(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188329
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20221214BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/17 207
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096257
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA27
2C056FA10
2C056JC13
2C056JC23
2C056JC29
(57)【要約】
【課題】ローラの外周面から掻き取られたインクが記録ヘッドに付着するのを抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置2は、記録媒体4にインクを吐出する記録ヘッド24と、記録ヘッド24から空吐出されたインクを付着させるための外周面30aを有するローラ30と、ローラ30を所定方向に回転させるモータ28と、ローラ30が所定方向に回転している状態で、ローラ30の外周面30aに付着したインクを掻き取るためのスクレーパ48とを備える。スクレーパ48は、ローラ30の外周面30aに面接触する凹面50と、凹面50の一端部に形成された切り欠き部52であって、ローラ30の外周面30aに線接触し、ローラ30の回転方向に沿って且つ凹面50の一端部から他端部に向けて略V字状に窪む切り欠き部52とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に印刷を施すための印刷装置であって、
前記記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから空吐出された前記記録媒体への印刷に寄与しないインクを回収するためのローラであって、前記記録ヘッドから空吐出されたインクを付着させるための外周面を有するローラと、
前記ローラを所定方向に回転させる駆動源と、
前記ローラが前記所定方向に回転している状態で、前記ローラの前記外周面に付着したインクを掻き取るためのスクレーパと、を備え、
前記スクレーパは、
前記ローラの前記外周面に面接触する凹面と、
前記凹面の一端部に形成された切り欠き部であって、前記ローラの前記外周面に線接触し、前記ローラの回転方向に沿って且つ前記凹面の一端部から他端部に向けて略V字状に窪む切り欠き部と、を有する
印刷装置。
【請求項2】
前記凹面は、前記ローラの軸方向における一端部から他端部に亘って、前記ローラの前記外周面に面接触し、
前記切り欠き部は、
前記ローラの前記軸方向における一端部から中央部に向けて、且つ、前記凹面の一端部から他端部に向けて延在する第1のエッジ部と、
前記ローラの前記軸方向における他端部から中央部に向けて、且つ、前記凹面の一端部から他端部に向けて延在する第2のエッジ部と、を含む
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記スクレーパは、さらに、前記切り欠き部から垂下する垂下面を有する
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に印刷を施すための印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置では、記録ヘッドにおけるインク詰まりを予防するために、記録ヘッドからインクを空吐出させるメンテナンス動作が行われる。この種の印刷装置は、記録ヘッドから空吐出されたインクを回収するためのメンテナンスユニットを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
メンテナンスユニットは、記録ヘッドの下方に配置されたローラと、ローラを所定方向に回転させるモータと、先端がローラの外周面に線接触するシート状のスクレーパとを有している。ローラが所定方向に回転している状態で、記録ヘッドは、当該ローラの外周面に向けてインクを空吐出する。記録ヘッドから空吐出されたインクは、ローラの外周面に付着する。ローラが上記所定方向に回転するのに伴って、ローラの外周面に付着したインクがスクレーパの先端まで到達すると、当該インクがスクレーパの先端により掻き取られる。