(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188332
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096271
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩一
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605BB01
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC01
5H605EC07
5H605EC08
5H605EC13
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】端子台に対する引出線の緩みを防止でき、かつ、部品点数の抑制を可能とする回転電機の提供にある。
【解決手段】ステータコイル16を備えるステータと、ステータコイル16から引き出され、第1端子を有する引出線30と、外部から引き込まれ、第2端子を有する外部配線33と、絶縁性材料により形成され、第1端子および第2端子が固定される端子台12と、第1端子と第2端子とが電気的に接続される端子接続部と、引出線30が収容される収容空間と、を備えた回転電機において、引出線30は、収容空間において弾性変形により折り返され、第1端子は、引出線30の復元力を受けて端子台12に向けて付勢されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルを備えるステータと、
前記ステータコイルから引き出され、第1端子を有する引出線と、
外部から引き込まれ、第2端子を有する外部配線と、
絶縁性材料により形成され、前記第1端子および前記第2端子が固定される端子台と、
前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続される端子接続部と、
前記引出線が収容される収容空間と、を備えた回転電機において、
前記引出線は、前記収容空間において弾性変形により折り返され、
前記第1端子は、前記引出線の弾性変形からの復元力を受けて前記端子台に向けて付勢されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記引出線は、
前記収容空間において弾性変形により折り返される折り返し線部と、
前記折り返し線部とステータコイルとの間に延在するコイル側線部と、
前記折り返し線部と前記第1端子との間に延在する端子側線部と、を有することを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記引出線は、前記収容空間において複数回折り返されていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転電機。
【請求項4】
前記端子接続部は、前記第1端子および前記第2端子を前記端子台に固定するボルトおよびナットを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の回転電機。
【請求項5】
前記第1端子は、前記ボルトと一体化されていることを特徴とする請求項4記載の回転電機。
【請求項6】
前記第1端子は、
前記引出線の先端を保持する保持部と、
前記ボルトにより圧着される圧着部と、を有する圧着端子であることを特徴とする請求項4記載の回転電機。
【請求項7】
前記圧着部は、前記保持部に対して屈曲されていることを特徴とする請求項6記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータ等の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動モータでは、例えば、ステータのコイルから引き出されたモータ側の引出線が中継端子を介して樹脂製の端子台に固定され、外部配線と電気的に接続されている(例えば、特許文献1を参照)。この種の端子台では、中継端子を用いることで端子台にクリープ現象を招くような圧力が作用せず、その結果、端子台におけるクリープ現象等による緩みを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された電動モータでは、外部配線との接続のために中継端子を必要とする端子台を用意する必要があり、端子台の部品点数の増大を招くという問題がある。中継端子を用いずに、単にボルトおよびナットを用いてモータ側の引出線と外部配線を端子台に固定すると、端子台にクリープ現象を招くような圧力がかかり、端子台にクリープ現象が発生した場合には、引出線は端子台に対して緩んでしまう。