(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188322
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/053 20060101AFI20221214BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20221214BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20221214BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20221214BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221214BHJP
【FI】
B01D53/053 ZAB
B01D53/04 220
B01D53/62
B01D53/82
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096236
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和人
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】水谷 俊介
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002EA04
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB04
4D002GB20
4D002HA09
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD04
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF02
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CH03
4D012CH10
4D012CJ02
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC07
4G146JC08
4G146JC17
4G146JC19
4G146JC33
4G146JD03
4G146JD06
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素回収装置の大型化を抑えつつ、供給される二酸化炭素含有ガスの変動に対応する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素含有ガス供給部から供給された二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、二酸化炭素回収部と並列に二酸化炭素含有ガス供給部に接続されて、二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの一部から二酸化炭素を回収して貯蔵する二酸化炭素貯蔵部と、を備え、二酸化炭素貯蔵部は、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える上流タンクと、上流タンクから排出された二酸化炭素をガスの状態で貯蔵する下流タンクと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素回収装置であって、
二酸化炭素含有ガスの供給源である二酸化炭素含有ガス供給部から供給された二酸化炭素含有ガスから、二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、
前記二酸化炭素回収部と並列に前記二酸化炭素含有ガス供給部に接続されて、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの一部から二酸化炭素を回収して貯蔵する二酸化炭素貯蔵部と、
を備え、
前記二酸化炭素貯蔵部は、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える上流タンクと、前記上流タンクから排出された二酸化炭素をガスの状態で貯蔵する下流タンクと、を備える
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収装置であって、さらに、
前記二酸化炭素含有ガス供給部から前記二酸化炭素回収部および前記二酸化炭素貯蔵部に供給する二酸化炭素含有ガスの分配量を制御する第1制御部を備え、
前記第1制御部は、
前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、前記二酸化炭素回収部が二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収できる処理可能量として予め設定された設定値以下のときには、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの全量を前記二酸化炭素回収部に供給し、
前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、前記設定値を超えたときには、前記設定値の量の二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素回収部に供給すると共に、前記設定値の超過分の二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素貯蔵部に供給する
二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記二酸化炭素回収部は、圧力・温度スイング式吸着装置であり、
前記上流タンクは、圧力スイング式吸着装置である
二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置であって、さらに、
前記上流タンクに対して、前記上流タンク内で前記二酸化炭素含有ガスが流れる向きと対向する向きで、前記二酸化炭素含有ガスよりも二酸化炭素濃度が低いスイープガスを供給する送気部と、
前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を吸着した前記上流タンクの吸着材から二酸化炭素を脱離させる脱離工程の後に、前記上流タンクに前記二酸化炭素含有ガスを供給して吸着材に二酸化炭素を吸着させる吸着工程に先立って、前記送気部を駆動して、前記上流タンクに対して前記スイープガスを供給させる第2制御部と、を備える
二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記上流タンクは、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える吸着塔を複数備え、
前記二酸化炭素回収装置は、さらに、複数の前記吸着塔に連通する配管の接続状態を切り替える第3制御部であって、複数の前記吸着塔のうちの一つである第1吸着塔に対して前記スイープガスが供給されるときに、前記第1吸着塔から排出されるスイープオフガスを、二酸化炭素含有ガスが供給されている第2吸着塔に導くように前記接続状態を切り替える第3制御部を備える
二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記上流タンクは、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える吸着塔として、少なくともいずれか一つの吸着塔が、前記二酸化炭素含有ガスの供給を受けて吸着材に二酸化炭素を吸着する動作が可能な吸着工程となり、少なくとも他のいずれか一つの吸着塔が、吸着材から二酸化炭素を脱離する動作が可能な脱離工程となる複数の吸着塔を備え、
前記下流タンクは、該下流タンク内部の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記二酸化炭素回収装置は、さらに、複数の前記吸着塔および前記下流タンクに連通する配管の接続状態を制御する第4制御部であって、
前記圧力センサが検出する圧力が、予め定めた下限値を下回る場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から脱離された二酸化炭素を前記下流タンクに導き、
前記圧力センサが検出する圧力が、予め定めた上限値を上回る場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給を停止し、