掻き取られたインクは、ローラの外周面から落下し、ローラの下方に配置された廃インク容器に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した印刷装置では、印刷用のインクとして、顔料インクが用いられる場合がある。一般に、顔料インクは、高粘性で固化しやすいという性質を有している。このような顔料インクを用いた場合、上述したローラの外周面から掻き取られたインク(顔料インク)は、ローラの外周面から落下せずに、スクレーパの側面に付着して堆積されるようになる。インクがスクレーパの側面に山のように堆積されると、当該堆積されたインクがローラの上方まで溢れ出して記録ヘッドに付着し、印刷不良を引き起こすおそれが生じる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、ローラの外周面から掻き取られたインクが記録ヘッドに付着するのを抑制することができる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る印刷装置は、記録媒体に印刷を施すための印刷装置であって、前記記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから空吐出された前記記録媒体への印刷に寄与しないインクを回収するためのローラであって、前記記録ヘッドから空吐出されたインクを付着させるための外周面を有するローラと、前記ローラを所定方向に回転させる駆動源と、前記ローラが前記所定方向に回転している状態で、前記ローラの前記外周面に付着したインクを掻き取るためのスクレーパと、を備え、前記スクレーパは、前記ローラの前記外周面に面接触する凹面と、前記凹面の一端部に形成された切り欠き部であって、前記ローラの前記外周面に線接触し、前記ローラの回転方向に沿って且つ前記凹面の一端部から他端部に向けて略V字状に窪む切り欠き部と、を有する。
【0008】
本態様によれば、スクレーパの切り欠き部は、凹面の一端部に形成され、ローラの回転方向に沿って且つ凹面の一端部から他端部に向けて略V字状に窪む形状を有している。ローラが所定方向に回転している状態で、ローラの外周面に付着したインクは、スクレーパの切り欠き部により掻き取られる。なお、所定方向とは、ローラの回転方向に沿って、スクレーパによりローラの外周面に付着したインクを掻き取る方向を意味する。この時、ローラの外周面に付着したインクは、略V字状の切り欠き部の両端部から中央部にかけて順次掻き取られながら、切り欠き部の中央部に集められた後に、当該インクの自重で落下する。これにより、ローラの外周面から掻き取られたインクがスクレーパに堆積するのを抑制することができ、当該インクが記録ヘッドに付着するのを抑制することができる。
【0009】
例えば、本発明の一態様に係る印刷装置において、前記凹面は、前記ローラの軸方向における一端部から他端部に亘って、前記ローラの前記外周面に面接触し、前記切り欠き部は、前記ローラの前記軸方向における一端部から中央部に向けて、且つ、前記凹面の一端部から他端部に向けて延在する第1のエッジ部と、前記ローラの前記軸方向における他端部から中央部に向けて、且つ、前記凹面の一端部から他端部に向けて延在する第2のエッジ部と、を含むように構成してもよい。
【0010】
本態様によれば、ローラの軸方向における一端部から他端部に亘って、略V字状に形成された切り欠き部の第1のエッジ部及び第2のエッジ部をローラの外周面に三次元的に線接触させることができる。これにより、ローラの外周面に付着したインクをより効果的に掻き取ることができる。
【0011】
例えば、本発明の一態様に係る印刷装置において、前記スクレーパは、さらに、前記切り欠き部から垂下する垂下面を有するように構成してもよい。
【0012】
本態様によれば、ローラの外周面に付着したインクは、略V字状の切り欠き部の両端部から中央部にかけて順次掻き取られながら、切り欠き部の中央部に集められた後に、垂下面で堰き止められる。垂下面で堰き止められたインクは、当該インクの自重で垂下面から落下する。これにより、ローラの外周面から掻き取られたインクをより効果的に落下させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る印刷装置によれば、ローラの外周面から掻き取られたインクが記録ヘッドに付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る印刷装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る印刷装置の内部機構を示す斜視図である。
【
