(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188278
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166234
(22)【出願日】2022-10-17
(62)【分割の表示】P 2021070937の分割
【原出願日】2017-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吐水時のおける導水路内、特に屈曲部での洗浄水の空気の巻き込みを抑制し、強い洗浄力をリム吐水に実現させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器1であって、リム吐水口26のリム通水路はその入口部からリム部18の内部を前方に向かって延びる外側部と、この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、この屈曲部から後方に向かってリム吐水口まで延びる内側部と、を備え、屈曲部の底面の曲率半径は外側部の底面の曲率半径より大きく構成されており、リム吐水口の下流側近傍にオーバーハングが形成された通水路を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって
、
ボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、
を備えたボウル部と、
このボウル部の下方に接続され汚物を排出する排水路と、
上記リム部に設けられて上記ボウル部内に洗浄水を吐水して旋回流を形成するリム吐水
部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記リム吐水部に供給する導水路と、
を有し、
上記リム吐水部は、
上記ボウル部の左右の何れか一方の側の上記リム部に上記導水路から供給された洗浄水
が通水するリム通水路を形成すると共に、
このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口を形成し、
上記リム通水路は、
その入口部から上記リム部の内部を前方に向かって延びる外側部と、
この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、
この屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口まで延びる内側部と、
を備え、前記屈曲部の底面の曲率半径は外側部の底面の曲率半径より大きく構成されて
おり、
上記リム吐水口の下流側近傍にオーバーハングが形成された通水路を備えることを特徴
とする水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄され
て汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便
器として、例えば、特許文献1に記載されているように、ボウル部の側方のリム部におけ
る前後方向の中間領域、或いはそれよりも後方領域の1箇所に後方へ向けて吐水する吐水
口(リム吐水口)が配置されているものが知られている。
このような水洗大便器においては、ボウル部の後方側の導水路から洗浄水が供給される
通水路(リム通水路)が、ボウル部の左右方向の一方側のリム部の内部に形成されており
、このリム通水路は、ボウル部の前端部付近のリム部を経てボウル部の左右方向の他方側
のリム部の吐水口(リム吐水口)までリム部の周方向の形状に沿って形成されている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、吐水口(リム吐水口)がボウル部の側方の
リム部における前方領域に配置されると共に、ボウル部の後方側の洗浄水源から吐水口(
リム吐水口)まで洗浄水管路が前後方向に延びており、洗浄水源から洗浄水管路を経て吐
水口に供給された洗浄水を後方へ向けて吐水するようになっている水洗大便器についても
知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5592617号公報(特開2010-255316号公報)
【特許文献2】特開2000-265525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器では、リム通水
路は、ボウル部の前端部付近のリム部を経てボウル部の左右方向の他方側のリム部の吐水
口までリム部の周方向の形状に沿って形成されていることにより、リム通水路の全長が長
くなるため、その分、リム通水路内全体の容積空間も大きく、通水時のリム通水路内にお
ける洗浄水以外のエア空間も大きくなる。
したがって、リム通水路内全体の容積空間が大きくなる程、リム通水路内を満水にする
までの時間が長くなり、吐水口から所定の流量の洗浄水を供給できるまでに時間がかかる
ため、リム吐水口から吐水されるリム吐水の効率を低下させるおそれがあるという問題が
ある。
また、通水時にリム通水路内の空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じやすく
なるという問題もある。
さらに、リム通水路がボウル部の前端部付近に形成されることにより、便器のボウル部
やリム部の形状等に関する便器設計の自由度を低下させるおそれもあるという問題もある
。
【0006】
同様に、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においても、ボウル部
の後方側の洗浄水源から吐水口(リム吐水口)まで洗浄水管路が前後方向に延びているこ
とにより、洗浄水管路の全長が長くなり、その分、洗浄水管路内全体の容積空間も大きく
なる。
したがって、洗浄水管路内を通過する洗浄水が通水路を満水にするまで時間が長くなり
、所定の流量になるまでに時間がかかるため、吐水口(リム吐水口)から吐水されるリム
吐水の効率を低下させるおそれがあるという問題がある。また、通水時に洗浄水管路内の
空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じやすいという問題や、吐水口(リム吐水
口)がボウル部の側方のリム部における前方領域に配置されることにより、便器のボウル
部やリム部の形状等に関する便器設計の自由度を低下させるおそれもあるという問題もあ
る。
【0007】
Uターンタイプ(吐水口前方配置後方向け吐水)の水洗大便器は、従来の吐水口1つタ
イプ(吐水口後方配置前方向け吐水)の水洗大便器と比して屈曲が大きく、吐水口近傍に
て洗浄水の飛散が大きくなる、という課題がある。この飛散の原因の1つとして、吐水時
のおける導水路内、特に屈曲部での洗浄水の空気の巻き込みが考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、水時のおける導水路内、特に屈
曲部での洗浄水の空気の巻き込みを抑制し、吐水口近傍における洗浄水の飛散を低減し、
結果として強い洗浄力をリム吐水に実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、洗浄水源から供給される洗浄
水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方
に接続され汚物を排出する排水路と、上記リム部に設けられて上記ボウル部内に洗浄水を
