32は、ネック型27に挿入された状態において、プリフォーム11の首部12に気密可能に当接される。第1のエア導入部材32は、第1のロッド部材33と、第1の嵌合コア(第1のブローコア部材)34と、を有する。
【0026】
第1のロッド部材33および第1の嵌合コア34はいずれも中空の筒状体であり、第1のロッド部材33は第1の嵌合コア34の内側に同心状に配置されている。第1のロッド部材33の先端は、プリフォーム11の底面近傍まで挿入される。プリフォーム11の底部側に位置する第1のロッド部材33の先端には、プリフォーム11内に圧縮空気(エア、気体状の冷媒)を給気または排気するための開口33aが形成され、第1のロッド部材33の内部は第1のエア流路35と接続されている。
【0027】
第1の嵌合コア34は、第1のエア導入部材32がネック型27の内部に挿入されたときに首部12の内周または上端面と密着し、プリフォーム11と第1のエア導入部材32との気密を保つ。第1の嵌合コア34の先端は、プリフォーム11の首部12の位置まで挿入または当接される。プリフォーム11の首部12側に位置する第1の嵌合コア34の先端には、プリフォーム11内にエアを給気または排気するための開口34aが形成される。また、第1のロッド部材33と第1の嵌合コア34の間の空間は、第2のエア流路36と接続されている。
【0028】
第1のエア流路35は途中で分岐し、分岐した一方の流路35aは図示しないコンプレッサからのエアを受け入れる給気口に接続され、分岐した他方の流路35bはプリフォーム11の排熱で温度が上昇したエアを外部に排気する排気口に接続される。流路35aには、給気口との接続と遮断を切り替える第1の給気制御弁38aが設けられている。また、流路35bには、排気口との接続と遮断を切り替える第1の排気制御弁38bが設けられている。
【0029】
同様に、第2のエア流路36は途中で分岐し、分岐した一方の流路36aは上記の給気口に接続され、分岐した他方の流路36bは上記の排気口に接続される。流路36aには、給気口との接続と遮断を切り替える第2の給気制御弁39aが設けられている。また、流路36bには、排気口との接続と遮断を切り替える第2の排気制御弁39bが設けられている。
【0030】
第1の給気制御弁38a、第1の排気制御弁38b、第2の給気制御弁39aおよび第2の排気制御弁39bは、いずれも例えばソレノイドバルブで構成される。なお、これらの弁は、例えばサーボバルブなどの他の公知のバルブで構成されていてもよい。
【0031】
(ブロー成形部23)
ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム11に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
図4に示すように、ブロー成形部23は、容器10の形状に対応するブロー成形金型40と、プリフォーム11の延伸ロッドを兼ねる第2のエア導入部材50とを備える。
【0032】
ブロー成形金型40は、底型42と、一対のブローキャビティ割型43,43と、を備えている。
ブローキャビティ割型43,43は、底面を除く容器10の形状を規定する型材である。ブローキャビティ割型43,43は、
図4の上下方向に沿ったパーティング面で分割され、
図4の左右方向に開閉可能に構成される。
【0033】
底型42は、ブローキャビティ割型43,43の下側に配置され、容器10の底面の形状を規定する型材である。底型42およびブローキャビティ割型43,43が型閉じされることで、容器10の形状を規定する型空間Sが形成される。なお、本実施形態の型空間Sは、充填量が約12L~20Lであるウォーターサーバー用の大型容器に対応している。
【0034】
第2のエア導入部材50は、ブロー成形部23でプリフォーム11を保持しているネック型27に対して進退可能に配置される。
図4(A)では、第2のエア導入部材50がネック型27に挿入されていない退避状態にある。また、
図4(B)は、第2のエア導入部材50が図中下側に伸張してネック型27の内部に挿入された状態を示している。
【0035】
第2のエア導入部材50は、ネック型27に挿入された状態において、プリフォーム11の首部12に気密可能に当接される。第2のエア導入部材50は、第2のロッド部材51と、第2の嵌合コア(第2のブローコア部材)52と、を有する。
【0036】
第2のロッド部材51および第2の嵌合コア52はいずれも中空の筒状体であり、第2のロッド部材51は第2の嵌合コア52の内側に同心状に配置されている。第2のロッド部材51は延伸ロッドであり、第2の嵌合コア52に対して図中上下方向に進退可能に構成されている。第2のロッド部材51の先端には、プリフォーム11の内底面に接触して延伸時の芯ずれを防止する当接部55が設けられている。
【0037】
第2のロッド部材51の内部は、図示しないコンプレッサからのエアを導入する流路を構成する。また、第2のロッド部材51の先端近傍の周面には、プリフォーム11内にエアを噴出するための開口53が複数形成されている。
【0038】
第2の嵌合コア52は、第2のエア導入部材50がネック型27に挿入されたときに首部12の内周と密着し、プリフォーム11(または容器10)と第2のエア導入部材50との気密を保つ。第2の嵌合コア52の先端は、プリフォーム11の首部12の位置まで挿入される。プリフォーム11の首部12側に位置する第2の嵌合コア52の先端には、プリフォーム11内からエアを排気するための開口54が形成される。また、第2のロッド部材51と第2の嵌合コア52の間の空間は、プリフォーム11内に噴出されたエアを外部に排気するための流路を構成する。
【0039】
(取り出し部24)
図1に戻って、取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器10の首部12をネック型27から開放し、容器10をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0040】
<ブロー成形方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図5は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【0041】
(ステップS101:射出成形工程)
まず、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム11が製造される。
【0042】
ステップS101において、樹脂充填の終了直後または樹脂充填後に設けられた最小限の冷却時間後に射出成形部21が型開きされる。つまり、プリフォーム11の外形が維持できる程度の高温状態でプリフォーム11が射出キャビティ型、射出コア型から離型される。その後、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、ネック型27に保持されたプリフォーム11が温度調整部22に搬送される。