図3】キャリッジ等を省略した状態での、実施の形態に係る印刷装置の内部機構を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るメンテナンスユニットを示す斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るメンテナンスユニットのローラ及びガイド部材を示す斜視図である。
【
図6】ローラを省略した状態での、実施の形態に係るガイド部材を示す斜視図である。
【
図7】ローラを省略した状態での、実施の形態に係るガイド部材を示す平面図である。
【
図8】実施の形態に係るスクレーパによりローラの外周面に付着したインクを掻き取る動作を説明するための図である。
【
図10】比較例に係るメンテナンスユニットのローラ及びガイド部材を示す斜視図である。
【
図12】ローラを省略した状態での、変形例1に係るガイド部材を示す平面図である。
【
図13】ローラを省略した状態での、変形例2に係るガイド部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0016】
(実施の形態)
[1.印刷装置の概要]
まず、
図1~
図3を参照しながら、実施の形態に係る印刷装置2の概要について説明する。
図1は、実施の形態に係る印刷装置2の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る印刷装置2の内部機構を示す斜視図である。
図3は、キャリッジ20等を省略した状態での、実施の形態に係る印刷装置2の内部機構を示す斜視図である。
【0017】
なお、
図1~
図3において、印刷装置2の左右方向をX軸方向とし、印刷装置2の前後方向をY軸方向とし、印刷装置2の上下方向をZ軸方向とする。
【0018】
印刷装置2は、記録媒体4にインクを吐出することにより印刷を施すためのインクジェット方式の印刷装置である。本実施の形態では、印刷装置2は、クーポンを印刷するための、いわゆるクーポンプリンタである。記録媒体4は、例えばロール状に巻回されたロール紙である。
【0019】
図1~
図3に示すように、印刷装置2は、筐体6と、搬送ユニット8と、印刷ユニット10と、メンテナンスユニット12とを備えている。
【0020】
筐体6の内部には、ロール状に巻回された記録媒体4を収納するための収納部14が配置されている。
図1に示すように、筐体6の前面には、印刷ユニット10により印刷された記録媒体4を筐体6の外部に排出するための排出口16が設けられている。なお、印刷ユニット10により印刷された記録媒体4は、所定の長さにカットされた状態で排出口16から排出され、クーポンとして利用される。
【0021】
図2に示すように、搬送ユニット8は、記録媒体4を搬送するためのユニットであり、筐体6の内部に配置されている。搬送ユニット8は、収納部14から繰り出された記録媒体4を、収納部14から排出口16に向かう方向(Y軸のマイナス方向)に搬送する。
【0022】
図2に示すように、印刷ユニット10は、記録媒体4を印刷するためのユニットであり、筐体6の内部に配置されている。
図2に示すように、印刷ユニット10は、ガイドフレーム18と、ガイドフレーム18に移動可能に支持されたキャリッジ20とを有している。ガイドフレーム18は、印刷装置2の左右方向(X軸方向)に沿って延びている。キャリッジ20は、ガイドフレーム18に沿って、記録媒体4の搬送方向(Y軸方向)に対して略垂直な方向(X軸方向)に往復移動可能である。
【0023】
キャリッジ20には、インクタンク22と、記録ヘッド24とが搭載されている。インクタンク22には、例えばCMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)の4種類のインクが充填されている。なお、インクタンク22に充填されるインクは、顔料を着色剤として含む顔料インクである。記録ヘッド24は、キャリッジ20の下端部に配置されており、インクタンク22からの各色のインクを下方(Z軸のマイナス側)に向けて霧状に吐出する。
【0024】
印刷の実行時には、搬送ユニット8は、記録媒体4を収納部14から排出口16に向けて搬送し、印刷ユニット10のキャリッジ20は、ガイドフレーム18に沿って往復移動する。この状態で、記録ヘッド24がインクを記録媒体4に向けて吐出することにより、記録媒体4に印刷が施される。
【0025】
また、印刷の実行前等において、記録ヘッド24におけるインク詰まりを予防するためのメンテナンス動作が行われる。このメンテナンス動作では、キャリッジ20は、往復移動範囲の一端部に位置するメンテナンス位置(