吐水して旋回流を形成するリム吐水部と、上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記リム
吐水部に供給する導水路と、を有し、上記リム吐水部は、上記ボウル部の左右の何れか一
方の側の上記リム部に上記導水路から供給された洗浄水が通水するリム通水路を形成する
と共に、このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口を形成し、
上記リム通水路は、その入口部から上記リム部の内部を前方に向かって延びる外側部と、
この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、この屈曲部から後方に向かって上記リ
ム吐水口まで延びる内側部と、を備え、前記屈曲部の底面の曲率半径は外側部の底面の曲
率半径より大きく構成され、上記リム吐水口の下流側近傍にオーバーハングが形成された
通水路を備えることとすることにより、洗浄水の飛散を低減し、結果として強い洗浄力を
保持したリム吐水に実現させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐水時のおける導水路内、特に屈曲部での洗浄水の空気の巻き込みを
抑制することができ、水の飛び散りやリム吐水の圧力損失を抑制することができるという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す斜視図であり、便蓋及び便座を上方位置まで回動させた状態を示す。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器における左右方向の中央断面を左側から見た断面図であり、便蓋及び便座を下方位置まで回動させた状態を示す。
【
図3】
図1に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体部分を示す部分平面図である。
【
図4】
図3に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、リム部の内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿ったリム部の部分拡大断面図である。
【
図7】
図2に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、リム吐水口の下流側近傍の通水路の部分を拡大した部分拡大側面部である。
【
図8】
図7のVIII-VII線に沿った断面図である。
【
図10A】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム吐水口の下流側近傍の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距離(x)とオーバーハング部の高さ寸法(U)との関係を定性的に示した図である。
【
図10B】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム吐水口の下流側近傍の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距離(x)と棚面からオーバーハング部の下端までの最大高さ寸法(L)との関係を定性的に示した図である。
【
図10C】本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム吐水口の下流側近傍の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距離(x)とリム吐水口の下流側の通水路の横幅(W)との関係を定性的に示した図である。
【
図11】
図3のXI-XI線に沿った断面図である。
【
図12】
図3のXII-XII線に沿った断面図である。
【
図13A】本発明の第1実施形態による水洗大便器において、ボウル部の直線部と曲がり部とを緩和曲線で接続した場合におけるリム吐水口からの周方向下流側の距離(x)と曲率(1/ρ)の変化を定性的に示した図である。
【
図13B】
図13Aに示す本発明の第1実施形態による水洗大便器に対する比較例であり、ボウル部の直線部と曲がり部とを直線に正接する曲線で接続した場合におけるリム吐水口からの周方向下流側の距離(x)と曲率(1/ρ)の変化を定性的に示した図である。
【
図14】本発明の第2実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、リム部の内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態による水洗大便器におけるリム吐水口付近の横断面部分(リム吐水口とその下流側の通水路の流路断面部分)を概略的に示す概略断面図である。
【
図16】本発明の第4実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、リム部の内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、
図1~
図13を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説
明する。
まず、
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す斜視図であり、便蓋及び
便座を上方位置まで回動させた状態を示す。また、
図2は、本発明の第1実施形態による
水洗大便器における左右方向の中央断面を左側から見た断面図であり、便蓋及び便座を下
方位置まで回動させた状態を示す。さらに、
図3は、
図1に示す本発明の第1実施形態に
よる水洗大便器の便器本体部分を示す部分平面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器
本体2と、この便器本体2の上面に上下方向に回動可能に配置された便座4と、この便座
4を覆うように上下方向に回動可能に配置された便蓋6と、便器本体2の後方に配置され
た機能部8とを備えている。
また、
図2に示すように、機能部8は、便器本体2の後方上部に配置されて、使用者の
局部を洗浄する衛生洗浄部として機能する衛生洗浄系機能部10と、この衛生洗浄系機能
部10に近接して配置されて、便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部12とを
備えている。
【0014】
つぎに、
図1~
図3に示すように、便器本体2は、ボウル形状の汚物受け面14と、こ
の汚物受け面14の上縁の棚面16から立ち上がるように形成されたリム部18とを備え
たボウル部20を備えている。
また、
図2に示すように、便器本体2は、ボウル部20の下方に入口部22aが接続さ
れて、ボウル部20内の汚物を排出する排水路である排水トラップ管路22を備えている
。
【0015】
つぎに、
図3に示すように、ボウル部20は、前後方向に二等分する左右方向に延びる
中心線C1に対して前方側である前方側領域F1と後方側である後方側領域R1を備えて
おり、このボウル部20の前方側領域F1内の左右の一方の側のリム部18、すなわち、
便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域F1内の右側のリム部18の内部に
は、リム吐水部の一部であるリム通水路24(詳細は後述する)が形成されている。
