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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188309
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】睡眠の質の改善のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20221214BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
   C12P 23/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/122
A61P25/20
A61P43/00 121
C12P23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019208026
(22)【出願日】2019-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】鶴成 萌
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】林 雅浩
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD08
4B018MD32
4B018MD85
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF01
4B064AH01
4B064CA02
4B064CD02
4B064CD09
4B064CD20
4B064CD21
4B064CE03
4B064CE08
4B064CE15
4B064CE16
4B064CE17
4B064DA01
4B064DA10
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB23
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA05
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】新規な、睡眠の質の改善のための組成物を提供する。
【解決手段】アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを含んでなる、睡眠の質の改善のための組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを含んでなる、睡眠の質の改善のための組成物。
【請求項2】
前記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カロテノイドが、微生物、動物もしくは植物由来物または化学合成品である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ヒトのための、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒトが健常者である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒトが抑うつ気分または疲労感を有するヒトである、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が飲食品または食品添加物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が機能性食品である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が医薬品である、請求項1~5および7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
睡眠の質の改善のための組成物の製造における、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの使用。
【請求項12】
対象の睡眠の質を改善する方法であって、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法。
【請求項13】
睡眠の質の改善のための、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠の質の改善のための組成物に関し、より詳しくは、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを含んでなる、睡眠の質の改善のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
良質な睡眠は、心身の健康を維持するための基盤である。睡眠の質が損なわれると、「就床してもなかなか寝付けない」(入眠困難)、「夜中に何度も目が覚める」(中途覚醒)といった諸症状となって表れる。睡眠におけるこれらの諸症状が顕在化した場合には、心身に様々な影響が生じかねないため、睡眠の質の低下を解消することが必要になる。したがって、睡眠の質を改善し得る手段が求められている。
【0003】
一方、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンはカロテノイドの一種であり、動物、植物、微生物に広く分布している。
【0004】
ここで、アスタキサンチンには種々の効果があることが報告されている。例えば、特許文献1には、アスタキサンチンを有効成分として含有する日内リズム正常化作用を有する飲食物および医薬組成物が記載されている。引用文献2には、アスタキサンチンを含有することを特徴とする睡眠改善効果を有するペット用食品が記載されている。引用文献3には、アスタキサンチンとメラトニンとを併せて動物に投与するステップを含む、動物の睡眠を促進するための方法が記載されている。引用文献4には、アスタキサンチン類と赤ワインエキスを含有する油性組成物を用いた睡眠不足改善剤が記載されている。
【0005】
また、引用文献5には、カロテノイドであるクロシンを有効成分として含む睡眠改善剤が記載されている。
【0006】
しかしながら、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドと、睡眠の質の改善との関係については何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2001/087291号
【特許文献2】国際公開第2005/058064号
【特許文献3】特表2014-505031号公報
【特許文献4】特開2009-159929号公報
【特許文献5】国際公開第2010/061574号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、睡眠の質の効果的な改善のための新たな技術的手段を提供することを目的としている。
【0009】
本発明者らは、今般、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドが、睡眠の質の効果的な改善を示すことを見出した。
【0010】
本発明には、以下の発明が包含される。