前記圧力センサが検出する圧力が、前記下限値以上、上限値以下の範囲である場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給が停止されているときには、前記停止の状態を維持すると共に、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給が行われているときには、二酸化炭素の供給を継続させる第4制御部を備える
二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記第4制御部は、前記吸着工程となっている前記吸着塔における二酸化炭素の吸着状態が、予め定めた最大吸着量となったと判定されるときには、該吸着塔に対する二酸化炭素含有ガスの供給を停止して、前記脱離工程を経た他の吸着塔に対して二酸化炭素含有ガスを導くように前記接続状態を切り替える
二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
二酸化炭素再資源化システムであって、
請求項1から7までのいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置から供給される二酸化炭素を用いて、炭化水素系燃料を生成する燃料生成部と、
前記燃料生成部が生成した炭化水素系燃料からエネルギを取り出すと共に二酸化炭素含有ガスを生成し、前記二酸化炭素含有ガス供給部として、生成した二酸化炭素を前記二酸化炭素回収装置に供給する二酸化炭素生成部と、
を備える二酸化炭素再資源化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉等から排出される排ガスから二酸化炭素を回収する装置が知られている。例えば、特許文献1には、吸着材を収容する分離器を用いて、工場の燃焼炉等から排出される二酸化炭素を含有するガスから二酸化炭素を分離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような二酸化炭素回収装置においては、供給される二酸化炭素含有ガスの量が定常状態である場合だけでなく、供給される二酸化炭素含有ガス量が変動する場合であっても、二酸化炭素を回収する動作を支障なく継続できることが望まれる。しかしながら、このような二酸化炭素含有ガスの供給量の変動に対応するためには、想定される変動量によっては、二酸化炭素回収装置を過剰に大型化する必要が生じ、採用し難い場合がある。このような課題は、吸着材を収容する分離器を用いる構成に限らず、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する装置において共通する課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、二酸化炭素回収装置が提供される。この二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素含有ガスの供給源である二酸化炭素含有ガス供給部から供給された二酸化炭素含有ガスから、二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、前記二酸化炭素回収部と並列に前記二酸化炭素含有ガス供給部に接続されて、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの一部から二酸化炭素を回収して貯蔵する二酸化炭素貯蔵部と、を備え、前記二酸化炭素貯蔵部は、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える上流タンクと、前記上流タンクから排出された二酸化炭素をガスの状態で貯蔵する下流タンクと、を備える。
この形態の二酸化炭素回収装置によれば、二酸化炭素貯蔵部を設けることにより、二酸化炭素回収部の大型化を抑えつつ、二酸化炭素回収装置に供給される二酸化炭素含有ガス量の変動に対応することが可能になる。また、二酸化炭素貯蔵部は、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える上流タンクと、上流タンクから排出された二酸化炭素をガスの状態で貯蔵する下流タンクと、を備えるため、ガスの状態で二酸化炭素を貯蔵するタンクのみにより構成する場合に比べて、二酸化炭素貯蔵部を小型化することができる。
(2)上記形態の二酸化炭素回収装置は、さらに、前記二酸化炭素含有ガス供給部から前記二酸化炭素回収部および前記二酸化炭素貯蔵部に供給する二酸化炭素含有ガスの分配量を制御する第1制御部を備え、前記第1制御部は、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、前記二酸化炭素回収部が二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収できる処理可能量として予め設定された設定値以下のときには、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの全量を前記二酸化炭素回収部に供給し、前記二酸化炭素含有ガス供給部が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、前記設定値を超えたときには、前記設定値の量の二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素回収部に供給すると共に、前記設定値の超過分の二酸化炭素含有ガスを前記二酸化炭素貯蔵部に供給することとしてもよい。このような構成とすれば、二酸化炭素回収部が二酸化炭素を回収する処理可能量の範囲内で、二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素の回収のために優先的に二酸化炭素回収部を用いるため、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する動作を、より安定させることができる。
(3)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記二酸化炭素回収部は、圧力・温度スイング式吸着装置であり、前記上流タンクは、圧力スイング式吸着装置であることとしてもよい。このような構成とすれば、二酸化炭素の回収に係るエネルギ効率がより高い圧力・温度スイング式吸着装置と、装置構成および制御がより簡素な圧力スイング式吸着装置とを組み合わせることにより、二酸化炭素の回収に係るエネルギ効率を高めつつ、装置全体の大型化を抑えることができる。
(4)上記形態の二酸化炭素回収装置は、さらに、前記上流タンクに対して、前記上流タンク内で前記二酸化炭素含有ガスが流れる向きと対向する向きで、前記二酸化炭素含有ガスよりも二酸化炭素濃度が低いスイープガスを供給する送気部と、前記二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を吸着した前記上流タンクの吸着材から二酸化炭素を脱離させる脱離工程の後に、前記上流タンクに前記二酸化炭素含有ガスを供給して吸着材に二酸化炭素を吸着させる吸着工程に先立って、前記送気部を駆動して、前記上流タンクに対して前記スイープガスを供給させる第2制御部と、を備えることとしてもよい。このような構成とすれば、吸着工程に先立って、上流タンクの吸着材において、スイープガスによって二酸化炭素含有ガス流れの下流部から二酸化炭素を脱離させることができる。そのため、吸着工程の開始時に、吸着オフガス中の二酸化炭素濃度を低減することができる。
(5)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記上流タンクは、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える吸着塔を複数備え、前記二酸化炭素回収装置は、さらに、複数の前記吸着塔に連通する配管の接続状態を切り替える第3制御部であって、複数の前記吸着塔のうちの一つである第1吸着塔に対して前記スイープガスが供給されるときに、前記第1吸着塔から排出されるスイープオフガスを、二酸化炭素含有ガスが供給されている第2吸着塔に導くように前記接続状態を切り替える第3制御部を備えることとしてもよい。このような構成とすれば、スイープオフガス中の二酸化炭素を第2吸着塔に吸着させることができるため、二酸化炭素の回収効率を高めることができる。