また、このリム通水路24の下流端には、リム吐水部の一部であるリム吐水口26(詳
細は後述する)が形成されている。
さらに、
図3に示すように、リム通水路24の上流側は、洗浄水源である水道(図示せ
ず)から供給される洗浄水をリム通水路24に供給する導水路である導水管28に接続さ
れている。この導水管28の上流側は、洗浄水源である水道(図示せず)に直結されてお
り、この水道の給水圧力を利用して、導水管28からリム通水路24内に供給された洗浄
水は、リム通水路24内で前方へ導かれ、その後、内側且つ後方側に屈曲し、下流側のリ
ム吐水口26まで導かれるようになっている。
そして、リム吐水口26に導かれた洗浄水は、後方に向けて吐水(リム吐水)され、リ
ム吐水口26の下流側近傍に形成される通水路30(詳細は後述する)を経てボウル部2
0内を旋回することにより、ボウル部20内に旋回流が形成されるようになっている。
なお、リム部18に設けられ洗浄水を吐水してボウル部20内に旋回流を形成する吐水
口は、リム吐水口26のみである。
【0016】
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、リム吐水部であるリム通水路24及びリ
ム吐水口26について、便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域F1内の右
側のリム部18の内部に配置した形態について説明するが、このような形態に限定されず
、リム吐水口を便器本体2の前方から見てボウル部20の前方側領域F1内の左側のリム
部18に配置して後方に向けてリム吐水を行うようにしてもよい。
要するに、リム吐水部であるリム通水路及びリム吐水口ついては、ボウル部20の前方
側領域F1内の左右の何れか一方の側のリム部18に配置して後方に向けてリム吐水を行
うような形態であればよい。
また、本実施形態の水洗大便器1においては、リム吐水部であるリム通水路24及びリ
ム吐水口26は、陶器を加工することで便器本体2に一体に形成されているが、例えば、
樹脂等で便器本体2とは別体として形成し、便器本体2に取り付ける構成としてもよい。
【0017】
さらに、
図2に示すように、ボウル部20の底部には、排水トラップ管路22の入口部
22aに差し向けられるようにジェット吐水口32が形成されている。このジェット吐水
口32による吐水(ジェット吐水)に関しては、給水系機能部12に設けられている貯水
タンク34に貯水された洗浄水が、給水系機能部12の加圧ポンプ36によって加圧され
て、ジェット吐水口32から吐出されるようになっている。
また、ジェット吐水口32から吐出された洗浄水は、排水トラップ管路22の入口部2
2aから、この入口部22aの後方側の上昇管路22b内に流入した後、この上昇管路2
2b内を排水トラップ管路22の頂部22cから下降管路22dに流出するようになって
いる。
【0018】
ここで、衛生洗浄系機能部10及び給水系機能部12のそれぞれの具体的な構造につい
ては、従来のものと同様であるため、詳細な説明については省略するが、衛生洗浄系機能
部10には、ボウル部20の上方の使用者に向けて洗浄水を噴射するノズル装置(図示せ
ず)を含む局部洗浄装置(図示せず)が設けられている。
その他、衛生洗浄系機能部10には、局部洗浄装置(図示せず)に供給される洗浄水を
貯水する貯水部(図示せず)、この貯水部(図示せず)内の洗浄水を適温に温めて温水に
する加熱器(図示せず)、換気ファン(図示せず)、脱臭ファン(図示せず)、温風ファ
ン(図示せず)、及び、これらの機器の作動を制御するコントローラ(図示せず)等が設
けられている。
一方、給水系機能部12の給水路(図示せず)は、その上流側が給水源である水道(図
示せず)に接続されており、貯水タンク(図示せず)の上流側の給水路には、定流量弁(
図示せず)、電磁弁(図示せず)、貯水タンク(図示せず)への給水とリム吐水口26へ
の吐水とを切り替える切替弁(図示せず)等が設けられている。また、給水系機能部12
には、これら以外にも、電磁弁(図示せず)の開閉操作、切替弁(図示せず)の切替操作
、及び、加圧ポンプ(図示せず)の回転数や作動時間等を制御するコントローラ(図示せ
ず)等が設けられている。
【0019】
なお、本実施形態による水洗大便器1においては、リム吐水口26によるリム吐水につ
いて水道の給水圧力を利用して行い、ジェット吐水口32によるジェット吐水について加
圧ポンプ(図示せず)を制御することにより貯水タンク(図示せず)内の洗浄水を供給す
る、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器の形態について説明するが、このような形態
に限られず、他の形態についても適用可能である。すなわち、他の形態として、水道のみ
から直接的に供給される洗浄水について、バルブを切り替えることによってリム吐水口2
6によるリム吐水とジェット吐水口32によるジェット吐水とを切り替えるような形態で
あってもよいし、貯水タンク内の洗浄水について、ポンプのみを切り替えることによって
、リム吐水口26によるリム吐水とジェット吐水口32によるジェット吐水とを切り替え
るような形態であってもよい。
【0020】
つぎに、
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1のリム通水
路24及びリム吐水口26の詳細について説明する。
図4は、
図3に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、
リム部の内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図であり、
図5は、
図4のV-V線に沿ったリム部の部分拡大断面図である。
また、
図6Aは、
図4に示すリム通水路のA断面であり、
図6Bは、
図4に示すリム通
水路のB断面である。さらに、
図6Cは、
図4に示すリム通水路のC断面であり、
図6D
は、
図4に示すリム通水路のD断面である。
図6Eは、
図4に示すリム通水路のE断面で
ある。
【0021】
まず、
図4に示すように、リム通水路24は、導水管28に接続される入口部24aか
らリム部18の内部を前方に向かって延びる外側部24bと、この外側部24bの下流端
から内側に屈曲する屈曲部24cと、この屈曲部24cから後方に向かってリム吐水口2
6まで延びる内側部24dとを備えている。
【0022】
また、
図5及び
図6A~
図6Eに示すように、リム通水路24の外側部24b及び屈曲
部24cの流路断面の最大高さHとし、リム通水路24の内側部24dの流路断面の最大
高さをhとすると、リム通水路24の内側部24dの各流路断面Eの最大高さ寸法h1は
、リム通水路24の外側部24bの各流路断面A~Cの各最大高さ寸法H1~H3及び屈
曲部24cの流路断面Dの最大高さ寸法H4よりも小さくなるように設定されている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、例えば、リム通水路24の内側部24d
の流路断面Eの最大高さ寸法h1と、リム通水路24の外側部24bの下流端(屈曲部2
4cの上流端)の流路断面Dの最大高さ寸法H4との比率(h1:H4)については、1
:2~1:8 に設定されていることが好ましく、1:2~1:5 に設定されていること
が最も好ましい。
これらにより、例えば、本発明とは異なる水洗大便器において、リム通水路内の壁面の