[1] アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを含んでなる、睡眠の質の改善のための組成物。
[2] 前記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善である、[1]に記載の組成物。
[3] 前記カロテノイドが、微生物、動物もしくは植物由来物または化学合成品である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、[3]に記載の組成物。
[5] ヒトのための、[1]~[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[6] 前記ヒトが健常者である、[5]に記載の組成物。
[7] 前記ヒトが抑うつ気分または疲労感を有するヒトである、[5]または[6]に記載の組成物。
[8] 前記組成物が飲食品または食品添加物である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[9] 前記組成物が機能性食品である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の組成物。
[10] 前記組成物が医薬品である、[1]~[5]および[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[11] 睡眠の質の改善のための組成物の製造における、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの使用。
[12] 対象の睡眠の質を改善する方法であって、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法。
[13] 睡眠の質の改善のための、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイド。
【0011】
本発明によれば、効果的に対象の睡眠の質を改善することができる。また、本発明の組成物は、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および/または睡眠時間の満足感の改善からなる群から選択される少なくとも一種で示される睡眠の質を改善することができる上で有利である。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明の、睡眠の質の改善のための組成物は、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを含んでなることを特徴としている。上述のようなカロテノイドが後述の試験例1に示される通り、睡眠の質を顕著に改善しうることは意外な事実である。
【0013】
カロテノイド
一つの態様によれば、本発明のカロテノイドとしては、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドが挙げられる。
【0014】
アスタキサンチンは、赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属しており、その化学式は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5204、分子量596.852)であり、構造式は下記式で表される。
【化1】
【0015】
アドニルビンの化学式は3-hydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5203、分子量580.853)であり、構造式は下記式で表される。
【化2】
【0016】
アドニキサンチンの化学式は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4-one (C40H5403、分子量582.869)であり、構造式は下記式で表される。
【化3】
【0017】
また、別の態様によれば、本発明のカロテノイドとしては、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチンおよびそれらの薬学的に許容可能な塩から選択される一種以上のカロテノイドが挙げられる。
【0018】
また、別の態様によれば、本発明のカロテノイドとしては、アスタキサンチンを主成分とするカロテノイドが挙げられる。
【0019】
また、本発明のカロテノイドは、遊離体、脂肪酸エステル体であってもよい。上記カロテノイドは、吸収性の観点から、遊離体を使用することが好ましい。
【0020】
また、本発明のカロテノイドは、光学異性体、シス-トランス異性体等の立体異性体であってもよい。
アスタキサンチンの光学異性体としては、例えば、3S,3’S-体、3S,3’R-体(meso-体)、3R,3’R-体からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができ、好ましくは、3S,3’S-体である。また、アスタキサンチンは分子中央の共役二重結合のシス体、トランス体(all E-アスタキサンチン)である異性体またはそれら組み合わせであってもよい。シス体としては、例えば、9-シス体(9Z-アスタキサンチン)、13-シス体(13Z-アスタキサンチン)、15-シス体、ジシス体またはそれらの組み合わせが挙げられる。アスタキサンチンは、好ましくは、シス体、トランス体の異性体の組み合わせである。
アドニルビンのシス-トランス異性体としては、シス体、トランス体またはそれらの組み合わせであってもよく、シス体としては13-シス体を挙げることができる。
アドニキサンチンの光学異性体としては、3S,3’R-体、3S,3’S-体、3R,3’S-体および3R,3’R-体からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができ、好ましくは、3S,3’R-体である。また、アドニキサンチンのシス-トランス異性体としては、シス体、トランス体またはそれらの組み合わせであってもよい。アドニキサンチンのシス-トランス異性体として、好ましくは、シス体およびトランス体の組み合わせである。
【0021】
また、本発明のカロテノイドは有効成分として用いることが好ましい。
【0022】
本発明の一つの態様によれば、本発明のカロテノイドにおける、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩の質量比(アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩:アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩:アドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩)は、好ましくは1:0.01~10:0.01~10であり、より好ましくは1:0.03~9:0.03~9であり、さらに好ましくは1:0.05~8:0.05~8である。
【0023】