【0043】
ここで、
図6を参照して、本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォーム11の温度変化を説明する。
図6の縦軸はプリフォーム11の温度を示し、
図6の横軸は時間を示す。
図6において、本実施形態のプリフォームの温度変化例は
図6中(A)で示す。また、後述する比較例(従来方法)のプリフォームの温度変化例は
図6中(B)で示す。なお、各工程間の空白は、プリフォーム11または容器10の移送に要する時間であり、同一である。
【0044】
本実施形態においては、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出成形されると、射出成形部21では射出成形後のプリフォーム11の最小限の冷却のみを行い、温度調整部22でプリフォーム11の冷却および温度調整を行う。本実施形態において、射出成形部21で樹脂材料の射出が完了してから樹脂材料を冷却する時間(冷却時間)は、樹脂材料を射出する時間(射出時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、上記の樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料の重量に応じて、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して2/5以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。比較例よりも冷却時間を著しく短縮させているため、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来より薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内部層)は従来より厚く形成される。つまり、比較例と比べて、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォームが成形される。
【0045】
本実施形態では、射出成形されたプリフォーム11は、比較例の場合よりも高い離型温度で射出成形部21から離型され、温度調整部22へと搬送される。温度調整部22への移動に伴って、プリフォーム11はスキン層とコア層間の熱交換(熱伝導)による均温化が進む。また、外気との接触により、プリフォーム11は外表面から若干冷却される。しかし、温度調整部22への搬入時までプリフォーム11の温度はほぼ高温の離型温度の状態で維持される。温度調整部22では、高温の離型温度からブロー温度までプリフォーム11の温度が低下され、その後、ブロー成形が行われるまでプリフォーム11の温度はブロー温度に維持される。また、温度調整部22では高温状態のプリフォームを急冷するため、徐冷した場合に生じうる球晶生成結晶化による白化(白濁化)も抑制される。
なお、ブロー温度は、ブロー成形に適した温度であり、例えばPET樹脂では90℃~105℃に設定される。ただし、ブロー温度は低温の方がプリフォーム11の延伸配向性が良好になり容器の強度(物性)を高めることができる。そのため、ブロー温度は、例えばPET樹脂では90℃~95℃に設定することが好ましい。
【0046】
ここで、ブロー成形装置20の構造上、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0047】
一方、比較例として、射出成形工程でプリフォーム11の冷却を行う場合のプリフォームの温度変化例(
図6の(B))を説明する。
比較例では、射出成形部21の金型内でプリフォーム11をブロー温度よりも低いか略同程度の温度まで冷却する。その結果として、比較例では射出成形工程の時間が本実施形態よりも長くなる。そうすると、各工程の時間は最も長い射出成形工程の時間に合わせて設定されることから、結果的に容器の成形サイクルの時間も長くなってしまう。
【0048】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム11の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0049】
図2に示すように、温度調整工程においては、まず、プリフォーム11がキャビティ型31のプリフォーム形状の温調空間内に収容される。続いて、キャビティ型31に収容されたプリフォーム11の首部12に第1のエア導入部材32が挿入される。このとき、プリフォーム11の首部12と第1の嵌合コア34が密着して両者の気密が保たれた状態となる。
【0050】
その後、プリフォーム11の冷却ブロー(クーリングブロー)が行われる。本実施形態のプリフォーム11の冷却ブローでは、
図2、
図3に示すように、エアを流す方向を切り替えてプリフォーム11の冷却が行われる。
例えば、最初にプリフォーム11の底部側からエアを導入し、プリフォーム11の首部側からエアを排出する第1の冷却ブロー(
図2)が行われる。次にプリフォーム11の首部側からエアを導入し、プリフォーム11の底部側からエアを排出する第2の冷却ブロー(
図3)が行われる。
【0051】
第1の冷却ブローのときには、第1の給気制御弁38aが開弁し、第1の排気制御弁38bが閉弁する。これにより、第1のエア流路35が給気口と接続され、プリフォーム11の底部側に位置する第1のロッド部材33の開口33aからプリフォーム11内にエアが導入される。
また、第2の冷却ブローのときには、第2の給気制御弁39aが閉弁し、第2の排気制御弁39bが開弁する。これにより、第2のエア流路36が排気口と接続され、プリフォーム11の首部側に位置する第1の嵌合コア34の開口34aからプリフォーム11内のエアが排気される。
【0052】
第1の冷却ブローでは、第1のロッド部材33の開口33aからエアが噴出し続けているため、プリフォーム11は内部を流れるエアにより内側から冷却される。プリフォーム11の内部を流れるエアは、底部では温度が低いがプリフォーム11との熱交換で首部に向かうにつれて次第に温度が上昇してゆく。そのため、第1の冷却ブローでは、プリフォーム11の首部側よりもプリフォーム11の底部側での冷却効果が高くなる。
【0053】
一方、第2の冷却ブローのときには、第1の給気制御弁38aが閉弁し、第1の排気制御弁38bが開弁する。これにより、第1のエア流路35が排気口と接続され、プリフォーム11の底部側に位置する第1のロッド部材33の開口33aからプリフォーム11内のエアが排気される。
