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特開2022-188312パワーモジュールおよびパワーモジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188312
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】パワーモジュールおよびパワーモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20221214BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/36 A
H01L23/36 D
H01L23/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019214101
(22)【出願日】2019-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 時人
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕二朗
【テーマコード(参考)】
4M109
5F136
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109CA04
4M109DA02
4M109DB02
4M109DB09
4M109DB14
4M109EE20
4M109GA05
5F136BA06
5F136BC07
5F136DA07
5F136DA22
5F136EA29
5F136EA70
(57)【要約】
【課題】従来では、摩擦撹拌接合に寸法精度が要求され、フィン外周の薄肉部分を変形させるなど一連の製造工程も複雑化し、生産性が低下してコストを上げていた。
【解決手段】樹脂部材332は、モジュールケース341と回路体100との間の空間、すなわち、ケース枠体342、放熱ベース344、回路体100、絶縁シート333の間に充填される。さらに、樹脂部材332は、放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間にある隙間354にも充填され、隙間354に充填された樹脂部材332の少なくとも一部は、モジュールケース341の外側に露出している。隙間354の幅は、例えば、成形性を考慮して50μm以上である。樹脂部材332は、隙間354の全周に充填され、ケース枠体342と放熱ベース344をシールする。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路体と、
一面に開口が形成されたケース枠体と前記開口内に配置される放熱ベースとを含み、前記回路体を収納するモジュールケースと、
前記モジュールケースと前記回路体との間の空間、および前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間に充填される樹脂部材と、を備え、
前記隙間に充填された前記樹脂部材の少なくとも一部は、前記モジュールケースの外側に露出しているパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーモジュールにおいて、
前記モジュールケースは、両面に前記開口が形成されたケース枠体と前記各開口内にそれぞれ配置される放熱ベースとを含み、
前記樹脂部材は、前記モジュールケースと前記回路体との間の空間、および前記各開口の内周面と前記各放熱ベースの外周面との間の隙間に充填されるパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパワーモジュールにおいて、
前記放熱ベースは、複数の放熱フィンを有し、
前記放熱フィンの側部と前記ケース枠体のフランジと間に、前記隙間を通して前記樹脂部材により形成されたスペーサが配置されるパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のパワーモジュールにおいて、
前記回路体と前記放熱ベースとの間に絶縁シートが配置され、
前記放熱ベースの主面に垂直な方向から投影した場合、前記隙間は、前記絶縁シートの外周側に形成されるパワーモジュール。
【請求項5】
一面に開口が形成されたケース枠体の中に、前記開口と対向する位置に回路体を配置する第1工程と、
放熱ベースを前記ケース枠体の前記開口と対向する位置に配置し、前記放熱ベースを絶縁シートを介して前記回路体に接着する第2工程と、
前記ケース枠体と前記回路体との間の空間、および前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間に樹脂部材を充填する第3工程と、を備えるパワーモジュールの製造方法。
【請求項6】
一面に開口が形成されたケース枠体の中に、前記開口と対向する位置に回路体を配置する第1工程と、
放熱ベースを前記ケース枠体の前記開口と対向する位置に配置し、前記放熱ベースを絶縁シートを介して前記回路体に接着する第2工程と、
前記ケース枠体と前記回路体との間の空間に樹脂部材を充填し、さらに前記放熱ベースに設置された放熱フィンの側部と前記ケース枠体のフランジと間に、前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間を通して前記樹脂部材を充填して、前記樹脂部材によりスペーサを形成する第4工程と、を備えるパワーモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールおよびパワーモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子のスイッチングを用いた電力変換装置は、変換効率が高いため、民生用、車載用、鉄道用、変電設備等に幅広く利用されている。例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車においては搭載される部品の性能向上が重要視され、小型化や低コスト化が求められている。
【0003】
