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特開2022-188307特徴量抽出装置、状態推定装置、特徴量抽出方法、状態推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188307
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】特徴量抽出装置、状態推定装置、特徴量抽出方法、状態推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20221213BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221213BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/11 200
A61B5/02 310A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170234
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2019172841の分割
【原出願日】2019-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中込 浩一
(72)【発明者】
【氏名】前野 泰士
(72)【発明者】
【氏名】山谷 崇史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 光康
(72)【発明者】
【氏名】松永 和久
(57)【要約】
【課題】対象の状態を推定するのに適した生体信号の特徴量を抽出し、また、そのように抽出された特徴量に基づいて対象の状態を精度良く推定する。
【解決手段】特徴量抽出装置は、対象の生体信号を取得する生体信号取得部110と、生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する時間窓設定部120と、複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する特徴量抽出部130と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生体信号を取得する取得手段と、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定手段と、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出手段と、
を備える特徴量抽出装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記複数の抽出用時間窓として、互いに同じ時間長の複数の時間窓を、時間軸上の互いに異なる位置にさらに設定する、
請求項1に記載の特徴量抽出装置。
【請求項3】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに間隔をあけるように設定される、
請求項1又は2に記載の特徴量抽出装置。
【請求項4】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに部分的に重なるように設定される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項5】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに重複せずに、かつ、間隔をあけずに互いに連続するように設定される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項6】
前記対象の生体信号は脈波及び体動である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項7】
前記特徴量は、前記対象としての人間の前記脈波から得られる心拍間隔の周波数に基づく周波数系特徴量、前記心拍間隔の時系列データから得られる時間系特徴量、前記人間の前記体動の時系列データから得られる時間系特徴量、前記心拍間隔に含まれる呼吸性の変動成分に基づく特徴量である呼吸系特徴量の少なくとも1つである、
請求項6に記載の特徴量抽出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置と、
前記特徴量抽出装置により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定手段と、
を備える状態推定装置。
【請求項9】
対象の生体信号を取得する取得ステップと、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップと、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップと、
を備える特徴量抽出方法。
【請求項10】
請求項9に記載された特徴量抽出方法により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を備える状態推定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
対象の生体信号を取得する取得ステップ、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップ、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
請求項11に記載されたプログラムを実行させることにより抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴量抽出装置、状態推定装置、特徴量抽出方法、状態推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象の状態を推定する装置として、例えば特許文献1に開示された装置が知られている。この従来の装置は、人の睡眠状態を推定するように構成されており、人の胸部に装着される、圧電素子から成るセンサを備えている。また、従来の装置では、このセンサにより検出された人の呼吸波形データにおける所定の判定単位時間(以下「エポック」という)が設定され、このエポックごとに、呼吸波形データのピーク-ピーク間の差分などの複数の特徴量が抽出されるとともに、抽出された特徴量を用いて、人の睡眠状態が「覚醒」「浅眠」及び「深眠」の三段階の何れであるかが、推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の装置では、所定のエポックごとに複数の特徴量を抽出するので、対象(人)の睡眠状態といった対象の状態の推定に適した特徴量を抽出できず、ひいては、人の睡眠状態を精度良く推定することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象の状態を推定するのに適した生体信号の特徴量を抽出することができる特徴量抽出装置、特徴量抽出方法及びプログラムを提供することを第1の目的とし、そのように抽出された特徴量に基づいて対象の状態を精度良く推定することができる状態推定装置、状態推定方法及びプログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の第1の目的を達成するため、本発明に係る特徴量抽出装置は、
対象の生体信号を取得する取得手段と、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定手段と、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出手段と、
を備える。
【0007】
また、上記の第2の目的を達成するため、本発明に係る状態推定装置は、
上記の特徴量抽出装置と、