また、第2の冷却ブローのときには、第2の給気制御弁39aが開弁し、第2の排気制御弁39bが閉弁する。これにより、第2のエア流路36が給気口と接続され、プリフォーム11の首部側に位置する第1の嵌合コア34の開口34aからプリフォーム11内にエアが導入される。
【0054】
第2の冷却ブローでは、第1の嵌合コア34の開口34aからエアが噴出し続けているため、プリフォーム11は内部を流れるエアにより内側から冷却される。プリフォーム11の内部を流れるエアは、首部では温度が低いがプリフォーム11との熱交換で底部に向かうにつれて次第に温度が上昇してゆく。そのため、第2の冷却ブローでは、プリフォーム11の底部側よりもプリフォーム11の首部側での冷却効果が高くなる。
【0055】
本実施形態においては、温度調整工程で第1の冷却ブローと第2の冷却ブローを行い、エアの流れる方向を切り替えてプリフォーム11の冷却を行う。そのため、エアの流れる方向を切り替えない場合と比べると、温度調整工程でのプリフォーム11の冷却むらが非常に小さくなり、冷却不足でプリフォーム11に部分的な白化が生じるおそれが抑制される。特に、鉛直方向に長い形状のプリフォーム11に対して冷媒を一方向のみに流通させると、冷媒の給気口側の胴部のみが過冷却される一方、冷媒の排気口側の胴部が十分に冷却されない現象が生ずる。この結果、プリフォーム11の排気口側に位置する胴部は白化し、給気口側に位置する胴部はブロー成形に必要な熱量まで奪われてしまい、外観良好な容器が製造できなくなる。よって、胴部が長く肉厚である(高重量な)プリフォーム11、つまり、ウォーターサーバー用の大型容器のプリフォーム11は、従来の温度調整部22では適切に後冷却できなかった。しかしながら、プリフォーム11の冷媒の流通方向を所定のタイミングで切り替える本実施形態の方法であれば、大型容器用の細長いプリフォーム11に対しても、ブロー成形に必要な熱量を維持させつつ白化を抑止した後冷却が温度調整部22で実施可能である。
【0056】
図7(A)、(B)は、温度調整工程での第1の冷却ブローと第2の冷却ブローの動作例を示す。プリフォーム11の冷却むらを小さくする観点からすると、温度調整工程での第1の冷却ブローの時間(CB1)と第2の冷却ブローの時間(CB2)は等しく設定することが好ましい(CB1=CB2)。また、第1の冷却ブローと第2の冷却ブローの切り替えは、
図7(A)に示すように1回でもよく、
図7(B)に示すように複数回であってもよい。なお、プリフォーム11の首部側に近い胴部または底部側に近い胴部とで冷却強度を変えたい場合、第1の冷却ブローの時間(CB1)と第2の冷却ブローの時間(CB2)は、CB1>CB2やCB1<CB2のように異ならせても構わない。
【0057】
また、第1の冷却ブローと第2の冷却ブローの切り替えタイミングは、プリフォーム11の長さ、肉厚分布、形状や、プリフォーム11の温度状態などに応じて適宜設定することができる。また、第1の冷却ブローおよび第2の冷却ブローにおけるエアの供給条件(流量、流速、圧力)や、第1の冷却ブローおよび第2の冷却ブローの時間は適宜設定することができる。例えば、プリフォーム11の首部側に近い胴部または底部側に近い胴部とで冷却強度を変えたい場合、第1の冷却ブローまたは第2の冷却ブローの何れか一方のエアの供給条件を他の供給条件より高く設定しても構わない。
【0058】
また、温度調整工程の第1の冷却ブローと第2の冷却ブローのいずれにおいても、プリフォーム11は内側からエアの圧力を受けて、所定の温度に保たれたキャビティ型31と接触し続ける。そのため、温度調整工程において、プリフォーム11は外側からブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、キャビティ型31がプリフォーム形状の空間を有しているため、プリフォームの形状はキャビティ型31で維持されて大きく変化することはない。
【0059】
温度調整工程の後、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム11がブロー成形部23に搬送される。
【0060】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器10のブロー成形が行われる。
まず、底型42が静止し、ブローキャビティ割型43が開いている状態のブロー成形金型40にプリフォーム11が収容される。その後、ブローキャビティ割型43が閉じ、
図4(A)に示すように、ブロー成形金型40が型閉じされ、容器10の形状に対応する型空間Sが形成される。
【0061】
そして、ブロー成形金型40に収容されたプリフォーム11の首部12に第2のエア導入部材50が挿入される。このとき、プリフォーム11の首部12と第2の嵌合コア52が密着して両者の気密が保たれた状態となる。
【0062】
プリフォーム11に第2のエア導入部材50が挿入されると、第2のロッド部材51が降下することで、プリフォーム11が図中下方向に延伸される。
続いて、
図4(B)に示すように、第2のロッド部材51の開口53から、プリフォーム11内に加圧流体の一例であるブローエアーが導入される。これにより、プリフォーム11は、ブロー成形金型40の型空間Sに密着するように膨出して容器10にブロー成形される。
【0063】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ割型43および底型42が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器10が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、容器10が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器10の首部12がネック型27から開放され、容器10がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0064】
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の回転板を所定角度回転させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。
【0065】
以下、本実施形態のブロー成形方法の効果を説明する。
ホットパリソン式のプリフォームを結晶性の熱可塑性樹脂(透明の非晶質状態と白濁した結晶質状態とになりうる樹脂)を材料として成形すると、材料によっては冷却不足により白化(白濁)してしまう場合がある。例えば、PET樹脂を材料とした場合、結晶化が促進される温度帯(120℃~200℃)でプリフォームを徐冷(例えば室温で数十秒冷却)すると、球晶生成による結晶化が生じ、白化する傾向を示す。