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、端子台に対する引出線の緩みを防止でき、かつ、部品点数の抑制を可能とする回転電機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、ステータコイルを備えるステータと、前記ステータコイルから引き出され、第1端子を有する引出線と、外部から引き込まれ、第2端子を有する外部配線と、絶縁性材料により形成され、前記第1端子および前記第2端子が固定される端子台と、前記第1端子と前記第2端子とが電気的に接続される端子接続部と、前記引出線が収容される収容空間と、を備えた回転電機において、前記引出線は、前記収容空間において弾性変形により折り返され、前記第1端子は、前記引出線の弾性変形からの復元力を受けて前記端子台に向けて付勢されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、引出線が収容空間において弾性変形により折り返され、第1端子が引出線の復元力を受けて端子台に向けて付勢されている。したがって、端子台においてクリープ現象が生じたとしても、第1端子は引出線の復元力により端子台に押し付けられているので、引出線の端子台に対する緩みを防止することができる。
【0008】
また、上記の回転電機において、前記引出線は、前記収容空間において弾性変形により折り返される折り返し線部と、前記折り返し線部とステータコイルとの間に延在するコイル側線部と、前記折り返し線部と前記第1端子との間に延在する端子側線部と、を有する構成としてもよい。
この場合、引出線における折り返し線部は、コイル側線部および端子側線部と比較して折り返しにより大きく弾性変形しているので、第1端子への十分な付勢力を確保することができる。
【0009】
また、上記の回転電機において、前記引出線は、前記収容空間において複数回折り返されている構成としてもよい。
この場合、引出線が収容空間において複数回折り返されるので、引出線が1回折り返される場合と比較すると、復元力を増大させることができ、第1端子への付勢力が増大する。その結果、引出線の端子台に対する緩みをより確実に防止できる。
【0010】
また、上記の回転電機において、前記端子接続部は、前記第1端子および前記第2端子を前記端子台に固定するボルトおよびナットを有する構成としてもよい。
この場合、第1端子は引出線の復元力により端子台に押し付けられ、引出線の端子台に対する緩みを防止することができるので、第1端子および第2端子をボルトおよびナットにより端子台に固定できる。その結果、中継端子を用いる必要がなく、部品点数の抑制が可能である。
【0011】
また、上記の回転電機において、前記第1端子は、前記ボルトと一体化されている構成としてもよい。
この場合、第1端子がボルトと一体化されていることにより、回転電機の部品点数を削減でき、回転電機の製作コストの低減や回転電機の組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0012】
また、上記の回転電機において、前記第1端子は、前記引出線の先端を保持する保持部と、前記ボルトにより圧着される圧着部と、を有する圧着端子である構成としてもよい。
この場合、第1端子を圧着端子とすることにより、回転電機の製作コストを抑制することができる。
【0013】
また、上記の回転電機において、前記圧着部は、前記保持部に対して屈曲されている構成としてもよい。
この場合、圧着部が保持部に対して屈曲されているので、外部配線の接続方向を変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端子台に対する引出線の緩みを防止でき、かつ、部品点数の抑制を可能とする回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る電動モータの概要を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る電動モータの平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る電動モータの正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る電動モータの要部を示す縦断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る電動モータの要部を示す縦断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る電動モータの要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る回転電機としての電動モータについて図面を参照して説明する。本実施形態の電動モータは、三相同期電動モータである。
【0017】
図1に示すように、電動モータ10は、モータ本体11とモータ本体11に固定される端子台12とを備えている。モータ本体11は、ステータ13とステータ13の内部にて回転するロータ14とを備えている。ステータ13は、ステータコア15とステータコイル16とを備え、ステータコア15の両端部にはステータコイル16のコイルエンド17が形成されている。