摩擦抵抗等を低減させるために、リム通水路の流路断面がリム通水路の上流端から下流端
までの全域で、ほぼ同一の円形断面若しくは縦横比がほぼ同一の断面によって形成された
リム通水路に比べて、本実施形態の水洗大便器1では、リム吐水部であるリム通水路24
やリム吐水口26に要するリム部18全体の幅等の大きさを効果的に小さく設定すること
ができるようになっている。
したがって、通水時のリム通水路24内における洗浄水以外のエア空間を減らすことが
でき、リム吐水口26によるリム吐水を効率良く行うことができるようになっている。
また、通水時にリム通水路24内の空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じ難
くすることができるようになっている。
さらに、リム通水路24内全体の容積空間を低減させることにより、リム通水路24の
外側部24bから屈曲部24cを経て内側部24dへ屈曲させるリム通水路24の周辺ス
ペースにゆとりを持たせることができるため、リム通水路24内の洗浄水の圧力損失を抑
制することができると共に、ボウル部20のリム部18の形状等に関する便器設計の自由
度を確保することができるようになっている。
リム通水路24は、その入口部から上記リム部の内部を前方に向かって延びる外側部2
4bと、この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部24cと、この屈曲部から後方に
向かって上記リム吐水口まで延びる内側部24dと、を備えている。図示しないが、外側
部24bの底面と屈曲部24cの底面は、その高さが両端から中央部近傍にいくに従って
低くなるように下に凸形状となっていてもよい。この場合外側部24bの底面の曲率半径
と屈曲部24cの底面の曲率半径とでは、前記屈曲部の底面の曲率半径が外側部の底面の
曲率半径より大きく構成されようになっている。このように「屈曲部の底面の曲率半径」
が 「外側部の底面の曲率半径」より大きく構成されることにより、空気の取り残しによ
る巻き込みを防止している。結果として、吐水口近傍における洗浄水の飛散や異音を低減
することができ、また強い洗浄力を保持したリム吐水に実現させることができる。
【0023】
つぎに、
図5に示すように、リム通水路24の外側部24bは、リム部18の外周側の
外側壁部38と、この外側壁部38 の下端から内側に一体に形成される下側壁部40と
、外側壁部38と水平方向に対向すると共にその下端が下側壁部40の上端に接着される
内側壁部42と、この内側壁部42の上端に一体に形成されると共に外側壁部38の上端
に接着される上側壁部44とを備えている。
また、リム通水路24の外側部24bの下側壁部40の上端面と内側壁部42の下端面
との接着面S1は、略 水平面を形成しており、外側壁部38の上端面と上側壁部44と
の接着面S2は、略 水平面に対して傾斜した傾斜面を形成している。
なお、ここでいう略水平面とは、完全な水平面のみならず、下側壁部40の上端面(接
着面)と内側壁部42の下端面(接着面)とが互いに水平方向にずれることのできる、お
およそ水平な面をも含むものである。
これにより、例えば、本実施形態の水洗大便器1の製造時において、リム通水路24の
下側壁部40の上端の接着面S1に内側壁部42の下端の接着面S1を接着させると同時
に、リム通水路24の外側壁部38の上端の接着面S2に上側壁部44の接着面S2を接
着させる際に、水平面を形成する下側壁部40の接着面S1と内側壁部42の接着面S1
とが、製造誤差等により互いに水平方向にずれてしまったとしても、水平面に対して互い
に傾斜した傾斜面を形成する外側壁部38の接着面S1と上側壁部44の接着面S1とが
、先行して確実に接触することができるようになっている。
したがって、リム通水路24における外側部24bから内側部24dの流路断面A~E
が、下側壁部40の接着面S1と内側壁部42の接着面S1の互いのずれにより完全に潰
されてしまうことを防ぐことができるため、リム通水路24の通水領域を全域に亘って確
保することができるようになっている。
【0024】
つぎに、
図4及び
図7~
図10Cを参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器
1のリム吐水口26の下流側近傍に形成される通水路30の詳細について説明する。
図7は、
図2に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器において、リム吐水口の下
流側近傍の通水路の部分を拡大した部分拡大側面部であり、
図8は、
図7のVIII-V
II線に沿った断面図であり、
図9は、
図7のXI-XI線に沿った断面図である。
また、
図10Aは、本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム吐水口の下流側近傍
の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距離(x)とオーバーハング部の高さ寸
法(U)との関係を定性的に示した図であり、
図10Bは、本発明の第1実施形態による
水洗大便器のリム吐水口の下流側近傍の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距
離(x)と棚面からオーバーハング部の下端までの最大高さ寸法(L)との関係を定性的
に示した図であり、
図10Cは、本発明の第1実施形態による水洗大便器のリム吐水口の
下流側近傍の通水路におけるリム吐水口から周方向下流側の距離(x)とリム吐水口の下
流側の通水路の横幅(W)との関係を定性的に示した図である。
【0025】
まず、
図7~
図9に示すように、リム吐水口26の下流端からボウル部20の曲がり部
50(詳細は後述する)、即ち、リム吐水口26の下流側近傍 に形成される通水路30
は、リム部18の内周面46、このリム部18の内周面46の下方側に形成される棚面1
6、及び、内周面46の上方側に形成されるオーバーハング部48により流路断面Gを形
成している。
なお、リム部18の全周の中で、通水路30においてのみオーバーハング形状が形成さ
れ、通水路30を除くリム部18の内周面は、鉛直方向に切った断面において上下方向に
直線状に延びるように形成されオーバーハング部48のようなオーバーハング形状を備え
ない。
また、
図4及び
図7~
図10Cに示すように、通水路30は、リム吐水口26から下流
側に向かって流路断面Gの断面積A0がほぼ一定になるように、流路断面Gは、その最大
高さ寸法Lが下流側程大きく設定されると共に、その横幅Wが下流側程小さく設定されて
いる。
すなわち、例えば、
図9に示す通水路30のオーバーハング部48の上下方向の最小厚
みU2については、流路断面Gの断面積A0がほぼ一定になるように、
図8に示す通水路
30のオーバーハング部48の上下方向の最小厚みU1よりも小さくなっている。
また、
図9に示す流路断面G2の通水路30の上下方向の最大高さ寸法L2については
、流路断面Gの断面積A0がほぼ一定になるように、
図8に示す通水路30の流路断面G
1の上下方向の最大高さ寸法L1よりも大きくなっている。
ここで、「断面積A0がほぼ一定」とは、完全な一定のみならず、リム吐水口26から
吐水された後のリム吐水口26の下流側の通水路30の流路断面Gを通過するリム吐水が
、乱れが抑制されて通水路30内に沿って下流側に流れることができ、下流側のボウル部