そのため、従来は、プリフォームの射出成形型を急冷(例えば10℃で5秒)することで上記の結晶化温度帯の通過時間を短くし、射出成形工程で十分に冷却させてプリフォームの白化を抑制していた。
【0066】
これに対し、本実施形態のブロー成形方法によれば、射出成形工程(S101)でプリフォーム11の冷却工程をほとんどなくし、温度調整工程(S102)でプリフォーム11の冷却を行っている。温度調整工程(S102)では、プリフォーム11をキャビティ型31に密着させてプリフォーム11の外面を効果的に温度調整できる。さらに、エアがプリフォーム11の内部に閉じ込められずに流れ続けるため、プリフォーム11の温度調整と同時にプリフォーム11の冷却も行うことができる。本実施形態では、温度調整工程(S102)でプリフォーム11の温度調整と冷却を行えるため、射出成形工程(S101)においてプリフォーム11を高温の状態でも離形することができ、次のプリフォーム11の成形を早く開始することができる。すなわち、本実施形態によると、成形サイクル時間を、比較例の成形サイクル時間よりも短縮しつつ、容器10を良好に成形できる。
【0067】
また、本実施形態においては、温度調整工程(S102)で第1の冷却ブロー(
図2)と第2の冷却ブロー(
図3)を行い、エアの流れる方向を切り替えてプリフォーム11の冷却を行う。そのため、エアの流れる方向を切り替えない場合と比べると、温度調整工程でのプリフォーム11の冷却むらが非常に小さくなり、冷却不足でプリフォーム11に部分的な白化が生じるおそれが抑制される。
【0068】
さらに付言すれば、本実施形態では、温度調整部22で効率的にプリフォーム11を冷却させることができるので、例えば特許文献1のように、成形サイクル時間の短縮に特化した特殊な形状(例えば、胴部が薄肉の形状)のプリフォームを適用しなくてもよい。換言すると、本実施形態によれば、容器形状に合わせて最適な肉厚分布を持つように設計されたプリフォームを適用しても成形サイクル時間を短縮でき、物性の良好な容器を短サイクルで製造できる。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であって、賦形された容器の後収縮を抑制するための構成例について説明する。
【0070】
ホットパリソン式のブロー成形で成形サイクルを短縮すると、ブロー成形工程でのブロー成形金型の冷却時間も短くなる。そのため、高サイクルの連続成形時にブロー成形の回数が増加するにつれて、ブロー成形金型は徐々に昇温してゆく。ブロー成形金型が昇温すると、賦形された容器が十分に冷却されないことから離形後に容器が不規則に後収縮してしまい、容器が外観や寸法の要求仕様を満たさないおそれがある。
そこで、第2実施形態では、プリフォームをブロー成形するブローキャビティ割型に冷媒を循環させて冷却を行い、賦形された容器の後収縮を抑制する。
【0071】
以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の要素には同一符号を付し、重複説明はいずれも省略する。第2実施形態のブロー成形装置20においては、ブロー成形部23の構成が相違する。
なお、第2実施形態の射出成形部21では、例えば、剛性度が高い容器10用のプリフォーム11が製造される。このプリフォーム11は、例えば、充填容量が800ml以上の容器用であり、重量が70g以上、胴部の肉厚が4mm以上、胴部の長さが100mm以上、とされる。このプリフォーム11が後述のブロー成形部23で比較的低い延伸倍率(一例として、縦方向の最大延伸倍率×横方向の最大延伸倍率で計算される面倍率が7以下)でブローされ、胴部が肉厚で剛性度の高い容器10が製造される。
【0072】
図8に示すように、第2実施形態のブロー成形部23は、容器10の形状に対応するブロー成形金型40と、プリフォーム11の延伸ロッドを兼ねる第2のエア導入部材50とを備える。
【0073】
ブロー成形金型40は、底型42と、一対のブローキャビティ割型43,43と、一対の収容部(ブローキャビティ割型固定板)44,44と、を備えている。なお、ブロー成形金型40は、底型42と、後述する一対のブローキャビティ割型ユニットと、で構成される場合もある。
ブローキャビティ割型43,43は、底面を除く容器10の形状を規定する型材である。ブローキャビティ割型43,43は、
図8の上下方向(金型装置の載置面と略鉛直の方向)に沿ったパーティング面で分割され、
図8の左右方向(金型装置の載置面と略水平の方向)に開閉可能に構成される。
【0074】
一対の収容部(ブローキャビティ型固定板)44,44は、ブローキャビティ割型43,43を隔てて配置され、それぞれ対応するブローキャビティ割型43を一つ以上収容・固定する。また、収容部44は、ブローキャビティ割型43,43の開閉機構(不図示)と接続され、ブローキャビティ割型43,43を
図8の左右方向に移動させる。収容部44は略矩形状の部材で、ブローキャビティ割型43を収容・固定する第1の面と、第1の面の反対にあり開閉機構(不図示)に連結される第2の面を備える。
【0075】
ブローキャビティ割型43と収容部44から構成されるブローキャビティ割型ユニット、または、ブローキャビティ割型43には、精密に温度管理された液体状の冷媒を循環させる冷媒流路45が設けられている。冷媒流路45は、図示しないチラー(冷却水循環装置)に接続されており、冷媒の一例であるチラーからの冷却水(チラー水)をブローキャビティ割型43に循環させる。そのため、ブローキャビティ割型43はチラー水との熱交換によって直接冷却される。なお、特に限定するものではないが、ブローキャビティ割型43に供給されるチラー水の温度は、例えば0℃~20℃であり、より好ましくは5℃~15℃、さらに好ましくは5℃~10℃である。
また、一対の収容部44,44に、収容部44、44のみを冷却させる冷媒を循環させる冷媒流路45fを設けてもよい(
図8参照)。収容部44とブローキャビティ割型43は密着して固定されており、ブローキャビティ型43の熱量を収容部44に伝熱可能なため、ブローキャビティ型43の昇温をより効果的に抑止できる。
【0076】
底型42は、ブローキャビティ割型43,43の下側に配置され、容器10の底面の形状を規定する型材である。底型42およびブローキャビティ割型43,43が型閉じされることで、容器10の形状を規定する型空間Sが形成される。
【0077】
第2のエア導入部材50は、ブロー成形部23でプリフォーム11を保持しているネック型27に対して進退可能に配置される。
図8(A)では、第2のエア導入部材50がネック型27に挿入されていない退避状態にある。また、
図8(B)は、第2のエア導入部材50が図中下側に伸張(下降)してネック型27の内部に挿入された状態を示している。
なお、第2のエア導入部材50に関する構成は、第1実施形態と同様であるので重複説明を省略する。