(6)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記上流タンクは、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える吸着塔として、少なくともいずれか一つの吸着塔が、前記二酸化炭素含有ガスの供給を受けて吸着材に二酸化炭素を吸着する動作が可能な吸着工程となり、少なくとも他のいずれか一つの吸着塔が、吸着材から二酸化炭素を脱離する動作が可能な脱離工程となる複数の吸着塔を備え、前記下流タンクは、該下流タンク内部の圧力を検出する圧力センサを備え、前記二酸化炭素回収装置は、さらに、複数の前記吸着塔および前記下流タンクに連通する配管の接続状態を制御する第4制御部であって、前記圧力センサが検出する圧力が、予め定めた下限値を下回る場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から脱離された二酸化炭素を前記下流タンクに導き、前記圧力センサが検出する圧力が、予め定めた上限値を上回る場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給を停止し、前記圧力センサが検出する圧力が、前記下限値以上、上限値以下の範囲である場合には、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給が停止されているときには、前記停止の状態を維持すると共に、前記脱離工程となっている前記吸着塔から前記下流タンクへの二酸化炭素の供給が行われているときには、二酸化炭素の供給を継続させる第4制御部を備えることとしてもよい。このような構成とすれば、下流タンクは、二酸化炭素回収装置に対して要求される二酸化炭素の量の変動に対応可能な容量を有していればよいため、気体の状態で二酸化炭素を貯蔵する下流タンクを、より小型化することができ、その結果、二酸化炭素貯蔵部全体を小型化することができる。
(7)上記形態の二酸化炭素回収装置において、前記第4制御部は、前記吸着工程となっている前記吸着塔における二酸化炭素の吸着状態が、予め定めた最大吸着量となったと判定されるときには、該吸着塔に対する二酸化炭素含有ガスの供給を停止して、前記脱離工程を経た他の吸着塔に対して二酸化炭素含有ガスを導くように前記接続状態を切り替えることとしてもよい。このような構成とすれば、吸着塔が備える吸着材を効率よく使用することができ、吸着材を備える吸着塔の小型化が可能になる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、二酸化炭素回収装置を備える二酸化炭素再資源化システム、二酸化炭素回収方法、炭化水素製造方法、二酸化炭素回収装置の制御方法、炭化水素製造装置の制御方法、これらの制御方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】二酸化炭素再資源化システムの概略構成を表す説明図。
【
図2】二酸化炭素回収装置が備える二酸化炭素回収部の概略構成を表す説明図。
【
図3】二酸化炭素回収装置が備える二酸化炭素貯蔵部の概略構成を表す説明図。
【
図4】吸着塔の間で吸着、脱離、送気の各工程が切り替わる様子を表す説明図。
【
図5】吸着工程で排出される吸着オフガス中の二酸化炭素濃度の変化を示す説明図。
【
図6】吸着工程で排出される吸着オフガス中の二酸化炭素濃度の変化を示す説明図。
【
図7】第2実施形態の二酸化炭素貯蔵部の概略構成を表す説明図。
【
図8】脱離工程制御処理ルーチンを表すフローチャート。
【
図9】吸着工程制御処理ルーチンを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
(A-1)二酸化炭素再資源化システムの全体構成:
図1は、本開示の一実施形態である二酸化炭素回収装置15を含む二酸化炭素再資源化システム10の概略構成を表す説明図である。二酸化炭素再資源化システム10は、二酸化炭素含有ガス供給部20と、二酸化炭素回収装置15と、メタン化反応器22と、メタンタンク24と、を備える。
【0008】
二酸化炭素含有ガス供給部20は、二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスの供給源であり、二酸化炭素含有ガスを排出する。二酸化炭素含有ガス供給部20は、例えば、工場の燃焼炉などであり、この場合には、排出される二酸化炭素含有ガスは、燃焼排ガスであって、二酸化炭素の他に、窒素、酸素、水蒸気などを含む。
【0009】
二酸化炭素回収装置15は、第1CO2含有ガス流路70によって二酸化炭素含有ガス供給部20に接続されており、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給された二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する。第1CO2含有ガス流路70には、図示しない脱水部を設けて、二酸化炭素含有ガス中の水分量を低減することとしてもよい。二酸化炭素回収装置15は、二酸化炭素回収部30と、二酸化炭素貯蔵部50と、制御部80と、を備える。第1CO2含有ガス流路70は、二酸化炭素回収部30に接続されており、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素は、第1CO2流路72に排出される。また、第1CO2含有ガス流路70から分岐して第2CO2含有ガス流路74が設けられている。第2CO2含有ガス流路74は、二酸化炭素貯蔵部50に接続されており、二酸化炭素貯蔵部50で回収された二酸化炭素は、第2CO2流路76に排出される。第2CO2流路76は、第1CO2流路72に合流する。第1CO2含有ガス流路70から第2CO2含有ガス流路74が分岐する分岐部には、三方弁78が設けられており、第1CO2含有ガス流路70から第2CO2含有ガス流路74に分配される二酸化炭素含有ガスの流量が調節される。
【0010】
上記三方弁78は、制御部80によって制御される。制御部80は、例えば第1CO2含有ガス流路70に設けた図示しない流量センサの検出信号を受信して、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給される二酸化炭素含有ガスの流量を取得する。そして、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、二酸化炭素回収部30が二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収できる処理可能量として予め設定された設定値以下のときには、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの全量を二酸化炭素回収部30に供給するように、三方弁78を制御する。また、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、上記設定値を超えたときには、上記設定値の量の二酸化炭素含有ガスを二酸化炭素回収部30に供給すると共に、上記設定値の超過分の二酸化炭素含有ガスを二酸化炭素貯蔵部50に供給するように、三方弁78を制御する。このとき、制御部80は、「第1制御部」として機能する。二酸化炭素回収部30および二酸化炭素貯蔵部50の構成については、後に詳しく説明する。
【0011】
メタン化反応器22は、第1CO2流路72によって二酸化炭素回収装置15に接続されており、二酸化炭素回収装置15から供給された二酸化炭素からメタンを生成する。メタン化反応器22は、「燃料生成部」とも呼ぶ。第1CO2流路72を流れてメタン化反応器22におけるメタン化反応に供されるガスを、「燃料ガス」とも呼ぶ。メタン化反応器22は、二酸化炭素からメタンを生成するメタン化反応を促進するメタン化触媒を内部に収容している。メタン化触媒としては、例えば、ルテニウムやニッケルを含む触媒を用いることができる。メタン化反応器22で生成されたメタンは、メタンタンク24に一旦貯蔵された後に、二酸化炭素含有ガス供給部20に供給されて、燃焼炉における燃焼などに用いられる。これにより、二酸化炭素含有ガス供給部20では、メタンから二酸化炭素含有ガスが生成される。このような二酸化炭素含有ガス供給部20は、「二酸化炭素生成部」とも呼ぶ。二酸化炭素含有ガス供給部20で生成された二酸化炭素含有ガスは、上記したように二酸化炭素回収装置15に供給されて、二酸化炭素が回収され、回収された二酸化炭素は再び資源として用いられる。
【0012】
(A-2)二酸化炭素回収装置の構成:
二酸化炭素回収装置15では、二酸化炭素回収部30が、主として二酸化炭素の回収を行い、二酸化炭素貯蔵部50が、補助的に二酸化炭素の回収を行うと共に二酸化炭素を貯蔵する。以下では、二酸化炭素回収部30および二酸化炭素貯蔵部50の構成について、順次説明する。
【0013】
(A-2-1)二酸化炭素回収部の構成:
図2は、二酸化炭素回収装置15が備える二酸化炭素回収部30の概略構成を表す説明図である。二酸化炭素回収部30は、分離器31a、31bと、パージガス供給部33と、を備える。以下の説明では、2つの分離器31a、31bを区別しないときには、単に「分離器31」とも呼ぶ。
