(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188328
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】重合体およびそれを用いた接着剤、積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20221214BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20221214BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221214BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221214BHJP
C08F 2/40 20060101ALI20221214BHJP
C08F 283/04 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C09J125/04
C09J11/06
C09J7/30
C08F2/40
C08F283/04
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096250
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】石川 崇
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J011
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK02A
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CB00A
4F100GB43
4F100JA05
4F100JA07
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4F100JL11A
4F100YY00A
4J004AA07
4J004AA17
4J004AB04
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004EA06
4J004FA05
4J011NA25
4J011NB04
4J011PA97
4J011PB40
4J011PC02
4J026AB34
4J026AC26
4J026BA05
4J026BA07
4J026BA44
4J026DB02
4J026DB17
4J040DA011
4J040DB001
4J040DB021
4J040EH032
4J040GA09
4J040KA16
4J040KA18
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
耐熱性、誘電特性、基材等への密着性が良好な重合体、接着剤および積層体を提供すること。
【解決手段】
エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)および/またはエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)を含有してなるエチレン性不飽和単量体の重合体であって、連鎖移動剤としてのスルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を含む重合体。好ましくは、スルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を、5~95質量%含有してなる重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)および/またはエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)を含有してなるエチレン性不飽和単量体の重合体であって、連鎖移動剤としてのスルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を含むことを特徴とする重合体。
【請求項2】
スルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を、5~95質量%含有してなる請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
エチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物(B)が、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する芳香族炭化水素を含有してなる請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
エチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)が、ノルボルネン骨格を有する脂環式炭化水素を含有してなる請求項1~3いずれかに記載の重合体。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の重合体及び硬化促進剤を含有してなる接着剤。
【請求項6】
請求項5記載の接着剤より形成された接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【請求項7】
基材が、銅箔および/または絶縁層を含んでなる請求項6記載の積層体。
【請求項8】
プリント配線板用である請求項6または7記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体およびそれを用いた接着剤、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、プリント配線板をはじめとする電子材料には、薄型化、多層化、高精細化がますます要求されるようになっている。このような電子材料に用いられる接着剤やコーティング剤として、例えば、具体的には次の(1)~(6)が挙げられる。
【0003】
(1)層間接着剤:回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅あるいは銀回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
【0004】
(2)カバーレイフィルム用接着剤:カバーレイフィルム(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルムなど)と、下地の回路基板と、を張り合わせるために用いられ、あらかじめポリイミドフィルムと、接着層とが一体化されているものが多い。
【0005】
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤:ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。銅回路形成時にエッチング等の加工が施される。