【0078】
ここで、
図9を参照しつつ、
図8の変形例として、上記のブローキャビティ割型ユニットにおける冷媒流路45の構成について説明する。
図9は、
図8(B)に対応する図面である。なお、
図9では、冷媒流路45fの図示は省略している。
【0079】
図9に示す収容部44は、冷媒用の供給口45a、分流路(第1の冷媒流路)45b、集約路45d(第2の冷媒流路)および排出口45eを備える。分流路45bおよび集約路45dは、収容部44の内部に、型開閉方向と直交する紙面垂直方向に(パーティングラインと並行して)延びるように形成されている。ブローキャビティ割型43は、ブローキャビティ割型のキャビティを囲むように形成された(ブローキャビティ割型43の上下方向および左右方向に亘って延在する)キャビティ用冷媒流路45c(第3の冷媒流路)を備える。
【0080】
収容部44はさらに、冷媒をブローキャビティ割型43へ流入させる第1の供給部45b1と、冷媒をブローキャビティ割型から流出させる第1の排出部45d1を備える。第1の供給部45b1は分流路45bと連通する。第1の排出部45d1は集約路45dと連通する。
【0081】
ブローキャビティ割型43はさらに、冷媒を収容部44から流入させる第2の供給部45c1と、冷媒を収容部44へ流出させる第2の排出部45c2を備える。第2の供給部45c1と第2の排出部45c2はキャビティ用冷媒流路45cと連通する。
【0082】
図9に示す冷媒流路45を備えるブローキャビティ割型ユニットにおける冷媒の流れを説明する。先ず、冷媒は冷媒源(不図示)で形成されて収容部44の供給口45aに一度に(一括で)供給される(上流側)。供給された冷媒は分流路45bを通り、各ブローキャビティ割型43との接触面に位置する第1の供給部45b1に至る。次いで冷媒は、隣接するブローキャビティ割型43の第2の供給部45c1を介して分配されてキャビティ用冷媒流路45cを流れ、ブローキャビティ割型42を冷やして接触する容器10を冷却する。冷却を終えた冷媒は第2の排出部45c2に到達し、隣接する収容部44の第1の排出部45d1に流入する。第1の排出部45d1を介して各ブローキャビティ割型43からの冷媒が集約路45dに集約される。最後に冷媒は、収容部44の排出口45eを介して機外に一度に排出される(下流側)。上記の冷媒流路45により配管作業等を抑制しつつ、複数のブローキャビティ割型43に冷媒を効率的に供給・排出させて冷却し、容器10を短時間で冷却させることができる。なお、冷却流路45は、ブローキャビティ割型43のみに形成させても良い。この場合、配管作業等を考慮し、ブローキャビティ割型43の個数は2以下とするのが望ましい。この場合、冷却流路45は、第2の供給部45c1、第2の排出部45c2およびキャビティ用冷媒流路45cで構成される。第2の供給部45c1に冷媒源(不図示)の冷媒が供給され、キャビティ用冷媒流路45cに流れてブローキャビティ割型42を冷やして接触した容器10を冷却し、第2の排出部45c2を介し機外へ排出される。
【0083】
なお、ブローキャビティ割型43(ブロー成形金型40)内で冷媒が流れる方向は、成形される容器10に応じて適宜変更しても良い。つまり、冷媒が流れる方向は、ブローキャビティ割型43の上方から下方(
図8や
図9)の外、下方から上方でも構わない。
【0084】
次に、第2実施形態のブロー成形方法について説明する。
第2実施形態のブロー成形方法では、第1実施形態と同様に、射出成形工程(S101)、温度調整工程(S102)、ブロー成形工程(S103)、容器取り出し工程(S104)が順次実行される。
【0085】
第2実施形態のブロー成形方法において、射出成形工程、温度調整工程、容器取り出し工程は、第1実施形態と同様である。
もっとも、第2実施形態の温度調整工程において、プリフォーム11の冷却ブローを行うときに、プリフォーム11の底部側からエアを導入し、プリフォーム11の首部側からエアを排出してもよい。この冷却ブローでは、第1のロッド部材33の開口33aからエアが噴出し続けているため、プリフォーム11は内部を流れるエアにより内側から冷却される。また、プリフォーム11の排熱で温度が上昇したエアは外部に排気されるので、プリフォーム11の排熱で温度が上昇したエアが滞留して冷却を妨げることもない。なお、必要に応じ、冷却ブローを行うときは、プリフォーム11の首側からエアを導入し、プリフォーム11の底部側からエアを排出しても構わない。
【0086】
第2実施形態のブロー成形工程においては、ブロー成形部23で以下の工程が行われる。
まず、底型42が静止し、ブローキャビティ割型43が開いている状態のブロー成形金型40にプリフォーム11が収容される。その後、ブローキャビティ割型43が閉じ、
図8(A)に示すように、ブロー成形金型40が型閉じされ、容器10の形状に対応する型空間Sが形成される。
【0087】
そして、ブロー成形金型40に収容されたプリフォーム11の首部12に第2のエア導入部材50が挿入される。このとき、プリフォーム11の首部12と第2の嵌合コア52が密着して両者の気密が保たれた状態となる。
【0088】
プリフォーム11に第2のエア導入部材50が挿入されると、第2のロッド部材51が降下することで、プリフォーム11が図中下方向に延伸される。
続いて、
図8(B)に示すように、第2のロッド部材51の開口53から、プリフォーム11内にブローエアーが導入される。これにより、プリフォーム11は、ブロー成形金型40の型空間Sに密着するように膨出して賦形され、容器10にブロー成形される。
【0089】
ここで、ブロー成形金型40は、容器10を賦形するときにプリフォーム11からの熱を受けることで容器10を冷却する役目も担う。本実施形態においては、ブロー成形金型40のブローキャビティ割型43は、冷媒流路45を流れるチラー水の循環で直接冷却されているので、高サイクルの連続成形時においても昇温しにくい。さらに、収容部44に冷媒流路45bを設けている場合は、より効果的にブローキャビティ割型43の昇温が抑止できる。
【0090】
通常、ブロー成形型の冷却は、ブロー成形工程で空いた時間帯を活用して行われる。しかし、短成形サイクル条件下ではこの空き時間も非常に短くなり、ブロー成形金型から容器を離型して次のプリフォームをブローする前までに温度を規定値まで低下させることができず、充分に冷却させることができない。また、成形する容器が肉厚になるほど、ブロー成形型の冷却はしづらくなる。高重量で保有熱が大きいプリフォームから胴部が肉厚で剛性度の高い容器をブロー成形する場合、ブローキャビティ割型とプリフォームまたは容器との熱交換量は大きな値になるためである。よって、従来のブロー成形金型の構造を高サイクルの連続成形時に採用しても、離型後に肩部やヒール部の後収縮を起こさないように肉厚容器を製造することは、実質的に不可能であった。また、高サイクルの成形の場合、プリフォーム11は通常より高い温度で離型されて高い保有熱を有する。そのため、高サイクルの成形の場合には、ブロー成形される容器も従来より高温になる結果、従来より強い冷却処理が必要になる。