【0014】
分離器31a、分離器31bは、筒状に形成されて、内部にそれぞれ吸着材32a、32bが収容されている。吸着材32a、32bは、二酸化炭素吸蔵(吸着)性能を有する材料であり、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルを例示することができる。本実施形態の二酸化炭素回収部30では、分離器31a、分離器31bのうちの一方の分離器において、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を吸着材に吸着させる吸着工程を行い、他方の分離器において、二酸化炭素を吸着した吸着材から二酸化炭素を脱離する脱離工程を行う。
図2では、分離器31aが吸着工程となっており、分離器31bが脱離工程となっているときの様子を示している。本実施形態の二酸化炭素回収部30は、吸着材を備える分離器内の圧力および温度を変更することによって、吸着工程と脱離工程とを切り替える、圧力・温度スイング式吸着(PTSA:Pressure Thermal Swing Adsorption)装置である。
【0015】
二酸化炭素含有ガス供給部20が排出する二酸化炭素含有ガスが流れる第1CO
2含有ガス流路70(
図1参照)は、CO
2含有ガス分岐路36a、36bに分岐する。CO
2含有ガス分岐路36aは、筒状に形成される分離器31aの一方の端部に接続されており、CO
2含有ガス分岐路36bは、分離器31bの一方の端部に接続されている。以下の説明では、各分離器31における軸方向の両端部のうち、二酸化炭素含有ガスが流入する側である、CO
2含有ガス分岐路36a、36bが接続される側の端部を、「一方の端部」と呼び、異なる側の端部を「他方の端部」と呼ぶ。CO
2含有ガス分岐路36a、36bの各々には、制御部80によって開閉制御されるCO
2含有ガスバルブ37a、37bが設けられている。また、分離器31aの他方の端部には放出分岐路38aが接続されており、分離器31bの他方の端部には放出分岐路38bが接続されている。放出分岐路38a、38bは、合流して吸着オフガス路40となる。放出分岐路38a、38bの各々には、制御部80によって開閉制御されるオフガス排出バルブ39a、39bが設けられている。
【0016】
図2では、流体が流れている流路を太線で示している。既述したように、分離器31aは吸着工程となっている。このとき、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給される二酸化炭素含有ガスは、第1CO
2含有ガス流路70およびCO
2含有ガス分岐路36aを介して分離器31aに供給され、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素が吸着材32aに吸着される。そして、二酸化炭素が分離された残余のガスである吸着オフガスは、放出分岐路38aおよび吸着オフガス路40を介して、二酸化炭素回収装置15の外部、例えば大気中に放出される。
【0017】
分離器31aの一方の端部には、さらに排出分岐路41aが接続されており、分離器31bの一方の端部には、さらに排出分岐路41bが接続されている。排出分岐路41a、41bは、合流して、既述した第1CO
2流路72(
図1参照)となる。排出分岐路41a、41bの各々には、制御部80によって開閉制御されるCO
2排出バルブ42a、42bが設けられている。第1CO
2流路72には、制御部80によって駆動制御されるポンプ34と、サージタンク35とが、流体流れ方向にこの順で配置されている。また、二酸化炭素回収部30では、分離器31a、31bの各々の内部に、吸着材32a、32bを加熱するための熱媒を流通させる熱媒流路49が設けられている(ただし、
図2では、分離器31b内に熱媒を流通させる熱媒流路49のみを示しており、分離器31a内に熱媒を流通させる熱媒流路49は記載を省略している)。熱媒流路49を流れる流体は、吸着材32a、32bを脱離工程に適した温度に昇温できる高温の流体であればよい。例えば、熱媒流路49を、発熱反応であるメタン化反応が進行するメタン化反応器22と分離器31との間で熱媒を循環させる流路とするならば、脱離工程で吸着材を加熱するために消費するエネルギを削減することができる。制御部80は、熱媒流路49に設けられた図示しないバルブを開閉制御することにより、脱離工程の分離器31のみに熱媒が供給されるように、熱媒流路49における熱媒の流通状態を制御する。
【0018】
図2では、流体が流れている流路を太線で示しており、既述したように、分離器31bは脱離工程となっている。このとき、ポンプ34が駆動されると共にCO
2排出バルブ42bが開弁されて、分離器31b内が減圧される。また、熱媒流路49を流れる熱媒によって吸着材32bが加熱される。これにより、吸着材32bに吸着されていた二酸化炭素が脱離される。なお、第1CO
2流路72に設けられたサージタンク35は、脱離工程により排出された二酸化炭素を一時的に貯蔵して、二酸化炭素回収部30からメタン化反応器22に供給される二酸化炭素の流量の変動の一部を吸収可能となっている。
【0019】
本実施形態の二酸化炭素回収部30が備えるパージガス供給部33は、脱離工程となっている分離器31に対して、脱離の動作を促進するためのパージガスを供給するための装置である。本実施形態では、パージガスとして水素を用いており、パージガス供給部33は水素供給源である。パージガス供給部33は、例えば水電解装置や水素タンク等により構成することができる。このようなパージガス供給部33として、メタン化反応器22に対してメタン化反応で用いる水素を供給する図示しない水素供給源を用いることとしてもよい。分離器31aの他方の端部には、パージガス供給バルブ45aが設けられたパージガス分岐路44aが接続されており、分離器31bの他方の端部には、パージガス供給バルブ45bが設けられたパージガス分岐路44bが接続されている。パージガス分岐路44a、44bは、上流側で合流してパージガス供給流路43となり、パージガス供給部33に接続する。
図2において太線の流路として示されているように、脱離工程の分離器31bに対しては、パージガス供給流路43およびパージガス分岐路44bを介してパージガス供給部33からパージガスが供給される。
【0020】
脱離工程の分離器31にパージガスを供給して吸着材上にパージガスを流すことにより、吸着材から脱離した二酸化炭素が速やかに吸着材近傍からとり除かれると共に、パージガスによって分離器31内の二酸化炭素分圧が低減されて、吸着材から二酸化炭素が脱離する効率が高まる。パージガスとして水素を用いることで、脱離工程の分離器31から第1CO2流路72に排出される燃料ガスは、二酸化炭素と共に水素を含有することになる。燃料ガスに含まれる水素は、メタン化反応器22において二酸化炭素を用いてメタンを生成するメタン化反応に用いられる。本実施形態のメタン化反応器22は、既述したように、メタン化反応器22に対してメタン化反応で用いる水素を供給する図示しない水素供給源を備える。制御部80は、メタン化反応器22に供給される燃料ガス中の二酸化炭素流量を算出すると共に、パージガス供給部33から分離器31に供給された水素流量を取得する。そして、メタン化反応に要する水素として、燃料ガスにパージガスとして含まれる水素では不足する分の水素がメタン化反応器22に供給されるように、メタン化反応器22が備える水素供給源を駆動する。
【0021】
図2では、二酸化炭素回収部30は、2つの分離器31を備えることとしたが、1つあるいは3つ以上の分離器31を備えることとしてもよい。また、上記では吸着工程と脱離工程のみについて説明したが、各分離器31において、さらに他の動作を行う工程を実行してもよい。例えば、脱離工程に先立って吸着材を加熱する余熱工程や、吸着工程に先立って吸着材を冷却する冷却工程を行ってもよい。二酸化炭素回収部30が複数の分離器31を備え、複数の分離器間で工程をずらして、常にいずれかの分離器31が吸着工程を行い、他のいずれかの分離器31が脱離工程を行うならば、二酸化炭素回収部30において、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収して排出する動作を連続的に行うことができる。
【0022】
(A-2-2)二酸化炭素貯蔵部の構成:
図3は、二酸化炭素回収装置15が備える二酸化炭素貯蔵部50の概略構成を表す説明図である。二酸化炭素貯蔵部50は、上流タンク69と、下流タンク55と、スイープガス供給部53と、を備える。上流タンク69は、吸着塔51a、51b、51cを備える。以下の説明では、3つの吸着塔51a、51b、51cを区別しないときには、単に「吸着塔51」とも呼ぶ。