【0006】
(4)カバーレイ:回路の最表面を保護する目的で用いられ、回路上に印刷したり(印刷カバーレイ)、接着シートを張り合わせたり(フィルムカバーレイ)した後、光(感光性カバーレイ)や熱で、硬化させることで形成される。
【0007】
(5)補強板用接着剤:配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
【0008】
(6)電磁波シールド:主に接着性の導電層と絶縁層からなり、電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する目的で、フレキシブルプリント配線板に貼着される。
【0009】
これらの形態としては、液状(印刷用にインク化されたもの)やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0010】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々なポリイミド樹脂の検討が行われている。
【0011】
一方、ポリイミド樹脂は溶剤溶解性が低いことから、取扱いの困難さが課題として挙げられており、近年溶剤溶解性が良く誘電特性も良好なポリイミド樹脂の開発が行われてきた。
【0012】
例えば、特許文献1にはダイマージアミンをポリイミドに組み込むことで溶剤溶解性が良く、誘電特性が良好なポリイミドが合成できることが開示されている。しかし、特許文献1に記載のポリイミドは耐熱性が高いものの、誘電特性が十分な性能を有しているとはいえない。
【0013】
また、特許文献2には無水マレイン酸で変性されたSEBS(スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体)を含む樹脂組成物が開示されている。しかし、耐熱性が低く、十分な性能を有しているとはいえない。
【0014】
また、特許文献3にはジビニル芳香化合物、モノビニル芳香化合物およびシクロオレフィン化合物に由来する構造単位を含有する多官能ビニル芳香族共重合体が開示されている。しかし、基材との密着性(接着性)に乏しく、十分な性能を有しているとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2018-168369号公報
【特許文献2】国際公開第2014/148155号
【特許文献3】特開2018-39995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、誘電特性、基材等への密着性が良好な重合体、接着剤および積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下発明〔1〕~〔8〕に関する。
【0018】
〔1〕エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)および/またはエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)を含有してなるエチレン性不飽和単量体の重合体であって、連鎖移動剤としてのスルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を含むことを特徴とする重合体。
【0019】
〔2〕スルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を、5~95質量%含有してなる〔1〕に記載の重合体。
【0020】
〔3〕エチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物(B)が、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する芳香族炭化水素を含有してなる〔1〕または〔2〕に記載の重合体。
【0021】
〔4〕エチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)が、ノルボルネン骨格を含有する脂環式炭化水素を含有してなる〔1〕~〔3〕いずれかに記載の重合体。
【0022】
〔5〕〔1〕~〔4〕いずれかに記載の重合体及び硬化促進剤を含有してなる接着剤。
【0023】
〔6〕〔5〕記載の接着剤より形成された接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【0024】
〔7〕基材が、銅箔および/または絶縁層を含んでなる〔6〕記載の積層体。
【0025】
〔8〕プリント配線板用である〔6〕または〔7〕記載の積層体。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、耐熱性、誘電特性、基材等への密着性が良好な重合体、接着剤および積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例( 代表例) であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0028】
<スルファニル基を有するポリイミド(A)>
本発明で用いるスルファニル基を有するポリイミド(A)は、特に合成方法は限定されないが、例えば、ジアミン化合物およびアミノチオール化合物とポリカルボン酸またはその無水物との反応によって得ることができる。スルファニル基を有するポリイミドの数平均分子量(Mn)は、誘電特性と塗工適正の観点から、2,000以上100,000以下であることが好ましい。2,000以上の分子量で誘電特性はより良好であり、100,000以下では塗工適正がより良好となる。
スルファニル基を有するポリイミドの質量平均分子量(Mw)は、誘電特性と塗工適正の観点から、5,000以上200,000以下であることが好ましい。5,000以上の分子量で誘電特性はより良好であり、200,000以下では塗工適正がより良好となる。
スルファニル基を有するポリイミドのガラス転移温度(Tg)は、接着力と耐熱性の観点から、10℃以上100℃以下であることが好ましい。10℃以上のTgで150℃での経時耐熱性はより良好であり、100℃以下では接着力がより良好となる。
【0029】
重合体中のスルファニル基を有するポリイミド(A)の残基の含有率は、5~95質量%であることが好ましい。5質量%以上であると基材等への密着性と耐熱性が良好となり、95質量%以下であると誘電特性が良好となる。
【0030】
<アミノチオール化合物>
アミノチオール化合物は、アミノ基とスルファニル基を有する化合物であり、以下の例に限定されないが、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオールといったスルファニル基を有する脂肪族アミン;2-アミノベンゼンチオール、3-アミノベンゼンチオール、4-アミノベンゼンチオール等のアミノベンゼンチオールといったスルファニル基を有する芳香族アミンの他、システイン等が挙げられる。中でも、アミノアルカンチオールが好ましく、2-アミノエタンチオールがより好ましい。アミノチオール化合物は、2種以上用いてもよい。