【0091】
一方、本実施形態のブロー成形金型40であれば、ブローキャビティ割型43との熱交換量が大きい高重量のプリフォーム11や容器10を高サイクルで連続成形させても、後収縮を起こさず要求仕様を満たした容器10を良好に大量生産することが可能になる。
【0092】
また、本実施形態のブロー成形工程(S103)では、容器10を賦形するときにプリフォーム11からの熱を受けるブローキャビティ割型43がチラー水の循環で直接冷却されている。これにより、賦形された容器10がブロー成形金型40で十分に冷却されるので、離形後に容器10が不規則に後収縮することを抑制できる。
しかも、ブロー成形金型40がチラー水の冷却により昇温しにくいので、金型から熱を逃がす時間の短い高サイクルの連続成形時においても、ブロー成形金型40による容器10の冷却効果はそのまま維持される。したがって、本実施形態によれば、高サイクルの連続成形時においても離形後に容器10が不規則に後収縮することを抑制できる。
【0093】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0094】
例えば、温度調整工程の冷却ブローにおいて、プリフォーム11にエアを導入する位置と、プリフォーム11からエアを排出する位置は適宜変更することができる。
例えば、
図10(A)、(B)に示すように、温度調整部22の第1のエア導入部材32として、プリフォーム11への挿入位置がそれぞれ異なる少なくとも3つの配管60a、60b、60cを設けてもよい。配管60aの先端はプリフォーム11の首部側に位置し、配管60cの先端はプリフォーム11の底部側に位置する。また、配管60bの先端は、配管60aの先端と配管60cの先端との中間に位置する。つまり、第1のエア流路35と第2のエア流路36とからなるユニットを、プリフォーム11の縦軸中心に対してオフセンター的に配置させている。なお、配管60a、60b、60c、60dは概略構造で例示している。
【0095】
図10(A)の例では、配管60aと配管60cによりプリフォーム11にエアを導入し、配管60bによりプリフォーム11からエアを排出する。また、
図10(B)の例では、配管60bによりプリフォーム11にエアを導入し、配管60aと配管60cによりプリフォーム11からエアを排出する。
図10(A)、(B)の例によっても、温度調整工程(S102)でエアの流れる方向を切り替えてプリフォーム11の冷却が行われるので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、
図10(A)、(B)の例によると、プリフォームの中間位置からも冷却ブローができるので、温度調整工程でのプリフォーム11の冷却むらをさらに抑制することができる。さらに、配管60a、60b、60cをプリフォーム11の円周方向に対し回転可能なように構成させても良い。これにより、プリフォーム11の偏温を除去しつつ後冷却を並行して行うことができる。
【0096】
図11、
図12は、温度調整部22の変形例として、第1のエア導入部材32を二重管構造とした例を示している。なお、
図11の例において、キャビティ型31の構成は上記実施形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0097】
図11(A)に示される第1のエア導入部材32は、内側ロッド部材70と、外側ロッド部材71と、第1の嵌合コア(第1のブローコア部材)72と、を備える。
内側ロッド部材70、外側ロッド部材71、第1の嵌合コア72はいずれも中空の筒状体であって、内側からみて内側ロッド部材70、外側ロッド部材71、第1の嵌合コア72の順に同心状に配置される。内側ロッド部材70および外側ロッド部材71の間と、外側ロッド部材71および第1の嵌合コア72の間には、それぞれ円周状の隙間が形成される。
【0098】
内側ロッド部材70の軸方向長さは、第1のエア導入部材32がプリフォーム11に挿入されたときに、内側ロッド部材70の先端がプリフォーム11の底部近傍に位置する寸法に設定される。また、外側ロッド部材71の軸方向長さは、内側ロッド部材70の軸方向長さよりも短く設定される。第1のエア導入部材32がプリフォーム11に挿入されたときに、外側ロッド部材71の先端はプリフォーム11の胴部の略中間位置に位置する。
【0099】
これにより、第1のエア導入部材32がプリフォーム11に挿入されたときに、内側ロッド部材70の内部の第1の流路73と、内側ロッド部材70と外側ロッド部材71の間の第2の流路74と、外側ロッド部材71の外側とプリフォーム11の内周の間の第3の流路75とがそれぞれ形成される。
第1の流路73は、軸方向において内側ロッド部材70の先端が位置するプリフォーム11の底部近傍まで延在する。第2の流路74は、軸方向において外側ロッド部材71の先端が位置するプリフォーム11の胴部の所定の位置まで延在する。また、第3の流路75は、軸方向において外側ロッド部材71の先端の位置から第1の嵌合コア72の内部にわたって延在する。なお、
図12(B)は、
図12(A)のIXb-IXb線断面図である。
【0100】
第1の嵌合コア72は、固定ブロック72aと、内側ロッド部材70を支持する第1の支持部材72bと、外側ロッド部材71を支持する第2の支持部材72cとを備える。
固定ブロック72aは、第1の嵌合コア72の図中上端部の外周に形成される。固定ブロック72a内には、エアを導入出するための(エアの供給と排気を行うための)エア流通ポート76、77が形成されている。
【0101】
第1の支持部材72bおよび第2の支持部材72cは、第1の嵌合コア72の図中上端部の内周に配置される。第1の支持部材72bおよび第2の支持部材72cは、第1のエア導入部材32の中心軸を回転軸として、第1の位置(
図12(A)参照)と、第1の位置とは異なる第2の位置(
図12(B)参照)の間で回動可能である。
【0102】
第1の支持部材72bには、第1の位置および第2の位置にそれぞれ対応する2パターンの流路が、上記の回動により切り替え可能に形成されている。この場合、エア流通ポート76、77の一方は給気用として、他方は排気用として専属的に用いられる。下記のパターンでは、エア流通ポート76を給気ポートとして、エア流通ポート77を排気ポートとして用いられている。
第1のパターンの流路は、第1の位置に対応する流路である。第1のパターンの流路は、