本発明の別の態様によれば、本発明のカロテノイドにおける、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩と、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩との質量比(アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩:アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩)は、好ましくは1:0.01~20であり、より好ましくは1:0.03~15であり、さらに好ましくは1:0.05~12である。
【0024】
本発明の別の態様によれば、本発明のカロテノイドにおける、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩とアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩との質量比(アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩:アドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩)は、好ましくは1:0.001~100であり、より好ましくは1:0.002~95であり、さらに好ましくは1:0.003~90である。
【0025】
本発明において、カロテノイドは、薬学的に許容可能な塩の形態であってもよく、これらの塩も本発明におけるカロテノイドに含まれる。本発明において、カロテノイドは、酸または塩基と塩を形成する場合もある。本発明において、薬学的に許容可能な塩は、アスタキサンチン、アドニルビンおよび/またはアドニキサンチンと薬学的に許容可能な塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
本発明のカロテノイドは、市販品であってもよく、あるいは従来の化学合成法により製造された化学合成品、微生物による発酵法、または微生物、動物もしくは植物等からの抽出および精製等により製造された微生物、動物または植物由来物(天然由来)を使用することができる。かかる微生物は、細菌、藻類、酵母を含む。ここで、微生物、動物または植物由来物とは、微生物、動物または植物から得られる産生物であり、好ましくは、パラコッカス属微生物由来物である。ここで、パラコッカス(Paracoccus)属微生物としては、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・マークシイ(Paracoccus marcusii)、パラコッカス・ヘウンデシス(Paracoccus haeundaensis)およびパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)が好ましく用いられ、より好ましくは、パラコッカス・カロティニファシエンスである。パラコッカス属微生物の具体的な菌株の例として、パラコッカス・カロティニファシエンス E-396株およびパラコッカス属細菌A581-1株(FERM BP-4671)が挙げられ、これらの変異株も本発明に好ましく用いられる。
【0027】
パラコッカス属微生物の培養方法(すなわち、パラコッカス属微生物からのカロテノイドの産生方法)、およびカロテノイドの抽出および精製方法は、例えば、下記の方法が挙げられる。
【0028】
パラコッカス属微生物の培養方法は、かかる微生物を培養できる方法であれば特に限定されないが、例えば、特開2007-319015号公報の実施例1に記載の方法に準じて実施できる。以下に簡単に記載する。
グルコース、肉エキス、ペプトン、塩化ナトリウム等を含む培地を試験管に入れ、蒸気殺菌する。これにE-396菌株(FERM BP-4283)を植菌し、往復振とう培養を行う。この培養液を遠心分離した後凍結乾燥し、カロテノイドを含む乾燥菌体を得る。
【0029】
カロテノイドの抽出および精製方法は、カロテノイドを抽出および精製できる方法であれば特に限定されないが、例えば、国際公開第2014/054669号に記載の方法に準じて実施できる。以下に簡単に記載する。
<エタノール抽出工程> 上記で得られた、カロテノイドを含むパラコッカス属微生物の乾燥菌体に、エタノールを加え、高圧容器内で窒素雰囲気下約90℃にて攪拌しながらカロテノイドの抽出を行う。冷却後(例えば、液温65℃)、圧力容器を開放し、濾過にて抽出液から菌体を除き、更に菌体ケークをエタノールにて洗浄して、カロテノイド含有抽出液を得る。
<抽出液の濃縮および結晶化工程> 上記のエタノール抽出工程で得られた抽出液を、減圧度を調節したロータリー・エバポレーターを用いてエタノールの一部を留去し、抽出液の固形分を濃縮し(例えば、1.25~20倍)、その後、この濃縮液について一晩熟成(例えば、30℃)を行い、結晶を析出させる。
<結晶の濾取および乾燥工程> 上記の抽出液の濃縮および結晶化工程で得られた結晶を含む液から、濾過にて結晶を回収する。回収した結晶を減圧乾燥(例えば、100℃で2時間)してカロテノイドの乾燥結晶を得る。
【0030】
さらに、本発明の組成物において、本発明のカロテノイドは、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンに加え、カンタキサンチン、アステロイデノン、β-カロテン、エキネノンおよび3-ヒドロキシエキネノンからなる群から選択される少なくとも一つをさらに含むことが好ましい。また、本発明のカロテノイドとして、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンに加え、カンタキサンチン、アステロイデノン、β-カロテン、エキネノンおよび3-ヒドロキシエキネノンをさらに含むことがより好ましい。例えば、特開2007-261972号公報、特開2009-50237号公報に記載の方法に準じてパラコッカス・カロティニファシエンスの乾燥菌体から抽出したカロテノイドは、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンを含み、好ましくはカンタキサンチン、アステロイデノン、β-カロテン、エキネノンおよび3-ヒドロキシエキネノンからなる群から選択される少なくとも一つをさらに含む。
【0031】
本発明の組成物におけるカロテノイドの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、組成物全体に対し、例えば、0.001~99.9質量%が挙げられ、好ましくは0.005~99.8質量%、より好ましくは0.007~99.7質量%、さらに好ましくは0.01~99.6質量%である。なお、上記カロテノイドの含有量は、例えば、上記カロテノイドがアスタキサンチンのみである場合アスタキサンチンの含有量であり、上記カロテノイドが複数種のカロテノイド(例えば、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチン)である場合、複数種のカロテノイドの合計の含有量とされる。本発明の組成物におけるアスタキサンチン、アドニルビンおよび/またはアドニキサンチンの含有量の測定は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により測定される。このような測定は、市販のHPLC装置(例えば、Waters製)およびカラム(例えば、Luna、5μm、Silica(2)、100Å,(150mmxφ4.6mm)(Phenomenex製))を用いることにより、簡便に行うことができる。上記測定としては、例えば、以下の条件により行うことができる。分析装置:2489 UV/Vis 検出器(Waters)を備えたAlliance e2695 Separation Modules(Waters)、カラム:Luna、5μm、Silica(2)、100Å,(150mmxφ4.6mm)(Phenomenex製)、移動相:n-ヘキサン/アセトン混合液(容量比82:12)、流量:毎分1.2mL、温度:室温付近一定温度、検出:470nm。ここで、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する標準液を用いることが望ましい。