特許文献1には、半導体モジュールを内部に収納するケース本体の両面に開口がそれぞれ設けられ、各開口の周縁にフィン付き放熱板のベース部とケース本体の基台部とが摩擦攪拌接合により溶接されたパワーモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-39615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、摩擦撹拌接合に寸法精度が要求され、フィン外周の薄肉部分を変形させるなど一連の製造工程も複雑化し、生産性が低下してコストを上げていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるパワーモジュールは、回路体と、一面に開口が形成されたケース枠体と前記開口内に配置される放熱ベースとを含み、前記回路体を収納するモジュールケースと、前記モジュールケースと前記回路体との間の空間、および前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間に充填される樹脂部材と、を備え、前記隙間に充填された前記樹脂部材の少なくとも一部は、前記モジュールケースの外側に露出している。
本発明によるパワーモジュールの製造方法は、一面に開口が形成されたケース枠体の中に、前記開口と対向する位置に回路体を配置する第1工程と、放熱ベースを前記ケース枠体の前記開口と対向する位置に配置し、前記放熱ベースを絶縁シートを介して前記回路体に接着する第2工程と、前記ケース枠体と前記回路体との間の空間、および前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間に樹脂部材を充填する第3工程と、を備える。
本発明によるパワーモジュールの製造方法は、一面に開口が形成されたケース枠体の中に、前記開口と対向する位置に回路体を配置する第1工程と、放熱ベースを前記ケース枠体の前記開口と対向する位置に配置し、前記放熱ベースを絶縁シートを介して前記回路体に接着する第2工程と、前記ケース枠体と前記回路体との間の空間に樹脂部材を充填し、さらに前記放熱ベースに設置された放熱フィンの側部と前記ケース枠体のフランジと間に、前記開口の内周面と前記放熱ベースの外周面との間の隙間を通して前記樹脂部材を充填して、前記樹脂部材によりスペーサを形成する第4工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パワーモジュールの生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係わる回路体の回路構成図である。
図2】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの外観図である。
図3】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの正面図である。
図4】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの分解斜視図である。
図5】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの断面図である。
図6】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの製造の第1工程を示す図である。
図7】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの製造の第2工程を示す図である。
図8】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの製造の第2工程を示す図である。
図9】第1の実施形態に係わるパワーモジュールの製造の第3工程を示す図である。
図10】第2の実施形態に係わるパワーモジュールの正面図である。
図11】第2の実施形態に係わるパワーモジュールの断面図である。
図12】第2の実施形態に係わるパワーモジュールの製造の第4工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、回路体100の回路構成図である。
図1に示すように、回路体100は、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lを備える。パワー半導体素子321U、321LはIGBTである。パワー半導体素子322U、322Lはダイオードである。なお、パワー半導体素子321U、321L、322U、322LはFETなどであってもよい。
【0012】
回路体100は、上アーム300Uと下アーム300Lで構成される。上アーム300Uは、パワー半導体素子321Uとダイオード322Uで構成される。下アーム300Lは、パワー半導体素子321Lとダイオード322Lで構成される。上アーム300Uは、直流正極端子311と信号端子314を有する。下アーム300Lは、直流負極端子312と信号端子315を有する。
【0013】
直流正極端子311および、直流負極端子312は、図示省略したコンデンサなどと接続され、回路体100の外部から電力を供給する。信号端子314、315は、図示省略した制御基板に接続され、パワー半導体素子321U、321Lのスイッチング動作を制御する。
【0014】
回路体100は、交流端子313を備える。交流端子313は、上アーム300Uと下アーム300Lを電気的に接続し、回路体100の外部に交流の電流を出力する。
【0015】
図2はパワーモジュール300の外観図である。
図2に示すように、パワーモジュール300は、モジュールケース341を備える。モジュールケース341内には回路体100が収納される。モジュールケース341は天面353に入口開口351を有する。入口開口351は、樹脂部材332が充填されている。樹脂部材332からは、直流正極端子311、直流負極端子312、交流端子313、信号端子314、315が突出している。
【0016】
図3は、パワーモジュール300の正面図である。