【0023】
吸着塔51a、51b、51cは、筒状に形成されて、内部にそれぞれ吸着材52a、52b、52cが収容されている。吸着材52a、52b、52cは、二酸化炭素吸蔵(吸着)性能を有する材料であり、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルを例示することができる。吸着材52a、52b、52cは、二酸化炭素回収部30の分離器31a、31bが備える吸着材32a、32bと同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態では、吸着塔51a、51b、51cは、同じ形状で同じ容量の装置である。本実施形態の二酸化炭素貯蔵部50では、吸着塔51a、51b、51cのうちの一つの吸着塔において、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を吸着材に吸着させる吸着工程を行い、他の一つの吸着塔において、二酸化炭素を吸着した吸着材から二酸化炭素を脱離する脱離工程を行い、残余の吸着塔において、吸着材における二酸化炭素の吸着量をさらに低減する送気工程を行っている。
図3では、吸着塔51aが吸着工程となっており、吸着塔51bが脱離工程となっており、吸着塔51cが送気工程となっている。
【0024】
図4は、吸着塔51a~51cの間で、吸着、脱離、送気の各工程が切り替わる様子を表す説明図である。
図4に示すように、サイクル1、サイクル2、およびサイクル3がこの順で繰り返されて、各吸着塔51では、吸着工程、脱離工程、および送気工程が、この順で繰り返され、各吸着塔51は、互いに異なる工程となっている。
図3は、サイクル1の様子を示す。本実施形態では、吸着工程、脱離工程、送気工程の各々の工程が実行される時間は同じ長さとなっており、予め定めた時間ごとに、サイクル1~3を順次切り替えている。ただし、各工程の時間を変更可能としてもよい。本実施形態の二酸化炭素貯蔵部50は、既述したように、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給される二酸化炭素含有ガスのうち、二酸化炭素回収部30における二酸化炭素回収の処理可能量として設定された設定値を超過する分の二酸化炭素含有ガスが供給される。そのため、吸着工程の吸着塔51は、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給される二酸化炭素含有ガスが少ないときには、二酸化炭素含有ガスが供給されることなく、吸着の動作を行わない状態となり得る。本実施形態の二酸化炭素貯蔵部50は、吸着材を備える吸着塔内の圧力を変更することによって、吸着工程と脱離工程とを切り替える、圧力スイング式吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)装置である。
【0025】
酸化炭素含有ガスが流れる第1CO
2含有ガス流路70から分岐する第2CO
2含有ガス流路74(
図1参照)は、CO
2含有ガス分岐路56a、56b、56cに分岐する。CO
2含有ガス分岐路56aは、筒状に形成される吸着塔51aの一方の端部に接続されており、CO
2含有ガス分岐路56bは吸着塔51bの一方の端部に接続されており、CO
2含有ガス分岐路56cは吸着塔51cの一方の端部に接続されている。以下の説明では、各吸着塔51における軸方向の両端部のうち、二酸化炭素含有ガスが流入する側である、CO
2含有ガス分岐路56a、56b、56cが接続される側の端部を、「一方の端部」と呼び、異なる側の端部を「他方の端部」と呼ぶ。CO
2含有ガス分岐路56a、56b、56cの各々には、制御部80によって開閉制御されるCO
2含有ガスバルブ57a、57b、57cが設けられている。また、吸着塔51aの他方の端部には放出分岐路58aが接続されており、吸着塔51bの他方の端部には放出分岐路58bが接続されており、吸着塔51cの他方の端部には放出分岐路58cが接続されている。放出分岐路58a、58b、58cは、合流して吸着オフガス路60となる。放出分岐路58a、58b、58cの各々には、制御部80によって開閉制御されるオフガス排出バルブ59a、59b、59cが設けられている。
【0026】
図3では、流体が流れている流路を太線で示している。既述したように、吸着塔51aは吸着工程となっている。このとき、二酸化炭素含有ガス供給部20から供給される二酸化炭素含有ガスは、第1CO
2含有ガス流路70、第2CO
2含有ガス流路74、およびCO
2含有ガス分岐路56aを介して吸着塔51aに供給され、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素が吸着材52aに吸着される。そして、二酸化炭素が分離された残余のガスである吸着オフガスは、放出分岐路58aおよび吸着オフガス路60を介して、二酸化炭素回収装置15の外部、例えば大気中に放出される。
【0027】
吸着塔51a、51b、51cの一方の端部には、それぞれ、排出分岐路61a、61b、61cがさらに接続されている。排出分岐路61a、61b、61cは、合流して、既述した第2CO2流路76となる。排出分岐路61a、61b、61cの各々には、制御部80によって開閉制御されるCO2排出バルブ62a、62b、62cが設けられている。第2CO2流路76には、制御部80によって駆動制御されるポンプ54と、下流タンク55とが、流体流れ方向にこの順で配置されている。下流タンク55の出口部には、下流タンク55から排出するガス量を調整する流量調整弁55aが設けられている。また、下流タンク55には、下流タンク55の内部の圧力を検出する圧力センサ55bが設けられている。
【0028】
図3では、流体が流れている流路を太線で示しており、既述したように、吸着塔51bは脱離工程となっている。このとき、ポンプ54が駆動されると共にCO
2排出バルブ62bが開弁されて、吸着塔52b内が減圧される。これにより、吸着材52bに吸着されていた二酸化炭素が脱離される。上流タンクである吸着塔51bから排出された二酸化炭素は、下流タンク55においてガスの状態で貯蔵される。メタン化反応器22に供給すべき二酸化炭素の量に対して、二酸化炭素回収部30からメタン化反応器22に供給される二酸化炭素の量が不足する場合には、流量調整弁55aが駆動制御されることにより、不足分の二酸化炭素が下流タンク55からメタン化反応器22に供給される。
【0029】
本実施形態の二酸化炭素貯蔵部50が備えるスイープガス供給部53は、吸着塔51にスイープガスを供給する装置であり、制御部80によって駆動制御される。スイープガスは、二酸化炭素濃度が十分に低く、吸着材52a~52cに吸着する成分を実質的に含有しない任意のガスを用いることができる。本実施形態では、スイープガスとして、比較的安価に利用可能な空気を用いている。スイープガス供給部53は、「送気部」とも呼ぶ。
【0030】
吸着塔51a、51b、51cの他方の端部には、それぞれ、制御部80によって開閉制御されるスイープガス供給バルブ65a、65b、65cが設けられたスイープガス分岐路64a、64b、64cが接続されている。スイープガス分岐路64a、64b、64cは、上流側で合流してスイープガス供給流路63となり、スイープガス供給部53に接続する。また、吸着塔51a、51b、51cの一方の端部には、それぞれ、制御部80によって開閉制御されるスイープオフガスバルブ68a、68b、68cが設けられたスイープオフガス分岐路67a、67b、67cが接続されている。スイープオフガス分岐路67a、67b、67cは、下流側で合流してスイープオフガス路66となる。
【0031】
図3では、流体が流れている流路を太線で示している。既述したように、吸着塔51cは送気工程となっている。このとき、スイープガス供給部53から供給されるスイープガスは、スイープガス供給流路63およびスイープガス分岐路64cを介して吸着塔51cに供給され、吸着材52cに残留する二酸化炭素を脱離させながら吸着材52cを通過する。そして、吸着材52cを通過したスイープオフガスは、スイープオフガス分岐路67cおよびスイープオフガス路66を介して、二酸化炭素回収装置15の外部、例えば大気中に放出される。このように、脱離工程の後に、吸着工程に先立って行う送気工程で、スイープガス供給部53を駆動すると共に、スイープガスの流通に係る各バルブを開閉制御して、吸着塔51に対してスイープガスを供給する制御を行うとき、制御部80は、「第2制御部」として機能する。
【0032】