前記特徴量抽出装置により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象の状態を推定するのに適した生体信号の特徴量を抽出でき、また、そのように抽出された特徴量に基づいて対象の状態を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る状態推定装置の機械的構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る状態推定装置の機能的構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る脈波センサの検出波形を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る睡眠状態推定処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態に係る生体信号取得処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る推定された心拍間隔の一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る特徴量抽出処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係る心拍間隔のリサンプリングの一例を示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係る周波数系特徴量抽出処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態に係るデータ列の抽出に利用される抽出用時間窓を説明する図である。
図11】本発明の実施の形態に係る呼吸系特徴量抽出処理を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施の形態に係る時間系特徴量抽出処理を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施の形態に係る推定部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態にかかる特徴量抽出装置、状態推定装置、特徴量抽出方法、状態推定方法及びプログラムについて、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、対象の状態として被験者である人間の睡眠状態を推定する例について説明する。
【0012】
本実施の形態にかかる状態推定装置10は、物理的には、図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、ユーザインタフェース13と、通信部14と、脈波センサ15と、体動センサ16と、を備える。
【0013】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部11において、CPUは、システムバスを介して状態推定装置10の各部に接続されており、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、状態推定装置10全体の動作を制御する制御手段として機能する。
【0014】
記憶部12は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部12は、制御部11が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。例えば、記憶部12は、教師データとする生体データ、及び、生体状態推定における各種の設定を定めたテーブルを格納している。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0015】
ユーザインタフェース13は、入力キー、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネル等のような入力受付部と、液晶パネル、LED(Light Emitting Diode)等の表示部、スピーカ、ブザー等の音出力部、バイブレータ等の振動部等を備える。ユーザインタフェース13は、入力部を介してユーザから各種の操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を制御部11に送信する。また、ユーザインタフェース13は、各種の情報を制御部11から取得して、取得した情報を示す画像を表示部に表示する。
【0016】
通信部14は、状態推定装置10が外部の機器と通信するためのインタフェースを備える。外部の機器とは、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の端末装置である。通信部14は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等を介して外部の機器と通信する。通信部14は、制御部11の制御の下、このような有線又は無線による通信を介して、外部の機器から教師データを含む各種データを取得する。なお、上記データは記憶部12に予め記憶されていてもよい。
【0017】
脈波センサ15は、被験者の生体信号の1つである脈波を検出する。脈波センサ15は、例えば被験者の耳珠、腕、指等に装着される。脈波センサ15は、被験者の皮膚の表面から光を照射し、その反射光や透過光を観測することにより、血液内の酸化ヘモグロビンによる光の吸収量の変化を検出する。この光の吸収量の変化は血管の容積変化に対応するので、脈波センサ15により、図3に示すように、血管の容積変化を波形としてとらえた脈波201が得られる。
【0018】
そして、血管の容積変化は心臓の拍動に同期していると考えられるので、脈波の振幅がピークとなるタイミング(時点)を、心臓の拍動が発生した時のタイミング(以下「拍動タイミング」という)として推定することができ、また、時間軸上で互いに隣り合う脈波の2つのピークの時間間隔を、心拍間隔(R-R Interval、以下「RRI」という。)として推定することができる。したがって、制御部11は、脈波センサ15で検出した脈波に基づき、心拍間隔を推定することができる。拍動タイミングは、例えば、CPUが有するタイマ(又はクロック)や、脈波のサンプリング周波数を用いて、推定することができるが、他の適当な手法で推定してもよい。図3では、脈波201がピークとなっているタイミングが拍動タイミング201t,202t,203tに相当し、また、脈波201のピークの間隔が心拍間隔202i,203iに相当する。本実施の形態では、LED光により脈波(心拍)を検出する例を用いて説明する。もちろん心臓の電気信号を直接検出してもよい。
【0019】
体動センサ16は、被験者の体の動きとして、互いに直交するXYZ軸の3軸方向の加速度を検出する加速度センサである。体動センサ16は、例えば、被験者の耳珠に取り付けられる。また、体動センサ16としてジャイロセンサ、圧電センサ等を用いてもよい。
【0020】
次に、図2を参照して、状態推定装置10における制御部11の機能的な構成について説明する。図2に示すように、状態推定装置10は、機能的に、被験者の生体信号を取得するための取得手段である生体信号取得部110と、生体信号取得部110が取得した生体信号から特徴量を抽出するための抽出用時間窓を設定する設定手段である時間窓設定部120と、時間窓設定部120で設定された抽出用時間窓の範囲で生体信号から特徴量を抽出する抽出手段である特徴量抽出部130と、抽出された特徴量に基づいて睡眠状態を推定する推定手段である推定部140と、を備える。制御部11において、CPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、これら各部として機能する。なお、状態推定装置10から推定部を除いた部分は、第1の実施の形態に係る特徴量抽出装置を形成する。
【0021】
次に状態推定装置10の各機能について、図4を参照して、睡眠状態推定処理における処理の流れとともに説明する。状態推定装置10が起動すると、この睡眠状態推定処理が開始される。または、状態推定装置10は入力部を介してユーザから指示を受けて睡眠状態推定処理を開始してもよい。まず、状態推定装置10の生体信号取得部110は、生体信号取得処理を実行する。(ステップS101)。
