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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018832
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】装飾体とその制作方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/06 20060101AFI20220120BHJP
   A01N 3/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B44C5/06 B
A01N3/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122214
(22)【出願日】2020-07-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】510026976
【氏名又は名称】有限会社花工房
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 康子
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011CA03
4H011CB10
4H011CC05
(57)【要約】
【課題】プリザーブド植物を用いたコラージュ画とグラヴィール技法によるグラヴィール画とを、透明板をキャンバスとして組み合わせ合成して、より広範囲な装飾用途に適用できる装飾体とその制作方法を提供することを課題とする。
【解決手段】透明板10をキャンバスとし、該透明板10の裏面にはプリザーブド植物31を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画30が構成されると共に、透明板10の表面10aには不透明彫刻21を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画20が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板10を裏側から透過してくる前記コラージュ画30の一部が前記不透明彫刻21で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画30の透過画と前記グラヴィール画20とによる合成画40が構成される装飾体1である。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾体。
【請求項4】
裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の装飾体。
【請求項5】
コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の装飾体。
【請求項6】
背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを特徴とする請求項5に記載の装飾体。
【請求項7】
透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の装飾体。
【請求項8】
次のA~E工程からなる装飾体の制作方法。
A.透明板を所望のサイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
【請求項9】
B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを特徴とする請求項8に記載の装飾体の制作方法。
【請求項10】
透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを特徴とする請求項8又は9に記載の装飾体の制作方法。
【請求項11】
透明板をプラスチック製の透明板とし、裏面のコラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の装飾体の制作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾体とその制作方法に関し、より詳しくは、プリザーブド処理された花や葉等のプリザーブド植物を使用したコラージュ画と、これにグラヴィール技法によるグラヴィール画を組み合わせて合成してなる新たな装飾体とその制作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物の生花や生葉等をグリセリン等により、いわゆるプリザーブド処理してなるプリザーブド植物(一般にプリザーブドフラワーと称される)を用いた種々の装飾物が作製され、提供されている。また、それら装飾物の作製方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-30314号公報
【特許文献2】実用新案登録第3199221号公報
【特許文献3】特開2011-161904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、透明体に金属線等からなる輪郭体22を配置し、その金属線等からなる輪郭体22の内側にプリザーブドフラワー23を貼り付けるようにした装飾画材20が開示されている。
しかしながら、この装飾画材20では、構成要素として金属線材等からなる輪郭体22を別に用意する必要がある。また装飾画材20が輪郭体22の内側でしか存在できないので、広がりに欠けるという問題がある。
上記特許文献2には、正面扉201と側面板202が透明部材で構成され、その透明部材の一部がサンドブラスト加工208による模様とされており、その内部の空間217にはプリザーブドフラワー等の装飾部材218が収容されている仏壇1000が開示されている。
また上記特許文献3には、ウェディングドレス3等の衣装からなるインナー部材1とそれを収納するアウター部材2から構成され、アウター部材2の前面の透明部にはサンドブラスト加工等により装飾が施されており、またインナー部材1の前面にはプリザーブドフラワー5が複数配置された装飾体が開示されている。