【0031】
<ジアミン化合物>
本発明で用いるジアミン化合物には、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、ダイマージアミン等が挙げられる。ジアミン化合物は、2種以上用いてもよい。
【0032】
<ダイマージアミン>
ジアミン化合物は、ダイマージアミンを含むことが好ましい。
本明細書においてダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の二量体である環式または非環式のジカルボン酸中の全てのカルボキシル基が一級アミノ基に置換されたものを指す。
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。
ダイマージアミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0033】
ダイマージアミンの含有量は、全ジアミン化合物中、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明で用いるジアミン化合物は、ダイマージアミン以外のジアミンを含んでもよい。ダイマージアミン以外の好ましいものとしては、以下の構造のジアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
<ポリカルボン酸>
本発明に用いるポリカルボン酸は、酸無水物の形態であってもよい。本発明に用いられるポリカルボン酸として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン等が例示される。ポリカルボン酸は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリカルボン酸の内、テトラカルボン酸またはテトラカルボン酸無水物が好ましい。また、ポリカルボン酸は、ジアミンとの相溶性、接着性、および耐熱性の観点から、脂肪族環や芳香環を有することが好ましい。具体的には、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物、4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン等からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0042】
ポリカルボン酸とジアミン化合物との反応は、公知の方法で行うことができる。反応の際に用いる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルジグライム、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサなどが挙げられる。
【0043】
<エチレン性不飽和単量体>
本発明で用いられるエチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)および/またはエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)を含む。ポリイミドユニット(A)とエチレン性不飽和単量体との重合体の質量平均分子量(Mw)は、誘電特性と塗工適正の観点から、10,000以上300,000以下であることが好ましい。10,000以上で誘電特性が良好であり、300,000以下では塗工適正が良好となる。
【0044】
エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)としては、分子内に芳香環とエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。以下の例には限定されないが、ジビニルベンゼン、スチレン、エチルビニルベンゼン、9-ビニルアセチレン、1,1-ジフェニルエチレン、2-ビニルナフタレン、2-ビニルアントラセン、インデン等が挙げられる。その中でも、誘電特性の観点からエチレン性不飽和結合を有する単環式芳香族炭化水素が好ましい。また、耐熱性の観点からエチレン性不飽和結合を2つ以上有する芳香族炭化水素を含むことがより好ましい。具体的には、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼンを含むことが好ましく、ジビニルベンゼンを含むことがより好ましい。これらのエチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)は、使用する目的に合わせて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
エチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)としては、以下の例には限定されないが、例えばビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、トリシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン等が挙げられる。中でもノルボルネン骨格を有する化合物は誘電特性の観点から好ましい。例えば、2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。その中でも誘電特性の観点から、エチレン性不飽和結合を有する橋かけ環(架橋)炭化水素が好ましい。具体例としては、2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエンが好ましい。これらのエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)は、使用する目的に合わせて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明の重合体は、エチレン性不飽和結合を有する芳香族炭化水素(B)またはエチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)以外のその他エチレン性不飽和単量体を、重合体を構成する単量体単位として含んでいても良い。その他エチレン性不飽和単量体としては、以下のものが挙げられる。
【0047】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類;
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノアルキルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレート類;
製品名で、サイラプレーンFM-0711、サイラプレーンFM-0721((以上、チッソ株式会社製)等のポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレート類;