【0022】
図5は、この生体信号取得処理のフローチャートを示している。まず、生体信号取得部110は脈波センサ15からの脈波信号及び体動センサ16からの体動信号を取得する(ステップS201)。脈波センサ15から取得された脈波信号は、ある周波数(例えば250Hz)でサンプリングされ、サンプリングされた脈波信号は、バンドパスフィルタから成るプリフィルタによりフィルタリングされて、その低周波成分や高周波ノイズが取り除かれる(ステップS202)。続いて、フィルタリングされた脈波信号からRRIの算出(推定)が行われる(ステップS203)。
【0023】
RRIを算出する方法として、相関関数を使用する方法、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を使用する方法、振幅の極大値の検出に基づいて算出する方法等種々の方法がある。例えば、振幅の極大値の検出に基づいてRRIを算出する場合、脈波信号から振幅の極大値を検出し、振幅の極大値が検出されたタイミングから前後に所定の時間内において検出された他の複数の振幅の極大値と比較する。比較の結果、最も大きい振幅の極大値が検出されたタイミングを、拍動タイミングとして推定する。このような比較を、脈波信号の各振幅の極大値について行い、時間軸上で互いに隣り合う2つの拍動タイミングの時間間隔を、RRIとして算出する。算出されたRRIを、横軸に時間、縦軸にRRIをとって並べると、図6に示すようなグラフが得られる。図6では、互いに隣り合う2つの拍動タイミング(202t等)の間隔がRRIに相当し、拍動タイミング204tと拍動タイミング205tの間に本来あった拍動を算出できなかった場合の例が示されている。
【0024】
RRIが算出されると、RRIの外れ値(異常値)を除去するための外れ値処理が行われる(ステップS204)。外れ値処理は、例えば以下のように行われる。算出されたRRIの全区間を一定間隔(例えば2sec)に分割し、分割した各区間の標準偏差を計算する。計算された標準偏差が所定の閾値未満であれば、その区間のRRIは、外れ値とみなされ、除去される。また、RRIが通常予想される所定の範囲(例えば0.4sec<RRI<2.0sec)にあるか否か判断を行い、RRIがこの所定の範囲内になければ、安静時の心拍間隔を満たしていないとして、その区間のRRIは外れ値とみなされ、除去される。さらに、隣接するRRIの差が所定の値(例えば0.3sec)を超えているか否か判断を行い、隣接するRRIの差がこの値を超えていれば、急激な心拍間隔の変動は考えにくいので、隣接するRRIの双方が外れ値とみなされ、除去される。図の心拍間隔205iは外れ値(異常値)として除去される。
【0025】
続いて、生体信号取得部110は、前記ステップS201で取得された体動信号、すなわちXYZ軸の3軸方向の加速度を、あるサンプリングレート(例えば30Hz)でサンプリングし、さらにこのサンプリングレートよりも低いサンプリングレート(例えば2Hz)でリサンプリングして、加速度の時系列データを取得し、取得した加速度データからXYZ軸方向の加速度の合成ベクトルの大きさ(ノルム)を算出する(ステップS205)。図示しないが、算出された合成ベクトルのノルムに、バンドパスフィルタによるフィルタリングを施し、ノイズが除去される。この場合、バンドパスフィルタの通過帯域は、例えば0.05Hz~0.25Hzに設定されている。
【0026】
図4に戻って、生体信号取得部110が生体信号取得処理を終了すると、特徴量抽出部130は、生体信号取得部110で算出されたRRI及び加速度ノルムから特徴量を抽出するための特徴量抽出処理を行う(ステップS102)。特徴量は、時間窓設定部120で設定された抽出用時間窓にしたがって抽出される。
【0027】
特徴量抽出部130は、特徴量としてRRIの周波数に基づく特徴量である周波数系特徴量と、RRIから抽出される呼吸信号に基づく特徴量である呼吸系特徴量と、RRIの時間、加速度ノルムの時間に基づく特徴量である時間系特徴量を抽出する。これらの特徴量は、RRIが被験者の脈波信号に基づくため、脈波信号の特徴量とみなすことができ、また、時間系特徴量は、加速度ノルムが被験者の体動信号に基づくため、体動信号の特徴量とみなすことができる。ステップS102で行われる特徴量抽出処理について、図7のフローチャートにしたがって、順番に説明する。
【0028】
特徴量抽出部130は、RRIが算出されると、特徴量抽出の前処理として、RRIの揺らぎによるサンプリング間隔の不揃いを等間隔に揃えて等間隔RRIを生成する処理を行う(ステップS301)。サンプリング間隔を等間隔にすることにより、特徴量抽出のために行われるFFT処理を可能とする。例えば、図8に示すように、外れ値除去後のRRIを直線補間(スプライン補間等も可能)することにより点線200を求め、補間された点線200上の値を、体動センサ16の体動信号のサンプリング周波数と同じ値に設定されたリサンプリング周波数(2Hz)で、すなわち0.5秒ずつ、点211、点212、…、点223のようにリサンプリングし、サンプリング間隔を等間隔にする。これにより、等間隔RRIのデータ列が生成される。
【0029】
特徴量抽出部130は、ステップS301で前処理を終えると、上記の周波数系特徴量、呼吸系特徴量及び時間系特徴量の各々の抽出を行うための各種特徴量抽出処理を行う(ステップS302)。
【0030】
図9は、上記のステップS302で実行される各種特徴量抽出処理のうち、周波数系特徴量を抽出するための周波数系特徴量抽出処理を示している。まず、この周波数系特徴量抽出処理の概要について説明する。周波数系特徴量抽出処理では、後述する各抽出用時間窓によって抽出された等間隔RRIのデータ列rdata[i]に対してFFT処理を行うことによって周波数解析し、周波数におけるパワースペクトルの分布を算出する。パワースペクトルの分布から、低周波帯域のパワースペクトルと、高周波帯域のパワースペクトルとを求め、これらのパワースペクトルに基づく複数のパラメータを、特徴量として抽出する。
【0031】
低周波帯域lf(例えば0.01Hz~0.15Hz)のパワースペクトルは、主に交感神経の活性状況を表しており、低周波帯域lfのパワースペクトルが大きいほど、被験者の交感神経はより活発であるとみなせる。また、高周波帯域hf(例えば0.15Hz~0.5Hz)のパワースペクトルは、主に副交感神経の活性状況を表しており、高周波帯域hfのパワースペクトルが大きいほど、被験者の副交感神経が活発であるとみなせる。
【0032】
交感神経と副交感神経は睡眠状態と一定の相関関係を有している。人の睡眠状態は、覚醒状態、レム睡眠、ノンレム睡眠といった段階に分類することができる。ノンレム睡眠については、さらに浅い睡眠と深い睡眠といった段階に分類することができる。ノンレム睡眠時は、交感神経が休息し、拍動が遅くなる。これに対してレム睡眠時は、覚醒時と同程度に交感神経が働いており、ノンレム睡眠時と比較して拍動は速くなる。したがって、等間隔RRIの低周波帯域lfのパワースペクトルと高周波帯域hfのパワースペクトルを用いて、睡眠状態の推定を行うことができる。
【0033】
図9に示すように、周波数系特徴量抽出処理では、まず、上述したFFT処理を行うための抽出用時間窓を設定する(ステップS401)。時間窓設定部120は、生体信号取得部110で取得されたRRI及び加速度ノルムから特徴量を抽出するための区間である抽出用時間窓を設定する。睡眠ポリグラフ検査(PSG:Polysomnography)では、一定時間であるエポック単位で睡眠状態の推定が行われる。エポックは30secが選ばれることが多い。そこで、これに合わせて、抽出用時間窓を、時間軸上で30secずつずらしながら設定し、設定した抽出用時間窓内におけるRRIの特徴量を抽出する。抽出用時間窓は、大局的な特徴を抽出するための長時間窓、瞬間的な特徴を抽出するための短時間窓、これらの中間的な窓等、多段に設定される。このように構成することで、多様な特徴量が取得される。
【0034】