しかしながら、この特許文献2、3に開示された技術においては、サンドブラスト加工による模様等の装飾が透明体の表面に施されるものの、プリザーブドフラワーは透明体とは別の空間に配置されており、サンドブラスト加工による装飾とプリザーブドフラワーによる装飾とが透明体の表面に混然一体に表現されてなる独立した装飾体とは言えない。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、プリザーブド植物を用いたコラージュ画とグラヴィール技法によるグラヴィール画とを、透明板をキャンバスとして巧みに組み合わせ合成し、これまでにない新たな装飾体として、より広範囲な装飾用途に適用することができる装飾体、及びその制作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の装飾体は、透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを第1の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1の特徴に加えて、コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを第2の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1又は第2の特徴に加えて、グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを第3の特徴としている。
また本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体は、上記第1~第3の何れかの特徴に加えて、裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを第4の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを第5の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第5の特徴に加えて、背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを第6の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第6の何れかの特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを第7の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、次のA~E工程からなる装飾体の制作方法であることを第8の特徴としている。
A.透明板を所望の形状、サイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8の特徴に加えて、B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを第9の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8又は第9の特徴に加えて、透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを第10の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8~第10の何れかに記載の特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、コラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを第11の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の装飾体によれば、透明板がキャンバスとされ、その裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成され、表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成されている。表側のグラヴィール画は不透明彫刻からなるので、表側からの視覚においては、裏側から透明板を透過してきたコラージュ画の一部が不透明彫刻によって遮られて隠れる。従って前記コラージュ画の一部は画面から消えた状態となり、残るコラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が視覚上の完成画となり、鑑賞対象となる。
即ち、請求項1に記載の装飾体によれば、表面の不透明彫刻と裏面から透過してきたプリザーブド植物とによる、これまでとは趣の異なる鑑賞対象としての装飾体を得ることができる。
しかも表側に透過してくる透過画は、透明板の裏側から視覚されるコラージュ画ではなく、透明板の表側から視覚されるコラージュ画であるので、これまでとは一層異なる趣の合成画を鑑賞対象となる装飾体を得ることができる。
更に制作者にとっては、表面のグラヴィール画と裏面のコラージュ画を単に個別的に制作するのではなく、表側から視覚される合成画が裏面のコラージュ画と表面のグラヴィール画との関係においてどのようになるかを常に考慮しながら制作することになるので、創作甲斐のある装飾体となる。
【0008】
請求項2に記載の装飾体によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなることで、プリザーブド植物を主描画要素として、多彩で変化に富んだコラージュ画を裏面に制作することができる。
そして特に、色の薄いプリザーブド植物ほど下層になるようにして貼り付けられているので、透明板の表側からの視覚においては、下層にある色の薄いプリザーブド植物が優先的に透過して視覚され、その背後からより濃いプリザーブド植物が透過して視覚されるといった状態となって、重層感のある変化に富んだ鑑賞価値の高い装飾体とすることができる。
【0009】
請求項3に記載の装飾体によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されている。
よってプリザーブド植物の色模様の豊かなコラージュ画とグレースケールの乳白色の線、面からなるグラヴィール画とが合成された趣の変わった装飾体とすることができる。