製品名で、ケミノックスFAAC-4、ケミノックスFAAC-6、ケミノックスFAMAC-4、ケミノックスFAMAC-6(以上、ユニマテック社製)、R-1110、R-1210、R-1420、R-1620、R-5210、R-5410、R-5610、M-1110、M-1210、M-1420、M-1620、M-5210、M-5410、M-5610(以上、ダイキン社製)、ライトアクリレートFA-108(共栄社化学社製)、ビスコート-3F、ビスコート-3FM、ビスコート-4F、ビスコート-8F、ビスコート-8FM(以上、大阪有機化学工業社製)等のフッ素含有(メタ)アクリレート類;
製品名で、マクロモノマーAA-6(メチルメタクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAB-6(ブチル(メタ)アクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAW-6S(イソブチル(メタ)アクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAK-5(ジメチルシロキサン系マクロモノマー)(以上、東亞合成社製)等のビニル共重合系マクロモノマー類;
製品名で、ビスコート#150D(テトラヒドロフルフリルアルコールオリゴアクリレート)、ビスコート#190D(エトキシジエチレングリコールオリゴアクリレート)(以上、大阪有機化学工業社製)等の(メタ)アクリル酸多量体型(メタ)アクリレート類; エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらの他に、酢酸ビニル等のビニルモノマーも用いることができる。
【0048】
その他エチレン性不飽和単量体としては、熱特性の観点で、熱架橋基となり得るエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を含んでも良い。エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシルジエーテル、α-エチルアクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
熱架橋基となり得るエポキシ基および/またはフェノール性水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の含有率は、耐熱性、密着性、誘電特性の観点で、全単量体中で1~50質量%含むことが好ましく、更に好ましくは1~30質量%を含むことである。
その他エチレン性不飽和単量体は、使用する目的に合わせて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エチレン性不飽和単量体を重合する際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等のアゾ系化合物等が挙げられる。
また、有機ホウ素化合物を開始剤として用いることもでき、例えばジエチルメトキシボラン等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
溶剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
<接着剤>
本発明の接着剤は、本発明の重合体及び硬化促進剤を含んでなる。重合体と硬化促進剤の質量比は、99.9:0.01~50:50の範囲が好ましく、より好ましくは99:1~90:10の範囲である。更に好ましくは99:1~99:3の範囲が好ましい。
【0053】
<硬化促進剤>
本発明の接着剤に含まれる硬化促進剤は、アミン触媒および/またはラジカルを発生する化合物が好ましい。例えば、アミン触媒としてはジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチルモルフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロウンデセン、2-メチル-1,4-ジアゾ[2.2.2]ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等の反応型アミン、等が挙げられる。ラジカルを発生する化合物としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等のアゾ系化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
<有機溶剤>
本発明の接着剤は有機溶剤を更に含んでもよい。有機溶剤は以下の例には限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
<その他添加剤>
本発明の接着剤は、その他添加剤として、フィラー、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよく、硬化反応を調節するため公知の触媒等を含有してもよい。
【0056】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の接着剤より形成された接着層と、基材とを含んでなるものである。例えば、銅箔とポリイミド等の支持フィルムを積層する際に用いることができる。例えば、本発明の接着剤を第1の基材に接着層を形成したもの、あるいは、さらに、接着層に第2の基材を重ね合わせたものである。基材は、特に限定されず、例えば、シート状または板状であり、従来公知のプラスチックフィルム、金属箔等が挙げられ、2つの基材を用いたときは、同種のものでも異種のものでも良い。接着層の厚みは、3μm以上40μm以下程度が好ましい。
【0057】
本発明の積層体は、接着剤を繊維基材に含浸させ、加熱等により半硬化(Bステージ化)状態にした後、金属箔やプラスチックフィルムへと積層、硬化させて得ることもできる。繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機物繊維;低誘電ガラスポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特に、誘電特性の観点から、無機物繊維が好ましく、低誘電ガラス、Qガラスがより好ましい。
本発明の積層体は、接着剤を支持フィルムである繊維基材に含侵させた場合、接着剤は連続した接着層を形成するので、接着層内に基材を有する形態となるが、本発明の積層体の使用形態のひとつである。
【0058】
<接着シート>
支持フィルムと接着剤の積層体を接着シートともいう。なお、前述した、接着剤が支持フィルム内部に含浸して積層構造がないもの、あるいは、接着剤が支持フィルムなしでもシート形状を維持できる場合も、接着性のあるシートであれば、接着シートということがある。
本発明の接着シートは、例えば、以下のようにして得ることができる。
溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を、支持フィルムの少なくとも片面に、塗布後、通常40~150℃で乾燥することにより、未硬化状態(いわゆるBステージ状態)の熱硬化性接着シートに支持フィルムの付いたものを得ることができる。次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の支持フィルムで覆うことにより、本発明の支持フィルム付き熱硬化性接着シートを得ることができる。
用いる支持フィルムの少なくとも一方は、剥離性の支持フィルムであることが好ましい。すなわち、剥離性の支持フィルムに、溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布・乾燥し、熱硬化性接着シートを形成し、次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の剥離性の支持フィルムで覆うこともできるし、被着体となる剥離性のない支持フィルムで覆うこともできる。
【0059】
接着剤が、熱硬化性である場合、これを用いた接着シートを熱硬化性接着シートともいう。また、当該接着剤からなる層を、熱硬化性接着層という。熱硬化は、40~200℃程度の温度で硬化することをいう。
【0060】
熱硬化性接着シートの片面を剥離性基材が覆い、他方の面をシート状基材(例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム)が覆っている剥離性基材付き熱硬化性接着シートを用いる場合について説明する。剥離性基材付き熱硬化性接着シートから剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に被着体(例えば、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側)を重ねる。次いで、加熱・加圧することによって、シート状基材と被着体に挟まれた熱硬化性接着層を熱硬化して、熱硬化性接着層は、シート状硬化物となる。
このようにすれば、シート状硬化物を介して、導電性回路を有するプリント配線板の前
記回路面が、シート状基材(保護シート)で保護されてなる、保護シート付きプリント配線板を得ることができる。用いる支持フィルムの少なくとも一方は、剥離性の支持フィルムであることが好ましい。すなわち、剥離性の支持フィルムに、溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布・乾燥し、熱硬化性接着シートを形成し、次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の剥離性の支持フィルムで覆うこともできるし、被着体となる剥離性のない支持フィルムで覆うこともできる。あるいは、被着体となる剥離性のない支持フィルムに、溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布・乾燥し、熱硬化性接着シートを形成し、次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の剥離性のシート状基材で覆うこともできる。
【0061】
熱硬化性接着シートの乾燥膜厚は、充分な接着性、ハンダ耐熱性を発揮させる為、また取り扱い易さの点から、5~500μmであることが好ましく、更に好ましくは10~100μmである。 塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられる。
【0062】
<絶縁層>
用いられる絶縁層は耐熱クラスと呼称される材料が挙げられる。
例えば、綿、紙、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、天然ゴム、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリウレタンフィルム、マイカ、石綿、ガラス繊維等の無機材料、マイカ、磁器等が挙げられる。
用いられる支持フィルムのうち剥離性のあるものとしては、各種プラスチックフィルムに剥離処理をしたものや、紙に剥離処理をしたもの等が挙げられる。剥離処理の対象とされる各種プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0063】
次に、熱硬化性接着シートの両面を2つの剥離性基材がそれぞれ覆っている剥離性基材付き熱硬化性接着シートを用いる場合について説明する。
剥離性基材付き熱硬化性接着シートから一方の剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に被着体(例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム)を重ねる。熱硬化性接着層の他方の面を覆っていた他の剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に他の被着体(例えば、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側)を重ねる。次いで、加熱・加圧することによって、両被着体に挟まれた熱硬化性接着層を熱硬化する。剥離性基材を最初に剥がした面に、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側を重ねた後、熱硬化性接着層の他方の面にポリイミドフィルムやポリエステルフィルムを重ねることもできる。
【0064】
導電性回路を有するプリント配線板積層体(以下配線板ともいう)としては、ポリエステルやポリイミド等の可とう性、絶縁性のあるプラスチックフィルム上に、導電性回路を形成したフレキシブルプリント配線板が挙げられる。
導電性回路を設ける方法としては、例えば、接着層を介してまたは介さずにベースフィルム上に銅箔を設けてなるフレキシブル銅張板の銅箔上に感光性エッチングレジスト層を形成し、回路パターンを持つマスクフィルムを通して露光させて、露光部のみを硬化させ、次いで未露光部の銅箔をエッチングにより除去した後、残っているレジスト層を剥離するなどして、銅箔から導電性回路を形成することができる。
あるいは、ベースフィルム上にスパッタリングやめっき等の手段で必要な回路のみを設ける方法も挙げられる。
あるいは、銀や銅の粒子を含有する導電性インキを用い、プリント技術によってベースフィルム上に導電性回路を形成する方法も挙げられる。
【0065】
<複数のフレキシブルプリント配線の多層化>
本発明の熱硬化性接着シートは、保護シート付きプリント配線板の製造に好適に用いられる他、以下のように用いることもできる。複数のフレキシブルプリント配線の間に、本発明の熱硬化性接着シートを挟み、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させ、多層フレキシブルプリント配線板を得ることもできる。
【0066】
<フレキシブルプリント配線板用のベースフィルムと銅箔との貼り合わせ>
例えば、ポリイミドフィルムと銅箔との間に、本発明の熱硬化性接着シートを挟み、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させることもできる。