図2に示すキャリッジ20の位置)で停止する。なお、メンテナンス位置は、メンテナンスユニット12のローラ30(後述する)の直上の位置である。この状態で、記録ヘッド24は、メンテナンスユニット12のローラ30に向けてインクを空吐出する。ここで、「インクを空吐出する」とは、記録ヘッド24が、記録媒体4への印刷に寄与しないインクをメンテナンスのために吐出することを意味する。
【0026】
図3に示すように、メンテナンスユニット12は、記録ヘッド24から空吐出されたインクを回収するためのユニットであり、筐体6の内部に配置されている。より具体的には、メンテナンスユニット12は、印刷装置2の左右方向において、記録媒体4の搬送経路と隣り合う位置に配置されている。メンテナンスユニット12の構成については、後述する。
【0027】
[2.メンテナンスユニットの構成]
次に、
図4~
図9を参照しながら、実施の形態に係るメンテナンスユニット12の構成について説明する。
図4は、実施の形態に係るメンテナンスユニット12を示す斜視図である。
図5は、実施の形態に係るメンテナンスユニット12のローラ30及びガイド部材32を示す斜視図である。
図6は、ローラ30を省略した状態での、実施の形態に係るガイド部材32を示す斜視図である。
図7は、ローラ30を省略した状態での、実施の形態に係るガイド部材32を示す平面図である。
図8は、実施の形態に係るスクレーパ48によりローラ30の外周面30aに付着したインクを掻き取る動作を説明するための図である。
図9は、
図8のIX-IX線断面図である。
【0028】
図4に示すように、メンテナンスユニット12は、フレーム26と、モータ28と、ローラ30と、ガイド部材32と、廃インク容器34とを有している。
【0029】
フレーム26は、モータ28、ガイド部材32及び廃インク容器34等を支持するためのものである。フレーム26は、例えば板金をプレス加工等することにより形成されている。
【0030】
モータ28は、ローラ30を回転させるための駆動源である。モータ28は、フレーム26に支持されており、ギア機構36及びシャフト38を介してローラ30に連結されている。モータ28の回転駆動力は、ギア機構36及びシャフト38を介してローラ30に伝達される。
【0031】
ローラ30は、記録ヘッド24から空吐出されたインクを廃インク容器34に向けて送ることにより、当該インクを回収するためのものである。ローラ30は、キャリッジ20がメンテナンス位置で停止した際に、当該キャリッジ20の直下に配置される。
図4及び
図5に示すように、ローラ30は、ガイド部材32に回転可能に支持されている。ローラ30は、円柱状に形成されており、記録ヘッド24から空吐出されたインクを付着させるための外周面30aを有している。なお、ローラ30は、例えばPOM(ポリアセタール)等の樹脂で形成されている。また、ローラ30の軸方向(Y軸方向)における長さは例えば12mmであり、ローラ30の直径は例えば8mmである。
【0032】
ローラ30の軸方向における一端部は、シャフト38(
図4及び
図8参照)に連結されている。また、ローラ30の軸方向における他端部には、軸方向外方に突出した軸部40が形成されている。モータ28からの回転駆動力がローラ30に伝達されることにより、ローラ30は、所定方向(
図5、
図8及び
図9において矢印Pで示す方向)に回転する。なお、所定方向とは、ローラ30の回転方向に沿って、スクレーパ48(後述する)によりローラ30の外周面30aに付着したインクを掻き取る方向を意味する。
【0033】
図5~
図7に示すように、ガイド部材32は、筒状部42と、一対の支持部44,46と、スクレーパ48とを有している。なお、ガイド部材32は、例えばPOM(ポリアセタール)等の樹脂で一体成型されている。
【0034】
筒状部42は、スクレーパ48によりローラ30の外周面30aから掻き取られたインクを廃インク容器34に導くためのものである。
図4に示すように、筒状部42は、略矩形状の筒状に形成されており、その軸方向は上下方向(Z軸方向)に延びている。
図5に示すように、筒状部42の上端側の開口部42aには、ローラ30が配置されている。また、筒状部42の下端側の開口部(図示せず)は、廃インク容器34と連通されている。なお、説明の都合上、
図5、
図6及び
図8では、筒状部42の一部を切り欠いて図示してある。
【0035】
図6及び
図7に示すように、一対の支持部44,46は、筒状部42の上端側における内側面に形成され、前後方向(Y軸方向)に間隔を置いて配置されている。