またグラヴィール画の不透明彫刻の乳白色の程度を調整することで、裏から透過してくるコラージュ画の不透明彫刻部分での透過度を変化させて、更に趣の変わった合成画を備えた装飾体とすることができる。
【0010】
また上記請求項4に記載の装飾体によれば、上記請求項1~3の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されている。即ち、裏面に構成されるコラージュ画にあっては、積層されたプリザーブド植物の外縁となる貼り付け境界付近が接着剤等に起因して汚点、汚線等、画として好ましくない状況となり易いが、そのようなコラージュ画の好ましくない外縁の部分をグラヴィール画の不透明彫刻によって輪郭することで、それらの好ましくない状況を覆い隠して、良好な装飾体とすることができる。
【0011】
また上記請求項5に記載の装飾体によれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることにより、コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画において、その合成画の背景を、透明ではなく、背景シートを背景としたものにすることができる。
また上記請求項6に記載の装飾体によれば、上記請求項5に記載の構成による作用効果に加えて、背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることにより、背景シートによる無地の白やその他の有色からなる背景、背景シートの紙や布の地模様、その他の模様からなる背景を備えた種々変化に飛んだ装飾体を得ることができる。
【0012】
また上記請求項7に記載の装飾体によれば、上記請求項1~6の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、透明板をプラスチック製の透明板としてあるので、透明ガラスに比べて軽くて、割れ難く、取り扱いが容易に制作できる。そして装飾体の表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画であるので水洗いができ、装飾体の裏面は透明樹脂被膜でコラージュ画等を被覆してあるので、これも容易に水洗いができ、結論として装飾体を丸洗いして綺麗な状態にしておくことができる。
【0013】
また上記請求項8に記載の装飾体の制作方法によれば、先ず透明板が所望の形状、サイズになされた、キャンバスとして用意される。次に透明板の表面にグラインダーによる不透明彫刻を主描画要素としたグラヴィール画のデッサンが描かれる。次に透明板を裏返して、裏面にプリザーブド植物を主描画要素とした貼り付けによるコラージュ画の制作が開始される。そして更に、透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正が行われ、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整が行われる。最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げが行われ、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げが行われる。
従って請求項8の装飾体の制作方法によれば、透明板の表面と裏面とを使用して、裏面のプリザーブド植物と表面の不透明彫刻とによる、これまでにない合成画を制作することができる。
勿論、制作に際しては、透明板の表面に先ず不透明彫刻によるデッサンを描くことができるので、そのデッサンを参考にプリザーブド植物の貼り付け作業を容易に開始して進めてゆくことができる。
そして透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら制作するので、頭を使った創作甲斐のある制作を行うことができる。しかも裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物を貼り付けて、透過画に立体感、積層感を出す必要があるので、より面白く創作甲斐のある制作を行うことができる。
更に仕上げとしては、透明板の表面における不透明彫刻の修正を行うことで、コラージュ画の好ましくない部分が透過してこないように、最終調整ができ、仕上がりの良い装飾体を制作することができる。
【0014】
また上記請求項9に記載の装飾体の制作方法によれば、上記請求項8に記載の作用効果に加えて、B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることとしているので、グラインダーの扱いに慣れていない者であっても、無用な傷を付けてしまうことなく、所望のデッサンを透明板の表面に簡単、確実、且つ綺麗に描くことができる。
【0015】
また上記請求項10に記載の装飾体の制作方法によれば、上記請求項8又は9に記載の構成による作用効果に加えて、透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることとしているので、コラージュ画の背景を、透明ではなく、貼り付けた背景シートの色や模様からなる背景として、バリエーションに飛んだ背景をもつ装飾体を種々構成することができる。
【0016】
また上記請求項11に記載の装飾体の制作方法によれば、上記請求項8~10の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、裏面のコラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することとしたので、プラスチック製の透明板により、軽くて割れ難く、取り扱い易い装飾体を制作できると共に、透明樹脂被膜の形成も、ガラスの場合に比べて容易で確実に行うことができる。そして不透明彫刻のみからなる透明板の表面も、透明樹脂被膜でコラージュ画を被覆した透明板の裏面も、何れも水洗いが容易となり、装飾体を綺麗な状態にしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板を表側から見た図である。