【0032】
本発明の組成物は、上記カロテノイドと共に、所望により経口上許容可能または薬学的に許容可能な添加剤を配合した組成物として提供することができる。上記添加剤として、溶剤、溶解補助剤、溶解剤、滑沢剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、界面活性剤、ゲル化剤、調整剤、キレート剤、pH調整剤、緩衝剤、賦形剤、増粘剤、着色剤、芳香剤、甘味料または香料等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、上記カロテノイドおよび所望により経口上許容可能または薬学的に許容可能な添加剤を混合、溶解、分散、懸濁するなどの公知の手法により、調製することができる。また、本発明の組成物の調製においては、本発明の効果を妨げない限り、上記手法により調製された混合物、溶解物、分散物、懸濁物などに、均質化処理、殺菌処理や乾燥処理を施してもよい。
【0034】
また、本発明の組成物の形態は、本発明の効果を妨げない限り、特に制限されず、好ましくは、固形状、半固形状(ペースト状、ゲル状、ゼリー状を含む)または液状(油状、スラリー状を含む)が挙げられる。
【0035】
また、本発明の組成物の剤形は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、注射剤、錠剤(例えば、裸錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、徐放錠、口腔内崩壊錠、舌下錠、チュアブル錠等)、カプセル剤(例えば、硬カプセル、軟カプセル)、エリキシル剤、丸剤、粉剤、散剤、顆粒剤、水剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、乳剤、懸濁剤、液剤、ゼリー剤、吸入剤、エアロゾル剤、粉末吸入剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、バップ剤、ローション剤、点滴剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤が挙げられる。本発明の組成物の剤形は、経口摂取または投与用の剤形であることが好ましく、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、乳剤、液剤、懸濁剤、水剤、トローチ剤、ゼリー剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物の摂取または投与方法としては、特に限定されないが、点滴、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射等の注射、経口、経粘膜、経皮、鼻腔内、口腔内、腹腔内等による摂取または投与が挙げられ、好ましくは、経口摂取または経口投与、である。
【0037】
本発明の組成物としては、食品もしくは飲料等の飲食品、食品添加物等の飲食品添加物、飼料、医薬品、医薬部外品、または化粧料が挙げられ、摂取の簡便性の観点から飲食品が好ましい。
【0038】
本発明の飲食品は、本発明の組成物をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、他の有効成分(例えば、乳酸菌、バチルス属菌(Bacillus)等の細菌、酵母等の真菌、食物繊維、DHAまたはEPA)等を更に配合したもの、本発明の組成物を溶液状等の液状、半固形状または固形状にしたものでよく、また、本発明の組成物を一般の飲食品へ添加したものであってもよい。
【0039】
上記飲食品としては、具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類;栄養ドリンク;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉等の小麦粉製品;飴、グミ、ゼリー、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類;栄養バー;スポーツバー;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、シリアル等の農産加工品;ハム、ベーコン、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工食品:冷凍食品等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の飲食品には、健康食品、サプリメント、機能性食品(例えば、特定保健用食品、栄養機能食品または機能性表示食品を含む)、栄養補助食品、特別用途食品(例えば、病者用食品、乳児用調製粉乳、妊産婦、授乳婦用粉乳またはえん下困難者・咀嚼困難者用食品を含む)または乳児用液体調製乳(乳児用液体ミルクともいう)も包含される。後述のように、本発明の組成物は睡眠の質の改善作用を有することから、睡眠の質の改善のための飲食品が提供される。すなわち、本発明の飲食品は、例えば、起床時に眠気が強いヒトのため、または、睡眠に問題があるヒトのための飲食品として提供できる。さらに、機能性食品等の飲食品において、「眠りが浅くぐっすり眠れていない方に」、「睡眠の質が気になる方に」等の表示を付して提供してもよい。
【0041】
本発明の組成物の摂取量または投与量は、特に限定されず、組成物の処方、カロテノイドの種類、純度、対象の種類、対象の年齢または体重、症状、摂取または投与時間、組成物の形態、摂取または投与方法、本発明のカロテノイド以外のカロテノイドまたは薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。また、本発明の組成物は、睡眠の質の改善のための有効量となるように、1日の摂取量単位の形態から構成されることが好ましい。例えば、本発明の組成物を経口摂取する場合、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドが体重60kgの成人1人1日当たり0.01~1000mg、好ましくは0.05~100mg、より好ましくは0.1~50mgの範囲の摂取量または投与量となるように該カロテノイドを組成物に配合することができる。本発明のカロテノイドと組み合わせて用いる本発明のカロテノイド以外のカロテノイドまたは薬剤も、それぞれ臨床上用いられる摂取量または投与量を基準として適宜決定できる。
【0042】