20内で安定した旋回流を効果的に形成することができる、おおよそ一定も含むものであ
る。
さらに、
図9に示す流路断面G2の通水路30の横幅W2については、流路断面Gの断
面積A0が一定になるように、
図8に示す通水路30の流路断面G1の通水路30の横幅
W1よりも小さくなっている。
さらに、
図8及び
図9に示すように、通水路30の流路断面Gを形成する棚面16は、
その高さ位置P1がリム吐水口26から下流側に向かってほぼ一定の高さ位置になるよう
に形成されている。
ここで、「ほぼ一定の高さ位置」とは、完全な一定のみならず、リム吐水口26から吐
水された後のリム吐水口26の下流側の通水路30の流路断面Gを通過するリム吐水が、
乱れることを抑制されて通水路30内に沿って下流側に流れることができ、下流側のボウ
ル部20内で安定した旋回流を効果的に形成することができる、おおよそ一定も含むもの
である。
【0026】
これらにより、リム吐水口26から吐水された後の通水路30の流路断面Gを通過する
リム吐水は、乱れることが抑制されて 通水路30内に沿って下流側に流れることができ
、下流側のボウル部20内で安定した旋回流を効果的に形成することができるようになっ
ている。
さらに、リム吐水口26から吐水された洗浄水について、その下流側の通水路30に沿
わせて下流側に安定した流れを形成することにより、洗浄水の飛び散りを防ぐこともでき
るため、ボウル部20の視認性や清掃性を効果的に高めることができるようになっている
。
【0027】
なお、
図8及び
図9に示すように、通水路30の流路断面Gにおけるオーバーハング部
48の最小高さ寸法であるオーバーハング部48の上下方向の最小厚みUと、棚面16か
らオーバーハング部48の下端まで最大高さ寸法である通水路30の上下方向の最大高さ
寸法Lとの比率(U:L)は、1:6~6:1 に設定されていることが好ましく、1:
3~3:1 に設定されていることが最も好ましい。
【0028】
また、
図3に示すように、ボウル部20内の右後方側の領域で且つ通水路30の下流側
に形成されるリム部18の内周壁は、リム吐水口26から周方向下流側に向かう距離(x
)に応じて曲率(1/ρ)が小から大に変化する(言い換えると、曲率半径ρが大から小
に変化する)曲がり部50を形成している。すなわち、この曲がり部50は、
図3に示す
平面視で曲率(1/ρ)が小から大に一定の比率で変化する(言い換えると、曲率半径ρ
が大から小に一定の割合で変化する)クロソイド曲線等の緩和曲線52によって形成され
ている。
同様に、
図3に示すように、ボウル部20内の前方側の領域のリム部18の内周壁につ
いても、リム吐水口26から周方向下流側に向かう距離(x)に応じてリム部18の左後
方側から前方に向かって曲率(1/ρ)が小から大に変化する(言い換えると、曲率半径
ρが大から小に変化する)曲がり部54を形成している。この曲がり部54は、
図3に示
す平面視で曲率(1/ρ)が小から大に一定の比率で変化する(言い換えると、曲率半径
ρが大から小に一定の比率で変化する)クロソイド曲線等の緩和曲線56によって形成さ
れている。
これらにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水が、まず、曲がり部50 に沿っ
て旋回する際に、洗浄水に対して急激な遠心力の変化が発生することを効果的に抑制する
ことができ、ボウル部20内の洗浄効率を向上させることができるようになっている。
さらに、曲がり部50 に沿って旋回した洗浄水は、リム部18の内周壁に沿ってボウ
ル部20内の後方側領域を通過して周方向下流側に旋回した後、曲がり部54に沿ってボ
ウル部20内の前方側領域を旋回するようになっているが、この曲がり部54を旋回する
際に、洗浄水に対して急激な遠心力の変化が発生することを効果的に抑制することができ
、ボウル部20内の洗浄効率を向上させることができるようになっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、リム部18の内周壁が形成する各曲がり
部50,54のそれぞれの緩和曲線52,56について、曲率が一定の比率で変化するク
ロソイド曲線を採用した例について説明するが、緩和曲線としては、クロソイド曲線以外
の緩和曲線であるサイン半波長低減曲線等を採用してもよい。
【0029】
つぎに、
図3及び
図11~
図13Bを参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便
器1のボウル部20における平面視で緩和曲線52,56によって形成された曲がり部5
0,54の詳細について説明する。
ここで、
図11は、
図3のXI-XI線に沿った断面図であり、
図12は、
図3のXI
I-XII線に沿った断面図である。
また、
図13Aは、本発明の第1実施形態による水洗大便器において、ボウル部の直線
部と曲がり部とを緩和曲線で接続した場合におけるリム吐水口からの周方向下流側の距離
(x)と曲率(1/ρ)の変化を定性的に示した図であり、
図13Bは、
図13Aに示す
本発明の第1実施形態による水洗大便器に対する比較例であり、ボウル部の直線部と曲が
り部とを直線に正接する曲線で接続した場合におけるリム吐水口からの周方向下流側の距
離(x)と曲率(1/ρ)の変化を定性的に示した図である。
【0030】
まず、
図3、
図11及び
図12に示すように、ボウル部20は、各緩和曲線52,56
によって形成された曲がり部50,54に棚面16を形成し、この棚面16の横幅W3は
、ボウル部20の周方向に沿ってほぼ一定である。
なお、ここでいう「ほぼ一定」とは、完全な一定のみならず、リム通水路24のリム吐
水口26から吐水された洗浄水が曲がり部50,54の棚面16に沿って旋回する際に、
洗浄水に対して急激な遠心力の変化が発生することをより効果的に抑制することができる
、おおよそ一定も含むものである。
また、
図11及び
図12に示すように、ボウル部20の各緩和曲線52,56によって
形成された曲がり部50,54のそれぞれの棚面16は、水平面に対してそれぞれ傾斜角
度α1,α2で形成されている。
ここで、傾斜角度α1の大きさについては、0°~15° に設定されることが好まし
く、2°~8° に設定されることが最も好ましい。
また、傾斜角度α2の大きさについては、傾斜角度α1の大きさよりも大きく 設定さ
れており、3°~60° に設定されることが好ましく、5°~30° に設定されること
が最も好ましい。
これらにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水が曲がり部50,54の棚面16
に沿って旋回する際に、洗浄水に対して急激な遠心力の変化が発生することをより効果的
に抑制することができるため、ボウル部20内の洗浄効率をより良く向上させることがで
きるようになっている。
【0031】
また、
図13Aに示すように、本実施形態の水洗大便器1において、ボウル部20のほ
ぼ直線状である直線部と曲がり部とを緩和曲線で接続した場合には、リム吐水口26から
の周方向下流側の距離xが0からx1(例えば、x1=50mm)までの区間では、曲率
1/ρが一定のa(例えば、ρ1=800mm、a=1/ρ1=0.00125[1/m
m])となり、ほぼ直線状である直線部を形成する区間となる。
つぎに、
図13Aに示すように、距離xがx1からx2(例えば、x2=200mm)
までの区間では、曲率1/ρがa~b(例えば、ρ1=800mm、a=1/ρ1=0.