図2】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、デッサン型紙の表面図である。
図3】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、デッサン型紙を裏面に配した透明板を表側から見た図である。
図4】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板の表面にグラヴィール技法で描かれたデッサンを、透明板の表側から見た図である。
図5】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板の表面にグラヴィール技法で描かれたデッサンを、透明板の裏側から見た図である。
図6】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板の裏面にプリザーブド植物による貼り付けを開始した初期のコラージュ画を、透明板の裏側から見た図である。
図7】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板の裏面にプリザーブド植物による貼り付けを終了した状態のコラージュ画を、透明板の裏側から見た図である。
図8】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、透明板の裏面にプリザーブド植物による貼り付けを終了した状態のコラージュ画を、透明板の表側から見た図である。
図9】本発明に係る装飾体とその制作方法の実施形態を説明する図で、最終的に仕上げた透明板の表面のグラヴィール画と裏面のコラージュ画とを、透明板の表側から見た合成画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る装飾体とその制作方法を説明し、本発明の理解に供する。ただし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
まず図1図9を参照して、本発明の実施形態に係る装飾体1(図9参照)を、その制作方法と共に説明する。
装飾体1は、少なくとも透明板10と、その表面10aに構成されるグラヴィール画20と、裏面10bに構成されるコラージュ画30とからなる。
【0020】
前記透明板10は、典型的には透明のアクリル板を用いることができる。勿論、その他の透明のプラスチック板、ガラス板であってもよい。
透明板10は、その表面10aにグラヴィール画20を描くことができるものである必要がある。即ち、表面10aをグラインダーで削ることで不透明な線や面を彫刻できるものが必要である。勿論、裏面10bにはプリザーブド植物を貼り付けることができることが必要である。
透明板10は、正方形、長方形、円形、その他自由な形状のものを用いることができる。またサイズも大小、所望のサイズとしたものを用いることができる。
透明板10の厚みは、使用する材料の種類や作品の大きさ等によっても異なるが、簡単に破損しない強度の厚みを必要とする。前記アクリル板では、はがきサイズ、B5、A4程度の大きさのものを用いる場合で、1~数ミリの厚さのものを用いることができる。
その他、透明板10は色付きの透明板であってもよい。
【0021】
前記グラヴィール画20は、グラヴィール技法により制作される画であって、透明板10の表面をグラインダーにより線状、面状に削り取ることで、その削り取られた線や面が不透明彫刻21となって描かれる。
グラヴィール画20に用いるグラインダーは、手に持てるペンシル型の電動グラインダーとすることができる。またグラインダーの先端部のビットと称する回転体は、取り換え自在とし、細線から太線まで削り取り幅の異なる種々のビットを用いることができる。また削り取り粗さを異ならせることで、グレースケールが異なる種々の乳白色を得ることができるビットを用いることができる。
なお、グラヴィール画20はグラヴィール技法による描画を主たる描画要素とする画であるが、他の描画要素による描画を含んだものを排除するものではない。
【0022】
透明板10の裏面10bに構成されるコラージュ画30は、コラージュ技法により制作される画であって、本発明ではプリザーブド植物を主たる描画要素として、貼り付けて制作される画である。プリザーブド植物は、プリザーブド処理された種々の種類の植物の花びらや葉を主とするが、それ以外の植物部分も用いることができる。
勿論、コラージュ画30は、前記プリザーブド植物以外の描画要素の貼り付けを排除するものではない。また画の一部にコラージュ技法以外の方法による描画要素が含まれるものを排除するものでもない。
【0023】
図1を参照して、装飾体1の制作は、先ず透明板10としてアクリル板を所定の形状(図では長方形状)寸法にして用意する(A工程)。
次に、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙50を用意し(図2参照)、このデッサン型紙50を透明板10の下(裏面)に敷く(図3参照)。
そして図4を参照して、透明板10の表面10aからグラインダーで前記デッサンをなぞり、透明板10の表面10aにグラヴィール技法によるグラヴィール画20のデッサンを描く(B工程)。
【0024】
前記デッサン型紙50を用意するのは、グラインダー等で透明板10の表面10aを削ってデッサンを直接描くのは、必ずしも容易ではないからである。勿論、グラインダー等の扱いの慣れたベテラン、その他においては、デッサン型紙50を用いることなく、透明板10にデッサンを直接に削り描くようにしてもよい。
図4を参照して、B工程で描かれるグラヴィール画20は、あくまで作品の大まかなデッサンであり、未だ完成されたものではない。このためグラヴィール画20を構成する不透明彫刻21も、未だ最終仕様ではなく、修正がし易い比較的細くて浅い彫刻線を使用する場合が多い。
グラヴィール画20は、例えばペン型のグラインダーを用いて透明板10の表面に不透明彫刻の線を描くことで得ることができる。そして、この不透明彫刻の線の太さ、深さは、ペン型グラインダーの先端部に取り付けられるビットと称する摺具を、取り換えることで変更することができる。
【0025】
図5を参照して、透明板10の表面10aにグラヴィール画20のデッサンが描かれると(B工程が終了する)と、透明板10を裏返す。