吸着塔51内の減圧を伴う脱離工程においては、吸着材に吸着される二酸化炭素が完全に脱離することはなく、ある程度の二酸化炭素が吸着材に吸着された状態で残留する。脱離工程後の送気工程において吸着塔51にスイープガスが供給されると、スイープガスと吸着材との間の二酸化炭素分圧差により、吸着材に残留していた二酸化炭素が脱離して、スイープガスに混合される。その結果、吸着塔51内を流れるスイープガス中の二酸化炭素濃度は、下流側ほど高くなる。したがって、吸着材においては、スイープガス流れの上流側ほど、すなわち、吸着塔51の他端側ほど、送気工程後における二酸化炭素の吸着量は少なくなる。
【0033】
図3では、二酸化炭素貯蔵部50は、3つの吸着塔を備えることとしたが、1つまたは3つ以外の複数の吸着塔を備えることとしてもよい。また、上記では吸着工程と脱離工程と送気工程のみについて説明したが、各吸着塔において、さらに他の動作を行う工程を実行してもよい。二酸化炭素貯蔵部50が複数の吸着塔51を備え、複数の吸着塔間で工程をずらして、常にいずれかの吸着塔が吸着工程を行うこととすれば、二酸化炭素回収部30が二酸化炭素を回収する処理の能力を超過する分の二酸化炭素含有ガスを回収して貯蔵する動作を、常に実行することが可能になる。
【0034】
図1に戻り、二酸化炭素回収装置15が備える制御部80は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、二酸化炭素回収装置15全体を駆動制御する。制御部80は、上述した各流路に設けられているバルブ、各部に設けられたセンサ(温度センサ、流量センサ、圧力センサなど)、ポンプ34,54、パージガス供給部33、スイープガス供給部53等と電気的に接続され、センサからの測定値等に基づいて、バルブやポンプ等の各部を駆動制御する。
【0035】
以上のように構成された本実施形態の二酸化炭素回収装置15は、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部30と、二酸化炭素回収部30と並列に二酸化炭素含有ガス供給部20に接続されて、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの一部から二酸化炭素を回収して貯蔵する二酸化炭素貯蔵部50と、を備える。このような構成とすれば、二酸化炭素貯蔵部50を設けることにより、二酸化炭素回収部30の大型化を抑えつつ、二酸化炭素回収装置15に供給される二酸化炭素含有ガス量の変動に対応することが可能になる。すなわち、二酸化炭素回収装置15に供給される二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する動作の一部を、二酸化炭素貯蔵部50で行うことができるため、変動する二酸化炭素含有ガス量の最大量に対応可能となるように二酸化炭素回収部30を設ける必要がなく、二酸化炭素回収部30をより小型化して、装置全体の構成を簡素化することが可能になる。
【0036】
このとき、二酸化炭素貯蔵部50は、二酸化炭素を吸着する吸着材を備える吸着塔51を有する上流タンク69と、上流タンク69から排出された二酸化炭素をガスの状態で貯蔵する下流タンク55と、を備える。このような構成とすれば、二酸化炭素貯蔵部50で回収した二酸化炭素の一部を、吸着材に吸着させて貯蔵することが可能になる。そのため、二酸化炭素回収部30に加えて設ける二酸化炭素貯蔵部50を、ガスの状態で二酸化炭素を貯蔵するタンクのみにより構成する場合に比べて、二酸化炭素貯蔵部50を小型化することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、第1CO2含有ガス流路70を流れる二酸化炭素含有ガスのうち、二酸化炭素回収部30が二酸化炭素を回収する処理能力を超過する分の二酸化炭素含有ガスが第2CO2含有ガス流路74に流入するように、三方弁78を駆動している。このように、二酸化炭素回収部30が二酸化炭素を回収する処理能力の範囲内で、優先的に二酸化炭素回収部30を用いるため、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する動作を、より安定させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、二酸化炭素回収部30を、圧力・温度スイング式吸着(PTSA)装置としており、二酸化炭素貯蔵部50の上流タンク69は、圧力スイング式吸着(PSA)装置としている。吸着工程および脱離工程において、圧力と温度との双方を変動させるPTSA装置は、圧力のみを変動させるPSA装置に比べて、二酸化炭素の回収に要するエネルギを削減することができる。PTSA装置は、圧力変動のために消費するエネルギを低減できるためである。また、本実施形態のように、二酸化炭素回収部30の温度を変動させるために、メタン化反応器22におけるメタン化反応に伴って生じる熱を用いる場合には、温度変動のために消費するエネルギを削減できるためである。しかしながら、圧力と温度との双方を変動させるPTSA装置は、装置構成がPSA装置よりも複雑であり、一般的に高コストであるため、装置の容量を増加させることに伴って生じる装置の大型化の弊害が、より大きくなり得る。本実施形態では、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する処理の大部分は、エネルギ効率の高いPTSA装置を用いて行うと共に、二酸化炭素含有ガス量の一時的な増加分の処理は、装置構成がより簡素なPSA装置を用いて行っている。そのため、二酸化炭素含有ガス量の変動に対応しつつ、装置全体のエネルギ効率の向上と、装置全体の大型化の抑制とを実現することができる。特に、既述したように、二酸化炭素回収部30が二酸化炭素を回収する処理能力の範囲内で、優先的に二酸化炭素回収部30を用いるため、装置全体のエネルギ効率を向上させる効果を高めることができる。
【0039】
さらに、本実施形態によれば、二酸化炭素貯蔵部50の上流タンク69の各吸着塔51において、脱離工程の後に送気工程を行い、送気工程の吸着塔51において、吸着工程における二酸化炭素含有ガスの流れの向きと対向する向きで、スイープガスを流している。そのため、吸着工程の開始時に、吸着工程の吸着塔51から排出される吸着オフガス中の二酸化炭素濃度を低減する、すなわち、吸着工程の吸着塔51からの二酸化炭素の漏れ出しを抑えることができる。
【0040】
図5および
図6は、吸着工程で排出される吸着オフガス中の二酸化炭素濃度の変化を示す説明図である。
図5は、吸着工程に先立って送気工程を行う本実施形態の吸着塔51から排出される吸着オフガスの様子を示し、
図6は、送気工程を行うことなく脱離工程の後に吸着工程を行った吸着塔から排出される吸着オフガスの様子を示す。
図5および
図6において、横軸は、吸着工程開始時からの経過時間を示しており、縦軸は、スイープオフガス中の二酸化炭素濃度を示す。
図5に示すように、送気工程を行う場合には、吸着工程開始時から、破過点、すなわち、吸着材が二酸化炭素を吸着して破過するまで、吸着オフガス中の二酸化炭素濃度はほぼゼロとなる。これに対して、送気工程を行わない場合には、
図6に示すように、吸着工程開始時から、吸着オフガス中にある程度の二酸化炭素が含まれて、二酸化炭素の漏れ出しが起こる。
【0041】
このことは、脱離工程の終了時において、吸着材に若干の二酸化炭素が吸着している状態になるためと考えられる。本実施形態のように減圧を伴う脱離工程では、吸着材全体において、二酸化炭素の残留量は比較的均一であると考えられる。このように吸着材に二酸化炭素が残留する状態で吸着工程を開始すると、吸着材全体としては残留する二酸化炭素量は少ないため、吸着塔51に供給される二酸化炭素含有ガスと吸着材との間の二酸化炭素分圧差が大きくなり、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素は、吸着塔51における二酸化炭素含有ガス流れの上流側で、吸着材に吸着する。このように上流側で二酸化炭素が吸着されることにより、吸着塔51における二酸化炭素含有ガス流れの下流側では、吸着塔51内を流れるガスは、二酸化炭素濃度および二酸化炭素分圧が極めて低いガスとなる。その結果、吸着塔51の下流部では、吸着材に比べて上記ガスの二酸化炭素分圧が低くなり、吸着材に残留していた二酸化炭素が、上記ガス中に脱離して、
図6に示すように吸着オフガスへの二酸化炭素の漏れ出しが起こる。
【0042】
本実施形態では、送気工程において、吸着工程における二酸化炭素含有ガスの流れの向きと対向する向きで、スイープガスを流している。この送気工程では、吸着塔51において、少なくともスイープガス流れの上流側、すなわち、吸着工程における二酸化炭素含有ガス流れの下流側において、吸着材に残留する二酸化炭素を脱離させることができる。そのため、吸着工程の開始時に、二酸化炭素含有ガス流れの上流側で二酸化炭素が吸着されて二酸化炭素分圧が極めて低くなったガスが流れたときに、二酸化炭素含有ガス流れの下流側において、残留する二酸化炭素が脱離して漏れ出すことを抑えて、二酸化炭素の回収効率を高めることができる。