【0067】
<導電接着シート>
本発明の熱硬化性接着シートは、ポリイミド樹脂、硬化剤、特定量のアルカリ金属化合物の他に、銅や銀などの導電性金属フィラー、カーボンなどの導電性フィラーを配合し、分散してなる熱硬化性組成物をシート状にした導電性の熱硬化性接着シートとして用いることができる。
【0068】
<電磁波シールド>
さらに本発明の熱硬化性接着シートは、上記で作製した導電性の熱硬化性接着シートを用いて絶縁層との多層構成とすることで、電磁波シールドとしても用いることができる。また、導電層部分だけでなく、本発明の熱硬化性接着シートは絶縁層としても用いることができる。
【0069】
<熱伝導接着シート>
さらに本発明の熱硬化性接着シートは、ポリイミド樹脂、硬化剤、特定量のアルカリ金属化合物の他に、熱伝導性のある無機フィラー、金属フィラーなどを分散して配合し、分散してなる熱硬化性組成物をシート状にした熱伝導性の熱硬化性接着シートとして用いることができる。
【実施例0070】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例および比較例中の部、%は、特に指定がない場合は、それぞれ質量部、質量%を意味する。
【0071】
<数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mn、Mwの測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続し、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行った。Mn、Mwの決定は、Mn、Mw既知のポリスチレン換算で行った。
【0072】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
Tgは、株式会社島津製作所製「示差走査熱量計DSC-60 PLUS」を用いて、開始温度25℃、終了温度250℃、昇温速度10.0℃/分の条件にて測定した。1回目に終了温度まで昇温した後に開始温度まで急冷し、その後同じ条件で測定した時のピーク値をTgとした。
【0073】
実施例中で使用する材料とその略称は、次の通りである。
MED-J:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン 製品名 キュアハードMED-J(クミアイ化学社製)
ダイマージアミン:製品名 プリアミン1075(クローダジャパン社製)
6FDA:2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物 和歌山精化工業社製
TDA100:1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン 新日本理科社製リカシッド TDA-100
BISDA:1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物 SABICジャパン社製
パークミルD:ジクミルパーオキサイド 日本油脂株社製 パークミル(登録商標)D
【0074】
(合成例1)ポリイミド(SHP-1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド990部、6FDA461部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン529部を1時間かけて滴下した後、2-アミノエタンチオールを9部滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、溶剤を抜きながら200℃まで昇温を行った後、トルエンを990部加えて固形分濃度を50%に調整した。Mn14,239、Mw29,233のスルファニル基を有するポリイミド(A)であるSHP-1を得た。
【0075】
(合成例2~7)
表1の合成例2~7に従って材料の種類と配合量を変更した以外は、合成例1と同様の方法でスルファニル基を有するポリイミドSHP-2~SHP-7を得た。得られたポリイミドのMn、MwおよびTgを表1に示す。表1中、数値は特に断りのない限り部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0076】
(実施例1)重合体(SHEP-1)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で製造したポリイミド(SHP-1)溶液33部(固形分濃度50%)、スチレン70部、ジビニルベンゼン57部、2-ノルボルネン105部、酢酸ブチル166部、トルエン331部を仕込み窒素気流下で攪拌しながら70℃まで昇温した。ジエチルメトキシボラン2.0部を仕込み、5時間反応を行い、25℃まで冷却した。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止させた。分液で水層を取り除いた後、油層を70℃、減圧化で攪拌した。得られた重合体(SHEP-1)の収量は111部(収率44.8%)であった。この重合体中にはスルファニル基を有するポリイミド(A)の残基を14.82%含有していた。Mn18,400、Mw102,100であった。トルエンを適宜添加して固形分濃度を50%に調製した。
【0077】
(実施例2~12)重合体(SHEP-2~SHEP-12)の合成
表2に記載の材料および配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により重合体(SHEP-2~SHEP-12)を得た。得られた重合体のMn、Mwを表2に示す。表2中、数値は特に断りのない限り部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0078】
(比較例1)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、スチレン70部、ジビニルベンゼン57部、2-ノルボルネン105部、酢酸ブチル155部、トルエン309部、連鎖移動剤として2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン47部を仕込み窒素気流下で攪拌しながら70℃まで昇温した。ジエチルメトキシボラン1.9部を仕込み、5時間反応を行い、25℃まで冷却した。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止させた。分液で水層を取り除いた後、油層を70℃、減圧化で攪拌した。得られた重合体(SHEP-13)の収量は112部(収率43.0%)であった。Mn10,277、Mw23,612であった。トルエンを適宜添加して固形分濃度を50%に調製した。
【0079】