そして図6を参照して、透明板10の裏面10bに、プリザーブド植物31を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画30の制作を開始する(C工程)。
プリザーブド植物31は、葉31a、花びら31bを図面に示しているが、茎の部分等他の部位であってもよい。
図6に示すように、本実施形態では、葉31aから先に貼り付けている。しかし花31bから先に貼り付けてもよいし、どのような順序で貼り付けを行ってもよい。
重要なことは、透明板10の裏面10bに貼り付けられるプリザーブド植物31は、透明板10の表側から見た視覚においては、先に貼られたプリザーブド植物31ほど優先的に視覚されるということである。従って表側からの視覚において必ず見えるようにするためには、裏面10bに対して他より先に貼り付ける必要がある。
またプリザーブド植物31を重ねて複数層に貼り付ける場合には、薄い色のものを先に貼り付け、濃い色のものを後から貼り付ける必要がある。この場合は積層効果を得ることができる。一方、濃い色のものを先に貼り付け、その上に薄い色のものを貼り付けた場合には、後から貼り付けた薄い色による積層効果がほとんど得られない。
【0026】
作品の制作は、透明板10の表側から視覚されるグラヴィール画20とコラージュ画30との合成画40を制作目標として、透明板10を裏表変更しながら、裏面10bのコラージュ画30においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物31の貼り付けの追加、修正を行い、表面10aのグラヴィール画20においては、不透明彫刻21の追加、修正、グレースケール調整が行われる(D工程)。
図7を参照して、透明板10の表面10aのグラヴィール画20に先行して、透明板10の裏面10bのコラージュ画30の仕上げが完了する。
【0027】
図8を参照して、透明板10の裏面10bの仕上げが完了すると、透明板10を表に返す。
図9を参照して、最終的に、透明板10の表面10aにおける不透明彫刻21の仕上げを行い、グラヴィール画20の仕上げを行う。またこのグラヴィール画20の仕上げを通じて、裏面10bから透過してくるコラージュ画30において、遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う(E工程)。
透明板10の表面10aのグラヴィール画20の仕上げは、細い線で描いていた不透明彫刻21の線を必要な個所において太く、或いは面状にし、また乳白色のグレースケールを修正し、或いは新たな不透明彫刻21を追加することで、グラヴィール画20を完成させ、透過してくるコラージュ画30の輪郭部やその他の部分に対する不透明彫刻21による更なる遮りを通じて、合成画40を仕上げて完成させることである。
【0028】
以上のようにして得られた合成画40は、透明板10の表面10aの不透明彫刻21と裏面10bから透過してきたプリザーブド植物31とによる、これまでとは趣の異なる鑑賞対象としての装飾体1となる。
そして透明板10の裏側から透過してくる透過画は、透明板10の裏面10bのコラージュ画ではなく、透明板の表側から視覚されるコラージュ画であり、一層異なる趣の合成画40を鑑賞対象とする装飾体1を得ることができる。
また制作者にとっては、透明板10の表面10aのグラヴィール画20と裏面10bのコラージュ画30を単に個別的に制作するのではなく、表側から視覚される合成画40が裏面10bのコラージュ画30と表面10aのグラヴィール画20とによって如何なる変化を伴って合成されるかを常に考慮しながら制作することになり、創作甲斐のあるものとなる。
【0029】
なお、上記において透明板10の裏面10bのコラージュ画30を完成させた後に、コラージュ画30の上から、更に図示しない背景シートを重ねて貼るようにしてもよい。例えば背景シートとして、ペーパーナプキン等の薄いシートを貼る。この場合、ペーパーナプキンの模様を生かすというよりは、薄い白い背景を構成するために貼る場合もあるが、ペーパーナプキンのデザインを背景として取り入れる場合もある。
勿論、背景シートはペーパーナプキンに限るものではなく、色付きの無模様シート、色付きの模様シートを採用することができる。またシートは紙のシートの他、布製のシートであってもよい。
背景シートを用いることで、コラージュ画30の透過画と前記グラヴィール画20とによる合成画40において、その合成画40の背景を、透明ではなく、背景シートを背景としたものとすることができる。
また背景シートを、無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布でとすることで、合成画40の背景を、背景シートによる無地の白やその他の有色からなる背景、背景シートの紙や布による地模様、その他の描かれた模様からなる背景と種々変化させることができ、変化にとんだ装飾体1を得ることができる。
【0030】
作品が完成した後において、最終的に、透明板10の裏面10bを透明樹脂被膜で被覆するようにしてもよい。これによって水洗いに耐える等、長期間綺麗に保存できる。なお、表面10aのグラヴィール画20は、表面を削るだけのもので、プリザーブド植物31等の貼り付けは行わないように区別しているので、本来的に水洗いに耐えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の装飾体とその制作方法は、プリザーブド植物を扱う装飾品や装飾品パーツの製造、販売分野や、プリザーブド植物を用いた作品創作に関する各種学校、教育産業の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0032】
1 装飾体
10 透明板
10a 表面
10b 裏面
20 グラヴィール画
21 不透明彫刻
30 コラージュ画
31 プリザーブド植物
31a 葉
31b 花びら
40 合成画
50 デッサン型紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2020-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ透明板の裏面において、薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾体。