図10は、エポックの基準時点tにおいて設定される抽出用時間窓を示している。横軸は時間軸を表し、基準時点tを中心として、サンプル周波数2Hz、512サンプルポイントが含まれる256sec(≒4分)の長さの期間内で、レイヤ0~レイヤ3までの互いに異なる複数の期間を有する抽出用時間窓が設定される。レイヤ0には、256sec(≒4分)の時間長を有する期間である窓1が設定される。窓1には、2×256=512個のサンプルポイントが含まれる。レイヤ1には、128sec(≒2分)の時間長を有する期間である窓2~窓4の3つの抽出用時間窓が設定される。窓2~窓4は、隣接する窓が64sec(≒1分)重複するように、時間軸上の互いに異なる位置に、それぞれ設定される。したがって窓3は、基準時点tを中心に設けられる。それぞれの抽出用時間窓には、256個のサンプルポイントが含まれる。レイヤ2には、64sec(≒1分)の時間長を有する期間である窓5~窓11の7つの抽出用時間窓が設定される。窓5~窓11は、隣接する窓が32sec重複するように、時間軸上の互いに異なる位置に、それぞれ設定される。したがって、窓8は、基準時点tを中心に設定される。それぞれの抽出用時間窓には、128個のサンプルポイントが含まれる。レイヤ3には、32secの時間長を有する期間である窓12~窓19の8つの抽出用時間窓が設定される。窓12~窓19は、互いに重複することなく、間隔を空けずに連続するように、時間軸上の互いに異なる位置に、設定される。それぞれの抽出用時間窓には、64個のサンプルポイントが含まれる。以下、等間隔RRIのデータ列から各抽出用時間窓で抽出されたデータ列をrdata[p][i]で表す。なお、pは時間窓の番号で、iはサンプルの番号である。つまり、pは1から19までの値となり、データ列rdata[p][i]の抽出に用いた各抽出用時間窓におけるサンプル数がnなら、iは1からnまでの値となる。
【0035】
ステップS401で設定された抽出用時間窓にしたがって、特徴量抽出のためのデータが抽出される(ステップS402)。抽出する特徴量によって用いられる抽出用時間窓は異なる。抽出用時間窓にしたがって抽出されたデータに対してFFT処理が行われる(ステップS403)。周波数系特徴量抽出処理においては、レイヤ0からレイヤ3までの全ての抽出用時間窓(窓1~窓19)を使用してFFT処理を行う。各抽出用時間窓で抽出された等間隔RRIのデータ列rdata[p][i]に対してFFT周波数解析処理が行われ、周波数パワースペクトル密度が算出されると、抽出用時間窓毎に、RRIの特徴量の抽出が行われる(ステップS404)。この場合、睡眠状態の判定のために、RRIの特徴量として、前述した低周波帯域lfのパワースペクトル、高周波帯域hfのパワースペクトルを含む以下の9つの特徴量を抽出する。
lf,hf,vlf,tf,hf_lfhf,lf_hf,vlf/tf,lf/tf,hf/tf
ここで、
lf:0.01Hzより大きく、0.15Hz以下のパワースペクトル
hf:0.15Hzより大きく、0.5Hz以下のパワースペクトル
vlf:0.01Hz以下のパワースペクトル
tf:vlf+lf+hf
hf_lfhf:hf/(hf+lf)
lf_hf:lf/hf
である。
【0036】
上述したように、レイヤ0の窓数が1、レイヤ1の窓数が3、レイヤ2の窓数が7、レイヤ3の窓数が8、合計19個の抽出用時間窓が設定されている。各抽出用時間窓で抽出されるRRIの特徴量は9個であることから、合計で171(=9×19)次元のRRIの特徴量が抽出される。
【0037】
次に、図7のステップS302で実行される各種特徴量抽出処理のうち、呼吸系特徴量抽出処理について説明する。呼吸系特徴量は、生体信号としての呼吸に関する特徴量である。RRIには、呼吸性の変動成分が含まれており、呼気で心拍数が減少し、吸気で心拍数が増大することにより生じる呼吸性洞性不整脈(Respiratory Sinus Arrhythmia、以下「RSA」という。)により約0.25Hzの揺らぎが生じる。呼吸に関する特徴量として、このRSAを用いる。
【0038】
図11は、図7のステップS302で実行される、呼吸系特徴量を抽出するための呼吸系特徴量抽出処理を示している。まず、ステップS501では、抽出用時間窓を設定する。次いで、ステップS501で設定された抽出用時間窓にしたがって、特徴量抽出のためのデータが抽出される(ステップS502)。抽出用時間窓にしたがって抽出されたデータに対してFFT処理が行われる(ステップS503)。この呼吸系特徴量の抽出処理では、ステップS501において、レイヤ1の3個の抽出用時間窓である窓2~窓4が設定される。そして、ステップS502、S503において、各抽出用時間窓で抽出された等間隔RRIのデータ列(rdata[2][i]、rdata[3][i]及びrdata[4][i])に対してFFT周波数解析処理が行われ、0.1Hz~0.4Hzの範囲でパワースペクトル密度が最大の周波数を、RSAとして求める。RSAが求められると、抽出用時間窓毎に、呼吸に関する特徴量の抽出が行われる(ステップS504)。呼吸はノンレム睡眠の状態において安定するため、標準偏差が小さくなる。逆に、覚醒状態、レム睡眠状態においては、呼吸が安定しないため、標準偏差が大きくなる。そこで等間隔RRIのデータ列に含まれる呼吸データのうち、睡眠と相関関係があると考えられる以下の6個の特徴量を抽出する。
【0039】
上記で求めたRSA[j](jは抽出に用いた抽出用時間窓に対応する(窓2:j=0、窓3:j=1、窓4:j=2))に対して、
mRSA:RSA[j]の平均値=(RSA[0]+RSA[1]+RSA[2])/3
sdRSA:RSA[j]の標準偏差=RSA[0]、RSA[1]及びRSA[2]から得られる標準偏差
minRSA:RSA[j]の最小値=min(RSA[0],RSA[1],RSA[2])
maxRSA:RSA[j]の最大値=max(RSA[0],RSA[1],RSA[2])
cvRSA:sdRSA/mRSA(ただし、mRSA≒0ならcvRSA=0) 呼吸変動係数
RSA[1]:中央の抽出用時間窓である窓3のRSA
この呼吸系特徴量抽出処理では、窓2~窓4の3個の抽出用時間窓から6次元の特徴量を抽出する。
【0040】
次に、図7のステップS302で実行される各種特徴量抽出処理のうちの時間系特徴量抽出処理について説明する。時間系特徴量抽出処理は、等間隔RRIのデータ列rdata[p][i](時系列データ)そのものから得られる特徴量を抽出するRRI系特徴量抽出処理と、加速度のデータ列mdata[p][i]そのものから得られる特徴量を抽出する体動系特徴量抽出処理を含む。この加速度のデータ列mdata[p][i]は、図5のステップS205で算出された加速度のノルムのデータ列のことであり、p及びiは、時間窓の番号及びサンプルの番号である。
【0041】
時間系特徴量抽出処理について、図12に示すように、ステップS601で抽出用時間窓が設定された後、設定された抽出用時間窓にしたがって特徴量抽出のためのデータが抽出される(ステップS602)。時間系特徴量抽出処理においては、レイヤ0からレイヤ3までの全ての抽出用時間窓(窓1~19)が設定される。各抽出用時間窓にしたがって抽出されたRRIのデータ列rdata[p][i]に対してRRI系特徴量の抽出が行われるとともに、加速度のデータ列mdata[p][i]に対して体動系特徴量の抽出が行われる(ステップS603)。RRI系特徴量及び体動系特徴量は以下に示す通りである。
【0042】
(RRI系特徴量)
RRI系特徴量として、以下のmRRI、mHR、sdRRI、cvRRI、RMSSD、pNN50の6個の値を、抽出用時間窓毎に算出(導出)する。ただし、rdata[p][i]の値の単位はミリ秒とし、各値は以下のとおりである。
mRRI=rdata[p][i]の平均値
mHR=60000/mRRI
(注:ミリ秒を単位とするmRRIから、1分当たりの拍数(mHR)を求めるため、60秒×1000=60000をmRRIで割っている。)
sdRRI=rdata[p][i]の標準偏差
cvRRI=sdRRI/mRRI