00125、ρ2=150mm、b=1/ρ2=0.00667[1/mm])まで一定
の比率で変化する緩和曲線によって曲がり部を形成する区間(緩和曲線区間)となる。
また、
図13Aに示すように、距離xがx2からx3(例えば、x3=380mm)ま
での区間では、曲率1/ρ2が一定のb(例えば、ρ2=150mm、b=1/ρ2=0
.00667[1/mm])となり、曲率がほぼ一定の曲がり部を形成する区間となる。
【0032】
一方、
図13Bに示すように、ボウル部の直線部と曲がり部とを直線に正接する曲線で
接続した場合の比較例では、距離xがx4となる前後において、曲率1/ρが0(曲率半
径ρ=∞)からc(曲率半径ρ=ρ3)に急激に変化することにより、リム吐水口から吐
水された洗浄水が曲がり部の棚面に沿って旋回する際に、洗浄水に対して急激な遠心力の
変化が本実施形態の水洗大便器1に比べて大きく発生することになり、ボウル部内の洗浄
効率が低下することになる。
【0033】
つぎに、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1における作用について説明
する。
まず、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部20のリム部18
に設けられてボウル部20内に洗浄水を吐水して旋回流を形成するリム吐水部が、ボウル
部20の前方側領域F1内の右側のリム部18の内部に導水管28から供給された洗浄水
が通水するリム通水路24を形成すると共に、このリム通水路24の下流端に洗浄水を後
方に向けて吐水するリム吐水口26を形成し、リム通水路24 が、その入口部24aか
らリム部18の内部を前方に向かって延びる外側部24bと、この外側部24bの下流端
から内側に屈曲する屈曲部24cと、この屈曲部24cから後方に向かってリム吐水口2
6まで延びる内側部24dを備えていることにより、リム通水路24内全体の容積空間を
低減させることができる。
したがって、導水管28からリム通水路24内に洗浄水が供給された際に、リム通水路
24内の容積空間を通水する洗浄水で速やかに満たすことができる。よって、通水時のリ
ム通水路24内における洗浄水以外のエア空間を減らすことができ、リム吐水口26によ
るリム吐水を効率良く行うことができる。
また、通水時にリム通水路24内の空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じ難
くすることができる。
さらに、リム通水路がボウル部20の前端部付近のリム部18を経てボウル部20の左
右方向の他方側のリム部18の吐水口までリム部の周方向の形状に沿って形成されている
場合に比べ、ボウル部20の前端部付近の リム部18の形状等に関する便器設計の自由
度を確保することができる。
【0034】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路24の内側部24dの流
路断面Eの高さ寸法h1が、リム通水路24の外側部24b及び屈曲部24cの流路断面
A~Dの高さ寸法H1~H4よりも小さくなるように設定されているため、例えば、リム
通水路内の壁面の摩擦抵抗等を低減させるために、リム通水路の流路断面がリム通水路の
上流端から下流端までの全域で、ほぼ同一の円形断面若しくは縦横比がほぼ同一の断面に
よって形成されたリム通水路に比べて、リム通水路24やリム吐水口26に要するリム部
18の全体の幅等の大きさを効果的に小さく設定することができる。
したがって、通水時のリム通水路24内における洗浄水以外のエア空間を減らすことが
でき、リム吐水口26によるリム吐水をより効率良く行うことができる。
また、通水時にリム通水路24内の空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じ難
くすることができる。
さらに、リム通水路がボウル部20の前端部付近のリム部18を経てボウル部20の左
右方向の他方側のリム部18の吐水口までリム部の周方向の形状に沿って形成されている
場合に比べ、ボウル部20の前端部付近の リム部18の形状等に関する便器設計の自由
度を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路24の内側部24dの流路
断面Eの高さ寸法hと、リム通水路24の外側部24bの下流端(屈曲部24cの上流端
)における高さ寸法Hとの比率(h:H)が、1:2~1:8 に設定されているため、
例えば、リム通水路内の壁面の摩擦抵抗等を低減させるために、リム通水路の流路断面が
リム通水路の上流端から下流端までの全域で、ほぼ同一の円形断面若しくは縦横比がほぼ
同一の断面によって形成されたリム通水路に比べて、リム通水路24やリム吐水口26に
要するリム部18の全体の幅等の大きさをより効果的に小さく設定することができる。
したがって、通水時のリム通水路24内における洗浄水以外のエア空間を減らすことが
でき、リム吐水口26によるリム吐水をより効率良く行うことができる。
また、通水時にリム通水路24内の空気を巻き込むことに起因する異音の発生を生じ難
くすることができる。
さらに、リム通水路がボウル部20の前端部付近のリム部18を経てボウル部20の左
右方向の他方側のリム部18の吐水口までリム部の周方向の形状に沿って形成されている
場合に比べ、リム通水路24内全体の容積空間を低減させることにより、リム通水路24
の外側部24bから屈曲部24cを経て内側部24dへ屈曲させるリム通水路24の周辺
スペースにゆとりを持たせることができるため、リム通水路24内の洗浄水の圧力損失を
抑制することができると共に、ボウル部20の前端部付近の リム部18の形状等に関す
る便器設計の自由度を確保することができる。
【0036】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、リム通水路24の外側部24bが、
リム部18の外周側の外側壁部38と、この外側壁部38の下端から内側に一体に形成さ
れる下側壁部40と、外側壁部38と水平方向に対向すると共にその下端が下側壁部40
の上端に接着される内側壁部42と、この内側壁部42の上端に一体に形成されると共に
外側壁部38の上端に接着される上側壁部44を備えており、下側壁部40と内側壁部4
2との接着面S1が略 水平面を形成しており、外側壁部38と上側壁部44との接着面
S2が略 水平面に対して傾斜した傾斜面を形成している。
したがって、例えば、便器製造時において、リム通水路24の下側壁部40の上端の接
着面S1に内側壁部42の下端の接着面S1を接着させると同時に、リム通水路24の外
側壁部38の上端の接着面S2に上側壁部44の接着面S2を接着させる際に、略 水平
面を形成する下側壁部40の接着面S1と内側壁部42の接着面S1とが、製造誤差等に
より互いに水平方向にずれようとしたときに、略 水平面に対して互いに傾斜した傾斜面
を形成する外側壁部38の接着面S1と上側壁部44の接着面S1とが先行して確実に接
触することができる。
したがって、リム通水路24における外側部24bから内側部24dまでの流路断面A
~Eが、下側壁部40の接着面S1と内側壁部42の接着面S1の互いのずれにより完全
に潰されてしまうことを防ぐことができるため、リム通水路24の通水領域を全域に亘っ
て確保することができる。
【0037】
つぎに、
図14を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器について説明する
。