図3に示すように、モジュールケース341は、ケース枠体342と放熱ベース344で構成される。ケース枠体342は、天面353と垂直をなす面に放熱部開口352を有する。放熱部開口352には、放熱ベース344がはめ込まれている。すなわち、モジュールケース341は、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342と放熱部開口352内に配置される放熱ベース344とを含み、回路体100を収納する。ケース枠体342は、フランジ346を有する。
【0017】
放熱ベース344には、冷却水などの冷媒を流通させて放熱する複数の放熱フィン343が設置される。放熱フィン343は、放熱ベース344の一方の面に設置される。ケース枠体342は、放熱ベース344の全周に隙間354を持つように配置される。隙間354は、放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間である。隙間354は、樹脂部材332が充填され、ケース枠体342および放熱ベース344の表面から見えるように露出している。樹脂部材332は、隙間354があることで成形時のボイドを排出しやすくなっている。また、樹脂部材332は、隙間354があることで充填の状態を目視等で確認することができる。
【0018】
図4は、パワーモジュール300の分解斜視図である。
図4に示すように、パワーモジュール300は、回路体100をケース枠体342の入口開口351に挿入して構成される。
【0019】
回路体100は、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lを内部に備えている。パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lは、放熱板360と熱的に接続される。パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lと放熱板360は、モールド樹脂331で封止される。放熱板360は、回路体100の両面において、モールド樹脂331から放熱面335が露出している。
【0020】
回路体100をケース枠体342の入口開口351から図示Y方向へ挿入した後に、放熱面335には、絶縁シート333が接着される。絶縁シート333は、回路体100を挟むように両面に配置される。絶縁シート333は、回路体100の接着面とは反対の面に放熱ベース344が接着される。
【0021】
図5は、パワーモジュール300の断面図であり、図3に示す線A-Aにおける断面図である。
図5に示すように、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lは、各々両面に電極を持ち、電極と接合材361で接合される。パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lと電極が接合される反対の面に、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lを挟むように両面に放熱板360が接合される。放熱板360には、絶縁シート333が接着される。さらに、絶縁シート333には、放熱ベース344が接着される。これにより、パワー半導体素子321U、321L、322U、322Lは、接合される各部材を介して両面が冷却される。
【0022】
樹脂部材332は、モジュールケース341と回路体100との間の空間、すなわち、ケース枠体342、放熱ベース344、回路体100、絶縁シート333の間に充填される。さらに、樹脂部材332は、放熱部開口352(図4参照)の内周面と放熱ベース344の外周面との間にある隙間354にも充填され、隙間354に充填された樹脂部材332の少なくとも一部は、モジュールケース341の外側に露出している。隙間354の幅は、例えば、成形性を考慮して50μm以上である。樹脂部材332は、隙間354の全周に充填され、ケース枠体342と放熱ベース344をシールする。
【0023】
絶縁シート333は、回路体100と放熱ベース344との間に配置されるが、放熱ベースの主面に垂直な方向から投影した場合、隙間354は、絶縁シート333の外周側に形成される。これにより、隙間354が絶縁シート333によって塞がれるのを防止する。
【0024】
図6図9はパワーモジュール300の製造工程を示す図である。
<第1工程>
第1工程は、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342の中に、放熱部開口352と対向する位置に回路体100を配置する工程である。
図6に示すように、回路体100を入口開口351からケース枠体342に図示Y方向へ挿入する。
【0025】
<第2工程>
第2工程は、放熱ベース344をケース枠体342の放熱部開口352と対向する位置に配置し、放熱ベース344を絶縁シート333を介して回路体100に接着する工程である。
【0026】
図7に示すように、放熱ベース344をケース枠体342の放熱部開口352と対向する位置に配置する。絶縁シート333は、放熱ベース344と回路体100との間に放熱部開口352に対向して配置する。
【0027】
そして、回路体100を両側から挟むように、図7の図示X方向へ絶縁シート333をケース枠体342に格納する。なお、後述の隙間354が絶縁シート333の外周側になるように配置して、絶縁シート333が隙間354を塞がないようにする。さらに、回路体100を両側から挟むように、図示X方向へ放熱ベース344をケース枠体342に格納する。
【0028】
次に、図8に示すように、圧着治具370を用いて、回路体100と絶縁シート333と放熱ベース344に両面から圧力を加えて接着する。圧着治具370は、治具側面372と治具プレス面373を備える。治具側面372は、放熱フィン343の外周側面に近接するように寸法になっており、放熱フィン343の位置ずれを抑制する。治具プレス面373は、放熱フィン343と接触しプレス方向Pに押される。
【0029】