また、本発明の組成物の1日の摂取量または投与量は、上述の組成物の摂取量または投与量と同様、組成物の処方等に応じて適宜選択されるものである。本発明の組成物の1日の摂取量または投与量は、例えば1回または複数回で対象に摂取させるかまたは投与してもよいが、1~5回で対象に摂取させるかまたは投与することが好ましい。したがって、本発明の組成物の1日の摂取または投与回数は、1日に1~5回であり、好ましくは、1日に1~3回であり、より好ましくは、1日に1~2回である。
【0043】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組成物を適用する対象は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒト等の霊長類、犬、猫である。当該対象は健常者(健常動物)であっても患者(患者動物)であってもよい。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の組成物を適用する対象としては、抑うつ気分のヒトが挙げられる。ここで、抑うつ気分としては、悲しい、むなしい、憂鬱だ、気が滅入る、気が沈むなど、気分が落ち込んだ状態が挙げられ、例えば、後述のPOMS(Profile of Mood States)2日本語版を用いて評価することができる。かかる抑うつ気分であるとは、好ましくは、POMS2日本語版の[抑うつと落ち込み(Depression-Dejection:DD)]のTスコアが65点より高いことが挙げられる。かかる[抑うつと落ち込み]のTスコアの上限値としては、92点が挙げられ、好ましくは、91点であり、より好ましくは、90点である。
【0045】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明の組成物を適用する対象としては、疲労感を有するヒトが挙げられる。ここで、疲労感を有するヒトとしては、例えば、日本疲労学会の抗疲労臨床評価ガイドライン第5版の疲労感VAS(Visual Analogue Scale)検査において、疲労感VASが70mm以上であるヒトが挙げられる。かかる疲労感VASの上限値としては、100mmが挙げられ、好ましくは、99mmであり、より好ましくは、98mmである。
【0046】
本発明における「睡眠の質」とは、身体および脳が睡眠によりどの程度休むことができているか、つまり睡眠の良好さの程度を意味し、睡眠障害を有する不安症の患者の睡眠の質は除かれる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、上記「睡眠の質」は、健常者の睡眠の質である。睡眠の質は、例えば、起床時眠気、入眠と睡眠維持(例えば、すぐに寝付いて中途覚醒などなく安定して睡眠が続くこと)、夢み(例えば、頻繁に夢を見ることや悪夢を見ることがないこと)、および睡眠時間の満足感(例えば、時間不足感のない睡眠)からなる群から選択される少なくとも一種のもので示される。このうち、睡眠の質は、起床時眠気で示されることが好ましい。睡眠の質は、試験例に示すとおり、睡眠の質VASを用いて評価できる。また、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感は、試験例に示すとおり、OSA起床時睡眠感調査票(MA版)を用いて評価できる。
【0047】
本発明の組成物によれば、睡眠の質を改善することができ、好ましくは、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものを改善することができる。したがって、本発明の組成物によれば、睡眠の質を改善することが可能である。したがって、本発明の一つの態様によれば、本発明の組成物は、睡眠の質の改善のための組成物として提供される。本発明において「睡眠の質の改善」とは、好ましくは、上記の睡眠の質の改善または向上を意味する。睡眠の質の改善とは、例えば、起床時の眠気が改善されていること(例えば、気持ちよく目覚めること)、入眠と睡眠維持(例えば、寝つきと熟眠感)が改善されていること、夢み(夢見)が改善されていること(例えば、頻繁に夢を見ることや悪夢を見ることがなくなる)、睡眠時間の満足感(例えば、睡眠時間に不足感がない)が改善されていることから判断できる。睡眠の質が改善されていることは、試験例の条件にて確認することができる。特に、本発明の好ましい態様によれば、本発明の組成物は、アスタキサンチンと共に、アドニルビンおよびアドニキサンチンを含有することにより、起床時の眠気、入眠と睡眠維持、夢み(夢見)、および睡眠時間の満足感の全てを改善できる上で有利である。
【0048】
本発明の別の態様によれば、対象の睡眠の質を改善する方法であって、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドを有効量含んでなる組成物を対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、対象の睡眠の質を改善する方法が提供される。上記睡眠の質の改善としては、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善が好ましい。ここで、「有効量」とは、1日の摂取量単位における、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの含有量等と同様に設定することができる。本発明のさらに別の態様によれば、上述の睡眠の質を改善する方法は、対象が健常者である場合、ヒトに対する医療行為を除く非治療的方法とされる。ここで、ヒトに対する医療行為とは、医師等の処方を必要として、ヒトに対して医薬品を摂取させる(投与する)行為等を意味する。本発明の睡眠の質を改善する方法は、本発明の組成物について、本明細書に記載された内容に従って実施することができる。
【0049】
また、本発明の別の態様によれば、睡眠の質の改善のための、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの使用が提供される。上記睡眠の質の改善としては、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善が好ましい。
【0050】
また、本発明の別の態様によれば、睡眠の質の改善のための組成物としての、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの使用が提供される。上記睡眠の質の改善としては、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善が好ましい。
【0051】
また、本発明の別の態様によれば、睡眠の質の改善のための組成物の製造における、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドの使用が提供される。上記睡眠の質の改善としては、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善が好ましい。
【0052】
また、本発明の別の態様によれば、睡眠の質の改善のための、アスタキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩、アドニルビンまたはその薬学的に許容可能な塩、およびアドニキサンチンまたはその薬学的に許容可能な塩を含むカロテノイドが提供される。上記睡眠の質の改善としては、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、および睡眠時間の満足感からなる群から選択される少なくとも一種のものの改善が好ましい。