図8に示すように、支持部44にはシャフト38が回転可能に支持され、支持部46にはローラ30の軸部40が回転可能に支持されている。
【0036】
スクレーパ48は、ローラ30の外周面30aに付着したインクを掻き取るためのものである。スクレーパ48は、凹面50と、切り欠き部52と、垂下面54とを有している。
【0037】
図6及び
図7に示すように、凹面50は、筒状部42の上端側における内側面に形成され、支持部44と支持部46との間に配置されている。
図9に示すように、凹面50は、ローラ30の軸方向における一端部から他端部に亘って、ローラ30の外周面30aの一部に面接触することにより、ローラ30の外周面30aを回転可能に支持している。
【0038】
図6及び
図7に示すように、切り欠き部52は、凹面50の一端部に形成されている。なお、凹面50の一端部は、凹面50の上記所定方向(ローラ30の回転方向)における上流側の端部を意味し、凹面50の他端部は、凹面50の上記所定方向における下流側の端部を意味する。
図8及び
図9に示すように、切り欠き部52は、ローラ30の外周面30aに線接触し、ローラ30の回転方向に沿って且つ凹面50の一端部から他端部に向けて(すなわち、上記所定方向における上流側から下流側に向けて)略V字状に窪んでいる。なお、切り欠き部52は、略V字状に形成されることにより、ローラ30の外周面30aに三次元的に線接触するようになる。
【0039】
なお、本明細書において、「略V字状」とは、上記所定方向における下流側から上流側に向けて末広がりとなるような形状を意味する。第1のエッジ部52a及び第2のエッジ部52bの各々は、必ずしも直線である必要は無く、曲線であってもよい。また、「略V字状」は、必ずしも左右対称の形状である必要は無く、左右非対称の形状であってもよい。
【0040】
より具体的には、切り欠き部52は、第1のエッジ部52aと、第2のエッジ部52bとを含んでいる。第1のエッジ部52aの一端部と第2のエッジ部52bの一端部とは、ローラ30の軸方向における中央部において互いに接続されている。
【0041】
第1のエッジ部52aは、ローラ30の軸方向における一端部から中央部に向けて、且つ、凹面50の一端部から他端部に向けて(すなわち、上記所定方向における上流側から下流側に向けて)直線状に延在している。
図7に示すXY平面視において、ローラ30の軸方向に対する第1のエッジ部52aの傾斜角度θ1は、例えば20°である。
【0042】
第2のエッジ部52bは、ローラ30の軸方向における他端部から中央部に向けて、且つ、凹面50の一端部から他端部に向けて(すなわち、上記所定方向における上流側から下流側に向けて)直線状に延在している。
図7に示すXY平面視において、ローラ30の軸方向に対する第2のエッジ部52bの傾斜角度θ2は、例えば20°である。
【0043】
図6及び
図7に示すように、垂下面54は、切り欠き部52から所定厚みだけ垂下する略V字状の面である。上記所定厚みは、2~3mmであるのが好ましい。上記所定厚みが2mmよりも薄い場合には、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクが背面側(X軸のプラス側)に回り込むおそれが生じる。一方、上記所定厚みが3mmを超える場合には、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクが垂下面54に堆積しやすくなるおそれが生じる。なお、
図6に示すように、ローラ30の軸方向における中央部に対応する垂下面54の所定厚みD1は、例えば3mmであり、ローラ30の軸方向における両端部に対応する垂下面54の所定厚みD2は、例えば2mmである。すなわち、垂下面54の所定厚みは、ローラ30の軸方向における中央部から両端部の各々にかけてそれぞれ漸減している。
【0044】
以下、
図8及び
図9を参照しながら、ローラ30の外周面30aに付着したインクをスクレーパ48により掻き取る動作について説明する。
【0045】
図9に示すように、記録ヘッド24がローラ30の直上に位置し、且つ、ローラ30が上記所定方向に回転している状態で、記録ヘッド24は、ローラ30の外周面30aに向けてインクを空吐出する。これにより、ローラ30の外周面30aには、記録ヘッド24から空吐出されたインクが付着するようになる。
【0046】
ローラ30が上記所定方向に回転するのに伴って、ローラ30の外周面30aに付着したインクが切り欠き部52に到達すると、当該インクが切り欠き部52で掻き取られる。より具体的には、