RMSSD=互いに隣り合うrdata[p][i]の差の自乗の平均値の平方根
pNN50=互いに隣り合うrdata[p][i]の差が所定の時間(例えば50msec)を超える回数の割合
(注:連続した隣接する心拍間隔の差が50msecを超える割合は、迷走神経緊張強度の指標とされているため、本実施形態では上記所定の時間として50msecを採用している。)
抽出用時間窓毎に上記6個の値が得られ、抽出用時間窓が19個あるため、合計6×19=114個の特徴量が導出される。
【0043】
(体動系特徴量)
加速度センサによって計測される体動の大きさと発生回数は、覚醒状態と睡眠状態において異なる。体動系特徴量として、以下のmACT、sdACT、minACT、maxACT、cvACTの5個の値を、抽出用時間窓毎に導出する。各値は以下のとおりである。
mACT:mdata[p][i]の平均値
sdACT:mdata[p][i]の標準偏差
minACT:mdata[p][i]の最小値
maxACT:mdata[p][i]の最大値
cvACT:sdACT/mACT
抽出用時間窓毎に上記5個の値が得られ、抽出用時間窓が19個あるため、合計5×19=95個の特徴量が導出される。
【0044】
なお、上述した特徴量の他に、大きな体動が発生してからの経過時間を特徴量として抽出してもよい。体動は、上述した加速度ノルムで表され、基準時点t毎に体動の平均値mACTが算出される。mACTが所定の閾値を超えたことによって大きな体動が発生したと判定される。閾値として異なる4つの値が設定される。経過時間は、大きな体動が検出されてから次のエポック基準時点tに達する毎に1ずつカウントすることによって計測される。カウント値は、最後にmACTが1.05を超えてからのカウント値、最後にmACTが1.10を超えてからのカウント値、最後にmACTが1.15を超えてからのカウント値、最後にmACTが1.20を超えてからのカウント値の4つであり、4次元の特徴量が抽出される。ここで、mACT=1.0は、被験者が静止していることを表し、その値がより大きくなるほど、被験者の体動がより大きいことを表す。
【0045】
図7に戻って、各特徴量が計算されると、これらの特徴量から不必要な特徴量を削減する特徴量選択(次元圧縮)処理が行われる(ステップS303)。被験者の睡眠状態を推定するために、特徴量を入力とする機械学習のモデルを使用する際には、有効な特徴量の組み合わせを決定することが重要である。特徴量の中には、モデルの性能に寄与しないばかりか逆に悪影響を与えるものもあり得る。特徴量の選択を行うことにより、変数を少なくして解釈性を上げる、計算コストを下げて学習時間を短縮する、過適合を避けて汎用性を向上させる、といった効果が得られる。特徴量選択の手法として、例えば、分散分析(ANOVA:analysis of varianc)と再帰的特徴消去(RFE:Recursive Feature Elimination)により特徴量を削減する。RFEにおいて、実際に機械学習のモデルを用いて、特徴集合を学習・評価してどの特徴が重要であるかを確認し、指定した特徴数になるまで特徴量の消去を行う。
【0046】
次元圧縮により特徴量が削減されると、残った特徴量を時間軸上で前方(未来)あるいは後方(過去)に移動させたものを特徴量として追加する特徴量拡大処理が行われる(ステップS304)。なお、上記次元圧縮処理(ステップS303)及び特徴量拡大処理(ステップS304)は、本発明を実施するうえで必ずしも必要でなく、省略も可能である。
【0047】
特徴量拡大処理が行われた特徴量は、プリフィルタにより時間方向に平滑化が行われる(ステップS305)。プリフィルタは、例えば、ガウシアンフィルタであり、不自然な急激に変化するデータが推定部140に入力されないようにして、誤った睡眠状態の推定が行われることを防止する。抽出された特徴量は0~1の間で正規化されて推定部140に入力される。
【0048】
図4に戻って、特徴量抽出部130により複数の特徴量(周波数系特徴量、呼吸系特徴量、時間系特徴量)が抽出されると、推定部140は、特徴量抽出部130で抽出された特徴量に基づき、睡眠状態を推定する(ステップS103)。この睡眠状態の推定は30sec単位で行われる。
【0049】
推定部140は、2クラス識別器を組み合わせた多クラス識別器で構成される。識別器は、例えば、多クラス-ロジスティック回帰を採用する。例えば、被験者の睡眠状態が覚醒状態である[awake]クラスと、覚醒状態以外の状態である[それ以外]クラスの2つのクラスに分けられた目的変数(従属変数)に対して、tf,vlf,lf,hf,hf_lfhf,lf_hf,vlf/tf,lf/tf,hf/tf等の特徴量である説明変数(独立変数)のうち、どの組み合わせが有意に影響するかを知ることができる。入力される特徴量に対して、出力は、睡眠状態が覚醒状態(awake)であること、レム睡眠状態(rem)であることを、浅い睡眠状態(light)であること、深い睡眠状態(deep)であることを表す出力の4つの出力とする。このため、推定部140は、図13に示すように、4つの2クラスの識別器の組み合わせで構成される。すなわち、推定部140は、睡眠状態が覚醒状態[awake]と覚醒状態以外の状態[awake以外]のいずれであるかを識別する第1の識別器301と、レム睡眠状態[rem]とレム睡眠状態以外の状態[rem以外]のいずれであるかを識別する第2の識別器302と、浅い睡眠状態[light]と浅い睡眠状態以外の状態[light以外]のいずれであるかを識別する第3の識別器303と、深い睡眠状態[deep]と深い睡眠状態以外の状態[deep以外]のいずれであるかを識別する第4の識別器304とを備えるとともに、第1~第4の識別器301~304の出力をスコア判定するスコア判定器305を備える。ロジスティック回帰は、目的変数と説明変数を以下の関係式(シグモイド関数)で表す。
【0050】
(数1)
f(x)=1/{1+exp[-(a1・x1+a2・x2+
...+an・xn+a0)]}
【0051】
f(x)は、目的変数である事象の発生確率、xnは説明変数である各種の特徴量、anは学習係数(判定条件のパラメータ)、nはデータの種類数である次元数を表す。f(x)と1-f(x)の大小比較で、2クラスのいずれであるか識別する。上記関係式により、予測値の算出、関係式に用いた説明変数の目的変数に対する貢献度を明らかにする。
【0052】
1対他の2クラス識別器である第1の識別器301、第2の識別器302、第3の識別器303、及び第4の識別器304の各々に特徴量が入力されると、それぞれの識別器が識別処理を行う。
【0053】
第1の識別器301は、被験者の睡眠状態が覚醒状態である確率P1(=f(x))を出力し、覚醒状態でない確率1-P1(=1-f(x))との大小比較から、確率P1が1-P1よりも大きい場合には、出力としての確率P1は、睡眠状態が覚醒状態であることを表し、1-P1がP1よりも大きい場合には、覚醒状態以外であることを表す。第2の識別器302は、被験者の睡眠状態がレム睡眠状態である確率P2を出力し、レム睡眠状態でない確率1-P2との大小比較から、確率P2が1-P2より大きい場合には、出力としての確率P2は、睡眠状態がレム睡眠状態であることを表し、1-P2が大きい場合には、レム睡眠状態以外であることを表す。第3の識別器303は、被験者の睡眠状態が浅い睡眠状態である確率P3を出力し、浅い睡眠状態でない確率1-P3との大小比較から、確率P3が1-P3より大きい場合には、出力としての確率P3は、睡眠状態が浅い睡眠状態であることを表し、1-P3が大きい場合には、浅い睡眠状態以外であることを表す。第4の識別器304は、被験者の睡眠状態が深い睡眠状態である確率P4を出力し、深い睡眠状態でない確率1-P4との大小比較から、確率P4が大きい場合には、深い睡眠状態であることを表し、1-P4が大きい場合には、深い睡眠状態以外であることを表す。各クラス出力結果に対して時間方向ガウシアンフィルタが設けられる。出力データはフィルタによって平滑化されることにより、不自然な急激な出力データの変化が除去され、誤った睡眠状態の推定が行われないようにする。
【0054】