【0053】
上記の使用、化合物(カロテノイド)の態様は何れも、本発明の組成物または方法に関する記載に準じて実施することができる。
【実施例0054】
以下、調製例、試験例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの例示に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本発明で用いられる全部のパーセンテージや比率は質量による。また、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
【0055】
以下の調製例における、アスタキサンチン等のカロテノイドの定量は、次のようにして行った。
【0056】
アスタキサンチン等のカロテノイドの定量方法
アスタキサンチン等のカロテノイドの定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。カラムはLuna、5μm、Silica(2)、100Å(150mm x φ4.6mm)(Phenomenex製)を使用した。分析装置は、2489UV/Vis 検出器(Waters)を備えたAlliance e2695 Separation Modules(Waters)を用いた。溶出は、移動相であるn-ヘキサン/アセトン混合液(容量比82:12)を室温付近一定の温度にて毎分1.2mLの流量で流通することで行った。測定においては、移動相にて希釈したサンプル10μLを注入量とし、カラム溶離液中のカロテノイドの検出は波長470nmで行った。また、定量のための標準品としては、シグマ社製アスタキサンチン(Cat.No.A9335)を用いた。標準液のアスタキサンチン濃度の設定は、標準液の474nmの吸光度(A)および上記条件でHPLC分析を行ったときの標準液のall E-アスタキサンチン(トランス体)のピークの面積百分率%(B)を測定した後に、以下の式を用いて行った。
標準液のアスタキサンチンの濃度(mg/L)=A÷2121×B×希釈倍率・・・(1)
【0057】
(サンプル調製方法)
乾燥菌体の場合:
以下、テトラヒドロフランは、酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエン 250ppm含有品を使用した。50mLのチューブに、サンプル55~75mgを精秤し、次いで蒸留水を150μL添加した。ここに、テトラヒドロフラン/メタノール=20/1を15mL添加し、5分間十分混合した後、ヘキサンを30mL添加した。得られた液を遠心分離して不溶物を沈殿させ、上清をHPLCの移動相で10倍希釈し、HPLCで分析を行った。
乾燥結晶の場合:
50mLのメスフラスコに、サンプル17~23mgを精秤し、テトラヒドロフラン/メタノール=20/1を15mL添加し、5分間十分混合した後、テトラヒドロフラン/メタノール=20/1で50mLにメスアップした。得られた液5mLを別の50mLメスフラスコに採取し、HPLCの移動相で50mLにメスアップし希釈液を得た。得られた希釈液5mLをさらに別の50mLメスフラスコに採取し、HPLCの移動相で50mLにメスアップして得られた注入液を用いて、HPLCで分析を行った。
アスタキサンチン含有粉末の場合:
50mLチューブに、サンプル0.15~0.25gを精秤し、次いで蒸留水を2.5mL添加し、超音波処理2分を行った。その後、テトラヒドロフラン/メタノール=20/1を5mL添加し、ボルテックスミキサー攪拌抽出した。そこに10mLのn-ヘキサンを添加混合した後に遠心し、得られた上層を50mLメスフラスコに採取した(1回目)。下層にテトラヒドロフラン/メタノール=20/1を5mL添加し、ボルテックスミキサー攪拌抽出した。そこに、10mLのn-ヘキサンを添加混合した後に遠心し、得られた上層を1回目の上層が入っている50mLメスフラスコに採取した(2回目)。同様に3回目の抽出を行い、上層を上記50mLメスフラスコに採取した。その後、上記50mLメスフラスコにおいて、得られた上層をHPLC移動相で50mLにメスアップし希釈液を得た。得られた希釈液5mLを新たな50mLメスフラスコに採取し、再度HPLC移動相で50mLにメスアップして得られた注入液を用いて、HPLC分析を行った。
【0058】
(計算方法)
アスタキサンチン濃度は式(2)に従って、その他カロテノイド濃度は式(3)に従って算出した。
アスタキサンチン(mg/g)=(標準液中のアスタキサンチン濃度(mg/L))/(アスタキサンチン標準液のピークエリア)×(サンプル中のアスタキサンチンピークエリア)/(サンプル質量(mg))×係数*1×C*2・・・(2)
その他のカロテノイド濃度は、式(3)に従って算出した。
その他カロテノイド*3(mg/g)=(標準液中のアスタキサンチン濃度(mg/L))/(アスタキサンチン標準液のピークエリア)×(サンプル中の対象カロテノイドピークエリア*4)/(サンプル質量(mg))×係数*1×C*2・・・(3)
いずれもトランス体およびシス体の量を合計した。
*1:係数はall E-アスタキサンチン(トランス体)と比べ、HPLC面積当たりの濃度が異なると想定されたものに対して用いる。具体的には、9Z-アスタキサンチンが1.2、13Z-アスタキサンチンが1.6、アドニキサンチンが1.5であり、その他は1とした。)
*2:Cは、乾燥菌体の場合、450mlであり、乾燥結晶の場合、5,000mlであり、アスタキサンチン含有粉末の場合、500mlである。)
*3:その他カロテノイドとは、アドニルビン、アドニキサンチンをいう。)
*4:その他カロテノイドのピークに関し、その他カロテノイドの溶出時間は、事前に精製し質量分析を行ったカロテノイドを用いて確認した。)
【0059】
調製例1:アスタキサンチン含有食品の調製
国際公開第2014/054669号の実施例2に記載の方法に準じて、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)からアスタキサンチン含有結晶を得た。その後、得られたアスタキサンチン含有結晶を用いてアスタキサンチンを含むカロテノイドを含有する粉末(以下、アスタキサンチン含有粉末ともいう)を得た。以下に簡単に記載する。
【0060】
工程1:E-396菌株の培養工程
特開2007-319015号公報の実施例1に記載の方法に準拠してE-396菌株(FERM BP-4283)の培養を行い、培養物として1g中に約17mgのアスタキサンチンを含むカロテノイドを含有する乾燥菌体を得た。
【0061】
工程2:エタノール抽出工程
本調製例の工程1で得られた乾燥菌体100kgに、エタノール2200kgを加え、高圧容器内で窒素雰囲気下90℃にて15分間攪拌しながらアスタキサンチンを含むカロテノイドの抽出を行った。液温を65℃に冷却後、圧力容器を開放し、濾過にて抽出液から菌体を除き、更に菌体ケークをエタノールにて洗浄してアスタキサンチン0.07%(wt/wt)、カロテノイド重量濃度0.1%(wt/wt)の抽出液2200kgを得た。
【0062】
工程3:抽出液の濃縮、加熱処理(インキュベーション)および結晶化工程