図14は、本発明の第2実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、リム部の
内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図である。
ここで、
図14に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器の便器本体部分において
、
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器1の便器本体部分と同一部分につい
ては同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0038】
まず、
図4に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1においては、リム
通水路24のリム吐水口26の下流側近傍に形成される通水路30の上方にオーバーハン
グ部48を形成しており、リム通水路24の内側部24dを形成するリム部18の内周側
の壁部58は、その下流側の通水路30を覆うオーバーハング部48の領域が小さくなる
ように、その厚みt1がリム通水路24の内側部24dの上流側からリム吐水口26に向
かってほぼ一定の厚みとなっている。
これに対し、
図14に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、
本発明の第1実施形態による水洗大便器1に比べて、リム通水路24の内側部24dを形
成するリム部118の内周側の壁部158は、その下流側の通水路130を覆うオーバー
ハング部148の領域が小さくなるように、その厚みt101がリム通水路24の内側部
24dの上流側からリム吐水口26に向かって狭まるように形成されている点で、本発明
の第1実施形態による水洗大便器1のリム部18の内周側の壁部58と異なった構造にな
っている。
【0039】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、リム通水路24の内
側部24dを形成するリム部118の内周側の壁部158について、その下流側の通水路
130を覆うオーバーハング部148の領域が小さくなるように、その厚みt101がリ
ム通水路24の内側部24dの上流側からリム吐水口26に向かって狭まるように形成さ
れていることにより、リム通水路24の外側部24bから屈曲部24cを経て内側部24
dへ屈曲させるリム通水路24の周辺スペースにゆとりを持たせることができるため、リ
ム通水路24内の洗浄水の圧力損失を抑制することができると共に、リム吐水部であるリ
ム通水路24やリム吐水口26の形状等に関する便器設計の自由度を確保することができ
る。
また、リム吐水口26から吐水されたリム吐水がオーバーハング部148に接触するこ
とによる水の飛び散りやリム吐水の圧力損失を抑制することができる。
【0040】
つぎに、
図15を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器について説明する
。
図15は、本発明の第3実施形態による水洗大便器におけるリム吐水口付近の横断面部
分(リム吐水口とその下流側の通水路の流路断面部分)を概略的に示す概略断面図である
。
ここで、
図15に示す本発明の第3実施形態による水洗大便器の便器本体部分において
は、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の便器本体部分と同一部分については同一
の符号を付し、これらの説明については省略する。
なお、
図15においては、本発明の第3実施形態による水洗大便器200に対する比較
例として、本発明の第1実施形態による水洗大便器1のリム吐水口26及びオーバーハン
グ部48の形状について鎖線で示している。
【0041】
図15に示すように、本発明の第3実施形態による水洗大便器200においては、リム
吐水口226の開口断面E200が三角形状に形成されており、この三角形状のリム吐水
口226のオーバーハング部248側の一辺である斜辺226aがオーバーハング部24
8の一部を形成している。
これにより、本発明の第3実施形態による水洗大便器200のリム吐水口226におい
ては、例えば、
図15に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器1における開口断面
E1が矩形形状に形成され且つ本発明の第3実施形態による水洗大便器200の三角形状
のリム吐水口226の開口断面E200の最大幅とほぼ同一幅であるリム吐水口26に比
べて、本発明の第3実施形態による水洗大便器200のリム吐水口226の下流側の通水
路230の上方のオーバーハング部248の領域について、本発明の第1実施形態による
水洗大便器1のリム吐水口26の下流側の通水路30の上方のオーバーハング部48の領
域よりも小さくすることができるようになっている。
【0042】
上述した本発明の第3実施形態による水洗大便器200によれば、リム吐水口226の
開口断面E200が三角形状に形成されていることにより、リム吐水口226の下流側の
通水路230の上方のオーバーハング部248の領域を小さくすることができると共に、
リム通水路24の外側部24bから屈曲部24cを経て内側部24dへ屈曲させるリム通
水路24の周辺スペースにゆとりを持たせることができる。
また、リム吐水口226の下流側の通水路230の上方のオーバーハング部248の領
域を小さくすることにより、リム吐水口226から吐水されたリム吐水がオーバーハング
部248に接触することによる水の飛び散りやリム吐水の圧力損失を抑制することができ
る。
【0043】
つぎに、
図16を参照して、本発明の第4実施形態による水洗大便器について説明する
。
図16は、本発明の第4実施形態による水洗大便器の便器本体部分において、リム部の
内部に形成されるリム通水路の部分を拡大した部分拡大平面図である。
ここで、
図16に示す本発明の第4実施形態による水洗大便器の便器本体部分において
、
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器1の便器本体部分と同一部分につい
ては同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0044】
図16に示すように、本発明の第4実施形態による水洗大便器300では、リム通水路
24の外側部24b内において、その外周面から内側に部分的に突出したガイド壁部36
0が形成されている。
このガイド壁部360は、リム通水路24の入口部24aの前方に離間して且つこの入
口部24aの流路断面と前後方向に対向するように形成された後壁部360aと、この後
壁部360aの内側端部からリム通水路24の外側部24b内の外側壁面362に向かっ
て形成された側壁部360bとを備えている。
導水管28からリム通水路24の入口部24aを経て外側部24b内に供給された洗浄
水は、その前方のガイド壁部360の後壁 部360aの壁面に衝突することにより、ガ
イド壁部360の後壁部360aの周辺領域R300にある程度の量の洗浄水が一旦溜め
られた後、ガイド壁部360の側壁部360bの壁面とリム通水路24の外側部24b内
の内側壁面364 とによって狭められた流路を通過する流れ(縮流)により、勢いが高
めた状態で下流側に案内されるようになっている点で、本発明の第1実施形態による水洗
大便器1とは異なっている。
【0045】
上述した本発明の第4 実施形態による水洗大便器300によれば、ガイド壁部360