ガウシアンフィルタによって平滑化された第1~第4の識別器301~304の出力(確率P1~P4)は、スコア判定器305に入力される。スコア判定器305は、第1~第4の識別器301~304の出力(確率P1~P4)を大小比較し、被験者の睡眠状態が、確率P1~P4のうちの最大値に対応する睡眠状態であると推定し、そのことを表すデータをユーザインタフェース13に出力する。これによって、推定された睡眠状態がユーザに提示される。
【0055】
判定条件のパラメータanは、サンプルデータを用いた機械学習により決定される。推定部140による睡眠状態の推定が30sec単位で行われることから、30sec毎に、専門家により脳波、心電計等に基づいて推定された睡眠状態を記録したラベルを、特徴量のサンプルデータに付加する。サンプルデータは、覚醒状態、レム睡眠状態、浅い睡眠状態、深い睡眠状態ごとに用意される。用意されたサンプルデータについて特徴量抽出処理が行われる。抽出した特徴量のデータとラベルは対応付けて教師データとして記憶される。なお、機械学習は本識別装置内で行っても、別の装置で実行されて判定モデルを本識別装置に保存してもよい。
【0056】
なお、推定部140を、活性化関数としてシグモイド関数を使って1対他の2クラス識別器を複数設けることにより構成したが、これに限らず、活性化関数としてソフトマックス関数を用いて、多クラス識別器として構成してもよい。また、1対1の2クラス識別器を複数設けることにより推定部140を構成してもよい。また、機械学習のアルゴリズムとして、ロジスティック回帰を用いているが、これに限らず、例えば、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレストなどを用いてもよい。また、複数のアルゴリズムを組み合わせて用いてもよい。例えば、SVC(Support Vector Classification)、SVR(Support Vector Regression)、Linear SVC(Support Vector Classification)、xgboost(eXtreme Gradient Boosting)等がある。
【0057】
図4に戻って、推定部140による睡眠状態の推定は、リアルタイムに30sec単位で行われる。制御部11は、終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS104)。終了条件は、例えば、処理開始からの経過時間が設定した時間に達した場合、入力部を介して終了の指示があった場合等である。終了条件を満たさない場合(ステップS104:NO)、ステップS101に戻り、引き続き睡眠状態の推定処理を行う。終了条件を満たす場合(ステップS104:YES)、睡眠状態推定処理を終了する。
【0058】
以上のように、本実施の形態によれば、生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の抽出用時間窓を設定するとともに、設定された複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出することにより、特徴量として、生体信号が長い時間をかけて変化するマクロ的な特徴と、短時間で変化するミクロ的な特徴とを抽出することが可能である。例えば、生体信号が時間をかけて変化していく特徴が睡眠状態を推定する上で大きな要因となる場合であっても、特徴量抽出の抽出用時間窓が短いと、時間をかけて変化していく特徴量を抽出することができない。この場合、ある期間内において過去及び未来に向けて大きく広がる窓1を用いて抽出した特徴量に基づく推定を行うことにより、そのように推定された特徴量に基づいて正しい睡眠状態の推定が可能となる。
【0059】
逆に、生体信号の局所的な短い時間の変化が特徴量として睡眠状態を判断する上で大きな要因となる場合であっても、特徴量抽出の抽出用時間窓の時間長が長いと、この局所的変化を特徴量として把握することができない。この場合、特徴量抽出の抽出用時間窓の時間長を短くすることにより、局所的変化を特徴量として抽出することができ、そのように推定された特徴量に基づいて正しい睡眠状態の推定が可能となる。また、ある期間内における生体信号の特徴量に基づいた睡眠状態の判定において、例えば過去に多少遡った時点での生体信号の局所的変化が、睡眠状態の大きな判定要因となる場合もあり得る。さらにこのような生体信号の局所的変化が、互いに異なる複数の時点で発生することもあり得る。この場合、特徴量抽出の抽出用時間窓の時間長を短くするとともに、抽出用時間窓を、時間軸上における所定期間内において過去に遡った複数の位置に設定することにより、睡眠状態の推定精度を高めることが可能となる。また、時間軸上で互いに隣り合う抽出用時間窓を、時間軸上で部分的に重複(オーバーラップ)させることにより、特徴量をきめ細かく(洩れなく)抽出することができる。また、ある期間内において抽出用時間窓を連続させるように設定することにより、ある期間内に取得される生体信号から洩れなく特徴量を抽出することができる。睡眠状態の判断の大きな要因となる特徴量の発生の位置及び範囲は多様であると考えられる。したがって、異なる時間長の抽出用時間窓を時間軸上の互いに異なる位置に設定し、これらの抽出用時間窓から得られた特徴量を併用することにより、特徴量のマクロ的変化、ミクロ的変化を逃すことなく捉えることが可能となり、睡眠状態の推定精度を高めることが可能となる。
【0060】
さらに、睡眠状態の推定の目的に応じて、抽出する特徴量を変更してもよい。例えば、就寝中全体における睡眠状態の傾向を知りたい場合は、時間長が長い抽出用時間窓から得られる特徴量を選択し、就寝中のある一時点における睡眠状態の詳細を知りたい場合は、時間長が短い抽出用時間窓から得られる特徴量を選択するようにしてもよい。
【0061】
以上の睡眠状態推定処理により、状態推定装置10は、被験者が睡眠中であっても睡眠状態をリアルタイムで推定することができる。
【0062】
本実施の形態により被験者45人分の睡眠状態を推定したところ、その推定精度を表すtotal_accuracy及びtotal_kappaがそれぞれ、0.7229及び0.5960となった。これに対し、前述した従来のように、単一の抽出用時間窓(30秒)を用いて生体信号の特徴量を抽出するとともに、抽出した生体信号の特徴量に基づいて同じ被験者45人分の睡眠状態を推定した場合には、total_accuracyが0.6942となり、total_kappaが0.5576となった。このように、単一の抽出用時間窓を用いた場合と比較して、被験者の睡眠状態を精度良く推定できることが分かった。
【0063】
上記の実施の形態において、複数の抽出用時間窓の数及び時間長の少なくとも一方を、各種の条件やパラメータに応じて可変に設定してもよい。例えば、複数の抽出用時間窓の数や時間長は、対象の睡眠状態の変化に基づいて変更される。この場合、睡眠状態が変化する状況において、睡眠状態の推定精度を上げるために、より多くの特徴量を抽出するように、抽出用時間窓を設定する。逆に睡眠状態が変化しないような状況では、抽出用時間窓の数を少なくするとともに、抽出用時間窓の時間長を長く設定することにより、演算負荷を低下させる。睡眠状態が変化する状況は、例えば、被験者の周囲の外気温の変化度合や、被験者の周囲の照度の変化度合、被験者の深部体温の変化度合等(これらの少なくとも1つ)に基づいて判定できる。この判定は、CPUが判定手段として機能することによって行われる。被験者の深部体温は、被験者の耳や頭からセンサ等を用いて検出することができる。また、心拍数、体動等あるいは特徴量そのものに基づいて、睡眠状態が変化する状況を判定することができる。あるいは、抽出用時間窓の数及び時間長の少なくとも一方を、対象(人間の)の安静中の場合と運動中の場合とで、互いに異ならせるように設定してもよい。この対象が安静中及び運動中のいずれであるか否かの判定は、対象の状態の判定として、CPUが判定手段として機能することにより行われ、体動センサ16などの検出結果に基づいて行われる。
【0064】