図1では一方の端部のコイルエンド17のみが図示され、他方の端部のコイルエンド17は図示されない。ロータ14はロータコア18とロータコア18の中心を貫通して固定された回転軸19とを備えている。
【0018】
図1に示すように、ステータ13の一方の端部には、一方のコイルエンド17を覆う第1エンドブラケット20が設けられ、他方の端部には他方のコイルエンド17を覆う第2エンドブラケット21が設けられている。第1エンドブラケット20と第2エンドブラケット21は通しボルト22によりステータ13に固定されている。第1エンドブラケット20には、軸受23が備えられており、第1エンドブラケット20は、軸受23を介して回転軸19を回転可能に支持する。第2エンドブラケット21には、軸受(図示せず)が備えられており、第2エンドブラケット21は、図示しない軸受を介して回転軸19を支持する。
【0019】
第1エンドブラケット20の中心には軸孔24が貫通され、回転軸19の端部は軸孔24に挿通されて、第1エンドブラケット20から外部に突出する。第1エンドブラケット20から突出する回転軸19の端部は出力軸部である。回転軸19の軸心P方向はほぼ水平の方向である。
【0020】
本実施形態の第1エンドブラケット20は、端子台12の固定先である台座に相当する。
図2、
図3に示すように、第1エンドブラケット20の上面は、端子台12を支持する。第1エンドブラケット20の上面には端子台12を固定するためのボルト25が螺入される複数のねじ孔26が形成されている。
図2では、説明の便宜上、端子台12の一部を破断している。
【0021】
図1、
図4に示すように、第1エンドブラケット20には、第1エンドブラケット20の上部からコイルエンド17に達するまで貫通するモータ側空間部27が形成されている。モータ側空間部27は、次に説明する電動モータ10側の引出線30が挿通される空間である。モータ側空間部27は、平面視略矩形である。
図2、
図3に示すように、第1エンドブラケット20は、回転軸19の軸方向においてモータ側空間部27を臨む前方の正面壁28と、回転軸19の軸方向と直交する幅方向においてモータ側空間部27の両側に位置する側面壁29と有する。
【0022】
図2、
図3に示すように、第1エンドブラケット20側のコイルエンド17から電動モータ10側の複数の引出線30が引き出されている。複数の引出線30は、ステータコイル16に電力を供給するための電力線であり、U相の引出線30U、V相の引出線30VおよびW相の引出線30Wの三相の配線である。U相の引出線30U、V相の引出線30VおよびW相の引出線30Wは、端子台12と接続されている。引出線30は、相毎に束ねられた複数の導線を備え、束ねられた複数の導線は絶縁性被膜に被膜されている。
【0023】
複数の引出線30の端部にはボルト31と、ボルト31と一体形成され、引出線30の端部を保持する保持金具32と、が備えられている。ボルト31は導電性に優れた金属(例えば、黄銅)により形成されている。保持金具32も導電性に優れた金属により形成されており、第1端子に相当する。保持金具32はボルト31の頭部と接続された筒状の金具である。引出線30の先端部は加締めや溶接等によって保持金具32に保持される。引出線30の端部の軸心とボルト31の軸部の軸心はほぼ同軸となる。ボルト31と保持金具32が一体形成されているので、第1端子はボルト31と一体化されていると言える。
【0024】
ボルト31および保持金具32は、U相の引出線30U、V相の引出線30VおよびW相の引出線30Wの端部に備えられている。具体的には、U相の引出線30Uの端部にはボルト31Uおよび保持金具32Uが備えられ、V相の引出線30Vの端部にはボルト31Vおよび保持金具32Vが備えられ、W相の引出線30Wの端部にはボルト31Wおよび保持金具32Wが備えられている。
【0025】
一方、端子台12には、外部機器(例えば、インバータ)と接続された複数の外部配線33が接続される。複数の外部配線33は、U相の外部配線33U、V相の外部配線33VおよびW相の外部配線33Wの三相の配線である。外部配線33の数は引出線30の数と同数である。複数の外部配線33の端部には、第2端子としての丸形の圧着端子34がそれぞれ備えられている。具体的には、
図3に示すように、U相の外部配線33Uの端部には圧着端子34Uが備えられ、V相の外部配線33Vの端部には圧着端子34Vが備えられ、W相の外部配線33Wの端部には圧着端子34Wが備えられている。外部配線33の圧着端子34に対してボルト31が挿通され、ナット35がボルト31に締結されることで、引出線30と外部配線33が電気的に接続される。ボルト31、ナット35、保持金具32および圧着端子34は、端子接続部を構成する。
【0026】
次に、端子台12について説明する。端子台12は、絶縁性材料である樹脂により形成されており、複数の引出線30と複数の外部配線33とを電気的に接続する。