図12(A)に示すように、第2の流路74をエア流通ポート76(給気ポート)と接続する給気路78aと、第1の流路73および第3の流路75をエア流通ポート77(排気ポート)と接続する排気路78bとを含む。また、第2の支持部材72cは、第1の位置では給気路78aと第3の流路75の接続を遮断する一方で、排気路78bと第3の流路75を接続するように構成される。
したがって、第1の位置においては、第1の冷却ブローの一例として、第2の流路74からプリフォーム11にエアが導入され、第1の流路73および第3の流路75からエアが排出される。
【0103】
第2のパターンの流路は、第2の位置に対応する流路である。第2のパターンの流路は、
図12(B)に示すように、第1の流路73および第3の流路75をエア流通ポート76(給気ポート)と接続する給気路79aと、第2の流路73をエア流通ポート77(排気ポート)と接続する排気路79bとを含む。また、第2の支持部材72cは、第2の位置では排気路79bと第3の流路75の接続を遮断する一方で、給気路79aと第3の流路75を接続するように構成される。
したがって、第2の位置においては、第2の冷却ブローの一例として、第1の流路73および第3の流路75からプリフォーム11にエアが導入され、第2の流路74からエアが排出される。
【0104】
なお、第1の支持部材72bおよび第2の支持部材72cは、第1のエア導入部材32の中心軸に対して回動不能に固定ブロック72aに固定しても構わない。この場合、エア流通ポート76、77の各々を、ソレノイドバルブ等の切換弁(不図示)を介在させ、給気回路および排気回路に連結させる構成とするのが望ましい。この構成では、切換弁の制御により、エア流通ポート76、77の各々を、給気用または排気用へと容易に変更できる。ここで、上記の吸気回路および排気回路の接続および切換弁の配置としては、例えば、
図3で示した第1実施形態の第1のエア流路35および第2のエア流路36と同様の構成を適用することができる。
【0105】
図11(A)では、上記の第1の位置の状態でプリフォーム11の冷却を行う場合を示している。
図11(A)の例では、第2の流路74からエアを供給し、第3の流路75と第1の流路73から排気するように制御されている。つまり、プリフォーム11の胴部の中間位置からエアを噴出させ、そこから首部と底部に向けてエアを流すように制御が行われる。これにより、肉厚で長尺のプリフォーム11においても白化(結晶化)を良好に抑制することができる。また、
図11(A)とは逆に、プリフォーム11の首部と胴部の二つの近傍位置からエアを噴出させ、胴部に向けてエアを流すような制御でも構わない。つまり、第3の流路75と第1の流路73からエアを給気し、第2の流路74からエアを排気するような制御でも構わない。なお、
図11(A)の例においては、エアの向きのスイッチングは必ずしも行われなくてもよい。
【0106】
また、
図11、
図12に示す構成例では、第1の支持部材72bおよび第2の支持部材72cを回動させることで、第1の流路73、第2の流路74および第3の流路75のエアの流れ(給気と排気の向き)を切り替えることができる。そのため、
図11、
図12の構成例では、第1のエア導入部材32でのエアの流れを容易に切り替えることができる。
【0107】
また、
図11、
図12に示す構成例において、内側ロッド部材70および外側ロッド部材71は、プリフォーム11の長さ、形状、肉厚などの仕様に応じて適宜異なる長さの部材に交換可能である。これにより、プリフォーム11の仕様に応じて、第1のエア導入部材32におけるエアの吹き出し位置を最適な位置に設定できる。
【0108】
なお、上記実施形態において、例えば、温度調整部22やブロー成形部23において、プリフォーム11を加圧する媒体は空気に限定されることなく、空気以外の気体や水等の液体を加圧媒体としてもよい。
【0109】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
10…容器、11…プリフォーム、12…首部、20…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、31…キャビティ型、32…第1のエア導入部材、33…第1のロッド部材、33a…開口、34…第1の嵌合コア、34a…開口、35…第1のエア流路、36…第2のエア流路、38a…第1の給気制御弁、38b…第1の排気制御弁、39a…第2の給気制御弁、39b…第2の排気制御弁、40…ブロー成形金型、43…ブローキャビティ割型、45…冷媒流路
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記温度調整工程において、前記プリフォームをキャビティ型に収容した後、嵌合コアおよび多重管構造のロッド部材を有するエア導入部材を前記プリフォームに気密可能に当接させて、前記プリフォーム内に径方向内側から径方向外側に向けて少なくとも3つのエアの流路を形成して前記プリフォームを冷却する
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記3つのエアの流路は同心状に配置される
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記多重管構造のロッド部材は、中空筒状の内側ロッド部材と、前記内側ロッド部材の外周側に配置される外側ロッド部材とを少なくとも含み、
前記エアの流路は、内側ロッド部材の内部に形成される第1の流路と、内側ロッド部材と外側ロッド部材の間に形成される第2の流路と、外側ロッド部材と嵌合コアとの間に形成される第3の流路、とを少なくとも含む
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記第2の流路からエアを導入し、前記第1の流路および前記第3の流路からエアを排気し、前記プリフォームの胴部の中間位置にエアを噴出させて前記プリフォームを冷却させる
請求項3に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記エア導入部材が前記プリフォームに挿入されたとき、前記内側ロッド部材の軸方向長さは先端が前記プリフォームの底部近傍に位置する寸法に設定され、前記外側ロッド部材の軸方向長さは前記内側ロッド部材の軸方向長さよりも短く、かつ先端が前記プリフォームの胴部の中間位置に位置する寸法に設定される
請求項4に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
前記嵌合コアと前記多重管構造のロッド部材は、エアの給気用および排気用のポートを備えた固定ブロックに連結されている