により、通水時のリム通水路24の外側部24b内における洗浄水以外のエア空間を減ら
すことができるため、リム通水路24内全体の容積空間を低減させることができ、リム吐
水口26によるリム吐水を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
4 便座
6 便蓋
8 機能部
10 衛生洗浄系機能部
12 給水系機能部
14 汚物受け面
16 棚面
18 リム部
20 ボウル部
22 排水トラップ管路(排水路)
22a 入口部
22b 上昇管路
22c 頂部
22d 下降管路
24 リム通水路(リム吐水部)
24a リム通水路の入口部
24b リム通水路の外側部
24c リム通水路の屈曲部
24d リム通水路の内側部
26 リム吐水口(リム吐水部)
28 導水管(導水路)
30 リム吐水口の下流側近傍の通水路
32 ジェット吐水口
34 貯水タンク
36 加圧ポンプ
38 リム通水路の外側部の外側壁部
40 リム通水路の外側部の下側壁部
42 リム通水路の外側部の内側壁部
44 リム通水路の外側部の上側壁部
46 リム部の内周面
48 オーバーハング部
50 曲がり部
52 緩和曲線
54 曲がり部
56 緩和曲線
58 リム通水路の内側部におけるリム部の内周側の壁部
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
118 リム部
148 オーバーハング部
158 リム通水路の内側部におけるリム部の内周側の壁部
200 本発明の第3実施形態による水洗大便器
218 リム部
226 リム吐水口
226a リム吐水口の斜辺
248 オーバーハング部
300 本発明の第4実施形態による水洗大便器
360 ガイド壁部
360a ガイド壁部の後壁部
360c ガイド壁部の側壁部
362 リム通水路の外側部内の外側壁面
364 リム通水路の外側部内の内側壁面
A リム通水路の外側部の流路断面
A0 リム吐水口の下流側近傍の通水路の流路断面の断面積
B リム通水路の外側部の流路断面
C リム通水路の外側部の流路断面
C1 ボウル部の前後方向に二等分する左右方向に延びる中心線
D リム通水路の屈曲部の流路断面
E リム通水路の内側部の流路断面
E1 リム吐水口の開口断面
E200 リム吐水口の開口断面
F1 ボウル部の前方側領域
G リム吐水口の下流側近傍の通水路の流路断面
H リム通水路の外側部及び屈曲部の流路断面の最大高さ寸法
H1 リム通水路の外側部の流路断面Aの最大高さ寸法
H2 リム通水路の外側部の流路断面Bの最大高さ寸法
H3 リム通水路の外側部の流路断面Cの最大高さ寸法
H4 リム通水路の屈曲部の流路断面Dの最大高さ寸法
h リム通水路の内側部の流路断面の最大高さ寸法
h1 リム通水路の内側部の流路断面Eの最大高さ寸法
L リム吐水口の下流側近傍の通水路の最大高さ寸法(通水路の棚面からオ
ーバーハング部の下端までの最大高さ寸法)
L1 リム吐水口の下流側近傍の通水路の最大高さ寸法(通水路の棚面からオ
ーバーハング部の下端までの最大高さ寸法)
L2 リム吐水口の下流側近傍の通水路の最大高さ寸法(通水路の棚面からオ
ーバーハング部の下端までの最大高さ寸法)
P1 リム吐水口の下流側近傍の通水路の棚面の高さ位置
R1 ボウル部の後方側領域
R300 ガイド壁部の後壁部の周辺領域
S1 リム通水路の外側部の下側壁部の上端面と内側壁部の下端面との接着面
S2 リム通水路の外側部の外側壁部の上端面と上側壁部との接着面
t1 リム通水路の内側部におけるリム部の内周側の壁部の厚み
t101 リム通水路の内側部におけるリム部の内周側の壁部の厚み
U オーバーハング部の上下方向の最小厚み(オーバーハング部の最小高さ
寸法)
U1 オーバーハング部の上下方向の最小厚み(オーバーハング部の最小高さ
寸法)
U2 オーバーハング部の上下方向の最小厚み(オーバーハング部の最小高さ
寸法)
W リム吐水口の下流側近傍の通水路の横幅
W1 リム吐水口の下流側近傍の通水路の横幅
W2 リム吐水口の下流側近傍の通水路の横幅
W3 棚面の横幅
x リム吐水口からの周方向下流側の距離
x1 リム吐水口からの周方向下流側の距離
x2 リム吐水口からの周方向下流側の距離
x3 リム吐水口からの周方向下流側の距離
α1 棚面の傾斜角度
α2 棚面の傾斜角度
ρ 緩和曲線の曲率半径
ρ1 緩和曲線の曲率半径
ρ2 緩和曲線の曲率半径
ρ3 曲率半径
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、
を備えたボウル部と、
このボウル部の下方に接続され汚物を排出する排水路と、
上記リム部に設けられて上記ボウル部内に洗浄水を吐水して旋回流を形成するリム吐水部と、
上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記リム吐水部に供給する導水路と、
を有し、
上記リム吐水部は、
上記ボウル部の左右の何れか一方の側の上記リム部に上記導水路から供給された洗浄水が通水するリム通水路を形成すると共に、
このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口を形成し、
上記リム通水路は、
その入口部から上記リム部の内部を前方に向かって延びる外側部と、
この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、
この屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口まで延びる内側部と、
を備え、前記外側部の底面と前記屈曲部の底面は両端から中央部に向かって低くなっており、前記屈曲部の底面の曲率半径は外側部の底面の曲率半径より大きく構成されており、
上記リム吐水口の下流側近傍にオーバーハングが形成された通水路を備えることを特徴
とする水洗大便器。
【請求項2】
前記屈曲部の底面の長さは前記外側部の底面の長さより長く構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の水洗大便器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方に接続され汚物を排出する排水路と、上記リム部に設けられて上記ボウル部内に洗浄水を吐水して旋回流を形成するリム吐水部と、上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記リム吐水部に供給する導水路と、を有し、上記リム吐水部は、上記ボウル部の左右の何れか一方の側の上記リム部に上記導水路から供給された洗浄水が通水するリム通水路を形成すると共に、このリム通水路の下流端に洗浄水を後方に向けて吐水するリム吐水口を形成し、上記リム通水路は、その入口部から上記リム部の内部を前方に向かって延びる外側部と、この外側部の下流端から内側に屈曲する屈曲部と、この屈曲部から後方に向かって上記リム吐水口まで延びる内側部と、を備え、面の前記外側部の底面と前記屈曲部の底面は両端から中央部に向かって低くなっており、前記屈曲部の底曲率半径は外側部の底面の曲率半径より大きく構成され、上記リム吐水口の下流側近傍にオーバーハングが形成された通水路を備えることとすることにより、洗浄水の飛散を低減し、結果として強い洗浄力を保持したリム吐水に実現させることができる。
本発明において、好ましくは、前記屈曲部の底面の長さは前記外側部の底面の長さより長く構成されているため、洗浄水の飛散を低減し、結果として強い洗浄力を保持したリム吐水に実現させることができる。