図8における破線の矢印Qで示すように、ローラ30の外周面30aに付着したインクの一部は、第1のエッジ部52aの他端部(第2のエッジ部52bから遠い側の端部)から一端部(第2のエッジ部52bに近い側の端部)にかけて順次掻き取られながら、当該インクの自重によりローラ30の外周面30aから落下する。また、ローラ30の外周面30aに付着したインクの他の一部は、第1のエッジ部52aの他端部から一端部にかけて順次掻き取られながら、切り欠き部52の中央部(第1のエッジ部52aの一端部と第2のエッジ部52bの一端部とが互いに接続する部位)に集められる。
【0047】
また、
図8における破線の矢印Rで示すように、ローラ30の外周面30aに付着したインクの一部は、第2のエッジ部52bの他端部(第1のエッジ部52aから遠い側の端部)から一端部(第1のエッジ部52aに近い側の端部)にかけて順次掻き取られながら、当該インクの自重によりローラ30の外周面30aから落下する。また、ローラ30の外周面30aに付着したインクの他の一部は、第2のエッジ部52bの他端部から一端部にかけて順次掻き取られながら、切り欠き部52の中央部に集められる。
【0048】
このようにして、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクは、切り欠き部52の両端部から中央部に集められた後に、
図9に示すように垂下面54で堰き止められる。垂下面54で堰き止められたインクは、
図8における破線の矢印Sで示すように、当該インクの自重により垂下面54からさらに落下して、廃インク容器34に回収される。
【0049】
[3.効果]
以下、
図10及び
図11を参照しながら、比較例に係るメンテナンスユニットの構成について説明する。
図10は、比較例に係るメンテナンスユニットのローラ30及びガイド部材100を示す斜視図である。
図11は、
図10のXI-XI線断面図である。なお、
図10及び
図11において、
図4~
図9と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、比較例に係るメンテナンスユニットでは、ガイド部材100とスクレーパ106とが別体に形成されている。ガイド部材100の筒状部102の内側面には、複数の突起104が形成されている。
【0051】
スクレーパ106は、シート状に形成され、撓んだ状態で筒状部102の複数の突起104に支持されている。スクレーパ106の上端に形成されたエッジ部106aは、一直線状に形成され、ローラ30の外周面30aに線接触している。なお、スクレーパ106は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂で形成されている。
【0052】
図11の(a)に示すように、記録ヘッド24がローラ30の直上に位置し、且つ、ローラ30が所定方向(
図11の(a)において矢印Pで示す方向)に回転している状態で、記録ヘッド24は、ローラ30の外周面30aに向けてインクを空吐出する。これにより、ローラ30の外周面30aには、記録ヘッド24から空吐出されたインクが付着するようになる。
【0053】
ローラ30が上記所定方向に回転するのに伴って、ローラ30の外周面30aに付着したインクがスクレーパ106のエッジ部106aに到達すると、当該インクがエッジ部106aで掻き取られる。この時、ローラ30の外周面30aに付着したインクは、エッジ部106aの長さ方向(Y軸方向)における一端部から他端部に亘って一様に掻き取られる。そのため、
図11の(a)に示すように、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクは、スクレーパ106の上端近傍における側面に付着して堆積されやすくなる。
【0054】
その後、ローラ30がさらに上記所定方向に回転すると、
図11の(b)に示すように、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクは、スクレーパ106の側面に順次堆積される。
【0055】
その後、ローラ30がさらに上記所定方向に回転すると、
図11の(c)に示すように、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクがスクレーパ106の側面に山のように堆積されて、筒状部102の内側面に接触する。そして、
図11の(c)において矢印Tで示すように、当該堆積されたインクが筒状部102の開口部102aから上方に溢れ出して記録ヘッド24に付着し、印刷不良を引き起こすおそれが生じる。