【0043】
なお、送気工程で排出されるスイープオフガス中には、二酸化炭素が含まれ得るが、送気工程では、スイープガス流れの上流側において吸着材に残留する二酸化炭素量を十分に低減すればよいため、スイープガスの流量は、吸着工程において吸着塔51に供給される二酸化炭素含有ガスの流量に比べて、十分に少なくすることができる。そのため、送気工程を行うことにより、吸着塔51から漏れ出す二酸化炭素量を抑えることができる。
【0044】
二酸化炭素貯蔵部50の吸着塔51において、二酸化炭素回収部30の分離器31と同様に、脱離工程においてパージガスを流すことにより、吸着材に残留する二酸化炭素量を低減し、送気工程を行うことなく、吸着工程開始時における二酸化炭素の漏れ出しを抑えることとしてもよい。ただし、脱離工程においてパージガスを供給すると、脱離工程で得られるガスは、二酸化炭素に加えてパージガスを含むこととなる。パージガスとして水素を用いる場合には、パージガスとして二酸化炭素に混合された水素を、メタン化反応器22におけるメタン化反応で用いることができるが、二酸化炭素回収部30と二酸化炭素貯蔵部50との双方でパージガスを用いる場合には、メタン化反応器22においてメタン化反応のための不足分として供給すべき水素量の制御(メタン化反応器22における二酸化炭素と水素との比率の制御)が煩雑となり、採用し難い場合がある。そのため、二酸化炭素再資源化システム10全体の制御の簡素化の観点からは、本実施形態のように、二酸化炭素貯蔵部50の上流タンク69では、送気工程を行うことが望ましい。また、吸着工程開始時の二酸化炭素の漏れ出し量が許容範囲であれば、送気工程を行わないこととしてもよい。
【0045】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の二酸化炭素貯蔵部150の概略構成を表す説明図である。二酸化炭素貯蔵部150は、第1実施形態の二酸化炭素再資源化システム10と同様のシステムにおいて、二酸化炭素貯蔵部50に代えて用いられる。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付す。
図7では、
図3と同様に、吸着塔51aが吸着工程であり、吸着塔51bが脱離工程であり、吸着塔51cが送気工程である様子を示しており、流体が流れる流路を太線で示している。スイープガスが供給される送気工程の吸着塔51cは、「第1吸着塔」とも呼び、二酸化炭素含有ガスが供給される吸着工程の吸着オフガス1aは、「第2吸着塔」とも呼ぶ。
【0046】
二酸化炭素貯蔵部150では、スイープオフガス路66は、第2CO
2含有ガス流路74に接続されている。そのため、
図7に示すサイクル1の状態では、送気工程である吸着塔51c(第1吸着塔)から排出された二酸化炭素を含有するスイープオフガスは、第2CO
2含有ガス流路74およびCO
2含有ガス分岐路56aを介して吸着塔51a(第2吸着塔)に導かれる。その結果、スイープオフガス中の二酸化炭素は、吸着塔51aの吸着材52aに吸着される。このように、送気工程である吸着塔51から排出されるスイープオフガスを、吸着工程である吸着塔51に導くように、吸着塔間を連通する配管の接続状態を切り替える制御を行うとき、制御部80は、「第3制御部」として機能する。
【0047】
このような構成とすれば、スイープオフガス中の二酸化炭素を、吸着工程である他の吸着塔51aで吸着するため、送気工程に伴って外部に放出される二酸化炭素量を抑え、二酸化炭素回収装置15における二酸化炭素の回収効率を高めることができる。
【0048】
C.第3実施形態:
第1および第2実施形態では、二酸化炭素貯蔵部50が備える各吸着塔51において、
図4に示すように、吸着工程と脱離工程と送気工程とを同じ時間に設定して、予め定めた時間ごとにサイクルを変更したが、異なる構成としてもよい。以下では、第3実施形態として、下流タンク55の内部の圧力が特定の範囲内となるように、脱離工程となっている吸着塔51における脱離の動作を制御すると共に、吸着工程となっている吸着塔51における二酸化炭素の吸着の程度が破過状態になったと判断されるときに、サイクルを変更する構成について説明する。第3実施形態では、吸着塔51cが脱離工程であるとは、吸着工程の後に吸着材から二酸化炭素を脱離する動作が可能な状態を指し、ポンプ54が駆動されると共にCO
2含有ガスバルブ57cが開弁されている状態だけでなく、CO
2含有ガスバルブ57cが閉弁されており、開弁時に脱離の動作が行われるように待機する状態を含む。以下では、第1実施形態の二酸化炭素貯蔵部50と同様の構造に基づいて、第3実施形態の動作を説明する。
【0049】
図8は、第3実施形態の制御部80が実行する脱離工程制御処理ルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、3つの吸着塔51のうちのいずれか(以下では、吸着塔51bとして説明する)が脱離工程となったときに起動され、この吸着塔51bの脱離工程が終了するまで繰り返し実行される。このように、脱離工程に係る制御、具体的には、吸着塔51bおよび下流タンク55に連通する配管の接続状態を制御するとき、制御部80は「第4制御部」として機能する。
【0050】
本ルーチンが起動されると、制御部80のCPUは、下流タンク55に設けた圧力センサ55bの検出信号を取得して、下流タンク55内の圧力Ptと、下流タンク55内の圧力の下限値である閾値minとを比較する(ステップS100)。本実施形態では、下流タンク55の圧力の下限値である閾値minと共に、上限値である閾値maxが予め設定されている。閾値minおよび閾値maxは、下流タンク55の圧力をこれらの下限値以上、上限値以下の範囲とすることで、下流タンク55から排出させるガスの流量を調節する精度を確保するための基準値として定められている。
【0051】
ステップS100において、下流タンク55内の圧力Ptが、下流タンク55内の圧力の下限値である閾値min未満であると判断すると(ステップS100:YES)、制御部80は、吸着塔51bの脱離の動作を開始する(ステップS110)すなわち、ポンプ54を駆動すると共に、CO2排出バルブ62bを開弁する。これにより、吸着塔51bで脱離した二酸化炭素の、下流タンク55への供給が開始される。このとき、下流タンク55に供給される二酸化炭素の流量が、下流タンク55から排出される二酸化炭素の流量を上回る場合には、下流タンク55内の圧力Ptは上昇する。
【0052】
その後、制御部80は、下流タンク55内の圧力Ptと、下流タンク55内の圧力の上限値である閾値maxとを比較する(ステップS120)。下流タンク55内の圧力Ptが、閾値maxを超えると判断すると(ステップS120:YES)、制御部80は、脱離動作を停止して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。ステップS130では、CO2排出バルブ62bを閉弁する。これにより、吸着塔51bから下流タンク55への二酸化炭素の供給が停止される。この後、下流タンク55からメタン化反応器22への二酸化炭素の供給が行われるときには、下流タンク55内の圧力Ptは低下する。
【0053】
ステップS120において、下流タンク55内の圧力Ptが、閾値max以下であると判断すると(ステップS120:NO)、制御部80は、脱離の動作を継続する(ステップS160)。そして、ステップS120において、下流タンク55内の圧力Ptが閾値maxを超えると判断するまで、ステップS120とステップS160とを繰り返す。
【0054】
ステップS100において、下流タンク55内の圧力Ptが閾値min以上であると判断すると(ステップS100:NO)、制御部80は、吸着塔51bが脱離動作中であるか否かを判断する(ステップS140)。脱離動作中であると判断すると(ステップS140:YES)、制御部80は、ステップS120に移行して、下流タンク55内の圧力Ptが閾値maxを超えるまで脱離の動作を継続すると共に(ステップS160)、下流タンク55内の圧力Ptが閾値maxを超えると脱離の動作を停止する(ステップS130)。
【0055】
ステップS140において、脱離動作中ではないと判断すると(ステップS140:NO)、制御部80は、脱離の動作を行わずに待機する状態を維持する(ステップS150)。そして、再びステップ100に移行して、既述したステップS100以降の動作を行う。これにより、脱離工程の吸着塔51bでは、下流タンク55内の圧力Ptが閾値min未満となったときには、圧力Ptが閾値maxとなるまで脱離の動作が行われて、吸着塔51bから下流タンク55への二酸化炭素の供給が行われる。そして、下流タンク55内の圧力Ptが閾値maxを超えると、圧力Ptが閾値min未満となるまで脱離の動作が停止される。このようにして、下流タンク55内の圧力Ptが、閾値min以上閾値max以下の範囲に維持される。