【請求項4】
裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の装飾体。
【請求項5】
コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の装飾体。
【請求項6】
背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを特徴とする請求項5に記載の装飾体。
【請求項7】
透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の装飾体。
【請求項8】
次のA~E工程からなる装飾体の制作方法。
A.透明板を所望のサイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
【請求項9】
B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを特徴とする請求項8に記載の装飾体の制作方法。
【請求項10】
透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを特徴とする請求項8又は9に記載の装飾体の制作方法。
【請求項11】
透明板をプラスチック製の透明板とし、裏面のコラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の装飾体の制作方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の装飾体は、透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを第1の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1の特徴に加えて、コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ透明板の裏面において、薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを第2の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1又は第2の特徴に加えて、グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを第3の特徴としている。
また本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体は、上記第1~第3の何れかの特徴に加えて、裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを第4の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを第5の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第5の特徴に加えて、背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを第6の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第6の何れかの特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを第7の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、次のA~E工程からなる装飾体の制作方法であることを第8の特徴としている。
A.透明板を所望の形状、サイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8の特徴に加えて、B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを第9の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8又は第9の特徴に加えて、透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを第10の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8~第10の何れかに記載の特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、コラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを第11の特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2に記載の装飾体によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなることで、プリザーブド植物を主描画要素として、多彩で変化に富んだコラージュ画を裏面に制作することができる。
そして特に、透明板の裏面において、色の薄いプリザーブド植物ほど下層になるようにして貼り付けられているので、透明板の表側からの視覚においては、下層にある色の薄いプリザーブド植物が優先的に透過して視覚され、その背後からより濃いプリザーブド植物が透過して視覚されるといった状態となって、重層感のある変化に富んだ鑑賞価値の高い装飾体とすることができる。
【手続補正書】
【提出日】2020-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ透明板の裏面側から見たときに、薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾体。
【請求項4】
裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の装飾体。
【請求項5】
コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の装飾体。
【請求項6】
背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを特徴とする請求項5に記載の装飾体。