圧着治具370により、放熱フィン343と放熱ベース344と絶縁シート333と回路体100に力が伝わる。絶縁シート333には、圧力と温度とが印加され、放熱ベース344と回路体100と接着される。
【0030】
<第3工程>
第3工程は、ケース枠体342と回路体100との間の空間、および放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間の隙間354に樹脂部材332を充填する工程である。
【0031】
図9に示すように、樹脂押さえ型380と樹脂注入型382をケース枠体342と放熱ベース344に密着させる。樹脂押さえ型380は、少なくとも隙間354と放熱フィン343の間は密着しており、樹脂部材332が放熱フィン343に接しないように設置される。樹脂押さえ型380は、排気口381が設けられている。排気口381は、隙間354に連なるように配置される。排気口381は、空気が抜けるように貫通しており、樹脂部材332のボイド排出を容易にする。
【0032】
樹脂注入型382は、天面353に密着するように配置され、樹脂注入口383が設けられている。そして、樹脂注入口383は、入口開口351と連なるように配置される。樹脂部材332は、樹脂注入口383を通って入口開口351からケース枠体342内部に注入される。さらに、樹脂部材332は、ケース枠体342の内部から隙間354へ充填される。絶縁シート333は、隙間354が絶縁シート333の外周側にあることで、隙間354が絶縁シート333で塞がれることがない。
【0033】
本実施形態によれば、摩擦撹拌接合による溶接と比較して、ケース枠体342や放熱ベース344の寸法精度の要求が低減され、放熱ベース344の外周の薄肉部分を変形させるなどの工程も不要になる。また、摩擦撹拌接合のためのツールをケース枠体342に配置するスペースや薄肉部分も不要となり、パワーモジュール300を小型化することができる。さらに、摩擦撹拌接合のためのツールなどの設備も不要になる。このように、本実施形態によれば、パワーモジュール300の生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【0034】
[第2の実施形態]
図10は、本実施形態にかかるパワーモジュール400の正面図である。図3に示す第1の実施形態にかかるパワーモジュール300と同一箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態においては、放熱フィン343の側部とケース枠体342のフランジ346と間にバイパス流防止用の部材であるスペーサ410を配置した点が第1の実施形態と相違する。
【0035】
なお、本実施形態においても、図1に示す回路体の回路構成図、図2に示すパワーモジュールの外観図、図4に示すパワーモジュールの分解斜視図は第1の実施形態と同様である。
【0036】
図4に示すように、モジュールケース341は、ケース枠体342と放熱ベース344で構成される。放熱部開口352には、放熱ベース344がはめ込まれている。ケース枠体342は、フランジ346が設けられている。
【0037】
放熱ベース344には、冷却水などの冷媒を流通させて放熱する複数の放熱フィン343が設置される。ケース枠体342は、放熱ベース344の全周に隙間354を持つように配置される。隙間354は、放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間である。放熱フィン343の側部とケース枠体342のフランジ346と間にスペーサ410が配置される。このスペーサ410は、ケース枠体342内部から隙間354を通して、樹脂部材332を放熱フィン343の側部とフランジ346と間に充填することにより形成される。
【0038】
図11は、パワーモジュール400の断面図であり、図10に示す線B-Bにおける断面図である。図5に示す第1の実施形態にかかるパワーモジュール300と同一箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
図11に示すように、樹脂部材332は、モジュールケース341と回路体100との間の空間、すなわち、ケース枠体342、放熱ベース344、回路体100、絶縁シート333の間に充填される。さらに、樹脂部材332は、放熱部開口352(図4参照)の内周面と放熱ベース344の外周面との間にある隙間354にも充填される。隙間354に充填された樹脂部材332は、隙間354からモジュールケース341の外側に出て、スペーサ410を形成する。水路392は、モジュールケース341の外側を囲み、フランジ346と接するように配置される。スペーサ410は、放熱フィン343とフランジ346との空間を埋めて、冷媒の流れを阻止し、冷媒を放熱フィン343の設置領域に集中して流す役割をする。
【0040】
絶縁シート333は、回路体100と放熱ベース344との間に配置されるが、放熱ベースの主面に垂直な方向から投影した場合、隙間354は、絶縁シート333の外周側に形成される。これにより、隙間354が絶縁シート333によって塞がれるのを防止する。
【0041】
図12はパワーモジュール400の製造工程を示す図である。
<第1工程>
第1工程は、第1の実施形態で図6を参照して説明した第1工程と同様である。すなわち、図6に示すように、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342の中に、放熱部開口352と対向する位置に回路体100を配置する。
【0042】
<第2工程>
第2工程は、第1の実施形態で図7図8を参照して説明した第2工程と同様である。すなわち、図7図8に示すように、放熱ベース344をケース枠体342の放熱部開口352と対向する位置に配置し、放熱ベース344を絶縁シート333を介して回路体100に接着する。
【0043】
<第4工程>
第4工程は、第1の実施形態で図9を参照して説明した第3工程に替えて行う工程である。すなわち、第4工程は、ケース枠体342と回路体100との間の空間に樹脂部材332を充填する。さらに、放熱フィン343の側部とケース枠体342のフランジ346と間に、放熱部開口352(図4参照)の内周面と放熱ベース344の外周面との間の隙間354を通して樹脂部材332を充填する。これにより、放熱フィン343の側部とケース枠体342のフランジ346と間に、樹脂部材332によるスペーサ410を形成する。