図1に示すように、本実施形態の端子台12は、電動モータ10の上部に位置するように、第1エンドブラケット20にボルト25の締結により取り付けられている。
図2に示すように、端子台12は、端子台本体41と、端子台本体41の周囲に一体形成されたフランジ部42と、を備えている。
【0027】
図2に示すように、端子台本体41は、フランジ部42から立ち上がる第1側壁部43、第2側壁部44、一対の第3側壁部45および天壁部46を有している。第1側壁部43は、回転軸19の出力軸部側の側壁部であり、第2側壁部44は第1側壁部43と対向する側壁部である。一対の第3側壁部45は第1側壁部43と第2側壁部44との間を接続する側壁部である。天壁部46は、第1側壁部43、第2側壁部44および一対の第3側壁部45に囲まれた領域を覆う壁部である。第1側壁部43には、引出線30のボルト31が挿通される3個の通孔47が形成されている。
図4では1個の通孔47のみ図示される。
【0028】
フランジ部42は、端子台本体41を囲繞するように形成されている。フランジ部42における第3側壁部45付近にはボルト25を挿通する通孔(図示せず)が形成されている。端子台12が第1エンドブラケット20に固定されることにより、モータ側空間部27と連通する端子台側空間部49が形成される(
図1、
図4を参照)。モータ側空間部27および端子台側空間部49は引出線30を収容する収容空間に相当する。モータ側空間部27および端子台側空間部49により形成される収容空間は密閉空間である。
【0029】
ところで、本実施形態では、引出線30のボルト31の頭部は、端子台12の第1側壁部43の内側面と当接し、外部配線33の圧着端子34が第1側壁部43の外側面と当接する。そして、ナット35の締結により第1側壁部43を挟んでボルト31および圧着端子34は端子台12に固定される。したがって、外部配線33は、第1側壁部43から上方へ向けて延在する。第1側壁部43は、ボルト31およびナット35の締結による軸力を受ける。樹脂である端子台12は、ボルト31とナット35との締結による軸力を受けてクリープ現象が発生する可能性があるが、本実施形態では、クリープ現象が発生しても引出線30が端子台12に対して緩み難い工夫が凝らされている。
【0030】
図4に示すように、引出線30は、コイルエンド17側の基部からボルト31側の先端部との間において折り返されている折り返し線部51を有している。また、引出線30は、折り返し線部51とステータコイル16との間に延在するコイル側線部52と、折り返し線部51と第1端子との間に延在する端子側線部53と、を有している。
図4では、説明の便宜上、各線部の境界を点線により模式的に示す。折り返し線部51では引出線30の一部が折り返されているので、コイル側線部52の軸心と端子側線部53の軸心とは鋭角となり、引出線30のコイル側線部52と端子側線部53とが特定の方向(上方)から見ると重なる状態となっている。
【0031】
コイル側線部52は、コイルエンド17側の基部付近では回転軸19の径方向外側へ突出してさらにステータコア15へ向かうように屈曲されている。コイル側線部52においけるコイルエンド17側の基部52Aの軸心と折り返し線部51側の部位52Bの軸心とは鈍角となる。つまり、コイル側線部52は、屈曲されているものの折り返し線部51のように折り返されていない。したがって、コイル側線部52における弾性変形は、折り返し線部51の弾性変形と比較すると小さい。端子側線部53は、折り返し線部51からボルト31まで僅かに湾曲しているがほぼ直線状に延在する。
【0032】
ところで、折り返し線部51は、弾性変形を含む変形であることから変形を復元しようとする復元力を生じている。また、コイル側線部52は屈曲されているので、コイル側線部52においても弾性変形が生じており復元力が生じている。折り返し線部51の復元力は、折り返されてはないが屈曲されているコイル側線部52の復元力よりも大きい。これらの復元力は、引出線30を直線状にしようとするので、ボルト31はこれらの復元力を受ける。
【0033】
折り返し線部51およびコイル側線部52を合わせた引出線30の復元力は、回転軸19の軸方向と平行な成分と、回転軸19の径方向の成分と、に分解できる。したがって、引出線30の復元力における回転軸19の軸方向と平行な成分は、ボルト31の軸方向おいてボルト31を端子台12に押し付ける付勢力としてボルト31に付与される。つまり、ボルト31は、付勢力を受けて端子台12に常に押し付けられる。なお、折り返し線部51およびコイル側線部52では、弾性変形のほか塑性変形も含まれる可能性はあるが、殆どが弾性変形であって塑性変形が弾性変形の復元力を解消することはない。
【0034】
次に、本実施形態の電動モータ10の作用について説明する。
図4に示すように、引出線30が折り返されている折り返し線部51を有し、さらに、コイル側線部52は、コイルエンド17側の基部付近では屈曲されている。このため、折り返し線部51およびコイル側線部52に生じる復元力は、ボルト31に対する付勢力として、ボルト31を端子台12に押し付ける。このため、ボルト31およびナット35の締結により、端子台12にクリープ現象が生じたとしても、ボルト31は、引出線30の復元力に基づく付勢力を受けて端子台12に押し付けられるので、端子台12に対して緩み難い状態となる。