【請求項7】
透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の装飾体。
【請求項8】
次のA~E工程からなる装飾体の制作方法。
A.透明板を所望のサイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
【請求項9】
B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを特徴とする請求項8に記載の装飾体の制作方法。
【請求項10】
透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを特徴とする請求項8又は9に記載の装飾体の制作方法。
【請求項11】
透明板をプラスチック製の透明板とし、裏面のコラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の装飾体の制作方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の装飾体は、透明板をキャンバスとし、該透明板の裏面にはプリザーブド植物を主描画要素として貼り付けてなるコラージュ画が構成されると共に、透明板の表面には不透明彫刻を主描画要素として彫刻してなるグラヴィール画が構成され、且つ表側からの視覚においては、前記透明板を裏側から透過してくる前記コラージュ画の一部が前記不透明彫刻で隠されると共に、隠されずに透過してきた前記コラージュ画の透過画と前記グラヴィール画とによる合成画が構成されることを第1の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1の特徴に加えて、コラージュ画の主描画要素として透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなり、且つ透明板の裏面側から見たときに、薄色のものほど下層となるようにして1乃至複数層で貼り付けられていることを第2の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1又は第2の特徴に加えて、グラヴィール画の主描画要素として透明板の表面に彫刻される不透明彫刻は、グレースケールの異なる複数種の乳白色からなり、線状ないし面状に彫刻されていることを第3の特徴としている。
また本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体は、上記第1~第3の何れかの特徴に加えて、裏側から透過してきた透過画の少なくともその一部は表面のグラヴィール画の不透明彫刻からなる線で輪郭されていることを第4の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、コラージュ画が構成された透明板の裏面に、更に背景シートを重ねて貼ってあることを第5の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第5の特徴に加えて、背景シートは無地若しくはデザイン入りの紙若しくは布であることを第6の特徴としている。
また本発明の装飾体は、上記第1~第6の何れかの特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、表面は不透明彫刻のみからなるグラヴィール画で構成し、装飾体の裏面は透明樹脂被膜で被覆してあることを第7の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、次のA~E工程からなる装飾体の制作方法であることを第8の特徴としている。
A.透明板を所望の形状、サイズにしてキャンバスとして用意する。
B.透明板の表面に、グラインダーを用いた不透明彫刻を主描画要素として、グラヴィール画のデッサンを描く。
C.前記グラヴィール画のデッサンを参照して、透明板の裏面に、プリザーブド植物を主描画要素として貼り付けて、コラージュ画の制作を開始する。
D.透明板の表側から視覚されるグラヴィール画とコラージュ画との合成画を制作目標として、透明板を裏表変更しながら、裏面のコラージュ画においては、薄色のものほど下層となるようにしてプリザーブド植物の貼り付けの追加、修正を行い、表面のグラヴィール画においては、不透明彫刻の追加、修正、グレースケール調整を行う。
E.最終的に、透明板の表面における不透明彫刻の仕上げを行い、またこれによってコラージュ画における遮られて隠れるべき部分の仕上げを行う。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8の特徴に加えて、B工程において、グラヴィール画のデッサンを描くに際しては、予め所望のデッサンが描かれたデッサン型紙を用意し、このデッサン型紙を透明板の下に敷き、透明板の表面からグラインダーでなぞることを第9の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8又は第9の特徴に加えて、透明板の裏面のコラージュ画を完成させた後に、コラージュ画の上から、更に背景シートを重ねて貼ることを第10の特徴としている。
また本発明の装飾体の制作方法は、上記第8~第10の何れかに記載の特徴に加えて、透明板をプラスチック製の透明板とし、コラージュ画が完成した後、コラージュ画を透明樹脂被膜で被覆することを第11の特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2に記載の装飾体によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、透明板の裏面に貼り付けられるプリザーブド植物は、多種、多色からなることで、プリザーブド植物を主描画要素として、多彩で変化に富んだコラージュ画を裏面に制作することができる。
そして特に、透明板の裏面側から見たときに、色の薄いプリザーブド植物ほど下層になるようにして貼り付けられているので、透明板の表側からの視覚においては、下層にある色の薄いプリザーブド植物が優先的に透過して視覚され、その背後からより濃いプリザーブド植物が透過して視覚されるといった状態となって、重層感のある変化に富んだ鑑賞価値の高い装飾体とすることができる。