本調製例の工程2で得られた抽出液を、缶温30℃となるように減圧度を調節し、ロータリー・エバポレーターを用いてエタノールの一部を留去し、固形分濃度を抽出液の5倍(アスタキサンチン重量濃度0.35%(wt/wt)、カロテノイド重量濃度0.5%(wt/wt))に濃縮し、その後この濃縮液を60℃で4時間窒素雰囲気下に加熱(インキュベーション)処理し、その後缶温30℃で一晩熟成を行い、結晶を析出させた。
【0063】
工程4:結晶の濾取、洗浄および乾燥工程
本調製例の工程3で得られた結晶を含む液から、濾過にて結晶を回収した。この結晶を100℃で2時間減圧乾燥して乾燥結晶1700gを得た。
【0064】
工程1~4を繰り返し、得られた乾燥結晶を一つに混合し、まとめた。カロテノイド含有量を上述の「アスタキサンチン等のカロテノイドの定量方法」により定量した。その結果、カロテノイド含有量は、アスタキサンチン含量70%、アドニルビン含量10%、アドニキサンチン16%であった。
【0065】
工程5:アスタキサンチン含有粉末の調製工程
本調製例の工程4で得られた乾燥結晶に、アラビアガム、マルトデキストリン、トコフェロール、中鎖脂肪酸およびアスコルビン酸を添加し、混合し、水中で溶解させた。その後、乳化させ、スプレードライすることで、アスタキサンチン含有粉末を得た。
得られた粉末のカロテノイド含有量は、アスタキサンチン1%、アドニルビン0.17%およびアドニキサンチン0.18%であった。
【0066】
アスタキサンチンが2mgとなるように上記アスタキサンチン含有粉末を含み、さらに、キシリトール、pH調整剤、甘味料、ゲル化剤、香料(ミックスベリー)および水を表1の含有量で含むゼリー状のアスタキサンチン含有食品を調製した。アスタキサンチン含有粉末の代わりに食用色素(食用赤色2号、アマランス)および水を用い、各成分の含有量を表1に示した通りとした以外はアスタキサンチン含有食品と同様にして、対照食品を調製した。
【表1】
【0067】
試験例1:アスタキサンチン含有食品による睡眠の質への影響の検討
試験概要は以下の通りであった。
・対象:年齢20~64歳の成人男女
・被験者数:60名(30名×2群)
なお、被験者の体重(kg)は以下の通りであった(平均値±標準偏差)。
アスタキサンチン含有食品摂取群:58.47±9.77
対照食品摂取群: 57.97±12.67
・研究デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較研究
・摂取量:アスタキサンチン12mg/日
・摂取方法:1日に2回、朝食後および夕食後に各3袋(合計30g)ずつ、合計6袋
・摂取期間:8週間
【0068】
<被験者の選択>
次の選択基準に合致し、除外基準に抵触しない者を被験者として選択した。
選択基準
(1) 年齢20歳以上64歳以下の男女
(2) POMS2日本語版の[抑うつ-落ち込み]のスコアが上位の者から優先して選択する。
除外基準
(1) 事前検査時の自覚症状の調査(VAS)の結果、「日常生活でのストレスの感じ方の強さ」が0mm(まったく感じられない)の者
(2) 現在、アスタキサンチンを含む健康食品、サプリメント、医薬部外品、医薬品を常用している者
(3) 本研究期間中に昼夜交代制勤務や夜勤を行う者または重量物運搬等の肉体労働に従事している者
(4) 喫煙習慣のある者
(5) 就寝時刻が2:00以降の者
(6) 飲酒量が1日平均純アルコール量として60gを超える者
(7) 定期的な労務に従事していない者
(8) これまでにサージカルテープでかぶれたことがある者、あるいは肌が弱くかぶれる可能性がある者、またはテープがはがれやすい者
(9) 治療中の疾患を有する者、または治療が必要と判断される疾患を有する者
(10) 睡眠時無呼吸症候群の治療中または診断歴がある者、あるいはそれが強く疑われる者
(11) 慢性疲労症候群と診断されたことがある者
(12) 事前検査の1ヶ月前から現在、あるいは研究期間中に、歯や口腔内の治療(定期的なスケーリング(歯の掃除)も含む、虫歯、歯周病等の治療)を行っている、あるいは行う予定がある者
(13) 出血を伴う歯や口腔内のトラブル(口内炎など)がある、あるいは高頻度で発症し、結果に影響すると考えられる者
(14) 糖尿病、肝疾患、腎疾患、心疾患等の重篤な疾患のある者およびその既往症を有する者
(15) 生活習慣アンケートや各種アンケートの回答から、被験者として不適当と判断された者
(16) 本研究期間中に実施する各種検査の手順を規定どおりに実施できない者(起床直後のOSA睡眠調査票MA版への記入など)
(17) 研究に関連してアレルギー発症のおそれがある者
(18) 摂取開始前の身体測定値、理学検査値および臨床検査値に、基準範囲から著しく外れた値がみられる者
(19) 本研究への参加同意取得前1ヶ月以内に他の臨床試験・研究に参加していた者および参加同意取得後に他の臨床試験・研究に参加予定の者
(20) 研究期間中に妊娠、授乳の予定がある者
(21) その他、実施医師責任者が被験者として不適当と判断した者
【0069】
<試験スケジュール>
(1) 被験者候補を事前検査に来院させ、体調確認・計測・一般臨床検査(採血・採尿)の他に生活習慣アンケート、POMS2日本語版、自覚症状の調査(VAS(ストレス、睡眠、疲労感))への記入を実施した。ここで、計測では、身長(事前検査のみ)、体重の測定、理学検査(血圧、脈拍の測定)、BMIの算出を行った。また、一般臨床検査としては、以下の検査を行った。
[血液学検査] 白血球数、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット、血小板数
[血液生化学検査] 総蛋白、アルブミン、総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン、ALP、AST(GOT)、ALT(GPT)、LD、γGT(γGTP)、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、Na、K、CL、血糖、HbA1c(事前検査のみ)
[尿検査(定性)] 蛋白、糖、潜血反応
(2) 事前検査結果から研究の目的に適した被験者を60名選択し、説明会にてOSA-MAを配付した。
(3) 選択した被験者に対して、摂取開始時検査の検査日前の勤務日10日間のうち、5日間の朝にOSA睡眠調査票MA版(OSA-MA)を実施させた。なお、OSA-MAは起床後5分以内に実施させた。なお、摂取開始時の得点としては5日間のうち検査日に最も近い日に実施したOSA-MAの得点を採用した。
(4) 選択した被験者を摂取開始時検査に来院させ、体調確認、採血、POMS2 日本語版、VAS(ストレス、睡眠、疲労感)への記入を実施した。検査が終了した被験者に、摂取期間中日誌を配布し、アスタキサンチン含有食品または対照食品の摂取および摂取期間中日誌の記録を開始させた。
(5) 被験者に対して、4週目検査日前の勤務日10日間のうち、5日間の朝にOSA睡眠調査票MA版(OSA-MA)を実施させた。なお、4週目検査日の得点としては5日間のうち検査日に最も近い日に実施したOSA-MAの得点を採用した。
(6) 被験者を摂取から4週目(29日目)、8週目(57日目)に来院させ、各種検査として、体調確認、POMS2日本語版、VAS(ストレス、睡眠、疲労感)への記入を実施させた。さらに8週目検査では計測、一般臨床検査(採血・採尿)も実施した。
【0070】
<検査内容>