さらに、抽出用時間窓の数及び時間長の少なくとも一方を、対象の性別及び年齢の少なくとも一方を含む対象の個体情報に応じて設定してもよい。この場合、対象(人間)の個体情報は、ユーザインタフェース13を介してユーザにより入力され、入力された個体情報が、CPUが個体情報取得手段として機能することによって取得される。
【0065】
また、上述の実施の形態では、時間長が比較的短い複数の抽出用時間窓(窓12~窓19)を、時間軸上で互いに重複せず且つ間隔をあけずに互いに連続するように、設定しているが、時間軸上で互いに間隔をあけるように、設定してもよい。その場合には、生体信号の特徴量の精度の低下を抑えながら、特徴量のデータ量を削減することができる。
【0066】
上述の実施の形態では、被験者(対象)の脈波を検出するため脈波センサ15や体の動きを検出するための体動センサ16を備えていたが、センサの種類はこれらに限定されない。対象の生体信号を取得するセンサであれば、任意のセンサを備えることができる。また、例えば通信部14を介して外部の装置等から生体信号又は生体信号の特徴量を受信できる場合は、状態推定装置10は、センサを備える必要はない。
【0067】
なお、上述の実施の形態では、状態推定装置10は、生体信号として、耳珠に装着された脈波センサによる脈波と、耳珠に装着された加速度センサによる加速度とを用いていたが、生体信号はこれらに限定されない。状態推定装置10が用いることができる生体信号としては、体動(頭部、腕、胸、足、胴体等に設置した加速度センサで検出)、筋電(頭部(こめかみや鼻の周り)、腕、胸、足、胴体等に設置した筋電センサで検出)、汗(皮膚電位計や湿度センサで検出)、心拍(心電計、ベッド下に設置された圧力センサ(心弾動図波形の検出)、頭部、腕、胸、足、胴体等に設置した脈波センサ等で検出)等が含まれる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、状態推定装置10は、睡眠状態の推定を行うための特徴量として、RRIに基づく周波数系特徴量、RRI及び体動に基づく時間系特徴量、呼吸系特徴量を用いていたが、特徴量は上述の特徴量に限定されず、睡眠状態の推定を行うための特徴量であれば、任意の種類の特徴量を用いることができ、特徴量の数も限定されない。例えば、生体信号として、筋電、汗等も用いる場合は、これらについての検出値について、他の特徴量と同様に例えば2Hzでサンプリングして、基準時点tを基準とした複数の抽出用時間窓でデータを抽出して、特徴量を算出するようにしてもよい。
【0069】
また、上述の実施の形態では、状態推定装置10は、人間の被験者の睡眠状態を推定していた。しかし、睡眠状態を推定する対象は人間に限られず、犬、猫、馬、牛、豚、鶏等、対象一般を対象とすることが可能である。これらの対象にも脈波センサや加速度センサを取り付けて、睡眠状態推定に必要な特徴量を取得することが可能だからである。また、実施形態では、対象の状態として、睡眠状態を推定しているが、これに代えて、感情(喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖、リラックス等)を推定してもよい。例えば、交感神経は、ストレス等の緊張状態の時に活発に働く。これに対して副交感神経は、リラックスしている状態の時に活発に働く。交感神経は拍動を速める働きをし、副交感神経は拍動を遅くする働きをする。したがって、RRIの低周波帯域lf及び高周波帯域hfのパワースペクトルに基づく特徴量により、リラックス状態であるか推定することができる。また、対象の状態の推定に適した他の適当な生体信号の特徴量を抽出してもよいことは、もちろんである。
【0070】
上記実施の形態において、制御部11はCPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、生体信号取得部110、時間窓設定部120、特徴量抽出部130、推定部140として機能した。しかしながら、制御部11は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、生体信号取得部110、時間窓設定部120、特徴量抽出部130、推定部140として機能しても良い。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現しても良いし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。
【0071】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた無線通信装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る無線通信装置として機能させることもできる。このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0072】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記の番号は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0073】
(付記1)
対象の生体信号を取得する取得手段と、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定手段と、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出手段と、
を備える特徴量抽出装置。
【0074】
(付記2)
前記設定手段は、前記複数の抽出用時間窓として、互いに同じ時間長の複数の時間窓を、時間軸上の互いに異なる位置にさらに設定する、
付記1に記載の特徴量抽出装置。
【0075】
(付記3)
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに間隔をあけるように設定される、
付記1又は2に記載の特徴量抽出装置。
【0076】
(付記4)
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに部分的に重なるように設定される、
付記1から3のいずれか1つに記載の特徴量抽出装置。
【0077】
(付記5)
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに重複せずに、かつ、間隔をあけずに互いに連続するように設定される、
付記1から4のいずれか1つに記載の特徴量抽出装置。
【0078】
(付記6)
前記対象の生体信号は脈波及び体動である、
付記1から5のいずれか1つに記載の特徴量抽出装置。
【0079】
(付記7)
前記特徴量は、前記対象としての人間の前記脈波から得られる心拍間隔の周波数に基づく周波数系特徴量、前記心拍間隔の時系列データから得られる時間系特徴量、前記人間の前記体動の時系列データから得られる時間系特徴量、前記心拍間隔に含まれる呼吸性の変動成分に基づく特徴量である呼吸系特徴量の少なくとも1つである、
付記6に記載の特徴量抽出装置。
【0080】
(付記8)
付記1から7のいずれか1つに記載の特徴量抽出装置と、
前記特徴量抽出装置により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定手段と、
を備える状態推定装置。
【0081】
(付記9)
対象の生体信号を取得する取得ステップと、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップと、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップと、
を備える特徴量抽出方法。
【0082】
(付記10)
付記9に記載された特徴量抽出方法により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を備える状態推定方法。
【0083】
(付記11)
コンピュータに、
対象の生体信号を取得する取得ステップ、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップ、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【0084】