(比較例2)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、スチレン70部、ジビニルベンゼン57部、2-ノルボルネン105部、酢酸ブチル155部、トルエン309部、連鎖移動剤としてtert-ドデシルメルカプタン41.2部を仕込み窒素気流下で攪拌しながら70℃まで昇温した。ジエチルメトキシボラン1.9部を仕込み、5時間反応を行い、25℃まで冷却した。その後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止させた。分液で水層を取り除いた後、油層を70℃、減圧化で攪拌した。得られた重合体(SHEP-14)の収量は115部(収率42.0%)であった。Mn11,651、Mw18,894であった。トルエンを適宜添加して固形分濃度を50%に調製した。
【0080】
[実施例13]
重合体(SHEP-1)溶液30部(固形分濃度50%)、硬化促進剤としてパークミルD0.3を混合して接着剤を得た。この接着剤を、ブレードコーターを用いて剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように均一に塗工して100℃で20分プレ乾燥を行った後、乾燥後ポリエステルフィルムを剥離して接着シートを得た。
【0081】
[実施例14~24、比較例3、4]
表3記載の材料および配合量を用いた以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0082】
(銅箔基材付き接着シートの作製)
実施例13にてプレ乾燥直後の接着シートの一方の面に、18μm厚の電解銅箔(商品名「F2-WS」、古河サーキットフォイル(株)製)の処理面を重ね合わせ、真空プレス成型機にて真空下、圧力10MPa、180℃および1分間の条件で加熱プレスした後、更に200℃で2時間加熱することにより、積層体である基材付き接着シートを作製した。
【0083】
(ポリイミドフィルム基材付き接着シートの作製)
実施例13~24、比較例3、4の接着剤をそれぞれ、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン(登録商標)300H」の間に乾燥後の厚みが30μmとなるようブレードコーターにて塗布し、真空プレス成型機にて真空下、150℃で30分加熱することにより積層体であるポリイミドフィルム基材付き接着シートを得た。
【0084】
(積層体の作製)
ポリイミドフィルム基材付き接着シートの接着剤面に、電解銅箔(F2-WS)の処理面を重ね合わせた後、80℃でラミネートし、続いて真空プレス機にて200℃、1.0MPaの条件で2時間圧着処理することにより積層体を作製した。
【0085】
<接着性>
上記積層体から幅10mm、長さ65mmの試験片を切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引張り速度300mm/分でTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
◎:接着強度2.5N/3mm以上(非常に良好)
○:接着強度2.0N/3mm以上2.5N/3mm未満(良好)
△:接着強度1.0N/3mm以上2.0N/3mm未満(使用可能)
×:接着強度1.0N/3mm未満(使用不可)
【0086】
<耐熱性>
上記の接着性試験と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、150℃の空気雰囲気下で1000時間保管し、取り出した後、上記と同様に接着強度を測定した。上記<接着性>で測定された接着強度に対する接着強度の低下率を以下の基準で判断した。
◎・・・低下率が20%未満(非常に良好)
○・・・低下率が20%以上50%未満(良好)
△・・・低下率が50%以上80%未満(使用可能)
×・・・低下率が80%以上(使用不可)
【0087】
<誘電特性>
(比誘電率)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける比誘電率を求め、以下の基準にて評価した。
◎:比誘電率2.5未満(非常に良好)
○:比誘電率2.5以上2.6未満(良好)
△:比誘電率2.6以上2.7未満(使用可能)
×:比誘電率2.7以上(使用不可)
【0088】
(誘電正接)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける誘電正接を求め、以下の基準にて評価した。
◎:誘電正接0.002未満(非常に良好)
○:誘電正接0.002以上0.003未満(良好)
△:誘電正接0.003以上0.005未満(使用可能)
×:誘電正接0.005以上(使用不可)
【0089】
表3に示すように、本発明の熱硬化性組成物から得られた接着剤は、比誘電率、誘電正接等の誘電特性に優れ、且つ高い密着性と長期耐熱性を有している。
特に、スルファニル基を有するポリイミド(A)の残基が5~95%含有している実施例13~22は、ポリイミド(A)の残基の含有率が95%を超える実施例23と比較して優れた誘電特性を示し、ポリイミド(A)の残基の含有率が5%未満である実施例24と比較して優れた密着性と長期耐熱性を示した。
その中でもエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物(B)として、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する芳香族炭化水素を含有している実施例13~17、19~22は良好な長期耐熱性を有していた。また、エチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素(C)にノルボルネン骨格を有する実施例13~20、22は良好な誘電特性を有していた。特に、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する芳香族炭化水素とノルボルネン骨格を有する脂環式炭化水素を両方含有する実施例13~17、19~21は誘電特性、接着性、長期耐熱性が優れていた。
【0090】
(プリント配線板の作製)
実施例13に係る接着剤を、カプトン(R)Hタイプに乾燥後の厚みが30μmとなるようブレードコーターにて塗布し、100℃で3分間乾燥させることによって、接着シートを得た。次いで、該接着シートの接着剤面に前記電解銅箔(F2-WS)の処理面を重ね合わせ、100℃のラミネートロールで圧着した後、真空プレス成型機にて真空下、150℃,30分間処理することによって積層体を得た。この積層体の銅表面をソフトエッチング処理し、銅回路を形成し、その上にさらに前記方法で得た基材つき接着シートの接着樹脂面を重ねあわせ、真空プレス成型機にて真空下、圧力10MPa、180℃および1分間の条件で加熱プレスした後、更に200℃で2時間加熱することにより、フレキシブルプリント配線板を作製することができた。また、他の実施例の接着剤組成物についても同様にしてフレキシブルプリント配線板を作製できたことを確認した。
【0091】
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