(1) POMS2日本語版では、[怒り-敵意(AH)]、[混乱-当惑(CB)]、[抑うつ-落ち込み(DD)]、[疲労-無気力(FI)]、[緊張-不安(TA)]、[活気-活力(VA)]、[友好(F)]の7尺度と、総合的に表す「TMD得点」からの気分状態を評価した。POMS2日本語版としては成人用全項目版を用い、POMS2日本語版マニュアル(株式会社金子書房POMS2日本語版マニュアル)の成人用 全項目版 T得点表(20代~60代)に従い、Tスコアを算出した。
(2) 自覚症状の調査(VAS(疲労感))では、「疲労感」について日本疲労学会の抗疲労臨床評価ガイドライン第5版(http://www.hirougakkai.com/guideline.pdf)の疲労感VAS(Visual Analogue Scale)検査(http://www.hirougakkai.com/VAS.pdf)を用い、自覚症状の調査を行った。具体的には、疲労感VAS検査は、各被験者に、左端(0mm)を「これまで経験したことのないような、疲れを全く感じない最良の感覚」とし、右端(100mm)を「これまで経験したことのないような、何もできないほど疲れきった最悪の感覚」として設定された100mmの直線上に、来院時感じている疲労感を示してもらう方法で行われた。
VAS(睡眠)、VAS(ストレス)では、それぞれ「睡眠の質」、「日常生活でのストレスの感じ方の強さ」について疲労感VASを参考として作成するVASにより自覚症状の調査を行った。具体的には、「睡眠の質」に関しては、各被験者に、左端(0mm)を「これまで経験したことのないような、睡眠の質が最良の感覚」とし、右端(100mm)を「これまで経験したことのないような、睡眠の質が最悪の感覚」として設定された100mmの直線上に、来院時に感じた睡眠の質を示してもらう方法で行われた。「日常生活でのストレスの感じ方の強さ」に関しては、各被験者に、左端(0mm)を「これまで経験したことのないような、ストレスを全く感じない最良の感覚」とし、右端(100mm)を「これまで経験したことのないような、ストレスフルな最悪の感覚」として設定された100mmの直線上に、来院時に感じたストレスを示してもらう方法で行われた。
(3) OSA-MA(起床時の睡眠評価)では、OSA起床時睡眠感調査票(MA版)を用いて睡眠の質の評価を行った。具体的には、「山本由華吏他、中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠感調査票(MA版)の開発と標準化、脳と精神の医学、1999、10、401-409」で報告されている方法に従い、被験者にOSA起床時睡眠感調査票を記入させ、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子IV(疲労回復)、因子V(睡眠時間)について、一般社団法人日本睡眠改善協議会にて配布されている睡眠内省得点変換用ファイル(http://www.jobs.gr.jp/osa_ma.htmlから入手可能なOSA_MAforZ.xls)を基にZc得点(反応尺度値)を算出した。OSA起床時睡眠感調査票(MA版)は、各因子の信頼性、妥当性ともに検証されており、いずれの因子においても得点が高い方が改善方向である。
【0071】
<試験結果>
60名の被験者のうち、1名(対照食品摂取群)が本人の意思で脱落し、所定の研究スケジュールや研究内容を終了した者は59名であった。アスタキサンチン含有食品摂取群では、摂取が終了した30名のうち4名についてアスタキサンチン含有食品摂取が確認されず、1名について過度な飲酒が確認されたため有効性解析から除外された。その結果、54名で有効性解析が行われた。
【0072】
上記解析として、摂取開始時のPOMS2のDD(抑うつ-落ち込み)または摂取開始時の疲労感VASで被験者を層別し解析を行った。具体的には、POMS2のDDによる層別解析では、各群の被験者を、各群のPOMS2のDDの中央値である65点より高い層と65点以下の層に分けた。アスタキサンチン含有食品摂取群のうち、POMS2のDDのTスコアが65点より高い層は12名であり、DDのTスコアが65点以下の層は13名であった。対照食品摂取群のうち、POMS2のDDのTスコアが65点より高い層は14名であり、DDのTスコアが65点以下の層は15名であった。なお、各層における被験者背景(性別、年齢、身長、体重、BMI、血圧、脈拍数、POMS2のスコア)で群間に有意な差がみられた項目はなかった。ここで、POMS2のDDのTスコアが65点より高い層における、アスタキサンチン含有食品摂取群の体重(kg)(平均値±標準偏差)は61.33±8.75であり、当該層における対照食品摂取群の体重(kg)(平均値±標準偏差)は59.15±13.88であった。また、POMS2のDDのTスコアが65点より高い層における、アスタキサンチン含有食品摂取群のPOMS2のDDのTスコア(平均値±標準偏差)は71.8±4.2であり、当該層における対照食品摂取群のPOMS2のDDのTスコア(平均値±標準偏差)は69.9±2.1であった。
また、疲労感VASによる層別解析では、各群の被験者を疲労感VASが70mm以上の層と、疲労感VASが70mm未満の層に分けた。アスタキサンチン含有食品摂取群のうち、疲労感VASが70mm以上の層は13名であり、疲労感VASが70mm未満の層は12名であった。対照食品摂取群のうち、疲労感VASが70mm以上の層は15名であり、疲労感VASが70mm未満の層は14名であった。なお、各層における被験者背景(性別、年齢、身長、体重、BMI、血圧、脈拍数、POMS2のスコア)で群間に有意な差がみられた項目はなかった。ここで、疲労感VASが70mm以上の層における、アスタキサンチン含有食品摂取群の体重(kg)(平均値±標準偏差)は58.74±7.73であり、当該層における対照食品摂取群の体重(kg)(平均値±標準偏差)は61.27±15.35であった。また、疲労感VASが70mm以上の層における、アスタキサンチン含有食品摂取群の疲労感VAS(平均値±標準誤差)は80.29±1.68mmであり、対照食品摂取群の疲労感VAS(平均値±標準誤差)は78.18±1.50mmであった。
【0073】
POMS2のDDによる層別解析では、DDのTスコアが65点より高い層において、アスタキサンチン含有食品摂取群におけるOSA-MAの因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子V(睡眠時間)の4週目における変化量が、対照食品摂取群の変化量と比較して有意に増加(改善)した。なお、変化量は4週目の得点と摂取開始時の得点の差(4週目の得点-摂取開始時の得点)である。結果を表2に示す。表2から、アスタキサンチンと共にアドニキサンチンおよびアドニルビンを含有するアスタキサンチン含有食品を摂取した群は、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)および因子V(睡眠時間)の全てが有意に改善されたことがわかる。
【表2】
【0074】
疲労感VASによる層別解析では、疲労感VASが70mm以上である層において、アスタキサンチン含有食品摂取群のVAS(睡眠)の8週目における変化量が対照食品摂取群の変化量と比較して有意に減少(改善)した。なお、変化量は8週目の実測値と摂取開始時の実測値の差(8週目の実測値-摂取開始時の実測値)である。結果を表3に示す。
【表3】