(付記12)
コンピュータに、
付記11に記載されたプログラムを実行させることにより抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【0085】
(付記13)
前記対象の状態を判定する判定手段をさらに備え、
前記設定手段は、前記対象の状態に基づいて、前記抽出用時間窓の数及び時間長の少なくとも一方を設定する、
付記1から7のいずれか1つに記載の特徴量抽出装置。
【0086】
(付記14)
前記判定手段は、前記対象の状態が変化中であるか否かを判定し、
前記設定手段は、前記対象の状態が変化中であると判定されている場合に、前記抽出用時間窓の数及び時間長の前記少なくとも一方を、前記対象の状態が変化中でないと判定されている場合と異ならせるように設定する、
付記13に記載の特徴量抽出装置。
【0087】
(付記15)
前記対象の性別及び年齢の少なくとも一方を含む個体情報を取得する個体情報取得手段をさらに備え、
前記設定手段は、前記抽出用時間窓の数及び時間長の前記少なくとも一方を、前記個体情報に応じて設定する、
付記13又は14に記載の特徴量抽出装置。
【符号の説明】
【0088】
10…状態推定装置、11…制御部、12…記憶部、13…ユーザインタフェース、14…通信部、15…脈波センサ、16…体動センサ、110…生体信号取得部、120…時間窓設定部、130…特徴量抽出部、140…推定部、200…点線、201…脈波、202i,203i,204i,205i,206i,207i…心拍間隔、201t,202t,203t,204t,205t,206t,207t…拍動タイミング、211,212,213,214,215,216,217,218,219,220,221,222,223…点、301…第1の識別器、302…第2の識別器、303…第3の識別器、304…第4の識別器、305…スコア判定器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生体信号を取得する取得手段と、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定手段と、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出手段と、
を備え
前記設定手段は、マクロ的な特徴量を抽出するための第1時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに部分的に重なるように設けられた第1レイヤと、ミクロ的な特徴量を抽出するための前記第1時間長よりも短い第2時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに重複しないように設けられた第2レイヤと、の両方を少なくとも設定する、
ことを特徴とする特徴量抽出装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記複数の抽出用時間窓として、互いに同じ時間長の複数の時間窓を、時間軸上の互いに異なる位置にさらに設定する、
請求項1に記載の特徴量抽出装置。
【請求項3】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに間隔をあけるように設定される、
請求項1又は2に記載の特徴量抽出装置。
【請求項4】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに部分的に重なるように設定される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項5】
前記複数の抽出用時間窓の少なくとも2つは、時間軸上で互いに重複せずに、かつ、間隔をあけずに互いに連続するように設定される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項6】
前記対象の生体信号は脈波及び体動である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置。
【請求項7】
前記特徴量は、前記対象としての人間の前記脈波から得られる心拍間隔の周波数に基づく周波数系特徴量、前記心拍間隔の時系列データから得られる時間系特徴量、前記人間の前記体動の時系列データから得られる時間系特徴量、前記心拍間隔に含まれる呼吸性の変動成分に基づく特徴量である呼吸系特徴量の少なくとも1つである、
請求項6に記載の特徴量抽出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の特徴量抽出装置と、
前記特徴量抽出装置により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定手段と、
を備える状態推定装置。
【請求項9】
対象の生体信号を取得する取得ステップと、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップと、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップと、
を備え、
前記設定ステップでは、マクロ的な特徴量を抽出するための第1時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに部分的に重なるように設けられた第1レイヤと、ミクロ的な特徴量を抽出するための前記第1時間長よりも短い第2時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに重複しないように設けられた第2レイヤと、の両方を少なくとも設定する、
ことを特徴とする特徴量抽出方法。
【請求項10】
請求項9に記載された特徴量抽出方法により抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を備える状態推定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
対象の生体信号を取得する取得ステップ、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定ステップ、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出ステップ、
を実行させ、
前記設定ステップでは、マクロ的な特徴量を抽出するための第1時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに部分的に重なるように設けられた第1レイヤと、ミクロ的な特徴量を抽出するための前記第1時間長よりも短い第2時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに重複しないように設けられた第2レイヤと、の両方を少なくとも設定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
請求項11に記載されたプログラムを実行させることにより抽出された特徴量に基づいて前記対象の状態を推定する推定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の第1の目的を達成するため、本発明に係る特徴量抽出装置は、
対象の生体信号を取得する取得手段と、
前記生体信号が取得されているある期間内に、互いに異なる時間長の複数の時間窓を複数の抽出用時間窓として設定する設定手段と、
前記複数の抽出用時間窓の各々における生体信号の特徴量を抽出する抽出手段と、
を備え
前記設定手段は、マクロ的な特徴量を抽出するための第1時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに部分的に重なるように設けられた第1レイヤと、ミクロ的な特徴量を抽出するための前記第1時間長よりも短い第2時間長の複数の抽出用時間窓が時間軸上で互いに重複しないように設けられた第2レイヤと、の両方を少なくとも設定する、
ことを特徴とする。