【0056】
図9は、第3実施形態の制御部80が実行する吸着工程制御処理ルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、
図4に示したサイクルが切り替わるごとに起動されて、サイクルの切り替えのタイミングを定めるために実行される。以下では、吸着塔51aが吸着工程となるサイクル1に切り替わった場合について説明する。
【0057】
本ルーチンが起動されると、制御部80のCPUは、吸着塔51aについて吸着の動作を開始する(ステップS200)。具体器には、CO2含有ガスバルブ57aおよびオフガス排出バルブ59aを開弁して、吸着塔51aの吸着材52aに対して二酸化炭素含有ガスを供給する。その後、制御部80は、吸着材52aが破過の状態となったか、すなわち、吸着材52aが二酸化炭素を吸着して破過した状態となったか否かを判断する(ステップS210)。
【0058】
ステップS210の判断は、以下のようにして行うことができる。例えば、吸着材52aの他方の端部、すなわち、二酸化炭素含有ガス流れの下流の部位に、吸着材の温度を測定するための温度センサ(熱電対など)を設けておき、測定温度が、上記破過状態の基準として予め定めた基準温度以上になったときに、破過の状態であると判断することができる。また、吸着オフガス路60に二酸化炭素濃度センサを設け、吸着オフガス中の二酸化炭素濃度が、予め定めた基準値以上になったときに、破過の状態であると判断することとしてもよい。あるいは、第2CO2含有ガス流路74に流量センサを設け、流量センサが検出した流量を制御部80が積算することによって、吸着塔51aに供給された二酸化炭素含有ガスの量を算出し、供給された二酸化炭素含有ガスの量が、予め定めた基準量を超えたときに、破過の状態であると判断してもよい。
【0059】
破過の状態であると判断したときには(ステップS210:YES)、制御部80は、本ルーチンを終了して、サイクル1からサイクル2への切り替えを行う。破過の状態ではないと判断したときには(ステップS210:NO)、制御部80は、吸着の動作を継続し(ステップS220)、ステップS210で破過の状態であると判断するまで、吸着の動作を継続する。
【0060】
第3実施形態では、下流タンク55内の圧力Ptが、下限値未満になったときを基準として脱離の動作を開始し、上限値を超えたときを基準として脱離の動作を停止する。そして、吸着工程である吸着塔における二酸化炭素の吸着状態が破過したときに、サイクルの切り替えが行われる。そのため、下流タンク55は、メタン化反応器22が要求する二酸化炭素量の変動に対応可能な容量を有していればよい。第3実施形態では、メタン化反応器22が要求する二酸化炭素量に対して、二酸化炭素貯蔵部50に供給される二酸化炭素含有ガスの量が過剰であっても、二酸化炭素貯蔵部50に供給される二酸化炭素は、吸着工程の吸着塔において吸着され、貯蔵される。したがって、気体の状態で二酸化炭素を貯蔵する下流タンク55を、より小型化することができ、その結果、二酸化炭素貯蔵部50全体を小型化することができる。
【0061】
第3実施形態では、吸着工程の吸着塔が破過の状態になったときに、サイクルの切り替えを行うこととしたが、異なる構成としてもよい。例えば、第1および第2実施形態と同様に、予め定めた基準時間が経過したときに、サイクルを切り替えることとしてもよい。ただし、吸着工程の吸着塔が破過の状態になったときにサイクルを切り替えることとすれば、吸着塔51が備える吸着材を効率よく使用することができる。また、経過時間を基準としてサイクルを切り替える場合のように、例えば、基準時間中に供給され得る二酸化炭素含有ガスの最大値に対応可能となるように、吸着塔51の容量を設定する必要がなく、吸着塔51の小型化が可能になる。
【0062】
D.他の実施形態:
上記した各実施形態では、二酸化炭素回収部30の分離器31および二酸化炭素貯蔵部50の吸着塔51が備える吸着材は、物理吸着により二酸化炭素を吸着する吸着材としたが、異なる構成としてもよい。例えば、多孔質材料にアミンを担持させた固体吸収材のような化学吸着材を用いてもよい。
【0063】
上記した各実施形態では、二酸化炭素回収部30の各分離器31同士、あるいは、二酸化炭素貯蔵部50の各吸着塔51同士は、互いに同様状で同容量であるとしたが、互いに形状や容量が異なっていてもよい。
【0064】
上記した各実施形態では、二酸化炭素回収部30は、吸着材を用いて、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する装置としたが、異なる構成としてもよい。例えば、二酸化炭素回収部30は、二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素透過膜と、ガスの状態で二酸化炭素を貯蔵するタンクとを備えて、二酸化炭素透過膜が分離した二酸化炭素をタンクに貯蔵することとしてもよい。このような場合であっても、二酸化炭素回収部30と二酸化炭素貯蔵部50とを組み合わせることにより、二酸化炭素回収部30を小型化する同様の効果が得られる。
【0065】
上記した各実施形態では、二酸化炭素貯蔵部50は、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの量が、二酸化炭素回収部30における処理可能量として設定された設定値を超えたときに、上記設定値の超過分の二酸化炭素含有ガスを回収して貯蔵することとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの量が上記設定値の量より少ない場合であっても、二酸化炭素含有ガス供給部20が供給する二酸化炭素含有ガスの量に対して、メタン化反応器22が要求する二酸化炭素量が少ない場合には、二酸化炭素回収装置15に供給される二酸化炭素含有ガスの一部を、二酸化炭素貯蔵部50で回収および貯蔵してもよい。
【0066】
上記した各実施形態では、二酸化炭素回収装置15は、二酸化炭素再資源化システム10に含まれることとしたが、異なる構成としてもよい。二酸化炭素回収装置15は、二酸化炭素含有ガスの供給を受けて二酸化炭素の回収を行えばよく、二酸化炭素回収装置15が回収した二酸化炭素は、メタン製造以外の用途に用いてもよい。例えば、メタン以外のエタンやプロパンなどの炭化水素、あるいは、メタノールなどのアルコール類などを含む、他の炭化水素系燃料を製造するために用いることができる。また、二酸化炭素を再資源化することなく、回収した二酸化炭素から製造した炭化水素系燃料は、二酸化炭素回収装置15に供給する二酸化炭素含有ガスの生成を伴う用途以外の用途に用いてもよい。さらに、二酸化炭素回収装置15が回収した二酸化炭素は、炭化水素系燃料の製造以外の用途に用いてもよい。
【0067】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…二酸化炭素再資源化システム
15…二酸化炭素回収装置
20…二酸化炭素含有ガス供給部
22…メタン化反応器
24…メタンタンク
30…二酸化炭素回収部
31,31a,31b…分離器
32a,32b…吸着材
33…パージガス供給部
34…ポンプ
35…サージタンク
36a…CO2含有ガス分岐路
36b…CO2含有ガス分岐路
37a…CO2含有ガスバルブ
38a,38b…放出分岐路
39a,39b…オフガス排出バルブ
40…吸着オフガス路
41a,41b…排出分岐路
42a,42b…CO2排出バルブ
43…パージガス供給流路
44a,44b…パージガス分岐路
45a,45b…パージガス供給バルブ
49…熱媒流路
50,150…二酸化炭素貯蔵部
51,51a~51c…吸着塔
52a~52c…吸着材
53…スイープガス供給部
54…ポンプ
55…下流タンク
55a…流量調整弁
55b…圧力センサ
56a~56c…CO2含有ガス分岐路
57a~57c…CO2含有ガスバルブ
58a~58c…放出分岐路
59a~59c…オフガス排出バルブ
60…吸着オフガス路
61a~61c…排出分岐路
62a~62c…CO2排出バルブ
63…スイープガス供給流路
64a~64c…スイープガス分岐路
65a~65c…スイープガス供給バルブ
66…スイープオフガス路
67a~67c…スイープオフガス分岐路
68a~68c…スイープオフガスバルブ
69…上流タンク
70…第1CO2含有ガス流路
72…第1CO2流路
74…第2CO2含有ガス流路
76…第2CO2流路
78…三方弁
80…制御部