【0044】
第4工程は、図12に示すように、樹脂押さえ型380と樹脂注入型382をケース枠体342と放熱ベース344に密着させる。樹脂押さえ型380は、スペーサ410が形成される空間を開け、この空間と隙間354とは繋がっている。また、樹脂押さえ型380は、スペーサ410が形成される空間と放熱フィン343が設けられている領域とを隔てる隔壁384を有する。隔壁384は放熱フィン343の側部に位置する。この隔壁384により、スペーサ410が形成される空間の外に樹脂部材332が流出するのを防止する。さらに、樹脂押さえ型380は、排気口381が設けられている。排気口381は、スペーサ410が形成される空間および隙間354に連なるように配置される。排気口381は、空気が抜けるように貫通しており、樹脂部材332のボイド排出を容易にする。
【0045】
樹脂注入型382は、天面353に密着するように配置され、樹脂注入口383が設けられている。そして、樹脂注入口383は、入口開口351と連なるように配置される。樹脂部材332は、樹脂注入口383を通って入口開口351からケース枠体342内部に注入される。さらに、樹脂部材332は、ケース枠体342の内部から隙間354を通してスペーサ410を形成する。すなわち、樹脂部材332は、隙間354およびスペーサ410の空間に充填され、樹脂部材332によりスペーサ410が形成される。絶縁シート333は、隙間354が絶縁シート333の外周側にあることで、隙間354が絶縁シート333で塞がれることがない。
【0046】
本実施形態によれば、既に述べた第1の実施形態による特徴に加えて、ケース枠体342と回路体100との間の空間に樹脂部材332を充填する工程でバイパス流防止用のスペーサ410を成形できるので、製造工程の簡略化が可能になる。このように、本実施形態によれば、パワーモジュール400の生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)パワーモジュール300、400は、回路体100と、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342と放熱部開口352内に配置される放熱ベース344とを含み、回路体100を収納するモジュールケース341と、モジュールケース341と回路体100との間の空間、および放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間の隙間354に充填される樹脂部材332と、を備え、隙間354に充填された樹脂部材332の少なくとも一部は、モジュールケース341の外側に露出している。これにより、パワーモジュールの生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【0048】
(2)パワーモジュール300の製造方法は、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342の中に、放熱部開口352と対向する位置に回路体100を配置する第1工程と、放熱ベース344をケース枠体342の放熱部開口352と対向する位置に配置し、放熱ベース344を絶縁シート333を介して回路体100に接着する第2工程と、ケース枠体342と回路体100との間の空間、および放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間の隙間354に樹脂部材332を充填する第3工程と、を備える。これにより、パワーモジュールの生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【0049】
(3)パワーモジュール400の製造方法は、一面に放熱部開口352が形成されたケース枠体342の中に、放熱部開口352と対向する位置に回路体100を配置する第1工程と、放熱ベース344をケース枠体342の放熱部開口352と対向する位置に配置し、放熱ベース344を絶縁シート333を介して回路体100に接着する第2工程と、ケース枠体342と回路体100との間の空間に樹脂部材332を充填し、さらに放熱ベース344に設置された放熱フィン343の側部とケース枠体342のフランジ346と間に、放熱部開口352の内周面と放熱ベース344の外周面との間の隙間354を通して樹脂部材332を充填して、樹脂部材332によりスペーサ410を形成する第4工程と、を備える。これにより、パワーモジュールの生産性が向上し、低コスト化が可能となる。
【0050】
(変形例)
本発明は、以上説明した第1および第2の実施形態を次のように変形して実施することができる。
(1)第1および第2の実施形態では、回路体100の両面を冷却する両面冷却型のパワーモジュール300、400の例で説明したが、回路体100の片面を冷却する片面冷却型のパワーモジュールにも同様に適用することができる。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100・・・回路体、300、400・・・パワーモジュール、311・・・直流正極端子、312・・・直流負極端子、314、315・・・信号端子、321U、321L、322U、322L・・・パワー半導体素子、332・・・樹脂部材、333・・・絶縁シート、335・・・放熱面、341・・・モジュールケース、342・・・ケース枠体、343・・・放熱フィン、344・・・放熱ベース、346・・・フランジ、351・・・入口開口、352・・・放熱部開口、353・・・天面、354・・・隙間、360・・・放熱板、370・・・圧着治具、372・・・治具側面、373・・・治具プレス面、380・・・樹脂押さえ型、381・・・排気口、382・・・樹脂注入型、384・・・隔壁、410・・・スペーサ。
図1
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図12