【0035】
本実施形態の電動モータ10は以下の効果を奏する。
(1)引出線30が収容空間において弾性変形により折り返され、ボルト31および保持金具32が引出線30の復元力を受けて端子台12に向けて付勢されている。したがって、端子台12においてクリープ現象が生じたとしても、ボルト31および保持金具32は引出線30の復元力により端子台12に押し付けられているので、引出線30の端子台12に対する緩みを防止することができる。
【0036】
(2)引出線30は、収容空間において弾性変形により折り返される折り返し線部51と、折り返し線部51とステータコイル16との間に延在するコイル側線部52と、折り返し線部51と第1端子との間に延在する端子側線部53と、を有する。このため、引出線30における折り返し線部51は、コイル側線部52および端子側線部53と比較して折り返しにより大きく弾性変形しているので、ボルト31および保持金具32への十分な付勢力を確保することができる。
【0037】
(3)ボルト31および保持金具32は、引出線30の復元力により端子台12に押し付けられ、引出線30の端子台12に対する緩みを防止することができるので、第1端子および圧着端子34をボルト31およびナット35により端子台12に固定できる。その結果、中継端子を用いる必要がなく、部品点数の抑制が可能である。
【0038】
(4)保持金具32は、ボルト31と一体化されているので、電動モータ10の部品点数を削減でき、電動モータ10の製作コストの低減や電動モータ10の組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0039】
(5)引出線30の折り返し線部51が収容空間において弾性変形により折り返されるとともに、コイル側線部52が折り返されずに屈曲されている。このため、折り返し線部51およびコイル側線部52を合わせた引出線30の復元力は、ボルト31の軸方向おいてボルト31および保持金具32を端子台12に押し付ける付勢力としてボルト31に付与される。その結果、ボルト31および保持金具32に対する付勢力は、折り返し線部51のみの付勢力と比較して増大させることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電動モータについて説明する。本実施形態は、引出線の第1端部および端子台の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0041】
図5に示すように、電動モータ60は、第1エンドブラケット20に固定される端子台61を備えている。端子台61は、端子台本体62と、端子台本体62の周囲に一体形成されたフランジ部(図示せず)と、を備えている。
【0042】
図5に示すように、端子台本体62は、第1側壁部63、第2側壁部64、一対の第3側壁部65(一方のみ図示)および天壁部66を有している。天壁部66には、U相、V相、W相に対応する3個の通孔67が形成されている。通孔67の周囲は肉厚の台座68が形成されている。フランジ部がボルト25により固定されることにより、端子台61は第1エンドブラケット20の上面に固定され、モータ側空間部27と連通する端子台側空間部69が形成される。モータ側空間部27および端子台側空間部69は引出線30を収容する収容空間に相当する。なお、
図5では、V相に対応する通孔67V、台座68Vのみが示される。
【0043】
引出線30の先端部には、第1端子としての丸形の曲げのない圧着端子71が備えられている。圧着端子71は、引出線30の先端を保持する保持部73と、ボルト74により圧着される圧着部72と、を有する。圧着端子71は、ボルト74およびナット35の締結により天壁部66の内面に固定される。また、外部配線33の圧着端子34は、ボルト74およびナット35の締結により、台座68に固定される。したがって、外部配線33は天壁部66から水平方向へ延在する。収容空間における引出線30は、第1の実施形態とほぼ同じ状態であり、引出線30の復元力に基づく回転軸19の径方向の成分は、圧着端子71を天壁部66へ押し付ける付勢力として圧着端子71を付勢する。
【0044】
本実施形態は、第1の実施形態の効果(1)~(3)、(5)と同等の効果を奏する。また、引出線30が圧着端子71を備えることから、第1の実施形態の引出線30の第1端部と比較すると第1端子を安価とすることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電動モータについて説明する。本実施形態は、引出線の第1端部、端子台および引出線の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0046】