【0056】
これに対して、実施の形態に係る印刷装置2では、スクレーパ48の切り欠き部52は、凹面50の上記所定方向における上流側の端部に形成され、上記所定方向における上流側から下流側に向けて略V字状に窪む形状を有している。ローラ30が上記所定方向に回転している状態で、ローラ30の外周面30aに付着したインクは、スクレーパ48の切り欠き部52により掻き取られる。
【0057】
この時、ローラ30の外周面30aに付着したインクの一部は、略V字状の切り欠き部52の両端部から中央部にかけて順次掻き取られながら、当該インクの自重でローラ30の外周面30aから落下する。また、ローラ30の外周面30aに付着したインクの他の一部は、略V字状の切り欠き部52の両端部から中央部にかけて順次掻き取られながら、切り欠き部52の中央部に集められた後に、当該インクの自重で落下する。これにより、ローラ30の外周面30aから掻き取られたインクがスクレーパ48に堆積するのを抑制することができ、当該インクが記録ヘッド24に付着するのを抑制することができる。
【0058】
(変形例1)
図12を参照しながら、変形例1に係るガイド部材32Aについて説明する。
図12は、ローラ30を省略した状態での、変形例1に係るガイド部材32Aを示す平面図である。なお、以下に示す各変形例において、上記実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
図12に示すように、変形例1に係るガイド部材32Aでは、スクレーパ48Aの形状が上記実施の形態と異なっている。具体的には、上記実施の形態では、スクレーパ48の切り欠き部52は、略V字状の直線で形成されていたが、本変形例では、スクレーパ48Aの切り欠き部52Aは、略V字状の曲線で形成されている。このような構成であっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(変形例2)
図13を参照しながら、変形例2に係るガイド部材32Bについて説明する。
図13は、ローラ30を省略した状態での、変形例2に係るガイド部材32Bを示す平面図である。
【0061】
図13に示すように、変形例2に係るガイド部材32Bでは、スクレーパ48Bの形状が上記実施の形態と異なっている。具体的には、スクレーパ48Bの切り欠き部52Bは、略V字状の直線で形成された第1のエッジ部52Baと、略V字状の直線で形成された第2のエッジ部52Bbとを含んでいる。これらの第1のエッジ部52Baと第2のエッジ部52Bbとは、ローラ30の軸方向に沿って隣り合うように配置されている。すなわち、切り欠き部52Bは、全体として鋸歯状に形成されている。
【0062】
このような構成であっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例では、切り欠き部52Bは2つの略V字状のエッジ部(第1のエッジ部52Ba及び第2のエッジ部52Bb)を含むようにしたが、これに限定されず、3つ以上の略V字状のエッジ部を含むようにしてもよい。
【0063】
(他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及び変形例に係る印刷装置について説明したが、本発明は、上記実施の形態等に限定されるものではない。
【0064】
上記実施の形態等では、記録媒体4をロール紙としたが、これに限定されず、例えば普通紙、写真用紙又は印刷可能なレーベル面を有するCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る印刷装置は、例えば記録媒体にインクを吐出することにより印刷を施すインクジェットプリンタとして適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
2 印刷装置
4 記録媒体
6 筐体
8 搬送ユニット
10 印刷ユニット
12 メンテナンスユニット
14 収納部
16 排出口
18 ガイドフレーム
20 キャリッジ
22 インクタンク
24 記録ヘッド
26 フレーム
28 モータ
30 ローラ
30a 外周面
32,32A,32B,100 ガイド部材
34 廃インク容器
36 ギア機構
38 シャフト
40 軸部
42,102 筒状部
42a,102a 開口部
44,46 支持部
48,48A,48B,106 スクレーパ
50 凹面
52,52A,52B 切り欠き部
52a,52Ba 第1のエッジ部
52b,52Bb 第2のエッジ部
54 垂下面
104 突起
106a エッジ部