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項7】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整部と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備えるブロー成形装置であって、
前記温度調整部は、前記プリフォームを収容するキャビティ型と、嵌合コアおよび多重管構造のロッド部材を有するエア導入部材と、を備え、
前記エア導入部材は、径方向内側から径方向外側に向けて少なくとも3つのエアの流路を前記プリフォーム内に形成する
ブロー成形装置。
【請求項8】
前記3つのエアの流路は同心状に配置される
請求項7に記載のブロー成形装置。
【請求項9】
前記多重管構造のロッド部材は、中空筒状の内側ロッド部材と、前記内側ロッド部材の外周側に配置される外側ロッド部材とを少なくとも含み、
前記エアの流路は、内側ロッド部材の内部に形成される第1の流路と、内側ロッド部材と外側ロッド部材の間に形成される第2の流路と、外側ロッド部材と嵌合コアとの間に形成される第3の流路、とを少なくとも含む
請求項7に記載のブロー成形装置。
【請求項10】
前記エア導入部材が前記プリフォームに挿入されたとき、前記内側ロッド部材の軸方向長さは先端が前記プリフォームの底部近傍に位置する寸法に設定され、前記外側ロッド部材の軸方向長さは前記内側ロッド部材の軸方向長さよりも短く、かつ先端が前記プリフォームの胴部の中間位置に位置する寸法に設定される
請求項9に記載のブロー成形装置。
【請求項11】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー形成部と、を少なくとも備えるブロー成形装置の温度調整用金型であって、
前記温度調整用金型は、
嵌合コアおよび多重管構造のロッド部材を有するエア導入部材を備え、
前記嵌合コアおよび前記多重管構造のロッド部材は、径方向内側から径方向外側に向けて少なくとも3つのエアの流路を前記プリフォーム内に形成するように配置される
温度調整用金型。
【請求項12】
前記プリフォームが収容されるキャビティ型をさらに備える
請求項11に記載の温度調整用金型。
【請求項13】
前記3つのエアの流路は同心状に配置される
請求項11に記載の温度調整用金型。
【請求項14】
前記多重管構造のロッド部材は、中空筒状の内側ロッド部材と、前記内側ロッド部材の外周側に配置される外側ロッド部材とを少なくとも含み、
前記外側ロッド部材の軸方向長さは、前記内側ロッド部材の軸方向長さよりも長い
請求項11に記載の温度調整用金型。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法、温度調整用金型およびブロー成形装置に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
ホットパリソン式のブロー成形で、射出成形工程におけるプリフォームの冷却時間を短縮すると、プリフォームの冷却不足に起因する容器の外観不良や物性低下が生じうる。かかる弊害を抑制するためには、射出成形工程よりも後の工程でプリフォームを冷却することが要求される。
また、透明な容器が製造できるポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂をプリフォームの材料として用いても、射出成形後の高熱のプリフォームを結晶化が促進される温度帯(結晶化温度帯域)で徐冷すると球晶生成による結晶化が生じ、プリフォームに白化(白濁)が生じてしまう。そのため、射出成形後の高熱のプリフォームを冷却するときには、プリフォームを急冷してその内層温度を結晶化温度帯域よりも低下させる必要がある。
しかも、成形サイクルを高速化すると各工程での処理時間は短縮されるので、成形サイクル内での効率的なプリフォームの冷却が強く要望されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ホットパリソン式のブロー成形において成形サイクルを短縮するともに、射出成形されたプリフォームの白化を抑制することを目的とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂製容器の製造方法は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で製造されたプリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、温度調整されたプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。温度調整工程においては、プリフォームをキャビティ型に収容した後、嵌合コアおよび多重管構造のロッド部材を有するエア導入部材をプリフォームに気密可能に当接させて、プリフォーム内に径方向内側から径方向外側に向けて少なくとも3つのエアの流路を形成してプリフォームを冷却する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様によれば、ホットパリソン式のブロー成形において成形サイクルを短縮するともに、射出成形されたプリフォームの白化を抑制できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
図9に示す冷媒流路45を備えるブローキャビティ割型ユニットにおける冷媒の流れを説明する。先ず、冷媒は冷媒源(不図示)で形成されて収容部44の供給口45aに一度に(一括で)供給される(上流側)。供給された冷媒は分流路45bを通り、各ブローキャビティ割型43との接触面に位置する第1の供給部45b1に至る。次いで冷媒は、隣接するブローキャビティ割型43の第2の供給部45c1を介して分配されてキャビティ用冷媒流路45cを流れ、ブローキャビティ割型42を冷やして接触する容器10を冷却する。冷却を終えた冷媒は第2の排出部45c2に到達し、隣接する収容部44の第1の排出部45d1に流入する。第1の排出部45d1を介して各ブローキャビティ割型43からの冷媒が集約路45dに集約される。最後に冷媒は、収容部44の排出口45eを介して機外に一度に排出される(下流側)。上記の冷媒流路45により配管作業等を抑制しつつ、複数のブローキャビティ割型43に冷媒を効率的に供給・排出させて冷却し、容器10を短時間で冷却させることができる。なお、
冷媒流路45は、ブローキャビティ割型43のみに形成させても良い。この場合、配管作業等を考慮し、ブローキャビティ割型43の個数は2以下とするのが望ましい。この場合、
冷媒流路45は、第2の供給部45c1、第2の排出部45c2およびキャビティ用冷媒流路45cで構成される。第2の供給部45c1に冷媒源(不図示)の冷媒が供給され、キャビティ用冷媒流路45cに流れてブローキャビティ割型42を冷やして接触した容器10を冷却し、第2の排出部45c2を介し機外へ排出される。