図6に示すように、電動モータ80は、第1エンドブラケット20に固定される端子台81を備えている。端子台81は、端子台本体82と、端子台本体82の周囲に一体形成されたフランジ部83と、を備えている。
【0047】
図6に示すように、端子台本体82は、第1側壁部84、第2側壁部85、一対の第3側壁部86(一方のみ図示)および天壁部87を有している。天壁部87には、U相、V相、W相に対応する3個の通孔88が形成されている。フランジ部83がボルト25により固定されることにより、端子台81は第1エンドブラケット20の上面に固定され、モータ側空間部27と連通する端子台側空間部89が形成される。モータ側空間部27および端子台側空間部89は引出線30を収容する収容空間に相当する。なお、
図6では、V相に対応する通孔88Vのみが示される。
【0048】
引出線30の先端部には、第1端子としての丸形の圧着端子91が備えられている。圧着端子91は、引出線30の先端を保持する保持部92と、ボルト94により圧着される圧着部93と、を有する。圧着端子91は、保持部92と圧着部93との間がほぼ90°に曲げられた曲げ端子である。つまり、圧着部93は、保持部92に対してほぼ90°で屈曲されている。圧着端子91は、ボルト94およびナット35の締結により天壁部87の内面に固定される。また、外部配線33の圧着端子34は、ボルト94およびナット35の締結により、天壁部87に固定される。したがって、外部配線33は天壁部87から水平方向へ延在する。
【0049】
収容空間における引出線30は、第1の実施形態と異なる状態で収容されている。引出線30は、折り返し線部としての第1折り返し線部95および第2折り返し線部96を有する。また、引出線30は、第1折り返し線部95とステータコイル16との間に延在するコイル側線部97と、第1折り返し線部95と第2折り返し線部96との間に延在する中間線部98と、第2折り返し線部96から先端まで延在する端子側線部99と、を有する。
図6では、説明の便宜上、各線部の境界を点線により模式的に示す。引出線30は全体として略S字状になるように2回折り返されている。コイル側線部97の軸心と中間線部98の軸心とは鋭角となっているほか、中間線部98の軸心と端子側線部99の軸心とは鋭角となっている。したがって、引出線30のコイル側線部97と中間線部98および端子側線部99は、特定の方向(回転軸19の軸方向)から見ると互いに重なる状態となっている。
【0050】
第1折り返し線部95および第2折り返し線部96は、弾性変形を含む変形であることから変形を復元しようとする復元力を生じている。これらの復元力は、引出線30を直線状にしようとするので、引出線30の復元力の回転軸19の径方向の成分は、圧着端子91を天壁部87に押し付ける付勢力として圧着端子91に付与される。
【0051】
本実施形態は、第1の実施形態の効果(1)~(3)と同等の効果を奏する。また、引出線30は、2つの折り返し線部を有しているので、収容空間において2回折り返されている。このため、引出線30が1回折り返される場合と比較すると、復元力を増大させることができ、第1端子としての圧着端子91への付勢力が増大する。その結果、引出線30の端子台81に対する緩みをより確実に防止できる。
【0052】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0053】
○ 上記の実施形態では、回転電機としての電動モータとして三相同期電動機を例示したが、回転電機の種類を制限する趣旨ではない。回転電機としては、例えば、発電電動機であってもよく、電動モータとしては、例えば、三相誘導電動機であってもよい。
○ 上記の実施形態では、引出線が1回又は2回折り返される場合について説明したがこれに限らない。引出線は複数回として3回以上折り返されてもよい。
○ 上記の実施形態では、端子台が収容空間を密閉する構成としたが、これに限らない。例えば、収容空間が外部の空間と連通するように構成された端子台であってもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、引出線の第1端子として曲げ端子でない圧着端子を用いたが、例えば、曲げ端子である圧着端子を用いてもよい。この場合、圧着端子が天壁部ではなく第1側壁部に固定されるように、ボルトの通孔を第1側壁部に設ければよい。
【符号の説明】
【0054】
10、60、80 電動モータ(回転電機)
11 モータ本体
12、61、81 端子台
13 ステータ
14 ロータ
15 ステータコア
16 ステータコイル
18 ロータコア
19 回転軸
27 モータ側空間部
30 引出線
31、71、94 ボルト
32 保持金具
33 外部配線
34、67、71、91 圧着端子
35 ナット
49 端子台側空間部
51 折り返し線部
52、97 コイル側線部
53、99 端子側線部
72、92 保持部
73、93 圧着部
74、94 ボルト
95 第1折り返し線部
96 第2折り返し線部
99 端子側線部